説明

駆動回路、液体噴射装置並びに印刷装置

【課題】電源電圧と駆動信号との電圧差を小さくすることができ、損失や発熱を低減することが可能な液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体噴射ヘッド2に設けられた複数のノズルと、それらのノズルに対応して設けられたノズルアクチュエータ22と、それらのノズルアクチュエータ22に駆動信号COMを印加する駆動回路20とを備えた液体噴射装置にあって、駆動信号COM又はその生成段階の信号から得た参照信号Vcntに基づいて当該駆動信号COMへの電源電圧VHV、VLVを予め設定された波形電圧に調整する電源電圧調整回路21を備え、充放電型アクチュエータからなるノズルアクチュエータ22に充電する駆動信号COMや当該ノズルアクチュエータ22を放電する駆動信号COMと電源電圧との電圧差を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な液体を複数のノズルから噴射して、その微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような印刷装置の一つであるインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このような液体噴射型印刷装置のうち、液体噴射ノズルの形成された液体噴射ヘッドをキャリッジと呼ばれる移動体に載せて印刷媒体の搬送方向と交差する方向に移動させるものを一般に「マルチパス型印刷装置」と呼んでいる。これに対し、印刷媒体の搬送方向と交差する方向に長尺な液体噴射ヘッドを配置して、所謂1パスでの印刷が可能なものを一般に「ラインヘッド型印刷装置」と呼んでいる。このような液体噴射装置では、液体を噴射するためのノズルを液体噴射ヘッドに複数形成すると共に各ノズルに圧電素子などのノズルアクチュエータを配設し、液体噴射ヘッドの各ノズルアクチュエータを波形電圧信号からなる駆動信号で駆動することにより該当するノズルから印刷媒体に向けて液体を噴射するものがある。
【0003】
このような駆動信号の電力増幅として、例えば下記特許文献1に記載される液体噴射装置では、ノズルアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号をアナログ変換回路でアナログ変換し、そのアナログ駆動波形信号をアナログ電力増幅回路で電力増幅するようにしている。また、下記特許文献2に記載される液体噴射装置では、前記駆動波形信号をアナログ変換回路でアナログ変換し、そのアナログ駆動波形信号をパルス変調し、その変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−77456号公報
【特許文献2】特開平11−204850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットプリンタのノズルアクチュエータとして用いられる圧電素子は充放電型のアクチュエータなので、駆動信号は充放電型アクチュエータに電荷を充電したり、当該充放電型アクチュエータから電荷を放電させたりする。前記特許文献2に記載される液体噴射装置のデジタル電力増幅器は、損失や発熱が少ないという利点があるものの、当該デジタル電力増幅器の出力側には駆動信号を平滑化するための平滑フィルタが介装されており、一般に平滑フィルタがローパスフィルタで構成され、このローパスフィルタに充放電型アクチュエータの静電容量が接続される構成となるため、駆動信号の波形が接続されるノズルアクチュエータ数に応じて変化してしまう。これに対し、アナログ電力増幅器は、出力側にローパスフィルタがないので、接続されるノズルアクチュエータ数が変化しても駆動信号の波形は変化しない。
【0006】
しかしながら、充放電型アクチュエータに電荷を充電したり、当該充放電型アクチュエータから電荷を放電させたりするためのアナログ電力増幅器は、プッシュプル接続された充電用トランジスタ及び放電用トランジスタで構成され、高い電源電圧を用い、所謂リニア駆動によって駆動信号を増幅しているため、電源電圧と充放電型アクチュエータを充電する駆動信号との電圧差も、充放電型アクチュエータから放電する駆動信号と接地電圧との電圧差も大きく、結果的に消費電力が大きい。この消費電力は、その殆どが熱として消費されるため、各駆動信号を発生する駆動回路には大型トランジスタやヒートシンクが必要となり、回路基板への実装面積が非常に大きくなり、特にヒートシンクの大きさは、レイアウト上、大きな障害となる。
本発明は、電源電圧と駆動信号との電圧差を小さくすることができ、損失や発熱を低減することが可能な液体噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、発明1の液体噴射装置は、液体噴射ヘッドに設けられた複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたノズルアクチュエータと、前記ノズルアクチュエータに駆動信号を印加する駆動回路とを備えた液体噴射装置であって、前記駆動信号又はその生成段階の信号から得た参照信号に基づいて当該駆動信号への電源電圧を予め設定された波形電圧に調整する電源電圧調整回路を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の駆動信号への電源電圧は、単に駆動信号を生成するために必要な電源電圧の上限値を示すのではなく、圧電素子などの充放電型アクチュエータからなるノズルアクチュエータの充電元電源電圧並びに放電先電源電圧を含めた電源電圧を示し、具体的には電力増幅回路のプッシュプル接続されたトランジスタ対の端子電圧を含むものである。
この液体噴射装置によれば、充放電型アクチュエータからなるノズルアクチュエータに充電する駆動信号や当該ノズルアクチュエータを放電する駆動信号と電源電圧との電圧差を小さくすることができ、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明の液体噴射装置は、前記駆動回路は、前記ノズルアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成する駆動波形信号発生回路と、前記駆動波形信号発生回路で生成された駆動波形信号をアナログ変換するアナログ変換回路と、前記アナログ変換回路でアナログ変換されたアナログ駆動波形信号を電力増幅する電力増幅回路と、前記電力増幅回路を駆動するためのプリドライバ回路とを備えて構成され、それらの何れかの回路の出力信号に基づいて参照信号を生成することを特徴とするものである。
【0010】
この液体噴射装置によれば、駆動信号の精度向上と、更なる損失や発熱の低減が可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、前記電源電圧調整回路は、複数の電源電圧を生成又は調整する複数の電源電圧生成回路又は電圧調整回路と、それら複数の電源電圧生成回路又は電圧調整回路の出力電圧を選択する電源電圧選択回路とを備えて構成されることを特徴とするものである。
【0011】
この液体噴射装置によれば、駆動信号と電源電圧との電圧差をより一層小さくして、更なる損失や発熱の低減が可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、前記電源電圧生成回路が直流電圧電源回路であるか又は前記電圧調整回路が直流電圧調整回路であることを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、電源電圧調整回路を実施化し易い。
【0012】
また、本発明の液体噴射装置は、前記電源電圧生成回路が交流電圧電源回路であるか又は前記電圧調整回路が交流電圧調整回路であることを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、電源電圧調整回路を実施化し易い。
