骨接合術用具
【課題】せん断強度の小さい材質からなる脆弱なねじをねじ込む際に発生する縦割れ、及びカムアウトなどの問題を防ぎ、ねじを所定の位置に確実に固定することのできる骨接合術用具を提供する。
【解決手段】骨にねじ込むべき骨接合ねじの頭部に係合するドライバ2を設け、このドライバの先端部を骨接合ねじと同径に形成すると共に、当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、そして骨接合ねじとドライバの先端部のねじの両方に螺合する長ナット3を設け、この長ナットを介して骨接合ねじとドライバを一体的に連結し、さらに前記ドライバの外周に装着するソケット筒5を設け、ソケット筒の先端開口部内側には長ナットに嵌合すべきスプライン溝を形成し、このソケット筒をドライバに対しその長さ方向に摺動自在に且つドライバを中心に旋回自在にし、以ってソケット筒のスプライン溝を前記長ナットに嵌合して長ナットを旋回乃至固定するようにした。
【解決手段】骨にねじ込むべき骨接合ねじの頭部に係合するドライバ2を設け、このドライバの先端部を骨接合ねじと同径に形成すると共に、当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、そして骨接合ねじとドライバの先端部のねじの両方に螺合する長ナット3を設け、この長ナットを介して骨接合ねじとドライバを一体的に連結し、さらに前記ドライバの外周に装着するソケット筒5を設け、ソケット筒の先端開口部内側には長ナットに嵌合すべきスプライン溝を形成し、このソケット筒をドライバに対しその長さ方向に摺動自在に且つドライバを中心に旋回自在にし、以ってソケット筒のスプライン溝を前記長ナットに嵌合して長ナットを旋回乃至固定するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨接合術の際に骨を固定するのに用いられる骨接合術用ねじを、骨折部に埋込むための骨接合術用具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨接合術においては、チタンなどの金属製の骨接合ねじを骨折部に埋込んで骨を固定する術式が一般的に行なわれており、そのために使用される特殊な金属性ねじやこのねじに使用するドライバーも出願されている(特許文献1)。
しかし、生体内にある金属は腐食のおそれや感染巣を提供する危険があるため、骨が癒合した後には金属製ねじを除去するための再手術が必要であり、患者に麻酔の危険性や精神的、身体的負担を強いることになる。
【0003】
生体内で周囲の骨と一体化し、最終的には正常な骨に置換されるような生体吸収性の材料(例えば骨、人工骨、生体内吸収性ポリマー)で骨接合ねじを作製すれば、骨が癒合した後に再手術して骨接合ねじを除去する必要がなく、患者の負担を大幅に軽減できる。
【0004】
しかし、上記のような材料で形成したねじは、金属に比較してせん断強度が小さいため、ねじ挿入時のねじ込みトルクが大きくなると、ねじ頭部に縦割れが生じて破壊されやすい。
また、手術する部位によっては、深く狭い作業空間でねじを骨折部に埋込む場合があり、このときはねじとドライバの嵌合部を手で保持しにくかったり、又は保持できなかったりして、ねじの頭部が崩れるカムアウト現象が生じやすく作業性が悪い。
【特許文献1】特開平10−272142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
せん断強度の小さい材質からなる脆弱なねじをねじ込む際に発生する縦割れ、及びカムアウトなどの問題を防ぎ、ねじを所定の位置に確実に固定することのできる骨接合術用具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載のごとく、骨にねじ込むべき骨接合ねじの頭部に係合するドライバを設け、このドライバの先端部を骨接合ねじと同径に形成すると共に、当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、そして骨接合ねじとドライバの先端部のねじの両方に螺合する長ナットを設け、この長ナットを介して骨接合ねじとドライバを一体的に連結し、さらに前記ドライバの外周に装着するソケット筒を設け、ソケット筒の先端開口部内側には長ナットに嵌合すべきスプライン溝を形成し、このソケット筒をドライバに対しその長さ方向に摺動自在に且つドライバを中心に旋回自在にし、以ってソケット筒のスプライン溝を前記長ナットに嵌合して長ナットを旋回乃至固定するようにした。
