説明

骨用の安定化装置のためのばね部材、およびばね部材の製造方法

骨または椎骨のための安定化装置で使用するための弾性部材(1)が提供される。弾性部材(1)は、第1の端部およびこれと向かい合う第2の端部を備える実質的に円筒体として構成されており、円筒体は向かい合う端部の少なくとも一方に、骨接合ねじの軸部および/または頭部と結合するため、またはロッド区域と結合するための雌ねじ(4)を備える同軸の穴(2)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊柱外科または災害外科で使用するためのばね部材、このようなばね部材を備えている骨固定部材、骨固定部材を連結するためのこのようなばね部材を備えている弾性的なロッド状の部材、およびこのようなばね部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
骨折部位を固定するため、または脊柱を安定化させるために、骨ないし椎骨に定着させてプレートまたはロッドを介して連結する少なくとも2つの骨接合ねじで構成される、固定・安定化装置が知られている。このような剛性の高いシステムは、互いに相対的に固定された骨部分または椎骨の運動を許さない。
【0003】
しかしながら特定の適用事例については、安定化されるべき骨部分および椎骨が規制された限定的な運動を相互に行うことができる動的な安定化のほうが望ましい。動的な安定化装置を具体化する1つの可能性は、それぞれの骨固定部材を連結する剛性の高いロッドに代えて、弾性的な部材を使用することにある。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0109880A1号明細書より、それぞれのねじを連結するばねを挿入するための収容部分を備える、椎骨に定着されるべき第1および第2のねじと、そのようなばねとを含んでいる椎骨のための動的な安定化装置が公知である。ばね自体は、全体として、引張ばねのような形式で密着して隣接する巻回を備えるコイルばねの形態で構成されており、クランプねじを介して収容部分に固着される。しかしながらこの場合、ばねがその弾性のためにクランプねじの圧力から逸れていき、そのために、骨接合ねじとばねの間の固定が緩んでしまうという危険がある。この装置のさらに別の欠点は、ばねの弾性が、他のばね特性が同じならば、ばねの長さに依存して決まるという点にある。
【0005】
欧州特許出願公開第0669109B1号明細書より、2つの単軸の椎弓根スクリューと、椎弓根スクリューの収容部分にそれぞれクランプねじで取り付けられるテープとを含み、テープの上に張られた耐圧性の支持部材を有している、隣接する脊椎骨を安定化させるための安定化装置が公知である。しかしながらこのような安定化装置では、ねじりに対する安定化が実現されない。すでに上に説明した安定化装置の場合と同じく、両方の骨固定部材の連結部の弾性は、ばね部材の他の特性が同じであれば、ばね部材の長さないし骨固定部材の間隔に依存して決まる。
【0006】
米国特許出願公開第6,162,223号明細書より、各端部のところで骨固定部材と連結された固定ロッドが2部分で構成されており、固定ロッドの2つの部分は柔軟な継手部分を介して相互に結合されており、固定ロッドは継手部分の分だけ身体の外に出るように取り付けられる、たとえば手首の関節や膝関節などの関節のための固定装置が公知である。固定ロッドの両方の部分は継手部分と不動に結合されるのではなく、継手部分の穴に沿って自由に動くことができる。継手部分の直径は、2部分からなる固定ロッドとの結合形式の都合上、固定ロッドの直径よりも必ず大きい。この公知の固定装置は、その構造が複雑で広いスペースをとることから、脊柱またはその他の骨に体内で使用するのには適していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、簡単かつコンパクトに構成されており、容易に取り扱うことができる
と同時に使用時の安全性が高く、相互に連結されるべき椎骨や骨のための動的な安定化装置を構成するために他の部材とできるだけ多様な方法で組み合わせることができる、ばね部材を提供することである。さらに本発明の課題は、このようなばね部材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載のばね部材によって解決され、また、そのようなばね部材を製造する請求項17に記載の方法によって解決される。
【0009】