また、本発明の液体噴射装置は、前記電源電圧調整回路は、ブートストラップ回路によって電源電圧を昇圧可能な電源回路で構成され、且つ前記参照信号によって前記ブートストラップ回路による電源電圧の昇圧を制御することを特徴とするものである。
【0013】
この液体噴射装置によれば、電源電圧調整回路を実施化し易いと共に、より低い電源電圧を用いて駆動信号への高い電源電圧を得ることが可能となる。
また、本発明の液体噴射装置は、前記ブートストラップ回路の出力側に逆流防止用のダイオードを配設したことを特徴とするものである。
この液体噴射装置によれば、駆動信号の波形を確保することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体噴射装置によれば、充放電型アクチュエータからなるノズルアクチュエータに充電する駆動信号やノズルアクチュエータを放電する駆動信号と電源電圧との電圧差を小さくすることができ、損失や発明を低減することができる効果を奏する。
また、本発明の液体噴射装置によれば、電源電圧調整回路を実施化し易いと共に、より低い電源電圧を用いて駆動信号への高い電源電圧を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液体噴射装置を適用したラインヘッド型印刷装置の第1実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図1の液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1の印刷装置の制御装置のブロック構成図である。
【図4】各液体噴射ヘッド内のノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラのブロック図である。
【図6】図1のヘッドドライバ内の構築された駆動回路近傍のブロック図である。
【図7】図6の駆動回路のブロック図である。
【図8】図7の電力増幅回路のブロック図である。
【図9】図6の電源電圧調整回路のブロック図である。
【図10】図1の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図11】本発明の液体噴射装置の第2実施形態を示す電源電圧の波形チャートである。
【図12】本発明の液体噴射装置の第3実施形態を示す電源電圧調整回路のブロック図である。
【図13】図12の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図14】本発明の液体噴射装置の第4実施形態を示す電源電圧調整回路のブロック図である。
【図15】図14の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図16】本発明の液体噴射装置の第5実施形態を示す電源電圧調整回路のブロック図である。
【図17】図16の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図18】図16の電源電圧調整回路の異なる例のブロック図である。
【図19】本発明の液体噴射装置の第6実施形態を示す駆動回路近傍のブロック図である。
【図20】図19の駆動回路のブロック図である。
【図21】図20の電力増幅回路のブロック図である。
【図22】図19の電源電圧調整回路のブロック図である。
【図23】図19の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図24】本発明の液体噴射装置の第7実施形態を示す電源電圧の波形チャートである。
【図25】本発明の液体噴射装置の第8実施形態を示す電源電圧調整回路のブロック図である。
【図26】図25の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図27】本発明の液体噴射装置の第9実施形態を示す電源電圧調整回路のブロック図である。
【図28】図27の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図29】本発明の液体噴射装置の第10実施形態を示す電源電圧調整回路のブロック図である。
【図30】図29の液体噴射装置による電源電圧の波形チャートである。
【図31】図29の電源電圧調整回路の異なる例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の印刷装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成図であり、図において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型印刷装置である。
【0017】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた6つの液体噴射ヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート11に固定されている。図2は、液体噴射ヘッド2付近の平面図である。これらの液体噴射ヘッド2は、例えば図に示すように、千鳥配列されている。各液体噴射ヘッド2の最下面を示す図の内側の四角形の内側部分には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。従って、千鳥配列された全ての液体噴射ヘッド2によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。印刷媒体1は、これらの液体噴射ヘッド2のノズル面の下方を通過するときに、ノズル面に形成されている多数のノズルから液体が噴射され、印刷が行われる。また、本実施形態の液体噴射ヘッド2では、ノズル面にノズルが千鳥状に開設されている。このようにノズルを千鳥状に開設することにより、直近のノズル間の印刷媒体搬送方向と交差する方向の距離、所謂画素間隔を短縮することができる。
【0018】
液体噴射ヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクなどの液体が、図示しない各色の液体タンクから液体供給チューブを介して供給される。各液体噴射ヘッド2には、印刷媒体1の搬送方向と直交する方向に、複数のノズルが形成されており(即ちノズル列方向)、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、所謂1パスによる印刷を行うことができる。
【0019】
液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰液体噴射方式などがあり、本実施形態ではピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、ノズルアクチュエータである圧電素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液滴がノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することで液滴の噴射量を調整することが可能となる。なお、ピエゾ方式に用いられる圧電素子は容量性負荷であり、駆動信号によって電荷が充電されたり、駆動信号側に電荷を放電したりする。また、本発明は、ピエゾ方式以外の液体噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0020】
液体噴射ヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラ8及び従動ローラ9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラ8には図示しない電動モータが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラ5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モータによって駆動ローラ8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、液体噴射ヘッド2から液体を噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。
