骨同化物質を用いた骨疾患の治療方法
骨粗鬆症を含む、骨量の減少を呈するさまざまな哺乳類症状の予防および治療のための方法が本明細書に開示される。本発明により、効果的でありかつ安全性の向上した、代謝性骨疾患の治療のためのPTHrPまたはその類似体の使用法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、骨粗鬆症を含む、骨量の減少を呈するさまざまな哺乳類疾患の予防および治療のための方法に関する。より具体的には、本発明は、効果的でありかつ安全性の向上した、代謝性骨疾患の治療のためのPTHrPまたはその類似体の使用法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2003年1月10日に出願されたU.S.S.N. 10/340,484に関連し、これは2002年1月10日に出願されたU.S.S.N. 60/347,215;2002年2月1日に出願されたU.S.S.N. 60/353,296;2002年3月28日に出願されたU.S.S.N. 60/368,955;および2002年5月8日に出願されたU.S.S.N. 60/379,125に関連し;それぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
成人期の全体にわたって、骨は、骨の形成および吸収(骨代謝回転)の双方向サイクルを介して継続的に再形成される。骨吸収は通常迅速であり、骨再形成部位の単核食前駆細胞により形成される破骨細胞(骨吸収細胞)により媒介される。次いで、この過程の後に骨芽細胞(骨形成細胞)が出現し、これが失われた骨に置き換わる骨を徐々に形成する。この過程の完了によって通常は、骨が均衡置換かつ再生されることから、骨再形成に影響を及ぼす分子シグナルおよび事象は、厳重に制御されていることが示唆される。
【0004】
骨量減少の機構は十分に理解されてはいないが、実際的な作用として、この疾患は、新しい健康な骨の形成と古い骨の吸収の不均衡、骨組織の純損失への傾斜から生ずる。この骨量減少には、骨塩含量およびタンパク質マトリックス成分の双方の減少が含まれ、主に大腿骨ならびに前腕および脊椎の骨を骨折する割合が増加する。次に、これらの骨折が一般的な病的状態の増加、成長および機動性の著しい低下、そして多くの場合、合併症に起因する死亡率の増加をもたらす。
【0005】
骨再形成周期の不均衡を引き起こす多くの骨増殖疾患が知られている。これらの中で主要なものは、結果的に異常なまたは過剰な骨量の減少(骨減少症)をもたらす、骨粗鬆症、骨軟化症/くる病、慢性腎不全、および副甲状腺機能亢進症のような代謝性骨疾患である。
【0006】
骨粗鬆症または多孔性骨は、骨形成不全ならびに股関節部(hip)、脊椎、および手関節の骨折のしやすさの増加をもたらす、低骨量および骨組織の構造変質を特徴とする疾患である。これは、閉経後の女性でも老人でも同様に破壊的威力のある病気である。医薬品および入院に対する国家水準での費用は、現在、年間50,000,000ドルになると見積もられており、米国民の高齢化とともに増加する可能性が高い。現在、治療の柱は、経口のカルシウム栄養補助食品、ビタミンD栄養補助食品、および破骨の骨吸収を減少させる「抗吸収剤」と呼ばれる医薬品の一群である。これらには、エストロゲン、例えば抱合エストロゲン(Premarin(登録商標));選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばラロキシフェン(Evista(登録商標));カルシトニン(Miacalcin(登録商標));およびビスホスホネート、例えばアレンドロネート(Fosamax(登録商標))、リセドロネート(Actonel(登録商標))、エチドロネート(Didronel(登録商標))、パミドロネート(Aredia(登録商標))、チルドロネート(Skelid(登録商標))、またはゾレドロン酸(Zometa(登録商標))が含まれる。以下を参照されたい。The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998) ; Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001)。これらの薬物は、骨塩喪失を減速させるのに有効であり、さらには2%(カルシウム、ビタミンD、カルシトニン)、3%(ラロキシフェン)、6%(エストロゲン)または8%(ビスホスホネート)の範囲で、腰椎の骨塩密度の適度な増加をもたらす。一般に、この程度の効果を達成するには、2年から3年の投与が必要とされる。The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8 (suppl3): 13 (1998); Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001)を参照されたい。
【0007】
一般に、骨格ミネラルの喪失が最大骨量(これはおよそ30歳で起こる)の50%未満の範囲内である場合、骨粗鬆症である。骨塩の不足を補正するという観点から見ると、この50%の喪失を完全に回復するには、骨量の100%増加が必要になる。従って、この観点から見ると、抗吸収剤による治療によりもたらされる骨塩密度の2〜8%の増加は、臨床的な意義および恩恵がある一方で、大幅に改善する余地がある。骨量減少を抑制するための抗吸収剤の使用は、新たな骨の産生をもたらすことはないので、抗吸収剤の量的な究極の効果には限りがある。これらの熟慮から、新しい骨を産生させる製薬手段の開発の必要性が強調される。
【0008】
最近、副甲状腺ホルモン(PTH)が、そのような新たな骨粗鬆症の治療道具の、非常に効果的な新たな一員であることを明確に示す証拠が蓄積されつつある。Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441(2001); Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998)を参照されたい。PTHは、1920年代に副甲状腺抽出物中に初めて同定された。PTHの完全なアミノ酸配列は、1970年代に決定された。副甲状腺ホルモンの過剰産生(即ち、副甲状腺機能亢進症)の患者は、骨量の減少(非常に重篤である場合もある)を発症することから、PTHは、過去100年の間、広く骨異化物質と見なされてきた。しかし、現在では動物およびヒトでの双方の研究から、1日単回投与(副甲状腺機能亢進症患者で起こるPTHの持続的過剰産生とは対照的に、いわゆる「間欠的に」)として皮下投与された場合、PTHは、骨塩密度および骨量の著しい増加を引き起こしうることが明確に実証されている。従って、PTHは、抗吸収性の薬物群とは非常に異なる。Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998)を参照されたい。この同化作用に対する細胞学的な根拠は今後定義されるべきであるが、顕微鏡的かつ生理学的水準での効果は明らかである:PTHは間欠投与された場合、骨を形成する骨芽細胞の著しい活性化をもたらすが、骨を吸収する破骨細胞の活性化はより少ない程度しかもたらさない。これらの効果は、破骨細胞および骨芽細胞活性の双方を阻害する上述の抗吸収薬とは全く正反対である。
【0009】
これらの結果を数量化すると、PTHは、研究にも依るが、多くの研究で腰椎の骨塩密度を約10〜15%まで増加させることが示されている(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998)を参照されたい)。ある研究では、脊椎の骨塩密度は、二重エネルギーX線吸光光度分析法(DXA)を利用して評価した場合、30%までも、そして腰椎の骨梁の定量的コンピュータ断層撮影法(QCT)を利用した場合、80%までも増加することが報告された(Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, 59 (1999)を参照されたい)。
【0010】
PTHは、骨量を増加させるほか、脊椎部位と非脊椎部位の双方で、顕著な抗骨折効果を有することが最近になって実証された。PTHは、骨格部位および骨折の定義に依存して、骨折を60%から90%の間まで減少させることが示された。Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001)を参照されたい。これらの効果は、抗吸収剤の抗骨折効果と少なくとも同程度に顕著であり(The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647(1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998); Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001) を参照されたい)、それを上回っている可能性がある。従って、PTHは、抗吸収剤とは対照的に、骨の「同化を促進する」クラスの骨粗鬆症薬、または「同化物質」と名付けられた抗骨粗鬆症薬の新規群の最初の一員であるように思われる。
【0011】
副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)は、骨同化薬のこの群の第二の構成員であると思われる。Stewartら、J Bone Min Res 15: 1517〜1525 (2000)を参照されたい。PTHrPは、PTHをコードする遺伝子とは異なる遺伝子の産物である。PTHrPは、最初の13アミノ酸において、アミノ酸レベルでおよそ60%の相同性をPTHと共有しているものの、配列は完全に異なっている。Yangら、In: Bilezikian, Raisz、およびRodan (編). PRINCIPLES OF BONE BIOLOGY. Academic Press, San Diego CA, pp. 347〜376 (1996)を参照されたい。PTHrPは最初にホルモン前駆体として翻訳され、これが次に多数の翻訳後プロセッシングを受ける。本発明者らの研究室で同定された、プロセッシングされた型、即ち正真正銘の分泌型のうちの一つは、PTHrP-(1-36)である。Wuら、J Biol Chem 271: 24371〜24381 (1996)を参照されたい。PTHrP-(1-36)は、PTH-1受容体とも呼ばれる、骨および腎臓の共通のPTH/PTHrP受容体に結合する。Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab, 81: 199〜208 (1996); Orloffら、Endocrinology, 131: 1603〜1611 (1992)を参照されたい。PTHrP-(1-36)は、この受容体にPTHと等しい親和性で結合し、PTHに等しい効力で、PKAおよびPKCシグナル伝達経路を活性化する。Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab, 81: 199〜208 (1996); Orloffら、Endocrinology, 131: 1603〜1611 (1992)を参照されたい。
【0012】
PTHrPはもともと、悪性腫瘍による体液性高カルシウム血症(HHM)と呼ばれる尋常性ヒト腫瘍随伴症候群に対する原因物質としてのその役割を通して、本発明者(Burtisら、J Biol Chem 262: 7151〜7156 (1987); Stewartら、Biochem Biophys Res Comm 146: 672〜678 (1987))および他者ら(Strewlerら、J Clin Invest, 80: 1803, (1987); Moseleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84: 5048〜5052 (1987))により同定された。Stewartら、N Engl J Med 303: 1377〜1383 (1980)を参照されたい。例えば、HHMを患うヒトは、循環PTHrPの持続的上昇の結果として、2、3ヶ月間でその骨格骨量の50%ほども失ってしまう可能性がある。Stewartら、J Clin Endo Metab 55: 219〜227 (1982)を参照されたい。続いて動物実験から、PTHrPは、間欠投与された場合、骨粗鬆症ラットの骨量を増加させうることが示唆された。しかし、驚いたことに、PTHrPにより誘発される骨塩密度、骨量、骨形成、および骨格の生体力学の増加は、等モル量のPTHを用いて観察されたものほど劇的ではなかった。Stewartら、J Bone Min Res 15: 1517〜1525 (2000)を参照されたい。それにもかかわらず、PTHrPはHHM患者の骨格ミネラルの劇的な減少に関与する典型的な骨異化ホルモンとして広く見られることから、PTHrPに同化および生体力学の増強効果が存在することは驚きである。Stewartら、J Clin Endo Metab 55: 219〜227 (1982)を参照されたい。多くの研究者および製薬会社が過去10年間、骨粗鬆症においてはPTHを用いて仕事をしてきたが、PTHrPが1987年に最初に記述されて以来、それが公知の事実となっていたにもかかわらず、誰もPTHrPを取り入れなかったという事実からも明らかなように、PTHrPを間欠投与すると実際には骨格の同化を促進するという観察結果は予想されなかった。
【0013】
1999年、Eli Lillyは、PTHをラットに2年間にわたって毎日投与すると、これらのラットで骨原性肉腫の発生が引き起こされることを示唆する報告をFDAに公表した。1998年12月11日のPTH INDホルダーに対するFDA通知(Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001))を参照されたい。これらの悪性骨格腫瘍の発生は、この前臨床毒性モデルでの骨芽細胞由来の骨格腫瘍の発生をPTHと関連付けて考えた場合、原因的な折り合いとしては生物学的に妥当性があったので、当分野の熟練者には極めて厄介である。ラットでの骨肉腫の話のなかで一つ主に心配されるのが、前臨床毒性試験において、PTHが成長ラットに2年間投与されたことである。これは大多数のラットの寿命もまた、およそ2年であることを意味する。ヒトでは、PTH治療には一般に2〜3年間の継続期間を有する(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994) ; Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344:1434〜1441 (2001); Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))。大部分の研究者が、PTHを用いた治療の継続期間は18ヶ月〜3年であろうと予想している。従って、長期PTH治療がヒトで骨肉腫を引き起こす可能性があるという懸案事項が一部の人々の心の中に依然として残っている。
【0014】
従って、安全かつ効果的な骨同化薬を用いた骨疾患の予防および治療のための方法に対する必要性が当技術においては依然として存在する。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明により、骨粗鬆症を含む、骨量の減少を呈するさまざまな哺乳類疾患の予防および治療のための方法が提供される。本発明は、非常に高用量のPTHrPまたは関連類似体の投与により、非常に短期間のうちにBMDの劇的な増加を引き起こすことができるという驚くべき観察に基づいている。投与期間は好ましくは、15、18、21、24、30、または36ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、11、または12ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。高用量の骨同化薬は、短期間で投与されても、間欠的な投与間隔をもってしても、いかなる有意な有害副作用も引き起こすことがない。従って、本発明の方法により、高カルシウム血症、腎不全、低血圧症、または骨原性肉腫を発生させる危険性のような、骨同化薬に共通して関連するマイナスの副作用の危険性を有意に取り除くかまたは減少させることによってさらに高い安全性が提供される。
【0016】
本発明の方法で達成されるBMD増加率は、極端に速い。1つの態様として、PTHrP-(1-36)で3ヶ月治療すると、長い投与期間、抗吸収剤および低用量PTHを用いて以前に得られたどの増加率よりも高いBMD増加率が得られた。本発明の方法で達成されるBMD増加率は、好ましくは少なくとも1ヶ月当たり1%、1ヶ月当たり1.1%、または1ヶ月当たり1.2%であり、より好ましくは1ヶ月当たり1.3%または1ヶ月当たり1.4%、最も好ましくは1ヶ月当たり1.5%または1ヶ月当たり1.6%以上である。
【0017】
観察されるBMDの増加は一般に、抗吸収剤を2〜3年間投与しても得られない。実際に、いくつかの市販の抗吸収剤(SERM、カルシトニン、ビタミンD、カルシウム)では、本発明の方法で得られるBMDの増加は決して達成されることはない。さらに、本発明の方法で得られるBMDの増加は、低用量のPTHを長い投与期間使用して得られるものに匹敵するか、または上回る。従って、本発明により、安全かつ効果的な骨同化薬を用いて骨疾患を予防および治療するための方法が提供される。
【0018】
本発明の方法で達成される結果的なBMD増加は好ましくは、Tスコア>-2.5、より好ましくはTスコア>-2.0、最も好ましくはTスコア>-1.0である。さらに、本発明の方法で達成される結果的なBMD増加により、好ましくは骨折の発生率を少なくとも50%、60%、または70%減少させるように、より好ましくは骨折の発生率を少なくとも75%、80%、または85%減少させるように、最も好ましくは骨折の発生率を少なくとも90%または95%減少させるように、骨折を防ぐのが好ましい。
【0019】
1つの局面において、本発明により、患者にPTHrPまたはその類似体を、5μg/日〜50 mg/日またはそれ以上の用量で間欠投与することにより、動物またはヒト患者の骨量を増加させる方法が提供される。好ましい用量範囲は、10〜45,000μg/日である。他の好ましい用量範囲には、25〜40,000μg/日、35〜37,500μg/日、50〜35,000μg/日、100〜30,000μg/日、150〜25,000μg/日、200〜20,000μg/日、250〜15,000μg/日、300〜10,000μg/日、350〜7,500μg/日、400〜3,000μg/日、400〜1,500μg/日、400〜1,200μg/日、400〜900μg/日、400〜600μg/日、80〜500μg/日、90〜500μg/日、100〜500μg/日、150〜500μg/日、200〜500μg/日、250〜500μg/日、300〜500μg/日、350〜500μg/日、400〜500μg/日、および450〜500μg/日が含まれる。好ましい態様において、PTHrP-(1-36)は、50〜10,000μg/日の間欠用量で投与される。より好ましい用量範囲は、200〜7,500μg/日である。さらにより好ましい用量範囲は、400〜5,000μg/日である。他の好ましい用量範囲には、400〜1,500μg/日、400〜1,200μg/日、400〜900μg/日、および400〜600μg/日(約6.5〜18μg/kg/日、6.5〜15μg/kg/日、6.5〜12μg/kg/日、および6.5〜9μg/kg/日)が含まれる。
【0020】
本発明によりまた、動物またはヒトで以前に投与されていたよりも長い期間、PTHrPまたはその類似体の投与を用いて骨密度を増加させるための方法が提供される。1つの局面として、本発明により、1〜36ヶ月間の期間、PTHrPまたはその類似体を間欠投与することによって動物またはヒト患者の骨量を増加させる方法が提供される。投与期間は好ましくは、15、18、21、24、30、または36ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、11、または12ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。
【0021】
本発明の方法は、原発性または続発性骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、および骨量減少と関連した他の種類の骨疾患を含む代謝性骨疾患で苦しんでいるか、またはその危険性がある患者で使用することができる。1つの態様として、本発明の方法により達成されるBMD増加率は、少なくとも1月当たり1.5%である。他の局面において、PTHrPまたはその類似体は、骨折、例えば開放骨折または単純骨折に苦しむ患者に投与され得る。好ましい態様は、骨折に苦しむ患者への上記の用量におけるPTHrP-(1-34)の投与を含む。さらに他の局面において、PTHrPまたはその類似体は、例えば股関節置換手術もしくは心臓手術、または骨を置換もしくは損傷する他の侵襲的手技のような手術後の骨の治癒を促進するために、外科患者に投与され得る。本好ましい態様は、上記の用量でのPTHrP-(1-36)の投与を含む。他の態様は、上記の用量を有する骨ペーストの剤型で損傷した骨に投与または適用される、PTHrP、その断片、もしくは類似体を含む。
【0022】
本発明の方法で使用される、PTHrPまたはその類似体は、配列番号:2により定義することができる;配列番号:2と少なくとも70%の相同性を有しうる;またはストリンジェントな条件の下で配列番号:1の相補的核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされうる。本発明の方法で使用できるPTHrP類似体には、断片PTHrP-(1-30)からPTHrP-(1-173)が含まれる。PTHrP類似体にはまた、[MAP1-10]22-31 hPTHrP-(1-34)NH2のような、hPTHrP(1-34)のC末端領域がモデル両親媒性α-ヘリックスペプチド(MAP)配列に置換された類似体を含みうる。PTHrP類似体にはまた、本明細書で定義されるような、骨同化を促進する作動的生物活性を有するペプチド模倣体および小分子薬剤が含まれる。
【0023】
PTHrPは、皮下、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、局所的に(骨の表面に、例えば、ペーストまたは溶液として)、口腔内、直腸、膣内、鼻腔内、およびエアロゾル投与により投与することができる。間欠投与は、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1月2回、および1月1回の定期注射により行ってもよい。または、ミニポンプによる骨同化薬のパルス投与の使用を本発明の方法に採用することができる。PTHrPを有する緩効性または徐放性マトリックス、それらの断片または類似体もまた、適している。
【0024】
さらに他の局面において、本発明により、動物またはヒト患者の骨量を増加させる方法が提供される。1つの態様において、本方法は、1.5〜90 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜1ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。他の態様において、本方法は、3〜180 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜2ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、4.5〜270 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、9〜540 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜6ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、18〜1080 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜1年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、36〜2160 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜2年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、54〜3240 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。なおさらに他の態様において、本方法は、70〜10,000 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。なおさらに他の態様において、本方法は、100〜50,000 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。これらの方法に従い、PTHrPまたはその類似体は、毎日2回、毎日1回、2日に1回、3日に1回、週1回、週2回、2週間に1回、毎月2回、または毎月の間隔の間欠用量で投与され得る。
【0025】
さらに他の局面において、本発明により、動物またはヒト患者の骨量を増加させるためのキットが提供される。1つの態様において、本キットは、1.5〜90 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜1ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。他の態様において、本キットは、3〜180 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜2ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、4.5〜270 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、9〜540 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜6ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、18〜1080 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜1年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、36〜2160 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜2年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、54〜3240 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。なおさらに他の態様において、本キットは、70〜10,000 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。なおさらに他の態様において、本キットは、100〜50,000 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。
【0026】
本発明の方法はさらに、PTHrP、骨吸収阻害物質を同時にまたは順番に共投与する段階を含むことができる。骨吸収阻害物質は、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、ビタミンD類似体、またはカルシウム塩とすることができる。骨吸収阻害物質はまた、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ゾレドロン酸、ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、レボルメロキシフェン、または抱合エストロゲンとすることができる。1つの態様として、患者は3ヶ月間、骨同化薬の間欠投与を受け、引き続いて骨吸収阻害物質による治療を3ヶ月間受ける。当業者であれば、逐次治療計画は、骨同化薬による治療期間に先立って、骨吸収阻害物質による治療期間から開始する可能性もあること、逐次治療期間の長さは変更することができる(例えば、1〜18ヶ月)こと、および骨同化薬を骨吸収阻害物質と同時投与することができる(例えば、骨吸収阻害物質単独での治療期間に先立つ、骨同化薬および骨吸収阻害物質の逐次治療期間)ことを認識するものと思われる。逐次治療期間(例えば、骨同化薬を3ヶ月、続けて骨吸収阻害物質を3ヶ月)は、患者のBMDが回復する(例えば、Tスコアが平均値の-2.0または-2.5未満)まで繰り返すことができる。
【0027】
さらに別の局面として、本発明には、骨同化を促進する作動的または拮抗的生物活性を有するペプチド模倣体および小分子薬剤を設計するためのコンピュータシステムおよび方法が含まれる。1つの態様として、本システムには、中央演算処理装置、記憶装置、ディスプレイまたはデータ出力手段、データ入力手段、および骨同化物質、断片、またはその誘導体のほか、そのような骨同化物質に対する受容体の三次元構造をレンダリングできるアルゴリズムを少なくとも有する、コンピュータ可読の命令セットが含まれる。より好ましい態様として、本システムには、骨同化物質または受容体の活性部位に基づいてペプチド模倣体および小分子薬剤をレンダリングできるコンピュータ支援設計(CAD)アルゴリズムが含まれる。
【0028】
本発明のこれらのおよびその他の目的は、以下に提供される本発明の詳細な説明から明らかになるものと思われる。
【0029】
発明の詳細な説明
A. 総説
成人期の全体にわたって、骨は、骨の形成および吸収(骨代謝回転)の双方向サイクルを介して継続的に再形成されている。骨吸収は通常迅速であり、骨再形成部位の単核食前駆細胞により形成される破骨細胞(骨吸収細胞)により媒介される。次いで、この過程の後に骨芽細胞(骨形成細胞)が出現し、これが失われた骨に置き換わる骨を徐々に形成する。再形成過程に関与する種々の細胞種の活性化は、相互に作用する全身性(例えば、ホルモン、リンホカイン、成長因子、ビタミン)および局所因子(例えば、サイトカイン、接着分子、リンホカインおよび成長因子)により制御されている。この過程の完了によって通常は、骨が均衡置換かつ再生されることから、骨再形成に影響を及ぼす分子シグナルおよび事象は、厳重に制御されていることが示唆される。
【0030】
骨量減少の機構は十分に理解されてはいないが、実際的な作用として、この疾患は、新しい健康な骨の形成と古い骨の吸収の不均衡、骨組織の純損失への傾斜から生ずる。この骨量減少には、骨塩含量およびタンパク質マトリックス成分の双方の減少が含まれ、そして主に大腿骨ならびに前腕および脊椎の骨を骨折する割合が増加する。次に、これらの骨折が一般的な病的状態の増加、成長および機動性の著しい低下、そして多くの場合、合併症に起因する死亡率の増加をもたらす。
【0031】
骨再形成周期の不均衡を引き起こす多くの骨増殖疾患が知られている。これらのなかで主要なものは、結果的に異常なまたは過剰な骨量の減少(骨減少症)をもたらす、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、慢性腎不全および副甲状腺機能亢進症のような代謝性骨疾患である。ページェット病のような他の骨疾患もまた、局所部位での骨量の過剰喪失を引き起こす。
【0032】
慢性腎(腎臓)不全に苦しんでいる患者はほとんど例外なく、骨格の骨量の減少(腎性骨ジストロフィー)に苦しんでいる。腎臓の機能異常により、血中のカルシウムおよびリン酸塩の不均衡が引き起こされることが知られているが、今日までの、透析によるカルシウムおよびリン酸塩の補充は、慢性腎不全で苦しんでいる患者の骨ジストロフィーを有意に抑制していない。成人では、骨ジストロフィー症状が病的状態の顕著な原因であることが多い。小児では、腎不全により、骨量を維持することおよび/または増加させることができないため、成長不全となることが多い。
【0033】
くる病または骨軟化症(「骨の軟化」)は、骨石化の欠陥(例えば、不完全な石化)であり、そして古典的には、ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)欠乏症または抵抗症と関連付けられている。その欠陥により、骨の圧迫骨折、および骨量の減少のほか、骨組織に代わって肥大および増殖性軟骨組織域の拡大が引き起こされる。その欠乏は、栄養失調(例えば、小児のくる病)、ビタミンDもしくはカルシウムの吸収不良、および/またはビタミンの代謝障害から生じている可能性がある。
【0034】
副甲状腺機能亢進症(副甲状腺ホルモンの過剰産生)は、1920年代にそれが最初に記述されて以来、異常な骨量減少を引き起こすことが知られてきた。小児では、副甲状腺機能亢進症により成長が阻害される可能性がある。副甲状腺機能亢進症を抱えた成人では、骨格の完全性が低下し、股関節、脊椎、および他の部位の骨折がよく起こる。副甲状腺ホルモン失調は通常、副甲状腺腺腫または副甲状腺過形成から生じうる。続発性副甲状腺機能亢進症は、ビタミンD欠乏症のような多くの疾患またはコルチゾンのような糖質コルチコイドの薬理学的な長期使用から生じうる。続発性副甲状腺機能亢進症および腎臓の骨ジストロフィーは、慢性腎不全から生じうる。この疾患の初期段階では、破骨細胞が、存在する過剰なホルモンに反応して、骨を吸収するように刺激される。疾患が進行するにつれて、最終的には骨梁および皮質骨が吸収され得、そして微小骨折の結果、骨髄が繊維(fibrosis)、マクロファージ、および出血領域と置き換わってしまう。原発性および続発性副甲状腺機能亢進症の双方で起こるこの病状は、病理学的には嚢胞性線維性骨炎と呼ばれる。
【0035】
骨粗鬆症は、吸収が骨形成段階を左右するような、骨形成、骨吸収、または両者の不均衡から生ずる骨量の減少によって引き起こされる骨格の構造変質であって、それにより病変骨の体重支持能力が低下する。骨粗鬆症は、米国内で1000万人を超える個体に影響を及ぼしているが、僅か10〜20%が診断および治療を受けているだけである。
【0036】
健常成人では、骨が形成かつ吸収される速度は、骨格の骨の再生を維持するために厳重に調整されている。しかし、骨粗鬆症の個体では、これらの骨再構成周期の不均衡が生じ、これにより、骨量の減少および骨格の連続性における微細構造異常の形成の双方が引き起こされる。再構成順序の混乱により生じるこれらの骨格異常が蓄積し、最後には骨格の構造的完全性が低下して、骨折の可能性が高くなる。主な臨床所見は、脊椎および股関節の骨折であるが、骨格の全部分が影響を受ける可能性がある。骨粗鬆症は、骨量(または密度)の減少または脆弱性骨折の存在として定義される。骨組織のこの減少には、骨折の危険性を著しく増大させる、骨格構造の変質が伴う。骨粗鬆症は、米国骨粗鬆症財団および世界保健機関により、実用的には、平均値を-2.0または-2.5標準偏差(SD)下回る(Tスコアが-2.0または-2.5とも呼ばれる)骨密度として定義されている。若年正常範囲(Tスコアが平均より1SD低い値を超える)の下端を下回る者は、骨密度が低く、「骨減少症」で骨粗鬆症の危険性が高いと考えられる。
【0037】
この不均衡は、加齢とともにほとんどの個体で徐々に起こる(「老人性骨粗鬆症」)が、閉経後の女性ではいっそう重篤であり、急速に起こる。さらに、骨粗鬆症はまた、栄養のおよび内分泌の不均衡、遺伝性疾患ならびに多くの悪性転換から生じる可能性がある。
【0038】
疫学
米国内では、800万人の女性および200万人の男性もが骨粗鬆症(Tスコアが-2.5未満)であり、そしてさらに1800万人の個体が、骨粗鬆症を発症する危険性が増大する骨量レベル(例えば、骨量のTスコアが-1.0未満)である。骨組織は徐々に失われていくので、骨粗鬆症は、加齢とともにより高頻度で起こる。女性では、閉経期(通常、50歳以降)の卵巣機能の喪失により急速に骨量減少が促進され、ほとんどの女性が70歳までに骨粗鬆症に対する基準を満たすようになる。
【0039】
骨折の疫学的結果は、骨密度の減少と似たような傾向をたどる。遠位橈骨の骨折は、50歳前には頻度が増加し、そして60歳までには水平状態に達し、その後には加齢に伴って軽度に増加するのみである。対照的に、股関節の骨折の発生率は、70歳以降、5年毎に倍加する。この異なる疫学的結果は、加齢とともに、差し出した手に倒れかかることが少なくなるように、人々の倒れ方に関連している可能性がある。骨粗鬆症の結果として、米国内で毎年少なくとも150万件の骨折が起こっている。人口は老化し続けているので、骨折の総数は急上昇し続けると思われる。
【0040】
病態生理学
骨粗鬆症は、骨再形成における加齢に伴う正常な変化による骨量減少から生じ、さらに外部および内部要因がこの過程を悪化させる。これらの変化は、最小骨量時に重なる可能性がある。従って、骨再形成の過程は、骨粗鬆症の病態生理学を理解するための基礎となる。骨格は、直線的成長により、そして皮質外面への新たな骨組織の付加により大きさを増す。この後者の過程が再形成の現象であり、これはまた長骨がそれに加えられる圧力に対して形を適合させることを可能とする。思春期の性ホルモン産生の増加は、最大の骨格成熟(成人期初期に最大の骨量および骨密度に達する)のために必要とされる。遺伝的要因が最大骨格量および密度の主要な決定因子ではあるが、栄養素および生活様式もまた、成長において重要な役割を果たす。多数の遺伝子が骨格の成長、最大骨量、および体の大きさを制御しているが、個別の遺伝子が骨格の構造および密度を制御している可能性が高い。骨の密度および大きさに対する遺伝率が50〜80%との推定は、双子の研究に基づいて得られた。最大骨量は、骨粗鬆症の家族歴のある個体間では低いことが多いが、候補遺伝子[ビタミンD受容体;I型コラーゲン、エストロゲン受容体(ER)、インターロイキン(IL) 6;およびインスリン様成長因子(IGF) I]の関連研究は、一貫して再現されていない。連鎖研究から、いくつかの遺伝子座が高い骨量と関係していることが示唆されている。
【0041】
一旦最大骨格量に達すると、再形成の過程が骨格の主要な代謝活動であり続ける。この過程は、次の3つの主要な機能を有する: (1) 骨格内の微細損傷を修復すること、(2) 骨格強度を維持すること、および(3) 血清カルシウムを維持するために骨格からカルシウムを供給すること。カルシウムに対する緊急的な要求には、破骨細胞による吸収および骨細胞によるカルシウム輸送が含まれる。再形成の活性化は、過剰なまたは蓄積した圧力による骨への微細損傷により誘発される可能性がある。
【0042】
骨の再形成はまた、エストロゲン、アンドロゲン、ビタミンD、およびPTHを含むいくつかの循環ホルモンのほか、IGF-I、IGF-II、形質転換成長因子(TGF)β、PTHrP、IL、プロスタグランジン、腫瘍壊死因子(TNF)、およびオステオプロテグリンのような局所的に産生される成長因子ならびにその他多くのものにより調節されている。さらなる影響には、栄養素(特に、カルシウム摂取量)および肉体的な活動レベルが含まれる。この再形成過程の最終結果は、吸収された骨が、同量の新しい骨組織に置換されることである。従って、最大骨量が成人期に達成された後、骨格の量は一定のままである。しかし、30〜45歳以降、吸収および形成過程は不均衡となり、吸収が形成を上回る。この不均衡は、さまざまな年齢で始まる可能性があり、さまざまな骨格部位で変化する;その不均衡は閉経後の女性で亢進されるようになる。過剰な骨量減少は、破骨細胞活性の増加および/または骨芽細胞活性の低下が原因である可能性がある。さらに、再形成の活性化頻度の増加が、各再形成単位で見られる小規模の不均衡を増幅している可能性がある。
【0043】
骨量の測定
現在、骨格の量または密度を推定するためのいくつかの非侵襲的技術が利用可能である。これらには、二重エネルギーX線吸光光度分析法(DXA)、単一エネルギーX線吸光光度分析法(SXA)、定量的コンピュータ断層撮影法(CT)、および超音波検査法が含まれる。
【0044】
DXA法は、ほとんどのセンターで骨密度を測定するための標準となっている、非常に正確なX線技術である。任意の骨格部位の測定のためにこれを使用することができるが、臨床的な決定は通常、腰椎および股関節から作成される。かかと(踵骨)、前腕(橈骨および尺骨)、または指(指骨)を測定する携帯型のDXA機器が開発されており、体組成を測定するのに、DXA法を使用することもできる。DXA技術では、二種類のX線エネルギーを使用して石化組織の領域を推定し、ミネラル含量をその領域(体の大きさに対して部分的に補正されている)で割る。しかし、DXA法は二次元走査法であって、骨の深部または後前方向の長さを推定できないので、この補正はごく一部である。従って、小さな人は、平均よりも低い骨塩密度(BMD)となる傾向がある。現在、BMDデータの測定を行う最新のDXA技術は評価中である。変形性関節炎でたびたび起こる骨棘は、脊椎の骨密度を誤って増加させる傾向がある。DXA装置は、いくつかの異なる製造業者により提供されているので、その出力結果は絶対的には異なる。従って、人種および性別が適合する若年人口のものと個々の結果を比較するTスコアを利用して、結果を「標準」値に関連付けることが標準的技法となった。あるいは、Zスコアは、人種および性別も適合する年齢適合人口のものと個々の結果を比較する。このように、Zスコアが-1(年齢に対する平均から1SD下)の60歳の女性は、-2.5のTスコア(若年対照群に対する平均から2.5SD下)を有しうる。
【0045】
CT法は主に脊椎を測定するために使用され、辺縁部CT法は前腕または脛骨の骨を測定するために使用される。股関節の測定にCT法を利用する研究が進行中である。CT法では、骨のサブタイプ、例えば、骨梁対皮質骨の骨密度を研究するうえでさらに好都合である。CT法から得られる結果は、現在利用可能な他の全てのものとは異なるが、これはCT法では特に、骨梁を分析して真密度(単位体積当たりの骨量)測定を提供することができるためである。しかし、CT法は依然として高価であり、放射線被爆量がより高く、再現性が低い。
【0046】
超音波検査法を利用して、超音波が骨を通り抜ける時のシグナルの減衰または超音波が骨を横断する速度を算出することにより骨量を測定する。超音波検査法により骨質が評価されるかどうかは不明であるが、この方法には技術的な利点がある場合がある。比較的低価格かつ可動性であるため、超音波検査法は、スクリーニング法としての使用に向いている。
【0047】
BMDを測定するためのこれらの方法の全てが、骨折の危険性を予測するその能力に基づいて、米国食品医薬品局(FDA)により承認を得ている。股関節は、重要な骨折部位の骨量を直接評価することになるので、大部分の個体における好ましい測定部位である。DXA法により股関節の測定が行われる場合、脊椎を同時に測定することができる。閉経前後の女性のような若い個体では、脊椎の測定が骨量減少の最も高感度な指標であろう。
【0048】
B. PTHRPペプチドの構造および機能特性
140+アミノ酸タンパク質である副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)およびその断片は、PTHの主要な生物作用を再現する。PTHrPは、多数のヒトおよび動物の腫瘍ならびに他の組織により産生され、悪性腫瘍による高カルシウム血症に関与している可能性がある。hPTHrP-(1-36)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号:1および2に提供されている。
【0049】
生物活性は、N末端部分に関連する。ヒトPTHrP(hPTHrP)のN末端部分のアミノ酸配列は、図1に図解されているように、さまざまな種のN末端部分と高い相同性を示す。
【0050】
PTHおよびPTHrPは異なる遺伝子による特有の産物であるが、かなりの機能的および構造的相同性を示し、共通の祖先遺伝子から生じた可能性がある。しかし、ヒトPTHrPの遺伝子構造は、複数のエクソンおよびmRNA形成の間の異なるスプライシング・パターンのための複数部位を含み、PTHのそれよりもずっと複雑である。141、139、および173アミノ酸のタンパク質産物が産生され、その他の分子型が、接近可能な内部切断部位での組織特異的な切断から生じる可能性がある。これらのさまざまな分子種の生物学的役割および循環型PTHrPの性質は不明である。PTHrPがヒト健常成人において有意なレベルで循環しているかどうかは不明確である; PTHrPは、パラクリン因子として産生され、機能し、そして組織内で局所的に破壊されている可能性がある。とりわけ扁平上皮細胞種の大きな腫瘍がホルモンの産生大過剰を引き起こすような病的状態である場合を除き、成人ではPTHrPは、カルシウム恒常性にほとんど影響を与えないようである。
【0051】
hPTHとhPTHrPとの間の配列相同性は、N末端13残基に概ね限定され、このうちの8残基が同一である;hPTHの受容体結合領域(25〜34番目)中の10アミノ酸のうちの1アミノ酸のみがhPTHrPで保存されている。立体構造類似性が共通活性の基礎であるかもしれない。Cohenら(J Biol. Chem. 266: 1997〜2004 (1991))は、PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-34)の配列の多く、とりわけ領域(5-18)および(21-34)が、α-ヘリックス立体配置であると推測されることを提案しているが、この立体配置が生理的条件下でカルボキシ末端に向かって広がっているのかどうかについては幾分疑問があることに留意すべきである。そのような二次構造は、脂質相互作用、受容体相互作用、および/または構造安定化に重要である可能性がある。
【0052】
「副甲状腺ホルモン関連タンパク質」(PTHrP)という語句には、天然に存在するPTHrPのほか、合成または組換えPTHrP(rec PTHrP)が包含される。さらに、「副甲状腺ホルモン関連タンパク質」という語句には、対立遺伝子変異体、種変異体、および保存的アミノ酸置換変異体が包含される。この語句にはまた、完全長PTHrP-(1-36)のほか、例えば、本明細書に記載の試験法において、PTHrP様生物活性を有するペプチド模倣体の小分子を含む、PTHrP断片が包含される。PTHと同様に、PTHrPの生物活性はN末端部分と関連付けられ、残基(1-30)は明らかに最低限必要とされる。従って、PTHrP-(1-36)と同等の生物活性を与える量で、必要に応じてPTHrP断片変異体を本発明の方法のなかで使用することができると理解されるであろう。PTHrP断片には、完全なPTHrP-(1-36)の生物活性と同様の生物活性に必要な、PTHrPのアミノ酸残基が少なくとも組み込まれる。そのような断片の例には、PTHrP-(1-30)、PTHrP-(1-31)、PTHrP-(1-32)、PTHrP-(1-33)、PTHrP-(1-34)、PTHrP-(1-35)、PTHrP-(1-36)、...PTHrP-(1-139)、PTHrP-(1-140)、およびPTHrP-(1-141)が含まれる。
【0053】
「副甲状腺ホルモン関連タンパク質」という語句にはまた、PTHrP-(1-36)と相同的なアミノ酸配列を有するPTHrPの変異体および機能的類似体が包含される。従って、本発明には、置換、欠失、挿入、反転または環化のような修飾を有するが、それでもなお副甲状腺ホルモンの生物活性を実質的に有するような、PTHrP変異体および機能的類似体を含有する薬学的製剤が含まれる。本発明によれば、「相同的なアミノ酸配列」とは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による、またはポリペプチドの生物活性を損なわない位置に位置する、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは付加による、配列番号:2に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。保存的アミノ酸置換には通常、同一部類のアミノ酸の間での置換が含まれる。これらの部類には、例えば、(a) 非電荷極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシン; (b) 塩基性側鎖を有するアミノ酸、例えばリジン、アルギニン、およびヒスチジン; (c) 酸性側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸; ならびに(d) 非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびシステインが含まれる。そのような配列は、配列番号:2のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%の相同性であることが好ましい。
【0054】
本発明によれば、相同的なアミノ酸配列には、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と同一であるかまたは実質的に同一である配列が含まれる。「実質的に同一であるアミノ酸配列」とは、アミノ酸参照配列と少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%同一である配列を意味する。仮にそうであるとしても、相同配列は、多くの保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なることが好ましい。
【0055】
相同性の割合(%)および同一性の割合(%)の計算は、図1に提供されるように、最初に候補となるPTHrPポリペプチドを配列番号:2と整列させることにより決定される。整列したら、候補ポリペプチドと配列番号:2との間で共有される、同一アミノ酸の総数および/または保存的アミノ酸置換変異数を数える。同一性の割合(%)の計算の場合、候補となるPTHrPポリペプチドと参照配列との間の同一アミノ酸の数を、参照配列のアミノ酸の総数で割り、そしてこの数に100を掛けて百分率値を得る。相同性の割合(%)の計算の場合、候補となるPTHrPポリペプチドと参照配列との間の同一アミノ酸および保存的アミノ酸置換変異の総数を、参照配列のアミノ酸の総数で割り、そしてこの数に100を掛けて百分率値を得る。図1には、アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトPTHrP-(1-36)(配列番号:2)の他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントが与えられている。ヒト配列中の対応アミノ酸と異なる他の種のアミノ酸は太字で示されており、そしてヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。同一性の割合(%)および相同性の割合(%)の値が与えられている。
【0056】
または、配列解析ソフトウェアを用いて相同性を測定することができる(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705)。最高度の相同性(即ち、同一性)を得るように、類似アミノ酸配列を整列させる。この目的を達するために、配列中にギャップを人為的に導入することが必要となる場合がある。最適アライメント(整列)が設定されたなら、位置の総数に対して、両配列のアミノ酸が同一である位置を全て記録することにより、相同性(即ち、同一性)の度合いを定める。
【0057】
類似性の要因には、類似の大きさ、形および電荷が含まれる。アミノ酸類似性を決定する特に好ましい方法の1つは、Dayhoffら、5 ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE 345〜352 (1978 & Suppl.)(参照として本明細書に組み入れられる)に記載のPAM25Oマトリックスである。類似性スコアは最初に、整列された対アミノ酸の類似性スコアの合計として計算される。相同性および同一性の割合を目的とする場合、挿入および欠失は無視される。従って、ギャップ・ペナルティーは、この計算では使用されない。その後、生スコアを候補化合物および参照配列のスコアの相乗平均で割ることにより、これを標準化する。相乗平均は、これらのスコアの積の平方根である。標準化された生スコアが相同性の割合である。
