説明

駆動軸カバー装置

【課題】コンベヤの製造コストを増加させることがなく、しかもコンベヤに容易に着脱できる駆動軸カバー装置を提供する。
【解決手段】コンベヤ1は、フレーム2に軸受された複数のローラ4の下方に駆動軸5を配置し、駆動軸5から複数のローラ4にそれぞれ伝達部材6を介して回転力が伝達される。コンベヤ1に取付けられる駆動軸カバー装置3は、駆動軸5の軸方向に延びる溝形カバー部材7と、溝形カバー部材7の一方の側部71をその内側から掛止する掛止部材と、掛止部材に一方の側部71を挟んで対向する挟着部材9と、溝形カバー部材7の外面73を支持する支持部材10と、挟着部材9に掛止部材を着脱自在に締付けるボルトとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤの駆動軸の周りに設置される駆動軸カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに水平方向に並列する複数のローラをフレームで軸受したローラコンベヤが、下記の特許文献に開示されている。複数のローラの下方には、フレームに沿って延びる駆動軸が設けられ、モータ等の出力に基づく回転力を、駆動軸から個々のローラへ無端状の伝達部材を介してそれぞれ伝達するようにしている。また、ローラコンベヤの近傍に立つ作業者が誤って駆動軸に触れる事態を予防するために、駆動軸はカバー部材によって覆われているが、伝達部材の交換を行うとき等にカバー部材は取外さなければならない。
【特許文献1】特開2006−044854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のローラコンベヤにカバー部材を付加することで、ローラコンベヤがコスト高になるのは望ましくない。そこで、ゴムや軟質プラスチック等の可撓性及び弾性を有する柔軟な材料を溝形に湾曲させ、これを駆動軸の周りに設置すれば、上記の材料をカバー部材として安価に利用することができる。しかしながら、上記の材料をローラコンベヤのフレームにボルトで締付け、又は同ボルトを緩める作業は、その作業者が腰を屈めフレームの下側へ手を延ばして行わなければならないので、作業者に無理な姿勢を強いる。この問題は、フレームの架設されている位置が低いほど著しくなる。
【0004】
本発明の目的とするところは、コンベヤの製造コストを増加させることがなく、しかもコンベヤに容易に着脱できる駆動軸カバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る駆動軸カバー装置は、フレームに軸受された複数のローラの下方に前記フレームに沿って延びる駆動軸を配置し、前記駆動軸から前記複数のローラにそれぞれ伝達部材を介して回転力が伝達されるコンベヤに取付けられるものであって、前記駆動軸の軸方向に延びる両側部の内側に前記駆動軸を進入させ、外面を下向きに突出した溝形カバー部材と、前記溝形カバー部材の両側部のうち一方の側部をその内側から掛止する掛止部材と、前記コンベヤのフレームに固定され、前記掛止部材に前記溝形カバー部材の一方の側部を挟んで対向する挟着部材と、前記掛止部材が前記溝形カバー部材を掛止する位置の下方で、前記溝形カバー部材の外面を支持する支持部材と、前記掛止部材を前記挟着部材に着脱自在に締付ける締結手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
更に、本発明に係る駆動軸カバー装置は、前記溝形カバー部材が網目状の孔を有し、前記掛止部材が前記孔に掛る爪を突出したものである。前記溝形カバー部材が合成樹脂の成形物であっても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る駆動軸カバー装置によれば、掛止部材が溝形カバー部材の一方の側部を内側から掛止し、この下方の位置で支持部材が溝形カバー部材の外面を支持するので、溝形カバー部材が両側部の間に位置する重心を力点として両側部のうち他方の側部が下降する方向へ回転しようとするモーメントを、掛止部材及び支持部材の反作用によって打ち消し、掛止部材と支持部材との間で溝形カバー部材の一方の側部を保持することができる。このため、締結手段が掛止部材を挟着部材に締付ける力に関わり無く、溝形カバー部材は、両側部の内側に駆動軸を進入させた姿勢を維持し、コンベヤから脱落することがない。
【0008】