本発明の発展例は従属請求項に記載されている。
本発明は、ばね部材が、選択的に、弾性的なロッド状の部材を構成するためにさまざまな長さの剛性の高いロッド状の部材と組み合わせ可能であるか、または、弾性的な特性をもつ骨接合ねじを構成するためにさまざまな軸部および/または頭部と組み合わせ可能であるという利点を有している。このような弾性ロッドないし骨接合ねじは、使用するばね部材に応じて、軸方向における特定の圧縮能力・伸張能力といった所定の弾性特性と、特定の曲げ剛性・ねじり剛性とを有することになる。
【0010】
特に、ばね部材はさまざまな厚さのロッド状の構成部品と結合したり、あるいは、脊柱外科および/または災害外科で使用されるべき、さまざまな形状および長さのプレートと結合することができる。
【0011】
その他の構成要件と利点は、図面を参照した実施例の説明から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1aと図1bには、第1実施形態に基づくばね部材1が示されている。
このばね部材1は、同軸の穴2が貫通する円筒状のパイプと、半径方向で穴2に連通する、事前設定されたピッチで事前設定された長さにわたって円筒軸の方向へ螺旋状に壁部を延びる切欠き3とで構成されている。それによってコイルばねが形成されている。円筒軸の方向における螺旋状の切欠きの長さ、切欠きの高さ、螺旋のピッチ、および同軸の穴の直径は、ばね部材に対して働く軸方向力、曲げ力、およびねじり力に対して、コイルばねの希望する剛性が生じるように選択されている。ばね部材1は、その両方の自由端に接して、事前設定された長さにわたって延びる雌ねじ4,4’をそれぞれ有している。ばね部材の外径はそのつどの用途に応じて選択する。
【0013】
図2aに示す第1実施例では、ばね部材1は、弾性的なロッド状の部材30の構成要素である。弾性的なロッド状の部材30は、ばね部材1と、2つの円筒状のロッド切片31,31’とで構成されており、これらのロッド切片は各々の端部に、ばね部材1の雌ねじ4,4’と協働する雄ねじ33,33’をもつ円筒状の付加部32,32’をそれぞれ有している。ロッド切片とばね部材は、本実施例では、実質的に同一の外径を有している。ロッド切片31,31’とばね部材1の長さは、互いに関係なく、希望する用途の観点から選択可能である。ロッド状の部材は、たとえば脊柱に設けられた椎弓根スクリューを連結する役目をする。こうして形成されるロッド状の部材30は、ばね部材1の弾性特性により、所定の範囲内で圧縮力、伸長力、曲げ力、およびねじり力を受け止める。
【0014】
図2bには、剛性の高い第1のロッド切片81がばね部材1よりも大きい外径を有するとともに、剛性の高い第2のロッド切片81’がばね部材1よりも小さい外径を有していることによって弾性的なロッド状の部材30と異なる、弾性的なロッド状の部材80が示されている。別案として、両方のロッド切片がばね部材よりも大きい直径または小さい直径を有していてもよい。
【0015】
図3aは、ばね部材の第2実施例を示している。ここでのばね部材1は、多軸骨接合ねじとして構成された骨固定部材10の構成要素である。多軸骨接合ねじは、ばね部材1と、図示しない先端部を備える軸部12と、ねじ頭13とで構成されたねじ部材11を有している。
【0016】
軸部12は、骨にねじ込むための骨接合ねじ山24と、ばね部材1の雌ねじ4と協働する雄ねじを備える円筒状の付加部25とを有している。
【0017】
ねじ頭13は、円筒状の区域27と、これに接する、軸部12と同様にばね部材1の雌ねじ4’と協働する雄ねじを備える円筒状の付加部26とを有している。
【0018】
ねじ部材11は、無負荷状態で旋回可能なように収容部分14に保持されている。収容部分14は実質的に円筒状に構成されており、一方の端部に軸対称の方向を向いた第1の穴15を有しており、この穴の直径は、軸部12の直径よりも大きくねじ頭13の直径よりは小さい。さらに収容部分14は、同軸の第2の穴16を有しており、第2の穴は第1の穴15と向かい合うほうの端部が開いており、第2の穴の直径は、ねじ頭13が第1の穴15の縁部に当接するまで、開いた端部を通してねじ部材の軸部を第1の穴15へ挿通することができる程度の大きさとなっている。収容部分14は、自由端から第1の穴15の方向に延びるU字型の切欠き14’を有しており、この切欠きによって2つの自由脚部17,18が形成されている。これらの脚部17,18は、各々の自由端に接する領域に、ロッド20を固定するためのソケットヘッドねじ19の対応する雄ねじと協働する雌ねじを有している。
