骨固定装置用の工具
骨固定装置を挿入する工具が提供される。工具は、一般的に、各々が近位端と遠位端と長手方向軸とを有する、細長い外側ボディと細長い内側ボディとを含んでいる。工具は、通常、外側ボディの遠位部に、骨固定装置の近位ピンを受入れるピン受け部を含んでいる。工具は、各々のピボット軸で内側部材にピボット運動可能に取り付けられ、各々が把持部を有する第1および第2のレバーをさらに含んでいる。レバーは、好ましくは、指当接部とワイヤ把持部とを含み、好ましくは、外側ボディに対して軸方向に移動可能にされている。レバーは、一般的に、指当接部に外側ボディに対して近位方向への力をかけたときに、両ワイヤ把持部の間に置かれた骨固定装置のガイドワイヤを把持して近位方向に引っ張ることができるように、ピン係合部が閉じて近位方向に動くようにされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年10月14日に発行された米国特許第6,632,224号の継続出願である、2003年5月16日に出願された米国特許出願第10/440,016号の一部継続出願であり、2003年2月28日に出願された米国特許仮出願第60/451,320号、および2003年4月21日に出願された米国特許仮出願第60/464,399号の合衆国法典35巻第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。これらの仮出願は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
背景
発明の分野
本発明は、一般的には骨固定装置の分野に関し、特に骨固定装置用の挿入工具に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
事故によって、または外科手術によって切断された、骨折した骨は、切断された各部を再石灰化させ結合させるために、長期間にわたってつないでおかなければならない。したがって、切断され、または骨折した骨の互いに隣接する部分は、通常、再接合された部分に打ち込まれるピンまたはねじによって、互いに固定され、または付着させらせる。そして、治癒を促進し、身体の活動時に各骨片を分離させる可能性のある機械的応力を無くすため、ギプス、ブレース、添え木、または他の従来の技術を用いるなどして、体の関連する部分の動きを最小限に抑えることができる。
【0003】
ピン状の装置によって2つ以上の骨片を付着させる外科処理では、骨を囲む組織を切開し、連結すべき各骨片を貫く穴をあける必要がある。骨の大きさ、構成、および荷重要求が著しく異なるため、従来技術では様々な骨固定装置が開発されてきた。一般に、現在の治療水準は、治癒の過程で骨折片を安定化させるための様々な金属ワイヤ、ねじ、およびクランプに依存している。骨の十分な治癒期間の後には、骨固定装置を取り除けるように、経皮的に接近可能な部位または他の部位を再び開く必要がある。
【0004】
ヒトの骨格では、長い骨の骨折が最も一般的である。このような骨折部の多くと、小さい骨の骨折部および小さな骨折片は、良好な解剖学的位置、早期の可動化、および負傷した患者の早期かつ完全なリハビリテーションを実現するために、内部および外部固定装置によって治療しなければならない。
【0005】
現在一般に使用されている内部固定技術は、多くの場合、キルシュナー(Kirschner)ワイヤ(K−ワイヤ)、髄内ピン、ワイヤリング、プレート、ねじ、およびこれらの組合せの使用に依存している。最も簡単な手術手順で、かつ外部から移植される安定材の使用量を最小限に抑えて、傷ついた骨の最良の解剖学的および機能的状態を実現するように、特定の装置または装置の組合せが選択される。当技術分野では、たとえば、リーズ(Reese)の米国特許第4,688,561号、ローゼンバーグ(Rosenberg)の米国特許第4,790,304号、リーズ等の米国特許第5,370,646号などに記載された他の様々な骨固定装置も知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨折部をせん断力に対して安定化させるためにK−ワイヤが広く使用されているが、K−ワイヤによる固定は、いくつかの公知の危険を伴う。たとえば、完全に治癒した後で装置を取り外すために、2回目の外科的処置が必要になる。装置の取外しが推奨される理由は、そのようにしないと、インプラントに隣接する骨が、金属と骨との弾性率および密度の差の結果、応力を受けない状態(stress shielding)になりやすいからである。
【0007】
さらに、移植されたK−ワイヤは、ピン路(pin-tract)感染から、膿瘍、抵抗性骨髄炎、敗血性関節炎、および感染性(infected)癒着不能に至る、様々な合併症部位を生じさせる可能性がある。
【0008】
K−ワイヤの使用に伴う他の考えられる合併症は、生体内移動である。K−ワイヤの軸方向移動範囲は0mmから20mmであると報告されており、ピンの取外しをより困難にすると共に、隣接する組織に外傷を与える可能性がある。
【0009】
K−ワイヤは、従来の方法で手足の骨損傷に用いられる場合、皮膚を貫通する。経皮的に延びるK−ワイヤは、望ましくない外観を呈するだけでなく、K−ワイヤが外部の物体に接触したときに、切れたり、腱などの隣接構造に損傷を与えたりする恐れがある。
【0010】
従来技術において様々な骨留め具が開発されているが、それでもなお、取付け時にもその後の骨治癒時にも周囲の組織への外傷を最小限に抑えつつ、せん断力に対する安定化を図ることのできるタイプの骨留め具が依然として必要とされている。
【0011】
さらに、取付時に周囲の組織への外傷を最小限に抑えつつ骨固定装置を挿入し固定する、単純で使いやすい工具も依存として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
したがって、一実施態様では、第1の骨片を第2の骨片に固定する方法は、横方向に移動可能な少なくとも1つの遠位アンカーと、ルーメンとを有するピンであって、ルーメンがピンを貫通して延びているピンを設けるステップを有している。遠位アンカーは、必要に応じて横方向内側に動ける状態で、第1の骨片を通って第2の骨片内に挿入される。取付け工具は、ルーメンを通って軸方向に延びるワイヤの近位部を把持する。取付け工具は、ワイヤを、ワイヤの遠位部が遠位アンカーの半径方向内側へのたわみ変形に抵抗するように、ルーメンを通して軸方向に動かし、それによって遠位アンカーを横方向内側に動けないようにする。
【0013】
他の実施態様では、骨固定装置を挿入する工具が提供される。工具は、各々が近位端と遠位端と長手方向軸とを有する、外側ボディと内側ボディとを含んでいる。工具はまた、外側ボディの遠位部に、骨固定装置の近位ピンを受入れるピン受入れ部を含んでいる。工具は、各々のピボット軸で内側部材にピボット運動可能に取り付けられ、各々が把持部を有する、第1および第2のレバーをさらに含んでいる。
【0014】
他の実施態様では、近位端と遠位端とを備えたボディを有する工具が提供される。工具は、少なくとも1つの指把持部と、ボディの遠位端に設けられたピン把持部とをさらに含んでいる。工具は、少なくとも1つの指把持部が近位方向に移動することによって、骨固定装置のガイドワイヤが把持され、近位方向に、骨固定装置のピンに対して相対移動させられるようにされている。
【0015】
骨固定装置を設置する工具の他の実施態様では、工具は、長手方向に延びる管状の外側ボディを有し、外側ボディは、近位端と、遠位端と、外側ボディに設けられた少なくとも1つの長手方向に延びる長穴とを有している。工具はまた、外側ボディ内に滑動可能かつ同心に配置された、長手方向に延びる内側ボディと、内側ボディの遠位部にピボット運動可能に取り付けられた少なくとも1つのレバーとを含んでいる。レバーは、好ましくは、指当接部とワイヤ把持部とを含み、好ましくは、長穴内を軸方向に移動可能にされている。レバーは、好ましくは、指当接部に外側ボディに対して近位方向への力をかけたときに、ピン係合部が閉じて近位方向に動くようにされている。
【0016】
他の実施態様では、骨固定装置と挿入工具とを含む骨固定システムが開示される。骨固定装置は、近位端と遠位端と長手方向軸とを持つ、第1の細長い管状のボディを有している。遠位アンカーが固定装置に設けられており、骨に設けられた穴内を遠位方向に挿入可能な低い形状から、穴を通る近位方向への移動に抵抗する傾斜した向きに動くことができる。細長いピンが、管状のボディ内を軸方向に移動可能であり、ピンが近位方向に管状のボディに対して引き込まれると、遠位アンカーが軸方向を向いた向きから傾斜した向きに進められるように、アンカーに関連付けされている。装置はまた、近位端と遠位端と長手方向軸とを有する第2の細長い管状のボディを含んでいる。少なくとも1つの保持構造が、第2の細長い管状のボディと細長いピンとの間に設けられている。保持構造は、細長いピンの近位方向への第2の細長い管状のボディに対する相対移動を許容するが、ピンの遠位方向への第2の細長い管状のボディに対する相対移動に抵抗する。第1の管状のボディを用いて遠位アンカーを設置することができ、次に第1の管状のボディが取り外され、第2の管状のボディに交換されてもよい。第2の管状のボディは、骨を圧縮するようにピンと協働する。システムはまた、近位端と遠位端と中心軸とを備えた細長いボディを有する挿入装置を含んでいる。挿入装置はまた、ボディに対してピボット運動可能かつ軸方向に移動可能にされた一対のレバーを含んでいる。レバーは、好ましくは、指当接部とピン係合部とを有している。挿入装置は、好ましくは、指当接部に力がかけられたときに、レバーが固定装置のピンと係合し、ピンを近位方向に引き込むようにされている。
【0017】
本発明、および従来技術に対して実現される利点について概略的に説明するために、本発明のいくつかの目的および利点について上述した。もちろん、本発明の特定の実施態様によっては、これらのすべての目的や利点が実現されるとは限らないことを理解されたい。したがって、たとえば、当業者には、本明細書で教示される一つの利点または一群の利点を、本明細書で教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも実現せずに実現または最適化するように、本発明を具体化または実施できることが認識されよう。
【0018】
これらのすべての実施態様は、本明細書に開示される本発明の範囲内であることが意図されている。開示されるいずれかの特定の好ましい実施形態に制限されない本発明の、これらのおよびその他の実施態様は、添付の図を参照する好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から、当業者には容易に明らかになろう。
【0019】
本発明の一般的な特質について概略的に説明したが、本発明のいくつかの好ましい実施形態およびそれらの修正実施形態は、以下の図を参照する本明細書の詳細な説明から、当業者に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
詳細な説明
図1の簡略化された骨折部に関連して、様々な実施形態の適用例が開示されるが、本明細書に開示される方法および構造は、当業者には本明細書の開示に照らして明らかとなろうが、様々な骨および骨折のいずれにも適用されることが意図されている。本発明の骨固定装置は、たとえば、指節間および中手指節の関節固定術、指骨および中手骨の横骨折固定術、指骨および中手骨のらせん骨折固定術、指骨および中手骨の斜骨折固定術、指骨および中手骨の顆間骨折固定術、指骨および中手骨の骨切り固定術、さらには当技術分野で公知の他の骨切り術や固定術など、手の様々な骨折および骨切り術に適用可能である。本発明の骨固定装置を用いて、指骨および中足骨の様々な骨切り術や、足の様々な骨折部を安定させることができる。これには、特に、オースティンおよびレバルディン・レアド(Reverdin-Laird)によって発表されたような遠位骨幹端骨切り術、ベースウェッジ骨切り術、斜め骨幹骨切り術、デジタル関節固定術その他、当業者に公知の他の様々な骨切り術が含まれる。踵骨や距骨などの足根骨の骨折、骨切り術、および関節固定術に対処することもできる。カラーに取り付けられ、またはカラーの下方を自由に移動できるスパイク付き座金を使用することができる。骨固定装置は、すべてが永久的もしくは吸収可能であるかまたは永久的なものと吸収可能なものとが混在しているプレートまたは座金と共に、またはこれらを使わずに用いることができる。
【0021】
腓骨および脛骨果の骨折、パイロン(pilon)骨折、および脚の骨の他の骨折を固定し安定させることができる。固定装置はプレートを使用してもしなくてもよく、吸収可能なタイプでも吸収不能なタイプでもよく、開示された他の実施形態を用いてもよい。一例として、半径方向および軸方向に延びる圧縮装置による内果剥離骨折固定が挙げられる。上記の各々は、本発明に従い、本明細書に開示される固定装置の1つを、骨折部を固定するために、第1の骨要素内を通って、骨折部を横切り、第2の骨要素内まで前進させることによって処置することができる。
【0022】
開示される実施形態の説明を助けるため、上向き、上部、下向き、下部、垂直、水平、内側、外側、近位、遠位などの用語が、添付の図面を説明するために用いられる。本明細書で使用される用語「軸方向」は、ボディまたは構造の軸を指し、したがって、本明細書で使用される用語「長手方向」とほぼ同義である。しかし、図示の各実施形態は、様々な所望の位置に配置し、あるいは向けることができることが理解されよう。
【0023】
図1を参照すると、骨10が、外側皮質骨要素12および内側皮質骨要素14を示して、全体的に図示されている。骨折部16が骨を横切り、骨10を、本記載の目的上近位要素19および遠位要素21と考えられるものに少なくとも部分的に分割している様子が、概略的に示されている。骨折部は、開示される実施形態の適用を示すために簡略化されている。しかし、当業者には理解されるであろうが、骨折部16は、様々な角度、深さ、および大きさで、骨を横切って延びていてもよい。
【0024】
図2〜9を参照すると、現時点で好ましい特徴および利点を有する固定装置の実施形態が示されている。この実施形態は、チタンやチタン合金などの金属から構成されるように最適化されている。ただし、本明細書の他の箇所で開示される材料を含む他の材料を本実施形態に用いることもできる。図2および4を参照すると、固定装置は、近位端28と遠位端30との間を延びるピン26の形をしたボディ32を含んでいる。遠位端30は、遠位皮質骨もしくは他の面または内側海綿骨に係合する、斜面付き延長部やバーブ50などの、摩擦力が高められたまたは締り嵌めの複数の構造を含んでいる。
【0025】
図示の実施形態は、互いに90°の角度に向けられた4つのバーブ50を含んでいるが、当業者には本明細書の開示に照らせば明らかなように、1個から約12個またはそれ以上の任意の数のバーブ50を用いてもよい。バーブ50は、ピン26の長手方向軸の周りに半径方向に対称に分散配置することができる。各バーブ50は、皮質骨の遠位面、あるいはバーブ50が固定される他の構造または面に接触する横方向係合面21を備えている。横方向係合面21は、ピン26の長手方向軸を横切る面上にあってもよく、ピン26の長手方向軸に対して傾けられていてもよい。
【0026】
図示の実施形態の各横方向係合面21は、ピン26の長手方向軸を横切る共通の面上に設けられている。あるいは、接触面21を含む面を2つ以上設けてもよい。横方向係合面21はまた、ピン26の長手方向に対して垂直でない1つまたは2つ以上の面上にあってもよい。たとえば、複数の横方向係合面21を含む面が、ピン26の長手方向軸に対して約35°または45°から90°の範囲内の角度で傾いていてもよい。このように、横方向係合面の面は、ある臨床用途での要望に応じて、ピンが貫通して設けられる骨の遠位面の角度を考慮するために、選択可能である。
【0027】
移植過程中にバーブ50を半径方向内側に圧縮し、かつ、その後遠位骨面に係合させるためにバーブ50を半径方向外側に動かすことを容易にするために、図示の実施形態の各バーブ50は、可撓性のまたはヒンジ付きのレバーアーム23によって保持されている。レバーアーム23は、ピン26の側壁に複数の軸方向長穴15を作ることによって形成できる。軸方向長穴15は、中央ルーメン11と協働して、対応するレバーアーム23に設けられた各バーブ50を分離する。軸方向長穴15の軸方向長さは、たわみが分布する所望の長さや横方向の作動範囲など種々の所望の物理的物性と、所望の構成材料とに応じて変えることができる。チタンのような比較的剛性の材料の場合、外径約0.1インチ、長さ約1.25インチのピン26に対して、約0.1インチ、好ましくは約0.2インチを超える軸方向長穴15の軸方向長さが利用される。軸方向長穴15は、一般的に、ピン26の全長の約5%から約90%の範囲内で延びており、約10%から約30%の範囲内で延びていることが少なくない。
【0028】
図2、4、5、および9を引き続き参照すると、長穴15の遠位端30における周方向幅は、ピン26を横方向係合面21のすぐ近位側のピン26の外径に概ね等しい内径を有するあらかじめ穿孔された穴に押し込むため、バーブ50の寸法と協働して各バーブ50が半径方向内側にたわむことができるように選択される。このために、各長穴15の少なくとも一部の周方向幅は、図2に示されているように、遠位端30での比較的大きな寸法から軸方向長穴15の近位限界での比較的小さい寸法へと、徐々に狭くなっている。図示の実施形態では、各長穴15の幅は、応力がかからない方向において、近位端で約0.20インチ、遠位端で約0.035インチである。長穴15の幅は、その長さに沿って連続的に狭くなっていってもよく、あるいは図示の実施形態のように、近位部ではほぼ一定で、長穴15の遠位部で徐々に狭くなっていってもよい。中央ルーメン11の直径を遠位方向に向かって大きくするために、レバーアーム23の壁厚を徐々に小さくすることもできる。これによって、各レバーアームの内面が互いに底部に落ち切る前の圧縮断面形状を縮小することができるであろう。
【0029】
ピン26はさらに、近位アンカー36と係合する複数の保持構造44を備えている。ピン26と近位アンカー36とを相対的に回転運動させると、ピン26と近位アンカー36は軸方向に相対的移動することができる。
【0030】
保持構造44は、近位アンカー36と係合するようにされている。一実施形態では、保持構造44は、近位限界46と遠位限界48との間に、ピン26に沿って、軸方向に互いに間隔をおいて配置されている。近位限界46と遠位限界48との間の軸方向距離は、近位アンカー36の軸方向への所望の移動距離、つまりはピンの機能サイズの範囲に関連する。ピン26の一実施形態では、保持構造44は、近位アンカー36上の相補保持構造42と協働するようにされた複数のねじ山を有している。相補保持構造42は複数の相補的なねじ山とすることができる。この実施形態では、近位アンカー36をピン26に対して回転させることによって、近位アンカー36をピン26に沿って遠位方向に前進させることができる。近位アンカー36は、ピン26を患者から取り出せるように、逆回転させてピン26から取り外せるようにするのが有利である。このため、カラー38は、取外し工具がカラー38をピン26に対して回せるような把持構成または把持構造を備えていることが好ましい。1つまたは2つ以上の長穴、平坦部、ボアなどのような様々な把持面のいずれを設けてもよい。図示の実施形態では、カラー38は、多角形、特に、図7に示されているように六角形の外周を備えている。
