説明

骨、特に脊椎のための、動的固定装置およびこのような固定装置を有する動的安定化装置

動的固定装置(1)が提供され、この装置は、骨または脊椎を固定するためのシャンク(3)、およびシャンク(3)に接続された頭部(4)、ならびにこのための受け部分(5)を有する要素(2)と、頭部(4)に作用する圧力要素(20)とを有し、圧力要素(20)は、要素(2)が動くと、それが頭部(4)に復原力を及ぼすように、弾性となるように形成される。特に脊椎のための動的安定化装置がさらに提供され、この装置は、ロッド(100)と、それに接続された2つの固定装置とを含み、固定装置のうちの少なくとも1つは動的に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨、特に脊椎のための、動的固定装置およびこのような固定装置を有する動的安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
椎間板の欠陥を治療するための周知の方法では、手術によって欠陥のある椎間板を除去し、椎間の空間を2つの隣接する椎体で補強する。この方法において、脊柱のうち、補強された脊柱の区分に隣接した部分は、特に椎間板の領域において過度に圧力を加えられる。別の治療方法では、欠陥のある椎間板を除去して、次に人工的な椎間板を挿入する。大半の場合において、後方面関節および靭帯装置も激しい損傷を受けるため、通常、後部側からの人工的な椎間板の動きは自然に制御されない。したがって、高い剪断力および回転力によって、治療されている脊柱の区分に研磨効果がもたらされる。
【0003】
DE 42 39 715 C2から、脊椎を安定化するための固定システムが周知であり、骨に固定された部分への回転のおよび交互の押し圧力および引き圧力を減じることができる。しかしながら、運動の弾性減衰または運動の案内は可能ではない。
【0004】
EP 0 669 109 B1から、隣接する胸椎を安定化するための装置が周知であり、この装置を用ると、損傷を受けた椎間板および椎間関節を後部側から部分的に圧力から解放することができる。装置は2つの茎ねじ(pedicle screws)を有し、この茎ねじは、弾性の合成素材からなるバンドにそれぞれ堅く接続され、付勢したバンドを介して互いに接続される。弾性バンドに押込まれた耐圧縮ボディが2つのねじ頭の間にさらに設けられ、圧力による力を伝達する。しかしながら、耐圧縮ボディを備えたこの種類の織物バンドを用いると、脊柱の動きの区分にいかなる多軸の案内による安定性をもたらすこともできない。
【0005】
US5,474,555から、ねじ要素とそれに接続された受け部分とを有する、ロッドのための多軸骨ねじが周知であり、これは受け部分および脊椎の間で制限された動きを可能にする。しかしながら、動きの弾性減衰はこのねじでは可能ではない。
【0006】
US5,961,356から、多軸骨ねじの形態をした固定要素が周知であり、頭部に作用する圧力要素は、挿入されたロッドに作用するばね要素を含む。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、たとえば骨または脊椎における、たとえばロッド等の機械的装置の動的な固定を可能にし、かつ特に、動きの案内を安定化させかつ人工的な椎間板への圧力を軽減するための動的安定化装置で用いることのできる固定装置を提供することである。本発明の他の目的は、後部側から、動きの制御および人間の椎間板への圧力の軽減を可能にする、骨、特に脊椎のための動的安定化装置を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の固定装置、または請求項17に記載の動的安定化装置によって達成される。本発明のさらなる展開は従属クレームにおいて言及される。
【0009】
本発明のさらなる特徴は、図を用いた実施例の説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
特に図1から3に見られるように、動的固定装置1は多軸ねじとして形成される。これはねじ要素2を有し、このねじ要素は、ねじを切られたシャンク部分3、およびそれと一体化して構成された頭部4、ならびに受け部分5を有する。頭部4は、実質的に球の区分の形状に形成され、シャンク部分3とは反対側の端部で、開いた縁部またはカラー6を有して、平坦な正面7が形成されるようにし、この正面の直径は球の区分のような形状をした頭部の部分の直径よりも大きい。ねじ込み式工具と係合させるための凹部が、正面7にさらに形成される。
【0011】