【0007】
請求項2記載のごとく、前記長ナットを光透過性の材質により形成した。
【0008】
請求項3記載のごとく、前記ドライバの先端部にねじのないねじ無し部を形成した。
【0009】
請求項4記載のごとく、前記ドライバにその長さ方向に沿った埋込み溝を形成し、これに細線状の突出し体を収容して、この突出し体を前進して突出し体の先端で骨接合ねじの頭部を突いて前記ドライバと骨接合ねじを切離すようにした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のごとく、ドライバの先端部をねじと同径に形成すると共に当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、骨接合ねじとドライバ先端部のねじとの両方に螺合する長ナットを設けたことにより、長ナットを介して骨接合ねじとドライバとを一体的に連結して、カムアウト現象を防止し骨接合ねじを手で保持できないような狭い空間でも使用することができると共に、骨接合ねじの頭部が長ナットと密着するため、ねじの縦割れをも防止することができる。
【0011】
請求項2記載のごとく、長ナットを光透過性の材質で形成したことにより、ねじとドライバとの係合状態及び係合位置を観察しながら作業が出来るため作業性が向上する。
【0012】
請求項3記載のごとく、ドライバの先端周面にねじのないねじ無し部を形成したことにより、埋込み式のねじを使用してねじを骨折部に埋込んでも、ドライバの先端は螺合しないためドライバとねじとの係合状態を解除してドライバを引抜くことができる。
【0013】
請求項4記載のごとく、ドライバに形成した埋込み溝に突出し体を摺動自在に収容してねじの頭部を突いてドライバと切離す切離し機構を設けたことにより、ねじと固く係合したドライバを無理に抜こうとしてねじが設置部から抜けたり、ドライバをこねてねじの頭部を損傷することを防ぐ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の詳細を実施形態について述べる。図1は本発明に係る骨接合術用具1の部分断面図である。骨接合術用具1はドライバ2、長ナット3及びグリップ4とからなり、図では長ナット3及びグリップ4を断面で図示している。
ドライバ2はドライバビット部6とハンドル部7とを有し、これらドライバビット部6とハンドル部7とは一体的に又は着脱自在に構成される。また、ドライバ2は略円筒形状のグリップ4に摺動自在に挿通される。
【0015】
図2はドライバビット部6の拡大側面図である。ドライバビット部6の先端にはねじとの係合部11を設ける。ここではマイナス型の係合部11を備えたドライバビット部6を示している。また、ドライバビット部6の先端部の周面にはねじ山を設けて雄ねじ部8を形成する。このとき、ドライバビット部6の先端から所定の距離だけねじ山を形成しない欠損部10を設ける。この欠損部10の長さは例えば1mmないし4mm程度である。
【0016】
図3は骨折した骨を固定するために骨折部にねじ込まれるねじを示す斜視図である。ここで、ねじは止めねじ9で、全長にわたって周面にねじ山が形成され、また頭部には被係合部12としてすり割りが形成されている。この止めねじ9はドライバビット部6の先端部と同径で、雄ねじ部8に設けたねじ山と同じピッチのねじ山を有する。
【0017】
ドライバ2とねじとの係合はマイナス型のほかに、プラス型やトルクス型などの特殊形状、四角型や六角型などの多角形、楕円や半円などがあり、非円形形状であればよい。
頭部の突出が問題になるような関節内骨折などには、このような埋込み式のねじが利用される。
【0018】
ドライバビット部6の雄ねじ部8と止めねじ9の両方に長ナット3を螺合して、ドライバ2と止めねじ9とが連結される。長ナット3は光透過性を備えた、例えばポリカーボネートやガラスなどで形成するとよい。
【0019】
図4はグリップ4の斜視図である。グリップ4は略円筒形状をしており、ドライバ2を摺動自在に装着する。先端側にはスプライン溝を備えたソケット筒5を形成し、グリップ4をスライドさせることにより、ドライバビット部6の雄ねじ部8に螺合した長ナット3に嵌合可能に構成する。
【0020】
