説明

駆動システム

【課題】制御対象となる作用素の数が増大した場合であっても、所望の作用を呈するように容易に制御することが可能な駆動システムを提供する。
【解決手段】外部の環境に対して所定の作用を呈する作用素13と、作用素13を駆動する駆動源12とを有する駆動体14を複数備え、複数の駆動体14、14、・・・を、一の信号源11が発する信号に応じて動作するように制御する。外部の環境に対して呈する作用による環境の変化に関する情報を取得するセンサ15を有し、センサ15が取得した環境の変化に関する情報に基づいて、信号源11が発する信号を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理的に異なる作用素を複数有する場合であっても、外部の環境に対して所望の作用を呈するように制御することが可能な駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
信号源から発する制御信号により動作する駆動源と接続してあり、駆動源の動作に応じて外部の環境に対して所定の作用を呈する作用素を有する駆動システムは、現在多々開発されている。例えば電動歯ブラシにおいて、歯ブラシの柄の長手方向に振動する作用素と長手方向と略鉛直な方向に振動する作用素とを組み合わせて、清掃効果を高めた電動歯ブラシが存在する。
【0003】
特許文献1には、作用素として二種類の振動部材を組み合わせた電動歯ブラシが開示されている。特許文献1に開示されている電動歯ブラシは、異なる共振周波数を有する振動部材を方向を変えて備えており、駆動源が発する周波数に応じて選択的に共振させている。振動部材は、ブラシと接続されており、駆動源が発する周波数を変化させることにより、ブラシの複雑な動作を具現化している。
【0004】
すなわち、信号源として、電圧信号を出力する電源を用い、駆動源として振動モータを用いている。電源からの電圧信号に応じて振動モータの回転数を変化させ、電圧に応じた振動が共振周波数に近づくことにより共振し、共振した振動部材の振動方向にブラシが振動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−028310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示してある電動歯ブラシでは、一の信号源に対して一の駆動源を用いて複数の作用素である振動部材を振動させている。作用素である振動部材が2つであるので、まだ振動制御は容易であるが、制御対象となる作用素の数が増大した場合、異なる共振周波数を有する作用素である振動部材を複数準備する必要があり、所望の振動が生じるように設計することが困難になるという問題点があった。
【0007】
また、複数の作用素は、一の駆動源に接続されているので、一の作用素の動作による他の作用素への干渉を防止することは困難であり、所望の作用を呈するためには、作用素相互間の干渉の程度を正確に把握する必要があり、設計をさらに困難にしている。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、制御対象となる作用素の数が増大した場合であっても、所望の作用を呈するように容易に制御することが可能な駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために第1発明に係る駆動システムは、外部の環境に対して所定の作用を呈する作用素と、該作用素を駆動する駆動源とを有する駆動体を複数備え、複数の該駆動体を、一の信号源が発する信号に応じて動作するように制御することを特徴とする。
【0010】
第1発明では、外部の環境に対して所定の作用を呈する作用素と、該作用素を駆動する駆動源とを有する駆動体を複数備えている。複数の駆動体を、一の信号源が発する信号に応じて動作するように制御することにより、同一の信号に対して駆動体ごとに異なる作用を呈し、作用素同士の干渉等を考慮することなく独立した駆動体として設計することができる。
【0011】
例えば電動歯ブラシに適用した場合、複数の振動部材(駆動体)ごとに、それぞれ個別の振動モータが接続してあるので、一の振動部材が共振した場合であっても他の振動部材の作用に対して干渉することがない。したがって、一の振動部材と他の振動部材との干渉を一切考慮する必要がなく、独立した振動部材として設計することができるので、設計負荷を大きく軽減することが可能となる。
【0012】
