説明

香り発生装置

【課題】薄型、小型で、香り発生効率が高く、取り扱い易い香り発生器を空気砲に組み込むことによって、香り発生効率を更に高めると共に、利用者に香りを効率よく提示する香り発生装置を実現する。
【解決手段】香料を蓄えるとともに空気を通過させる網状線材または多孔質素材で構成された香料吸蔵板と、当該香料吸蔵板に接するように設けられた複数の空気穴を有するカバー板とから構成される香り発生器を用い、当該香り発生器に縦方向または横方向の気流を瞬間的に通過させることにより、気化した香料を固まりとして放出する。カバー板と香料吸蔵板には空気抵抗が少ない気流経路が作られる。瞬間気流発生手段として、空気砲を用いる。香り発生器を加熱する手段を備えることができる。加熱手段は、縦方向または横方向に瞬間的に気流を通過せしめる空気穴を多数有する。小型、軽量、経済的、香りの切替えが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型、小型で、香り発生効率が高く、取り扱い易い香り発生器を用いて、当該香り発生効率を更に高めると共に、利用者に香りを効率よく提示する香り発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の香り発生器、あるいは、香り発生装置は、大きく自然揮発式と強制揮発式とに分けられる。自然揮発式としては、液体香料の入った瓶にロープを入れ、ロープの先端を瓶から少し出し、ロープに染み込んだ液体香料を空気中で自然に気化させる方式が良く知られている。構造は簡単だが、空気に触れる面積が限られるため、気化量が少なく、強い香りが得られないという問題がある。また、瓶を倒すと液がロープを伝ってこぼれると言う問題もある。更に、液体香料は1種類に限られ、例えば、複数の香りの中からその日の気分で香料を選んで使うことは困難である。
【0003】
他の自然揮発式としては、繊維やフェルト布材などに液体香料を染み込ませ、専用のケースに入れて使用するものがある(例えば、特開平10−296439、特開平11−178909)。通常、利用者は、専用ケースから当該繊維やフェルト布材をピンセットなどで取り出し、スポイトなどで液体香料を染み込ませ、ケースに戻して使用する。従って、面倒であり、液を扱う際に手が汚れ易いと言う問題がある。
【0004】
この問題については、特開2000−355374に薬剤を包んで保液部を設ける機構が開示されている。また、特開平7−172477には、薬剤含浸時の保持性、拡散性を改善する機構が開示されている。しかし、これらの自然揮発式の芳香器は、上記ロープ式と同様、揮発力が弱いという問題がある。
【0005】
この問題を解決するためには、加熱する方法が考えられる。特開平6−319789には、多数の香料入りマイクロカプセルを埋め込んだ板状の薬剤カートリッジを加熱して香りを発生させる装置が開示されている。香料を加熱すれば気化は促進されるが、しかしそれだけでは、離れた場所に居る利用者に効率よく香りを提示するには不十分である。
【0006】
また、強制揮発式の芳香装置として、霧吹きの原理を利用したディフューザも良く知られている。管の一方を液体香料に浸し、管の他方を細くして先端に空気を吹き付ける。液体香料は吹き付けられた空気で管の上端まで上がり、吹き飛ばされて霧状になる。その霧を硝子容器の中で循環させ、大きな液体香料粒子を落下させて排除した後、微粒子を気化させ香りを容器から放出する。一旦粒子にした後に気化させるので、気化力は高く強い香りが得られるが、霧吹き機構が複雑なため、小型に製造することは難しく、製造コストも高くなりやすい。また、容器が汚れた際には、洗浄が面倒である。
【0007】
また、液体香料を霧状にして硝子容器内を循環させる際に、当該液体香料は空気に触れて劣化するという問題もある。劣化した液体香料の使用は、特に天然香料において望ましくないため、ランニングコストは高くなる。また、液体香料溜めには通常1種類の液体香料しか入らないため、香りを組み合わせることは難しい。また、霧吹き量を変化させて、香り濃度を変化させることも構造上難しい。さらに、空気の吹き付けにはエアーポンプを使用するが、ポンプは振動と音を伴うため、静寂性、環境性にも問題がある。
【0008】
その他、超音波振動子で香料を気化させる装置も開発されている。特公平7−112491には、香料含浸部材を超音波振動子の先端に密着させて香料含有霧を発生させる方法が開示されている。特公平6−22555には、水より軽く、水に溶けにくい香料を超音波振動子で気化させる装置が開示されている。
【0009】
ここまでを整理すると、自然揮発式は十分な香りが得られない。強制揮発式には、熱を利用するもの、霧吹き原理を利用するもの、超音波を利用するものなどがあり、強い香りを発生させる特徴があるが、発生した香りを離れた場所にいる利用者に届ける手段に問題がある。広い部屋に少しずつ拡散させていく場合には、時間が掛かる、無駄に消費される香料が多く不経済である、香りの切り替えが難しいなどの問題がある。
【0010】
小形扇風機を組み合わせて、拡散させる方法もよく用いられるが、無駄に消費される香料が多く不経済、香りの切り替えが難しいと言う問題は同様である。
【0011】
香り搬送の問題を解決するために、気化した香料を筒に入れ、空気砲の原理で利用者に提示する方式が提案されている。空気砲の原理は古くから知られているが、特開2004−81851には、砲筒に複数の香りを調合して充填し利用者の鼻先に向けて放出する装置が開示されている。空気砲は香りを固まりとして放出できるので、離れた利用者にピンポイントで香りを提示しやすい利点がある。
【0012】
しかし、砲筒への香りの充填方法が難しい。インクジェット方式で香料微粒子を砲筒に注入する方法、超音波で香料含有微粒子を生成し砲筒まで搬送する方法などが提案されているが、装置が大型化する問題、香料が砲筒内に付着するためメンテナンスが面倒な問題、装置が高価になる問題などがある。つまり、家庭で使用できる実用性のあるものは今のところ存在しない。
【0013】
以上のように、従来の香り発生器または香り発生装置は、簡単な構造のものでは、香り発生効率が悪い、香りの品質が悪いなどの問題があり、複雑な構造のものでは、小型化が難しい、高価である、メンテナンスが難しい、香料の消費量が多い、などの問題がある。また、共通する問題として、香りを効率よく発生させ、利用者に的確に提示することが難しい更に、複数の香りを組み合わせて複雑な香りを調合することが難しいなどが挙げられる
【0014】
【特許文献1】特開平10−296439
【特許文献2】特開平11−178909
【特許文献3】特開2000−355374
【特許文献4】特開平7−172477
【特許文献5】特開平6−319789
【特許文献6】特公平7−112491
【特許文献7】特公平6−22555
【特許文献8】特開2004−81851
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上の状況に鑑み、本発明の目的は、薄型、小型で、香り発生効率が高く、取り扱い易い香り発生器を空気砲に組み込むことによって、当該香り発生効率を更に高めると共に、利用者に香りを効率よく提示する香り発生装置を実現することである。
【0016】
技術的な課題は、(1)香料の吸蔵性が高く、気化効率がよく、空気が縦方向または横方向に通過しやすい板状香り発生器を用いること、(2)香料を効率よく気化させること、(3)気化香料を拡散させずに、固まりとして外部に効率よく放出することである
【課題を解決するための手段】
【0017】
<手段1>
本発明に係わる請求項1に記載の香り発生装置は、例えば、図1、図2、図4に対応付けて説明すると、香料を吸収し蓄えるとともに空気を通過させる網状線材または多孔質素材で構成された香料吸蔵板と、当該香料吸蔵板に接するように設けられた複数の空気穴を有するカバー板とから構成される香り発生器(007、010、011)を用い、当該香り発生器に縦方向または横方向の気流を瞬間的に当てることにより、気化した前記香料を固まり(400B)として放出することを特徴とする。
【0018】
<手段2>
本発明に係わる請求項2に記載の香り発生装置は、前記手段1において、前記香り発生器を構成する香料吸蔵板の空気通過部とカバー板の空気穴は、縦方向(図1の場合)または横方向(図2、図4の場合)に瞬間的に気流を通過せしめるように構成されることを特徴とする。
