説明

駐輪装置

【課題】上段スペースに自転車を収納する駐輪装置であって、安全性が高く、容易に操作することができる駐輪装置を提供することである。
【解決手段】床面に立設した支持部材1に、自転車50を載置する載置部材16を揺動可能に設置する。支持部材1に固着した連結板3と、載置部材16に固着したガイド部材4を揺動軸12で連結する。支持部材1にはロック部材15が設けてある。ロック部材15には当接部20a、当接部20c、摺動部20bが設けてある。ガイド部材4には長孔36が設けてある。そしてロックピン7が長孔36とロック部材15に係合する。ロックピン7が長孔36内を移動して当接部20a又は当接部20cに係合すると、載置部材16は水平姿勢又は傾斜姿勢を維持した状態で揺動不能となる。ロックピン7が摺動部20bに当接しているときには載置部材16は円滑に揺動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車の駐輪装置に関し、より詳しくは、下方に別の自転車を収納できるように、地面又は床面から自転車をリフトして支持することができる駐輪装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駐輪場に収容できる自転車の台数を増やすことができる、上下二段式の駐輪装置が発案されている。従来の二段式の駐輪装置では、自転車を上段スペースに収納する場合には、長尺状の載置台の姿勢を水平状態から傾斜状態に変更し、載置台に自転車を載置した後に、再度載置台を傾斜状態から水平状態に戻す操作が必要である。そして、駐輪装置には載置台の姿勢を水平状態で維持する構成が必要である。
【0003】
特許文献1の駐輪装置は、地上に立設した支柱に対して可動ラック(載置台)をヒンジで揺動可能に接続し、さらに支柱と可動ラックとをガススプリングによって連結している。そして、このガススプリングによって可動ラックの水平状態の姿勢を維持している。
【0004】
このような駐輪装置を実施することにより、駐輪装置の構成を簡素化することができると特許文献1には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−281039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されている駐輪装置では、ガススプリングのピストンロッドを伸張させることによって可動ラックの水平姿勢を保っている。そのため、万が一ガススプリングの動作が異常を来すと、自転車を載置した可動ラックを水平姿勢で支持することができなくなり、自転車が可動ラックごと落下する恐れがある。
【0007】
そこで本発明は、上段スペースに自転車を収納する駐輪装置であって、安全性が高く、しかも容易に操作することができる駐輪装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、地面又は床面に対して立設された支持部材と、自転車を載置する載置棹とを有し、載置棹は、地面又は床面から高さを有する位置で、支持部材に片持ち状であって且つ揺動可能な状態に支持され、載置棹は実質的に水平な自転車保管姿勢と、自由端側が地面又は床面の近傍まで降下して載置棹が傾斜する自転車搬入・搬出時姿勢をとることができる駐輪装置において、載置棹は二枚のガイド壁と、ロック操作部と、ロックピンと、力伝達部材とを有し、前記二枚のガイド壁は載置棹の固定端近傍であって載置棹の下部側に一定の間隔を開けて対向し、前記ガイド壁にはガイド溝又はガイド長孔が設けられ、ロックピンは前記ガイド壁のガイド溝又はガイド長孔に係合し、ロック操作部は載置棹の自由端側にあり、ロック操作部とロックピンは力伝達部材で連結されており、支持部材にはロック部材が固定されており、前記ロック部材には上部側係止部と下部側係止部があり、さらに上部側係止部と下部側係止部の間に前記ガイド壁の厚さを越える幅の当接摺動面を持ち、前記ロック部材は載置棹の二枚のガイド壁の間に位置していてロックピンが当接し、載置棹が自転車保管姿勢をとる際にはロックピンが上部側係止部又は下部側係止部の一方と係合可能であり、載置棹が自転車搬入・搬出時姿勢をとる際にはロックピンが上部側係止部又は下部側係止部の他方と係合可能であり、ロック操作部を操作することによってロックピンを移動させてロックピンと上部側係止部との係合またはロックピンと下部側係止部との係合を解除することが可能であり、載置棹が自転車保管姿勢と、自転車搬入・搬出時姿勢との中間姿勢である場合にはロックピンが前記ロック部材の当接摺動面と当接することを特徴とする駐輪装置である。