【0021】
この印刷装置内には、自身を制御するための制御装置が設けられている。この制御装置は、例えば図3に示すように、例えばパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ等のホストコンピュータ60から入力された印刷データに基づいて、印刷装置や給紙装置等を制御することにより印刷媒体に印刷処理を行うものである。そして、ホストコンピュータ60から入力された印刷データを受取るための入力インタフェース61と、この入力インタフェース61から入力された印刷データに基づいて印刷処理を実行する例えばマイクロコンピュータで構成される制御部62と、前記給紙ローラ5に接続されている給紙ローラモータ17を駆動制御する給紙ローラモータドライバ63と、液体噴射ヘッド2を駆動制御するヘッドドライバ65と、前記駆動ローラ8に接続されている電動モータ7を駆動制御する電動モータドライバ66と、各ドライバ63、65、66と外部の給紙ローラモータ17、液体噴射ヘッド2、電動モータ7とを接続するインタフェース67とを備えて構成される。
【0022】
制御部62は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)62aと、入力インタフェース61を介して入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)62cと、CPU62aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)62dを備えている。この制御部62は、インタフェース61を介してホストコンピュータ60から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU62aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れの液体噴射ヘッド2の何れのノズルから液体を噴射するか或いはどの程度の液体を噴射するかというノズル選択データ(駆動信号選択データ)を算出し、この印刷データや駆動信号選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、各ドライバ63、65、66に制御信号を出力する。各ドライバ63、65、66からはアクチュエータを駆動するための駆動信号が出力され、給紙ローラモータ17、電動モータ7が夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0023】
図4には、本実施形態の印刷装置の制御装置から液体噴射ヘッド2に供給され、圧電素子からなるノズルアクチュエータを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電圧を中心に電圧が変化する信号とした。この駆動信号COMは、前記ヘッドドライバ65内に構築された駆動回路から各液体噴射ヘッド2に出力されるものであり、ノズルアクチュエータを駆動して液体を噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものである。各駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通するキャビティ(圧力室)の容積を拡大して液体を引込む(液体の噴射面を考えればメニスカスを引き込むとも言える)段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分がキャビティの容積を縮小して液体を押出す(液体の噴射面を考えればメニスカスを押出すとも言える)段階であり、液体を押出した結果、液滴がノズルから噴射される。
【0024】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、液体の引込量や引込速度、液体の押出量や押出速度を変化させることができ、これにより液滴の噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエータに供給し、液滴を複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、液体が乾かないうちに複数の液滴を同じ位置に着弾すると、実質的に大きな液滴を噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。駆動信号選択データSI&SPで駆動信号を選択する仕組みとしては、例えば特開2003−1824号公報に記載されるような形態で実現が可能である。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、液体を引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、液滴を噴射せずに、例えばノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0025】
各液体噴射ヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて噴射するノズルを選択すると共に圧電素子などのノズルアクチュエータの駆動信号COMへの接続タイミングを決定する駆動信号選択データSI&SP、全ノズルにノズル選択データが入力された後、駆動信号選択データSI&SPに基づいて駆動信号COMと液体噴射ヘッド2のノズルアクチュエータとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CH、駆動信号選択データSI&SPをシリアル信号として液体噴射ヘッド2に送信するためのクロック信号SCKが入力されている。なお、これ以後、ノズルアクチュエータを駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0026】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をノズルアクチュエータ22に供給するために各液体噴射ヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラは、液体を噴射させるべきノズルに対応した圧電素子などのノズルアクチュエータ22を指定するための駆動信号選択データSI&SPを保存するシフトレジスタ211と、シフトレジスタ211のデータを一時的に保存するラッチ回路212と、ラッチ回路212の出力をレベル変換して選択スイッチ201に供給することにより、駆動信号COMをピエゾ素子などのノズルアクチュエータ22に接続するレベルシフタ213を備えて構成されている。
【0027】
シフトレジスタ211には、駆動信号選択データ信号SI&SPが順次入力されると共に、クロック信号SCKの入力パルスに応じて記憶領域が初段から順次後段にシフトする。ラッチ回路212は、ノズル数分の駆動信号選択データSI&SPがシフトレジスタ211に格納された後、入力されるラッチ信号LATによってシフトレジスタ211の各出力信号をラッチする。ラッチ回路212に保存された信号は、レベルシフタ213によって次段の選択スイッチ201をオンオフできる電圧レベルに変換される。これは、駆動信号COMが、ラッチ回路212の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ201の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフタ213によって選択スイッチ201が閉じられる圧電素子などのノズルアクチュエータは駆動信号選択データSI&SPの接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、シフトレジスタ211の駆動信号選択データSI&SPがラッチ回路212に保存された後、次の印刷情報をシフトレジスタ211に入力し、液体の噴射タイミングに合わせてラッチ回路212の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのノズルアクチュエータのグランド端である。また、この選択スイッチ201によれば、圧電素子などのノズルアクチュエータを駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後も、当該ノズルアクチュエータ22の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。