受け部分5は、実質的に円筒形状に対称になるように形成され、その端部の一方で、軸方向に対称的に方向付けられた第1のボア10を有し、その直径は、シャンク3のねじを切られた部分よりも大きく、球の区分のような形状をした頭部4の部分の球径よりも小さい。これはさらに、第1のボア10の反対側の端部で開く共軸の第2のボア11を有し、その直径は、ねじ要素2が開いた端部を通って案内されるのに十分な大きさであり、そのねじを切られた部分が第1のボア10を通り、球の区分の形状をした頭部4の部分が第2のボアの底面の所までくるようにする。受け部分において、第1のボア10に隣接して部分12が設けられ、これは中空の球の区分のような形状であり、その半径は、球の区分のような形状をした頭部4の部分の半径と実質的に同一である。受け部分は、開いた端部から第1のボア10に向かって延在するU字形の凹部13を有し、その底面は第1のボア10に向けられ、これによって2つの開いた脚14が形成され、そのうちの1つのみが図に示されている。雌ねじ15は、脚14の開いた端部に隣接した受け部分に形成される。U字形の凹部13の幅は、そこで受けられるべきロッド10の直径よりも最小限に大きく、これは複数のこのような多軸ねじを接続する。U字形の凹部の深さは、ロッドが配置されるときに、固定ねじ16を脚の間にねじ込むことができるような寸法にされる。
【0012】
球の区分のような形状をした受け部分の部分12は、好ましくは、滑らかになるように研磨されるか、または滑動力を増大させる素材でコーティングされて、頭部4が、球の区分のような形状をした受け部分の部分において容易に旋回することができるようにする。代わりにまたはさらに、頭部4は滑らかになるように研磨されるか、またはコーティングされる。
【0013】
挿入されたロッド100およびねじ要素の頭部4の間に、圧力要素20が設けられる。圧力要素20は、円筒形の形状で形成され、その直径は受け部分の第2のボア11の内径よりも小さく、これは好ましくは、頭部の正面7の直径と同一である。圧力要素20の軸方向の長さは、頭部4の正面7が、挿入された状態において、U字形の凹部13の底部から有する距離よりも僅かに長いか、またはそれと同一である。圧力要素は、エラストマから形成されるものとして示された実施例において弾性的に構成される。
【0014】
圧力要素20および挿入されたロッド100の間に、キャップ21がさらに設けられ、これはロッドに面する側で圧力要素を覆い、曲げられない素材、たとえば合成部材または体に適合する金属から構成される。キャップ21の外径は、キャップが受け部分の第2のボアにおいて滑動することによって置換え可能であり、キャップの内径は、これが圧力を加えられていないときに圧力要素20の外径に実質的に対応する。キャップは、圧力要素が圧力を加えられたときに、半径方向に拡大することができるだけ、圧力要素と重複する。
【0015】
図1は、圧力を加えられていない状態を示しており、ここでねじ要素2、圧力要素20およびキャップ21は、受け部分に挿入され、ロッド100はU字形の凹部13に配置されるが、内ねじはまだねじで締められていない。この状態で、キャップ21のうち圧力要素13に背を向けた側面22は、U字形の凹部13の底部よりも最小限高い位置にあるた
め、ロッドはキャップの表面22のその下面で静止することにより、ギャップ23がロッドの下面とU字形凹部13の底部との間に形成されるようにする。
【0016】
動作において、図1に示されるように、最初にねじ要素2を、頭部が、球の区分のような形状をした受け部分の部分12にもたれるまで、その開いた端部から受け部分5に挿入する。次に、ねじ要素を脊椎にねじ込む。次に、圧力要素20を、その上に配置されたキャップ21とともに受け部分に挿入し、受け部分を位置合わせし、ロッドを配置する。最後に、内ねじ16を受け部分にねじ込む。
【0017】
図2に示されるように、内ねじは、それがU字形の凹部の底部にロッドを押し付けてそれを固定するまで、ねじ込まれる。同時に、ロッドをキャップ21に押し、これはロッドによって圧力要素の表面全体に及ぼされる圧力の力を均等に分配するように機能する。圧力要素の弾性のために、それはロッドによって及ぼされる力を介して事前に圧縮される。同時に、圧力要素は、図2に示されるような半径方向において外部に曲がった形状を帯びる。図2に示された状態において、圧力要素20はねじ頭4に対して付勢され、復原力のために、頭部の正面7でその下面を均等に押す。このようにして、頭部は、球の区分のような形状をした受け部分の部分12を押す。
【0018】
椎体にねじ込まれたねじ要素2は、脊柱の自身による動きによって、その静止位置から動かされる。ロッド軸に対して90°の角度でロッド軸に向かって脊椎が動くと、圧力要素が均一に圧縮されるが、受け部分に対するシャンクの角度は変化しない。ロッド軸に対して90°以外の角度で脊椎が動くと、図3に示されるように、頭部が旋回し、これは球の区分のような形状をした受け部分の部分12を容易に滑動させる。これによって、ねじ頭の正面7は一方側で圧力要素に圧縮力を及ぼし、これによって圧力要素が縁部の一方側付近で圧縮される。一方、反対側で、付勢された圧力要素は、圧力の解放のために拡大する。したがって、圧力要素は、常にねじ頭と接触したままである。
【0019】
