説明

駆動トルクフィードバックを用いるブランケット寸法変更

不正確に寸法決め又は製造されたブランケットを決定するための装置が提供され、この装置は、第1のモータ(30)によって独立して駆動される第1のブランケット胴(44)における第1のブランケット(42)と、第1のモータ(30)のトルク値を決定するための第1の制御装置(20)と、第2のモータ(32)によって独立して駆動される第2のブランケット胴(54)における第2のブランケットと、第2のモータ(32)のトルク値を決定するための第2の制御装置(22)とを有している。プロセッサ(90)は、第1及び第2のモータ(20,22)のトルク値に関して第1及び第2のブランケット(52,52)の間の寸法差の存在を決定する。ブランケットを比較する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は概して印刷機、特にブランケット胴を備えたウェブオフセット印刷機に関する。
【0002】
米国特許第5983794号明細書は、走行する紙ウェブの第1の側に印刷するための第1の印刷対を形成した第1の版胴及び第1のブランケット胴を有するウェブ輪転印刷機のインプリンタ印刷ユニットを開示している。さらに、印刷ユニットは、ウェブの第2の側に印刷するための第2の印刷対を形成した第2の版胴及び関連する第2のブランケット胴を有している。さらに、印刷ユニットは、第1及び第2の印刷対を第1及び第2の駆動モータに連結するための歯車装置を有しており、これにより、第1の作動モードにおいて第1の駆動モータが第1の印刷対を駆動しかつ第2の駆動モータが独立して第2の印刷対を駆動するように胴を駆動する。
【0003】
発明の概要
独立して駆動されるブランケットを使用することにより、寸法及び構成等のブランケットの変数を制御する必要性が増大される。ブランケットの寸法が一致させられていないと、基板に提供される力が印刷品質に悪影響を与える。基板がブランケットの間を通過する時、ブランケットは反対方向に回転する、例えば一方のブランケットは時計回りに回転し、他方のブランケットは逆時計回りに回転する。ニップにおいて、ブランケットは、反対方向に回転しながら、同じ横方向において基板に力を加え、印刷プロセスを通じて基板を下流へ移動させる。
【0004】
一方のブランケットが異なる直径、構成又は速度を有している場合、ブランケットは基板に異なる力を提供する。不均等な力が基板に提供されると、基板はひずまされ、印刷品質は悪影響を受ける。すなわち、ブランケットが印刷基板に等しい力を加えることが望ましい。ブランケットが異なる直径、構成又は速度を有している場合、ブランケット胴の所望の回転速度を維持するためにモータトルクの変化が必要である。
【0005】
現在、製造後、ブランケットがオフラインである時に、ブランケット測定が行われる。次いで、ブランケットは、印刷品質を保証するように手作業で一致させられることができる。
【0006】
本発明の目的は、ブランケットが不正確に寸法決めされているかどうかを決定することである。制御装置は、独立して駆動されるそれぞれのブランケットのための回転速度及び角度位置を調整する。すなわち、制御装置は、ブランケット寸法及び構成の周方向での差を解消するために必要なトルクを提供する。このトルクは監視され、不正確に寸法決めされた又は製造されたブランケットの大きさを決定するために使用されることができる。トルクは、ブランケットが接触する前後に測定されることができる。ブランケット接触後のトルク差の大きな増大は、ブランケット、例えばブランケット寸法、ブランケット構成等の差の結果であることができる。
【0007】
不正確に寸法決め又は製造されたブランケットを決定するための装置を提供することによって、BB形印刷機の場合のようなブランケットは監視されることができる。装置は、クリーニング、洗浄の必要性、又はその他の潜在的な問題が生じる前にそれらの問題を知らせる。
【0008】
本発明は、不正確に寸法決め又は製造されたブランケットを決定するための装置であって、
第1のモータによって独立して駆動される第1のブランケット胴に設けられた第1のブランケットと、
第1のモータのトルク値を決定するための第1の制御装置と、
第2のモータによって独立して駆動される第2の胴と、
第2のモータのトルク値を決定するための第2の制御装置と、
第1及び第2のモータのトルク値に関して第1のブランケットの寸法を決定するプロセッサとを有する装置を提供する。
【0009】
本発明は、円筒状の構造に対する第1のブランケット胴に設けられた第1のブランケットの寸法を決定する方法をも提供し、この方法は、
第1のブランケット胴と第2のブランケット胴構造とが互いに接触している時に第1のブランケット胴から第1のトルク値を決定しかつ第2の胴構造から第2のトルク値を決定するステップと、
第1のトルク値と第2のトルク値とを比較するステップを有する方法を提供する。
【0010】
本発明は、既知の特性を備えた基準ブランケットであるブランケットを使用するための方法をも提供する。既知の特性は、例えば、ブランケット構造の直径、厚さ又は形質(trait)であることができる。すなわち、基準ブランケットは、どのブランケットがより大きい又はより小さいか、又はどのブランケットが交換されるべきであるかを決定するために使用されることができる。
【0011】
択一的に、第1のブランケットは、中実の円筒体に対して試験されることができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態は図面に関して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による独立して駆動されるブランケット胴を示す図である。