例えば、コンベヤのフレームの正面から挟着部材を貫き掛止部材に螺合するボルトを締結手段として適用する場合、このボルトを予め緩めておき、掛止部材と支持部材との間に溝形カバー部材の一方の側部を挿入すれば、溝形カバー部材をコンベヤの所望の位置に仮止めすることができる。また、締結手段であるボルトをコンベヤのフレームの正面から締付けることができ、しかもボルトの締付けを行っている間に溝形カバー部材を手持ちする雑作を省くことができる。ここに述べた効果は、締結手段であるボルトを緩める作業についても同様である。従って、作業者は、溝形カバー部材のコンベヤへの取付け、又はコンベヤからの取外しを容易に行うことができる。
【0009】
更に、本発明に係る駆動軸カバー装置によれば、上記仮止めの段階で溝形カバー部材の網目状の孔に掛止部材の爪を掛けることにより、掛止部材に対して溝形カバー部材が滑るのを予防することができる。このため、締結手段であるボルトを締付ける過程で、コンベヤのフレームに対して溝形カバー部材の位置に狂いが生じないという利点を得ることができる。
【0010】
更に、溝形カバー部材として合成樹脂の成形物を適用する場合、溝形カバー部材を軽量化し、溝形カバー部材の単価を低減して当該駆動軸カバー装置の製造コストを削減することができる。しかも、溝形カバー部材は、その断面の形状が略溝形のもので適度な剛性があれば足りるので、溝形カバー部材はその入手及び製造が容易である。また、溝形カバー部材を所望の形状又は寸法になるよう裁断するのが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1,2は、コンベヤ1のフレーム2に取付けられた駆動軸カバー装置3を示している。フレーム2は、そのウェブ21でローラ4の端部を軸受し、コンベヤ1の正面にフランジ22を突出した水平姿勢の軽量形鋼を主体とする。複数のローラ4が並列し、駆動軸5の回転力が伝達部材6を介して個々のローラ4へ伝達される点は、既述の通りである。符号23,24は、フレーム2を図外に設けられたフレームに連結する横枠材、及び駆動軸5を支持するベアリングを各々指している。符号25はコンベヤ1の脚部を指している。
【0012】
駆動軸カバー装置3は、溝形カバー部材7と、掛止部材8と、挟着部材9と、支持部材10と、締結手段11とを備える。駆動軸カバー装置3について以下に詳しく述べる。図面は特に断らない限り、図1乃至図3を参照する。
【0013】
駆動軸カバー装置3の要素は図中に1個ずつ表れているが、溝形カバー部材7以外の要素は、互いに矢印S方向に適当な間隔を開けて複数個ずつ配置されているものとする。矢印Sは駆動軸5の軸方向を指している。溝形カバー部材7は、矢印S方向に延びる両側部71,72、及び一方の側部71から下向きに突出する外面73を有するものである。溝形カバー部材7として合成樹脂の成形物を適用するのが好ましい。網目状の孔を有する成形物であれば更に好ましい。両側部71,72の間隔は、その内側に駆動軸5を掛止部材8と共に進入させられる広さがあれば良い。
【0014】
また、溝形カバー部材7は、その断面の形状が溝形のもので自重によって撓まない程度の剛性があれば足りる。例えば、建築用資材として市販されている合成樹脂製のパイプ形の網材を円弧状に分断したものを、溝形カバー部材7として利用しても良い。この場合、溝形カバー部材7を軽量化することができ、溝形カバー部材7の単価を低減して駆動軸カバー装置3の製造コストを削減することができる。しかも、合成樹脂は所望の形状又は寸法になるよう裁断するのが容易であるので、溝形カバー部材7の仕様を、コンベヤ1の設置されている現場で自在に変更できるという利点がある。
【0015】
溝形カバー部材7の外面73には凸条部70が設けられている。即ち、上記パイプ形の網材を更に補強するために、その外周面に合成樹脂製の螺旋管が予め融着されている。この螺旋管が凸条部70に相当する。凸条部70は、溝形カバー部材7の外面73の一部であるが、溝形カバー部材7に必須の要素ではない。凸条部70の有無に関わらず、溝形カバー部材7は上記の剛性を十分満たせるので、溝形カバー部材7に凸条部70を設けた場合、溝形カバー部材7の剛性は一層向上する。また、溝形カバー部材7の網目の大きさ、又は形状は何ら限定されるものではない。
【0016】
