駆動伝達装置およびこれを用いた紙葉類識別装置
【課題】ギアの状態変化による駆動伝達速度の変化を検知する駆動伝達装置を提供する。
【解決手段】ギア1〜ギア7は所定方向に直列に配置され、それぞれ隣り合うギア同士の歯は係合している。先頭のギア1は駆動源に直接接続する回転軸91に固定接続されており、この回転軸91にはエンコーダ21が固定接続されている。末端のギア7は回転軸97に固定接続されており、この回転軸97にはエンコーダ22が固定接続されている。エンコーダ21,22はそれぞれ駆動状態検出部25に接続しており、エンコーダ21から入力されるギア1および回転軸91の状態に応じた信号と、エンコーダ22から入力されるギア7および回転軸97の状態に応じた信号と、により駆動伝達状態を検出する。
【解決手段】ギア1〜ギア7は所定方向に直列に配置され、それぞれ隣り合うギア同士の歯は係合している。先頭のギア1は駆動源に直接接続する回転軸91に固定接続されており、この回転軸91にはエンコーダ21が固定接続されている。末端のギア7は回転軸97に固定接続されており、この回転軸97にはエンコーダ22が固定接続されている。エンコーダ21,22はそれぞれ駆動状態検出部25に接続しており、エンコーダ21から入力されるギア1および回転軸91の状態に応じた信号と、エンコーダ22から入力されるギア7および回転軸97の状態に応じた信号と、により駆動伝達状態を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置に用い、一定の搬送速度を必要とする搬送路の駆動に利用される駆動伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣等の紙葉類を識別する紙葉類識別装置は、挿入された紙葉類を搬送しながら、紙葉類に備えられている磁気データ等を読み取って識別を行っている。紙葉類の磁気データを搬送しながら読み取る場合、磁気データの読み取り精度は紙葉類の搬送速度の精度に大きく影響される。
このため、例えば、特許文献1には、搬送路の幅方向の両端に設置された駆動ローラと従動ローラとの回転をエンコーダで検出して、搬送される紙葉類(カード)のスリップを検出して搬送速度を検出する装置が開示されている。
【特許文献1】特開平5−20783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、所定長に亘る搬送ベルト上に紙葉類を載置した状態で搬送し、搬送経路上にセンサを設置して、紙葉類の情報を読み取るような構造の場合、搬送ベルトを駆動するギアや搬送ベルトが摩耗して、搬送速度が不安定になることがある。
【0004】
図13は駆動伝達装置の概略構成を示す図であり、(A)はギアが摩耗する前を示し、(B)はギアが摩耗した状態を示す。
【0005】
ギア1〜7はそれぞれ回転軸91〜97に接続されており、これら回転軸91〜97とともに軸方向に垂直な方向に直列に配置されている。そして、隣り合うギア(ギア1とギア2、ギア2とギア3、...ギア6とギア7)同士の歯は係合している。また、図示しないが、ギア1に接続する回転軸91が駆動源に接続されており、ギア1〜7のうちではギア1から駆動が開始される。このようなギア1〜7からなる駆動伝達装置において、駆動源から回転軸91を介してギア1に駆動力が伝達されるとギア1が回転する。このギア1の回転に応じて、ギア2〜ギア6が回転して、ギア7が回転する。
【0006】
この際、図13(A)に示すように、ギア1〜7の歯の摩耗が殆どなければ、ギア1の回転の直後にギア7が回転する。このような駆動動作を繰り返すと、図13(B)のようにギア1〜7の歯が摩耗する。そして、図13(B)に示すように歯が摩耗すると、各ギア1〜7の歯の幅(回転方向に沿った長さ)が初期状態よりも細くなり、歯の幅に対する隣り合う歯間の間隔が広くなる。このため、先に回転するギア(先頭側のギア)が所定量回転して初めて、先頭側のギアの歯が後に回転するギア(末端側のギア)の歯に接触する。これにより、隣り合うギア間で回転を伝達するのに所定のタイムラグが発生する。
【0007】
この現象は、駆動伝達装置を構成する各ギア1〜7間で発生するので、ギア1が回転を開始してから、ギア7が回転を開始するまでに、ギア1は所定角回転していなければならない(図13(B)の角A°)。このため、ギア1が回転を開始してからギア7が回転を開始するまでの時間差は初期状態よりも長くなる。
【0008】
このように、駆動伝達装置の先頭のギア1と末端のギア7との回転開始時間差が初期状態から変化していくことで、駆動伝達速度が徐々に変化してしまい、図13(A)に示す状態と図13(B)に示す状態とでは異なる。このため、紙幣等に備えられている磁気情報を読み取る場合に、搬送速度が変化して読み取り精度が低下する。これにより、紙葉類が識別できなくなるという問題が発生する。
【0009】
また、ギアの状態変化による駆動伝達速度の精度低下の問題としては、次の問題もある。
図14は、歯の摩耗は殆ど無く、ギア1に歯折れが発生した状態の駆動伝達装置の概略構成を示す図である。
図14では、ギア1に歯折れが発生したことで、歯折れ発生部101でギア1とギア2とが係合せず、ギア1からギア2に駆動力を伝達するには、ギア1を余剰に所定角回転させなければならない。これにより、ギア1の回転開始時間とギア7の回転開始時間との間にタイムラグが発生する。この場合、歯折れが無い部分では殆どタイムラグが発生しないが、歯折れがある部分ではタイムラグが発生する。すなわち、約1回転毎に駆動伝達速度の変化が生じる。このような場合でも、搬送速度が変化して読み取り精度が低下し、紙葉類が識別できなくなるという問題が発生する。
【0010】
このような歯折れは、図13(B)に示すような歯が細くなった場合に発生しやすく、歯が細くなりとともに歯折れが発生すると、より一層駆動伝達速度が不安定になり、搬送する紙葉類の識別が困難になる。
【0011】
したがって、この発明の目的は、ギアの状態変化による駆動伝達速度の変化を検知する駆動伝達装置と、この駆動伝達速度の変化によって紙葉類の識別ミス等の誤動作を未然にまたは即座に検出する紙葉類識別装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の駆動伝達装置は、互いに連接され、駆動源からの駆動力を伝達する複数の駆動力伝達部材と、予め設定された駆動開始タイミングを検出する第1駆動開始検出手段と、複数の駆動力伝達部材のうち、駆動源に接続された駆動力伝達部材を除く少なくとも1つの駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出する第2駆動開始検出手段と、第1駆動開始検出手段の検出信号と第2駆動開始検出手段の検出信号とのタイミング差を検出する駆動状態検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
この構成では、駆動源により駆動力が発生すると、互いに連接された駆動力伝達部材に駆動力が順次伝達される。この際、全体の駆動の略最初のタイミングに相当する駆動開始タイミングが第1駆動開始検出手段で検出され、所定位置の駆動力伝達部材の駆動開始が第2駆動開始検出手段で検出される。そして、これらのタイミング差が駆動状態検出手段により検出される。ここで、駆動力伝達部材の状態が時系列で変化し、これに基づく伝達時間が変化すると、駆動力伝達部材の状態変化は、駆動状態検出手段により検出されるタイミング差の変化により把握される。
【0014】
また、この発明の駆動伝達装置は、第1駆動開始検出手段で、駆動源に直接接続された駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出することを特徴としている。例えば、駆動源がモータ、駆動力伝達部材がギアであり、第1駆動開始検出手段および第2駆動開始検出手段がそれぞれギア群における先頭のギアと末端のギアとに接続する回転軸に設置されたエンコーダである場合、ギアの形状(歯形状)等の変化により駆動伝達状態(速度)が変化すると、2つのエンコーダの回転検出タイミングの差が変化する。
【0015】
この構成では駆動源に直接接続される駆動伝達部材の駆動開始タイミングがタイミング差の検出に利用される。
【0016】
また、この発明の駆動伝達装置は、第1駆動開始検出手段で、駆動源の駆動開始タイミングを検出することを特徴としている。
【0017】