【0058】
配列番号:1または2に示される配列のうちの1つに相同的な配列を有するポリペプチドには、天然に存在する対立遺伝子変異体のほか、突然変異体および変種または配列番号:2に示される配列を有するポリペプチドに、骨形成活性に関して類似する、その他任意の天然には存在しない変種が含まれる。
【0059】
対立遺伝子変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を実質的に変化させない、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有すると特徴付けられる、ポリペプチドの別型である。「生物学的機能」とは、たとえその機能が細胞の増殖または生存に必要とされなくても、ポリペプチドが本来存在する細胞におけるそのポリペプチドの機能を意味する。例えば、ポリンの生物学的機能は、細胞外の媒体中に存在する化合物の細胞中への流入を可能とすることである。ポリペプチドは、1つより多い生物学的機能を有することができる。
【0060】
対立遺伝子変異体は、自然界において非常によく見られる。対立遺伝子変異は、ポリヌクレオチドのレベルで等しく反映される可能性がある。対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド、例えば、DNA分子は、従来法により抽出されたゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により、容易に取り出すことができる。これには、コードドメインの5'および3'末端の上流および下流に適合する、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用が含まれる。適当なプライマーは、配列番号:1に与えられているヌクレオチド配列情報に従って設計することができる。通常プライマーは、10〜40、好ましくは15〜25ヌクレオチドからなりうる。CおよびGヌクレオチドを、効果的なハイブリダイゼーションを確実とするのに十分な割合で;例えば、CおよびGヌクレオチド量をヌクレオチド総量の少なくとも40%、好ましくは50%、含有するプライマーを選択することも有利であろう。
【0061】
天然には存在しない有用なホモログは、アミノ酸配列の変化および/または欠失に寛容である可能性が高い、PTHrPペプチドの領域を同定するための周知の方法を用いて設計することができる。例えば、安定性が増強されたまたは改変型のPTHrP変異体は、当技術分野において周知である。例えば、Vickeryら(J Bone Miner. Res., 11: 1943〜1951 (1996))は、hPTHrP(1-34)のC末端領域がモデル両親媒性α-ヘリックスペプチド(MAP)配列に置換された、PTHrP類似体について記述しており、そして結果的に得られた類似体[MAP1-10]22-31 hPTHrP-(1-34)NH2が、卵巣を摘出した骨量減少ラットにおいて、もとのペプチドよりも高い同化活性を有することを報告した。アミノ酸残基(22-31)が、両親媒性α-ヘリックスを形成する、親水性アミノ酸および脂肪親和性アミノ酸で置換された、他の生物学的に活性なPTHおよびPTHrP合成ポリペプチド類似体が報告されている。例えば、米国特許第5,589,452号、米国特許第5,693,616号、米国特許第5,695,955号、米国特許第5,798,225号、米国特許第5,807,823号、米国特許第5,821,225号、米国特許第5,840,837号、米国特許第5,874,086号、および米国特許第6,051,686号を参照されたい(これらはそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。これらのホモログおよび他のそのような生物学的に活性なペプチド模倣体化合物は、実施例6に記述されているように、PTHrP、PTH、またはTIPペプチドの小分子作動薬または拮抗薬を作製するのに有用である。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド誘導体には、例えば、断片、完全長ポリペプチド由来の、大きな内部欠失のあるポリペプチド、および融合タンパク質が含まれる。
【0063】
本発明のポリペプチド断片は、この断片がもとのポリペプチドの好ましい実質的骨形成特性を維持する限りにおいて、配列番号:2〜13に示される配列のうちのいずれかに相同的な配列を有するポリペプチド由来とすることができる。
【0064】
相同的なコード配列を有する本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:1のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドに、好ましくはストリンジェントな条件の下で、ハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーション手順は、例えば、Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons Inc. (1994); Silhavyら、EXPERIMENTS WITH GENE FUSIONS, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1984); Davisら、A MANUAL FOR GENETIC ENGINEERING: ADVANCED BACTERIAL GENETICS, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1980) (それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。ハイブリダイゼーションの条件を最適化するために考慮され得る重要なパラメータは、臨界値、つまり融解温度(これを超えると2つの相補DNA鎖が相互に解離する)の計算を可能とする式中に反映される。CaseyおよびDavidson, Nucl. Acid Res. 4: 1539 (1977)を参照されたい。この式は、以下の通りである:
Tm = 81.5 + 0.5×(% G+C) + 1.6 log (陽イオン濃度)-0.6×(% ホルムアミド)。
【0065】
適当なストリンジェンシー条件の下では、ハイブリダイゼーションの温度(Th)は、計算されたTm以下の、およそ20〜40℃、20〜25℃または、好ましくは、30〜40℃である。当業者であれば、最適な温度および塩濃度は、従来の手順を用いた予備実験のなかで、実験的に容易に決定できることを理解するであろう。
【0066】
例えば、プレハイブリダイズおよびハイブリダイズさせるインキュベーションの双方に関して、ストリンジェントな条件は以下のように達成することができる(i) 50%ホルムアミドを含有する6×SSC中、42℃で4〜16時間以内、または(ii) 6×SSC水溶液(1M塩化ナトリウム、0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 7.0))中、65℃で4〜16時間以内。
【0067】
30〜600ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの場合、上の式を使用し、それから(600/塩基対のポリヌクレオチドサイズ)を引いて補正する。ストリンジェンシー条件は、Tmより5〜10℃低いThにより規定される。
【0068】
20〜30塩基よりも短いオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションの条件は、上記の規則に厳密には従わない。そのような場合には、Tmを計算するための式は、以下の通りである:
Tm = 4 × (G+C) + 2 (A+T)。
例えば、GC含量50%(50% G+C)の18ヌクレオチド断片は、Tmがおよそ54℃であろう。
【0069】
このように、本発明の方法には、以下からなる群より選択されるPTHrPペプチドの使用が含まれる:
(a) 完全長PTHrP;
(b) 完全長PTHrPの生物学的に活性な変異体;
(c) 生物学的に活性なPTHrP断片;
(d) PTHrP断片の生物学的に活性な変異体;
(e) 配列番号:2と少なくとも75%の相同性を有する生物学的に活性な変異体;
(f) 配列番号:2と少なくとも60%の同一性を有する生物学的に活性な変異体;および
(g) ストリンジェントな条件の下で、配列番号:1の相補核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる生物学的に活性な変異体。
【0070】
PTHrPには、以下に限定されることはないが、ヒトPTHrP(hPTHrP)、ウシPTHrP(bPTHrP)、およびラットPTHrP(rPTHrP)が含まれる。PTHrPの類似体は、天然に存在するPTHrPの構造的な類似体または断片(好ましくは、50またはそれ以下のアミノ酸を含むN末端断片)であり、PTHrPと同様に、PTH受容体に結合することもアデニル酸シクラーゼ活性を刺激することもでき、それによって骨形成を促進することができるペプチドである。そのような断片の例には、以下に限定されることはないが、PTHrP-(1-30)、PTHrP-(1-31)、PTHrP-(1-32)、PTHrP-(1-33)、PTHrP-(1-34)、PTHrP-(1-35)、PTHrP-(1-36)、...PTHrP-(1-139)、PTHrP-(1-140)、およびPTHrP-(1-141)が含まれる。以下の刊行物には、PTHrPペプチドの配列が開示されている: Yasudaら、J. Biol. Chem. 264: 7720〜7725(1989) ; Schermer, J. Bone & Min. Res. 6: 149〜155 (1991);およびBurtis, Clin. Chem. 38: 2171〜2183 (1992)。さらなる例は、以下の刊行物のなかで見つけることができる: 独国出願第4203040 A1号(1993); 国際特許出願第94/01460号(1994); 国際特許出願第94/02510号(1994); 欧州特許出願第477885 A2号(1992); 欧州特許出願第561412 A1号(1993); 国際特許出願第93/20203号(1993); 米国特許第4,771,124号(1988); 国際特許出願第92/11286号(1992); 国際特許出願第93/06846号(1993); 国際特許出願第92/10515号(1992); 米国特許第4,656,250号(1987); 欧州特許出願第293158 A2号(1988); 国際特許出願第94/03201号(1994); 欧州特許出願第451,867 A1号(1991); 米国特許第5,229,489号(1993);および国際特許出願第92/00753号(1992)。
【0071】
PTHrPは、胎児の骨の発育におよび成人の生理機能に対して、重要な発育的影響を及ぼす。PTHrP遺伝子(またはPTH受容体の遺伝子)をマウスでホモ接合的にノックアウトすると、致死奇形が引き起こされ、軟骨異形成に似た重篤な骨格奇形を伴う動物が生まれてくる。
【0072】
脳、膵臓、心臓、肺、乳房組織、胎盤、内皮細胞、および平滑筋を含む、多くの異なる細胞種がPTHrPを産生する。胎性の動物では、PTHrPは経胎盤性カルシウム輸送を命令し、そして高濃度のPTHrPが乳房組織で産生され、乳の中に分泌される。例えば、ヒトおよびウシの乳は、非常に高濃度のホルモンを含む;あとの生物学的重要性は不明である。PTHrPはまた、子宮収縮およびその他の生物学的機能に関与している可能性があり、いまでも他の組織部位で解明が続けられている。
【0073】
PTHRPの生物作用
PTHrPはPTHと、その重要なアミノ末端において顕著な相同性を共有するので、PTHで見られるのと非常に類似した効果で、PTH/PTHrP受容体に結合してこれを活性化する。しかし、PTHrPは十分な骨量の発達に不可欠であって、PTHrPは、有力な、骨量の生理的調節因子であるように思われるが、PTHはそうではない。このことを、骨芽細胞のPTHrP遺伝子が破壊されたことで、成人骨内のPTHrP産生は局所的に抑制されたが、成人骨中のPTHレベルは正常であったマウスを用いた、条件的な遺伝子ノックアウト戦略で実証した。PTHrPがないこと、およびこれらのマウスが骨粗鬆症を発症したことから、骨芽細胞由来のPTHrPは、骨芽細胞の機能を促進させることで骨の同化作用を与えることが実証された。Karaplis, A. C.「Conditional Knockout of PTHrP in Osteoblasts Leads to Premature Osteoporosis.」Abstract 1052, Annual Meeting of the American Society for Bone and Mineral Research, September 2002, San Antonio, TX. J Bone Mineral Res, Vol 17 (Suppl 1), pp S138, 2002 (参照として組み入れられる)を参照されたい。これらの所見から、PTHではなく、PTHrPは、正常な生理的条件下での、より重要な典型的な骨量調節因子であること、および骨粗鬆症に対するPTH治療は、効果的であるが、真の骨量調節因子であるPTHrPの代役としてのみ機能していることが示唆される。
【0074】
500アミノ酸のPTH/PTHrP受容体(PTH1受容体としても知られる)は、グルカゴン、セクレチンおよび血管活性腸管ペプチドに対する受容体を含む、GCPRスーパーファミリーに属する。その細胞外領域は、ホルモン結合に関与しており、そしてその細胞内ドメインは、ホルモンによる活性化後、Gタンパク質サブユニットを結合して、ホルモンによるシグナル伝達を二次メッセンジャーの刺激を介した細胞応答に変換する。
【0075】
第二のPTH受容体(PTH2受容体)は、脳、膵臓、およびその他のいくつかの組織で発現される。そのアミノ酸配列ならびにPTHおよびPTHrPに対するその結合および刺激応答のパターンは、PTH1受容体のものとは異なる。PTH/PTHrP受容体は、PTHおよびPTHrPに等しく反応するが、PTH2受容体はPTHにのみ反応する。この受容体の内在性リガンドは、管状漏斗ペプチド-39(tubular infundibular peptide-39)即ちTIP-39であると思われる。PTH2受容体-TIP-39系の生理学的な重要性は、今後定義されるべきである。最近、39アミノ酸の視床下部ペプチドである、管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide) (TIP-39)の特性が明らかとなった、そしてこれはPTH2受容体の天然リガンドの可能性が高い。
【0076】
PTH1およびPTH2受容体は、進化の時間を過去に遡ると、魚にまでたどることができる。ゼブラフィッシュPTH1およびPTH2受容体は、ヒトPTH1およびPTH2受容体がするように、PTHおよびPTHrPに対して同じ選択反応を示す。構造および機能の進化的保存性から、これらの受容体に独特な生物学的役割が示唆される。
【0077】
GSクラスのGタンパク質は、PTH/PTHrP受容体を、環状AMPを産生する酵素である、アデニル酸シクラーゼに結び付け、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こす。GqクラスのGタンパク質との結合が、ホルモン作用を、イノシトールリン酸(例えば、IP3)およびDAGを産生する酵素であるホスホリパーゼCに結び付け、プロテインキナーゼCの活性化および細胞内カルシウム放出を引き起こす。クローン化したPTH/PTHrP受容体を用いた研究から、これが2つ以上のGタンパク質および二次メッセンジャーによるリン酸化経路に結び付けられることが確認され、多くの経路がPTHおよびPTHrPにより刺激されることを説明している。十分に特徴付けられていない二次メッセンジャー反応(例えば、MAPキナーゼ活性化)は、ホスホリパーゼCまたはアデニル酸シクラーゼ刺激とは無関係である可能性がある(また一方後者は、最も強くかつ最も良く特徴付けられたPTHおよびPTHrPに対する二次メッセンジャー・シグナル伝達経路である)。
【0078】
環状AMP、IP3、DAGの細胞内濃度の増大および細胞内Ca2+が、ECFカルシウムの最終的変化およびリン酸イオンの移動または骨細胞の機能を引き起こす生化学的段階の詳細は、不明である。プロテインキナーゼ(AおよびC)の刺激および細胞内カルシウム輸送は、種々のホルモン特異的な組織反応と関連している。これらの反応には、リン酸塩および重炭酸塩輸送の阻害、カルシウム輸送の刺激、ならびに腎臓における腎臓1α-ヒドロキシラーゼの活性化が含まれる。骨中の反応には、コラーゲン合成;アルカリホスファターゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、クエン酸デカルボキシラーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性の増大;DNA、タンパク質、およびリン脂質合成;カルシウムおよびリン酸輸送;ならびにサイトカイン/成長因子の局所放出に対する作用が含まれる。最終的に、これらの生化学的な事象が、骨代謝回転およびカルシウム恒常性において統合的なホルモン反応をもたらす。
【0079】
C. その他の同化物質
他の作用物質、例えば、PTHおよびTIPは、PTHrPにより実証された同化作用と同様の同化作用を与える。PTHおよびTIPの組成ならびにそれらの用途は、本明細書に開示されているPTHrPに対するものと同様である。これらの骨同化物質であるPTHおよびTIPまたはその類似体は、1〜36ヶ月の期間にわたって10〜3,000μg/日の用量で、その必要性のあるヒト患者に投与された場合、前記患者の骨量を増加させる。別の態様として、用量は、好ましくは10〜50,000μg/日、20〜30,000μg/日、35〜20,000μg/日、40〜15,000μg/日、45〜10,000μg/日、50〜5,000μg/日であり、より好ましくは75〜1,500μg/日であり、さらに好ましくは100〜1,200μg/日であり、最も好ましくは300〜1,000μg/日である。さらに別の態様として、投与期間は好ましくは、12、15、または18ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、または11ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。骨量の増加は、本明細書に記載の試験法により観測することができる。これらの骨同化物質は、PTHrPと組み合わせることができる。それらを以下に記載する。
【0080】
PTHペプチド
PTHは、84アミノ酸の単鎖ペプチドである。PTHのアミノ酸配列が多数の哺乳動物種で特徴付けられ、この分子の多くの生物作用に極めて重要なアミノ末端部分の保存性が顕著であることが明らかとなった。生物活性はN末端部分と関連付けられ、残基(1-29)は明らかに最低限必要とされる。ヒトPTH(hPTH)のN末端部分は、ウシホルモン(bPTH)およびブタホルモン(pPTH)のN末端部分とそれぞれ3および2アミノ酸残基だけ異なる。
【0081】
PTHは最初に大きな分子(115アミノ酸からなるプレプロ副甲状腺ホルモン)として合成され、これはその後シグナルペプチドの切断(プロ副甲状腺ホルモン、90アミノ酸)さらには84アミノ酸のペプチドとして分泌される前のプロホルモンの二次切断により大きさが減少する。プレプロ副甲状腺ホルモンの疎水性領域は、ポリペプチドをポリリボソーム上の合成部位から小胞体を介して分泌顆粒へ輸送案内する際に役割を果たしている。
【0082】
1-14残基ほどの小ささのアミノ末端配列の修飾型の置換型の合成断片が、主要な受容体を活性化するのに十分である。PTHのカルボキシ末端領域(例えば、35-84)の生物学的役割は調査中である;同分子のこの領域に対する別の受容体または複数受容体が存在する可能性がある。アミノ末端が短縮されたかまたは修飾された断片は、PTH受容体に依然として結合するが生物応答を刺激する能力は失っている。例えば、配列7-34から構成されるペプチドは、インビトロでは受容体に結合する活性ホルモンの競合的阻害剤であるが、インビボでは弱い阻害剤である。
【0083】
「副甲状腺ホルモン」(PTH)という語句には、天然に存在するPTHのほか、合成または組換えPTH(rec PTH)が包含される。さらに、「副甲状腺ホルモン」という語句には、対立遺伝子変異体、種変異体、および保存的アミノ酸置換変異体が包含される。この語句にはまた、完全長PTH-(1-84)のほか、PTH断片が包含される。従って、必要に応じて、PTH断片変異体を、PTH-(1-84)と同等の生物活性を与える量で、本発明の方法のなかで使用することができると理解されるであろう。PTH断片には、完全なPTHの生物活性と同様の生物活性に必要なPTHのアミノ酸残基が少なくとも組み込まれる。そのような断片の例には、PTH-(1-29)、PTH-(1-30)、PTH-(1-31)、PTH-(1-32)、PTH-(1-33)、PTH-(1-34)、PTH-(1-80)、PTH-(1-81)、PTH-(1-82)、PTH-(1-83)、およびPTH-(1-84)が含まれる。
【0084】
「副甲状腺ホルモン」という語句にはまた、PTH-(1-34)と相同的なアミノ酸配列を有するPTHの変異体および機能的類似体が包含される。従って、本発明には、置換、欠失、挿入、反転または環化のような修飾を有するが、それでもなお副甲状腺ホルモンの生物活性を実質的に有するような、PTH変異体および機能的類似体を含有する薬学的製剤が含まれる。安定性が増強されたPTH変異体が、当技術分野において周知である、例えば、国際公開公報第92/11286号および国際公開公報第93/20203号(それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。PTH変異体には、例えば、位置8および/または18にあるメチオニンの置換ならびに位置16にあるアスパラギンの置換のような、PTHの安定性および半減期を改善するアミノ酸置換が組み込まれる。環化PTH類似体が例えば、国際公開公報第98/05683号(参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。「副甲状腺ホルモン」という語句にはまた、PTH-(1-11)またはPTH-(1-14)骨格を用いたアミノ酸置換変異体が包含される。Shimizuら、J Biol Chem., 276: 49003〜49012 (2001); Shimizuら、Endocrinology 42: 3068〜3074 (2001); CarterおよびGardella, Biochim Biophys Acta 1538: 290〜304 (2001); Shimizuら、J Biol Chem., 275: 21836〜21843 (2000) (それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0085】
図2には、アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、参照配列であるヒトPTH-(1-34)(配列番号:15)の、他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントが与えられている。「相同的なアミノ酸配列」とは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による、またはポリペプチドの生物活性を損なわない位置に位置する、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは付加による、配列番号:15に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。そのような配列は、配列番号:2のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の相同性であることが好ましい。相同的なアミノ酸配列にはまた、配列番号:15に示されるアミノ酸配列と同一であるかまたは実質的に同一である配列が含まれる。「実質的に同一であるアミノ酸配列」とは、アミノ酸参照配列と少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%同一である配列を意味する。仮にそうであるとしても、相同配列は、多くの保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なることが好ましい。
【0086】
本発明の方法で有用なPTHペプチドには、以下からなる群より選択されるPTHペプチドの使用が含まれる:
(a) 完全長副甲状腺ホルモン;
(b) 完全長副甲状腺ホルモンの生物学的に活性な変異体;
(c) 生物学的に活性な副甲状腺ホルモン断片;
(d) 副甲状腺ホルモン断片の生物学的に活性な変異体;
(e) 配列番号:15と少なくとも75%の相同性を有する生物学的に活性な変異体;
(f) 配列番号:15と少なくとも60%の同一性を有する生物学的に活性な変異体;および
(g) ストリンジェントな条件の下で、配列番号:14の相補核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる生物学的に活性な変異体。
【0087】
TIPペプチド
最近、39アミノ酸の視床下部ペプチドである、管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide) (TIP-39)の特性が明らかとなった、そしてこれはPTH2受容体の天然リガンドの可能性が高い。従って、TIP-39ならびにその生物学的に活性な断片および類似体は、本発明の方法のなかで使用することができる。
【0088】
「管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide)」という語句には、天然に存在するTIPのほか、合成または組換えTIP(rec TIP)が包含される。さらに、「管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide)」という語句には、対立遺伝子変異体、種変異体、および保存的アミノ酸置換変異体が包含される。この語句にはまた、完全長TIP-(1-39)のほか、TIP断片が包含される。従って、必要に応じて、TIP-(1-39)と同等の生物活性を与える量でTIP断片変異体を本発明の方法のなかで使用できることが理解されるであろう。TIP断片には、完全なTIP-(1-39)の生物活性と同様の生物活性に必要なTIPのアミノ酸残基が少なくとも組み込まれる。そのような断片の例には、TIP-(1-29)、TIP-(1-30)、TIP-(1-31)、...TIP-(1-37)、TIP-(1-38)、およびTIP-(1-39)が含まれる。
【0089】
「管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide)」という語句にはまた、TIP-(1-39)と相同的なアミノ酸配列を有するTIPの変異体および機能的類似体が包含される。従って、本発明には、置換、欠失、挿入、反転または環化のような修飾を有するが、それでもなおTIP-(1-39)の生物活性を実質的に有するような、TIP変異体および機能的類似体を含有する薬学的製剤が含まれる。
【0090】
相同性の割合(%)および同一性の割合(%)の計算は、図3に提供されるように、最初に候補となるTIPポリペプチドを配列番号:26と整列させることにより決定される。「相同的なアミノ酸配列」とは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による、またはポリペプチドの生物活性を損なわない位置に位置する、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは付加による、配列番号:15に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。そのような配列は、配列番号:26のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%の相同性であることが好ましい。相同的なアミノ酸配列にはまた、配列番号:26に示されるアミノ酸配列と同一であるかまたは実質的に同一である配列が含まれる。「実質的に同一であるアミノ酸配列」とは、アミノ酸参照配列と少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%同一である配列を意味する。仮にそうであるとしても、相同配列は、多くの保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なることが好ましい。
【0091】
本発明の方法には、以下からなる群より選択されるTIPペプチドの使用が含まれる:
(a) 完全長TIP;
(b) 完全長TIPの生物学的に活性な変異体;
(c) 生物学的に活性なTIP断片;
(d) TIP断片の生物学的に活性な変異体;
(e) 配列番号:26と少なくとも75%の相同性を有する生物学的に活性な変異体;
(f) 配列番号:26と少なくとも60%の同一性を有する生物学的に活性な変異体;および
(g) ストリンジェントな条件の下で、配列番号:25の相補核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる生物学的に活性な変異体。
【0092】
D. 治療剤形および治療方法
本発明の組成物(即ち、PTHrPペプチドおよび上述の骨同化物質)は、特定の分子および、含まれる場合には、特定の骨吸収阻害物質に適合する、任意の経路により間欠投与されてもよい。従って、必要に応じて、投与は、経口投与とするか、または皮下、静脈内、吸入、経鼻、および腹腔内の投与経路を含む非経口投与としてもよい。さらに、間欠投与は、組成物を、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1月2回、および1月1回、定期的にボーラス注射して行ってもよい。
【0093】
本発明の治療組成物は、任意の適当な手段により、直接的に(例えば、注射、移植または組織部位への局所投与のように、局所的に)または全身的に(例えば、非経口的にまたは経口的に)個体に与えられてもよい。組成物が、静脈内、皮下、分子内、眼内、腹腔内、筋肉内、口腔粘膜、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、頭蓋内、脊椎内、脳室内、髄腔内、槽内、嚢内、鼻腔内投与によるかまたはエアロゾル投与によるように非経口的に与えられる必要がある場合、組成物は水性のまたは生理的に適合する液性の懸濁液または溶液を部分的に含むことが好ましい。従って、担体または媒体は、患者への所望の組成物の輸送に加えて、それ以外には患者の電解質および/または体液量バランスに悪影響を及ぼすことなく、生理学的に許容される。従って、薬剤に対する液状媒体には、通常の生理食塩水(例えば、0.9%塩化ナトリウム水溶液、0.15M、pH 7〜7.4)が含まれる。または、ミニポンプによる骨同化薬のパルス投与の使用を本発明の方法のなかで用いることができる。
【0094】
非経口投与のための有用な溶液は、例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Gennaro, A編), Mack Pub., 1990に記載の、製薬技術分野においてよく知られている方法のいずれかにより調製されてもよい。本発明の治療薬剤の剤形には、例えば、ポリエチレングリコール、植物性オイル、水素化ナフタレンなどのようなポリアルキレングリコールが含まれてもよい。特に、直接投与のための剤形には、グリセロールおよび所望の位置に薬剤を維持するのを補助する、その他の高粘度の組成物が含まれてもよい。例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン酸三カルシウム、ポリブチレート、ラクチド、およびグリコライド重合体ならびにラクチド/グリコライド共重合体を含む、生体適合性の、好ましくは生体吸収性の重合体は、薬剤の放出をインビボで制御する有用な賦形剤でありうる。これらの薬剤に対する他の有用な可能性のある非経口輸送系には、エチレン酢酸ビニル共重合体粒子、浸透性ポンプ、植込み型輸液系、およびリポソームが含まれる。吸入投与のための剤形は、賦形剤として例えば乳糖を含む、または例えば、ポリオキシエチレン- 9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水性溶液としても、または点鼻薬の形で、もしくは鼻腔内に適用されるゲルとして投与するための油性溶液としてもよい。非経口投与のための剤形にはまた、口腔粘膜投与の場合にはグリココール酸塩が、直腸内投与の場合にはメトキシサリチル酸塩が、または膣内投与の場合にはクエン酸(cutric acid)が含まれてもよい。直腸内投与のための坐剤はまた、PTHrPペプチド(単独でまたは骨吸収阻害物質と組み合わせて)をカカオバターのような非刺激性賦形剤または室温では個体でありかつ体温では液体であるその他の組成物と混合することにより調製されてもよい。
【0095】
皮膚表面への局所投与のための剤形は、PTHrPペプチド(単独でまたは骨吸収阻害物質もしくは同化物質と組み合わせて)を放出できる分子を、ローション剤、乳剤、軟膏剤または石けん剤のような皮膚学的に許容される担体とともに分散させることにより調製されてもよい。皮膚を覆う薄膜または層を形成できる担体は、適用を局在化し且つ除去を阻止するのに特に有用である。局所の内部組織表面への投与の場合、液体または半固形組織接着物質中、または組織表面への吸着を促進させることが知られている他の物質中(例えば骨ペースト)に薬剤を分散させてもよい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液を都合よく使用してもよい。または、ペクチン含有剤形のような組織コーティング液を使用してもよい。
【0096】
治療方法は、単一期間の、骨同化薬の間欠投与 (例えば、1〜3ヶ月から15〜18ヶ月間まで変化する期間)を構成する。投与期間は、好ましくは12、15、または18ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、または11ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。または別の態様として、治療方法は、投与期間後の非投与期間の連続(例えば、骨同化薬の間欠投与を3ヶ月および薬剤非投与を3ヶ月の逐次期間)からなる。逐次治療期間は、患者のBMDが回復する(例えば、Tスコアが平均値の-2.0未満もしくは-2.5未満または好ましくは平均値の-1.0未満)まで繰り返すことができる。
【0097】
さらに別の態様として、治療方法にはさらに、骨吸収阻害物質を前記患者に同時にまたは順番に共投与する段階が含まれる。骨吸収阻害物質は、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、ビタミンD類似体、またはカルシウム塩とすることができる。骨吸収阻害物質はまた、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ゾレドロン酸、ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、レボルメロキシフェン、または抱合エストロゲンとすることができる。1つの態様として、患者は一定期間骨同化薬の間欠投与を受け、引き続いて骨吸収阻害物質を単独でまたは骨同化薬と組み合わせて用いた治療を一定期間受ける。現在好ましい態様として、例えば3ヶ月またはそれ以上の期間にわたってPTHrPのような同化物質を最初に投与し、続けて例えばさらに3ヶ月またはそれ以上の期間にわたって抗吸収剤を単独でまたは骨同化薬と組み合わせて投与する。理論により束縛するわけではないが、逆の投与、即ち同化物質の投与前に抗吸収剤を投与すると、同化物質の効果が軽減されてしまう。故に、本発明によれば、PTHrPのような同化物質は、PTHrP/PTH/TIP効果を維持するおよび増強させるために後で使用される抗吸収剤、例えば同化物質の後で第二選択薬として投与されるエストロゲンまたはビスホスホネートによる骨粗鬆症治療と併せて、第一の骨粗鬆症治療とするべきである。
【0098】
しかし、当業者であれば、逐次治療計画は、骨同化薬による治療期間に先立って骨吸収阻害物質による治療期間から開始する可能性もあること、逐次治療期間の長さは変更することができる(例えば1〜18ヶ月)こと、および骨同化薬を骨吸収阻害物質と同時投与することができる(例えば、骨吸収阻害物質単独での治療期間に先立つ骨同化薬および骨吸収阻害物質の逐次治療期間)ことを認識するものと思われる。この場合もやはり上述のように、逐次治療期間(例えば、骨同化薬を3ヶ月、続けて骨吸収阻害物質を3ヶ月)は、患者のBMDが回復する(例えば、Tスコアが平均値の-2.0未満もしくは-2.5未満または好ましくは平均値の-1.0未満)まで繰り返すことができる。
【0099】
骨同化物質は多くの副作用を示すと一般に考えられており、その結果として、これらの薬剤の用量および投与は注意深く制御され、患者は好ましくない副作用の発生がないかどうか注意深く観測される。例えば、PTHrPは、もともとPTHの毒性プロフィールと同様であるかまたはさらに大きいと考えられる毒性プロフィールを伴い、副甲状腺機能亢進症に似た症候群である、悪性腫瘍による高カルシウム血症のほとんどの場合に関与すると思われていた。
【0100】
しかし、他の骨同化物質の毒性プロフィールは、PTHrPに当てはまらないようである。本発明の所見から、例えばPTHに対して安全だと考えられる用量よりも少なくとも20倍高い用量で投与されるにもかかわらず、PTHrPは顕著な副作用を引き起こさないことが示唆される。例えば、PTHrP約50μg〜約400μg用量を皮下に間欠投与(用量後8時間はQ2H)しても、高カルシウム血症を引き起こさないようである。実際に、すでに投与されたいかなる用量でも、PTHrPの投与により高カルシウム血症が引き起こされることは観察されておらず、450μgを超え、1mgまでのような用量は安全で、患者に許容され、かつ効果的である。そしてある場合では、3〜10mgの個々の用量も安全であると見受けられ、50mgまでも、またはそれ以上であっても、患者のモニタリングが適切に行われていれば可能であり、十分に許容される。
【0101】
特に、使用した比較的高い用量にもかかわらず、PTHrPで治療した患者18人で高カルシウム血症(9.9mg/dlを超える血清カルシウムとして実施例1および実施例5に記載の試験において定義される、高カルシウム血症のかなり控えめな定義)の発症の例はなかった。これは、20μg用量のPTHを用いて治療した患者間で報告された高カルシウム血症の発生率が11%および40μg用量を受けた患者間で報告された高カルシウム血症の発生率が28%であることを実証するNeerらの研究と対照的である。興味深いことに、Neerらは、高カルシウム血症を10.6mg/dlより高い血清カルシウムと定義した。本明細書に記載の高カルシウム血症に対するさらに厳密な評価基準9.9mg/dlを用いてNeerらの研究結果を再計算すると、Neerらの研究における高カルシウム血症の発症率はずっと高かったと考えられる。その他の研究者らは、およそ40μgの用量でPTH(1-84)を用い、最大で15mg/dlまでのさらに重篤な高カルシウム血症(これはほとんど致死的である)を経験した。
【0102】
従って、PTHrPにより、治療法としてPTHよりも多くの利点が与えられる。PTHrPは、骨純同化的な作用物質であって、高カルシウム血性ではなく、これまでに調査されてきた用量より比較的高い用量で投与される場合でさえも、その他の副作用がない。第二に、PTHrPは、骨量密度を増加させるのにPTHよりもずっと効果的であると考えられる。第三に、PTHrPはPTHよりも安定である。第四に、PTHrPは、PTHとは明らかに異なりかつさらに好ましい薬物動態を有する。第五に、PTHrPは、骨量を維持するのに必要とされないPTHとは対照的に、成人で骨量を維持するのに関与している。第六に、PTHrPは、より短い期間で治療の終点を達成することが可能であって、このことからヒトへ投与するのにさらに安全であり、例えば3〜9ヶ月使用するだけで、骨肉種(発生)の12ヶ月閾値をまたぐことなくBMDに対して劇的な効果を達成することができる。
【0103】
E. PTHRP類似体の同化作用の生物学的試験
骨形成を促進することができるPTHrPまたはその類似体およびその他の同化物質の合成、選別および使用は、当業者の能力の範囲内である。例えば、PTHrPの種々の候補類似体がヒト患者で骨形成を促進する効果を決定するために、周知のインビトロまたはインビボ試験を使用することができる。インビトロ結合試験の場合、骨芽細胞の特徴を有する永久細胞株であり且つラットまたはヒト由来のPTHrPに対する受容体を有する骨芽細胞様細胞を使用することができる。適当な骨芽細胞様細胞には、ROS17/2細胞 (Jouishommeら、Endocrinology, 130: 53〜60 (1992))、UMR106細胞 (Fujimoriら、Endocrinology, 130: 29〜60 (1992))、およびヒト由来SaOS-2細胞 (Fukuyamaら、Endocrinology, 131: 1757〜1769 (1992))が含まれる。この細胞株は、American Type Culture Collection, Rockville, Md.から入手可能であり、標準的な特定増殖培地で維持することができる。さらに、インビトロ結合試験に、ヒトPTH1またはPTH2受容体を発現している形質転換したヒト胎児腎細胞(HEK 293)を利用することもできる。Pinesら、Endocrinology, 135: 1713〜1716 (1994)を参照されたい。
【0104】
インビトロ機能試験の場合、PTHrPのペプチド断片または誘導体のPTHrP様の類似体活性は、一連の濃度の試験化合物を培養細胞と接触させて、受容体と共役した二次メッセンジャー分子の活性化の刺激、例えば細胞中の環状AMP蓄積の刺激またはプロテインキナーゼCの酵素活性の増加(これらはどちらも従来の試験法により容易に観測できる)を評価することにより試験することができる。Jouishommeら、Endocrinology, 130: 53〜60 (1992); Abou-Samraら、Endocrinology, 125: 2594〜2599 (1989); Fujimoriら、Endocrinology, 128: 3032〜3039 (1991); Fukayamaら、Endocrinology, 134: 1851〜1858(1994); Abou-Samraら、Endocrinology, 129: 2547〜2554 (1991);およびPinesら、Endocrinology, 135: 1713〜1716 (1994)を参照されたい。PTH作用のその他のパラメータには、細胞質内のカルシウムおよびホスホイノシトールの増加、ならびにコラーゲン、オステオカルシンの生合成、およびアルカリホスファターゼ活性の変化が含まれる。
【0105】
PTHのサブフラグメントの作動活性は、ペプチドをラット腎臓培養細胞と接触させて、環状AMPの蓄積(Blindら、Clin. Endocrinol., 101: 150〜155 (1993))および1,25-デヒドロキシビタミンD3産生の刺激(Janulisら、Endocrinology, 133: 713〜719 (1993))を評価することにより分析に成功している。
【0106】
以下の実施例2および実施例3で示されるように、骨形成活性を有するPTHおよびPTHrPは、PTH/PTHrP受容体と特異的に結合して、ヒト腎皮質の細胞膜における、ヒト骨芽細胞様の骨肉腫の細胞膜および無傷細胞(実施例2)における、およびイヌ腎皮質の細胞膜(実施例3)におけるcAMP蓄積の用量依存的な刺激を引き起こす。参照標準となる類似体として[Nle8,18, Tyr34] hPTH-(1-34)NH2またはhPTHrP-(1-36)を用い、用量-反応関係を標準的な非線形回帰分析により作出することができる。種々のPTHrP類似体の相対能力(ユニット/mgとして)は、参照標準となる類似体のEC50のPTHrP類似体のEC50に対する比から決定することができる。EC50は、最大反応(本明細書ではcAMP蓄積)の2分の1を引き起こす用量と定義される。細胞を取り扱うための詳細な手順、試験を設定するための詳細な手順、およびcAMPを定量するための方法は、Sistaneら、Pharmacopeial Forum 20: 7509〜7520 (1994)に報告されている。
【0107】
インビボ試験の場合、実施例4に記載されているように、PTHrPの候補類似体が卵巣を摘出した骨量減少ラットにおいて骨梁のおよび皮質の骨量を増加させる能力によりそれらを特徴付けることができる。
【0108】
実施例5には、骨同化物質としてのPTHrPの有効性を実証する、3ヶ月間にわたる二重盲検の見込み偽薬(placebo)対照無作為臨床試験が記載されている。PTHrPは僅かな副作用を示し、例えば比較的高用量であっても高カルシウム血症の有意な増加が認められることはない。
【0109】
実施例6には、骨同化の生物活性を有するペプチド模倣体および小分子の構造に基づく設計のための、コンピュータシステムとそのコンピュータシステムを使用する方法が記載されている。
【0110】
以下の実施例は、単に例示を目的として提供されるものであって、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0111】
実施例1 骨同化物質PTHRPを用いた閉経後骨粗鬆症の短期間の非常に高用量での治療
副甲状腺ホルモン関連タンパク質、即ち「PTHrP」は、典型的な骨同化物質である。これは当初、致死性の腫瘍随伴症候群、悪性腫瘍による体液性高カルシウム血症、即ち「HHM」に共通する原因として発見された。HHM患者に起こる高カルシウム血症は、主に破骨細胞の骨吸収の著しい活性化に起因する。従って、PTHrPは骨同化物質としての候補である可能性は低いように思われていた。
【0112】
本研究の目的は、短期間PTHrPペプチドを間欠的に高用量投与することで、マイナスの副作用なしにBMDの著しい増加を引き起こすことができるかどうか、そしてそのようにPTHrPが閉経後骨粗鬆症の女性における効果的な骨同化物質である可能性を決定することであった。実施例1のような本明細書に記載される研究は、PTHrPを偽薬治療と比較する3ヶ月にわたる二重盲検の無作為偽薬対照パイロット臨床試験であり、これにより、副甲状腺ホルモン(PTH)が3ヶ月の治療の間に骨塩密度の明らかな増加を引き起こすことができ、PTHrPが治療的に有効に骨量を増加させる際に少なくともPTHと同じくらい効果的であろうことを結論づけた。
【0113】
PTHrPを用いると、腰椎の骨塩密度に見られる絶対的な増加だけでなく増加率も大きく、現在利用可能な骨粗鬆症薬を用いてこれまでに報告されているものに匹敵するかまたはそれを越えている可能性がある。
【0114】
PTHrPは、3ヶ月間だけ高用量で皮下投与されると腰椎のBMDを4.7%増加させ、効果的な同化物質であると思われる。これは、利用可能な抗吸収性の骨粗鬆症薬およびPTHに比べて全く引けを取らない。高用量にもかかわらず、PTHrPは耐用性良好であった。
【0115】
材料および方法
ヒト投与用のhPTHrP-(1-36)および偽薬の調製
以前に報告されているように(Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab 81: 199〜208 (1996))、合成hPTHrP-(1-36)を固相合成により調製した。
【0116】
簡単に言えば、hPTHrP-(1-36)の重量を量り、10mM酢酸溶液に溶解し、滅菌済みの0.2μmシリンジ・フィルターに通してろ過し、無菌ガラスバイアル中に5〜600μgの分割単位で無菌的に分割し、バイアル中に無菌的に密封し、-80℃で凍結し、凍結乾燥した。偽薬入りのバイアルも全く同じ方法で調製した。バイアルは-80℃で保存した。ペプチド含量は、アミノ酸分析法、PTHrP-(1-36) RIA(後述)またはPTHrP-(1-36) RNA法、およびアデニリルシクラーゼ生物学的試験法(後述)により確認した。発熱原試験は、対照として大腸菌(Escherichia coli)0113由来のごく一般的な内毒素を用い、カブトガニ変形細胞分解産物のゲルクロット試験法(Associates of Cape Cod社, Falmouth, MA)により行った。バイアル中の内毒素濃度は検出下限値に満たなかった(0.03内毒素単位/mL未満)。バイアルには、ピッツバーグ大学医療センター調査薬局(University of Pittsburgh Medical Center Investigational Pharmacy)との連携でラベル付けを行った。各投与の開始直前に、バイアルのPTHrP-(1-36)に0.9%生理食塩水1.0mLを加えて再構築した。hPTHrP(1-36)の重量は、4260.6ダルトン(Da)である。ペプチド構造は、質量分析法およびアミノ酸分析法により確認した。純度が99%を越えていることを、逆相高速液体クロマトグラフィー法により確認した。
【0117】
アデニリルシクラーゼ生物学的試験法
hPTHrP-(1-36)の生物学的効果は、コンフルエント(集密的)なヒト骨肉腫細胞SaOS2で行うアデニリルシクラーゼ試験により、以前に詳細に報告されている方法(Everhart-Cayeら、 J Clin Endocrinol Metab 81: 199〜208 (1996); Orloffら、Endocrinol 131: 1603〜1611 (1992); Merendinoら、 Science 231: 388〜390 (1986))を用いて試験した。簡単に言えば、SaOS2細胞は、American Type Culture Collection, Rockville, MDから入手し、これを10%FBS、2mmol/L L-グルタミン、ペニシリン(50 U/mL)、およびストレプトマイシン(50μg/mL)を添加したマッコイ培地中で維持した。試験のおよそ10日前に、細胞を24ウェルプレートで培養して、試験前のおよそ7日間コンフルエント(集密的)としておいた。細胞をイソブチルメチルキサンチン(500mmol/L)とともに25℃で10分間インキュベートし、ペプチドを添加して、さらに10分間25℃でインキュベーションを継続して行った。培地を吸引し、細胞を5%トリクロロ酢酸に溶解し、この抽出物をトリオクチルアミン: Freon溶液(25:75%)により中和した。抽出物中のcAMP含量をRIA法により測定した(Biomedical Technologies, Stoughton, MA)。ペプチドを少なくとも3回の別試験で試験した。
【0118】
PTHrP RIA法