掛止部材8は、鋼板を略コ字形に折曲することにより形成されたものであり、スペーサ片81、起立片82、及び傾斜片83を備える。更に、雌ねじ84が起立片82に形成され、鋸刃状の複数の爪85が傾斜片83の下端に形成されている。挟着部材9及び支持部材10は鋼板を略く字形に折曲して成る一体物である。掛止部材8、挟着部材9、及び支持部材10の材質は、鋼に限定されるものではなく、アルミニウム等の軽合金、又は合成樹脂のような非金属であっても良い。
【0017】
挟着部材9は、フレーム2のフランジ22の下面に沿って延びる固定片91、掛止部材8の爪85に溝形カバー部材7の一方の側部71を挟んで対向する挟着片92、及び掛止部材8のスペーサ片81の上方に重なる上部フランジ93を備える。フレーム2のフランジ22を貫く固定ボルト12が、固定片91に穿孔された挿通孔94を通り、固定片91の下側でナット13が固定ボルト12に締付けられている。これにより、挟着部材9及び支持部材10がフレーム2に固定され、駆動軸カバー装置30の全体がフレーム2に位置決めされている。
【0018】
支持部材10は、掛止部材8の爪85が溝形カバー部材7を掛止する位置の下方で、溝形カバー部材7の外面73を支持する役割を果す部位である。締結手段11として、頭部14がコンベヤ1の正面に向けられ、軸部15がコンベヤ1の正面から挟着部材9の挟着片92に穿孔された挿通孔95を貫き、更に軸部15が掛止部材8の雌ねじ84に締付けられるボルトを適用する。この他、掛止部材8を挟着部材9に着脱自在に締付けられるものであれば、バンド、ワイヤ、又はクランプ等を締結手段11として適用しても良い。以下で締結手段11はボルトであるとする。
【0019】
溝形カバー部材7をコンベヤ1から取外すには、先ず作業者がボルト11を緩め、掛止部材8の爪85と挟着部材9の挟着片92との間から溝形カバー部材7の一方の側部71を開放する。この状態で、溝形カバー部材7が両側部71,72の間に位置する重心を力点として他方の側部72が下降する方向へ回転しようとするモーメントを、掛止部材8及び支持部材10の反作用によって打ち消し、掛止部材8と支持部材10との間で溝形カバー部材7の一方の側部71を保持できる。このため、溝形カバー部材7は、コンベヤ1から脱落することがない。
【0020】
続いて、作業者が、溝形カバー部材7の他方の側部72を握る等して、一方の側部71を、掛止部材8と挟着部材9との間から引出せば、溝形カバー部材7をコンベヤ1から簡単に取外すことができる。また、作業者は上記のボルト11を緩める工程で、ボルト11の軸部15が掛止部材8の雌ねじ84から離脱するに至るまでボルト11を緩める必要はない。
【0021】
反対に、溝形カバー部材7をコンベヤ1に取付けるとき、作業者は溝形カバー部材7を手持ちする等して、一方の側部71を掛止部材8の爪85と挟着部材9の挟着片92との間に挿入する。この時点で、掛止部材8が溝形カバー部材7の一方の側部71を内側から掛止し、この下方の位置で支持部材10が溝形カバー部材7の外面73を支持するので、溝形カバー部材7に発生する上記のモーメントは打ち消される。このため、溝形カバー部材7は、両側部71,72の内側に駆動軸5を進入させた姿勢を維持し、コンベヤ1から脱落することがない。従って、溝形カバー部材7は、コンベヤ1の適所に仮止めされることになる。
【0022】
続いて、作業者が溝形カバー部材7から手を離しボルト11を締付けるだけで、掛止部材8の爪85と挟着部材9の挟着片92との間に溝形カバー部材7の一方の側部71が強く挟着され、溝形カバー部材7の取付けが完了する。また、掛止部材8の起立片82と挟着部材9の挟着片92との間隔は、掛止部材8のスペーサ片81によって規定される。作業者がボルト11を回転させるとき、掛止部材8がボルト11と共に回転しようとしても、スペーサ片81が挟着部材9の上部フランジ93に突当たるので、掛止部材8が不要に回転することはない。
【0023】
以上の述べた駆動軸カバー装置3によれば、ボルト11を締付け及び緩める作業を、作業者はコンベヤ1のフレーム2の正面で行うことができ、しかも、これらの作業を行っている間、作業者は溝形カバー部材7を手持ちする雑作が不要である。従って、溝形カバー部材7のコンベヤ1への取付け、及びコンベヤ1からの取外しの作業が容易である。更に、上記仮止めの段階で溝形カバー部材7の網目状の孔に掛止部材8の爪85を掛けることにより、掛止部材8に対して溝形カバー部材7が滑るのを予防できる。このため、ボルト11が締付けられる過程で、コンベヤ1のフレーム2に対して溝形カバー部材7の位置が狂うことがない。