この構成では駆動源の駆動開始タイミングがタイミング差の検出に利用される。例えば、前述のように、駆動源がモータ、駆動力伝達部材がギアであり、第1駆動開始検出手段がモータの駆動開始タイミングを検出する装置(例えば、モータ駆動信号検出装置)であり、第2駆動開始検出手段がギア群における末端のギアに接続する回転軸に設置されたエンコーダである場合、ギアの形状(歯形状)等の変化により駆動伝達状態(速度)が変化すると、2つのエンコーダの回転検出タイミングの差が変化する。
【0018】
また、この発明の駆動伝達装置は、タイミング差が予め設定された閾値以上になると警告を行う警告手段を駆動状態検出手段に備えたことを特徴としている。
【0019】
この構成では、検出されたタイミング差と所定の閾値とを比較することで、安定な駆動状態の限界よりも駆動状態が悪化したことを検出して警告が発生される。
【0020】
また、この発明の紙葉類識別装置は、前述の駆動伝達装置と、該駆動伝達装置により駆動される所定方向に紙葉類を搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送経路上に設置され、紙葉類に記録された情報をセンシングするセンサと、該センサのセンシング結果に基づき紙葉類を識別する識別手段と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
この構成では、前述のように駆動伝達装置により所定閾値のタイミング差が検出されると、駆動状態が安定ではないことを検出し、紙葉類の搬送及び識別が不安定になることを検出する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、駆動伝達装置を構成する各駆動伝達部材の状態変化による駆動伝達速度の変化を検出することができる。これにより、例えば、ギアの歯が細くなったり歯折れが発生する等して駆動伝達部材が予め設定した状態よりも悪化し、駆動伝達状態が悪化することを、駆動伝達装置は未然にまたは即座に検出することができる。
【0023】
また、この発明によれば、紙葉類識別装置は、駆動力伝達部材の状態悪化による識別ミスを未然にまたは即座に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
第1の実施形態に係る駆動伝達装置について図を用いて説明する。
(1)通常のギアの摩耗による駆動伝達速度の変化の検出
図1は本実施形態の駆動伝達装置の概略構成を示す図であり、(A)はギアが摩耗する前を示し、(B)はギアが摩耗した状態を示す。この駆動伝達装置は紙幣等の紙葉類の搬送系の駆動力の伝達に利用するものであり、後述する紙葉類識別装置に備えられる。
【0025】
図1に示すように、駆動伝達装置はギア1〜7とエンコーダ21,22とを備える。ギア1〜7は、図示しない回転軸に設置されており、これら回転軸に垂直な方向に直列に配置されている。そして、隣り合うギア(ギア1とギア2、ギア2とギア3、...ギア6とギア7)同士の歯は係合している。また、図示しないが、ギア1が駆動源に接続されており、ギア1から駆動が開始される。このようなギア1〜7からなる駆動伝達装置において、駆動源からギア1に駆動力が伝達されるとギア1が回転する。このギア1の回転に応じて、ギア2〜ギア6が回転して、ギア7が回転する。
【0026】
エンコーダ21,22はそれぞれ回転部111,211と検出部112,212とを備える。エンコーダ21の回転部111はギア1に接続する回転軸91に固定設置されており、ギア1とともに回転する。回転部111には円周状に等間隔でスリットが形成されており、この回転部111のスリット形成部を挟んで検出部112の発光部と受光部とが対向して設置されている。検出部112は、回転軸91とともに回転部111が回転してスリットが順次、発光部と受光部との間を通過することを検出し、検出したスリット数に応じた回転量検出信号を出力する。また、検出部112は、回転軸91の回転が開始すると回転部111が回転を開始することから、最初にスリットの開口部に達した、または、スリットを形成する壁部に達したタイミングで信号のレベル差が発生し、これを駆動開始検出信号として出力する。
【0027】
エンコーダ22の回転部211はギア7の回転軸97に固定設置されており、ギア7、回転軸97とともに回転する。回転部211には円周状に等間隔でスリットが形成されており、この回転部211のスリット形成部を挟んで検出部212の発光部と受光部とが対向して設置されている。検出部212は、ギア7、回転軸97の回転により回転部211が回転してスリットが順次、発光部と受光部との間を通過することを検出し、検出したスリット数に応じた回転量検出信号を出力する。また、検出部212は、ギア7の回転が開始すると回転部211が回転を開始することから、検出部212が最初にスリットの開口部に達した、または、スリットを形成する壁部に達したタイミングで信号のレベル差が発生し、これを駆動開始検出信号として出力する。
【0028】
エンコーダ21およびエンコーダ22から出力された駆動開始検出信号は、駆動状態検出部25に入力され、ギア1の回転開始タイミングとギア7の回転開始タイミングとの時間差が検出される。
【0029】
ここで、図1(A)に示すように、ギア1〜7が摩耗していない状態では、各ギア1〜7の歯が略きっちりと係合しているので、エンコーダ21の駆動開始検出信号の発生タイミングとエンコーダ22の駆動開始検出信号の発生タイミングとは殆ど時間的に差がない。すなわち、タイミング差は極小さくなる。一方、図1(B)に示すように、ギア1〜7が摩耗した状態では、各ギア1〜7の歯が細くなり、歯の幅が隣り合う歯の間隔よりも狭くなる。このため、先頭側のギアの歯が末端側のギアの歯に接触するまでに、先頭側のギアは摩耗量に応じて所定量回転する。このような歯の摩耗はギア1〜7で発生するので、末端のギア7が回転し始めるまでに、先頭のギア1は、各ギア1〜7の歯の摩耗量の合計に応じた角度分回転しなければならない。すなわち、先頭のギア1が所定角分回転して初めて、ギア7が回転し始める。このため、エンコーダ21で検出する駆動開始検出信号の発生タイミングとエンコーダ22で検出する駆動開始検出信号の発生タイミングは、前記所定角(図1(B)の角度A°)に相当するタイミング差が発生し、駆動状態検出部25はこのタイミング差を検出する。
【0030】
駆動状態検出部25は、エンコーダ21からの駆動開始検出信号とエンコーダ22からの駆動開始検出信号とを差分して、タイミング差を時間で表すタイミング差検出信号を生成する。駆動状態検出部25は、駆動状態の悪化の指針となるタイミング差閾値を予め記憶しており、タイミング差検出信号に基づく時間と、タイミング差閾値に対応する時間とを比較し、タイミング差検出信号に基づく時間が長ければ、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のギアの摩耗が安定な搬送を行うための限界であることを検知して、ギアの交換を行う。
【0031】
このような構成とすることで、ギアの摩耗により、紙葉類の搬送に必要な駆動伝達の動作精度が守られなくなる前に、ギアを交換することができる。これにより、ギアの摩耗による駆動伝達速度の変化量を、次に示す急激な歯折れ等を除き、必要な仕様の範囲内に保つことができる。
【0032】
また、このようにギアの摩耗に対する閾値を設定して交換を行う構成とすることで、歯の細りによる歯折れの発生を未然に防ぐことができる。
【0033】
(2)急激な歯折れの検出
図2は、ギア1が急激に歯折れした状態での駆動伝達装置の概略構成を示す図である。図2に示す駆動伝達装置は、ギア1に歯折れ部101が存在する以外は図1(A)に示す駆動伝達装置と同じ構造であり、歯折れ部101以外の部分での動作は、前述の説明と同じであるので省略する。
図2に示すように、ギア1に歯折れ部101が発生すると、たとえ初期状態の各ギア1〜7の歯の係合状態が良い状態であっても、歯折れ部101でギア1とギア2とが係合しない。このため、歯折れ部101では、ギア1が回転してもギア2〜ギア7は回転しない。従って、この間は、エンコーダ21では回転量が検出されるが、エンコーダ22では回転量が検出されない。すなわち、エンコーダ21から出力される回転検出信号はHi状態またはLow状態のままになる。ここで、歯折れがなければ、エンコーダ21のHi,Lowの繰り返しタイミングと、エンコーダ22のHi,Lowの繰り返しタイミングとは同じになる。
【0034】