【0009】
請求項1の発明では、ロックピンがガイド壁のガイド溝又はガイド長孔に係合するので、ロックピンはガイド溝又はガイド長孔の範囲で往復移動することができる。
ロックピンは、力伝達部材を介してロック操作部と連結されており、ロック操作部は載置棹の自由端側に配置されているので、駐輪装置の操作者は、ロック操作部を容易に操作することができ、ロックピンを移動させることができる。
支持部材にはロック部材が固定されており、前記ロック部材には上部側係止部と下部側係止部があり、載置棹を揺動させると、載置棹のガイド壁のガイド溝又はガイド長孔に係合したロックピンを、支持部材のロック部材の上部側係止部又は下部側係止部に係合させることができる。
すなわち、ガイド溝又はガイド長孔に係合したロックピンが、載置棹の所定の揺動位置で上部側係止部又は下部側係止部にも係合する。その結果、載置棹は支持部材に対して揺動不能となり、自転車保管姿勢や、自転車搬入・搬出時姿勢を保つことができる。すなわち、載置棹を傾斜させた自転車搬入・搬出姿勢にしたり、実質的に水平な自転車保管姿勢を確実に維持することができる。
ロック部材は、上部側係止部と下部側係止部の間に前記ガイド壁の厚さを越える幅の当接摺動面を有する。そしてロックピンは当接摺動面に当接し、当接摺動面に沿って移動が可能である。すなわち当接摺動面によるロックピンの支持は安定しており、ロックピンは当接摺動面に沿って良好に平行移動することができる。
そして、載置棹の姿勢が、自転車保管姿勢と、自転車搬入・搬出時姿勢の中間である場合には、ロックピンがロック部材の当接摺動面と当接し、ロックピンは当接摺動面に沿って上部側係止部と下部側係止部の間を円滑に移動可能である。
さらに、ロック部材は載置棹の二枚のガイド壁の間に位置しているので、駐輪装置の操作者が誤って指を詰める恐れがなく、極めて安全である。
【0010】
請求項2の発明は、ガイド壁のガイド溝又はガイド長孔の長手方向の両端にロック位置とロック解除位置とを有しており、ロック操作部が操作されると、ロックピンがガイド溝内又はガイド長孔内をロック位置からロック解除位置へ移動することを特徴とする請求項1に記載の駐輪装置である。
【0011】
請求項2の発明では、ガイド壁のガイド溝又はガイド長孔の長手方向の両端にロック位置とロック解除位置とを有しているので、ロックピンは、ガイド溝又はガイド長孔に沿って移動し、ロック位置又はロック解除位置で停止させ易い。すなわち、駐輪装置の操作者によってロック操作部が操作されると、ロックピンはガイド溝内又はガイド長孔内をロック位置からロック解除位置へ平行移動して確実に停止する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の駐輪装置によれば、自転車を上段スペースに安全に配置することができる。
すなわち、ロックピンがガイド壁の厚さを越える幅の当接摺動面に当接するので、ロックピンの姿勢が安定する。またロックピンは円滑に当接摺動面上を摺動する。
そのため、上部側係止部又は下部側係止部に対してロックピンを確実に係合させることができる。そして、ロックピンが上部側係止部又は下部側係止部と係合することによって、載置棹を水平な姿勢である自転車保管姿勢を確実に維持することができ、安全である。
また、ロック操作部を操作することによって上部側係止部又は下部側係止部に対するロックピンの係合を確実に解除することができ、載置棹の姿勢を自転車保管姿勢から自転車搬入・搬出時姿勢へ、又はその逆に確実に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の駐輪装置の自転車搬入・搬出時姿勢の斜視図であり、駐輪装置に自転車を搭載した状態を示す。
【図2】本発明の駐輪装置の自転車搬入・搬出時姿勢の斜視図であり、駐輪装置に自転車を搭載していない状態を示す。
【図3】本発明の駐輪装置の自転車保管姿勢の斜視図であり、駐輪装置に自転車を搭載した状態を示す。
【図4】本発明の駐輪装置の自転車保管姿勢の斜視図であり、駐輪装置に自転車を搭載していない状態を示す。
【図5】支持部材の上部の斜視図である。