【0019】
<手段3>
本発明に係わる請求項3に記載の香り発生装置は、前記手段1において、前記香り発生器に縦方向または横方向の気流を瞬間的に当てる手段として、砲筒の気圧を瞬間的に高め空気を環状の固まりとして放出する空気砲(図1、図2、図4の514)を用いることを特徴とする。
【0020】
前記手段1から手段3において、前記液体香料吸蔵板は、液体香料を吸収し蓄えるとともに空気を通過させる網状線材(例えば、図7の101、102、図11Bの103、104)または多孔質素材(例えば、図13の107)で構成され、当該カバー板は、複数の空気穴(例えば、図6の202)が設けられ、当該空気穴の大きさ及び形状は、皮膚が当該空気穴に触れた際に、皮膚の変形によって当該空気穴に侵入する当該皮膚が前記液体香料吸蔵板に到達しないように設定され、かつ、表面から裏面に向かって、即ち、皮膚が接する面から液体香料吸蔵板と接する面に向かって、当該空気穴が大きくなるように構成する(例えば、図6、図9、図11c、図13、図15、図16)ことが望ましい。具体的には、当該穴の容積は、前記穴に侵入する当該皮膚の体積より大きくなるように設定するとよい。
【0021】
前記カバー板と前記液体香料吸蔵板との間の空気穴は、液体香料の気化を促進する空間とすることができる。
【0022】
本発明で使用する香り発生器は、図11(C)に示すように、一方のカバー板の空気穴から気流を取り入れ、液体香料吸蔵板を縦方向に通過させ、他方のカバー板の空気穴から放出させるように設計されたもの、又は、図16(C)に示すように、一方のカバー板の空気穴から気流を取り入れ、液体香料吸蔵板を横方向に通過させ、当該カバー板の空気穴から放出させるように設計されたものが望ましい。
【0023】
つまり、前記気流が通過する際の空気抵抗を小さくするために、図11、図13、図16に2点鎖線で示すような気流通路が設けられていることが望ましい
【0024】
当該気流通路を形成するために、液体香料吸蔵板は、カバー板の空気穴に連結される空気通過領域(例えば、図8のAirH)が選択的に撥水性材料(RC)で構成される、または、当該空気通過領域の網目間隔が周辺に比べ疎になるように構成され(例えば、図11B、図12、図13)、前記空気穴から入った空気が当該空気通過領域を介して縦方向または横方向に気流を形成することが望ましい。
【0025】
また、液体香料吸蔵板の網状線材は、液体保持特性を上げるため、図11の103、104のように、網目間隔が密なる部分と疎なる部分の組み合せで構成してもよい。
【0026】
前記香り発生器において、液体香料吸蔵板の網状線材は、線材数Nが1mm幅当たり50本以下の範囲で網状に構成され、又は、液体香料吸蔵板の多孔質素材は、当該穴数Mが1mm幅当たり50個以下の範囲に構成され、カバー板の厚さtは0.5〜2.0mmの範囲に構成され、かつ、空気穴の表面の径dは0.2〜3.0mmの範囲が望ましい。更に、dが1/N(mm)または1/M(mm)より大なる条件を満たしていることが望ましい。
【0027】
液体香料吸蔵板(図11の100)は、複数の網状線材を重ねた多層構造であって、当該網目密度が層の中心ほど密になっていることが望ましい。
【0028】
液体香料吸蔵板(図1の113、または、図3の115)は、領域が複数に分割され、当該分割された所定の領域に供給された液体香料は、当該所定領域のみに拡散し蓄積されるように構成してもよい。
【0029】
前記カバー板の空気穴の形状は、円形、四角形、三角形、その他の形状が可能である。また、図15に示すように、表面から裏面に向かって穴の面積が変化する構成でもよい。また、表面と裏面の形状を変えることができる。カバー板の内部で、気化空間が広くなることが望ましい(図16参照)。
【0030】
前記カバー板の空気穴(図6の202)の近傍、または、液体香料吸蔵板の通気孔(図8のAirH)は、フッ素系樹脂等の撥水性材料(RC)で構成できる。
【0031】
<手段4>
本発明に係わる請求項4に記載の香り発生装置は、例えば、図1、図3に対応付けて説明すると、前記手段1から前記手段3いずれかにおいて、前記香り発生器を加熱する手段(図1の505、図3の520、115)を備え、当該加熱手段は、縦方向または横方向に瞬間的に気流を通過せしめる空気穴を多数有することを特徴とする。
【0032】
当該加熱手段(505)の空気穴から入った気体が前記カバー板の空気穴(202)を通過するように設定されることが望ましい
【0033】
また、図3に示すように、カバー板または液体香料吸蔵板には、発熱性導電体を用い、当該導電体に通電することで、当該カバー板または液体香料吸蔵板を加熱し、これによって、液体香料を加熱しても良い。
【0034】
また、加熱手段は、遠赤外線を発生する手段が利用できる。2.53〜3.0μm、または、5.0〜7.0μmの波長の遠赤外線が望ましい。カバー板または液体香料吸蔵板の近傍に、カーボン素材を用いた発熱物体を設け発熱させると、当該、カーボン素材からは、当該波長を含む強い遠赤外線が放出される。
【0035】
なお、本発明の香り発生装置において、液体香料とは、粘度を問題にしない。図7、図8、図11、図12、図13などに示すように、香料吸蔵板に空気穴を形成しつつ香料が蓄積されるものであれば適用できる。気流の通過を妨げることなく、香料が点在するものが望ましい。従って、当然ジェル状のものも含まれる。同様の機能を有するゲル状の香料を用いてもよい。つまり、空気が縦方向、横方向に低抵抗で通過し、香料が気化するものであればよい
【発明の効果】
【0036】
<手段1〜手段3に係る効果>
図1に示すように、本香り発生器に縦方向気流を瞬間的に当てると、気化した前記香料は環状固まり(香り玉)なって放出される。当該環状固まりは、拡散することなく適当な距離飛行する。従って、利用者に香りを効率よく提示することができる
【0037】
また、香り発生器は、筒型の構成を用いることができる。図2、図4に示すように、当該筒に並行に気流を通すと、当該気流の一部は、カバー板の空気穴を通過し、当該カバー板と液体香料吸蔵板との間に溜まった気体香料を放出し、環状固まりになって飛行する。
【0038】
以上のように、本香り発生器のカバー板と液体香料吸蔵板との間に溜まった気化香料は、瞬間気流によって放出されるため、嗅覚特性は極めてよい特に空気砲を用いたときにその効果は大きい
【0039】
ここで、前記効果に関して、従来例と比較し特徴を補足説明する。前記特開平10−295439、特開平11−178909、特開平7−172477に示す香り発生器も液体香料吸蔵板を用いているが、これら従来例は、主に、香料を自然揮発させる用途に向いた構成と考える。本発明のように、芳香器に気流を当て内部に溜まった香りを強制的に放出する構成にはなっていない。従って、例えば、前記従来例の香り発生器を図1の本発明の香り発生器(007)の代わりに用いたとしても、本発明のように、香りの固まりを作ることは難しい。ましてや、環状の固まりを作ることはできない
【0040】
図1に示す本発明の構成は、空気砲の開口部を香り発生器で覆っているので、通常の知識では、砲筒内で空気の流れが滞って環状の香りの固まりは生じないのではと思われるが、前記のように、香り発生器に気流通路を設け、縦方向に通過する空気抵抗が小さくなるように工夫することによって、全く問題なく環状の香りの固まり(香り玉)を作ることができる。これは、試行錯誤の実験によって得られた知見であり、自明なことではない
【0041】
また、例えば、図1の平板形香り発生器(007)では、カバー板(200、201)と液体香料吸蔵板(100)との間の空間は、気流がないとき気化した香料を溜める空間として作用するため、香料濃度の高い気体が作られる。空気砲を作動すると当該気化香料は放出され、空気の入れ替えが起きる。当該空間の香料濃度は低くなるため、再び、気化が促進される。
【0042】
図2、図3、図4では、香り発生器に横方向の気流を通過せしめるが、効果は図1と同様である。また、図4に示す構成では、気流A、Cは横方向に通過し、気流Bは縦方向に通過している。このように、組み合わせることで効率を上げることも可能である。
【0043】