駆動状態検出部25は、エンコーダ21から入力される回転検出信号とエンコーダ22から入力される回転検出信号とを比較して、エンコーダ21からの回転検出信号が定常的にHi,Lowを繰り返しているのに対し、エンコーダ22からの回転検出信号が一時的にHiまたはLowにロックされると、ギア1〜ギア7のいずれかに歯折れが発生したことを検出して、歯折れ検出信号を生成する。そして、駆動状態検出部25は歯折れ検出信号に基づき、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のギアに歯折れが発生し、安定な搬送を行えないことを検知して、ギアの交換を行う。
【0035】
このような構成とすることで、急激にギアの歯折れが発生しても即座に検出することができる。この結果、後述する紙葉類識別装置では、歯折れによる駆動伝達の不具合に起因する紙葉類の識別ミスを防止することができる。
【0036】
(3)ギアと回転軸との結合部の摩耗検出
(3−1)Dカット結合法によるDカット部の摩耗検出
図3(A)はDカット結合部の正面図であり、図3(B)はその側面断面図である。また、図4(A)は摩耗前のDカット結合部の正面図であり、図4(B)は摩耗後のDカット結合部の正面図である。
また、図5はDカット結合を用いた駆動伝達装置におけるDカット結合部の摩耗後の概略構成を示す図である。なお、図5に示す駆動伝達装置は、各ギアと回転軸とをDカット結合したものであり、他の構成は図1に示す駆動伝達装置と同じであり、ギア間の駆動伝達についての説明は省略する。
【0037】
Dカット結合では、円柱形の回転軸91の端部の円周部が部分的に切削されており、回転軸の端部は回転軸の軸方向から見た形状が「D」字状にDカット部911が形成されている。一方、ギア1の中心には、回転軸91のDカット部911と同じ形状の貫通孔19が形成されている。この貫通孔19には回転軸91のDカット部911が嵌合しており、回転軸91の端部はギア1の表面から突出している。この回転軸91の突出部のギア1表面に接する位置には、回転軸91がギア1の貫通孔19から抜けることを防止する補助部材であるEリング912が設置されている。このような構成とすることで、ギア1と回転軸91とが固定される。この場合、例えば回転軸91に駆動力が加えられると、Dカット部911における回転軸91とギア1との互いの平坦部が接触する部分で駆動力が伝達されてギア1が回転する。このため、平坦部の端部に駆動力が作用する。ここで、回転軸91が金属製であり、ギア1が樹脂製であれば、低硬度である樹脂製のギア1が変形する。具体的には、D形状の貫通孔19の角部から平坦部が削られていき、徐々に円形に近づいていってしまう。このような構造では、駆動源により回転軸91が回転開始してからギア1が回転開始するまでに、D形状の貫通孔19の摩耗量に応じたタイミングのズレ(図5の角度Cに対応する時間)が生じる。このため、ギア1〜7で駆動伝達に遅延が生じなくても、エンコーダ21の駆動開始検出信号とエンコーダ22の駆動開始検出信号とのタイミング差は、D形状の貫通孔19の摩耗が発生する前よりも長くなる。駆動状態検出部25は、このタイミング差を検出して、検出したタイミング差に基づく時間と、予め設定しておいた閾値に対応する時間とを比較し、検出したタイミング差に基づく時間が長ければ、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のDカット結合部の摩耗が安定な搬送を行うための限界であることを検知して、ギアの交換を行う。
【0038】
(3−2)ピン結合法によるピン結合部の摩耗検出
図6(A)はピン結合部の正面図であり、図6(B)はその側面断面図であり、図6(c)はその裏面図である。また、図7(A)は摩耗前のピン結合部の裏面図であり、図7(B)は摩耗後のピン結合部の裏面図である。
また、図8はピン結合を用いた駆動伝達装置におけるピン結合部の摩耗後の概略構成を示す図である。なお、図8に示す駆動伝達装置は、各ギアと回転軸とをピン結合したものであり、他の構成は図1、図5に示す駆動伝達装置と同じであり、ギア間の駆動伝達についての説明は省略する。
【0039】
ピン結合では、ギア1の回転軸91中央方向の表面(図6(C)に示す面)に棒状のピン913が嵌合する溝199が形成されており、回転軸91の端部から所定長さ中央側の位置には棒状のピン913が挿嵌する貫通孔914が形成されている。この回転軸91の貫通孔914にピン913が挿嵌されるとともに、ギア1の溝199にピン913が嵌合される。また、回転軸91の端部はギア1の表面から突出しており、この回転軸91の突出部のギア1表面に接する位置には、回転軸91がギア1の貫通孔19から抜けることを防止する補助部材であるEリング912が設置されている。このような構成とすることで、ギア1と回転軸91とが固定される。この場合、例えば回転軸91に駆動力が加えられると、ピン結合部におけるピン913と回転軸91とギア1との接触部で駆動力が伝達されてギア1が回転する。ここで、回転軸91およびピン913が金属製であり、ギア1が樹脂製であれば、低硬度である樹脂製のギア1が変形する。具体的には、溝199がピン913の回転により削られていき、徐々に扇形状に変形していってしまう。このような構造では、駆動源により回転軸91が回転開始してからギア1が回転開始するまでに、ピン結合部の溝199の摩耗量に応じたタイミングのズレ(図8の角度Dに相当する時間)が生じる。このため、ギア1〜7で駆動伝達に遅延が生じなくても、エンコーダ21の駆動開始検出信号とエンコーダ22の駆動開始検出信号とのタイミング差は、溝199の摩耗が発生する前よりも長くなる。駆動状態検出部25は、このタイミング差を検知し、検知したタイミング差に基づく時間と、予め設定しておいた閾値に対応する時間とを比較し、検知したタイミング差検出信号に基づく時間が長ければ、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のピン結合部の溝の摩耗が安定な搬送を行うための限界であることを検知して、ギアの交換を行う。
【0040】
このように本実施形態の構成を用いることで、駆動伝達装置のギアと回転軸との接続部の摩耗も検出することができる。
【0041】
なお、前述の実施形態では、駆動源に直接接続する回転軸と、ギア列の末端のギアに接続する回転軸にエンコーダとにそれぞれエンコーダを設置した例を示したが、ギア1〜ギア7からなるギア列の途中のギアに接続する回転軸にエンコーダを設置しても良い。
【0042】
図9は、ギア列の途中のギアに接続する回転軸にエンコーダを設置した駆動伝達装置の概略構成を示す図である。図9では、末端のギア7の1つ手前のギア6に接続する回転軸96にエンコーダ23を設置した状態を示す。
【0043】
このような構成であっても、ギア1〜ギア6に対して、前述のように、ギアの歯の摩耗、歯折れを検出することができるとともに、駆動源に直接接続する回転軸とこれに接続するギアとの結合部の摩耗を検出することができる。なお、この場合、ギア7の歯の摩耗および歯折れは検出することはできない。
【0044】
また、前述の実施形態では、駆動源に直接接続する回転軸にエンコーダ11を設置する例を示したが、駆動源であるモータの駆動制御信号を駆動開始のタイミングとして検出しても良い。
【0045】
図10は、駆動源の駆動制御信号を用いた場合の駆動伝達装置の構成を示す図である。
【0046】
図10に示す駆動伝達装置は、図1に示す駆動伝達装置からエンコーダ21を省略し、ギア1、回転軸91に直接接続されたモータ100の駆動制御信号をタイミング検出に利用するものである。この駆動伝達装置では、駆動制御部24からモータ100に駆動制御信号が入力されるとともに、駆動状態検出部25にも駆動制御信号が入力される。
【0047】
このような構成であっても、駆動源に直接接続する回転軸やギアの駆動開始タイミングに対応するタイミングを得ることができるので、前述のように、ギアの歯の摩耗、歯折れを検出することができ、駆動源に直接接続する回転軸とこれに接続するギアとの結合部の摩耗を検出することができる。そして、このような構成とすることで、駆動源に直接接続する回転軸に設置するエンコーダを省略することができるので、前述の効果を奏しながらも、より簡素な構成の駆動伝達装置を実現することができる。
【0048】
また、前述の実施形態では、駆動力伝達部材として、ギアのみを用いた例を示したが、ギアのみでなくベルト等を用いた構成であってもよい。