【図6】図1の駐輪装置の前端部分の分解斜視図である。
【図7】力伝達部材の分解斜視図である。
【図8】ロック操作部の部分断面拡大側面図である。
【図9】ロック操作部の正面図であり、(a)はロック状態を示し、(b)はロック解除状態を示す。
【図10】ロック部材及びロック部材周辺の一部を破断した部分拡大斜視図である。
【図11】ロック部材と力伝達部材の一部を部分的に拡大した部分拡大側面図であり、(a)はガイド部材が水平状態で固定されている場合を示し、(b)はガイド部材がロック部材にロックされていない状態を示し、(c)はガイド部材が傾斜状態で固定されている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の駐輪装置100を説明する。
図1に示すように、駐輪装置100は支持部材1、ロック部材15、載置部材16を有している。まず、各部材毎に構成を説明し、その後に各部材同士の関係を説明し、最後に駐輪装置100の動作を説明する。
【0015】
支持部材1は、地面又は床面に立設された支柱状の部材である。すなわち支持部材1は長尺状であって、下端部が地面又は床面に固定されている。図5に示すように、支持部材1の側面の上部には、受け部材2が溶接されている。
【0016】
受け部材2は1枚の薄い四角形形状の板状の部材であり、その両端部分が直角に折り曲げられている。その結果、受け部材2は中央部2cの両側の端部2a,2bが直立したコの字形状を呈している。受け部材2の端部2a,2bは互いに平行に対向している。端部2aには孔8a,8bが所定の間隔を置いて設けられている。端部2bにも孔8a,8bが設けられている。そして端部2aの孔8a,8bの中心は、端部2bの孔8a,8bの中心と一致している。また、受け部材2の中央部2cが支持部材1に固着された結果、端部2a,2bは鉛直方向に延びている。
【0017】
受け部材2のコの字の内側には、コの字形の連結板3が配置される。
連結板3は1枚の薄い板状の部材が折り曲げられて、中央部3cに対して端部3a,3bが直立するコの字形を呈しているが、中央部3cの幅が受け部材2の中央部2cの幅よりも小さい。そのため、受け部材2のコの字の内側に連結板3を収容することができる。また、連結板3の端部3a,3bは、支持部材1と直交する方向に受け部材2の端部2a,2bから突出している。
【0018】
連結板3の対向する端部3a,3bには各々孔10a,10bが設けてあり、これらの孔10a,10bが受け部材2の孔8a,8bと位置合わせされボルト9a,9b(及び対応するナット)で固定される。その結果、受け部材2に対して連結板3が固定される。
【0019】
図5に示すように連結板3の端部3a,3bには、孔10a,10bとは別に孔10c,10dが設けられている。孔10cには軸部材である揺動軸12(図1)が挿通される。揺動軸12はボルト・ナットで構成されている。連結板3の孔10dには、連結軸45でガススプリング14の一端(シリンダ側)に設けた連結部13a(図6)が固定される。
【0020】
2つのガススプリング14とガイド部材4を連結軸45で連結する際、ガイド壁4aとガススプリング14の間と、両ガススプリング14の間に適宜円筒状のディスタンスピース46を配置することにより、ガイド部材4と各ガススプリング14の位置が固定される。
【0021】
支持部材1における受け部材2が固着された部位よりもさらに上方にはロック部材15が固着されている。ロック部材15は、摺動板6と2枚のロック板5とで構成されている。
【0022】
摺動板6は、1枚の板状の部材である。摺動板6の長手方向の両端の幅寸法Wは、中央部分の幅寸法よりも小さい。すなわち、摺動板6の幅寸法が変わる部分は、段6a,6bを構成する。そして、段6aの近傍であって幅寸法が狭い部分には折り曲げ部6cが設けられ、段6bの近傍であって幅寸法が広い部分には折り曲げ部6eが設けられ、さらに折り曲げ部6cと折り曲げ部6eの間には折り曲げ部6dが設けられている。すなわち摺動板6は折り曲げ部6c,6d,6eの3箇所で折り曲げられている。そして摺動板6には、折り曲げ部6cと折り曲げ部6dの間に当接部20a(上部側係止部)が形成され、折り曲げ部6dと折り曲げ部6eの間には摺動部20b(当接摺動面)が形成され、折り曲げ部6eを境界として摺動部20bと連続する当接部20c(下部側係止部)が形成されている。