このようにして、気化香料を板状の香り発生器内に溜め、瞬間気流発生手段(空気砲)によって当該香りを取り出し、固まりとして放出し、再び、気化香料を溜めると言う動作の繰り返しが可能である。効率のよい香り提示が可能である。また、極めて限定された小空間で、気化と、放出が起きるので、空気砲内が香料等で汚染されることはない。メンテナンス性は容易である。また、図1、図3に示すように、香り発生器に複数の香料を入れることができるので、香料の切り替え、調合も可能である。また、部品点数が少なく小型、軽量、安価な構成が可能である
【0044】
次に、本発明の重要な部品である香り発生器の特徴的な構成に関する効果について、前記とやや重複するが詳細に説明する。
【0045】
網状線材(図7の101、102、図11Bの103、104)または多孔質素材(図13の107)で構成された液体香料吸蔵板の一部に滴下された液体香料は、毛細管現象によって、当該吸蔵板内に吸収され、板面方向に速やかに拡散して蓄えられる。また、当該液体香料吸蔵板の網目は密な部分と疎な部分が存在するため、当該液体香料に局部的に加わる力は不均一であり、従って、網目が液体香料で一様に満たされることは少なく、液が溜まる部分、液が溜まらない部分ができる。液の無い部分は、空気が通過する通気孔となる。
【0046】
図6において、カバー板(200、201)の空気穴(202)は、皮膚と接する側の穴の面積は小さいため、皮膚がカバー板に接触した際、当該穴の中にめり込む皮膚の量は少ない、即ち、皮膚が液体香料吸蔵板に接触することを回避できる。
【0047】
図6または図11cにおいて、当該空気穴の構成(202)は、当該カバー板(200、201)が液体香料吸蔵板(100)と接する際、カバー板の接触面積を小さくする。従って、液体香料が空気に触れる面積を大きくすることができ、当該香料が気化しやすい状態を作る。
【0048】
また、当該空気穴(202)の構成は、気化した香り(ガス状香料)を当該穴の中に満しやすい。即ち、当該空気穴は、香りを溜める空間として機能する。この部分に気流を当てると、濃度の高い当該香りがカバー板の外に放出される。
【0049】
また、当該空間に溜まる香りは、図11cに示すように、香り発生器の厚さ方向、即ち縦方向に流れるのみならず、図16に示すように、カバー板の空気穴から入って、別の空気穴から出る、即ち横方向に流れるようにすることもできる。従って、縦方向、または、横方向に気流を当てて香りを放出することができる。
【0050】
以上のように、本発明で使用する液体香料吸蔵板(100)とカバー板(200、201)とからなる香り発生器の構成は、供給された液体香料を蓄積する容器として機能するとともに、気化した香料を一時的に溜め、カバー板に空気を当てた際、気化香料を効率よく放出するように作用する。
【0051】
図6に示すように、カバー板の厚さtを0.5〜2.0mm、空気穴の表面の径dが0.2mm以上の場合、香りがカバー板から出やすい。dを3mm以下にすると、カバー板(201)に皮膚(500)が触れた際、皮膚が空気穴(202)を通過して吸蔵板(100)に達することは少ない。
【0052】
図7、または、図11Bに示すように、網状線材密度Nが50本/mm以下の場合、液体香料の吸蔵特性に優れ、かつ、液体香料による目詰まりが少なく、空気通過性が良い。また、d>1/N(mm)にすることによって、気化した香りはカバー板から速やかに外に放出されやすい。
【0053】
図11Aに示すように、液体は、網目密度が細かい方に向って拡散する性質がある。従って、網状線材吸蔵板の中心部の網目密度を高くすることによって、液体香料は中心部に向って拡散し、中心部に留まろうとする力(保持力)が強くなる。つまり、液漏れを起し難い安全な構造になる。
【0054】
図11Aに示すように、カバー板の空気穴の近傍が撥水性材料(RC)で構成されると、当該空気穴付近の液体香料の表面張力は高まるため、当該液体香料は当該液体香料吸蔵板内に保持される。即ち、当該液体香料の漏れを防止し、カバー板の液体容器としての機能を高める。
【0055】
図8に示すように、液体香料吸蔵板の通気孔(AirH)が撥水性材料(RC)で構成されると当該撥水性材料がコーティングされた部分は液体香料が吸蔵されにくいため、通気孔(AirH)がより確実に形成され、当該液体香料吸蔵板の空気通過特性は極めて良い。
【0056】
仮に、撥水性材料のコーティングがないと、液体香料吸蔵板が液体香料で満たされやすい。この場合、カバー板の空気穴から入った空気は行き場がなく、気流が通過しにくい。しかし、図8のように、カバー板の空気穴に連結される空気通過領域(AirH)が選択的に撥水性材料(RC)で構成されると、通気孔は整然と点在し、その周辺に液体香料(301)を吸蔵させることができる。また、気流は当該液体香料の近くを通過するため、液体香料は気化しやすい状態が作られる。
【0057】
このように、本香り発生器は、薄型、小型、取り扱いが容易、安価、香り発生効率および放出効率が高い特徴を有し、特に、空気を縦方向、横方向に低抵抗で通過させることができる。このため、空気砲との組み合わせが有効である。このような概念の板状香り発生器は従来なく、従って、当該香り発生器を用いた香りを固まりとして放出する香り発生装置も皆無である
【0058】
<手段4の効果>
図1に示すように、加熱手段505は、香り発生器(007)を温める。カバー板(200、201)、または、液体香料吸蔵板(113)が加熱されると、熱は液体香料に伝わる。液体香料は、通常、精油原液か、もしくは、精油原液を水、アルコールなどで希釈して使用するが、加熱すると、精油、水、アルコールはそれぞれ気化しやすい。本香り発生器の構造は板状で、液体香料を薄く広い面積で吸蔵しているため、カバー板または液体香料吸蔵板が加熱されると、この熱は直ぐに液体香料に伝わる
【0059】
カバー板(200、201)と液体吸蔵板(113)の間には大量の気化香料が溜まる。加熱手段には、多数の空気穴が設けられ空気抵抗が小さいため、瞬間気流発生手段(514)の気流を阻害することがない。従って、前記気化香料は二点鎖線のように効率よく放出される。明確な香りの環状固まり(香り玉)を作ることができる
【0060】
液体香料は、通常、精油原液か、もしくは、精油原液を水、アルコールなどで希釈して使用するが、2.53〜3.0μm、5.0〜7.0μmの波長の遠赤外線を用いると、水分子は共振し、エネルギーの共鳴吸収が起きるため、水の気化は促進される。この際、水に解けた香り分子も気化する。特に、6.27μmは、水分子と共振しながら水のクラスターをこわして大量のマイナスイオンを発生させる。従って、マイナスイオンが大量に含まれた香りを発生させることができる。
【実施例1】
【0061】
図1は、本発明の香り発生装置の実施例で、香り玉を放出する装置である。同図において、514は空気玉を発生する瞬間気流発生手段で、開口部518を備えた筒型容器と、エアーポンプ515と、エアーポンプの駆動部516とから構成される。当該空気玉発生部は、煙り玉を放出する玩具等でその基本構造は知られているが、図1は、当該開口部に縦方向に瞬間的に気流を通過せしめるように構成される平板形香り発生器007を取り付けて、香り玉発生装置としたところに特徴がある
【0062】
エアーポンプ駆動部516は、バネ駆動、電磁石駆動などを用いることができる。同図は、電磁石駆動式を示している。517はエアーポンプ駆動板、Feは鉄心、519はコイルである。コイルに通電すると、エアーポンプ駆動板517は筒型容器の内側に引き込まれる。容器内の体積は急激に小さくなるため、空気が固まり(玉)となって開口部から放出される。
【0063】
当該開口部518に平板形香り発生器007を付けたときの作用は以下の通りである。本香り発生器は、空気が容易に通過できる構造が一つの特徴である。カバー板は、空気穴の径を大きくする、空気穴の数を多くすることによって空気の通過を良くすることができる。また、液体香料吸蔵板は、後に詳細に述べるが、図8、図11、図12、図13で示すように通気孔AirHを多数設けた構造によって、空気通過を容易にすることができる。
【0064】
平板形香り発生器007を空気が容易に通過する構造にすると、図1において、気流発生手段514の開口部518に当該平板形香り発生器を取りつけても、前記空気玉発生機構にはさほど影響はなく、空気玉は、その形を崩さずに前に放出される。この際、当該空気玉には、前記平板形香り発生器007から放出される香料分子が混じるため、香り玉400Bとなって前方に放出される
【0065】
