説明

香料化合物および該香料化合物を含有する香料組成物

【課題】フレッシュな果実感の強調された、天然感あふれる香りを再現することができる新規香料化合物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、6,10−ウンデカジエン−3−オンおよび6,8−ウンデカジエン−3−オンなどのトリ、ジまたはモノエノン化合物はドライウッディ調を伴う天然感、フレッシュ感あふれる果実様香気・香味および優れた持続性を有しており、これを配合した香料組成物は、飲食品、香粧品及び医薬品等の賦香用香料として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料化合物として有用なトリ、ジまたはモノエノン化合物および該化合物を有効成分として含有する新規な香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガルバナム精油の香気成分に関しては、従来より多くの報告例が存在し、その特徴的な香気に興味がもたれている。ガルバナム精油は、バルサミックな樹皮様香気を基調としたドライウッディ調を伴う新鮮なグリーンノートを持っており、主にフレグランス用途において天然のグリーンノート素材として重要な位置を占めている。
【0003】
ガルバナム精油の香気成分は、β−ピネン、Δ−カレン、α−ピネン、d−リモネン、1,3,5−ウンデカトリエンなどの炭化水素類が主香気成分として占めており、その他の成分としては、ピラジン類、チオカルボン酸類、エステル類が知られている。また、ガルバナム アブソリュートの特徴成分としては、12−トリデカノライド、13−テトラデカノライド、14−ペンタデカノライドが見出されている(非特許文献1)。また、ガルバナム精油からは、多不飽和化合物が重要な香気成分として見出されており、例えば、ガルバナムからの(3Z,5Z)−1,3,5−ウンデカトリエンおよび(3E,5Z)−1,3,5−ウンデカトリエンの存在の報告(非特許文献2)、その合成法(特許文献1)、などが挙げられる。
【0004】
これら多不飽和化合物は優れた香気を有しており、例えば、ウンデカトリエンの香気特性として、花様、例えば、ヒヤシンス、すみれ、水仙、ラベンダー、クチナシを想起させる香りで、その底に葉の香りが天然と類似した性質を発現または強化すると記載されている(特許文献1)。また、1,3,5,7−ウンデカテトラエンの香気特性は土壌及び樹木様の香気(特許文献2)と記載されている。
【0005】
【非特許文献1】特許庁公報 周知慣用技術集 香料 第III部 香粧品用香料 P32−33
【非特許文献2】Recherches,16(1967),5
【特許文献1】特開昭50−32105号公報
【特許文献2】特開昭59−42326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年消費者の嗜好性の多様化により、飲食品、香粧品等に使用する香料においても天然感、フレッシュ感あふれる素材が求められており、従来の香料物質を組み合わせることではその要求に十分対応しきれないのが現状である。したがって、本発明の目的は、天然感、フレッシュ感あふれる香りを再現することができる新規香料化合物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ガルバナム精油の興味深い香気に着目し、新たな微量香気成分の探索を行った。その結果、先に、文献未記載の新規物質である6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン(特許第4057639号)および6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン(特許第4057640号)を見出し、さらに該化合物がドライウッディ調を伴うグリーンノートを有しているばかりでなく、甘く、天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気を有していることを見出し特許出願し登録された。また、本発明者らは前記多不飽和化合物やその類縁化合物が優れた香気特性を有することに鑑み、多不飽和化合物誘導体を合成検討していたところ、6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン(特許第4057638号)もまた優れた香気特性を有し、その香気がフレッシュな果実感の強調された、天然感あふれる香りを有することを見出し特許出願し登録された。さらにまた、8,9−エポキシウンデカ−1,3,5−トリエンもまた優れた香気特性を有し、その香気がドライウッディ調を伴う天然感、フレッシュ感あふれる、果実様香気を有することを見出し特許出願した(特願2008−174411)。
【0008】
本発明者らは前記多不飽和化合物やその類縁化合物が優れた香気特性を有することに鑑み、さらに、多不飽和化合物誘導体を合成検討していたところ、今回、下記式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、点線は単結合または二重結合を示し、nは0〜2の整数を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を示す(ただし6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを除く))
で表されるトリ、ジまたはモノエノン化合物が優れた香気特性を有し、その香気がフレッシュな果実感の強調された天然感あふれる香りを有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
かくして、本発明は
下記式(1)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、点線は単結合または二重結合を示し、nは0〜2の整数を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を示す(ただし6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを除く))
で表されるトリ、ジまたはモノエノン化合物からなる香料を提供するものである。
【0014】
本発明は、また、下記式(1)
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、点線は単結合または二重結合を示し、nは0〜2の整数を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を示す(ただし6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを除く))
で表されるトリ、ジまたはモノエノン化合物を有効成分として含有することを特徴とする香料組成物を提供するものである。
本発明は、また、下記式(2)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される7,9,11−ドデカトリエン−4−オンを提供するものである。
本発明は、また、下記式(3)
【0019】
【化5】

