骨再生材料及びその製造方法
【課題】 リン酸カルシウム多孔体構造を有する骨再生材料において、セルとセルが十分に連通した骨再生材料の提供。
【解決手段】 骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する骨再生材料において、
前記リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、
前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする、骨再生材料。
【解決手段】 骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する骨再生材料において、
前記リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、
前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする、骨再生材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の再生に使用される骨再生材料(骨補填剤)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、βリン酸三カルシウム(β‐TCP)等のリン酸カルシウムは、骨腫瘍を摘出した部位や、骨折により骨が欠損した部位に補填され、骨補填材として使用されることが知られている。当該骨補填材は、生体に移植補填後に吸収されて自家骨に置換される性質を有する。したがって、従来の人工骨のように生体内部に残留しないという利点を有する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−49355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のβ−TCPを用いた骨再生材料は多孔体構造を有しているが、スラリー発泡法により製造されており、当該セル(気泡)は一応連通しているものの、これらのセルの連通の程度が十分でなく、骨芽細胞が定着し骨形成するために必要な血管が十分に形成されないという問題があった。そこで、本発明は、リン酸カルシウム多孔体構造を有する骨再生材料において、セルとセルが十分に連通した骨再生材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する骨再生材料において、
前記リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、
前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする、骨再生材料である。
【0006】
本発明(2)は、前記リン酸カルシウム多孔体の空隙率が、80〜99%である、前記発明(1)記載の骨再生材料である。
【0007】
本発明(3)は、前記リン酸カルシウム多孔体が、生分解性補強材料により被覆されている、前記発明(1)又は(2)の骨再生材料である。
【0008】
本発明(4)は、前記リン酸カルシウム多孔体のセルの大きさが、0.1〜2mmである、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0009】
本発明(5)は、前記リン酸カルシウムが、β‐リン酸三カルシウムである、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0010】
本発明(6)は、前記リン酸カルシウム多孔体が、骨格内マイクロポアを有する、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0011】
本発明(7)は、前記骨格内マイクロポアの径が、5〜200μmである、前記発明(6)の骨再生材料である。
【0012】
本発明(8)は、前記リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に、壁面マイクロポアが形成されており、前記骨格内マイクロポアが外部に対して連通している、前記発明(1)〜(7)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0013】
本発明(9)は、前記壁面マイクロポアの開口径が、10〜100μmである、前記発明(8)の骨再生材料である。
【0014】
本発明(10)は、開口径が50〜100μmである壁面マイクロポアが、5個/10mm2以上存在する、前記発明(8)又は(9)の骨再生材料である。
【0015】
本発明(11)は、更に、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン−キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸およびこれらの変性体からなる群から選ばれる一又は二種類以上のスキャフォールドを含有する、前記発明(1)〜(10)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0016】
本発明(12)は、更に、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、トランスフォーミング成長因子‐β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)からなる群から選ばれる一又は二種類以上の増殖因子を含有する、前記発明(1)〜(11)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0017】
本発明(13)は、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを、有機多孔体内に含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後、含浸させたスラリーに含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程後、加熱して前記有機多孔体を取り除く脱脂工程と、
前記脱脂工程後、リン酸カルシウムを焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする、骨再生材料の製造方法である。
【0018】
本発明(14)は、前記焼結工程により得られたリン酸カルシウム多孔体内に生分解性補強材料の溶液を含浸させて、溶媒を除去する生分解性補強材料被覆工程を有する、前記発明(13)の骨再生材料の製造方法である。
【0019】
本発明(15)は、前記生分解性補強材料被覆工程において、前記骨再生材料を生分解性補強材料の溶液中に含浸させた系を減圧にする工程を含む、前記発明(14)の製造方法である。
【0020】
本明細書において使用する各種用語の意味を説明する。「セル」とは、多孔体内に形成される略球形状の孔部分を意味する。「マイクロポア」とは、多孔体内に存在する上記セル以外の孔を意味する。「骨格内マイクロポア」とは、多孔体を形成する骨格内に形成された空洞を意味する。当該骨格内マイクロポアは、本最良形態に係る製造方法により製造した場合、有機多孔体の骨格が存在していた部分が、当該有機多孔体の気化によって空洞化されてできた孔である。「壁面マイクロポア」とは、多孔体を形成する骨格表面に形成された孔であって、骨格内マイクロポアとセルをつなぐ孔を意味する。壁面マイクロポアは、例えば、本最良形態に係る製造方法により製造した場合、有機多孔体の骨格が気化して骨格外に放出される際に形成される孔である。
【発明の効果】
【0021】
本発明(1)によれば、リン酸カルシウム多孔体が、高い通気度を有するため、骨格内部に細胞が入り込み定着し骨形成するために必要な血管が十分に形成されるため、骨の再生が促される。
【0022】
本発明(2)によれば、空隙率が高いため、細胞が入り込む空間が大きくなるので、骨の再生が促される。
【0023】
本発明(3)によれば、生分解性補強材料により骨格が被覆されることによって、高い材料強度を有するため、取扱がしやすくなる。
【0024】
本発明(4)によれば、セルの大きさが組織の再構築に適したサイズとなる。
【0025】
本発明(5)によれば、リン酸カルシウムとしてβ‐リン酸三カルシウムを選択することにより、より骨再生しやすくなる。
【0026】
本発明(6)によれば、骨格内マイクロポアを有するリン酸カルシウム多孔体を用いることによって、当該マイクロポア中に生分解性補強材、スキャフォールド、増殖因子等を保持させることができる、又は、骨格内マイクロポア内で細胞が増殖等することが出来るので、より骨再生に適した基盤を提供することができる。
【0027】
本発明(7)によれば、骨格内マイクロポアの径が5〜200μmであることにより、適度な強度を保持したままで骨格内マイクロポアの内部を有する骨再生材料を得ることができる。
【0028】
本発明(8)によれば、骨格内マイクロポアとセルの内部とをつなぐ、壁面マイクロポアが形成されることとなり、骨格内マイクロポアへと細胞が侵入することができるようになるため、また、骨格内マイクロポアに保持させた増殖因子を壁面マイクロポアを通じて外部に徐放させることができるため、より効率的に骨再生が促される。
【0029】
本発明(9)によれば、壁面マイクロポアより、骨格内マイクロポア内に生分解性補強材料や、スキャフォールドを注入することができるので、骨格内マイクロポア内を有効に活用することができる。尚、骨格内マイクロポア内に生分解性補強材料を導入することで顕著に高い強度を有する骨再生材料とすることができるので、より取り扱い易くなる。
【0030】
本発明(10)によれば、50〜100μmの開口径を有する壁面マイクロポアであれば、骨格内マイクロポア内に細胞が侵入することが可能となるため、骨格内マイクロポアにおいても、骨再生が促進される。
【0031】
本発明(11)によれば、スキャフォールドを導入することにより、骨再生が促進される。
【0032】
本発明(12)によれば、増殖因子を含有することにより、骨再生が促進される。
【0033】
本発明(13)によれば、高い空隙率及び高い通気度を有し、更に、リン酸カルシウム多孔体に骨格内マイクロポア及び壁面マイクロポアを導入することができるため、骨再生がより促進される骨再生材料が得られる。
【0034】
本発明(14)によれば、リン酸カルシウム多孔体の骨格が生分解性補強材料により被覆されるため、高い強度を有する骨再生材料が得られる。
【0035】
本発明(15)によれば、リン酸カルシウム多孔体の骨格内に生分解性補強材料が導入され易くなると共に、骨格内マイクロポア内にも生分解性補強材料が導入されやすくなることから、より高い強度を有する骨再生材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、製造例において得られた各種リン酸カルシウム多孔体の写真である。