【0019】
さらに、ねじ頭13を収容部分14で固定するための押圧部材21が設けられており、この押圧部材は、ねじ頭13のほうを向いている側に球面状の切欠き22を有し、この切欠きの半径がねじ頭13の球穴状の区域の半径と実質的に等しくなるように構成されている。押圧部材21の外径は、収容部分14のなかで押圧部材21がねじ頭13に向かって変位可能であるように選択されている。さらに押圧部材21は、ねじ込み工具と係合するためにねじ頭13にある図示しない切欠きへアクセスするために、同軸の穴23を有している。
【0020】
使用時には、ばね部材1の雌ねじ4に軸部12の円筒状の付加部25をねじ込むとともに、雌ねじ4’にねじ頭13の円筒状の付加部26をねじ込んで、ねじ部材11を構成する。そして、このようにして構成されたねじ部材11を、ねじ頭13が第1の穴15の縁部に当接するまで、軸部12のほうを前にして第2の開口部を通して収容部分14へ挿入する。次いで、押圧部材21を球面状の切欠きのほうを前にして、第2の開口部16を通して収容部分14へ挿入する。それからねじ部材11を骨ないし椎骨にねじ込む。最後に、ロッド20を両方の脚部17および18の間から収容部分14に入れて、ねじ部材に対して相対的な収容部分の角度位置を調節し、ソケットヘッドねじ19で固定する。弾性区域によって、静止位置を中心とする運動が限定的に可能である。
【0021】
多軸ねじは上に説明した実施形態に限定されるものではなく、上に説明した3部分からなるねじ部材を備える、それ以外の任意の多軸ねじであってよい。たとえば使用時に、まず円筒状の付加部26のほうを前にしてねじ頭13を第2の穴16を通して収容部部14へ挿入してから、ばね部材1と軸部12をねじ頭12にねじ止めするようにすれば、図3aに示す実施例における第1の穴15は軸部12より直径が短くてよい。この場合、第1の穴15が、円筒状の付加部26および円筒状の区域27よりも大きい直径を有していれば十分である。別案として、ねじ頭13は円筒状の区域27なしで構成されていてもよい。その場合には、穴は付加部26を挿通可能な程度の大きさでありさえすればよい。
【0022】
あるいは収容部分は、ねじ部材を下方から挿入可能であり、押圧部材を介して収容部分のなかでクランプ止めされるように構成されていてもよい。その場合、図3aに示す穴15はねじ頭13の直径よりも大きい。
【0023】
ロッド固定部は、図3aに示す雌ねじに限定されるものではなく、外側のナットが追加的に設けられていてもよく、あるいは、どのような種類の任意のロッド固定部でも利用することもできる。
【0024】
ばね部材1が少なくとも部分的に骨表面から突出しているときは、ばね部材1は曲げ力、ならびに引張力と圧縮力を受け止めることができる。ばね部材が骨表面から突出していないときは、ばね部材11は、それにもかかわらず骨ないし椎骨が動いたときに若干撓曲することができる。それにより、好ましくない応力が発生することが防止される。
【0025】
図3bは、図3aのばね部材1の発展例を示している。図3bのばね部材640は内側に心材641を有している。心材641は各端部642のところで円筒状に構成されており、その直径は、弾性区域640の中空室へ心材を差込可能なように寸法決めされている。円筒状の区域642と弾性区域640は横方向に延びる穴を有しており、心材を固定するためのピン643がこの穴に差し込まれている。心材はそれぞれの円筒状の端部の間に、特に図3cから明らかなように、断面が実質的に長方形の区域644を有している。1つの変形例では、心材はこれ以外の断面を有しており、たとえば楕円形や非対称の断面を有している。この心材は、弾性区域の曲げ剛性および/またはねじり剛性の調整を可能にする。特定方向への曲げに対する弾性区域の剛性は、弾性区域内部における心材の向きに依存して決まる。心材は、弾性区域の材料と比べて剛性の低い材料で構成されているのが好ましい。図示した心材の固定方法は一例を示しているにすぎない。
【0026】
図4には脊柱のための安定化装置90が図示されており、ねじ部材93を備える2つの骨固定部材91,91’と、両方の骨固定部材を連結するための、本発明によるばね部材1をそれぞれ備える弾性的なロッド状の部材92とが用いられている。弾性的なロッド状の部材、およびねじ部材の多部分の構成により、少数の基本部材を組み合わせることで、異なる特性をもつ安定化装置90を得ることが可能である。安定化装置は、ばね部材を備える骨固定部材と、ばね部材を備えるロッド状の部材とを必ずしも含んでいなくてもよい。利用分野によっては、ロッド状の部材だけにばね部材を設けて、骨固定部材には剛性の高いばね部材を設けることも考えられる。