因みに、空気砲の原理から考えると、開口部に気流を大きく乱すものがある場合には、空気玉は得られないが、本香り発生器は、気流を乱さない程度に空気を良く通す性質あるため、前記のような香り玉が実現できる特徴がある。これは実験によって確認している
【0066】
また、図1の平板形香り発生器007は、2種類の液体香料を吸蔵できる場合を示している。前記の液体香料気化促進手段を制御することによって、2種類の液体香料の気化量を調整し、変化のある香り玉を放出することができる。
【0067】
液体香料吸蔵領域を更に分割し、多数の香料を組み合せることができるのは当然である。例えば、6種類の液体香料を用いる場合には、シトラス系のオーデコロンレシピを作成することができる。即ち、レシピAとして、レモン、マンダリン、ラベンダー、プチグレン、ゼラニウム、サンダルウッドを使用したものを用いることができる。また、レシピBとして、ベルガモット、プチグレン、レモン、ラベンダー、ネロリ、ローズマリーなどを用いることができる。シトラス系の香りは、性別、年齢を問わずに好まれる香りである。
【0068】
種類の少ない香料を用いると、飽きがくることがあるが、6種類程度の香料を用い濃度を変えて調合すると、変化に富んだ年間を通じて飽きのない香り空間を創造することができる。
【実施例2】
【0069】
図2は、本発明の他の実施例である。同図において、空気玉を発生する瞬間気流発生手段514の開口部には、円筒形香り発生器010を取り付けて構成される。当該円筒形香り発生器010は、形状の自在性がある板状香り発生器の特性を利用して、液体香料吸蔵板115とカバー板226、227を円筒形にしたものである。円筒の断面構造を拡大図に示している。115は液体香料吸蔵板、226はカバー板(内側)、227はカバー板(外側)である。
【0070】
図3は、当該円筒形香り発生器010のカバー板(外側)227を取り外した様子である。液体香料吸蔵板115は、左右に2種類の液体香料を吸蔵する。302−1、302−2は、それぞれ、液体香料供給口である。520は通電手段で、BAは電源、GDは接地、SWはスイッチである。
【0071】
液体香料吸蔵板115は、同図中に拡大図で示すように、空気の通過を容易にするため、網目間隔を疎と密が交互になるようにした網目線材で構成している。また、実線は、撥水性材料がコーティングされていない部分、破線は、撥水性材料をコーティングした部分を示している。網目が密で、撥水性材料がコーティングされていない実線の部分は、液体香料吸蔵孔EssHが多数存在する吸蔵領域として機能し、網目が疎で、撥水性材料がコーティングされている部分は通気孔AirHとして機能する。同図では、実線の回りに液体香料309が吸蔵される様子を示している。
【0072】
また、線材の一部に発熱性導電体を用いている。当該発熱性導電体には、ニクロム合金、導電性カーボン等を素材とするものが使用できる。図3のように、通電手段520を用いて、当該発熱性導電体に通電すると、ジュール熱によって、液体香料吸蔵板115は発熱し、液体香料309が温められる。当該発熱性導電体には2.53〜3.0μm、または、5.0〜7.0μmの遠赤外線を放出する素材を使用すると更に効果的である。
【0073】
ヒータからこの波長の遠赤外線が放出されると、当該波長の光エネルギーは、液体香料吸蔵板の液体香料に効率良く吸収される。これは、液体香料の中の水分子が当該光の波長で共振し、共鳴吸収を強く起こすためである。従って、水は、少ないエネルギーで効率良く気化する。特に、6.27μmの波長は、水分子と共振しながら水のクラスターをこわして大量のマイナスイオンを発生させる。従って、マイナスイオンが大量に含まれた水蒸気を発生させることができる。水が気化すると、水に溶けている香料分子も水蒸気に混じって気化する。
【0074】
なお、香り発生器を加熱するヒータは、当該香り発生器の一部の範囲が温まるように、領域を選択して駆動してもよい。
【0075】
また、同図には示してないが、液体香料気化促進手段として、超音波振動子を円筒形香り発生器010の周囲に配置して、液体香料を気化させても良い。図2において、超音波振動子でカバー板226、227、または、液体香料吸蔵板115を振動させると、振動が液体香料に伝わる。液体香料は小さな液玉となっているため、この液玉に超音波が照射されるように調整すると、液玉は激しく振動し気化する。なお、超音波が、当該香り発生器の一部の範囲のみに照射されるように、複数の超音波振動子を選択的に駆動してもよい。
【0076】
前記のように、ヒータの領域を選択して駆動、または、超音波振動子を選択的に駆動することよって、液体香料吸蔵板に吸蔵されている液体香料の気化速度を領域によって変えることができる。領域毎に液体香料の種類を変えておくと、当該香料の気化速度の差によって、様々な濃度組み合せの香りを作ることができる。
【0077】
次に、円筒形香り発生器010と瞬間気流発生手段514と組み合せたとき、香り玉が発生する原理について説明する。図2において、エアーポンプ515を適当な圧力で押すと、円筒形容器から空気の塊が放出される。この様子を二点鎖線で示す。二点鎖線の中で気流Aは中央部から放出される気流の塊で、高速に進む。開口部の中央を空気が高速で流れると、その部分の気圧は下がり、周りの空気をまき込もうとするこの作用によって、円筒周辺の気流は気流Bで示すように渦巻きを作る。この渦巻き気流は、気流Aに比較してゆっくりとした速度で、400Bに示すように、開口部と同じ形状、即ち、同図の場合、円形輪となって前方に放出される
【0078】
ここで、当該円筒香り発生器010は、前記のように、空気の通過が容易な液体香料吸蔵板115、および、カバー板226、227を用いているため、前記円筒周辺の空気の一部は、同図の気流Bように、当該円筒形香り発生器を厚さ方向(縦方向)に通過する。また、空気の一部が、筒と並行の方向(横方向)にも通過するのは、当然である。このように、液体香料吸蔵板115で気化した香料は、気流Aにも混入する。従って、気流A、気流Bは液体香料吸蔵板で気化した大量の香料を含むことになり、400Bは香り玉となって前方に放出される
【0079】
更に、円筒形香り発生器を加熱するなどして気化を促進させて、香り玉を作ると、利用者に極めてクリアな嗅覚刺激を与えることができる
【0080】
香り玉が飛ぶ距離は、気流発生手段514の性能によるが、無風状態(室内)で3〜5m以上飛ばすことができる。また、多少の風がある環境でも気流Aについては、数m飛ばせることができる。
【0081】
利用者への香りの提示は、間欠的に行うことが可能である。人の嗅覚は、香りが定常的に供給されると、刺激を感じなくなる嗅覚順応の性質がある。そこで、液体香料の気化を促進する手段を間欠的に駆動すると、部屋の香り濃度に変化がおき、心地よい嗅覚刺激となる。
【0082】
以上の説明では、液体香料吸蔵板に発熱性導電体を用いた場合を説明したが、カバー板に発熱性導電体を用いても良い。また、液体香料に導電性があり、短絡の危険がある場合には、当該導電体を絶縁体で被覆しても良い。しかし、図3のように、電圧を印加する2つの電極が離れている、高電圧にする必要は少ない、液体香料吸蔵板に液体香料が付着した状態で、当該吸蔵板の抵抗値が大幅に低下することはない等のために、通常は、被覆しなくでも短絡することはなく正常に加熱できる。
【0083】
また、円筒形の香り発生器を示したが、形状は四角筒形、三角筒形、多角筒形でも良い。
【0084】
図2では、カバー板が外側と内側で2枚、液体香料吸蔵板が多層で一式の場合を示している。円筒形香り発生器の外側は、人の手が触れやすいので、カバー板(外)は必要であるが、内側は、人の手が触れにくいので、カバー板(内)は、省略することも可能である。このように、本香り発生器では、カバー板は片方のみで構成してもよい。
【実施例3】
【0085】
図4は、図2の開口部および円筒型香り発生器を変形した実施例である。図4において、011は円筒型香り発生器である。図2と比較した特徴は、気流発生手段514から開口部までの筒形状にある。筒の断面が、同図のように、気流発生手段から開口部に掛けてなだらかに狭くなっている。当該形状は、気流の乱れを押えるため、安定した香り玉を作ることができる。また、二点鎖線の気流Cに示すように、筒の外側を沿うような気流が多く発生するため、気化した香料が当該気流Cにとり込まれ易くなる。結果として、香り玉の香料濃度は高くなる。
