骨誘導性および骨伝導特性を有するデバイス
【課題】骨増強を含む効率的かつ信頼できる骨欠損の処置手段および方法を提供すること。
【解決手段】リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有してなり、該担体が該タンパク質で均一に被覆されている、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイス。
【解決手段】リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有してなり、該担体が該タンパク質で均一に被覆されている、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含むキャリアを含有する、インビボで骨誘導性および骨伝導特性を有するデバイスに関し、ここで該キャリアは該タンパク質で均質に被覆される。さらに、本発明は、インビボで骨誘導性および骨伝導特性を有するデバイスの製造方法に関する。本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られうるデバイスを含有する医薬組成物に関し、骨増強、骨欠損の治療、変性および外傷性の椎間板(disc)疾患の治療、サイナスフロアエレベーション(sinus floor elevation)および骨離開の処置のために使用するための医薬組成物の調製のための上記デバイスの使用に関する。最後に、本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られうるデバイスを含有するキットに関する。
【背景技術】
【0002】
β-リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)(β-TCP)、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)およびヒドロキシアパタイト(HA)等の種々のリン酸カルシウムは、骨置換材料(マテリアル)として有効であることが示されている。例えば、β-TCPは、骨欠損の治療のための顆粒および断片(ブロック)の両方として適切である。リン酸カルシウムを含む骨置換材料は、通常、骨の再生がもはや不可能であるか、困難である場合に使用される。さらに、骨置換材料は、さらなる骨の形成が引き続く埋没物(implant)の設置に必須である場合に使用される。リン酸カルシウムは骨伝導性効果を発揮する、すなわち、それらは不活性構造を示し、隣接する骨からの細胞の遊走を促進する。しかし、骨または種々の間葉細胞の存在は、骨の新形成の必要条件である。リン酸カルシウムの効果は、骨細片を添加することにより有意に増大されうる。骨は、骨伝導性だけでなく、骨原性(骨材料の新合成のための骨細胞の刺激)および骨誘導性、すなわち、それらは骨芽細胞および軟骨細胞において未分化の間葉幹細胞の変換を引き起こす、である。安全性の理由のために、同種間または異種間調製物よりも自原性骨細片が好ましい。しかし、自原性骨の産生は、多くの場合、患者に受け入れられない第2の外科的手順に常に関与する。
自原性骨の使用の代替は、GDF-5または種々の骨形成因子(BMP)等の特異的な骨増殖および分化因子の使用である。これらのタンパク質因子は、それらが固定化形態で使用される場合にのみ発揮しうる骨誘導性効果を有する。文献では、リン酸カルシウム、コラーゲンおよび無機化コラーゲン(リン酸カルシウムを含有するコラーゲン)が担体(ヒドロキシアパタイトおよびβ-TCP(Hotz, 1994)、藻類抽出物由来ヒドロキシアパタイト(Gao,1996)、骨抽出物(Gombotz, 1996)およびコラーゲン(Friess,1999))として記載されている。文献に記載される被覆担体の効力の分析は、一様な全体像を示さず、選択される担体の型または被覆方法のいずれかの結果である有意な変化を示す(Terheydenら、(1997))。種々の方法が記載されている。特許文献1において、被覆は、最初に有機溶媒にGDF-5を溶かし、次いで水を添加することによりそれを沈殿させることにより達成されるβ-TCPへのGDF-5の迅速な調製により達成される。しかし、多くの溶媒の毒性により、かかるプロセスは医薬組成物の製造には好ましくない。Lindら(1996)は、ゼラチンの存在下での種々のリン酸カルシウムセラミックスの被覆を行う。しかし、増大した感染の危険性のために、動物材料の使用は、医薬組成物および医薬品の製造には避けられるべきである。Friessら(1999)およびGaoら(1996)は、BMP-2でのコラーゲンの被覆を記載している。しかし、コラーゲンの低圧縮強度のために、かかる担体は全ての適応症について適するわけではない。これは、新規に形成された骨が後の圧力付加を支えなければならない適応症に特に適用される。さらに、コラーゲンの医薬品質のコラーゲンはこれまで動物供給源のみから入手可能である。
【0003】
いくつかの論文は骨増強のためのタンパク質被覆担体の使用を記載しているが、効率的かつ信頼できる製造方法および骨欠損の処置のための使用は非常に望ましいにもかかわらず利用可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO98/21972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の基礎をなす技術的課題は、骨増強を含む効率的かつ信頼できる骨欠損の処置手段および方法を提供することである。
この技術的課題は、特許請求の範囲において特徴づけられる態様により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有してなり、該担体が該タンパク質で均一に被覆されている、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイス、
〔2〕(a)溶解した骨誘導性タンパク質、およびリン酸カルシウムを含有する担体と接触した場合、該担体の均一な被覆を可能にするのに十分な時間の間、タンパク質の溶解を維持する緩衝液を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液とリン酸カルシウムを含む担体とを接触させる工程;
(c)該溶解タンパク質での該担体の表面の均一な被覆を可能にする工程;および
(d)工程(c)で得られる被覆担体を乾燥させる工程、
を含むインビボで骨誘導特性および骨伝達特性を有するデバイスの製造方法、
〔3〕前記緩衝液が100mmol/l未満、50mmol/l未満または20mmol/l未満の緩衝液濃度を有する〔2〕記載の方法、
〔4〕前記緩衝液が弱酸を含む〔3〕記載の方法、
〔5〕前記弱酸が酢酸またはコハク酸である〔4〕記載の方法、
〔6〕前記緩衝液が糖類をさらに含有する〔2〕〜〔5〕いずれか記載の方法、
〔7〕前記糖類が二糖である〔6〕記載の方法、
〔8〕前記二糖がスクロースまたはトレハロースである〔7〕記載の方法、
〔9〕前記緩衝液がアルコールを含有する〔2〕〜〔8〕いずれか記載の方法、
〔10〕前記アルコールがエタノールまたはマンニトールである〔9〕記載の方法、
〔11〕前記リン酸カルシウムがβリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、アパタイトまたはリン酸カルシウム含有セメントである〔1〕記載のデバイスまたは〔2〕〜〔10〕いずれか記載の方法、
〔12〕前記骨誘導性タンパク質がTGF-βファミリーのメンバーである〔1〕記載のデバイス、〔2〕〜〔10〕記載の方法または〔11〕記載のデバイスまたは方法、
〔13〕前記TGF-βファミリーのメンバーがBMPサブファミリーのメンバーである〔12〕記載のデバイスまたは方法、
〔14〕前記BMPファミリーのメンバーがBMP2またはBMP7である〔13〕記載のデバイスまたは方法、
〔15〕前記TGF-βファミリーのメンバーがGDF-5、GDF-6およびGDF-7の群のタンパク質である〔12〕記載のデバイスまたは方法、
〔16〕GDFがGDF-5である〔15〕記載のデバイスまたは方法、
〔17〕前記デバイスが毒性物質を含まない〔1〕記載のデバイス、〔2〕〜〔10〕いずれか記載の方法または〔11〕〜〔16〕いずれか記載のデバイスまたは方法、
〔18〕前記デバイスが感染性物質を含まない〔1〕記載のデバイス、〔2〕〜〔10〕いずれか記載の方法または〔11〕〜〔17〕いずれか記載のデバイスまたは方法、
〔19〕〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスを含有してなる医薬組成物、
〔20〕骨増強のために使用される医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔21〕骨増強が外傷性、悪性または人為的欠損後、または引き続く埋没物の設置に必要である〔20〕記載の使用、
〔22〕骨欠損の処置のための医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔23〕前記骨欠損が長骨欠損、顎顔面領域における欠損または根尖切除、膿疱または腫瘍の摘出術、抜歯、または残存する歯の外科的除去後の骨欠損である〔22〕記載の使用、
〔24〕変性および外傷性椎間板疾患の処置のための医薬組成物の調製のための〔1〕もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔25〕骨離開を処置するための医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔26〕萎縮性の上顎または下顎堤のサイナスフロアエレベーションまたは増強に使用するための医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔27〕〔1〕、もしくは〔10〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕記載の方法により得られうるデバイスを含有してなるキット
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、骨増強を含む効率的かつ信頼できる骨欠損の処置手段および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、異なるpH値での5mM酢酸、5mM H3PO4/NaOH、150mM NaClにおけるGDF-5の溶解性の図である。
【図2】図2は、異なるpH値での20mMアルギニン/酢酸におけるGDF-5の溶解性の図である。
【図3】図3は、異なるイオン強度およびpH値を有する2つのバッファー(HAc = 酢酸)におけるGDF-5の溶解性の図である。
【図4】図4は、10mmol/l HClの存在下でコーティング中のpH上昇の図である。
【図5】図5は、75%アセトニトリルの存在下でのpH上昇の図である。
【図6】図6は、コーティング中、異なる酢酸濃度を有するコーティング溶液のpH依存性を示す図である。
【図7】図7は、10mmol/l 酢酸の存在下、スクロースあり(右)およびスクロースなし(左)でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布(100mgβ-TCPに対して100μg GDF-5)の均一性の図である。