圧力要素の弾性のために、圧縮は、ねじ頭に復原力をもたらす。このようにして、脊椎を外科医によって置かれたその元の位置へ戻す動きが支持される。
【0020】
所望の圧縮性を有する圧力要素のためのエラストマ素材を選択することによって、脊椎の動きの制限を設定することができる。素材は僅かに圧縮することができる場合、装置は静止位置から僅かにそらすことができる。素材を強度に圧縮することができる場合、より広い旋回範囲が可能である。体に適合したエラストマは、エラストマ素材、たとえばポリウレタンまたはポリシロキサンとして用いることができる。
【0021】
旋回範囲は、受け部分の第2のボアの直径に対するねじ頭のカラー6の直径を選択することによって、さらにまたは追加的に設定することができる。カラー6がねじ要素2の旋回された位置で受け部分の壁に当接するときに、さらに旋回することはできない。
【0022】
図4は、第2の実施例に従った圧力要素25を示している。圧力要素25は、下方部分26と上方部分27とからなる箱形に形成されたハウジングを有し、これは蓋のように下方部分を閉じる。内部では、互いに向かい合った少なくとも2つのコイルばね28(好ましくは、円周方向に均等に距離をあけた4個以上のコイルばね)が配置され、その端部の一方は下方部分に接続され、他方の端部は上方部分に接続される。コイルばね28は、図3に示されるようにハウジングの壁の近くに配置され、圧縮力は、圧縮要素の中心よりも縁部の方が強い。コイルばねの強度は、所望のまたは必要とされる圧縮がねじ頭を介して達成することができるように選択される。
【0023】
固定要素が第2の実施例に従った圧力要素を有する場合に、第1の実施例に記載された
キャップ21は必要ない。なぜなら、圧力要素の上方側は、曲げられない素材からなるからである。
【0024】
動作は第1の実施例のように行なわれる。受け部分における圧力要素25の横方向のずれを防ぐために、さらなる変形において、圧力要素の直径は、受け部分の第2のボア11の直径よりも僅かに小さい。
【0025】
さらなる実施例において、圧力要素それ自体がコイルばねとして形成される。コイルばねの直径は、第2の実施例の箱型のハウジングの直径に対応する。他の種類のばね、たとえば1つ以上の皿ばねも可能である。
【0026】
第1の実施例の、エラストマから形成される圧力要素20におけるさらなる実施例において、コイルばねは、図4に従ったものと同一のまたはそれと類似した構成に含まれ、圧力要素の製造の際に型にはめられる。これらはさらに、エラストマの弾性特性を支持するように機能する。
【0027】
第1の実施例の変形において、圧力要素20およびキャップ21は受け部分5に事前に装着され、たとえば受け部分に設けられた、波形にされたボアおよびこれらに対応する圧力要素における皿孔によって、外れて外側に落ちないように固定される。この場合、圧力要素20およびキャップ21は共軸の中央ボアを有し、このボアは、ねじ工具が案内されてねじ要素2を骨にねじ込むのを可能にする。圧力要素およびキャップが事前に装着されていない場合に、ボアを設けることができる。
【0028】
さらなる実施例において、圧力要素は、キャップ21および/または頭部の正面7に面する面が、圧力要素の内部に向かって凹状に曲がるように形成される。これは、キャップの平坦な面および/またはねじ頭と協働して、縁部における圧力の弾性における増加をもたらす。
【0029】
さらなる変形において、頭部はカラーを有さず、たとえば図6に示されるような半球形に形成されて、正面がねじ頭の最大直径を有するようにする。決定的に重要なのは、圧力要素と協働するための十分に大きな正面があるため、縁部において力の伝達が保証される。
【0030】
図5aに示された固定要素の第2の実施例において、受け部分5に対するねじ要素2の静止位置は、受け部分の中心軸Mに対する角度αであり、この角度は0とは異なる。この場合、ねじ要素2′は2つの部分で構成される。これは、頭部40と、それに接続することができるねじを切られたシャンク30とを含む。ねじを切られたシャンク30は、その端部のうちの一方で、ねじを切られていない部分31を有する。この端部で、ねじ工具と係合させるための凹部32が正面にさらに設けられる。頭部40は、第1の実施例のねじ要素におけるように、球状の区分のような形状をした部分と、カラー41とを含み、このカラーは、シャンクに背を向けた側でこの球状の区分と隣り合い、圧力要素と協働するための正面42を有する。正面に背を向けた側で、頭部40は、頭部の対称軸に対して予め定められた角度αで走るボア43を有する。このボアの直径は、シャンク30のねじ山を切られていない部分31の外径と同一であるため、シャンクを摩擦固定によってボアに挿入することができる。挿入されたシャンクへの締め付け効果を向上させるために、頭部は、その壁にスリット(図示せず)を有することができ、ボアはばね縁部を有する。
【0031】