【実施例4】
【0086】
図5は、本香り発生装置を用いて、様々な香りを演出するシステムの応用例である。同図において、K1〜K4は、香り発生器の液体香料吸蔵板を4分割した領域、ES1〜ES4は、4種類の液体香料を当該K1〜K4に供給する手段、AC1〜AC4は、当該K1〜K4の液体吸蔵量を検出するためのフォトカプラである。この構造は、後に詳細に述べる。また、H1〜H4は、K1〜K4を各々加熱するための手段、U1〜U4は、K1〜K4に各々超音波を照射するための手段、W1〜W4は、K1〜K4に各々気流を通すための手段である。
【0087】
CPUは香りの濃度を制御し、また、液体香料の組み合せを制御するためのマイコンである。Dataは、香りのイメージに相当する香料の組み合わせを選択するための、言語から香料へメディア変換するためのデータベースである。例えば、海の香りをイメージする場合は、ローズマリー、ベルガモットを調合する。山の香りをイメージする場合には、オークモス、パイン、ヒノキ、アトラスシダー、シダーウッドを調合すると良い。以上は、天然香料を例に挙げたが、合成香料を組み合せて調合すると更に、複雑で洗練された香りになるのは当然である。
【0088】
CPUは、ヒータH、超音波発生器U、気流発生器Wの駆動を制御して、液体香料吸蔵板K1〜K4から放出される香料を調合する。この際、Data内の知識に基づき調合すると、イメージ言語に適合する香りを発生させることができる。つまり、言葉をヒントに当該言葉に相応しい香りを創生できるシステムを構成しており、「言語制御の香り発生」と言うコンセプトを実現する手段である。
【0089】
USBは、コンピュータの外部インタフェース端子、TUKIは信号分流器、YKは微少電流蓄積電源である。当該電源は、破線のように、ヒータH、超音波発生器U、気流発生器W、フォトカプラAC、液体香料供給手段ESに供給されている。CPUが動作のための制御信号を当該装置に送ると、当該装置は動作し、液体香料の供給や液体香料の気化促進を行う。
【0090】
制御方法について、更に詳細に説明する。EからESへの矢印は液体香料の流れを示す。ESからKへの矢印は液体香料の供給量を制御する様子を示す。線が太いほど液量が多いことを示す。KからACへの矢印は、液体香料吸蔵板の液体香料の量を検出するためのフォトカプラの信号を示す。ACからCPUへの矢印は、当該信号の伝送を示す。CPUは当該信号を処理し、ESに液体香料をどの程度供給するのかの指令を矢印のように送る。H、U、WからKへの矢印は気化促進手段のエネルギーの流れを示し、線の太さはその強さを相対的に示す。当該エネルギーの選択に関しては、CPUからの制御信号に基づいて行われる。CPUはDataを参照して、適切なエネルギーをKに送るようH、U、Wに指令する。
【0091】
同図では、液体香料吸蔵板のK1領域は、ES1によって液体香料E1が多量に供給されており、フォトカプラAC1がその量を検出している。ヒータH1からは多量の熱照射を受け、超音波発生器U1からは少しの超音波を受けている。また、気流発生器Wからは中程度の気流が当てられている。
【0092】
同様に、液体香料吸蔵板のK3領域は、香料E2が中程度、E3とE4の香料が少しずつ供給されており、フォトカプラAC3がその量を検出している。ヒータH1からは中程度の熱照射を受け、超音波発生器U1からは中程度の超音波を受けている。また、気流発生器Wからは中程度の気流が当てられている。
【0093】
どのような香料をどの程度液体香料吸蔵板に供給し、気化をどの程度促進するかについては、前記メッセージと香料との関係(レシピ)を記憶してあるDataを参照して、CPUが決定する。
【実施例5】
【0094】
以下では、本発明の構成部品である板状の香り発生器の実施例について述べる。図6は、平板形香り発生器の断面および概観を示している。
【0095】
同図において、001は平板形香り発生器である。100は液体香料吸蔵板、200はカバー板(上)、201はカバー板(下)、300は液体香料供給手段である。これらが001の主要部品であり、同図には下線を引いて示している。400は本香り発生器から発生される香り、500は熱源である。
【0096】
液体香料吸蔵板100は、網状線材を3枚重ねて構成されており、各々、A層、B層、C層としている。なお、本発明で、吸蔵とは、液体香料を蓄える意味として用いる。
【0097】
当該カバー板200、201には多数の空気穴202が設けられている。203は、カバー板(上)とカバー板(下)を接続するボルトである。カバー板201、201は、共に厚さが0.5mm〜2.0mm程度が望ましい。
【0098】
図6において、カバー板(上)200には、液体香料供給口302と供給口の蓋303が設けられている。蓋を開けて香料を供給する。
【0099】
液体香料供給手段300は、スポイトなどでも良いが、図6では、液体香料301の入った液体香料溜め304、当該液体香料301を吸い出してノズル307に送るポンプ305、当該ポンプを動作させる取っ手306、および、前記香料供給口302から構成されている。
【0100】
図7は、当該実施例の構成要素である網状線材の液体香料吸蔵板の上面図である。同図において、101は前記A層、C層に対応する網状線材であり、102は前記B層に対応する網状線材である。101および102は1mmあたり3本から50本の線材で同図のように格子状に編まれるが、B層に対応する102は、A層、C層に対応する101に比べて線幅が密で目が細かい。301は液体香料で網目に吸蔵された状態を示している。
【0101】
ここで、当該実施例の使用方法および香り発生原理について説明する。図6において、液体香料供給手段300の取っ手306を押すと、ポンプ305が作動し、適量の液体香料がノズル307から香料供給口302に供給され、液体香料吸蔵板100に吸収される。当該吸収された液体香料は、毛細管現象などによって液体香料吸蔵板内を平面状に拡散する。一点鎖線308は、当該液体香料吸蔵板内を拡散していく液体香料の拡散パスである。
【0102】
ここで、液体香料吸蔵板は、前記のように、網状線材A、B、C層から構成されるが、B層の密度が高いので、液体香料はより細い網目のB層に溜まろうとする。このように、液体香料はB層を中心にA層、C層に吸蔵される。なお、網状線材は細かければ細かいほど良いと言う訳ではなく、細か過ぎると、拡散速度が遅くなり、上記のような吸蔵が起きない場合がある。図7に示すように、1mmあたり3本から50本の線材で格子状に編むのが良い。
【0103】
液体香料は、図6の一点鎖線で示したように、拡散しているときは液体香料吸蔵板の線材周辺を流れる。従って、当該線材の網目は一時的に液体で満たされるが、液体の流れが止むと液体に加わる表面張力は不均一なため、液体香料の溜まりができる。この様子を図7の301に示す。網状格子に液体香料の溜まりができると、当該溜まりの周辺には微小空間ができ、空気が通過する通気孔となる。
【0104】
ここで、図6に示すように、当該平板形香り発生器001の近くに、熱源があると、温められた空気は、二点鎖線のような経路でカバー板(下)201の空気穴を通過し、液体香料吸蔵板100の前記通気孔を通過し、カバー板(上)200の空気穴202を通過して、香り400となって外に出る。なお、400は、液体香料吸蔵板100の中に蓄積された液体香料が当該吸蔵板を突き抜ける気流によって気化して、香りガスになる様子を示す気流パス(経路)である。以上が、本発明の香り発生器の基本的な動作である。
【0105】
次に、図7で示した網状線材を用いた液体香料吸蔵板において、液体香料を吸蔵する部分と空気が通過する部分(通気孔)をより確実に作る方法について述べる。
【0106】
図8は、網状線材の液体香料吸蔵板に通気孔を作るため撥水性材料を塗布した例である。同図(ア)の実線は撥水性材料を塗布してない線材を示し、破線は撥水性材料RCを塗布した線材を示す。同図(イ)は(ア)に液体香料を多量に吸蔵させたときの様子である。液体香料301は実線で示す線材の周辺に吸蔵され、破線で示す撥水性材料が塗布された線材の周辺には存在しない。つまり、実線で示す網状線材部分は、液体香料を吸蔵するための孔EssHを形成し、破線で示す網状線材部分は通気孔AirHを形成している。以上のようにして、液体香料吸蔵板の中に吸蔵部分と通気部分を分けて作ることができる。分けることによって、空気の通過特性は大幅に向上する。