【0028】
図6には、ヘッドドライバ65内に構築された駆動回路20の概略を示す。この駆動回路20は、前述のようにノズルアクチュエータ22に向けて駆動信号COMを出力するものであるが、同じくヘッドドライバ65内には、駆動回路20、具体的には駆動信号COMへの電源電圧を調整する電源電圧調整回路21が構築されており、本実施形態以下の実施形態では、この電源電圧調整回路21により、充放電型アクチュエータである圧電素子からなるノズルアクチュエータ22への充電元電源電圧VHVを調整する。電源電圧調整回路21は、駆動回路20から得られる参照信号Vcntに基づいて、駆動信号COMへの充電元電源電圧を予め設定された所定波形電圧に調整する。参照信号Vcntは、例えば図4に示す駆動信号COMを予め設定された所定電圧と比較し、駆動信号COMが所定電圧より大きい場合にはハイレベル、小さい場合にはローレベルとなるような信号からなる。
【0029】
図7には、駆動回路20の具体的な構成を示す。図7a〜図7dの駆動回路20は、何れも同じ構成であるが、前述した参照信号Vcntの出力源が異なる。この駆動回路20は、ノズルアクチュエータ22の駆動を制御する基準となるデジタルデータの駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路23と、駆動波形信号発生回路23で発生された駆動波形信号WCOMをアナログ変換するD/A変換回路(アナログ変換回路)24と、D/A変換回路24でアナログ変換されたアナログ駆動波形信号AWCOMを電力増幅する電力増幅回路26と、電力増幅回路26を駆動するためのプリドライバ回路25とを備えて構成される。
【0030】
駆動波形信号発生回路23は、図示しないメモリに記憶されている駆動波形データを読込み、それを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールドすることで、デジタルデータの駆動波形信号WCOMを出力する。D/A変換回路24には、一般的なデジタル−アナログ変換回路を用い、これによってデジタルデータの駆動波形信号WCOMをアナログ駆動波形信号AWCOMに変換出力する。プリドライバ回路25は、後述するようにプッシュプル接続されたトランジスタ対からなる電力増幅回路26の各トランジスタのベース電圧を制御することで、例えば接続されるノズルアクチュエータの数が変化することにより上昇する充電用トランジスタのベース電流を抑制する。このプリドライバ回路25としては、例えば本出願人が先に提案した特開2004−306434号公報に記載されるものが適用可能である。電力増幅回路26は、例えば図8に示すように、充電用トランジスタQ1と放電用トランジスタQ2とをプッシュプル接続して構成され、一方のNPN型充電用トランジスタQ1のコレクタには、前記電源電圧調整回路21から充電元電源電圧VHVが供給され、エミッタは前記選択スイッチ201の入力側に接続され、ベースがプリドライバ回路25の一方の出力に接続されている。また、他方のPNP型放電用トランジスタQ2のエミッタが前記選択スイッチ201の入力側に接続され、コレクタが接地され、ベースがプリドライバ回路25の他方の出力に接続されている。このトランジスタ対では、一方の充電用トランジスタQ1は、選択スイッチ201を介して、駆動信号COMに応じた電圧波形を伴いながら充電元電源電圧VHVから容量性負荷であるノズルアクチュエータ22に電荷を供給する、即ち充電し、他方の放電用トランジスタQ2は、選択スイッチ201を介して、駆動信号COMに応じた電圧波形を伴いながら容量性負荷であるノズルアクチュエータ22の電荷を放電する。
【0031】
そして、図7aでは、駆動波形信号発生回路23から出力される駆動波形信号WCOMから参照信号Vcntを取出し、図7bでは、D/A変換回路24から出力されるアナログ駆動波形信号AWCOMから参照信号Vcntを取出し、図7cでは、プリドライバ回路25から出力されるベース電圧制御信号から参照信号Vcntを取出し、図7dでは、電力増幅回路26から出力される駆動信号COMから参照信号Vcntを取出している。参照信号Vcntの出力位置が駆動波形信号発生回路23に近いほど、本来の駆動信号COM(又は駆動波形信号WCOM)に応じたタイミングで後述する電源電圧の切換えを行うことができ、電力増幅回路26に近いほど、実際の駆動信号COMをフィードバックしたタイミングで電源電圧の切換えを行うことができる。
【0032】
図9は電源電圧調整回路21の具体的な構成例であり、図9aは、予め設定された所定の電源電圧を生成する電源電圧生成回路27を第1〜第nまでn個備え、夫々が異なる波形の電源電圧を生成するものであり、図9bは、1つの電源電圧生成回路27で生成された電源電圧を予め設定された波形の電源電圧に調整する電圧調整回路28を第1〜第nまでn個備え、夫々から異なる波形の電源電圧が出力されるものであり、電源電圧選択回路29は、それら第1〜第n電源電圧生成回路27で生成された異なる波形の電源電圧又は第1〜第n電圧調整回路28から出力される異なる波形の電源電圧を前記参照信号Vcntに基づいて選択し、その選択された波形電圧を前記駆動回路20の駆動信号COMの電源電圧として供給する。これらの電源電圧生成回路27や電圧調整回路28は、実質的に同じ機能を果たすものであり、例えば、それらの大元となる電源電圧が直流電圧である場合には、既存のDC/DCコンバータやDC/ACコンバータが、大元となる電源電圧が交流電圧である場合には、既存のAC/DCコンバータやAC/ACコンバータが適用可能である。
【0033】
図10は、本実施形態の充電元電源電圧VHVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHVは、例えば前記図9の電源電圧生成回路27や電圧調整回路28から出力される2つの直流電源電圧を参照信号Vcntで切換えたものであり、具体的には、参照信号Vcntがローレベルにあるときには電圧値の小さい直流電源電圧VDLを選択し、参照信号Vcntがハイレベルにあるときには電圧値の大きい直流電源電圧VDHを選択したものである。
【0034】
例えば従来の駆動信号COMへの電源電圧は、図10に示す電圧値の大きい直流電源電圧VDH一定としている。この電源電圧は、充電用トランジスタQ1を介してノズルアクチュエータ22に充電するための充電元電源電圧として印加されているので、当該ノズルアクチュエータ22の充電時、即ち駆動信号COMの立上がり時に、当該駆動信号COMとの電圧差が損失或いは発熱となる。本実施形態では、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。なお、後段に詳述するように、同様の構成を用いて、ノズルアクチュエータ22から放電する先の放電先電源電圧VLVを調整し、駆動信号COMと放電先電源電圧VLVとの電圧差が小さくなるようにすれば、その分だけ、更に損失や発熱を低減することが可能となる。
【0035】
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッド2に設けられた複数のノズルと、それらのノズルに対応して設けられたノズルアクチュエータ22と、それらのノズルアクチュエータ22に駆動信号COMを印加する駆動回路20とを備えた液体噴射装置にあって、駆動信号COM又はその生成段階の信号から得た参照信号Vcntに基づいて当該駆動信号COMへの電源電圧VHVを予め設定された波形電圧に調整する電源電圧調整回路21を備えたことにより、充放電型アクチュエータからなるノズルアクチュエータ22に充電する駆動信号COMや当該ノズルアクチュエータ22を放電する駆動信号COMと電源電圧との電圧差を小さくすることができ、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0036】