代わりに、雌ねじをボア43に、整合する雄ねじをシャンク部分31に設けて、シャンクを頭部にねじ込むことができるようにする。
【0032】
固定装置の残りの部分は、図1から3またはその変形に従った実施例と同じである。
【0033】
動作において、最初にシャンク30を脊椎にねじ込む。次に、その第1のボア10を有する受け部分5を、シャンク30に、または突出するねじを切られていない部分31に、そして圧力要素を有する頭部40に対角線状に配置し、適用可能であれば、キャップを、好適な工具およびシャンクに押し込まれたボア43によって、事前に圧縮された状態で、受け部分に挿入する。したがって、シャンク30の長手軸は、頭部40の中心軸に対して、したがって受け部分5の中心軸に対して予め定められた角度αを有する。その後で、ロッドを配置して、最後に、第1の実施例におけるように、すべてが内ねじ16を介して固定される。第1の実施例におけるように、脊椎が動くと、復原力によって頭部がその静止部分に再び戻される。角度はボア43の角度によって予め設定されるが、外科医は、受け部分をその軸のまわりで回転させることによって、または頭部を最小限に旋回させることによって、調整することができる。
【0034】
第2の実施例のさらなる変形において、頭部はシャンクと一体化して構成されるが、弾性の圧力要素のための支持面を形成する頭部の正面は、シャンクの軸に対する角度である。図5bから5eにおいて、この種類のねじ要素200の製造ステップが示されている。ねじ要素200は、ねじを切られたシャンク300と、それと一体化して接続されかつ球の区分の形状をした頭部400とを有する。これは、図5bに示されるように、正面700がシャンクの軸に対して予め定められた角度を有するように加工される。それに続いて、図5cに示されるように、雌ねじを有するボア701が生成され、これは正面700と垂直に延びる。このボアに、図5cに示されるように、カラー形状の頭部と後で骨にねじ込むための凹部601とを有するねじ600を頭部にねじ込み、カラーの直径は頭部400の直径よりも大きい。次に、図5eに示された完成したねじ要素200を受け部分に配置する。
【0035】
動作において、ねじ要素200を受け部分に配置し、次に骨にねじ込む。シャンクの軸に対する予め定められた角度で延びる正面700によって、ねじ要素200は、静止位置において受け部分に対する予め定められた角度を有する。圧力要素およびロッドの挿入は、先述されたように行なわれる。
【0036】
カラーは、ねじ要素と一体化して構成することができる。
【0037】
図10aから10cに示された第2の実施例のさらなる変形において、頭部がもたれる球の区分の形状をした部分を有するのは受け部分5それ自体ではなく、受け部分において、エラストマから製造された挿入要素500が設けられ、この挿入要素は円筒形の外壁とともに構成され、第1のボア10から横方向に始まる球の区分のような形状をした頭部の部分を囲むか、または図10aに示されるように、リング状に構成され、ねじ頭のための1つのみの支持面501を有する。さらに、曲げられない圧力要素502が設けられ、これは頭部4を押す。圧力要素501は、ねじ頭に適合する球の区分のような形状をした凹部を有する。動作において、ねじ2および受け部分5を互いに対して調整した後で、ねじ頭4を、挿入要素に対する所望の角度で、固定ねじ16および圧力要素502を介して押す。なぜなら、これは、図10bに示されるように、付勢された状態で、容易に互いに押されるからである。この位置は静止位置を形成する。脊椎が動くと、ねじ頭は挿入要素500を押すため、ねじ頭はこの点で挿入要素を変形させ、図10cに示されるように、ねじが静止位置から動くことができるようにする。同時に、生じる復原力によって、頭部はその静止位置に戻される。この実施例において、静止位置を形成するとされる、受け部分に対するねじシャンクの所望の角度を自由に設定することができる。
【0038】
さらなる変形において、圧力要素は楔形として形成される。
【0039】
図6に示された第3の実施例において、固定装置は、頭部およびロッドを別々に圧力を加えることができるように形成される。この目的のために、第1の実施例とは対照的に、圧力要素50は、第1の弾性の部分51と、それに隣接した第2の曲げられない部分52とを有し、これらは互いに堅く接続され、これはU字形の凹部53を有し、その寸法は、ロッド100をその中に配置することができるようなものにする。円筒軸の方向に見られる圧力要素のU字形の凹部の深さは、ロッドの直径よりも大きい。U字形の凹部によって形成された開いた脚54,55は、それが配置されるときにロッドを超えて突出する。さらに、ナットまたはブッシングタイプの閉鎖要素56が設けられ、これは、受け部分の雌ねじと協働する雄ネジ57と雌ねじ58とを有する。内ねじ59は閉鎖要素56に設けられる。
【0040】