例えば図5に示すように、長ナット3が六角ナットの場合にはソケット筒5は六角型やヘックスローブ型であるが、長ナット3とグリップ4のソケット筒5との嵌合は、他にも三角形や四角形などの多角形又は楕円や半円などの形状をとることができる。
【0021】
上記のごとく構成した骨接合術用具は、まずグリップ4にドライバ2を挿通した状態でドライバビット部6の係合部11にねじを係合し、ドライバビット部6に形成した雄ねじ部8と係合したねじとの両者に長ナット3を螺合して、ドライバ2とねじとを連結する。
【0022】
次に、ねじの先端を骨折部の埋込個所に充てがい、ドライバ2を回旋させてねじをねじ込む。そして、長ナット3が骨折部表面に達したら、図6に示すように、グリップ4をスライドしてソケット筒5を長ナット3に嵌合し、さらにグリップ4を把持しながらドライバ2を回旋させてねじを所望の位置までねじ込む。
【0023】
ドライバ2の回旋によってねじと一体となって螺進していた長ナット3にソケット筒5を嵌合すると、グリップ4を把持しているため長ナット3は回旋が規制されて螺進しなくなり、ドライバ2の回旋によってねじのみが螺進して骨折部にねじ込まれる。
【0024】
本実施形態において、ねじは止めねじ9であるので骨内に埋め込むことができる。ねじを骨折部にねじ込むとともにドライバビット部6も同じく骨内に進入するが、ドライバビット部6の先端部にはねじ山を形成していない欠損部10が設けてあるため、所望の深さまでねじをねじ込んでもドライバ2は骨折部と螺合せず、引抜くことができる。
【0025】
ドライバ2とネジとを連結するとき、長ナット3を光透過性を備えた材質で形成すると、係合位置や係合状態を目視できるため作業性が良い。さらに、例えば長ナット3を光透過性を備えたポリカーボネートで形成すると、ポリカーボネートは弾力性を有するため、ねじと適度な状態で螺合してねじ山を壊しにくい。また、長ナット3をガラスで形成すると透明で係合部が見やすく作業性に優れた長ナット3が得られる。
【0026】
また、長ナットを介して骨接合ねじとドライバとを一体的に連結したことにより、カムアウト現象を防止し骨接合ねじを手で保持できないような狭い空間でも使用することができると共に、骨接合ねじの頭部が長ナットと密着するため、ねじの縦割れをも防止することができる。
【0027】
次に、ねじの第2の実施形態について、図7及び図8を参照して詳細に説明する。図7はねじの第2の実施形態を示す斜視図である。本実施形態において、ねじはボルトねじ9aであり、このボルトねじ9aの頭部には雄ねじ13が形成されている。この頭部の雄ねじ13は、ドライバビット部6の先端と同径で雄ねじ部8と同じピッチのねじ山を有する。
【0028】
本実施形態のボルトねじ9aの場合、骨折部にボルトねじ9aをねじ込んで、長ナット3が骨折部表面に達し、図8に示すように、長ナット3にソケット筒5を嵌合して、さらにドライバ2を回旋してねじを締結した後、ドライバ2は固定したままでドライバ2の回旋方向と逆向きにグリップ4を回旋してボルトねじ9aの進行方向と逆向きに長ナット3を螺進させて、長ナット3とボルトねじ9aとの螺合を解除する。
【0029】
次に、図9ないし図16を参照して骨接合術用具の第2の実施形態について詳細に説明する。図9は骨接合術用具の第2の実施形態の側面図である。本実施形態では骨接合術用具1は切離し機構14を有する。切離し機構14はドライバ2の長さ方向に埋込み溝15を形成し、この埋込み溝15に細線状の突出し体16をスライド自在に装着してなり、突出し体16をスライドさせて、その先端がドライバ2の先端から突出するように構成される。
【0030】
埋込み溝15はドライバビット部6の軸方向に1条又は複数条の溝孔17を形成してなる。本実施形態では、図10に示すように、ドライバビット部6の周を等分するように2条の溝孔17を設けるとともに、この溝孔17のハンドル部7側にスリット18を設けて両溝孔17を連結して埋込み溝15を形成している。
また、この溝孔17は係合部11と干渉しないように形成する。本実施形態ではマイナス型の係合部11を備えたドライバ2のマイナス刃の向きと直交する位置に溝孔17を設けて埋込み溝15を形成している。
【0031】
図11は本実施形態における突出し体16の斜視図である。突出し体16は埋込み溝15の前記実施形態に合わせてその先端19を二股に形成してある。この先端19の一方を前記スリット18に通してドライバ2に装着し、両先端19をそれぞれ溝孔17上に位置させる。突出し体16はスリット18の長さだけスライドさせることができる。突出し体16をスライドさせると、先端19がドライバ2の先端から突出する。