【0049】
図11はギアとベルトとを用いた駆動伝達装置の構成を示す図である。
図11は、図1におけるギア3,4,5を省略し、ギア2とギア6にそれぞれプーリ82,86を設置し、これらプーリ82,86をベルト80で接続したものである。この構成では、ギア2が回転するとプーリ82が回転し、ベルト80が回動する。ベルト80が回動すると、プーリ86が回転し、ギア6が回転する。このような動作により駆動力が伝達される。
【0050】
このような構成であっても、駆動源に直接接続する回転軸の駆動開始タイミングと、末端のギアに接続する回転軸の駆動開始タイミングとをエンコーダ11,21で検出することができる。これにより、前述のように、ギアの歯の摩耗、歯折れを検出することができ、駆動源に直接接続する回転軸とこれに接続するギアとの結合部の摩耗を検出することができる。さらには、ベルトの摩耗によるスリップを検出することができる。
【0051】
次に、第1の実施形態に示した各駆動伝達装置を用いた紙葉類識別装置を第2の実施形態として図を参照して説明する。
【0052】
図12は本実施形態の紙葉類識別装置の概略構成を示す図である。
【0053】
紙葉類識別装置は、ギア1〜13、エンコーダ21,22、下搬送ローラ31〜36、上搬送ローラ41〜46、バネ51〜56、センサ61,62、駆動状態検出部25、紙葉類識別部26を備える。
【0054】
ギア1〜11は、紙葉類搬送方向に平行な方向に順に配置されており、隣り合うギアギア1とギア2、...、ギア10とギア11)同士の歯が係合している。また、ギア1の紙葉類搬送経路に対向する側の所定位置にはギア12が設置されており、ギア1とギア12の歯も係合している。そして、このギア12に接続する回転軸が駆動源であるモータ100に接続する。また、ギア11の紙葉類搬送経路に対向する側の所定位置にはギア13が設置されており、ギア11とギア13の歯も係合している。
【0055】
ギア1、ギア3、ギア5、ギア7、ギア9、ギア11にはそれぞれ下搬送ローラ31,32,33,34,35,36が設置されており、ギアの回転とともに下搬送ローラ31〜36も回転する。これら下搬送ローラ31〜36の紙葉類搬送経路方向の端部位置は全て同じであり、これらの点を結ぶ線が紙葉類搬送経路に相当する。下搬送ローラ31〜36の紙葉類搬送経路を対称面とした対称位置には、上搬送ローラ41〜46が設置されており、それぞれバネ51〜56により付勢されて下搬送ローラ31〜36に接触している。この構造により紙葉類搬送経路(上搬送ローラ41〜46と下搬送ローラ31〜36との間)に紙幣等の紙葉類が搬入されると、モータ100によりギア1〜13が回転し、駆動力が伝達されて、下搬送ローラ31〜36が同じ方向に回転する。ここで、上搬送ローラ41〜46が下搬送ローラ31〜36に対して所定の付勢力により接触していることで、それぞれに対向する位置に配置された上搬送ローラ41〜46と下搬送ローラ31〜36とが紙葉類を挟み込み、紙葉類には下搬送ローラ31〜36の回転による搬送力が作用して、紙葉類が所定の搬送方向、例えば図12であれば、下搬送ローラ36側から下搬送ローラ31側に向かう方向に搬送される。
【0056】
センサ61,62はそれぞれ磁気センサまたは光センサ等で構成されており、センサ61,62の設置位置を通過する紙葉類に備えられている磁気情報や光透過率等の固有情報を検出して、紙葉類識別部26に出力する。紙葉類識別部26は、入力された情報を解析して、紙葉類の種類を識別する。
【0057】
ところで、ギア12に接続する回転軸にはエンコーダ21が固定設置されており、ギア13に接続する回転軸にはエンコーダ22が固定設置されている。エンコーダ21,22は駆動状態検出部25に電気的に接続されており、エンコーダ21,22で検出した信号が駆動状態検出部25に入力される。そして、前述のようにモータ100が駆動し、ギア12に接続する回転軸およびギア13に接続する回転軸が回転すると、駆動開始と回転量とを示す信号を生成して、駆動状態検出部25に出力する。
【0058】
駆動状態検出部25はエンコーダ21,22から入力される信号に基づき、ギア1〜13により構成される駆動伝達装置の先端のギア1に接続する回転軸の回転開始タイミング(駆動開始タイミング)と、末端のギア13に接続する回転軸の回転開始タイミング(駆動開始タイミング)とのタイミング差を検出する。そして、検出したタイミング差に対応する時間と予め設定された閾値時間とを比較し、検出したタイミング差に対応する時間が長ければ、外部に警告を発する。ここで、閾値時間は、駆動伝達装置の駆動状態により搬送速度が許容される精度以下になるタイミング差に対応する時間が設定されている。
【0059】
このような駆動状態検出部25の処理を紙葉類識別装置の立ち上げ時に毎度行うことで、突然のギアの歯折れ等の突発故障が発生しない限り、紙葉類識別装置の動作中に生じる搬送速度の精度低下による識別ミス等を未然に防ぐことができる。また、駆動状態検出部25を紙葉類識別装置の動作中に動作させておくことで、歯折れ等による突発的な故障により搬送速度が変化することを即座に検出することができるとともに、識別処理を停止して識別ミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施形態の駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図2】ギア1が急激に歯折れした状態での駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図3】Dカット結合部の正面図およびその側面断面図
【図4】摩耗前のDカット結合部の正面図および摩耗後のDカット結合部の正面図
【図5】Dカット結合を用いた駆動伝達装置におけるDカット結合部の摩耗後の概略構成を示す図
【図6】ピン結合部の正面図、その側面断面図、およびその裏面図
【図7】摩耗前のピン結合部の裏面図、および摩耗後のピン結合部の裏面図
【図8】ピン結合を用いた駆動伝達装置におけるピン結合部の摩耗後の概略構成を示す図
【図9】ギア列の途中のギアに接続する回転軸にエンコーダを設置した駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図10】駆動源の駆動制御信号を用いた場合の駆動伝達装置の構成を示す図
【図11】ギアとベルトとを用いた駆動伝達装置の構成を示す図
【図12】第2の実施形態の紙葉類識別装置の概略構成を示す図
【図13】駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図14】歯の摩耗は殆ど無く、ギア1に歯折れが発生した状態の駆動伝達装置の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0061】
1〜13−ギア
21,22,23−エンコーダ
111,211−回転部
112,212−検出部
24−駆動制御部
25−駆動状態検出部
26−紙葉類識別部
31〜36−下搬送ローラ
41〜46−上搬送ローラ
51〜56−バネ
61,62−センサ
80−ベルト
82,86−プーリ
91〜97−回転軸
100−モータ
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙葉類の識別を行う紙葉類識別装置に用い、一定の搬送速度を必要とする搬送路の駆動に利用される駆動伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣等の紙葉類を識別する紙葉類識別装置は、挿入された紙葉類を搬送しながら、紙葉類に備えられている磁気データ等を読み取って識別を行っている。紙葉類の磁気データを搬送しながら読み取る場合、磁気データの読み取り精度は紙葉類の搬送速度の精度に大きく影響される。
このため、例えば、特許文献1には、搬送路の幅方向の両端に設置された駆動ローラと従動ローラとの回転をエンコーダで検出して、搬送される紙葉類(カード)のスリップを検出して搬送速度を検出する装置が開示されている。
【特許文献1】特開平5−20783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、所定長に亘る搬送ベルト上に紙葉類を載置した状態で搬送し、搬送経路上にセンサを設置して、紙葉類の情報を読み取るような構造の場合、搬送ベルトを駆動するギアや搬送ベルトが摩耗して、搬送速度が不安定になることがある。