【0020】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される6,10−ウンデカジエン−3−オンを提供するものである。
本発明は、さらに、下記式(4)
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される6,8−ウンデカジエン−3−オンを提供するものである。
【0023】
なお、本発明の式(2)、(3)および(4)の化合物は従来文献未記載の新規化合物であり、前記提案等には記載されておらず、ましてや該化合物の香気香味ならびに該化合物が調合香料の素材として有用であることなどは、示唆も言及もされていない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の式(1)の化合物は、フレッシュな果実感の強調された天然感あふれる香りを有しており、該化合物は、飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品などに用いる香料組成物の調合素材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の化合物、その製造方法および香料組成物としての用途について、さらに詳細に説明する。
【0026】
式(1)の具体的化合物としては、8,10,12−トリデカトリエン−5−オン、7,9,11−ドデカトリエン−3−オン、式(2)で表される7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、式(3)で表される6,10−ウンデカジエン−3−オン、式(4)で表される6,8−ウンデカジエン−3−オン、6−ウンデセン−3−オン、5,7,9−デカトリエン−2−オン、5,7,9−デカトリエン−3−オンなどが挙げられる。
【0027】
本発明の化合物である式(2)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オンは次の反応経路1に従って合成することができる。

【0028】
【化7】

【0029】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
また、本発明の化合物である式(3)の6,10−ウンデカジエン−3−オンは次の反応経路2に従って合成することができる。
【0030】
【化8】