【0032】
図12は本実施形態の骨接合術用具の断面図である。ねじ9とこれに係止したドライバ2の先端部に形成した雄ねじ部8とに長ナット3とを螺合して連結し、スプライン溝を形成したソケット筒5を備えたグリップ4を取付け、さらにドライバ2の長さ方向に沿って形成された溝孔17とスリット18に突出し体15を装着している。 突出し体15とグリップ4とが干渉しないようにグリップ4は短く形成されている。
【0033】
図12に示すように、本実施形態の切離し機構14はねじをねじ込んだ後、ねじとドライバ2との係合を解除してドライバ2を引抜く際に用いる。ドライバ2とねじとの係合状態によってはドライバ2を引抜きにくいことがあるため、このときは、突出し体16をスライドし、先端19をドライバ2の先端から突出させてねじの頭部に当接し、ねじの頭部を押さえながらドライバ2を引抜く。
【0034】
本実施形態に係る骨接合術用具は、ドライバに形成した埋込み溝に突出し体を摺動自在に収容してねじの頭部を突いてドライバと切離す切離し機構を設けたことにより、ねじと固く係合したドライバを無理に抜こうとしてねじが設置部から抜けたり、ドライバをこねてねじの頭部を損傷するのを防ぐことができる。
【0035】
以下、切離し機構の第2及び第3の実施形態について、それぞれ図13ないし図14及び図15ないし図16を参照して説明する。
図13は切離し機構14の第2の実施形態を示すドライバビット部6の正面図である。本実施形態において、埋込み溝15はドライバ2の中央部にドライバ2のマイナス刃と直行する向きのスリット状の溝孔17aを設けて形成され、この溝孔17aに、例えば図14に示すような突出し体16をスリット18を介して装着する。
【0036】
図15は切離し機構14の第3の実施形態を示すドライバビット部6の正面図である。本実施形態においては、ドライバの係合部11は六角型で、埋込み溝15はドライバ2の中央部に溝孔17bを設けて形成され、この溝孔17bに、例えば図15に示すような突出し体16をスリット18を介して装着する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】骨接合術用具の部分断面図
【図2】ドライバビット部の拡大側面図
【図3】ねじの斜視図
【図4】グリップの斜視図
【図5】図1のA−A断面図
【図6】グリップをスライドさせた骨接合術用具の部分断面図
【図7】ねじの第2の実施形態を示す斜視図
【図8】ねじの第2の実施形態に係る骨接合術用具の部分断面図
【図9】骨接合術用具の第2の実施形態の側面図
【図10】ドライバビット部の先端の正面図
【図11】押込具の斜視図
【図12】骨接合術用具の第2の実施形態の部分断面図
【図13】切離し機構の第2の実施形態のドライバビット部の正面図
【図14】切離し機構の第2の実施形態にかかる押込具の斜視図
【図15】切離し機構の第3の実施形態のドライバビット部の正面図
【図16】切離し機構の第3の実施形態にかかる押込具の斜視図
【符号の説明】
【0038】
1 骨接合術用具
2 ドライバ
3 長ナット
4 グリップ
5 ソケット筒
6 ドライバビット部
7 ハンドル部
8 雄ねじ部
9 止めねじ
9a ボルトねじ
10 欠損部
11 係合部
12 被係合部
13 雄ねじ
14 切離し機構
15 埋込み溝
16 突出し体
17 溝孔
18 スリット
19 先端
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨接合術の際に骨を固定するのに用いられる骨接合術用ねじを、骨折部に埋込むための骨接合術用具に関する。
【背景技術】
【0002】
骨接合術においては、チタンなどの金属製の骨接合ねじを骨折部に埋込んで骨を固定する術式が一般的に行なわれており、そのために使用される特殊な金属性ねじやこのねじに使用するドライバーも出願されている(特許文献1)。
しかし、生体内にある金属は腐食のおそれや感染巣を提供する危険があるため、骨が癒合した後には金属製ねじを除去するための再手術が必要であり、患者に麻酔の危険性や精神的、身体的負担を強いることになる。
【0003】
生体内で周囲の骨と一体化し、最終的には正常な骨に置換されるような生体吸収性の材料(例えば骨、人工骨、生体内吸収性ポリマー)で骨接合ねじを作製すれば、骨が癒合した後に再手術して骨接合ねじを除去する必要がなく、患者の負担を大幅に軽減できる。