【0023】
ロック板5は、略正方形形状を呈する板部材である。そしてロック板5には切欠部5a,5bが設けられている。図6に示すように切欠部5aは、略コの字形に切り欠かれて凹んだ部位であり、図6で見てロック板5の上部に形成されている。また、切欠部5bは、ロック板5の下部に形成された段である。切欠部5aと切欠部5bの間には当接部5cが設けられている。2枚のロック板5は、同じ形状及び大きさを呈している。
【0024】
ここで、2枚のロック板5と1枚の摺動板6の代わりに、1枚の板状部材を適宜折り曲げて、切欠部5a,5bと、当接部20a,20c,摺動部20bを構成することも可能である。
【0025】
ロック部材15は、各部材が次のように組み合わされている。まず、摺動板6の両側に各々ロック板5を配置し、摺動板6の摺動部20bを、各ロック板5の当接部5cに当接させる。すなわちロック板5の当接部5cが、全長に渡って摺動部20bの縁に当接する。このとき、摺動板6の幅寸法Wの部位に沿ってロック板5が配置され、2枚のロック板5が距離W(幅寸法)を隔てて対向する。
【0026】
摺動板6の摺動部20bが、各ロック板5の当接部5cに当接すると、ロック板5の略コの字形の切欠部5aの下側の縁に摺動板6の当接部20aの縁が当接する。すなわち、摺動板6の折り曲げ部6dの折り曲げ角度(摺動部20bと当接部20aが成す角度)は、ロック板5の当接部5cと切欠部5aの下側の縁とが成す角度と等しい。また、ロック板5の切欠部5bには、摺動板6の当接部20cが近接配置されている。
【0027】
実際には、各ロック板5を摺動板6の両側に配置し、ロック板5の端部5dと、摺動板6の端部6f,6gを支持部材1に溶接すると、摺動板6と各ロック板5とが上述のように組み合わされて配置される。
【0028】
次に載置部材16について説明する。
図2,図4に示すように、載置部材16は長尺状の部材であり、1枚の板部材の複数箇所を長手方向に沿って折り曲げて、中央に溝部25を形成し、溝部25の両側に突出部26を形成したものである。載置部材16の後端(載置部材16の自由端)には後端支持部材29が固着される。
【0029】
後端支持部材29は、断面がコの字形を呈するように板状部材を折り曲げて形成されている。すなわち、後端支持部材29は溝29aを有する。後端支持部材29の一端が載置部材16の溝部25内に配置され、載置部材16に対して溶接される。その結果、載置部材16の溝部25と後端支持部材29の溝29aとが連続する。載置部材16が傾斜して自転車搬入・搬出時姿勢となった際に、後端支持部材29が地面又は床面と平行になるように、載置部材16と後端支持部材29は結合されている。
【0030】
後端支持部材29の他端側には把持部30が設けられている。把持部30は、丸棒形状の部材である。把持部30は、断面がコの字形の後端支持部材29の対向する部位を貫通し、接着又は溶接により後端支持部材29と一体固着されている。すなわち、把持部30,後端支持部材29,載置部材16は一体化されている。
【0031】
載置部材16の各突出部26には、自転車50の前輪51を側方から支持する車輪ガイド27が固着されている。また、自転車50の後輪52を側方から支持する車輪ガイド28の一端が載置部材16の突出部26に固着されており、車輪ガイド28の他端は後端支持部材29に固着されている。車輪ガイド27,28は、中空のパイプ部材で構成されており、載置部材16上に隣接して配置されている。
【0032】
載置部材16の下部にはガイド部材4が固着されている。ガイド部材4は、1枚の板状部材を断面がコの字形を呈するように折り曲げて形成されている。ガイド部材4のコの字の開口は下方を向いて開いている。ガイド部材4のコの字の中央部4b(ウエブ)の前端部分には切欠部40が設けられている。また、中央部4bの複数箇所にはボルト孔が設けてあり、ガイド部材4の中央部4bがボルトによって載置部材16の下面に固定される。ガイド部材4の切欠部40は、載置部材16よりも前方へ突出した部位に設けられている。
【0033】
ガイド部材4のコの字の対向する部位(フランジ)であるガイド壁4aには、長孔36(ガイド長孔)が設けられている。長孔36は切欠部40で中央部4bが切り欠かれた部位のガイド壁4aに設けられている。また、長孔36は、載置部材16及びガイド部材4の長手方向に延びており、一端(前方側)がロック位置を構成し、他端(後方側)がロック解除位置を構成する。長孔36の代わりに、長孔36と同じ長さを有し上方又は下方に開口する溝(ガイド溝)をガイド壁4aに設けてもよい。
