説明

骨密度測定装置

【課題】骨密度の経時変化を、皮質骨領域と海綿骨領域ごとに分けて表示する。
【解決手段】骨密度の一次元パターンから両端のぼけ領域を排除し、残りの部分である骨領域を所定の割合で両側部分とその間の内側部分とに分ける。この両側部分である皮質骨領域と、内側部分である海綿骨領域ごとに骨密度の算出を行う。算出された骨密度を記憶する。記憶された骨密度の経時変化を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は骨密度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨の疾病診断やその予防のために、骨密度、すなわち骨に含まれるミネラル(骨塩)の量を測定することが行われている。骨は、骨の表面を覆っている皮質骨と呼ばれる部分と、皮質骨の内側にあるスポンジの様な形状の海綿骨と呼ばれる部分を有する。骨密度は疾病等の病態により減少する場合があるが、病態の種類により、骨密度の減少する部位が異なる。例えば、カルシウム不足が続いた場合や骨粗鬆症の場合においては、早期において、海綿骨の骨密度の低下が見られる。また、血液透析を行っている患者の場合や副甲状腺機能亢進症などの場合は、皮質骨の骨密度の低下が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−236629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
病態により皮質骨の骨密度が変化する場合と、海綿骨の骨密度が変化する場合があるので、これらを区別して測定できることが望まれる。また、治療過程においては、骨密度の経時的な変化を知りたい場合がある。
【0005】
本発明は、皮質骨、海綿骨ごとの骨密度に関する情報を経時変化を提示できる骨密度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る骨密度測定装置は、海綿骨部分と皮質骨領域ごとに骨密度を算出する骨密度算出手段と、算出された骨密度を、測定日、被検者および測定対象の骨とその骨における部位と共に記憶する記憶手段と、ある被検者および測定した部位に関して、海綿骨領域及び皮質骨領域ごとに骨密度の経時変化を示すグラフを提供する経時変化グラフ提供手段と、を有する。
【0007】
また、前記骨密度算出手段は、骨を横切る計測面内で1方向に照射されて透過し、計測面内の計測ライン上で検出されたX線の透過量に基づき、骨密度の一次元パターンを取得する骨密度パターン取得手段と、骨密度の一次元パターンにおいて、骨領域の両端から第1所定長さ内側の位置から更に第2所定長さ内側の領域までを皮質骨領域とし、更にその内側を海綿骨領域とする区分手段と、皮質骨領域の骨密度を算出する皮質骨骨密度算出手段と、海綿骨領域の骨密度を算出する海綿骨骨密度算出手段と、を含むようにできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、皮質骨、海綿骨ごとの骨密度に関する経時変化の情報を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の骨密度測定装置の概略構成ブロック図である。
【図2】骨と走査されるX線の関係を示す図である。
【図3】骨の断面を示す図である。
【図4】骨密度の分布パターンを示す図である。
【図5】測定の流れを示す図である。
【図6】経時変化の表示例を示す図である。
【図7】記憶される情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本発明に係る骨密度測定装置10の概略を示す構成ブロック図である。骨密度測定装置10は、X線測定装置の構成を有し、X線が骨を透過する際の減衰量に基づき骨密度(骨塩量)を算出している。骨は、筋肉や脂肪等の軟組織に覆われており、この軟組織の影響を排除するために、骨密度測定装置10は、2種類のエネルギのX線を用いたDXA法により骨密度の測定を行っている。
【0011】
