説明

駆動装置、画像取得装置、電子機器、及び駆動装置の制御方法

【課題】移動後のレンズ保持体の位置に誤差が生じることを抑制すること。
【解決手段】駆動装置150は、駆動電圧に応じて伸縮するピエゾ素子50と、ピエゾ素子50で生じる振動を受ける伝達軸51と、伝達軸51が摺動可能な状態で、伝達軸51が係合された筐体20と、少なくとも1つのレンズを保持すると共に、ピエゾ素子50及び伝達軸51に同調して筐体20に対して変位するレンズホルダ31と、ピエゾ素子50に対して駆動電圧を供給する駆動電圧生成回路82と、を備える。駆動電圧生成回路82は、少なくとも第1及び第2周期で間欠的に生成されるスイッチングパルスに基づいてピエゾ素子50に対して駆動電圧を供給し、スイッチングパルスは、時間的に分断されることなく第1周期から第2周期へ変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、画像取得装置、電子機器、及び駆動装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ等の撮像装置は多種多様な製品に組み込まれている。携帯電話、ノートパソコン等といった小型な電子機器にカメラを実装する場合、カメラ自体の小型化も強く要求される。
【0003】
カメラ内にはオートフォーカスレンズが組み込まれる場合がある。この場合、レンズを変位させるアクチュエータの小型化が強く望まれている。小型なアクチュエータとしては、圧電素子を駆動することで移動対象物を変位させるものが知られている。
【0004】
特許文献1には、駆動時の振動を抑制することができ、信頼性の高い光学素子送り装置が開示されている。具体的には、駆動制御部は、駆動終わり付近の駆動速度をそれより前の駆動速度よりも遅くすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−4014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特に、レンズホルダ、ピエゾ素子、及び伝達軸が同調して変位するタイプのアクチュエータにおいては、レンズホルダの移動開始時、レンズホルダの移動量にロスが生じてしまう場合がある。具体的には、図32に示すように、所定の駆動条件にてレンズホルダの駆動を開始すると、移動開始時にレンズホルダが十分に変位せず、移動ロスが生じてしまう場合がある。なお、移動中のレンズホルダを精度良く停止させることも容易ではなく、レンズホルダの移動停止時にも、レンズホルダの移動量にロスが生じてしまう場合がある。
【0007】
所望の位置、例えば、合焦位置までレンズホルダを移動させる場合、一回の移動指示では、レンズホルダが合焦位置を通り過ぎたり、合焦位置まで到達しなかったりしてしまう場合がある。この場合、何度かレンズホルダの移動制御を実行することが必要になる。レンズホルダの位置を初期化しないかぎり、レンズホルダの移動指示の回数が増加するに従って、上述の理由によって、レンズホルダの現在位置に含まれる誤差は増大してしまう。
【0008】
所望の位置に対してレンズホルダを配置するためには、所望の位置に近接するに従ってレンズホルダの移動速度を低速化させ、フィードバック制御によりレンズホルダの位置を適切に制御することが考えられる。しかしながら、レンズホルダの移動速度を変更する際にレンズホルダが停止してしまうと、上述の理由によって、やはりレンズホルダの現在位置には誤差が生じてしまうことになる。
【0009】
レンズホルダの現在位置に含まれる誤差が増大してしまうと、レンズホルダを合焦位置に移動させることに時間を要し、ひいては、このアクチュエータが組み込まれたカメラモジュールの性能が劣化してしまうおそれがある。
【0010】
上述の説明から明らかなように、移動後のレンズ保持体の位置に誤差が生じることを抑制することが強く求められている。特に、速度変更を伴って移動した後のレンズ保持体の位置に誤差が生じることを抑制することが強く求められている。本発明は、移動後のレンズ保持体の位置に誤差が生じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る駆動装置は、駆動電圧に応じて伸縮する圧電素子と、前記圧電素子で生じる振動を受ける駆動軸と、前記駆動軸が摺動可能な状態で、前記駆動軸が係合された固定側部材と、少なくとも1つのレンズを保持すると共に、前記圧電素子及び前記駆動軸に同調して前記固定側部材に対して変位するレンズ保持体と、前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給する駆動電圧供給部と、を備える駆動装置であって、前記駆動電圧供給部は、少なくとも第1及び第2周期で間欠的に生成されるスイッチングパルスに基づいて前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給し、前記スイッチングパルスは、時間的に分断されることなく第1周期から第2周期へ変更される。
【0012】
スイッチングパルスは、少なくとも第1及び第2周期で間欠的に供給されると共に、時間的に分断されることなく第1周期から第2周期へ変更される。従って、移動対象物であるレンズ保持体は、時間的に分断されることなく速度変更され、かつ、時間的に分断されることなく所望の方向への移動を継続する。レンズ保持体が停止状態になることを極力避けることによって、レンズ保持体の位置に誤差が生じることを効果的に抑制することができる。
【0013】
前記駆動電圧は、第1及び第2電圧レベル間を振幅する、と良い。
【0014】
前記第1及び第2電圧レベル間を相対的に短い時間に前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して変位し、前記第1及び第2電圧レベル間を相対的に長い時間かけて前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して実質的に変位しない、と良い。
【0015】
前記駆動電圧供給部は、前記スイッチングパルスを生成するスイッチングパルス生成部と、前記スイッチングパルスに応じて動作状態が決定される複数のスイッチング素子を含む駆動電圧生成部と、を備える、と良い。
【0016】
前記駆動電圧供給部の動作状態を制御する制御部を更に備え、前記制御部は、目標位置に近づくに従って前記レンズ保持体が徐々に減速するように、前記駆動電圧供給部を制御する、と良い。
【0017】
本発明に係る画像取得装置は、上記いずれかに記載の駆動装置と、前記レンズを介して入力する像を撮像する撮像手段と、を備える。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上記の画像取得装置を備える。
【0019】
本発明に係る駆動装置の制御方法は、駆動電圧に応じて伸縮する圧電素子と、前記圧電素子で生じる振動を受ける駆動軸と、前記駆動軸が摺動可能な状態で、前記駆動軸が係合された固定側部材と、少なくとも1つのレンズを保持すると共に、前記圧電素子及び前記駆動軸に同調して前記固定側部材に対して変位するレンズ保持体と、前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給する駆動電圧供給部とを備える駆動装置の制御方法であって、少なくとも第1及び第2周期で間欠的にスイッチングパルスを供給するステップと、供給される前記スイッチングパルスに基づいて前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給するステップと、時間的な間隔を設けずに前記スイッチングパルスの周期を第1周期から第2周期へ変更するステップと、を備える。
【0020】