動作において、力が、閉鎖要素56を介して、曲げられない圧力要素の部分52の脚および弾性の圧力要素の部分51に及ぼされるときに、力はねじ頭に与えられる。ロッドは、内ねじ59を介してこれから独立して固定される。望まれれば、ロッドを可動なものして保持することができる。この場合、内ねじは、ロッドが受け部分のU字形の凹部において滑動することができる程度までねじ込まれる。
【0041】
示された実施例において、部分51および52は互いに堅く接続され、圧力要素50は一体化して構成される。変形において、これは2つの部品で構成され、さらに図1に従った実施例に従う弾性部分51と、U字形の凹部を有する非弾性部分52とからなる。
【0042】
図7は、第1の実施例に従った脊椎のための動的安定化装置を示している。これは特に、椎間板または脊椎が除去され、それが、曲げられない融合要素60、たとえば壁に開口を有し、かつたとえば骨が成長するのを可能にする骨量で充填された管状のインプラントによって取って代わられる場合に適用可能である。
【0043】
安定化装置は、後部領域において、2つの動的な骨固定装置1,1′を有し、これらは曲げられないロッド100を介して互いに接続される。骨固定装置1,1′の各々は、先述の実施例のうちの1つに従って形成される。圧力要素の弾性的構成および関連する減衰効果のために、正面の融合要素60には、断続的で制限された圧力がもたらされ、これは融合要素におけるおよびその周りでの骨の成長を加速させる。これによって、治癒過程が速まる。
【0044】
図8は、第2の実施例に従った脊椎のための動的安定化装置を示している。これは、特に、椎間板が除去され、かつそれが椎間板の人工補装具61によって取って代わられる場合に適用することができる。安定化装置は、2つの動的な固定装置101,101′を含み、これらは曲げられないロッド100を介して互いに接続される。固定装置101,101′の少なくとも1つは、図6に示された実施例に従って形成され、これは、圧力が圧力要素50を介してねじ頭に及ぼされるが、ロッドは軸方向において置き換え可能なままであるという点で区別される。安定化装置は、2つの固定装置の間のロッドに設けられたばね要素102と、ロッド上の少なくとも1つの留め具103とをさらに含み、この留め具は、ロッド100が滑動する際に保持される固定装置のばね要素102の向かい側に配置される。図8に示された例において、2つのこのような留め具が設けられ、ロッドは双方の固定装置101,101′において滑動するように保持される。ばね要素102は、付勢された状態で固定装置の中間にもたらされるため、延長ばねとして作用する。
【0045】
動作において、ロッド100の後部の長手方向の弾性と固定装置101,101′の多軸の減衰とを組合せることによって、動きの制御が可能になり、椎間板の人工補装具にかかる圧力が軽減される。安定化装置は、いかなる人工的な椎間板の構造にも適用すること
ができる。
【0046】
図9は、図8に示された安定化装置のさらなる適用例を示しており、これは、延長ばねロッドと、後部領域における先述の多軸減衰ねじの形態をした動的固定装置とを含む。この適用例において、人間の椎間板は、圧力が軽減されると回復する程度まで損傷を受ける。安定化装置は、人間の椎間板にかかる圧力を軽減し、同時に動きの範囲を制限して、椎間板にさらなる損傷を与える極度の動きが生じないようにし、椎間板が静止した位相で、たとえば夜にまたは横になる間に、回復することができる。
【0047】
図11から13において、本発明のさらなる実施例が記載される。図1から3に示される実施例の要素に対応する要素は、同じ参照数字を有する。図11に従うと、この実施例は、ロッドおよび頭部の間に配置される弾性圧力部材20に加えて、第2の弾性圧力部材600を含む。第2の圧力部材はリング状であり、これは、カラー6が球の区分の形状をした部分で隣接して形成される位置でねじ頭を囲むように配置される。示された実施例において、第2の圧力要素600は、Oリングとして形成される。圧力部材の外径およびその内部リングの直径は、圧力部材が受け部材5に挿入される図11に示された負荷をかけられていない状態において、リングが頭部の外側および受け部材の内壁と接触するような寸法にされる。ねじ要素を受け部分に挿入する際に、第2の圧力部材600は既にねじ頭に配置される。
【0048】
動作において、ロッドが固定される図12に示された負荷をかけられた状態において、圧力部材600が変形される。圧力要素が変形されるときに生じる圧縮のために、圧力要素は、ねじ頭に向かってばねを付勢する。図13に従うと、ねじ要素2がその静止位置から動くときに、第1の圧力部材20によって、矢印F1によって示される上部からねじ頭の正面7に作用する回復力がもたらされ、一方で第2の圧力部材600は、矢印F2によって示される、正面7よりも横方向に下から作用し、かつ力F1に対して対角線状にずらされたねじ頭に戻り力をもたらす。したがって、後者を図13の矢印Aによって示されるようなその元の位置に戻すねじ頭に作用する戻り力が、第2の圧力部材600によって増大される。さらに、第2の圧力部材600によって、第1の圧力要素20の磨耗が減じられる。