骨密度測定装置10は、腕、大腿、胴等の被検体12を載置するためのベッド14を有する。被検体12の測定対象となる骨16は、軟組織18に覆われている。ベッド14の下側には線状のX線ビームを出射するX線発生装置20が配置されている。X線発生装置20は、必要に応じて高エネルギX線、低エネルギX線を発生することができる。X線検出装置22は、被検体12を透過したX線を検出する装置である。X線発生装置20およびX線検出装置22は、被検体12を横断する方向に移動され、これにより被検体の横断面においてX線ビームが走査される。X線発生装置として扇状にビームを出射する装置および線状または帯状の検出領域を有するX線検出装置を用いることが可能であり、この場合はこれらの装置の移動は不要である。
【0012】
制御部24は、本装置の動作制御およびデータ処理、その管理を行うものである。検出されたX線の情報に基づく骨密度の算出についても、ここで実行される。記憶部26は、算出された骨密度を、被検者、対象部位および測定日等の情報と共に記憶する。表示部28は、検出されたX線データ、骨密度等の情報を表示して提供する。これらの情報を印刷して提供するプリンタを設けることも可能である。
【0013】
図2は、測定対象となる骨16と測定断面30の関係を示す図である。X線発生装置20が移動してX線源32から出射するX線ビーム34が走査されるとき、X線ビーム34により形成される平面(以下、計測面と記す。)36が骨16を横断するように被検体12が配置される。また、計測面36の、骨16と交差する部分が測定断面30である。計測面36において、骨16に関しX線源32と反対側に位置する直線(以下、計測ラインと記す。)38上にX線が投影されて、X線検出装置22により検出される。
【0014】
図3は、骨16の断面を示している。骨16は、表面を覆う皮質骨40とその内側の海綿骨42から構成される。皮質骨40は緻密な組織を有し、一方海綿骨42は海綿状の空隙の多い組織を有する。このため、X線の透過量は、相対的に皮質骨40では少なく、海綿骨42では多くなる。
【0015】
図4は、計測ライン38上で検出されたX線に基づき算出された骨密度を示すグラフである。横軸は計測ライン38上の位置を示し、縦軸は骨密度を示し、グラフは計測ライン38に沿った骨密度の一次元パターン(以下、骨密度パターンPと記す。)を表している。前述のように、皮質骨40においてはX線の透過量が少ないので、X線ビームが皮質骨40を通過する距離が長くなる両端付近は骨密度が高く示され、中央付近では低く示される。両側の領域を皮質骨領域A、内側の領域を海綿骨領域Bと記す。海綿骨領域Bの骨密度は、海綿骨42と、図3においてその上下に位置する皮質骨40を通過したX線に基づき算出されたものであり、海綿骨42のみの骨密度を表すものではない。しかしながら、後述するように、経時的な変化を観測するのであれば、領域Bが固定されていれば、変化の傾向は読み取れる。同様に、皮質骨領域Aについても、海綿骨42を通過したX線を若干含む領域となっていても許容される。
【0016】
皮質骨領域Aと海綿骨領域Bの定め方について説明する。骨16の投影範囲は、骨密度パターンPの立ち上がる2点の範囲である。この範囲の両端には、X線源が有限の大きさを有することに起因するぼけ領域が存在する。この領域を排除するため、両端から所定の範囲Dを排除し、残りの部分を骨領域Cとする。この骨領域Cを、更に皮質骨領域Aと、内側の海綿骨領域Bに分ける。二つの領域A,Bの割合は、測定対象の骨の種類、またその骨のどの位置(部位)かにより予め定められている。基本的には、皮質骨領域Aは海綿骨領域Bの左右に等しい幅で設定される。ただし、対象Cの骨、部位によって予め左右の比を定めていてもよい。それぞれの領域ごとに、骨密度パターンPの平均値を求め、それぞれの領域の骨密度とする。また、領域ごとの骨密度を求める際に、皮質骨領域Aにおいて、骨密度の値の低い10%の範囲を排除して、残りの90%の範囲の平均をとり、海綿骨領域Bの骨密度の値の高い10%の範囲を排除して残りの90%の範囲の平均をとるようにもできる。海綿骨領域Bのうち高い骨密度が示される部分は、皮質骨40の影響を強く受けている可能性があり、この影響を少なくするために上記のような処理を行う。
【0017】