抗血清S2を用いたhPTHrP-(1-36) RIA法が、以前詳細に報告されている(Yangら、Biochem., 33: 7460〜7469 (1994); Burtisら、 N. Engl. J Med, 322: 1106〜1112 (1990))。簡単に言えば、以前に報告されているように(Orloffら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103 (1989))、ラクトペルオキシダーゼ法を利用して、放射性リガンド(以下を参照されたい)として使用するための125I標識Tyr36 PTHrP-(1-36)アミドを調製した。二重とした(duplicate)試験用標準液または試料(100μL)を、P10BT緩衝液(10% BSAおよび0.1% Triton X-100を含有するPBS)で1500倍希釈したS-2 100μLと4℃で一晩インキュベートした。ヨウ化Tyr36の、P10BT緩衝液(10% BSAおよび0.1% Triton X-100を含有するPBS)で1500倍希釈したS2溶液。ヨウ化Tyr36 hPTHrP-(1-36)アミド(2000-8000cpm)のPBT緩衝液をチューブ管に加え、この混合物を4℃で一晩インキュベートした。デキストラン被覆活性炭を用いて相分離を行った。試験法の感度は50pmol/Lである。抗血清は、hPTHrP-(1-74)、(1-36)および(1-141)を同程度の親和性で認識するが、hPTHrP-(37-74)とまたはhPTH-(1-34)もしくはhPTH-(1-84)と交差反応しない(Yangら、Biochem., 33: 7460〜7469 (1994))。
【0119】
血清および尿生化学検査
血漿25-ビタミンD濃度のような、ピッツバーグ大学医療センターの臨床化学実験室(University of Pittsburgh Medical Center Clinical Chemistry Laboratory)での日常的な化学および血液試験に対して、血液を分析した。オステオカルシンは、Gundbergら、J Clin Endocrinol Metab 83: 3258〜3266, (1998)(参照として組み入れられる)に報告されているように測定した。血清N-テロペプチド(N-Tx) (Osteomark)および尿デオキシピリジノリン(DPD) (Pyrilinks-D)をそれぞれ、Ostex International, Seattle WAおよびQuidel Corp, Santa Clara CAから市販されているキットを用いて測定した。
【0120】
被験者
この試験のため、骨粗鬆症を患うも一貫して健常な閉経後の女性16人を同定した。全被験者には、インフォームド・コンセントを行った。実験群および対照群の参加者は、類似した年齢(平均年齢およそ65歳)、体重、身長、肥満指数(BMI)、閉経からの年数、エストロゲンの(使用)年数、カルシウム摂取率であり、類似の血漿25ビタミンD濃度を有していた。両群は、腰椎に骨粗鬆症が見られた。
【0121】
この試験を開始する前、各被験者は、この試験の開始時におよび終了時に、腰椎および股関節部の骨塩密度スキャン(DXA)を受けた。採択基準には、腰椎でのTスコアが-2.5未満、閉経後3年を越えていること、エストロゲン補充を少なくとも3年間受けていること、および概ね良好な健康状態であることが含まれた。除外基準には、ビスホスホネート、カルシトニン、または選択的エストロゲン受容体修飾物質を含む、骨粗鬆症の任意の医薬品の過去における使用が含まれた。カルシウムまたは骨代謝に影響を及ぼす可能性がある医薬品または作用物質(例えば、チアジド、非生理的用量の甲状腺ホルモン、糖質コルチコイド、リチウム、アルコールなど)を現在使用していることもまた、除外基準とした。全被験者にインフォームド・コンセントを行った。この手順は、ピッツバーグ大学施設内治験審査委員会(University of Pittsburgh Institutional Review Board)により承認を得た。
【0122】
試験手順
ヒト臨床試験でのPTHrPの使用は、FDA(IND#49175、参照として本明細書に組み入れられる)により承認を得た。この手順は、ピッツバーグ大学施設内治験審査委員会により承認を得た。これは、無作為化された二重盲検偽薬対照臨床試験とした。一次効果指標は腰椎の骨塩密度とした。二次効果指標は、股関節部および大腿骨の骨塩密度、骨代謝回転マーカー、血清カルシウム、血清クレアチニン、腎臓のリン処理ならびに有害事象とした。
【0123】
被験者16人は、PTHrPまたは偽薬(PTHrPを含有していないが同じように調製された空バイアル)のどちらかによる治療を3ヶ月受けるように無作為化された。各被験者はまた、一日当たりビタミンD 400IUおよびカルシウムを炭酸カルシウム(Os-Cal, Smith Kline Beecham/Glaxo, King of Prussia, PA)として1000mgを受け、これはPTHrPまたは偽薬治療の開始の2週間前から始められた。被験者は、PTHrPまたは偽薬の-20℃での自宅保存、再構成および自己注射について教えを受けた。バイアルは、被験者により、使用直前に無菌の静菌性生理食塩水1.0mlの中で再構成されて、1日当たりPTHrPの平均用量410.25μg、または偽薬生理食塩水とし、そして腹部皮下脂肪中に自己注射された。被験者は、試験の0、14、30、60および90日目に、血液および尿試験のために戻ってきた。最後の骨密度試験は、試験の第90日目に行われた。
【0124】
試験の服薬遵守
偽薬群中の患者1人が3日後に試験から外れた。各群中の残る患者は、事無く試験を完了した。その後のデータ解析には、開始時の患者16人、ならびに3ヶ月の試験を完了したPTHrP被験者8人および偽薬被験者7人が含まれる。
【0125】
安全面の配慮
被験者は、高カルシウム血症、発疹、GI(疾患)の愁訴、心血管(疾患)の愁訴もしくは症候、またはその他の非特異的な愁訴がないかどうか、0、2、4、8、および12週目に観察した。患者は、各来院時、即ち試験の0、14、30、60および90日目に副作用に関して質問を受けた。
【0126】
骨密度測定
脊椎および股関節の骨密度測定は、Model2000デンシトメータ(Hologic Inc. Bedford MA)を用いて盲目的に測定された。この結果は、骨密度測定に熟達した内科医2人により盲目的にかつ独立して精査された。
【0127】
統計解析
統計解析は、ソフトウェアExcel(Microsoft, Seattle, WA)を用い、対応のないスチューデントのt検定(Student's unpaired T-test)により行った。P値が0.05未満を有意と見なした。
【0128】
結果
対象者の基本属性
2群中の対象者の基本属性は、表Iに示されている。被験者は、類似した年齢、体重、身長、肥満指数(BMI)、閉経からの年数、エストロゲンの(使用)年数、カルシウム摂取率であった、そして類似の血漿25ビタミンD濃度を有していた。偽薬群では、2人が喫煙者であり、1人が甲状腺機能低下症のために甲状腺ホルモンの標準的な補充投与を受けていた。両群は、腰椎に骨粗鬆症が見られた。
【0129】
試験の服薬遵守
偽薬群中の患者1人が、皮下注射後、息切れおよび胸苦しさのため、3日後に試験から外れた。各群中の残る患者は事無く試験を完了した。その後のデータ解析には、開始時の全患者16人、ならびに3ヶ月の試験を完了したPTHrP被験者8人および偽薬被験者7人が含まれる。
【0130】
一次効果指標
L/S BMD
試験の3ヶ月にわたる腰椎のBMD変化は、図4に示されている。左パネルは、DXAにより測定される骨塩密度の変化をベースラインからの変化百分率として示している。右パネルは、同じデータをベースラインからの骨塩密度の絶対変化(単位 gm/cm2)として示している。各パネルにおいて、太線はPTHrPで治療した被験者(n=8は、PTHrP治療患者8人全員が含まれることを示している)を表し、破線は偽薬を受けた被験者を表す。
【0131】
偽薬群では、本明細書に記載されているように、除外者(outlier)を含む(+)および除外者を除く(-)データが示されている(n=6/7は、除外者を含むまたは除く、偽薬を受けている被験者の数を示す)。エラーバーはSEMを示す。P値は、対応のあるスチューデントのt検定(Student's paired T-test)により決定した。左パネルに示すように、PTHrP群における腰椎でのBMDの増加は3ヶ月間で4.72%であった。対照的に、偽薬群における変化はもっと少なく、1.4%(p=0.025)であった。偽薬群におけるこの驚くべき増加の大きさには、被験者1人の増加量6.5%が反映されていた。たった1人の偽薬群の除外者のBMDが顕著に増加(6.5%)した理由は不明である。この増加は、DXAスキャンの独立した盲目的な精査により確認され、位置決めまたはその他の技術的に考慮すべき事柄が原因ではなかった。この被験者は、他の偽薬被験者とは、開始時または終了時における全股関節部または大腿骨頚部のBMDは異なっておらず、ベースライン(開始時)の脊椎BMDに関して相違がなかった。試験前または試験後に脊椎圧迫骨折の証拠はなく、大動脈または関節石灰沈着はなかった。この被験者は、本試験で血漿25ビタミンD濃度が最も低い(16ng/ml)うちの1人であり、この患者での増加が顕著な成分は、軽度の骨軟化症の是正を反映していた可能性がある。この患者を除くと、偽薬群における増加は0.6%(p=0.003)となった。この結果をBMDの絶対変化(単位gm/cm2)として表した場合(右パネル)、PTHrP群における増加は0.0375gm/cm2となり、偽薬群においては、除外者を含む(p=0.022)かまたは除く(0.003)かに応じて、0.011または0.005gm/cm2となり、同様の所見が得られた。
【0132】
二次効果指標
大腿骨頚部および全股関節部のBMD
ベースラインからの変化百分率として表された全股関節部および大腿骨頚部でのBMD変化が、図5に示されており、腰椎での変化と比較されている。淡灰色の棒グラフは偽薬群(PBO)を示し、黒色の棒グラフは実験群(PTHrP)を示す。L/Sデータは図4に示されたデータと同じものであり、除外者が含まれる。エラーバーはSEMを示し、P値は対応のあるスチューデントのt検定により決定した。試験中、どちらの股関節部位においてもPTHrPとPBOとの間に有意な相違はなかった。
【0133】
骨代謝回転マーカー
図6は、偽薬およびPTHrP治療被験者における3つの異なる骨代謝回転マーカーを図解している。図6(a)は、骨形成マーカーの血清オステオカルシンが、PTHrP治療被験者では試験の間に統計学的に有意な形で増加しているが、偽薬対照では増加していないことを図解している。実際に、図6(a)に図解されるように、血清オステオカルシンの増加は、早くも15日目(血液試料が得られた最も早い期間)で明らかであった。
【0134】
対照的に、図6(b)に示されるように、骨吸収マーカーの血清NTXは、試験の間偽薬対照と同様にしてPTHrP治療被験者でも不変のままであった。二つ目の骨吸収マーカーの尿DPD排泄もまた不変であった。図6(c)を参照されたい。3つの図の全てにおいて、破線は偽薬群を、実線はPTHrP群を示している。エラーバーはSEMを示し、P値は反復測定のANOVAを用いて決定した。これらの所見から、PTHrPは、正常な骨吸収速度をさらに刺激することなく、骨形成を選択的に刺激することが示唆される。
【0135】
血清および尿化学検査
図7は、偽薬およびPTHrP治療被験者における血清の総カルシウムおよび血清イオン化カルシウムを図解している。破線は偽薬群を、実線はPTHrP群を示している。エラーバーはSEMを示し、P値は反復測定のANOVAを用いて決定した。カルシウム量は、偽薬対照においてだけでなくPTHrP治療被験者においてもまた正常かつ一定のままであった。被験者は誰も、血清の総カルシウムまたはイオン化カルシウムの有意な増加を生じなかった。血清クレアチニンも同様に、PTHrPおよび偽薬被験者の双方で正常のままであった(第90日の、血清クレアチニン平均値±SEM = 0.825±0.05mg/dl(PTHrP群) 対 0.84±0.06(偽薬群)、p = ns)。血清リンもまた、尿細管リン最大量(3.3mg/dl±0.27 (PTHrP群) 対 2.6±0.24(偽薬群)、p = ns)と同様、試験の初めから終わりまで両群で類似していた(3.2mg/dl±0.18 (PTHrP群) 対 2.9±0.17(偽薬群)、p = ns)。
【0136】
図8は、選択された、以前に公表されている骨粗鬆症の臨床試験からの結果とのPTHrPの同化活性の比較を図解している。「Ralox 150」は、Delmas PDら、N Engl J Med 337: 1641〜7, (1997)を参照し;「Ralox 120」は、Ettinger Bら、JAMA 282: 637〜45, (1999) を参照し;そして「カルシトニン」は、Chestnut Cら、Osteoporosis Int 8 (suppl 3): 13(1998) を参照し、;「アレンドロ(alendro)」、「リセドロ(risedro)」および「ゾレドロ(zoledro)」は、アレンドロネート(Liberman UAら、N Engl J Med 333: 1437〜43, (1995)およびMurphy MGら、J Clin Endocrinol Metab 86: 1116〜25, (2001))、リセドロネート(Fogelman Iら、J Clin Endocrinol Metab., 85: 1895〜1900, (2000)およびMcClung MRら、N Engl J Med 344: 333〜40, (2001))、およびゾレドロネート(Reid IRら、N Engl J Med 346: 653〜61, 2002)を用いた研究を参照している。「PTH」は、副甲状腺ホルモンを用いた2つの研究(Lindsay Rら、Lancet 350: 550〜5 (1997)、およびNeer RMら、N Engl J Med 344: 1434〜41 (2001))を参照し、そして「PTHrP」は、現在の試験を参照している。これらの参考文献のそれぞれがこれにより、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0137】
有害事象
PTHrP群の被験者は誰も、衰弱、悪心、嘔吐、下痢、便秘、潮紅、筋痙攣またはアレルギー性の現象を経験することはなかった。PTHrP被験者1人が、3度目の注射後、立った状態で30秒の心悸亢進を経験したが、これはその後の注射で再発はしなかった。PTHrP被験者全員が試験を完了した。対照的に、偽薬群の被験者1人が、試験の第3日目の注射後に潮紅、眩暈および悪心を経験し、それでこの被験者は試験から外された。
【0138】
考察
これらの試験から、PTHrPは、ごく短期間にわたって非常に大量に皮下投与されると脊椎の骨密度の統計学的におよび生物学的に注目に値する増加が引き起こされることが示唆される。これはいくつかの理由で驚きである。第一に、PTHrPはもともと、悪性腫瘍による体液性高カルシウム血症におけるその骨異化作用の結果として同定された。第二に、3ヶ月でほぼ5%の脊椎BMDの速度増加および絶対的増加は、多くの現在利用可能な抗吸収性の骨粗鬆症医薬品を用いて観察されたものよりも大きい(図8を参照されたい)。実際に、この規模の増加は、カルシトニンでもラロキシフェンでも、これらの薬剤が3年もの長い間投与される場合でさえ報告されていない。エストロゲンは脊椎BMDを同様に増加させるが、5%変化させるには3年の治療が必要となる。エチドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、およびゾレドロネートを含むいくつかのビスホスホネートを用いて観察された変化は5%に等しいかまたはこれを超えるが、3ヶ月よりもずっと長く、通常1年またはそれ以上の年数がかかる。実に、観察された変化は、これまでに報告されている3ヶ月間にわたってPTHを用いた試験で観察されたものと比べて遜色がなく、これを超えている可能性もある。利用可能な抗吸収剤による治療という観点から見れば、短期で高用量のPTHrPの効果は顕著である。
【0139】
本試験で使用したPTHrPの用量は、類似のPTHの試験で使用された用量と比べて多かった。本試験の被験者は6.56μg/kg/日を受けたが、これはPTHrPを受けた被験者8人では平均して1日当たり410.25μgであった。これは、骨粗鬆症の試験で一般に使用されたhPTH(1-34)の用量(20〜40μg/日)よりもおよそ10〜20倍多い。PTHの用量が20μg/日を超えると、ヒトでは高カルシウム血症およびその他の副作用が伴う。従って、健常被験者が高カルシウム血症、体位性低血圧症、悪心、潮紅またはその他の副作用を発現することなく、この規模の用量を寛容したのは驚きである。PTHrP(1-36)は、分子量がPTH(1-34) (およそ4200Mr)と非常に近いので、この相違は、使用した2種のペプチドのモル量の相違によるものではない。この相違はまた、共通のPTH/PTHrP受容体との異なる相互作用によるものでもない:hPTH(1-34)およびhPTHrP(1-36)はどちらも類似のまたは同一の結合速度およびシグナル伝達活性化の特性を示す。重要なことには、hPTH(1-34)と、インビトロでおよび同様に健常人に静脈内投与してインビボで直接比較すると、PTHrP(1-36)はhPTH(1-34)と能力が同等である。本発明者らは、静脈内投与されたPTHrP(1-36)の半減期(T1/2)が6分であって、hPTH(1-34)に対して報告されている5〜6分と変わらないことを実証しているので、血清代謝クリアランス率の相違も同様にして、説明としては可能性が低い。
【0140】
2種のペプチドによる骨格作用の相違は、皮下注射後のPTHおよびPTHrPの異なる薬物動態学的特性に関連している。ヒトPTH(1-34)は、2つの試験で、注射後30〜45分で最高血漿濃度に到達することが報告されているが、PTHrPの最高血漿濃度は皮下投与後15分にまたはそれ以前に現れることを本発明者らは報告している。実際に、15分の時点が本発明者らが調べた最初の時点であったことから、また循環性のPTHrP値はこの最初の15分の時点では顕著に減少している状態にあると思われたことから、その最高点はずっと速くに、恐らく5〜10分に現れる可能性が非常に高い。従って、hPTHrP(1-36)は、皮下注射後、PTHよりも速く吸収され、PTHrPの血漿濃度は、PTHの血漿濃度よりも速くに、その最高点に到達して減少する。
【0141】
PTHと比べてPTHrPの異なる吸収およびクリアランス動態が、PTHrPの大量摂取の必要性ならびにこれらの大量摂取にもかかわず、試験患者において高カルシウム血症およびその他の毒性が観察されないことの根拠となっている。この明らかな安全性は、本発明者らの以前の試験(さらに7人の被験者が、同じ用量6.56μg/kg/日を2週間受けて有害事象はなかった)、およびもう一つの試験(この用量を健常者3人に単回投与として投与した)により支持される。このように、これらの大量のPTHrPを1日、2週間または3ヶ月間受けている健常被験者合計18人において、有害事象に直面することはなかった。
【0142】
力学的には、骨代謝回転マーカーのデータ(図6 (a)、(b)、および(c)を参照されたい)から、PTHrPは、PTHにより観察された骨吸収の増加を伴うことなく、純粋に骨格に対して同化作用を与える可能性があることが示唆される。従って、形成刺激特性も吸収刺激特性も示すPTHとは対照的に、PTHrPは付随的な吸収刺激作用なしに、選択的な骨芽細胞のまたは同化の作用を有するものと思われる。PTHに対する吸収反応はエストロゲンにより打ち消されないので、吸収作用がないのは相伴うエストロゲンの使用が原因である可能性は低い。興味深いことに、本試験のBMD増加率は非常に大きかったが、形成マーカーであるオステオカルシンの増加総量はPTHを用いて報告されたものと同様であるか、またはそれよりも有意に低かった。BMDのかなり劇的な増加を伴いつつも、明らかに形成の増加が相対的に低いのは、吸収刺激作用が明らかにないことの生化学的な証拠を支持するものである。これらの所見は、骨生検および定量的な組織学的骨形態計測により確認することができる。
【0143】
以前の試験により、PTHは3ヶ月でまたはそれよりかなり前に骨吸収を有意に増加させることが示されているので、吸収作用がないことが、PTHrPの短期間(3ヶ月)投与によるものである可能性は低い。例えば、Lindsayらの試験(Lancet 350: 550〜555 (1997))において、尿NTXにより評価された吸収は、2週ですでに上昇し、そして3ヶ月で25%まで増加した。Finkelsteinら(N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994))は、2つの異なる骨吸収マーカーの尿ヒドロキシプロリンおよびピリジノリンが、PTHによる治療後、3ヶ月でおよそ200%まで増加することを実証した。同様に、Hodsman(J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜628 (1997))は、尿ヒドロキシプロリンもNTXも、PTHによる治療の僅か4週までに有意に増加することを実証している。
【0144】
同様に、吸収作用がないのは、相伴うエストロゲンの使用が原因である可能性は低い。第一に、同じ種類の解離が、エストロゲンを使用していない閉経後の女性における本発明者らの以前の試験で観察された(Plotkinら、J Clin Endocrinol Metab 83: 2786〜2791 (1998))。第二に、PTHに対する吸収反応は、3ヶ月の時点では、Roeらの試験でもLindsayらの試験でもエストロゲンを与えた女性において容易に明白である(Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, San Diego, CA, June 12〜15, 1999, p.59 ; Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997))。このように、現在までに利用できるデータから、PTHrPは、これまで使用されている用量が、これまで観察されている持続期間に関して、PTHとは異なる可能性があり、そして純粋に同化作用的影響を示す可能性があると思われる。
【0145】
上述のように長期かつ大規模な試験において、選択的な同化作用が再現可能であるとすれば、PTHとPTHrPとの間の骨形成および吸収の相違はまた、上述のように、皮下吸収後のその異なる薬物動態に起因している可能性があると仮定される。骨芽細胞またはその前駆細胞をPTHにインビトロでまたはインビボで長時間曝露すると同化反応を減少させるが、これは破骨細胞の吸収反応を増加させることがよく知られている(Rosen & Bilezikian, J Clin Endocrinol Metab. 86: 957〜964 (2001) ; Dempsterら、Endocrine Reviews 14: 690〜709 (1993); Dobnig & Turner, Endocrinology 138: 4607〜4612 (1997)を参照されたい)。偶然の発見による、PTHの場合と比較した皮下注射後のPTHrPの吸収およびクリアランスの増強は、吸収バランスとの対比では形成にさらに有利に働く可能性がある。
【0146】
本試験で使用したPTHrPの用量は、非常に多かった。本試験の被験者は、PTHrPを受けた被験者8人では1日当たり平均用量410.25μgを受けた。これは、骨粗鬆症の試験で一般に使用されたhPTH(1-34)の用量(20〜40μg/日)よりもおよそ10〜20倍多い。PTHの用量が20μg/日を超えると、高カルシウム血症およびその他の副作用が伴うことが知られている。従って、健常被験者が高カルシウム血症、体位性低血圧症、悪心、潮紅またはその他の副作用を発現することなく、この規模のPTHrP用量を寛容したのは驚きである。PTHrP(1-36)は、分子量がPTH(1-34) (およそ4200Mr)と非常に近いので、この相違は、使用した2種のペプチドのモル量の相違によるものではない。この相違はまた、共通のPTH/PTHrP受容体との異なる相互作用によるものでもない:hPTH(1-34)およびhPTHrP(1-36)はどちらも、ヒトにおいて、類似のまたは同一の結合速度およびシグナル伝達活性化の特性を示す。静脈内投与されたPTHrP(1-36)の半減期(T1/2)がおよそ6分であって、hPTH(1-34)に対して報告されているおよそ5〜6分と変わらないことが実証されているので、血清代謝クリアランス率の相違も同様にして、解釈としては可能性が低い。理論により束縛するわけではないが、考えられる解釈の1つは、2種のペプチドによる骨格作用の相違は、皮下注射後の、PTHおよびPTHrPの異なる薬物動態学的特性に関連するということである。ヒトPTH(1-34)は、注射後およそ30〜45分で最高血漿濃度に到達するが、PTHrPの最高血漿濃度は、皮下投与後およそ15分にまたはそれ以前に現れる。従って、hPTHrP(1-36)は、皮下注射後、PTHよりも速く吸収される可能性が高く、そしてPTHrPの血漿濃度は、PTHの血漿濃度よりも速くに、その最高点に到達して減少する。
【0147】
これらの薬物動態学的相違によりまた、観察された選択的なまたは純粋な同化反応が説明されるかもしれない。骨芽細胞をPTHにインビトロでまたはインビボで長時間曝露すると同化反応を減少させるが、これは破骨細胞の吸収反応を増加させることがよく知られている。PTHの場合と比較した、皮下注射後のPTHrPの吸収およびクリアランスの増強は、吸収バランスとの対比では形成にさらに有利に働く可能性がある。
【0148】
本試験において、偽薬群およびPTHrP群の双方の被験者は、カルシウムおよびビタミンD栄養補助食品のほかに、一部は、道義上、エストロゲンを同時に受けていたことから、結果的に、偽薬群は、何らかの形で現在認められている骨粗鬆症に対する治療を受けていたことになると思われる。PTHに対するように、PTHrPの同化作用が、エストロゲンの併用により増強されるかどうか今後決定する必要がある。PTHをヒトで用いた試験から一般に、被験者がエストロゲンを受けているかいないかにかかわらず類似の効果が示される(図8を参照されたい)が、PTHrPに関するこの疑問に直接的に取り組んだ試験はこれまでになかった。PTHrPは、その他の抗吸収剤(ビスホスホネート、選択的エストロゲン受容体モジュレーターなど)とともに同時投与されると、より効果的であるかどうかまたはより効果的でなくなるかどうかは、今後決定する必要がある。
【0149】
PTHrP(1-36)を用いた短期の非常に高用量の治療により、脊椎BMDの顕著な増加が引き起こされる。間欠投与されたPTHによる複合のまたは正味の骨吸収および骨同化作用とは対照的に、PTHrPは、吸収要素はほとんどまたは全くなく、主に同化作用を有すると思われる。PTHとPTHrPとの間の相違は、2分子間の受容体相互作用またはシグナル伝達の相違を反映している可能性が高いわけではないが、皮下投与後の2分子の異なる薬物動態学的特性にある可能性が高い。
【0150】
偽薬を4ヶ月間受けていた被験者7人のうち、被験者6人は、股関節部でも脊椎でも骨塩密度(BMD)の顕著な変化を示さなかった。偽薬被験者1人が、実に脊椎BMDの6%の増加を示した。これは、偽薬に対して、明らかに予想される反応または通常直面する反応ではない(The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998) ; Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001); Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28(1997) ; Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))ことから、この被験者は、ベースラインにあるビタミンD欠乏症、またはX線上明らかとされない偶発的な脊椎圧迫骨折があった可能性があることが示唆される。
【0151】
図4に図解されるように、PTHrPを受けていた被験者8人は、平均値およそ4.75%で腰椎BMDの注目に値する増加を示した。偽薬群の除外者を含む、対照の7人全員と比較すると、この結果は有意である(p=0.026)。真に標準的な偽薬対照6人と比較すると、この結果は非常に有意である(p=0.003)。
【0152】
これらの結果は、いくつかの理由でかなり並外れており且つ驚きである。第一に、利用可能な骨粗鬆症薬の抗吸収剤のどれもが、そのような短期間でこれらの類のBMD増加をもたらすことはない(The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998) ; Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001))。図8に図解されるように、本試験で観察されるBMD増加率は、以前の臨床試験で報告されたBMD増加率よりも大きい。この結果は、極端に迅速である:3ヶ月のPTHrP-(1-36)治療により、2〜3年間上述のような抗吸収剤を用いて一般に観察されない増加がもたらされた。実際に、いくつかの利用可能な抗吸収剤(SERM、カルシトニン、ビタミンD、カルシウム)では、これらのBMD増加は決して達成されない。
【0153】
第二に、この結果は、これまでに最も研究された骨同化物質であるPTHを用いて達成されたものに匹敵するか、またはそれを上回っている(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997) ; Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p.59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))。
【0154】
第三に、必要とされる用量は、驚くほどに高い: 前述のように、PTH-(1-34)の標準用量は、20〜40μg/日の範囲(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p.59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))であり、PTHrP-(1-36)に対して本明細書で使用されている用量よりもおよそ10〜20倍低い。
【0155】
第四に、本試験で投与されたPTHrPの用量が相対的に高いにもかかわらず、有害事象に直面することがなかったのに対し、そのような有害事象が、ずっと少ない用量のPTHで認められた(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555(1997) ; Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p.59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))。ヒトでの無毒性および高用量の必要性は、前述のラットでの所見(等モル用量のPTHrPは、PTHと比べて効果が低くそして毒性が低かった)と同様であるように思われる。前述のように、これらの観察結果は、皮下投与後、PTHと比較したPTHrPの薬物動態の相違が偶然に発見されかつ予測不可能であったことを反映していると思われる。
【0156】
第五に、PTHrPは、HHM患者の劇的な骨塩減少に関与する典型的な骨異化ホルモンと広く見なされている。PTHrPは「間欠」投与(例えば、1日1回)されると、実際には顕著に骨格の同化を促進するという観察結果は、予想されなかった。これは、多くの研究者および製薬会社が10年以上の間(および恐らく70年もの長い間)、骨粗鬆症においてはPTHを用いて仕事をしてきたが、PTHrPが1987年に最初に記述されて以来、それが公知の事実となっていたにもかかわらず、誰もPTHrPを取り入れなかったという事実からも明らかである。
【0157】
最後に、骨粗鬆症の治療のための本発明の治療計画は、もう1つの予期しないおよび予測できない、安全性と関連した長所を有する。前臨床毒性試験では、PTHは2年間成長ラットに投与された。ラットのなかには、およそ1年のPTH療法の後に骨肉種を発現したものもいた。このことから、1年未満の間、同化作用物質を使用することで、さらに長い期間使用される場合よりもヒトを危険にさらすことが少なくなる可能性があると示唆される。ヒトでの試験におけるPTHrPの早期効果から、さらに短い治療継続期間でもヒトでは効果的な可能性があることが示唆される。本試験で使用されたPTHrPの用量が非常に高いにもかかわらず、ヒト被験者で有害事象が観察されていないという観察結果は、これを支持するものである。さらに、純粋にまたは主に同化的な作用物質が使用できることで、抗吸収剤を用いた併用的な、間欠的なまたは逐次的な投薬計画を利用して、骨粗鬆症の治療に対する複合的なアプローチが可能となるかもしれない。本発明の方法によれば、例えば、患者をまずPTHrPまたはその類似体もしくは断片を数ヶ月間用いた後、骨肉種の危険性がない経口の抗吸収製剤に切り替えて治療することができる。
【0158】
要約すると、PTHrP(1-36)を用いたこの短期の高用量の治療により、脊椎BMDの顕著な増加が引き起こされる。さらに高用量(例えば1000〜3000μg/日)を用いた試験でも比較に値する骨密度の増加が見られ、副作用は観察されなかった。同じ期間にわたって間欠投与されたPTHによる複合のまたは正味の骨吸収および骨同化作用とは対照的に、PTHrPは吸収要素はほとんどなく、主に同化作用を有すると思われる。PTHとPTHrPとの間の相違は、2分子間の受容体相互作用またはシグナル伝達の相違を反映している可能性が高いわけではないが、皮下投与後の2分子の異なる薬物動態学的特性にある可能性が高い。PTHrPを非常に高用量で使用したにもかかわらず、ヒト被験者18人で有害事象が観察されることはなかった。PTHのほかに、純粋にまたは主に同化的な作用物質が使用できることで、抗吸収剤を用いた併用的な、間欠的なまたは逐次的な投薬計画を利用して、骨粗鬆症の治療に対するさらなる複合的なアプローチが可能となるかもしれない。
【0159】
実施例2 ヒト骨のおよび腎臓の受容体を用いたPTHRP類似体の特徴付け
本研究の目的は、ヒト骨のおよびヒト腎臓の受容体を用いて、種々のPTHおよびPTHrP類似体を特徴付けることであった。これらの類似体がアデニル酸シクラーゼを刺激する能力についても調べた。本実施例中の方法の詳細な説明については、例えば、Orloffら、Endocrinol., 131: 1603〜1611 (1992) (参照として組み入れられる)を参照されたい。
【0160】
材料および方法
ペプチド
(Tyr36)hPTHrP-(1-36)アミド[hPTHrP-(1-36)]、hPTHrP-(1-74)、およびhPTHrP-(37-74)は、以前に報告されているように(Orloffら、J. Biol. Chem., 131: 1603〜1611 (1992); Stewartら、J. Clin. Invest., 81: 596〜600 (1988))、固相合成により調製した。合成hPTH-(1-34)、(Nle8,18, Tyr34)hPTH-(1-34)、ウシ(b)PTH-(1-34)、ラット(r)PTH-(1-34)、hPTHrP-(1-86)、(Nle8,18, Tyr34)bPTH-(3-34)アミド、(D-Trp12, Tyr34)bPTH-(7-34)アミド、(Tyr34)bPTH-(7-34)アミド、hPTHrP-(7-34)アミド、およびhPTH-(13-34)は、Bachem, Inc. (Torrance, CA)から購入した。bPTH-(1-84)は、米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)を通じて米国立ホルモンおよび下垂体プログラム(National Hormone and Pituitary Program)から入手した。(Tyr36)ニワトリ(c)PTHrP-(1-36)アミドは、Peninsula Laboratories, Inc., Belmont, CAから購入した。hPTHrP-(1-141)は、Genentech, Inc., So. San Francisco, CAにより提供され、アミノ基転移されたrPTH-(1-34)は、Dr. David L. Carnes, Jr. (San Antonio, TX)により提供された。ニワトリPTH-(1-34)アミド、[Nle8,18, D-Trp12]bPTH-(7-18)-hPTHrP-(19-34)NH2および[D-Trpl2]hPTHrP-(7-18) [Tyr34]bPTH-(19-34)NH2は、報告されているように(Caufieldら、Endocrinol 123: 2949〜2951 (1988) ; Chorevら、J Bone Min Res 4: S270 (1989))、固相合成により調製した。使用した全ペプチドに対するペプチド濃度は、アミノ酸分析により決定された値として与えられている。バッチが同じペプチドを全試験で使用した。
【0161】
放射性ヨード化
hPTHrP-(1-36)の放射性ヨード化は、以前に報告されているラクトペルオキシダーゼ法(Orloffら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103(1989); Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))を改良して用いて行った。放射性リガンドの精製は、30cmのμ-BondapakC18カラム(Waters Associates, Milford, MA)を用い、逆相HPLCにより行った。この方法で調製かつ精製された放射性リガンドは、ほぼ例外なくモノヨウ化型から構成される。特異活性はヨード化時に300〜450μCi/μgの範囲に及んだ。放射性リガンドは、イヌ腎臓のアデニル酸シクラーゼ試験において、未標識ペプチドに比べて十分な生物活性を示した(Orloffら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103 (1989))。
【0162】
細胞培養
ヒト骨芽細胞様の骨肉腫細胞株SaOS-2 (American Type Culture Collection, Rockville, MD)は、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、ペニシリン(50U/mL)、およびストレプトマイシン(50μg/mL)を添加したマッコイ培地中で維持した。培地は一日おきに交換し、試験はコンフルエンス(集密状態)から5〜7日後に行った。細胞数は、コールター(Coulter)カウンターを用いて決定した。
【0163】
細胞膜の調製
高精製ヒトRCMは、以前に報告されているように(Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))、不連続ショ糖勾配超遠心を用いて調製した。全工程を、以下のプロテアーゼ・インヒビターの存在下で行った: アプロチニン[10カリクレイン阻害剤単位(KIU/ml)]、ペプスタチン(5μg/ml)、ロイペプチン(45μg/ml)、およびフェニルメタンスルファニルフルオリド(phenylmethanesulfanylfluoride) (10μg/ml)。正常ヒト腎臓皮質は、局部性移行上皮癌、腎細胞癌、または良性嚢胞に対して切除された4つの別個の腎摘出術検体から得た。全個体の腎機能は、血清クレアチニンおよび腎盂造影法により評価したところ正常であった。細胞膜はプールして等分し、そして後に使用するために-70℃で保存した。
【0164】
SaOS-2の細胞膜は、以前に詳しく報告されているように調製した。簡単に言えば、150cm2フラスコ中のコンフルエント後の細胞を、0℃で細胞膜用緩衝液[10mM Tris HCl (pH 7.5), 0.2mM MgCl2, 0.5mM EGTA, 1mMジチオスレイトール, ロイペプチン45μg/ml, ペプスタチン5μg/ml, アプロチニン10KIU/ml、およびフェニルメタンスルファニルフルオリド(phenylmethane sulfanyl-fluoride) 10μg/ml]中にかき取った。細胞破壊は超音波(sonification)により行い、その懸濁液を13,000×gにて4℃で15分間遠心した。沈殿をDounceガラスホモジナイザーにより250mMショ糖を含有する細胞膜用緩衝液(ジチオスレイトールなし)中に再懸濁させた。この懸濁液を、45%ショ糖を含有する細胞膜用緩衝液のクッション上に重層し、70,000×gにて4℃で30分間遠心した。接触界面で層をなす膜分画を回収して、250mMショ糖を含有する細胞膜用緩衝液で5倍希釈し、再遠心した。沈殿を、250mMショ糖を含有する細胞膜用緩衝液中に再懸濁させて等分し、-70℃で保存した。タンパク質濃度は、スタンダードとしてBSAを用い、Lowry法により決定した。
【0165】
受容体結合試験
ヒトRCMを30℃で利用する膜結合試験が以前に報告されている(Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))。ヒトRCMを最終濃度90μg/mlまで添加した。125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)NH2のヒトRCMとの総結合量(TB)は、加えた総カウント数の11%から20%まで変化し、非特異結合(NSB)は2.4〜4.0%に及んだ。125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)NH2の特異結合は、30℃で30分までに平衡に達した。その後の平衡での結合競合試験には、30分のインキュベーション時間を使用した。
【0166】
SaOS-2細胞膜に対する結合試験は、ヒトRCMに対する結合試験のように行った。細胞膜を最終濃度112.5μg/mlまで添加し、特異結合は30℃で60分までに平衡に達した。TBは15〜20%に及び、NSBは4.0〜4.3%までに及んだ。
【0167】
SaOS-2無傷細胞に対する結合は、以下の改良を加えつつ、報告されている(Orloffら、Am J Physiol 262: E599〜E607 (1992))ように行った。結合試験は、キモスタチン(100μg/ml)およびバシトラシン(200μg/ml)の存在下15℃で行った。125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)NH2の特異結合は、15℃で150分までに平衡に達した。従って、競合結合試験には、150分のインキュベーション時間を使用した。細胞生存率は、トリパンブルー排除により評価したところ、標準インキュベーションの終了時点で95%を越えていた。総結合量(TB)は、加えた総放射活性の18〜23%に及び、非特異結合(NSB)は常に5〜7%に及んだ。
【0168】
各細胞膜調製物(ヒト腎臓およびSaOS-2細胞膜)に対するおよび無傷細胞試験(SaOS-2)に対するそれぞれの試験条件下でのインキュベーションの間の放射性リガンドの安定性は、細胞にさらされた125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)が再結合する能力を「新たな」放射性リガンドの結合と比較することにより調べた(Orloffら、J Biol Chem 264: 6097〜6103, (1989); Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))。ヒトRCM、SaOS-2細胞膜、およびSaOS-2無傷細胞に対する125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)の特異結合はそれぞれ、92%、98%、および83%であった。このことから、放射性リガンドの顕著な分解は、それぞれの試験条件下で起こっていないことが示唆された。
【0169】
アデニル酸シクラーゼ試験
アデニル酸シクラーゼ刺激活性は、以下の改良を加えつつ、ROS 17/2.8細胞に対して以前に報告されているように(Merendinoら、Science 231: 388〜390,(1986))、コンフルエントなSAOS-2細胞で調べた。無傷細胞での試験は、15℃で、SaOS-2無傷細胞に対する結合に対して使用されたのと同じ条件で行った(上記を参照されたい)。経時変化実験から、PTHrPおよびPTHに対する最大cAMP刺激は、60分間のインキュベーション後に起こっていることが実証された。従って、各ペプチドに対する用量反応曲線は、結合試験の条件下、15℃で60分間のインキュベーションにより作成した。これらの条件下では、最大刺激は基礎活性を上回って80〜200倍の間で変化した。
【0170】
アデニル酸シクラーゼ活性は、以下の改良を加えつつ、イヌ腎臓の細胞膜に対して以前に詳しく報告されているように(Orloffら、J Biol Chem 264: 6097〜6103,(1989) ; Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))、ヒト腎臓細胞膜およびSaOS-2細胞膜で調べた: 30℃で行った経時変化実験から、最大cAMP蓄積は、ヒト腎臓細胞膜に対しては10分で、SaOS-2細胞膜に対しては30分で起こることが実証された。従って、各ペプチドに対する用量反応曲線は、ヒト腎臓細胞膜では30℃にて10分間で、SaOS-2細胞膜では30℃にて30分間で作成した。無傷細胞のアデニル酸シクラーゼ試験と同様に、腎臓および骨細胞の細胞膜のアデニル酸シクラーゼ試験は結合試験の条件下で行った。別実験からのペプチド用量反応を比較するために、結果は最大cAMP刺激の百分率として表現されている。最大cAMP刺激は、ヒトRCMに対しては基礎活性を上回って3〜8倍まで変化し、SaOS-2細胞膜に対しては2〜7倍まで変化した。
【0171】
データ解析
競合結合実験に対するIC50値およびアデニル酸シクラーゼ用量反応曲線に対するEC50値は、最大反応の50%をもたらすペプチド濃度から決定した。統計学的な相違は、対応のあるおよび対応のないスチューデントの両側t検定により評価した。競合結合データのさらなる解析は、非線形最小二乗法による曲線当てはめコンピュータプログラムLIGAND(Munsonら、Anal Biochem 107: 220〜239 (1980)を用いて実行した。
【0172】
結果
結合試験
3つの組織調製物のそれぞれで放射性リガンドとして125I-hPTHrP-(1-36)を用いた競合結合データを、図9および表II(以下)に示す。放射性リガンドの結合は、調査した各組織で、hPTHrP-(37-74) (これは、予測通り、125I-hPTHrP-(1-36)の結合を阻害しなかった)を除く、全てのPTHおよびPTHrP類似体により完全に置換された。コンピュータプログラムLIGANDによるデータのスキャッチャード解析(図9、下パネル)は、各組織における単一クラスの高親和性受容体部位と一致した。Bmax値から算出された受容体数は、ヒトRCMおよびSaOS-2細胞膜に対して、それぞれ0.24±0.06および0.36±0.08pmol/mg膜タンパク質であり、SaOS-2無傷細胞に対する細胞当たりの受容体は25,900±1500個であった。
【0173】
放射性同位体で標識されたPTHrPの、PTHおよびPTHrP作動薬との結合競合を、まず初めにRCMおよびSaOS-2細胞膜で比較した(表IIおよび図9、パネルAおよびB)。全体的に、RCMにおける選択作動薬の相対親和性は、SaOS-2細胞膜で見られたものと非常に一致していた。rPTH-(1-34)、bPTH-(1-34)、およびcPTHrP-(1-36)は、hPTHrP-(1,36)と比較して同様の相対親和性を示したが、(Nle8,18 Tyr34)hPTH-(1-34)およびcPTH-(1-34)NH2は、両試験系でhPTHrP-(1-36)よりも効果が低かった。bPTH-(1-84)の相対親和性は、アミノ末端類似体よりもおよそ10倍低かった。全体的に見て、これらの試験からは、腎臓と比較して骨におけるPTH/PTHrP結合間の注目に値する相違は明らかにされなかった。
【0174】
アデニル酸シクラーゼ試験
結合試験におけるアゴニスト(作動薬)類似体の相対親和性は、注目すべき例外が2つあったものの、そのアデニル酸シクラーゼ刺激能に反映された(表IIおよび図10)。rPTH-(1-34)は、RCMおよびSaOS-2細胞膜における結合親和性がhPTHrP-(1-36)と類似していたが、双方の細胞膜調製物におけるアデニル酸シクラーゼ刺激能は10倍高かった。低い結合親和性を示したbPTH-(1-84)は、SaOS-2細胞膜のアデニル酸シクラーゼ試験においてhPTHrP-(1-36)に比べてその相対能力が低かったが、RCMにおいてcAMP産生を刺激する際にはhPTHrP-(1-36)と本質的に等しい効力を有していた。
【0175】
無傷細胞調製物と破壊細胞調製物との間に違いがあったのかどうか調べるため、SaOS-2無傷細胞についてもまた調べた(表IIIならびに図9Cおよび10C)。全体的に、試験したペプチド作動薬の相対親和性およびcAMP刺激能は、RCMおよびSaOS-2細胞膜における結果と非常に一致していた。しかし、アミノ末端類似体のいくつかに関する絶対能は、SaOS-2細胞膜またはRCMで観察された絶対能の2〜4倍未満の間で変化した。興味深いことに、rPTH-(1-34)は、SaOS-2細胞においてその結合親和性に比べて二次メッセンジャー結合の増強を示さなかった(表III)、つまりRCMおよびSaOS-2細胞膜で観察されていたパターン(表II)を示さなかった。hPTHrP-(1-74)の親和性は、hPTHrP-(1-36)の親和性よりも実質的に低かったが、この相違はSaOS-2細胞(9倍)に対するよりもRCM(25倍)に対して大きかった。興味深いことに、hPTHrP-(1-141)は、どちらの試験でもhPTHrP-(1-74)より5倍高い親和性を有していたが、hPTHrP-(1-36)より能力は低かった。bPTH-(1-84)の相対親和性は、hPTHrP-(1-74)のそれに類似していたが、前段落に記載のように、これはRCMで有していたようには、SaOS-2細胞またはその細胞膜におけるアデニル酸シクラーゼとの結合増強を示さなかった。
【0176】
実施例3 イヌ腎臓受容体を用いたPTHRP類似体の特徴付け
本研究の目的は、PTHおよびPTHrPに対する腎臓受容体の特性を比較することおよびこの2つのペプチドが同一受容体と相互作用するかどうかを決定することであった。この目的を達成するため、PTH関連ペプチドの[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド(PTHrP-(1-36))、および[Nle8,18, Tyr34]hPTH-(1-34)アミド(NNT-hPTH-(1-34))を放射性同位体で標識し、そしていくつかのPTHおよびPTHrP類似体の結合を評価するために、イヌ腎皮質の細胞膜(CRMC)を用いた競合結合試験にこれを使用した。これらのPTHおよびPTHrP類似体がアデニル酸シクラーゼを刺激する能力についても調べた。本実施例中の方法の詳細な説明については、例えば、Orloff ら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103 (1989) (参照として組み入れられる)を参照されたい。
【0177】
材料および方法
ペプチド
PTH関連ペプチドの(Tyr36)PTHrP-(1-36)アミド(PTHrP-(1-36))は、以前に報告されているように(Stewartら、J. Clin. Invest., 81: 596〜600(1988))、固相合成により調製した。PTHrP-(49-74)および(Cys5, Trp11, Gly13)PTHrP-(5-18) (P1-ペプチド)は、同じ固相合成法を用いて調製した。合成[Nle8,18, Tyr34]hPTH-(1-34)アミド(NNT-hPTH-(1-34))およびウシPTH(bPTH)(1-34)は、Bachem Inc., Torrance, CAから購入した。使用した全ペプチドに対するペプチド濃度は、ペプチドの乾燥重量としてではなく、アミノ酸分析により決定された値として与えられている。
【0178】
放射性ヨード化