【図2】図2は、製造例において得られた各種リン酸カルシウム多孔体の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図3】図3は、製造例において得られた各種リン酸カルシウム多孔体の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図4】図4は、X線回折(XRD)により測定した結果を示す図である。
【図5】図5は、リン酸カルシウム多孔体のFE−SEM写真である。
【図6】図6は、リン酸カルシウム多孔体の断面の二次電子像である。
【図7】図7は、リン酸カルシウム多孔体の断面反射電子像である。
【図8】図8は、生分解性補強材料被覆後のリン酸カルシウム骨格表面の電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、細胞付着試験の結果を示すSEM写真である。
【図10】図10は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図11】図11は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図12】図12は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図13】図13は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図14】図14は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図15】図15は、2週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った場合、FGF2を添加しないで移植試験を行なったときと、FGF2を添加したときとでの結果の違い示す写真である。
【図16】図16は、SPSS(登録商標)11.0を用いた解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る骨再生材料は、骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する。また、本発明に係る骨再生材料は、リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする。このような構成を有することにより、本骨再生材料の骨化が進行し易くなる。その他、任意構成として、生分解性補強材料や、スキャフォールドや、増殖因子等が含まれていてもよい。以下、本発明に係る骨再生材料の各構成について詳細に説明する。
【0038】
《構造》
本発明に係る骨再生材料は、連通孔を有するリン酸カルシウム多孔体である。また当該多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする。このような、高い通気度を有する多孔体を使用することにより、多孔体を形成する孔と孔が高度に連通している状態となるため、血管が形成されやすくなるので骨形成のされやすい環境を提供することが可能となる。気体通過試験では、パームポロメーター(細孔径分布測定装置、例えば、西華産業、CFP−110−AEXL)を用いて、厚み4mmのサンプルについて、断面積50mm2あたりに空気が通過する際の通過空気流量(L/min)と、通過による圧力損失(kPa)を測定する(厚みが4mm、断面積が50mm2でない場合は、測定値を当該条件に相当する値に換算する。)。これは、サンプルに空気を注入した際に生ずる圧力欠損を示しており、その値が低いほうが、より低圧で空気がサンプルに浸透する事を意味し、即ち通気度が高いことを示す。パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であり、50kPa以下がより好適であり、20kPa以下が更に好適であり、10kPa以下が特に好適である。下限値は特に限定されないが例えば0.1kPaである。尚、測定は、生分解性補強材料が含まれていてもよいが、多孔体セル内にスキャフォールド等の充填物質がない条件で測定するものとする。
【0039】
また、本発明に係るリン酸カルシウム多孔体の空隙率は、80〜99%であることが好適であり、90〜97%であることがより好適であり、91〜95%であることが更に好適である。このような空隙率の範囲内で特に骨形成がされやすくなる。本発明に係るリン酸カルシウム多孔体のセルの大きさは、0.1〜2mmが好適であり、0.2〜1.2mmであることが好適であり、0.3〜1mmであることが更に好適であり、0.4〜0.7mmであることが特に好適である。尚、セルの大きさは、SEM(走査型電子顕微鏡)にて10個のセルの大きさ(直径)を測定した平均値である。
【0040】
本発明に係る骨再生材料は、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを、有機多孔体内に含浸させて溶媒を除去し、加熱して当該有機多孔体を取り除き、更に、リン酸カルシウムを焼結することにより得られるものが好適である。当該製造方法については、後で詳細に説明するが、このようにリン酸カルシウム多孔体を製造することにより、優れた骨再生機能を有するリン酸カルシウム多孔体を得ることができる。このような方法により、高い空隙率を有するリン酸カルシウム多孔体を得ることができる。また、高度に連通した孔を有するリン酸カルシウム多孔体を得ることができるため、本発明のような通気度の高い多孔体を得ることができる。
【0041】
リン酸カルシウム多孔体の骨格の内部は、空洞化した状態となっていることが好適であり、すなわち、骨格内マイクロポアが形成されていことが好適である。先述の製造方法により得られる多孔体は、骨格内部に存在する有機多孔体していた部分が空洞化するので、当該構造を有する骨格を容易に得ることができる。骨格内マイクロポアを有することにより、当該空間に、スキャフォールドや、増殖因子などの物質が保持されて、これらの物質が細胞に供給される。骨格内の空洞は、先述の製造方法によれば、有機発泡体を使用するため、略三角柱形状を有する。骨格内マイクロポアの径は、5〜200μmが好適であり、10〜150μmがより好適であり、20〜70μmであることが更に好適である。ここで、骨格内マイクロポアの径とは、骨格内に形成されるマイクロポアの断面の内接円の直径を意味する。骨格内マイクロポアの大きさが上記の範囲を有することにより、細胞が当該ポア内に侵入する。すると、リン酸カルシウム多孔体骨格の内部及び外部から、細胞がリン酸カルシウムを消費するため、自家骨への変換が促進される。
【0042】
このような骨格の表面に当該骨格内マイクロポアと連通している壁面マイクロポアが形成されていることが好適である。このように壁面マイクロポアが形成されていることによって、骨格内マイクロポアにスキャフォールドや細胞増殖因子が取り込まれ、骨格内にこれらの物質が保持されることとなる。また、このように壁面マイクロポアにより骨格内マイクロポアが外部と連通することによって、当該壁面マイクロポアの周囲で特に骨形成が促される。骨格表面に付着した細胞が骨格内マイクロポアから供給される栄養を取得できるためであると推測できる。当該壁面マイクロポアの開口径は、特に限定されないが、例えば、1〜100μmが好適である。また、開口径は、50〜100μmがより好適であり、50〜80μmが更に好適である。50μm以上の開口径を有することにより、細胞が骨格内マイクロポアの中に進入することができるようになるので、骨格内マイクロポアにおいても細胞が定着する。ここで開口径とは、壁面に開口した部分の内接円を意味し、SEM(走査型電子顕微鏡)によって測定する。また、開口径50〜100μmの壁面マイクロポア(顕微鏡視野における個数)が、5〜100個/10mm2(顕微鏡視野の10mm2面積当たりの個数)形成されていることが好適であり、10〜80個/10mm2形成されていることがより好適であり、15〜60個/10mm2形成されていることが更に好適である。このような範囲の個数の壁面マイクロポアが形成されていることにより、細胞が骨格内マイクロポアに侵入しやすくなる。
【0043】
《組成》
リン酸カルシウム多孔体
本発明に係るリン酸カルシウム多孔体は、骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成される。ここで、主成分とは、多孔体の50wt%以上の成分を意味する。リン酸カルシウムとしては、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)が挙げられる。このようにリン酸カルシウムの材料を用いることにより、骨形成の過程で骨へと変換されるため、生体吸収性を有する骨再生材料として用いることができる。これらのリン酸カルシウムの中でも、β‐リン酸三カルシウムが、特に骨へと変換され易いので好適に用いられる。
【0044】
生分解性補強材料
本発明に係る骨再生材料は、その骨格表面が生分解性補強材料(生分解性ポリマー、生分解性有機材料)により被覆されていることが好適である。従来β‐TCP等のリン酸カルシウム単体で多孔体骨格を形成した場合には、多孔体の機械的強度に欠け、骨形成において好ましくない環境であった。生分解性補強材の被覆によって多孔体骨格の機械的強度を増すことができるため、当該問題を解決できると共に、従来のリン酸カルシウム多孔体では実現できないような高い空隙率の材料であっても、骨再生材料として耐えうるような十分な強度を有する材料を得ることができる。またこのように強度を高めることができるため、空隙率を高くすることができる。更に、材料が生分解性であることにより、生体内に埋め込んだ後、当該補強材料が長く体内に留置されること無く消滅するという利点を有する。また、本発明に係る多孔体の骨格内に空洞を有する場合、当該空洞内に生分解性補強材料が充填されていると、更に、骨格の機械的強度が増す。
【0045】