また、駆動回路20は、ノズルアクチュエータ22の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号発生回路23と、駆動波形信号発生回路23で生成された駆動波形信号WCOMをアナログ変換するアナログ変換回路(D/A変換回路)24と、アナログ変換回路24でアナログ変換されたアナログ駆動波形信号AWCOMを電力増幅する電力増幅回路26と、電力増幅回路26を駆動するためのプリドライバ回路25とを備えて構成され、それらの何れかの回路の出力信号に基づいて参照信号Vcntを生成することとしたため、駆動信号COMの精度向上と、更なる消費電力の低減が可能となる。
【0037】
また、電源電圧調整回路21は、複数の電源電圧を生成又は調整する複数の電源電圧生成回路27又は電圧調整回路28と、それら複数の電源電圧生成回路27又は電圧調整回路28の出力電圧を選択する電源電圧選択回路29とを備えて構成されることとしたため、駆動信号COMと電源電圧VHVとの電圧差をより一層小さくして、更なる消費電力の低減が可能となる。
また、電源電圧生成回路27が直流電圧電源回路であるか又は電圧調整回路28が直流電圧調整回路であることとしたため、電源電圧調整回路21を実施化し易い。
【0038】
次に、本発明の液体噴射装置の第2実施形態について、図11を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラ、駆動回路、電源電圧調整回路は、何れも前記第1実施形態の図1〜図9と同様である。図11は、本実施形態の充電元電源電圧VHVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHVは、例えば前記図9の電源電圧生成回路27や電圧調整回路28から出力される直流電源電圧と交流電源電圧を参照信号Vcntで切換えたものであり、具体的には、参照信号Vcntがローレベルにあるときには直流電源電圧VDを選択し、参照信号Vcntがハイレベルにあるときには交流電源電圧VAを選択したものである。本実施形態でも、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、電源電圧生成回路27が交流電圧電源回路であるか又は前記電圧調整回路28が交流電圧調整回路であることとしたため、電源電圧調整回路21を実施化し易い。
【0039】
次に、本発明の液体噴射装置の第3実施形態について、図12、図13を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラ、駆動回路は、何れも前記第1実施形態の図1〜図8と同様である。図12は、本実施形態の電源電圧調整回路21の構成を示すものであり、ブートストラップ回路30が設けられている。ブートストラップ回路30は、コンデンサC3に電荷を充電する充電用トランジスタQ3とコンデンサC3の電荷を放電する放電用トランジスタQ4とをプッシュプル接続して構成され、一方のNPN型充電用トランジスタQ3のコレクタには、大元の電源電圧Vddが供給され、エミッタはコンデンサC3に接続され、ベースがブートストラップ用プリドライバ回路31の一方の出力に接続されている。また、他方のPNP型放電用トランジスタQ4のエミッタがコンデンサC3に接続され、コレクタが接地され、ベースがブートストラップ用プリドライバ回路31の他方の出力に接続されている。大元の電源電圧Vddと電源電圧調整回路21の出力の間には、逆流防止用のダイオードD3が介装されている。
【0040】
ブートストラップ回路30は、放電用トランジスタQ4がオフ、充電用トランジスタQ3がオンの状態でコンデンサC3が充電され、コンデンサC3の充電後は、コンデンサC3からの放電によって、充電用電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの2倍値にすることができる。図13は、本実施形態の充電元電源電圧VHVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHVは、ブートストラップ回路30のトランジスタQ3、Q4のベース電流を参照信号Vcntで切換えたものであり、具体的には、参照信号Vcntがローレベルにあるときには充電用トランジスタQ3をオフとして充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddとし、参照信号Vcntがハイレベルにあるときには充電用トランジスタQ4をオンとすることで、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの2倍値としたものである。本実施形態でも、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0041】
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、電源電圧調整回路21は、ブートストラップ回路30によって電源電圧VHVを昇圧可能な電源回路で構成され、且つ前記参照信号Vcntによってブートストラップ回路30による電源電圧VHVの昇圧を制御することとしたため、電源電圧調整回路21を実施化し易いと共に、より低い大元の電源電圧Vddを用いて駆動信号COMへの高い電源電圧VHVを得ることが可能となる。
【0042】
次に、本発明の液体噴射装置の第4実施形態について、図14、図15を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラ、駆動回路は、何れも前記第1実施形態の図1〜図8と同様である。図14には、本実施形態の電源電圧調整回路21を示す。本実施形態の電源電圧調整回路21は、前記第3実施形態の図12のものに類似しており、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態の電源電圧調整回路21では、ブートストラップ回路30の出力側に、更に逆流防止用のダイオードD31が設けられている。
【0043】
図15に示す本実施形態の充電元電源電圧VHVの電圧波形チャートは、前記第3実施形態の図15の電圧波形チャートと基本的に同じであるが、例えば前記ブートストラップ回路30の出力側のダイオードD31がない場合に、例えば充電元電源電圧VHVが、二点鎖線で示すように、所定のタイミングより早いタイミングで立下がると、充電元電源電圧VHVに応じて駆動信号COMの電圧が急激に低下してしまう(具体的には、充放電型アクチュエータであるノズルアクチュエータ22から電荷が放電されてしまう)といったように、駆動信号COMが充電元電源電圧VHVに合わせて変化してしまう。これに対し、本実施形態のように、ブートストラップ回路30の出力側に逆流防止用のダイオードD31を配設しておけば、充放電型アクチュエータであるノズルアクチュエータ22からの電荷の放電を防止することができ、これにより駆動信号COMの変化を抑制防止することができる。
このように本実施形態の本発明の液体噴射装置によれば、ブートストラップ回路30の出力側に逆流防止用のダイオードD31を配設したことにより、駆動信号COMの波形を確保することができる。
【0044】