【0031】
ピン26の近位端28は同様に、設置工具または取外し工具が回転しながら係合するための構造29を備えている。回転による係合は、当業者には明らかであろうが、種々の形状または構成のいずれを用いても行うことができる。一つの便利な構造は、近位端28に、対応する工具の相補的な構造に回転しながら係合する1つまたは2つ以上の平坦な側壁を備えることである。図3に示されているように、近位端28は、正方形断面を有する構造29を備えていてもよい。あるいは、近位端28を通る外側断面は、三角形、六角形、その他の多角形や、元々の丸いボディ上に形成された軸方向に延びる1つまたは2つ以上の平坦な側面または溝など、回転連結を可能にする様々な構成のうちのいずれであってもよい。
【0032】
上述の構造は、第1の部材(たとえば、スリーブ)が近位アンカー36(図6および7参照)と係合し、第2の部材(たとえば、コア)がピン26の近位回転係合構造29と係合する、スリーブ構成内に同心コアを有する設置工具および/または取付け工具の使用を可能とする。第1の部材を第2の部材に対して回転させ、それによって、近位アンカー36を、ピン26の保持構造44に係合するように、または保持構造44から外れるように回転させることができる。修正された構成では、近位アンカー36と係合するために第1の工具(たとえば、一対のプライヤまたはレンチ)を、ピン26の近位回転係合構造29と係合するために第2の工具(たとえば、一対のプライヤまたはレンチ)を用いてもよい。このような構成では、第1の工具を第2の工具に対して回転させ(逆も可)、それによって、近位アンカー36を、ピン26の保持構造44に係合するように、または保持構造44から外れるように回転させることができる。
【0033】
あるいは、近位アンカー36の保持構造42は、弾性変形などによってピン26上を遠位軸方向に進むことが許容されるが、近位アンカー36をピン26から取り外すためには、ピン26に対して回転させることが必要になるようにしてもよい。
【0034】
他の様々な保持構造のいずれも、好ましくは移植および骨治癒期間経過後に、近位アンカー36を取り外せるようにすることができる。たとえば、保持構造44は、軸方向に延びる複数の平坦部または中断部を有する複数のねじ山とすることができる。これらのねじ山は、近位アンカー36の保持構造42上の軸方向に延びる複数の平坦部と対応することができる。この構成は、近位アンカー36をピン26に対して部分的(たとえば、90°)に回転させ、それによって保持構造42、44の係合を解き、近位アンカー36をピン26から軸方向に引き出すことを可能とする。保持構造42および44の一方または両方は、らせんねじ山、あるいは周方向に延びる1つまたは2つ以上の山または溝を有していてもよい。一実施形態では、保持構造42、44は、ピン26と近位アンカー36との間の相対的な回転運動に基づく所望の軸方向移動を実現するピッチを有することができる。保持構造42、44のねじ山のピッチは、微細なものから疎なものまで可能である。たとえば、微細なピッチは、アンカー36をピン26に対して軸方向に比較的短い距離だけ動かすために近位アンカー36を数回回転させるのが望ましい場合に選択することができる。この構成では、近位アンカー36と遠位アンカー34との間に比較的強い圧縮力を得ることができる。この構成では、近位アンカー36が不用意に逆回転させられた場合にも、比較的強い抵抗力が生じる。別の実施形態では、保持構造42、44のねじ山は、ルアーコネクタに見られるような比較的疎なピッチを有している。このようなねじ山では、ピン26と近位アンカー36とを軸方向に急速に相対移動させるための、迅速なひねり連結を行うことができる。近位アンカー36を比較的少ない回数、または部分的に回転させることによって、ピン26に対して軸方向に大きく動かすことができる。この構成は、骨にかけられた圧縮の程度についての触覚フィードバック性を向上させることができる。対応する各保持構造のねじ山ピッチやその他の特性は、所望の臨床的性能を考慮しながら、当業者の、本明細書の開示に照らした日常的な経験を通じて最適化することができる。
【0035】
図4を参照すると、ピン26には、ピン26の近位部の切断および取外しを容易にする切断点を設けることができる。切断点は、近位アンカー36がねじによってピン26に連結されたときに近位アンカー36よりも近位側となる位置に設けることができる。
【0036】
一実施態様では、少なくとも第1の切断点31は、ピン26の壁厚の薄い部分に設けることができる。すなわち、ピン26の切断点31の断面積は、ピン26の他の部分の断面積よりも小さくすることができる。ピン26の近位部は、固定システムに張力がかけられると、カラー38よりも近位方向に突き出る。図示の実施形態の切断点31は、近位端28に横方向の力がかけられたときに定められた破壊点を形成しつつ、取付けシステムの残りの部分が比較的しっかりと固定されるような、環状のくぼみまたは溝を有している。近位アンカー36のピン26に対する軸方向への相対移動範囲に応じて、少なくとも第2の切断点33をさらに設けてもよい。
【0037】
2つ以上の切断点31、33を有する一実施形態では、遠位切断点31は、1つまたは2つ以上の打ち抜き孔、または近位切断点33よりも深いくぼみを備えている。このように、遠位切断点31は、近位端28にかけられる横方向の圧力に対して、近位切断点33よりも先に優先的に折れる。これによって、本明細書の開示に照らして理解されるように、近位端28を設置し切断した後の、カラー38を越えるピン26の突出しが最小限に抑えられる。
【0038】
さらに、移植され切断点31で折られた後の、近位端28の近位アンカー36からの近位方向への突出しも、切断点31または33が近位アンカー36内で折れるようにすることによって、最低限に抑えるか、または無くすことができる。図6を参照すると、保持構造42は、アンカー36上の近位面63よりも遠位側の点61で終端することができる。傾斜した、またはテーパ状の環状面65によって、近位アンカー36を貫通する中央開口の内径は近位方向で大きくなる。近位アンカー36が、切断点31が近位限界61と近位面63との間に来るように、ピン26上を遠位方向に進められた後、ピン26の近位端28に横方向への圧力をかけることによって、切断点31を傾斜面65の領域内で折ることができる。このようにして、折られた後のピン26の近位端は、近位面63の所または近位面63よりも遠位側となり、したがって、装置の外形および組織の炎症の可能性が最低限に抑えられる。
【0039】
上記に開示された軸方向に設置可能な実施形態のいずれも、設置工具を用いることによって、設置の簡略化が可能である。設置工具は、ピストル・グリップ、注射器型グリップ、またはプライヤ型グリップを備えることができ、したがって、臨床医は工具をピン32の近位方向への延長線上に設け、骨片に適切な張力をかけるために、近位アンカー36、52と遠位アンカー34とを、手で1回または2回以上収縮させながら互いに引き寄せることができる。事前に較正された工具を使用することによって、所定の張力をピンからピンに一様にかけることができる。
【0040】
ピンに対して所定の荷重を設定する設置装置の較正は、当業者には理解されるであろう様々な手段のいずれによっても行うことができる。たとえば、ピン32は、1つまたは2つ以上の所定の位置における部分の引っ張り強度を制限する1つまたは2つ以上の切込み線、または横方向に延びる孔、あるいは他の修正された構成を備えていてもよい。このようにして、近位端28に軸方向へのカラー54に対する張力がかけられると、ピン32が切込み線の所で分離される前に骨に所定の荷重がかけられる。あるいは、所定の限界内の張力をかけ、次に工具の遠位端から張力を解放する内部構造を設置工具内に設けてもよい。
【0041】
図8は、上述の固定装置25と共に使用できるロックガイドワイヤ150を示している。ガイドワイヤは遠位端152と近位端154とを有している。図示のガイドワイヤ150は、ガイドワイヤ150の遠位端152に配置されたロック部156と、好ましくはガイドワイヤ150の遠位部156から近位端154まで延びている細長い部分158とを有している。細長い部分158の直径D1は、遠位部154の直径D2より全体的に小さい。ガイドワイヤ150は、ステンレススチール、チタン、または他の任意の適切な材料で作ることができる。陰極反応を防止するため、すべての金属システムにおいて、ガイドワイヤ150およびロック部156は、固定装置25の他の部分と同じ材料で作ることが好ましい。
【0042】
ガイドワイヤ150のロック部156は、様々な形態のいずれをとることもでき、当業者には本明細書の開示に照らせば明らかであるように、意図された機能を実現することができる。たとえば、図示のような概ね円筒形のロック構造を使用してもよい。あるいは、近位部158より大きい断面を有する他の様々な構成のいずれを使用してもよい。所望の圧縮度と、ロック部156がピンの遠位端30に嵌る態様とに応じて、円錐形、球形、または他の形状を用いてもよい。
【0043】
ガイドワイヤ150は、その近位端がピン26のルーメン11に挿入できるようにされている。図4を参照すると、ルーメン11は、第1の部分160と第2の部分162とを有しているのが好ましい。第1の部分160は概ね、遠位端30の、ピン26のレバーアーム領域内に配置されている。第2の部分162は、第1の部分160からピン26の近位端28まで延びていることが好ましい。第1の部分160の内径は概して第2の部分162の直径より大きい。このため、第1の部分160と第2の部分162との間の接合部は、ピン26の長手方向軸を横切る、横方向環状係合面164を形成している。
【0044】
上述のように、ガイドワイヤ150は、その近位端がピン26のルーメン11に挿入できるようにされている。このため、細長い部分158の直径D1はルーメン11の第2の部分162の直径より小さい。これに対して、遠位部156の直径D2は概して、第1の部分160の直径と同じか、それより大きく、第2の部分162の直径よりも大きい。この構成により、遠位部156は近位方向に第1の部分160内に引き込まれることができるが、遠位部156がピン26を近位方向に通過することは妨げられる。遠位部156が第1の部分160の直径より大きい実施形態では、第1の部分は遠位アンカー34を、弛緩した状態の直径より大きく広げることができる。
【0045】
さらに、設置後のロックガイドワイヤ150の遠位方向への移動に抵抗する、摩擦力が強化された様々な表面または表面構造のいずれかを設けることもできる。たとえば、ロックガイドワイヤ150をルーメン11内に取外し可能に保持するようにルーメン11の内面の対応する表面構造と協働する、半径方向内側または半径方向外側に向けられた様々な表面構造のいずれかを、ロックガイドワイヤ150の長さに沿って設けることができる。一実施形態では、ロックガイドワイヤ150の外径上を半径方向外側に延びる環状のフランジまたは溝と協働する円筒形の溝または山が、ルーメン11の内面に設けられる。相補的な表面構造は、ロックガイドワイヤまたはガイドピンは近位方向にルーメン11内に引き込まれロック構造と係合するが、ロック構造は、ロックガイドワイヤ150の遠位方向への移動に対し、通常の使用状態では外れにくいかまたは外れないように、十分に抵抗するような寸法公差に形成される。
【0046】
骨固定装置を挿入し設置する挿入工具200の実施形態が図10〜20に示されている。後述のように、図示の挿入工具200は、上述の骨固定装置や、2001年3月22日に出願され、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,632,224号に記載の骨固定装置など、ピン26とロックガイドワイヤ150とを用いた骨固定装置を設置できるように、特に構成されている。したがって、挿入工具については上述のロック装置を参照して説明する。しかし、挿入工具200のいくつかの特徴は、ピンおよび/またはロックガイドワイヤ150を用いない骨固定装置でも有用であることを理解されたい。
【0047】
図10を参照すると、図示の実施形態の挿入工具200は、一般的に、細長い管状の外側ボディ210と、一対のレバー230と、管状の外側ボディ210内に滑動可能に設けられかつレバー230に連結された中央部材250とを有している。後述のように、レバー230は、ロックガイドワイヤ150に係合するようにされている。工具200はさらに、外側ボディ210に連結され、骨固定装置のピン26と係合するようにされた遠位部220を有している。挿入工具200は、ロックガイドワイヤ150を把持し、ロックガイドワイヤ150を近位方向にピン26に対して相対移動させるようにされている。このように、ロックガイドワイヤ150の遠位部156は、ピン26のレバーアームの圧縮に抵抗して、近位方向にルーメン11の第1の部分160(図9参照)内に引込まれることができる。
【0048】
図10および11を参照すると、外側ボディ210は、近位端212と遠位端214とを有する概ね管状のボディである。図示の実施形態では、外側ボディ210は、レバー230の一部が外側ボディ210から延びるようにされ、径方向に互いに離れた、細長い一対の開口部または長穴216を有している。長穴216は、互いに概ね平行でもよく、遠位端214と外側ボディ210の上部ボディ253との間にある開口部または窓218から延びていてもよい。図示の実施形態では、レバー230は、長穴216に沿って軸方向に滑ることができ、レバー230の少なくとも一部は、工具200の長手方向軸から離れる方向および/または長手方向軸に近づく方向に動くことができる。図示されていないが、長穴216および細長いボディ210は、所望の用途および設置環境に応じて様々な形状および構成をとることができる。図示の実施形態では、外側ボディ210は、窓218および長穴216を形成するために一部が除去された管状のボディで形成されている。他の実施形態では、外側ボディ210は他の断面形状(たとえば、矩形、楕円形など)をとることができる。
【0049】
装置200の断面図である図11を参照すると、外側ボディ210は、中央ボディ250と、偏位部材260(たとえば、ばね)と、ラチェット組立体243と、レバー230の一部とが設けられるチャンバを形成する内表面211を有している。
【0050】
レバー230は、指当接部232と、細長い部分すなわちアーム233と、ワイヤ把持部234とを有していることが好ましい。レバー230は、人がレバー230を快適に把持し、レバー230に力をかけることができるようにされている。図示の実施形態では、レバー230は概ね「L」字形または「J」字形を有している。しかし、レバー230は、レバー230を動かしたときにレバー230の一部が骨固定装置(たとえば、ロックガイドワイヤ150)と係合できる、任意の形状または構成を有することができる。
【0051】
指当接部232は、レバー230の近位端に位置し、アーム233から外側ボディ210(図10参照)の外まで延びる、概ね湾曲した細長い部材である。指当接部232の幅は、端部235に向かって小さくすることができる。指当接部232は、ユーザの所望の数だけの指に快適に当接するようにすることができる。たとえば、一実施態様では、指当接部232は、人が1本の指を用いて工具200の一方の側の上部指当接部232に力をかけ、別の指を用いて工具200の他方の側の下部指当接部232に力をかけることができ、ボディ210が上の指と下の指との間を延びるようにされている。指当接部232は、ユーザの複数の指と当接するようにできることを理解されたい。
【0052】
指当接部232の端部235は遠位方向に湾曲しているため、ユーザの指がレバー230から滑って外れることが防止できるという他の利点もある。したがって、ユーザがレバー230を引くと、指当接部232は、ユーザの指が外側へ(すなわち、工具200の長手方向軸から離れる方向へ)動くことを抑えることができる。しかし、当業者には、指当接部232が、たとえば、レバー230にかけられる力、ユーザの指や手の大きさ、工具200の用途などに応じて、他の形状および大きさを備えていてもよいことが認識されよう。
【0053】
引き続き図11を参照すると、レバー230のアーム233は、指当接部232からレバー230の遠位端付近の把持部234まで延びている。アーム233の本体部分は概ね矩形断面形状とすることができる。ワイヤ把持部234は、中央ボディ250に対してピボット運動可能である。したがって、図示の実施形態では、ワイヤ把持部234は、ピボットピン236を受入れる穴237を含んでいる。ワイヤ把持部234は、舌または熊手の形とすることができる。しかし、ワイヤ把持部234は、レバー230が一定の位置に動かされたときに、ロックワイヤ150の一部に接触し、その一部を保持することのできる任意の形状が可能である。図16に示されているように、ワイヤ把持部234は、ワイヤ把持部234の近位部234a間の距離がワイヤ把持部234の遠位部234b間の距離より短くなるようにされている。したがって、近位方向への力239(図11に示されている矢印)によって、近位部235aはガイドワイヤを挟みガイドワイヤの移動を抑える。他の実施形態では、レバー230がガイドワイヤを把持したときに、近位部234a間の距離と遠位部234b間の距離とは概ね等しくなる。ワイヤ係合部234はまた、把持力を高める特徴を含んでいてもよい。たとえば、一実施態様では、ワイヤ係合部234は、ガイドワイヤがワイヤ係合部234によってしっかりと保持されるように、固定装置のガイドワイヤに係合する溝を有している。しかし、ワイヤ係合部234は、ワイヤ係合部234と固定装置の一部との間の所望の相互作用を実現する他の表面処理を施されていてもよい。たとえば、ワイヤ係合部234は、ワイヤ係合部234と骨固定装置との間に十分な摩擦力を生じさせるように、突起、スパイク、またはテクスチャ加工された表面を備えていてもよい。
【0054】
引き続き図11を参照すると、穴237がレバー230の遠位端に設けられている。一実施態様では、穴237の中心は、ワイヤ把持部234の少なくとも一部より遠位方向に設けられていることが好ましい。この構成は、ユーザが十分な力をかけたときにレバー230がガイドワイヤ150をしっかりと把持するという機械的利点をもたらす。それ故に、穴237の中心の指グリップ235に対する位置は、所望のてこの作用を実現するように変えることができる。
【0055】
上述のように、レバー230は、ピン236によって形成されるピボット軸の周りを矢印Pの方向に沿って回転し、ロックワイヤ150に係合するように中央ボディ250に取り付けられている。図示の実施形態では、たとえば外側ボディに遠位方向への力241をかけて外側ボディ210を静止状態に保持しながら、矢印239で示されている近位方向への力をレバー230にかけて、レバーをピボットピン236の周りで矢印Pの方向へピボット運動させ、それによってレバー230の近位端を工具200の中心軸の方へ動かすことができる。したがって、上部レバー230はその関連するピン236の周りを時計回りに回転することができ、下部レバー230は、その関連するピン236の周りを反時計回りに回転することができる。レバー230のワイヤ係合部234は、レバー230がピボット運動するにつれて、ワイヤ係合部234が互いに近づく方へ動き、したがって、その間にあるワイヤまたはピンを把持することができるようにされている。