【図2】基準ブランケットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、独立して駆動される2つのブランケット胴、すなわちそれぞれ上部ブランケット42及び下部ブランケット52を備えた上部胴44及び下部胴54を示している。上部胴44はシャフト46を介して上部モータ30に連結されている。下部胴54はシャフト56を介して下部モータ32に連結されている。各モータ30,32はそれぞれ制御装置20,22に接続されている。ブランケット胴44,54は独立して駆動され、モータ30,32のためのトルク要求は、ブランケット42,52が適切に一致させられているならば同じである。胴は、歯車、プーリ又はその他の伝動装置を介してモータに連結されていることもできる。
【0015】
制御装置20,22は、対応するモータ30,32のために同じモータ速度を維持する。ブランケット42,52が互いに接触すると、ニップ60においてブランケット42,52の間に力が生じる。制御装置20,22は、同じ角速度を維持しようとするのに対し、ブランケット42,52は、ブランケット同士の接触により同じ表面速度を維持しようとする。ブランケット42及び52の直径が異なると、モータ30,32におけるトルクが異なる。
【0016】
ブランケット42,52の、オフセット印刷過程から蓄積されたインキ、紙又はその他の堆積物が洗浄された後、ブランケット42,52が離反させられた場合、接触する前に、モータ30,32のための初期トルクが制御装置20,22によって決定される。プロセッサ90は、制御装置20,22によって決定されたトルクデータを記憶する。ブランケット42,52が当接させられた場合にトルクデータの第2のセットが決定され、プロセッサ90に記憶される。
【0017】
プロセッサ90は、ブランケット42,52が当接させられる前後での制御装置20及び22のトルク差を比較し、ブランケット42,52が接触した時にトルク差が著しく増大するかどうかを決定する。ブランケット42,52が接触した後のトルクの大きな差は、ブランケット直径の大きな差を知らせる。トルク測定の第1のセットと第2のセットとの間のトルクのより大きな差を決定する制御装置20,22は、より大きな直径のブランケット42,52を備えたブランケット胴44,54に接続されている。すなわち、プロセッサ90は、ブランケット42,52が不正確に合致した寸法を有する又は製造されているかどうか、及びどのブランケット42,52がより大きい又はより小さいかを検出することができる。
【0018】
オペレータは、オペレータインタフェースを介して所定のデータのセットを入力する。このセットは、所定の設定値、又は、例えばモータ30,32において測定されたトルクに対応する印刷のための許容可能な測定のための設定値を含む。すなわち、プロセッサ90は、所定の設定値をモータ30,32において測定されたトルクと比較する。データが所定の設定値から外れている場合にはプロセッサ90がオペレータに警告する。適用可能であるならば、プロセッサ90はオペレータにどのブランケット42,52がより大きい又はより小さいかを警告する。
【0019】
図2は基準ブランケット62を示している。図1におけるブランケット42,52が使用に適しているかどうかを決定するために、直径d及び厚さ及び構成tを備えた基準ブランケット62が使用される。基準ブランケット62は、既知の、正確な直径及び構成を有している。基準ブランケット62は、例えば印刷のためではなく基準のためだけに使用することによって維持される。択一的に、ブランケット42は、例えばモータ32による中実胴駆動に対して試験されることができ、胴は、単に、ブランケット52が取り外された胴54であることもできる。
【0020】
オペレータは、どのブランケット42,52を取り外すかを決定するために、プロセッサ90によって収集された情報を使用する。オペレータは、より大きなブランケット、例えば上部ブランケット42を取り外すことを選択する。オペレータは、上部ブランケット42を基準ブランケット62と交換する。ブランケット52,62が当接させられた時にトルクが決定される。
【0021】
新たなトルクデータが、オペレータによって入力された所定のデータのセットによって規定されたように、許容できるものであると、既存のブランケット52は、印刷過程において使用することが許容される。オペレータは、基準ブランケット62を、印刷過程において使用するに適しいていると知られている新たな又は既存のブランケットと交換することができる。取り外されたブランケット42は、廃棄されるか、又はより大きいと印を付けられ、択一的な使用のために貯蔵される。
【0022】
択一的に、トルクデータは、オペレータによって入力された所定のデータのセットから外れていることがある。制御装置20が、制御装置22よりも高いトルク読取りを決定すると、基準ブランケット62はブランケット52よりも大きい。すなわち、ブランケット52は、適切な寸法のブランケットと交換されなければならない。ブランケット52は、廃棄されるか、又はより小さいという印を付けられ、択一的な使用のために貯蔵される。択一的に、制御装置20が制御装置22よりも小さいトルク読取りを決定すると、基準ブランケット62はブランケット52よりも小さい。すなわち、ブランケット52は、適切な寸法のブランケットと交換されなければならない。ブランケット52は、廃棄されるか、又はより大きいという印を付けられ、択一的な使用のために貯蔵され、廃棄物を減じる。