【0034】
ガイド部材4の先端は、連結板3のコの字の内部に配置することができる。すなわち、連結板3の端部3a,3bの間隔(内側)は、ガイド部材4の対向するガイド壁4aの間隔(外側)よりも大きい。
【0035】
各ガイド壁4aには孔37,孔38が設けられている。
ガイド壁4aの孔37を、連結板3の孔10cに位置合わせし、孔37と孔10cにボルトで構成される揺動軸12を挿通する。これにより、連結板3(支持部材1)に対して、ガイド部材4(載置部材16)が揺動軸12を中心に揺動可能になる。
【0036】
また、ガイド壁4aの孔38に、ガススプリング14の他端(ロッド14a側)が位置合わせされ、ボルトで構成される軸部材44が、ロッド14aに設けた連結部13bと孔38とを貫通し、ガイド部材4とガススプリング14の他端とを連結する。その結果、ガススプリング14を伸張又は収縮させると、ガイド部材4(載置部材16)は揺動軸12を中心に揺動する。
【0037】
2つのガススプリング14とガイド部材4を軸部材44で連結する際、ガイド壁4aとガススプリング14の間と、両ガススプリング14の間に適宜円筒状のディスタンスピース47を配置することにより、ガイド部材4と各ガススプリング14の位置が固定される。
【0038】
ガイド部材4のコの字の内部には支持板22と支持板32が間隔をおいて平行に配置され、ガイド部材4の内部に対して各支持板22,32の上部と両側部の三辺が溶接されている。支持板22には孔22aが設けてあり,支持板32には孔32aが設けられている。孔22aと孔32aの各々の中心は一致している。支持板32の孔32aには後述する力伝達部材11のソケット31が固着される。
【0039】
長孔36にはロックピン7が挿通される。ロックピン7は丸棒であり、一端にはボルトの頭部のような大径部7aが設けられており、他端にはねじ部7bが設けられている。ねじ部7bにはナット18が螺合する。ロックピン7は、ロック板5の切欠部5a内に収容可能な直径を有する。また、ロックピン7の中央部分にはねじ孔7cが設けられている。
【0040】
ロックピン7のねじ孔7cには、力伝達部材11の一端が連結されている。
図7に示すように力伝達部材11は、ワイヤ21,ソケット31,接続部材33,ロッド24,コイルばね19等で構成されている。
【0041】
ロッド24の一端にはねじ部24aが設けてあり、他端には平滑部24bが形成されている。ねじ部24aはロックピン7のねじ孔7cと螺合し、ロッド24とロックピン7は一体化される。ロッド24は、支持板22の孔22aを貫通している。また、ロッド24の周囲にはコイルばね19が配置される。コイルばね19は、ガイド部材4に固定された支持板22とロックピン7の間に縮設される。支持板22の孔22aには、コイルばね19の抜け止めとしてワッシャ19aが配置される。そのため、ロックピン7はコイルばね19によって前方へ付勢される。
【0042】
ロッド24の他端側の平滑部24bには接続部材33の一端が溶接されている。接続部材33は平板であり、他端側にはボルト34を挿通させる孔33aが設けられている。ボルト34にはナット35が螺合する。ここで、接続部材33の孔33aにボルト34を挿通し、ナット35を螺合する際に、ボルト34とナット35を完全に締結せず、接続部材33の下面とボルト34の頭部34aの間に隙間39(図8)を設ける。
【0043】
ワイヤ21は、可撓性を有する円筒部材23の内部に配置されている。ただし、ワイヤ21の先端は円筒部材23から露出しており、円筒部材23の一端は、支持板32に固定されたソケット31に収容されて固定され、ワイヤ21のみがソケット31及び支持板32の孔32aを貫通している。ソケット31は、ワイヤ21のガイドの機能を有する。
【0044】
図8に示すように、ワイヤ21は支持板32の孔32a及びソケット31を貫通し、隙間39内に侵入する。ワイヤ21は隙間39内でボルト34に巻き付けられている。さらにこの状態でナット35を締め付け、ワイヤ21を接続部材33に強固に固定する。ワイヤ21の他端(後端)は、次に説明するロック操作部17に固定されている。
【0045】