【0031】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
また、本発明の化合物である式(4)の6,8−ウンデカトリエン−3−オンは次の反応経路3に従って合成することができる。
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
ここで、用語「アリール基」としては、例えば、各々場合により置換されていてもよいフェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられ、好ましくはフェニル基である。
【0034】
用語「アルキル基」は、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、1−メチルエチル基、n−ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルエチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などが挙げられる。
【0035】
Xが示す特に好ましいハロゲン原子としては、Cl、Br、Iが挙げられる。
【0036】
式(6)のホスホニウム塩と式(5)のラクトールとのウィッティヒ反応、式(7)のホスホナートと式(5)のラクトールとのホーナー−エモンズ反応、式(10)のホスホニウム塩と式(9)のアルデヒドとのウィッティヒ反応、式(11)のホスホナートと式(9)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応、式(12)のホスホニウム塩と式(9)のアルデヒドとのウィッティヒ反応または式(13)のホスホナートと式(9)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応は、文献(例えば、新実験化学講座14有機化合物の合成と反応[I]P224−243参照)に記載されているこれらの反応に典型的な条件下で実施することができる。
【0037】
式(6)のホスホニウム塩と式(5)のラクトールとのウィッティヒ反応、式(10)のホスホニウム塩と式(9)のアルデヒドとのウィッティヒ反応または式(12)のホスホニウム塩と式(9)のアルデヒドとのウィッティヒ反応は、不活性有機溶媒中で塩基の存在下に行うことができ、有機溶媒としては、例えば、エーテル(例:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ハロゲン化炭化水素(例:ジクロロメタン、クロロホルムなど)、芳香族炭化水素(例:ベンゼン、トルエン、キシレンなど)または極性溶媒(例:ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルなど)が挙げられ、特にトルエン、テトラヒドロフラン,ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が好適である。
【0038】
上記塩基としては、ウィッティヒ反応に通常用いられる塩基がいずれも使用することができ、例えば、アルカリ金属水酸化物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、アルカリ金属水素化物(例:水素化ナトリウム、水素化カリウムなど)、有機リチウム化合物(n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウムなど)、アルカリ金属アミド(例:リチウムアミド、カリウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミドなど)、アルカリ金属ヘキサメチルジシラジド、アルカリ金属アルコラート(例:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)が挙げられ、これらの塩基の使用量は、式(6)、(10)または(12)のホスホニウム塩に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量の範囲内とすることができる。
【0039】
また、式(6)のホスホニウム塩に対する式(5)のラクトールの使用量、式(10)のホスホニウム塩に対する式(9)のアルデヒドの使用量、または、式(12)のホスホニウム塩に対する式(9)のアルデヒドの使用量は、それぞれホスホニウム塩に対して、通常0.8〜5当量、好ましくは1〜3当量の範囲内とすることができる。
【0040】
上記ウィッティヒ反応は、反応温度としては、通常、−78〜60℃、好ましくは、−10〜25℃の範囲で、反応時間としては、通常0.5〜24時間、好ましくは0.5〜2時間の範囲で行うことができる。
【0041】
式(7)のホスホナートと式(5)のラクトールとのホーナー−エモンズ反応、式(11)のホスホナートと式(9)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応または式(13)のホスホナートと式(9)のアルデヒドとのホーナー−エモンズ反応は、上記の式(6)のホスホニウム塩と式(5)のラクトールとのウィッティヒ反応、式(10)のホスホニウム塩と式(9)のアルデヒドとのウィッティヒ反応または式(12)のホスホニウム塩と式(9)のアルデヒドとのウィッティヒ反応の場合と同様にして行うことができる。
【0042】
かくして、用いる反応条件により、波線の結合におけるシス:トランス比が一般に10:1〜1:10の範囲内にある式(8)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オールまたは式(3)の6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは式(4)の6,8−ウンデカジエン−3−オンが幾何異性体混合物の形態で得られる。
【0043】
上記の如くして得られる式(8)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オールの酸化による式(2)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オンの生成反応は、2級アルコールをケトンに変換させるためのそれ自体既知の条件下で実施することができる。具体的には、該酸化は、例えば、文献(例えば、新実験化学講座15酸化と還元[I−1] P108−123参照)に記載されている酸化クロム(VI)―希硫酸による酸化、Jones酸化、酸化クロム(VI)−ピリジン錯体による酸化(Sarret酸化、Collins酸化)、ピリジニウムクロロクロメート(PCC)酸化、ピリジニウムジクロメート(PDC)酸化;文献(例えば、新実験化学講座15酸化と還元[I−2] P870−873参照)に記載されているOppenauer酸化;文献(例えば、J.Org.Chem.,48(1983),4155参照)に記載されているDess−Martin酸化;文献(例えば、J.Am.Chem.Soc.,122(2000),7596参照)に記載されているo−ヨードキシ安息香酸(IBX)による酸化;文献(例えば、Synthesis,(1994),639参照)に記載されているテトラプロピルアンモニウムペルルテナート(TPAP)による酸化などにより行うことができる。特に、Dess−Martin酸化、IBXによる酸化、TPAPによる酸化が好ましい。
【0044】
式(6)のホスホニウム塩または式(7)のホスホナートはそれ自体既知の物であり、特許第4057639号に記載の方法に従って合成することができる。
【0045】
式(5)のラクトールの合成:
出発原料として使用される式(5)のラクトールは、例えば、以下の反応経路4に従って合成することができる(文献:新実験化学講座15酸化と還元[II] P98参照)。
【0046】
【化10】

【0047】
容易に入手し得る式(14)のγ−ヘプタラクトンを、不活性ガス雰囲気下に、例えば、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)などの還元剤を用い、トルエン、ヘキサンなどの不活性有機溶媒中にて還元反応させることにより、式(5)のラクトールを得ることができる。
【0048】
式(10)および式(12)のホスホニウム塩または式(11)および式(13)のホスホナートは、文献(ORGANIC REACTIONS,VOLUME 14,388−393参照)に記載の方法に従って合成してもよく、例として、反応経路5,反応経路6を挙げることができる。
【0049】
【化11】

【0050】
(式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
容易に入手し得る式(15)のハロゲン化物1モルを1〜5当量のホスフィン[P(R]または亜りん酸エステル[P(OR]と常法により反応させることにより、式(11)のホスホニウム塩または式(12)のホスホナートを得ることができる。
【0051】
【化12】