【図8】図8は、60%エタノールの存在下でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布(100mgβ-TCPに対して100μg GDF-5)の均一性の図である。
【図9】図9は、20mmol/l グリシン/NaOHの存在下、pH10でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布(100mgβ-TCPに対して100μg GDF-5)の均一性の図である。
【図10】図10は、20mmol/l グリシン/NaOHの存在下、pH10でコーティングされた埋没物の組織形態計測的解析の図である。
【図11】図11は、60%エタノールの存在下、pH10でコーティングされた埋没物の組織形態計測的解析の図である。
【図12】図12は、β-TCPに対するrhBMP-2の分布の均一性の図である。
【図13】図13は、スクロース(左)およびトレハロース(右)の存在下でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布の均一性の図である。
【図14】図14は、エタノール(左)およびマンニトール(右)の存在下でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布の均一性の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従って、本発明は、リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有する、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイスに関し、前記担体が前記タンパク質で均一に被覆される。
【0010】
本発明に従って使用される用語「デバイス」は、少なくとも2つの成分を含むものをいう。前記成分の内の1つは、担体マトリックスである。好ましくは、前記担体マトリックスは無機セラミックスからなる。前記セラミックスは、マクロおよびミクロ細孔の存在のために特に高い表面を有する。好ましくは、前記マクロ-細孔は約100〜400nmの直径を有し、一方、ミクロ-細孔は10nm未満の直径を有する。最も好ましくは、前記担体は下記のようにリン酸カルシウムである。
前記デバイスの別の成分は、下記に詳細に説明されるような骨誘導特性を有するタンパク質またはポリペプチドである。タンパク質またはポリペプチドは担体の表面上に固定化される。本発明に従って適用される骨誘導性タンパク質およびポリペプチドは、リン酸カルシウムなどの無機担体マトリックスに対して特に高い親和性を有する。好ましくは、担体への前記タンパク質またはポリペプチドの結合は可逆的である。それにより、一旦、デバイスが骨腔(bonecavity)等のインビボ環境に適切にもたらされると該タンパク質の溶解が許容される。好ましくは、前記タンパク質の溶解は、低速放出であり、デバイスを囲む組織へのタンパク質の拡散を可能にする。従って、デバイスは、緩徐に放出され、それにより、周囲の組織に効率的に分配されうる骨誘導タンパク質のためのインビボ供給源として働くか、または固定化型の効果を有する。
デバイスは、さらに、さらなる賦形剤を含有する。これらの賦形剤はタンパク質の安定化(例えば、糖類、アミノ酸、ポリオールもしくは界面活性剤)またはpHの維持(例えば、緩衝物質)に役立つ。本発明に含まれる好ましい賦形剤は以下に詳細に考察される。
【0011】
用語「骨誘導性」は、骨芽細胞および軟骨細胞への間葉幹細胞の変換の能力をいう。骨誘導に必須なものは、デバイスにより周囲の組織に分配されるシグナルであり、ここで前述の骨芽細胞前駆体は活性化される。本明細書中で使用される骨誘導は骨前駆体細胞、骨芽細胞への間葉細胞の分化を含む。さらに、骨誘導はまた、骨細胞、骨の成熟細胞への前記骨芽細胞の分化を含む。さらに、骨誘導に含まれるのはまた、軟骨細胞への間葉細胞の分化である。特に長骨において、骨の軟骨膜に存在する軟骨芽細胞および軟骨細胞はまた骨細胞に分化しうる。従って、骨誘導は、骨を形成しうる骨細胞への未分化のまたはわずかに分化した細胞の分化を必要とする。従って、骨誘導に必要なものは、前述の骨細胞前駆体が通常存在する周囲の組織にデバイスにより分配されるシグナルである。上記のように、本発明に従って使用される骨誘導性タンパク質は、埋没(implantation)後、デバイスから緩徐に放出され、周囲の組織に効率的に分配される。さらに、本発明に含まれるタンパク質およびポリペプチドはインビボで骨誘導特性を有する。例えば、トランスホーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーが骨誘導特性を有するメンバーを含むことは当該分野で周知である。特に良好な骨誘導特性を有する前記TGF-βスーパーファミリーの個々のメンバーが以下に列挙される。結論として、担体から放出された後、本発明のデバイスの骨誘導性タンパクは、デバイスの埋没の側を包囲する組織の骨細胞前駆体に対する骨誘導性シグナルとして働く。
【0012】
用語「骨原性」は、骨芽細胞による新規骨の合成を記載する。本発明に従って、デバイスの埋没の側の周囲に既存の骨は、骨細胞が接着しうるマトリックスとしてデバイスの構造を使用してデバイス内に成長する。
【0013】
用語「担体」は、上で言及されたセラミックス等の三次元マトリックスを含む。さらに、上記のように、前記担体は、好ましくは、マクロ-およびミクロ-細孔の形成により拡大した表面を有する。担体材料は、骨誘導性タンパク質に対して高い親和性を有するにもかかわらず、インビボでの前記タンパク質の放出を可能にする。本発明に従って、前記担体は、好ましくは、リン酸カルシウムである。本発明のデバイスにより含まれる担体は、インビボでのデバイスの投与のために適切な型にもたらされうる(例えば、顆粒、塊、立方体、セメントおよび無定型ペースト)。さらに、担体は金属表面に被覆されうる。
【0014】
用語「リン酸カルシウム」は、カルシウムイオン、リン酸イオン、任意に、本発明の担体に適切なさらなるイオンまたは原子を含む組成物を含む。本発明に従って使用されるリン酸カルシウムは、上記のような本発明のデバイスに適切な三次元構造を有する結晶である。好ましく、周知のリン酸カルシウムのリストが下記に示される。
【0015】
上記のような用語「骨誘導性タンパク質」は、成長および分化因子-5等の骨誘導特性を有するトランスホーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーメンバーをいう;下記参照。これらの骨誘導性タンパク質は、リン酸カルシウムに対して高い親和性を発揮する。リン酸カルシウムは、例えば、β-TCP、α-TCPまたはヒドロキシアパタイトの型で存在しうる。マクロ-(100〜400nm)およびミクロ細孔(<10nm)に依存して、これらの無機鉱物は水溶液を吸収する。このプロセスの間、GDF-5またはBMP-2等のタンパク質は担体の表面に密接に吸着される。このプロセスの重要な必要条件は、被覆溶液中のタンパク質の十分な溶解性である。
【0016】
用語「均一に被覆される」は、担体の表面が前記骨誘導性タンパク質で完全に被覆され、それによって本質的に同一量のタンパク質が前記担体の表面のどの領域にも存在することを意味する。本発明に従って、均一に被覆された担体は、その表面上の骨誘導性タンパク質での最大の被覆を示す。均一な被覆は、埋没の部位の周囲の組織への骨誘導性タンパク質の効率的な放出および均一な分布および活性に必須である。さらに、骨誘導性タンパク質が沈殿または微小沈殿により凝集せず、部分的または完全に不活性化されず、むしろ生物学的に活性な、非凝集タンパク質の付着が均一な被覆により達成されることが理解されるべきである。前記均一な被覆は本発明の方法により、および付随する実施例において記載されるように達成されうる。さらに、固定化タンパク質の均一な被覆、定量および特徴付けを制御する手段および方法は、付随する実施例に記載される。
【0017】
有利なことに、上記の本発明のデバイスが、被験体、好ましくは、ヒトへの埋没後、インビボで改善された信頼できる骨誘導性および骨伝達特性を有することが本発明により見出された。かかるデバイスに必須なものは、生物学的に活性な、非凝集性骨誘導性タンパク質での担体の均一な被覆である。微小沈殿により引き起こされる凝集でさえも不均一な被覆に至り、先行技術、例えば、WO98/21972のデバイスについて記載されるような骨誘導特性の少なくとも有意な減少を生じることが見出された。さらに、埋没後の被験体の炎症および毒性反応等の所望されない副作用が、毒性の不純物または感染性の混入物を含まない本発明のデバイスにより回避されうる。特に、溶解性媒介物としての保護タンパク質(例えば、ゼラチン等)の使用は、本発明のデバイスについては全く不要である。
【0018】
さらに、本発明は、
(a)溶解した骨誘導性タンパク質および前記担体と接触させた場合にリン酸カルシウムを含む担体の均一な被覆を可能にするのに十分な時間の間、該タンパク質の溶解を維持する緩衝液を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液とリン酸カルシウムを含有する担体とを接触させる工程;
(c)前記溶解タンパク質での該担体の表面の均一な被覆を可能にする工程;
(d)工程(c)で得られた被覆担体を乾燥させる工程
を含むインビボでの骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイスの製造方法に関する。
【0019】
本発明のデバイスを記載するために使用される用語の定義は、前述の方法および下記の方法に必要な変更を適用する。用語「乾燥させる」は、骨誘導性タンパク質での担体の被覆後に依然として存在する過剰の緩衝液等の液体を除去するための手段を含む。好ましくは、乾燥は、減圧または凍結乾燥により達成される。
用語「均一な被覆を可能にする時間の間、前記タンパク質の溶解を維持する緩衝液」は、骨誘導性タンパク質が効率的に溶解され、例えば、pHの増大のために、タンパク質がすぐに沈殿しないように緩衝溶液とリン酸カルシウム担体とを接触させることにより引き起こされるpHの増大を釣り合わせることができる緩衝液をいう。前記緩衝液は、pH、イオン強度および担体と前記緩衝溶液との接触後の前記パラメータに対する担体の影響に依存する骨誘導性タンパク質の溶解性に基づいて当業者により構成されうる。本発明に従って、本発明の方法に適切な緩衝液は、緩衝物質を含む低濃度の弱酸、アルコールまたは糖類を包含することが見出された。