【0056】
図示の実施形態の他の利点は、指当接部232に比較的弱い概ね近位方向への力をかけることによって、(図14に示されているように)ワイヤ把持部234同士の間に挟まれたロックワイヤ150をしっかりと把持できる、という機械的利点をもたらすように、レバー230のレバーアーム233の有効長が選択されることである。当業者には、ユーザの特定のニーズに対してレバーの様々な寸法を最適化するにはどうしたらよいかが理解されよう。あるいは、工具は、軸方向、斜め方向、回転方向、および/または他の方向を向く力に応答して、骨固定装置のガイドワイヤを把持するようにしてもよい。このような実施形態では、当業者には本開示に照らして明らかであろうが、別のレバー、ケーブル、プーリ、または他の構造を組み込むことができる。
【0057】
ロックワイヤを外すには、ワイヤ把持部234がガイドワイヤ150を外すようにレバー230を遠位方向(すなわち、図11の矢印239の方向とは逆の方向)に動かせばよい。図11に示されているように、図示の実施形態では、レバー230を、近位端の方に設けられた偏位部材231(たとえば、コイルばね)によって外側に偏位させることができる。この構成では、偏位部材231は、中央ボディ150に形成された開口部または穴277を通って延びることができる。
【0058】
好ましい実施形態では、ワイヤ140を把持するためにワイヤ把持部234を備えた一対のレバーアームを用いているが、他の図示していない実施形態では、ワイヤを把持する他の構成および装置を用いてもよいことを理解されたい。
【0059】
引き続き図11を参照すると、図示の実施形態では、工具200はその近位端にストップ258を有している。ストップ258は、ストップ258の遠位部が外側ボディ210内に配置され、ストップ258の遠位部が外側ボディ210から延びるように外側ボディ210の近位端212に連結されている。ストップ258の遠位部は、コイルばねの形にすることのできる近位偏位部材260に係合させることができる。
【0060】
近位偏位部材260は、中央ボディ250を遠位方向に偏位させるために、ストップ258と中央ボディ250の近位端249との間に設けられていることが好ましい。近位端249は、シートすなわち係合面256と円筒形のボディ263とを有している。図示の実施形態では、近位偏位部材260の近位端はストップ258の遠位端と係合し、近位偏位部材260の遠位端は近位端249の係合面256と係合している。ばね260の遠位部は、近位端249の円筒形のボディ263を取り囲んでいる。円筒形のボディ263は、有利なことに、工具200の動作時に偏位部材260を適切な位置に維持する。偏位部材260の遠位部は、外側ボディ210の内面211と円筒形のボディ263との間に設置されているのが好ましい。
【0061】
図11、11A、14、および15を参照すると、中央ボディ250は、偏位端部249(上述)と、ラチェット部252と、壁251と、上部ボディ253と、下部ボディ255とを有していることが好ましい。偏位端部249は、中央ボディ250の近位端に設けられ、上部ボディ253および下部ボディ255は、他方の端部に設けられている。ラチェット部252は、ばね端部249とボディ253、255との間にある。壁251は、上部ボディ253の一部と下部ボディ255の一部との間にある。中央ボディ250は、外側ボディ210内に滑動可能に設けられていることが好ましく、中央ボディ250は、外側ボディ210と同心で、かつ外側ボディ210内を軸方向に移動可能であることがより好ましい。
【0062】
後述のように、ラチェット部252は、中央ボディの遠位方向への外側ボディ210に対する相対移動に抵抗しつつ、中央ボディ250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を許容する。図示の実施形態では、ラチェット部252は、偏位端部249に連結されるかまたは偏位端部249と一体に形成され、かつ、中央ボディ250の一部が解放ボタン240を通り過ぎて移動するのを可能にするようにされた、複数の脚部257(たとえば、図11および12参照)を有している。一実施態様では、上部脚部および下部脚部257の一方は解放ボタン240の一方の側に設けられ、上部脚部および下部脚部257の他方は解放ボタン240の他方の側に設けられている。複数の脚部257は一対の長穴259を形成している。たとえば、図11Aに図示された実施形態では、一対の上部脚部257が上部長穴259aを形成し、一対の下部脚部257が下部長穴259bを形成している。長穴259a、259bは、ラチェット部252が解放ボタン240に対して相対移動できるように、解放ボタン240が長穴259a、259b内に収まるような大きさにされている。
【0063】
図11および12を参照すると、ラチェット部252は、中央ボディ250の外側ボディ210に対する相対移動を制限する様々な保持構造261のいずれかを有している。図示の実施形態では、ラチェット部252は、外側ボディ210に対して軸方向に固定された対応するラチェット板254と係合するようにされた、複数の山または歯の形をした構造261を有している。一実施態様では、ラチェット部252の下部脚部257は、上面を形成する歯261を有している。ラチェット板254は、下部脚部257の歯261と係合する、歯などの対応構造を有していることが好ましい。しかし、構造261は、中央ボディ250の移動を制御するようにラチェット板254と協働する、溝、ねじ山、または他の適切な構造とすることもできる。
【0064】
ラチェット板254は、ラチェット部252の下部脚部257の方へ偏位するようにされている。このようにして、ラチェット板254は、中央ボディ250が一方向にのみ移動できるようにすることができる。図示の実施形態では、中央ボディ250は、軸方向近位方向に移動可能であり、外側ボディ210に対して遠位方向には制限されている。
【0065】
ラチェット板254は、当業者によって認識される様々な装置および方法を用いて偏位させることができる。たとえば、図示の実施形態では、偏位ピン262(たとえば、図12参照)がラチェット板254を下部脚部257の方へ偏位させている。偏位ピン262は、外側ボディ210の互いに向かい合う壁に当たり、その横方向軸の周りの回転に抵抗するような寸法を有し、かつそのように配置することができる。偏位ピン262は、ラチェット板254の穴(図11参照)の中に配置され、ラチェット板254も偏位ピン262の横方向軸の周りの回転に抵抗する。したがって、偏位ピン262は、ラチェット板254の下面を下部脚部257の上面に係合させることができる。他の実施形態では、ラチェット板254を偏位させる他の適切な装置および構造を用いることができる。たとえば、ラチェット板254が中央ボディ250に所望の移動範囲を与えるように、ばねを、偏位ピン262と組み合わせて用いることができる。
【0066】
解放ボタン240(図11および12参照)は、ラチェット板254が中央ボディ250を解放するのを可能にするために設けられることが好ましい。中央ボディ250が解放されると、偏位部材260の偏位によって中央ボディ250をその元の遠位位置に戻すことができる。図示の実施形態では、解放ボタン240は、外側ボディ210の互いに向かい合う壁から延び、ラチェット板254に連結された概ね円筒形の部材である。外側ボディ210は、直径方向に離れて配置された、解放ボタン240を受入れる穴または開口部を有していることが好ましい。したがって、解放ボタン240は外側ボディ210に対して軸方向に移動できず、そのため、ラチェット板254も外側ボディ210に対して軸方向に移動できない。
【0067】
図12に図示された実施形態では、解放ボタン240は、ラチェット板254が脚部257と係合し、中央ボディ250の遠位方向への移動が抑えられる第1の位置にある。解放ボタン240が第1の位置にあるときは、解放ボタン240の下部が外側ボディ210から延びている。解放ボタン240は、解放ボタン240の上部が外側ボディ210から延びるように、垂直方向に、第2の位置(図示せず)に動かされることができる。ユーザは、解放ボタン240に垂直方向の力をかけることによって、解放ボタン240を第2の位置に動かすことができる。解放ボタン240が第2の位置にあると、解放ボタン240に連結されたラチェット板254は下部脚部257から離れ、ラチェット板254の歯が下部脚部257の歯261から外れる。中央ボディ250は、解放ボタン240が第2の位置にあるときには、遠位方向と近位方向のどちらにも滑動することができる。図示されていないが、当業者には、解放ボタン240の他の適切な構成および位置が認識されよう。
【0068】
偏位ピン262および解放ボタン240は、プレス嵌め、溶接、接着剤、ねじ、その他の機械的な止め具、または当業者によって認識される他の任意の方法によって、ラチェット板254に連結することができる。図示の構成では、解放ボタン240および偏位ピン262は、好ましくは、ラチェット板254のそれぞれの穴内にぴったりとプレス嵌めされる大きさを有している。あるいは、解放ボタン240および/または偏位ピン262は、解放ボタン240および偏位ピン262がラチェット板254に対して実質的に固定されるように、ラチェット板254上の対応する構造と相互作用するようにされた環状の山および溝を有していてもよい。
【0069】
上述のように、ラチェット部252は、中央ボディの遠位方向への外側ボディ210に対する相対移動に抵抗しつつ、中央ボディ250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を許容する。一方、解放ボタン240でラチェット部252を外すと、中央ボディ250は遠位方向へ動くことができる。上述の構造は一つの好ましい実施形態を表しているが、中央ボディの遠位方向への外側ボディ210に対する相対移動に抵抗しつつ、中央ボディ250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を許容するという選択的な動作を可能とする他の装置および構造を設けてもよいことを理解されたい。
【0070】
次に図11Aを参照すると、中央ボディ250の壁251、上部ボディ253、および下部ボディ255は、ラチェット部252の遠位端に連結するか、または遠位端と一体で形成することができる。壁251とボディ253、255は協働して、レバー230の少なくとも一部を受入れることのできる、窓275、および長穴または溝271を形成している。
【0071】
図示の実施形態では、壁251は、上部ボディ253および下部ボディ255に連結され、溝271の底部を形成している。壁251は、ラチェット部252の近くの位置から窓275の近位側まで延びている。壁251の近位部は、上述のように偏位部材231の少なくとも一部を受入れる開口部または穴277を有している。図示の実施形態では、開口部277は、概ね円形であり、図11に示されているように、偏位部材231の中央部を取り囲む大きさにされている。当業者には、開口部277を、レバー230の構成に応じて、様々な位置に設けることができることが認識されよう。
【0072】
図11を参照すると、図示の実施形態では、壁251は、概ね一様な幅を有し、一対のレバー230の一部の間に配置されている。しかし、壁251は、たとえば開口部277の大きさやレバー230の所望の動きに応じて、他の適切な形状を有していてもよい。たとえば、図16に示されているように、壁251は、ガイドワイヤ150を受入れる、少なくとも部分的に軸方向に延びる開口部または穴281を有していてもよい。ガイドワイヤ150の近位端を挿入し、穴281に沿って前進させることができる。
【0073】
再び図11Aを参照すると、図示の実施形態では、上部ボディ253は、壁251の上部に連結され、溝271の上側を形成している。上部ボディ253は、その長さに沿って概ね半円形の断面を有している。上部ボディ253の上面は、外側ボディ210の内面211に合致するように湾曲している(たとえば、図12参照)。中央ボディ250の上面は、中央ボディ250が外側ボディ210内を容易に滑動することができるように、外側ボディ210の内面211に滑動可能に係合することができる。下部ボディ255は、壁251の下部に連結され、溝271の下側を形成している。下部ボディ255はまた、その長さに沿って概ね半円形の断面を有している。下部ボディ255の下面は、外側ボディ210の内面211に合致するように湾曲している。下部ボディ255の下面は、中央ボディ250が外側ボディ210内を容易に滑動することができるように、外側ボディ210の内面211に滑動可能に係合することができる。図示されていないが、他の実施形態では、下部および上部ボディ253,255は、溝271および/または外側ボディ210の、所望の大きさおよび構成に応じて、他の適切な形状を有していてもよい。
【0074】
遠位壁273(図11A参照)が、上部ボディ253から下部ボディ255へと延びている。遠位壁273は、図16に示されているように、ロックワイヤ150を受入れる開口部または穴279を有している。穴279は、ガイドワイヤの横方向への実質的な動きを防止することができ、ガイドワイヤを所望の位置に配置することができる。穴279によって、ガイドワイヤ150を2本のピボットピン236から等距離の位置に配置することができる。したがって、ユーザがレバー230に近位方向への力をかけると、各ワイヤ係合部234は、ほぼ同時にガイドワイヤ150に接触し、ガイドワイヤ150の所望の位置を維持することができる。たとえば、ガイドワイヤ150は、工具200の使用時にほぼ真っ直ぐな状態に維持されることができ、したがって、ガイドワイヤ150の湾曲が防止される。
【0075】
図11および11Aを参照すると、溝271は、レバー230および偏位部材231の少なくとも一部を受入れる。溝271のこのような構成により、レバー230が対応するそれぞれのピボットピン236の周りを適切に動くことが容易となる。また、溝271の各壁または各辺は、レバー230の垂直方向への動きを制限することが好ましい。
【0076】
図11、11A、および12を参照すると、窓275が壁251と遠位壁273との間に形成されている。窓275は、各レバーのワイヤ係合部234の少なくとも一部を受入れるようにされている。図14に示されているように、ガイドワイヤ150は窓275を通過することができる。
【0077】
図11および12に示されているように、工具200の遠位部220は、骨固定装置の近位ピン26を受入れ、少なくとも一時的に保持するようにされていることが好ましい。特に図16および17を参照すると、遠位部は、外側ボディ210の遠位端214に取り付けられた遠位キャップ270を有している。遠位キャップ270は、ハウジング283と、座金272と、座金位置決めねじ274と、ピン把持レバーアーム280とを有している。遠位キャップ270はまた、骨固定装置の一部を受入れるワイヤ受入れルーメン278を形成している。たとえば、図示の実施形態では、ワイヤ受入れルーメン278はガイドワイヤ150を受入れることができる。
【0078】
ハウジング283は、骨固定装置の一部(たとえば、ピン26)を受入れる先端部302を有している。先端部302は、開口部304と、ピン受入れルーメン276の少なくとも一部を形成するボディ306とを有している。図16および17に示されているように、開口部304は、ピン26の近位端28が開口部304を通り抜け、ピン受入れルーメン276に沿って通過できる大きさにされている。先端部302の近位部は、ピン把持アーム280を受入れるようになっていることが好ましい。図示の実施形態では、ピン把持アーム280の外面は、先端部302の外面と概ね同一平面を形成している。
【0079】
ハウジング283は、外側ボディ210の遠位端214に連結されることができ、中央ボディ250の遠位壁273から、ピン把持アーム280を越えて延びることができる。図示の実施形態では、ハウジング283の近位部は外側ボディ210の遠位開口部内に配置されている。ハウジング283は、座金272と、座金位置決めねじ274と、ワイヤ150の一部とを取り囲む円筒形のチャンバを形成している。
【0080】
図16を参照すると、座金272は、有利なことに、流体の工具200内への流入を抑える。図示の実施形態では、座金272は、座金を通って挿入されるガイドワイヤ150と共にシールを形成し、これによって、流体(たとえば、血液)がワイヤ150と座金272との間に入り、挿入工具200の把持機構内に入ることが防止される。座金272はまた、ガイドワイヤを所定の位置に保持するように、座金272とガイドワイヤ150との間に摩擦嵌めまたは弾性嵌めを形成することができる。座金272は、座金272とハウジング283の内面との間にシール310を形成することもできる。シール308、310は、好ましいことに、流体が座金272の近位側を通過することを防止する。座金272は、通常、ゴム、ラテックス、その他柔軟性のある材料などの可撓性の材料で作られる。座金272は、適切なシール特性を備えた他の種類の材料で構成することもできる。通常の当業者は、工具200の機構内への流体の流入を防止する所望のシールを実現する、材料の種類と厚さと形状の適切な組合せを決定することができよう。
【0081】
図示の実施形態では、座金位置決めねじ274は、座金272をハウジング283内に保持し設置する。この構成の座金位置決めねじ274は、ハウジング283の内面の近位部と係合する近位部を備えた、概ね円筒形のボディを有している。座金位置決めねじ274の遠位端は、座金272を受入れる円形のくぼみを有している。ワイヤ受入れルーメン278の一部は、ガイドワイヤ150が座金位置決めねじ274を通過できるように、座金位置決めねじ274によって形成されている。一実施形態では、座金位置決めねじ274はその近位端の一部にねじ山を有し、ハウジングは対応するねじ山を有している。したがって、座金位置決めねじ274とハウジング283とをねじによって連結することができる。座金272とハウジング283との間の所望のシール310は、ねじ274とハウジング283とを軸方向に相対移動させるように、ねじ274をハウジング283に対して回転させることで得ることができる。たとえば、流体がシール310を通って流入する場合、ねじ274が遠位方向に移動し、それによって座金272がハウジング283に押し付けられるように、ねじ274をハウジング283に対して回転させることができる。このようにして、所望のシール310が得られるまで、座金272をねじ274とハウジング283との間で圧縮することができる。他の実施形態では、ねじ274は、ねじ山が設けられず、ハウジング283内にほぼぴったりと嵌まる大きさにされている。図示されていないが、座金272によって適切なシールが形成されるように、他の種類の部材を遠位キャップ270内にぴったりと嵌め込めることも好ましい。
【0082】
ねじ274は、ゴム、プラスチック、金属、柔軟性のある材料などの材料で作ることができる。ねじ274は、適切なシール特性を有する他の種類の材料で構成することもできる。通常の当業者は、工具200の機構内への流体の流入を防止する所望のシールを実現する、材料の種類と厚さと形状の適切な組合せを決定することができよう。
【0083】