次に、本発明の液体噴射装置の第5実施形態について、図16、図17を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラ、駆動回路は、何れも前記第1実施形態の図1〜図8と同様である。図16には、本実施形態の電源電圧調整回路21を示す。本実施形態の電源電圧調整回路21は、前記第3実施形態の図12のものに類似しており、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態の電源電圧調整回路21では、前記第3実施形態のブートストラップ回路30の出力側に、もう一段、ブートストラップ回路32が設けられている。このうち、出力側のブートストラップ回路32を前段のブートストラップ回路、入力側のブートストラップ回路30を後段のブートストラップ回路とすると、前段のブートストラップ回路32も、後段のブートストラップ回路30と同様に、コンデンサC5に電荷を充電する充電用トランジスタQ5とコンデンサC5の電荷を放電する放電用トランジスタQ6とをプッシュプル接続して構成され、一方のNPN型充電用トランジスタQ5のコレクタには、後段のブートストラップ回路30の出力端が供給され、エミッタはコンデンサC5に接続され、ベースが前段ブートストラップ用プリドライバ回路33の一方の出力に接続されている。また、他方のPNP型放電用トランジスタQ6のエミッタがコンデンサC5に接続され、コレクタが後段のブートストラップ回路30の放電用トランジスタQ4のエミッタに接続され、ベースが前段ブートストラップ用プリドライバ回路31の他方の出力に接続されている。後段のブートストラップ回路30の出力端と電源電圧調整回路21の出力の間には、逆流防止用のダイオードD5が介装されている。
【0045】
後段のブートストラップ回路30は、放電用トランジスタQ4がオフ、充電用トランジスタQ3がオンの状態で、出力電圧が電源電圧Vddの2倍値となるので、更に前段のブートストラップ回路32の放電用トランジスタQ6をオフ、充電用トランジスタQ5をオンとすると、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの3倍値にすることができる。図17は、本実施形態の充電元電源電圧VHVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHVは、前段のブートストラップ回路32のトランジスタQ5、Q6のベース電流を第1参照信号Vcnt1で切換え、後段のブートストラップ回路30のトランジスタQ3、Q4のベース電流を第2参照信号Vcnt2で切換えたものであり、具体的には、第1参照信号Vcnt1及び第2参照信号Vcnt2が共にローレベルにあるときに前段のブートストラップ回路32の充電用トランジスタQ5及び後段のブートストラップ回路30の充電用トランジスタQ3を共にオフとして充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddとし、第2参照信号Vcnt2のみがハイレベルにあるときには後段のブートストラップ回路30の充電用トランジスタQ4のみをオンとすることで、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの2倍値とし、第1参照信号Vcnt1及び第2参照信号Vcnt2が共にハイレベルにあるときに前段のブートストラップ回路32の充電用トランジスタQ5及び後段のブートストラップ回路30の充電用トランジスタQ3を共にオンとすることで、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの3倍値としたものである。本実施形態でも、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0046】
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、前記第3実施形態の効果に加えて、より一層低い大元の電源電圧Vddを用いて駆動信号COMへの高い電源電圧VHVを得ることが可能となる。
なお、前記第5実施形態の電源電圧調整回路21の前段のブートストラップ回路32の出力側に、前記第4実施形態と同様に、逆流防止用のダイオードD31を配設しても良い。また、図18に示すように、逆流防止用ダイオードD3、D5を、夫々、並列に大元の電源電圧Vddに接続するようにしても良い。図16のように逆流防止用ダイオードD3、D5を直接に接続すると、前段のブートストラップ回路32への入力電圧は、入力側の逆流防止用ダイオードD3による電圧降下分だけ低下してしまう。ダイオードによる電圧降下はごく僅かであるが、それでも、その電圧降下分だけ、前段のブートストラップ回路32への入力電圧が低下するので、それを回避するためには、図18に示すように、逆流防止用ダイオードD3、D5を、夫々、並列に大元の電源電圧Vddに接続するようにすればよい。
【0047】
次に、本発明の液体噴射装置の第6実施形態について説明する。図19には、本実施形態の駆動回路20の概略構成を示す。本実施形態以後の実施形態は、何れも、電力増幅器26を介してノズルアクチュエータ22に電荷を充電するための充電元電源電圧VHVだけでなく、同じく電力増幅器26を介して当該ノズルアクチュエータ22から電荷を放電するための放電先電源電圧VLVも調整するものである。
【0048】
図20には、駆動回路20の具体的な構成を示す。本実施形態の駆動回路20も、前記第1実施形態のそれと同様であるため、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。図20a〜図20dでは、参照信号Vcntの出力源が異なる。図20aでは、駆動波形信号発生回路23から出力される駆動波形信号WCOMから参照信号Vcntを取出し、図20bでは、D/A変換回路24から出力されるアナログ駆動波形信号AWCOMから参照信号Vcntを取出し、図20cでは、プリドライバ回路25から出力されるベース電圧制御信号から参照信号Vcntを取出し、図20dでは、電力増幅回路26から出力される駆動信号COMから参照信号Vcntを取出している。参照信号Vcntの出力位置の違いによる効果は、前記第1実施形態と同様である。なお、前述したように、図21に示す電力増幅回路26には、電源電圧調整回路21で調整された充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVが供給されている。
【0049】
図22は電源電圧調整回路21の具体的な構成例であり、図22aは、予め設定された所定の電源電圧を生成する電源電圧生成回路27を第1〜第nまでn個備え、夫々が異なる波形の電源電圧を生成するものであり、図22bは、1つの電源電圧生成回路27で生成された電源電圧を予め設定された波形の電源電圧に調整する電圧調整回路28を第1〜第nまでn個備え、夫々から異なる波形の電源電圧が出力されるものであり、電源電圧選択回路29は、それら第1〜第n電源電圧生成回路27で生成された異なる波形の電源電圧又は第1〜第n電圧調整回路28から出力される異なる波形の電源電圧を前記参照信号Vcntに基づいて選択し、その選択された波形電圧を前記駆動回路20の駆動信号COMの電源電圧として供給する。本実施形態では、電源電圧生成回路27や電圧調整回路28が、充電元電源電圧VHVを生成又は調整するだけでなく、放電先電源電圧VLVも生成又は調整する点を除き、それらの機能は第1実施形態のそれと同様である。
【0050】
図23は、本実施形態の充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVの電圧波形チャートである。このうち充電元電源電圧VHVは、前記図22の電源電圧生成回路27や電圧調整回路28から出力される2つの直流電源電圧を充電元用参照信号VcntHで切換えたものであり、具体的には、充電元用参照信号VcntHがローレベルにあるときには電圧値の小さい充電元用直流電源電圧VDHLを選択し、充電元用参照信号VcntHがハイレベルにあるときには電圧値の大きい充電元用直流電源電圧VDHHを選択し、放電先用参照信号VcntLがローレベルにあるときには電圧値の小さい放電先用直流電源電圧VDLHを選択し、放電先用参照信号VcntLがハイレベルにあるときには電圧値の大きい放電先用直流電源電圧VDLL(=0V)を選択するようにしたものである。
【0051】