本発明の利点は、被覆プロセスの間に被覆溶液のpH増大の限定により達成される均一な被覆である。記載されるプロセスは、前記担体への骨誘導性タンパク質の均一な分配および固定化を可能にする。被覆プロセスの効力は、さらに、そのサイズのために、細孔に溶液を浸漬しうる多数のマクロ-およびミクロ-細孔の存在から生じる毛細管力のために担体により支持される。さらに、当該分野で記載、例えば、WO98/21972に記載の方法とは対照的に、骨誘導性タンパク質またはポリペプチドは、本発明の方法により沈殿または微小沈殿よりもむしろ担体への付着により適用される。本発明の基礎をなす知見は、タンパク質の凝集が本明細書中に記載される適切な添加剤の使用により回避されうることを示す。重要な必要条件は、pH値、イオン強度および存在する表面に依存する骨誘導性タンパク質の溶解度の知識である。アルカリ性様式で反応する被覆溶液とリン酸カルシウムとの接触により引き起こされる溶液のpH増大の減速は、特に、被覆の間に重要な役割を演じる。有利なことに、本発明の方法により、担体材料の内側表面を平坦に横断して分布し、前記タンパク質のpH-誘導性沈殿が起こる前に表面に結合しうる。リン酸カルシウムの被覆の間に起こるpH増大が、酢酸などの弱酸の使用により十分に減速されることが示され得た。さらに、エタノールまたはスクロースなどの有機的組み合わせの添加がさらに有利であることがわかる。さらに、低イオン強度は、上首尾な被覆のための重要な必要条件である。さらに、本発明者らの試験は、被覆溶液の容量もまた、被覆の質にかなりの影響を有することを示す。最終的に、本発明の方法は、当該分野で記載される方法に日常的に使用されるアセトニトリル等の有害な有機溶媒を回避することが目的である。前記有害な有機溶媒を回避することにより、安全なプロフィールおよび本発明のデバイスの安全性プロフィールおよび局所認容性が改善されうる。
【0020】
本発明の方法の好ましい態様では、前記緩衝液は、100mmol/l未満、50mmol/l未満または20mmol/l未満の緩衝液濃度を有する。
【0021】
上記から、より好ましくは、前記緩衝液は弱酸を含有する。
用語「弱酸」は、少なくとも1つのイオン生成性(ionogenically)結合した水素原子を含有する有機または無機化合物をいう。弱酸は当該分野で周知であり、Roempp、lexicon ofchemistry等の標準的な教科書に記載されている。好ましくは、前記弱酸は、低解離度を有し、3〜7、好ましくは4〜6のpK値により記載される。
【0022】
最も好ましくは、前記弱酸は酢酸またはコハク酸である。
【0023】
本発明の方法の別の好ましい態様では、前記緩衝液は、糖類をさらに含有する。
用語「糖類」は、単糖、二糖および多糖を含む。単糖、二糖、および多糖の構造および組成は当該分野で周知であり、Roempp、lexicon ofchemistry等の標準的な教科書に記載されている。
【0024】
より好ましくは、前記糖類は二糖である。最も好ましくは、前記糖類はスクロースまたはトレハロースである。
【0025】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、前記緩衝液はアルコールを含有する。
適切なアルコールは当該分野で周知であり、 Roempp、lexicon of chemistry等の標準的な教科書に記載されている。
【0026】
さらに好ましくは、前記アルコールはエタノールまたはマンニトールである。
【0027】
本発明のデバイスまたは方法の好ましい態様では、前記リン酸カルシウムはβリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、アパタイトまたはリン酸カルシウム含有セメントである。
前記リン酸カルシウムは、本発明のデバイス用の担体として特に良好に適する。そのインビボ特性は、Hotz, 1994, Gao, 1996, およびWO98/21972に記載されている。
【0028】
本発明のデバイスまたは方法のさらに好ましい態様では、前記骨誘導性タンパク質はTGF-βファミリーのメンバーである。
成長および分化因子のTGF-βファミリーは、骨形成を含む多数の生物学的なプロセスに関与することが示されている。前記ファミリーの全てのメンバーは、特徴的なドメイン構造を含む分泌ポリペプチドである。まさにN-末端に、TGF-βファミリーメンバーはシグナルペプチドまたは分泌リーダーを含む。この配列には、C-末端にプロドメインが続き、成熟ポリペプチドの配列が続く。成熟ポリペプチドの配列は7つの保存システインを含み、その内の6つは、分子内ジスルフィド結合の形成のために必要であり、一方、1つは、2つのポリペプチドの二量体化に必要とされる。生物学的に活性なTGF-βファミリーメンバーは、好ましくは2つの成熟ポリペプチドからなる、二量体である。TGF-βファミリーメンバーは、通常、成熟配列に加えて、プロドメインを含有するプロタンパク質として分泌される。プロドメインは、細胞外で切断され、シグナル伝達分子の一部ではない。しかし、プロドメインが成熟ポリペプチドの細胞外安定化のために必要でありうることが報告されている。
本発明の文脈において、用語「TGF-βファミリーメンバー」または前記ファミリーのタンパク質は、以下では、前記タンパク質またはメンバーの全ての生物学的に活性なバリアントおよび全てのバリアントならびにその不活性な前駆体前駆体を含んで適用される。従って、成熟配列をまれに含むタンパク質および成熟タンパク質および成熟タンパク質のプロドメインを含有するタンパク質、プロドメインおよびリーダー配列ならびにその生物学的に活性な断片が本発明の範囲内にある。TGF-βメンバーの断片が生物学的活性を有するかどうかは、例えば、Katagiri T, Yamaguchi A, Ikeda T, YoshikiS, Wozney JM, Rosen V, Wang EA, TankaH, Omura S, Suda T, (1990):The non-osteogenic mouse pluripotentcell line, C3H10T1/2 is induced to differentiate into osteoblasticcells by recombinant human bone morphogenetic protein-2. Biochem.Biophys.Res.Commun. 172: 295-299またはNishitoh H, Ichijo H, Kimura M,Matsumoto T, Makishima F, Yamaguchi A,Yamashita H, Enomoto S, Miyazono K (1996):Identification of type I and type II serine/threoninekinase receptors for growth/differentiation factor-5.J.Biol.Chem. 271:21345-21352に記載される生物学的アッセイにより容易に決定されうる。
【0029】
好ましくは、本発明の生物学的活性は、付随の実施例に記載されるようなインビボモデルにより測定されうる。さらに、TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するTGF-βメンバーのバリアントは本発明に含まれる。
【0030】
TGF-βスーパーファミリーのメンバーの概要は、Wozney JM, Rosen V (1998):Bone morphogenetic protein andbone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346: 26-37に示されている。TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列は、インターネット(http://www.expasy.ch/sprot/sprot-top.html)を介してSwiss-Prot等の周知のデータベースから得られうる。特に高い骨誘導性潜在力を有するBMP2、BMP7およびGDF-5、TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列はまた、それぞれ配列番号:1〜3に示される。特に高い骨原性潜在力を有するTGF-βファミリーのメンバーであるBMP2、BMP7およびGDF-5のアミノ酸配列はまた、それぞれ配列番号:1〜3に示される。
【0031】
より好ましくは、TGF-βファミリーの前記メンバーはBMPサブファミリーのメンバーである。骨形成因子(BMP)サブファミリーのメンバーは、とりわけ、骨組織の誘導および再構築に関与することが示されている。BMPは、骨マトリックスから最初に単離された。これらのタンパク質は、異所部位に新規骨形成を誘導する能力により特徴づけられる。種々のインビボ研究は、BMPによる前駆体細胞の骨原性および軟骨形成の促進を示し、各BMP分子が骨格発達の間に別個の役割を有しうる可能性が生じる。BMPの分子および生物学的特性に関するさらなる詳細は、Wozney JM, Rosen V (1998):Bone morphogenetic protein andbone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346:26-27, Schmitt J,Hwang K, Winn, SR, Hollinger J (1999): Bone morphogenetic proteins: an updateon basic biology and clinical relevance. J Orthop Res 17:269-278およびLind M (1996):Growth factors:possiblenew clinical tools. A review.Acta Orhop Scand 67:407-17に記載されている。
【0032】
より好ましくは、TGF-βファミリーの前記メンバーはBMPサブファミリーのメンバーである。
骨形成因子(BMP)サブファミリーのメンバーは、とりわけ、骨組織の誘導および再構築に関与することが示されている。BMPは、骨マトリックスから最初に単離された。これらのタンパク質は、異所部位に新規骨形成を誘導する能力により特徴づけられる。種々のインビボ研究は、BMPによる前駆体細胞の骨原性および軟骨形成の促進を示し、各BMP分子が骨格発達の間に別個の役割を有しうる可能性が生じる。BMPの分子および生物学的特性に関するさらなる詳細は、Wozney JM, Rosen V (1998):Bone morphogenetic protein and bone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346:26-27, Schmitt J, Hwang K, Winn, SR, Hollinger J (1999): Bone morphogenetic proteins: an update on basic biology and clinical relevance. J Orthop Res 17:269-278およびLind M (1996):Growth factors:possible new clinical tools. A review.Acta Orhop Scand 67:407-17に記載されている。
【0033】
最も好ましくは、BMPファミリーのメンバーはBMP2またはBMP7である。
BMP2のプレプロ型のアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P12643で寄託されており、以下に示す。アミノ酸1〜23はシグナル配列に相当し、アミノ酸24〜282はプロペプチドに相当し、アミノ酸283〜396は成熟タンパク質に相当する。BMP7のプレプロ型のアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P18075で寄託されているものか、または配列番号:2に示されるものである。アミノ酸1〜29はリーダー配列に相当し、アミノ酸30〜292はプロ型に相当し、アミノ酸293〜431は成熟タンパク質に相当する。好ましくは、BMP-2またはBMP7は、それぞれ、プレプロ型、プロ型または成熟BMP-2もしくはBMP-7ペプチドをさす。さらに、本質的に同じ生物学的活性、好ましくは骨誘導特性を有する該タンパク質の断片もまた包含される。BMP2およびBMP7に対するさらなる配列情報を以下に提供する。