図5は、測定の流れを示す図である。計測面36内でX線を照射して、計測ライン38上での投影像に基づき骨密度の測定を行う(S100)。この結果、すなわち図4に示す骨密度パターンPを表示部28に表示する(S102)。次に、骨密度パターンPから骨領域Cを求める(S104)。これは、前述のように骨密度パターンPの両端から所定の範囲Dを除くものであり、これによりぼけによる影響を排除する。さらに、皮質骨領域Aと海綿骨領域Bを決定する(S106)。この決定は、骨の種類、部位ごとに定められた割合に基づきなされる。定められた皮質領域A、海綿骨領域Bごとに骨密度を算出し、またこれに加えて骨領域C全体の骨密度を算出してもよい(S108)。算出された骨密度と、被検者、測定対象の骨の種類、その骨の部位、測定日等の情報を記憶部26に記録させる(S110)。次に、経時変化を様子を示すために、同一の被検者の過去に記録された情報を読み出し(S112)、これを表示する(S114)。表示は、例えば図6のようにする。横軸に時間、縦軸に骨密度値をとり、皮質骨領域の骨密度「□」、海綿骨領域の骨密度「○」、骨領域の骨密度「△」をプロットする。また、投与した薬剤の種類、量を同時に表示するようにしてもよい。
【0018】
各測定時において、測定対象の骨の種類、部位および皮質骨領域Aと海綿骨領域Bの割合が固定されていれば、二つの領域A,Bが皮質骨の部分と海綿骨の部分を完全に分離したものでなくても、相対的な比較は可能であり、変化の傾向を知ることはできる。これにより、骨の部分ごとの骨密度の変化、改善の程度を知ることが可能である。
【0019】
図7は、測定結果の記録内容を示している。被検者の氏名(A氏、B氏・・・)、測定年月日(20XX年Y月Z日)、測定対象骨(前腕)、その部位等が記録される。測定の部位は、測定対象となる骨の種類ごとに定められていて、例えば骨の端から、骨全長の1/3の位置などと定められている。また、骨の種類、部位ごとに、皮質骨領域Aの割合を定めている。この割合は、各測定時点において、常に同じ値が用いられる。そして、部位ごと、領域ごとの算出された骨密度が記録される。
【0020】
以上の実施形態においては、DXA法を用いた骨密度測定に関して説明したが、骨の横断面内で、一方向からビームを照射し、ビームの投影像に基づき骨密度を測定する方法についても同様に皮質骨領域と海綿骨領域ごとの経時変化の表示を行うことができる。また、超音波の伝達速度を利用して骨密度の測定を行う装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 骨密度測定装置、12 被検体、16 骨、20 X線発生装置、22 X線検出装置、24 制御部、26 記憶部、28 表示部、40 皮質骨、42 海綿骨、A 皮質骨領域、B 海綿骨領域、C 骨領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海綿骨領域と皮質骨領域ごとに骨密度を算出する骨密度算出手段と、
算出された骨密度を、測定日、被検者および測定対象の骨とその骨における部位と共に記憶する記憶手段と、
ある被検者および測定した部位に関して、海綿骨領域及び皮質骨領域ごとに骨密度の経時変化を示すグラフを提供する経時変化グラフ提供手段と、
を有する、骨密度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の骨密度測定装置であって、
骨密度算出手段は、
骨を横切る計測面内で1方向に照射されて透過し、計測面内の計測ライン上で検出されたX線の透過量に基づき、骨密度の一次元パターンを取得する骨密度パターン取得手段と、
骨密度の一次元パターンにおいて、骨領域の両端から第1所定長さ内側の位置から更に第2所定長さ内側の領域までを皮質骨領域とし、更にその内側を海綿骨領域とする区分手段と、
皮質骨領域の骨密度を算出する皮質骨骨密度算出手段と、
海綿骨領域の骨密度を算出する海綿骨骨密度算出手段と、
を含む、
骨密度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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