【0049】
異なる可能性のある、第1の圧力部材20および第2の圧力部材600の素材を選択することによって、減衰の所望の調整を達成することができる。たとえば、第1の圧力部材は第2の圧力部材よりも堅いまたは圧縮性の弱い素材から形成される。
【0050】
この実施例の変形において、第2の圧力要素はOリングとしてではなく、成形されたリングとして形成される。
【0051】
本発明は、上述の実施例に限定されない。個々の実施例の要素を他の実施例の要素と組合わせることが可能である。特に、本発明は多軸ねじに限定されず、ねじを切られたシャンクの代わりに、フックを固定要素として設けることができる。受け部分は、ねじを下から受け部分に挿入することができるようにさらに構成することができる。この場合、成形されたリングは、ねじ頭の端部停止として設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】圧力を加えていない状態における固定装置の第1の実施例の部分的な断面を示す図である。
【図2】静止位置において圧力を加えた状態の、図1に従った固定装置の部分的な断面を示す図である。
【図3】固定要素に力を作用させる際に圧力を加えた状態の、図1の固定装置の部分的な断面を示す図である。
【図4】図1から3に示される固定要素の実施例の圧力要素の第2の実施例を概略的に示す図である。
【図5a】固定要素の第2の実施例の部分的な断面を示す図である。
【図5b】第2の実施例の変形のねじ要素を製造するための製造ステップを示す図である。
【図5c】第2の実施例の変形のねじ要素を製造するための製造ステップを示す図である。
【図5d】第2の実施例の変形のねじ要素を製造するための製造ステップを示す図である。
【図5e】第2の実施例の変形のねじ要素を製造するための製造ステップを示す図である。
【図6】固定要素の第3の実施例の断面図である。
【図7】動的安定化装置の第1の実施例の概略図である。
【図8】第1の適用例における動的安定化装置の第2の実施例の概略図である。
【図9】第2の適用例における動的安定化装置の第2の実施例の概略図である。
【図10a】動的固定装置のさらなる実施例の断面図である。
【図10b】動的固定装置のさらなる実施例の断面図である。
【図10c】動的固定装置のさらなる実施例の断面図である。
【図11】負荷をかけていない状態の動的固定装置のさらなる実施例の断面図である。
【図12】負荷をかけた状態の図11に示された実施例を示す図である。
【図13】図11および12に示された実施例の機能を概略的に表わす図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨または脊椎に固定するためのシャンク(3,30,300)、および当該シャンク(3,30)に接続された頭部(4,40,400)、ならびにそのための受け部分(5)を有する要素(2,2′,2′′,200)と、当該頭部に作用する圧力要素(20,25,50)とを有する動的固定装置であって、当該圧力要素(20,25,50)は、当該要素(2,2′,2′′,200)が動くと、当該頭部(4,40)に復原力を及ぼすように形成される、動的固定装置。
【請求項2】
当該圧力要素(20,25,50)は、当該頭部(4,40)のうち、当該シャンク(3,30)に背を向ける側に作用することを特徴とする、請求項1に記載の動的固定装置。
【請求項3】
当該圧力要素(20,51)は、エラストマから形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の動的固定装置。
【請求項4】
当該圧力要素(25)は、少なくとも1つのばね要素(28)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の動的固定装置。
【請求項5】
当該頭部(4,40)は、当該シャンク(3,30)から背を向けた側で平坦な面(7,42)を有し、当該圧力要素(20,25,50)は、それと協働する平坦な面を有することを特徴とする、請求項1から4のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項6】
当該頭部(4,40)は、当該シャンクから背を向けたその端部で開いた縁部(6,41)を有することを特徴とする、請求項5に記載の動的固定装置。
【請求項7】
当該受け部分(5)は、当該頭部(4,40)の支持面(12)を有し、当該支持面および/または当該頭部は、摩擦を減じるために研磨されるかまたはコーティングされることを特徴とする、請求項1から6のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項8】