ペプチドPTHrP(1-36)およびNHT-hPTH(1-34)の放射性ヨード化は、ラクトペルオキシダーゼ法(Marchalonis, Biochem. J., 113: 299〜305 (1969))の改良法(Thorellら、Biochim. Biophys. Acta, 251: 363〜369 (1971))を用いて行った。ペプチド(10μg/10μl)をNa125I (1mCi/10μl) (Amersham, Arlington Heights, IL)およびラクトペルオキシダーゼ(2μg) (Sigma Chemicals, St. Louis, MO)と混合した。反応を、過酸化水素水の添加(0.03% H202 20μl)により開始させ、計10分間、2.5mm間隔で0.03% H202 20μlをさらに3回添加することにより持続させた。次いで、ヨード化混合物をC18 Sep-Pakカートリッジ(Waters Associates, Milford, MA)に加えた。このカートリッジを0.1%TFA 3mlで洗浄し、次いで0.1%TFAを含有する体積百分率75:25%のアセトニトリル:水3mlにより、2%BSA 30μlを含むホウケイ酸ガラス試験管中に溶出させた。溶出液を凍結乾燥させ、そして30cmのμ-BondapakC18カラム(Waters Associates)を用い、逆相HPLCにより精製した。0.1%TFAを含有する水でカラムを平衡化し、アセトニトリルの0.1%TFA溶液で展開した。125I NNT-PTH(1-34)の場合、使用した濃度勾配は、アセトニトリル33〜43%の60分間直線勾配とした。125I PTHrP-(1-36)の場合、溶出は、アセトニトリル27〜34%の50分間直線勾配で行った。溶出された分画は、1%BSA 30μlを含むホウケイ酸ガラス管(12×75mm)中に回収し、γ線スペクトロメータで放射活性を観測した。
【0179】
放射性リガンドの分析
HPLC精製した放射性リガンドをTris-HCl(50mM) pH 7.5、NaCl(75mM)、およびアジ化ナトリウム(sodium aside)(0.005%)からなる緩衝液100μl中での完全酵素消化にかけた(Brownら、Biochem., 20: 4538〜4546 (1981))。トリプシン(1μg/10μl)、カルボキシペプチダーゼY(1μg/10μl)、ロイシンアミノペプチダーゼ(1μg/10μl)、およびプロナーゼE(2μg/10μl) (全てSigma, St. Louis, MOより)の混合物を添加し、37℃で24時間、消化を行った。反応は、0.1%TFA 100μlを添加して停止させた。消化液100μl分量を、各2nmolのモノヨード化チロシンおよびジヨード化チロシン・スタンダードとともに、C18μ-Bondapakカラムに注入した。流速1.5ml/mmで30mmに渡って、0.1%TFAの15〜30%メタノールの直線勾配によってカラムから溶出させ、分画(600μl)を計測した。214nmでの紫外線吸光度を観測した。
【0180】
細胞膜の調製
高精製されたイヌ腎皮質細胞膜(CRCM)は、Fitzpatrickら(J. Biol. Chem., 244: 3561〜3569 (1969))の手順の改良法を用いて調製した。雑種成犬由来の腎皮質を3倍容(ml:gm)の、5.0mM Tris HCl (pH 7.5)、1.0mM EDTA、6.5KIU/mlアプロチニンおよび50μg/mlバシトラシンを含有する0.25Mショ糖溶液(SET緩衝液)中、4℃で、モーター駆動のテフロン乳棒を2000回転(RPM)で30秒間のストロークを10回行ってホモジナイズした。このホモジネートをある厚さのナイロンメッシュに通してろ過し、1475×gで10mm遠心した。上清を捨てて、沈殿を1倍容の、5mM Tris HCl、1mM EDTA (pH 7.5)、6.5KIU/mlアプロチニンおよび50μg/mlバシトラシンを含有する2.0Mショ糖溶液に再懸濁させた。これを13,300×gで10分間遠心し、沈殿を捨てた。上清をET緩衝液(5mM Tris HCl、1mM EDTA (pH 7.5)、6.5KIU/mlアプロチニン、および50μg/mlバシトラシン)で8倍希釈し、20,000×gで15分間遠心した。上清を捨て、沈殿の白色上層を取り出して、1倍容のSET緩衝液に再懸濁させた。20,000×gの遠心をもう2回繰り返して、白色沈殿を1倍容のSET緩衝液に懸濁させた。これらを「未精製CRCM」と呼ぶ。
【0181】
Segreら(J. Biol. Chem., 254: 6980〜6986 (1979))により報告されている手順の改良法により膜をさらに精製した。上述の白色沈殿を2200×gで15mm遠心し、上清および結果として生じた二層沈殿の上部を取り出して、SET緩衝液に再懸濁させた。これを20,000×gで15mm遠心し、上清を捨てた。次いで、沈殿を不連続勾配の、0.01M Tris、0.001M Na2EDTA (pH 7.5)、6.5KIU/mlアプロチニンおよび50μg/mlバシトラシンに溶解したショ糖溶液上に重層した。この勾配は、39%ショ糖溶液(2ml)、37%ショ糖溶液(4ml)、および32%ショ糖溶液(2ml)で構成されていた。膜を25,000rpm (75,000×g)で、4℃にて90mm遠心した。主要なバンドは、管底面の沈殿のほかに各接触界面に存在していた。一番軽い分画(ショ糖溶液に入っていない)および32%〜37%の接触界面にある分画を予備的に試験したところ、特異結合が最も高くかつ非特異結合が最も低いことが示唆された。また一方で、一番軽い分画は、再結合試験において放射性リガンドの分解がより少ないことが実証された。従って、その後の全実験は、特に指示されている場合を除き、この分画で行った。
【0182】
上記の膜を3倍容のET緩衝液で希釈し、7,800×gで15分間遠心し、1倍容のSET緩衝液に懸濁させ、750μl分量に等分し、そして-70℃で保存した。このように調製された膜は、少なくとも6ヶ月の保存期間、受容体の結合活性を完全に維持していた。従来の結合実験の全てに、共通の膜調製物を使用した。
【0183】
第二の膜調製は上記と同じ手順を用いたが、全工程でロイペプチン(5μg/ml)、ペプスタチン(5μg/ml)、アプロチニン(10KIU/ml)、N-エチルマレイミド(NEM) (1.0mM)、フェニルメタンスルファニルフルオリド(PMSF) (10μg/ml)を存在させて行った(Nissensonら、Biochem., 26: 1874〜1878 (1987))。タンパク質は、スタンダードとしてBSAを用い、Lowry法により測定した。
【0184】
受容体結合試験
結合試験は、最終容量を0.2mlとして、20℃で、シリコナイズした12×75mmのホウケイ酸ガラス試験管中で行った。結合用緩衝液は、50mM Tris HCl (pH 7.5)、4.2mM MgCl2、0.3%BSA、26mM KCl、放射性リガンドおよそ60〜80×103cpm/管、そして必要に応じて未標識ペプチドで構成されていた。後述の放射性リガンドの安定性に基づき、バシトラシンを、125I NNT-hPTH-(1-34)で行う実験の場合には最終濃度100μg/mlまで、そして125I PTHrP-(1-36)の場合には200μg/mlまで添加した。結合は、膜50μgを添加することで開始させた。記載のインキュベーション時間の最後に、50μl分量を三重(triplicate)で、500μlポリプロピレン・チューブ中、1.0% BSAを含有する氷冷した結合用緩衝液300μl上に重層した。チューブを微量遠心分離機中で、およそ16,000×gで4℃3分間遠心した。上清を吸引し、膜に結合した放射性リガンドを含むチューブ先端を切断した。沈殿と上清の双方の放射活性を測定した。
【0185】
放射性リガンドの総結合量(TB)は、125I NNT-hPTH-(1-34)の場合、加えた総カウント数の7.2〜14.6%まで変化し、125I PTHrP-(1-36) の場合、25.5〜30.0%まで変化した。非特異結合(NSB)は、125I NNT-hPTH-(1-34)の場合、1.8±0.3% (±SEM)であり、125I PTHrP-(1-36) の場合、9.9±0.8%であった。インキュベーションチューブおよび洗浄チューブからの放射性リガンドの回収率は、通常的に95%を超えていた。
【0186】
アデニル酸シクラーゼ試験
アデニル酸シクラーゼ刺激活性は、グアニルヌクレオチドにより増幅されたイヌ腎皮質細胞膜(CRCM)のPTH感受性アデニル酸シクラーゼ試験を利用し、以前に詳しく報告されているように(Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80: 1454〜1478 (1987))行って調べた。簡単に言えば、合成PTHrP-(1-36)またはbPTH-(1-34)を二重(duplicate)で、未精製CRCMを含む試験チューブに添加し、α-[32P]cAMPの[32P]cAMPへの変換を30℃で30分間調べた。結果は、媒体のみを含むチューブと比較した、ペプチドを含むチューブ中のアデニル酸シクラーゼ活性の上昇率として表されている。
【0187】
両ペプチドのアデニル酸シクラーゼ刺激活性についてもまた、高精製された32%の接触界面の細胞膜を用いて調べた。インキュベーションは、プロテアーゼ・インヒビター、バシトラシン(200μg/ml)の存在下、20℃で20分間の結合条件の下で行った。この試験法の他の全ての局面は、標準的な試験法と同じとした。
【0188】
データ解析
解離定数(Kd)は、放射性リガンドを用いた競合結合実験と未標識リガンドの増加濃度から得られたデータのスキャッチャード解析により決定した。放射性リガンドとは異なる未標識コンペティター(競合相手)を用いた競合試験では、結合親和性(Ki)は、コンピュータプログラムEBDA(McPherson, KINETIC, EBDA, LIGAND, LOWRY: A COLLECTION OF RADIOLIGAND BINDING ANALYSIS PROGRAMS, pp. 14〜97, Elsevier, Amsterdam (1985))によるIC50値(放射性リガンド特異結合の50%を置換する未標識リガンド濃度)から得られた。統計学的な相違は、対応のあるスチューデントのt検定により評価した。競合曲線のさらなる解析は、超小型コンピュータでの使用を目的としてMcPherson(Ibid.)により改良された、MunsonおよびRodbardの非線形最小二乗法による曲線当てはめコンピュータプログラムLIGAND (Anal. Biochem., 107: 220〜239 (1980))を用いて実行した。1結合部位モデルおよび2結合部位モデルのコンピュータ適合性を比較して、統計学的に好ましいモデルを示した。有意性は、部分F-検定を用いて決定した。
【0189】
結果
リガンド結合;会合の特徴付け
125I NNT-hPTH-(1-34)の特異結合は、20℃では、20分から平衡に達した(図11)。非特異結合は、相対含量が5分までに加えた総放射活性の2.5±0.1% (SEM)となった。その後の全平衡化実験は、インキュベーション時間を20分とした。これらの条件下での特異結合は、125I NNT-hPTH-(1-34)の場合、全結合放射活性の65〜85%に及び、125I PTHrP-(1-36)の総結合の55〜75%に及んだ。
【0190】
結合試験
125I-[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミドの結合阻害は、平衡化条件の下で、未標識[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミド、bPTH-(1-34)、およびPTHrP-(1-36)の濃度を増加させて行った(図12)。PTH類似体は、平均Kiが[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミドでは7.5nMおよびbPTH-(1-34)では6.1nMとなって結合を阻害するうえでPTHrP-(1-36)よりも僅かに効果的(2倍未満)であった。PTHrP-(1-36)に対する結合親和定数(Ki)は、11.5nM(表II、上)であった。
【0191】
放射性リガンドとして125I-PTHrP-(1-36)を使用した場合、3個の合成ペプチドは全て、結合を阻害するうえでほぼ同等の力を有していた(図13)。[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミド、bPTH-(1-34)、およびPTHrP-(1-36)に対する結合解離定数はそれぞれ8.5、10.5、および14.1nMであった(表II、上)。PTHrP-(49-74)および13アミノ酸生物不活性合成アミノ末端PTHrP (P1ペプチド)はどちらも、イヌ腎臓の細胞膜への125I-PTHrP-(1-36)の結合を阻害することができなかった(図13)。
【0192】
平衡での結合データの代表的スキャッチャード・プロットは、図12および13に示されている。PTH類似体に対するBmaxは、2.73±0.31pmol/mgタンパク質であり、PTHrP-(1-36)に対しては、5.08±0.56pmol/mgタンパク質であった。LIGANDプログラムによる両データセットの解析から、単一クラスの高親和性受容体部位が明らかとなった;データは2結合モデルに適合しなかった。
【0193】
要約すると、各未標識PTH/PTHrP類似体は、各放射性リガンドの結合を同程度まで減少させたことから、PTH/PTHrP類似体は、類似のまたは同一の受容体に結合していることが示唆される。スキャッチャード解析から、有意な協調的結合相互作用のない均質クラスの高親和性受容体部位が示された。生物学的に不活性なPTHrP断片は、放射性リガンドと置き換わることができなかった。イヌ腎臓細胞膜におけるPTHrPおよびPTH類似体に対する結合親和性およびBmax値が類似であることを示すこれらのデータはまた、骨由来細胞(Juppnerら、J. Biol. Chem., 263: 8557〜8560(1988))においても、イヌ腎臓細胞膜およびUMR-106骨肉腫細胞(Nissensonら、J. Biol. Chem., 263: 12866〜12871 (1988))においても観察されている。
【0194】
アデニル酸シクラーゼ試験:
結合試験におけるそれらの類似した親和性とは対照的に、bPTH-(1-34)は、イヌ腎皮質でのアデニル酸シクラーゼ試験において、PTHrP-(1-36)よりも実質的に効果的であった(表II)。この関係は、標準的な試験条件(30℃で30分)においても結合試験条件下(20℃で20分、バシトラシンあり)においても見られた。標準的な試験(30℃で30分)においては、bPTH-(1-34)は、PTHrP-(1-36)の効力の6倍を越え、Kmはそれぞれ0.06および0.40nMであった。腎臓細胞膜の存在下では、試験の間にPTHrPの選択的破壊が起こっているという可能性を排除するため、アデニル酸シクラーゼ試験を、放射性リガンドのタンパク質分解は無視できる結果となることが証明されている結合条件の下で行った。平衡での結合試験(20℃で20分、バシトラシンあり)と同じ条件の下では、bPTH-(1-34)によるアデニル酸シクラーゼ刺激は、PTHrP-(1-36)の場合よりも15倍を越えて大きかった。結合試験条件下でのKm値はそれぞれ0.13および2.00nMであった。
【0195】
実施例4 閉経後骨粗鬆症ラットを用いたPTHRP類似体の特徴付け
候補PTHrP類似体は、概ねStewartら、J. Bone Min Res, 15: 1517〜1525 (2000)(参照として本明細書に組み入れられる)の手順に従って、閉経後ラットにおいて、骨量に対するその効果が評価される。本実施例のなかで、直接比較のために3つのPTH/PTHrP分子を選択した: PTH(1-34)、PTHrP(1-36)およびPTH類似体のSDZ-PTH-893(Leu8, Asp10, Lys11, Ala16, Gln18, Thr33, Ala34hPTH(1-34))。6ヶ月試験を実施し、その中で、成体(6ヶ月齢)の媒体処置卵巣切除(OVX)ラットおよび偽処置卵巣切除(OVX)ラットを、PTH(1-34)、PTHrP(1-36)またはPTH-SDZ-893のいずれかを1日当たり40μg/kg受けているOVXラットと比較した。
【0196】
方法
ペプチドおよびペプチド投与
組み換えヒトPTH(1-34)(rec hPTH(1-34)またはLY333334)は、以前に報告されているように(Hiranoら、J Bone Min Res 14: 536〜545 (1999); Frolickら、J Bone Min Res 14: 163〜72 (1999))調製した。PTHrP(1-36)は、以前に報告されているように(Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab 81: 199〜208(1996); Henryら、J Clin Endocrinol Metab 82: 900〜906 (1997); Plotkinら、J Clin Endocrinol Metab 83: 2786〜2791 (1998))固相合成法を用いて調製した。PTHrP(1-36)のヒトおよびラットの配列は同一である。SDZ-PTH-893(Leu8, Asp10, Lys11, Ala16, Gln18, Thr33, Ala34hPTH(1-34))(Gamseら、J Bone Min Res 12 (suppl): S317 (1997))は、固相合成法を用いて調製した。各ペプチドが正しいことをマススペクトルおよびアミノ酸組成により確定し、そして分析的逆相HPLCにより純度が97%を越えていることを確認した。ペプチドは、2%の熱不活化卵巣切除(OVX)ラット血清を含有する0.001N HCl生理食塩水(pH 4.2)に溶解させて皮下投与した。
【0197】
動物
全試験は、Harlan Sprague-Dawley(Indianapolis, IN)由来のウイルスおよび抗体陰性の雌Sprague-Dawleyラットを用いて実施した。全ラットは、5ヶ月齢で偽卵巣切除または卵巣切除された。試験は、卵巣切除または偽手術から1ヵ月後の6ヶ月齢で開始した。ラットは、0.5%カルシウムおよび0.4%リンを含有する食餌で維持した。日照周期は12時間とした。
【0198】
手順
使用した手順は、表IV中に概略した形で記載されている。動物は、表中に記載されているように、10匹の17群に無作為に割り当てた。5ヶ月齢で屠殺された第一群の動物を除く残りの動物は、1ヶ月間観察し、種々の試験ペプチドまたは媒体による処置を6ヶ月齢で開始した。ペプチド処置動物の場合、ペプチドを上述の媒体に溶解させて40μg/kg/日の用量で毎日皮下投与した。媒体処置動物の場合、媒体のみを同じ方法で投与した。
【0199】
化学検査
表XIに記載の血清および尿化学検査は、標準的な自動分析機による方法を用いて行った(Boehringer-Mannheim-Hitachi, Indianapolis, IN)。腎臓のカルシウム含量は、腎臓全体を5%トリクロロ酢酸中に抽出後、カルシウム分析機(Calcette, Midfield, MA)によるカルシウム測定によって決定した。
【0200】
骨量測定
骨量は、骨灰重量ならびに橈骨、大腿骨および全身のDEXA測定を用いて評価した。全身骨塩含量は、Norland DXA Eclipseデンシトメータを用いて決定した。結果はmgで表現される。左大腿骨の骨塩密度(BMD)(単位mg/cm2)、骨塩含量(BMC)(単位mg)、および断面積(X-面積)(単位cm2)は、S. Orwoll (Oregon Health Sciences University, Portland OR)により行われたように、Small Animal Regional High Resolutionソフトウェアと連結した校正機能付きHologic QDR 4500Aデンシトメータを用いて決定された。左橈骨の最大長の測定は、Fowler/Sylvac Ultra-Cal IIIキャリパ(Newton, MA)を用いて行った。橈骨の灰重量は、報告されているように(Hockら、J Bone Min Res 7: 65〜72 (1992); Hockら、Endocrinology 125: 2022〜2027 (1989))、非骨格組織の橈骨を注意深く洗浄後、エーテル中で48時間脱水し、続いて24時間風乾し、マッフル炉(Barnstead/Thermodyne, Dubuque, IA)中、850℃で16時間灰化させて決定した。灰重量は、微量天秤を用いてmg単位で記録した。
【0201】
組織学的骨形態計測
組織学的骨形態計測は、表IVに記載されているように、屠殺後の各動物の右脛骨のメチルメタクリレート包埋切片について行った。動物は、屠殺の7日前および3日前にカルセインを30mg/kgで皮下投与することにより標識した。表IV〜VIに示されているように、標準的な組織学的形態計測を行った(Parfittら、J Bone Min Res 2: 595〜610 (1987))。
【0202】
強度の生体力学的測定
大腿骨の中央骨幹での3点曲げ試験および椎骨L5圧縮試験は37℃で行った。大腿骨頚部の剪断は室温で行った。これらの試験の完全な方法は、以前に報告されている(Satoら、Endocrinology 138: 4330〜4337 (1997); TurnerおよびBurr, Bone 14: 595〜608 (1993); Satoら、Endocrinology 139: 4642〜51 (1998) (それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。
【0203】
統計解析
統計解析は、ソフトウェアSASを用いて行った。処置と時間との間に有意な相互関係があったかどうか、また作用物質間で相違があったかどうかを決定するために、2元配置分散分析を行った。有意な相互関係があった場合には対比T検定により、そして有意な相互関係が認められなかった場合にはダンネットの検定により、対比較を行った。有意水準はp<0.05に設定した。
【0204】
結果
PTH、PTHrPおよびSDZ-PTH群の大腿骨の断面積、大腿骨の骨塩含量、および骨塩密度において、SDZ-PTH > PTH > PTHrPの順位で、統計的におよび量的に有意な増加が認められた(表VIIIを参照されたい)。大腿骨の骨塩含量(図14)は、ペプチド処置群のそれぞれにおいて、評価した3時点のそれぞれで有意におよび顕著に増加した。処置による大腿骨の長さの変化は認められなかった(表VIIIを参照されたい)。
【0205】
3種のペプチド処置群における全身BMCを、その対応時間のOVX対照と比較した場合、注目に値する相違はなかった(詳細については、表VIIIを参照されたい)。橈骨灰重量(表VIIIを参照されたい)は、試験の間、ペプチド処置動物群において有意に増加し、OVXおよび偽処置対照群の双方で観察された値を越えて増加していた。
【0206】
骨代謝回転の変化だけでなく、骨格変化の構造的特徴を評価するため、組織学的骨形態計測を行った。図15および16に示すように、骨梁領域(Tb. Ar)は、偽処置動物と比べて、OVX対照動物では顕著に減少しかつ試験の初めから終わりまで低いままであった。対照的に、3種のペプチド処置群の全てにおいて、骨量測定で観察されたのと同じ順位: SDZ-PTH > PTH > PTHrPで、骨梁領域が顕著に増加した。処置動物における骨梁領域(Tb. Ar)の増加は主に、骨梁間隔の減少をもたらした骨梁の厚みの増大の結果であった(表Vを参照されたい)。
【0207】
骨形成(MS/BS)は、全ての動物において最初の30日間にわたって経時的に減少した(図15; より詳しくは表VIを参照されたい)。しかし、処置開始後の各時点で、骨形成のパラメータ(要素)は、年齢が適合したOVXおよび偽処置動物と比べて、3種のペプチド処置動物群の全てで有意に増加した(表VI、図15)。
【0208】
骨吸収パラメータは、5群の全てで経時的に減少した(図16; より詳しくは表VIIを参照されたい)。群間での骨形成の相違とは対照的に、OVXと偽処置動物との間に、いずれの時点においても吸収パラメータ(要素)の注目に値する相違はなかった。
【0209】
生体力学指標は、3種のペプチド処置群の全てで改善した(図17、およびさらに詳しくは表IXおよびXを参照されたい)。腰椎では、生体力学的強度の測定結果は、ペプチドのそれぞれで増加した。大腿骨頚部では、終極荷重はまた、3種の全ペプチドで増加した。この変化は、統計学的に有意でありかつ量的に大きかった。重要なことには、3種の全ペプチドについて、腰椎および大腿骨頚部の生体力学指標は、OVX対照においてだけではなく、偽処置対照において認められた指標を越えていた。
【0210】
大腿骨の中央骨幹、皮質骨部位では、類似の所見が認められた(図17)。全体的に、3種のペプチド処置群は、偽処置およびOVX対照群の双方と比べて、生体力学パラメータ(要素)の増大または改善を示し、そしてこれらの変化は統計学的に、量的に、および機能的に非常に有意であった(遺漏なく詳細には表Xを参照されたい)。
【0211】
体重は、試験の初めから終わりまで、全群で加齢とともに増加したが、処置群と対照群との間で有意な相違はなかった。動物は、ほぼ同じ速度で体重が増加した(詳しくは表XIを参照されたい)。
【0212】
平均血清カルシウムは、試験の初めから終わりまで、偽処置およびOVX動物で正常のままであった(図18、遺漏なく詳細には表XIを参照されたい)。これは同様に、PTHおよびPTHrP処置動物にも当てはまった。これらの2つの処置群とは対照的に、SDZ-PTH処置動物では、1、3および6ヶ月でそれぞれ平均カルシウム濃度が11.3、11.6および11.7mg/dlとなり、明白な高カルシウム血症が発症した。これらの相違は統計学的に有意であった。それらはまた、30匹のSDZ-PTH-893処置動物のうちの4匹(13%)が、処置日数75、83、130および130で試験の間に死亡したという点で生物学的に有意であった。平均血清カルシウムはPTH群では正常であったが、PTH処置動物1匹(3%)が第171日に高カルシウム血症で死亡した。PTHrP処置動物は試験の間に死亡しなかった。
【0213】
考察
候補PTHrP類似体またはその他の骨同化物質は、上述の方法を用いて試験することができる。本発明の方法のなかで有用な、PTHrP類似体またはその他の骨同化物質は、未処置OVX対照に比べて、骨の総カルシウム、骨梁のカルシウム、皮質骨カルシウム、骨梁の厚み、および骨体積を顕著に増加させると予測される。
【0214】
実施例5 PTHRPおよび骨同化物質に類似の生物活性を有するペプチド模倣体および小分子を設計するためのシステムおよび方法
上述のように、PTHrP、PTH、およびTIPペプチドのほか、その受容体ならびに結果として起こる代謝経路を利用して、こららの骨同化物質の作動薬および拮抗薬として有用なペプチド模倣体および小分子薬剤を開発してもよい。本明細書では、「ペプチド模倣体」とは、骨量の調節を含む生物活性を示す、上述の骨同化物質PTHrP、PTH、もしくはTIPの断片または完全長ペプチドの誘導体のほか、その同じものを含んだ混合物、薬学的組成物、および組成物を指す。「小分子薬剤」とは、類似の活性を有する、天然には存在しない低分子量の化合物を指す。どちらの場合でも、ペプチド模倣体または小分子薬剤の生物活性は、PTHrP、PTH、またはTIPの生物活性に対して作動的または拮抗的とすることができるし、または多種多様な活性を含んでもよい、即ち、PTH活性に対して拮抗的でありかつPTHrP活性に対して作動的であってもよい。
【0215】
PTHと同様に、PTHrPの生物活性は、N末端部分、つまり生物活性を最低限与える残基(1-30)と関連している。39アミノ酸の管状漏斗ペプチド(TIP)のトランケート型もまた、生物活性について試験されている。
【0216】
これらの作用物質に対する受容体はまた、構造に基づいた薬剤設計に対する標的である。前述のように、500アミノ酸のPTH/PTHrP受容体(PTH1受容体としても知られる)は、グルカゴン、セクレチンおよび血管活性腸管ペプチドに対する受容体を含むGCPRスーパーファミリーに属する。その細胞外領域はホルモン結合に関与しており、その細胞内ドメインは、ホルモンによる活性化後、Gタンパク質サブユニットを結合して、ホルモンによるシグナル伝達を二次メッセンジャーの刺激を介した細胞応答に変換する。これらの二次メッセンジャーは同様に、薬剤の標的を与える。
【0217】
前述のようにまた、第二のPTH受容体(PTH2受容体)は、脳、膵臓、およびその他のいくつかの組織で発現される。そのアミノ酸配列ならびにPTHおよびPTHrPに対するその結合および刺激応答のパターンは、PTH1受容体のものとは異なる。PTH/PTHrP受容体はPTHおよびPTHrPに等しく反応するが、PTH2受容体はPTHにのみ反応する。この受容体の内在性リガンドは、管状漏斗ペプチド-39(tubular infundibular peptide-39)即ちTIP-39であると思われる。
【0218】
本発明の1つの局面として、これらの組成物は、PTH1またはPTH2受容体の活性を調節する、即ち、昂進させるかまたは抑制する。別の局面として、PTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤のX線回折により得られる原子座標に関連した構造情報を含むシステムが提供される。別の態様として、PTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤に対する抗体が提供される。さらに別の態様として、PTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤の精製結晶調製物が提供される。
【0219】
PTH1もしくはPTH2受容体、またはPTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤の構造は、結晶化ポリペプチドのX線回折、結晶化ポリペプチドの二次元核磁気共鳴分光法により、または生物材料の高解像度の構造を得る同様な方法により得られる。高解像度の構造とは、2.8Åを越えるまでに、好ましくは2.3Åを越えるまでに解像された構造を指し、これらの受容体およびそのリガンドの活性部位を位置付けるために使用される。構造は、例えば、記憶装置、ディスプレイ、データ入力手段、中央演算処理装置および構造データを解読する、解釈するおよびレンダリングするためのアルゴリズムを含む命令セット(これらの全てが当技術分野においてよく知られている、例えば、Keckらの「Computer system and methods for producing morphogen analogs of human OP-1」という名称の米国特許第6,273,598号(参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい)を少なくとも有する、当技術分野において報告されているコンピュータシステムを用いて決定かつ解釈される。本発明によれば、そのようなシステムは、スタンドアロン型としてもまたはネットワーク型としても、即ち、パケット交換ネットワークを介していてもよい。コンピュータ支援設計(CAD)アルゴリズムを使用して、得られた構造マップに基づき、適当な受容体の拮抗的または作動的活性を有するペプチド模倣体および小分子薬剤を設計する。候補となる作用物質は、本明細書に記載の試験法のほか、当技術分野において周知の類似の試験法を用い、PTHrP、PTH、およびTIP様の生物活性について試験する。
【0220】
(表I)対象者の基本属性
【0221】
(表II)bPTH-(1-34)と比較した[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミドのインビトロ活性
ap=0.03
c有意差なし
cp<0.002
結合試験は、放射性リガンドとして、モノヨード化した[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミド (125I-PTH)または[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド (125I-PTHrP)を用い、20℃で行った。Kd値はスキャッチャード解析により決定し、Ki値はIC50値から得た。アデニル酸シクラーゼ刺激は、部分精製されたイヌ腎細胞膜および30℃で30分のインキュベーションを用い、標準的な試験条件の下で評価した。アデニル酸シクラーゼ刺激はまた、バシトラシン(200μg/ml)の存在下での高精製されたイヌ腎細胞膜および20℃で20分のインキュベーションを用い、結合試験条件の下で評価した。
【0222】
SaOS-2細胞膜と比較したヒトRCM(腎細胞膜)におけるPTHおよびPTHrP類似体のインビトロ活性
値は、各ペプチドに対する2回またはそれ以上の回数の実験の平均値±SEMである。[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH2に対する統計解析:
aP<0.01
bP<0.05
cP<0.001
dP<0.0001
【0223】
(表III)SaOS-2無傷細胞と比較したヒトRCM(腎細胞膜)におけるPTHおよびPTHrP類似体のインビトロ活性
値は、各ペプチドに対する2回またはそれ以上の回数の実験の平均値±SEMである。[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH2に対する統計解析:
aP<0.01
bP<0.0001
cP<0.05
dP◇ 、これらのペプチドは、SaOS-2無傷細胞ではなくSaOS-2細胞膜で試験した(表IIを参照されたい)。
eP<0.001
【0224】
(表IV)手順
【0225】
(表V)30、90または180日間、rec hPTH-(1-34)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ-PTH-893を1日1回投与した卵巣切除(OVX)成熟ラットにおける右側近位脛骨の構造上の組織学的形態計測
データは、1群当たりラット7〜10匹に対する平均値±SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。ベースラインデータは、統計解析に含まれておらず、説明の目的のみで示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0226】
(表VI)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34) (LY333334)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ PTH 893、PTHrP類似体を1日1回投与した卵巣切除(OVX)成熟ラットにおける右側近位脛骨の骨形成測定結果
データは、1群当たりラット7〜10匹に対する平均値±SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。ベースラインデータは、統計解析に含まれておらず、説明の目的のみで示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0227】
(表VII)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34) (LY333334)、PTHrP-(1-36)、またはPTHrP類似体のSDZ-PTH-893を1日1回投与した卵巣切除(OVX)成熟ラットにおける右側近位脛骨の骨吸収測定結果
データは、1群当たりラット7〜10匹に対する平均値±SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。ベースラインデータは、統計解析に含まれておらず、説明の目的のみで示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0228】
(表VIII)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34) (LY333334)、PTHrP-(1-36)、またはPTHrP類似体のSDZ PTH 893を1日1回投与した卵巣切除成熟ラットにおける全身、橈骨、または左大腿骨の骨量
略語:X領域;BMC = 骨塩濃度;BMD = 骨塩密度;OVX =卵巣切除。
データは、1群当たりラット10匹に対する平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表されている。統計学的に有意な相違は、表IIIに示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
1 1日目に行われたOVX
2 30日目に行われたBMC
【0229】
(表IX)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ PTH 893を1日1回投与した卵巣切除成熟ラットにおける体重増加および血清化学検査
略語:WW = 湿重量;OVX = 卵巣切除。
データは、1群当たりラット10匹に対する平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0230】
(表X)hPTH 1-34(PTH)、PTHrP-(1-36)(PTHrP)、またはPTH類似体のSDZ PTH 893で6ヶ月間処置したOVX成熟ラットの大腿骨頚部および大腿骨中央部の強度の生体力学的測定結果
略語:n = 群当たりのラット数;OVX =卵巣切除。
データは、平均値∀SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0231】
(表XI)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ PTH 893を1日1回投与した卵巣切除成熟ラットにおける体重増加および血清化学検査
略語:WW = 湿重量;OVX = 卵巣切除。
データは、1群当たりラット10匹に対する平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0232】
均等物
前述の本発明の特定の態様の詳細な説明から、高カルシウム血症または骨原性肉腫を発生させる危険性などの危険性を最小化するかまたはマイナスの副作用を取り除いて骨粗鬆症の処置を安全かつ効果的にもたらす、PTHrPまたはその類似体を投与する独特な方法が記載されてきたことは明らかである。本明細書に好ましい態様を詳細に開示してきたが、これは例示のみを目的に一例としてなされたものであって、先述の特許請求の範囲に関して限定することを意図するものではない。特に、特許請求の範囲により限定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明を置換、変更、および変形することが可能であると本発明者は考える。例えば、PTHrP類似体またはその投与経路の選択は、本明細書に記載の態様の知識を有する当業者とっては日常的作業であると考えられる。
【0233】
本発明は、表を参照して、以下の説明からさらに理解されるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトPTHrP-(1-36)の他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントであり、この中でヒト配列中の対応アミノ酸と異なるアミノ酸は太字で示されており、ヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。
【図2】アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトPTH-(1-34)の他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントであり、この中でヒト配列中の対応アミノ酸と異なるアミノ酸は太字で示されており、ヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。
【図3】アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトTIP-(1-39)のマウスの対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントであり、この中でヒト配列中の対応アミノ酸と異なるアミノ酸は太字で示されており、ヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。
【図4】偽薬(N=7)またはPTHrP-(1-36) 410.25μg/日(N=8)を受けている骨粗鬆症を患う閉経後の女性において、%変化(左パネル)および体重(グラム)変化(右パネル)として表現された腰椎の骨密度(BMD)の変化を描く線グラフである。
【図5】PTHrPまたは偽薬(PBO)による治療後、腰椎(L/S)、大腿骨頚部(FN)および全股関節部(TH)で測定された骨塩密度の変化をベースラインからの変化百分率として図解している。PTHrP治療に反応して腰椎では骨塩密度が顕著に増加しており、大腿骨頚部では中等度に増加しており、全股関節部では骨塩密度がほとんど増加していない。
【図6】偽薬およびPTHrP治療患者における骨代謝回転マーカーを図解している。図6(a)は、ベースラインからの変化として表現された血清オステオカルシンの結果を示している。図6(b)は、2群における血清N-テロペプチド(NTX)値を示している。図6(c)は、2群における尿デオキシピリジノリンを示している。この結果から、PTHrPは血清オステオカルシンを刺激し、おそらく骨形成を刺激するが骨吸収は刺激しないことが示される。
【図7】PTHrPおよび偽薬群における血清の総カルシウム(左パネル)およびイオン化カルシウム(右パネル)を図解している。PTHrPと対照群との間で血清の総カルシウムおよびイオン化カルシウムに違いはなく、血清の総カルシウムおよびイオン化カルシウムにより測定されたように、どちらの群の患者も高カルシウム血症を発症することはなかった。
【図8】偽薬(N=7)またはPTHrP-(1-36) 410.25μg/日(N=8)を受けている骨粗鬆症を患う閉経後の女性において、%変化として表現された腰椎の骨密度(BMD)の変化を、公表された他の臨床試験のなかで報告されたその他の種々の骨粗鬆症薬の効果と比較して描いた線グラフである。
【図9】平衡化条件の下で、ヒト腎皮質細胞膜(RCM)(パネルA)、SaOS-2細胞膜(パネルB)、およびSaOS-2無傷細胞(パネルC)に対する125I-[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2の競合結合試験(上パネル)を描く線グラフである。未標識[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(△)、hPTH-(1-34)(○)、rPTH-(1-34)(▲)、bPTH-(1-34)(●)、[Tyr34]bPTH-(7-34)NH2(□)、およびhPTHrP-(7-34)NH2(〜)に対する競合曲線が示されている。値は代表的実験に対する反復測定による平均値±SEMである。下パネルは、代表的な結合実験に対応するスキャッチャード変換を描いた線グラフである。
【図10】[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(△)、[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)(○)、rPTH-(1-34)(▲)、およびbPTH-(1-34)(●)による、ヒト腎皮質細胞膜(RCM)(パネルA)、SaOS-2細胞膜(パネルB)、およびSaOS-2無傷細胞(パネルC)におけるアデニル酸シクラーゼ活性の刺激を描いた線グラフである。定量試験は、各結合測定法のなかで使用した同一条件の下で行った。値は代表的実験に対する反復測定による平均値±SEMである。
【図11】20℃でのイヌ腎(皮質)細胞膜に対するPTHrPおよび125I[Nle8,18, Tyr34]-hPTH-(1-34)NH2を含むPTHペプチドの結合に対する経時変化を描いた線グラフを図解している: --○--放射性リガンドの総結合; --◆--10-6M未標識bPTH-(1-34)の存在下での放射性リガンドの結合(非特異結合); --●--放射性リガンドの特異結合。ポイントは三重測定の平均値±SEMを表す。SEMがあまりに小さくて、エラーバーがないそれらのポイントでは表示することができなかった。結果は、3回の実験で得られたものの代表例である。
【図12】未標識[Nle8,18,Tyr34]hPTHh-(1-34)NH2(▲)、bPTH-(1-34)(●)、および[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(○)を用いた、20℃でのイヌ腎(皮質)細胞膜に対する125I-[Nle8,18, Tyr34]hPTH-(1-34)NH2の競合結合試験を描いた線グラフである。ポイントは、3つの別実験(bPTH-(1-34)および[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド)におけるまたは2つの別実験([Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)NH2)における三重測定の平均値±SEMを表す。個々のポイントは、未標識ペプチドの非存在下で測定した特異結合の割合(最大結合の割合)として表した。差し込み図は、代表的な実験のスキャッチャード解析を示す。B/Fは、結合型/遊離型である。
【図13】未標識[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)NH2(▲)、bPTH-(1-34)(●)、[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(○)、PTHrP-(49-74)(△)および[Cys5,Trp11,Gly13]PTHrP-(5-18)(P1-ペプチド)(□)を用いた、20℃でのイヌ腎(皮質)細胞膜に対する125I-[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2の競合結合試験を描いた線グラフである。ポイントは、3つの別実験(bPTH-(1-34)および[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド)におけるまたは1つの実験([Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)NH2)における三重測定の平均値±SEMを表す。個々のポイントは、未標識ペプチドの非存在下で測定した特異結合の割合(最大特異結合の割合)として表した。代表的な実験のスキャッチャード解析(差し込み図)が示されている。B/Fは、結合型/遊離型である。
【図14】5群における大腿部の骨塩含量の変化を図解している。BMCは、各時点での偽処置動物からの変化率として示されている。ペプチド処置ラットの各群では大腿部の骨塩含量が漸進的に増加していること、およびその変化は統計学的な意味合いからすると極めて有意であることに留意すべきである。
【図15】処置から90日後の右側近位脛骨の一連の写真である。A. 偽処置; B. OVX処置; C. SDZ-PTH-893処置; D. rhPTH(1-34)処置; E. hPTHrP(1-36)処置。卵巣切除後、近位脛骨では骨が喪失している。SDZ-PTH-893またはPTH(1-34)のどちらかで90日間処置すると、喪失された骨を回復させるだけではなく、偽処置に比べて骨梁体積を顕著に増加させる。PTHrP(1-36)は、喪失された骨を部分的に回復させるのみである。倍率は5.5倍である。
【図16】6ヶ月間の選択の骨組織形態学的変化が描かれている。重要な点は: a) OVX群では骨梁領域、骨形成率および吸収面が加齢に伴って減少している; b) 骨梁領域および骨形成率に関して、3つのペプチドの全てがOVX対照に比べて目に見えてプラスの効果を有していた; およびc) 骨形成率のこの顕著な増加にもかかわらず、1〜6ヶ月の骨吸収率は処置および対照群間で類似していたことである。
【図17】処置6ヶ月間の生体力学的強度(損傷までの荷重)の変化を図解している。重要な点は: a) 3つのペプチドのそれぞれに対し、全3群で生体力学的な度合いの顕著な改善が起こった; およびb) 改善は骨梁部位の大部分および皮質部位の大部分の双方で起こったことである。
【図18】6ヶ月間の血清カルシウムおよび腎臓カルシウム含量の変化を図解している。SDZ-PTH-893で処置したラットは中等度の高カルシウム血症、および腎臓カルシウム含量の顕著な増加を発現したことに留意すべきである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は概して、骨粗鬆症を含む、骨量の減少を呈するさまざまな哺乳類疾患の予防および治療のための方法に関する。より具体的には、本発明は、効果的でありかつ安全性の向上した、代謝性骨疾患の治療のためのPTHrPまたはその類似体の使用法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2003年1月10日に出願されたU.S.S.N. 10/340,484に関連し、これは2002年1月10日に出願されたU.S.S.N. 60/347,215;2002年2月1日に出願されたU.S.S.N. 60/353,296;2002年3月28日に出願されたU.S.S.N. 60/368,955;および2002年5月8日に出願されたU.S.S.N. 60/379,125に関連し;それぞれはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
成人期の全体にわたって、骨は、骨の形成および吸収(骨代謝回転)の双方向サイクルを介して継続的に再形成される。骨吸収は通常迅速であり、骨再形成部位の単核食前駆細胞により形成される破骨細胞(骨吸収細胞)により媒介される。次いで、この過程の後に骨芽細胞(骨形成細胞)が出現し、これが失われた骨に置き換わる骨を徐々に形成する。この過程の完了によって通常は、骨が均衡置換かつ再生されることから、骨再形成に影響を及ぼす分子シグナルおよび事象は、厳重に制御されていることが示唆される。
【0004】
骨量減少の機構は十分に理解されてはいないが、実際的な作用として、この疾患は、新しい健康な骨の形成と古い骨の吸収の不均衡、骨組織の純損失への傾斜から生ずる。この骨量減少には、骨塩含量およびタンパク質マトリックス成分の双方の減少が含まれ、主に大腿骨ならびに前腕および脊椎の骨を骨折する割合が増加する。次に、これらの骨折が一般的な病的状態の増加、成長および機動性の著しい低下、そして多くの場合、合併症に起因する死亡率の増加をもたらす。
【0005】
骨再形成周期の不均衡を引き起こす多くの骨増殖疾患が知られている。これらの中で主要なものは、結果的に異常なまたは過剰な骨量の減少(骨減少症)をもたらす、骨粗鬆症、骨軟化症/くる病、慢性腎不全、および副甲状腺機能亢進症のような代謝性骨疾患である。
【0006】
骨粗鬆症または多孔性骨は、骨形成不全ならびに股関節部(hip)、脊椎、および手関節の骨折のしやすさの増加をもたらす、低骨量および骨組織の構造変質を特徴とする疾患である。これは、閉経後の女性でも老人でも同様に破壊的威力のある病気である。医薬品および入院に対する国家水準での費用は、現在、年間50,000,000ドルになると見積もられており、米国民の高齢化とともに増加する可能性が高い。現在、治療の柱は、経口のカルシウム栄養補助食品、ビタミンD栄養補助食品、および破骨の骨吸収を減少させる「抗吸収剤」と呼ばれる医薬品の一群である。これらには、エストロゲン、例えば抱合エストロゲン(Premarin(登録商標));選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、例えばラロキシフェン(Evista(登録商標));カルシトニン(Miacalcin(登録商標));およびビスホスホネート、例えばアレンドロネート(Fosamax(登録商標))、リセドロネート(Actonel(登録商標))、エチドロネート(Didronel(登録商標))、パミドロネート(Aredia(登録商標))、チルドロネート(Skelid(登録商標))、またはゾレドロン酸(Zometa(登録商標))が含まれる。以下を参照されたい。The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998) ; Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001)。これらの薬物は、骨塩喪失を減速させるのに有効であり、さらには2%(カルシウム、ビタミンD、カルシトニン)、3%(ラロキシフェン)、6%(エストロゲン)または8%(ビスホスホネート)の範囲で、腰椎の骨塩密度の適度な増加をもたらす。一般に、この程度の効果を達成するには、2年から3年の投与が必要とされる。The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8 (suppl3): 13 (1998); Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001)を参照されたい。