また、第2発明に係る駆動システムは、第1発明において、外部の環境に対して呈する作用による環境の変化に関する情報を取得するセンサを有し、該センサが取得した環境の変化に関する情報に基づいて、前記信号源が発する信号を調整するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
第2発明では、外部の環境に対して呈する作用による環境の変化に関する情報をセンサで取得し、取得した環境の変化に関する情報に基づいて、信号源が発する信号を調整する。これにより、環境の変化に関する情報を取得してフィードバックすることで、信号源が状況に応じた信号を発するよう調整することができる。したがって、作用素ごとの信号源から発する信号に対する応答を正確に把握していない場合であっても、全体として所望の作用を呈するように制御することが可能となる。
【0014】
また、第3発明に係る駆動システムは、第2発明において、所定の信号に対する駆動体ごとの外部の環境に対して呈する作用の程度に関する情報を記憶してあることを特徴とする。
【0015】
第3発明では、所定の信号に対する駆動体ごとの外部の環境に対して呈する作用の程度に関する情報を記憶してあるので、取得した環境の変化に関する情報に基づいて、信号源が発する信号を調整する場合に、状況に応じた信号を正しく発するように調整することができ、全体として所望の作用を呈するように制御することが可能となる。
【0016】
また、第4発明に係る駆動システムは、第1乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記駆動体は、振動を発するアクチュエータ素子であり、該振動により前記駆動体を搭載してある本体が移動するようにしてあることを特徴とする。
【0017】
第4発明では、駆動体として振動を発するアクチュエータ素子を用い、振動により駆動体を搭載してある本体が移動する。したがって、複数のアクチュエータ素子を、一の信号源が発する信号に応じて振動させることにより、同一の信号に対してアクチュエータ素子ごとに異なる共振周波数にて振動させることができ、駆動体同士の干渉等を考慮することなく独立したアクチュエータ素子として設計することができる。
【0018】
また、第5発明に係る駆動システムは、第4発明において、前記アクチュエータ素子は、電歪材料で形成された二枚のシートを張り合わせて曲げてあり、張り合わせてある一方の前記シートの表裏両面に電極膜を形成してあることを特徴とする。
【0019】
第5発明では、アクチュエータ素子は、電歪材料で形成された二枚のシートを張り合わせて曲げてあり、張り合わせてある一方のシートの表裏両面に電極膜を形成してある。電極膜に電圧を印加した場合、シートに対する電極膜が形成されている部分の割合に応じて共振周波数が異なるアクチュエータ素子を構成することができる。
【0020】
また、第6発明に係る駆動システムは、第4又は第5発明において、前記駆動体を搭載してある前記本体の位置に関する情報を所定のサンプリング時間ごとに検出する位置情報検出手段と、目標とする位置に関する情報の入力を受け付ける位置入力受付手段と、サンプリング時間ごとに検出した本体の位置に関する情報と、入力を受け付けた目標とする位置に関する情報との差分を算出する差分算出手段と、算出した差分が、直前のサンプリング時間にて算出した差分より大きいか否かを判断する判断手段と、該判断手段で、算出した差分が、直前のサンプリング時間にて算出した差分より大きいと判断した場合、前記信号源が発する信号を変更する信号変更手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
第6発明では、駆動体を搭載してある本体の位置に関する情報を所定のサンプリング時間ごとに検出する。目標とする位置に関する情報の入力を受け付け、サンプリング時間ごとに検出した本体の位置に関する情報と、入力を受け付けた目標とする位置に関する情報との差分を算出する。算出した差分が、直前のサンプリング時間にて算出した差分より大きいか否かを判断し、算出した差分が、直前のサンプリング時間にて算出した差分より大きいと判断した場合、信号源が発する信号を変更する。これにより、駆動体を搭載してある本体が移動した位置に関する情報を取得してフィードバックすることで、本体が目標とする位置へ近づくように信号源が信号を発するように調整することができる。したがって、駆動体ごとの信号に対する応答を正確に把握していない場合であっても、本体を目標とする位置へ近づけるよう制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
