説明

騒音源の影響度解析システム

【課題】本発明は騒音影響度の解析方法を選択して解析を行うことができ複数騒音源、騒音源から離隔した評価地点における騒音レベルを監視し、評価を行い、騒音影響度が危険レベルに達するのを回避でき、騒音源が特定できるシステムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は騒音を評価する評価点及び騒音源に騒音計測器を設置し、複数箇所での騒音源の騒音によるデータを取得し、騒音レベルデータにより評価点での等価騒音レベルを求め、等価騒音レベルデータの値と、管理基準値とを対比して、管理基準値を越えるか否かを判断し、騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して工事騒音による影響であるか否かを判別し、警報信号を出力し、騒音計測器により評価点での騒音源影響度を解析することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事などの工事騒音源からの騒音の影響度をリアルタイムに解析して評価する騒音源の影響度解析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば建設工事現場など工事騒音源により生ずる騒音の影響度評価、管理などについては、民家等評価対象地点に騒音計を設置するなどして計測実施していた。
しかしながら、前記建設工事に伴う騒音源について高度な騒音低減処理を行う場合に、そのほかの主要な騒音源の影響についても併せて低減処理を行うか否か、解析し、評価する必要がある。
そこで、複数の工事騒音源の騒音発生量、および評価地点における騒音レベルを常時監視し、騒音低減提案値の管理を行うとともに、前記提案値を超えた場合において影響騒音源の影響を明らかにできる多点モニタリングシステム開発が近年とみに要請されている。
【0003】
また、従来より、単一地点、および複数地点で騒音を計測するシステムは存在していたが(特開2003−83803号公開公報)、これらのシステムではマイクロホンを設置した地点での測定値を表示するのみであり、影響の大きい騒音源を特定して、評価することは想定していないものであった。従って、評価地点と騒音源が大きく離隔した場合においての評価はかなり困難であるとの課題がある。しかも、現状地点の騒音レベルの評価しか行えないので、管理地、評価地点に対する騒音の程度(平常・注意・危険など)を評価できないものであり、また夜間工事や長時間にわたる工事では騒音の変化が大きく、騒音源の特定や管理をするためには、前記従来の手法では常に人手が必要となるとの課題が山積していた。
【特許文献1】特開2003−83803号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであり、各種の騒音影響度の解析方法を選択して効率的な解析を行うことができ、もって複数騒音源、およびこれら騒音源から離隔(例えば100メートル以上)した評価地点における騒音レベル(騒音影響度)を常時監視し、管理基準値に対する現状レベルの評価を行い、騒音影響度が危険レベルに達するのを回避できるとともに、前記評価地点において管理基準値を超えた場合には騒音源が特定できるシステムを構築することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による騒音源の影響度解析システムは、
複数箇所の騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に対して各々騒音計測器を設置し、前記複数箇所での騒音源の騒音によるデータを連続して取得し、
連続して取得された前記データのうち騒音レベルデータにより前記評価点での等価騒音レベルを連続的に求め、
前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値とを対比して、該管理基準値を越えるか否かを判断し、求められた等価騒音レベルデータの値が前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かを判別し、工事騒音の影響であるときにはその旨の警報信号を出力し、
前記騒音計測器により連続的に取得した音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する、
ことを特徴とし、
または、
複数箇所の騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に対して各々騒音計測器を設置し、前記複数箇所での騒音源の騒音によるデータを連続して取得し、
連続して取得された前記データのうち騒音レベルデータにより前記評価点での等価騒音レベルを連続的に求め、