曲げられない中間要素(21)が、当該受け部分(5)に挿入された状態で、圧力要素(20)のうち、当該頭部(4,40)から背を向けた側に設けられることを特徴とする、請求項1から7のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項9】
当該頭部(40)および当該シャンク(30)は分離された部分として形成され、当該シャンク(30)は、当該頭部の中心軸に対して予め定められた角度αで当該頭部に接続することができることを特徴とする、請求項1から8のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項10】
当該圧力要素(5)は、円筒形として形成され、第1の弾性部分(51)と、U字形の凹部(53)を有する、隣接する第2の曲げられない部分(52)とを有し、当該凹部によって2つの開いた脚(54,55)が形成され、当該U字形の凹部(53)の深さは、当該受け部分に配置されるべきロッド(100)の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項1から9のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項11】
当該圧力要素(50)は2つの部分で形成され、一方の部分は当該弾性部分(51)によって形成され、他方の部分は当該U字形の凹部を有する曲げられない部分(52)によって形成されることを特徴とする、請求項10に記載の動的固定装置。
【請求項12】
当該圧力要素(5)は、当該受け部分に挿入されるべきエラストマから製造される挿入
物として形成され、当該ねじ頭を圧力をかけた状態で型にはめるための支持面を有することを特徴とする、請求項1から11のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項13】
当該挿入物はリング状であり、当該ねじ頭を取り囲むことを特徴とする、請求項12に記載の動的固定装置。
【請求項14】
当該圧力要素(20,25,50)は、第1の圧力要素であり、リング状で当該ねじ頭を取り囲む第2の弾性圧力要素(600)が設けられることを特徴とする、請求項1から13のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項15】
当該第2の圧力要素は、Oリングまたは成形されたリングとして形成されることを特徴とする、請求項14に記載の動的固定装置。
【請求項16】
当該受け部分は、ロッドを挿入するための全体を形付けられた凹部を含み、当該圧力要素(2,25,50)は、当該頭部および当該ロッドの間に配置され、当該ロッドが当該U字形の凹部の底部にあるときに、挿入されたロッドの圧力によって予め圧縮されるように形成されることを特徴とする、請求項1から15のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項17】
ロッド(100)に接続された少なくとも2つの固定装置(1,1′;101,101′)を有する、骨、特に脊椎のための動的安定化装置であって、当該固定装置(1,1′;101,101′)のうちの少なくとも1つは、請求項1から16のうちの1つに記載の動的固定装置であることを特徴とする、動的安定化装置。
【請求項18】
当該固定装置(101,101′)の間で、ばね要素(102)がロッド上に設けられることを特徴とする、請求項17に記載の動的安定化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨または脊椎に固定するためのシャンク(3,30,300)、および当該シャンク(3,30)に接続された頭部(4,40,400)、ならびにそのための受け部分(5)を有する要素(2,2′,2′′,200)と、当該頭部に作用する圧力要素(20,25,50)とを有する動的固定装置であって、当該受け部分は、ロッドを挿入するためのU字形の凹部を含み、当該圧力要素(20,25,50)は、当該要素(2,2′,2′′,200)が動くと、当該頭部(4,40)に復原力を及ぼすように形成される、動的固定装置。
【請求項2】
当該圧力要素(20,25,50)は、当該頭部(4,40)のうち、当該シャンク(3,30)に背を向ける側に作用することを特徴とする、請求項1に記載の動的固定装置。
【請求項3】
当該圧力要素(20,51)は、エラストマから形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の動的固定装置。
【請求項4】
当該圧力要素(25)は、少なくとも1つのばね要素(28)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の動的固定装置。
【請求項5】
当該頭部(4,40)は、当該シャンク(3,30)から背を向けた側で平坦な面(7,42)を有し、当該圧力要素(20,25,50)は、それと協働する平坦な面を有することを特徴とする、請求項1から4のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項6】