上記構成により、複数の駆動体を、一の信号源が発する信号に応じて動作させることにより、同一の信号に対して駆動体ごとに異なる作用を呈し、作用素同士の干渉等を考慮することなく独立した駆動体として設計することができる。また、環境の変化に関する情報を取得してフィードバックすることで、信号源が状況に応じた信号を発するように調整することができる。したがって、作用素ごとの信号源から発する信号に対する応答を正確に把握していない場合であっても、全体として所望の作用を呈するように調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る駆動システムを適用した二足移動体の構成を示す三面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る駆動システムのアクチュエータ素子の構成を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る駆動システムを適用した二足移動体の移動状況を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る駆動システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る駆動システムの制御部の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、電歪材料を用いたアクチュエータ素子の振動により移動することが可能な移動体について説明するが、特にこれに限定されるものではなく、駆動システムにより外部の環境に対して作用を呈することが可能なものであれば何でも良い。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、従来の駆動システムの構成を示すブロック図である。従来の駆動システムは一の信号源1が発する信号により、駆動源2が動作する。駆動源2は、一又は複数(N個:Nは自然数)の作用素3、3、・・・と接続してあり、駆動源2の動作に応じて、外部の環境に対して所定の作用を呈する。
【0026】
作用素3の数が少ないうちは、それぞれの作用素3について信号に対する応答を把握することができ、駆動システム全体として所望の作用を呈するように設計することは比較的容易である。しかし、作用素3、3、・・・の数が増大した場合、すべての作用素3について信号に対する応答を把握することが困難であり、また所望の作用を呈するためにどの作用素3を動作させれば良いか判断することも困難となる。
【0027】
また、複数の作用素3、3、・・・は、一の駆動源2に接続されている。したがって、一の作用素3の動作による他の作用素3、3、・・・への干渉を防止することは困難である。例えば作用素3が振動部材である場合、一の作用素3の振動は駆動源2を介して他の作用素3、3、・・・の振動と干渉する。信号によっては、作用素3、3、・・・の動作を予想することができず、想定外の共振が生じるおそれや、振動が相殺されるおそれもあり、駆動システム全体として所望の作用を呈するように設計することが困難になる。
【0028】
そこで、本実施の形態1では、駆動源と作用素とを一体化して、複数備える構成を有している。図2は、本発明の実施の形態1に係る駆動システムの構成を示すブロック図である。
【0029】
実施の形態1に係る駆動システムは、一の信号源11が発する信号により、複数の駆動源12、12、・・・が一斉に動作する。駆動源12は、それぞれ一の作用素13と接続して一の駆動体14を形成しており、駆動源12の動作に応じて、作用素13は、外部の環境に対して所定の作用を呈する。
【0030】
信号源11は、複数の駆動源12、12、・・・に対して同一の信号を出力するが、各駆動源12は、それぞれ信号に対する応答特性が相違する。したがって、作用素13、13、・・・の信号に対する応答特性が異なる場合であっても、駆動源12、12、・・・の信号に対する応答特性も相違しているので、作用素13、13、・・・と駆動源12、12、・・・との組み合わせを考慮することにより、作用素13、13、・・・が所望の作用を呈するように設計することが容易となる。
【0031】
また、複数の駆動体14、14、・・・を、並列に信号源11と接続することにより、同一の作用を呈する駆動体14を複数接続することができる。これにより、一の駆動体14に障害が発生した場合であっても、同一の作用を呈する他の駆動体14により補うことが出来る冗長性を有する駆動システムを容易に構成することが可能となる。
【0032】