また、より好ましくは、TGF-βファミリーの該メンバーはGDFである。
成長および分化因子(GDF)もまた、特に、骨組織の誘導およびリモデリングに関与することが示されている。軟骨由来形成因子1(CDMP-1)としても知られている成長分化因子5(GDF-5)は、BMPファミリー亜群のメンバーであり、これはまた、他の関連タンパク質、好ましくは、GDF-6およびGDF-7を含む。該タンパク質の成熟型は、27kDaホモダイマーである。種々のインビボおよびインビトロ研究により、哺乳動物骨格における異なる形態学的特徴の形成の際のGDP-5の役割が実証されている。GDF-5の変異は、四肢の長骨の長さの短縮、肢部および胸骨の関節発達異常を含む骨格異常の原因となる(Storm& Kingsley (1999), Development Biology, 209, 11-27)。マウスとヒトとの間のアミノ酸配列は、高度に保存されている。
【0034】
最も好ましくは、GDFサブファミリーのメンバーはGDF-5である。
GDF-5のプレプロ型のアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P43 0 26で寄託されたものであるか、または配列番号:3に示されるものである。アミノ酸1〜27はリーダー配列に相当し、アミノ酸28〜381プロ型に相当し、アミノ酸382〜501は成熟タンパク質に相当する。好ましくは、GDF-5はプレプロ型、プロ型または成熟GDF-5ペプチドをさす。さらに、本質的に同じ生物学的活性、好ましくは骨誘導特性を有するGDF-5の断片もまた包含される。最も好ましくは、該断片は、配列番号:3に示す配列のアミノ酸383〜501を含有する。
【0035】
本発明のデバイスまたは方法の別の好ましい態様では、該デバイスは毒性物質を含まない。
用語「毒性物質」は、好ましくは、当該技術分野において記載されている方法により使用される毒性有機溶媒および添加剤、例えばアセトニトリルを包含する。該物質は、該物質を含有するデバイスの埋め込み後に炎症および他の反応を引き起こし得る。該デバイスは、当該技術分野において記載されているコーティング方法によっては回避できない望ましくない副作用のために、治療上あまり許容され得ないものである。さらに、治療用タンパク質の開発のための国際的ガイダンスでは、製造プロセスにおいて、有害および毒性物質を避けるべきであることが求められている(詳細については: International Conference on Harmonisation(ICH), Topic Q3C; www. emea.eu.int/を参照)。しかしながら、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスは、有利なことに、このような毒性物質を含まず、したがって、治療上、充分許容可能であり、上記規制要件を満たす。
【0036】
さらに、本発明のデバイスまたは方法のさらに好ましい態様では、デバイスは感染性物質を含まない。
毒性物質に加え、デバイスに含まれる感染性物質は、デバイスを埋め込まれた被験体において重篤な感染を引き起こし得る。しかしながら、ウシまたはブタ(procine)骨由来の潜在的感染性ゼラチンが、多くの従来法において、保護タンパク質として使用されている(Lind,1996)。
【0037】
本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスを含有する医薬組成物を包含する。本発明の生産物は、医薬組成物または医療用デバイスとして製剤化され得る。該生産物の組成物は、安定剤、緩衝物質および他の賦形剤のようなさらなる化合物を含み得る。患者に適用される本発明の生産物の量は、担当医および他の臨床的要因により;好ましくは上述の方法のいずれかに従って決定される。医療分野において周知であるように、患者に適用される量は、患者の体格、体表面積、年齢、性別、投与時間および経路、一般健康状態ならびに同時に投与されている他の薬物を含む多くの要因に依存する。経過は定期的評価により監視し得る。
【0038】
本発明のおかげで、大腔を含む種々の骨欠損を処置することが可能になる。特に、大腔は、全く効率的に処置され得なかったか、自己骨材料の使用下でわずかに効率的に処置され得た。しかしながら、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの、信頼性があり、かつ効率的な骨誘導および骨伝導特性のため、広範囲の骨増強または修復が必要とされる骨欠損の処置が、今や二次手術なしで可能となった。
【0039】
本発明はまた、骨増強に使用される医薬組成物の調製のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用を包含する。
上記の用語の定義は、必要な変更を加えて、本発明の上述の使用および以下に記載のものにあてはめる。
用語「骨増強」は、骨欠損、骨内の腔または骨組織の欠損に関連する疾患および障害を処置するため、または後の埋没物の設置を準備するために支持される骨の治療的形成をいう。以下に記載する疾患および障害は、当該技術分野において周知であり、PschyrembelまたはStedmanなどの標準的な医学教本に詳細に記載されている。
【0040】
好ましくは、前記骨増強は、外傷的、悪性または人工的欠損の後に行なわれる。
【0041】
本発明の別の態様は、骨欠損処置用の医薬組成物の調製のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用に関する。
【0042】
より好ましくは、骨欠損は、長骨欠損、または根尖切除、嚢胞もしくは腫瘍摘出もしくは抜歯または残存する歯の外科的除去後の骨欠損である。
【0043】
本発明はまた、歯周療法術における腔の充填および支持誘導組織の再生のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用に関する。
【0044】
本発明の別の態様は、サイナスフロアエレベーション、萎縮上顎および下顎堤の増強および直接埋没物の安定化に使用する医薬組成物の調製のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用に関する。
【0045】
本発明の使用により、上記疾患の1つ以上を処置する方法もまた、本発明の範囲内であり、該方法は、少なくとも、薬学的に許容され得る形態の本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスを被験体に投与する工程を含む。好ましくは、被験体はヒトである。
【0046】
最後に、本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスを含むキットに関する。
本発明のキットの部品は、それぞれの成分に応じてバイアルまたは他の適切な手段にて個別にパッケージされ得るか、または適当な容器もしくは多容器ユニット内に組み合わせてパッケージされ得る。キットの製造は、好ましくは、当業者に知られた標準的な手順に従う。
【0047】
以下の表は、BMP-2、BMP-7およびGDF-5のアミノ酸配列を示す:
【0048】
ヒトBMP-2 (Swiss-Prot Prim. アクセッション番号P12643);配列番号1:
文献
[1]核酸由来配列.
MEDLINE=89072730; PubMed=3201241;
Wozney J.M., Rosen V., Celeste A.J., MitsockL.M., Whitters M.J., KrizR.W., Hewick R.M., Wang E.A.;
「骨形成の新規レギュレーター:分子クローンおよび活性」;
Science 242:1528-1534(1988).
[2] 292〜396のX線結晶学(2.7オングストローム).
MEDLINE=99175323; PubMed=10074410;
Scheufler C., Sebald W., HuelsmeyerM.;
「2.7 A解像におけるヒト骨形成因子-2の結晶構造」;
J. Mol. Biol. 287:103-115(1999).
【0049】
ヒトBMP-7(Swiss-Prot Prim. アクセッション番号:P18075); 配列番号2:
文献
[1]核酸由来配列、および部分配列.
TISSUE=Placenta;
MEDLINE=90291971; PubMed=2357959;
Oezkaynak E., Rueger D.C., Drier E.A., Corbett C.,Ridge R.J., Sampath T.K., OppermannH.;
「OP-1 cDNA はTGF-βファミリーの骨原性タンパク質をコードする」;
EMBO J. 9:2085-2093(1990).
[2]核酸由来配列.
MEDLINE=91088608; PubMed=2263636;
Celeste A.J., IannazziJ.A., Taylor R.C., Hewick R.M., Rosen V., Wang E.A., Wozney J.M.;
「ウシ骨から精製された骨誘導性タンパク質に存在するトランスホーミング増殖因子βファミリーメンバーの同定」;
Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 87:9843-9847(1990).
[3]293〜431のX-線結晶学(2.8オングストローム).
MEDLINE=96149402; PubMed=8570652;
Griffith D.L., Keck P.C., Sampath T.K., Rueger D.C., Carlson W.D.;
「組換えヒト骨原性タンパク質1の三次元構造: トランスホーミング増殖因子βスーパーファミリーの構造パラダイム」;
Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 93:878-883(1996).
【0050】
ヒトGDF-5 (Swiss-Prot Prim. アクセッション番号: P43026); 配列番号3:
文献
[1]核酸由来配列.
組織=胎盤;
MEDLINE=95071375; PubMed=7980526;
Hoetten G., Neidhardt H., JacobowskyB., Pohl J.;
「組換えヒト成長/分化因子5のクローニングおよび発現」;
Biochem. Biophys. Res.Commun. 204:646-652(1994).
[2]核酸由来配列.
組織=関節軟骨;
MEDLINE=95050604; PubMed=7961761;
Chang S., Hoang B., Thomas J.T., Vukicevic S., Luyten F.P., Ryba N.J.P., Kozak C.A., Reddi A.H., Moos M.;
「軟骨由来形成因子. ヒト胚発生中の長骨において優先的に発現されるトランスホーミング増殖因子βスーパーファミリーの新規メンバー」;
