説明

餌調合物に入れた液状シロアリ防除剤を用いるシロアリの制御方法

【課題】効果的なシロアリ制御方法を提供する。
【解決手段】シロアリ制御が必要なもしくは必要と思われる場所に、(a)樺(カバノキ科)から得たセルロース質材料、(b)バインダ及び(C)クロロフェナピル、インドキサカーブ、フィプロニル、ピレスロイド及びネオニコチノイドからなる群から選ばれたシロアリ防除剤を配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシロアリの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロアリはすべての構造破壊的害虫のなかで最も破壊的なものである。米国でのシロアリは年間15億ドルの構造物破壊をもたらすと推定されており、その処理にさらに10億ドルを使っているといわれている。この勤勉な害虫は1日24時間働いてそれらの環境内やその近傍にある木やその他のセルロース含有物質を徐々に食いあらす。シロアリは食している木のなかにかくれていたり、泥状チューブ内や土壌内にかくれていて、検知されずに破壊を続ける。シロアリの種類によっては、一つのシロアリ群が22,000平方フィートといった広さをカバーする。シロアリには(1)ドライウッドシロアリ及び(2)地下シロアリといわれる2種類がある。これら2種のシロアリのうち、地下シロアリは通常土壌中に住み(即ち土壌育ち)、そこから彼らが食する木質構造物へと泥状チューブをつくる。
【0003】
従来から、土壌育ちのシロアリの制御は種々の方法で行われている。その一つはシロアリ感染のある土壌に少なくとも1のシロアリ防除剤の水系調合物を戦略的に付与する方法である。この方法で用いる非限定的なシロアリ防除剤の例としては、クロロフェナピル、インドキサカーブ、フィプロニル、ピレトロイド、たとえばビフェントリン及びネオニコチノイドたとえばイミダクロプリド及びアセトアミプリドがある。これらは温和ないし迅速な作用をもつ極めて有効なシロアリ防除剤である。この方法の問題点は土壌中へのシロアリ防除剤の最終的な分配は、土壌湿度、土壌の種類、活性成分の水溶性の程度、調合剤の種類、及び付与する容積、圧力ノズルの種類等の付与の変動要因その他全体の変動要因に影響されるということである。これらの変動要因により、ギャップ又は薄く処理した土壌領域をもたらす。つまり、シロアリはトンネルやマッドチューブを通って侵入して、化学バリア中のこれらのギャップ及び薄く処理した土壌域を通って食料源/構造物に達する。この方法はまた労働集約的であり、土壌感染の原因ともなる。
【0004】
シロアリ制御の別の方法としては特許文献1に記載されている方法即ち木質柱その他のシロアリの餌物質を保持すべき構造体の周囲の土壌に入れて、土壌が感染するかどうかをモニタし、次いで感染が観察された領域に毒物を含有する餌をもつ餌物質を移す方法がある。
【0005】
この方法は土壌中の化学物質を最小化できるが、別の問題がある。たとえば、餌柱は通常限定された領域を占めるので構造物の周囲全体に連続バリアをもたらさず、また互いにフィート又はヤードのオーダーで離れていることが多い。土壌中にいるシロアリ群が餌柱に集まることはむずかしく、特にそれらの間隔が広くまた構造物周囲の湿分領域等のシロアリ攻撃を誘導する構造物周囲の状態と無関係に決めた間隔で餌柱を配した場合にはよりむずかしい。
【0006】
また毒物含有餌を移すために餌柱を取り除くと、シロアリがつくった餌柱への通路がこわされて、再配置した餌柱へのシロアリの流れが妨げられやすい。これらの問題は特許文献2及び3に記載されている。これらでは取りはずし可能な餌カートリッジをもつだけでなくハウジング近くへのシロアリの通路を妨害する多数の拡張部をもつ定置ハウジングを土壌中に挿入することが開示されている。
【0007】
従来、上記の餌柱法に用いる毒物の例としては遅効性の毒物、たとえばヒドラメチルノン、害虫成長調整剤及び病原体がある。この方法の餌に用いる毒物は従来は土壌の直接処理に用いる液状シロアリ防除剤は含んでいないが、これは従来の餌の形ではシロアリが食さなかったり好まなかったことによる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,573,760号
【特許文献2】米国特許第5,329,726号
【特許文献3】米国特許第5,555,672号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はシロアリの効果的な制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は土壌処理に用いる液状シロアリ防除剤を朽ちた樺(Betura sp.カバノキ科)から得たセルロース質物質と組合せるとシロアリがその餌組成物を好みその近傍にとどまるという予期せざる事実を見出した。
【0011】
本発明はシロアリ制御が必要なもしくは必要と思われる場所に、(a)樺(カバノキ科)から得たセルロース質物質、(b)バインダ及び(C)クロロフェナピル、インドキサカーブ、フィプロニル、ピレスロイド及びネオニコチノイドからなる群から選ばれたシロアリ防除剤からなる組成物を配することを特徴とするシロアリの制御方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明はシロアリ制御が必要なもしくは必要と思われる場所に、(a)樺(Betula sp.)から得たセルロース質物質、(b)バインダ及び(C)クロロフェナピル、インドキサカーブ、フィプロニル、ピレスロイド及びネオニコチノイドからなる群から選ばれたシロアリ防除剤からなる組成物を配することを特徴とするシロアリ制御方法に関する。
【0013】
クロロフェナピルは好ましくは1〜600ppm、より好ましくは50〜600ppmの濃度で存在する。インドキサカーブは好ましくは1〜1,000ppm、より好ましくは100〜1,000ppmの濃度で存在する。フィプロニルは好ましくは1〜1,500ppm、より好ましくは90〜1,500ppmの濃度で存在する。
【0014】