第1及び第2電圧レベル間を相対的に短い時間に前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して変位し、前記第1及び第2電圧レベル間を相対的に長い時間かけて前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して実質的に変位しない、と良い。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、移動後のレンズ保持体の位置に誤差が生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な分解斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る撮像モジュールの概略的な構成を示す模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る筐体の概略的な斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るレンズユニットの概略的な斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る軸保持部の概略的な分解斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る軸保持部の概略的な斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る軸保持部の概略的な斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る軸保持部の概略的な側面図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る軸保持部の概略的な斜視図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る軸保持部の概略的な上面図である。
【図12】本発明の第1実施形態に係るレンズユニットの概略的な側面図である。
【図13】本発明の第1実施形態に係るレンズユニットの概略的な断面模式図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る筐体に対する軸保持部の取付方法を示す概略的な斜視図である。
【図15】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な部分上面図である。
【図16】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な上面図である。
【図17】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な断面模式図である。
【図18】本発明の第1実施形態に係るカメラモジュールの概略的な断面模式図である。
【図19】本発明の第1実施形態に係る携帯電話の概略的な模式図である。
【図20】本発明の第1実施形態に係る駆動装置を駆動するための駆動部の構成を示す概略的なブロック図である。
【図21】本発明の第1実施形態に係る駆動電圧生成回路の概略的な回路図である。
【図22】本発明の第1実施形態に係る駆動電圧生成回路の動作を説明するための表である。
【図23】本発明の第1実施形態に係る各波形とレンズの移動状態との関係を示す概略的なタイミングチャートである。
【図24】本発明の第1実施形態に係るピエゾ素子の伸縮とレンズホルダの変位との関係を示す概略的な説明図である。
【図25】本発明の第1実施形態に係るスイッチングパルスのデューティー比の調整がレンズホルダの変位に与える影響を説明するための説明図である。
【図26】本発明の第1実施形態に係るアクチュエータの動作状態を評価した結果を示す表である。
【図27】本発明の第1実施形態に係るレンズホルダの移動速度の変更を示すタイミングチャートである。
【図28】比較例に係るレンズホルダの移動速度の変更を示すタイミングチャートである。
【図29】比較例に係るカメラモジュールを示す概略図である。
【図30】比較例に係るアクチュエータの動作状態を評価した結果を示す表である。
【図31】アクチュエータのタイプ毎のレンズ移動特性を示す説明図である。
【図32】レンズホルダの移動開始時の動作ロスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、説明の便宜上、簡略化されている。図面は簡略的なものであるから、図面の記載を根拠として本発明の技術的範囲を狭く解釈してはならない。図面は、もっぱら技術的事項の説明のためのものであり、図面に示された要素の正確な大きさ等は反映していない。同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略するものとする。上下左右といった方向を示す言葉は、図面を正面視した場合を前提として用いるものとする。
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、図1乃至図31を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0025】
図1及び図2に示すように、カメラモジュール(画像取得装置)150は、配線基板10、コネクタ11、撮像モジュール12、筐体(外囲器)20、レンズユニット(レンズ部品)30、及び蓋60(外囲器)を有する。図3に示すように、撮像モジュール12は、透明基板13a、及びイメージセンサ(撮像素子、撮像手段)13bを有する。イメージセンサ13bの上面には、撮像領域13cが配置されている。
【0026】
図1に示すように、配線基板10の一端にはコネクタ11が配置されている。配線基板10の他端には、撮像モジュール12が配置されている。撮像モジュール12上には、筐体20、レンズユニット30、及び蓋60が、この順で配置される。筐体20は、移動対象物であるレンズL1〜L3(図17参照)からみて移動しない固定側部材として機能する。蓋60、撮像モジュール12、及び配線基板10も、同様に、固定側部材として機能する。
【0027】
配線基板10は、可撓性を有するシート状の配線基板である。配線基板10は、イメージセンサ13bに入力する制御信号、及びイメージセンサ13bから出力されるビデオ信号の伝送路として機能する。配線基板10は、ピエゾ素子50に入力する駆動電圧の伝送路として機能する。
【0028】
コネクタ11は、カメラモジュール150を本体機器に電気的及び機械的に接続するための部分である。
【0029】
撮像モジュール12は、上述のように、透明基板13a及びイメージセンサ13bを有する。
【0030】
透明基板13aは、入力光に対して実質的に透明な板状部材である。透明基板13aの上面視形状は方形である。透明基板13aの背面には、イメージセンサ13bがバンプ接続している。
【0031】
イメージセンサ13bは、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサといった一般的な固体イメージセンサである。イメージセンサ13bの撮像領域13cには、XZ平面にてマトリクス状に配置された複数の画素を有する。各画素は、光電変換によって、入力光の光量に応じた電荷を蓄積する。各画素に蓄積された電荷は、転送制御によって各画素から読み出されて、後続の回路に供給される。
【0032】
筐体20は、配線基板10上に実装される。筐体20は、撮像モジュール12を下部空間で収納し、レンズユニット30を上部空間で収納する。筐体20の採用により、カメラ機能のモジュール化を図ることができる。筐体20の下端面は、黒色の接着剤を介して配線基板10に固定されている。これによって、筐体20の内部に外来光が侵入することを抑制することができる。なお、筐体20は、例えば、黒色樹脂の成型により製造される。
【0033】
蓋60は、筐体20に対して取り付けられる。これによって、レンズユニット30は筐体20内に閉じ込められる。蓋60は、好適には、ネジによって筐体20に取り付けられる。蓋60を筐体20に対して接着固定するのではなく、ネジで固定することによって、筐体20に対する蓋60の着脱が可能になる。これによって、動作テストで不良と判定されたカメラモジュール150の不良原因をテスト後に取り除くこと等が可能になる。例えば、イメージセンサ13bの撮像面上に入り込んだゴミを動作テスト後に取り除くことでカメラモジュールの歩留まりを向上させることができる。なお、蓋60は、例えば、樹脂がモールド成形されて製造される。
【0034】
図4に示すように、筐体20は、側壁(側壁部)21、隔壁(隔壁部)22、梁部23、梁部24、レール(ガイド部)25、台座(台座部)26、孔部27、ガイド柱28、及び引出口29を有する。
【0035】