本発明に係る生分解性補強材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリεカプロラクトン等の合成生分解性ポリマーや、ゼラチン、澱粉等の天然の成分解性ポリマーが挙げられる。リン酸カルシウム多孔体単体は強度が低いので取り扱い難いが、これらの生分解性補強材料により、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面を被覆することにより、補強して多孔体が崩れるのを防止する。尚、生分解性補強材料は、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に被覆され、溶媒を除去して乾燥した状態にあるのが好ましい。生分解性補強材料は、リン酸カルシウム多孔体の圧縮強度を増すためのものある。また、ここでゼラチンとは、変性したコラーゲンを含む材料を意味する。本発明において使用するゼラチンは、医療用のゼラチンであっても、食用のゼラチンであってもよいが、医療用ゼラチンを用いることが好適である。ここで、多孔体に対する生分解性補強材料の添着量は、乾燥状態において、リン酸カルシウム100重量部に対して0.1〜100重量部が好適であり、0.2〜20重量部がより好適であり、1〜10重量部が更に好適である。
【0046】
その他任意構成
本発明に係る骨再生材料は、スキャフォールドが注入されていることが好適である。スキャフォールドとしては、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン−キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸およびこれらの変性体が挙げられる。これらのスキャフォールドを単体で用いてもよいし、二種類以上の混合物を用いてもよい。これらのスキャフォールドの中でも、コラーゲンが好適である。コラーゲンが含まれることによって、骨形成細胞が侵入増殖しやすくなり、骨形成されやすくなる。スキャフォールドは、水分を多く含有することが好適であり、例えば、ゲル状であることが好適である。ゲル状のスキャフォールドを用いることにより、液体よりも流動性が少なく、更に、早期に吸収される吸収性が高まるため好適である。スキャフォールドの含有量は、300〜1000g/m2が好適であり、400〜800g/m2がより好適であり、500〜700g/m2が更に好適である。
【0047】
本発明に係る骨再生材料は、増殖因子が含浸されていることが好適である。増殖因子が含まれることによっても、骨形成が促進される。ここで、増殖因子としては、骨形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子‐β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)等を使用できる。これらの中でも特に、線維芽細胞増殖因子(FGF)を用いるのが好適であり、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)を用いるのがより好適である。増殖因子の含有量(1m3あたりの重量(g))は、特に限定されないが、例えば、10〜300g/m3が好適であり、20〜200g/m3がより好適であり、50〜100g/m3が更に好適である。
【0048】
《性質》
本発明に係る骨再生材料の圧縮強度は、0.10〜2MPaが好適であり、0.15〜1MPaがより好適であり、0.2〜0.5MPaが更に好適である。このような強度を有することにより、生体内に移植しても、骨格が潰れずに十分な大きさのセルを保持するため好適である。
【0049】
《製造方法》
本発明に係る製造方法は、含浸工程と、溶媒除去工程と、脱脂工程と、焼結工程と、生分解性補強材料被覆工程と有する。これらの工程は、当該記載順に行なわれる。このように、有機多孔体を用いた含浸法によりリン酸カルシウム多孔体を製造することにより、高い通気度や空隙率を有する多孔体を得ることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0050】
含浸工程
含浸工程では、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを有機多孔体内に含浸させる。以下、スラリー及び有機多孔体の詳細について説明する。
【0051】
本工程において使用するスラリーは、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを用いる。ここでスラリーとしては、発泡していない非発泡のスラリーを用いることが好適である。ここで「非発泡」とは、スラリー発泡法においてスラリーを発泡させるように意図的に発泡させたスラリーでないものを意味する。すなわち、気泡が全く無いことを意味しているわけではなく、一部に気泡が発生している場合も、当該「非発泡」の概念に含まれるものとする。非発泡のスラリーを用いることにより、有機多孔体の骨格表面にリン酸カルシウムをより均一、且つ、密に定着させることができる。ここで本工程において使用する有機多孔体としては、特に限定されないが、例えば、発泡ポリウレタン等のポリマー発泡体を使用することができる。
【0052】
溶媒除去工程
溶媒除去工程では、前記含浸工程後、含浸させたスラリーに含まれる溶媒を除去する。ここで溶媒除去は、例えば、減圧下に配することや、加熱によって行なわれる。乾燥後のスラリー固形分の有機多孔体に対する添着量は、有機多孔体100質量部に対して、1000〜3000質量部程度が好適である。
【0053】
脱脂工程
脱脂工程では、前記溶媒除去工程後、材料が被覆された前記有機多孔体を加熱して、有機多孔体を除去する。脱脂工程に際に、有機多孔体は燃焼され二酸化炭素や水等といった気体となって外部に放出される。本工程により、有機多孔体が除去されるためリン酸カルシウム多孔体の骨格内に空洞が形成される。放出の際に、有機多孔体表面に形成されたリン酸カルシウムの皮膜の一部を破壊して、内部の有機多孔体に由来する気体が放出される。すなわち、有機多孔体が気化して除去されるために、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に当該気体が放出されるための孔が形成される。当該孔が先述のマイクロポアになると考えられる。また、当該孔は、リン酸カルシウム多孔体の骨格の内部に形成される空洞と連通しており、当該孔が形成されることにより、骨形成が好適に行なわれる。脱脂工程は、特に限定されないが、例えば、400〜1000℃で行なうことが好適である。
【0054】
焼結工程
焼結工程では、前記脱脂工程後、リン酸カルシウムを焼結する。これにより、リン酸カルシウム多孔体骨格の強度が増す。尚、焼結工程は、前記脱脂工程と連続的に行なわれてもよい。焼結工程は、特に限定されないが、例えば、1000〜2000℃で行なうことが好適である。
【0055】
生分解性補強材料被覆工程
生分解性補強材料被覆工程では、前記焼結工程後、生分解性補強材料の溶液を含浸させて、溶媒を除去する。これにより、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面を生分解性補強材料により補強して、骨再生材料の強度を高める。
【0056】
ここで当該工程において、前記骨再生材料を生分解性補強材料の溶液中に含浸させた系を減圧にする工程を含むことが好適である。このような工程を経ることにより、リン酸カルシウム多孔体の内部に含まれる気泡が放出されて、多孔体内の奥にまで生分解性補強材料が行き渡るため、当該材料による被覆が十分に行なわれ高い機械的強度を有する骨再生材料を得ることができる。また、骨格内に形成されている空洞内にも生分解性補強材料が浸透し易くなるので、これにより更に高い機械的強度を有する骨再生材料を得ることができる。
【実施例】
【0057】
(製造例)
水100重量部、β‐TCP38.36重量部のスラリーを各ポリウレタンフォーム{MF−8(製造例1)、MF−13(製造例2)、MF−20(製造例3)、MF−30(製造例4)(尚、各ウレタンの数値は1インチ立方あたりの気泡の数を示す。)、サイズ6×6×5mm}へ含浸させた。続いて50℃にて乾燥した後、25〜600℃、50℃/hの昇温スピードで加熱した後、600〜1500℃、200℃/hの昇温スピードで加熱して、1500℃で一時間保持することにより酸素雰囲気下で脱脂及び焼結工程を行なった。その後、自然冷却によって、常温に戻した。これにより、製造例1〜4に係るリン酸カルシウム多孔体を得ることができた(以下、各製造例に係るリン酸カルシウム多孔体を単に用いたウレタンの型により表す場合がある。具体的には、製造例1:「MF−8」、製造例2:「MF−13」、製造例3:「MF−20」、製造例4:「MF−30」)。
【0058】
上記製造例1〜4のリン酸カルシウム多孔体のそれぞれのセルサイズと空隙率を表1に示す。セルサイズ(セルの大きさ)は、SEM(走査型電子顕微鏡)にて10個のセルの大きさ(直径)を測定した平均値である。
【表1】
【0059】
得られた各種リン酸カルシウム多孔体の構造および組成を走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)により確認した。得られた各種リン酸カルシウム多孔体の写真を図1に示し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2、図3に示す。このように図2の電子顕微鏡写真によれば、骨格表面にマイクロポアが形成されている様子が見て取れる。10mm2あたりのSEM写真の視野における開口径が50〜100μmの壁面マイクロポアの数を数えた。結果を表2に示した。
【0060】
【表2】
【0061】
図3は、MF20の骨格表面を拡大した電子顕微鏡写真であり、この写真によれば骨格表面には、スラリーに含まれるリン酸カルシウム粒子が融着した集合体が形成されている様子が観察できる。また得られたリン酸カルシウム多孔体の骨格はβ−TCPであることを、X線回折(XRD)により確認した(図4)。
【0062】
製造例3のリン酸カルシウム多孔体を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、JSM−7600F,JEOL)に低加速電圧(1.0kV)で、金属などの被覆をしないで骨格の断面を観察した。図5は、当該リン酸カルシウム多孔体のFE−SEM写真である。これによれば、骨格の内部に空洞が形成されていることが観察できる。更に、当該リン酸カルシウムに対して、エポキシ樹脂を含浸させて固めた後に、当該試料をミクロトロームで切断出しをして当該切断をFE−SEMにて観察した。図6は、当該断面の二次電子像である。二次電子像により表面の状態がわかり、当該写真で骨格内に空洞が形成されている様子が見て取れる。図7は、試料断面反射電子像である。反射電子では元素が重いほど濃く電子を出すので異なる組成であることがわかる。また、当該写真においても骨格内部に空隙が形成されていることは明らかである。電子顕微鏡写真から骨格内マイクロポアを任意に5個選択して内接円の平均直径を求めた。結果を以下の表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
(製造例5〜8)