【0052】
(式中、Rはアリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基もしくはアリール基を示す)
容易に入手し得る式(16)の2−ペンテン−1−オールを文献(例えば、新実験化学講座14有機化合物の合成と反応[1] P361−369参照)に記載の方法によりハロゲン化して得られる式(17)のハロゲン化物1モルを1〜5当量のホスフィン[P(R]または亜りん酸エステル[P(OR]と常法により反応させることにより、式(12)のホスホニウム塩または式(13)のホスホナートを得ることができる。
【0053】
また、式(1)で表される式(2)、式(3)、式(4)以外の化合物も、上記とほぼ同様の方法にしたがって合成することができる。
【0054】
式(2)、式(3)および式(4)の化合物は、前記式(2)、式(3)および式(4)における波線で示す部分の結合がシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物のいずれであっても、フレッシュな果実感の強調された天然感あふれる香気・香味特性を有している。したがって、本発明の式(1)、式(2)、式(3)および式(4)の化合物は、波線で示す部分の幾何学的配置にかかわりなく香料組成物において使用することができる。
【0055】
式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を香料組成物に配合する場合、その配合量は、配合の目的や香料組成物の種類などによって異なるが、香料組成物の重量を基準にして、通常の0.00001〜10重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の範囲内とすることができる。
【0056】
かくして、本発明の式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物は、例えば、果物(例:ストロベリー、ブルーベリー、ラズベリー、アップル、チェリー、プラム、アプリコット、ピーチ、パイナップル、バナナ、メロン、マンゴー、パパイヤ、キウイ、ペアー、グレープ、マスカット、巨峰など)、柑橘類(例:レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ライム、マンダリンなど)、和柑橘類(例:みかん、カボス、スダチ、ハッサク、イヨカン、ユズ、シークワーサー、金柑など)、茶類(例:紅茶、ウーロン茶、緑茶など)などの香料組成物に式(1)の化合物を上記の添加量で添加することにより、香料組成物にフレッシュで天然らしさのある果実感を賦与・強調することができる。また、ベルガモット調、ゼラニウム調、ローズ調、ブーケ調、ヒヤシンス調、ラン調、フローラル調などの調合香料に式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を上記の量で添加することにより、その香気の特徴をより強調することができ、天然感にあふれた香りを再現することができる。
【0057】
さらに、本発明によれば、式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類などに配合することにより、式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を香気・香味成分として含有する飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類などを提供することができる。
【0058】
例えば、炭酸飲料、果汁飲料、果実酒飲料類、乳飲料などの飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類などの冷菓類;和・洋菓子、チューインガム類、パン類、コーヒー、紅茶、お茶、タバコなどの嗜好品類;和風スープ類、洋風スープ類などのスープ類;ハム、ソーセージなどの畜肉加工品;風味調味料、各種インスタント飲料ないし食品類、各種のスナック類などに、式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を有効成分として含有する香料組成物の適当量を添加することにより、そのユニークな香気・香味が賦与された飲食品類を提供することができる。また、例えば、シャンプー類、ヘアクリーム類、その他の毛髪化粧料基剤;オシロイ、口紅、その他の化粧用基剤や化粧用洗剤類基剤などに、式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を適当量添加することにより、そのユニークな香気が賦与された化粧品類を提供することができる。さらにまた、式(1)、式(2)、式(3)または式(4)の化合物を有効成分として含有する香料組成物を例えば、洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、防臭洗剤類、その他各種の保健・衛生用洗剤類;歯磨き、ティシュ、トイレットペーパーなどに適当量配合することにより、そのユニークな香気が賦与された各種保健・衛生材料類;医薬品類などを提供することができる。
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0060】
実施例1
下記の一連の反応式に従って式(2)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0061】
【化13】