側壁21は、側壁21a〜21dが連続した上面視正方形状の筒状部分である。側壁21の壁厚は、0.3mm〜0.6mmに設定されている。隔壁22は、側壁21から内側へ延在する板状部分である。隔壁22の壁厚は、側壁21と同様、0.3mm〜0.6mmに設定されている。隔壁22によって、レンズユニット30用の収納空間と撮像モジュール12用の収納空間が筐体20内に形成される。なお、隔壁22には、上下の収納空間を光学的に接続するための開口OP2が設けられている。
【0036】
隔壁22には、後述の軸保持部40(図5、6参照)が載置される台座26が設けられている。台座26には、孔部27が設けられている。なお、孔部27は、開口OP2よりも側壁21に対して近接配置されている。孔部27aは、側壁21の端部近傍に設けられている。孔部27bは、側壁21aと側壁21dの間の内隅近傍に設けられている。
【0037】
側壁21の強度を高めるため、側壁21aと側壁21b間の内隅には、梁部23が設けられている。梁部23は、端部23a、平板部23b、及び端部23cを有する。平板部23bから見て、端部23aは、側壁21aに向かって延在し、側壁21aに対して連結する。平板部23bから見て、端部23cは、側壁21bに向かって延在し、側壁21bに対して連結する。なお、梁部23は、隔壁22の上面に対して連結している。また、梁部23と側壁21a、21b間には空間が形成されている。
【0038】
側壁21の強度を高めるため、側壁21cと側壁21d間の内隅には、梁部24が設けられている。梁部24は、基部24a、胴部24b、及び端部24cを有する。
【0039】
基部24aの基端は、側壁21cに対して連結している。基部24aの先端は、胴部24bの基端に連結している。基部24aは、側壁21cから離間する方向へ延在する。胴部24bは、レンズユニット30の外周に沿って延在する。端部24cも、同様に、レンズユニット30の外周に沿って延在する。胴部24bは、基部24a及び端部24cよりも肉厚である。これによって、筐体20の成型時、押し出しピン等によって筐体20を金型から簡易に離脱させることができる。なお、梁部24は、隔壁22に対して連結している。梁部24と側壁21c、21d間には空間が形成されている。
【0040】
レール25は、側壁21bと側壁21c間の隅部に配置されている。レール25は、側壁21に沿って延在する柱状体である。レール25によってレンズユニット30の移動が安定化される。
【0041】
側壁21dの内側には、ガイド柱(配線案内部)28が設けられている。ガイド柱28は、側壁21dに沿って延在する柱状体である。ガイド柱28と側壁21d間に配線が位置決めされる。ガイド柱28は、筐体20内に引かれる配線を位置決めするための部材である。
【0042】
側壁21cには、引出口29が設けられる。筐体20内の配線は、ガイド柱28と側壁21dの間、梁部24と側壁21dの間、梁部24と側壁21c間を引き回され、引出口29を介して筐体20外へ引き出され、配線基板10に対して接続される。
【0043】
図5に示すように、レンズユニット30は、レンズホルダ(レンズ保持体)31、ピエゾ素子(圧電素子)50、伝達軸(駆動軸)51、及び軸保持部40を有する。
【0044】
レンズホルダ31は、円筒状の部材であり、レンズL1〜L4を保持している(図17参照)。レンズホルダ31の上板部には、開口OP1が形成されている。レンズホルダ31の上板部は、光学的に絞りとして機能する。レンズホルダ31の外周には、伝達軸51が連結した連結部32が設けられている。連結部32は、伝達軸51を固定支持する支持板32a、32bを有する。なお、軸保持部40を含めないで、レンズユニット30と把握しても良い。
【0045】
レンズユニット30は、ピエゾ素子50の駆動に応じて、y軸(レンズL1〜L3の光軸に一致する軸線)に沿って移動可能である。但し、軸保持部40は、筐体20に対して固定されており、ピエゾ素子50の駆動に応じて移動することはない。イメージセンサ13bの撮像面に対するレンズL1〜L3の配置高さを調整することで、意図したように被写体像をイメージセンサ13bの撮像面に結像させることができる。
【0046】
ピエゾ素子50及び伝達軸51は、接着剤を介して互いに固着している。伝達軸51は、レンズホルダ31に対して連結部32を介して連結されている。具体的には、伝達軸51は、連結部32の支持板32a、32bの開口に対して圧入されている。
【0047】
ピエゾ素子50を筐体20に対して固定する場合、筐体20の平坦面に対してピエゾ素子50が傾斜して配置されてしまう場合がある。また、伝達軸51を筐体20に対して固定する場合も同様である。本実施形態では、レンズホルダ31に対して伝達軸51を固定し、レンズホルダ31に対して伝達軸51を介してピエゾ素子50を固定する。従って、筐体20に対するピエゾ素子50及び伝達軸51の配置誤差が問題となることはない。
【0048】
レンズホルダ31、ピエゾ素子50、及び伝達軸51は、相対的な位置関係が固定されており、固定側部材として機能する軸保持部40に対して相対的に移動可能となっている。
【0049】
ピエゾ素子50は、セラミックス層(圧電層)が積層された一般的な圧電素子である。ピエゾ素子50の側面は、一対の電極端子として機能する。例えば、一方の電極端子を接地させた状態で、他方の電極端子に駆動電圧を印加することによってピエゾ素子50はY軸方向に伸縮する。
【0050】
伝達軸51は、y軸方向を長手方向とする棒状体である。伝達軸51は、接着剤を介して、ピエゾ素子50の上面に固定されている。なお、接着剤以外の方法で、伝達軸51をピエゾ素子50に対して固定しても構わない。ピエゾ素子50と伝達軸51を連結させる方法は任意であり、伝達軸51とピエゾ素子50とを嵌め合いにより互いに連結させても良い。
【0051】
伝達軸51は、ピエゾ素子50で生じた振動を軸保持部40に伝達する。軸保持部40は、摺動可能な状態で伝達軸51を保持し、かつ筐体20に対して固定されている。従って、ピエゾ素子50で生じた振動によって、ピエゾ素子50、伝達軸51、及びレンズホルダ31が、筐体20及び軸保持部40に対して変位する。
【0052】
伝達軸51は、軽量でかつ剛性が高いことが望ましい。伝達軸51は、比重2.1以下の材料からなる。より好ましくは、伝達軸51は、比重2.1以下であり、弾性率20GPa以上の材料からなる。更に好ましくは、伝達軸51は、比重2.1以下であり、弾性率30GPa以上の材料からなる。これによって、共振周波数を高周波側へシフトさせることができ、連続した使用可能周波数帯域を得ることができる。
【0053】
伝達軸51は、ガラス状炭素、繊維強化樹脂、エポキシ樹脂から成型すると良い。特に黒鉛を含有するガラス状炭素複合材、カーボンを含有する繊維強化樹脂やガラス、カーボンを含有するエポキシ樹脂複合材が特に好ましい。
【0054】
レンズホルダ31の外周面には、レール受け部35が設けられている。レール受け部35は、筐体20に設けられたレール25を受け入れる。レール受け部35をレール25に嵌め合わせることによって、レンズホルダ31の移動が安定化される。
【0055】
レンズホルダ31の外周面には、外側へ延出する支持板32a、32bが、y軸方向に所定の間隔をおいて配置されている。支持板32a、32bには、伝達軸51が挿入される開口が形成されている。なお、支持板32a、32bは、レンズホルダ31と別体としても良い。
【0056】
支持板32aは、伝達軸51を固定支持する。支持板32aに形成された開口は、伝達軸51の径よりも僅かに狭い。支持板32aに形成された開口に圧力をかけて伝達軸51を嵌め込むことによって、支持板32aに対して伝達軸51を固定することができる。支持板32bの孔径も、支持板32aと同様である。
【0057】
上述の構成を採用することによって、支持板32a、32bで伝達軸51をきつく保持することができる。換言すれば、伝達軸51と支持板32a、32b夫々間の振動伝達度を高くすることができる。このようにして、レンズホルダ31を効率的に変位させることが可能になる。
【0058】
圧入以外の方法を採用する場合、接着剤を適切に選定することで上述の場合と同様の効果を得ることができる。例えば、熱硬化性のエポキシ系接着剤を採用すると良い。
【0059】
支持板32a、32b間には、軸保持部40が配置されている。これらの組立て方法は任意である。例えば、支持板32a、32b間に軸保持部40を配置した状態で、これらの部材に対して伝達軸51を挿入する。
【0060】
支持板32a、32b間に軸保持部40を配置することで、レンズホルダ31の移動範囲を規制することができる。但し、このような2点支持に限らず、支持板32a及び支持板32bの一方で伝達軸51を支持しても良い。