【0004】
図13は駆動伝達装置の概略構成を示す図であり、(A)はギアが摩耗する前を示し、(B)はギアが摩耗した状態を示す。
【0005】
ギア1〜7はそれぞれ回転軸91〜97に接続されており、これら回転軸91〜97とともに軸方向に垂直な方向に直列に配置されている。そして、隣り合うギア(ギア1とギア2、ギア2とギア3、...ギア6とギア7)同士の歯は係合している。また、図示しないが、ギア1に接続する回転軸91が駆動源に接続されており、ギア1〜7のうちではギア1から駆動が開始される。このようなギア1〜7からなる駆動伝達装置において、駆動源から回転軸91を介してギア1に駆動力が伝達されるとギア1が回転する。このギア1の回転に応じて、ギア2〜ギア6が回転して、ギア7が回転する。
【0006】
この際、図13(A)に示すように、ギア1〜7の歯の摩耗が殆どなければ、ギア1の回転の直後にギア7が回転する。このような駆動動作を繰り返すと、図13(B)のようにギア1〜7の歯が摩耗する。そして、図13(B)に示すように歯が摩耗すると、各ギア1〜7の歯の幅(回転方向に沿った長さ)が初期状態よりも細くなり、歯の幅に対する隣り合う歯間の間隔が広くなる。このため、先に回転するギア(先頭側のギア)が所定量回転して初めて、先頭側のギアの歯が後に回転するギア(末端側のギア)の歯に接触する。これにより、隣り合うギア間で回転を伝達するのに所定のタイムラグが発生する。
【0007】
この現象は、駆動伝達装置を構成する各ギア1〜7間で発生するので、ギア1が回転を開始してから、ギア7が回転を開始するまでに、ギア1は所定角回転していなければならない(図13(B)の角A°)。このため、ギア1が回転を開始してからギア7が回転を開始するまでの時間差は初期状態よりも長くなる。
【0008】
このように、駆動伝達装置の先頭のギア1と末端のギア7との回転開始時間差が初期状態から変化していくことで、駆動伝達速度が徐々に変化してしまい、図13(A)に示す状態と図13(B)に示す状態とでは異なる。このため、紙幣等に備えられている磁気情報を読み取る場合に、搬送速度が変化して読み取り精度が低下する。これにより、紙葉類が識別できなくなるという問題が発生する。
【0009】
また、ギアの状態変化による駆動伝達速度の精度低下の問題としては、次の問題もある。
図14は、歯の摩耗は殆ど無く、ギア1に歯折れが発生した状態の駆動伝達装置の概略構成を示す図である。
図14では、ギア1に歯折れが発生したことで、歯折れ発生部101でギア1とギア2とが係合せず、ギア1からギア2に駆動力を伝達するには、ギア1を余剰に所定角回転させなければならない。これにより、ギア1の回転開始時間とギア7の回転開始時間との間にタイムラグが発生する。この場合、歯折れが無い部分では殆どタイムラグが発生しないが、歯折れがある部分ではタイムラグが発生する。すなわち、約1回転毎に駆動伝達速度の変化が生じる。このような場合でも、搬送速度が変化して読み取り精度が低下し、紙葉類が識別できなくなるという問題が発生する。
【0010】
このような歯折れは、図13(B)に示すような歯が細くなった場合に発生しやすく、歯が細くなりとともに歯折れが発生すると、より一層駆動伝達速度が不安定になり、搬送する紙葉類の識別が困難になる。
【0011】
したがって、この発明の目的は、ギアの状態変化による駆動伝達速度の変化を検知する駆動伝達装置と、この駆動伝達速度の変化によって紙葉類の識別ミス等の誤動作を未然にまたは即座に検出する紙葉類識別装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の駆動伝達装置は、互いに連接され、駆動源からの駆動力を伝達する複数の駆動力伝達部材と、予め設定された駆動開始タイミングを検出する第1駆動開始検出手段と、複数の駆動力伝達部材のうち、駆動源に接続された駆動力伝達部材を除く少なくとも1つの駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出する第2駆動開始検出手段と、第1駆動開始検出手段の検出信号と第2駆動開始検出手段の検出信号とのタイミング差を検出する駆動状態検出手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
この構成では、駆動源により駆動力が発生すると、互いに連接された駆動力伝達部材に駆動力が順次伝達される。この際、全体の駆動の略最初のタイミングに相当する駆動開始タイミングが第1駆動開始検出手段で検出され、所定位置の駆動力伝達部材の駆動開始が第2駆動開始検出手段で検出される。そして、これらのタイミング差が駆動状態検出手段により検出される。ここで、駆動力伝達部材の状態が時系列で変化し、これに基づく伝達時間が変化すると、駆動力伝達部材の状態変化は、駆動状態検出手段により検出されるタイミング差の変化により把握される。
【0014】
また、この発明の駆動伝達装置は、第1駆動開始検出手段で、駆動源に直接接続された駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出することを特徴としている。例えば、駆動源がモータ、駆動力伝達部材がギアであり、第1駆動開始検出手段および第2駆動開始検出手段がそれぞれギア群における先頭のギアと末端のギアとに接続する回転軸に設置されたエンコーダである場合、ギアの形状(歯形状)等の変化により駆動伝達状態(速度)が変化すると、2つのエンコーダの回転検出タイミングの差が変化する。
【0015】
この構成では駆動源に直接接続される駆動伝達部材の駆動開始タイミングがタイミング差の検出に利用される。
【0016】
また、この発明の駆動伝達装置は、第1駆動開始検出手段で、駆動源の駆動開始タイミングを検出することを特徴としている。
【0017】
この構成では駆動源の駆動開始タイミングがタイミング差の検出に利用される。例えば、前述のように、駆動源がモータ、駆動力伝達部材がギアであり、第1駆動開始検出手段がモータの駆動開始タイミングを検出する装置(例えば、モータ駆動信号検出装置)であり、第2駆動開始検出手段がギア群における末端のギアに接続する回転軸に設置されたエンコーダである場合、ギアの形状(歯形状)等の変化により駆動伝達状態(速度)が変化すると、2つのエンコーダの回転検出タイミングの差が変化する。
【0018】
また、この発明の駆動伝達装置は、タイミング差が予め設定された閾値以上になると警告を行う警告手段を駆動状態検出手段に備えたことを特徴としている。
【0019】
この構成では、検出されたタイミング差と所定の閾値とを比較することで、安定な駆動状態の限界よりも駆動状態が悪化したことを検出して警告が発生される。
【0020】
また、この発明の紙葉類識別装置は、前述の駆動伝達装置と、該駆動伝達装置により駆動される所定方向に紙葉類を搬送する搬送手段と、搬送手段による搬送経路上に設置され、紙葉類に記録された情報をセンシングするセンサと、該センサのセンシング結果に基づき紙葉類を識別する識別手段と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
この構成では、前述のように駆動伝達装置により所定閾値のタイミング差が検出されると、駆動状態が安定ではないことを検出し、紙葉類の搬送及び識別が不安定になることを検出する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、駆動伝達装置を構成する各駆動伝達部材の状態変化による駆動伝達速度の変化を検出することができる。これにより、例えば、ギアの歯が細くなったり歯折れが発生する等して駆動伝達部材が予め設定した状態よりも悪化し、駆動伝達状態が悪化することを、駆動伝達装置は未然にまたは即座に検出することができる。
【0023】
また、この発明によれば、紙葉類識別装置は、駆動力伝達部材の状態悪化による識別ミスを未然にまたは即座に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
第1の実施形態に係る駆動伝達装置について図を用いて説明する。
(1)通常のギアの摩耗による駆動伝達速度の変化の検出
図1は本実施形態の駆動伝達装置の概略構成を示す図であり、(A)はギアが摩耗する前を示し、(B)はギアが摩耗した状態を示す。この駆動伝達装置は紙幣等の紙葉類の搬送系の駆動力の伝達に利用するものであり、後述する紙葉類識別装置に備えられる。
【0025】