【0027】
図5には、第2実施形態によるばね部材40が示されている。第2実施形態によるばね部材40は、両方の雌ねじ4,4’に代えて、ばね部材の長さ全体にわたって形成された雌ねじ41が設けられているという点でのみ、第1実施形態によるばね部材1と異なっている。
【0028】
図6には、第3実施形態によるばね部材50が示されている。このばね部材は、第1および第2の実施形態とは違って、剛性の高い端部区域51および51’を有しており、ないしは、上に挙げた各実施形態とは異なる少ない数の螺旋巻回を有している。それにより、ばね部材の長さに関わりなく、ばね部材の弾性を設定することができる。
【0029】
図7aと図7bには、上に挙げた各実施形態とは異なり、180°だけ相互にオフセットされた、中心軸に向うように凹面状に成形されている2つの領域61を有する第4実施形態のばね部材60が示されている。中心軸の方向における領域61の長さL’は、最大でも螺旋の長さLと等しく、また、成形領域61の曲率半径はコイルばねの巻回部が貫通されないようになっている。このような構成により、ばね部材は中心軸に対して垂直な方向にくびれた構成となっており、したがって、この方向で剛性が低くなっている。それに
より、このばね部材は特定の用途にとって好都合な方向性のある剛性を有している。
【0030】
図8に示す第5実施形態に基づくばね部材72は、第1実施形態のばね部材1に加えて、穴に差し込まれたロッド状の心材71を有している。この心材は、一方では、ばね部材72に押圧力が及ぼされたときにストッパとしての役目をすることができる。他方では、心材71によって、曲げ力に対するばね部材72の剛性を高めることができる。
【0031】
図9に示している第6実施形態に基づくばね部材160は、一方の端部に、第1実施形態の場合のような雌ねじを備える穴に代えて、雄ねじを備える円筒状の付加部161を有している。これに応じて、ばね部材の当該端部と結合されるべき部材は、対応する雌ねじを備える穴をもつように構成されている。ばね部材の他方の端部は止まり穴162を備えており、この止まり穴には、上に説明した各実施形態の場合と同じく、ばね部材の端部に接して雌ねじ163が構成されている。
【0032】
図10に示す第7実施形態に基づくばね部材170は、両方の端部に、雄ねじを備える円筒状の付加部171,172をそれぞれ有している。
【0033】
第1および第5の実施形態の変形例として、ばね部材は貫通する穴を有していない。
本発明によるばね部材1のさらに別の利用例として、図11aには、ロッド状の部材31と、ばね部材1と、プレート101とで構成される連結部材100の分解図を見ることができる。ロッド状の部材31は、ばね部材1の一方の端部に接する雌ねじ4へねじ込むために、雄ねじ33を備える円筒状の付加部32を有している。同様にプレート101も、ばね部材1の他方の端部に接する雌ねじ4’へねじ込むために、雄ねじ103を備える円筒状の付加部102を有している。プレートは、ウェブ105を介して相互に連結された、平面図で見て円形の2つの区域104,104’で構成されている。ウェブ105の幅Bは、円形区域104,104’の直径Dよりも短い。円形区域と同軸に、皿頭ねじのための2つの穴106,106’がプレートに設けられている。図11bに見られるように、プレートの第1の面107は凹面状の湾曲を有しているのに対して、プレートの第2の面108は、骨にこの面を当接させるために凸面状の湾曲を有している。プレート101の両方の面107,108の異なる曲率半径により、プレート101は、側方の縁部109に向かって先細になっている。それにより、プレートを安定させると同時に省スペースにすることができる。穴106,106’は、図11bに見られるように、第2の面108に接する開口部106aと、これに接してテーパ状に成形された第1の区域106bと、第1の区域および第1の面107に接する第2の区域106cとを有している。穴106,106’のこのような形状により、これらの穴は平頭ねじを収容するのに適するように構成されている。穴106,106’の形状は、平頭ねじを収容するのに適しているのであれば、上に説明した形状と異なっていてもよい。
【0034】