次に、上記製造例1で得られたリン酸カルシウム多孔体を生分解性補強材料(ゼラチン)の水溶液中に浸して、系を減圧にして多孔体内に水溶液を十分に取り込ませた。その後、リン酸カルシウム多孔体を取り出し、溶媒を乾燥させて、生分解性補強材料が骨格表面に被覆されている製造例5に係るリン酸カルシウム多孔体を得た。製造例2(MF−13)、製造例3(MF−20)、製造例4(MF−30)についても、同様にして製造例6(MF−13)、製造例7(MF−20)、製造例8(MF−30)に係るリン酸カルシウム多孔体を得た。尚上記のカッコ内は使用した元のウレタンの種類を示す。
【0065】
これらの中で製造例1〜8に係る骨再生材料の圧縮強度を測定し、被覆前後の強度を比較した。ここで圧縮強度(変位25%までの最大点)の測定方法は、島津オートグラフAG−Xを用いて行った。試験結果を以下の表4に示した。当該結果によれば、被覆前後で、リン酸カルシウム多孔体の強度は2倍程度に向上している。また生分解性補強材料の被覆前の骨再生材料は、空隙率と圧縮強度との相関関係がほとんど観察されないが、生分解性補強材料を被覆すると空隙率と圧縮強度との相関関係が観察されるようになる。通常、空隙率が高くなればなるほど、多孔体の骨格部分の比率が小さくなるので、圧縮強度も低くなると考えられるが、生分解性補強材料を被覆しない場合、骨格を太くした場合、すなわち空隙率を低くした場合であっても、強度が上がらないが、生分解性補強材料を被覆することにより、空隙率を低くすることによって、高い圧縮強度を有する骨再生材料を得ることができる。尚、空隙率は、以下の式(1)により求めた。
【0066】
【数1】
【0067】
【表4】
【0068】
また、被覆後の骨格表面の電子顕微鏡写真を図8に示した(図8(a)〜(c))。これによれば、骨格表面にゼラチンが被覆されている様子が確認できる。また、実施例7(MF20Z)の骨格の断面写真(図8(c))によれば、骨格内部の空洞にまでゼラチンが侵入している様子が確認できる。
【0069】
(気体通過試験:圧力損失測定)
パームポロメーター(西華産業、CFP−110−AEXL)を用いて、製造例5〜8の試料(厚さ4mm、直径8mmの円柱形状(断面積50mm2))における50mm2面積当たりの空気の流量に対する圧力損失測定した。当該測定において、低い流量から高い流量へと流量を変化させて、各流量における圧力損失を測定した。この際の50L/minの流量における圧力損失(kPa)の測定結果を表5に示した。
【0070】
【表5】
【0071】
(細胞付着性試験)
製造例3に係るリン酸カルシウム多孔体を用いて細胞付着試験を行なった。細胞にはMC3T3E−1cell(骨芽細胞)を用いた。細胞数を1×105cellに調整し、リン酸カルシウム多孔体に滴下播種して10%FBS、1%抗生物質添加の培地にて1昼夜培養を行った。その後SEMにて表面性状を観察した。リン酸カルシウム骨格表面のSEM写真を図9に示した。MC3T3E−1細胞が、リン酸カルシウム表面に付着して細胞突起を進展していた。これにより、リン酸カルシウム骨格表面に付着できることが明らかになり、更に、本発明に係るリン酸カルシウムは毒性を有しないことが確認できた。
【0072】
(移植試験)
製造例4〜8に係るMF8,13,20,30の4種類のリン酸カルシウム多孔体に対してFGF2含有コラーゲンゲル溶液を注入し、FGF2含有リン酸カルシウム多孔体を作製した。リン酸カルシウム多孔体ひとつあたりのFGF2含有量は15μgに設定した。
【0073】
実験動物は、体重300〜330gのWistar系雄性ラット(10週齢)72匹を用いた。ペントバルビタールナトリウム0.6ml/kgを用いた全身麻酔、及びエピネフリン(1/80000)含有2%塩酸リドカインによる局所麻酔を施した後、頭蓋皮膚切開を行い頭蓋骨中央を露出、骨膜を剥離した。No.5ラウンドバーを用いて生理食塩水の注水下で矢状縫合部より前方に縦4mm、横4mmの皮質骨除去を行った。生理食塩水で十分に洗浄した後、FGF2含有リン酸カルシウム多孔体を移植し、皮膚弁を縫合して閉鎖創とし、縫合部にテトラサイクリン塩酸塩軟膏を塗布した。
【0074】
5週の観察期間終了後にジエチルエーテル吸引にて安楽死させ、頭蓋骨と周囲組織を一塊として採取し、10%中性リン酸緩衝ホルマリン溶液にて固定、10%EDTAにて脱灰後、通法に従いパラフィン包埋を行った。その後、前頭面断で厚さ5μmの連続切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行い、光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った。結果を図10〜図15に示す。
【0075】
5週の観察期間ともに、骨形成がリン酸カルシウム多孔体の周囲や内側に頻繁に認められた(図10)。残存するリン酸カルシウム多孔体の骨格(ロッド)は新生骨や血管、細胞の豊富な結合組織に被覆されており、すなわちリン酸多孔体の内部に組織が容易に侵入できることが明らかになった(図11、12)。異物巨細胞(マクロファージ様細胞)(矢印)が、β‐TCP骨格の表面で観察された(図12A)。残っているβ‐TCP骨格は新生骨及び/又は巨大細胞を含む細胞に富んだ結合組織に囲まれている(図12B)。骨格は異物巨細胞によって吸収されている像が認められた(図13)。また、β―TCP骨格に血管(矢印)形成されていることが確認された(図14A)。また骨様組織がβ‐TCP発泡体の骨格の内部で形成されていることが確認できた(図14B)。なおFGF2を添加しない場合にも骨再生は認められたがその量は少なかった(図15)。好中球やリンパ球などの炎症性細胞の浸潤はほとんど見られなかった。周囲の結合組織には活発な血管形成が認められる。
【0076】
上記光学顕微鏡像を画像解析ソフトウェアを用いて新生骨面積、残存リン酸カルシウム多孔体面積を求めた。各測定値の統計学的な分析は。SPSS(登録商標)11.0を用いて行い、有意水準を5%とした。結果を図16に示す。骨面積とは観測した断面の骨の面積を意味する。また、高さとは、母床骨から垂直に骨の遠端までの距離を意味する。
【0077】
MF8,13,20,30(製造例4〜8)の4種類のリン酸カルシウム多孔体を移植した場合の骨再生面積はそれぞれ1.54、2.75、3.78、1.23 mm2であった。MF20を移植した場合の骨再生面積はMF8、MF30よりも統計学的に有意に大きい値であった。またリン酸カルシウム多孔体の残存面積はMF20が最も少なく、骨形成を阻害することなく速やかに吸収していることが示唆された。
【0078】
MF20を用いるとFGF2の効果による骨増生が最も強く促進された。リン酸カルシウム多孔体は骨再生材料として適している可能性が示唆された。なかでもMF20は最適である可能性が明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る骨再生材料は、例えば、骨充填材として使用される。特に、βリン酸三カルシウムを用いた場合、骨の欠陥部に本願発明に係る骨再生材料を充填することにより、当該材料が自家骨へと置換される生体吸収性骨再生材料として使用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の再生に使用される骨再生材料(骨補填剤)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、βリン酸三カルシウム(β‐TCP)等のリン酸カルシウムは、骨腫瘍を摘出した部位や、骨折により骨が欠損した部位に補填され、骨補填材として使用されることが知られている。当該骨補填材は、生体に移植補填後に吸収されて自家骨に置換される性質を有する。したがって、従来の人工骨のように生体内部に残留しないという利点を有する(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−49355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のβ−TCPを用いた骨再生材料は多孔体構造を有しているが、スラリー発泡法により製造されており、当該セル(気泡)は一応連通しているものの、これらのセルの連通の程度が十分でなく、骨芽細胞が定着し骨形成するために必要な血管が十分に形成されないという問題があった。そこで、本発明は、リン酸カルシウム多孔体構造を有する骨再生材料において、セルとセルが十分に連通した骨再生材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(1)は、骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する骨再生材料において、
前記リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、
前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする、骨再生材料である。
【0006】
本発明(2)は、前記リン酸カルシウム多孔体の空隙率が、80〜99%である、前記発明(1)記載の骨再生材料である。
【0007】
本発明(3)は、前記リン酸カルシウム多孔体が、生分解性補強材料により被覆されている、前記発明(1)又は(2)の骨再生材料である。
【0008】
本発明(4)は、前記リン酸カルシウム多孔体のセルの大きさが、0.1〜2mmである、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0009】
本発明(5)は、前記リン酸カルシウムが、β‐リン酸三カルシウムである、前記発明(1)〜(4)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0010】
本発明(6)は、前記リン酸カルシウム多孔体が、骨格内マイクロポアを有する、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0011】
本発明(7)は、前記骨格内マイクロポアの径が、5〜200μmである、前記発明(6)の骨再生材料である。
【0012】
本発明(8)は、前記リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に、壁面マイクロポアが形成されており、前記骨格内マイクロポアが外部に対して連通している、前記発明(1)〜(7)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0013】
本発明(9)は、前記壁面マイクロポアの開口径が、10〜100μmである、前記発明(8)の骨再生材料である。
【0014】
本発明(10)は、開口径が50〜100μmである壁面マイクロポアが、5個/10mm2以上存在する、前記発明(8)又は(9)の骨再生材料である。
【0015】