図1に示すように、駆動伝達装置はギア1〜7とエンコーダ21,22とを備える。ギア1〜7は、図示しない回転軸に設置されており、これら回転軸に垂直な方向に直列に配置されている。そして、隣り合うギア(ギア1とギア2、ギア2とギア3、...ギア6とギア7)同士の歯は係合している。また、図示しないが、ギア1が駆動源に接続されており、ギア1から駆動が開始される。このようなギア1〜7からなる駆動伝達装置において、駆動源からギア1に駆動力が伝達されるとギア1が回転する。このギア1の回転に応じて、ギア2〜ギア6が回転して、ギア7が回転する。
【0026】
エンコーダ21,22はそれぞれ回転部111,211と検出部112,212とを備える。エンコーダ21の回転部111はギア1に接続する回転軸91に固定設置されており、ギア1とともに回転する。回転部111には円周状に等間隔でスリットが形成されており、この回転部111のスリット形成部を挟んで検出部112の発光部と受光部とが対向して設置されている。検出部112は、回転軸91とともに回転部111が回転してスリットが順次、発光部と受光部との間を通過することを検出し、検出したスリット数に応じた回転量検出信号を出力する。また、検出部112は、回転軸91の回転が開始すると回転部111が回転を開始することから、最初にスリットの開口部に達した、または、スリットを形成する壁部に達したタイミングで信号のレベル差が発生し、これを駆動開始検出信号として出力する。
【0027】
エンコーダ22の回転部211はギア7の回転軸97に固定設置されており、ギア7、回転軸97とともに回転する。回転部211には円周状に等間隔でスリットが形成されており、この回転部211のスリット形成部を挟んで検出部212の発光部と受光部とが対向して設置されている。検出部212は、ギア7、回転軸97の回転により回転部211が回転してスリットが順次、発光部と受光部との間を通過することを検出し、検出したスリット数に応じた回転量検出信号を出力する。また、検出部212は、ギア7の回転が開始すると回転部211が回転を開始することから、検出部212が最初にスリットの開口部に達した、または、スリットを形成する壁部に達したタイミングで信号のレベル差が発生し、これを駆動開始検出信号として出力する。
【0028】
エンコーダ21およびエンコーダ22から出力された駆動開始検出信号は、駆動状態検出部25に入力され、ギア1の回転開始タイミングとギア7の回転開始タイミングとの時間差が検出される。
【0029】
ここで、図1(A)に示すように、ギア1〜7が摩耗していない状態では、各ギア1〜7の歯が略きっちりと係合しているので、エンコーダ21の駆動開始検出信号の発生タイミングとエンコーダ22の駆動開始検出信号の発生タイミングとは殆ど時間的に差がない。すなわち、タイミング差は極小さくなる。一方、図1(B)に示すように、ギア1〜7が摩耗した状態では、各ギア1〜7の歯が細くなり、歯の幅が隣り合う歯の間隔よりも狭くなる。このため、先頭側のギアの歯が末端側のギアの歯に接触するまでに、先頭側のギアは摩耗量に応じて所定量回転する。このような歯の摩耗はギア1〜7で発生するので、末端のギア7が回転し始めるまでに、先頭のギア1は、各ギア1〜7の歯の摩耗量の合計に応じた角度分回転しなければならない。すなわち、先頭のギア1が所定角分回転して初めて、ギア7が回転し始める。このため、エンコーダ21で検出する駆動開始検出信号の発生タイミングとエンコーダ22で検出する駆動開始検出信号の発生タイミングは、前記所定角(図1(B)の角度A°)に相当するタイミング差が発生し、駆動状態検出部25はこのタイミング差を検出する。
【0030】
駆動状態検出部25は、エンコーダ21からの駆動開始検出信号とエンコーダ22からの駆動開始検出信号とを差分して、タイミング差を時間で表すタイミング差検出信号を生成する。駆動状態検出部25は、駆動状態の悪化の指針となるタイミング差閾値を予め記憶しており、タイミング差検出信号に基づく時間と、タイミング差閾値に対応する時間とを比較し、タイミング差検出信号に基づく時間が長ければ、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のギアの摩耗が安定な搬送を行うための限界であることを検知して、ギアの交換を行う。
【0031】
このような構成とすることで、ギアの摩耗により、紙葉類の搬送に必要な駆動伝達の動作精度が守られなくなる前に、ギアを交換することができる。これにより、ギアの摩耗による駆動伝達速度の変化量を、次に示す急激な歯折れ等を除き、必要な仕様の範囲内に保つことができる。
【0032】
また、このようにギアの摩耗に対する閾値を設定して交換を行う構成とすることで、歯の細りによる歯折れの発生を未然に防ぐことができる。
【0033】
(2)急激な歯折れの検出
図2は、ギア1が急激に歯折れした状態での駆動伝達装置の概略構成を示す図である。図2に示す駆動伝達装置は、ギア1に歯折れ部101が存在する以外は図1(A)に示す駆動伝達装置と同じ構造であり、歯折れ部101以外の部分での動作は、前述の説明と同じであるので省略する。
図2に示すように、ギア1に歯折れ部101が発生すると、たとえ初期状態の各ギア1〜7の歯の係合状態が良い状態であっても、歯折れ部101でギア1とギア2とが係合しない。このため、歯折れ部101では、ギア1が回転してもギア2〜ギア7は回転しない。従って、この間は、エンコーダ21では回転量が検出されるが、エンコーダ22では回転量が検出されない。すなわち、エンコーダ21から出力される回転検出信号はHi状態またはLow状態のままになる。ここで、歯折れがなければ、エンコーダ21のHi,Lowの繰り返しタイミングと、エンコーダ22のHi,Lowの繰り返しタイミングとは同じになる。
【0034】
駆動状態検出部25は、エンコーダ21から入力される回転検出信号とエンコーダ22から入力される回転検出信号とを比較して、エンコーダ21からの回転検出信号が定常的にHi,Lowを繰り返しているのに対し、エンコーダ22からの回転検出信号が一時的にHiまたはLowにロックされると、ギア1〜ギア7のいずれかに歯折れが発生したことを検出して、歯折れ検出信号を生成する。そして、駆動状態検出部25は歯折れ検出信号に基づき、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のギアに歯折れが発生し、安定な搬送を行えないことを検知して、ギアの交換を行う。
【0035】
このような構成とすることで、急激にギアの歯折れが発生しても即座に検出することができる。この結果、後述する紙葉類識別装置では、歯折れによる駆動伝達の不具合に起因する紙葉類の識別ミスを防止することができる。
【0036】
(3)ギアと回転軸との結合部の摩耗検出
(3−1)Dカット結合法によるDカット部の摩耗検出
図3(A)はDカット結合部の正面図であり、図3(B)はその側面断面図である。また、図4(A)は摩耗前のDカット結合部の正面図であり、図4(B)は摩耗後のDカット結合部の正面図である。
また、図5はDカット結合を用いた駆動伝達装置におけるDカット結合部の摩耗後の概略構成を示す図である。なお、図5に示す駆動伝達装置は、各ギアと回転軸とをDカット結合したものであり、他の構成は図1に示す駆動伝達装置と同じであり、ギア間の駆動伝達についての説明は省略する。
【0037】
Dカット結合では、円柱形の回転軸91の端部の円周部が部分的に切削されており、回転軸の端部は回転軸の軸方向から見た形状が「D」字状にDカット部911が形成されている。一方、ギア1の中心には、回転軸91のDカット部911と同じ形状の貫通孔19が形成されている。この貫通孔19には回転軸91のDカット部911が嵌合しており、回転軸91の端部はギア1の表面から突出している。この回転軸91の突出部のギア1表面に接する位置には、回転軸91がギア1の貫通孔19から抜けることを防止する補助部材であるEリング912が設置されている。このような構成とすることで、ギア1と回転軸91とが固定される。この場合、例えば回転軸91に駆動力が加えられると、Dカット部911における回転軸91とギア1との互いの平坦部が接触する部分で駆動力が伝達されてギア1が回転する。このため、平坦部の端部に駆動力が作用する。ここで、回転軸91が金属製であり、ギア1が樹脂製であれば、低硬度である樹脂製のギア1が変形する。具体的には、D形状の貫通孔19の角部から平坦部が削られていき、徐々に円形に近づいていってしまう。このような構造では、駆動源により回転軸91が回転開始してからギア1が回転開始するまでに、D形状の貫通孔19の摩耗量に応じたタイミングのズレ(図5の角度Cに対応する時間)が生じる。このため、ギア1〜7で駆動伝達に遅延が生じなくても、エンコーダ21の駆動開始検出信号とエンコーダ22の駆動開始検出信号とのタイミング差は、D形状の貫通孔19の摩耗が発生する前よりも長くなる。駆動状態検出部25は、このタイミング差を検出して、検出したタイミング差に基づく時間と、予め設定しておいた閾値に対応する時間とを比較し、検出したタイミング差に基づく時間が長ければ、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のDカット結合部の摩耗が安定な搬送を行うための限界であることを検知して、ギアの交換を行う。