図12には、プレート101が後側から2つの骨接合ねじ110で頸椎の2つの椎骨111に固定され、ばね部材1を介してプレートと連結されたロッド状の部材31が3つの骨固定部材115で胸椎の椎骨112に定着される、図11aに示す連結部材100の利用例が示されている。
【0035】
本発明によるばね部材1が動的な骨盤安定化装置130で使用されるさらに別の利用例が、図13aに図示されている。この動的な骨盤安定化装置は、ロッド状の部材31,31’,31’’およびばね部材1,1’で相互に連結された、骨固定部材128,128’,128’’により構成されている。
【0036】
図13bに示す骨固定部材128は、他の両方の骨固定部材128’,128’’と同じく、第1の半体125のねじ山134および第2の半体131のねじ山135に係合す
るねじ127によって相互にねじ止めされた、2つの半体125,131で構成されている。図13aの平面図では、そのうち上側の半体125だけが見えている。上に挙げた両方の半体125,131の間には、ロッド状の部材31が両方の半体の間で、第1の半体125の切欠き132と第2の半体131の切欠き133に挟み込まれており、その結果、骨固定部材128はロッド状の部材31と堅固に結合されている。さらに両方の半体125,131には、組み付け状態のときに同軸の方向を向く穴136ないし137がそれぞれ設けられている。穴136に接して球面状の切欠き138が形成されており、穴137に接して球面状の切欠き139が形成されており、これらの切欠きは、骨接合ねじ126を収容する役目をする。骨接合ねじ126は、骨へねじ込むための雄ねじ152を備える軸部状の区域151と、球面状の切欠き138,139の半径と半径が実質的に等しい球欠状の頭部区域153とを有している。
【0037】
連結部材124は、骨固定部材と同じく2つの半体122で構成されており、そのうち図13aの平面図では一方だけが見えている。上に挙げたこれら両方の半体122の間では、ロッド状の部材31が切欠きに案内された状態で挟み込まれており、その結果、連結部材124はロッド状の部材31と堅固に結合されている。
【0038】
ロッド部材121は、球形の頭部区域121bと軸部区域121aとで構成されている。頭部区域121bは両方の半体122の間で図示しない切欠きにクランプ固定されており、そのようにして、特定の旋回位置で固定可能なように両方の半体122と結合されている。軸部区域121aは、頭部区域121bと向かい合う端部のところに、ばね部材1’の雌ねじ(図示せず)にねじ込まれた雄ねじを備える円筒状の付加部(図示せず)を有している。
【0039】
図14には、本発明によるばね部材1のさらに別の利用例が示されている。ここではばね部材1は、2つの部分141aおよび141bからなる骨141を安定化させるための外固定の一部である。
【0040】
骨141の第1の部分141aには、第1および第2のシャンツスクリュー143,143’がねじ込まれており、骨141の第2の部分141bには第3のシャンツスクリュー143’’がねじ込まれている。第1のシャンツスクリュー143および第2のシャンツスクリュー143’は、それ自体公知のやり方で、第1のロッド145ないし第2のロッド145’を介して第3のシャンツスクリュー143’’と連結されている。第1および第2のロッド145,145’は、これに加えて、ここでは詳しくは説明しない連結部材146と、それ自体公知のやり方で互いに堅固に連結されている。
【0041】
第1のロッド145は、上に図2を参照して説明した2つのロッド状の部材31,31’と、本発明によるばね部材1との3部分で構成されている。このとき第1のロッド状の部材は、ねじ接合によってばね部材1の一方の端部と堅固に結合されており、第2のロッド状の部材は、ねじ接合によってばね部材1の他方の端部と堅固に結合されている。
【0042】
骨141の動的な安定化によって、両方の骨部分141aおよび141bの相互の比較的小さい動きが可能となる。この比較的小さい動きは、両方の骨部分141a,141bの癒合にとって望ましい刺激につながる。
【0043】
利用分野によっては、外固定のシャンツスクリューが、このようなばね部材を軸部の一部として有していてもよい。
【0044】
ばね部材のさらに別の利用例として、たとえば安定化プレートとの連結のために通常使用されるような、骨接合ねじ山を備えるただ1つの軸部と、先端部と、頭部とを有する骨
接合ねじでの利用が挙げられる。ばね部材のさらに別の利用例は、ロッドとの連結をするための単軸骨接合ねじでの利用である。
【0045】