【0061】
軸保持部40は、y軸に沿って摺動可能な状態で伝達軸51を保持している。軸保持部40と伝達軸51とは、互いに摩擦係合状態にある。軸保持部40の構成については後述する。
【0062】
上述のように、レンズホルダ31は、レンズL1〜L3を保持する。レンズL1は、調芯工程を経てレンズホルダ31内に配置されている。レンズL2、レンズL3は、調芯工程を経ることなく、レンズホルダ31内に配置される。つまり、レンズL1は、レンズL2、L3と比較して、高い位置精度が要求されるレンズである。
【0063】
レンズホルダ31に対するレンズL1〜L3の組み込み方法は任意である。例えば、レンズL3、及びレンズL2をこの順で積層し、レンズL2上にてレンズL1を調芯し、レンズL3、レンズL2、及びレンズL1を接着固定し、その後、レンズL1〜L3の積層体をレンズホルダ31内に圧入すると良い。なお、圧入以外の方法でレンズホルダ31に対してレンズL1〜L3を組み入れても良い。
【0064】
図6乃至図11を参照して、軸保持部40の構成について説明する。図6及び図7に示すように、軸保持部40は、本体部41、押え板(板状部材)42、ばね(弾性体)43、及び押え板(板状部材)44を有する。伝達軸51から離間する方向に、押え板42、バネ43、押え板44がこの順で配置される。
【0065】
本体部41には、空間41a、空間41bが形成されている。空間41aは、押え板42及びバネ43を収納する。空間41bは、押え板44を収納する。また、本体部41は、凸部45a、45bを有する。
【0066】
押え板42は、左端部42a、胴部42b、及び右端部42cを有する板状部材である。バネ43は、一般的なコイル状バネである。押え板44は、矩形状の板状部材である。
【0067】
本体部41に形成された空間内に、押え板42、バネ43、及び押え板44が順に押し込まれる。本体部41に形成された空間41aに、押え板42及びバネ43が収納される。本体部41に形成された空間41bに、押え板44が収納される。
【0068】
本体部41に対して押え板44を接着固定することで、押え板42、バネ43、及び押え板44が位置決めされる。具体的には、バネ43は、押え板44によって本体部41の空間内に閉じ込められ、抑え板42を伝達軸51側へ付勢する。押え板42は、バネ43によって伝達軸51側へ付勢される。伝達軸51は、押え板42を介してバネ43により内側へ付勢され、本体部41と押え板42との間に挟持された状態になる。換言すると、伝達軸51と軸保持部40とが互いに摩擦係合した状態になる。
【0069】
押え板42の端部のy軸に沿う幅を狭くすることによって、本体部41のy軸に沿う幅が大きくなることを抑制しつつ、本体部41の内部での押え板42の上下の変位を規制することができる。本体部41の高さ(y軸に沿う幅)を抑えることによって、レンズユニット30の移動範囲を十分に確保することができる。
【0070】
押え板42は、好ましくは、金属材料からなる。例えば、亜鉛合金、アルミ合金等の金属材料で、押え板42を形成すると良い。これによって、伝達軸51と押え板42間の摩擦により、押え板42から磨耗粉が生じることを効果的に抑制できる。
【0071】
バネ43の径は、押え板42の幅と略同一又は若干小さい。なお、バネ43の具体的な構成は任意であり、他の種類の弾性体(板ばね、樹脂製ゴム等)を利用しても良い。本体部41は、樹脂が金型で成形されて製造される。例えば、押え板42、44は、金属板又は樹脂板のプレス成型によって製造される。
【0072】
なお、本体部41は、好適には、金属材料からなる。本体部41が樹脂の場合、伝達軸51との摩擦により磨耗粉が発生する場合がある。このような問題が生じることを回避するために、ここでは、亜鉛合金の成形により本体部41を製造している。なお、亜鉛合金に限らず、アルミ合金、その他の金属材料を採用しても良い。
【0073】
図8乃至図10に示すように、軸保持部40は、薄肉部41p及び厚肉部41qを有する。薄肉部41pの厚み(y軸に沿う幅)TH1は、厚肉部41qの厚み(y軸に沿う幅)TH2よりも小さい。軸保持部40は、薄肉部41pの部分で伝達軸51を保持し、厚肉部41qの部分で筐体20に対して固定される。この構成を採用することによって、レンズユニット30の移動範囲を十分に確保しつつ、筐体20に対して軸保持部40を安定して固定させることができる。
【0074】
薄肉部41pには、伝達軸51が挿通される開口OP10が設けられている。また、薄肉部41pには、押え板42の端部42a、42cが嵌め合わされ、押え板42の移動をガイドするガイド溝41gが設けられている。厚肉部41qの下面には、上述の凸部45a、45bが設けられている。厚肉部41qの上面には、筐体20の側壁21に対応して設けられた側壁41rが設けられている。筐体20に対して軸保持部40を固定させたとき、筐体20の側壁21と軸保持部40の側壁41rとが連続することによって、筐体20に対する蓋60の固定を安定化し、筐体20の外部から内部へのゴミの侵入を効果的に抑制することができる。
【0075】
図11に示すように、開口OP10が形成された薄肉部41pの内側面には、伝達軸51に向かって突出する突出部47a、47bが設けられている。各突出部47a、47bは、本体部41の開口部の内側面を部分的に平坦面とすることによって形成される。
【0076】
伝達軸51は、本体部41と押え板42との間で、押え板42、突出部47a、及び突出部47bにより3点で当接保持される。これによって、伝達軸51を安定して保持することができる。なお、3点の当接点は、ほぼ等しい間隔にあり、120度だけ順にずらして配置されている。これにより、伝達軸51をより安定して保持することができる。
【0077】
図12にレンズユニット30の側面図を示し、図13にレンズユニット30の概略断面図を示す。
【0078】
図13に示すように、押え板44の軸線Lx1に沿う幅は、押え板42の軸線Lx1に沿う幅よりも狭い。これによって、筐体20の内側面に対してより近い位置にバネ43を配置することが可能となり、カメラモジュール150の小型化を図ることができる。
【0079】
バネ43は、レンズホルダ31から見た伝達軸51の配置方向(軸線Lx1に沿う方向)に対して90度を成す方向(軸線Lx2に沿う方向)へ押え板42を付勢する。これによって、軸保持部40の配置スペースを効果的に小さくすることができ、カメラモジュール150の小型化を図ることができる。なお、軸線Lx1と軸線Lx2とが成す角度は90度には限られない。軸線Lx1と軸線Lx2とが成す角度を、45〜135度としても良い。
【0080】
図14に模式的に示すように、軸保持部40は、筐体20に対して取り付けられる。筐体20の隔壁22に設けられた台座26の上面(取付面)には、孔部27a、27bが設けられている。また、軸保持部40の本体部41の下面には、凸部45a、45bが設けられている。隔壁22の孔部27aに対して本体部41の凸部45aが嵌め込まれる。同様に、隔壁22の孔部27bに対して本体部41の凸部45bが嵌め込まれる。本実施形態では、本体部41の下面と台座26の上面間の面接触によって、軸保持部40を高精度に位置決めすることができる。
【0081】
なお、筐体20の側壁21には、切欠き部21eが設けられている。筐体20と軸保持部40間の空間に樹脂を注入することによって、筐体20に対して軸保持部40を固着させることができる。
【0082】
本実施形態では、筐体20の隔壁22に対して軸保持部40を載置し、孔部27と凸部45との嵌め合いによって両者を固定する。この構成を採用することによって、筐体20の側壁21に対して軸保持部40を固定する際に問題となる側壁21の反りの問題を回避することができる。隔壁22は、側壁21と同様に薄肉の板状部分であるが、側壁21と比較して長さが短く、側壁21のように反りが生じることはないためである。
【0083】
本実施形態では、隔壁22に対して台座26を設け、台座26上に軸保持部40を固定する。この構成を採用することによって、台座26の上面と軸保持部40の面間の面接触によって、筐体20に対して軸保持部40を安定載置することが可能になる。台座26の上面を高精度に成型し、軸保持部40の実装面を高精度に成型することによって、軸保持部40の位置安定性を効果的に高めることができる。