引き続き図16を参照すると、ピン把持アーム280は、ピン受入れルーメン276内に骨固定装置(たとえば、ピン26)を好ましくは取外し可能に保持するようにされた、様々な構造を備えることができる。図示の実施形態では、ピン把持アーム280は、ピンと係合する山すなわち中子314を持つレバーアーム313を有している。中子314の端部は、ピン26を保持する構成および大きさにすることができる。図17に示す実施形態では、骨固定装置のピンは、骨固定ピンが好ましくは挿入工具200によって相当しっかりと保持されるようにピン把持アーム280の中子314の端部を受入れる大きさを有し、かつ中子314の端部を受入れるように設けられた、環状の山または溝316を備えることができる。したがって、ピン把持アーム280は、ピン26の、工具200に対する、軸方向への実質的な移動を抑制する。中子314は、ピン把持アーム280を外してピン26を工具200から取り外すために、外側に動かすことができる。ピン把持アーム280の中子314およびピン26の溝316は、ピン26の所望の固定を実現するのに適した様々な形状および大きさを備えることができる。たとえば、溝316は概ねU字形の外面を備え、中子314の端部は同様の形状を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、溝316は概ねV字形状を備え、中子314の端部は同様の形状を有していてもよい。
【0084】
引き続き図16を参照すると、ピン受入れルーメン276は通常、ピンの十分な長さをルーメン276に挿入することを可能にするピンストップ282を含んでいる。ピン受入れルーメン276の遠位端は開口部304を形成している。中子314は、ピン受入れルーメン276の近位端と遠位端との中間に配置されている。図示の実施形態では、ピン受入れルーメン276の直径はその遠位端で小さくなっている。すなわち、先端部302が遠位端に環状の山318を備え、その遠位端において山318の内面が開口部304を形成するようにすることができる。
【0085】
次に、使用方法の一つの実施形態による、骨固定装置25および挿入工具200の操作について、図18〜20を参照して説明する。臨床医が骨に到達した後、骨ドリルが選択され、臨床医は2つの骨片を貫通する穴290(または図1の22)を穿孔する。骨固定装置25は、パッケージから直接挿入工具200に挿入してもよく、それによって固定装置25の無菌状態が維持され、好ましい。図示の実施形態において、図16および17を参照すると、骨固定装置25が、ガイドワイヤ150の近位端を開口部304に挿入することによって挿入工具に挿入され、ガイドワイヤ150の所望の部分がレバー230のワイヤ把持部234の間にくるまで、ワイヤ受入れルーメン278に沿って進められる。次に、ピン26の近位端28が開口部304に挿入され、ピンストップ282に接触するかまたはその近くにくるまで、ピン受入れルーメン276に沿って進められる。修正された実施形態では、ガイドワイヤ150およびピン26を事前に挿入工具200内に設置し、殺菌されたパッケージ内に包装してもよい。
【0086】
装置25を保持する挿入工具を用いて、ガイドワイヤ150の遠位端156とピン26の遠位端30は、バーブ50が経路290から出るまで、経路290内を進められる。非貫通の穴(図示せず)に適用する場合は、ピン26は、バーブが臨床医によって決定された十分な距離だけ骨内を前進するまで進められる。他の実施形態では、異なる工具または臨床医の手を用いて固定装置25を経路290内に挿入してもよい。
【0087】
臨床医は、ガイドワイヤ150が挿入工具200内に収められた状態で、外側ボディ210を相対的に静止状態に保持しながら、挿入工具の指当接部232に近位方向への力をかけることができる。好ましいことに、偏位部材260が中央ボディ250の偏位端部249に遠位方向への十分な力をかけているので、中央ボディ250が工具200の外側ボディ210に対して概ね静止状態を保ちつつ、レバー230がピボットピン236の周りを回転し、ガイドワイヤ150をしっかりと把持することができる。レバー230がガイドワイヤ150を把持すると、ユーザは、ばね260の偏位に打ち勝つに十分な近位方向への力をかけ、ガイドワイヤ150を把持しているレバー230を動かし、それによって、中央ボディ250を近位方向に工具200の外側ボディ210に対して相対移動させることができる。図示の実施形態では、中央ボディ250の偏位端部249が偏位ストップ258の遠位端に接触するまで、レバー230と中央ボディ250とを近位方向へ動かすことができる。あるいは、ばね260の偏位が臨床医によってかけられる近位方向への力に打ち勝ったときに、レバー230および偏位端部250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を停止することができる。
【0088】
レバー230および中央ボディ250が外側ボディ210内を外側ボディ210に沿って滑動すると、レバー230はガイドワイヤ150を把持して引っ張り、一方、先端部302はピン26を外側ボディ210に対して静止状態に保持する。したがって、指当接部232に近位方向への力をかけると、好ましいことに、ガイドワイヤ150がピン26に対して引き込まれる。ガイドワイヤ150は、遠位部156が少なくとも部分的にピン26の第1の部分160(図9参照)に入るまで引き込まれることが好ましい。このため、ガイドワイヤ150の遠位部156の少なくとも一部はピン26の第1の部分160内でロックされる。これによって、バーブ50とレバーアーム24が半径方向内側に圧縮されることが防止され、バーブ50は骨の遠位要素21にぴったりと当接したままになる。好ましいことに、バーブ50の外面は経路290の内面に接触し、経路290に沿ったピン26の移動を抑える摩擦力をかける。上述のように、いくつかの実施形態では、遠位部156は、レバーアーム24を、その弛緩した自然状態での直径を越えた状態に広げることができる。
【0089】
挿入工具200は、中央ボディ250が移動できる最大距離(したがって、ワイヤを引っ張れる最大距離)が、ガイドワイヤ150の遠位部156をピン26の第1の部分160内に適切に設置するのに必要な最大距離と対応するように構成することができる。あるいは、ガイドワイヤ150の引込み量を示す別の構造を設けてもよい。たとえば、臨床医がガイドワイヤの把持および引込み距離を視覚的に確認できる視認窓を設けてもよい。
【0090】
ガイドワイヤ150の遠位部156がピンの第1の部分内に収められると、近位アンカー36を、回転させるかまたは他の方法で、遠位方向にピンのボディ26に対して前進させ(たとえば、ピンを近位方向に引き込むことによって)、近位アンカー36を骨10の近位要素19にぴったりと当接させることができる。固定装置を近位方向に引き込むかまたは遠位方向に前進させるには他の工具が必要である。たとえば、2004年3月1日に出願され、引用によって本出願の明細書の一部として組み込まれる同時係属出願「二次圧縮を伴う遠位骨アンカーの取付け用具」(アトーニー・ドケットNo.TRIAGE.019A)に記載された設置装置や、同様の装置を、近位アンカー36を遠位方向に前進させ、および/またはピンのボディ26を近位方向に近位アンカー36に対して引き込むために用いることができる。あるいは、近位方向への引込みまたは遠位方向への前進をおこなうため、このような工具の特徴を、本明細書に記載された挿入工具と組み合わせてもよい。近位アンカー36は、ピンのボディ32を穴22または経路290内に設ける前、あるいはピンのボディ32を経路290または22内に配置した後に、骨固定装置25上に設けることができることを理解されたい。
【0091】
近位アンカー36に適切な張力をかけた後、ピンのボディ32の近位端28とガイドワイヤ150の近位端154とを切断するか、または他の方法で取り外すことが好ましい。これらの部材は、臨床環境で日常的に利用されている従来の骨かん子を用いて切断してもよく、前述の定められた切断点を用いて折ってもよい。
【0092】
工具200は、固定装置を迅速にかつ便利よく供給し設置することができるように、骨固定装置に取外し可能に連結されるようになっていることが好ましい。工具200はまた、複数の骨固定装置を供給するために、同様の方法で再使用することもできる。したがって、外科手術中に、一つの工具200で複数の骨固定装置を供給することができる。実際には、上述した様々な実施形態は、キットとして提供されてもよい。キットは、工具200と、少なくとも1つの骨固定装置とを備えていることが好ましい。一実施形態では、キットは、工具200を用いて迅速に供給される複数の骨固定装置を備えている。複数の骨固定装置は、ピン26と、ガイドワイヤ150と、本明細書に記載された他の部材とを備えていてもよい。
【0093】
本明細書に記載され図示された方法は、上述した行為の順番に厳密に一致する場合に限られず、また、必ずしも上述の行為をすべておこなう場合にも限定されない。本発明の実施形態を実施するうえでは、事象または行為が別の順番で生じ、あるいは全事象の一部だけが生じ、またはいくつかの事象が同時に生じる方法も用いることができる。
【0094】
本明細書ではいくつかの好ましい実施形態および実施例について説明したが、当業者には、本発明の保護対象は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替実施形態、および/または、本発明、その自明の修正、およびそれらの均等物の使用にまで拡張されることが理解されよう。したがって、本明細書に開示された本発明の保護対象の範囲は、開示された上述の特定の実施形態によって限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】骨折した骨内に設けられた骨固定装置の概略断面図である。
【図2】本発明によるピンのボディの他の実施形態の側面図である。
【図3】図2のピンのボディの遠位端面図である。
【図4】図2のピンのボディの長手方向断面図である。
【図5】図4に示されている装置の遠位端の拡大詳細図である。
【図6】図2のピンのボディと共に使用される近位アンカーの断面図である。
【図7】図6の近位アンカーの近位端面図である。
【図8】図2のピンのボディと共に使用できるガイドワイヤの側面図である。
【図9】図8のガイドワイヤおよび図2のピンのボディの長手方向断面図である。
【図10】所望の特徴および利点を有する、骨固定装置の挿入工具の斜視図である。
【図11】図10の挿入工具の線11−11に沿った断面図である。
【図11A】図10の挿入工具の中央部の側方斜視図である。
【図12】図10の挿入工具の線12−12に沿った断面図である。
【図13】工具上に配置された骨固定装置を含む図10の挿入工具の側面図である。
【図14】第1の位置にある骨固定装置と共に示されている、図10の挿入工具の線14−14に沿った断面図である。
【図15】第2の位置にある骨固定装置と共に示されている、図10の挿入工具の線15−15に沿った断面図である。
【図16】図14の挿入工具の線16−16に沿った部分詳細断面図である。
【図17】図15の挿入工具の線17−17に沿った部分詳細断面図である。
【図18】骨固定装置が骨折した骨を横切って挿入された状態の、骨固定装置および挿入工具の概略断面図である。
【図19】骨固定装置が骨折した骨を横切って固定された状態の、骨固定装置および挿入工具の概略断面図である。
【図20】骨折した骨の第1および第2の骨折片を固定するのに用いられる骨固定装置の概略断面図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年10月14日に発行された米国特許第6,632,224号の継続出願である、2003年5月16日に出願された米国特許出願第10/440,016号の一部継続出願であり、2003年2月28日に出願された米国特許仮出願第60/451,320号、および2003年4月21日に出願された米国特許仮出願第60/464,399号の合衆国法典35巻第119条(e)に基づく優先権の利益を主張する。これらの仮出願は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
背景
発明の分野
本発明は、一般的には骨固定装置の分野に関し、特に骨固定装置用の挿入工具に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
事故によって、または外科手術によって切断された、骨折した骨は、切断された各部を再石灰化させ結合させるために、長期間にわたってつないでおかなければならない。したがって、切断され、または骨折した骨の互いに隣接する部分は、通常、再接合された部分に打ち込まれるピンまたはねじによって、互いに固定され、または付着させらせる。そして、治癒を促進し、身体の活動時に各骨片を分離させる可能性のある機械的応力を無くすため、ギプス、ブレース、添え木、または他の従来の技術を用いるなどして、体の関連する部分の動きを最小限に抑えることができる。
【0003】
ピン状の装置によって2つ以上の骨片を付着させる外科処理では、骨を囲む組織を切開し、連結すべき各骨片を貫く穴をあける必要がある。骨の大きさ、構成、および荷重要求が著しく異なるため、従来技術では様々な骨固定装置が開発されてきた。一般に、現在の治療水準は、治癒の過程で骨折片を安定化させるための様々な金属ワイヤ、ねじ、およびクランプに依存している。骨の十分な治癒期間の後には、骨固定装置を取り除けるように、経皮的に接近可能な部位または他の部位を再び開く必要がある。
【0004】
ヒトの骨格では、長い骨の骨折が最も一般的である。このような骨折部の多くと、小さい骨の骨折部および小さな骨折片は、良好な解剖学的位置、早期の可動化、および負傷した患者の早期かつ完全なリハビリテーションを実現するために、内部および外部固定装置によって治療しなければならない。
【0005】
現在一般に使用されている内部固定技術は、多くの場合、キルシュナー(Kirschner)ワイヤ(K−ワイヤ)、髄内ピン、ワイヤリング、プレート、ねじ、およびこれらの組合せの使用に依存している。最も簡単な手術手順で、かつ外部から移植される安定材の使用量を最小限に抑えて、傷ついた骨の最良の解剖学的および機能的状態を実現するように、特定の装置または装置の組合せが選択される。当技術分野では、たとえば、リーズ(Reese)の米国特許第4,688,561号、ローゼンバーグ(Rosenberg)の米国特許第4,790,304号、リーズ等の米国特許第5,370,646号などに記載された他の様々な骨固定装置も知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨折部をせん断力に対して安定化させるためにK−ワイヤが広く使用されているが、K−ワイヤによる固定は、いくつかの公知の危険を伴う。たとえば、完全に治癒した後で装置を取り外すために、2回目の外科的処置が必要になる。装置の取外しが推奨される理由は、そのようにしないと、インプラントに隣接する骨が、金属と骨との弾性率および密度の差の結果、応力を受けない状態(stress shielding)になりやすいからである。
【0007】
さらに、移植されたK−ワイヤは、ピン路(pin-tract)感染から、膿瘍、抵抗性骨髄炎、敗血性関節炎、および感染性(infected)癒着不能に至る、様々な合併症部位を生じさせる可能性がある。
【0008】
K−ワイヤの使用に伴う他の考えられる合併症は、生体内移動である。K−ワイヤの軸方向移動範囲は0mmから20mmであると報告されており、ピンの取外しをより困難にすると共に、隣接する組織に外傷を与える可能性がある。
【0009】
K−ワイヤは、従来の方法で手足の骨損傷に用いられる場合、皮膚を貫通する。経皮的に延びるK−ワイヤは、望ましくない外観を呈するだけでなく、K−ワイヤが外部の物体に接触したときに、切れたり、腱などの隣接構造に損傷を与えたりする恐れがある。
【0010】
従来技術において様々な骨留め具が開発されているが、それでもなお、取付け時にもその後の骨治癒時にも周囲の組織への外傷を最小限に抑えつつ、せん断力に対する安定化を図ることのできるタイプの骨留め具が依然として必要とされている。
【0011】
さらに、取付時に周囲の組織への外傷を最小限に抑えつつ骨固定装置を挿入し固定する、単純で使いやすい工具も依存として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
概要
したがって、一実施態様では、第1の骨片を第2の骨片に固定する方法は、横方向に移動可能な少なくとも1つの遠位アンカーと、ルーメンとを有するピンであって、ルーメンがピンを貫通して延びているピンを設けるステップを有している。遠位アンカーは、必要に応じて横方向内側に動ける状態で、第1の骨片を通って第2の骨片内に挿入される。取付け工具は、ルーメンを通って軸方向に延びるワイヤの近位部を把持する。取付け工具は、ワイヤを、ワイヤの遠位部が遠位アンカーの半径方向内側へのたわみ変形に抵抗するように、ルーメンを通して軸方向に動かし、それによって遠位アンカーを横方向内側に動けないようにする。
【0013】
他の実施態様では、骨固定装置を挿入する工具が提供される。工具は、各々が近位端と遠位端と長手方向軸とを有する、外側ボディと内側ボディとを含んでいる。工具はまた、外側ボディの遠位部に、骨固定装置の近位ピンを受入れるピン受入れ部を含んでいる。工具は、各々のピボット軸で内側部材にピボット運動可能に取り付けられ、各々が把持部を有する、第1および第2のレバーをさらに含んでいる。
【0014】
他の実施態様では、近位端と遠位端とを備えたボディを有する工具が提供される。工具は、少なくとも1つの指把持部と、ボディの遠位端に設けられたピン把持部とをさらに含んでいる。工具は、少なくとも1つの指把持部が近位方向に移動することによって、骨固定装置のガイドワイヤが把持され、近位方向に、骨固定装置のピンに対して相対移動させられるようにされている。
【0015】
骨固定装置を設置する工具の他の実施態様では、工具は、長手方向に延びる管状の外側ボディを有し、外側ボディは、近位端と、遠位端と、外側ボディに設けられた少なくとも1つの長手方向に延びる長穴とを有している。工具はまた、外側ボディ内に滑動可能かつ同心に配置された、長手方向に延びる内側ボディと、内側ボディの遠位部にピボット運動可能に取り付けられた少なくとも1つのレバーとを含んでいる。レバーは、好ましくは、指当接部とワイヤ把持部とを含み、好ましくは、長穴内を軸方向に移動可能にされている。レバーは、好ましくは、指当接部に外側ボディに対して近位方向への力をかけたときに、ピン係合部が閉じて近位方向に動くようにされている。
【0016】