フライス削りによってばね部材1を製造するには、たとえばチタン等の生体適合材料からなる事前設定された外径をもつ円筒を出発材料とし、薄い側フライスを用いて、主軸が円筒の主軸と共線である螺旋に沿って切欠き3をフライス削りする。次いで、円筒の主軸に沿って円筒の長さ全体にわたり穴2を形成し、螺旋状の切欠き3が穴2に連通するようにする。ばね部材1の安定性にとっては、ばね部材の螺旋区域から端部側区域への移行部のところで螺旋が終わることに、もっとも大きな意義がある。したがって、穴の内面の鋭いエッジが除去されるように、螺旋の両端部のところで螺旋の終端部をエンドミルにより後加工することが必要である。そのためにエンドミルで終端部を、螺旋の輪郭に対して接線上の角度でフライス削りする。これに続いて、構成部品の内側と外側でばり取りをする。最後に、穴2の2つの端部区域にそれぞれ雌ねじ4,4’を形成する。
【0046】
フライス削りの別案として、ワイヤ放電加工、レーザ加工、またはウォータージェット加工によって、ばね部材200を円筒体から製造することができる。その場合、図15に示すように、やはり事前設置された外径D’をもつ円筒が出発材料となり、その次のステップで、主軸Aに沿って円筒体の長さ全体にわたり穴201を形成する。そして、こうして形成された主軸に沿う中空円筒の壁部で、中空円筒の壁厚に応じて上に挙げた方法のいずれかにより、螺旋202に沿って壁部を切削する。螺旋202の終端部203は四分円として構成され、それにより、フライス削りとは異なり、別の作業ステップでの終端部203の後加工は不要である。このような製造方法ではばり取りの必要もない。終端部の形状は必ずしも四分円の形状を有していなくてよく、たとえばこれ以外の円切片など、使用時に材料の最大負荷を低く抑えられる他のどのような任意の形状でも有することができる。
【0047】
最後に、フライス削りによる製造方法の場合と同じく、穴2の2つの端部区域にそれぞれ雌ねじ4,4’を形成する。
【0048】
1つの変形例では、上述の方法において雌ねじ4,4’の少なくとも1つに代えて、雄ねじを備える円筒状の付加部を方法の開始時に旋削によって形成する。この場合には、穴の直径が円筒状の付加部の直径よりも小さくなければならない。
【0049】
製造方法のさらに別の変形例では、第6および第7の実施形態に準じて、貫通する穴を備えていないばね部材が製造される。
【0050】
ばね部材、心材、またはこれらと結合される部材の材料としては、たとえばチタンのような生体適合金属や生体適合プラスチックといった、生体適合的な材料が考えられる。周知の超弾性特性をもつ形状記憶合金、たとえばニチノールなどの使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】ばね部材の第1実施形態を示す側面図である。
【図1b】図1aのばね部材を示す断面図である。
【図2a】ロッド状の部材の形態のばね部材の第1実施例である。
【図2b】図2aの変形例である。
【図3a】図1aのばね部材を備える骨固定部材である。
【図3b】図3aの実施形態の一部に改良をほどこした断面図である。
【図3c】図3bの一部をA−A線に沿って示す断面図である。
【図4】それぞればね部材を有する3部分からなる2つの骨固定部材とロッド状の部材とで構成される安定化装置である。
【図5】ばね部材の第2実施形態を示す側面図である。
【図6】ばね部材の第3実施形態を示す側面図である。
【図7a】第4実施形態によるばね部材を示す側面図である。
【図7b】図4aのばね部材を90°回転させた側面図である。
【図8】第5実施形態によるばね部材を示す断面図である。
【図9】本発明の第6実施形態によるばね部材である。
【図10】本発明の第7実施形態によるばね部材である。
【図11a】ロッド状の部材と、本発明によるばね部材と、プレートとで構成される連結部材を示す分解図である。
【図11b】図11aのプレートを示すA−A線に沿った断面図である。
【図12】プレートと、ばね部材を介してプレートと連結された、骨固定部材を備えるロッド状の部材とがそれぞれ椎骨に定着されている、図11aおよび図11bに示すプレートの利用例である。
【図13a】骨盤骨のための動的な安定化装置で本発明のばね部材を適用した図である。
【図13b】図13aの安定化装置で使用される骨固定部材を示す断面図である。
【図14】ロッド状の部材を介して相互に連結されたシャンツスクリューを備える外固定でばね部材を適用した図である。