【0007】
一般に、骨格ミネラルの喪失が最大骨量(これはおよそ30歳で起こる)の50%未満の範囲内である場合、骨粗鬆症である。骨塩の不足を補正するという観点から見ると、この50%の喪失を完全に回復するには、骨量の100%増加が必要になる。従って、この観点から見ると、抗吸収剤による治療によりもたらされる骨塩密度の2〜8%の増加は、臨床的な意義および恩恵がある一方で、大幅に改善する余地がある。骨量減少を抑制するための抗吸収剤の使用は、新たな骨の産生をもたらすことはないので、抗吸収剤の量的な究極の効果には限りがある。これらの熟慮から、新しい骨を産生させる製薬手段の開発の必要性が強調される。
【0008】
最近、副甲状腺ホルモン(PTH)が、そのような新たな骨粗鬆症の治療道具の、非常に効果的な新たな一員であることを明確に示す証拠が蓄積されつつある。Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441(2001); Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998)を参照されたい。PTHは、1920年代に副甲状腺抽出物中に初めて同定された。PTHの完全なアミノ酸配列は、1970年代に決定された。副甲状腺ホルモンの過剰産生(即ち、副甲状腺機能亢進症)の患者は、骨量の減少(非常に重篤である場合もある)を発症することから、PTHは、過去100年の間、広く骨異化物質と見なされてきた。しかし、現在では動物およびヒトでの双方の研究から、1日単回投与(副甲状腺機能亢進症患者で起こるPTHの持続的過剰産生とは対照的に、いわゆる「間欠的に」)として皮下投与された場合、PTHは、骨塩密度および骨量の著しい増加を引き起こしうることが明確に実証されている。従って、PTHは、抗吸収性の薬物群とは非常に異なる。Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998)を参照されたい。この同化作用に対する細胞学的な根拠は今後定義されるべきであるが、顕微鏡的かつ生理学的水準での効果は明らかである:PTHは間欠投与された場合、骨を形成する骨芽細胞の著しい活性化をもたらすが、骨を吸収する破骨細胞の活性化はより少ない程度しかもたらさない。これらの効果は、破骨細胞および骨芽細胞活性の双方を阻害する上述の抗吸収薬とは全く正反対である。
【0009】
これらの結果を数量化すると、PTHは、研究にも依るが、多くの研究で腰椎の骨塩密度を約10〜15%まで増加させることが示されている(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998)を参照されたい)。ある研究では、脊椎の骨塩密度は、二重エネルギーX線吸光光度分析法(DXA)を利用して評価した場合、30%までも、そして腰椎の骨梁の定量的コンピュータ断層撮影法(QCT)を利用した場合、80%までも増加することが報告された(Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, 59 (1999)を参照されたい)。
【0010】
PTHは、骨量を増加させるほか、脊椎部位と非脊椎部位の双方で、顕著な抗骨折効果を有することが最近になって実証された。PTHは、骨格部位および骨折の定義に依存して、骨折を60%から90%の間まで減少させることが示された。Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001)を参照されたい。これらの効果は、抗吸収剤の抗骨折効果と少なくとも同程度に顕著であり(The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647(1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998); Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001) を参照されたい)、それを上回っている可能性がある。従って、PTHは、抗吸収剤とは対照的に、骨の「同化を促進する」クラスの骨粗鬆症薬、または「同化物質」と名付けられた抗骨粗鬆症薬の新規群の最初の一員であるように思われる。
【0011】
副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)は、骨同化薬のこの群の第二の構成員であると思われる。Stewartら、J Bone Min Res 15: 1517〜1525 (2000)を参照されたい。PTHrPは、PTHをコードする遺伝子とは異なる遺伝子の産物である。PTHrPは、最初の13アミノ酸において、アミノ酸レベルでおよそ60%の相同性をPTHと共有しているものの、配列は完全に異なっている。Yangら、In: Bilezikian, Raisz、およびRodan (編). PRINCIPLES OF BONE BIOLOGY. Academic Press, San Diego CA, pp. 347〜376 (1996)を参照されたい。PTHrPは最初にホルモン前駆体として翻訳され、これが次に多数の翻訳後プロセッシングを受ける。本発明者らの研究室で同定された、プロセッシングされた型、即ち正真正銘の分泌型のうちの一つは、PTHrP-(1-36)である。Wuら、J Biol Chem 271: 24371〜24381 (1996)を参照されたい。PTHrP-(1-36)は、PTH-1受容体とも呼ばれる、骨および腎臓の共通のPTH/PTHrP受容体に結合する。Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab, 81: 199〜208 (1996); Orloffら、Endocrinology, 131: 1603〜1611 (1992)を参照されたい。PTHrP-(1-36)は、この受容体にPTHと等しい親和性で結合し、PTHに等しい効力で、PKAおよびPKCシグナル伝達経路を活性化する。Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab, 81: 199〜208 (1996); Orloffら、Endocrinology, 131: 1603〜1611 (1992)を参照されたい。
【0012】
PTHrPはもともと、悪性腫瘍による体液性高カルシウム血症(HHM)と呼ばれる尋常性ヒト腫瘍随伴症候群に対する原因物質としてのその役割を通して、本発明者(Burtisら、J Biol Chem 262: 7151〜7156 (1987); Stewartら、Biochem Biophys Res Comm 146: 672〜678 (1987))および他者ら(Strewlerら、J Clin Invest, 80: 1803, (1987); Moseleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 84: 5048〜5052 (1987))により同定された。Stewartら、N Engl J Med 303: 1377〜1383 (1980)を参照されたい。例えば、HHMを患うヒトは、循環PTHrPの持続的上昇の結果として、2、3ヶ月間でその骨格骨量の50%ほども失ってしまう可能性がある。Stewartら、J Clin Endo Metab 55: 219〜227 (1982)を参照されたい。続いて動物実験から、PTHrPは、間欠投与された場合、骨粗鬆症ラットの骨量を増加させうることが示唆された。しかし、驚いたことに、PTHrPにより誘発される骨塩密度、骨量、骨形成、および骨格の生体力学の増加は、等モル量のPTHを用いて観察されたものほど劇的ではなかった。Stewartら、J Bone Min Res 15: 1517〜1525 (2000)を参照されたい。それにもかかわらず、PTHrPはHHM患者の骨格ミネラルの劇的な減少に関与する典型的な骨異化ホルモンとして広く見られることから、PTHrPに同化および生体力学の増強効果が存在することは驚きである。Stewartら、J Clin Endo Metab 55: 219〜227 (1982)を参照されたい。多くの研究者および製薬会社が過去10年間、骨粗鬆症においてはPTHを用いて仕事をしてきたが、PTHrPが1987年に最初に記述されて以来、それが公知の事実となっていたにもかかわらず、誰もPTHrPを取り入れなかったという事実からも明らかなように、PTHrPを間欠投与すると実際には骨格の同化を促進するという観察結果は予想されなかった。
【0013】
1999年、Eli Lillyは、PTHをラットに2年間にわたって毎日投与すると、これらのラットで骨原性肉腫の発生が引き起こされることを示唆する報告をFDAに公表した。1998年12月11日のPTH INDホルダーに対するFDA通知(Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001))を参照されたい。これらの悪性骨格腫瘍の発生は、この前臨床毒性モデルでの骨芽細胞由来の骨格腫瘍の発生をPTHと関連付けて考えた場合、原因的な折り合いとしては生物学的に妥当性があったので、当分野の熟練者には極めて厄介である。ラットでの骨肉腫の話のなかで一つ主に心配されるのが、前臨床毒性試験において、PTHが成長ラットに2年間投与されたことである。これは大多数のラットの寿命もまた、およそ2年であることを意味する。ヒトでは、PTH治療には一般に2〜3年間の継続期間を有する(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994) ; Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344:1434〜1441 (2001); Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))。大部分の研究者が、PTHを用いた治療の継続期間は18ヶ月〜3年であろうと予想している。従って、長期PTH治療がヒトで骨肉腫を引き起こす可能性があるという懸案事項が一部の人々の心の中に依然として残っている。
【0014】
従って、安全かつ効果的な骨同化薬を用いた骨疾患の予防および治療のための方法に対する必要性が当技術においては依然として存在する。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明により、骨粗鬆症を含む、骨量の減少を呈するさまざまな哺乳類疾患の予防および治療のための方法が提供される。本発明は、非常に高用量のPTHrPまたは関連類似体の投与により、非常に短期間のうちにBMDの劇的な増加を引き起こすことができるという驚くべき観察に基づいている。投与期間は好ましくは、15、18、21、24、30、または36ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、11、または12ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。高用量の骨同化薬は、短期間で投与されても、間欠的な投与間隔をもってしても、いかなる有意な有害副作用も引き起こすことがない。従って、本発明の方法により、高カルシウム血症、腎不全、低血圧症、または骨原性肉腫を発生させる危険性のような、骨同化薬に共通して関連するマイナスの副作用の危険性を有意に取り除くかまたは減少させることによってさらに高い安全性が提供される。
【0016】
本発明の方法で達成されるBMD増加率は、極端に速い。1つの態様として、PTHrP-(1-36)で3ヶ月治療すると、長い投与期間、抗吸収剤および低用量PTHを用いて以前に得られたどの増加率よりも高いBMD増加率が得られた。本発明の方法で達成されるBMD増加率は、好ましくは少なくとも1ヶ月当たり1%、1ヶ月当たり1.1%、または1ヶ月当たり1.2%であり、より好ましくは1ヶ月当たり1.3%または1ヶ月当たり1.4%、最も好ましくは1ヶ月当たり1.5%または1ヶ月当たり1.6%以上である。
【0017】
観察されるBMDの増加は一般に、抗吸収剤を2〜3年間投与しても得られない。実際に、いくつかの市販の抗吸収剤(SERM、カルシトニン、ビタミンD、カルシウム)では、本発明の方法で得られるBMDの増加は決して達成されることはない。さらに、本発明の方法で得られるBMDの増加は、低用量のPTHを長い投与期間使用して得られるものに匹敵するか、または上回る。従って、本発明により、安全かつ効果的な骨同化薬を用いて骨疾患を予防および治療するための方法が提供される。
【0018】
本発明の方法で達成される結果的なBMD増加は好ましくは、Tスコア>-2.5、より好ましくはTスコア>-2.0、最も好ましくはTスコア>-1.0である。さらに、本発明の方法で達成される結果的なBMD増加により、好ましくは骨折の発生率を少なくとも50%、60%、または70%減少させるように、より好ましくは骨折の発生率を少なくとも75%、80%、または85%減少させるように、最も好ましくは骨折の発生率を少なくとも90%または95%減少させるように、骨折を防ぐのが好ましい。
【0019】
1つの局面において、本発明により、患者にPTHrPまたはその類似体を、5μg/日〜50 mg/日またはそれ以上の用量で間欠投与することにより、動物またはヒト患者の骨量を増加させる方法が提供される。好ましい用量範囲は、10〜45,000μg/日である。他の好ましい用量範囲には、25〜40,000μg/日、35〜37,500μg/日、50〜35,000μg/日、100〜30,000μg/日、150〜25,000μg/日、200〜20,000μg/日、250〜15,000μg/日、300〜10,000μg/日、350〜7,500μg/日、400〜3,000μg/日、400〜1,500μg/日、400〜1,200μg/日、400〜900μg/日、400〜600μg/日、80〜500μg/日、90〜500μg/日、100〜500μg/日、150〜500μg/日、200〜500μg/日、250〜500μg/日、300〜500μg/日、350〜500μg/日、400〜500μg/日、および450〜500μg/日が含まれる。好ましい態様において、PTHrP-(1-36)は、50〜10,000μg/日の間欠用量で投与される。より好ましい用量範囲は、200〜7,500μg/日である。さらにより好ましい用量範囲は、400〜5,000μg/日である。他の好ましい用量範囲には、400〜1,500μg/日、400〜1,200μg/日、400〜900μg/日、および400〜600μg/日(約6.5〜18μg/kg/日、6.5〜15μg/kg/日、6.5〜12μg/kg/日、および6.5〜9μg/kg/日)が含まれる。
【0020】
本発明によりまた、動物またはヒトで以前に投与されていたよりも長い期間、PTHrPまたはその類似体の投与を用いて骨密度を増加させるための方法が提供される。1つの局面として、本発明により、1〜36ヶ月間の期間、PTHrPまたはその類似体を間欠投与することによって動物またはヒト患者の骨量を増加させる方法が提供される。投与期間は好ましくは、15、18、21、24、30、または36ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、11、または12ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。
【0021】
本発明の方法は、原発性または続発性骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、および骨量減少と関連した他の種類の骨疾患を含む代謝性骨疾患で苦しんでいるか、またはその危険性がある患者で使用することができる。1つの態様として、本発明の方法により達成されるBMD増加率は、少なくとも1月当たり1.5%である。他の局面において、PTHrPまたはその類似体は、骨折、例えば開放骨折または単純骨折に苦しむ患者に投与され得る。好ましい態様は、骨折に苦しむ患者への上記の用量におけるPTHrP-(1-34)の投与を含む。さらに他の局面において、PTHrPまたはその類似体は、例えば股関節置換手術もしくは心臓手術、または骨を置換もしくは損傷する他の侵襲的手技のような手術後の骨の治癒を促進するために、外科患者に投与され得る。本好ましい態様は、上記の用量でのPTHrP-(1-36)の投与を含む。他の態様は、上記の用量を有する骨ペーストの剤型で損傷した骨に投与または適用される、PTHrP、その断片、もしくは類似体を含む。
【0022】
本発明の方法で使用される、PTHrPまたはその類似体は、配列番号:2により定義することができる;配列番号:2と少なくとも70%の相同性を有しうる;またはストリンジェントな条件の下で配列番号:1の相補的核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされうる。本発明の方法で使用できるPTHrP類似体には、断片PTHrP-(1-30)からPTHrP-(1-173)が含まれる。PTHrP類似体にはまた、[MAP1-10]22-31 hPTHrP-(1-34)NH2のような、hPTHrP(1-34)のC末端領域がモデル両親媒性α-ヘリックスペプチド(MAP)配列に置換された類似体を含みうる。PTHrP類似体にはまた、本明細書で定義されるような、骨同化を促進する作動的生物活性を有するペプチド模倣体および小分子薬剤が含まれる。
【0023】
PTHrPは、皮下、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、局所的に(骨の表面に、例えば、ペーストまたは溶液として)、口腔内、直腸、膣内、鼻腔内、およびエアロゾル投与により投与することができる。間欠投与は、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1月2回、および1月1回の定期注射により行ってもよい。または、ミニポンプによる骨同化薬のパルス投与の使用を本発明の方法に採用することができる。PTHrPを有する緩効性または徐放性マトリックス、それらの断片または類似体もまた、適している。
【0024】
さらに他の局面において、本発明により、動物またはヒト患者の骨量を増加させる方法が提供される。1つの態様において、本方法は、1.5〜90 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜1ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。他の態様において、本方法は、3〜180 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜2ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、4.5〜270 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、9〜540 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜6ヶ月の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、18〜1080 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜1年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、36〜2160 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜2年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。さらに他の態様において、本方法は、54〜3240 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。なおさらに他の態様において、本方法は、70〜10,000 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。なおさらに他の態様において、本方法は、100〜50,000 mgのPTHrPまたはその類似体を、1週間〜3年の範囲の期間にわたり間欠的に投与する段階を含む。これらの方法に従い、PTHrPまたはその類似体は、毎日2回、毎日1回、2日に1回、3日に1回、週1回、週2回、2週間に1回、毎月2回、または毎月の間隔の間欠用量で投与され得る。
【0025】
さらに他の局面において、本発明により、動物またはヒト患者の骨量を増加させるためのキットが提供される。1つの態様において、本キットは、1.5〜90 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜1ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。他の態様において、本キットは、3〜180 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜2ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、4.5〜270 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、9〜540 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜6ヶ月の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、18〜1080 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜1年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、36〜2160 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜2年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。さらに他の態様において、本キットは、54〜3240 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。なおさらに他の態様において、本キットは、70〜10,000 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。なおさらに他の態様において、本キットは、100〜50,000 mgのPTHrPまたはその類似体、およびPTHrPまたはその類似体を1週間〜3年の範囲の期間にわたり動物またはヒト患者に間欠投与するための指示を提供する説明書を含む。
【0026】
本発明の方法はさらに、PTHrP、骨吸収阻害物質を同時にまたは順番に共投与する段階を含むことができる。骨吸収阻害物質は、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、ビタミンD類似体、またはカルシウム塩とすることができる。骨吸収阻害物質はまた、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ゾレドロン酸、ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、レボルメロキシフェン、または抱合エストロゲンとすることができる。1つの態様として、患者は3ヶ月間、骨同化薬の間欠投与を受け、引き続いて骨吸収阻害物質による治療を3ヶ月間受ける。当業者であれば、逐次治療計画は、骨同化薬による治療期間に先立って、骨吸収阻害物質による治療期間から開始する可能性もあること、逐次治療期間の長さは変更することができる(例えば、1〜18ヶ月)こと、および骨同化薬を骨吸収阻害物質と同時投与することができる(例えば、骨吸収阻害物質単独での治療期間に先立つ、骨同化薬および骨吸収阻害物質の逐次治療期間)ことを認識するものと思われる。逐次治療期間(例えば、骨同化薬を3ヶ月、続けて骨吸収阻害物質を3ヶ月)は、患者のBMDが回復する(例えば、Tスコアが平均値の-2.0または-2.5未満)まで繰り返すことができる。
【0027】
さらに別の局面として、本発明には、骨同化を促進する作動的または拮抗的生物活性を有するペプチド模倣体および小分子薬剤を設計するためのコンピュータシステムおよび方法が含まれる。1つの態様として、本システムには、中央演算処理装置、記憶装置、ディスプレイまたはデータ出力手段、データ入力手段、および骨同化物質、断片、またはその誘導体のほか、そのような骨同化物質に対する受容体の三次元構造をレンダリングできるアルゴリズムを少なくとも有する、コンピュータ可読の命令セットが含まれる。より好ましい態様として、本システムには、骨同化物質または受容体の活性部位に基づいてペプチド模倣体および小分子薬剤をレンダリングできるコンピュータ支援設計(CAD)アルゴリズムが含まれる。
【0028】
本発明のこれらのおよびその他の目的は、以下に提供される本発明の詳細な説明から明らかになるものと思われる。
【0029】
発明の詳細な説明
A. 総説
成人期の全体にわたって、骨は、骨の形成および吸収(骨代謝回転)の双方向サイクルを介して継続的に再形成されている。骨吸収は通常迅速であり、骨再形成部位の単核食前駆細胞により形成される破骨細胞(骨吸収細胞)により媒介される。次いで、この過程の後に骨芽細胞(骨形成細胞)が出現し、これが失われた骨に置き換わる骨を徐々に形成する。再形成過程に関与する種々の細胞種の活性化は、相互に作用する全身性(例えば、ホルモン、リンホカイン、成長因子、ビタミン)および局所因子(例えば、サイトカイン、接着分子、リンホカインおよび成長因子)により制御されている。この過程の完了によって通常は、骨が均衡置換かつ再生されることから、骨再形成に影響を及ぼす分子シグナルおよび事象は、厳重に制御されていることが示唆される。
【0030】
骨量減少の機構は十分に理解されてはいないが、実際的な作用として、この疾患は、新しい健康な骨の形成と古い骨の吸収の不均衡、骨組織の純損失への傾斜から生ずる。この骨量減少には、骨塩含量およびタンパク質マトリックス成分の双方の減少が含まれ、そして主に大腿骨ならびに前腕および脊椎の骨を骨折する割合が増加する。次に、これらの骨折が一般的な病的状態の増加、成長および機動性の著しい低下、そして多くの場合、合併症に起因する死亡率の増加をもたらす。
【0031】
骨再形成周期の不均衡を引き起こす多くの骨増殖疾患が知られている。これらのなかで主要なものは、結果的に異常なまたは過剰な骨量の減少(骨減少症)をもたらす、骨粗鬆症、くる病、骨軟化症、慢性腎不全および副甲状腺機能亢進症のような代謝性骨疾患である。ページェット病のような他の骨疾患もまた、局所部位での骨量の過剰喪失を引き起こす。
【0032】
慢性腎(腎臓)不全に苦しんでいる患者はほとんど例外なく、骨格の骨量の減少(腎性骨ジストロフィー)に苦しんでいる。腎臓の機能異常により、血中のカルシウムおよびリン酸塩の不均衡が引き起こされることが知られているが、今日までの、透析によるカルシウムおよびリン酸塩の補充は、慢性腎不全で苦しんでいる患者の骨ジストロフィーを有意に抑制していない。成人では、骨ジストロフィー症状が病的状態の顕著な原因であることが多い。小児では、腎不全により、骨量を維持することおよび/または増加させることができないため、成長不全となることが多い。
【0033】
くる病または骨軟化症(「骨の軟化」)は、骨石化の欠陥(例えば、不完全な石化)であり、そして古典的には、ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)欠乏症または抵抗症と関連付けられている。その欠陥により、骨の圧迫骨折、および骨量の減少のほか、骨組織に代わって肥大および増殖性軟骨組織域の拡大が引き起こされる。その欠乏は、栄養失調(例えば、小児のくる病)、ビタミンDもしくはカルシウムの吸収不良、および/またはビタミンの代謝障害から生じている可能性がある。
【0034】
副甲状腺機能亢進症(副甲状腺ホルモンの過剰産生)は、1920年代にそれが最初に記述されて以来、異常な骨量減少を引き起こすことが知られてきた。小児では、副甲状腺機能亢進症により成長が阻害される可能性がある。副甲状腺機能亢進症を抱えた成人では、骨格の完全性が低下し、股関節、脊椎、および他の部位の骨折がよく起こる。副甲状腺ホルモン失調は通常、副甲状腺腺腫または副甲状腺過形成から生じうる。続発性副甲状腺機能亢進症は、ビタミンD欠乏症のような多くの疾患またはコルチゾンのような糖質コルチコイドの薬理学的な長期使用から生じうる。続発性副甲状腺機能亢進症および腎臓の骨ジストロフィーは、慢性腎不全から生じうる。この疾患の初期段階では、破骨細胞が、存在する過剰なホルモンに反応して、骨を吸収するように刺激される。疾患が進行するにつれて、最終的には骨梁および皮質骨が吸収され得、そして微小骨折の結果、骨髄が繊維(fibrosis)、マクロファージ、および出血領域と置き換わってしまう。原発性および続発性副甲状腺機能亢進症の双方で起こるこの病状は、病理学的には嚢胞性線維性骨炎と呼ばれる。
【0035】
骨粗鬆症は、吸収が骨形成段階を左右するような、骨形成、骨吸収、または両者の不均衡から生ずる骨量の減少によって引き起こされる骨格の構造変質であって、それにより病変骨の体重支持能力が低下する。骨粗鬆症は、米国内で1000万人を超える個体に影響を及ぼしているが、僅か10〜20%が診断および治療を受けているだけである。
【0036】
健常成人では、骨が形成かつ吸収される速度は、骨格の骨の再生を維持するために厳重に調整されている。しかし、骨粗鬆症の個体では、これらの骨再構成周期の不均衡が生じ、これにより、骨量の減少および骨格の連続性における微細構造異常の形成の双方が引き起こされる。再構成順序の混乱により生じるこれらの骨格異常が蓄積し、最後には骨格の構造的完全性が低下して、骨折の可能性が高くなる。主な臨床所見は、脊椎および股関節の骨折であるが、骨格の全部分が影響を受ける可能性がある。骨粗鬆症は、骨量(または密度)の減少または脆弱性骨折の存在として定義される。骨組織のこの減少には、骨折の危険性を著しく増大させる、骨格構造の変質が伴う。骨粗鬆症は、米国骨粗鬆症財団および世界保健機関により、実用的には、平均値を-2.0または-2.5標準偏差(SD)下回る(Tスコアが-2.0または-2.5とも呼ばれる)骨密度として定義されている。若年正常範囲(Tスコアが平均より1SD低い値を超える)の下端を下回る者は、骨密度が低く、「骨減少症」で骨粗鬆症の危険性が高いと考えられる。
【0037】
この不均衡は、加齢とともにほとんどの個体で徐々に起こる(「老人性骨粗鬆症」)が、閉経後の女性ではいっそう重篤であり、急速に起こる。さらに、骨粗鬆症はまた、栄養のおよび内分泌の不均衡、遺伝性疾患ならびに多くの悪性転換から生じる可能性がある。
【0038】
疫学
米国内では、800万人の女性および200万人の男性もが骨粗鬆症(Tスコアが-2.5未満)であり、そしてさらに1800万人の個体が、骨粗鬆症を発症する危険性が増大する骨量レベル(例えば、骨量のTスコアが-1.0未満)である。骨組織は徐々に失われていくので、骨粗鬆症は、加齢とともにより高頻度で起こる。女性では、閉経期(通常、50歳以降)の卵巣機能の喪失により急速に骨量減少が促進され、ほとんどの女性が70歳までに骨粗鬆症に対する基準を満たすようになる。
【0039】
骨折の疫学的結果は、骨密度の減少と似たような傾向をたどる。遠位橈骨の骨折は、50歳前には頻度が増加し、そして60歳までには水平状態に達し、その後には加齢に伴って軽度に増加するのみである。対照的に、股関節の骨折の発生率は、70歳以降、5年毎に倍加する。この異なる疫学的結果は、加齢とともに、差し出した手に倒れかかることが少なくなるように、人々の倒れ方に関連している可能性がある。骨粗鬆症の結果として、米国内で毎年少なくとも150万件の骨折が起こっている。人口は老化し続けているので、骨折の総数は急上昇し続けると思われる。
【0040】
病態生理学
骨粗鬆症は、骨再形成における加齢に伴う正常な変化による骨量減少から生じ、さらに外部および内部要因がこの過程を悪化させる。これらの変化は、最小骨量時に重なる可能性がある。従って、骨再形成の過程は、骨粗鬆症の病態生理学を理解するための基礎となる。骨格は、直線的成長により、そして皮質外面への新たな骨組織の付加により大きさを増す。この後者の過程が再形成の現象であり、これはまた長骨がそれに加えられる圧力に対して形を適合させることを可能とする。思春期の性ホルモン産生の増加は、最大の骨格成熟(成人期初期に最大の骨量および骨密度に達する)のために必要とされる。遺伝的要因が最大骨格量および密度の主要な決定因子ではあるが、栄養素および生活様式もまた、成長において重要な役割を果たす。多数の遺伝子が骨格の成長、最大骨量、および体の大きさを制御しているが、個別の遺伝子が骨格の構造および密度を制御している可能性が高い。骨の密度および大きさに対する遺伝率が50〜80%との推定は、双子の研究に基づいて得られた。最大骨量は、骨粗鬆症の家族歴のある個体間では低いことが多いが、候補遺伝子[ビタミンD受容体;I型コラーゲン、エストロゲン受容体(ER)、インターロイキン(IL) 6;およびインスリン様成長因子(IGF) I]の関連研究は、一貫して再現されていない。連鎖研究から、いくつかの遺伝子座が高い骨量と関係していることが示唆されている。
【0041】
一旦最大骨格量に達すると、再形成の過程が骨格の主要な代謝活動であり続ける。この過程は、次の3つの主要な機能を有する: (1) 骨格内の微細損傷を修復すること、(2) 骨格強度を維持すること、および(3) 血清カルシウムを維持するために骨格からカルシウムを供給すること。カルシウムに対する緊急的な要求には、破骨細胞による吸収および骨細胞によるカルシウム輸送が含まれる。再形成の活性化は、過剰なまたは蓄積した圧力による骨への微細損傷により誘発される可能性がある。
【0042】
骨の再形成はまた、エストロゲン、アンドロゲン、ビタミンD、およびPTHを含むいくつかの循環ホルモンのほか、IGF-I、IGF-II、形質転換成長因子(TGF)β、PTHrP、IL、プロスタグランジン、腫瘍壊死因子(TNF)、およびオステオプロテグリンのような局所的に産生される成長因子ならびにその他多くのものにより調節されている。さらなる影響には、栄養素(特に、カルシウム摂取量)および肉体的な活動レベルが含まれる。この再形成過程の最終結果は、吸収された骨が、同量の新しい骨組織に置換されることである。従って、最大骨量が成人期に達成された後、骨格の量は一定のままである。しかし、30〜45歳以降、吸収および形成過程は不均衡となり、吸収が形成を上回る。この不均衡は、さまざまな年齢で始まる可能性があり、さまざまな骨格部位で変化する;その不均衡は閉経後の女性で亢進されるようになる。過剰な骨量減少は、破骨細胞活性の増加および/または骨芽細胞活性の低下が原因である可能性がある。さらに、再形成の活性化頻度の増加が、各再形成単位で見られる小規模の不均衡を増幅している可能性がある。
【0043】
骨量の測定
現在、骨格の量または密度を推定するためのいくつかの非侵襲的技術が利用可能である。これらには、二重エネルギーX線吸光光度分析法(DXA)、単一エネルギーX線吸光光度分析法(SXA)、定量的コンピュータ断層撮影法(CT)、および超音波検査法が含まれる。
【0044】
DXA法は、ほとんどのセンターで骨密度を測定するための標準となっている、非常に正確なX線技術である。任意の骨格部位の測定のためにこれを使用することができるが、臨床的な決定は通常、腰椎および股関節から作成される。かかと(踵骨)、前腕(橈骨および尺骨)、または指(指骨)を測定する携帯型のDXA機器が開発されており、体組成を測定するのに、DXA法を使用することもできる。DXA技術では、二種類のX線エネルギーを使用して石化組織の領域を推定し、ミネラル含量をその領域(体の大きさに対して部分的に補正されている)で割る。しかし、DXA法は二次元走査法であって、骨の深部または後前方向の長さを推定できないので、この補正はごく一部である。従って、小さな人は、平均よりも低い骨塩密度(BMD)となる傾向がある。現在、BMDデータの測定を行う最新のDXA技術は評価中である。変形性関節炎でたびたび起こる骨棘は、脊椎の骨密度を誤って増加させる傾向がある。DXA装置は、いくつかの異なる製造業者により提供されているので、その出力結果は絶対的には異なる。従って、人種および性別が適合する若年人口のものと個々の結果を比較するTスコアを利用して、結果を「標準」値に関連付けることが標準的技法となった。あるいは、Zスコアは、人種および性別も適合する年齢適合人口のものと個々の結果を比較する。このように、Zスコアが-1(年齢に対する平均から1SD下)の60歳の女性は、-2.5のTスコア(若年対照群に対する平均から2.5SD下)を有しうる。
【0045】
CT法は主に脊椎を測定するために使用され、辺縁部CT法は前腕または脛骨の骨を測定するために使用される。股関節の測定にCT法を利用する研究が進行中である。CT法では、骨のサブタイプ、例えば、骨梁対皮質骨の骨密度を研究するうえでさらに好都合である。CT法から得られる結果は、現在利用可能な他の全てのものとは異なるが、これはCT法では特に、骨梁を分析して真密度(単位体積当たりの骨量)測定を提供することができるためである。しかし、CT法は依然として高価であり、放射線被爆量がより高く、再現性が低い。
【0046】
超音波検査法を利用して、超音波が骨を通り抜ける時のシグナルの減衰または超音波が骨を横断する速度を算出することにより骨量を測定する。超音波検査法により骨質が評価されるかどうかは不明であるが、この方法には技術的な利点がある場合がある。比較的低価格かつ可動性であるため、超音波検査法は、スクリーニング法としての使用に向いている。
【0047】
BMDを測定するためのこれらの方法の全てが、骨折の危険性を予測するその能力に基づいて、米国食品医薬品局(FDA)により承認を得ている。股関節は、重要な骨折部位の骨量を直接評価することになるので、大部分の個体における好ましい測定部位である。DXA法により股関節の測定が行われる場合、脊椎を同時に測定することができる。閉経前後の女性のような若い個体では、脊椎の測定が骨量減少の最も高感度な指標であろう。
【0048】
B. PTHRPペプチドの構造および機能特性
140+アミノ酸タンパク質である副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)およびその断片は、PTHの主要な生物作用を再現する。PTHrPは、多数のヒトおよび動物の腫瘍ならびに他の組織により産生され、悪性腫瘍による高カルシウム血症に関与している可能性がある。hPTHrP-(1-36)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列はそれぞれ、配列番号:1および2に提供されている。
【0049】
生物活性は、N末端部分に関連する。ヒトPTHrP(hPTHrP)のN末端部分のアミノ酸配列は、図1に図解されているように、さまざまな種のN末端部分と高い相同性を示す。
【0050】
PTHおよびPTHrPは異なる遺伝子による特有の産物であるが、かなりの機能的および構造的相同性を示し、共通の祖先遺伝子から生じた可能性がある。しかし、ヒトPTHrPの遺伝子構造は、複数のエクソンおよびmRNA形成の間の異なるスプライシング・パターンのための複数部位を含み、PTHのそれよりもずっと複雑である。141、139、および173アミノ酸のタンパク質産物が産生され、その他の分子型が、接近可能な内部切断部位での組織特異的な切断から生じる可能性がある。これらのさまざまな分子種の生物学的役割および循環型PTHrPの性質は不明である。PTHrPがヒト健常成人において有意なレベルで循環しているかどうかは不明確である; PTHrPは、パラクリン因子として産生され、機能し、そして組織内で局所的に破壊されている可能性がある。とりわけ扁平上皮細胞種の大きな腫瘍がホルモンの産生大過剰を引き起こすような病的状態である場合を除き、成人ではPTHrPは、カルシウム恒常性にほとんど影響を与えないようである。
【0051】
hPTHとhPTHrPとの間の配列相同性は、N末端13残基に概ね限定され、このうちの8残基が同一である;hPTHの受容体結合領域(25〜34番目)中の10アミノ酸のうちの1アミノ酸のみがhPTHrPで保存されている。立体構造類似性が共通活性の基礎であるかもしれない。Cohenら(J Biol. Chem. 266: 1997〜2004 (1991))は、PTH-(1-34)およびPTHrP-(1-34)の配列の多く、とりわけ領域(5-18)および(21-34)が、α-ヘリックス立体配置であると推測されることを提案しているが、この立体配置が生理的条件下でカルボキシ末端に向かって広がっているのかどうかについては幾分疑問があることに留意すべきである。そのような二次構造は、脂質相互作用、受容体相互作用、および/または構造安定化に重要である可能性がある。
【0052】
「副甲状腺ホルモン関連タンパク質」(PTHrP)という語句には、天然に存在するPTHrPのほか、合成または組換えPTHrP(rec PTHrP)が包含される。さらに、「副甲状腺ホルモン関連タンパク質」という語句には、対立遺伝子変異体、種変異体、および保存的アミノ酸置換変異体が包含される。この語句にはまた、完全長PTHrP-(1-36)のほか、例えば、本明細書に記載の試験法において、PTHrP様生物活性を有するペプチド模倣体の小分子を含む、PTHrP断片が包含される。PTHと同様に、PTHrPの生物活性はN末端部分と関連付けられ、残基(1-30)は明らかに最低限必要とされる。従って、PTHrP-(1-36)と同等の生物活性を与える量で、必要に応じてPTHrP断片変異体を本発明の方法のなかで使用することができると理解されるであろう。PTHrP断片には、完全なPTHrP-(1-36)の生物活性と同様の生物活性に必要な、PTHrPのアミノ酸残基が少なくとも組み込まれる。そのような断片の例には、PTHrP-(1-30)、PTHrP-(1-31)、PTHrP-(1-32)、PTHrP-(1-33)、PTHrP-(1-34)、PTHrP-(1-35)、PTHrP-(1-36)、...PTHrP-(1-139)、PTHrP-(1-140)、およびPTHrP-(1-141)が含まれる。
【0053】
「副甲状腺ホルモン関連タンパク質」という語句にはまた、PTHrP-(1-36)と相同的なアミノ酸配列を有するPTHrPの変異体および機能的類似体が包含される。従って、本発明には、置換、欠失、挿入、反転または環化のような修飾を有するが、それでもなお副甲状腺ホルモンの生物活性を実質的に有するような、PTHrP変異体および機能的類似体を含有する薬学的製剤が含まれる。本発明によれば、「相同的なアミノ酸配列」とは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による、またはポリペプチドの生物活性を損なわない位置に位置する、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは付加による、配列番号:2に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。保存的アミノ酸置換には通常、同一部類のアミノ酸の間での置換が含まれる。これらの部類には、例えば、(a) 非電荷極性側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、およびチロシン; (b) 塩基性側鎖を有するアミノ酸、例えばリジン、アルギニン、およびヒスチジン; (c) 酸性側鎖を有するアミノ酸、例えばアスパラギン酸およびグルタミン酸; ならびに(d) 非極性側鎖を有するアミノ酸、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびシステインが含まれる。そのような配列は、配列番号:2のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%の相同性であることが好ましい。
【0054】
本発明によれば、相同的なアミノ酸配列には、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と同一であるかまたは実質的に同一である配列が含まれる。「実質的に同一であるアミノ酸配列」とは、アミノ酸参照配列と少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%同一である配列を意味する。仮にそうであるとしても、相同配列は、多くの保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なることが好ましい。
【0055】
相同性の割合(%)および同一性の割合(%)の計算は、図1に提供されるように、最初に候補となるPTHrPポリペプチドを配列番号:2と整列させることにより決定される。整列したら、候補ポリペプチドと配列番号:2との間で共有される、同一アミノ酸の総数および/または保存的アミノ酸置換変異数を数える。同一性の割合(%)の計算の場合、候補となるPTHrPポリペプチドと参照配列との間の同一アミノ酸の数を、参照配列のアミノ酸の総数で割り、そしてこの数に100を掛けて百分率値を得る。相同性の割合(%)の計算の場合、候補となるPTHrPポリペプチドと参照配列との間の同一アミノ酸および保存的アミノ酸置換変異の総数を、参照配列のアミノ酸の総数で割り、そしてこの数に100を掛けて百分率値を得る。図1には、アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトPTHrP-(1-36)(配列番号:2)の他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントが与えられている。ヒト配列中の対応アミノ酸と異なる他の種のアミノ酸は太字で示されており、そしてヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。同一性の割合(%)および相同性の割合(%)の値が与えられている。
【0056】
または、配列解析ソフトウェアを用いて相同性を測定することができる(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705)。最高度の相同性(即ち、同一性)を得るように、類似アミノ酸配列を整列させる。この目的を達するために、配列中にギャップを人為的に導入することが必要となる場合がある。最適アライメント(整列)が設定されたなら、位置の総数に対して、両配列のアミノ酸が同一である位置を全て記録することにより、相同性(即ち、同一性)の度合いを定める。
【0057】
類似性の要因には、類似の大きさ、形および電荷が含まれる。アミノ酸類似性を決定する特に好ましい方法の1つは、Dayhoffら、5 ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE 345〜352 (1978 & Suppl.)(参照として本明細書に組み入れられる)に記載のPAM25Oマトリックスである。類似性スコアは最初に、整列された対アミノ酸の類似性スコアの合計として計算される。相同性および同一性の割合を目的とする場合、挿入および欠失は無視される。従って、ギャップ・ペナルティーは、この計算では使用されない。その後、生スコアを候補化合物および参照配列のスコアの相乗平均で割ることにより、これを標準化する。相乗平均は、これらのスコアの積の平方根である。標準化された生スコアが相同性の割合である。
【0058】
配列番号:1または2に示される配列のうちの1つに相同的な配列を有するポリペプチドには、天然に存在する対立遺伝子変異体のほか、突然変異体および変種または配列番号:2に示される配列を有するポリペプチドに、骨形成活性に関して類似する、その他任意の天然には存在しない変種が含まれる。
【0059】
対立遺伝子変異体は、ポリペプチドの生物学的機能を実質的に変化させない、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有すると特徴付けられる、ポリペプチドの別型である。「生物学的機能」とは、たとえその機能が細胞の増殖または生存に必要とされなくても、ポリペプチドが本来存在する細胞におけるそのポリペプチドの機能を意味する。例えば、ポリンの生物学的機能は、細胞外の媒体中に存在する化合物の細胞中への流入を可能とすることである。ポリペプチドは、1つより多い生物学的機能を有することができる。
【0060】
対立遺伝子変異体は、自然界において非常によく見られる。対立遺伝子変異は、ポリヌクレオチドのレベルで等しく反映される可能性がある。対立遺伝子変異体をコードするポリヌクレオチド、例えば、DNA分子は、従来法により抽出されたゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅により、容易に取り出すことができる。これには、コードドメインの5'および3'末端の上流および下流に適合する、合成オリゴヌクレオチドプライマーの使用が含まれる。適当なプライマーは、配列番号:1に与えられているヌクレオチド配列情報に従って設計することができる。通常プライマーは、10〜40、好ましくは15〜25ヌクレオチドからなりうる。CおよびGヌクレオチドを、効果的なハイブリダイゼーションを確実とするのに十分な割合で;例えば、CおよびGヌクレオチド量をヌクレオチド総量の少なくとも40%、好ましくは50%、含有するプライマーを選択することも有利であろう。
【0061】
天然には存在しない有用なホモログは、アミノ酸配列の変化および/または欠失に寛容である可能性が高い、PTHrPペプチドの領域を同定するための周知の方法を用いて設計することができる。例えば、安定性が増強されたまたは改変型のPTHrP変異体は、当技術分野において周知である。例えば、Vickeryら(J Bone Miner. Res., 11: 1943〜1951 (1996))は、hPTHrP(1-34)のC末端領域がモデル両親媒性α-ヘリックスペプチド(MAP)配列に置換された、PTHrP類似体について記述しており、そして結果的に得られた類似体[MAP1-10]22-31 hPTHrP-(1-34)NH2が、卵巣を摘出した骨量減少ラットにおいて、もとのペプチドよりも高い同化活性を有することを報告した。アミノ酸残基(22-31)が、両親媒性α-ヘリックスを形成する、親水性アミノ酸および脂肪親和性アミノ酸で置換された、他の生物学的に活性なPTHおよびPTHrP合成ポリペプチド類似体が報告されている。例えば、米国特許第5,589,452号、米国特許第5,693,616号、米国特許第5,695,955号、米国特許第5,798,225号、米国特許第5,807,823号、米国特許第5,821,225号、米国特許第5,840,837号、米国特許第5,874,086号、および米国特許第6,051,686号を参照されたい(これらはそれぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。これらのホモログおよび他のそのような生物学的に活性なペプチド模倣体化合物は、実施例6に記述されているように、PTHrP、PTH、またはTIPペプチドの小分子作動薬または拮抗薬を作製するのに有用である。