例えば従来の駆動信号COMへの電源電圧は、放電先用電源電圧VLVは接地電圧(=0V)一定としている。この接地電圧は、放電用トランジスタQ2を介してノズルアクチュエータ22から放電するための電圧値なので、当該ノズルアクチュエータ22からの放電時、即ち駆動信号COMの立下がり時に、当該駆動信号COMとの電圧差が損失或いは発熱となる。本実施形態では、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差のみならず、駆動信号COMと放電先電源電圧VLVとの電圧差も小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0052】
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、液体噴射ヘッド2に設けられた複数のノズルと、それらのノズルに対応して設けられたノズルアクチュエータ22と、それらのノズルアクチュエータ22に駆動信号COMを印加する駆動回路20とを備えた液体噴射装置にあって、駆動信号COM又はその生成段階の信号から得た参照信号Vcntに基づいて当該駆動信号COMへの電源電圧VHV、VLVを予め設定された波形電圧に調整する電源電圧調整回路21を備えたことにより、充放電型アクチュエータからなるノズルアクチュエータ22に充電する駆動信号COMや当該ノズルアクチュエータ22を放電する駆動信号COMと電源電圧との電圧差を小さくすることができ、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0053】
また、電源電圧調整回路21は、複数の電源電圧を生成又は調整する複数の電源電圧生成回路27又は電圧調整回路28と、それら複数の電源電圧生成回路27又は電圧調整回路28の出力電圧を選択する電源電圧選択回路29とを備えて構成されることとしたため、駆動信号COMと電源電圧VHV、VLVとの電圧差をより一層小さくして、更なる消費電力の低減が可能となる。
【0054】
次に、本発明の液体噴射装置の第7実施形態について、図24を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラは、何れも前記第1実施形態の図1〜図5と同様であり、駆動回路、電源電圧調整回路は、前記第6実施形態の図19〜図22と同様である。図24は、本実施形態の充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVは、例えば前記図22の電源電圧生成回路27や電圧調整回路28から出力される直流電源電圧と交流電源電圧を参照信号VcntH、VcntLで切換えたものであり、具体的には、充電元用参照信号VcntHがローレベルにあるときには充電元用直流電源電圧VDHを選択し、充電元用参照信号VcntHがハイレベルにあるときには充電元用交流電源電圧VAHを選択し、放電先用参照信号VcntLがローレベルにあるときには放電先用直流電源電圧VDLを選択し、放電先用参照信号VcntLがハイレベルにあるときには放電先用交流電源電圧VALを選択するようにしたものである。本実施形態でも、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0055】
次に、本発明の液体噴射装置の第8実施形態について、図25、図26を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラは、何れも前記第1実施形態の図1〜図5と同様であり、駆動回路は、前記第6実施形態の図19〜図21と同様である。図25は、本実施形態の電源電圧調整回路21の構成を示すものであり、前記第3実施形態の図12に示すものと同様であるが、コンデンサC3の両端のうち、大元の電源電圧Vddに接続されている端部から充電元電源電位VHVが出力され、充電用トランジスタQ3のエミッタに接続されている端部から放電先電源電位VLVが出力される。
【0056】
図26は、本実施形態の充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVは、ブートストラップ回路30のトランジスタQ3、Q4のベース電流を参照信号Vcntで切換えたものであり、具体的には、参照信号Vcntがローレベルにあるときには充電用トランジスタQ3をオフとして充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddとすると共に放電先電源電圧VLVを0Vとし、参照信号Vcntがハイレベルにあるときには充電用トランジスタQ4をオンとすることで、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの2倍値とすると共に放電先電源電圧VLVを大元の電源電圧Vddとしたものである。本実施形態でも、駆動信号COMと充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0057】
次に、本発明の液体噴射装置の第9実施形態について、図27、図28を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラは、何れも前記第1実施形態の図1〜図5と同様であり、駆動回路は、前記第6実施形態の図19〜図21と同様である。図27には、本実施形態の電源電圧調整回路21を示す。本実施形態の電源電圧調整回路21は、前記第8実施形態の図12のものに類似しており、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。本実施形態の電源電圧調整回路21では、ブートストラップ回路30の出力側に、更に逆流防止用のダイオードD31、D32が設けられている。
【0058】
図28に示す本実施形態の充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVの電圧波形チャートは、前記第8実施形態の図15の電圧波形チャートと基本的に同じであるが、例えば前記ブートストラップ回路30の出力側のダイオードD31がない場合に、例えば充電元電源電圧VHVが、二点鎖線で示すように、所定のタイミングより早いタイミングで立下がると、充電元電源電圧VHVに応じて駆動信号COMの電圧が急激に低下してしまう(具体的には、充放電型アクチュエータであるノズルアクチュエータ22から電荷が放電されてしまう)し、例えば放電先電源電圧VLVが、二点鎖線で示すように、所定のタイミングより早い遅いミングで立下がると、放電先電源電圧VLVに応じて駆動信号COMの電圧が急激に増大してしまう(具体的には、充放電型アクチュエータであるノズルアクチュエータ22に電荷が充電されてしまう)といったように、駆動信号COMが充電元電源電圧VHVや放電先電源電圧VLVに合わせて変化してしまう。これに対し、本実施形態のように、ブートストラップ回路30の出力側に逆流防止用のダイオードD31、D32を配設しておけば、充放電型アクチュエータであるノズルアクチュエータ22からの電荷の放電及びノズルアクチュエータ22への電荷の充電を防止することができ、これにより駆動信号COMの変化を抑制防止することができる。
【0059】
次に、本発明の液体噴射装置の第10実施形態について、図29、図30を用いて説明する。本実施形態の液体噴射装置の概略構成、制御装置、駆動信号、スイッチングコントローラは、何れも前記第1実施形態の図1〜図5と同様であり、駆動回路は、前記第6実施形態の図19〜図21と同様である。図29には、本実施形態の電源電圧調整回路21を示す。本実施形態の電源電圧調整回路21は、前記第5実施形態の図16に示すものと同様であるが、前段のブートストラップ回路32のコンデンサC5の両端のうち、大元の電源電圧Vddに接続されている端部から充電元電源電位VHVが出力され、充電用トランジスタQ5のエミッタに接続されている端部から放電先電源電位VLVが出力される。
【0060】