前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値とを対比して、該管理基準値を越えるか否かを判断し、求められた等価騒音レベルデータの値が前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かを判別し、工事騒音の影響であるときにはその旨の警報信号を出力し、
前記騒音計測器により連続的に取得した音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する各種解析方法のいずれか、あるいはいずれかの組み合わせにより複数箇所騒音源の騒音影響度を解析し、該解析結果による影響騒音源をディスプレイ上に表示してなり、
前記各種解析方法は、単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法である、
ことを特徴とし、
または、
複数箇所の騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に対して各々騒音計測器を設置し、前記複数箇所での騒音源の騒音によるデータを連続して取得し、
連続して取得された前記データのうち騒音レベルデータにより前記評価点での等価騒音レベルを連続的に求め、
前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値とを対比して、該管理基準値を越えるか否かを判断し、求められた等価騒音レベルデータの値が前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かを判別し、工事騒音の影響であるときにはその旨の警報信号を出力し、
前記騒音計測器により連続的に取得した音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する各種解析方法のいずれか、あるいはいずれかの組み合わせにより複数箇所騒音源の騒音影響度を解析し、該解析結果による影響騒音源をディスプレイ上に表示してなり、
前記各種解析方法は、単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法であり、
前記解析方法のいずれかと、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンから各騒音源の影響を解析する解析方法とを組み合わせて解析を行う、
ことを特徴とし、
または、
前記騒音計測器は、前記評価点及び複数箇所の騒音源箇所に設置され、防鳥及び防雨カバーで被覆された集音器と、該集音器に接続され、前記騒音源箇所より離間した屋内に設置された、騒音レベル及び音圧レベルが測定できる騒音計とを有して構成された、
ことを特徴とし、
または、
前記騒音計が取得した騒音によるデータは、騒音計が設置された箇所の第1コンピュータに連続的に取り込まれて求められた等価騒音レベルデータの値が、あらかじめ設定された管理基準値と対比され、
該管理基準値を越えるか否かが判断されると共に、前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとが対比され、評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かが判別され、工事騒音の影響であるときには、その旨の警報信号を出力される、
ことを特徴とし、
または、
前記第1コンピュータにより解析され、管理基準値を超えるか否かが判断された判断データは、複数の騒音源及び評価点より離間する箇所にある第2コンピュータに通信回線を使用して送信できる、
ことを特徴とし、
または、
複数箇所騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に各々騒音計測器を設置して、前記複数箇所での騒音による音圧データを連続的に取得し、
前記音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する各種解析方法により複数箇所騒音源の騒音影響度を解析してなり、
採用する各種解析方法の選択は、複数の騒音源同士が接近しているか否か、前記騒音が大きいか否か、さらには前記評価点と騒音源との距離が長距離か否かの違いにより行ってなり、
前記各種解析方法は、
単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法のいずれかと、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンから各騒音源の影響を解析する解析方法との組み合わせである、
ことを特徴とし、
または、