【0084】
本実施形態では、側壁21の近傍に台座26を配置する。これによって、軸保持部40の安定性を効果的に高めることができる。筐体20の隅部付近では、側壁21a、21dに対して隔壁22が連結しており、隔壁22に反り等の変形が生じる可能性は少ないためである。
【0085】
図14に示すように筐体20に対して軸保持部40を取り付けることによって、図15に示すように筐体20の側壁21に設けられた切欠き部21eに対して本体部41が嵌め込まれる。このようにして、筐体20の小型化を効果的に図ることができる。なお、図15に示すように、筐体20の外側から筐体20及び軸保持部40に対してシール部材70を貼り付けることによって、外部から筐体20内へのゴミが入り込むことを効果的に抑制することができる。シール部材70は、例えば、可撓性を有する黒色のテープである。
【0086】
図15に示すように、筐体20は、等しい横幅及び縦幅を有する。つまり、幅W1=幅W2であり、筐体20の上面視形状は正方形状となる。この場合、レンズの光軸は、筐体20の対角線の交点近傍に設定される。これによって、筐体20に位置決めによって、簡易にレンズの光軸を位置決めすることができる。なお、発明者らの試作結果によると、上述の軸保持部40の採用によって、従来よりも筐体20の縦幅及び横幅を効果的に縮小することができた。
【0087】
また、図11に示すように、軸保持部40が配置された筐体20の隅部の隣の隅部に対して引出口29を設ける。これによって、筐体20内で引きまわれるリード線の長さを効果的に短くすることができる。
【0088】
図16乃至図18を参照して、カメラモジュール150の構成について更に説明する。なお、尚、図16は、カメラモジュール150の上面図である。図17は、カメラモジュール150のx17−x17間の概略的な断面図である。図18は、カメラモジュール150のx18−x18間の概略的な断面図である。
【0089】
図17及び図18に示すように、ピエゾ素子50と伝達軸51の積層体の高さ(y軸に沿う幅)は、レンズホルダ31の高さ(y軸に沿う幅)以下である。これによって、レンズホルダ31の移動範囲を確保するために、筐体20の高さ(y軸に沿う幅)を増加させることを効果的に抑制することができる。結果的に、カメラモジュール150の低背化を図ることができる。
【0090】
イメージセンサ13bは、透明基板13aに対してバンプ実装されている。透明基板13aとイメージセンサ13b間には、複数の半田バンプ(不図示)が配置される。透明基板13aに対して半田バンプを形成し、この上にイメージセンサ13bを実装することで、透明基板13aとイメージセンサ13bとが積層される。なお、透明基板13aの背面には、配線パターンが予め形成されている。このようにして、イメージセンサ13bと透明基板13a間の位置が固定され、かつ両者間の電気的な接続が確保される。なお、イメージセンサ13bの撮像面は、透明基板13a側に配置されている。
【0091】
イメージセンサ13bと透明基板13aとの間の距離(離間距離)は、上述の半田バンプの大きさによって決定される。半田バンプの大きさを適宜制御することで、イメージセンサ13bと透明基板13aとの位置決めを正確に行うことが可能である。また、複数の半田バンプにより位置決めすることから、イメージセンサ13bと透明基板13aとの離間距離が平均化される。
【0092】
透明基板13aは、配線基板10に対してバンプ接続される。つまり、透明基板13aは、半田バンプを介して配線基板10に固定されると共に電気的に接続される。このようにして、イメージセンサ13bは、透明基板13aを介して、配線基板10に対して電気的に接続される。
【0093】
透明基板13aと配線基板10間の半田バンプによって、イメージセンサ13bと配線基板10間にスペースが確保される。換言すると、透明基板13aと配線基板10間の半田バンプは、イメージセンサ13bと配線基板10間に空間を形成するためのスペーサとして機能している。
【0094】
筐体20の上部空間及び下部空間を隔てる隔壁22の背面側には、リブ(位置規制部)が形成されている。これによって、筐体20を透明基板13a上に配置するときに上方から透明基板13aを押さえ込み、透明基板13aを好適に位置決めすることができる。
【0095】
透明基板13aを好適に位置決めするために、透明基板13aの側面に対向するリブを筐体20に形成させても良い。これによって、筐体20を透明基板13a上に配置するときに、好適に横方向から透明基板13aの配置位置を規制することができ、透明基板13aを好適に位置決めすることができる。なお、このようなリブを設けずに直接的に筐体20で横方向から透明基板13aの配置位置を規制しても良い。
【0096】
配線基板10の下には、補強板15が配置されている。補強板15は、ポリイミド等の樹脂材料からなる。補強板15は、黒色である。補強板15を配置することで、カメラモジュール150の内部に外来光が入射することを好適に抑制することができる。なお、外来光の悪影響を更に抑制するため、黒色の配線基板10を採用している。
【0097】
次に、図19乃至図20を参照して更に説明する。
【0098】
カメラモジュール150は、図19に示す携帯電話90内に搭載される。携帯電話90は、上側本体91、下側本体92、及びヒンジ93を有する。上側本体91と下側本体92とは、共にプラスチック製の平板部材であって、ヒンジ93を介して連結される。上側本体91と下側本体92とはヒンジ93によって開閉自在に構成される。上側本体91と下側本体92とが閉じた状態のとき、携帯電話90は上側本体91と下側本体92とが重ね合わされた平板状の部材になる。
【0099】
上側本体91は、その内面に表示部94を有する。表示部94には、着信相手を特定する情報(名前、電話番号)、携帯電話90の記憶部に格納されたアドレス情報等が表示される。表示部94の下には液晶表示装置が組み込まれている。
【0100】
下側本体92は、その内面に複数のボタン95を有する。携帯電話90の操作者は、ボタン95を操作することによって、アドレス帳を開いたり、電話を掛けたり、マナーモードに設定したりし、携帯電話90を意図したように操作する。携帯電話90の操作者は、このボタン95を操作することに基づいて、携帯電話90内のカメラモジュール150を起動する。
【0101】
図20を参照して、カメラモジュール150を動作させるためのシステム構成(アクチュエータの駆動部の構成)について説明する。図20に示すように、画像取得部80の出力は、コントローラ(制御部)81に接続される。コントローラ81の出力は、駆動電圧生成回路(駆動電圧供給部)82に接続される。駆動電圧生成回路82の出力は、振動源83に接続される。なお、画像取得部80は、上述のイメージセンサ13bに等しい。振動源83は、上述のピエゾ素子50に等しい。
【0102】
コントローラ81は、携帯電話90内に組み込まれたCPUであり、プログラムを実行して様々な指令を生成する。コントローラ81は、操作者による携帯電話90の操作に応じて、カメラモジュールの機能を活性化する。
【0103】
コントローラ81は、レンズホルダ31の移動速度を調整する機能を有する。コントローラ81は、画像取得部80から伝送される画像に対する処理に基づいて、レンズホルダ31が合焦位置にあるか否かを判断し、また、レンズホルダ31を合焦状態とするために、レンズホルダ31の移動方向、移動量を算出する。コントローラ81は、合焦位置から離れた位置から合焦位置へレンズホルダ31を移動させる場合、レンズホルダ31が高速に移動するように駆動電圧生成回路82を制御する。コントローラ81は、合焦位置に近い距離内で合焦位置へレンズホルダ31を移動させる場合、レンズホルダ31が低速で移動するように駆動電圧生成回路82を制御する。駆動電圧生成回路82は、コントローラ81から供給される制御信号に応じて、振動源83に対して駆動電圧を供給する。後述の実施例において、コントローラ81の具体的な動作内容を説明する。
【0104】
図21及び図22を参照して、駆動電圧生成回路82の構成及びその動作について説明する。
【0105】
図21に示すように、駆動電圧生成回路(駆動電圧供給部)82は、スイッチングパルス生成回路(スイッチングパルス生成部)85、及びスイッチSW1〜SW4を含む駆動電圧生成部を有する。なお、駆動電圧生成部は、電流源CS1、CS2、及び電源PSを更に有する。