【0107】
図9は、図6の構成要素であるカバー板200の拡大図である。同図では、カバー板の空気穴202が拡大して示してあり、当該空気穴の径は、当該カバー板の表面側202−1から裏面側202−2に向かって大きくなっている。このように、当該カバー板の表面側は空気穴の径が小さく、裏面側は大きい方が望ましい。また、表面側の当該空気穴の径d1は、0.2mm〜3.0mm程度が望ましい。
【0108】
当該空気穴の特徴的な形状の作用について説明する。先ず、本香り発生器001に手が触れた場合について説明する。図9において、カバー板の空気穴の径は、皮膚が触れる側(表面202−1)の方が小さい。従って、皮膚は、穴の中に大きく入り込むことはない。径d1が0.2mm〜3.0mm程度で、カバー板の厚さが0.5mm〜2.0mmであれば、通常の接触では皮膚は吸蔵板に達することはない。従って、手や皮膚に香料が付着し汚染されることはない。皮膚が香料で刺激されることが少ないので安全である。
【0109】
次に、図9において、裏面202−2の穴径が大きくなっている理由について説明する。カバー板の裏面は液体香料吸蔵板100と接触している。ここで、仮に、カバー板と液体香料吸蔵板との接触面積が大きいと液体香料が空気と触れる面積は少なくなり気化し難くなるが、本実施例では、カバー板裏面の穴径を大きくしているので、カバー板と液体香料吸蔵板との接触面積は小さく、液体香料が空気と触れる面積が大きくなっている。このため、液体香料は気化しやすい。
【0110】
図6のカバー板の断面構造図を用いて更に詳細に説明する。同図のように、カバー板の表面は空気穴の径が小さく、裏面は空気穴の径が大きい。従って、カバー板は液体香料吸蔵板と小さな面で接触している。このように、カバー板200、201と吸蔵板100との間に大きな空間ができているため、当該空間は気化した香りガスを蓄えることができる。ここで、当該空間を気流が通過すると、当該蓄えられた香りガスは、空気穴202から400の二点鎖線のように外に導かれる
【0111】
本発明では、液体香料吸蔵板に蓄えた液体香料がカバー板の空気穴から容易に漏れることはないが、その理由について説明する。図6において、液体香料吸蔵板100は3層構造になっており、内側のB層の目が、外側のA層、C層の目よりも細かい。一般に液体は毛細管現象によって、目の細かい方に拡散する力が働くため、液体香料は層の内側に留まろうとする。従って、液は外側には移動しにくく漏れ難い。
【0112】
更に、カバー板の空気穴からの液漏れをより完璧に防止するためには、図9において、カバー板の空気穴202の内部および液体香料吸蔵板100と接触する側の面をフッ素系樹脂などの撥水性材料RCでコーティングすることが望ましい。
【0113】
図10は、カバー板の空気孔をより単純な構造にして、当該空気穴の近傍に撥水性材料をコーティングした場合の作用を説明する図である。カバー板と液体香料吸蔵板の断面を示している。
【0114】
同図において、205はカバー板(下)、309は液体香料を示す。なお、空気穴は、図6の場合とは異なって、表面から裏面に向かって同じ大きさの場合を示している。同図(ウ)は、空気穴の周辺にコーティングのない場合、同図(エ)は、空気穴の周辺にフッ素系樹脂などの撥水性材料RCがコーティングされている場合である。205の周辺に破線で示した部分がRCをコーティングした部分である。
【0115】
液体香料吸蔵板100に吸蔵された液体香料が溢れ出ようとした場合、撥水性材料がコーティングされていない(ウ)のケースでは、香料309は空気穴の壁を伝って同図のように外に出てしまうことがあるが、撥水性材料RCをコーティングした(エ)のケースでは、空気穴部分の液体の表面張力が高くなるため、同図のように液体香料は半球状になり液体香料吸蔵板内に留まる。
【0116】
以上のように、本香り発生器001は、液体香料を薄い板状の液体香料吸蔵板に蓄えると共に、空気の通過を容易にしているため、香り発生効率は極めて高い。
【0117】
次に、各部品の構成素材について説明する。網状線材吸蔵板101、102は、液体香料によって化学変化が起きにくい素材が望ましく、具体的には、アルミニウム、ステンレス、カーボンファイバー、グラスファイバー、金合金、プラチナ合金などが適している。特にカーボンファイバーは、加熱することによって、遠赤外線を放出し、液体香料の気化を促進する作用がある。また、プラスチック、絹などを用いることも可能である。
【0118】
カバー板200、201は、液体香料で化学変化を起こさないだけでなく、軽く、変形自在で、美しいものが良い。具体的には、色硝子、カーボン、ステンレス、金合金、銀合金、銅合金などが適している。また、曲げに対する柔軟性のある素材として、プラスチックを用いることもできる。更に、フッ素系樹脂の薄い板に空気穴を形成してカバー板にしても良い。この場合、空気は通すが液体は通しにくい性質のカバー板が実現できる。
【0119】
液体香料としては、植物性香料、動物性香料、化学合成香料、および、これらを組み合せた調合香料が適用可能である。具体的には、植物性香料として、シトラス系、フルーティ系、グリーン系、フローラル系、ウッディ系、動物性香料として、ムスク系、アンバー系、シベット系、また、合成香料として、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ラクトン類、芳香族類などが適用できる。
【0120】
図11は、図6の香り発生器001において、液体香料吸蔵板100の他の実施例で、図11Aは、001の断面図、図11Bは、網状線材で構成された液体香料吸蔵板103、104の上面図、図11Cは、液体香料吸蔵板の断面拡大図で、図11Bの破線部分を紙面に垂直に切断したときの模式図である。図11Cにおいて、液体香料吸蔵板103(A層)は網目が比較的粗く、104(B層)は網目が細かい。
【0121】
図11Aにおいて、破線で示すRCは、カバー板200、201の空気穴の周辺にコーティングした撥水性材料を示している。全ての空気穴の周辺にコーティングを施すが、同図では、一箇所のみを示している。また、カバー板200、201と液体香料吸蔵板100の間の接合部は、電気溶接して両者を一体化してもよい。接着することにより、香り発生器としての扱いが容易になる。AKは発光ダイオードなどの発光手段、CHはフォトトランジスタなどの受光手段である。AKとCHは組み合わされてフォトカプラを構成している。
【0122】
図11Bにおいて、103は、液体香料吸蔵板100のA層、C層に対応する網状線材、104は、B層に対応する網状線材である。同図のように、103、104は、各々、網目が密の部分と疎の部分が交互になるように構成されているのが特徴である。また、104の網目の密な部分は、103の網目の密な部分に比べて、密度がより細かくなっている。
【0123】
103と104は、図11Cのように重ねられて液体香料吸蔵板を構成するが、網目の密部分の縦と横が交叉する領域EssHは、液体香料を吸蔵するための微小孔の集まり吸蔵孔を構成している。また、網目の疎部分の縦と横が交叉する領域AirHは、空気が通過する通気孔を構成している。このように液体香料吸蔵板の製造において、線間隔の密の部分と疎の部分を作ることによって、吸蔵部と通気部を作ることができる。
【0124】
当該液体香料吸蔵板100(A,B,C層)に液体香料を供給すると、香料は当該吸蔵板内を流れるが、流れが止んだ時点で、当該液体香料309は、網目の密な領域EssHに集中して蓄えられる。同状態を図11Cの断面拡大図で見ると、香料309は、網目の細かい部分に偏在し、その回りには空間が作られていることが分かる。当該空間が通気孔AirHである。
【0125】
図11Cにおいて、気流をカバー板(下)201から当てると、当該気流は二点鎖線のように、201の空気穴から入り、AirHを通過し、カバー板(上)200の空気穴202から抜ける。この際、香料309の一部は気化して前記気流に混入するので、二点鎖線のような経路で香り400となる。本実施例では、液体香料が網目の密な領域に偏在し、その周辺を気流が通過するので、液体香料が空気と触れる面積は極めて大きく気化しやすい。従って、香りを効率良く発生させることができる。
【0126】