採用する各種解析方法の選択は、コンピュータによる選択とされ、複数の騒音源同士が接近しているか否か、前記騒音が大きいか否か、さらには前記評価点と騒音源との距離が長距離か否かとの情報を入力したときに、自動選択される、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の騒音源の影響度解析システムであれば、各種の騒音影響度の解析方法を選択して効率的な解析を行うことができ、もって例えば、複数騒音源、およびこれら騒音源から離隔(例えば100メートル以上)した評価地点における騒音レベル(騒音影響度)を常時監視し、管理基準値に対する現状レベルの評価を行い、騒音影響度が危険レベルに達するのを回避できるとともに、前記評価地点において管理基準値を超えた場合には騒音源が特定できるシステムを構築できるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を図に示す発明を実施するための最良の形態に基づいて説明する。
まず、本発明による騒音源の影響度解析システムは、
複数の現場測定点となる複数箇所の騒音源1・・・と、該複数箇所の騒音源1・・・から発生する騒音を評価する、前記複数箇所の騒音源1・・・から離間する箇所に存する評価点2とを有する。
そして、複数箇所の騒音源1・・・には、各々マイクロフォンなどの集音器3が設けられ、各騒音源1からの騒音を集音するよう構成される。
【0008】
ここで、前記集音器3は屋外に設置されるものであり、防鳥、防雨カバーで被覆保護されている。該集音器3と騒音計4はケーブル10により接続され、該騒音計4は、例えば評価点2近傍位置に設置された作業員詰所5などの屋内に設置される。
【0009】
なお、集音器3と騒音計4を接続するケーブル10のケーブル長は、約300mほどに限定されている。その長さを超えて接続すると、取得した音圧データなどが急激に減衰し、正確なデータ検出ができない。
ここで、騒音計4の構成については何ら限定されるものではないが、一般的に、騒音レベル(LA)及び音圧レベル(Lp)を測定できる計測器であることが望ましい。
更にそれぞれ統計量としての時間率騒音レベル(Lx)や、等価騒音レベル(Leq)、単発騒音暴露レベル(LAE)などの積分量を測定する機能を持ったいわゆる積分形騒音計測器が好ましく用いられる。
【0010】
しかして、これら複数の騒音計4・・・で取得された騒音のデータ6は、A/D変換器7に取り込まれた後、計測用コンピュータ8に送出され、該計測用コンピュータ8で計測及び評価が行われる。
すなわち、騒音計4において、あるいは計測用コンピュータ8において、連続して取得された前記騒音のデータのうち騒音レベルデータにより前記評価点2での等価騒音レベルが連続的に求められる。
そして、前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値が対比される。
【0011】
ここで、管理基準値の設定につき説明する。
すなわち、管理基準値の設定は各種の工事要件により異なり,工事発注者が決定し提示する場合,施工業者が提案する場合がある。どちらにおいても,工事現場の現況を勘案しながら法令等に準拠して決定される。
【0012】
そして、概ね以下の考え方のどちらかが選択されるものとなる。
(1) 騒音規制法による特定建設作業騒音の規制基準値85dB(工事用地境界)を採用,参考にする場合。
法令上では都道府県知事が定めることにより実施される規制の基準値であるが,これとは別に,工事の発注・受注の関係において当該数値を引用して,用地境界で85dBや80dBといったレベルで管理基準値を設定することがある。その条件とは,昼間の時間において,おおむね既に交通機関や工場等により相当量の騒音が排出(概ね50〜60dB以上)されている地域において,工事により現況を悪化させないことを目的とする場合が多い。
【0013】
(2)騒音に係る環境基準を参考にする場合。
農村部や静穏な住宅街など比較的静穏地域において工事を実施する場合は,現況の騒音環境を悪化させないことを目的として環境基準値を参考に管理基準値を設定する場合がある。
例えば住宅地域においては昼間の時間(例えば6時から22時):50dB,夜間(22時から翌6時):40dBなどが設定される。トンネルやダム工事は夜間も行われるため夜間の管理基準値に併せた対策が実施される。当然,騒音規制法による規制基準値より厳しい値となる。
【0014】
しかして、前記管理基準値は、前者の場合であれば、85dB、後者の場合であれば、50dBあるいは40dBと設定される。
【0015】
そして、求められた等価騒音レベルが前記管理基準値を超えたとき、その旨の警報信号9を出力するか否かが以下に示す解析方法でさらに判断される。管理基準値を超えた騒音が真にいわゆる工事騒音か否かが判断されるのである。
【0016】
すなわち、個々の騒音源1・・・による騒音レベル変動パターンと評価点2での騒音レベル変動パターンとを対比し、評価点2における騒音が工事騒音による影響であるか否かが解析されて判別される。
そして、確実に工事騒音の影響であるとされたときに、その旨の警報信号が出力されるものとなる。
しかして、前記個々の騒音源1・・・による騒音レベル変動パターンと評価点2での騒音レベル変動パターンとの対比による工事騒音源から評価点2への影響解析は,騒音源1・・・と評価点2における騒音レベル(周波数特性考慮)の大小と時間当たりの変化を捉えて行われるものである。