【0004】
しかし、上記のような材料で形成したねじは、金属に比較してせん断強度が小さいため、ねじ挿入時のねじ込みトルクが大きくなると、ねじ頭部に縦割れが生じて破壊されやすい。
また、手術する部位によっては、深く狭い作業空間でねじを骨折部に埋込む場合があり、このときはねじとドライバの嵌合部を手で保持しにくかったり、又は保持できなかったりして、ねじの頭部が崩れるカムアウト現象が生じやすく作業性が悪い。
【特許文献1】特開平10−272142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
せん断強度の小さい材質からなる脆弱なねじをねじ込む際に発生する縦割れ、及びカムアウトなどの問題を防ぎ、ねじを所定の位置に確実に固定することのできる骨接合術用具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載のごとく、骨にねじ込むべき骨接合ねじの頭部に係合するドライバを設け、このドライバの先端部を骨接合ねじと同径に形成すると共に、当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、そして骨接合ねじとドライバの先端部のねじの両方に螺合する長ナットを設け、この長ナットを介して骨接合ねじとドライバを一体的に連結し、さらに前記ドライバの外周に装着するソケット筒を設け、ソケット筒の先端開口部内側には長ナットに嵌合すべきスプライン溝を形成し、このソケット筒をドライバに対しその長さ方向に摺動自在に且つドライバを中心に旋回自在にし、以ってソケット筒のスプライン溝を前記長ナットに嵌合して長ナットを旋回乃至固定するようにした。
【0007】
請求項2記載のごとく、前記長ナットを光透過性の材質により形成した。
【0008】
請求項3記載のごとく、前記ドライバの先端部にねじのないねじ無し部を形成した。
【0009】
請求項4記載のごとく、前記ドライバにその長さ方向に沿った埋込み溝を形成し、これに細線状の突出し体を収容して、この突出し体を前進して突出し体の先端で骨接合ねじの頭部を突いて前記ドライバと骨接合ねじを切離すようにした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のごとく、ドライバの先端部をねじと同径に形成すると共に当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、骨接合ねじとドライバ先端部のねじとの両方に螺合する長ナットを設けたことにより、長ナットを介して骨接合ねじとドライバとを一体的に連結して、カムアウト現象を防止し骨接合ねじを手で保持できないような狭い空間でも使用することができると共に、骨接合ねじの頭部が長ナットと密着するため、ねじの縦割れをも防止することができる。
【0011】
請求項2記載のごとく、長ナットを光透過性の材質で形成したことにより、ねじとドライバとの係合状態及び係合位置を観察しながら作業が出来るため作業性が向上する。
【0012】
請求項3記載のごとく、ドライバの先端周面にねじのないねじ無し部を形成したことにより、埋込み式のねじを使用してねじを骨折部に埋込んでも、ドライバの先端は螺合しないためドライバとねじとの係合状態を解除してドライバを引抜くことができる。
【0013】
請求項4記載のごとく、ドライバに形成した埋込み溝に突出し体を摺動自在に収容してねじの頭部を突いてドライバと切離す切離し機構を設けたことにより、ねじと固く係合したドライバを無理に抜こうとしてねじが設置部から抜けたり、ドライバをこねてねじの頭部を損傷することを防ぐ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の詳細を実施形態について述べる。図1は本発明に係る骨接合術用具1の部分断面図である。骨接合術用具1はドライバ2、長ナット3及びグリップ4とからなり、図では長ナット3及びグリップ4を断面で図示している。
ドライバ2はドライバビット部6とハンドル部7とを有し、これらドライバビット部6とハンドル部7とは一体的に又は着脱自在に構成される。また、ドライバ2は略円筒形状のグリップ4に摺動自在に挿通される。
【0015】