ところで当然のことながら、液体香料吸蔵板100は、液体香料の最大吸蔵量が決まっており、これを超えて吸蔵することはできない。仮に、当該最大吸蔵量を超えて液体香料を供給した場合においては、カバー板に撥水性材料がコーティングしてあったとしても当該液体香料は溢れてしまう。
【0127】
図11Cにおいて、発光ダイオードなどの発光手段AKとフォトトランジスタなどの受光手段CHからなるホトカプラは、液体香料吸蔵板に液体香料を限度以上供給しないための監視手段である。AKの光軸が、CHの光軸とずれて構成されているのが特徴である。
【0128】
同図において、当該液体香料の液量の監視と供給制御は以下のようにして行われる。香料が網目の密な部分を一様に満たしていない場合には、発光手段AKから出た光は直進するため、CHには到達しない。一方、液体香料吸蔵板に蓄えられた液体香料の量が増え、網目の密な部分が一様に満たされてくると、図11CにTNで示すような光路が発生し、AKの光は受光手段CHに捉えられるようになる。
【0129】
ここで、CHの受光量と液体吸蔵量との関係を比較用データとして予め用意しておくと、CHの受光量から当該比較用データを参照して、その時点の吸蔵液量を検出できる。設定目標値と比較し、差分があって不足していると判断される場合には、香料の供給を継続することができる。また、当該受光量が設定目標値となった、あるいは、超えた場合には、液体の供給を止めるように制御することができる。なお、これらの制御は、図11には示していない制御回路を用いて行う。以上のように、CHの受光レベルで、吸蔵限界か否かを判断し、吸蔵限界を超える前に液体香料の供給を止めれば、液漏れは防止できる。
【0130】
図12は、液体香料吸蔵板の他の実施例である。網状線材の液体香料吸蔵板の上面図と、当該網状線材吸蔵板を3枚重畳した構成の拡大図を示している。
【0131】
同図において、105、106は、チェックパターン構造の網状線材液体香料吸蔵板である。実線の密の部分は多くの線材で構成された部分、疎の部分は線材がない、または、少ない部分を示している。通常は、これらを3枚ないし、5枚程度重ねて使用する。
【0132】
この際、同図のように、層の中心部に密度の高い液体香料吸蔵板を配置することが望ましい。図12の線材密度が高い部分は、液体香料を吸蔵するための吸蔵孔EssHが多数形成され、線材密度の少ない疎の部分は、空気が通過しやすい通気孔AirHが形成されている。また、105S、106Sは、吸蔵板を重ねる際に、隙間が生じるようにするためのスペーサである。
【0133】
当該チェックパターン構造の網状線材液体香料吸蔵板は、ステンレスや貴金属の薄板からパターン印刷技術とエッチング技術を用いて製造される。即ち、パターン印刷技術を用いて線が必要な部分には非溶解塗料を塗布した後、当該金属板を溶解する液に漬け、エッチングによって、当該非溶解塗料が塗られていない不要な部分を溶解して削除する。更に、最後に前記非溶解塗料を取り除けば、当該構造の液体香料吸蔵板が得られる。
【0134】
あるいは、金型を用い樹脂やカーボン材を成形して作ることも可能である。前記エッチング技術や当該成形技術を用いることで、複雑な網目パターンの液体香料吸蔵板を得ることができる。この設計では、できるだけ多量の液体香料を吸蔵し、かつ、液体香料と空気との接触面をできるだけ大きくし、気化しやすくするのが望ましい。
【実施例6】
【0135】
図13は、多孔質素材の液体香料吸蔵板を用いた平板形香り発生器の実施例である。同図において、002は平板形香り発生器、107は、多孔質素材を用いた液体香料吸蔵板、200はカバー板(上)、201はカバー板(下)、303は液体供給口に設けた蓋、107のEssHは多孔質素材である107自体が備えている液体を吸蔵するための吸蔵孔、AirHは107に形成した空気を通過させるための通気孔である。香り発生の様子を二点鎖線で示す。一方のカバー板の空気穴から入った空気が、液体香料吸蔵板を通過する際に香料が混じり、他方のカバー板を出る際に香りとなって放出される。
【0136】
AKは発光ダイオードなどの発光手段、CHはフォトトランジスタなどの受光手段で、両者はフォトカプラを構成している。225はAKを取り付けるためのセンサ口、TN1はAKの光が入射する部分、TN2は当該光をCHに出射する部分で、TN1とTN2は光の経路を示す。
【0137】
図14は当該多孔質素材の液体香料吸蔵板の上面図である。同図において、301は液体香料、302は香料供給口、310の一点鎖線は多孔質素材吸蔵板内を液体香料が拡散する様子を示す香料の拡散パス例である。
【0138】
本香り発生器の動作を説明する。図13において、液体香料は、液体供給口の蓋303を開けて供給口から供給される。当該液体香料は107内を、図14に示すように、面方向に拡散する。拡散中は、EssH、AirHが液で満たされることもあるが、液が拡散した後において、香料はEssHの部分に主に吸蔵され、AirHの部分にはあまり残らない。つまり、EssHに吸蔵された液体香料の周辺には、空気が通過する穴AirHが発生する。
【0139】
ここで、図13において、カバー板201に気流を当てると、気流の一部は、空気穴から入り、AirHを通って、カバー板200の空気穴202から出る。この際、EssHに吸蔵された液体香料が当該気流によって気化し、濃度の高い香りとなって202から出る。
【0140】
次に、液体香料吸蔵板の液体香料の吸蔵量を監視する仕組みについて説明する。図13において、107に液体香料が吸蔵されていない状態では、TN1からTN2に至る経路が、同図のように曲がっているため、AKの光は、CHに届かない。一方、吸蔵板107のEssHが液体香料によってある程度満たされてくると、TN1からTN2に至る経路にも当該液体香料が入るため、光路が生じ、AKの光は、TN1、TN2を通りCHで受光される。
【0141】
受光レベルで吸蔵されている液体の量が推定できる。また、受光レベルが予め設定している値を超えた場合に、香料の供給を中止するように制御することによって、最大吸蔵量を超えて液体香料が107から溢れることはなく、また、当該液体香料が香り発生器から漏れることはない。
【実施例7】
【0142】
図15は、平板形香り発生器の他の実施例で、カバー板の空気穴を特殊な形状にしたものである。同図において、206はカバー板(上)、207はカバー板(下)、208は空気穴、100は液体香料吸蔵板である。カバー板と液体香料吸蔵板は接合部が電気溶接されている。二点鎖線は香り発生の様子である。
【0143】
同図には、空気穴208の拡大構造を合わせて示している。当該空気穴208において、カバー板の表面と裏面の穴の径を比較すると、前図までの例と同様、裏面の方が大きいが、表面から裏面に向かって単調に大きくなっているのではなく、穴の径は、表面から裏面に向かって、一旦小さくなり、途中から再び大きくなって、裏面では最も大きな穴径になっている。
【0144】
この空気穴の構造は、穴の径を表面から裏面に向かって単調に大きくする場合に比べて、空気の通過量を大きくできるので、香りの発生効率が高い。また、手がカバー板の表面に触れた場合、皮膚は穴が狭くなっている部分より奥に入ることはないため、当該皮膚が吸蔵板に触れて、皮膚が香料によって刺激されると言ったトラブルは回避できる。
【実施例8】
【0145】
図16は、平板形香り発生器の他の実施例で、カバー板209の空気穴を特殊な形状にしたものである。図16Aはカバー板209の表側面、即ち、手が触れる側の面、図16Bは209の裏側面、即ち、液体香料吸蔵板と接触する側の面、図16Cはカバー板と液体香料吸蔵板の断面図である。
【0146】
同図において、210は空気穴、303は香料供給口の蓋である。この実施例の特徴は、カバー板の裏側面209−2の空気穴210の穴径が、隣接する穴と重なる程度に大きいことである。なお、カバー板の表側面209−1の穴径は、図9に示したカバー板200の表側面の穴径と同様である。
【0147】
図16のカバー板の特徴について説明する。図16Cから分かるように、カバー板209と液体香料吸蔵板100との接触面積が小さいので、気流401は二点鎖線のように、1枚のカバー板の空気穴から入り、当該カバー板の他の空気穴から出ることを可能にしている。また、同図には示していないが、100の下にもう1枚のカバー板を配置することができ、気流を一方のカバー板の空気穴から入れ、液体香料吸蔵板の通気孔を通し、他方のカバー板の空気穴から取り出すことができるのは当然である