ここで,工事騒音源1近傍に設置した騒音計4による出力をLsi (i=1,2,3・・n)dB,および勾配を

,評価点2における騒音計4の出力をLr dB,および勾配を

とする。
【0017】
そして、評価点2における騒音レベルが管理基準値を超えた場合において, Lr < Lsi かつ



の条件を満たす場合に工事騒音源の影響と考えられるのである(図6参照)。しかし、騒音源1に設置した騒音計からの出力(Lsi)波形が小さいにもかかわらず、評価点2に設置した騒音計4からの出力(Lr)波形が大きい場合には、評価点2での騒音は工事騒音ではないと判別できることになる。
【0018】
この様に、例えば、1/1oct.周波数帯ごとに騒音源1と評価点2のレベル変動の勾配を読み取り照合して解析することになる。
上記のような解析結果により、評価点2における騒音が真に工事騒音による影響であるか否かが判別される。そして、真に工事騒音の影響と判別されたときに、警報信号9の出力が行われる。
【0019】
しかして、かかる警報信号9の出力信号は、前記計測用コンピュータ8から出力するよう構成しても構わないし、前記複数箇所の騒音源1・・・及び評価点2より離間する箇所にある、例えば現場事務所などに設置されたホストコンピュータ11から出力するよう構成しても構わない。
【0020】
ところで、計測用コンピュータ8,あるいはアンプ等モニタリング装置本体は、作業員休憩所等の作業詰所5に設置し,騒音のレベル変動と瞬時LAeqをADSLあるいは光ファイバ通信等の通信手段により現場事務所等に設置されたホストコンピュータ11に転送し、前記現場事務所からも監視可能としても構わないものである。
【0021】
次に、本発明によるシステムの動作を図2に示すフローチャートによって説明する。
まず、前記の集音器3及び騒音計4により複数箇所の騒音源1・・・及び評価点2から連続的に騒音のデータが取得され(ステップ100)、計測用コンピュータ8へ送出される。すなわち、騒音計4からは瞬時の等価騒音レベルデータが計測用コンピュータ8へ送出されており、計測用コンピュータ8では、例えば評価点2における前記瞬時の等価騒音レベルLaeqなどの値から演算を行ってLaeq.1hなどの値が求められる(ステップ101)。
【0022】
そして、この等価騒音レベル(Laeq.1hなどの値)は管理基準値と対比され(ステップ102)、その対比状態は計測用コンピュータ8のディスプレイ上で表示される(ステップ103)。
【0023】
ここで、求められた等価騒音レベルが管理基準値を越えた場合には、個々の騒音源1・・・による騒音レベル変動パターンと評価点2での騒音レベル変動パターンとを対比し、評価点2における騒音が真に工事騒音による影響であるか否かが解析されて判別されるのである。
そして、真に工事騒音の影響であるとされたときに、その旨の警報信号9を出力するものとなる(ステップ104,ステップ105)。
【0024】
しかして、前記個々の騒音源1・・・による騒音レベル変動パターンと評価点2での騒音レベル変動パターンとの対比による工事騒音源1から評価点2への影響解析は,騒音源1と評価点2における騒音レベルの大小と時間当たりの変化を捉えて行われるものであり、前述したように、工事騒音源近傍に設置した騒音計4による出力をLsi (i=1,2,3・・n)dB,および勾配を

,評価点2における騒音計4の出力をLr dB,および勾配を

とする。そして、評価点2における騒音レベルが管理基準値を超えた場合において,Lr < Lsi かつ



の条件を満たす場合に工事騒音源の影響とし、警
報信号9を出力するのである(ステップ105)。
【0025】
警報信号9が出力されると、複数の騒音源1・・・からの影響度が所定の解析方法により解析される(ステップ107)。この解析に際しては、騒音計から取得された音圧データが用いられる(ステップ106)。
【0026】
この解析方法としては、以下のものが選択される。いずれの解析方法が選択されるかは、副薄箇所の騒音源の配置状況や、周辺箇所に反射遮蔽物があるのか否か、また騒音影響の有無があるか否か、さらには前記評価点における工事騒音源のS/N比がいかなる値であるのか、換言すれば、複数の騒音源同士がどの程度接近しているのか、前記騒音がどの程度大きいのか、さらには前記評価点2と騒音源1との距離が長距離か否かの違いにより行っているものである。
【0027】
複数の騒音源1,1同士が比較的近距離にある場合は、この騒音源間の相関成分を除去した解析方法を採用すべきであり、また、複数の騒音源1,1同士が比較的離れた距離にある場合は前記の解析方法をとらずに、通常の解析方法を採用すべきであり、さらに複数の騒音源1,1同士がかなり離れた距離にあり、上記の解析方法では解析が容易でない場合には、いわゆる「伝達系をエネルギー的に求める」解析方法が採用されるべきだからである。
【0028】
これらの選択は現場における作業員の確認や地図上での確認によって行っても構わないが、これら解析方法ソフトを入力してある計測コンピュータ8などにより、それぞれの解析方法で実際に現場においてシミュレーションを行い、その結果を用いて、当該現場に最適な解析方法を選択することも出来る。