【0038】
(3−2)ピン結合法によるピン結合部の摩耗検出
図6(A)はピン結合部の正面図であり、図6(B)はその側面断面図であり、図6(c)はその裏面図である。また、図7(A)は摩耗前のピン結合部の裏面図であり、図7(B)は摩耗後のピン結合部の裏面図である。
また、図8はピン結合を用いた駆動伝達装置におけるピン結合部の摩耗後の概略構成を示す図である。なお、図8に示す駆動伝達装置は、各ギアと回転軸とをピン結合したものであり、他の構成は図1、図5に示す駆動伝達装置と同じであり、ギア間の駆動伝達についての説明は省略する。
【0039】
ピン結合では、ギア1の回転軸91中央方向の表面(図6(C)に示す面)に棒状のピン913が嵌合する溝199が形成されており、回転軸91の端部から所定長さ中央側の位置には棒状のピン913が挿嵌する貫通孔914が形成されている。この回転軸91の貫通孔914にピン913が挿嵌されるとともに、ギア1の溝199にピン913が嵌合される。また、回転軸91の端部はギア1の表面から突出しており、この回転軸91の突出部のギア1表面に接する位置には、回転軸91がギア1の貫通孔19から抜けることを防止する補助部材であるEリング912が設置されている。このような構成とすることで、ギア1と回転軸91とが固定される。この場合、例えば回転軸91に駆動力が加えられると、ピン結合部におけるピン913と回転軸91とギア1との接触部で駆動力が伝達されてギア1が回転する。ここで、回転軸91およびピン913が金属製であり、ギア1が樹脂製であれば、低硬度である樹脂製のギア1が変形する。具体的には、溝199がピン913の回転により削られていき、徐々に扇形状に変形していってしまう。このような構造では、駆動源により回転軸91が回転開始してからギア1が回転開始するまでに、ピン結合部の溝199の摩耗量に応じたタイミングのズレ(図8の角度Dに相当する時間)が生じる。このため、ギア1〜7で駆動伝達に遅延が生じなくても、エンコーダ21の駆動開始検出信号とエンコーダ22の駆動開始検出信号とのタイミング差は、溝199の摩耗が発生する前よりも長くなる。駆動状態検出部25は、このタイミング差を検知し、検知したタイミング差に基づく時間と、予め設定しておいた閾値に対応する時間とを比較し、検知したタイミング差検出信号に基づく時間が長ければ、視覚的または聴覚的に警告を外部に発生する。ユーザは、この警告により、駆動伝達装置のピン結合部の溝の摩耗が安定な搬送を行うための限界であることを検知して、ギアの交換を行う。
【0040】
このように本実施形態の構成を用いることで、駆動伝達装置のギアと回転軸との接続部の摩耗も検出することができる。
【0041】
なお、前述の実施形態では、駆動源に直接接続する回転軸と、ギア列の末端のギアに接続する回転軸にエンコーダとにそれぞれエンコーダを設置した例を示したが、ギア1〜ギア7からなるギア列の途中のギアに接続する回転軸にエンコーダを設置しても良い。
【0042】
図9は、ギア列の途中のギアに接続する回転軸にエンコーダを設置した駆動伝達装置の概略構成を示す図である。図9では、末端のギア7の1つ手前のギア6に接続する回転軸96にエンコーダ23を設置した状態を示す。
【0043】
このような構成であっても、ギア1〜ギア6に対して、前述のように、ギアの歯の摩耗、歯折れを検出することができるとともに、駆動源に直接接続する回転軸とこれに接続するギアとの結合部の摩耗を検出することができる。なお、この場合、ギア7の歯の摩耗および歯折れは検出することはできない。
【0044】
また、前述の実施形態では、駆動源に直接接続する回転軸にエンコーダ11を設置する例を示したが、駆動源であるモータの駆動制御信号を駆動開始のタイミングとして検出しても良い。
【0045】
図10は、駆動源の駆動制御信号を用いた場合の駆動伝達装置の構成を示す図である。
【0046】
図10に示す駆動伝達装置は、図1に示す駆動伝達装置からエンコーダ21を省略し、ギア1、回転軸91に直接接続されたモータ100の駆動制御信号をタイミング検出に利用するものである。この駆動伝達装置では、駆動制御部24からモータ100に駆動制御信号が入力されるとともに、駆動状態検出部25にも駆動制御信号が入力される。
【0047】
このような構成であっても、駆動源に直接接続する回転軸やギアの駆動開始タイミングに対応するタイミングを得ることができるので、前述のように、ギアの歯の摩耗、歯折れを検出することができ、駆動源に直接接続する回転軸とこれに接続するギアとの結合部の摩耗を検出することができる。そして、このような構成とすることで、駆動源に直接接続する回転軸に設置するエンコーダを省略することができるので、前述の効果を奏しながらも、より簡素な構成の駆動伝達装置を実現することができる。
【0048】
また、前述の実施形態では、駆動力伝達部材として、ギアのみを用いた例を示したが、ギアのみでなくベルト等を用いた構成であってもよい。
【0049】
図11はギアとベルトとを用いた駆動伝達装置の構成を示す図である。
図11は、図1におけるギア3,4,5を省略し、ギア2とギア6にそれぞれプーリ82,86を設置し、これらプーリ82,86をベルト80で接続したものである。この構成では、ギア2が回転するとプーリ82が回転し、ベルト80が回動する。ベルト80が回動すると、プーリ86が回転し、ギア6が回転する。このような動作により駆動力が伝達される。
【0050】
このような構成であっても、駆動源に直接接続する回転軸の駆動開始タイミングと、末端のギアに接続する回転軸の駆動開始タイミングとをエンコーダ11,21で検出することができる。これにより、前述のように、ギアの歯の摩耗、歯折れを検出することができ、駆動源に直接接続する回転軸とこれに接続するギアとの結合部の摩耗を検出することができる。さらには、ベルトの摩耗によるスリップを検出することができる。
【0051】
次に、第1の実施形態に示した各駆動伝達装置を用いた紙葉類識別装置を第2の実施形態として図を参照して説明する。
【0052】
図12は本実施形態の紙葉類識別装置の概略構成を示す図である。
【0053】
紙葉類識別装置は、ギア1〜13、エンコーダ21,22、下搬送ローラ31〜36、上搬送ローラ41〜46、バネ51〜56、センサ61,62、駆動状態検出部25、紙葉類識別部26を備える。
【0054】
ギア1〜11は、紙葉類搬送方向に平行な方向に順に配置されており、隣り合うギアギア1とギア2、...、ギア10とギア11)同士の歯が係合している。また、ギア1の紙葉類搬送経路に対向する側の所定位置にはギア12が設置されており、ギア1とギア12の歯も係合している。そして、このギア12に接続する回転軸が駆動源であるモータ100に接続する。また、ギア11の紙葉類搬送経路に対向する側の所定位置にはギア13が設置されており、ギア11とギア13の歯も係合している。
【0055】
ギア1、ギア3、ギア5、ギア7、ギア9、ギア11にはそれぞれ下搬送ローラ31,32,33,34,35,36が設置されており、ギアの回転とともに下搬送ローラ31〜36も回転する。これら下搬送ローラ31〜36の紙葉類搬送経路方向の端部位置は全て同じであり、これらの点を結ぶ線が紙葉類搬送経路に相当する。下搬送ローラ31〜36の紙葉類搬送経路を対称面とした対称位置には、上搬送ローラ41〜46が設置されており、それぞれバネ51〜56により付勢されて下搬送ローラ31〜36に接触している。この構造により紙葉類搬送経路(上搬送ローラ41〜46と下搬送ローラ31〜36との間)に紙幣等の紙葉類が搬入されると、モータ100によりギア1〜13が回転し、駆動力が伝達されて、下搬送ローラ31〜36が同じ方向に回転する。ここで、上搬送ローラ41〜46が下搬送ローラ31〜36に対して所定の付勢力により接触していることで、それぞれに対向する位置に配置された上搬送ローラ41〜46と下搬送ローラ31〜36とが紙葉類を挟み込み、紙葉類には下搬送ローラ31〜36の回転による搬送力が作用して、紙葉類が所定の搬送方向、例えば図12であれば、下搬送ローラ36側から下搬送ローラ31側に向かう方向に搬送される。