他の実施態様では、骨固定装置と挿入工具とを含む骨固定システムが開示される。骨固定装置は、近位端と遠位端と長手方向軸とを持つ、第1の細長い管状のボディを有している。遠位アンカーが固定装置に設けられており、骨に設けられた穴内を遠位方向に挿入可能な低い形状から、穴を通る近位方向への移動に抵抗する傾斜した向きに動くことができる。細長いピンが、管状のボディ内を軸方向に移動可能であり、ピンが近位方向に管状のボディに対して引き込まれると、遠位アンカーが軸方向を向いた向きから傾斜した向きに進められるように、アンカーに関連付けされている。装置はまた、近位端と遠位端と長手方向軸とを有する第2の細長い管状のボディを含んでいる。少なくとも1つの保持構造が、第2の細長い管状のボディと細長いピンとの間に設けられている。保持構造は、細長いピンの近位方向への第2の細長い管状のボディに対する相対移動を許容するが、ピンの遠位方向への第2の細長い管状のボディに対する相対移動に抵抗する。第1の管状のボディを用いて遠位アンカーを設置することができ、次に第1の管状のボディが取り外され、第2の管状のボディに交換されてもよい。第2の管状のボディは、骨を圧縮するようにピンと協働する。システムはまた、近位端と遠位端と中心軸とを備えた細長いボディを有する挿入装置を含んでいる。挿入装置はまた、ボディに対してピボット運動可能かつ軸方向に移動可能にされた一対のレバーを含んでいる。レバーは、好ましくは、指当接部とピン係合部とを有している。挿入装置は、好ましくは、指当接部に力がかけられたときに、レバーが固定装置のピンと係合し、ピンを近位方向に引き込むようにされている。
【0017】
本発明、および従来技術に対して実現される利点について概略的に説明するために、本発明のいくつかの目的および利点について上述した。もちろん、本発明の特定の実施態様によっては、これらのすべての目的や利点が実現されるとは限らないことを理解されたい。したがって、たとえば、当業者には、本明細書で教示される一つの利点または一群の利点を、本明細書で教示または示唆される他の目的または利点を必ずしも実現せずに実現または最適化するように、本発明を具体化または実施できることが認識されよう。
【0018】
これらのすべての実施態様は、本明細書に開示される本発明の範囲内であることが意図されている。開示されるいずれかの特定の好ましい実施形態に制限されない本発明の、これらのおよびその他の実施態様は、添付の図を参照する好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から、当業者には容易に明らかになろう。
【0019】
本発明の一般的な特質について概略的に説明したが、本発明のいくつかの好ましい実施形態およびそれらの修正実施形態は、以下の図を参照する本明細書の詳細な説明から、当業者に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
詳細な説明
図1の簡略化された骨折部に関連して、様々な実施形態の適用例が開示されるが、本明細書に開示される方法および構造は、当業者には本明細書の開示に照らして明らかとなろうが、様々な骨および骨折のいずれにも適用されることが意図されている。本発明の骨固定装置は、たとえば、指節間および中手指節の関節固定術、指骨および中手骨の横骨折固定術、指骨および中手骨のらせん骨折固定術、指骨および中手骨の斜骨折固定術、指骨および中手骨の顆間骨折固定術、指骨および中手骨の骨切り固定術、さらには当技術分野で公知の他の骨切り術や固定術など、手の様々な骨折および骨切り術に適用可能である。本発明の骨固定装置を用いて、指骨および中足骨の様々な骨切り術や、足の様々な骨折部を安定させることができる。これには、特に、オースティンおよびレバルディン・レアド(Reverdin-Laird)によって発表されたような遠位骨幹端骨切り術、ベースウェッジ骨切り術、斜め骨幹骨切り術、デジタル関節固定術その他、当業者に公知の他の様々な骨切り術が含まれる。踵骨や距骨などの足根骨の骨折、骨切り術、および関節固定術に対処することもできる。カラーに取り付けられ、またはカラーの下方を自由に移動できるスパイク付き座金を使用することができる。骨固定装置は、すべてが永久的もしくは吸収可能であるかまたは永久的なものと吸収可能なものとが混在しているプレートまたは座金と共に、またはこれらを使わずに用いることができる。
【0021】
腓骨および脛骨果の骨折、パイロン(pilon)骨折、および脚の骨の他の骨折を固定し安定させることができる。固定装置はプレートを使用してもしなくてもよく、吸収可能なタイプでも吸収不能なタイプでもよく、開示された他の実施形態を用いてもよい。一例として、半径方向および軸方向に延びる圧縮装置による内果剥離骨折固定が挙げられる。上記の各々は、本発明に従い、本明細書に開示される固定装置の1つを、骨折部を固定するために、第1の骨要素内を通って、骨折部を横切り、第2の骨要素内まで前進させることによって処置することができる。
【0022】
開示される実施形態の説明を助けるため、上向き、上部、下向き、下部、垂直、水平、内側、外側、近位、遠位などの用語が、添付の図面を説明するために用いられる。本明細書で使用される用語「軸方向」は、ボディまたは構造の軸を指し、したがって、本明細書で使用される用語「長手方向」とほぼ同義である。しかし、図示の各実施形態は、様々な所望の位置に配置し、あるいは向けることができることが理解されよう。
【0023】
図1を参照すると、骨10が、外側皮質骨要素12および内側皮質骨要素14を示して、全体的に図示されている。骨折部16が骨を横切り、骨10を、本記載の目的上近位要素19および遠位要素21と考えられるものに少なくとも部分的に分割している様子が、概略的に示されている。骨折部は、開示される実施形態の適用を示すために簡略化されている。しかし、当業者には理解されるであろうが、骨折部16は、様々な角度、深さ、および大きさで、骨を横切って延びていてもよい。
【0024】
図2〜9を参照すると、現時点で好ましい特徴および利点を有する固定装置の実施形態が示されている。この実施形態は、チタンやチタン合金などの金属から構成されるように最適化されている。ただし、本明細書の他の箇所で開示される材料を含む他の材料を本実施形態に用いることもできる。図2および4を参照すると、固定装置は、近位端28と遠位端30との間を延びるピン26の形をしたボディ32を含んでいる。遠位端30は、遠位皮質骨もしくは他の面または内側海綿骨に係合する、斜面付き延長部やバーブ50などの、摩擦力が高められたまたは締り嵌めの複数の構造を含んでいる。
【0025】
図示の実施形態は、互いに90°の角度に向けられた4つのバーブ50を含んでいるが、当業者には本明細書の開示に照らせば明らかなように、1個から約12個またはそれ以上の任意の数のバーブ50を用いてもよい。バーブ50は、ピン26の長手方向軸の周りに半径方向に対称に分散配置することができる。各バーブ50は、皮質骨の遠位面、あるいはバーブ50が固定される他の構造または面に接触する横方向係合面21を備えている。横方向係合面21は、ピン26の長手方向軸を横切る面上にあってもよく、ピン26の長手方向軸に対して傾けられていてもよい。
【0026】
図示の実施形態の各横方向係合面21は、ピン26の長手方向軸を横切る共通の面上に設けられている。あるいは、接触面21を含む面を2つ以上設けてもよい。横方向係合面21はまた、ピン26の長手方向に対して垂直でない1つまたは2つ以上の面上にあってもよい。たとえば、複数の横方向係合面21を含む面が、ピン26の長手方向軸に対して約35°または45°から90°の範囲内の角度で傾いていてもよい。このように、横方向係合面の面は、ある臨床用途での要望に応じて、ピンが貫通して設けられる骨の遠位面の角度を考慮するために、選択可能である。
【0027】
移植過程中にバーブ50を半径方向内側に圧縮し、かつ、その後遠位骨面に係合させるためにバーブ50を半径方向外側に動かすことを容易にするために、図示の実施形態の各バーブ50は、可撓性のまたはヒンジ付きのレバーアーム23によって保持されている。レバーアーム23は、ピン26の側壁に複数の軸方向長穴15を作ることによって形成できる。軸方向長穴15は、中央ルーメン11と協働して、対応するレバーアーム23に設けられた各バーブ50を分離する。軸方向長穴15の軸方向長さは、たわみが分布する所望の長さや横方向の作動範囲など種々の所望の物理的物性と、所望の構成材料とに応じて変えることができる。チタンのような比較的剛性の材料の場合、外径約0.1インチ、長さ約1.25インチのピン26に対して、約0.1インチ、好ましくは約0.2インチを超える軸方向長穴15の軸方向長さが利用される。軸方向長穴15は、一般的に、ピン26の全長の約5%から約90%の範囲内で延びており、約10%から約30%の範囲内で延びていることが少なくない。
【0028】
図2、4、5、および9を引き続き参照すると、長穴15の遠位端30における周方向幅は、ピン26を横方向係合面21のすぐ近位側のピン26の外径に概ね等しい内径を有するあらかじめ穿孔された穴に押し込むため、バーブ50の寸法と協働して各バーブ50が半径方向内側にたわむことができるように選択される。このために、各長穴15の少なくとも一部の周方向幅は、図2に示されているように、遠位端30での比較的大きな寸法から軸方向長穴15の近位限界での比較的小さい寸法へと、徐々に狭くなっている。図示の実施形態では、各長穴15の幅は、応力がかからない方向において、近位端で約0.20インチ、遠位端で約0.035インチである。長穴15の幅は、その長さに沿って連続的に狭くなっていってもよく、あるいは図示の実施形態のように、近位部ではほぼ一定で、長穴15の遠位部で徐々に狭くなっていってもよい。中央ルーメン11の直径を遠位方向に向かって大きくするために、レバーアーム23の壁厚を徐々に小さくすることもできる。これによって、各レバーアームの内面が互いに底部に落ち切る前の圧縮断面形状を縮小することができるであろう。
【0029】
ピン26はさらに、近位アンカー36と係合する複数の保持構造44を備えている。ピン26と近位アンカー36とを相対的に回転運動させると、ピン26と近位アンカー36は軸方向に相対的移動することができる。
【0030】
保持構造44は、近位アンカー36と係合するようにされている。一実施形態では、保持構造44は、近位限界46と遠位限界48との間に、ピン26に沿って、軸方向に互いに間隔をおいて配置されている。近位限界46と遠位限界48との間の軸方向距離は、近位アンカー36の軸方向への所望の移動距離、つまりはピンの機能サイズの範囲に関連する。ピン26の一実施形態では、保持構造44は、近位アンカー36上の相補保持構造42と協働するようにされた複数のねじ山を有している。相補保持構造42は複数の相補的なねじ山とすることができる。この実施形態では、近位アンカー36をピン26に対して回転させることによって、近位アンカー36をピン26に沿って遠位方向に前進させることができる。近位アンカー36は、ピン26を患者から取り出せるように、逆回転させてピン26から取り外せるようにするのが有利である。このため、カラー38は、取外し工具がカラー38をピン26に対して回せるような把持構成または把持構造を備えていることが好ましい。1つまたは2つ以上の長穴、平坦部、ボアなどのような様々な把持面のいずれを設けてもよい。図示の実施形態では、カラー38は、多角形、特に、図7に示されているように六角形の外周を備えている。
【0031】
ピン26の近位端28は同様に、設置工具または取外し工具が回転しながら係合するための構造29を備えている。回転による係合は、当業者には明らかであろうが、種々の形状または構成のいずれを用いても行うことができる。一つの便利な構造は、近位端28に、対応する工具の相補的な構造に回転しながら係合する1つまたは2つ以上の平坦な側壁を備えることである。図3に示されているように、近位端28は、正方形断面を有する構造29を備えていてもよい。あるいは、近位端28を通る外側断面は、三角形、六角形、その他の多角形や、元々の丸いボディ上に形成された軸方向に延びる1つまたは2つ以上の平坦な側面または溝など、回転連結を可能にする様々な構成のうちのいずれであってもよい。
【0032】
上述の構造は、第1の部材(たとえば、スリーブ)が近位アンカー36(図6および7参照)と係合し、第2の部材(たとえば、コア)がピン26の近位回転係合構造29と係合する、スリーブ構成内に同心コアを有する設置工具および/または取付け工具の使用を可能とする。第1の部材を第2の部材に対して回転させ、それによって、近位アンカー36を、ピン26の保持構造44に係合するように、または保持構造44から外れるように回転させることができる。修正された構成では、近位アンカー36と係合するために第1の工具(たとえば、一対のプライヤまたはレンチ)を、ピン26の近位回転係合構造29と係合するために第2の工具(たとえば、一対のプライヤまたはレンチ)を用いてもよい。このような構成では、第1の工具を第2の工具に対して回転させ(逆も可)、それによって、近位アンカー36を、ピン26の保持構造44に係合するように、または保持構造44から外れるように回転させることができる。
【0033】
あるいは、近位アンカー36の保持構造42は、弾性変形などによってピン26上を遠位軸方向に進むことが許容されるが、近位アンカー36をピン26から取り外すためには、ピン26に対して回転させることが必要になるようにしてもよい。
【0034】
他の様々な保持構造のいずれも、好ましくは移植および骨治癒期間経過後に、近位アンカー36を取り外せるようにすることができる。たとえば、保持構造44は、軸方向に延びる複数の平坦部または中断部を有する複数のねじ山とすることができる。これらのねじ山は、近位アンカー36の保持構造42上の軸方向に延びる複数の平坦部と対応することができる。この構成は、近位アンカー36をピン26に対して部分的(たとえば、90°)に回転させ、それによって保持構造42、44の係合を解き、近位アンカー36をピン26から軸方向に引き出すことを可能とする。保持構造42および44の一方または両方は、らせんねじ山、あるいは周方向に延びる1つまたは2つ以上の山または溝を有していてもよい。一実施形態では、保持構造42、44は、ピン26と近位アンカー36との間の相対的な回転運動に基づく所望の軸方向移動を実現するピッチを有することができる。保持構造42、44のねじ山のピッチは、微細なものから疎なものまで可能である。たとえば、微細なピッチは、アンカー36をピン26に対して軸方向に比較的短い距離だけ動かすために近位アンカー36を数回回転させるのが望ましい場合に選択することができる。この構成では、近位アンカー36と遠位アンカー34との間に比較的強い圧縮力を得ることができる。この構成では、近位アンカー36が不用意に逆回転させられた場合にも、比較的強い抵抗力が生じる。別の実施形態では、保持構造42、44のねじ山は、ルアーコネクタに見られるような比較的疎なピッチを有している。このようなねじ山では、ピン26と近位アンカー36とを軸方向に急速に相対移動させるための、迅速なひねり連結を行うことができる。近位アンカー36を比較的少ない回数、または部分的に回転させることによって、ピン26に対して軸方向に大きく動かすことができる。この構成は、骨にかけられた圧縮の程度についての触覚フィードバック性を向上させることができる。対応する各保持構造のねじ山ピッチやその他の特性は、所望の臨床的性能を考慮しながら、当業者の、本明細書の開示に照らした日常的な経験を通じて最適化することができる。
【0035】
図4を参照すると、ピン26には、ピン26の近位部の切断および取外しを容易にする切断点を設けることができる。切断点は、近位アンカー36がねじによってピン26に連結されたときに近位アンカー36よりも近位側となる位置に設けることができる。
【0036】
一実施態様では、少なくとも第1の切断点31は、ピン26の壁厚の薄い部分に設けることができる。すなわち、ピン26の切断点31の断面積は、ピン26の他の部分の断面積よりも小さくすることができる。ピン26の近位部は、固定システムに張力がかけられると、カラー38よりも近位方向に突き出る。図示の実施形態の切断点31は、近位端28に横方向の力がかけられたときに定められた破壊点を形成しつつ、取付けシステムの残りの部分が比較的しっかりと固定されるような、環状のくぼみまたは溝を有している。近位アンカー36のピン26に対する軸方向への相対移動範囲に応じて、少なくとも第2の切断点33をさらに設けてもよい。
【0037】
2つ以上の切断点31、33を有する一実施形態では、遠位切断点31は、1つまたは2つ以上の打ち抜き孔、または近位切断点33よりも深いくぼみを備えている。このように、遠位切断点31は、近位端28にかけられる横方向の圧力に対して、近位切断点33よりも先に優先的に折れる。これによって、本明細書の開示に照らして理解されるように、近位端28を設置し切断した後の、カラー38を越えるピン26の突出しが最小限に抑えられる。
【0038】
さらに、移植され切断点31で折られた後の、近位端28の近位アンカー36からの近位方向への突出しも、切断点31または33が近位アンカー36内で折れるようにすることによって、最低限に抑えるか、または無くすことができる。図6を参照すると、保持構造42は、アンカー36上の近位面63よりも遠位側の点61で終端することができる。傾斜した、またはテーパ状の環状面65によって、近位アンカー36を貫通する中央開口の内径は近位方向で大きくなる。近位アンカー36が、切断点31が近位限界61と近位面63との間に来るように、ピン26上を遠位方向に進められた後、ピン26の近位端28に横方向への圧力をかけることによって、切断点31を傾斜面65の領域内で折ることができる。このようにして、折られた後のピン26の近位端は、近位面63の所または近位面63よりも遠位側となり、したがって、装置の外形および組織の炎症の可能性が最低限に抑えられる。
【0039】
上記に開示された軸方向に設置可能な実施形態のいずれも、設置工具を用いることによって、設置の簡略化が可能である。設置工具は、ピストル・グリップ、注射器型グリップ、またはプライヤ型グリップを備えることができ、したがって、臨床医は工具をピン32の近位方向への延長線上に設け、骨片に適切な張力をかけるために、近位アンカー36、52と遠位アンカー34とを、手で1回または2回以上収縮させながら互いに引き寄せることができる。事前に較正された工具を使用することによって、所定の張力をピンからピンに一様にかけることができる。
【0040】
ピンに対して所定の荷重を設定する設置装置の較正は、当業者には理解されるであろう様々な手段のいずれによっても行うことができる。たとえば、ピン32は、1つまたは2つ以上の所定の位置における部分の引っ張り強度を制限する1つまたは2つ以上の切込み線、または横方向に延びる孔、あるいは他の修正された構成を備えていてもよい。このようにして、近位端28に軸方向へのカラー54に対する張力がかけられると、ピン32が切込み線の所で分離される前に骨に所定の荷重がかけられる。あるいは、所定の限界内の張力をかけ、次に工具の遠位端から張力を解放する内部構造を設置工具内に設けてもよい。
【0041】
図8は、上述の固定装置25と共に使用できるロックガイドワイヤ150を示している。ガイドワイヤは遠位端152と近位端154とを有している。図示のガイドワイヤ150は、ガイドワイヤ150の遠位端152に配置されたロック部156と、好ましくはガイドワイヤ150の遠位部156から近位端154まで延びている細長い部分158とを有している。細長い部分158の直径D1は、遠位部154の直径D2より全体的に小さい。ガイドワイヤ150は、ステンレススチール、チタン、または他の任意の適切な材料で作ることができる。陰極反応を防止するため、すべての金属システムにおいて、ガイドワイヤ150およびロック部156は、固定装置25の他の部分と同じ材料で作ることが好ましい。
【0042】
ガイドワイヤ150のロック部156は、様々な形態のいずれをとることもでき、当業者には本明細書の開示に照らせば明らかであるように、意図された機能を実現することができる。たとえば、図示のような概ね円筒形のロック構造を使用してもよい。あるいは、近位部158より大きい断面を有する他の様々な構成のいずれを使用してもよい。所望の圧縮度と、ロック部156がピンの遠位端30に嵌る態様とに応じて、円錐形、球形、または他の形状を用いてもよい。