J. Biol. Chem. 269:28227-28234(1994).
【0051】
単に例示するのみであって、本発明の範囲の限定を構成するものでない以下の生物学的実施例を参照することにより、本発明を記載する。
【実施例】
【0052】
実施例1: RP-HPLCによる溶液中のGDF-5の定量
GDF-5含量を逆相(RP-)HPLC-解析により測定した。試料のアリコートを、Poros C8-18カラム(R2/10, 2.1* 30 mm, Applied Biosystems)を用いて解析した。21%アセトニトリル中0.1%ギ酸(溶媒A)および84%アセトニトリル中0.1%ギ酸(溶媒B)を溶媒として流速0.4 ml/分で使用した。溶出プロフィールを220 nmでの吸収を測定することにより記録した。GDF-5の量を、標準曲線を用いて220nmでのピーク領域から計算した。
【0053】
実施例2: 固定化タンパク質の抽出および定量
方法A:
コーティングしたβ-TCP(40mg)を、700μl溶液マトリックス(1.22 mol/lクエン酸, 1.22 mol/l HCl, 8 mol/l 尿素)中に懸濁し、60分間4℃でインキュベートした。遠心分離(13200* g、2 分)後、50μlの上清みを RP_HPLCにより解析した。(実施例1参照)。それぞれのマトリックス溶液において種々のGDF-5の量を用いて標準曲線を作成した。
【0054】
方法B:
コーティングしたβ-TCP(40mg)を、700μl溶液マトリックス(10mmol/l Tris/HCl、pH7.4、8 mol/l 尿素、100mmol/lEDTA)に懸濁し、60分間4℃でインキュベートし、遠心分離(13,500 * gで5分間)した。続いて、上清みを方法Aで先に記載したようにして定量するか、またはさらに解析した。
【0055】
実施例3:異なるpH値でのrhGDF-5の溶解性
GDF-5を4mg/ml 10mmol/l HClの濃度に調整する。ストック溶液のアリコート(50μl)を、それぞれpH値が異なる5mmol/l 酢酸、5mmol/l H3PO4/NaOH、150mmol/l NaClを用いて1:100に希釈する。試料を15分間インキュベートし、遠心分離(13,200 * gで2分間)した。上清みのpH値およびタンパク質含量を測定した。第2試験において、ストック溶液を、それぞれpH値が異なる20mmol/l アルギニン/HOAc を用いて希釈した。図1および2のデータは、低イオン強度(≦20mmol/l)のバッファー中のGDF-5は酸性(pH≦ 5)またはアルカリ性(>pH10)溶液においてのみ可溶性であることを示す。しかしながら、6.0〜9.5の間のpH域では、溶解性は<5μg/mlである。
【0056】
実施例4: 異なるpH値での異なるイオン強度を有する2つのバッファーにおけるGDF-5の溶解性
GDF-5を4mg/ml 10mmol/l HClの濃度に調整する。ストック溶液のアリコート(50μl)を、10mmol/l 酢酸/NaOHおよびそれぞれpH値が異なる5mmol/l 酢酸、5mmol/l H3PO4/NaOH、150mmol/l NaClを用いて1:100に希釈する。試料を15分間インキュベートし、遠心分離(13,200 * gで2分間)した。上清みのpH値およびタンパク質含量を測定する。図3のデータは、測定したすべてのpH値で、生理学的条件に相当する高イオン強度のバッファー中のGDF-5の溶解性は、低イオン強度(約10mmol/l)のバッファーの場合よりも有意に低いことを示す。
【0057】
実施例5: 異なる溶媒中におけるGDF-5の溶解性
凍結乾燥GDF-5を精製アセトニトリルに溶解し、15分間室温でインキュベートし、遠心分離(13,200* g、2分間)した。上清みにおいてGDF-5は検出され得なかった。
【0058】
凍結乾燥GDF-5(50μg)を50μl 75%アセトニトリルに溶解し、15分間室温でインキュベートし、遠心分離(13,200 * g、2分間)した。上清みにおいて、pHを測定し、GDF-5の含量を測定した。使用したGDF-5が100%検出され、溶液のpH値は3.0であった。続いて、NaOHを添加することによりpH値をpH7.4に調整し、15分間室温で再度インキュベートし、遠心分離した。溶解性60μg/mlに相当するわずか3μg/mlが検出された。
【0059】
データは、GDF-5が、精製アセトニトリルには可溶性でないが、アセトニトリルを含有する酸性水溶液には可溶性であることを示す。水性系において見られた結果によると、アセトニトリル-水-混合物中における溶解性はpHが上昇するにつれて減少する。
【0060】
実施例6: β-TCPのコーティング中におけるGDF-5溶液のpH値の変化
反応容器において、200mg β-TCPを、GDF-5 (1mg/ml; HCl溶液からの凍結乾燥品から調製)を含有するコーティング溶液200μlと混合する。懸濁液のpH値を30分間観察する。図4〜5に示す結果は、約2分後、懸濁液のpHはpH>6.5の範囲に達し、これは、例えば、10mmol/l HClまたは75%アセトニトリルなどの非緩衝コーティング溶液を使用した場合(75%アセトニトリルにおける酸性初期pHは、残留HCl量によりもたらされる)、GDF-5の溶解性の臨界である。不十分な溶解性のため、タンパク質の沈殿および凝集形成が起こり、これは、クーマシー染色(実施例7参照)により検出され得る。
酢酸緩衝コーティング溶液(図6)の使用は、コーティング中のpH上昇の低下を引き起こす。非緩衝溶液においてpHは8まで上昇するが、酢酸(40-80mmol/l)-緩衝コーティング溶液のpHは、pH5.4で自身の最大に達する。したがって、コーティングプロセス中の充分な溶解性が保証される。使用されるGDF-5は、沈澱が起こることなく均一に分散され、担体と結合する (実施例7参照)。
pH上昇の遅延は、60%エタノールの使用によっても達成される。遅延は、担体全体へのGDF-5の均一分布を達成するのに充分である(実施例7参照)。
【0061】
実施例7: コーティングの均一性の検出
吸着されたタンパク質を、担体においてクーマシーブリリアントブルーでの染色により可視化する。青色の分布はβ-TCP担体上のそれぞれのタンパク質の分布に関連する。
【0062】
3-4個のコーティングされた顆粒を、96-ウェルプレートの穴内で200μl染色溶液(60% PBS、40%メタノール、0.4%クーマシーブリリアントブルーR250)とともにインキュベートし、30分間室温でインキュベートする。非コーティング担体を対照と同様に処理する。対照として使用した非コーティング担体が完全に脱色されるまで、60% PBS、40%メタノールで洗浄することにより過剰の染色剤を除去する。染色された担体を40℃で乾燥し、写真により記録する。
【0063】
実施例8: 顆粒(I)のコーティング
200mgβ-TCP (0.5〜1.0 mm顆粒径)を、乾燥形態で2R-ガラスに入れる。rhGDF-5(10mM HCl中4mg/ml)のストック溶液を、対応するコーティングバッファーで1μg/mlまで希釈する。このようにして得られたGDF-5溶液200μlをβ-TCP上にピペッティングし、吸収させる。湿った顆粒を1時間25℃でインキュベートし、次いで、真空乾燥した。
【0064】
実施例9: 顆粒(II)のコーティング
200mgβ-TCP (0.5〜1.0 mm顆粒径)を、乾燥形態で2R-ガラスに入れる。rhGDF-5(10mM HCl中4mg/ml)のストック溶液を、対応するコーティングバッファーで1μg/mlまで希釈する。このようにして得られたGDF-5溶液200μlをβ-TCP上にピペッティングし、吸収させる。湿った顆粒を1時間25℃でインキュベートし、次いで、凍結乾燥した。
【0065】
実施例10: ブロックのコーティング
360mgの質量を有するβ-TCPブロックを適当な反応容器(Eppendorf)に入れ、500μl のコーティング溶液と混合し、1時間インキュベートし、次いで、真空-または凍結-乾燥した。
【0066】
実施例11: 異なるコーティング方法の比較
酢酸-緩衝コーティング溶液の使用により、沈殿形成が有意に低減され得る。別の改善がスクロースの添加によってなされた。スクロースありおよびスクロースなしでのコーティングの質を図7に示す。スクロースなしでは個々の沈殿がなお暗青斑点として認識され得るが、スクロースの存在下でのコーティングは、斑点のないコーティングをもたらす。
【0067】
コーティングの均一性の重要性は、研究中に、それぞれ、60%エタノールおよび20mmol/l グリシン/NaOH、pH10中のコーティング溶液を用いて作製した2つの調製物を比較すると明白になる。60%エタノールの存在下では均一分布が達成されたが(図8)、グリシンの存在下では担体表面上で有意な沈殿形成が起こる(図9)。両担体を、ラット頭蓋冠欠損モデルにおいて比較した(下記参照)。
【0068】
実施例12: ラットにおける全層頭蓋冠欠損モデル
rhGDF-5(50μg/25mgのβ-TCP)をコートしたβ-TCPを、異なるコーティングバッファー(20mmol/l グリシン/NaOH、pH10 (C1)および60%エタノール(C2))を用いて製造した。Tiletamine-Zolazepam (ZOLETIL(登録商標) VIRBAC, CARROS, France,50mg/kg, IM)の筋肉内注射によりラットを麻酔した。頭蓋の背面部を除毛した。次いで、殺菌石鹸(VETEDINE(登録商標), VETOQUINOL, LURE, France)で皮膚をこすった。ポビドンヨード(VETEDINE(登録商標) 溶液,VETOQUINOL, LURE, France)などの防腐薬で外科的処置部位をこすった。矢状縫合に沿って頭皮を20 mm切開し、皮膚、筋系および骨膜を裏返し、頭頂骨を露出させた。6mmのトレフィンバー(COVELY, GENAY, France)を用い、滅菌生理学的溶液(AGUETTANT,LYON, France)で常時洗浄しながら頭頂骨の背面部に矢状縫合に水平な欠損を作製した。1匹の動物あたり2つの同一の欠損を作製した。脳硬膜を損傷しないように、および上矢状静脈洞に穿刺しないように注意した。埋没物を適用した後、骨膜および筋肉を元のように縫合し、頭皮を縫合した(ポリプロピレン糸, Prolene(登録商標), ETHNOR, ISSY LES MOULINEAUX, France)。
6週間追跡した後、動物を、ZOLETIL(登録商標) (50mg/kg)の筋肉内注射により麻酔し、次いでDOLETHALND (ペントバルビタールナトリウム(sodique), VETOQUINOL, LURE, France)の致死量(dosis)注射により安楽死させた。
外植片をサンプリングし、10%緩衝ホルマリン溶液注で固定した。その後、試料を高濃度アルコール溶液中で脱水し、PMMA(ポリメチルメタクリレート, Merck KGaA,Darmstadt, Germany)中に包した。Donath (Donath K. BreunerG., 軟組織の残存を伴う非脱石灰骨および歯の研究方法. J. Oral. Pathol. 11, 318-326, 1982)から採用したマイクロカット(microcutting)および磨砕技術により、20μm厚の切片を得た。定性および半定量光学顕微鏡解析ため、切片を改変Paragonで染色した。
x4,x10, x25およびx40対物レンズを備えたPolyvar顕微鏡(REICHERT)を用いて組織学的切片を観察した。
【0069】
C2処置部位において大量の骨髄および骨芽細胞が観察された。対照的に、C1では骨形成が良好でなかった。C2では、C1と比べて埋没物質の分解も増大していた。埋没物質の組織形態計測的解析の結果については、表1ならびに図10および11を参照のこと。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例13: BMP-2によるβ-TCPのコーティング