【0062】
工程1:式(5)のラクトールの合成
窒素雰囲気下で、500mLフラスコに式(12)のγ−ヘプタラクトン30.0g(234mmol)およびトルエン90mLを仕込み、−68℃まで冷却し、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL)の0.99Mトルエン溶液260mL(257mmol)を1.5時間かけて滴下した。そのままの温度で1時間撹拌し、反応溶液を5℃に冷やした5%シュウ酸水溶液に注ぎ、そのまま1.5時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮を行った。得られた残渣(32.1g)を減圧下蒸留(〜67℃/0.4kPa)し、式(5)のラクトール20.4g(純度83.7%,収率67%)を得た。
【0063】
工程2:式(8)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オールの合成
窒素雰囲気下で、100mLフラスコに式(5)のラクトール3.00g(19.3mmol,純度83.7%)と式(18)のホスホニウム塩8.68g(21.2mmol)とジメチルホルムアミド(DMF)20mLを仕込み、氷水で冷却しながら、ナトリウムメトキサイド(NaOMe)の28%メタノール溶液3.92gを30分かけて滴下した。そのままの温度で1時間撹拌し、反応溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液に注ぎ、さらに水を加え撹拌した。析出した結晶を濾別し、結晶をヘキサンで洗浄し、洗浄したヘキサンで濾液を抽出した。有機層を合わせ水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=50:1〜20:1)、式(8)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オール2.35g(純度87.1%,収率68%)を得た。
【0064】
工程3:式(2)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オンの合成
50mLフラスコに式(8)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オール1.50g(8.32mmol)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)15mL、IBX3.26g(11.65mmol)を順次仕込み、室温で撹拌した。4時間後、反応溶液を水に注ぎ、析出した結晶を濾過した。濾過した結晶を酢酸エチルで洗浄し、洗浄に用いた酢酸エチルで水層を抽出した。有機層を合わせて、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=100:1)、さらに減圧蒸留し(〜190℃,0.20kPa)、式(2)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オン0.841g(収率57%)を得た。
【0065】
式(2)の7,9,11−ドデカトリエン−4−オンの物性
7位の幾何異性体比:E:Z=1:1
H−NMR(7位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 0.89(3H,t,J=7.2),1.58(2H,sex,J=7.2),2.36(2H,t,J=7.2),2.44−2.51(4H,m),5.03,5.07(total 1H,each d,J=10.0,J=10.0),5.15,5.19(total 1H,each d,J=16.8,J=16.8),5.39,5.67(total 1H,each dt,J=7.2,10.4,J=7.2,14.8),5.97−6.51(4H,m).
13C−NMR(7位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 13.7,17.2,22.2,26.9,42.1,42.3,44.8,116.7,117.3,128.1,129.2,130.9,131.7,133.0,133.61,133.63,136.9,137.0,210.1,210.2.
MS(m/z):27(11),41(32),43(91),53(9),65(14),71(100),77(41),79(31),91(62),92(59),107(13),117(8),135(5),178(M,29)
【0066】
実施例2
下記の一連の反応式に従って式(3)の6,10−ウンデカジエン−3−オンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0067】
【化14】

【0068】
工程1:式(20)のホスホニウム塩の合成
フラスコに式(19)の5−ブロモ−1−ペンテン25.0g(168mmol)、トリフェニルホスフィン36.7g(140mmol)およびトルエン50gを仕込み、加熱還流しながら7時間撹拌した。室温まで冷却してから結晶を濾過し、得られた結晶をトルエンで洗浄し、真空乾燥して式(20)のホスホニウム塩38.4g(67%)を得た。
【0069】
工程2:式(3)の6,10−ウンデカジエン−3−オンの合成
窒素雰囲気下で、30mLフラスコに式(20)のホスホニウム塩3.97g(9.64mmol)および乾燥テトラヒドロフラン(THF)10mLを仕込み、氷水で冷却しながらn−ブチルリチウム(n−BuLi)のヘキサン溶液(濃度1.66M)5.5mL(n−BuLiとして9.13mmol)を5分間かけて滴下し、そのまま10分撹拌してイリドを調製した。別途用意した50mLフラスコに式(9)の4−オキソヘキサナール1.00g(8.76mmol)と乾燥THF10mLを仕込み、−78℃まで冷却し、調製したイリドを20分かけて滴下した。滴下終了後、−78℃で1時間撹拌し、反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。析出した結晶を濾別し、濾液をヘキサンで抽出し、有機層を水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮を行って、得られた残渣(1.51g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=100:1)、式(3)の6,10−ウンデカジエン−3−オン0.807g(収率55%)を得た。
【0070】
式(3)の6,10−ウンデカジエン−3−オンの物性
H−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 1.026,1.031(total 3H,each t,J=7.2,J=7.2),2.06−2.13(4H,m),2.29(2H,q,J=7.2),2.40(2H,dt,J=7.2,8.0),2.42(2H,dt,J=7.2,8.0),4.94(1H,dd,J=0.8,10.0),4.99(1H,dd,J=1.6,17.2),5.28−5.42(2H,m),5.78(1H,ddt,J=6.4,10.0,17.2).
13C−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 7.8,21.8,26.6,26.9,31.9,33.6,33.7,36.0,42.2,114.5,114.7,128.3,128.9,130.1,130.5,138.2,211.0.
MS(m/z):29(16),41(14),57(100),67(15),79(13),94(14),125(5),137(2),166(M,0.4)。
【0071】
実施例3
下記の一連の反応式にしたがって式(4)の6,8−ウンデカジエン−3−オンを合成した。なお、工程番号の下のカッコ内の百分率は各工程の収率を示す。
【0072】
【化15】