【0024】
図4(a),(b)に示すように、溝形カバー部材7の断面は必ずしも円弧状である必要はない。支持部材10を溝形カバー部材7の真下まで延出しても良い。また、掛止部材8を挟着部材9の上部フランジ93に吊下げても良い。この他、溝形カバー部材7は、硬質ゴム、軽合金のサッシバー、パンチングメタル、エキスパンデッドメタル、又は金網から成るものであっても良い。
【0025】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できる。図5(a)は、本発明の更なる実施形態に係る駆動軸カバー装置30を示している。これについて上記の実施形態と相違する点を次に説明する。既述の要素には引続き同じ呼称を用いるものとする。
【0026】
掛止部材8及び支持部材10は、鋼板を折曲して成る一体物である。掛止部材8は、図2に示した固定ボルト12及びナット13を用いて、フランジ22に固定されている。これにより、挟着部材9がフレーム2に間接的に固定され、駆動軸カバー装置30の全体がフレーム2に位置決めされている。また、挟着部材9は、掛止部材8の爪85に溝形カバー部材7の一方の側部71を挟んで対向する挟着片92、及びスペーサ片96を備える。また、挟着部材9の果す役割をボルト11が担うようにしても良い。この場合、同図(b)に示すように、溝形カバー部材7の一方の側部71に、ボルト11を通すための貫通孔74又は切込部を形成し、ボルト11で直に一方の側部71を掛止部材8に締付ける。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ローラコンベヤの駆動軸に限らず、モータ等で回転する軸と共に動作する部品を覆うのに有益な技術である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係る駆動軸カバー装置を取付けたコンベヤの正面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る駆動軸カバー装置の分解斜視図。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係る駆動軸カバー装置の一の変形例を示す断面図、(b)はその他の変形例を示す断面図。
【図5】(a)は本発明の更なる実施形態に係る駆動軸カバー装置の一の変形例を示す断面図、(b)はその変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0029】
1:コンベヤ
2:フレーム
3:駆動軸カバー装置
4:ローラ
5:駆動軸
6:伝達部材
7:溝形カバー部材
8:掛止部材
9:挟着部材
10:支持部材
11:締結手段
71,72:側部
73:外面
85:爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに軸受された複数のローラの下方に前記フレームに沿って延びる駆動軸を配置し、前記駆動軸から前記複数のローラにそれぞれ伝達部材を介して回転力が伝達されるコンベヤに取付けられる駆動軸カバー装置であって、
前記駆動軸の軸方向に延びる両側部の内側に前記駆動軸を進入させ、外面を下向きに突出した溝形カバー部材と、
前記溝形カバー部材の両側部のうち一方の側部をその内側から掛止する掛止部材と、
前記コンベヤのフレームに固定され、前記掛止部材に前記溝形カバー部材の一方の側部を挟んで対向する挟着部材と、
前記掛止部材が前記溝形カバー部材を掛止する位置の下方で、前記溝形カバー部材の外面を支持する支持部材と、
前記掛止部材を前記挟着部材に着脱自在に締付ける締結手段とを備えることを特徴とする駆動軸カバー装置。
【請求項2】
前記溝形カバー部材が網目状の孔を有し、前記掛止部材が前記孔に掛る爪を突出した請求項1に記載の駆動軸カバー装置。
【請求項3】
前記溝形カバー部材が合成樹脂の成形物である請求項1又は2に記載の駆動軸カバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−269701(P2009−269701A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121051(P2008−121051)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】