ネオニコチノイドはイミダクロプリド、アセトアミプリド、ニチアジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、チアクロプリド及びクロチアナジンからなる群から選ばれうる。より好ましくは、ネオニコチノイドはイミダノロプリド及びアセトアミプリドから選ばれる。アセトアミプリドは好ましくは1〜1,100ppm、より好ましくは10〜1,100ppmの濃度で存在する。
【0015】
ピレスロイドはビフェントリン、シペルメスリン、ゼータシペルメトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、エスフェンバレレート、フルバリネート、エトフェンプロックス及びパーメトリンからなる群から選ばれうる。好ましくは、ピレスロイドはビフェントリン、シペルトリン、ゼータシペルメトリン及びパーメトリンからなる群から選ばれる。より好ましいピレスロイドはビフェントリンである。ビフェントリンは好ましくは1〜80ppm、より好ましくは7〜80ppmの濃度で存在する。ビフェントリンとアセトアミプリドとの組合せ等の複数のシロアリ防除剤の組合せを用いることができる。
【0016】
付与する場所は、シロアリ感染した構造物に隣接する場所、シロアリ感染すると思われる構造物に隣接する場所、シロアリ感染した場所、シロアリ感染すると思われる場所、活性シロアリモニタステーション又はシロアリの検知又は制御が必要と思われる領域でありうる。
【0017】
バインダは適宜の形状にセルロース質物質と共に保持しうる物質である。好ましいバインダはヒドロコロイドであり、好ましくはカラゲニン、テラ(Terra)コントロールSC823土壌安定剤、ポリアクリルアミド土壌安定剤、微結晶質セルロール、ウォールポールステッカー、ケイ酸ナトリウム、アルギネート、寒天、グルー歯科印象マトリックス、硬化剤及びそれらの組合せから選ばれる、バインダの量はセルロース質物質と共に保持し、形成し、乾燥して好ましい形状とするに足る適宜の量を用いうる。好ましい形状の非限定的な例としては、ディスク、ペレット及び長尺状ブロックがある。セルロース質物質とバインダを含有する組成物はシロアリをモニタし検知するのに有効である。
【0018】
本発明方法で用いる組成物は、揮発性誘引物質、圧縮剤、抗菌剤、デンプン及びその他のフィラー等の他の成分を含有しうる。
本発明で用いる組成物は、セルロース質物質、バインダ、水及びシロアリ防除剤を合体してつくることができる。シロアリ防除剤は組成物をつくる前にセルロース質物質又は水に合体しうる。
【0019】
これらの組成物からつくられる組成物は、FMC社から商標Fistline及びDefenderの名でまたダウ社から商標Sentriconの名で市販されているような適宜のモニタ/餌系やそれらに類似する形状と組合せて用いうる。これらの組成物は上記の系の全モニタ部材として用いてもよく、またそれらからつくったデイスクを適宜の木質モニタと組合せて用いてもよく、またステーションなしで用いてもよい。
【0020】
本発明で用いる組成物は市販のシロアリ防除剤の調合物から誘導してもよい。たとえばFMC社からTALSTAR(商標)GC流動性殺虫剤/殺ダニ剤、又はTalstar One(商標)多重殺虫剤の名で市販されているビフェントリンを用いてもよい。本発明に有用なアセトアミプリドの調合物の非限定的な例としては、70%湿潤性粉末として(商標INTRUDERの名で市販されている)アセトアミプリドがある。公知の方法を用いて、上記のシロアリ防除剤の調合物を水性媒体に分散させて有効量のシロアリ防除剤を含む組成物としこれを餌に混入してもよい。
次に実施例によって本発明を例証する。
【実施例1】
【0021】
液状シロアリ防除剤を含有する組成物/餌の致死実験
粉砕した樺(Betnda sp.)100g、イオタカラゲニン5g及び水約228mlを含有する組成物をつくった。最終組成物が生パン状のかたさをもつように十分量の水を加えた。次表に示すように種々のシロアリ防除剤を組成物に組み入れた。シロアリ防除剤は組成物に加える前に水に加えた。生パン状組成物をロール処理してそれからデイスクを切り出した。得られたデイスクを(湿分含量約5〜10%に)乾燥し、湿潤土壌を入れたペトリ皿に入れた。土壌上にシロアリ群を入れ、時間による致死%を測定し組成物の有効性を求めた。レティクリターメス・フラビペス(Reticulitermes flavipes)及びコプトターメス・フォーモサヌス(Coptotermes formosanus)シロアリの両方のシロアリ群に対する有効性を求めた。すべてのテストで、シロアリが本発明の組成物を含有するデイスクに接して残っている(通常頂部に)ことが観察された種々のシロアリ防除剤と濃度での致死結果を表1、2、3、4及び5に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【実施例2】
【0027】
液状シロアリ防除剤を含有する組成物/餌での選択性及び致死実験
3ガロンのプラスチック容器に湿潤砂を入れて、テスト領域として用いた。SMARTDISC(商標)ロケータを装着したFMCシロアリモニタステーションを各領域に配置した。モニタステーション内に毒性テストデイスク(上記実施例1で用いたものと同じ)をステーションの底に入れ、未処理木質のモニタ木片を頂部に配して、シロアリの食料源の選択源とした。毒性テストデイスクは84ppmのフィプロニル又は132ppmのアセトアミプリドのいずれか1で予め処理した。1,000匹のシロアリ(レティクリターメス・フラビペス又はコプトターメス・フォーモサヌス)を砂上に注ぎ放置すると砂中にトンネルをつくりモニタステーションが感染した。キャップを取り出してステーションを定期的にチェックし、木片を取り出してステーションの底を観察し、デイスクの消費がするか、又は死んだシロアリがいるかを調べた。周期的にチェックして記録した。Dはすべてのシロアリ群が死んだことを示し、Lはテスト領域内に生存シロアリがいることを示し、DTはテスト領域内の死んだシロアリを示す。結果を表6及び7に示す。
【0028】
【表6】