図2はドライバビット部6の拡大側面図である。ドライバビット部6の先端にはねじとの係合部11を設ける。ここではマイナス型の係合部11を備えたドライバビット部6を示している。また、ドライバビット部6の先端部の周面にはねじ山を設けて雄ねじ部8を形成する。このとき、ドライバビット部6の先端から所定の距離だけねじ山を形成しない欠損部10を設ける。この欠損部10の長さは例えば1mmないし4mm程度である。
【0016】
図3は骨折した骨を固定するために骨折部にねじ込まれるねじを示す斜視図である。ここで、ねじは止めねじ9で、全長にわたって周面にねじ山が形成され、また頭部には被係合部12としてすり割りが形成されている。この止めねじ9はドライバビット部6の先端部と同径で、雄ねじ部8に設けたねじ山と同じピッチのねじ山を有する。
【0017】
ドライバ2とねじとの係合はマイナス型のほかに、プラス型やトルクス型などの特殊形状、四角型や六角型などの多角形、楕円や半円などがあり、非円形形状であればよい。
頭部の突出が問題になるような関節内骨折などには、このような埋込み式のねじが利用される。
【0018】
ドライバビット部6の雄ねじ部8と止めねじ9の両方に長ナット3を螺合して、ドライバ2と止めねじ9とが連結される。長ナット3は光透過性を備えた、例えばポリカーボネートやガラスなどで形成するとよい。
【0019】
図4はグリップ4の斜視図である。グリップ4は略円筒形状をしており、ドライバ2を摺動自在に装着する。先端側にはスプライン溝を備えたソケット筒5を形成し、グリップ4をスライドさせることにより、ドライバビット部6の雄ねじ部8に螺合した長ナット3に嵌合可能に構成する。
【0020】
例えば図5に示すように、長ナット3が六角ナットの場合にはソケット筒5は六角型やヘックスローブ型であるが、長ナット3とグリップ4のソケット筒5との嵌合は、他にも三角形や四角形などの多角形又は楕円や半円などの形状をとることができる。
【0021】
上記のごとく構成した骨接合術用具は、まずグリップ4にドライバ2を挿通した状態でドライバビット部6の係合部11にねじを係合し、ドライバビット部6に形成した雄ねじ部8と係合したねじとの両者に長ナット3を螺合して、ドライバ2とねじとを連結する。
【0022】
次に、ねじの先端を骨折部の埋込個所に充てがい、ドライバ2を回旋させてねじをねじ込む。そして、長ナット3が骨折部表面に達したら、図6に示すように、グリップ4をスライドしてソケット筒5を長ナット3に嵌合し、さらにグリップ4を把持しながらドライバ2を回旋させてねじを所望の位置までねじ込む。
【0023】
ドライバ2の回旋によってねじと一体となって螺進していた長ナット3にソケット筒5を嵌合すると、グリップ4を把持しているため長ナット3は回旋が規制されて螺進しなくなり、ドライバ2の回旋によってねじのみが螺進して骨折部にねじ込まれる。
【0024】
本実施形態において、ねじは止めねじ9であるので骨内に埋め込むことができる。ねじを骨折部にねじ込むとともにドライバビット部6も同じく骨内に進入するが、ドライバビット部6の先端部にはねじ山を形成していない欠損部10が設けてあるため、所望の深さまでねじをねじ込んでもドライバ2は骨折部と螺合せず、引抜くことができる。
【0025】
ドライバ2とネジとを連結するとき、長ナット3を光透過性を備えた材質で形成すると、係合位置や係合状態を目視できるため作業性が良い。さらに、例えば長ナット3を光透過性を備えたポリカーボネートで形成すると、ポリカーボネートは弾力性を有するため、ねじと適度な状態で螺合してねじ山を壊しにくい。また、長ナット3をガラスで形成すると透明で係合部が見やすく作業性に優れた長ナット3が得られる。
【0026】
また、長ナットを介して骨接合ねじとドライバとを一体的に連結したことにより、カムアウト現象を防止し骨接合ねじを手で保持できないような狭い空間でも使用することができると共に、骨接合ねじの頭部が長ナットと密着するため、ねじの縦割れをも防止することができる。
【0027】
次に、ねじの第2の実施形態について、図7及び図8を参照して詳細に説明する。図7はねじの第2の実施形態を示す斜視図である。本実施形態において、ねじはボルトねじ9aであり、このボルトねじ9aの頭部には雄ねじ13が形成されている。この頭部の雄ねじ13は、ドライバビット部6の先端と同径で雄ねじ部8と同じピッチのねじ山を有する。
【0028】
本実施形態のボルトねじ9aの場合、骨折部にボルトねじ9aをねじ込んで、長ナット3が骨折部表面に達し、図8に示すように、長ナット3にソケット筒5を嵌合して、さらにドライバ2を回旋してねじを締結した後、ドライバ2は固定したままでドライバ2の回旋方向と逆向きにグリップ4を回旋してボルトねじ9aの進行方向と逆向きに長ナット3を螺進させて、長ナット3とボルトねじ9aとの螺合を解除する。