200mg βTCP(0.5〜1.0 mm顆粒径)を2R-ガラスに充填する。BMP-2のストック溶液を、対応するコーティングバッファー(10mmol/l 酢酸、10%スクロース)で1mg/mlまで希釈する。200μlのコーティング溶液をβ-TCPとともにインキュベートし(1時間、4℃)、凍結乾燥した。コーティングした担体上のBMP-2の分布をクーマシー染色により示した(図12)。
【0072】
実施例14: スクロースおよびトレハロースの存在下でのコーティングプロセスの比較
200mg β-TCP(0.5〜1.0mm顆粒径)を2R-ガラスに充填する。GDF-5(10mmol/l HCl中4mg/ml)のストック溶液を対応するコーティングバッファーで1mg/mlまで希釈する。2種類のコーティングバッファーは、それぞれ、10%スクロースおよび10%トレハロースを含んでいる。200μlのコーティング溶液をβ-TCP とともにインキュベートし(1時間、4℃)、および凍結乾燥した。コーティングした担体上のGDF-5の分布をクーマシー染色により示した(図13)。
【0073】
実施例15: エタノールおよびマンニトールの存在下でのコーティングの比較
200mg β-TCP(0.5〜1.0mm顆粒径)を2R-ガラスに充填する。GDF-5(10mmol/l HCl中4mg/ml)のストック溶液を対応するコーティングバッファーで1mg/mlまで希釈する。2種類のコーティングバッファーは、それぞれ、60%エタノールおよび10%マンニトール, 10mmol/l酢酸を含んでいる。200μlのコーティング溶液をβ-TCPとともにインキュベートし(1時間、4℃)、および凍結乾燥した。コーティングした担体上のGDF-5の分布をクーマシー染色により示した(図14)。
【0074】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含むキャリアを含有する、インビボで骨誘導性および骨伝導特性を有するデバイスに関し、ここで該キャリアは該タンパク質で均質に被覆される。さらに、本発明は、インビボで骨誘導性および骨伝導特性を有するデバイスの製造方法に関する。本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られうるデバイスを含有する医薬組成物に関し、骨増強、骨欠損の治療、変性および外傷性の椎間板(disc)疾患の治療、サイナスフロアエレベーション(sinus floor elevation)および骨離開の処置のために使用するための医薬組成物の調製のための上記デバイスの使用に関する。最後に、本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られうるデバイスを含有するキットに関する。
【背景技術】
【0002】
β-リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)(β-TCP)、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)およびヒドロキシアパタイト(HA)等の種々のリン酸カルシウムは、骨置換材料(マテリアル)として有効であることが示されている。例えば、β-TCPは、骨欠損の治療のための顆粒および断片(ブロック)の両方として適切である。リン酸カルシウムを含む骨置換材料は、通常、骨の再生がもはや不可能であるか、困難である場合に使用される。さらに、骨置換材料は、さらなる骨の形成が引き続く埋没物(implant)の設置に必須である場合に使用される。リン酸カルシウムは骨伝導性効果を発揮する、すなわち、それらは不活性構造を示し、隣接する骨からの細胞の遊走を促進する。しかし、骨または種々の間葉細胞の存在は、骨の新形成の必要条件である。リン酸カルシウムの効果は、骨細片を添加することにより有意に増大されうる。骨は、骨伝導性だけでなく、骨原性(骨材料の新合成のための骨細胞の刺激)および骨誘導性、すなわち、それらは骨芽細胞および軟骨細胞において未分化の間葉幹細胞の変換を引き起こす、である。安全性の理由のために、同種間または異種間調製物よりも自原性骨細片が好ましい。しかし、自原性骨の産生は、多くの場合、患者に受け入れられない第2の外科的手順に常に関与する。
自原性骨の使用の代替は、GDF-5または種々の骨形成因子(BMP)等の特異的な骨増殖および分化因子の使用である。これらのタンパク質因子は、それらが固定化形態で使用される場合にのみ発揮しうる骨誘導性効果を有する。文献では、リン酸カルシウム、コラーゲンおよび無機化コラーゲン(リン酸カルシウムを含有するコラーゲン)が担体(ヒドロキシアパタイトおよびβ-TCP(Hotz, 1994)、藻類抽出物由来ヒドロキシアパタイト(Gao,1996)、骨抽出物(Gombotz, 1996)およびコラーゲン(Friess,1999))として記載されている。文献に記載される被覆担体の効力の分析は、一様な全体像を示さず、選択される担体の型または被覆方法のいずれかの結果である有意な変化を示す(Terheydenら、(1997))。種々の方法が記載されている。特許文献1において、被覆は、最初に有機溶媒にGDF-5を溶かし、次いで水を添加することによりそれを沈殿させることにより達成されるβ-TCPへのGDF-5の迅速な調製により達成される。しかし、多くの溶媒の毒性により、かかるプロセスは医薬組成物の製造には好ましくない。Lindら(1996)は、ゼラチンの存在下での種々のリン酸カルシウムセラミックスの被覆を行う。しかし、増大した感染の危険性のために、動物材料の使用は、医薬組成物および医薬品の製造には避けられるべきである。Friessら(1999)およびGaoら(1996)は、BMP-2でのコラーゲンの被覆を記載している。しかし、コラーゲンの低圧縮強度のために、かかる担体は全ての適応症について適するわけではない。これは、新規に形成された骨が後の圧力付加を支えなければならない適応症に特に適用される。さらに、コラーゲンの医薬品質のコラーゲンはこれまで動物供給源のみから入手可能である。
【0003】
いくつかの論文は骨増強のためのタンパク質被覆担体の使用を記載しているが、効率的かつ信頼できる製造方法および骨欠損の処置のための使用は非常に望ましいにもかかわらず利用可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO98/21972
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の基礎をなす技術的課題は、骨増強を含む効率的かつ信頼できる骨欠損の処置手段および方法を提供することである。
この技術的課題は、特許請求の範囲において特徴づけられる態様により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有してなり、該担体が該タンパク質で均一に被覆されている、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイス、
〔2〕(a)溶解した骨誘導性タンパク質、およびリン酸カルシウムを含有する担体と接触した場合、該担体の均一な被覆を可能にするのに十分な時間の間、タンパク質の溶解を維持する緩衝液を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液とリン酸カルシウムを含む担体とを接触させる工程;
(c)該溶解タンパク質での該担体の表面の均一な被覆を可能にする工程;および
(d)工程(c)で得られる被覆担体を乾燥させる工程、
を含むインビボで骨誘導特性および骨伝達特性を有するデバイスの製造方法、
〔3〕前記緩衝液が100mmol/l未満、50mmol/l未満または20mmol/l未満の緩衝液濃度を有する〔2〕記載の方法、
〔4〕前記緩衝液が弱酸を含む〔3〕記載の方法、
〔5〕前記弱酸が酢酸またはコハク酸である〔4〕記載の方法、
〔6〕前記緩衝液が糖類をさらに含有する〔2〕〜〔5〕いずれか記載の方法、
〔7〕前記糖類が二糖である〔6〕記載の方法、
〔8〕前記二糖がスクロースまたはトレハロースである〔7〕記載の方法、
〔9〕前記緩衝液がアルコールを含有する〔2〕〜〔8〕いずれか記載の方法、
〔10〕前記アルコールがエタノールまたはマンニトールである〔9〕記載の方法、
〔11〕前記リン酸カルシウムがβリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、アパタイトまたはリン酸カルシウム含有セメントである〔1〕記載のデバイスまたは〔2〕〜〔10〕いずれか記載の方法、
〔12〕前記骨誘導性タンパク質がTGF-βファミリーのメンバーである〔1〕記載のデバイス、〔2〕〜〔10〕記載の方法または〔11〕記載のデバイスまたは方法、
〔13〕前記TGF-βファミリーのメンバーがBMPサブファミリーのメンバーである〔12〕記載のデバイスまたは方法、
〔14〕前記BMPファミリーのメンバーがBMP2またはBMP7である〔13〕記載のデバイスまたは方法、
〔15〕前記TGF-βファミリーのメンバーがGDF-5、GDF-6およびGDF-7の群のタンパク質である〔12〕記載のデバイスまたは方法、
〔16〕GDFがGDF-5である〔15〕記載のデバイスまたは方法、
〔17〕前記デバイスが毒性物質を含まない〔1〕記載のデバイス、〔2〕〜〔10〕いずれか記載の方法または〔11〕〜〔16〕いずれか記載のデバイスまたは方法、
〔18〕前記デバイスが感染性物質を含まない〔1〕記載のデバイス、〔2〕〜〔10〕いずれか記載の方法または〔11〕〜〔17〕いずれか記載のデバイスまたは方法、
〔19〕〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスを含有してなる医薬組成物、
〔20〕骨増強のために使用される医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔21〕骨増強が外傷性、悪性または人為的欠損後、または引き続く埋没物の設置に必要である〔20〕記載の使用、
〔22〕骨欠損の処置のための医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔23〕前記骨欠損が長骨欠損、顎顔面領域における欠損または根尖切除、膿疱または腫瘍の摘出術、抜歯、または残存する歯の外科的除去後の骨欠損である〔22〕記載の使用、
〔24〕変性および外傷性椎間板疾患の処置のための医薬組成物の調製のための〔1〕もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔25〕骨離開を処置するための医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔26〕萎縮性の上顎または下顎堤のサイナスフロアエレベーションまたは増強に使用するための医薬組成物の調製のための〔1〕、もしくは〔11〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用、
〔27〕〔1〕、もしくは〔10〕〜〔18〕いずれか記載のデバイスまたは〔2〕〜〔18〕記載の方法により得られうるデバイスを含有してなるキット
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、骨増強を含む効率的かつ信頼できる骨欠損の処置手段および方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、異なるpH値での5mM酢酸、5mM H3PO4/NaOH、150mM NaClにおけるGDF-5の溶解性の図である。
【図2】図2は、異なるpH値での20mMアルギニン/酢酸におけるGDF-5の溶解性の図である。
【図3】図3は、異なるイオン強度およびpH値を有する2つのバッファー(HAc = 酢酸)におけるGDF-5の溶解性の図である。
【図4】図4は、10mmol/l HClの存在下でコーティング中のpH上昇の図である。
【図5】図5は、75%アセトニトリルの存在下でのpH上昇の図である。