【図15】ワイヤ放電加工、レーザ加工、またはウォータージェット加工によって製造される本発明のばね部材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨または椎骨のための安定化装置で使用するための弾性部材において、
第1の端部およびこれと向かい合う第2の端部を備える実質的に円筒体として構成されており、前記円筒体は向かい合う各端部に、骨接合ねじの軸部および/または頭部と結合するため、またはロッド区域もしくはプレートと結合するために各端部の少なくとも一方に雌ねじを備える同軸の穴をそれぞれ有している弾性部材。
【請求項2】
両方の端部に雌ねじが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の弾性部材。
【請求項3】
骨または椎骨のための安定化装置で使用するための弾性部材において、
第1の端部およびこれと向かい合う第2の端部を備える実質的に円筒体として構成されており、前記円筒体は第1の端部に、骨接合ねじの軸部もしくは頭部と結合するため、ロッド区域と結合するため、またはプレートと結合するための雄ねじを備える円筒状の付加部を有している弾性部材。
【請求項4】
第2の端部に、骨接合ねじの軸部もしくは頭部と結合するため、ロッド区域と結合するため、またはプレートと結合するための雄ねじを備える円筒状の付加部を有している、請求項3に記載の弾性部材。
【請求項5】
第2の端部に接して同軸の穴を有している、請求項3に記載の弾性部材。
【請求項6】
前記同軸の穴の少なくとも第2の端部に接する区域に、接合ねじの軸部もしくは頭部と結合するため、ロッド区域と結合するため、またはプレートと結合するための雌ねじを有している、請求項5に記載の弾性部材。
【請求項7】
前記穴が長さ全体にわたって延びていることを特徴とする、請求項1,2,5または6のいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項8】
前記円筒体は、
貫通する同軸の穴と、
円筒軸の方向へ螺旋状に延びる壁部の切欠きとを備えるパイプ状に構成されており、
前記切欠きは半径方向で前記穴に連通していることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項9】
前記穴に心材が設けられていることを特徴とする、請求項7から8までのいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項10】
前記弾性部材がコイルばねとして構成されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項11】
前記弾性部材が特にチタン等の生体適合材料で構成されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の弾性部材。
【請求項12】
骨固定部材において、
請求項1から11までのいずれか1項に記載の弾性部材と、
前記弾性部材の一方の端部と結合される骨接合ねじ山を備える軸部と、
前記弾性部材の他方の端部と結合される骨接合ねじの端部片、特に頭部とを備えている骨固定部材。
【請求項13】
2つの骨固定部材を連結するためのロッド状の部材において、
請求項1から11までのいずれか1項に記載の弾性部材と、
前記弾性部材の一方の端部と結合される剛性の高い第1のロッド区域とを備えているロッド状の部材。
【請求項14】
剛性の高い第2のロッド区域が前記弾性部材の他方の端部と結合されることを特徴とする、請求項13に記載のロッド状の部材。
【請求項15】
プレートにおいて、請求項1から11までのいずれか1項に記載の弾性部材と連結するために前記プレートの少なくとも一方の端部に雄ねじを備える、または雌ねじのある穴を備える、円筒状の付加部を備えているプレート。
【請求項16】
骨、骨部分、または脊柱を動的に安定化させるための安定化装置において、請求項13または14に記載のロッド状の部材を介して相互に連結された少なくとも2つの骨固定部材を備えている安定化装置。
【請求項17】
弾性部材を製造する方法において、
(a)円筒体を準備するステップと、
(b)前記円筒体の主軸に対して同軸な螺旋に沿って材料を外側から切削加工することによって螺旋状の切欠きを形成するステップと、
(c)前記円筒体の主軸に沿って穴を形成するステップと、
(d)前記穴の両方の端部区域のうちの一方に雌ねじを形成するステップとを備えている方法。
【請求項18】