【0029】
次に、図9ないし図16を参照して骨接合術用具の第2の実施形態について詳細に説明する。図9は骨接合術用具の第2の実施形態の側面図である。本実施形態では骨接合術用具1は切離し機構14を有する。切離し機構14はドライバ2の長さ方向に埋込み溝15を形成し、この埋込み溝15に細線状の突出し体16をスライド自在に装着してなり、突出し体16をスライドさせて、その先端がドライバ2の先端から突出するように構成される。
【0030】
埋込み溝15はドライバビット部6の軸方向に1条又は複数条の溝孔17を形成してなる。本実施形態では、図10に示すように、ドライバビット部6の周を等分するように2条の溝孔17を設けるとともに、この溝孔17のハンドル部7側にスリット18を設けて両溝孔17を連結して埋込み溝15を形成している。
また、この溝孔17は係合部11と干渉しないように形成する。本実施形態ではマイナス型の係合部11を備えたドライバ2のマイナス刃の向きと直交する位置に溝孔17を設けて埋込み溝15を形成している。
【0031】
図11は本実施形態における突出し体16の斜視図である。突出し体16は埋込み溝15の前記実施形態に合わせてその先端19を二股に形成してある。この先端19の一方を前記スリット18に通してドライバ2に装着し、両先端19をそれぞれ溝孔17上に位置させる。突出し体16はスリット18の長さだけスライドさせることができる。突出し体16をスライドさせると、先端19がドライバ2の先端から突出する。
【0032】
図12は本実施形態の骨接合術用具の断面図である。ねじ9とこれに係止したドライバ2の先端部に形成した雄ねじ部8とに長ナット3とを螺合して連結し、スプライン溝を形成したソケット筒5を備えたグリップ4を取付け、さらにドライバ2の長さ方向に沿って形成された溝孔17とスリット18に突出し体15を装着している。 突出し体15とグリップ4とが干渉しないようにグリップ4は短く形成されている。
【0033】
図12に示すように、本実施形態の切離し機構14はねじをねじ込んだ後、ねじとドライバ2との係合を解除してドライバ2を引抜く際に用いる。ドライバ2とねじとの係合状態によってはドライバ2を引抜きにくいことがあるため、このときは、突出し体16をスライドし、先端19をドライバ2の先端から突出させてねじの頭部に当接し、ねじの頭部を押さえながらドライバ2を引抜く。
【0034】
本実施形態に係る骨接合術用具は、ドライバに形成した埋込み溝に突出し体を摺動自在に収容してねじの頭部を突いてドライバと切離す切離し機構を設けたことにより、ねじと固く係合したドライバを無理に抜こうとしてねじが設置部から抜けたり、ドライバをこねてねじの頭部を損傷するのを防ぐことができる。
【0035】
以下、切離し機構の第2及び第3の実施形態について、それぞれ図13ないし図14及び図15ないし図16を参照して説明する。
図13は切離し機構14の第2の実施形態を示すドライバビット部6の正面図である。本実施形態において、埋込み溝15はドライバ2の中央部にドライバ2のマイナス刃と直行する向きのスリット状の溝孔17aを設けて形成され、この溝孔17aに、例えば図14に示すような突出し体16をスリット18を介して装着する。
【0036】
図15は切離し機構14の第3の実施形態を示すドライバビット部6の正面図である。本実施形態においては、ドライバの係合部11は六角型で、埋込み溝15はドライバ2の中央部に溝孔17bを設けて形成され、この溝孔17bに、例えば図15に示すような突出し体16をスリット18を介して装着する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】骨接合術用具の部分断面図
【図2】ドライバビット部の拡大側面図
【図3】ねじの斜視図
【図4】グリップの斜視図
【図5】図1のA−A断面図
【図6】グリップをスライドさせた骨接合術用具の部分断面図
【図7】ねじの第2の実施形態を示す斜視図
【図8】ねじの第2の実施形態に係る骨接合術用具の部分断面図
【図9】骨接合術用具の第2の実施形態の側面図
【図10】ドライバビット部の先端の正面図
【図11】押込具の斜視図
【図12】骨接合術用具の第2の実施形態の部分断面図