【0043】
ガイドワイヤ150は、その近位端がピン26のルーメン11に挿入できるようにされている。図4を参照すると、ルーメン11は、第1の部分160と第2の部分162とを有しているのが好ましい。第1の部分160は概ね、遠位端30の、ピン26のレバーアーム領域内に配置されている。第2の部分162は、第1の部分160からピン26の近位端28まで延びていることが好ましい。第1の部分160の内径は概して第2の部分162の直径より大きい。このため、第1の部分160と第2の部分162との間の接合部は、ピン26の長手方向軸を横切る、横方向環状係合面164を形成している。
【0044】
上述のように、ガイドワイヤ150は、その近位端がピン26のルーメン11に挿入できるようにされている。このため、細長い部分158の直径D1はルーメン11の第2の部分162の直径より小さい。これに対して、遠位部156の直径D2は概して、第1の部分160の直径と同じか、それより大きく、第2の部分162の直径よりも大きい。この構成により、遠位部156は近位方向に第1の部分160内に引き込まれることができるが、遠位部156がピン26を近位方向に通過することは妨げられる。遠位部156が第1の部分160の直径より大きい実施形態では、第1の部分は遠位アンカー34を、弛緩した状態の直径より大きく広げることができる。
【0045】
さらに、設置後のロックガイドワイヤ150の遠位方向への移動に抵抗する、摩擦力が強化された様々な表面または表面構造のいずれかを設けることもできる。たとえば、ロックガイドワイヤ150をルーメン11内に取外し可能に保持するようにルーメン11の内面の対応する表面構造と協働する、半径方向内側または半径方向外側に向けられた様々な表面構造のいずれかを、ロックガイドワイヤ150の長さに沿って設けることができる。一実施形態では、ロックガイドワイヤ150の外径上を半径方向外側に延びる環状のフランジまたは溝と協働する円筒形の溝または山が、ルーメン11の内面に設けられる。相補的な表面構造は、ロックガイドワイヤまたはガイドピンは近位方向にルーメン11内に引き込まれロック構造と係合するが、ロック構造は、ロックガイドワイヤ150の遠位方向への移動に対し、通常の使用状態では外れにくいかまたは外れないように、十分に抵抗するような寸法公差に形成される。
【0046】
骨固定装置を挿入し設置する挿入工具200の実施形態が図10〜20に示されている。後述のように、図示の挿入工具200は、上述の骨固定装置や、2001年3月22日に出願され、引用によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,632,224号に記載の骨固定装置など、ピン26とロックガイドワイヤ150とを用いた骨固定装置を設置できるように、特に構成されている。したがって、挿入工具については上述のロック装置を参照して説明する。しかし、挿入工具200のいくつかの特徴は、ピンおよび/またはロックガイドワイヤ150を用いない骨固定装置でも有用であることを理解されたい。
【0047】
図10を参照すると、図示の実施形態の挿入工具200は、一般的に、細長い管状の外側ボディ210と、一対のレバー230と、管状の外側ボディ210内に滑動可能に設けられかつレバー230に連結された中央部材250とを有している。後述のように、レバー230は、ロックガイドワイヤ150に係合するようにされている。工具200はさらに、外側ボディ210に連結され、骨固定装置のピン26と係合するようにされた遠位部220を有している。挿入工具200は、ロックガイドワイヤ150を把持し、ロックガイドワイヤ150を近位方向にピン26に対して相対移動させるようにされている。このように、ロックガイドワイヤ150の遠位部156は、ピン26のレバーアームの圧縮に抵抗して、近位方向にルーメン11の第1の部分160(図9参照)内に引込まれることができる。
【0048】
図10および11を参照すると、外側ボディ210は、近位端212と遠位端214とを有する概ね管状のボディである。図示の実施形態では、外側ボディ210は、レバー230の一部が外側ボディ210から延びるようにされ、径方向に互いに離れた、細長い一対の開口部または長穴216を有している。長穴216は、互いに概ね平行でもよく、遠位端214と外側ボディ210の上部ボディ253との間にある開口部または窓218から延びていてもよい。図示の実施形態では、レバー230は、長穴216に沿って軸方向に滑ることができ、レバー230の少なくとも一部は、工具200の長手方向軸から離れる方向および/または長手方向軸に近づく方向に動くことができる。図示されていないが、長穴216および細長いボディ210は、所望の用途および設置環境に応じて様々な形状および構成をとることができる。図示の実施形態では、外側ボディ210は、窓218および長穴216を形成するために一部が除去された管状のボディで形成されている。他の実施形態では、外側ボディ210は他の断面形状(たとえば、矩形、楕円形など)をとることができる。
【0049】
装置200の断面図である図11を参照すると、外側ボディ210は、中央ボディ250と、偏位部材260(たとえば、ばね)と、ラチェット組立体243と、レバー230の一部とが設けられるチャンバを形成する内表面211を有している。
【0050】
レバー230は、指当接部232と、細長い部分すなわちアーム233と、ワイヤ把持部234とを有していることが好ましい。レバー230は、人がレバー230を快適に把持し、レバー230に力をかけることができるようにされている。図示の実施形態では、レバー230は概ね「L」字形または「J」字形を有している。しかし、レバー230は、レバー230を動かしたときにレバー230の一部が骨固定装置(たとえば、ロックガイドワイヤ150)と係合できる、任意の形状または構成を有することができる。
【0051】
指当接部232は、レバー230の近位端に位置し、アーム233から外側ボディ210(図10参照)の外まで延びる、概ね湾曲した細長い部材である。指当接部232の幅は、端部235に向かって小さくすることができる。指当接部232は、ユーザの所望の数だけの指に快適に当接するようにすることができる。たとえば、一実施態様では、指当接部232は、人が1本の指を用いて工具200の一方の側の上部指当接部232に力をかけ、別の指を用いて工具200の他方の側の下部指当接部232に力をかけることができ、ボディ210が上の指と下の指との間を延びるようにされている。指当接部232は、ユーザの複数の指と当接するようにできることを理解されたい。
【0052】
指当接部232の端部235は遠位方向に湾曲しているため、ユーザの指がレバー230から滑って外れることが防止できるという他の利点もある。したがって、ユーザがレバー230を引くと、指当接部232は、ユーザの指が外側へ(すなわち、工具200の長手方向軸から離れる方向へ)動くことを抑えることができる。しかし、当業者には、指当接部232が、たとえば、レバー230にかけられる力、ユーザの指や手の大きさ、工具200の用途などに応じて、他の形状および大きさを備えていてもよいことが認識されよう。
【0053】
引き続き図11を参照すると、レバー230のアーム233は、指当接部232からレバー230の遠位端付近の把持部234まで延びている。アーム233の本体部分は概ね矩形断面形状とすることができる。ワイヤ把持部234は、中央ボディ250に対してピボット運動可能である。したがって、図示の実施形態では、ワイヤ把持部234は、ピボットピン236を受入れる穴237を含んでいる。ワイヤ把持部234は、舌または熊手の形とすることができる。しかし、ワイヤ把持部234は、レバー230が一定の位置に動かされたときに、ロックワイヤ150の一部に接触し、その一部を保持することのできる任意の形状が可能である。図16に示されているように、ワイヤ把持部234は、ワイヤ把持部234の近位部234a間の距離がワイヤ把持部234の遠位部234b間の距離より短くなるようにされている。したがって、近位方向への力239(図11に示されている矢印)によって、近位部235aはガイドワイヤを挟みガイドワイヤの移動を抑える。他の実施形態では、レバー230がガイドワイヤを把持したときに、近位部234a間の距離と遠位部234b間の距離とは概ね等しくなる。ワイヤ係合部234はまた、把持力を高める特徴を含んでいてもよい。たとえば、一実施態様では、ワイヤ係合部234は、ガイドワイヤがワイヤ係合部234によってしっかりと保持されるように、固定装置のガイドワイヤに係合する溝を有している。しかし、ワイヤ係合部234は、ワイヤ係合部234と固定装置の一部との間の所望の相互作用を実現する他の表面処理を施されていてもよい。たとえば、ワイヤ係合部234は、ワイヤ係合部234と骨固定装置との間に十分な摩擦力を生じさせるように、突起、スパイク、またはテクスチャ加工された表面を備えていてもよい。
【0054】
引き続き図11を参照すると、穴237がレバー230の遠位端に設けられている。一実施態様では、穴237の中心は、ワイヤ把持部234の少なくとも一部より遠位方向に設けられていることが好ましい。この構成は、ユーザが十分な力をかけたときにレバー230がガイドワイヤ150をしっかりと把持するという機械的利点をもたらす。それ故に、穴237の中心の指グリップ235に対する位置は、所望のてこの作用を実現するように変えることができる。
【0055】
上述のように、レバー230は、ピン236によって形成されるピボット軸の周りを矢印Pの方向に沿って回転し、ロックワイヤ150に係合するように中央ボディ250に取り付けられている。図示の実施形態では、たとえば外側ボディに遠位方向への力241をかけて外側ボディ210を静止状態に保持しながら、矢印239で示されている近位方向への力をレバー230にかけて、レバーをピボットピン236の周りで矢印Pの方向へピボット運動させ、それによってレバー230の近位端を工具200の中心軸の方へ動かすことができる。したがって、上部レバー230はその関連するピン236の周りを時計回りに回転することができ、下部レバー230は、その関連するピン236の周りを反時計回りに回転することができる。レバー230のワイヤ係合部234は、レバー230がピボット運動するにつれて、ワイヤ係合部234が互いに近づく方へ動き、したがって、その間にあるワイヤまたはピンを把持することができるようにされている。
【0056】
図示の実施形態の他の利点は、指当接部232に比較的弱い概ね近位方向への力をかけることによって、(図14に示されているように)ワイヤ把持部234同士の間に挟まれたロックワイヤ150をしっかりと把持できる、という機械的利点をもたらすように、レバー230のレバーアーム233の有効長が選択されることである。当業者には、ユーザの特定のニーズに対してレバーの様々な寸法を最適化するにはどうしたらよいかが理解されよう。あるいは、工具は、軸方向、斜め方向、回転方向、および/または他の方向を向く力に応答して、骨固定装置のガイドワイヤを把持するようにしてもよい。このような実施形態では、当業者には本開示に照らして明らかであろうが、別のレバー、ケーブル、プーリ、または他の構造を組み込むことができる。
【0057】
ロックワイヤを外すには、ワイヤ把持部234がガイドワイヤ150を外すようにレバー230を遠位方向(すなわち、図11の矢印239の方向とは逆の方向)に動かせばよい。図11に示されているように、図示の実施形態では、レバー230を、近位端の方に設けられた偏位部材231(たとえば、コイルばね)によって外側に偏位させることができる。この構成では、偏位部材231は、中央ボディ150に形成された開口部または穴277を通って延びることができる。
【0058】
好ましい実施形態では、ワイヤ140を把持するためにワイヤ把持部234を備えた一対のレバーアームを用いているが、他の図示していない実施形態では、ワイヤを把持する他の構成および装置を用いてもよいことを理解されたい。
【0059】
引き続き図11を参照すると、図示の実施形態では、工具200はその近位端にストップ258を有している。ストップ258は、ストップ258の遠位部が外側ボディ210内に配置され、ストップ258の遠位部が外側ボディ210から延びるように外側ボディ210の近位端212に連結されている。ストップ258の遠位部は、コイルばねの形にすることのできる近位偏位部材260に係合させることができる。
【0060】
近位偏位部材260は、中央ボディ250を遠位方向に偏位させるために、ストップ258と中央ボディ250の近位端249との間に設けられていることが好ましい。近位端249は、シートすなわち係合面256と円筒形のボディ263とを有している。図示の実施形態では、近位偏位部材260の近位端はストップ258の遠位端と係合し、近位偏位部材260の遠位端は近位端249の係合面256と係合している。ばね260の遠位部は、近位端249の円筒形のボディ263を取り囲んでいる。円筒形のボディ263は、有利なことに、工具200の動作時に偏位部材260を適切な位置に維持する。偏位部材260の遠位部は、外側ボディ210の内面211と円筒形のボディ263との間に設置されているのが好ましい。
【0061】
図11、11A、14、および15を参照すると、中央ボディ250は、偏位端部249(上述)と、ラチェット部252と、壁251と、上部ボディ253と、下部ボディ255とを有していることが好ましい。偏位端部249は、中央ボディ250の近位端に設けられ、上部ボディ253および下部ボディ255は、他方の端部に設けられている。ラチェット部252は、ばね端部249とボディ253、255との間にある。壁251は、上部ボディ253の一部と下部ボディ255の一部との間にある。中央ボディ250は、外側ボディ210内に滑動可能に設けられていることが好ましく、中央ボディ250は、外側ボディ210と同心で、かつ外側ボディ210内を軸方向に移動可能であることがより好ましい。
【0062】
後述のように、ラチェット部252は、中央ボディの遠位方向への外側ボディ210に対する相対移動に抵抗しつつ、中央ボディ250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を許容する。図示の実施形態では、ラチェット部252は、偏位端部249に連結されるかまたは偏位端部249と一体に形成され、かつ、中央ボディ250の一部が解放ボタン240を通り過ぎて移動するのを可能にするようにされた、複数の脚部257(たとえば、図11および12参照)を有している。一実施態様では、上部脚部および下部脚部257の一方は解放ボタン240の一方の側に設けられ、上部脚部および下部脚部257の他方は解放ボタン240の他方の側に設けられている。複数の脚部257は一対の長穴259を形成している。たとえば、図11Aに図示された実施形態では、一対の上部脚部257が上部長穴259aを形成し、一対の下部脚部257が下部長穴259bを形成している。長穴259a、259bは、ラチェット部252が解放ボタン240に対して相対移動できるように、解放ボタン240が長穴259a、259b内に収まるような大きさにされている。
【0063】
図11および12を参照すると、ラチェット部252は、中央ボディ250の外側ボディ210に対する相対移動を制限する様々な保持構造261のいずれかを有している。図示の実施形態では、ラチェット部252は、外側ボディ210に対して軸方向に固定された対応するラチェット板254と係合するようにされた、複数の山または歯の形をした構造261を有している。一実施態様では、ラチェット部252の下部脚部257は、上面を形成する歯261を有している。ラチェット板254は、下部脚部257の歯261と係合する、歯などの対応構造を有していることが好ましい。しかし、構造261は、中央ボディ250の移動を制御するようにラチェット板254と協働する、溝、ねじ山、または他の適切な構造とすることもできる。
【0064】
ラチェット板254は、ラチェット部252の下部脚部257の方へ偏位するようにされている。このようにして、ラチェット板254は、中央ボディ250が一方向にのみ移動できるようにすることができる。図示の実施形態では、中央ボディ250は、軸方向近位方向に移動可能であり、外側ボディ210に対して遠位方向には制限されている。
【0065】
ラチェット板254は、当業者によって認識される様々な装置および方法を用いて偏位させることができる。たとえば、図示の実施形態では、偏位ピン262(たとえば、図12参照)がラチェット板254を下部脚部257の方へ偏位させている。偏位ピン262は、外側ボディ210の互いに向かい合う壁に当たり、その横方向軸の周りの回転に抵抗するような寸法を有し、かつそのように配置することができる。偏位ピン262は、ラチェット板254の穴(図11参照)の中に配置され、ラチェット板254も偏位ピン262の横方向軸の周りの回転に抵抗する。したがって、偏位ピン262は、ラチェット板254の下面を下部脚部257の上面に係合させることができる。他の実施形態では、ラチェット板254を偏位させる他の適切な装置および構造を用いることができる。たとえば、ラチェット板254が中央ボディ250に所望の移動範囲を与えるように、ばねを、偏位ピン262と組み合わせて用いることができる。
【0066】
解放ボタン240(図11および12参照)は、ラチェット板254が中央ボディ250を解放するのを可能にするために設けられることが好ましい。中央ボディ250が解放されると、偏位部材260の偏位によって中央ボディ250をその元の遠位位置に戻すことができる。図示の実施形態では、解放ボタン240は、外側ボディ210の互いに向かい合う壁から延び、ラチェット板254に連結された概ね円筒形の部材である。外側ボディ210は、直径方向に離れて配置された、解放ボタン240を受入れる穴または開口部を有していることが好ましい。したがって、解放ボタン240は外側ボディ210に対して軸方向に移動できず、そのため、ラチェット板254も外側ボディ210に対して軸方向に移動できない。
【0067】
図12に図示された実施形態では、解放ボタン240は、ラチェット板254が脚部257と係合し、中央ボディ250の遠位方向への移動が抑えられる第1の位置にある。解放ボタン240が第1の位置にあるときは、解放ボタン240の下部が外側ボディ210から延びている。解放ボタン240は、解放ボタン240の上部が外側ボディ210から延びるように、垂直方向に、第2の位置(図示せず)に動かされることができる。ユーザは、解放ボタン240に垂直方向の力をかけることによって、解放ボタン240を第2の位置に動かすことができる。解放ボタン240が第2の位置にあると、解放ボタン240に連結されたラチェット板254は下部脚部257から離れ、ラチェット板254の歯が下部脚部257の歯261から外れる。中央ボディ250は、解放ボタン240が第2の位置にあるときには、遠位方向と近位方向のどちらにも滑動することができる。図示されていないが、当業者には、解放ボタン240の他の適切な構成および位置が認識されよう。
【0068】