【0106】
スイッチングパルス生成回路85には、コントローラ81の出力が接続される。スイッチングパルス生成回路85は、コントローラ81から伝送される制御信号に応じた周波数のスイッチングパルスを生成してスイッチSW1〜SW4へ供給する。スイッチングパルスに応じて各スイッチSW1〜SW4が制御されることで、駆動電圧生成部は、ピエゾ素子50に対して駆動電圧を供給する。
【0107】
電源PSと接地電位GND間には、スイッチSW1、電流源CS1、及びスイッチSW2が直列に接続される。電源PSと接地電位GND間には、スイッチSW3、電流源CS2、及びスイッチSW4が直列に接続される。電流源CS1とスイッチSW2間の節点は、スイッチSW3と電流源CS2間の節点に接続される。また、電流源CS1とスイッチSW2間の節点及びスイッチSW3と電流源CS2間の節点は、ピエゾ素子PZの一端に接続される。ピエゾ素子PZの他端は、スイッチSW2、スイッチSW4、及び接地電位GNDに接続される。なお、スイッチSW1〜SW4は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ等のスイッチング素子である。
【0108】
図22に示すように、スイッチングパルス生成回路85は、スイッチSW1〜SW4の動作状態を制御する。スイッチングパルス生成回路85は、端子T1〜T4を有する。各端子T1〜T4から出力されるスイッチングパルスVS1〜VS4によってスイッチSW1〜SW4の動作状態が決定付けられる。例えば、スイッチングパルスがハイレベルのとき、スイッチSW1〜SW4がオン状態となる。スイッチングパルスがローレベルのとき、スイッチSW1〜SW4がオフ状態となる。
【0109】
図22に示す第1状態のとき、ピエゾ素子PZは電流源CS1によって急速に充電される。第2状態のとき、ピエゾ素子PZは、緩慢に放電する。第3状態のとき、ピエゾ素子PZは、電流源CS1、CS2によって、緩慢に充電される。第4状態のとき、ピエゾ素子PZは、急速に放電する。第1状態と第2状態間を繰り返し切り替えることで、レンズホルダ31は順方向(物体側)一方側に変位する。第3状態と第4状態間を繰り返し切り替えることで、レンズホルダ31は逆方向(撮像素子側)に変位する。
【0110】
図23乃至図28を参照して、更に説明する。
【0111】
図23に示すように、スイッチングパルス生成回路85の端子T1からのスイッチングパルスVS1がスイッチSW1に供給され、端子T2からのスイッチングパルスVS2がスイッチSW2に供給される。これに応じて駆動電圧VW1がピエゾ素子PZに印加される。これに応じて、レンズホルダ31は、順方向に変位する。図23では、レンズホルダ31の変位を矢印で模式的に示している。すなわち、レンズホルダ31は、時刻t1と時刻t2間に変位し、時刻t2と時刻t3間には変位しない。他の期間についても同様である。
【0112】
なお、スイッチングパルスVS1とスイッチングパルスVS2は、互いに反転した関係にある。一方のスイッチングパルスは、他方のスイッチングパルスを反転して生成すれば良いため、スイッチングパルス生成回路85の回路構成を簡素化することができる。また、時刻t1と時刻t2間の時間間隔は、時刻t2と時刻t3間の時間間隔よりも十分に短い。この点は、後述のデューティー比に関する説明から明らかである。
【0113】
本実施形態では、スイッチングパルスVS1、VS2に含まれるスイッチングパルスSPの供給時期に対応する時期にレンズホルダ31は変位する。発明者らの検討によれば、図24に示すように、ピエゾ素子50の伸縮とレンズホルダ31の変位とが連関している。時刻t20(図23の時刻t1に対応)と時刻t21(図23の時刻t2に対応)間は、駆動電圧VW1は急峻に立ち上がる。駆動電圧VW1の立ち上がりに応じて、ピエゾ素子PZは伸張する。ピエゾ素子PZの伸張に応じてレンズホルダ31は軸保持部40から離間する方向に変位する。時刻t21〜時刻t25(図23の時刻t3に対応)の間は、駆動電圧VW1は緩慢に立ち下がる。駆動電圧VW1の立ち下がりに応じて、ピエゾ素子50は、比較的緩慢に収縮する。このとき、ピエゾ素子PZは、その慣性によってその場に居留まる。なお、スイッチングパルスは高周波であるため、レンズホルダ31は、時刻t2〜t3間も移動力を保持している。
【0114】
本実施形態に係るアクチュエータでは、ピエゾ素子50が急激に伸張するとき、レンズホルダ31が軸保持部40に対して変位する。換言すると、ピエゾ素子50が緩慢に収縮するとき、レンズホルダ31は、軸保持部40に対して変位しない。この場合、レンズホルダ31を効率的に変位させるためには、スイッチングパルスSPのパルス幅を狭めることによってピエゾ素子50を短時間に伸張させると良いと言える。ピエゾ素子50に蓄積された電流の放電時間を確保することが必要である点を考慮すれば、スイッチングパルスのデューティー比を小さく設定すると良いと言える。
【0115】
より具体的には、図25に示すように、スイッチングパルスのデューティー比をα%からβ%(但し、β%<α%とする)に設定することによって、レンズホルダ31を効率的に変位させることができる。レンズホルダ31をより効率的に変位させることで、レンズホルダ31をより高速に変位させることが可能になる。なお、デューティー比Dは、パルス幅/周期によって算出することができる。図25(a)に示すように、ta/Ta=αにより算出される。図25(b)に示すように、tb/Tb=βにより算出される。ta、tbは、パルス幅である。Ta、Tbは、周期である。
【0116】
図26を参照して、スイッチングパルスの設定について説明する。なお、図26では、スイッチングパルスのデューティー比を4%〜40%の範囲とした。また、スイッチングパルスの周波数帯は、40kHz〜200kHzとした。デューティー比を2%以下とすると、ピエゾ素子に印加される駆動電圧のレベルが低下することが予想される。従って、ここでは、デューティー比を2%以上の値(つまり、最低デューティー比=4%)とした。
【0117】
なお、試験結果については、○△×の三段階で評価している。○>△>×の順でアクチュエータの特性が良くなる。○の場合、アクチュエータは動作速度1mm/s以上の高速度で問題なく動作する。△の場合、○の場合と比較して、アクチュエータの動作特性が劣化する。×の場合、アクチュエータの通常の動作を確保することが難しい。
【0118】
図26に示すように、本実施形態に係るアクチュエータの試作評価結果によれば、スイッチングパルスのデューティー比Dが25%であれば、適切な周波数を選定することを条件としてアクチュエータを通常動作させることができる。デューティー比Dが30%を超える場合と比較して、駆動電圧の波形が急峻になり、効率的にレンズホルダ31を変位させることが可能になる。
【0119】
より好ましくは、スイッチングパルスのデューティー比Dは、20%であれば良い。これによって、上述と同様の効果に加えて、選択可能な周波数帯域を拡大することができる。選択可能な周波数帯域の拡大によって設計時の自由度が向上する。また、実際に生成されるスイッチングパルスの周波数の変動による悪影響(歩留まりの劣化等)を回避することができる。
【0120】
更により好ましくは、スイッチングパルスのデューティー比Dを、15%以下、10%以下、8%以下、又は6%以下とすると良い。選択可能な周波数帯域を更に拡大することができ、上述と同様の効果を得ることができる。なお、図26に示す結果は、順方向へのレンズホルダ31の変位を前提としている。逆方向へレンズホルダ31を変位させる場合、デューティー比Dは異なる値となる。例えば、順方向時に適用されるデューティー比D=10%と同様の結果を得るため、逆方向時にはデューティー比D=90%と設定する。
【0121】
本実施形態では、スイッチングパルスのデューティー比Dを小さく設定することで、レンズホルダ31を効率的に変位させることができることに加えて、選択可能な周波数帯域を顕著に拡大することができる。選択可能な周波数帯域の拡大によって設計時の自由度が向上する。また、実際に生成されるスイッチングパルスの周波数の変動による悪影響(歩留まりの劣化等)を回避することができる。スイッチングパルスVS1、VS2を高周波帯域に設定すれば、従来よりも高速にレンズホルダ31を変位させることができる。これによって、アクチュエータの動作特性を向上させることができる。
【0122】