以下、本発明の実施の形態1に係る駆動システムを二足移動体に適用した場合を例に挙げて説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る駆動システムを適用した二足移動体の構成を示す三面図である。図3(a)は、二足移動体の構成を示す底面図を、図3(b)は、二足移動体の構成を示す正面図を、図3(c)は、二足移動体の構成を示す右側面図を、それぞれ示している。
【0033】
二足移動体は、基板となるプラスチックフィルム31に、二基のアクチュエータ素子32、32を並列に配置してある。図3(c)からもわかるように、アクチュエータ素子32は、電歪材料からなるシートを略U字形状に曲げた状態でプラスチックフィルム31に固着されている。アクチュエータ素子32、32に電圧を印加した場合、印加した電圧の周波数に応じて、左右のアクチュエータ素子32、32の共振の強さが変動する。したがって、アクチュエータ素子32、32の振動の強さが変動するので、二足移動体の移動方向を変更することができる。
【0034】
図4は、本発明の実施の形態1に係る駆動システムのアクチュエータ素子32の構成を模式的に示す断面図である。図4に示すように、高分子電歪材料で形成された二枚の電歪シート(シート)321、322を準備し、一方の電歪シート321の表裏両面に電極膜323、324を形成する。
【0035】
電歪シート321、322を形成する高分子電歪材料としては、強誘電性を有する高分子圧電材料であれば、特に限定されるものではない。例えばPVDF(ポリビニリデンフルオロイド)、PVDF(ポリビニリデンフルオロイド)系のコーポリマであるPVDF−TrFE、あるいはPVDF系のターポリマ、例えばPVDF−TrFE−CFE、PVDF−TrFE−CTFE、PVDF−TrFE−CDFE、PVDF−TrFE−HFA、PVDF−TrFE−HFP、PVDF−TrFE−VC等が好ましい。なお、TrFEはトリフルオロエチレンを、CFEはクロロフルオロエチレンを、CTFEはクロロトリフルオロエチレンを、CDFEはクロロディフルオロエチレンを、HFAはヘキサフルオロアセトンを、HFPはヘキサフルオロプロピレンを、VCはビニルクロライドを、それぞれ示している。
【0036】
具体的には、電歪シート321、322として、上述した高分子電歪材料を用いて数μmから100μm程度のシートを成形する。そして、一方の電歪シート321の表裏両面に、蒸着あるいはスパッタにより、Ni(ニッケル)、Pt(白金)、Pt−Pd(白金−パラジウム合金)、Al(アルミニウム)、Au(金)、Au−Pd(金パラジウム合金)等の金属膜を20nm〜50nm程度、電極膜323、324として形成する。電極膜323、324を形成した後、電歪シート321、322をエポキシ系の熱硬化性接着剤、UV硬化性接着剤等を用いて張り合わせる。
【0037】
その後、二枚の電歪シート321、322を張り合わせた状態のまま曲げて略U字形状とし、プラスチックフィルム31の左右両端近傍に電歪シート321、322の両端を固着する。電極膜323、324に、同一の電源(信号源:図示せず)から同一の交流電圧を印加した場合、電極膜323、324が表裏両面に形成されている電歪シート321が、印加される交流電圧の周波数に応じて伸縮を繰り返すことができるので、印加される交流電圧の周波数に応じて振動の強弱を変動することが可能なアクチュエータ素子32として機能させることができる。
【0038】
本実施の形態1では、アクチュエータ素子32、32は、それぞれの大きさ、曲率、固さ等に依存した異なる所定の周波数にて共振する。実施の形態1では、一のアクチュエータ素子32の共振周波数が22Hzであり、他のアクチュエータ素子32の共振周波数が60Hzであり、それぞれ同一の1.2kVの交流電圧を印加する。
【0039】
図5は、本発明の実施の形態1に係る駆動システムを適用した二足移動体の移動状況を示す模式図である。例えば図5の例では、印加される交流電圧の周波数が22Hzである場合、共振周波数が22Hzであるアクチュエータ素子32bが共振することにより二足移動体は進行方向61へと反時計回りに回転移動する。
【0040】
印加される交流電圧の周波数が38Hzである場合、それぞれ共振周波数が22Hz、60Hzであるアクチュエータ素子32a、32bは、ともに共振することがないので、二足移動体は進行方向62へと直進移動する。印加される交流電圧の周波数が60Hzである場合、共振周波数が60Hzであるアクチュエータ素子32aが共振することにより二足移動体は進行方向63へと時計回りに回転移動する。
【0041】