図9(a),図9(b)に示すように、後端支持部材29の把持部30にはロック操作部17が設けられている。
ロック操作部17は、ちょうど自転車のブレーキのような構造を呈している。すなわち、把持部30に直交するように固定部材42が固定されており、固定部材42の先端部分に回動軸43を介してレバー41が設けられている。レバー41にはワイヤ21が接続されている。ワイヤ21の周囲を取り巻く円筒部材23は、固定部材42に固定されている。
【0046】
ワイヤ21には、ロック操作部17(レバー41)から接続部材33に至るまで所定の張力が付与されている。すなわち、ワイヤ21の一端を接続部材33(図8)のボルト34に巻き付けてナット35を締め付けた後、ロックピン7のねじ孔7cに対するロッド24のねじ部24aのねじ込み加減を調整することにより、ワイヤ21の張力を適正に調整する。
【0047】
そしてレバー41を把持部30側へ引くと、レバー41は回動軸43を中心に回動し、ワイヤ21が牽引される。把持部30は、後端支持部材29の左右両側に突出しており、ロック操作部17は、後端支持部材29の左右両側に設けてもよい。
【0048】
また、本実施の形態の変形例として、ロック操作部17は、ロッド24,ワイヤ21,レバー41の代わりに、1本の剛性を有する長尺状の部材で構成することもできる。すなわち、長尺状部材を適宜折り曲げて載置部材16,ガイド部材4に沿って配置し、長尺状部材の先端部をロックピン7に結合する。そして、長尺状部材の後端部をレバー41の位置(把持部30よりも前方側)に配置し、この後端部を把持部30に接近するように操作すると、剛性を有する長尺状部材全体が後方へ移動し、ロックピン7と切欠部5a,5bの係合を解除することができる。
【0049】
以上の構成を駐輪装置100全体で見ると、駐輪装置100は次のように動作する。
今、仮に載置部材16が図4及び図11(a)に示す水平状態の自転車保管姿勢であるとする。このとき、ロックピン7はロック部材15の当接部20c(下部側係止部)に当接(係合)し、載置部材16は揺動軸12を中心に揺動できない状態となっている。
【0050】
この状態で、駐輪装置100の利用者(操作者)がロック操作部17を操作し、レバー41でワイヤ21を引くことによって、接続部材33及びロッド24を介してロックピン7をコイルばね19の付勢力に抗して後方へ移動させる。
【0051】
その結果、ロックピン7がガイド壁4aに設けた長孔36内を前端のロック位置から後端のロック解除位置まで移動し、ロックピン7が当接部20cから外れる。
【0052】
ここで、ロック操作部17が後端支持部材29の左右両側に設けられている場合には、両方のロック操作部17を同時に操作するのが好ましい。ただし、いずれか一方のみを操作してもロックピン7を移動させることは可能である。
【0053】
そしてレバー41を引いた状態で把持部30を操作して揺動軸12を中心に載置部材16を揺動させ、図11(b)に示すようにロックピン7がロック部材15の摺動部20bに当接する位置まで移動し、レバー41から手を離すと、コイルばね19の付勢力によってロックピン7が摺動部20bに当接し、ロックピン7はガイド壁4aにおける長孔36のロック解除位置を維持しながら摺動部20bに沿って移動することができる。すなわち、載置部材16をそのまま揺動軸12を中心に揺動させることができる。
【0054】
さらに、ガイド部材4の長孔36がロック板5の上部の切欠部5aの位置まで移動すると、ロックピン7はコイルばね19の付勢力によって前方へ移動する。すなわち、ロックピン7はガイド壁4aの長孔36のロック解除位置(後端側)からロック位置(前端側)へ移動し、図11(c)に示すようにロック部材15の当接部20aに当接(係合)する。
【0055】
その結果、載置部材16の自由端側が地面又は床面の近傍まで降下し、図2に示すように載置部材16は自転車搬入・搬出時姿勢となった状態で揺動不能になる。すなわち、載置部材16は確実に自転車搬入・搬出時姿勢で固定される。よって、駐輪装置100の利用者は、把持部30から両手を離しても、載置部材16は揺動しない。そして、両手で自転車50を載置部材16に乗せることができるようになる。
【0056】
次に、図1に示すように載置部材16に自転車50が載置されると、駐輪装置100の利用者は再び把持部30を持ち、レバー41を握ることによってワイヤ21,接続部材33,ロッド24を介してロックピン7を移動させ、ロックピン7と当接部20aの係合を解除する。