図27を参照して、コントローラ81の指令に基づいてレンズホルダ31の移動速度が変更される過程について説明する。なお、コントローラ81は、画像取得部80から伝送される画像データに基づいて、合焦位置に対するレンズホルダ31の現在位置を算出し、レンズホルダ31の移動方向、移動速度を駆動電圧生成回路82に指示する。駆動電圧生成回路82は、コントローラ81からの指令に基づいて、所定の周波数のスイッチングパルスを生成し、これを所定のスイッチング素子に供給し、これにより振動源83に対して駆動電圧を供給する。
【0123】
図27に示すように、レンズホルダ31は、時刻t30まで高速に連続移動し、時刻t30をすぎると低速に連続移動する。本実施形態では、レンズホルダ31が合焦位置から遠い位置にあるとき、はじめにレンズホルダ31を高速移動させ、レンズホルダ31が合焦位置に近くなるとレンズホルダ31を低速移動させる。これによって、合焦に要する時間を全体として短縮することができる。なお、レンズホルダ31を低速移動させることによって、レンズホルダ31が合焦位置にあるか否かの判断をより確実に行うことが可能になる。
【0124】
時刻t30まで、コントローラ81の指令に基づいて、スイッチングパルス生成回路85は、図23で説明したように、スイッチングパルスをスイッチSW1、SW2へ供給する。スイッチングパルスは、デューティー比10%であり、周波数120kHzである。
【0125】
時刻t30を経過すると、コントローラ81の指令に基づいて、スイッチングパルス生成回路85は、図23で説明したように、周波数が異なるスイッチングパルスをスイッチSW1、SW2へ供給する。時刻t30以降のスイッチングパルスは、デューティー比7%であり、周波数80kHzである。
【0126】
本実施形態では、スイッチングパルスの周波数を変調することによってレンズホルダ31の移動速度を変更する。このとき、時間的な間隔を設けることなく、スイッチングパルスの周波数を変更する。つまり、周波数120kHz期間(高速移動期間)と周波数80kHz期間(低速移動期間)の間に時間的な間隔を設けない。レンズホルダ31は、スイッチングパルスの周波数の変更時点で一度完全に停止することなく、スイッチングパルスの変更時点の前後に亘って継続的に移動している状態を保持する。図32を参照して説明したように、レンズホルダ31が完全に停止した状態となると、レンズホルダ31の初期移動時に移動ロスが生じてしまい、移動後のレンズホルダ31の位置に誤差が生じてしまう。本実施形態では、スイッチングパルスの周波数変調を時間的な間隔を設けずに実行する。これによって、移動後のレンズホルダ31の位置に誤差が生じてしまうことを抑制することができる。
【0127】
図28に参考例の場合を示す。図28に示す参考例の場合、スイッチングパルスの周波数を変調することなく、単位時間当たりのスイッチングパルスのパルス数の変更に基づいて、レンズホルダ31の位置を調整する。この場合には、時刻t35まではレンズホルダ31は移動状態を保持するが、時刻t35をすぎると、スイッチングパルスの供給停止に応じて、レンズホルダ31も完全に停止してしまう。スイッチングパルス数によってレンズホルダ31の移動量をある程度想定することができるが、冒頭で説明したように、移動開始時、移動停止時には、レンズホルダ31の位置に誤差が生じてしまう場合がある。この結果、レンズホルダ31を合焦状態とするために、レンズホルダ31の物体側への移動、結像面側への移動を繰り返すことが必要になってしまう場合もあり得る。
【0128】
本実施形態では、レンズホルダ31が合焦位置に近接するに応じて、その移動速度をスイッチングパルスの周波数変調によって低速とし、かつ周波数変調時に時間的な間隔を設けない。これによって、速度変更の前後の期間に亘ってレンズホルダ31を移動状態として、レンズホルダ31を完全に停止させることを回避する。これによって、レンズホルダ31の移動量にロスが生じることを効果的に抑制し、レンズホルダ31をより高精度に変位させることを実現することができる。なお、本実施形態では、スイッチングパルスの周波数の選択範囲が拡大されているため、レンズホルダ31の移動速度を広範囲で変更することができる。
【0129】
本実施形態では、レンズホルダ31には、ピエゾ素子50及び伝達軸51が取り付けられている。移動対象物の重量が重くなると、その位置を高精度に制御することは容易ではなくなる場合がある。本実施形態のように、レンズホルダ31、ピエゾ素子50、及び伝達軸51が共に変位するタイプのアクチュエータでは、上述のように、スイッチングパルスの周波数変調により、レンズホルダ31の移動速度を調整し、かつ、移動速度の変更時に時間的な間隔を設けないことは、移動後のレンズホルダ31の位置精度を高めるうえで非常に有効である。
【0130】
次に、図29及び図30を参照して、比較例について説明する。なお、図30では、図26の場合と同様にして、アクチュエータの動作結果を評価している。なお、比較例の場合も、図21と同様の回路を採用するものとする。
【0131】
図29に比較例に係るカメラモジュールを示す。図29に示すように、可動部MUは、レンズホルダ31と軸保持部40で形成される。ピエゾ素子50は、配線基板10に対して固定されている。伝達軸51は、ピエゾ素子50に対して固定されている。ピエゾ素子50の駆動に応じて、レンズホルダ31と軸保持部40とが共に移動する。
【0132】
比較例と本実施形態とを比較した場合、ノコギリ歯状の駆動電圧VW1でピエゾ素子PZを駆動する点は一致する。しかしながら、両者の間では、駆動電圧VW1の波形とレンズホルダ31が変位するタイミングとの関係が異なる。すなわち、本実施形態の場合には、駆動電圧VW1の波形が短時間で変化する時にレンズホルダ31が変位するが、比較例の場合、駆動電圧VW1の波形が緩慢に変化する時にレンズホルダ31が変位する。従って、比較例の場合には、駆動電圧VW1の波形が緩慢に変化する期間を十分に確保することが要求される。この場合、スイッチングパルスのデューティー比を小さく設定することに意義はない。比較例の場合、駆動電圧VW1の波形が急峻に変化する場合、レンズホルダ31は実質的に変位しないためである。
【0133】
図30に示すように、比較例の場合、スイッチングパルスのデューティー比の選択範囲が狭い。また、スイッチングパルスの周波数の選択範囲が狭い。選択可能な周波数帯域が狭いのは、比較例の場合、ピエゾ素子50が筐体20に連結し、筐体20を含む系によって共振が生じるためである。
【0134】
図31に示すように、本実施形態の場合、比較例の場合と比較して、所望のデューティー比にスイッチングパルスを設定した条件で、スイッチングパルスの周波数帯域を拡大することができる。これは、本実施形態の場合、共振周波数が高周波側にシフトしているためである。本実施形態では、比較例の場合と比較して、スイッチングパルスをより高い周波数に設定することができる。これによって、レンズホルダ31をより高速に変位させることができる。
【0135】
選択可能な周波数帯域が狭い場合には、ピエゾ素子単体特性のバラツキ、アクチュエータの動作環境の変化などによって動作周波数が選択した周波数帯域からはずれるような原因によって、レンズホルダ31を変位させることが困難になるおそれがある。他方、本実施形態では、選択可能な周波数帯域自体が拡大されている。従って、何らかの予期しない原因によって選択した周波数が共振周波数帯に含まれることを効果的に抑制することができる。
【0136】
共振周波数は、筐体の形状、重量、及び圧電素子と筐体間の接着状態に依存する。駆動装置が組み込まれる製品ごとに共振周波数が異なる場合がある。共振周波数が存在する帯域では、アクチュエータを正確に制御することが困難になるおそれがある。換言すると、アクチュエータが正常に機能するか否かの判断は、製品にアクチュエータを組み込むことを待たなければならない。スイッチングパルスの周波数の設定誤りによっては、製品の歩留まりが低下してしまうおそれがある。本実施形態では、このような問題が生じることも効果的に抑制することができる。
【0137】
[実施例1]
本実施例では、レンズホルダ31を目標位置に向けて高速移動させ、レンズホルダ31が目標位置を通過した後、レンズホルダ31を反対方向へ低速移動させ、レンズホルダ31を目標位置に配置する。これによってレンズホルダ31を短時間で所望の位置に配置することが可能になる。
【0138】