以上のように本実施の形態1によれば、複数の駆動体14、14、・・・を、一の信号源11が発する信号に応じて動作するように制御することにより、同一の信号に対して駆動体14ごとに異なる作用を呈し、作用素13同士の干渉等を考慮することなく独立した駆動体14として設計することができる。したがって、多数の作用素13、13、・・・が存在する場合であっても、所望の作用を呈するように制御することが可能となる。
【0042】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る駆動システムの構成を示すブロック図である。図6において、一の信号源11が発する信号に応じて、複数の駆動源12、12、・・・が一斉に動作する。駆動源12は、それぞれ一の作用素13と接続して一の駆動体14を形成しており、駆動源12の動作に応じて、作用素13は、外部の環境に対して所定の作用を呈する。
【0043】
信号源11は、実施の形態1と同様、複数の駆動源12、12、・・・に対して同一の信号を出力するが、各駆動源12は、それぞれ信号に対する応答特性が相違する。したがって、作用素13、13、・・・の信号に対する応答特性が異なる場合であっても、駆動源12、12、・・・の信号に対する応答特性も相違しているので、作用素13、13、・・・と駆動源12、12、・・・との組み合わせを考慮することにより、作用素13、13、・・・が所望の作用を呈するように設計することが容易となる。
【0044】
センサ15は、作用素13、13、・・・による外部の環境に対する作用の程度に関する情報を検出する。例えば二足移動体の例では、二足移動体が移動した位置を検出する。制御部16は、例えばマイクロプロセッサ、メモリ等で構成してあり、センサ15で検出した外部の環境に対する作用の程度に関する情報に基づいて、信号源11に対して信号の出力指示を送信する。
【0045】
制御部16は、センサ15により検出された、外部の環境に対する作用の程度に関する情報、例えば二足移動体の例では、二足移動体が移動した位置に関する情報を取得する。制御部16は、事前に設定してある所望の作用に関する情報と取得した作用の程度に関する情報とを比較して、所望の作用を呈するような信号を発するように信号源11に対して信号の出力指示を送信する。例えば二足移動体の例では、信号源11は、入力を受け付けることで設定した二足移動体の移動目標とする位置に関する情報と、取得した二足移動体の位置に関する情報との比較結果に基づいた出力指示に応じて、移動目標とする位置に近づけるよう制御する信号を発する。
【0046】
制御部16の処理手順を、二足移動体を例に挙げて説明する。図7は、本発明の実施の形態2に係る駆動システムの制御部16の処理手順を示すフローチャートである。
【0047】
制御部16は、二足移動体の移動位置の目標とする位置に関する目標位置情報の入力を受け付ける(ステップS701)。制御部16は、所定のサンプリング時間ごとに、二足移動体の位置に関する位置情報をセンサ15にて取得し(ステップS702)、制御部16に内蔵されたメモリに記憶する(ステップS703)。
【0048】
制御部16は、入力を受け付けた目標位置情報と、センサ15にて取得した位置情報との差分を算出し(ステップS704)、算出した差分が、前回算出した差分、すなわち直前のサンプリング時間に取得した位置情報に基づいて算出した差分より大きいか否かを判断する(ステップS705)。制御部16が、算出した差分が、前回算出した差分以下であると判断した場合(ステップS705:NO)、制御部16は、信号源11が発する信号の周波数の変動を小さく一定範囲に限定する旨の指示を、信号源11に対して送信する(ステップS706)。
【0049】
制御部16が、算出した差分が、前回算出した差分より大きいと判断した場合(ステップS705:YES)、制御部16は、信号源11が発する信号の周波数の変動を大きくする旨の指示を、信号源11に対して送信する(ステップS707)。周波数をどのように変動するかは特に限定されるものではなく、差分が小さくなるよう変更することさえできれば良い。
【0050】
例えば、信号源11から発する交流電圧の周波数に対する移動の程度に関する情報を、アクチュエータ素子32a、32bごとに、制御部16のメモリに記憶しておく。具体的には、印加する交流電圧の周波数と二足移動体の回転角との関係に関する情報を記憶しておく。
【0051】
そして、センサ15により取得した位置情報に基づいて算出した差分に従って、制御部16は、適切な周波数を選択し、選択した周波数で信号を発する旨の指示を信号源11へ送信する。これにより、目標とする位置へ向かって二足移動体を移動させることができる。