【0148】
即ち、本香り発生器では、気流は当該香り発生器の厚さ方向にも、面方向にも通過することができる。このように、多様な気流が通過できる構造を有するため、液体香料吸蔵板で気化した香料ガスを効率良く外に導くことが可能である。このような構造のカバー板を持つ本香り発生器は、前記の図2、図4の香り発生装置に適している
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の香り発生装置には、以下のような特徴がある。
(1)板状の香り発生器を用い、当該板の縦方向または横方向に瞬間的に気流を通過させることにより、カバー板と液体香料吸蔵板との間に一時的に溜まる香りを固まりとして効率よく放出できる。特に、空気砲を用いた場合には、香料を拡散させずに、利用者の嗅覚器付近に届けることができるため、嗅覚特性は極めてよい。また、任意の空間に選択的に高い濃度の香りのガス玉を送ることができる
【0150】
(2)前記香り発生器は、加熱すると液体香料の気化が促進されるので、香り発生効率を更に高くできる。
【0151】
(3)前記香り発生器は、液体香料吸蔵領域を分割し、当該分割された領域を選択的に加熱することができる。香りを切り替える、または、調合することができる。
【0152】
(4)前記香り発生器は、カバー板に触れても、空気穴を付き抜けて皮膚が吸蔵板に触れることはないため、通常の取り扱いで、液体香料が手について汚れることはない。従って、アレルギー疾患などにより、皮膚や衣類に直接液体香料を付けることができないが、香りを楽しみたいと言う利用者には最適である。
【0153】
(8)前記香り発生器が汚れた場合には、カバー板の空気穴に水圧を与えると、水はカバー板および液体香料吸蔵板を通過するので、洗浄は容易である。煮沸や超音波洗浄機にかけることも当然可能である。メンテナンスは容易である。
【0154】
(9)マイコンで制御することによって、様々な種類の香りを様々な濃度で発生させることができる。
【0155】
従って、次のような産業上の利用が可能である。家庭用の香り発生装置、映画や音楽に香りを付ける装置、香りが出る照明装置、ヘアードライアー、エアコン、扇風機、花粉症や流行感冒の予防装置。液体香料として、ユーカリ、ペパーミントを用いると、花粉症の人には、香りを利用して生理的な辛い症状の緩和が可能である。
【0156】
また、人の嗅覚飽和特性を踏まえて、間欠駆動できるので、人に優しく飽きることのない香り発生装置が実現できる。
【0157】
間欠駆動なので、消費電力は極めて少なく、USB端子から得られる電力を利用して動作させることができる。従って、パソコンに接続するなど、様々な情報家電と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】本発明の香り発生装置の第1の実施例である。断面概観図を示す。平板形香り発生器を用いている。
【図2】本発明の第2の実施例である。円筒形香り発生器を用いている。
【図3】前記円筒形香り発生器の構造を説明する図で、液体香料吸蔵板には、発熱性網状線材を用いている。
【図4】本発明の第3の実施例である。他の円筒形香り発生器を用いている。
【図5】本発明の第4の実施例である。香り発生装置の制御方法を示している。
【図6】本発明の第5の実施例である。香り発生装置に使用する平板形香り発生器の構造を示している。液体香料吸蔵板に網状素材を使用している。
【図7】香り発生器に使用する網状素材を用いた液体香料吸蔵板の例である。
【図8】香り発生器に使用する網状素材を用いた液体香料吸蔵板の他の例である。
【図9】香り発生器に使用するカバー板の例である。空気穴を示している。
【図10】香り発生器に使用するカバー板に撥水性材料をコーティングした場合の効果を説明する図である。
【図11】香り発生装置に使用する香り発生器の他の構造を示している。
【図12】香り発生器に使用する特殊網状素材を用いた液体香料吸蔵板の例である。
【図13】本発明の第6の実施例である。香り発生装置に使用する香り発生器の他の構造を示している。液体香料吸蔵板に多孔質素材を使用している。
【図14】前記多孔質素材を使用した液体香料吸蔵板の中の香料の流れを示している。
【図15】本発明の第7の実施例である。香り発生装置に使用する香り発生器の他の構造を示している。カバー板の空気穴が特殊形状を成す。
【図16】本発明の第8の実施例である。香り発生装置に使用する香り発生器の他の構造を示している。カバー板の空気穴が特殊形状を成す。
【符号の説明】
【0159】
001、002、007・・・平板形香り発生器
010、011・・・円筒形香り発生器
100、113、114、115・・・液体香料吸蔵板
107・・・・・・・多孔質素材で構成された液体香料吸蔵板
109・・・・・・・液体香料仕切り部
101、102、103、104、105、106・・・網状線材の液体香料吸蔵板
106s・・・・・・ストッパ
107・・・・・・・多孔質素材の液体香料吸蔵板
200、201、205、206、207、209、226、227・・・カバー板
202、208、210・・・空気穴
203・・・・・・・ボルト(螺子)
225・・・・・・・センサ取り付け口
300・・・・・・・液体香料供給手段
301、309・・・液体香料
302・・・・・・・香料供給口
303・・・・・・・蓋
304・・・・・・・香料溜め
305・・・・・・・液体ポンプ
306・・・・・・・取っ手
307・・・・・・・液体ノズル
308、310・・・香料の拡散パス
325・・・・・・・香料溜め
326・・・・・・・液体ポンプ
327・・・・・・・液体搬送パイプ
400・・・・・・・香り
401・・・・・・・気流
400B・・・・・・香り玉
500・・・・・・・熱源
505・・・・・・・ヒータ
506・・・・・・・超音波振動子
514・・・・・・・瞬間気流発生手段
515・・・・・・・エアーポンプ
516・・・・・・・駆動部
517・・・・・・・エアーポンプ駆動板
518・・・・・・・開口部
519・・・・・・・駆動コイル
520・・・・・・・通電手段
AirH・・・・・・通気孔
AK・・・・・・・・発光手段
BA・・・・・・・・電源
CH・・・・・・・・受光手段
EssH・・・・・・吸蔵孔
Fe・・・・・・・・鉄心
GD・・・・・・・・接地
RC・・・・・・・・撥水性材料
SW・・・・・・・・スイッチ
TN・・・・・・・・光路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料を吸収し蓄えるとともに空気を通過させる網状線材または多孔質素材で構成された香料吸蔵板と、当該香料吸蔵板に接するように設けられた複数の空気穴を有するカバー板とから構成される香り発生器を用い、当該香り発生器に縦方向または横方向の気流を瞬間的に当てることにより、気化した前記香料を固まりとして放出することを特徴とする香り発生装置
【請求項2】
請求項1において、前記香り発生器を構成する香料吸蔵板の空気通過部とカバー板の空気穴は、縦方向または横方向に瞬間的に気流を通過せしめるように構成されることを特徴とする香り発生装置
【請求項3】
請求項1において、前記香り発生器に縦方向または横方向の気流を瞬間的に当てる手段として、砲筒の気圧を瞬間的に高め空気を環状の固まりとして放出する空気砲を用いることを特徴とする香り発生装置
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記香り発生器を加熱する手段を備え、当該加熱手段は、縦方向または横方向に瞬間的に気流を通過せしめる空気穴を多数有することを特徴とする香り発生装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−651(P2007−651A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244366(P2006−244366)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【分割の表示】特願2002−329005(P2002−329005)の分割
【原出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(301006231)
【出願人】(301035426)
【Fターム(参考)】