本発明(11)は、更に、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン−キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸およびこれらの変性体からなる群から選ばれる一又は二種類以上のスキャフォールドを含有する、前記発明(1)〜(10)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0016】
本発明(12)は、更に、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、トランスフォーミング成長因子‐β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)からなる群から選ばれる一又は二種類以上の増殖因子を含有する、前記発明(1)〜(11)のいずれか一つの骨再生材料である。
【0017】
本発明(13)は、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを、有機多孔体内に含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後、含浸させたスラリーに含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程後、加熱して前記有機多孔体を取り除く脱脂工程と、
前記脱脂工程後、リン酸カルシウムを焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする、骨再生材料の製造方法である。
【0018】
本発明(14)は、前記焼結工程により得られたリン酸カルシウム多孔体内に生分解性補強材料の溶液を含浸させて、溶媒を除去する生分解性補強材料被覆工程を有する、前記発明(13)の骨再生材料の製造方法である。
【0019】
本発明(15)は、前記生分解性補強材料被覆工程において、前記骨再生材料を生分解性補強材料の溶液中に含浸させた系を減圧にする工程を含む、前記発明(14)の製造方法である。
【0020】
本明細書において使用する各種用語の意味を説明する。「セル」とは、多孔体内に形成される略球形状の孔部分を意味する。「マイクロポア」とは、多孔体内に存在する上記セル以外の孔を意味する。「骨格内マイクロポア」とは、多孔体を形成する骨格内に形成された空洞を意味する。当該骨格内マイクロポアは、本最良形態に係る製造方法により製造した場合、有機多孔体の骨格が存在していた部分が、当該有機多孔体の気化によって空洞化されてできた孔である。「壁面マイクロポア」とは、多孔体を形成する骨格表面に形成された孔であって、骨格内マイクロポアとセルをつなぐ孔を意味する。壁面マイクロポアは、例えば、本最良形態に係る製造方法により製造した場合、有機多孔体の骨格が気化して骨格外に放出される際に形成される孔である。
【発明の効果】
【0021】
本発明(1)によれば、リン酸カルシウム多孔体が、高い通気度を有するため、骨格内部に細胞が入り込み定着し骨形成するために必要な血管が十分に形成されるため、骨の再生が促される。
【0022】
本発明(2)によれば、空隙率が高いため、細胞が入り込む空間が大きくなるので、骨の再生が促される。
【0023】
本発明(3)によれば、生分解性補強材料により骨格が被覆されることによって、高い材料強度を有するため、取扱がしやすくなる。
【0024】
本発明(4)によれば、セルの大きさが組織の再構築に適したサイズとなる。
【0025】
本発明(5)によれば、リン酸カルシウムとしてβ‐リン酸三カルシウムを選択することにより、より骨再生しやすくなる。
【0026】
本発明(6)によれば、骨格内マイクロポアを有するリン酸カルシウム多孔体を用いることによって、当該マイクロポア中に生分解性補強材、スキャフォールド、増殖因子等を保持させることができる、又は、骨格内マイクロポア内で細胞が増殖等することが出来るので、より骨再生に適した基盤を提供することができる。
【0027】
本発明(7)によれば、骨格内マイクロポアの径が5〜200μmであることにより、適度な強度を保持したままで骨格内マイクロポアの内部を有する骨再生材料を得ることができる。
【0028】
本発明(8)によれば、骨格内マイクロポアとセルの内部とをつなぐ、壁面マイクロポアが形成されることとなり、骨格内マイクロポアへと細胞が侵入することができるようになるため、また、骨格内マイクロポアに保持させた増殖因子を壁面マイクロポアを通じて外部に徐放させることができるため、より効率的に骨再生が促される。
【0029】
本発明(9)によれば、壁面マイクロポアより、骨格内マイクロポア内に生分解性補強材料や、スキャフォールドを注入することができるので、骨格内マイクロポア内を有効に活用することができる。尚、骨格内マイクロポア内に生分解性補強材料を導入することで顕著に高い強度を有する骨再生材料とすることができるので、より取り扱い易くなる。
【0030】
本発明(10)によれば、50〜100μmの開口径を有する壁面マイクロポアであれば、骨格内マイクロポア内に細胞が侵入することが可能となるため、骨格内マイクロポアにおいても、骨再生が促進される。
【0031】
本発明(11)によれば、スキャフォールドを導入することにより、骨再生が促進される。
【0032】
本発明(12)によれば、増殖因子を含有することにより、骨再生が促進される。
【0033】
本発明(13)によれば、高い空隙率及び高い通気度を有し、更に、リン酸カルシウム多孔体に骨格内マイクロポア及び壁面マイクロポアを導入することができるため、骨再生がより促進される骨再生材料が得られる。
【0034】
本発明(14)によれば、リン酸カルシウム多孔体の骨格が生分解性補強材料により被覆されるため、高い強度を有する骨再生材料が得られる。
【0035】
本発明(15)によれば、リン酸カルシウム多孔体の骨格内に生分解性補強材料が導入され易くなると共に、骨格内マイクロポア内にも生分解性補強材料が導入されやすくなることから、より高い強度を有する骨再生材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、製造例において得られた各種リン酸カルシウム多孔体の写真である。
【図2】図2は、製造例において得られた各種リン酸カルシウム多孔体の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図3】図3は、製造例において得られた各種リン酸カルシウム多孔体の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【図4】図4は、X線回折(XRD)により測定した結果を示す図である。
【図5】図5は、リン酸カルシウム多孔体のFE−SEM写真である。
【図6】図6は、リン酸カルシウム多孔体の断面の二次電子像である。
【図7】図7は、リン酸カルシウム多孔体の断面反射電子像である。
【図8】図8は、生分解性補強材料被覆後のリン酸カルシウム骨格表面の電子顕微鏡写真である。
【図9】図9は、細胞付着試験の結果を示すSEM写真である。
【図10】図10は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図11】図11は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図12】図12は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図13】図13は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図14】図14は、移植試験において、5週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った結果を示す写真である。
【図15】図15は、2週の観察期間終了後に光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った場合、FGF2を添加しないで移植試験を行なったときと、FGF2を添加したときとでの結果の違い示す写真である。
【図16】図16は、SPSS(登録商標)11.0を用いた解析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る骨再生材料は、骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する。また、本発明に係る骨再生材料は、リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする。このような構成を有することにより、本骨再生材料の骨化が進行し易くなる。その他、任意構成として、生分解性補強材料や、スキャフォールドや、増殖因子等が含まれていてもよい。以下、本発明に係る骨再生材料の各構成について詳細に説明する。
【0038】
《構造》
本発明に係る骨再生材料は、連通孔を有するリン酸カルシウム多孔体である。また当該多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする。このような、高い通気度を有する多孔体を使用することにより、多孔体を形成する孔と孔が高度に連通している状態となるため、血管が形成されやすくなるので骨形成のされやすい環境を提供することが可能となる。気体通過試験では、パームポロメーター(細孔径分布測定装置、例えば、西華産業、CFP−110−AEXL)を用いて、厚み4mmのサンプルについて、断面積50mm2あたりに空気が通過する際の通過空気流量(L/min)と、通過による圧力損失(kPa)を測定する(厚みが4mm、断面積が50mm2でない場合は、測定値を当該条件に相当する値に換算する。)。これは、サンプルに空気を注入した際に生ずる圧力欠損を示しており、その値が低いほうが、より低圧で空気がサンプルに浸透する事を意味し、即ち通気度が高いことを示す。パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であり、50kPa以下がより好適であり、20kPa以下が更に好適であり、10kPa以下が特に好適である。下限値は特に限定されないが例えば0.1kPaである。尚、測定は、生分解性補強材料が含まれていてもよいが、多孔体セル内にスキャフォールド等の充填物質がない条件で測定するものとする。
【0039】
また、本発明に係るリン酸カルシウム多孔体の空隙率は、80〜99%であることが好適であり、90〜97%であることがより好適であり、91〜95%であることが更に好適である。このような空隙率の範囲内で特に骨形成がされやすくなる。本発明に係るリン酸カルシウム多孔体のセルの大きさは、0.1〜2mmが好適であり、0.2〜1.2mmであることが好適であり、0.3〜1mmであることが更に好適であり、0.4〜0.7mmであることが特に好適である。尚、セルの大きさは、SEM(走査型電子顕微鏡)にて10個のセルの大きさ(直径)を測定した平均値である。