図30は、本実施形態の充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVの電圧波形チャートである。この充電元電源電圧VHVは、前段のブートストラップ回路32のトランジスタQ5、Q6のベース電流を第1参照信号Vcnt1で切換え、後段のブートストラップ回路30のトランジスタQ3、Q4のベース電流を第2参照信号Vcnt2で切換えたものであり、具体的には、第1参照信号Vcnt1及び第2参照信号Vcnt2が共にローレベルにあるときに前段のブートストラップ回路32の充電用トランジスタQ5及び後段のブートストラップ回路30の充電用トランジスタQ3を共にオフとして充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddとすると共に放電先電源電圧VLVを0Vとし、第2参照信号Vcnt2のみがハイレベルにあるときには後段のブートストラップ回路30の充電用トランジスタQ4のみをオンとすることで、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの2倍値とすると共に放電先電源電圧VLVを大元の電源電圧Vddとし、第1参照信号Vcnt1及び第2参照信号Vcnt2が共にハイレベルにあるときに前段のブートストラップ回路32の充電用トランジスタQ5及び後段のブートストラップ回路30の充電用トランジスタQ3を共にオンとすることで、充電元電源電圧VHVを大元の電源電圧Vddの3倍値とすると共に放電先電源電圧VLVを大元の電源電圧Vddの2倍値としたものである。本実施形態でも、駆動信号COMと充電元電源電圧VHVとの電圧差を小さくすることが可能となるので、損失や発熱を低減することが可能となる。
【0061】
このように本実施形態の液体噴射装置によれば、前記第6実施形態の効果に加えて、電源電圧調整回路21は、前段のブートストラップ回路32及び後段のブートストラップ回路30及びによって電源電圧VHV、VLVを昇圧可能な電源回路で構成され、且つ前記参照信号Vcnt1、Vcnt2によってブートストラップ回路30、32による電源電圧VHV、VLVの昇圧を制御することとしたため、電源電圧調整回路21を実施化し易いと共に、より低い大元の電源電圧Vddを用いて駆動信号COMへの高い電源電圧VHV、VLVを得ることが可能となる。
また、このように本実施形態の液体噴射装置によれば、前記第8実施形態の効果に加えて、より一層低い大元の電源電圧Vddを用いて駆動信号COMへの高い電源電圧VHV、VLVを得ることが可能となる。
【0062】
なお、前記第10実施形態の電源電圧調整回路21の前段のブートストラップ回路32の出力側に、前記第4実施形態と同様に、逆流防止用のダイオードD31、D32を配設しても良い。また、図31に示すように、逆流防止用ダイオードD3、D5を、夫々、並列に大元の電源電圧Vddに接続するようにしても良い。図29のように逆流防止用ダイオードD3、D5を直接に接続すると、前段のブートストラップ回路32への入力電圧は、入力側の逆流防止用ダイオードD3による電圧降下分だけ低下してしまう。ダイオードによる電圧降下はごく僅かであるが、それでも、その電圧降下分だけ、前段のブートストラップ回路32への入力電圧が低下するので、それを回避するためには、図31に示すように、逆流防止用ダイオードD3、D5を、夫々、並列に大元の電源電圧Vddに接続するようにすればよい。
【0063】
なお、前記各実施形態では、充放電型アクチュエータであるノズルアクチュエータ22への充電元電源電圧VHVのみを調整するか、又は充電元電源電圧VHV及び放電先電源電圧VLVの双方を調整する場合についてのみ説明したが、同様の構成によって、放電先電源電圧VLVのみ調整するようにしても、駆動信号COMと放電先電源電圧VLVとの電圧差が小さくなり、これにより損失や発熱を低減することが可能となる。
【0064】
また、前記実施形態では所謂ラインヘッド型印刷装置を対象として本発明の液体噴射装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明の液体噴射装置は、マルチパス型印刷装置を始めとして、あらゆるタイプの印刷装置を対象として適用可能である。また、本発明の液体噴射装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置き換えてもよいし、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、本発明の液体噴射装置をインクジェット式印刷装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1は印刷媒体、2は液体噴射ヘッド、3は給紙部、4は搬送部、6は搬送ベルト、7は電動モータ、8は駆動ローラ、9は従動ローラ、10は排紙部、11は固定プレート、17は給紙ローラモータ、20は駆動回路、21は電源電圧調整回路、22はノズルアクチュエータ、23は駆動波形信号発生回路、24はD/A変換回路、25はプリドライバ回路、26は電力増幅回路、27は電源電圧生成回路、28は電圧調整回路、29は電源電圧選択回路、30,32はブートストラップ回路、31,32はブートストラップ用プリドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体噴射ヘッドに設けられた複数のノズルと、前記ノズルに対応して設けられたノズルアクチュエータと、前記ノズルアクチュエータに駆動信号を印加する駆動回路とを備えた液体噴射装置であって、前記駆動信号又はその生成段階の信号から得た参照信号に基づいて当該駆動信号への電源電圧を予め設定された波形電圧に調整する電源電圧調整回路を備えたことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、前記ノズルアクチュエータの駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号を生成する駆動波形信号発生回路と、前記駆動波形信号発生回路で生成された駆動波形信号をアナログ変換するアナログ変換回路と、前記アナログ変換回路でアナログ変換されたアナログ駆動波形信号を電力増幅する電力増幅回路と、前記電力増幅回路を駆動するためのプリドライバ回路とを備えて構成され、それらの何れかの回路の出力信号に基づいて参照信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記電源電圧調整回路は、複数の電源電圧を生成又は調整する複数の電源電圧生成回路又は電圧調整回路と、それら複数の電源電圧生成回路又は電圧調整回路の出力電圧を選択する電源電圧選択回路とを備えて構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記電源電圧生成回路が直流電圧電源回路であるか又は前記電圧調整回路が直流電圧調整回路であることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記電源電圧生成回路が交流電圧電源回路であるか又は前記電圧調整回路が交流電圧調整回路であることを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記電源電圧調整回路は、ブートストラップ回路によって電源電圧を昇圧可能な電源回路で構成され、且つ前記参照信号によって前記ブートストラップ回路による電源電圧の昇圧を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記ブートストラップ回路の出力側に逆流防止用のダイオードを配設したことを特徴とする請求項6に記載の液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−52689(P2013−52689A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277169(P2012−277169)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2008−71942(P2008−71942)の分割
【原出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】