【0023】
すなわち、プロセッサ90は、トルク差を監視し、印刷が行われる前にオンライン検出システムとして働き、劣悪な印刷品質の原因となるブランケット直径差を排除するための検査を行う。
【0024】
本発明の付加的な実施形態は、印刷しながらトルク読取りの履歴を決定及び記録する。プロセッサ90は、時間の経過とともにトルク増大及び方向変化等の変数を監視することができる。これらの変数は、基準データ及び公差と比較されることができ、いつブランケットが洗浄を必要とするかを決定するか又は潜在的な問題を知らせる。すなわち、ブランケットは、印刷上の問題が生じる前に洗浄されるか又は調査されることができる。
【0025】
ブランケット構成の差はトルク差をも生じるので、ブランケット構成によるトルク差を監視することも望ましい。さらに、ブランケットの直径及び構成を検証するために品質制御の方法として同じ技術がブランケット製造によって採用されることができる。
【0026】
前の説明において、発明は特定の典型的な実施形態及び実施例に関して記述されている。しかしながら、請求の範囲に示されたような発明のより広い精神及び範囲から逸脱することなく、前記実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えることができることが明らかである。したがって、明細書及び図面は、制限的意味ではなく例示的形式で見なされるべきである。
【符号の説明】
【0027】
20,22 制御装置、 30,32 モータ、 42,52 ブランケット、 44,54 胴、 60 ニップ、 62 基準ブランケット、 90 プロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不正確に寸法決め又は製造されたブランケットを決定するための装置において、
第1のモータによって独立して駆動される第1のブランケット胴に設けられた第1のブランケットと、
第1のモータのトルク値を決定するための第1の制御装置と、
第2のモータによって独立して駆動される第2の胴と、
第2のモータのトルク値を決定するための第2の制御装置と、
第1及び第2のモータの第1及び第2のトルク値に関して第1のブランケットの寸法を決定するプロセッサとを有していることを特徴とする、不正確に寸法決めされた又は製造されたブランケットを決定するための装置。
【請求項2】
第2のブランケット胴上に第2のブランケットを有する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
第1のブランケット又は第2のブランケットが、少なくとも1つの既知の特性を有する基準ブランケットである、請求項2記載の装置。
【請求項4】
基準ブランケットが、既知の直径を有する、請求項2記載の装置。
【請求項5】
基準ブランケットが、既知の構成を有する、請求項2記載の装置。
【請求項6】
基準ブランケットが、既知の厚さを有する、請求項2記載の装置。
【請求項7】
請求項1記載のブランケット寸法不一致を決定するための装置を有するウェブオフセット印刷ユニット。
【請求項8】
円筒状構造に対する第1のブランケット胴における第1のブランケットの寸法を決定する方法において、
第1のブランケットが第2の円筒状構造に接触したときに第1のトルク値を第1のブランケット胴から決定しかつ第2のトルク値を円筒状構造から決定するステップと、
第1のトルク値と第2のトルク値とを比較するステップとを含むことを特徴とする、円筒状構造に対する第1のブランケット胴における第1のブランケットの寸法を決定する方法。
【請求項9】
第1のブランケット又は第2のブランケットが、少なくとも1つの既知の特性を有する基準ブランケットである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
トルク値に関してブランケットの少なくとも1つの特性を比較することを含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
ブランケットの少なくとも1つの特性が寸法である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ブランケットの少なくとも1つの特性がブランケット構成である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
トルク値を比較することが、トルク値を既知のデータと比較することを含む、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−538753(P2009−538753A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513170(P2009−513170)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/011934
【国際公開番号】WO2007/142800
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(505332174)ゴス インターナショナル アメリカス インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Goss International Americas, Inc.
【住所又は居所原語表記】121 Broadway, Dover NH 03820, USA
【Fターム(参考)】