【0029】
また、前述した複数の騒音源1,1同士がどの程度接近しているのか、前記騒音がどの程度大きいのか、さらには前記評価点2と騒音源1との距離が長距離か否かの情報データをコンピュータに入力することにより、前記コンピュータ側で演算し、自動選択できるよう構成しても構わない。
【0030】
ここで、第一番目の解析方法につき述べる。第一番目の解析方法は、いわゆる、単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度、あるいは複数騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析するものである。
まず,複数騒音源による伝達系と単一評価点での騒音レベルの関係について考え方を整理する。
【0031】
単一騒音源Xiによる単一評価点における騒音レベルYiは,入力と出力間の伝達関数をHiとすれば,YiはHiへのXiの畳み込みにより求めることがでるので,暗騒音の影響をNとすれば,これらの関係は図3に示された式として表すことができる。
【0032】
一方で,複数音源による単一評価点での影響は図4に示す式の重ね合わせ(但し波形の重ね合わせ)となるので図4に示された式により求めることができる。
しかして、複数騒音源1の影響による評価点2の騒音レベルの概念図を図 4に示す。
【0033】
次に、第二番目の解析方法は、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法である。当該解析方法の基本的考え方は、前述した第1番目の解析方法とほとんど変わらない。しかし、この解析方法では、複数の騒音源1・・・が近接しており、その結果複数の騒音源1・・・による騒音が相互に影響する場合においても,伝達系の反射・回折を考慮した解析を可能としたものである。
【0034】
かかる解析方法については本件発明者らが別途特許出願を行い、特許を取得している(特許番号第3866221号)。なお、当該解析方法については、暗騒音が大きい場合は解析時間がかかってしまい不利といわれている。
さらに、第三番目の解析方法は、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法である。
【0035】
当該第三番目の解析方法は、複数の騒音源1・・・から評価点2までの距離が比較的離れており、前記第一番目や第二番目の解析方法では解析が容易でないときなどに採用される。かかる解析方法は、地図や図面を参考にして解析できるものである。
【0036】
当該解析方法には、図5に示す式が適用される。
すなわち、前記の式に示すように、各伝達系をエネルギー的に扱い,各騒音源における発生レベルから減衰量を減じて個別の影響レベルを求めるものである。従って、長距離による減衰,塀等遮蔽物による回折減衰を考慮出来る。
【0037】
また、当該解析方法については、計算で求めても良いが,騒音源と評価地点が決定した段階で疑似音源により実測することもできる。また、地形の改変や設備配置が変更になった場合においては再設定して行う。
この様に、説明した各種の解析方法では、個々の騒音源による影響を求めるため,伝達系Hiをどの様に与えるかがポイントとなっている。
【0038】
そして、伝達系Hiをどの様に与えるかには、第一番目及び第二番目の解析方法のように波動的に考えて与える方法,あるいは第三番目の解析方法のように、エネルギ的に考えて与える方法。しかして、これら各種の解析方法においていずれを選択するかは、前述のように、現場条件等に応じて選択できる様に構成してある。
【0039】
しかしながら、実際の現場においては,騒音源1の影響が非常に小さい場合など伝達系を考えた演算が困難な場合が想定されている。また,第一番目及び第二番目の解析方法,あるいは第三番目の解析方法のどちらの手法においてもいわゆる外乱の影響により解析精度が低下するのも事実である。
【0040】
従って、このような騒音源1の影響が非常に小さい場合、そしていわゆる外乱の影響により解析精度が低下すると考えられる場合においては、周波数特性を考慮した騒音変動パターンにより影響度を推定(イベント的解析)する解析方法を補助的に採用する。
【0041】
この解析方法は、個々の騒音源1・・・による騒音レベル変動パターンと評価点2での騒音レベル変動パターンとの対比による工事騒音源から評価点2への影響解析となる。
すなわち、騒音源1・・・と評価点2における騒音レベル(周波数特性考慮)の大小と時間当たりの変化を捉えて行われるもので、すでに警報信号9の出力に際し、採用された解析方法である。
再度説明すると、工事騒音源1近傍に設置した騒音計4による出力をLsi (i=1,2,3・・n)dB,および勾配を

,評価点2における騒音計4の出力をLr dB,および勾配を

とする。
【0042】