【図6】図6は、コーティング中、異なる酢酸濃度を有するコーティング溶液のpH依存性を示す図である。
【図7】図7は、10mmol/l 酢酸の存在下、スクロースあり(右)およびスクロースなし(左)でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布(100mgβ-TCPに対して100μg GDF-5)の均一性の図である。
【図8】図8は、60%エタノールの存在下でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布(100mgβ-TCPに対して100μg GDF-5)の均一性の図である。
【図9】図9は、20mmol/l グリシン/NaOHの存在下、pH10でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布(100mgβ-TCPに対して100μg GDF-5)の均一性の図である。
【図10】図10は、20mmol/l グリシン/NaOHの存在下、pH10でコーティングされた埋没物の組織形態計測的解析の図である。
【図11】図11は、60%エタノールの存在下、pH10でコーティングされた埋没物の組織形態計測的解析の図である。
【図12】図12は、β-TCPに対するrhBMP-2の分布の均一性の図である。
【図13】図13は、スクロース(左)およびトレハロース(右)の存在下でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布の均一性の図である。
【図14】図14は、エタノール(左)およびマンニトール(右)の存在下でコーティングすることによって達成されるβ-TCPに対するGDF-5の分布の均一性の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従って、本発明は、リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有する、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイスに関し、前記担体が前記タンパク質で均一に被覆される。
【0010】
本発明に従って使用される用語「デバイス」は、少なくとも2つの成分を含むものをいう。前記成分の内の1つは、担体マトリックスである。好ましくは、前記担体マトリックスは無機セラミックスからなる。前記セラミックスは、マクロおよびミクロ細孔の存在のために特に高い表面を有する。好ましくは、前記マクロ-細孔は約100〜400nmの直径を有し、一方、ミクロ-細孔は10nm未満の直径を有する。最も好ましくは、前記担体は下記のようにリン酸カルシウムである。
前記デバイスの別の成分は、下記に詳細に説明されるような骨誘導特性を有するタンパク質またはポリペプチドである。タンパク質またはポリペプチドは担体の表面上に固定化される。本発明に従って適用される骨誘導性タンパク質およびポリペプチドは、リン酸カルシウムなどの無機担体マトリックスに対して特に高い親和性を有する。好ましくは、担体への前記タンパク質またはポリペプチドの結合は可逆的である。それにより、一旦、デバイスが骨腔(bonecavity)等のインビボ環境に適切にもたらされると該タンパク質の溶解が許容される。好ましくは、前記タンパク質の溶解は、低速放出であり、デバイスを囲む組織へのタンパク質の拡散を可能にする。従って、デバイスは、緩徐に放出され、それにより、周囲の組織に効率的に分配されうる骨誘導タンパク質のためのインビボ供給源として働くか、または固定化型の効果を有する。
デバイスは、さらに、さらなる賦形剤を含有する。これらの賦形剤はタンパク質の安定化(例えば、糖類、アミノ酸、ポリオールもしくは界面活性剤)またはpHの維持(例えば、緩衝物質)に役立つ。本発明に含まれる好ましい賦形剤は以下に詳細に考察される。
【0011】
用語「骨誘導性」は、骨芽細胞および軟骨細胞への間葉幹細胞の変換の能力をいう。骨誘導に必須なものは、デバイスにより周囲の組織に分配されるシグナルであり、ここで前述の骨芽細胞前駆体は活性化される。本明細書中で使用される骨誘導は骨前駆体細胞、骨芽細胞への間葉細胞の分化を含む。さらに、骨誘導はまた、骨細胞、骨の成熟細胞への前記骨芽細胞の分化を含む。さらに、骨誘導に含まれるのはまた、軟骨細胞への間葉細胞の分化である。特に長骨において、骨の軟骨膜に存在する軟骨芽細胞および軟骨細胞はまた骨細胞に分化しうる。従って、骨誘導は、骨を形成しうる骨細胞への未分化のまたはわずかに分化した細胞の分化を必要とする。従って、骨誘導に必要なものは、前述の骨細胞前駆体が通常存在する周囲の組織にデバイスにより分配されるシグナルである。上記のように、本発明に従って使用される骨誘導性タンパク質は、埋没(implantation)後、デバイスから緩徐に放出され、周囲の組織に効率的に分配される。さらに、本発明に含まれるタンパク質およびポリペプチドはインビボで骨誘導特性を有する。例えば、トランスホーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーが骨誘導特性を有するメンバーを含むことは当該分野で周知である。特に良好な骨誘導特性を有する前記TGF-βスーパーファミリーの個々のメンバーが以下に列挙される。結論として、担体から放出された後、本発明のデバイスの骨誘導性タンパクは、デバイスの埋没の側を包囲する組織の骨細胞前駆体に対する骨誘導性シグナルとして働く。
【0012】
用語「骨原性」は、骨芽細胞による新規骨の合成を記載する。本発明に従って、デバイスの埋没の側の周囲に既存の骨は、骨細胞が接着しうるマトリックスとしてデバイスの構造を使用してデバイス内に成長する。
【0013】
用語「担体」は、上で言及されたセラミックス等の三次元マトリックスを含む。さらに、上記のように、前記担体は、好ましくは、マクロ-およびミクロ-細孔の形成により拡大した表面を有する。担体材料は、骨誘導性タンパク質に対して高い親和性を有するにもかかわらず、インビボでの前記タンパク質の放出を可能にする。本発明に従って、前記担体は、好ましくは、リン酸カルシウムである。本発明のデバイスにより含まれる担体は、インビボでのデバイスの投与のために適切な型にもたらされうる(例えば、顆粒、塊、立方体、セメントおよび無定型ペースト)。さらに、担体は金属表面に被覆されうる。
【0014】
用語「リン酸カルシウム」は、カルシウムイオン、リン酸イオン、任意に、本発明の担体に適切なさらなるイオンまたは原子を含む組成物を含む。本発明に従って使用されるリン酸カルシウムは、上記のような本発明のデバイスに適切な三次元構造を有する結晶である。好ましく、周知のリン酸カルシウムのリストが下記に示される。
【0015】
上記のような用語「骨誘導性タンパク質」は、成長および分化因子-5等の骨誘導特性を有するトランスホーミング増殖因子-β(TGF-β)スーパーファミリーメンバーをいう;下記参照。これらの骨誘導性タンパク質は、リン酸カルシウムに対して高い親和性を発揮する。リン酸カルシウムは、例えば、β-TCP、α-TCPまたはヒドロキシアパタイトの型で存在しうる。マクロ-(100〜400nm)およびミクロ細孔(<10nm)に依存して、これらの無機鉱物は水溶液を吸収する。このプロセスの間、GDF-5またはBMP-2等のタンパク質は担体の表面に密接に吸着される。このプロセスの重要な必要条件は、被覆溶液中のタンパク質の十分な溶解性である。
【0016】
用語「均一に被覆される」は、担体の表面が前記骨誘導性タンパク質で完全に被覆され、それによって本質的に同一量のタンパク質が前記担体の表面のどの領域にも存在することを意味する。本発明に従って、均一に被覆された担体は、その表面上の骨誘導性タンパク質での最大の被覆を示す。均一な被覆は、埋没の部位の周囲の組織への骨誘導性タンパク質の効率的な放出および均一な分布および活性に必須である。さらに、骨誘導性タンパク質が沈殿または微小沈殿により凝集せず、部分的または完全に不活性化されず、むしろ生物学的に活性な、非凝集タンパク質の付着が均一な被覆により達成されることが理解されるべきである。前記均一な被覆は本発明の方法により、および付随する実施例において記載されるように達成されうる。さらに、固定化タンパク質の均一な被覆、定量および特徴付けを制御する手段および方法は、付随する実施例に記載される。
【0017】
有利なことに、上記の本発明のデバイスが、被験体、好ましくは、ヒトへの埋没後、インビボで改善された信頼できる骨誘導性および骨伝達特性を有することが本発明により見出された。かかるデバイスに必須なものは、生物学的に活性な、非凝集性骨誘導性タンパク質での担体の均一な被覆である。微小沈殿により引き起こされる凝集でさえも不均一な被覆に至り、先行技術、例えば、WO98/21972のデバイスについて記載されるような骨誘導特性の少なくとも有意な減少を生じることが見出された。さらに、埋没後の被験体の炎症および毒性反応等の所望されない副作用が、毒性の不純物または感染性の混入物を含まない本発明のデバイスにより回避されうる。特に、溶解性媒介物としての保護タンパク質(例えば、ゼラチン等)の使用は、本発明のデバイスについては全く不要である。
【0018】
さらに、本発明は、
(a)溶解した骨誘導性タンパク質および前記担体と接触させた場合にリン酸カルシウムを含む担体の均一な被覆を可能にするのに十分な時間の間、該タンパク質の溶解を維持する緩衝液を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液とリン酸カルシウムを含有する担体とを接触させる工程;
(c)前記溶解タンパク質での該担体の表面の均一な被覆を可能にする工程;
(d)工程(c)で得られた被覆担体を乾燥させる工程
を含むインビボでの骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイスの製造方法に関する。
【0019】
本発明のデバイスを記載するために使用される用語の定義は、前述の方法および下記の方法に必要な変更を適用する。用語「乾燥させる」は、骨誘導性タンパク質での担体の被覆後に依然として存在する過剰の緩衝液等の液体を除去するための手段を含む。好ましくは、乾燥は、減圧または凍結乾燥により達成される。
用語「均一な被覆を可能にする時間の間、前記タンパク質の溶解を維持する緩衝液」は、骨誘導性タンパク質が効率的に溶解され、例えば、pHの増大のために、タンパク質がすぐに沈殿しないように緩衝溶液とリン酸カルシウム担体とを接触させることにより引き起こされるpHの増大を釣り合わせることができる緩衝液をいう。前記緩衝液は、pH、イオン強度および担体と前記緩衝溶液との接触後の前記パラメータに対する担体の影響に依存する骨誘導性タンパク質の溶解性に基づいて当業者により構成されうる。本発明に従って、本発明の方法に適切な緩衝液は、緩衝物質を含む低濃度の弱酸、アルコールまたは糖類を包含することが見出された。
本発明の利点は、被覆プロセスの間に被覆溶液のpH増大の限定により達成される均一な被覆である。記載されるプロセスは、前記担体への骨誘導性タンパク質の均一な分配および固定化を可能にする。被覆プロセスの効力は、さらに、そのサイズのために、細孔に溶液を浸漬しうる多数のマクロ-およびミクロ-細孔の存在から生じる毛細管力のために担体により支持される。さらに、当該分野で記載、例えば、WO98/21972に記載の方法とは対照的に、骨誘導性タンパク質またはポリペプチドは、本発明の方法により沈殿または微小沈殿よりもむしろ担体への付着により適用される。本発明の基礎をなす知見は、タンパク質の凝集が本明細書中に記載される適切な添加剤の使用により回避されうることを示す。重要な必要条件は、pH値、イオン強度および存在する表面に依存する骨誘導性タンパク質の溶解度の知識である。アルカリ性様式で反応する被覆溶液とリン酸カルシウムとの接触により引き起こされる溶液のpH増大の減速は、特に、被覆の間に重要な役割を演じる。有利なことに、本発明の方法により、担体材料の内側表面を平坦に横断して分布し、前記タンパク質のpH-誘導性沈殿が起こる前に表面に結合しうる。リン酸カルシウムの被覆の間に起こるpH増大が、酢酸などの弱酸の使用により十分に減速されることが示され得た。さらに、エタノールまたはスクロースなどの有機的組み合わせの添加がさらに有利であることがわかる。さらに、低イオン強度は、上首尾な被覆のための重要な必要条件である。さらに、本発明者らの試験は、被覆溶液の容量もまた、被覆の質にかなりの影響を有することを示す。最終的に、本発明の方法は、当該分野で記載される方法に日常的に使用されるアセトニトリル等の有害な有機溶媒を回避することが目的である。前記有害な有機溶媒を回避することにより、安全なプロフィールおよび本発明のデバイスの安全性プロフィールおよび局所認容性が改善されうる。