【0052】
制御部16は、算出した差分が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS708)。制御部16が、算出した差分が所定値より大きいと判断した場合(ステップS708:NO)、制御部16は、処理をステップS702へ戻して、上述した処理を繰り返す。制御部16が、算出した差分が所定値以下であると判断した場合(ステップS708:YES)、制御部16は、処理を終了する。
【0053】
二足移動体では、作用素13となるアクチュエータ素子32、32が2つであることから、信号源11が発する信号に対する応答を容易に把握することができるが、作用素13、13、・・・の数が膨大である場合、個々の作用素13について信号に対する応答を全て正確に把握することは困難である。しかし、本実施の形態2によれば、作用素13について信号に対する応答を把握していない場合であっても、信号源11が発する一の信号に対する全体としての外部の環境に対する作用の程度に関する情報を取得してフィードバックすることにより、所望の作用を呈するように制御することができる。
【0054】
以上のように本実施の形態2によれば、外部の環境に対する作用の程度に関する情報を取得してフィードバックすることで、信号源11が状況に応じた信号を発するように調整することができる。したがって、作用素13ごとの信号源11から発する信号に対する応答を正確に把握していない場合であっても、全体として所望の作用を呈するように駆動システムを設計することが可能となる。
【0055】
その他、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内であれば多種の変形、置換等が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
11 信号源
12 駆動源
13 作用素
14 駆動体
15 センサ
16 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の環境に対して所定の作用を呈する作用素と、
該作用素を駆動する駆動源と
を有する駆動体を複数備え、
複数の該駆動体を、一の信号源が発する信号に応じて動作するように制御することを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
外部の環境に対して呈する作用による環境の変化に関する情報を取得するセンサを有し、
該センサが取得した環境の変化に関する情報に基づいて、前記信号源が発する信号を調整するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の駆動システム。
【請求項3】
所定の信号に対する駆動体ごとの外部の環境に対して呈する作用の程度に関する情報を記憶してあることを特徴とする請求項2記載の駆動システム。
【請求項4】
前記駆動体は、振動を発するアクチュエータ素子であり、
該振動により前記駆動体を搭載してある本体が移動するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動システム。
【請求項5】
前記アクチュエータ素子は、電歪材料で形成された二枚のシートを張り合わせて曲げてあり、
張り合わせてある一方の前記シートの表裏両面に電極膜を形成してあることを特徴とする請求項4記載の駆動システム。
【請求項6】
前記駆動体を搭載してある前記本体の位置に関する情報を所定のサンプリング時間ごとに検出する位置情報検出手段と、
目標とする位置に関する情報の入力を受け付ける位置入力受付手段と、
サンプリング時間ごとに検出した本体の位置に関する情報と、入力を受け付けた目標とする位置に関する情報との差分を算出する差分算出手段と、
算出した差分が、直前のサンプリング時間にて算出した差分より大きいか否かを判断する判断手段と、
該判断手段で、算出した差分が、直前のサンプリング時間にて算出した差分より大きいと判断した場合、前記信号源が発する信号を変更する信号変更手段と
を備えることを特徴とする請求項4又は5記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−120415(P2011−120415A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277220(P2009−277220)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】