【0040】
本発明に係る骨再生材料は、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを、有機多孔体内に含浸させて溶媒を除去し、加熱して当該有機多孔体を取り除き、更に、リン酸カルシウムを焼結することにより得られるものが好適である。当該製造方法については、後で詳細に説明するが、このようにリン酸カルシウム多孔体を製造することにより、優れた骨再生機能を有するリン酸カルシウム多孔体を得ることができる。このような方法により、高い空隙率を有するリン酸カルシウム多孔体を得ることができる。また、高度に連通した孔を有するリン酸カルシウム多孔体を得ることができるため、本発明のような通気度の高い多孔体を得ることができる。
【0041】
リン酸カルシウム多孔体の骨格の内部は、空洞化した状態となっていることが好適であり、すなわち、骨格内マイクロポアが形成されていことが好適である。先述の製造方法により得られる多孔体は、骨格内部に存在する有機多孔体していた部分が空洞化するので、当該構造を有する骨格を容易に得ることができる。骨格内マイクロポアを有することにより、当該空間に、スキャフォールドや、増殖因子などの物質が保持されて、これらの物質が細胞に供給される。骨格内の空洞は、先述の製造方法によれば、有機発泡体を使用するため、略三角柱形状を有する。骨格内マイクロポアの径は、5〜200μmが好適であり、10〜150μmがより好適であり、20〜70μmであることが更に好適である。ここで、骨格内マイクロポアの径とは、骨格内に形成されるマイクロポアの断面の内接円の直径を意味する。骨格内マイクロポアの大きさが上記の範囲を有することにより、細胞が当該ポア内に侵入する。すると、リン酸カルシウム多孔体骨格の内部及び外部から、細胞がリン酸カルシウムを消費するため、自家骨への変換が促進される。
【0042】
このような骨格の表面に当該骨格内マイクロポアと連通している壁面マイクロポアが形成されていることが好適である。このように壁面マイクロポアが形成されていることによって、骨格内マイクロポアにスキャフォールドや細胞増殖因子が取り込まれ、骨格内にこれらの物質が保持されることとなる。また、このように壁面マイクロポアにより骨格内マイクロポアが外部と連通することによって、当該壁面マイクロポアの周囲で特に骨形成が促される。骨格表面に付着した細胞が骨格内マイクロポアから供給される栄養を取得できるためであると推測できる。当該壁面マイクロポアの開口径は、特に限定されないが、例えば、1〜100μmが好適である。また、開口径は、50〜100μmがより好適であり、50〜80μmが更に好適である。50μm以上の開口径を有することにより、細胞が骨格内マイクロポアの中に進入することができるようになるので、骨格内マイクロポアにおいても細胞が定着する。ここで開口径とは、壁面に開口した部分の内接円を意味し、SEM(走査型電子顕微鏡)によって測定する。また、開口径50〜100μmの壁面マイクロポア(顕微鏡視野における個数)が、5〜100個/10mm2(顕微鏡視野の10mm2面積当たりの個数)形成されていることが好適であり、10〜80個/10mm2形成されていることがより好適であり、15〜60個/10mm2形成されていることが更に好適である。このような範囲の個数の壁面マイクロポアが形成されていることにより、細胞が骨格内マイクロポアに侵入しやすくなる。
【0043】
《組成》
リン酸カルシウム多孔体
本発明に係るリン酸カルシウム多孔体は、骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成される。ここで、主成分とは、多孔体の50wt%以上の成分を意味する。リン酸カルシウムとしては、ハイドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、β‐リン酸三カルシウム(β‐TCP)が挙げられる。このようにリン酸カルシウムの材料を用いることにより、骨形成の過程で骨へと変換されるため、生体吸収性を有する骨再生材料として用いることができる。これらのリン酸カルシウムの中でも、β‐リン酸三カルシウムが、特に骨へと変換され易いので好適に用いられる。
【0044】
生分解性補強材料
本発明に係る骨再生材料は、その骨格表面が生分解性補強材料(生分解性ポリマー、生分解性有機材料)により被覆されていることが好適である。従来β‐TCP等のリン酸カルシウム単体で多孔体骨格を形成した場合には、多孔体の機械的強度に欠け、骨形成において好ましくない環境であった。生分解性補強材の被覆によって多孔体骨格の機械的強度を増すことができるため、当該問題を解決できると共に、従来のリン酸カルシウム多孔体では実現できないような高い空隙率の材料であっても、骨再生材料として耐えうるような十分な強度を有する材料を得ることができる。またこのように強度を高めることができるため、空隙率を高くすることができる。更に、材料が生分解性であることにより、生体内に埋め込んだ後、当該補強材料が長く体内に留置されること無く消滅するという利点を有する。また、本発明に係る多孔体の骨格内に空洞を有する場合、当該空洞内に生分解性補強材料が充填されていると、更に、骨格の機械的強度が増す。
【0045】
本発明に係る生分解性補強材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリεカプロラクトン等の合成生分解性ポリマーや、ゼラチン、澱粉等の天然の成分解性ポリマーが挙げられる。リン酸カルシウム多孔体単体は強度が低いので取り扱い難いが、これらの生分解性補強材料により、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面を被覆することにより、補強して多孔体が崩れるのを防止する。尚、生分解性補強材料は、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に被覆され、溶媒を除去して乾燥した状態にあるのが好ましい。生分解性補強材料は、リン酸カルシウム多孔体の圧縮強度を増すためのものある。また、ここでゼラチンとは、変性したコラーゲンを含む材料を意味する。本発明において使用するゼラチンは、医療用のゼラチンであっても、食用のゼラチンであってもよいが、医療用ゼラチンを用いることが好適である。ここで、多孔体に対する生分解性補強材料の添着量は、乾燥状態において、リン酸カルシウム100重量部に対して0.1〜100重量部が好適であり、0.2〜20重量部がより好適であり、1〜10重量部が更に好適である。
【0046】
その他任意構成
本発明に係る骨再生材料は、スキャフォールドが注入されていることが好適である。スキャフォールドとしては、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン−キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸およびこれらの変性体が挙げられる。これらのスキャフォールドを単体で用いてもよいし、二種類以上の混合物を用いてもよい。これらのスキャフォールドの中でも、コラーゲンが好適である。コラーゲンが含まれることによって、骨形成細胞が侵入増殖しやすくなり、骨形成されやすくなる。スキャフォールドは、水分を多く含有することが好適であり、例えば、ゲル状であることが好適である。ゲル状のスキャフォールドを用いることにより、液体よりも流動性が少なく、更に、早期に吸収される吸収性が高まるため好適である。スキャフォールドの含有量は、300〜1000g/m2が好適であり、400〜800g/m2がより好適であり、500〜700g/m2が更に好適である。
【0047】
本発明に係る骨再生材料は、増殖因子が含浸されていることが好適である。増殖因子が含まれることによっても、骨形成が促進される。ここで、増殖因子としては、骨形成タンパク質(BMP)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング成長因子‐β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)等を使用できる。これらの中でも特に、線維芽細胞増殖因子(FGF)を用いるのが好適であり、塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF2)を用いるのがより好適である。増殖因子の含有量(1m3あたりの重量(g))は、特に限定されないが、例えば、10〜300g/m3が好適であり、20〜200g/m3がより好適であり、50〜100g/m3が更に好適である。
【0048】
《性質》
本発明に係る骨再生材料の圧縮強度は、0.10〜2MPaが好適であり、0.15〜1MPaがより好適であり、0.2〜0.5MPaが更に好適である。このような強度を有することにより、生体内に移植しても、骨格が潰れずに十分な大きさのセルを保持するため好適である。
【0049】
《製造方法》
本発明に係る製造方法は、含浸工程と、溶媒除去工程と、脱脂工程と、焼結工程と、生分解性補強材料被覆工程と有する。これらの工程は、当該記載順に行なわれる。このように、有機多孔体を用いた含浸法によりリン酸カルシウム多孔体を製造することにより、高い通気度や空隙率を有する多孔体を得ることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0050】
含浸工程
含浸工程では、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを有機多孔体内に含浸させる。以下、スラリー及び有機多孔体の詳細について説明する。
【0051】
本工程において使用するスラリーは、リン酸カルシウムを分散させたスラリーを用いる。ここでスラリーとしては、発泡していない非発泡のスラリーを用いることが好適である。ここで「非発泡」とは、スラリー発泡法においてスラリーを発泡させるように意図的に発泡させたスラリーでないものを意味する。すなわち、気泡が全く無いことを意味しているわけではなく、一部に気泡が発生している場合も、当該「非発泡」の概念に含まれるものとする。非発泡のスラリーを用いることにより、有機多孔体の骨格表面にリン酸カルシウムをより均一、且つ、密に定着させることができる。ここで本工程において使用する有機多孔体としては、特に限定されないが、例えば、発泡ポリウレタン等のポリマー発泡体を使用することができる。
【0052】
溶媒除去工程