【0073】
工程1:式(21)のホスホニウム塩の合成
フラスコに式(16)の2−ペンテン−1−オール12.5g(145mmol)、塩化メチレン(CHCl)40mLおよびピリジン3.3g(41.7mmol)を仕込み、−20℃で三臭化リン(PBr)19.6g(72.4mmol)の塩化メチレン溶液(50mL)を30分かけて滴下し、そのままの温度で40分撹拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液、2N塩酸水溶液、飽和炭酸ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮を行って得られた残渣(21.9g)を500mLフラスコに仕込み、トルエン(200mL)とトリフェニルホスフィン41.8g(159mmol)を加え、室温で終夜撹拌した。析出した結晶を濾過し、得られた結晶をトルエンで洗浄後、真空乾燥して式(21)のホスホニウム塩34.7g(収率58%)を得た。
【0074】
工程2::式(4)の6,8−ウンデカジエン−3−オンの合成
窒素ガス雰囲気下で、100mLフラスコに式(9)の4−オキソヘキサナール1.00g(8.76mmol)、式(21)のホスホニウム塩3.97g(9.64mmol)およびジメチルホルムアミド10mLを仕込み、氷浴で冷却しナトリウムメトキサイド(NaOMe)の28%メタノール溶液1.69gを30分かけて滴下した。徐々に室温まで昇温しながら終夜撹拌し、反応溶液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた。析出した結晶を濾別し、結晶をヘキサンで洗浄し、洗浄したヘキサンで濾液を抽出した。有機層を合わせ水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し減圧濃縮を行って、得られた残渣(1.10g)をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(ヘキサン:酢酸エチル=100:1)、式(4)の6,8−ウンデカジエン−3−オン0.74g(収率51%)を得た。
【0075】
式(2)の6,8−ウンデカジエン−3−オンの物性
6位の幾何異性体比:E:Z=1:1
H−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,400MHz):δ 0.96,0.99(total 3H,each t,J=7.2,J=7.2),1.02,1.03(total 3H,each t,J=7.2,J=7.2),2.08(2H,dq,J=7.2,13.6),2.27−2.48(6H,m),5.21,5.50(total 1H,each dt,J=7.2,11.2,J=7.2,14.4),5.60,5.69(total 1H,dt,J=7.2,14.8,J=6.8,15.2),5.91−6.30(2H,m).
13C−NMR(6位の幾何異性体混合物,CDCl,100MHz):δ 7.8,13.5,22.1,25.5,25.8,26.8,35.9,41.9,42.1,124.2,127.5,128.9,129.6,130.0,131.2,134.7,137.0,210.8,210.9.
MS(m/z):29(22),41(17),57(100),67(35),79(37),94(22),95(22),109(9),137(10),166(M,21)
【0076】
実施例4
香気評価
8,10,12−トリデカトリエン−5−オン、7,9,11−ドデカトリエン−3−オン、式(2)で表される7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、式(3)で表される6,10−ウンデカジエン−3−オン、式(4)で表される6,8−ウンデカジエン−3−オン、6−ウンデセン−3−オン、5,7,9−デカトリエン−2−オン、5,7,9−デカトリエン−3−オンならびに、本発明者等が先に出願した6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン4−オンならびに前記特許文献1および2に記載の1,3,5−ウンデカトリエンおよび1,3,5,7−ウンデカテトラエンのそれぞれ0.1%エタノール溶液をよく訓練されたパネラーにより香気評価を行った。香気評価は30mLサンプル瓶に前記0.1%エタノール溶液を用意し、瓶口の香気およびその溶液をにおい紙につけて行った。5名の平均的な香気評価を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例5
パイナップル様の調合香料組成物として、下記表2に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0079】
【表2】

【0080】
上記組成物99.9gに6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン、実施例1で製造した7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、実施例2で製造した6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは実施例3で製造した6,8−ウンデカジエン−3−オン0.1gを混合して、新規なパイナップル様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のパイナップル様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その平均的な香気評価結果を表3に示す。
【0081】
【表3】