【0062】
本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド誘導体には、例えば、断片、完全長ポリペプチド由来の、大きな内部欠失のあるポリペプチド、および融合タンパク質が含まれる。
【0063】
本発明のポリペプチド断片は、この断片がもとのポリペプチドの好ましい実質的骨形成特性を維持する限りにおいて、配列番号:2〜13に示される配列のうちのいずれかに相同的な配列を有するポリペプチド由来とすることができる。
【0064】
相同的なコード配列を有する本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:1のヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドに、好ましくはストリンジェントな条件の下で、ハイブリダイズすることができる。ハイブリダイゼーション手順は、例えば、Ausubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons Inc. (1994); Silhavyら、EXPERIMENTS WITH GENE FUSIONS, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1984); Davisら、A MANUAL FOR GENETIC ENGINEERING: ADVANCED BACTERIAL GENETICS, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1980) (それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)に記載されている。ハイブリダイゼーションの条件を最適化するために考慮され得る重要なパラメータは、臨界値、つまり融解温度(これを超えると2つの相補DNA鎖が相互に解離する)の計算を可能とする式中に反映される。CaseyおよびDavidson, Nucl. Acid Res. 4: 1539 (1977)を参照されたい。この式は、以下の通りである:
Tm = 81.5 + 0.5×(% G+C) + 1.6 log (陽イオン濃度)-0.6×(% ホルムアミド)。
【0065】
適当なストリンジェンシー条件の下では、ハイブリダイゼーションの温度(Th)は、計算されたTm以下の、およそ20〜40℃、20〜25℃または、好ましくは、30〜40℃である。当業者であれば、最適な温度および塩濃度は、従来の手順を用いた予備実験のなかで、実験的に容易に決定できることを理解するであろう。
【0066】
例えば、プレハイブリダイズおよびハイブリダイズさせるインキュベーションの双方に関して、ストリンジェントな条件は以下のように達成することができる(i) 50%ホルムアミドを含有する6×SSC中、42℃で4〜16時間以内、または(ii) 6×SSC水溶液(1M塩化ナトリウム、0.1Mクエン酸ナトリウム(pH 7.0))中、65℃で4〜16時間以内。
【0067】
30〜600ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの場合、上の式を使用し、それから(600/塩基対のポリヌクレオチドサイズ)を引いて補正する。ストリンジェンシー条件は、Tmより5〜10℃低いThにより規定される。
【0068】
20〜30塩基よりも短いオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションの条件は、上記の規則に厳密には従わない。そのような場合には、Tmを計算するための式は、以下の通りである:
Tm = 4 × (G+C) + 2 (A+T)。
例えば、GC含量50%(50% G+C)の18ヌクレオチド断片は、Tmがおよそ54℃であろう。
【0069】
このように、本発明の方法には、以下からなる群より選択されるPTHrPペプチドの使用が含まれる:
(a) 完全長PTHrP;
(b) 完全長PTHrPの生物学的に活性な変異体;
(c) 生物学的に活性なPTHrP断片;
(d) PTHrP断片の生物学的に活性な変異体;
(e) 配列番号:2と少なくとも75%の相同性を有する生物学的に活性な変異体;
(f) 配列番号:2と少なくとも60%の同一性を有する生物学的に活性な変異体;および
(g) ストリンジェントな条件の下で、配列番号:1の相補核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる生物学的に活性な変異体。
【0070】
PTHrPには、以下に限定されることはないが、ヒトPTHrP(hPTHrP)、ウシPTHrP(bPTHrP)、およびラットPTHrP(rPTHrP)が含まれる。PTHrPの類似体は、天然に存在するPTHrPの構造的な類似体または断片(好ましくは、50またはそれ以下のアミノ酸を含むN末端断片)であり、PTHrPと同様に、PTH受容体に結合することもアデニル酸シクラーゼ活性を刺激することもでき、それによって骨形成を促進することができるペプチドである。そのような断片の例には、以下に限定されることはないが、PTHrP-(1-30)、PTHrP-(1-31)、PTHrP-(1-32)、PTHrP-(1-33)、PTHrP-(1-34)、PTHrP-(1-35)、PTHrP-(1-36)、...PTHrP-(1-139)、PTHrP-(1-140)、およびPTHrP-(1-141)が含まれる。以下の刊行物には、PTHrPペプチドの配列が開示されている: Yasudaら、J. Biol. Chem. 264: 7720〜7725(1989) ; Schermer, J. Bone & Min. Res. 6: 149〜155 (1991);およびBurtis, Clin. Chem. 38: 2171〜2183 (1992)。さらなる例は、以下の刊行物のなかで見つけることができる: 独国出願第4203040 A1号(1993); 国際特許出願第94/01460号(1994); 国際特許出願第94/02510号(1994); 欧州特許出願第477885 A2号(1992); 欧州特許出願第561412 A1号(1993); 国際特許出願第93/20203号(1993); 米国特許第4,771,124号(1988); 国際特許出願第92/11286号(1992); 国際特許出願第93/06846号(1993); 国際特許出願第92/10515号(1992); 米国特許第4,656,250号(1987); 欧州特許出願第293158 A2号(1988); 国際特許出願第94/03201号(1994); 欧州特許出願第451,867 A1号(1991); 米国特許第5,229,489号(1993);および国際特許出願第92/00753号(1992)。
【0071】
PTHrPは、胎児の骨の発育におよび成人の生理機能に対して、重要な発育的影響を及ぼす。PTHrP遺伝子(またはPTH受容体の遺伝子)をマウスでホモ接合的にノックアウトすると、致死奇形が引き起こされ、軟骨異形成に似た重篤な骨格奇形を伴う動物が生まれてくる。
【0072】
脳、膵臓、心臓、肺、乳房組織、胎盤、内皮細胞、および平滑筋を含む、多くの異なる細胞種がPTHrPを産生する。胎性の動物では、PTHrPは経胎盤性カルシウム輸送を命令し、そして高濃度のPTHrPが乳房組織で産生され、乳の中に分泌される。例えば、ヒトおよびウシの乳は、非常に高濃度のホルモンを含む;あとの生物学的重要性は不明である。PTHrPはまた、子宮収縮およびその他の生物学的機能に関与している可能性があり、いまでも他の組織部位で解明が続けられている。
【0073】
PTHRPの生物作用
PTHrPはPTHと、その重要なアミノ末端において顕著な相同性を共有するので、PTHで見られるのと非常に類似した効果で、PTH/PTHrP受容体に結合してこれを活性化する。しかし、PTHrPは十分な骨量の発達に不可欠であって、PTHrPは、有力な、骨量の生理的調節因子であるように思われるが、PTHはそうではない。このことを、骨芽細胞のPTHrP遺伝子が破壊されたことで、成人骨内のPTHrP産生は局所的に抑制されたが、成人骨中のPTHレベルは正常であったマウスを用いた、条件的な遺伝子ノックアウト戦略で実証した。PTHrPがないこと、およびこれらのマウスが骨粗鬆症を発症したことから、骨芽細胞由来のPTHrPは、骨芽細胞の機能を促進させることで骨の同化作用を与えることが実証された。Karaplis, A. C.「Conditional Knockout of PTHrP in Osteoblasts Leads to Premature Osteoporosis.」Abstract 1052, Annual Meeting of the American Society for Bone and Mineral Research, September 2002, San Antonio, TX. J Bone Mineral Res, Vol 17 (Suppl 1), pp S138, 2002 (参照として組み入れられる)を参照されたい。これらの所見から、PTHではなく、PTHrPは、正常な生理的条件下での、より重要な典型的な骨量調節因子であること、および骨粗鬆症に対するPTH治療は、効果的であるが、真の骨量調節因子であるPTHrPの代役としてのみ機能していることが示唆される。
【0074】
500アミノ酸のPTH/PTHrP受容体(PTH1受容体としても知られる)は、グルカゴン、セクレチンおよび血管活性腸管ペプチドに対する受容体を含む、GCPRスーパーファミリーに属する。その細胞外領域は、ホルモン結合に関与しており、そしてその細胞内ドメインは、ホルモンによる活性化後、Gタンパク質サブユニットを結合して、ホルモンによるシグナル伝達を二次メッセンジャーの刺激を介した細胞応答に変換する。
【0075】
第二のPTH受容体(PTH2受容体)は、脳、膵臓、およびその他のいくつかの組織で発現される。そのアミノ酸配列ならびにPTHおよびPTHrPに対するその結合および刺激応答のパターンは、PTH1受容体のものとは異なる。PTH/PTHrP受容体は、PTHおよびPTHrPに等しく反応するが、PTH2受容体はPTHにのみ反応する。この受容体の内在性リガンドは、管状漏斗ペプチド-39(tubular infundibular peptide-39)即ちTIP-39であると思われる。PTH2受容体-TIP-39系の生理学的な重要性は、今後定義されるべきである。最近、39アミノ酸の視床下部ペプチドである、管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide) (TIP-39)の特性が明らかとなった、そしてこれはPTH2受容体の天然リガンドの可能性が高い。
【0076】
PTH1およびPTH2受容体は、進化の時間を過去に遡ると、魚にまでたどることができる。ゼブラフィッシュPTH1およびPTH2受容体は、ヒトPTH1およびPTH2受容体がするように、PTHおよびPTHrPに対して同じ選択反応を示す。構造および機能の進化的保存性から、これらの受容体に独特な生物学的役割が示唆される。
【0077】
GSクラスのGタンパク質は、PTH/PTHrP受容体を、環状AMPを産生する酵素である、アデニル酸シクラーゼに結び付け、プロテインキナーゼAの活性化を引き起こす。GqクラスのGタンパク質との結合が、ホルモン作用を、イノシトールリン酸(例えば、IP3)およびDAGを産生する酵素であるホスホリパーゼCに結び付け、プロテインキナーゼCの活性化および細胞内カルシウム放出を引き起こす。クローン化したPTH/PTHrP受容体を用いた研究から、これが2つ以上のGタンパク質および二次メッセンジャーによるリン酸化経路に結び付けられることが確認され、多くの経路がPTHおよびPTHrPにより刺激されることを説明している。十分に特徴付けられていない二次メッセンジャー反応(例えば、MAPキナーゼ活性化)は、ホスホリパーゼCまたはアデニル酸シクラーゼ刺激とは無関係である可能性がある(また一方後者は、最も強くかつ最も良く特徴付けられたPTHおよびPTHrPに対する二次メッセンジャー・シグナル伝達経路である)。
【0078】
環状AMP、IP3、DAGの細胞内濃度の増大および細胞内Ca2+が、ECFカルシウムの最終的変化およびリン酸イオンの移動または骨細胞の機能を引き起こす生化学的段階の詳細は、不明である。プロテインキナーゼ(AおよびC)の刺激および細胞内カルシウム輸送は、種々のホルモン特異的な組織反応と関連している。これらの反応には、リン酸塩および重炭酸塩輸送の阻害、カルシウム輸送の刺激、ならびに腎臓における腎臓1α-ヒドロキシラーゼの活性化が含まれる。骨中の反応には、コラーゲン合成;アルカリホスファターゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ、クエン酸デカルボキシラーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ活性の増大;DNA、タンパク質、およびリン脂質合成;カルシウムおよびリン酸輸送;ならびにサイトカイン/成長因子の局所放出に対する作用が含まれる。最終的に、これらの生化学的な事象が、骨代謝回転およびカルシウム恒常性において統合的なホルモン反応をもたらす。
【0079】
C. その他の同化物質
他の作用物質、例えば、PTHおよびTIPは、PTHrPにより実証された同化作用と同様の同化作用を与える。PTHおよびTIPの組成ならびにそれらの用途は、本明細書に開示されているPTHrPに対するものと同様である。これらの骨同化物質であるPTHおよびTIPまたはその類似体は、1〜36ヶ月の期間にわたって10〜3,000μg/日の用量で、その必要性のあるヒト患者に投与された場合、前記患者の骨量を増加させる。別の態様として、用量は、好ましくは10〜50,000μg/日、20〜30,000μg/日、35〜20,000μg/日、40〜15,000μg/日、45〜10,000μg/日、50〜5,000μg/日であり、より好ましくは75〜1,500μg/日であり、さらに好ましくは100〜1,200μg/日であり、最も好ましくは300〜1,000μg/日である。さらに別の態様として、投与期間は好ましくは、12、15、または18ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、または11ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。骨量の増加は、本明細書に記載の試験法により観測することができる。これらの骨同化物質は、PTHrPと組み合わせることができる。それらを以下に記載する。
【0080】
PTHペプチド
PTHは、84アミノ酸の単鎖ペプチドである。PTHのアミノ酸配列が多数の哺乳動物種で特徴付けられ、この分子の多くの生物作用に極めて重要なアミノ末端部分の保存性が顕著であることが明らかとなった。生物活性はN末端部分と関連付けられ、残基(1-29)は明らかに最低限必要とされる。ヒトPTH(hPTH)のN末端部分は、ウシホルモン(bPTH)およびブタホルモン(pPTH)のN末端部分とそれぞれ3および2アミノ酸残基だけ異なる。
【0081】
PTHは最初に大きな分子(115アミノ酸からなるプレプロ副甲状腺ホルモン)として合成され、これはその後シグナルペプチドの切断(プロ副甲状腺ホルモン、90アミノ酸)さらには84アミノ酸のペプチドとして分泌される前のプロホルモンの二次切断により大きさが減少する。プレプロ副甲状腺ホルモンの疎水性領域は、ポリペプチドをポリリボソーム上の合成部位から小胞体を介して分泌顆粒へ輸送案内する際に役割を果たしている。
【0082】
1-14残基ほどの小ささのアミノ末端配列の修飾型の置換型の合成断片が、主要な受容体を活性化するのに十分である。PTHのカルボキシ末端領域(例えば、35-84)の生物学的役割は調査中である;同分子のこの領域に対する別の受容体または複数受容体が存在する可能性がある。アミノ末端が短縮されたかまたは修飾された断片は、PTH受容体に依然として結合するが生物応答を刺激する能力は失っている。例えば、配列7-34から構成されるペプチドは、インビトロでは受容体に結合する活性ホルモンの競合的阻害剤であるが、インビボでは弱い阻害剤である。
【0083】
「副甲状腺ホルモン」(PTH)という語句には、天然に存在するPTHのほか、合成または組換えPTH(rec PTH)が包含される。さらに、「副甲状腺ホルモン」という語句には、対立遺伝子変異体、種変異体、および保存的アミノ酸置換変異体が包含される。この語句にはまた、完全長PTH-(1-84)のほか、PTH断片が包含される。従って、必要に応じて、PTH断片変異体を、PTH-(1-84)と同等の生物活性を与える量で、本発明の方法のなかで使用することができると理解されるであろう。PTH断片には、完全なPTHの生物活性と同様の生物活性に必要なPTHのアミノ酸残基が少なくとも組み込まれる。そのような断片の例には、PTH-(1-29)、PTH-(1-30)、PTH-(1-31)、PTH-(1-32)、PTH-(1-33)、PTH-(1-34)、PTH-(1-80)、PTH-(1-81)、PTH-(1-82)、PTH-(1-83)、およびPTH-(1-84)が含まれる。
【0084】
「副甲状腺ホルモン」という語句にはまた、PTH-(1-34)と相同的なアミノ酸配列を有するPTHの変異体および機能的類似体が包含される。従って、本発明には、置換、欠失、挿入、反転または環化のような修飾を有するが、それでもなお副甲状腺ホルモンの生物活性を実質的に有するような、PTH変異体および機能的類似体を含有する薬学的製剤が含まれる。安定性が増強されたPTH変異体が、当技術分野において周知である、例えば、国際公開公報第92/11286号および国際公開公報第93/20203号(それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。PTH変異体には、例えば、位置8および/または18にあるメチオニンの置換ならびに位置16にあるアスパラギンの置換のような、PTHの安定性および半減期を改善するアミノ酸置換が組み込まれる。環化PTH類似体が例えば、国際公開公報第98/05683号(参照として本明細書に組み入れられる)に開示されている。「副甲状腺ホルモン」という語句にはまた、PTH-(1-11)またはPTH-(1-14)骨格を用いたアミノ酸置換変異体が包含される。Shimizuら、J Biol Chem., 276: 49003〜49012 (2001); Shimizuら、Endocrinology 42: 3068〜3074 (2001); CarterおよびGardella, Biochim Biophys Acta 1538: 290〜304 (2001); Shimizuら、J Biol Chem., 275: 21836〜21843 (2000) (それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0085】
図2には、アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、参照配列であるヒトPTH-(1-34)(配列番号:15)の、他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントが与えられている。「相同的なアミノ酸配列」とは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による、またはポリペプチドの生物活性を損なわない位置に位置する、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは付加による、配列番号:15に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。そのような配列は、配列番号:2のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%の相同性であることが好ましい。相同的なアミノ酸配列にはまた、配列番号:15に示されるアミノ酸配列と同一であるかまたは実質的に同一である配列が含まれる。「実質的に同一であるアミノ酸配列」とは、アミノ酸参照配列と少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%同一である配列を意味する。仮にそうであるとしても、相同配列は、多くの保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なることが好ましい。
【0086】
本発明の方法で有用なPTHペプチドには、以下からなる群より選択されるPTHペプチドの使用が含まれる:
(a) 完全長副甲状腺ホルモン;
(b) 完全長副甲状腺ホルモンの生物学的に活性な変異体;
(c) 生物学的に活性な副甲状腺ホルモン断片;
(d) 副甲状腺ホルモン断片の生物学的に活性な変異体;
(e) 配列番号:15と少なくとも75%の相同性を有する生物学的に活性な変異体;
(f) 配列番号:15と少なくとも60%の同一性を有する生物学的に活性な変異体;および
(g) ストリンジェントな条件の下で、配列番号:14の相補核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる生物学的に活性な変異体。
【0087】
TIPペプチド
最近、39アミノ酸の視床下部ペプチドである、管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide) (TIP-39)の特性が明らかとなった、そしてこれはPTH2受容体の天然リガンドの可能性が高い。従って、TIP-39ならびにその生物学的に活性な断片および類似体は、本発明の方法のなかで使用することができる。
【0088】
「管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide)」という語句には、天然に存在するTIPのほか、合成または組換えTIP(rec TIP)が包含される。さらに、「管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide)」という語句には、対立遺伝子変異体、種変異体、および保存的アミノ酸置換変異体が包含される。この語句にはまた、完全長TIP-(1-39)のほか、TIP断片が包含される。従って、必要に応じて、TIP-(1-39)と同等の生物活性を与える量でTIP断片変異体を本発明の方法のなかで使用できることが理解されるであろう。TIP断片には、完全なTIP-(1-39)の生物活性と同様の生物活性に必要なTIPのアミノ酸残基が少なくとも組み込まれる。そのような断片の例には、TIP-(1-29)、TIP-(1-30)、TIP-(1-31)、...TIP-(1-37)、TIP-(1-38)、およびTIP-(1-39)が含まれる。
【0089】
「管状漏斗ペプチド(tubular infundibular peptide)」という語句にはまた、TIP-(1-39)と相同的なアミノ酸配列を有するTIPの変異体および機能的類似体が包含される。従って、本発明には、置換、欠失、挿入、反転または環化のような修飾を有するが、それでもなおTIP-(1-39)の生物活性を実質的に有するような、TIP変異体および機能的類似体を含有する薬学的製剤が含まれる。
【0090】
相同性の割合(%)および同一性の割合(%)の計算は、図3に提供されるように、最初に候補となるTIPポリペプチドを配列番号:26と整列させることにより決定される。「相同的なアミノ酸配列」とは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換による、またはポリペプチドの生物活性を損なわない位置に位置する、1つまたは複数の非保存的アミノ酸置換、欠失、もしくは付加による、配列番号:15に示されるアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。そのような配列は、配列番号:26のアミノ酸配列に対して、少なくとも75%、好ましくは80%、より好ましくは85%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%の相同性であることが好ましい。相同的なアミノ酸配列にはまた、配列番号:26に示されるアミノ酸配列と同一であるかまたは実質的に同一である配列が含まれる。「実質的に同一であるアミノ酸配列」とは、アミノ酸参照配列と少なくとも60%、好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、および最も好ましくは95%同一である配列を意味する。仮にそうであるとしても、相同配列は、多くの保存的アミノ酸置換により参照配列とは異なることが好ましい。
【0091】
本発明の方法には、以下からなる群より選択されるTIPペプチドの使用が含まれる:
(a) 完全長TIP;
(b) 完全長TIPの生物学的に活性な変異体;
(c) 生物学的に活性なTIP断片;
(d) TIP断片の生物学的に活性な変異体;
(e) 配列番号:26と少なくとも75%の相同性を有する生物学的に活性な変異体;
(f) 配列番号:26と少なくとも60%の同一性を有する生物学的に活性な変異体;および
(g) ストリンジェントな条件の下で、配列番号:25の相補核酸配列にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる生物学的に活性な変異体。
【0092】
D. 治療剤形および治療方法
本発明の組成物(即ち、PTHrPペプチドおよび上述の骨同化物質)は、特定の分子および、含まれる場合には、特定の骨吸収阻害物質に適合する、任意の経路により間欠投与されてもよい。従って、必要に応じて、投与は、経口投与とするか、または皮下、静脈内、吸入、経鼻、および腹腔内の投与経路を含む非経口投与としてもよい。さらに、間欠投与は、組成物を、1日1回、2日毎に1回、3日毎に1回、1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、1月2回、および1月1回、定期的にボーラス注射して行ってもよい。
【0093】
本発明の治療組成物は、任意の適当な手段により、直接的に(例えば、注射、移植または組織部位への局所投与のように、局所的に)または全身的に(例えば、非経口的にまたは経口的に)個体に与えられてもよい。組成物が、静脈内、皮下、分子内、眼内、腹腔内、筋肉内、口腔粘膜、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、頭蓋内、脊椎内、脳室内、髄腔内、槽内、嚢内、鼻腔内投与によるかまたはエアロゾル投与によるように非経口的に与えられる必要がある場合、組成物は水性のまたは生理的に適合する液性の懸濁液または溶液を部分的に含むことが好ましい。従って、担体または媒体は、患者への所望の組成物の輸送に加えて、それ以外には患者の電解質および/または体液量バランスに悪影響を及ぼすことなく、生理学的に許容される。従って、薬剤に対する液状媒体には、通常の生理食塩水(例えば、0.9%塩化ナトリウム水溶液、0.15M、pH 7〜7.4)が含まれる。または、ミニポンプによる骨同化薬のパルス投与の使用を本発明の方法のなかで用いることができる。
【0094】
非経口投与のための有用な溶液は、例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Gennaro, A編), Mack Pub., 1990に記載の、製薬技術分野においてよく知られている方法のいずれかにより調製されてもよい。本発明の治療薬剤の剤形には、例えば、ポリエチレングリコール、植物性オイル、水素化ナフタレンなどのようなポリアルキレングリコールが含まれてもよい。特に、直接投与のための剤形には、グリセロールおよび所望の位置に薬剤を維持するのを補助する、その他の高粘度の組成物が含まれてもよい。例えば、ヒアルロン酸、コラーゲン、リン酸三カルシウム、ポリブチレート、ラクチド、およびグリコライド重合体ならびにラクチド/グリコライド共重合体を含む、生体適合性の、好ましくは生体吸収性の重合体は、薬剤の放出をインビボで制御する有用な賦形剤でありうる。これらの薬剤に対する他の有用な可能性のある非経口輸送系には、エチレン酢酸ビニル共重合体粒子、浸透性ポンプ、植込み型輸液系、およびリポソームが含まれる。吸入投与のための剤形は、賦形剤として例えば乳糖を含む、または例えば、ポリオキシエチレン- 9-ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水性溶液としても、または点鼻薬の形で、もしくは鼻腔内に適用されるゲルとして投与するための油性溶液としてもよい。非経口投与のための剤形にはまた、口腔粘膜投与の場合にはグリココール酸塩が、直腸内投与の場合にはメトキシサリチル酸塩が、または膣内投与の場合にはクエン酸(cutric acid)が含まれてもよい。直腸内投与のための坐剤はまた、PTHrPペプチド(単独でまたは骨吸収阻害物質と組み合わせて)をカカオバターのような非刺激性賦形剤または室温では個体でありかつ体温では液体であるその他の組成物と混合することにより調製されてもよい。
【0095】
皮膚表面への局所投与のための剤形は、PTHrPペプチド(単独でまたは骨吸収阻害物質もしくは同化物質と組み合わせて)を放出できる分子を、ローション剤、乳剤、軟膏剤または石けん剤のような皮膚学的に許容される担体とともに分散させることにより調製されてもよい。皮膚を覆う薄膜または層を形成できる担体は、適用を局在化し且つ除去を阻止するのに特に有用である。局所の内部組織表面への投与の場合、液体または半固形組織接着物質中、または組織表面への吸着を促進させることが知られている他の物質中(例えば骨ペースト)に薬剤を分散させてもよい。例えば、ヒドロキシプロピルセルロースまたはフィブリノーゲン/トロンビン溶液を都合よく使用してもよい。または、ペクチン含有剤形のような組織コーティング液を使用してもよい。
【0096】
治療方法は、単一期間の、骨同化薬の間欠投与 (例えば、1〜3ヶ月から15〜18ヶ月間まで変化する期間)を構成する。投与期間は、好ましくは12、15、または18ヶ月であり、より好ましくは7、8、9、10、または11ヶ月であり、最も好ましくは1、2、3、4、5、または6ヶ月である。または別の態様として、治療方法は、投与期間後の非投与期間の連続(例えば、骨同化薬の間欠投与を3ヶ月および薬剤非投与を3ヶ月の逐次期間)からなる。逐次治療期間は、患者のBMDが回復する(例えば、Tスコアが平均値の-2.0未満もしくは-2.5未満または好ましくは平均値の-1.0未満)まで繰り返すことができる。
【0097】
さらに別の態様として、治療方法にはさらに、骨吸収阻害物質を前記患者に同時にまたは順番に共投与する段階が含まれる。骨吸収阻害物質は、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、選択的アンドロゲン受容体モジュレーター、カルシトニン、ビタミンD類似体、またはカルシウム塩とすることができる。骨吸収阻害物質はまた、アレンドロネート、リセドロネート、エチドロネート、パミドロネート、チルドロネート、ゾレドロン酸、ラロキシフェン、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、レボルメロキシフェン、または抱合エストロゲンとすることができる。1つの態様として、患者は一定期間骨同化薬の間欠投与を受け、引き続いて骨吸収阻害物質を単独でまたは骨同化薬と組み合わせて用いた治療を一定期間受ける。現在好ましい態様として、例えば3ヶ月またはそれ以上の期間にわたってPTHrPのような同化物質を最初に投与し、続けて例えばさらに3ヶ月またはそれ以上の期間にわたって抗吸収剤を単独でまたは骨同化薬と組み合わせて投与する。理論により束縛するわけではないが、逆の投与、即ち同化物質の投与前に抗吸収剤を投与すると、同化物質の効果が軽減されてしまう。故に、本発明によれば、PTHrPのような同化物質は、PTHrP/PTH/TIP効果を維持するおよび増強させるために後で使用される抗吸収剤、例えば同化物質の後で第二選択薬として投与されるエストロゲンまたはビスホスホネートによる骨粗鬆症治療と併せて、第一の骨粗鬆症治療とするべきである。
【0098】
しかし、当業者であれば、逐次治療計画は、骨同化薬による治療期間に先立って骨吸収阻害物質による治療期間から開始する可能性もあること、逐次治療期間の長さは変更することができる(例えば1〜18ヶ月)こと、および骨同化薬を骨吸収阻害物質と同時投与することができる(例えば、骨吸収阻害物質単独での治療期間に先立つ骨同化薬および骨吸収阻害物質の逐次治療期間)ことを認識するものと思われる。この場合もやはり上述のように、逐次治療期間(例えば、骨同化薬を3ヶ月、続けて骨吸収阻害物質を3ヶ月)は、患者のBMDが回復する(例えば、Tスコアが平均値の-2.0未満もしくは-2.5未満または好ましくは平均値の-1.0未満)まで繰り返すことができる。
【0099】
骨同化物質は多くの副作用を示すと一般に考えられており、その結果として、これらの薬剤の用量および投与は注意深く制御され、患者は好ましくない副作用の発生がないかどうか注意深く観測される。例えば、PTHrPは、もともとPTHの毒性プロフィールと同様であるかまたはさらに大きいと考えられる毒性プロフィールを伴い、副甲状腺機能亢進症に似た症候群である、悪性腫瘍による高カルシウム血症のほとんどの場合に関与すると思われていた。
【0100】
しかし、他の骨同化物質の毒性プロフィールは、PTHrPに当てはまらないようである。本発明の所見から、例えばPTHに対して安全だと考えられる用量よりも少なくとも20倍高い用量で投与されるにもかかわらず、PTHrPは顕著な副作用を引き起こさないことが示唆される。例えば、PTHrP約50μg〜約400μg用量を皮下に間欠投与(用量後8時間はQ2H)しても、高カルシウム血症を引き起こさないようである。実際に、すでに投与されたいかなる用量でも、PTHrPの投与により高カルシウム血症が引き起こされることは観察されておらず、450μgを超え、1mgまでのような用量は安全で、患者に許容され、かつ効果的である。そしてある場合では、3〜10mgの個々の用量も安全であると見受けられ、50mgまでも、またはそれ以上であっても、患者のモニタリングが適切に行われていれば可能であり、十分に許容される。
【0101】
特に、使用した比較的高い用量にもかかわらず、PTHrPで治療した患者18人で高カルシウム血症(9.9mg/dlを超える血清カルシウムとして実施例1および実施例5に記載の試験において定義される、高カルシウム血症のかなり控えめな定義)の発症の例はなかった。これは、20μg用量のPTHを用いて治療した患者間で報告された高カルシウム血症の発生率が11%および40μg用量を受けた患者間で報告された高カルシウム血症の発生率が28%であることを実証するNeerらの研究と対照的である。興味深いことに、Neerらは、高カルシウム血症を10.6mg/dlより高い血清カルシウムと定義した。本明細書に記載の高カルシウム血症に対するさらに厳密な評価基準9.9mg/dlを用いてNeerらの研究結果を再計算すると、Neerらの研究における高カルシウム血症の発症率はずっと高かったと考えられる。その他の研究者らは、およそ40μgの用量でPTH(1-84)を用い、最大で15mg/dlまでのさらに重篤な高カルシウム血症(これはほとんど致死的である)を経験した。
【0102】
従って、PTHrPにより、治療法としてPTHよりも多くの利点が与えられる。PTHrPは、骨純同化的な作用物質であって、高カルシウム血性ではなく、これまでに調査されてきた用量より比較的高い用量で投与される場合でさえも、その他の副作用がない。第二に、PTHrPは、骨量密度を増加させるのにPTHよりもずっと効果的であると考えられる。第三に、PTHrPはPTHよりも安定である。第四に、PTHrPは、PTHとは明らかに異なりかつさらに好ましい薬物動態を有する。第五に、PTHrPは、骨量を維持するのに必要とされないPTHとは対照的に、成人で骨量を維持するのに関与している。第六に、PTHrPは、より短い期間で治療の終点を達成することが可能であって、このことからヒトへ投与するのにさらに安全であり、例えば3〜9ヶ月使用するだけで、骨肉種(発生)の12ヶ月閾値をまたぐことなくBMDに対して劇的な効果を達成することができる。
【0103】
E. PTHRP類似体の同化作用の生物学的試験
骨形成を促進することができるPTHrPまたはその類似体およびその他の同化物質の合成、選別および使用は、当業者の能力の範囲内である。例えば、PTHrPの種々の候補類似体がヒト患者で骨形成を促進する効果を決定するために、周知のインビトロまたはインビボ試験を使用することができる。インビトロ結合試験の場合、骨芽細胞の特徴を有する永久細胞株であり且つラットまたはヒト由来のPTHrPに対する受容体を有する骨芽細胞様細胞を使用することができる。適当な骨芽細胞様細胞には、ROS17/2細胞 (Jouishommeら、Endocrinology, 130: 53〜60 (1992))、UMR106細胞 (Fujimoriら、Endocrinology, 130: 29〜60 (1992))、およびヒト由来SaOS-2細胞 (Fukuyamaら、Endocrinology, 131: 1757〜1769 (1992))が含まれる。この細胞株は、American Type Culture Collection, Rockville, Md.から入手可能であり、標準的な特定増殖培地で維持することができる。さらに、インビトロ結合試験に、ヒトPTH1またはPTH2受容体を発現している形質転換したヒト胎児腎細胞(HEK 293)を利用することもできる。Pinesら、Endocrinology, 135: 1713〜1716 (1994)を参照されたい。
【0104】
インビトロ機能試験の場合、PTHrPのペプチド断片または誘導体のPTHrP様の類似体活性は、一連の濃度の試験化合物を培養細胞と接触させて、受容体と共役した二次メッセンジャー分子の活性化の刺激、例えば細胞中の環状AMP蓄積の刺激またはプロテインキナーゼCの酵素活性の増加(これらはどちらも従来の試験法により容易に観測できる)を評価することにより試験することができる。Jouishommeら、Endocrinology, 130: 53〜60 (1992); Abou-Samraら、Endocrinology, 125: 2594〜2599 (1989); Fujimoriら、Endocrinology, 128: 3032〜3039 (1991); Fukayamaら、Endocrinology, 134: 1851〜1858(1994); Abou-Samraら、Endocrinology, 129: 2547〜2554 (1991);およびPinesら、Endocrinology, 135: 1713〜1716 (1994)を参照されたい。PTH作用のその他のパラメータには、細胞質内のカルシウムおよびホスホイノシトールの増加、ならびにコラーゲン、オステオカルシンの生合成、およびアルカリホスファターゼ活性の変化が含まれる。
【0105】
PTHのサブフラグメントの作動活性は、ペプチドをラット腎臓培養細胞と接触させて、環状AMPの蓄積(Blindら、Clin. Endocrinol., 101: 150〜155 (1993))および1,25-デヒドロキシビタミンD3産生の刺激(Janulisら、Endocrinology, 133: 713〜719 (1993))を評価することにより分析に成功している。
【0106】
以下の実施例2および実施例3で示されるように、骨形成活性を有するPTHおよびPTHrPは、PTH/PTHrP受容体と特異的に結合して、ヒト腎皮質の細胞膜における、ヒト骨芽細胞様の骨肉腫の細胞膜および無傷細胞(実施例2)における、およびイヌ腎皮質の細胞膜(実施例3)におけるcAMP蓄積の用量依存的な刺激を引き起こす。参照標準となる類似体として[Nle8,18, Tyr34] hPTH-(1-34)NH2またはhPTHrP-(1-36)を用い、用量-反応関係を標準的な非線形回帰分析により作出することができる。種々のPTHrP類似体の相対能力(ユニット/mgとして)は、参照標準となる類似体のEC50のPTHrP類似体のEC50に対する比から決定することができる。EC50は、最大反応(本明細書ではcAMP蓄積)の2分の1を引き起こす用量と定義される。細胞を取り扱うための詳細な手順、試験を設定するための詳細な手順、およびcAMPを定量するための方法は、Sistaneら、Pharmacopeial Forum 20: 7509〜7520 (1994)に報告されている。
【0107】
インビボ試験の場合、実施例4に記載されているように、PTHrPの候補類似体が卵巣を摘出した骨量減少ラットにおいて骨梁のおよび皮質の骨量を増加させる能力によりそれらを特徴付けることができる。
【0108】
実施例5には、骨同化物質としてのPTHrPの有効性を実証する、3ヶ月間にわたる二重盲検の見込み偽薬(placebo)対照無作為臨床試験が記載されている。PTHrPは僅かな副作用を示し、例えば比較的高用量であっても高カルシウム血症の有意な増加が認められることはない。
【0109】
実施例6には、骨同化の生物活性を有するペプチド模倣体および小分子の構造に基づく設計のための、コンピュータシステムとそのコンピュータシステムを使用する方法が記載されている。
【0110】
以下の実施例は、単に例示を目的として提供されるものであって、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【0111】
実施例1 骨同化物質PTHRPを用いた閉経後骨粗鬆症の短期間の非常に高用量での治療
副甲状腺ホルモン関連タンパク質、即ち「PTHrP」は、典型的な骨同化物質である。これは当初、致死性の腫瘍随伴症候群、悪性腫瘍による体液性高カルシウム血症、即ち「HHM」に共通する原因として発見された。HHM患者に起こる高カルシウム血症は、主に破骨細胞の骨吸収の著しい活性化に起因する。従って、PTHrPは骨同化物質としての候補である可能性は低いように思われていた。
【0112】
本研究の目的は、短期間PTHrPペプチドを間欠的に高用量投与することで、マイナスの副作用なしにBMDの著しい増加を引き起こすことができるかどうか、そしてそのようにPTHrPが閉経後骨粗鬆症の女性における効果的な骨同化物質である可能性を決定することであった。実施例1のような本明細書に記載される研究は、PTHrPを偽薬治療と比較する3ヶ月にわたる二重盲検の無作為偽薬対照パイロット臨床試験であり、これにより、副甲状腺ホルモン(PTH)が3ヶ月の治療の間に骨塩密度の明らかな増加を引き起こすことができ、PTHrPが治療的に有効に骨量を増加させる際に少なくともPTHと同じくらい効果的であろうことを結論づけた。
【0113】
PTHrPを用いると、腰椎の骨塩密度に見られる絶対的な増加だけでなく増加率も大きく、現在利用可能な骨粗鬆症薬を用いてこれまでに報告されているものに匹敵するかまたはそれを越えている可能性がある。
【0114】
PTHrPは、3ヶ月間だけ高用量で皮下投与されると腰椎のBMDを4.7%増加させ、効果的な同化物質であると思われる。これは、利用可能な抗吸収性の骨粗鬆症薬およびPTHに比べて全く引けを取らない。高用量にもかかわらず、PTHrPは耐用性良好であった。
【0115】
材料および方法
ヒト投与用のhPTHrP-(1-36)および偽薬の調製
以前に報告されているように(Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab 81: 199〜208 (1996))、合成hPTHrP-(1-36)を固相合成により調製した。
【0116】
簡単に言えば、hPTHrP-(1-36)の重量を量り、10mM酢酸溶液に溶解し、滅菌済みの0.2μmシリンジ・フィルターに通してろ過し、無菌ガラスバイアル中に5〜600μgの分割単位で無菌的に分割し、バイアル中に無菌的に密封し、-80℃で凍結し、凍結乾燥した。偽薬入りのバイアルも全く同じ方法で調製した。バイアルは-80℃で保存した。ペプチド含量は、アミノ酸分析法、PTHrP-(1-36) RIA(後述)またはPTHrP-(1-36) RNA法、およびアデニリルシクラーゼ生物学的試験法(後述)により確認した。発熱原試験は、対照として大腸菌(Escherichia coli)0113由来のごく一般的な内毒素を用い、カブトガニ変形細胞分解産物のゲルクロット試験法(Associates of Cape Cod社, Falmouth, MA)により行った。バイアル中の内毒素濃度は検出下限値に満たなかった(0.03内毒素単位/mL未満)。バイアルには、ピッツバーグ大学医療センター調査薬局(University of Pittsburgh Medical Center Investigational Pharmacy)との連携でラベル付けを行った。各投与の開始直前に、バイアルのPTHrP-(1-36)に0.9%生理食塩水1.0mLを加えて再構築した。hPTHrP(1-36)の重量は、4260.6ダルトン(Da)である。ペプチド構造は、質量分析法およびアミノ酸分析法により確認した。純度が99%を越えていることを、逆相高速液体クロマトグラフィー法により確認した。
【0117】
アデニリルシクラーゼ生物学的試験法
hPTHrP-(1-36)の生物学的効果は、コンフルエント(集密的)なヒト骨肉腫細胞SaOS2で行うアデニリルシクラーゼ試験により、以前に詳細に報告されている方法(Everhart-Cayeら、 J Clin Endocrinol Metab 81: 199〜208 (1996); Orloffら、Endocrinol 131: 1603〜1611 (1992); Merendinoら、 Science 231: 388〜390 (1986))を用いて試験した。簡単に言えば、SaOS2細胞は、American Type Culture Collection, Rockville, MDから入手し、これを10%FBS、2mmol/L L-グルタミン、ペニシリン(50 U/mL)、およびストレプトマイシン(50μg/mL)を添加したマッコイ培地中で維持した。試験のおよそ10日前に、細胞を24ウェルプレートで培養して、試験前のおよそ7日間コンフルエント(集密的)としておいた。細胞をイソブチルメチルキサンチン(500mmol/L)とともに25℃で10分間インキュベートし、ペプチドを添加して、さらに10分間25℃でインキュベーションを継続して行った。培地を吸引し、細胞を5%トリクロロ酢酸に溶解し、この抽出物をトリオクチルアミン: Freon溶液(25:75%)により中和した。抽出物中のcAMP含量をRIA法により測定した(Biomedical Technologies, Stoughton, MA)。ペプチドを少なくとも3回の別試験で試験した。
【0118】
PTHrP RIA法
抗血清S2を用いたhPTHrP-(1-36) RIA法が、以前詳細に報告されている(Yangら、Biochem., 33: 7460〜7469 (1994); Burtisら、 N. Engl. J Med, 322: 1106〜1112 (1990))。簡単に言えば、以前に報告されているように(Orloffら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103 (1989))、ラクトペルオキシダーゼ法を利用して、放射性リガンド(以下を参照されたい)として使用するための125I標識Tyr36 PTHrP-(1-36)アミドを調製した。二重とした(duplicate)試験用標準液または試料(100μL)を、P10BT緩衝液(10% BSAおよび0.1% Triton X-100を含有するPBS)で1500倍希釈したS-2 100μLと4℃で一晩インキュベートした。ヨウ化Tyr36の、P10BT緩衝液(10% BSAおよび0.1% Triton X-100を含有するPBS)で1500倍希釈したS2溶液。ヨウ化Tyr36 hPTHrP-(1-36)アミド(2000-8000cpm)のPBT緩衝液をチューブ管に加え、この混合物を4℃で一晩インキュベートした。デキストラン被覆活性炭を用いて相分離を行った。試験法の感度は50pmol/Lである。抗血清は、hPTHrP-(1-74)、(1-36)および(1-141)を同程度の親和性で認識するが、hPTHrP-(37-74)とまたはhPTH-(1-34)もしくはhPTH-(1-84)と交差反応しない(Yangら、Biochem., 33: 7460〜7469 (1994))。
【0119】
血清および尿生化学検査
血漿25-ビタミンD濃度のような、ピッツバーグ大学医療センターの臨床化学実験室(University of Pittsburgh Medical Center Clinical Chemistry Laboratory)での日常的な化学および血液試験に対して、血液を分析した。オステオカルシンは、Gundbergら、J Clin Endocrinol Metab 83: 3258〜3266, (1998)(参照として組み入れられる)に報告されているように測定した。血清N-テロペプチド(N-Tx) (Osteomark)および尿デオキシピリジノリン(DPD) (Pyrilinks-D)をそれぞれ、Ostex International, Seattle WAおよびQuidel Corp, Santa Clara CAから市販されているキットを用いて測定した。
【0120】
被験者
この試験のため、骨粗鬆症を患うも一貫して健常な閉経後の女性16人を同定した。全被験者には、インフォームド・コンセントを行った。実験群および対照群の参加者は、類似した年齢(平均年齢およそ65歳)、体重、身長、肥満指数(BMI)、閉経からの年数、エストロゲンの(使用)年数、カルシウム摂取率であり、類似の血漿25ビタミンD濃度を有していた。両群は、腰椎に骨粗鬆症が見られた。
【0121】
この試験を開始する前、各被験者は、この試験の開始時におよび終了時に、腰椎および股関節部の骨塩密度スキャン(DXA)を受けた。採択基準には、腰椎でのTスコアが-2.5未満、閉経後3年を越えていること、エストロゲン補充を少なくとも3年間受けていること、および概ね良好な健康状態であることが含まれた。除外基準には、ビスホスホネート、カルシトニン、または選択的エストロゲン受容体修飾物質を含む、骨粗鬆症の任意の医薬品の過去における使用が含まれた。カルシウムまたは骨代謝に影響を及ぼす可能性がある医薬品または作用物質(例えば、チアジド、非生理的用量の甲状腺ホルモン、糖質コルチコイド、リチウム、アルコールなど)を現在使用していることもまた、除外基準とした。全被験者にインフォームド・コンセントを行った。この手順は、ピッツバーグ大学施設内治験審査委員会(University of Pittsburgh Institutional Review Board)により承認を得た。
【0122】
試験手順
ヒト臨床試験でのPTHrPの使用は、FDA(IND#49175、参照として本明細書に組み入れられる)により承認を得た。この手順は、ピッツバーグ大学施設内治験審査委員会により承認を得た。これは、無作為化された二重盲検偽薬対照臨床試験とした。一次効果指標は腰椎の骨塩密度とした。二次効果指標は、股関節部および大腿骨の骨塩密度、骨代謝回転マーカー、血清カルシウム、血清クレアチニン、腎臓のリン処理ならびに有害事象とした。
【0123】
被験者16人は、PTHrPまたは偽薬(PTHrPを含有していないが同じように調製された空バイアル)のどちらかによる治療を3ヶ月受けるように無作為化された。各被験者はまた、一日当たりビタミンD 400IUおよびカルシウムを炭酸カルシウム(Os-Cal, Smith Kline Beecham/Glaxo, King of Prussia, PA)として1000mgを受け、これはPTHrPまたは偽薬治療の開始の2週間前から始められた。被験者は、PTHrPまたは偽薬の-20℃での自宅保存、再構成および自己注射について教えを受けた。バイアルは、被験者により、使用直前に無菌の静菌性生理食塩水1.0mlの中で再構成されて、1日当たりPTHrPの平均用量410.25μg、または偽薬生理食塩水とし、そして腹部皮下脂肪中に自己注射された。被験者は、試験の0、14、30、60および90日目に、血液および尿試験のために戻ってきた。最後の骨密度試験は、試験の第90日目に行われた。