当該頭部(4,40)は、当該シャンクから背を向けたその端部で開いた縁部(6,41)を有することを特徴とする、請求項5に記載の動的固定装置。
【請求項7】
当該受け部分(5)は、当該頭部(4,40)の支持面(12)を有し、当該支持面および/または当該頭部は、摩擦を減じるために研磨されるかまたはコーティングされるこ
とを特徴とする、請求項1から6のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項8】
曲げられない中間要素(21)が、当該受け部分(5)に挿入された状態で、圧力要素(20)のうち、当該頭部(4,40)から背を向けた側に設けられることを特徴とする、請求項1から7のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項9】
当該頭部(40)および当該シャンク(30)は分離された部分として形成され、当該シャンク(30)は、当該頭部の中心軸に対して予め定められた角度αで当該頭部に接続することができることを特徴とする、請求項1から8のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項10】
当該圧力要素(5)は、円筒形として形成され、第1の弾性部分(51)と、U字形の凹部(53)を有する、隣接する第2の曲げられない部分(52)とを有し、当該凹部によって2つの開いた脚(54,55)が形成され、当該U字形の凹部(53)の深さは、当該受け部分に配置されるべきロッド(100)の直径よりも大きいことを特徴とする、請求項1から9のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項11】
当該圧力要素(50)は2つの部分で形成され、一方の部分は当該弾性部分(51)によって形成され、他方の部分は当該U字形の凹部を有する曲げられない部分(52)によって形成されることを特徴とする、請求項10に記載の動的固定装置。
【請求項12】
当該圧力要素(5)は、当該受け部分に挿入されるべきエラストマから製造される挿入物として形成され、当該ねじ頭を圧力をかけた状態で型にはめるための支持面を有することを特徴とする、請求項1から11のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項13】
当該挿入物はリング状であり、当該ねじ頭を取り囲むことを特徴とする、請求項12に記載の動的固定装置。
【請求項14】
当該圧力要素(20,25,50)は、第1の圧力要素であり、リング状で当該ねじ頭を取り囲む第2の弾性圧力要素(600)が設けられることを特徴とする、請求項1から13のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項15】
当該第2の圧力要素は、Oリングまたは成形されたリングとして形成されることを特徴とする、請求項14に記載の動的固定装置。
【請求項16】
当該圧力要素(2,25,50)は、当該頭部および当該ロッドの間に配置され、当該ロッドが当該U字形の凹部の底部にあるときに、挿入されたロッドの圧力によって予め圧縮されるように形成されることを特徴とする、請求項1から15のうちの1つに記載の動的固定装置。
【請求項17】
ロッド(100)に接続された少なくとも2つの固定装置(1,1′;101,101′)を有する、骨、特に脊椎のための動的安定化装置であって、当該固定装置(1,1′;101,101′)のうちの少なくとも1つは、請求項1から16のうちの1つに記載の動的固定装置であることを特徴とする、動的安定化装置。
【請求項18】
当該固定装置(101,101′)の間で、ばね要素(102)がロッド上に設けられることを特徴とする、請求項17に記載の動的安定化装置。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−525047(P2006−525047A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504483(P2006−504483)
【出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001978
【国際公開番号】WO2004/098423
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(592232384)ビーダーマン・モテーク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクタ・ハフツング (57)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN MOTECH GMBH
【Fターム(参考)】