溶媒除去工程では、前記含浸工程後、含浸させたスラリーに含まれる溶媒を除去する。ここで溶媒除去は、例えば、減圧下に配することや、加熱によって行なわれる。乾燥後のスラリー固形分の有機多孔体に対する添着量は、有機多孔体100質量部に対して、1000〜3000質量部程度が好適である。
【0053】
脱脂工程
脱脂工程では、前記溶媒除去工程後、材料が被覆された前記有機多孔体を加熱して、有機多孔体を除去する。脱脂工程に際に、有機多孔体は燃焼され二酸化炭素や水等といった気体となって外部に放出される。本工程により、有機多孔体が除去されるためリン酸カルシウム多孔体の骨格内に空洞が形成される。放出の際に、有機多孔体表面に形成されたリン酸カルシウムの皮膜の一部を破壊して、内部の有機多孔体に由来する気体が放出される。すなわち、有機多孔体が気化して除去されるために、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に当該気体が放出されるための孔が形成される。当該孔が先述のマイクロポアになると考えられる。また、当該孔は、リン酸カルシウム多孔体の骨格の内部に形成される空洞と連通しており、当該孔が形成されることにより、骨形成が好適に行なわれる。脱脂工程は、特に限定されないが、例えば、400〜1000℃で行なうことが好適である。
【0054】
焼結工程
焼結工程では、前記脱脂工程後、リン酸カルシウムを焼結する。これにより、リン酸カルシウム多孔体骨格の強度が増す。尚、焼結工程は、前記脱脂工程と連続的に行なわれてもよい。焼結工程は、特に限定されないが、例えば、1000〜2000℃で行なうことが好適である。
【0055】
生分解性補強材料被覆工程
生分解性補強材料被覆工程では、前記焼結工程後、生分解性補強材料の溶液を含浸させて、溶媒を除去する。これにより、リン酸カルシウム多孔体の骨格表面を生分解性補強材料により補強して、骨再生材料の強度を高める。
【0056】
ここで当該工程において、前記骨再生材料を生分解性補強材料の溶液中に含浸させた系を減圧にする工程を含むことが好適である。このような工程を経ることにより、リン酸カルシウム多孔体の内部に含まれる気泡が放出されて、多孔体内の奥にまで生分解性補強材料が行き渡るため、当該材料による被覆が十分に行なわれ高い機械的強度を有する骨再生材料を得ることができる。また、骨格内に形成されている空洞内にも生分解性補強材料が浸透し易くなるので、これにより更に高い機械的強度を有する骨再生材料を得ることができる。
【実施例】
【0057】
(製造例)
水100重量部、β‐TCP38.36重量部のスラリーを各ポリウレタンフォーム{MF−8(製造例1)、MF−13(製造例2)、MF−20(製造例3)、MF−30(製造例4)(尚、各ウレタンの数値は1インチ立方あたりの気泡の数を示す。)、サイズ6×6×5mm}へ含浸させた。続いて50℃にて乾燥した後、25〜600℃、50℃/hの昇温スピードで加熱した後、600〜1500℃、200℃/hの昇温スピードで加熱して、1500℃で一時間保持することにより酸素雰囲気下で脱脂及び焼結工程を行なった。その後、自然冷却によって、常温に戻した。これにより、製造例1〜4に係るリン酸カルシウム多孔体を得ることができた(以下、各製造例に係るリン酸カルシウム多孔体を単に用いたウレタンの型により表す場合がある。具体的には、製造例1:「MF−8」、製造例2:「MF−13」、製造例3:「MF−20」、製造例4:「MF−30」)。
【0058】
上記製造例1〜4のリン酸カルシウム多孔体のそれぞれのセルサイズと空隙率を表1に示す。セルサイズ(セルの大きさ)は、SEM(走査型電子顕微鏡)にて10個のセルの大きさ(直径)を測定した平均値である。
【表1】
【0059】
得られた各種リン酸カルシウム多孔体の構造および組成を走査型電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)により確認した。得られた各種リン酸カルシウム多孔体の写真を図1に示し、走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2、図3に示す。このように図2の電子顕微鏡写真によれば、骨格表面にマイクロポアが形成されている様子が見て取れる。10mm2あたりのSEM写真の視野における開口径が50〜100μmの壁面マイクロポアの数を数えた。結果を表2に示した。
【0060】
【表2】
【0061】
図3は、MF20の骨格表面を拡大した電子顕微鏡写真であり、この写真によれば骨格表面には、スラリーに含まれるリン酸カルシウム粒子が融着した集合体が形成されている様子が観察できる。また得られたリン酸カルシウム多孔体の骨格はβ−TCPであることを、X線回折(XRD)により確認した(図4)。
【0062】
製造例3のリン酸カルシウム多孔体を電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、JSM−7600F,JEOL)に低加速電圧(1.0kV)で、金属などの被覆をしないで骨格の断面を観察した。図5は、当該リン酸カルシウム多孔体のFE−SEM写真である。これによれば、骨格の内部に空洞が形成されていることが観察できる。更に、当該リン酸カルシウムに対して、エポキシ樹脂を含浸させて固めた後に、当該試料をミクロトロームで切断出しをして当該切断をFE−SEMにて観察した。図6は、当該断面の二次電子像である。二次電子像により表面の状態がわかり、当該写真で骨格内に空洞が形成されている様子が見て取れる。図7は、試料断面反射電子像である。反射電子では元素が重いほど濃く電子を出すので異なる組成であることがわかる。また、当該写真においても骨格内部に空隙が形成されていることは明らかである。電子顕微鏡写真から骨格内マイクロポアを任意に5個選択して内接円の平均直径を求めた。結果を以下の表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
(製造例5〜8)
次に、上記製造例1で得られたリン酸カルシウム多孔体を生分解性補強材料(ゼラチン)の水溶液中に浸して、系を減圧にして多孔体内に水溶液を十分に取り込ませた。その後、リン酸カルシウム多孔体を取り出し、溶媒を乾燥させて、生分解性補強材料が骨格表面に被覆されている製造例5に係るリン酸カルシウム多孔体を得た。製造例2(MF−13)、製造例3(MF−20)、製造例4(MF−30)についても、同様にして製造例6(MF−13)、製造例7(MF−20)、製造例8(MF−30)に係るリン酸カルシウム多孔体を得た。尚上記のカッコ内は使用した元のウレタンの種類を示す。
【0065】
これらの中で製造例1〜8に係る骨再生材料の圧縮強度を測定し、被覆前後の強度を比較した。ここで圧縮強度(変位25%までの最大点)の測定方法は、島津オートグラフAG−Xを用いて行った。試験結果を以下の表4に示した。当該結果によれば、被覆前後で、リン酸カルシウム多孔体の強度は2倍程度に向上している。また生分解性補強材料の被覆前の骨再生材料は、空隙率と圧縮強度との相関関係がほとんど観察されないが、生分解性補強材料を被覆すると空隙率と圧縮強度との相関関係が観察されるようになる。通常、空隙率が高くなればなるほど、多孔体の骨格部分の比率が小さくなるので、圧縮強度も低くなると考えられるが、生分解性補強材料を被覆しない場合、骨格を太くした場合、すなわち空隙率を低くした場合であっても、強度が上がらないが、生分解性補強材料を被覆することにより、空隙率を低くすることによって、高い圧縮強度を有する骨再生材料を得ることができる。尚、空隙率は、以下の式(1)により求めた。
【0066】
【数1】
【0067】
【表4】
【0068】
また、被覆後の骨格表面の電子顕微鏡写真を図8に示した(図8(a)〜(c))。これによれば、骨格表面にゼラチンが被覆されている様子が確認できる。また、実施例7(MF20Z)の骨格の断面写真(図8(c))によれば、骨格内部の空洞にまでゼラチンが侵入している様子が確認できる。
【0069】
(気体通過試験:圧力損失測定)
パームポロメーター(西華産業、CFP−110−AEXL)を用いて、製造例5〜8の試料(厚さ4mm、直径8mmの円柱形状(断面積50mm2))における50mm2面積当たりの空気の流量に対する圧力損失測定した。当該測定において、低い流量から高い流量へと流量を変化させて、各流量における圧力損失を測定した。この際の50L/minの流量における圧力損失(kPa)の測定結果を表5に示した。
【0070】
【表5】
【0071】
(細胞付着性試験)
製造例3に係るリン酸カルシウム多孔体を用いて細胞付着試験を行なった。細胞にはMC3T3E−1cell(骨芽細胞)を用いた。細胞数を1×105cellに調整し、リン酸カルシウム多孔体に滴下播種して10%FBS、1%抗生物質添加の培地にて1昼夜培養を行った。その後SEMにて表面性状を観察した。リン酸カルシウム骨格表面のSEM写真を図9に示した。MC3T3E−1細胞が、リン酸カルシウム表面に付着して細胞突起を進展していた。これにより、リン酸カルシウム骨格表面に付着できることが明らかになり、更に、本発明に係るリン酸カルシウムは毒性を有しないことが確認できた。
【0072】
(移植試験)
製造例4〜8に係るMF8,13,20,30の4種類のリン酸カルシウム多孔体に対してFGF2含有コラーゲンゲル溶液を注入し、FGF2含有リン酸カルシウム多孔体を作製した。リン酸カルシウム多孔体ひとつあたりのFGF2含有量は15μgに設定した。
【0073】
実験動物は、体重300〜330gのWistar系雄性ラット(10週齢)72匹を用いた。ペントバルビタールナトリウム0.6ml/kgを用いた全身麻酔、及びエピネフリン(1/80000)含有2%塩酸リドカインによる局所麻酔を施した後、頭蓋皮膚切開を行い頭蓋骨中央を露出、骨膜を剥離した。No.5ラウンドバーを用いて生理食塩水の注水下で矢状縫合部より前方に縦4mm、横4mmの皮質骨除去を行った。生理食塩水で十分に洗浄した後、FGF2含有リン酸カルシウム多孔体を移植し、皮膚弁を縫合して閉鎖創とし、縫合部にテトラサイクリン塩酸塩軟膏を塗布した。
【0074】
5週の観察期間終了後にジエチルエーテル吸引にて安楽死させ、頭蓋骨と周囲組織を一塊として採取し、10%中性リン酸緩衝ホルマリン溶液にて固定、10%EDTAにて脱灰後、通法に従いパラフィン包埋を行った。その後、前頭面断で厚さ5μmの連続切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を行い、光学顕微鏡下にて組織学的観察を行った。結果を図10〜図15に示す。
【0075】