【0057】
この状態で載置部材16の自由端側を持ち上げ、載置部材16が揺動すると、ロックピン7が摺動部20bに移動し、やがて長孔36が当接部20cと一致する。このとき、コイルばね19の付勢力によってロックピン7が長孔36内を移動し、ロックピン7は当接部20cと係合する。その結果、自転車50を搭載した載置部材16は水平状態で揺動不能となり、図3に示すように自転車保管姿勢を確実に維持することができる。
【0058】
すなわち、長孔36に係合したロックピン7が摺動部20bに当接しているときには、ロックピン7は長孔36内を移動することができない。また、ガイド部材4(載置部材16)が揺動して長孔36に係合したロックピン7が、ロック部材15の摺動部20bから外れると、ロックピン7は長孔36内を長手方向にロック解除位置(後方)からロック位置(前方)へ移動することができるようになる。その結果、載置部材16は、自転車保管姿勢と自転車搬入・搬出時姿勢のいずれかの姿勢を呈して揺動不能になる。
【0059】
また、本実施の形態の変形例として、ガイド壁4a,連結板3の形状や、ガイド壁4aや連結板3に設けた揺動軸12,ガススプリング14の軸部材44,連結軸45等の配置を変更して、ロックピン7がロック部材15の当接部20aに係合したときに載置部材16が水平状態の自転車保管姿勢となり、ロックピン7が当接部20cに係合したときに載置部材16が傾斜状態の自転車搬入・搬出時姿勢となるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 支持部材
2 受け部材
3 連結板
4 ガイド板
4a ガイド壁
5a 切欠部
5b 切欠部
6 摺動板
7 ロックピン
11 力伝達部材
15 ロック部材
16 載置部材(載置棹)
17 ロック操作部
20a 当接部(上部側係止部)
20b 摺動部(当接摺動面)
20c 当接部(下部側係止部)
50 自転車
100 駐輪装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面又は床面に対して立設された支持部材と、自転車を載置する載置棹とを有し、載置棹は、地面又は床面から高さを有する位置で、支持部材に片持ち状であって且つ揺動可能な状態に支持され、載置棹は実質的に水平な自転車保管姿勢と、自由端側が地面又は床面の近傍まで降下して載置棹が傾斜する自転車搬入・搬出時姿勢をとることができる駐輪装置において、
載置棹は二枚のガイド壁と、ロック操作部と、ロックピンと、力伝達部材とを有し、前記二枚のガイド壁は載置棹の固定端近傍であって載置棹の下部側に一定の間隔を開けて対向し、前記ガイド壁にはガイド溝又はガイド長孔が設けられ、
ロックピンは前記ガイド壁のガイド溝又はガイド長孔に係合し、
ロック操作部は載置棹の自由端側にあり、
ロック操作部とロックピンは力伝達部材で連結されており、
支持部材にはロック部材が固定されており、前記ロック部材には上部側係止部と下部側係止部があり、さらに上部側係止部と下部側係止部の間に前記ガイド壁の厚さを越える幅の当接摺動面を持ち、
前記ロック部材は載置棹の二枚のガイド壁の間に位置していてロックピンが当接し、
載置棹が自転車保管姿勢をとる際にはロックピンが上部側係止部又は下部側係止部の一方と係合可能であり、載置棹が自転車搬入・搬出時姿勢をとる際にはロックピンが上部側係止部又は下部側係止部の他方と係合可能であり、
ロック操作部を操作することによってロックピンを移動させてロックピンと上部側係止部との係合またはロックピンと下部側係止部との係合を解除することが可能であり、載置棹が自転車保管姿勢と、自転車搬入・搬出時姿勢との中間姿勢である場合にはロックピンが前記ロック部材の当接摺動面と当接することを特徴とする駐輪装置。
【請求項2】
ガイド壁のガイド溝又はガイド長孔はロック位置とロック解除位置とを有しており、
ロック操作部が操作されると、ロックピンがガイド溝内又はガイド長孔内をロック位置からロック解除位置へ移動することを特徴とする請求項1に記載の駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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