偏位ピン262および解放ボタン240は、プレス嵌め、溶接、接着剤、ねじ、その他の機械的な止め具、または当業者によって認識される他の任意の方法によって、ラチェット板254に連結することができる。図示の構成では、解放ボタン240および偏位ピン262は、好ましくは、ラチェット板254のそれぞれの穴内にぴったりとプレス嵌めされる大きさを有している。あるいは、解放ボタン240および/または偏位ピン262は、解放ボタン240および偏位ピン262がラチェット板254に対して実質的に固定されるように、ラチェット板254上の対応する構造と相互作用するようにされた環状の山および溝を有していてもよい。
【0069】
上述のように、ラチェット部252は、中央ボディの遠位方向への外側ボディ210に対する相対移動に抵抗しつつ、中央ボディ250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を許容する。一方、解放ボタン240でラチェット部252を外すと、中央ボディ250は遠位方向へ動くことができる。上述の構造は一つの好ましい実施形態を表しているが、中央ボディの遠位方向への外側ボディ210に対する相対移動に抵抗しつつ、中央ボディ250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を許容するという選択的な動作を可能とする他の装置および構造を設けてもよいことを理解されたい。
【0070】
次に図11Aを参照すると、中央ボディ250の壁251、上部ボディ253、および下部ボディ255は、ラチェット部252の遠位端に連結するか、または遠位端と一体で形成することができる。壁251とボディ253、255は協働して、レバー230の少なくとも一部を受入れることのできる、窓275、および長穴または溝271を形成している。
【0071】
図示の実施形態では、壁251は、上部ボディ253および下部ボディ255に連結され、溝271の底部を形成している。壁251は、ラチェット部252の近くの位置から窓275の近位側まで延びている。壁251の近位部は、上述のように偏位部材231の少なくとも一部を受入れる開口部または穴277を有している。図示の実施形態では、開口部277は、概ね円形であり、図11に示されているように、偏位部材231の中央部を取り囲む大きさにされている。当業者には、開口部277を、レバー230の構成に応じて、様々な位置に設けることができることが認識されよう。
【0072】
図11を参照すると、図示の実施形態では、壁251は、概ね一様な幅を有し、一対のレバー230の一部の間に配置されている。しかし、壁251は、たとえば開口部277の大きさやレバー230の所望の動きに応じて、他の適切な形状を有していてもよい。たとえば、図16に示されているように、壁251は、ガイドワイヤ150を受入れる、少なくとも部分的に軸方向に延びる開口部または穴281を有していてもよい。ガイドワイヤ150の近位端を挿入し、穴281に沿って前進させることができる。
【0073】
再び図11Aを参照すると、図示の実施形態では、上部ボディ253は、壁251の上部に連結され、溝271の上側を形成している。上部ボディ253は、その長さに沿って概ね半円形の断面を有している。上部ボディ253の上面は、外側ボディ210の内面211に合致するように湾曲している(たとえば、図12参照)。中央ボディ250の上面は、中央ボディ250が外側ボディ210内を容易に滑動することができるように、外側ボディ210の内面211に滑動可能に係合することができる。下部ボディ255は、壁251の下部に連結され、溝271の下側を形成している。下部ボディ255はまた、その長さに沿って概ね半円形の断面を有している。下部ボディ255の下面は、外側ボディ210の内面211に合致するように湾曲している。下部ボディ255の下面は、中央ボディ250が外側ボディ210内を容易に滑動することができるように、外側ボディ210の内面211に滑動可能に係合することができる。図示されていないが、他の実施形態では、下部および上部ボディ253,255は、溝271および/または外側ボディ210の、所望の大きさおよび構成に応じて、他の適切な形状を有していてもよい。
【0074】
遠位壁273(図11A参照)が、上部ボディ253から下部ボディ255へと延びている。遠位壁273は、図16に示されているように、ロックワイヤ150を受入れる開口部または穴279を有している。穴279は、ガイドワイヤの横方向への実質的な動きを防止することができ、ガイドワイヤを所望の位置に配置することができる。穴279によって、ガイドワイヤ150を2本のピボットピン236から等距離の位置に配置することができる。したがって、ユーザがレバー230に近位方向への力をかけると、各ワイヤ係合部234は、ほぼ同時にガイドワイヤ150に接触し、ガイドワイヤ150の所望の位置を維持することができる。たとえば、ガイドワイヤ150は、工具200の使用時にほぼ真っ直ぐな状態に維持されることができ、したがって、ガイドワイヤ150の湾曲が防止される。
【0075】
図11および11Aを参照すると、溝271は、レバー230および偏位部材231の少なくとも一部を受入れる。溝271のこのような構成により、レバー230が対応するそれぞれのピボットピン236の周りを適切に動くことが容易となる。また、溝271の各壁または各辺は、レバー230の垂直方向への動きを制限することが好ましい。
【0076】
図11、11A、および12を参照すると、窓275が壁251と遠位壁273との間に形成されている。窓275は、各レバーのワイヤ係合部234の少なくとも一部を受入れるようにされている。図14に示されているように、ガイドワイヤ150は窓275を通過することができる。
【0077】
図11および12に示されているように、工具200の遠位部220は、骨固定装置の近位ピン26を受入れ、少なくとも一時的に保持するようにされていることが好ましい。特に図16および17を参照すると、遠位部は、外側ボディ210の遠位端214に取り付けられた遠位キャップ270を有している。遠位キャップ270は、ハウジング283と、座金272と、座金位置決めねじ274と、ピン把持レバーアーム280とを有している。遠位キャップ270はまた、骨固定装置の一部を受入れるワイヤ受入れルーメン278を形成している。たとえば、図示の実施形態では、ワイヤ受入れルーメン278はガイドワイヤ150を受入れることができる。
【0078】
ハウジング283は、骨固定装置の一部(たとえば、ピン26)を受入れる先端部302を有している。先端部302は、開口部304と、ピン受入れルーメン276の少なくとも一部を形成するボディ306とを有している。図16および17に示されているように、開口部304は、ピン26の近位端28が開口部304を通り抜け、ピン受入れルーメン276に沿って通過できる大きさにされている。先端部302の近位部は、ピン把持アーム280を受入れるようになっていることが好ましい。図示の実施形態では、ピン把持アーム280の外面は、先端部302の外面と概ね同一平面を形成している。
【0079】
ハウジング283は、外側ボディ210の遠位端214に連結されることができ、中央ボディ250の遠位壁273から、ピン把持アーム280を越えて延びることができる。図示の実施形態では、ハウジング283の近位部は外側ボディ210の遠位開口部内に配置されている。ハウジング283は、座金272と、座金位置決めねじ274と、ワイヤ150の一部とを取り囲む円筒形のチャンバを形成している。
【0080】
図16を参照すると、座金272は、有利なことに、流体の工具200内への流入を抑える。図示の実施形態では、座金272は、座金を通って挿入されるガイドワイヤ150と共にシールを形成し、これによって、流体(たとえば、血液)がワイヤ150と座金272との間に入り、挿入工具200の把持機構内に入ることが防止される。座金272はまた、ガイドワイヤを所定の位置に保持するように、座金272とガイドワイヤ150との間に摩擦嵌めまたは弾性嵌めを形成することができる。座金272は、座金272とハウジング283の内面との間にシール310を形成することもできる。シール308、310は、好ましいことに、流体が座金272の近位側を通過することを防止する。座金272は、通常、ゴム、ラテックス、その他柔軟性のある材料などの可撓性の材料で作られる。座金272は、適切なシール特性を備えた他の種類の材料で構成することもできる。通常の当業者は、工具200の機構内への流体の流入を防止する所望のシールを実現する、材料の種類と厚さと形状の適切な組合せを決定することができよう。
【0081】
図示の実施形態では、座金位置決めねじ274は、座金272をハウジング283内に保持し設置する。この構成の座金位置決めねじ274は、ハウジング283の内面の近位部と係合する近位部を備えた、概ね円筒形のボディを有している。座金位置決めねじ274の遠位端は、座金272を受入れる円形のくぼみを有している。ワイヤ受入れルーメン278の一部は、ガイドワイヤ150が座金位置決めねじ274を通過できるように、座金位置決めねじ274によって形成されている。一実施形態では、座金位置決めねじ274はその近位端の一部にねじ山を有し、ハウジングは対応するねじ山を有している。したがって、座金位置決めねじ274とハウジング283とをねじによって連結することができる。座金272とハウジング283との間の所望のシール310は、ねじ274とハウジング283とを軸方向に相対移動させるように、ねじ274をハウジング283に対して回転させることで得ることができる。たとえば、流体がシール310を通って流入する場合、ねじ274が遠位方向に移動し、それによって座金272がハウジング283に押し付けられるように、ねじ274をハウジング283に対して回転させることができる。このようにして、所望のシール310が得られるまで、座金272をねじ274とハウジング283との間で圧縮することができる。他の実施形態では、ねじ274は、ねじ山が設けられず、ハウジング283内にほぼぴったりと嵌まる大きさにされている。図示されていないが、座金272によって適切なシールが形成されるように、他の種類の部材を遠位キャップ270内にぴったりと嵌め込めることも好ましい。
【0082】
ねじ274は、ゴム、プラスチック、金属、柔軟性のある材料などの材料で作ることができる。ねじ274は、適切なシール特性を有する他の種類の材料で構成することもできる。通常の当業者は、工具200の機構内への流体の流入を防止する所望のシールを実現する、材料の種類と厚さと形状の適切な組合せを決定することができよう。
【0083】
引き続き図16を参照すると、ピン把持アーム280は、ピン受入れルーメン276内に骨固定装置(たとえば、ピン26)を好ましくは取外し可能に保持するようにされた、様々な構造を備えることができる。図示の実施形態では、ピン把持アーム280は、ピンと係合する山すなわち中子314を持つレバーアーム313を有している。中子314の端部は、ピン26を保持する構成および大きさにすることができる。図17に示す実施形態では、骨固定装置のピンは、骨固定ピンが好ましくは挿入工具200によって相当しっかりと保持されるようにピン把持アーム280の中子314の端部を受入れる大きさを有し、かつ中子314の端部を受入れるように設けられた、環状の山または溝316を備えることができる。したがって、ピン把持アーム280は、ピン26の、工具200に対する、軸方向への実質的な移動を抑制する。中子314は、ピン把持アーム280を外してピン26を工具200から取り外すために、外側に動かすことができる。ピン把持アーム280の中子314およびピン26の溝316は、ピン26の所望の固定を実現するのに適した様々な形状および大きさを備えることができる。たとえば、溝316は概ねU字形の外面を備え、中子314の端部は同様の形状を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、溝316は概ねV字形状を備え、中子314の端部は同様の形状を有していてもよい。
【0084】
引き続き図16を参照すると、ピン受入れルーメン276は通常、ピンの十分な長さをルーメン276に挿入することを可能にするピンストップ282を含んでいる。ピン受入れルーメン276の遠位端は開口部304を形成している。中子314は、ピン受入れルーメン276の近位端と遠位端との中間に配置されている。図示の実施形態では、ピン受入れルーメン276の直径はその遠位端で小さくなっている。すなわち、先端部302が遠位端に環状の山318を備え、その遠位端において山318の内面が開口部304を形成するようにすることができる。
【0085】
次に、使用方法の一つの実施形態による、骨固定装置25および挿入工具200の操作について、図18〜20を参照して説明する。臨床医が骨に到達した後、骨ドリルが選択され、臨床医は2つの骨片を貫通する穴290(または図1の22)を穿孔する。骨固定装置25は、パッケージから直接挿入工具200に挿入してもよく、それによって固定装置25の無菌状態が維持され、好ましい。図示の実施形態において、図16および17を参照すると、骨固定装置25が、ガイドワイヤ150の近位端を開口部304に挿入することによって挿入工具に挿入され、ガイドワイヤ150の所望の部分がレバー230のワイヤ把持部234の間にくるまで、ワイヤ受入れルーメン278に沿って進められる。次に、ピン26の近位端28が開口部304に挿入され、ピンストップ282に接触するかまたはその近くにくるまで、ピン受入れルーメン276に沿って進められる。修正された実施形態では、ガイドワイヤ150およびピン26を事前に挿入工具200内に設置し、殺菌されたパッケージ内に包装してもよい。
【0086】
装置25を保持する挿入工具を用いて、ガイドワイヤ150の遠位端156とピン26の遠位端30は、バーブ50が経路290から出るまで、経路290内を進められる。非貫通の穴(図示せず)に適用する場合は、ピン26は、バーブが臨床医によって決定された十分な距離だけ骨内を前進するまで進められる。他の実施形態では、異なる工具または臨床医の手を用いて固定装置25を経路290内に挿入してもよい。
【0087】
臨床医は、ガイドワイヤ150が挿入工具200内に収められた状態で、外側ボディ210を相対的に静止状態に保持しながら、挿入工具の指当接部232に近位方向への力をかけることができる。好ましいことに、偏位部材260が中央ボディ250の偏位端部249に遠位方向への十分な力をかけているので、中央ボディ250が工具200の外側ボディ210に対して概ね静止状態を保ちつつ、レバー230がピボットピン236の周りを回転し、ガイドワイヤ150をしっかりと把持することができる。レバー230がガイドワイヤ150を把持すると、ユーザは、ばね260の偏位に打ち勝つに十分な近位方向への力をかけ、ガイドワイヤ150を把持しているレバー230を動かし、それによって、中央ボディ250を近位方向に工具200の外側ボディ210に対して相対移動させることができる。図示の実施形態では、中央ボディ250の偏位端部249が偏位ストップ258の遠位端に接触するまで、レバー230と中央ボディ250とを近位方向へ動かすことができる。あるいは、ばね260の偏位が臨床医によってかけられる近位方向への力に打ち勝ったときに、レバー230および偏位端部250の近位方向への外側ボディ210に対する相対移動を停止することができる。
【0088】
レバー230および中央ボディ250が外側ボディ210内を外側ボディ210に沿って滑動すると、レバー230はガイドワイヤ150を把持して引っ張り、一方、先端部302はピン26を外側ボディ210に対して静止状態に保持する。したがって、指当接部232に近位方向への力をかけると、好ましいことに、ガイドワイヤ150がピン26に対して引き込まれる。ガイドワイヤ150は、遠位部156が少なくとも部分的にピン26の第1の部分160(図9参照)に入るまで引き込まれることが好ましい。このため、ガイドワイヤ150の遠位部156の少なくとも一部はピン26の第1の部分160内でロックされる。これによって、バーブ50とレバーアーム24が半径方向内側に圧縮されることが防止され、バーブ50は骨の遠位要素21にぴったりと当接したままになる。好ましいことに、バーブ50の外面は経路290の内面に接触し、経路290に沿ったピン26の移動を抑える摩擦力をかける。上述のように、いくつかの実施形態では、遠位部156は、レバーアーム24を、その弛緩した自然状態での直径を越えた状態に広げることができる。
【0089】
挿入工具200は、中央ボディ250が移動できる最大距離(したがって、ワイヤを引っ張れる最大距離)が、ガイドワイヤ150の遠位部156をピン26の第1の部分160内に適切に設置するのに必要な最大距離と対応するように構成することができる。あるいは、ガイドワイヤ150の引込み量を示す別の構造を設けてもよい。たとえば、臨床医がガイドワイヤの把持および引込み距離を視覚的に確認できる視認窓を設けてもよい。
【0090】
ガイドワイヤ150の遠位部156がピンの第1の部分内に収められると、近位アンカー36を、回転させるかまたは他の方法で、遠位方向にピンのボディ26に対して前進させ(たとえば、ピンを近位方向に引き込むことによって)、近位アンカー36を骨10の近位要素19にぴったりと当接させることができる。固定装置を近位方向に引き込むかまたは遠位方向に前進させるには他の工具が必要である。たとえば、2004年3月1日に出願され、引用によって本出願の明細書の一部として組み込まれる同時係属出願「二次圧縮を伴う遠位骨アンカーの取付け用具」(アトーニー・ドケットNo.TRIAGE.019A)に記載された設置装置や、同様の装置を、近位アンカー36を遠位方向に前進させ、および/またはピンのボディ26を近位方向に近位アンカー36に対して引き込むために用いることができる。あるいは、近位方向への引込みまたは遠位方向への前進をおこなうため、このような工具の特徴を、本明細書に記載された挿入工具と組み合わせてもよい。近位アンカー36は、ピンのボディ32を穴22または経路290内に設ける前、あるいはピンのボディ32を経路290または22内に配置した後に、骨固定装置25上に設けることができることを理解されたい。
【0091】
近位アンカー36に適切な張力をかけた後、ピンのボディ32の近位端28とガイドワイヤ150の近位端154とを切断するか、または他の方法で取り外すことが好ましい。これらの部材は、臨床環境で日常的に利用されている従来の骨かん子を用いて切断してもよく、前述の定められた切断点を用いて折ってもよい。
【0092】
工具200は、固定装置を迅速にかつ便利よく供給し設置することができるように、骨固定装置に取外し可能に連結されるようになっていることが好ましい。工具200はまた、複数の骨固定装置を供給するために、同様の方法で再使用することもできる。したがって、外科手術中に、一つの工具200で複数の骨固定装置を供給することができる。実際には、上述した様々な実施形態は、キットとして提供されてもよい。キットは、工具200と、少なくとも1つの骨固定装置とを備えていることが好ましい。一実施形態では、キットは、工具200を用いて迅速に供給される複数の骨固定装置を備えている。複数の骨固定装置は、ピン26と、ガイドワイヤ150と、本明細書に記載された他の部材とを備えていてもよい。
【0093】
本明細書に記載され図示された方法は、上述した行為の順番に厳密に一致する場合に限られず、また、必ずしも上述の行為をすべておこなう場合にも限定されない。本発明の実施形態を実施するうえでは、事象または行為が別の順番で生じ、あるいは全事象の一部だけが生じ、またはいくつかの事象が同時に生じる方法も用いることができる。