5週の観察期間ともに、骨形成がリン酸カルシウム多孔体の周囲や内側に頻繁に認められた(図10)。残存するリン酸カルシウム多孔体の骨格(ロッド)は新生骨や血管、細胞の豊富な結合組織に被覆されており、すなわちリン酸多孔体の内部に組織が容易に侵入できることが明らかになった(図11、12)。異物巨細胞(マクロファージ様細胞)(矢印)が、β‐TCP骨格の表面で観察された(図12A)。残っているβ‐TCP骨格は新生骨及び/又は巨大細胞を含む細胞に富んだ結合組織に囲まれている(図12B)。骨格は異物巨細胞によって吸収されている像が認められた(図13)。また、β―TCP骨格に血管(矢印)形成されていることが確認された(図14A)。また骨様組織がβ‐TCP発泡体の骨格の内部で形成されていることが確認できた(図14B)。なおFGF2を添加しない場合にも骨再生は認められたがその量は少なかった(図15)。好中球やリンパ球などの炎症性細胞の浸潤はほとんど見られなかった。周囲の結合組織には活発な血管形成が認められる。
【0076】
上記光学顕微鏡像を画像解析ソフトウェアを用いて新生骨面積、残存リン酸カルシウム多孔体面積を求めた。各測定値の統計学的な分析は。SPSS(登録商標)11.0を用いて行い、有意水準を5%とした。結果を図16に示す。骨面積とは観測した断面の骨の面積を意味する。また、高さとは、母床骨から垂直に骨の遠端までの距離を意味する。
【0077】
MF8,13,20,30(製造例4〜8)の4種類のリン酸カルシウム多孔体を移植した場合の骨再生面積はそれぞれ1.54、2.75、3.78、1.23 mm2であった。MF20を移植した場合の骨再生面積はMF8、MF30よりも統計学的に有意に大きい値であった。またリン酸カルシウム多孔体の残存面積はMF20が最も少なく、骨形成を阻害することなく速やかに吸収していることが示唆された。
【0078】
MF20を用いるとFGF2の効果による骨増生が最も強く促進された。リン酸カルシウム多孔体は骨再生材料として適している可能性が示唆された。なかでもMF20は最適である可能性が明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る骨再生材料は、例えば、骨充填材として使用される。特に、βリン酸三カルシウムを用いた場合、骨の欠陥部に本願発明に係る骨再生材料を充填することにより、当該材料が自家骨へと置換される生体吸収性骨再生材料として使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する骨再生材料において、
前記リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、
前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする、骨再生材料。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム多孔体の空隙率が、80〜99%である、請求項1記載の骨再生材料。
【請求項3】
前記リン酸カルシウム多孔体が、生分解性補強材料により被覆されている、請求項1又は2記載の骨再生材料。
【請求項4】
前記リン酸カルシウム多孔体のセルの大きさが、0.1〜2mmである、請求項1〜3のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項5】
前記リン酸カルシウムが、β‐リン酸三カルシウムである、請求項1〜4のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項6】
前記リン酸カルシウム多孔体が、骨格内マイクロポアを有する、請求項1〜5のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項7】
前記骨格内マイクロポアの径が、5〜200μmである、請求項6記載の骨再生材料。
【請求項8】
前記リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に、壁面マイクロポアが形成されており、前記骨格内マイクロポアが外部に対して連通している、請求項1〜7のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項9】
前記壁面マイクロポアの開口径が、10〜100μmである、請求項8記載の骨再生材料。
【請求項10】
開口径が50〜100μmである壁面マイクロポアが、5個/10mm2以上存在する、請求項8又は9記載の骨再生材料。
【請求項11】
更に、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン−キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸およびこれらの変性体からなる群から選ばれる一又は二種類以上のスキャフォールドを含有する、請求項1〜10のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項12】
更に、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、トランスフォーミング成長因子‐β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)からなる群から選ばれる一又は二種類以上の増殖因子を含有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項13】
リン酸カルシウムを分散させたスラリーを、有機多孔体内に含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後、含浸させたスラリーに含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程後、加熱して前記有機多孔体を取り除く脱脂工程と、
前記脱脂工程後、リン酸カルシウムを焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする、骨再生材料の製造方法。
【請求項14】
前記焼結工程により得られたリン酸カルシウム多孔体内に生分解性補強材料の溶液を含浸させて、溶媒を除去する生分解性補強材料被覆工程を有する、請求項13記載の骨再生材料の製造方法。
【請求項15】
前記生分解性補強材料被覆工程において、前記骨再生材料を生分解性補強材料の溶液中に含浸させた系を減圧にする工程を含む、請求項14記載の製造方法。
【請求項1】
骨格がリン酸カルシウムを主成分とする部材から構成されるリン酸カルシウム多孔体を含有する骨再生材料において、
前記リン酸カルシウム多孔体が連通孔を有しており、
前記リン酸カルシウム多孔体は、パームポロメーターによる気体通過試験において、気体流量50L/minにおける圧力損失が100kPa以下であることを特徴とする、骨再生材料。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム多孔体の空隙率が、80〜99%である、請求項1記載の骨再生材料。
【請求項3】
前記リン酸カルシウム多孔体が、生分解性補強材料により被覆されている、請求項1又は2記載の骨再生材料。
【請求項4】
前記リン酸カルシウム多孔体のセルの大きさが、0.1〜2mmである、請求項1〜3のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項5】
前記リン酸カルシウムが、β‐リン酸三カルシウムである、請求項1〜4のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項6】
前記リン酸カルシウム多孔体が、骨格内マイクロポアを有する、請求項1〜5のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項7】
前記骨格内マイクロポアの径が、5〜200μmである、請求項6記載の骨再生材料。
【請求項8】
前記リン酸カルシウム多孔体の骨格表面に、壁面マイクロポアが形成されており、前記骨格内マイクロポアが外部に対して連通している、請求項1〜7のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項9】
前記壁面マイクロポアの開口径が、10〜100μmである、請求項8記載の骨再生材料。
【請求項10】
開口径が50〜100μmである壁面マイクロポアが、5個/10mm2以上存在する、請求項8又は9記載の骨再生材料。
【請求項11】
更に、フィブリン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸共重合体、コラーゲン、ゼラチン、キチン−キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸およびこれらの変性体からなる群から選ばれる一又は二種類以上のスキャフォールドを含有する、請求項1〜10のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項12】
更に、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、トランスフォーミング成長因子‐β(TGF−β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)からなる群から選ばれる一又は二種類以上の増殖因子を含有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の骨再生材料。
【請求項13】
リン酸カルシウムを分散させたスラリーを、有機多孔体内に含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後、含浸させたスラリーに含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程後、加熱して前記有機多孔体を取り除く脱脂工程と、
前記脱脂工程後、リン酸カルシウムを焼結する焼結工程と、
を有することを特徴とする、骨再生材料の製造方法。
【請求項14】
前記焼結工程により得られたリン酸カルシウム多孔体内に生分解性補強材料の溶液を含浸させて、溶媒を除去する生分解性補強材料被覆工程を有する、請求項13記載の骨再生材料の製造方法。
【請求項15】
前記生分解性補強材料被覆工程において、前記骨再生材料を生分解性補強材料の溶液中に含浸させた系を減圧にする工程を含む、請求項14記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−16517(P2012−16517A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156796(P2010−156796)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】
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