前記ステップ(c)における穴の内径は、前記ステップ(b)における切削加工によって生じる前記円筒体の外壁の螺旋状の切欠きが半径方向で前記穴に連通するように選択されることを特徴とする、請求項17に記載の弾性部材を製造する方法。
【請求項19】
(e)前記穴の他方の端部区域に雌ねじを形成するステップをさらに備えている、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
弾性部材を製造する方法において、
(a)円筒体を準備するステップと、
(b)前記円筒体の両端部に雄ねじを備える円筒状の付加部を切削加工によりそれぞれ形成するステップと、
(c)前記円筒体の主軸に対して同軸な螺旋に沿って材料を外側から切削加工することによって螺旋状の切欠きを形成するステップと、
(d)前記円筒体の主軸に沿って穴を形成するステップとを備えている方法。
【請求項21】
(f)前記穴の内側で鋭いエッジを除去するために前記穴の形成後に螺旋状の切欠きの終端部をフライス削りで後加工するステップと、
(g)こうして形成された弾性部材のばり取りをするステップとをさらに備えている、請求項17から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
弾性部材を製造する方法において、
(a)第1および第2の端部を備える円筒体を準備するステップと、
(b)前記円筒体の主軸に対して同軸に、少なくとも前記円筒体の第1の端部に接する穴を形成するステップと、
(c)ワイヤ放電加工、レーザ加工、またはウォータージェット加工により前記円筒体の主軸に対して同軸な螺旋に沿って切欠きを刻設するステップと、
(d)前記ステップ(a)で準備された円筒体の事前設定された外径よりも短い直径をもつ円筒状の付加部を切削加工である旋削により形成し、前記円筒体の第1の端部の円筒状の付加部の表面に雄ねじを形成するか、または、前記円筒体の第1の端部に接する区域に前記ステップ(b)で形成された穴に雌ねじを形成するステップとを備えている方法。
【請求項23】
前記ステップ(b)で形成される穴は前記円筒体の第1の端部から第2の端部まで延びている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
(e)前記円筒体の第2の端部に接する区域に前記ステップ(b)で形成された穴に雌ねじを形成するステップをさらに備えている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(e)円筒体の事前設定された外径よりも短い直径をもつ第2の円筒状の付加部を切削加工である旋削により形成し、前記円筒体の第2の端部の第2の円筒状の付加部の表面に雄ねじを形成するステップをさらに備えている、請求項22または23に記載の方法。
【請求項26】
弾性部材を製造する方法において、
(a)第1および第2の端部を備える円筒体を準備するステップと、
(b)前記ステップ(a)で準備された円筒体の事前設定された外径よりも短い直径をもつ円筒状の付加部を切削加工である旋削により形成し、前記円筒体の第1の端部および第2の端部の円筒状の付加部の表面に雄ねじを形成するステップと、
(c)ワイヤ放電加工、レーザ加工、またはウォータージェット加工により前記円筒体の主軸に対して同軸な螺旋に沿って切欠きを刻設するステップとを備えている方法。
【請求項27】
前記ステップ(c)において螺旋状の切欠きの両方の終端部が四分円の形状で形成される、請求項22から26までのいずれか1項に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2007−510482(P2007−510482A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538757(P2006−538757)
【出願日】平成16年11月6日(2004.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012591
【国際公開番号】WO2005/044117
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(592232384)ビーダーマン・モテーク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクタ・ハフツング (57)
【氏名又は名称原語表記】BIEDERMANN MOTECH GMBH
【Fターム(参考)】