【0029】
【表7】

【0030】
本発明において「シロアリ防除剤」とは、シロアリを速やかに(温和ないし迅速に作用して)殺すか又は忌避するクロロフェナピル、インドキサカーブ、フィプロニル、ピレスロイド及びネオニコチノイド系の活性化合物又は成分をいう。「毒物」とは、シロアリをゆっくり殺すヒドラメチルノン、害虫成長調整剤及び病原体等の遅効性毒物のような活性化合物又は成分をいう。「場所」とはシロアリの制御が必要な又は必要と思われる適宜の場所をいう。これらの場所の非限定的な例としては、建物、木、ポストポール、フェンス及び建物、木、ポストポール・フェンスに隣接する場所その他がある。
当業者は本発明の種々の変形を本発明の技術思想内で実施可能であり、これらは本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロアリ制御が必要なもしくは必要と思われる場所に、(a)樺(カバノキ科)から得たセルロース質物質、(b)バインダ及び(C)クロロフェナピル、インドキサカーブ、フィプロニル、ピレスロイド及びネオニコチノイドからなる群から選ばれたシロアリ防除剤からなる組成物を配することを特徴とするシロアリ制御方法。
【請求項2】
シロアリ防除剤が1〜600ppmの濃度で存在するクロロフェナピルである請求項1の方法。
【請求項3】
シロアリ防除剤が1〜1,000ppmの濃度で存在するインドキサカーブである請求項1の方法。
【請求項4】
シロアリ防除剤が1〜1,500ppmの濃度で存在するフィプロニルである請求項1の方法。
【請求項5】
ネオニコチノイドがイミダクロプリド、アセトアミプリド、ニチアジン、チアメトキサム、ジノテフラン、ニテンピラム、チアクロプリド及びクロチアナジンからなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項6】
ネオニコチノイドがイミダノロプリド又はアセトアミプリドである請求項5の方法。
【請求項7】
ネオニコチノイドが1〜1,100ppmの濃度で存在するアセトアミプリドである請求項6の方法。
【請求項8】
ピレスロイドがビフェントリン、シペルメスリン、ゼータシペルメトリン、ラムダシハロトリン、シフルトリン、エスフェンバレレート、フルバリネート、エトフェンプロックス及びパーメトリンからなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項9】
ピレスロイドがビフェントリン、シペルトリン、ゼータシペルメトリン及びパーメトリンからなる群から選ばれる請求項8の方法。
【請求項10】
ピレスロイドがビフェントリンである請求項9の方法。
【請求項11】
ビフェントリンが1〜80ppmの濃度で存在する請求項10の方法。
【請求項12】
バインダがカラゲニン、テラーコントロールSC823土壌安定剤、ポリアクリルアミド土壌安定剤、微結晶質セルロール、ウォールポールステッカー、ケイ酸ナトリウム、アルギネート、寒天、グルー歯科印象マトリックス及び硬化剤からなる群から選ばれる請求項1の方法。
【請求項13】
バインダがイオタカラゲニン又はカッパカラゲニンである請求項12の方法。
【請求項14】
場所がシロアリ感染した構造物に隣接する場所、シロアリ感染すると思われる構造物に隣接する場所、シロアリ感染した場所、シロアリ感染すると思われる場所又は活性シロアリモニタステーションのある場所である請求項1の方法。

【公表番号】特表2008−528693(P2008−528693A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554195(P2007−554195)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/003615
【国際公開番号】WO2006/088653
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】