そして、評価点2における騒音レベルが管理基準値を超えた場合において, Lr < Lsi かつ



の条件を満たす場合に工事騒音源の影響と考える。しかし、騒音源1に設置した騒音計からの出力(Lsi)波形が小さいにもかかわらず、評価点2に設置した騒音計4からの出力(Lr)波形が大きい場合には、評価点2での騒音は工事騒音ではないと判別する。
この様に、解析する現場条件によって,このイベント的解析方法と前述した他の解析手法とを組み合わせることによって、最適な解析結果が得られるものとなる。
【0043】
しかして、この解析結果は、PC画面上に表示される(ステップ108)と共に、いわゆる騒音測定日報12にも出力される(ステップ109)。
なお、前述の求められた等価騒音レベルが管理基準値を越えない場合で、計測を終了するときには(ステップ110でYES)、その結果がPC画面上に表示される。
また、計測作業を継続する場合(ステップ110でNO)には、再びステップ101の作業に戻り、繰り返し計測作業が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による騒音源の影響度解析システムの概略構成を説明する概略構成説明図である。
【図2】本発明による騒音源の影響度解析システムの動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明による第一番目の解析方法を説明する基本式(その1)である。
【図4】本発明による第一番目の解析方法を説明する基本式(その2)である。
【図5】本発明による第三番目の解析方法を説明する基本式である。
【図6】騒音源に設置した騒音計による出力および勾配,評価点における騒音計の出力および勾配を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 騒音源
2 評価点
3 集音器
4 騒音計
5 作業詰所
6 騒音のデータ
7 A/D変換器
8 計測用コンピュータ
9 警報信号
10 ケーブル
11 ホストコンピュータ
12 騒音測定日報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数箇所の騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に対して各々騒音計測器を設置し、前記複数箇所での騒音源の騒音によるデータを連続して取得し、
連続して取得された前記データのうち騒音レベルデータにより前記評価点での等価騒音レベルを連続的に求め、
前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値とを対比して、該管理基準値を越えるか否かを判断し、求められた等価騒音レベルデータの値が前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かを判別し、工事騒音の影響であると判別されたときにはその旨の警報信号を出力し、
次いで、前記騒音計測器により連続的に取得した音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する、
ことを特徴とする騒音源の影響度解析システム。
【請求項2】
複数箇所の騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に対して各々騒音計測器を設置し、前記複数箇所での騒音源の騒音によるデータを連続して取得し、
連続して取得された前記データのうち騒音レベルデータにより前記評価点での等価騒音レベルを連続的に求め、
前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値とを対比して、該管理基準値を越えるか否かを判断し、求められた等価騒音レベルデータの値が前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かを判別し、工事騒音の影響であると判別されたときにはその旨の警報信号を出力し、
次いで、前記騒音計測器により連続的に取得した音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する各種解析方法のいずれか、あるいはいずれかの組み合わせにより複数箇所騒音源の騒音影響度を解析し、該解析結果による影響騒音源をディスプレイ上に表示してなり、
前記各種解析方法は、単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法である、
ことを特徴とする騒音源の影響度解析システム。
【請求項3】
複数箇所の騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に対して各々騒音計測器を設置し、前記複数箇所での騒音源の騒音によるデータを連続して取得し、
連続して取得された前記データのうち騒音レベルデータにより前記評価点での等価騒音レベルを連続的に求め、