【0056】
センサ61,62はそれぞれ磁気センサまたは光センサ等で構成されており、センサ61,62の設置位置を通過する紙葉類に備えられている磁気情報や光透過率等の固有情報を検出して、紙葉類識別部26に出力する。紙葉類識別部26は、入力された情報を解析して、紙葉類の種類を識別する。
【0057】
ところで、ギア12に接続する回転軸にはエンコーダ21が固定設置されており、ギア13に接続する回転軸にはエンコーダ22が固定設置されている。エンコーダ21,22は駆動状態検出部25に電気的に接続されており、エンコーダ21,22で検出した信号が駆動状態検出部25に入力される。そして、前述のようにモータ100が駆動し、ギア12に接続する回転軸およびギア13に接続する回転軸が回転すると、駆動開始と回転量とを示す信号を生成して、駆動状態検出部25に出力する。
【0058】
駆動状態検出部25はエンコーダ21,22から入力される信号に基づき、ギア1〜13により構成される駆動伝達装置の先端のギア1に接続する回転軸の回転開始タイミング(駆動開始タイミング)と、末端のギア13に接続する回転軸の回転開始タイミング(駆動開始タイミング)とのタイミング差を検出する。そして、検出したタイミング差に対応する時間と予め設定された閾値時間とを比較し、検出したタイミング差に対応する時間が長ければ、外部に警告を発する。ここで、閾値時間は、駆動伝達装置の駆動状態により搬送速度が許容される精度以下になるタイミング差に対応する時間が設定されている。
【0059】
このような駆動状態検出部25の処理を紙葉類識別装置の立ち上げ時に毎度行うことで、突然のギアの歯折れ等の突発故障が発生しない限り、紙葉類識別装置の動作中に生じる搬送速度の精度低下による識別ミス等を未然に防ぐことができる。また、駆動状態検出部25を紙葉類識別装置の動作中に動作させておくことで、歯折れ等による突発的な故障により搬送速度が変化することを即座に検出することができるとともに、識別処理を停止して識別ミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】第1の実施形態の駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図2】ギア1が急激に歯折れした状態での駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図3】Dカット結合部の正面図およびその側面断面図
【図4】摩耗前のDカット結合部の正面図および摩耗後のDカット結合部の正面図
【図5】Dカット結合を用いた駆動伝達装置におけるDカット結合部の摩耗後の概略構成を示す図
【図6】ピン結合部の正面図、その側面断面図、およびその裏面図
【図7】摩耗前のピン結合部の裏面図、および摩耗後のピン結合部の裏面図
【図8】ピン結合を用いた駆動伝達装置におけるピン結合部の摩耗後の概略構成を示す図
【図9】ギア列の途中のギアに接続する回転軸にエンコーダを設置した駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図10】駆動源の駆動制御信号を用いた場合の駆動伝達装置の構成を示す図
【図11】ギアとベルトとを用いた駆動伝達装置の構成を示す図
【図12】第2の実施形態の紙葉類識別装置の概略構成を示す図
【図13】駆動伝達装置の概略構成を示す図
【図14】歯の摩耗は殆ど無く、ギア1に歯折れが発生した状態の駆動伝達装置の概略構成を示す図
【符号の説明】
【0061】
1〜13−ギア
21,22,23−エンコーダ
111,211−回転部
112,212−検出部
24−駆動制御部
25−駆動状態検出部
26−紙葉類識別部
31〜36−下搬送ローラ
41〜46−上搬送ローラ
51〜56−バネ
61,62−センサ
80−ベルト
82,86−プーリ
91〜97−回転軸
100−モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連接され、駆動源からの駆動力を伝達する複数の駆動力伝達部材と、
予め設定された駆動開始タイミングを検出する第1駆動開始検出手段と、
前記複数の駆動力伝達部材のうち、前記駆動源に接続された駆動力伝達部材を除く少なくとも1つの駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出する第2駆動開始検出手段と、
前記第1駆動開始検出手段の検出信号と第2駆動開始検出手段の検出信号とのタイミング差を検出する駆動状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第1駆動開始検出手段は、前記駆動源に直接接続された駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出する請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第1駆動開始検出手段は、前記駆動源の駆動開始タイミングを検出する請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記駆動状態検出手段は、前記タイミング差が予め設定された閾値以上になると警告を行う警告手段を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の駆動伝達装置と、
該駆動伝達装置により駆動される所定方向に紙葉類を搬送する搬送手段と、
搬送手段による搬送経路上に設置され、前記紙葉類に記録された情報をセンシングするセンサと、
該センサのセンシング結果に基づき紙葉類を識別する識別手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項1】
互いに連接され、駆動源からの駆動力を伝達する複数の駆動力伝達部材と、
予め設定された駆動開始タイミングを検出する第1駆動開始検出手段と、
前記複数の駆動力伝達部材のうち、前記駆動源に接続された駆動力伝達部材を除く少なくとも1つの駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出する第2駆動開始検出手段と、
前記第1駆動開始検出手段の検出信号と第2駆動開始検出手段の検出信号とのタイミング差を検出する駆動状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項2】
前記第1駆動開始検出手段は、前記駆動源に直接接続された駆動力伝達部材の駆動開始タイミングを検出する請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記第1駆動開始検出手段は、前記駆動源の駆動開始タイミングを検出する請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記駆動状態検出手段は、前記タイミング差が予め設定された閾値以上になると警告を行う警告手段を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の駆動伝達装置と、
該駆動伝達装置により駆動される所定方向に紙葉類を搬送する搬送手段と、
搬送手段による搬送経路上に設置され、前記紙葉類に記録された情報をセンシングするセンサと、
該センサのセンシング結果に基づき紙葉類を識別する識別手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類識別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−335485(P2006−335485A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159017(P2005−159017)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】
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