【0124】
試験の服薬遵守
偽薬群中の患者1人が3日後に試験から外れた。各群中の残る患者は、事無く試験を完了した。その後のデータ解析には、開始時の患者16人、ならびに3ヶ月の試験を完了したPTHrP被験者8人および偽薬被験者7人が含まれる。
【0125】
安全面の配慮
被験者は、高カルシウム血症、発疹、GI(疾患)の愁訴、心血管(疾患)の愁訴もしくは症候、またはその他の非特異的な愁訴がないかどうか、0、2、4、8、および12週目に観察した。患者は、各来院時、即ち試験の0、14、30、60および90日目に副作用に関して質問を受けた。
【0126】
骨密度測定
脊椎および股関節の骨密度測定は、Model2000デンシトメータ(Hologic Inc. Bedford MA)を用いて盲目的に測定された。この結果は、骨密度測定に熟達した内科医2人により盲目的にかつ独立して精査された。
【0127】
統計解析
統計解析は、ソフトウェアExcel(Microsoft, Seattle, WA)を用い、対応のないスチューデントのt検定(Student's unpaired T-test)により行った。P値が0.05未満を有意と見なした。
【0128】
結果
対象者の基本属性
2群中の対象者の基本属性は、表Iに示されている。被験者は、類似した年齢、体重、身長、肥満指数(BMI)、閉経からの年数、エストロゲンの(使用)年数、カルシウム摂取率であった、そして類似の血漿25ビタミンD濃度を有していた。偽薬群では、2人が喫煙者であり、1人が甲状腺機能低下症のために甲状腺ホルモンの標準的な補充投与を受けていた。両群は、腰椎に骨粗鬆症が見られた。
【0129】
試験の服薬遵守
偽薬群中の患者1人が、皮下注射後、息切れおよび胸苦しさのため、3日後に試験から外れた。各群中の残る患者は事無く試験を完了した。その後のデータ解析には、開始時の全患者16人、ならびに3ヶ月の試験を完了したPTHrP被験者8人および偽薬被験者7人が含まれる。
【0130】
一次効果指標
L/S BMD
試験の3ヶ月にわたる腰椎のBMD変化は、図4に示されている。左パネルは、DXAにより測定される骨塩密度の変化をベースラインからの変化百分率として示している。右パネルは、同じデータをベースラインからの骨塩密度の絶対変化(単位 gm/cm2)として示している。各パネルにおいて、太線はPTHrPで治療した被験者(n=8は、PTHrP治療患者8人全員が含まれることを示している)を表し、破線は偽薬を受けた被験者を表す。
【0131】
偽薬群では、本明細書に記載されているように、除外者(outlier)を含む(+)および除外者を除く(-)データが示されている(n=6/7は、除外者を含むまたは除く、偽薬を受けている被験者の数を示す)。エラーバーはSEMを示す。P値は、対応のあるスチューデントのt検定(Student's paired T-test)により決定した。左パネルに示すように、PTHrP群における腰椎でのBMDの増加は3ヶ月間で4.72%であった。対照的に、偽薬群における変化はもっと少なく、1.4%(p=0.025)であった。偽薬群におけるこの驚くべき増加の大きさには、被験者1人の増加量6.5%が反映されていた。たった1人の偽薬群の除外者のBMDが顕著に増加(6.5%)した理由は不明である。この増加は、DXAスキャンの独立した盲目的な精査により確認され、位置決めまたはその他の技術的に考慮すべき事柄が原因ではなかった。この被験者は、他の偽薬被験者とは、開始時または終了時における全股関節部または大腿骨頚部のBMDは異なっておらず、ベースライン(開始時)の脊椎BMDに関して相違がなかった。試験前または試験後に脊椎圧迫骨折の証拠はなく、大動脈または関節石灰沈着はなかった。この被験者は、本試験で血漿25ビタミンD濃度が最も低い(16ng/ml)うちの1人であり、この患者での増加が顕著な成分は、軽度の骨軟化症の是正を反映していた可能性がある。この患者を除くと、偽薬群における増加は0.6%(p=0.003)となった。この結果をBMDの絶対変化(単位gm/cm2)として表した場合(右パネル)、PTHrP群における増加は0.0375gm/cm2となり、偽薬群においては、除外者を含む(p=0.022)かまたは除く(0.003)かに応じて、0.011または0.005gm/cm2となり、同様の所見が得られた。
【0132】
二次効果指標
大腿骨頚部および全股関節部のBMD
ベースラインからの変化百分率として表された全股関節部および大腿骨頚部でのBMD変化が、図5に示されており、腰椎での変化と比較されている。淡灰色の棒グラフは偽薬群(PBO)を示し、黒色の棒グラフは実験群(PTHrP)を示す。L/Sデータは図4に示されたデータと同じものであり、除外者が含まれる。エラーバーはSEMを示し、P値は対応のあるスチューデントのt検定により決定した。試験中、どちらの股関節部位においてもPTHrPとPBOとの間に有意な相違はなかった。
【0133】
骨代謝回転マーカー
図6は、偽薬およびPTHrP治療被験者における3つの異なる骨代謝回転マーカーを図解している。図6(a)は、骨形成マーカーの血清オステオカルシンが、PTHrP治療被験者では試験の間に統計学的に有意な形で増加しているが、偽薬対照では増加していないことを図解している。実際に、図6(a)に図解されるように、血清オステオカルシンの増加は、早くも15日目(血液試料が得られた最も早い期間)で明らかであった。
【0134】
対照的に、図6(b)に示されるように、骨吸収マーカーの血清NTXは、試験の間偽薬対照と同様にしてPTHrP治療被験者でも不変のままであった。二つ目の骨吸収マーカーの尿DPD排泄もまた不変であった。図6(c)を参照されたい。3つの図の全てにおいて、破線は偽薬群を、実線はPTHrP群を示している。エラーバーはSEMを示し、P値は反復測定のANOVAを用いて決定した。これらの所見から、PTHrPは、正常な骨吸収速度をさらに刺激することなく、骨形成を選択的に刺激することが示唆される。
【0135】
血清および尿化学検査
図7は、偽薬およびPTHrP治療被験者における血清の総カルシウムおよび血清イオン化カルシウムを図解している。破線は偽薬群を、実線はPTHrP群を示している。エラーバーはSEMを示し、P値は反復測定のANOVAを用いて決定した。カルシウム量は、偽薬対照においてだけでなくPTHrP治療被験者においてもまた正常かつ一定のままであった。被験者は誰も、血清の総カルシウムまたはイオン化カルシウムの有意な増加を生じなかった。血清クレアチニンも同様に、PTHrPおよび偽薬被験者の双方で正常のままであった(第90日の、血清クレアチニン平均値±SEM = 0.825±0.05mg/dl(PTHrP群) 対 0.84±0.06(偽薬群)、p = ns)。血清リンもまた、尿細管リン最大量(3.3mg/dl±0.27 (PTHrP群) 対 2.6±0.24(偽薬群)、p = ns)と同様、試験の初めから終わりまで両群で類似していた(3.2mg/dl±0.18 (PTHrP群) 対 2.9±0.17(偽薬群)、p = ns)。
【0136】
図8は、選択された、以前に公表されている骨粗鬆症の臨床試験からの結果とのPTHrPの同化活性の比較を図解している。「Ralox 150」は、Delmas PDら、N Engl J Med 337: 1641〜7, (1997)を参照し;「Ralox 120」は、Ettinger Bら、JAMA 282: 637〜45, (1999) を参照し;そして「カルシトニン」は、Chestnut Cら、Osteoporosis Int 8 (suppl 3): 13(1998) を参照し、;「アレンドロ(alendro)」、「リセドロ(risedro)」および「ゾレドロ(zoledro)」は、アレンドロネート(Liberman UAら、N Engl J Med 333: 1437〜43, (1995)およびMurphy MGら、J Clin Endocrinol Metab 86: 1116〜25, (2001))、リセドロネート(Fogelman Iら、J Clin Endocrinol Metab., 85: 1895〜1900, (2000)およびMcClung MRら、N Engl J Med 344: 333〜40, (2001))、およびゾレドロネート(Reid IRら、N Engl J Med 346: 653〜61, 2002)を用いた研究を参照している。「PTH」は、副甲状腺ホルモンを用いた2つの研究(Lindsay Rら、Lancet 350: 550〜5 (1997)、およびNeer RMら、N Engl J Med 344: 1434〜41 (2001))を参照し、そして「PTHrP」は、現在の試験を参照している。これらの参考文献のそれぞれがこれにより、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0137】
有害事象
PTHrP群の被験者は誰も、衰弱、悪心、嘔吐、下痢、便秘、潮紅、筋痙攣またはアレルギー性の現象を経験することはなかった。PTHrP被験者1人が、3度目の注射後、立った状態で30秒の心悸亢進を経験したが、これはその後の注射で再発はしなかった。PTHrP被験者全員が試験を完了した。対照的に、偽薬群の被験者1人が、試験の第3日目の注射後に潮紅、眩暈および悪心を経験し、それでこの被験者は試験から外された。
【0138】
考察
これらの試験から、PTHrPは、ごく短期間にわたって非常に大量に皮下投与されると脊椎の骨密度の統計学的におよび生物学的に注目に値する増加が引き起こされることが示唆される。これはいくつかの理由で驚きである。第一に、PTHrPはもともと、悪性腫瘍による体液性高カルシウム血症におけるその骨異化作用の結果として同定された。第二に、3ヶ月でほぼ5%の脊椎BMDの速度増加および絶対的増加は、多くの現在利用可能な抗吸収性の骨粗鬆症医薬品を用いて観察されたものよりも大きい(図8を参照されたい)。実際に、この規模の増加は、カルシトニンでもラロキシフェンでも、これらの薬剤が3年もの長い間投与される場合でさえ報告されていない。エストロゲンは脊椎BMDを同様に増加させるが、5%変化させるには3年の治療が必要となる。エチドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、およびゾレドロネートを含むいくつかのビスホスホネートを用いて観察された変化は5%に等しいかまたはこれを超えるが、3ヶ月よりもずっと長く、通常1年またはそれ以上の年数がかかる。実に、観察された変化は、これまでに報告されている3ヶ月間にわたってPTHを用いた試験で観察されたものと比べて遜色がなく、これを超えている可能性もある。利用可能な抗吸収剤による治療という観点から見れば、短期で高用量のPTHrPの効果は顕著である。
【0139】
本試験で使用したPTHrPの用量は、類似のPTHの試験で使用された用量と比べて多かった。本試験の被験者は6.56μg/kg/日を受けたが、これはPTHrPを受けた被験者8人では平均して1日当たり410.25μgであった。これは、骨粗鬆症の試験で一般に使用されたhPTH(1-34)の用量(20〜40μg/日)よりもおよそ10〜20倍多い。PTHの用量が20μg/日を超えると、ヒトでは高カルシウム血症およびその他の副作用が伴う。従って、健常被験者が高カルシウム血症、体位性低血圧症、悪心、潮紅またはその他の副作用を発現することなく、この規模の用量を寛容したのは驚きである。PTHrP(1-36)は、分子量がPTH(1-34) (およそ4200Mr)と非常に近いので、この相違は、使用した2種のペプチドのモル量の相違によるものではない。この相違はまた、共通のPTH/PTHrP受容体との異なる相互作用によるものでもない:hPTH(1-34)およびhPTHrP(1-36)はどちらも類似のまたは同一の結合速度およびシグナル伝達活性化の特性を示す。重要なことには、hPTH(1-34)と、インビトロでおよび同様に健常人に静脈内投与してインビボで直接比較すると、PTHrP(1-36)はhPTH(1-34)と能力が同等である。本発明者らは、静脈内投与されたPTHrP(1-36)の半減期(T1/2)が6分であって、hPTH(1-34)に対して報告されている5〜6分と変わらないことを実証しているので、血清代謝クリアランス率の相違も同様にして、説明としては可能性が低い。
【0140】
2種のペプチドによる骨格作用の相違は、皮下注射後のPTHおよびPTHrPの異なる薬物動態学的特性に関連している。ヒトPTH(1-34)は、2つの試験で、注射後30〜45分で最高血漿濃度に到達することが報告されているが、PTHrPの最高血漿濃度は皮下投与後15分にまたはそれ以前に現れることを本発明者らは報告している。実際に、15分の時点が本発明者らが調べた最初の時点であったことから、また循環性のPTHrP値はこの最初の15分の時点では顕著に減少している状態にあると思われたことから、その最高点はずっと速くに、恐らく5〜10分に現れる可能性が非常に高い。従って、hPTHrP(1-36)は、皮下注射後、PTHよりも速く吸収され、PTHrPの血漿濃度は、PTHの血漿濃度よりも速くに、その最高点に到達して減少する。
【0141】
PTHと比べてPTHrPの異なる吸収およびクリアランス動態が、PTHrPの大量摂取の必要性ならびにこれらの大量摂取にもかかわず、試験患者において高カルシウム血症およびその他の毒性が観察されないことの根拠となっている。この明らかな安全性は、本発明者らの以前の試験(さらに7人の被験者が、同じ用量6.56μg/kg/日を2週間受けて有害事象はなかった)、およびもう一つの試験(この用量を健常者3人に単回投与として投与した)により支持される。このように、これらの大量のPTHrPを1日、2週間または3ヶ月間受けている健常被験者合計18人において、有害事象に直面することはなかった。
【0142】
力学的には、骨代謝回転マーカーのデータ(図6 (a)、(b)、および(c)を参照されたい)から、PTHrPは、PTHにより観察された骨吸収の増加を伴うことなく、純粋に骨格に対して同化作用を与える可能性があることが示唆される。従って、形成刺激特性も吸収刺激特性も示すPTHとは対照的に、PTHrPは付随的な吸収刺激作用なしに、選択的な骨芽細胞のまたは同化の作用を有するものと思われる。PTHに対する吸収反応はエストロゲンにより打ち消されないので、吸収作用がないのは相伴うエストロゲンの使用が原因である可能性は低い。興味深いことに、本試験のBMD増加率は非常に大きかったが、形成マーカーであるオステオカルシンの増加総量はPTHを用いて報告されたものと同様であるか、またはそれよりも有意に低かった。BMDのかなり劇的な増加を伴いつつも、明らかに形成の増加が相対的に低いのは、吸収刺激作用が明らかにないことの生化学的な証拠を支持するものである。これらの所見は、骨生検および定量的な組織学的骨形態計測により確認することができる。
【0143】
以前の試験により、PTHは3ヶ月でまたはそれよりかなり前に骨吸収を有意に増加させることが示されているので、吸収作用がないことが、PTHrPの短期間(3ヶ月)投与によるものである可能性は低い。例えば、Lindsayらの試験(Lancet 350: 550〜555 (1997))において、尿NTXにより評価された吸収は、2週ですでに上昇し、そして3ヶ月で25%まで増加した。Finkelsteinら(N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994))は、2つの異なる骨吸収マーカーの尿ヒドロキシプロリンおよびピリジノリンが、PTHによる治療後、3ヶ月でおよそ200%まで増加することを実証した。同様に、Hodsman(J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜628 (1997))は、尿ヒドロキシプロリンもNTXも、PTHによる治療の僅か4週までに有意に増加することを実証している。
【0144】
同様に、吸収作用がないのは、相伴うエストロゲンの使用が原因である可能性は低い。第一に、同じ種類の解離が、エストロゲンを使用していない閉経後の女性における本発明者らの以前の試験で観察された(Plotkinら、J Clin Endocrinol Metab 83: 2786〜2791 (1998))。第二に、PTHに対する吸収反応は、3ヶ月の時点では、Roeらの試験でもLindsayらの試験でもエストロゲンを与えた女性において容易に明白である(Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, San Diego, CA, June 12〜15, 1999, p.59 ; Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997))。このように、現在までに利用できるデータから、PTHrPは、これまで使用されている用量が、これまで観察されている持続期間に関して、PTHとは異なる可能性があり、そして純粋に同化作用的影響を示す可能性があると思われる。
【0145】
上述のように長期かつ大規模な試験において、選択的な同化作用が再現可能であるとすれば、PTHとPTHrPとの間の骨形成および吸収の相違はまた、上述のように、皮下吸収後のその異なる薬物動態に起因している可能性があると仮定される。骨芽細胞またはその前駆細胞をPTHにインビトロでまたはインビボで長時間曝露すると同化反応を減少させるが、これは破骨細胞の吸収反応を増加させることがよく知られている(Rosen & Bilezikian, J Clin Endocrinol Metab. 86: 957〜964 (2001) ; Dempsterら、Endocrine Reviews 14: 690〜709 (1993); Dobnig & Turner, Endocrinology 138: 4607〜4612 (1997)を参照されたい)。偶然の発見による、PTHの場合と比較した皮下注射後のPTHrPの吸収およびクリアランスの増強は、吸収バランスとの対比では形成にさらに有利に働く可能性がある。
【0146】
本試験で使用したPTHrPの用量は、非常に多かった。本試験の被験者は、PTHrPを受けた被験者8人では1日当たり平均用量410.25μgを受けた。これは、骨粗鬆症の試験で一般に使用されたhPTH(1-34)の用量(20〜40μg/日)よりもおよそ10〜20倍多い。PTHの用量が20μg/日を超えると、高カルシウム血症およびその他の副作用が伴うことが知られている。従って、健常被験者が高カルシウム血症、体位性低血圧症、悪心、潮紅またはその他の副作用を発現することなく、この規模のPTHrP用量を寛容したのは驚きである。PTHrP(1-36)は、分子量がPTH(1-34) (およそ4200Mr)と非常に近いので、この相違は、使用した2種のペプチドのモル量の相違によるものではない。この相違はまた、共通のPTH/PTHrP受容体との異なる相互作用によるものでもない:hPTH(1-34)およびhPTHrP(1-36)はどちらも、ヒトにおいて、類似のまたは同一の結合速度およびシグナル伝達活性化の特性を示す。静脈内投与されたPTHrP(1-36)の半減期(T1/2)がおよそ6分であって、hPTH(1-34)に対して報告されているおよそ5〜6分と変わらないことが実証されているので、血清代謝クリアランス率の相違も同様にして、解釈としては可能性が低い。理論により束縛するわけではないが、考えられる解釈の1つは、2種のペプチドによる骨格作用の相違は、皮下注射後の、PTHおよびPTHrPの異なる薬物動態学的特性に関連するということである。ヒトPTH(1-34)は、注射後およそ30〜45分で最高血漿濃度に到達するが、PTHrPの最高血漿濃度は、皮下投与後およそ15分にまたはそれ以前に現れる。従って、hPTHrP(1-36)は、皮下注射後、PTHよりも速く吸収される可能性が高く、そしてPTHrPの血漿濃度は、PTHの血漿濃度よりも速くに、その最高点に到達して減少する。
【0147】
これらの薬物動態学的相違によりまた、観察された選択的なまたは純粋な同化反応が説明されるかもしれない。骨芽細胞をPTHにインビトロでまたはインビボで長時間曝露すると同化反応を減少させるが、これは破骨細胞の吸収反応を増加させることがよく知られている。PTHの場合と比較した、皮下注射後のPTHrPの吸収およびクリアランスの増強は、吸収バランスとの対比では形成にさらに有利に働く可能性がある。
【0148】
本試験において、偽薬群およびPTHrP群の双方の被験者は、カルシウムおよびビタミンD栄養補助食品のほかに、一部は、道義上、エストロゲンを同時に受けていたことから、結果的に、偽薬群は、何らかの形で現在認められている骨粗鬆症に対する治療を受けていたことになると思われる。PTHに対するように、PTHrPの同化作用が、エストロゲンの併用により増強されるかどうか今後決定する必要がある。PTHをヒトで用いた試験から一般に、被験者がエストロゲンを受けているかいないかにかかわらず類似の効果が示される(図8を参照されたい)が、PTHrPに関するこの疑問に直接的に取り組んだ試験はこれまでになかった。PTHrPは、その他の抗吸収剤(ビスホスホネート、選択的エストロゲン受容体モジュレーターなど)とともに同時投与されると、より効果的であるかどうかまたはより効果的でなくなるかどうかは、今後決定する必要がある。
【0149】
PTHrP(1-36)を用いた短期の非常に高用量の治療により、脊椎BMDの顕著な増加が引き起こされる。間欠投与されたPTHによる複合のまたは正味の骨吸収および骨同化作用とは対照的に、PTHrPは、吸収要素はほとんどまたは全くなく、主に同化作用を有すると思われる。PTHとPTHrPとの間の相違は、2分子間の受容体相互作用またはシグナル伝達の相違を反映している可能性が高いわけではないが、皮下投与後の2分子の異なる薬物動態学的特性にある可能性が高い。
【0150】
偽薬を4ヶ月間受けていた被験者7人のうち、被験者6人は、股関節部でも脊椎でも骨塩密度(BMD)の顕著な変化を示さなかった。偽薬被験者1人が、実に脊椎BMDの6%の増加を示した。これは、偽薬に対して、明らかに予想される反応または通常直面する反応ではない(The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998) ; Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001); Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28(1997) ; Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p. 59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))ことから、この被験者は、ベースラインにあるビタミンD欠乏症、またはX線上明らかとされない偶発的な脊椎圧迫骨折があった可能性があることが示唆される。
【0151】
図4に図解されるように、PTHrPを受けていた被験者8人は、平均値およそ4.75%で腰椎BMDの注目に値する増加を示した。偽薬群の除外者を含む、対照の7人全員と比較すると、この結果は有意である(p=0.026)。真に標準的な偽薬対照6人と比較すると、この結果は非常に有意である(p=0.003)。
【0152】
これらの結果は、いくつかの理由でかなり並外れており且つ驚きである。第一に、利用可能な骨粗鬆症薬の抗吸収剤のどれもが、そのような短期間でこれらの類のBMD増加をもたらすことはない(The writing group for the PEPI trial, JAMA 276: 1389〜1396 (1996); Delmasら、N Engl J Med 337: 1641〜1647 (1997); Chestnutら、Osteoporosis Int 8(suppl 3): 13(1998) ; Libermanら、N Engl J Med 333: 1437〜1443 (1995); McClungら、N Engl J Med 344: 333〜40 (2001))。図8に図解されるように、本試験で観察されるBMD増加率は、以前の臨床試験で報告されたBMD増加率よりも大きい。この結果は、極端に迅速である:3ヶ月のPTHrP-(1-36)治療により、2〜3年間上述のような抗吸収剤を用いて一般に観察されない増加がもたらされた。実際に、いくつかの利用可能な抗吸収剤(SERM、カルシトニン、ビタミンD、カルシウム)では、これらのBMD増加は決して達成されない。
【0153】
第二に、この結果は、これまでに最も研究された骨同化物質であるPTHを用いて達成されたものに匹敵するか、またはそれを上回っている(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997) ; Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p.59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))。
【0154】
第三に、必要とされる用量は、驚くほどに高い: 前述のように、PTH-(1-34)の標準用量は、20〜40μg/日の範囲(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555 (1997); Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p.59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))であり、PTHrP-(1-36)に対して本明細書で使用されている用量よりもおよそ10〜20倍低い。
【0155】
第四に、本試験で投与されたPTHrPの用量が相対的に高いにもかかわらず、有害事象に直面することがなかったのに対し、そのような有害事象が、ずっと少ない用量のPTHで認められた(Finkelsteinら、N Engl J Med 331: 1618〜1623 (1994); Hodsmanら、J Clin Endocrinol Metab 82: 620〜28 (1997); Lindsayら、Lancet 350: 550〜555(1997) ; Neerら、N Engl J Med 344: 1434〜1441 (2001) ; Roeら、Program and Abstracts of the 81st Annual Meeting of the Endocrine Society, p.59 (1999); Laneら、J Clin Invest 102: 1627〜1633 (1998))。ヒトでの無毒性および高用量の必要性は、前述のラットでの所見(等モル用量のPTHrPは、PTHと比べて効果が低くそして毒性が低かった)と同様であるように思われる。前述のように、これらの観察結果は、皮下投与後、PTHと比較したPTHrPの薬物動態の相違が偶然に発見されかつ予測不可能であったことを反映していると思われる。
【0156】
第五に、PTHrPは、HHM患者の劇的な骨塩減少に関与する典型的な骨異化ホルモンと広く見なされている。PTHrPは「間欠」投与(例えば、1日1回)されると、実際には顕著に骨格の同化を促進するという観察結果は、予想されなかった。これは、多くの研究者および製薬会社が10年以上の間(および恐らく70年もの長い間)、骨粗鬆症においてはPTHを用いて仕事をしてきたが、PTHrPが1987年に最初に記述されて以来、それが公知の事実となっていたにもかかわらず、誰もPTHrPを取り入れなかったという事実からも明らかである。
【0157】
最後に、骨粗鬆症の治療のための本発明の治療計画は、もう1つの予期しないおよび予測できない、安全性と関連した長所を有する。前臨床毒性試験では、PTHは2年間成長ラットに投与された。ラットのなかには、およそ1年のPTH療法の後に骨肉種を発現したものもいた。このことから、1年未満の間、同化作用物質を使用することで、さらに長い期間使用される場合よりもヒトを危険にさらすことが少なくなる可能性があると示唆される。ヒトでの試験におけるPTHrPの早期効果から、さらに短い治療継続期間でもヒトでは効果的な可能性があることが示唆される。本試験で使用されたPTHrPの用量が非常に高いにもかかわらず、ヒト被験者で有害事象が観察されていないという観察結果は、これを支持するものである。さらに、純粋にまたは主に同化的な作用物質が使用できることで、抗吸収剤を用いた併用的な、間欠的なまたは逐次的な投薬計画を利用して、骨粗鬆症の治療に対する複合的なアプローチが可能となるかもしれない。本発明の方法によれば、例えば、患者をまずPTHrPまたはその類似体もしくは断片を数ヶ月間用いた後、骨肉種の危険性がない経口の抗吸収製剤に切り替えて治療することができる。
【0158】
要約すると、PTHrP(1-36)を用いたこの短期の高用量の治療により、脊椎BMDの顕著な増加が引き起こされる。さらに高用量(例えば1000〜3000μg/日)を用いた試験でも比較に値する骨密度の増加が見られ、副作用は観察されなかった。同じ期間にわたって間欠投与されたPTHによる複合のまたは正味の骨吸収および骨同化作用とは対照的に、PTHrPは吸収要素はほとんどなく、主に同化作用を有すると思われる。PTHとPTHrPとの間の相違は、2分子間の受容体相互作用またはシグナル伝達の相違を反映している可能性が高いわけではないが、皮下投与後の2分子の異なる薬物動態学的特性にある可能性が高い。PTHrPを非常に高用量で使用したにもかかわらず、ヒト被験者18人で有害事象が観察されることはなかった。PTHのほかに、純粋にまたは主に同化的な作用物質が使用できることで、抗吸収剤を用いた併用的な、間欠的なまたは逐次的な投薬計画を利用して、骨粗鬆症の治療に対するさらなる複合的なアプローチが可能となるかもしれない。
【0159】
実施例2 ヒト骨のおよび腎臓の受容体を用いたPTHRP類似体の特徴付け
本研究の目的は、ヒト骨のおよびヒト腎臓の受容体を用いて、種々のPTHおよびPTHrP類似体を特徴付けることであった。これらの類似体がアデニル酸シクラーゼを刺激する能力についても調べた。本実施例中の方法の詳細な説明については、例えば、Orloffら、Endocrinol., 131: 1603〜1611 (1992) (参照として組み入れられる)を参照されたい。
【0160】
材料および方法
ペプチド
(Tyr36)hPTHrP-(1-36)アミド[hPTHrP-(1-36)]、hPTHrP-(1-74)、およびhPTHrP-(37-74)は、以前に報告されているように(Orloffら、J. Biol. Chem., 131: 1603〜1611 (1992); Stewartら、J. Clin. Invest., 81: 596〜600 (1988))、固相合成により調製した。合成hPTH-(1-34)、(Nle8,18, Tyr34)hPTH-(1-34)、ウシ(b)PTH-(1-34)、ラット(r)PTH-(1-34)、hPTHrP-(1-86)、(Nle8,18, Tyr34)bPTH-(3-34)アミド、(D-Trp12, Tyr34)bPTH-(7-34)アミド、(Tyr34)bPTH-(7-34)アミド、hPTHrP-(7-34)アミド、およびhPTH-(13-34)は、Bachem, Inc. (Torrance, CA)から購入した。bPTH-(1-84)は、米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)を通じて米国立ホルモンおよび下垂体プログラム(National Hormone and Pituitary Program)から入手した。(Tyr36)ニワトリ(c)PTHrP-(1-36)アミドは、Peninsula Laboratories, Inc., Belmont, CAから購入した。hPTHrP-(1-141)は、Genentech, Inc., So. San Francisco, CAにより提供され、アミノ基転移されたrPTH-(1-34)は、Dr. David L. Carnes, Jr. (San Antonio, TX)により提供された。ニワトリPTH-(1-34)アミド、[Nle8,18, D-Trp12]bPTH-(7-18)-hPTHrP-(19-34)NH2および[D-Trpl2]hPTHrP-(7-18) [Tyr34]bPTH-(19-34)NH2は、報告されているように(Caufieldら、Endocrinol 123: 2949〜2951 (1988) ; Chorevら、J Bone Min Res 4: S270 (1989))、固相合成により調製した。使用した全ペプチドに対するペプチド濃度は、アミノ酸分析により決定された値として与えられている。バッチが同じペプチドを全試験で使用した。
【0161】
放射性ヨード化
hPTHrP-(1-36)の放射性ヨード化は、以前に報告されているラクトペルオキシダーゼ法(Orloffら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103(1989); Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))を改良して用いて行った。放射性リガンドの精製は、30cmのμ-BondapakC18カラム(Waters Associates, Milford, MA)を用い、逆相HPLCにより行った。この方法で調製かつ精製された放射性リガンドは、ほぼ例外なくモノヨウ化型から構成される。特異活性はヨード化時に300〜450μCi/μgの範囲に及んだ。放射性リガンドは、イヌ腎臓のアデニル酸シクラーゼ試験において、未標識ペプチドに比べて十分な生物活性を示した(Orloffら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103 (1989))。
【0162】
細胞培養
ヒト骨芽細胞様の骨肉腫細胞株SaOS-2 (American Type Culture Collection, Rockville, MD)は、10%ウシ胎児血清、2mM L-グルタミン、ペニシリン(50U/mL)、およびストレプトマイシン(50μg/mL)を添加したマッコイ培地中で維持した。培地は一日おきに交換し、試験はコンフルエンス(集密状態)から5〜7日後に行った。細胞数は、コールター(Coulter)カウンターを用いて決定した。
【0163】
細胞膜の調製
高精製ヒトRCMは、以前に報告されているように(Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))、不連続ショ糖勾配超遠心を用いて調製した。全工程を、以下のプロテアーゼ・インヒビターの存在下で行った: アプロチニン[10カリクレイン阻害剤単位(KIU/ml)]、ペプスタチン(5μg/ml)、ロイペプチン(45μg/ml)、およびフェニルメタンスルファニルフルオリド(phenylmethanesulfanylfluoride) (10μg/ml)。正常ヒト腎臓皮質は、局部性移行上皮癌、腎細胞癌、または良性嚢胞に対して切除された4つの別個の腎摘出術検体から得た。全個体の腎機能は、血清クレアチニンおよび腎盂造影法により評価したところ正常であった。細胞膜はプールして等分し、そして後に使用するために-70℃で保存した。
【0164】
SaOS-2の細胞膜は、以前に詳しく報告されているように調製した。簡単に言えば、150cm2フラスコ中のコンフルエント後の細胞を、0℃で細胞膜用緩衝液[10mM Tris HCl (pH 7.5), 0.2mM MgCl2, 0.5mM EGTA, 1mMジチオスレイトール, ロイペプチン45μg/ml, ペプスタチン5μg/ml, アプロチニン10KIU/ml、およびフェニルメタンスルファニルフルオリド(phenylmethane sulfanyl-fluoride) 10μg/ml]中にかき取った。細胞破壊は超音波(sonification)により行い、その懸濁液を13,000×gにて4℃で15分間遠心した。沈殿をDounceガラスホモジナイザーにより250mMショ糖を含有する細胞膜用緩衝液(ジチオスレイトールなし)中に再懸濁させた。この懸濁液を、45%ショ糖を含有する細胞膜用緩衝液のクッション上に重層し、70,000×gにて4℃で30分間遠心した。接触界面で層をなす膜分画を回収して、250mMショ糖を含有する細胞膜用緩衝液で5倍希釈し、再遠心した。沈殿を、250mMショ糖を含有する細胞膜用緩衝液中に再懸濁させて等分し、-70℃で保存した。タンパク質濃度は、スタンダードとしてBSAを用い、Lowry法により決定した。
【0165】
受容体結合試験
ヒトRCMを30℃で利用する膜結合試験が以前に報告されている(Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))。ヒトRCMを最終濃度90μg/mlまで添加した。125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)NH2のヒトRCMとの総結合量(TB)は、加えた総カウント数の11%から20%まで変化し、非特異結合(NSB)は2.4〜4.0%に及んだ。125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)NH2の特異結合は、30℃で30分までに平衡に達した。その後の平衡での結合競合試験には、30分のインキュベーション時間を使用した。
【0166】
SaOS-2細胞膜に対する結合試験は、ヒトRCMに対する結合試験のように行った。細胞膜を最終濃度112.5μg/mlまで添加し、特異結合は30℃で60分までに平衡に達した。TBは15〜20%に及び、NSBは4.0〜4.3%までに及んだ。
【0167】
SaOS-2無傷細胞に対する結合は、以下の改良を加えつつ、報告されている(Orloffら、Am J Physiol 262: E599〜E607 (1992))ように行った。結合試験は、キモスタチン(100μg/ml)およびバシトラシン(200μg/ml)の存在下15℃で行った。125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)NH2の特異結合は、15℃で150分までに平衡に達した。従って、競合結合試験には、150分のインキュベーション時間を使用した。細胞生存率は、トリパンブルー排除により評価したところ、標準インキュベーションの終了時点で95%を越えていた。総結合量(TB)は、加えた総放射活性の18〜23%に及び、非特異結合(NSB)は常に5〜7%に及んだ。
【0168】
各細胞膜調製物(ヒト腎臓およびSaOS-2細胞膜)に対するおよび無傷細胞試験(SaOS-2)に対するそれぞれの試験条件下でのインキュベーションの間の放射性リガンドの安定性は、細胞にさらされた125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)が再結合する能力を「新たな」放射性リガンドの結合と比較することにより調べた(Orloffら、J Biol Chem 264: 6097〜6103, (1989); Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))。ヒトRCM、SaOS-2細胞膜、およびSaOS-2無傷細胞に対する125I-(Tyr36)hPTHrP-(1-36)の特異結合はそれぞれ、92%、98%、および83%であった。このことから、放射性リガンドの顕著な分解は、それぞれの試験条件下で起こっていないことが示唆された。
【0169】
アデニル酸シクラーゼ試験
アデニル酸シクラーゼ刺激活性は、以下の改良を加えつつ、ROS 17/2.8細胞に対して以前に報告されているように(Merendinoら、Science 231: 388〜390,(1986))、コンフルエントなSAOS-2細胞で調べた。無傷細胞での試験は、15℃で、SaOS-2無傷細胞に対する結合に対して使用されたのと同じ条件で行った(上記を参照されたい)。経時変化実験から、PTHrPおよびPTHに対する最大cAMP刺激は、60分間のインキュベーション後に起こっていることが実証された。従って、各ペプチドに対する用量反応曲線は、結合試験の条件下、15℃で60分間のインキュベーションにより作成した。これらの条件下では、最大刺激は基礎活性を上回って80〜200倍の間で変化した。
【0170】
アデニル酸シクラーゼ活性は、以下の改良を加えつつ、イヌ腎臓の細胞膜に対して以前に詳しく報告されているように(Orloffら、J Biol Chem 264: 6097〜6103,(1989) ; Orloffら、J Bone Min Res 6: 279〜287 (1991))、ヒト腎臓細胞膜およびSaOS-2細胞膜で調べた: 30℃で行った経時変化実験から、最大cAMP蓄積は、ヒト腎臓細胞膜に対しては10分で、SaOS-2細胞膜に対しては30分で起こることが実証された。従って、各ペプチドに対する用量反応曲線は、ヒト腎臓細胞膜では30℃にて10分間で、SaOS-2細胞膜では30℃にて30分間で作成した。無傷細胞のアデニル酸シクラーゼ試験と同様に、腎臓および骨細胞の細胞膜のアデニル酸シクラーゼ試験は結合試験の条件下で行った。別実験からのペプチド用量反応を比較するために、結果は最大cAMP刺激の百分率として表現されている。最大cAMP刺激は、ヒトRCMに対しては基礎活性を上回って3〜8倍まで変化し、SaOS-2細胞膜に対しては2〜7倍まで変化した。
【0171】
データ解析
競合結合実験に対するIC50値およびアデニル酸シクラーゼ用量反応曲線に対するEC50値は、最大反応の50%をもたらすペプチド濃度から決定した。統計学的な相違は、対応のあるおよび対応のないスチューデントの両側t検定により評価した。競合結合データのさらなる解析は、非線形最小二乗法による曲線当てはめコンピュータプログラムLIGAND(Munsonら、Anal Biochem 107: 220〜239 (1980)を用いて実行した。
【0172】
結果
結合試験
3つの組織調製物のそれぞれで放射性リガンドとして125I-hPTHrP-(1-36)を用いた競合結合データを、図9および表II(以下)に示す。放射性リガンドの結合は、調査した各組織で、hPTHrP-(37-74) (これは、予測通り、125I-hPTHrP-(1-36)の結合を阻害しなかった)を除く、全てのPTHおよびPTHrP類似体により完全に置換された。コンピュータプログラムLIGANDによるデータのスキャッチャード解析(図9、下パネル)は、各組織における単一クラスの高親和性受容体部位と一致した。Bmax値から算出された受容体数は、ヒトRCMおよびSaOS-2細胞膜に対して、それぞれ0.24±0.06および0.36±0.08pmol/mg膜タンパク質であり、SaOS-2無傷細胞に対する細胞当たりの受容体は25,900±1500個であった。
【0173】
放射性同位体で標識されたPTHrPの、PTHおよびPTHrP作動薬との結合競合を、まず初めにRCMおよびSaOS-2細胞膜で比較した(表IIおよび図9、パネルAおよびB)。全体的に、RCMにおける選択作動薬の相対親和性は、SaOS-2細胞膜で見られたものと非常に一致していた。rPTH-(1-34)、bPTH-(1-34)、およびcPTHrP-(1-36)は、hPTHrP-(1,36)と比較して同様の相対親和性を示したが、(Nle8,18 Tyr34)hPTH-(1-34)およびcPTH-(1-34)NH2は、両試験系でhPTHrP-(1-36)よりも効果が低かった。bPTH-(1-84)の相対親和性は、アミノ末端類似体よりもおよそ10倍低かった。全体的に見て、これらの試験からは、腎臓と比較して骨におけるPTH/PTHrP結合間の注目に値する相違は明らかにされなかった。
【0174】
アデニル酸シクラーゼ試験
結合試験におけるアゴニスト(作動薬)類似体の相対親和性は、注目すべき例外が2つあったものの、そのアデニル酸シクラーゼ刺激能に反映された(表IIおよび図10)。rPTH-(1-34)は、RCMおよびSaOS-2細胞膜における結合親和性がhPTHrP-(1-36)と類似していたが、双方の細胞膜調製物におけるアデニル酸シクラーゼ刺激能は10倍高かった。低い結合親和性を示したbPTH-(1-84)は、SaOS-2細胞膜のアデニル酸シクラーゼ試験においてhPTHrP-(1-36)に比べてその相対能力が低かったが、RCMにおいてcAMP産生を刺激する際にはhPTHrP-(1-36)と本質的に等しい効力を有していた。
【0175】
無傷細胞調製物と破壊細胞調製物との間に違いがあったのかどうか調べるため、SaOS-2無傷細胞についてもまた調べた(表IIIならびに図9Cおよび10C)。全体的に、試験したペプチド作動薬の相対親和性およびcAMP刺激能は、RCMおよびSaOS-2細胞膜における結果と非常に一致していた。しかし、アミノ末端類似体のいくつかに関する絶対能は、SaOS-2細胞膜またはRCMで観察された絶対能の2〜4倍未満の間で変化した。興味深いことに、rPTH-(1-34)は、SaOS-2細胞においてその結合親和性に比べて二次メッセンジャー結合の増強を示さなかった(表III)、つまりRCMおよびSaOS-2細胞膜で観察されていたパターン(表II)を示さなかった。hPTHrP-(1-74)の親和性は、hPTHrP-(1-36)の親和性よりも実質的に低かったが、この相違はSaOS-2細胞(9倍)に対するよりもRCM(25倍)に対して大きかった。興味深いことに、hPTHrP-(1-141)は、どちらの試験でもhPTHrP-(1-74)より5倍高い親和性を有していたが、hPTHrP-(1-36)より能力は低かった。bPTH-(1-84)の相対親和性は、hPTHrP-(1-74)のそれに類似していたが、前段落に記載のように、これはRCMで有していたようには、SaOS-2細胞またはその細胞膜におけるアデニル酸シクラーゼとの結合増強を示さなかった。
【0176】
実施例3 イヌ腎臓受容体を用いたPTHRP類似体の特徴付け
本研究の目的は、PTHおよびPTHrPに対する腎臓受容体の特性を比較することおよびこの2つのペプチドが同一受容体と相互作用するかどうかを決定することであった。この目的を達成するため、PTH関連ペプチドの[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド(PTHrP-(1-36))、および[Nle8,18, Tyr34]hPTH-(1-34)アミド(NNT-hPTH-(1-34))を放射性同位体で標識し、そしていくつかのPTHおよびPTHrP類似体の結合を評価するために、イヌ腎皮質の細胞膜(CRMC)を用いた競合結合試験にこれを使用した。これらのPTHおよびPTHrP類似体がアデニル酸シクラーゼを刺激する能力についても調べた。本実施例中の方法の詳細な説明については、例えば、Orloff ら、J. Biol. Chem., 264: 6097〜6103 (1989) (参照として組み入れられる)を参照されたい。
【0177】
材料および方法
ペプチド
PTH関連ペプチドの(Tyr36)PTHrP-(1-36)アミド(PTHrP-(1-36))は、以前に報告されているように(Stewartら、J. Clin. Invest., 81: 596〜600(1988))、固相合成により調製した。PTHrP-(49-74)および(Cys5, Trp11, Gly13)PTHrP-(5-18) (P1-ペプチド)は、同じ固相合成法を用いて調製した。合成[Nle8,18, Tyr34]hPTH-(1-34)アミド(NNT-hPTH-(1-34))およびウシPTH(bPTH)(1-34)は、Bachem Inc., Torrance, CAから購入した。使用した全ペプチドに対するペプチド濃度は、ペプチドの乾燥重量としてではなく、アミノ酸分析により決定された値として与えられている。
【0178】
放射性ヨード化
ペプチドPTHrP(1-36)およびNHT-hPTH(1-34)の放射性ヨード化は、ラクトペルオキシダーゼ法(Marchalonis, Biochem. J., 113: 299〜305 (1969))の改良法(Thorellら、Biochim. Biophys. Acta, 251: 363〜369 (1971))を用いて行った。ペプチド(10μg/10μl)をNa125I (1mCi/10μl) (Amersham, Arlington Heights, IL)およびラクトペルオキシダーゼ(2μg) (Sigma Chemicals, St. Louis, MO)と混合した。反応を、過酸化水素水の添加(0.03% H202 20μl)により開始させ、計10分間、2.5mm間隔で0.03% H202 20μlをさらに3回添加することにより持続させた。次いで、ヨード化混合物をC18 Sep-Pakカートリッジ(Waters Associates, Milford, MA)に加えた。このカートリッジを0.1%TFA 3mlで洗浄し、次いで0.1%TFAを含有する体積百分率75:25%のアセトニトリル:水3mlにより、2%BSA 30μlを含むホウケイ酸ガラス試験管中に溶出させた。溶出液を凍結乾燥させ、そして30cmのμ-BondapakC18カラム(Waters Associates)を用い、逆相HPLCにより精製した。0.1%TFAを含有する水でカラムを平衡化し、アセトニトリルの0.1%TFA溶液で展開した。125I NNT-PTH(1-34)の場合、使用した濃度勾配は、アセトニトリル33〜43%の60分間直線勾配とした。125I PTHrP-(1-36)の場合、溶出は、アセトニトリル27〜34%の50分間直線勾配で行った。溶出された分画は、1%BSA 30μlを含むホウケイ酸ガラス管(12×75mm)中に回収し、γ線スペクトロメータで放射活性を観測した。
【0179】
放射性リガンドの分析
HPLC精製した放射性リガンドをTris-HCl(50mM) pH 7.5、NaCl(75mM)、およびアジ化ナトリウム(sodium aside)(0.005%)からなる緩衝液100μl中での完全酵素消化にかけた(Brownら、Biochem., 20: 4538〜4546 (1981))。トリプシン(1μg/10μl)、カルボキシペプチダーゼY(1μg/10μl)、ロイシンアミノペプチダーゼ(1μg/10μl)、およびプロナーゼE(2μg/10μl) (全てSigma, St. Louis, MOより)の混合物を添加し、37℃で24時間、消化を行った。反応は、0.1%TFA 100μlを添加して停止させた。消化液100μl分量を、各2nmolのモノヨード化チロシンおよびジヨード化チロシン・スタンダードとともに、C18μ-Bondapakカラムに注入した。流速1.5ml/mmで30mmに渡って、0.1%TFAの15〜30%メタノールの直線勾配によってカラムから溶出させ、分画(600μl)を計測した。214nmでの紫外線吸光度を観測した。
【0180】
細胞膜の調製
高精製されたイヌ腎皮質細胞膜(CRCM)は、Fitzpatrickら(J. Biol. Chem., 244: 3561〜3569 (1969))の手順の改良法を用いて調製した。雑種成犬由来の腎皮質を3倍容(ml:gm)の、5.0mM Tris HCl (pH 7.5)、1.0mM EDTA、6.5KIU/mlアプロチニンおよび50μg/mlバシトラシンを含有する0.25Mショ糖溶液(SET緩衝液)中、4℃で、モーター駆動のテフロン乳棒を2000回転(RPM)で30秒間のストロークを10回行ってホモジナイズした。このホモジネートをある厚さのナイロンメッシュに通してろ過し、1475×gで10mm遠心した。上清を捨てて、沈殿を1倍容の、5mM Tris HCl、1mM EDTA (pH 7.5)、6.5KIU/mlアプロチニンおよび50μg/mlバシトラシンを含有する2.0Mショ糖溶液に再懸濁させた。これを13,300×gで10分間遠心し、沈殿を捨てた。上清をET緩衝液(5mM Tris HCl、1mM EDTA (pH 7.5)、6.5KIU/mlアプロチニン、および50μg/mlバシトラシン)で8倍希釈し、20,000×gで15分間遠心した。上清を捨て、沈殿の白色上層を取り出して、1倍容のSET緩衝液に再懸濁させた。20,000×gの遠心をもう2回繰り返して、白色沈殿を1倍容のSET緩衝液に懸濁させた。これらを「未精製CRCM」と呼ぶ。