レンズホルダ31の移動制御は、プログラムによって実現することができる。具体的には、コントローラ81は、駆動電圧生成回路82に対してスイッチングパルスの周波数を指定することによって、レンズホルダ31の移動速度を制御する。
【0139】
まず、コントローラ81は、レンズホルダ31を目標位置に向けて高速移動させるように、駆動電圧生成回路82を制御する。次に、コントローラ81は、画像取得部80の出力に基づいて、レンズホルダ31が目標位置を通過したことを検出する。次に、コントローラ81は、レンズホルダ31が反対方向へ低速移動するように、駆動電圧生成回路82を制御する。次に、コントローラ81は、レンズホルダ31が目標位置に到達したか否かを判定する。
【0140】
レンズホルダ31が目標位置を通過したか否かは、プログラムの判定処理により実現することが可能である。例えば、異なるタイミング間で取得した画像の品質を比較評価することにより、レンズホルダ31が目標位置を通過したか否かを判定することができる。
【0141】
本実施例においても、スイッチングパルスの周波数を時分割することなく変更し、レンズホルダ31の移動速度を変更する。これによって、移動後のレンズホルダ31の位置に誤差が生じてしまうことを抑制することができる。
【0142】
[実施例2]
本実施例では、レンズホルダ31を目標位置に向けて高速移動させ、レンズホルダ31が目標位置に近づくに応じて、レンズホルダ31の移動速度を遅くし、レンズホルダ31を目標位置にて停止させる。これによってレンズホルダ31を短時間で所望の位置に配置することが可能になる。
【0143】
レンズホルダ31の移動制御は、実施例1と同様に、プログラムによって実現することができる。レンズホルダ31と目標位置間の距離は、プログラムによる判定処理によって検出することが可能である。例えば、周波数120kHz、デューティー比10%から、周波数80kHz、デューティー比70%へ徐々にスイッチングパルスを変更すると良い。周波数、デューティー比の具体的な数値は任意であり、これらの条件を適切に設定することによって、レンズホルダ31の移動速度がゼロとなるまで滑らかにレンズホルダ31を減速させることができる。
【0144】
このようにレンズホルダ31の移動状態をプログラム制御することによって、目標位置に近づくに従ってレンズホルダ31が徐々に減速させることが可能になる。なお、本実施例においても、スイッチングパルスの周波数を時分割することなく変更し、レンズホルダ31の移動速度を変更する。これによって、移動後のレンズホルダ31の位置に誤差が生じてしまうことを抑制することができる。
【0145】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。駆動部のシステム構成は任意である。スイッチングパルスを生成する回路をCPUに内蔵させても良い。実施例では、レンズホルダ31の速度制御を、スイッチングパルスの周波数及びデューティー比の双方を変更することにより実現したが、いずれか一方のみを変更することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0146】
150 カメラモジュール

10 配線基板
11 コネクタ
12 撮像モジュール
13a 透明基板
13b イメージセンサ
13c 撮像領域
15 補強板
20 筐体
21 側壁
22 隔壁
23 梁部
24 梁部
25 レール
26 台座
27 孔部
28 ガイド柱
29 引出口
30 レンズユニット
31 レンズホルダ
32 連結部
35 レール受け部
40 軸保持部
41 本体部
42 押さえ板
43 バネ
44 押さえ板
45 凸部
47 突出部
50 ピエゾ素子
51 伝達軸
60 蓋
70 シール部材

80 画像取得部
81 コントローラ
82 駆動電圧生成回路
83 振動源
85 スイッチングパルス生成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電圧に応じて伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子で生じる振動を受ける駆動軸と、
前記駆動軸が摺動可能な状態で、前記駆動軸が係合された固定側部材と、
少なくとも1つのレンズを保持すると共に、前記圧電素子及び前記駆動軸に同調して前記固定側部材に対して変位するレンズ保持体と、
前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給する駆動電圧供給部と、
を備える駆動装置であって、
前記駆動電圧供給部は、少なくとも第1及び第2周期で間欠的に生成されるスイッチングパルスに基づいて前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給し、
前記スイッチングパルスは、時間的に分断されることなく第1周期から第2周期へ変更される、駆動装置。
【請求項2】
前記駆動電圧は、第1及び第2電圧レベル間を振幅することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記第1及び第2電圧レベル間を相対的に短い時間に前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して変位し、
前記第1及び第2電圧レベル間を相対的に長い時間かけて前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して実質的に変位しないことを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動電圧供給部は、
前記スイッチングパルスを生成するスイッチングパルス生成部と、
前記スイッチングパルスに応じて動作状態が決定される複数のスイッチング素子を含む駆動電圧生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記駆動電圧供給部の動作状態を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、目標位置に近づくに従って前記レンズ保持体が徐々に減速するように、前記駆動電圧供給部を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の駆動装置と、
前記レンズを介して入力する像を撮像する撮像手段と、
を備える画像取得装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像取得装置を備える電子機器。
【請求項8】
駆動電圧に応じて伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子で生じる振動を受ける駆動軸と、
前記駆動軸が摺動可能な状態で、前記駆動軸が係合された固定側部材と、
少なくとも1つのレンズを保持すると共に、前記圧電素子及び前記駆動軸に同調して前記固定側部材に対して変位するレンズ保持体と、
前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給する駆動電圧供給部と、
を備える駆動装置の制御方法であって、
少なくとも第1及び第2周期で間欠的にスイッチングパルスを供給するステップと、
供給される前記スイッチングパルスに基づいて前記圧電素子に対して前記駆動電圧を供給するステップと、
時間的な間隔を設けずに前記スイッチングパルスの周期を第1周期から第2周期へ変更するステップと、
を備える駆動装置の制御方法。
【請求項9】
第1及び第2電圧レベル間を相対的に短い時間に前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して変位し、
前記第1及び第2電圧レベル間を相対的に長い時間かけて前記駆動電圧が振幅するとき、前記レンズ保持体は前記固定側部材に対して実質的に変位しないことを特徴とする請求項8に記載の駆動装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−61977(P2011−61977A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209271(P2009−209271)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】