【0082】
表3に示した通り、専門パネラー10人の全員が該化合物を加えた新規調合香料組成物は、いずれも、フレッシュで天然感のある果実感が強調された天然パイナップルの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0083】
実施例6
ヒヤシンス様の調合香料組成物として、下記表4に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0084】
【表4】

【0085】
上記組成物99.9gに6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン、実施例1で製造した7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、実施例2で製造した6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは実施例3で製造した6,8−ウンデカジエン−3−オン0.1gを混合して、新規なヒヤシンス様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のヒヤシンス様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その平均的な香気評価結果を表5に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
表5に示した通り、専門パネラー10人の全員が該化合物を加えた新規調合香料組成物は、フレッシュ感、天然感あふれる香りが強調された天然ヒヤシンスの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。
【0088】
実施例7
アップル様の調合香料組成物として、下記表6に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0089】
【表6】

【0090】
上記組成物99.9gに6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン、実施例1で製造した7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、実施例2で製造した6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは実施例3で製造した6,8−ウンデカジエン−3−オン0.1gを混合して、新規なアップル様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のアップル様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その平均的な香気評価結果を表7に示す。
【0091】
【表7】

【0092】
表7に示した通り、専門パネラー10人の全員が本発明品の7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは6,8−ウンデカジエン−3−オンを加えた新規調合香料組成物は、フレッシュ感、天然感あふれる香りが強調された天然アップルの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。一方、6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンまたは6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを加えた調合香料組成物は、フレッシュ感、果実感はあるが、鋭い青さが強調されていて、やや違和感があり、アップルらしさにやや欠けるという評価であった。
【0093】
実施例8
ラン様の調合香料組成物として、下記表8に示す成分からなる基本調合香料組成物を調製した。
【0094】
【表8】

【0095】
上記組成物99.9gに6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−4−オン、実施例1で製造した7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、実施例2で製造した6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは実施例3で製造した6,8−ウンデカジエン−3−オン0.1gを混合して、新規なラン様の調合香料組成物を調製した。この新規調合香料組成物と該化合物を加えていない上記のラン様調合香料組成物の香気について、専門パネラー10人により比較した。その平均的な香気評価結果を表9に示す。
【0096】
【表9】

【0097】
表9に示した通り、専門パネラー10人の全員が本発明品の7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、6,10−ウンデカジエン−3−オンまたは6,8−ウンデカジエン−3−オンを加えた新規調合香料組成物は、フレッシュ感、天然感あふれる香りが強調された天然ランの特徴をとらえ、持続性の点でも格段に優れていると評価した。一方、6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンまたは6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを加えた調合香料組成物は、フレッシュ感、天然感はあるが、鋭い青さがやや強調されすぎており、違和感が感じられ、ランらしさにやや欠けるという評価であった。
【0098】
香料化合物の香気特性は微妙であり、添加される調合香料の対象や香料組成によっては適合するものとあまり適合しないものがあると考えられるが、表6および表8で示した調合香料組成物に対しては6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンはあまり適合しないが、本発明品である7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、6,10−ウンデカジエン−3−オンおよび6,8−ウンデカジエン−3−オンは良く適合したため、良好な評価であったと考えられる。したがって、7,9,11−ドデカトリエン−4−オン、6,10−ウンデカジエン−3−オンおよび6,8−ウンデカジエン−3−オンは新規香料化合物として有用であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、点線は単結合または二重結合を示し、nは0〜2の整数を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を示す(ただし6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを除く))
で表されるトリ、ジまたはモノエノン化合物からなる香料。
【請求項2】
下記式(1)
【化2】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示し、点線は単結合または二重結合を示し、nは0〜2の整数を示し、Rはメチル基、エチル基、n−プロピル基またはn−ブチル基を示す(ただし6,8,10−ウンデカトリエン−2−オン、6,8,10−ウンデカトリエン−3−オンおよび6,8,10−ウンデカトリエン−4−オンを除く))
で表されるトリ、ジまたはモノエノン化合物を有効成分として含有することを特徴とする香料組成物。
【請求項3】
下記式(2)
【化3】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される7,9,11−ドデカトリエン−4−オン。
【請求項4】
下記式(3)
【化4】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される6,10−ウンデカジエン−3−オン。
【請求項5】
下記式(4)
【化5】

(式中、波線の結合はシス型もしくはトランス型またはシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表される6,8−ウンデカジエン−3−オン。

【公開番号】特開2010−83913(P2010−83913A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251152(P2008−251152)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】