【0181】
Segreら(J. Biol. Chem., 254: 6980〜6986 (1979))により報告されている手順の改良法により膜をさらに精製した。上述の白色沈殿を2200×gで15mm遠心し、上清および結果として生じた二層沈殿の上部を取り出して、SET緩衝液に再懸濁させた。これを20,000×gで15mm遠心し、上清を捨てた。次いで、沈殿を不連続勾配の、0.01M Tris、0.001M Na2EDTA (pH 7.5)、6.5KIU/mlアプロチニンおよび50μg/mlバシトラシンに溶解したショ糖溶液上に重層した。この勾配は、39%ショ糖溶液(2ml)、37%ショ糖溶液(4ml)、および32%ショ糖溶液(2ml)で構成されていた。膜を25,000rpm (75,000×g)で、4℃にて90mm遠心した。主要なバンドは、管底面の沈殿のほかに各接触界面に存在していた。一番軽い分画(ショ糖溶液に入っていない)および32%〜37%の接触界面にある分画を予備的に試験したところ、特異結合が最も高くかつ非特異結合が最も低いことが示唆された。また一方で、一番軽い分画は、再結合試験において放射性リガンドの分解がより少ないことが実証された。従って、その後の全実験は、特に指示されている場合を除き、この分画で行った。
【0182】
上記の膜を3倍容のET緩衝液で希釈し、7,800×gで15分間遠心し、1倍容のSET緩衝液に懸濁させ、750μl分量に等分し、そして-70℃で保存した。このように調製された膜は、少なくとも6ヶ月の保存期間、受容体の結合活性を完全に維持していた。従来の結合実験の全てに、共通の膜調製物を使用した。
【0183】
第二の膜調製は上記と同じ手順を用いたが、全工程でロイペプチン(5μg/ml)、ペプスタチン(5μg/ml)、アプロチニン(10KIU/ml)、N-エチルマレイミド(NEM) (1.0mM)、フェニルメタンスルファニルフルオリド(PMSF) (10μg/ml)を存在させて行った(Nissensonら、Biochem., 26: 1874〜1878 (1987))。タンパク質は、スタンダードとしてBSAを用い、Lowry法により測定した。
【0184】
受容体結合試験
結合試験は、最終容量を0.2mlとして、20℃で、シリコナイズした12×75mmのホウケイ酸ガラス試験管中で行った。結合用緩衝液は、50mM Tris HCl (pH 7.5)、4.2mM MgCl2、0.3%BSA、26mM KCl、放射性リガンドおよそ60〜80×103cpm/管、そして必要に応じて未標識ペプチドで構成されていた。後述の放射性リガンドの安定性に基づき、バシトラシンを、125I NNT-hPTH-(1-34)で行う実験の場合には最終濃度100μg/mlまで、そして125I PTHrP-(1-36)の場合には200μg/mlまで添加した。結合は、膜50μgを添加することで開始させた。記載のインキュベーション時間の最後に、50μl分量を三重(triplicate)で、500μlポリプロピレン・チューブ中、1.0% BSAを含有する氷冷した結合用緩衝液300μl上に重層した。チューブを微量遠心分離機中で、およそ16,000×gで4℃3分間遠心した。上清を吸引し、膜に結合した放射性リガンドを含むチューブ先端を切断した。沈殿と上清の双方の放射活性を測定した。
【0185】
放射性リガンドの総結合量(TB)は、125I NNT-hPTH-(1-34)の場合、加えた総カウント数の7.2〜14.6%まで変化し、125I PTHrP-(1-36) の場合、25.5〜30.0%まで変化した。非特異結合(NSB)は、125I NNT-hPTH-(1-34)の場合、1.8±0.3% (±SEM)であり、125I PTHrP-(1-36) の場合、9.9±0.8%であった。インキュベーションチューブおよび洗浄チューブからの放射性リガンドの回収率は、通常的に95%を超えていた。
【0186】
アデニル酸シクラーゼ試験
アデニル酸シクラーゼ刺激活性は、グアニルヌクレオチドにより増幅されたイヌ腎皮質細胞膜(CRCM)のPTH感受性アデニル酸シクラーゼ試験を利用し、以前に詳しく報告されているように(Stewartら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80: 1454〜1478 (1987))行って調べた。簡単に言えば、合成PTHrP-(1-36)またはbPTH-(1-34)を二重(duplicate)で、未精製CRCMを含む試験チューブに添加し、α-[32P]cAMPの[32P]cAMPへの変換を30℃で30分間調べた。結果は、媒体のみを含むチューブと比較した、ペプチドを含むチューブ中のアデニル酸シクラーゼ活性の上昇率として表されている。
【0187】
両ペプチドのアデニル酸シクラーゼ刺激活性についてもまた、高精製された32%の接触界面の細胞膜を用いて調べた。インキュベーションは、プロテアーゼ・インヒビター、バシトラシン(200μg/ml)の存在下、20℃で20分間の結合条件の下で行った。この試験法の他の全ての局面は、標準的な試験法と同じとした。
【0188】
データ解析
解離定数(Kd)は、放射性リガンドを用いた競合結合実験と未標識リガンドの増加濃度から得られたデータのスキャッチャード解析により決定した。放射性リガンドとは異なる未標識コンペティター(競合相手)を用いた競合試験では、結合親和性(Ki)は、コンピュータプログラムEBDA(McPherson, KINETIC, EBDA, LIGAND, LOWRY: A COLLECTION OF RADIOLIGAND BINDING ANALYSIS PROGRAMS, pp. 14〜97, Elsevier, Amsterdam (1985))によるIC50値(放射性リガンド特異結合の50%を置換する未標識リガンド濃度)から得られた。統計学的な相違は、対応のあるスチューデントのt検定により評価した。競合曲線のさらなる解析は、超小型コンピュータでの使用を目的としてMcPherson(Ibid.)により改良された、MunsonおよびRodbardの非線形最小二乗法による曲線当てはめコンピュータプログラムLIGAND (Anal. Biochem., 107: 220〜239 (1980))を用いて実行した。1結合部位モデルおよび2結合部位モデルのコンピュータ適合性を比較して、統計学的に好ましいモデルを示した。有意性は、部分F-検定を用いて決定した。
【0189】
結果
リガンド結合;会合の特徴付け
125I NNT-hPTH-(1-34)の特異結合は、20℃では、20分から平衡に達した(図11)。非特異結合は、相対含量が5分までに加えた総放射活性の2.5±0.1% (SEM)となった。その後の全平衡化実験は、インキュベーション時間を20分とした。これらの条件下での特異結合は、125I NNT-hPTH-(1-34)の場合、全結合放射活性の65〜85%に及び、125I PTHrP-(1-36)の総結合の55〜75%に及んだ。
【0190】
結合試験
125I-[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミドの結合阻害は、平衡化条件の下で、未標識[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミド、bPTH-(1-34)、およびPTHrP-(1-36)の濃度を増加させて行った(図12)。PTH類似体は、平均Kiが[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミドでは7.5nMおよびbPTH-(1-34)では6.1nMとなって結合を阻害するうえでPTHrP-(1-36)よりも僅かに効果的(2倍未満)であった。PTHrP-(1-36)に対する結合親和定数(Ki)は、11.5nM(表II、上)であった。
【0191】
放射性リガンドとして125I-PTHrP-(1-36)を使用した場合、3個の合成ペプチドは全て、結合を阻害するうえでほぼ同等の力を有していた(図13)。[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミド、bPTH-(1-34)、およびPTHrP-(1-36)に対する結合解離定数はそれぞれ8.5、10.5、および14.1nMであった(表II、上)。PTHrP-(49-74)および13アミノ酸生物不活性合成アミノ末端PTHrP (P1ペプチド)はどちらも、イヌ腎臓の細胞膜への125I-PTHrP-(1-36)の結合を阻害することができなかった(図13)。
【0192】
平衡での結合データの代表的スキャッチャード・プロットは、図12および13に示されている。PTH類似体に対するBmaxは、2.73±0.31pmol/mgタンパク質であり、PTHrP-(1-36)に対しては、5.08±0.56pmol/mgタンパク質であった。LIGANDプログラムによる両データセットの解析から、単一クラスの高親和性受容体部位が明らかとなった;データは2結合モデルに適合しなかった。
【0193】
要約すると、各未標識PTH/PTHrP類似体は、各放射性リガンドの結合を同程度まで減少させたことから、PTH/PTHrP類似体は、類似のまたは同一の受容体に結合していることが示唆される。スキャッチャード解析から、有意な協調的結合相互作用のない均質クラスの高親和性受容体部位が示された。生物学的に不活性なPTHrP断片は、放射性リガンドと置き換わることができなかった。イヌ腎臓細胞膜におけるPTHrPおよびPTH類似体に対する結合親和性およびBmax値が類似であることを示すこれらのデータはまた、骨由来細胞(Juppnerら、J. Biol. Chem., 263: 8557〜8560(1988))においても、イヌ腎臓細胞膜およびUMR-106骨肉腫細胞(Nissensonら、J. Biol. Chem., 263: 12866〜12871 (1988))においても観察されている。
【0194】
アデニル酸シクラーゼ試験:
結合試験におけるそれらの類似した親和性とは対照的に、bPTH-(1-34)は、イヌ腎皮質でのアデニル酸シクラーゼ試験において、PTHrP-(1-36)よりも実質的に効果的であった(表II)。この関係は、標準的な試験条件(30℃で30分)においても結合試験条件下(20℃で20分、バシトラシンあり)においても見られた。標準的な試験(30℃で30分)においては、bPTH-(1-34)は、PTHrP-(1-36)の効力の6倍を越え、Kmはそれぞれ0.06および0.40nMであった。腎臓細胞膜の存在下では、試験の間にPTHrPの選択的破壊が起こっているという可能性を排除するため、アデニル酸シクラーゼ試験を、放射性リガンドのタンパク質分解は無視できる結果となることが証明されている結合条件の下で行った。平衡での結合試験(20℃で20分、バシトラシンあり)と同じ条件の下では、bPTH-(1-34)によるアデニル酸シクラーゼ刺激は、PTHrP-(1-36)の場合よりも15倍を越えて大きかった。結合試験条件下でのKm値はそれぞれ0.13および2.00nMであった。
【0195】
実施例4 閉経後骨粗鬆症ラットを用いたPTHRP類似体の特徴付け
候補PTHrP類似体は、概ねStewartら、J. Bone Min Res, 15: 1517〜1525 (2000)(参照として本明細書に組み入れられる)の手順に従って、閉経後ラットにおいて、骨量に対するその効果が評価される。本実施例のなかで、直接比較のために3つのPTH/PTHrP分子を選択した: PTH(1-34)、PTHrP(1-36)およびPTH類似体のSDZ-PTH-893(Leu8, Asp10, Lys11, Ala16, Gln18, Thr33, Ala34hPTH(1-34))。6ヶ月試験を実施し、その中で、成体(6ヶ月齢)の媒体処置卵巣切除(OVX)ラットおよび偽処置卵巣切除(OVX)ラットを、PTH(1-34)、PTHrP(1-36)またはPTH-SDZ-893のいずれかを1日当たり40μg/kg受けているOVXラットと比較した。
【0196】
方法
ペプチドおよびペプチド投与
組み換えヒトPTH(1-34)(rec hPTH(1-34)またはLY333334)は、以前に報告されているように(Hiranoら、J Bone Min Res 14: 536〜545 (1999); Frolickら、J Bone Min Res 14: 163〜72 (1999))調製した。PTHrP(1-36)は、以前に報告されているように(Everhart-Cayeら、J Clin Endocrinol Metab 81: 199〜208(1996); Henryら、J Clin Endocrinol Metab 82: 900〜906 (1997); Plotkinら、J Clin Endocrinol Metab 83: 2786〜2791 (1998))固相合成法を用いて調製した。PTHrP(1-36)のヒトおよびラットの配列は同一である。SDZ-PTH-893(Leu8, Asp10, Lys11, Ala16, Gln18, Thr33, Ala34hPTH(1-34))(Gamseら、J Bone Min Res 12 (suppl): S317 (1997))は、固相合成法を用いて調製した。各ペプチドが正しいことをマススペクトルおよびアミノ酸組成により確定し、そして分析的逆相HPLCにより純度が97%を越えていることを確認した。ペプチドは、2%の熱不活化卵巣切除(OVX)ラット血清を含有する0.001N HCl生理食塩水(pH 4.2)に溶解させて皮下投与した。
【0197】
動物
全試験は、Harlan Sprague-Dawley(Indianapolis, IN)由来のウイルスおよび抗体陰性の雌Sprague-Dawleyラットを用いて実施した。全ラットは、5ヶ月齢で偽卵巣切除または卵巣切除された。試験は、卵巣切除または偽手術から1ヵ月後の6ヶ月齢で開始した。ラットは、0.5%カルシウムおよび0.4%リンを含有する食餌で維持した。日照周期は12時間とした。
【0198】
手順
使用した手順は、表IV中に概略した形で記載されている。動物は、表中に記載されているように、10匹の17群に無作為に割り当てた。5ヶ月齢で屠殺された第一群の動物を除く残りの動物は、1ヶ月間観察し、種々の試験ペプチドまたは媒体による処置を6ヶ月齢で開始した。ペプチド処置動物の場合、ペプチドを上述の媒体に溶解させて40μg/kg/日の用量で毎日皮下投与した。媒体処置動物の場合、媒体のみを同じ方法で投与した。
【0199】
化学検査
表XIに記載の血清および尿化学検査は、標準的な自動分析機による方法を用いて行った(Boehringer-Mannheim-Hitachi, Indianapolis, IN)。腎臓のカルシウム含量は、腎臓全体を5%トリクロロ酢酸中に抽出後、カルシウム分析機(Calcette, Midfield, MA)によるカルシウム測定によって決定した。
【0200】
骨量測定
骨量は、骨灰重量ならびに橈骨、大腿骨および全身のDEXA測定を用いて評価した。全身骨塩含量は、Norland DXA Eclipseデンシトメータを用いて決定した。結果はmgで表現される。左大腿骨の骨塩密度(BMD)(単位mg/cm2)、骨塩含量(BMC)(単位mg)、および断面積(X-面積)(単位cm2)は、S. Orwoll (Oregon Health Sciences University, Portland OR)により行われたように、Small Animal Regional High Resolutionソフトウェアと連結した校正機能付きHologic QDR 4500Aデンシトメータを用いて決定された。左橈骨の最大長の測定は、Fowler/Sylvac Ultra-Cal IIIキャリパ(Newton, MA)を用いて行った。橈骨の灰重量は、報告されているように(Hockら、J Bone Min Res 7: 65〜72 (1992); Hockら、Endocrinology 125: 2022〜2027 (1989))、非骨格組織の橈骨を注意深く洗浄後、エーテル中で48時間脱水し、続いて24時間風乾し、マッフル炉(Barnstead/Thermodyne, Dubuque, IA)中、850℃で16時間灰化させて決定した。灰重量は、微量天秤を用いてmg単位で記録した。
【0201】
組織学的骨形態計測
組織学的骨形態計測は、表IVに記載されているように、屠殺後の各動物の右脛骨のメチルメタクリレート包埋切片について行った。動物は、屠殺の7日前および3日前にカルセインを30mg/kgで皮下投与することにより標識した。表IV〜VIに示されているように、標準的な組織学的形態計測を行った(Parfittら、J Bone Min Res 2: 595〜610 (1987))。
【0202】
強度の生体力学的測定
大腿骨の中央骨幹での3点曲げ試験および椎骨L5圧縮試験は37℃で行った。大腿骨頚部の剪断は室温で行った。これらの試験の完全な方法は、以前に報告されている(Satoら、Endocrinology 138: 4330〜4337 (1997); TurnerおよびBurr, Bone 14: 595〜608 (1993); Satoら、Endocrinology 139: 4642〜51 (1998) (それぞれが参照として本明細書に組み入れられる)。
【0203】
統計解析
統計解析は、ソフトウェアSASを用いて行った。処置と時間との間に有意な相互関係があったかどうか、また作用物質間で相違があったかどうかを決定するために、2元配置分散分析を行った。有意な相互関係があった場合には対比T検定により、そして有意な相互関係が認められなかった場合にはダンネットの検定により、対比較を行った。有意水準はp<0.05に設定した。
【0204】
結果
PTH、PTHrPおよびSDZ-PTH群の大腿骨の断面積、大腿骨の骨塩含量、および骨塩密度において、SDZ-PTH > PTH > PTHrPの順位で、統計的におよび量的に有意な増加が認められた(表VIIIを参照されたい)。大腿骨の骨塩含量(図14)は、ペプチド処置群のそれぞれにおいて、評価した3時点のそれぞれで有意におよび顕著に増加した。処置による大腿骨の長さの変化は認められなかった(表VIIIを参照されたい)。
【0205】
3種のペプチド処置群における全身BMCを、その対応時間のOVX対照と比較した場合、注目に値する相違はなかった(詳細については、表VIIIを参照されたい)。橈骨灰重量(表VIIIを参照されたい)は、試験の間、ペプチド処置動物群において有意に増加し、OVXおよび偽処置対照群の双方で観察された値を越えて増加していた。
【0206】
骨代謝回転の変化だけでなく、骨格変化の構造的特徴を評価するため、組織学的骨形態計測を行った。図15および16に示すように、骨梁領域(Tb. Ar)は、偽処置動物と比べて、OVX対照動物では顕著に減少しかつ試験の初めから終わりまで低いままであった。対照的に、3種のペプチド処置群の全てにおいて、骨量測定で観察されたのと同じ順位: SDZ-PTH > PTH > PTHrPで、骨梁領域が顕著に増加した。処置動物における骨梁領域(Tb. Ar)の増加は主に、骨梁間隔の減少をもたらした骨梁の厚みの増大の結果であった(表Vを参照されたい)。
【0207】
骨形成(MS/BS)は、全ての動物において最初の30日間にわたって経時的に減少した(図15; より詳しくは表VIを参照されたい)。しかし、処置開始後の各時点で、骨形成のパラメータ(要素)は、年齢が適合したOVXおよび偽処置動物と比べて、3種のペプチド処置動物群の全てで有意に増加した(表VI、図15)。
【0208】
骨吸収パラメータは、5群の全てで経時的に減少した(図16; より詳しくは表VIIを参照されたい)。群間での骨形成の相違とは対照的に、OVXと偽処置動物との間に、いずれの時点においても吸収パラメータ(要素)の注目に値する相違はなかった。
【0209】
生体力学指標は、3種のペプチド処置群の全てで改善した(図17、およびさらに詳しくは表IXおよびXを参照されたい)。腰椎では、生体力学的強度の測定結果は、ペプチドのそれぞれで増加した。大腿骨頚部では、終極荷重はまた、3種の全ペプチドで増加した。この変化は、統計学的に有意でありかつ量的に大きかった。重要なことには、3種の全ペプチドについて、腰椎および大腿骨頚部の生体力学指標は、OVX対照においてだけではなく、偽処置対照において認められた指標を越えていた。
【0210】
大腿骨の中央骨幹、皮質骨部位では、類似の所見が認められた(図17)。全体的に、3種のペプチド処置群は、偽処置およびOVX対照群の双方と比べて、生体力学パラメータ(要素)の増大または改善を示し、そしてこれらの変化は統計学的に、量的に、および機能的に非常に有意であった(遺漏なく詳細には表Xを参照されたい)。
【0211】
体重は、試験の初めから終わりまで、全群で加齢とともに増加したが、処置群と対照群との間で有意な相違はなかった。動物は、ほぼ同じ速度で体重が増加した(詳しくは表XIを参照されたい)。
【0212】
平均血清カルシウムは、試験の初めから終わりまで、偽処置およびOVX動物で正常のままであった(図18、遺漏なく詳細には表XIを参照されたい)。これは同様に、PTHおよびPTHrP処置動物にも当てはまった。これらの2つの処置群とは対照的に、SDZ-PTH処置動物では、1、3および6ヶ月でそれぞれ平均カルシウム濃度が11.3、11.6および11.7mg/dlとなり、明白な高カルシウム血症が発症した。これらの相違は統計学的に有意であった。それらはまた、30匹のSDZ-PTH-893処置動物のうちの4匹(13%)が、処置日数75、83、130および130で試験の間に死亡したという点で生物学的に有意であった。平均血清カルシウムはPTH群では正常であったが、PTH処置動物1匹(3%)が第171日に高カルシウム血症で死亡した。PTHrP処置動物は試験の間に死亡しなかった。
【0213】
考察
候補PTHrP類似体またはその他の骨同化物質は、上述の方法を用いて試験することができる。本発明の方法のなかで有用な、PTHrP類似体またはその他の骨同化物質は、未処置OVX対照に比べて、骨の総カルシウム、骨梁のカルシウム、皮質骨カルシウム、骨梁の厚み、および骨体積を顕著に増加させると予測される。
【0214】
実施例5 PTHRPおよび骨同化物質に類似の生物活性を有するペプチド模倣体および小分子を設計するためのシステムおよび方法
上述のように、PTHrP、PTH、およびTIPペプチドのほか、その受容体ならびに結果として起こる代謝経路を利用して、こららの骨同化物質の作動薬および拮抗薬として有用なペプチド模倣体および小分子薬剤を開発してもよい。本明細書では、「ペプチド模倣体」とは、骨量の調節を含む生物活性を示す、上述の骨同化物質PTHrP、PTH、もしくはTIPの断片または完全長ペプチドの誘導体のほか、その同じものを含んだ混合物、薬学的組成物、および組成物を指す。「小分子薬剤」とは、類似の活性を有する、天然には存在しない低分子量の化合物を指す。どちらの場合でも、ペプチド模倣体または小分子薬剤の生物活性は、PTHrP、PTH、またはTIPの生物活性に対して作動的または拮抗的とすることができるし、または多種多様な活性を含んでもよい、即ち、PTH活性に対して拮抗的でありかつPTHrP活性に対して作動的であってもよい。
【0215】
PTHと同様に、PTHrPの生物活性は、N末端部分、つまり生物活性を最低限与える残基(1-30)と関連している。39アミノ酸の管状漏斗ペプチド(TIP)のトランケート型もまた、生物活性について試験されている。
【0216】
これらの作用物質に対する受容体はまた、構造に基づいた薬剤設計に対する標的である。前述のように、500アミノ酸のPTH/PTHrP受容体(PTH1受容体としても知られる)は、グルカゴン、セクレチンおよび血管活性腸管ペプチドに対する受容体を含むGCPRスーパーファミリーに属する。その細胞外領域はホルモン結合に関与しており、その細胞内ドメインは、ホルモンによる活性化後、Gタンパク質サブユニットを結合して、ホルモンによるシグナル伝達を二次メッセンジャーの刺激を介した細胞応答に変換する。これらの二次メッセンジャーは同様に、薬剤の標的を与える。
【0217】
前述のようにまた、第二のPTH受容体(PTH2受容体)は、脳、膵臓、およびその他のいくつかの組織で発現される。そのアミノ酸配列ならびにPTHおよびPTHrPに対するその結合および刺激応答のパターンは、PTH1受容体のものとは異なる。PTH/PTHrP受容体はPTHおよびPTHrPに等しく反応するが、PTH2受容体はPTHにのみ反応する。この受容体の内在性リガンドは、管状漏斗ペプチド-39(tubular infundibular peptide-39)即ちTIP-39であると思われる。
【0218】
本発明の1つの局面として、これらの組成物は、PTH1またはPTH2受容体の活性を調節する、即ち、昂進させるかまたは抑制する。別の局面として、PTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤のX線回折により得られる原子座標に関連した構造情報を含むシステムが提供される。別の態様として、PTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤に対する抗体が提供される。さらに別の態様として、PTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤の精製結晶調製物が提供される。
【0219】
PTH1もしくはPTH2受容体、またはPTHrP、PTH、もしくはTIPペプチド、断片、ペプチド模倣体または小分子薬剤の構造は、結晶化ポリペプチドのX線回折、結晶化ポリペプチドの二次元核磁気共鳴分光法により、または生物材料の高解像度の構造を得る同様な方法により得られる。高解像度の構造とは、2.8Åを越えるまでに、好ましくは2.3Åを越えるまでに解像された構造を指し、これらの受容体およびそのリガンドの活性部位を位置付けるために使用される。構造は、例えば、記憶装置、ディスプレイ、データ入力手段、中央演算処理装置および構造データを解読する、解釈するおよびレンダリングするためのアルゴリズムを含む命令セット(これらの全てが当技術分野においてよく知られている、例えば、Keckらの「Computer system and methods for producing morphogen analogs of human OP-1」という名称の米国特許第6,273,598号(参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい)を少なくとも有する、当技術分野において報告されているコンピュータシステムを用いて決定かつ解釈される。本発明によれば、そのようなシステムは、スタンドアロン型としてもまたはネットワーク型としても、即ち、パケット交換ネットワークを介していてもよい。コンピュータ支援設計(CAD)アルゴリズムを使用して、得られた構造マップに基づき、適当な受容体の拮抗的または作動的活性を有するペプチド模倣体および小分子薬剤を設計する。候補となる作用物質は、本明細書に記載の試験法のほか、当技術分野において周知の類似の試験法を用い、PTHrP、PTH、およびTIP様の生物活性について試験する。
【0220】
(表I)対象者の基本属性
【0221】
(表II)bPTH-(1-34)と比較した[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミドのインビトロ活性
ap=0.03
c有意差なし
cp<0.002
結合試験は、放射性リガンドとして、モノヨード化した[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)アミド (125I-PTH)または[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド (125I-PTHrP)を用い、20℃で行った。Kd値はスキャッチャード解析により決定し、Ki値はIC50値から得た。アデニル酸シクラーゼ刺激は、部分精製されたイヌ腎細胞膜および30℃で30分のインキュベーションを用い、標準的な試験条件の下で評価した。アデニル酸シクラーゼ刺激はまた、バシトラシン(200μg/ml)の存在下での高精製されたイヌ腎細胞膜および20℃で20分のインキュベーションを用い、結合試験条件の下で評価した。
【0222】
SaOS-2細胞膜と比較したヒトRCM(腎細胞膜)におけるPTHおよびPTHrP類似体のインビトロ活性
値は、各ペプチドに対する2回またはそれ以上の回数の実験の平均値±SEMである。[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH2に対する統計解析:
aP<0.01
bP<0.05
cP<0.001
dP<0.0001
【0223】
(表III)SaOS-2無傷細胞と比較したヒトRCM(腎細胞膜)におけるPTHおよびPTHrP類似体のインビトロ活性
値は、各ペプチドに対する2回またはそれ以上の回数の実験の平均値±SEMである。[Tyr36]hPTHrP-(1-36)NH2に対する統計解析:
aP<0.01
bP<0.0001
cP<0.05
dP◇ 、これらのペプチドは、SaOS-2無傷細胞ではなくSaOS-2細胞膜で試験した(表IIを参照されたい)。
eP<0.001
【0224】
(表IV)手順
【0225】
(表V)30、90または180日間、rec hPTH-(1-34)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ-PTH-893を1日1回投与した卵巣切除(OVX)成熟ラットにおける右側近位脛骨の構造上の組織学的形態計測
データは、1群当たりラット7〜10匹に対する平均値±SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。ベースラインデータは、統計解析に含まれておらず、説明の目的のみで示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0226】
(表VI)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34) (LY333334)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ PTH 893、PTHrP類似体を1日1回投与した卵巣切除(OVX)成熟ラットにおける右側近位脛骨の骨形成測定結果
データは、1群当たりラット7〜10匹に対する平均値±SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。ベースラインデータは、統計解析に含まれておらず、説明の目的のみで示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0227】
(表VII)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34) (LY333334)、PTHrP-(1-36)、またはPTHrP類似体のSDZ-PTH-893を1日1回投与した卵巣切除(OVX)成熟ラットにおける右側近位脛骨の骨吸収測定結果
データは、1群当たりラット7〜10匹に対する平均値±SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。ベースラインデータは、統計解析に含まれておらず、説明の目的のみで示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0228】
(表VIII)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34) (LY333334)、PTHrP-(1-36)、またはPTHrP類似体のSDZ PTH 893を1日1回投与した卵巣切除成熟ラットにおける全身、橈骨、または左大腿骨の骨量
略語:X領域;BMC = 骨塩濃度;BMD = 骨塩密度;OVX =卵巣切除。
データは、1群当たりラット10匹に対する平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表されている。統計学的に有意な相違は、表IIIに示されている。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
1 1日目に行われたOVX
2 30日目に行われたBMC
【0229】
(表IX)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ PTH 893を1日1回投与した卵巣切除成熟ラットにおける体重増加および血清化学検査
略語:WW = 湿重量;OVX = 卵巣切除。
データは、1群当たりラット10匹に対する平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0230】
(表X)hPTH 1-34(PTH)、PTHrP-(1-36)(PTHrP)、またはPTH類似体のSDZ PTH 893で6ヶ月間処置したOVX成熟ラットの大腿骨頚部および大腿骨中央部の強度の生体力学的測定結果
略語:n = 群当たりのラット数;OVX =卵巣切除。
データは、平均値∀SEMとして表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0231】
(表XI)30、90、または180日間、rec hPTH-(1-34)、PTHrP-(1-36)、またはSDZ PTH 893を1日1回投与した卵巣切除成熟ラットにおける体重増加および血清化学検査
略語:WW = 湿重量;OVX = 卵巣切除。
データは、1群当たりラット10匹に対する平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表されている。統計学的に有意な相違、p < 0.05。
a 対応時間のOVXに対して
b 対応時間のhPTH(1-34)に対して
c 対応時間の偽処置に対して
【0232】
均等物
前述の本発明の特定の態様の詳細な説明から、高カルシウム血症または骨原性肉腫を発生させる危険性などの危険性を最小化するかまたはマイナスの副作用を取り除いて骨粗鬆症の処置を安全かつ効果的にもたらす、PTHrPまたはその類似体を投与する独特な方法が記載されてきたことは明らかである。本明細書に好ましい態様を詳細に開示してきたが、これは例示のみを目的に一例としてなされたものであって、先述の特許請求の範囲に関して限定することを意図するものではない。特に、特許請求の範囲により限定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明を置換、変更、および変形することが可能であると本発明者は考える。例えば、PTHrP類似体またはその投与経路の選択は、本明細書に記載の態様の知識を有する当業者とっては日常的作業であると考えられる。
【0233】
本発明は、表を参照して、以下の説明からさらに理解されるものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトPTHrP-(1-36)の他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントであり、この中でヒト配列中の対応アミノ酸と異なるアミノ酸は太字で示されており、ヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。
【図2】アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトPTH-(1-34)の他の種の対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントであり、この中でヒト配列中の対応アミノ酸と異なるアミノ酸は太字で示されており、ヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。
【図3】アミノ酸の同一性を最大化するように整列された、ヒトTIP-(1-39)のマウスの対応配列とのホモロジー(相同性)アライメントであり、この中でヒト配列中の対応アミノ酸と異なるアミノ酸は太字で示されており、ヒト配列中の対応アミノ酸の保存的アミノ酸置換変異であるアミノ酸は太字かつ下線で示されている。
【図4】偽薬(N=7)またはPTHrP-(1-36) 410.25μg/日(N=8)を受けている骨粗鬆症を患う閉経後の女性において、%変化(左パネル)および体重(グラム)変化(右パネル)として表現された腰椎の骨密度(BMD)の変化を描く線グラフである。
【図5】PTHrPまたは偽薬(PBO)による治療後、腰椎(L/S)、大腿骨頚部(FN)および全股関節部(TH)で測定された骨塩密度の変化をベースラインからの変化百分率として図解している。PTHrP治療に反応して腰椎では骨塩密度が顕著に増加しており、大腿骨頚部では中等度に増加しており、全股関節部では骨塩密度がほとんど増加していない。
【図6】偽薬およびPTHrP治療患者における骨代謝回転マーカーを図解している。図6(a)は、ベースラインからの変化として表現された血清オステオカルシンの結果を示している。図6(b)は、2群における血清N-テロペプチド(NTX)値を示している。図6(c)は、2群における尿デオキシピリジノリンを示している。この結果から、PTHrPは血清オステオカルシンを刺激し、おそらく骨形成を刺激するが骨吸収は刺激しないことが示される。
【図7】PTHrPおよび偽薬群における血清の総カルシウム(左パネル)およびイオン化カルシウム(右パネル)を図解している。PTHrPと対照群との間で血清の総カルシウムおよびイオン化カルシウムに違いはなく、血清の総カルシウムおよびイオン化カルシウムにより測定されたように、どちらの群の患者も高カルシウム血症を発症することはなかった。
【図8】偽薬(N=7)またはPTHrP-(1-36) 410.25μg/日(N=8)を受けている骨粗鬆症を患う閉経後の女性において、%変化として表現された腰椎の骨密度(BMD)の変化を、公表された他の臨床試験のなかで報告されたその他の種々の骨粗鬆症薬の効果と比較して描いた線グラフである。
【図9】平衡化条件の下で、ヒト腎皮質細胞膜(RCM)(パネルA)、SaOS-2細胞膜(パネルB)、およびSaOS-2無傷細胞(パネルC)に対する125I-[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2の競合結合試験(上パネル)を描く線グラフである。未標識[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(△)、hPTH-(1-34)(○)、rPTH-(1-34)(▲)、bPTH-(1-34)(●)、[Tyr34]bPTH-(7-34)NH2(□)、およびhPTHrP-(7-34)NH2(〜)に対する競合曲線が示されている。値は代表的実験に対する反復測定による平均値±SEMである。下パネルは、代表的な結合実験に対応するスキャッチャード変換を描いた線グラフである。
【図10】[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(△)、[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)(○)、rPTH-(1-34)(▲)、およびbPTH-(1-34)(●)による、ヒト腎皮質細胞膜(RCM)(パネルA)、SaOS-2細胞膜(パネルB)、およびSaOS-2無傷細胞(パネルC)におけるアデニル酸シクラーゼ活性の刺激を描いた線グラフである。定量試験は、各結合測定法のなかで使用した同一条件の下で行った。値は代表的実験に対する反復測定による平均値±SEMである。
【図11】20℃でのイヌ腎(皮質)細胞膜に対するPTHrPおよび125I[Nle8,18, Tyr34]-hPTH-(1-34)NH2を含むPTHペプチドの結合に対する経時変化を描いた線グラフを図解している: --○--放射性リガンドの総結合; --◆--10-6M未標識bPTH-(1-34)の存在下での放射性リガンドの結合(非特異結合); --●--放射性リガンドの特異結合。ポイントは三重測定の平均値±SEMを表す。SEMがあまりに小さくて、エラーバーがないそれらのポイントでは表示することができなかった。結果は、3回の実験で得られたものの代表例である。
【図12】未標識[Nle8,18,Tyr34]hPTHh-(1-34)NH2(▲)、bPTH-(1-34)(●)、および[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(○)を用いた、20℃でのイヌ腎(皮質)細胞膜に対する125I-[Nle8,18, Tyr34]hPTH-(1-34)NH2の競合結合試験を描いた線グラフである。ポイントは、3つの別実験(bPTH-(1-34)および[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド)におけるまたは2つの別実験([Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)NH2)における三重測定の平均値±SEMを表す。個々のポイントは、未標識ペプチドの非存在下で測定した特異結合の割合(最大結合の割合)として表した。差し込み図は、代表的な実験のスキャッチャード解析を示す。B/Fは、結合型/遊離型である。
【図13】未標識[Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)NH2(▲)、bPTH-(1-34)(●)、[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2(○)、PTHrP-(49-74)(△)および[Cys5,Trp11,Gly13]PTHrP-(5-18)(P1-ペプチド)(□)を用いた、20℃でのイヌ腎(皮質)細胞膜に対する125I-[Tyr36]PTHrP-(1-36)NH2の競合結合試験を描いた線グラフである。ポイントは、3つの別実験(bPTH-(1-34)および[Tyr36]PTHrP-(1-36)アミド)におけるまたは1つの実験([Nle8,18,Tyr34]hPTH-(1-34)NH2)における三重測定の平均値±SEMを表す。個々のポイントは、未標識ペプチドの非存在下で測定した特異結合の割合(最大特異結合の割合)として表した。代表的な実験のスキャッチャード解析(差し込み図)が示されている。B/Fは、結合型/遊離型である。
【図14】5群における大腿部の骨塩含量の変化を図解している。BMCは、各時点での偽処置動物からの変化率として示されている。ペプチド処置ラットの各群では大腿部の骨塩含量が漸進的に増加していること、およびその変化は統計学的な意味合いからすると極めて有意であることに留意すべきである。
【図15】処置から90日後の右側近位脛骨の一連の写真である。A. 偽処置; B. OVX処置; C. SDZ-PTH-893処置; D. rhPTH(1-34)処置; E. hPTHrP(1-36)処置。卵巣切除後、近位脛骨では骨が喪失している。SDZ-PTH-893またはPTH(1-34)のどちらかで90日間処置すると、喪失された骨を回復させるだけではなく、偽処置に比べて骨梁体積を顕著に増加させる。PTHrP(1-36)は、喪失された骨を部分的に回復させるのみである。倍率は5.5倍である。
【図16】6ヶ月間の選択の骨組織形態学的変化が描かれている。重要な点は: a) OVX群では骨梁領域、骨形成率および吸収面が加齢に伴って減少している; b) 骨梁領域および骨形成率に関して、3つのペプチドの全てがOVX対照に比べて目に見えてプラスの効果を有していた; およびc) 骨形成率のこの顕著な増加にもかかわらず、1〜6ヶ月の骨吸収率は処置および対照群間で類似していたことである。
【図17】処置6ヶ月間の生体力学的強度(損傷までの荷重)の変化を図解している。重要な点は: a) 3つのペプチドのそれぞれに対し、全3群で生体力学的な度合いの顕著な改善が起こった; およびb) 改善は骨梁部位の大部分および皮質部位の大部分の双方で起こったことである。
【図18】6ヶ月間の血清カルシウムおよび腎臓カルシウム含量の変化を図解している。SDZ-PTH-893で処置したラットは中等度の高カルシウム血症、および腎臓カルシウム含量の顕著な増加を発現したことに留意すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約10,000μg/日の用量で少なくとも3ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも1%/月の割合で増加する、方法。
【請求項2】
患者の骨量密度が少なくとも1.5%/月の割合で増加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PTHrP-(1-36)が、少なくとも約3,000μg/日〜約10,000μg/日の用量で患者に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PTHrP-(1-36)が皮下投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ヒト患者が、原発性もしくは続発性骨粗鬆症に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ヒト患者が、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、および骨量減少と関連した他の種類の骨疾患からなる群より選択される代謝性骨疾患に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約10,000μg/日の用量で3ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも3%増加する、方法。
【請求項8】
患者の骨量密度が少なくとも4.5%の割合で増加する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
PTHrPまたはその類似体が皮下投与される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ヒト患者が、原発性もしくは続発性骨粗鬆症に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ヒト患者が、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、および骨量減少と関連した他の種類の骨疾患からなる群より選択される代謝性骨疾患に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ヒト患者が骨折に苦しむ、請求項1または7記載の方法。
【請求項13】
骨折が、患者に関わる外科手順の結果生じる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約50,000μg/日の用量で2ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも2.5%増加する、方法。
【請求項15】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約50,000μg/日の用量で1ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも1.5%増加する、方法。
【請求項1】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約10,000μg/日の用量で少なくとも3ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも1%/月の割合で増加する、方法。
【請求項2】
患者の骨量密度が少なくとも1.5%/月の割合で増加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
PTHrP-(1-36)が、少なくとも約3,000μg/日〜約10,000μg/日の用量で患者に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
PTHrP-(1-36)が皮下投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
ヒト患者が、原発性もしくは続発性骨粗鬆症に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項6】
ヒト患者が、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、および骨量減少と関連した他の種類の骨疾患からなる群より選択される代謝性骨疾患に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項7】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約10,000μg/日の用量で3ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも3%増加する、方法。
【請求項8】
患者の骨量密度が少なくとも4.5%の割合で増加する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
PTHrPまたはその類似体が皮下投与される、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ヒト患者が、原発性もしくは続発性骨粗鬆症に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ヒト患者が、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、および骨量減少と関連した他の種類の骨疾患からなる群より選択される代謝性骨疾患に罹患しているか、またはその危険性がある、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ヒト患者が骨折に苦しむ、請求項1または7記載の方法。
【請求項13】
骨折が、患者に関わる外科手順の結果生じる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約50,000μg/日の用量で2ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも2.5%増加する、方法。
【請求項15】
骨量を増加させる必要性のあるヒト患者の骨量を増加させる方法であって、PTHrP-(1-36)を少なくとも約3,000μg/日〜約50,000μg/日の用量で1ヶ月間、該患者に間欠投与する段階を含み、該患者の骨量密度が少なくとも1.5%増加する、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−513459(P2008−513459A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532415(P2007−532415)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/032706
【国際公開番号】WO2006/033912
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507084682)オステオトロフィン リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/032706
【国際公開番号】WO2006/033912
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507084682)オステオトロフィン リミテッド ライアビリティー カンパニー (1)
【Fターム(参考)】
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