【0094】
本明細書ではいくつかの好ましい実施形態および実施例について説明したが、当業者には、本発明の保護対象は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替実施形態、および/または、本発明、その自明の修正、およびそれらの均等物の使用にまで拡張されることが理解されよう。したがって、本明細書に開示された本発明の保護対象の範囲は、開示された上述の特定の実施形態によって限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲を公正に読むことによってのみ決定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】骨折した骨内に設けられた骨固定装置の概略断面図である。
【図2】本発明によるピンのボディの他の実施形態の側面図である。
【図3】図2のピンのボディの遠位端面図である。
【図4】図2のピンのボディの長手方向断面図である。
【図5】図4に示されている装置の遠位端の拡大詳細図である。
【図6】図2のピンのボディと共に使用される近位アンカーの断面図である。
【図7】図6の近位アンカーの近位端面図である。
【図8】図2のピンのボディと共に使用できるガイドワイヤの側面図である。
【図9】図8のガイドワイヤおよび図2のピンのボディの長手方向断面図である。
【図10】所望の特徴および利点を有する、骨固定装置の挿入工具の斜視図である。
【図11】図10の挿入工具の線11−11に沿った断面図である。
【図11A】図10の挿入工具の中央部の側方斜視図である。
【図12】図10の挿入工具の線12−12に沿った断面図である。
【図13】工具上に配置された骨固定装置を含む図10の挿入工具の側面図である。
【図14】第1の位置にある骨固定装置と共に示されている、図10の挿入工具の線14−14に沿った断面図である。
【図15】第2の位置にある骨固定装置と共に示されている、図10の挿入工具の線15−15に沿った断面図である。
【図16】図14の挿入工具の線16−16に沿った部分詳細断面図である。
【図17】図15の挿入工具の線17−17に沿った部分詳細断面図である。
【図18】骨固定装置が骨折した骨を横切って挿入された状態の、骨固定装置および挿入工具の概略断面図である。
【図19】骨固定装置が骨折した骨を横切って固定された状態の、骨固定装置および挿入工具の概略断面図である。
【図20】骨折した骨の第1および第2の骨折片を固定するのに用いられる骨固定装置の概略断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の骨片を第2の骨片に固定する方法であって、
横方向に移動可能な少なくとも1つの遠位アンカーと、ルーメンとを有するピンであって、該ルーメンが該ピンを貫通して延びているピンを設けるステップと、
前記遠位アンカーを、必要に応じて横方向内側に動ける状態で、前記第1の骨片を通って前記第2の骨片内に進めるステップと、
前記ルーメンを通って軸方向に延びるワイヤの近位部を、取付け工具で把持するステップと、
前記ワイヤを、該ワイヤの遠位部が前記遠位アンカーの半径方向内側へのたわみ変形に抵抗するように、前記取付け工具によって、前記ルーメンを通して軸方向に動かし、それによって前記遠位アンカーを横方向内側に動けないようにするステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記ワイヤを前記取付け工具によって前記ルーメンを通 して軸方向に動かす前記のステップは、該取付け工具の第1のボディを該取付け工具の第2のボディに対して相対移動させることを含んでいる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項3】
前記取付け工具の前記第1のボディを該取付け工具の前記第2のボディに対して相対移動させる前記のステップは、一方向ラチェット型の動きを含んでいる、請求項2に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項4】
ワイヤの近位部を取付け工具で把持する前記のステップは、一対のレバーアームの各端部を互いに近づく方向へ動かすことを含んでいる、請求項2に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項5】
一対のレバーアームの各端部を互いに近づける方向へ動かす前記のステップは、該一対のレバーアームの反対側の端部に近位方向への力をかけることを含んでいる、請求項4に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項6】
前記近位方向への力は、前記取付け工具を保持する手の複数の指によってかけられる、請求項5に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項7】
前記取付け工具の前記第1および第2のボディは、少なくとも、前記近位方向への力をかける前記複数の指の間を延びている、請求項6に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項8】
前記取付け工具を保持する掌は、前記第2のボディの近位方向への前記第1のボディに対する相対移動を防止する、請求項7に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項9】
ワイヤの近位部を取付け工具で把持する前記のステップは、一対のレバーアームの各端部を互いに近づく方向へ動かすことを含んでいる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項10】
一対のレバーアームの各端部を互いに近づく方向へ動かす前記ステップは、前記一対のレバーアームの反対側の端部に近位方向への力をかけることを含んでいる、請求項9に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項11】
前記遠位アンカーが前記第1の骨片を通って前記第2の骨片内に進められる前に、前記取付け工具を前記ピンに連結するステップをさらに含んでいる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項12】
前記遠位アンカーは、前記第1の骨片および前記第2の骨片を完全に通過するように進められる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項13】
骨固定装置を挿入する工具であって、
近位端と、遠位端と、長手方向軸とを有する細長い外側ボディと、
近位端と、遠位端と、長手方向軸とを有し、前記外側ボディに対して軸方向に移動可能な細長い内側ボディと、
前記外側ボディの前記遠位端に設けられ、骨固定装置の近位ピンに取外し可能に係合するピン受入れ部と、
第1のピボット軸で前記内側部材にピボット運動可能に取り付けられた第1のレバーと、
第2のピボット軸で前記内側部材にピボット運動可能に取り付けられた第2のレバーと、
を有し、
前記第1および第2のレバーはそれぞれ、前記骨固定装置の前記近位ピンを貫通して延びるワイヤを把持する把持部を有している、
骨固定装置を挿入する工具。
【請求項14】
前記第1および第2のレバーの前記把持部は、前記第1および第2の軸よりも近位側に設けられている、請求項13に記載の工具。
【請求項15】
前記第1の軸および前記第2の軸は、前記外側ボディの前記長手方向軸に垂直な線に沿って配置されている、請求項14に記載の工具。
【請求項16】
前記外側ボディと前記内側ボディは実質的に同心に設けられている、請求項13に記載の工具。
【請求項17】
前記工具は、前記第1および第2のレバーが近位方向に前記外側ボディに対して相対移動したときに、前記第1および第2のレバーの前記把持部が互いに近づく方向に動くようにされている、請求項13に記載の工具。
【請求項18】
前記内側ボディを遠位方向に前記外側ボディに対して偏位させるようにされたばねをさらに有している、請求項13に記載の工具。
【請求項19】
前記ピン受入れ部は、ピンを把持するアームを有している、請求項13に記載の工具。
【請求項20】
前記取付け工具は、前記内側ボディの近位方向への前記外側ボディに対する相対移動を許容するが、前記内側ボディの遠位方向への前記外側ボディに対する相対移動に抵抗する、相補的な保持構造をさらに有している、請求項13に記載の工具。
【請求項21】
前記相補的な保持構造は、前記内側ボディの近位方向への前記外側ボディに対するラチェット式の相対移動を許容する、一連の溝および山を有している、請求項20に記載の工具。
【請求項22】
前記相補的な保持構造が前記内側ボディの遠位方向への前記外側ボディに対する相対移動に抵抗しないように、該相補的な保持構造を解放する解放ボタンをさらに有している、請求項20に記載の工具。
【請求項23】
遠位アンカーを含むピンと、該ピンを通って延び、該遠位アンカーを広げられた形状で固定するようにされたロックワイヤとを少なくとも有する骨固定装置と共に使用される工具であって、
近位端と遠位端とを有するボディと、
前記骨固定装置の前記ロックワイヤを把持するようにされ、少なくとも1つの指把持部を有し、前記ボディに対して移動可能である把持装置と、
前記ボディの前記遠位端に設けられ、前記ピンの近位方向への前記骨固定装置の前記ロックワイヤに対する相対移動を防止するようにされたピン係合部と、
を有し、
前記工具は、前記指把持部に近位方向への力をかけ、前記ボディに遠位方向への力をかけたときに、前記骨固定装置の前記ガイドワイヤが把持され、前記骨固定装置の前記ピンに対して近位方向に引き込まれるようにされている工具。
【請求項24】
前記ピン係合部は、骨固定装置の近位ピンを取外し可能に受入れるようにされている、請求項23に記載の工具。
【請求項25】
前記指把持部の近位方向への前記ボディに対する相対移動を許容し、かつ遠位方向への前記ボディに対する相対移動に抵抗するようにされたラチェット機構をさらに有している、請求項23に記載の工具。
【請求項26】
前記指把持部の遠位方向への前記ボディに対する相対移動を許容するように、前記ラチェット機構を解放するようにされた解放機構をさらに有している、請求項25に記載の工具。
【請求項1】
第1の骨片を第2の骨片に固定する方法であって、
横方向に移動可能な少なくとも1つの遠位アンカーと、ルーメンとを有するピンであって、該ルーメンが該ピンを貫通して延びているピンを設けるステップと、
前記遠位アンカーを、必要に応じて横方向内側に動ける状態で、前記第1の骨片を通って前記第2の骨片内に進めるステップと、
前記ルーメンを通って軸方向に延びるワイヤの近位部を、取付け工具で把持するステップと、
前記ワイヤを、該ワイヤの遠位部が前記遠位アンカーの半径方向内側へのたわみ変形に抵抗するように、前記取付け工具によって、前記ルーメンを通して軸方向に動かし、それによって前記遠位アンカーを横方向内側に動けないようにするステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記ワイヤを前記取付け工具によって前記ルーメンを通 して軸方向に動かす前記のステップは、該取付け工具の第1のボディを該取付け工具の第2のボディに対して相対移動させることを含んでいる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項3】
前記取付け工具の前記第1のボディを該取付け工具の前記第2のボディに対して相対移動させる前記のステップは、一方向ラチェット型の動きを含んでいる、請求項2に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項4】
ワイヤの近位部を取付け工具で把持する前記のステップは、一対のレバーアームの各端部を互いに近づく方向へ動かすことを含んでいる、請求項2に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項5】
一対のレバーアームの各端部を互いに近づける方向へ動かす前記のステップは、該一対のレバーアームの反対側の端部に近位方向への力をかけることを含んでいる、請求項4に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項6】
前記近位方向への力は、前記取付け工具を保持する手の複数の指によってかけられる、請求項5に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項7】
前記取付け工具の前記第1および第2のボディは、少なくとも、前記近位方向への力をかける前記複数の指の間を延びている、請求項6に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項8】
前記取付け工具を保持する掌は、前記第2のボディの近位方向への前記第1のボディに対する相対移動を防止する、請求項7に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項9】
ワイヤの近位部を取付け工具で把持する前記のステップは、一対のレバーアームの各端部を互いに近づく方向へ動かすことを含んでいる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項10】
一対のレバーアームの各端部を互いに近づく方向へ動かす前記ステップは、前記一対のレバーアームの反対側の端部に近位方向への力をかけることを含んでいる、請求項9に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項11】
前記遠位アンカーが前記第1の骨片を通って前記第2の骨片内に進められる前に、前記取付け工具を前記ピンに連結するステップをさらに含んでいる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項12】
前記遠位アンカーは、前記第1の骨片および前記第2の骨片を完全に通過するように進められる、請求項1に記載の第1の骨片を第2の骨片に固定する方法。
【請求項13】
骨固定装置を挿入する工具であって、
近位端と、遠位端と、長手方向軸とを有する細長い外側ボディと、
近位端と、遠位端と、長手方向軸とを有し、前記外側ボディに対して軸方向に移動可能な細長い内側ボディと、
前記外側ボディの前記遠位端に設けられ、骨固定装置の近位ピンに取外し可能に係合するピン受入れ部と、
第1のピボット軸で前記内側部材にピボット運動可能に取り付けられた第1のレバーと、
第2のピボット軸で前記内側部材にピボット運動可能に取り付けられた第2のレバーと、
を有し、
前記第1および第2のレバーはそれぞれ、前記骨固定装置の前記近位ピンを貫通して延びるワイヤを把持する把持部を有している、
骨固定装置を挿入する工具。
【請求項14】
前記第1および第2のレバーの前記把持部は、前記第1および第2の軸よりも近位側に設けられている、請求項13に記載の工具。
【請求項15】
前記第1の軸および前記第2の軸は、前記外側ボディの前記長手方向軸に垂直な線に沿って配置されている、請求項14に記載の工具。
【請求項16】
前記外側ボディと前記内側ボディは実質的に同心に設けられている、請求項13に記載の工具。
【請求項17】
前記工具は、前記第1および第2のレバーが近位方向に前記外側ボディに対して相対移動したときに、前記第1および第2のレバーの前記把持部が互いに近づく方向に動くようにされている、請求項13に記載の工具。
【請求項18】
前記内側ボディを遠位方向に前記外側ボディに対して偏位させるようにされたばねをさらに有している、請求項13に記載の工具。
【請求項19】
前記ピン受入れ部は、ピンを把持するアームを有している、請求項13に記載の工具。
【請求項20】
前記取付け工具は、前記内側ボディの近位方向への前記外側ボディに対する相対移動を許容するが、前記内側ボディの遠位方向への前記外側ボディに対する相対移動に抵抗する、相補的な保持構造をさらに有している、請求項13に記載の工具。
【請求項21】
前記相補的な保持構造は、前記内側ボディの近位方向への前記外側ボディに対するラチェット式の相対移動を許容する、一連の溝および山を有している、請求項20に記載の工具。
【請求項22】
前記相補的な保持構造が前記内側ボディの遠位方向への前記外側ボディに対する相対移動に抵抗しないように、該相補的な保持構造を解放する解放ボタンをさらに有している、請求項20に記載の工具。
【請求項23】
遠位アンカーを含むピンと、該ピンを通って延び、該遠位アンカーを広げられた形状で固定するようにされたロックワイヤとを少なくとも有する骨固定装置と共に使用される工具であって、
近位端と遠位端とを有するボディと、
前記骨固定装置の前記ロックワイヤを把持するようにされ、少なくとも1つの指把持部を有し、前記ボディに対して移動可能である把持装置と、
前記ボディの前記遠位端に設けられ、前記ピンの近位方向への前記骨固定装置の前記ロックワイヤに対する相対移動を防止するようにされたピン係合部と、
を有し、
前記工具は、前記指把持部に近位方向への力をかけ、前記ボディに遠位方向への力をかけたときに、前記骨固定装置の前記ガイドワイヤが把持され、前記骨固定装置の前記ピンに対して近位方向に引き込まれるようにされている工具。
【請求項24】
前記ピン係合部は、骨固定装置の近位ピンを取外し可能に受入れるようにされている、請求項23に記載の工具。
【請求項25】
前記指把持部の近位方向への前記ボディに対する相対移動を許容し、かつ遠位方向への前記ボディに対する相対移動に抵抗するようにされたラチェット機構をさらに有している、請求項23に記載の工具。
【請求項26】
前記指把持部の遠位方向への前記ボディに対する相対移動を許容するように、前記ラチェット機構を解放するようにされた解放機構をさらに有している、請求項25に記載の工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2006−519087(P2006−519087A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508931(P2006−508931)
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/006125
【国際公開番号】WO2004/078220
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(503352383)トリアージ メディカル、 インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】TRIAGE MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/006125
【国際公開番号】WO2004/078220
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(503352383)トリアージ メディカル、 インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】TRIAGE MEDICAL, INC.
【Fターム(参考)】
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