前記連続的に求められる等価騒音レベルデータの値と、あらかじめ設定された管理基準値とを対比して、該管理基準値を越えるか否かを判断し、求められた等価騒音レベルデータの値が前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとを対比して評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かを判別し、工事騒音の影響であると判別されたときにはその旨の警報信号を出力し、
次いで、前記騒音計測器により連続的に取得した音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する各種解析方法のいずれか、あるいはいずれかの組み合わせにより複数箇所騒音源の騒音影響度を解析し、該解析結果による影響騒音源をディスプレイ上に表示してなり、
前記各種解析方法は、単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法であり、
前記解析方法のいずれかと、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンから各騒音源の影響を解析する解析方法とを組み合わせて解析を行う、
ことを特徴とする騒音源の影響度解析システム。
【請求項4】
前記騒音計測器は、前記評価点及び複数箇所の騒音源箇所に設置され、防鳥及び防雨カバーで被覆された集音器と、該集音器に接続され、前記騒音源箇所より離間した屋内に設置された、騒音レベル及び音圧レベルが測定できる騒音計とを有して構成された、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の騒音源の影響度解析システム。
【請求項5】
前記騒音計が取得した騒音によるデータは、騒音計が設置された箇所の第1コンピュータに連続的に取り込まれ、かつ求められてなり、
前記第1コンピュータでは、連続的に取り込まれ、かつ求められた等価騒音レベルデータの値が、あらかじめ設定された管理基準値と対比され、
さらに、該管理基準値を越えるか否かが判断されると共に、前記管理基準値を超えた場合には、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンとが対比され、評価点における騒音が工事騒音による影響であるか否かが判別され、工事騒音の影響であると判別されたときには、その旨の警報信号を出力される、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の騒音源の影響度解析システム。
【請求項6】
前記第1コンピュータにより解析され、管理基準値を超えるか否かが判断された判断データは、複数の騒音源及び評価点より離間する箇所にある第2コンピュータに通信回線を使用して送信される、
ことを特徴とする請求項5記載の騒音源の影響度解析システム。
【請求項7】
複数箇所騒音源から発生する騒音を評価する評価点及び前記複数箇所の騒音源に各々騒音計測器を設置して、前記複数箇所での騒音による音圧データを連続的に取得し、
前記音圧データを用い、評価点での騒音源影響度を解析する各種解析方法により複数箇所騒音源の騒音影響度を解析してなり、
採用する各種解析方法の選択は、複数の騒音源同士が接近しているか否か、前記騒音が大きいか否か、前記評価点と騒音源との距離が長距離か否かの違いにより行い、
前記各種解析方法は、
単一騒音源による単一評価点での騒音源の影響度を、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に求めることで解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度の解析において、前記複数の騒音源間における相関成分を除去し、前記個々の騒音源と評価点間の伝達系を波動的に解析する解析方法、複数騒音源による単一評価点での騒音源影響度解析において、個々の騒音源と評価点間における伝達系をエネルギー的に求めることで各騒音源の影響度を解析する解析方法のいずれかと、個々の騒音源による騒音レベル変動パターンと評価点での騒音レベル変動パターンから各騒音源の影響を解析する解析方法との組み合わせである、
ことを特徴とする騒音源の影響度解析システム。
【請求項8】
採用する各種解析方法の選択は、コンピュータによる選択とされ、複数の騒音源同士が接近しているか否か、前記騒音が大きいか否か、さらには前記評価点と騒音源との距離が長距離か否かの情報を入力したときに、自動選択される、
ことを特徴とする請求項7記載の騒音源の影響度解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−298568(P2008−298568A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144602(P2007−144602)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】