【図13】切離し機構の第2の実施形態のドライバビット部の正面図
【図14】切離し機構の第2の実施形態にかかる押込具の斜視図
【図15】切離し機構の第3の実施形態のドライバビット部の正面図
【図16】切離し機構の第3の実施形態にかかる押込具の斜視図
【符号の説明】
【0038】
1 骨接合術用具
2 ドライバ
3 長ナット
4 グリップ
5 ソケット筒
6 ドライバビット部
7 ハンドル部
8 雄ねじ部
9 止めねじ
9a ボルトねじ
10 欠損部
11 係合部
12 被係合部
13 雄ねじ
14 切離し機構
15 埋込み溝
16 突出し体
17 溝孔
18 スリット
19 先端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨にねじ込むべき骨接合ねじの頭部に係合するドライバを設け、このドライバの先端部を骨接合ねじと同径に形成すると共に、当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、
そして骨接合ねじとドライバの先端部のねじの両方に螺合する長ナットを設け、この長ナットを介して骨接合ねじとドライバを一体的に連結し、
さらに前記ドライバの外周に装着するソケット筒を設け、ソケット筒の先端開口部内側には長ナットに嵌合すべきスプライン溝を形成し、
このソケット筒をドライバに対しその長さ方向に摺動自在に且つドライバを中心に旋回自在にし、以ってソケット筒のスプライン溝を前記長ナットに嵌合して長ナットを旋回乃至固定するようにしてなる骨接合術用具。
【請求項2】
前記長ナットを光透過性の材質により形成したことを特徴とする請求項1記載の骨接合術用具。
【請求項3】
前記ドライバの先端部にねじのないねじ無し部を形成したことを特徴とする請求項1記載の骨接合術用具。
【請求項4】
前記ドライバにその長さ方向に沿った埋込み溝を形成し、これに細線状の突出し体を収容して、この突出し体を前進して突出し体の先端で骨接合ねじの頭部を突いて前記ドライバと骨接合ねじを切離すようにしたことを特徴とする請求項1記載の骨接合術用具。
【請求項1】
骨にねじ込むべき骨接合ねじの頭部に係合するドライバを設け、このドライバの先端部を骨接合ねじと同径に形成すると共に、当該先端部外周に骨接合ねじと同じ形状のねじを形成し、
そして骨接合ねじとドライバの先端部のねじの両方に螺合する長ナットを設け、この長ナットを介して骨接合ねじとドライバを一体的に連結し、
さらに前記ドライバの外周に装着するソケット筒を設け、ソケット筒の先端開口部内側には長ナットに嵌合すべきスプライン溝を形成し、
このソケット筒をドライバに対しその長さ方向に摺動自在に且つドライバを中心に旋回自在にし、以ってソケット筒のスプライン溝を前記長ナットに嵌合して長ナットを旋回乃至固定するようにしてなる骨接合術用具。
【請求項2】
前記長ナットを光透過性の材質により形成したことを特徴とする請求項1記載の骨接合術用具。
【請求項3】
前記ドライバの先端部にねじのないねじ無し部を形成したことを特徴とする請求項1記載の骨接合術用具。
【請求項4】
前記ドライバにその長さ方向に沿った埋込み溝を形成し、これに細線状の突出し体を収容して、この突出し体を前進して突出し体の先端で骨接合ねじの頭部を突いて前記ドライバと骨接合ねじを切離すようにしたことを特徴とする請求項1記載の骨接合術用具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−175130(P2006−175130A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373719(P2004−373719)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トルクス
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【出願人】(599068371)株式会社 ナノ (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トルクス
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【出願人】(599068371)株式会社 ナノ (9)
【Fターム(参考)】
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