【0020】
本発明の方法の好ましい態様では、前記緩衝液は、100mmol/l未満、50mmol/l未満または20mmol/l未満の緩衝液濃度を有する。
【0021】
上記から、より好ましくは、前記緩衝液は弱酸を含有する。
用語「弱酸」は、少なくとも1つのイオン生成性(ionogenically)結合した水素原子を含有する有機または無機化合物をいう。弱酸は当該分野で周知であり、Roempp、lexicon ofchemistry等の標準的な教科書に記載されている。好ましくは、前記弱酸は、低解離度を有し、3〜7、好ましくは4〜6のpK値により記載される。
【0022】
最も好ましくは、前記弱酸は酢酸またはコハク酸である。
【0023】
本発明の方法の別の好ましい態様では、前記緩衝液は、糖類をさらに含有する。
用語「糖類」は、単糖、二糖および多糖を含む。単糖、二糖、および多糖の構造および組成は当該分野で周知であり、Roempp、lexicon ofchemistry等の標準的な教科書に記載されている。
【0024】
より好ましくは、前記糖類は二糖である。最も好ましくは、前記糖類はスクロースまたはトレハロースである。
【0025】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、前記緩衝液はアルコールを含有する。
適切なアルコールは当該分野で周知であり、 Roempp、lexicon of chemistry等の標準的な教科書に記載されている。
【0026】
さらに好ましくは、前記アルコールはエタノールまたはマンニトールである。
【0027】
本発明のデバイスまたは方法の好ましい態様では、前記リン酸カルシウムはβリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、アパタイトまたはリン酸カルシウム含有セメントである。
前記リン酸カルシウムは、本発明のデバイス用の担体として特に良好に適する。そのインビボ特性は、Hotz, 1994, Gao, 1996, およびWO98/21972に記載されている。
【0028】
本発明のデバイスまたは方法のさらに好ましい態様では、前記骨誘導性タンパク質はTGF-βファミリーのメンバーである。
成長および分化因子のTGF-βファミリーは、骨形成を含む多数の生物学的なプロセスに関与することが示されている。前記ファミリーの全てのメンバーは、特徴的なドメイン構造を含む分泌ポリペプチドである。まさにN-末端に、TGF-βファミリーメンバーはシグナルペプチドまたは分泌リーダーを含む。この配列には、C-末端にプロドメインが続き、成熟ポリペプチドの配列が続く。成熟ポリペプチドの配列は7つの保存システインを含み、その内の6つは、分子内ジスルフィド結合の形成のために必要であり、一方、1つは、2つのポリペプチドの二量体化に必要とされる。生物学的に活性なTGF-βファミリーメンバーは、好ましくは2つの成熟ポリペプチドからなる、二量体である。TGF-βファミリーメンバーは、通常、成熟配列に加えて、プロドメインを含有するプロタンパク質として分泌される。プロドメインは、細胞外で切断され、シグナル伝達分子の一部ではない。しかし、プロドメインが成熟ポリペプチドの細胞外安定化のために必要でありうることが報告されている。
本発明の文脈において、用語「TGF-βファミリーメンバー」または前記ファミリーのタンパク質は、以下では、前記タンパク質またはメンバーの全ての生物学的に活性なバリアントおよび全てのバリアントならびにその不活性な前駆体前駆体を含んで適用される。従って、成熟配列をまれに含むタンパク質および成熟タンパク質および成熟タンパク質のプロドメインを含有するタンパク質、プロドメインおよびリーダー配列ならびにその生物学的に活性な断片が本発明の範囲内にある。TGF-βメンバーの断片が生物学的活性を有するかどうかは、例えば、Katagiri T, Yamaguchi A, Ikeda T, YoshikiS, Wozney JM, Rosen V, Wang EA, TankaH, Omura S, Suda T, (1990):The non-osteogenic mouse pluripotentcell line, C3H10T1/2 is induced to differentiate into osteoblasticcells by recombinant human bone morphogenetic protein-2. Biochem.Biophys.Res.Commun. 172: 295-299またはNishitoh H, Ichijo H, Kimura M,Matsumoto T, Makishima F, Yamaguchi A,Yamashita H, Enomoto S, Miyazono K (1996):Identification of type I and type II serine/threoninekinase receptors for growth/differentiation factor-5.J.Biol.Chem. 271:21345-21352に記載される生物学的アッセイにより容易に決定されうる。
【0029】
好ましくは、本発明の生物学的活性は、付随の実施例に記載されるようなインビボモデルにより測定されうる。さらに、TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列に少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一なアミノ酸配列を有するTGF-βメンバーのバリアントは本発明に含まれる。
【0030】
TGF-βスーパーファミリーのメンバーの概要は、Wozney JM, Rosen V (1998):Bone morphogenetic protein andbone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346: 26-37に示されている。TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列は、インターネット(http://www.expasy.ch/sprot/sprot-top.html)を介してSwiss-Prot等の周知のデータベースから得られうる。特に高い骨誘導性潜在力を有するBMP2、BMP7およびGDF-5、TGF-βファミリーのメンバーのアミノ酸配列はまた、それぞれ配列番号:1〜3に示される。特に高い骨原性潜在力を有するTGF-βファミリーのメンバーであるBMP2、BMP7およびGDF-5のアミノ酸配列はまた、それぞれ配列番号:1〜3に示される。
【0031】
より好ましくは、TGF-βファミリーの前記メンバーはBMPサブファミリーのメンバーである。骨形成因子(BMP)サブファミリーのメンバーは、とりわけ、骨組織の誘導および再構築に関与することが示されている。BMPは、骨マトリックスから最初に単離された。これらのタンパク質は、異所部位に新規骨形成を誘導する能力により特徴づけられる。種々のインビボ研究は、BMPによる前駆体細胞の骨原性および軟骨形成の促進を示し、各BMP分子が骨格発達の間に別個の役割を有しうる可能性が生じる。BMPの分子および生物学的特性に関するさらなる詳細は、Wozney JM, Rosen V (1998):Bone morphogenetic protein andbone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346:26-27, Schmitt J,Hwang K, Winn, SR, Hollinger J (1999): Bone morphogenetic proteins: an updateon basic biology and clinical relevance. J Orthop Res 17:269-278およびLind M (1996):Growth factors:possiblenew clinical tools. A review.Acta Orhop Scand 67:407-17に記載されている。
【0032】
より好ましくは、TGF-βファミリーの前記メンバーはBMPサブファミリーのメンバーである。
骨形成因子(BMP)サブファミリーのメンバーは、とりわけ、骨組織の誘導および再構築に関与することが示されている。BMPは、骨マトリックスから最初に単離された。これらのタンパク質は、異所部位に新規骨形成を誘導する能力により特徴づけられる。種々のインビボ研究は、BMPによる前駆体細胞の骨原性および軟骨形成の促進を示し、各BMP分子が骨格発達の間に別個の役割を有しうる可能性が生じる。BMPの分子および生物学的特性に関するさらなる詳細は、Wozney JM, Rosen V (1998):Bone morphogenetic protein and bone morphogenetic protein gene family in bone formation and repair. Clin Orthop 346:26-27, Schmitt J, Hwang K, Winn, SR, Hollinger J (1999): Bone morphogenetic proteins: an update on basic biology and clinical relevance. J Orthop Res 17:269-278およびLind M (1996):Growth factors:possible new clinical tools. A review.Acta Orhop Scand 67:407-17に記載されている。
【0033】
最も好ましくは、BMPファミリーのメンバーはBMP2またはBMP7である。
BMP2のプレプロ型のアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P12643で寄託されており、以下に示す。アミノ酸1〜23はシグナル配列に相当し、アミノ酸24〜282はプロペプチドに相当し、アミノ酸283〜396は成熟タンパク質に相当する。BMP7のプレプロ型のアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P18075で寄託されているものか、または配列番号:2に示されるものである。アミノ酸1〜29はリーダー配列に相当し、アミノ酸30〜292はプロ型に相当し、アミノ酸293〜431は成熟タンパク質に相当する。好ましくは、BMP-2またはBMP7は、それぞれ、プレプロ型、プロ型または成熟BMP-2もしくはBMP-7ペプチドをさす。さらに、本質的に同じ生物学的活性、好ましくは骨誘導特性を有する該タンパク質の断片もまた包含される。BMP2およびBMP7に対するさらなる配列情報を以下に提供する。
また、より好ましくは、TGF-βファミリーの該メンバーはGDFである。
成長および分化因子(GDF)もまた、特に、骨組織の誘導およびリモデリングに関与することが示されている。軟骨由来形成因子1(CDMP-1)としても知られている成長分化因子5(GDF-5)は、BMPファミリー亜群のメンバーであり、これはまた、他の関連タンパク質、好ましくは、GDF-6およびGDF-7を含む。該タンパク質の成熟型は、27kDaホモダイマーである。種々のインビボおよびインビトロ研究により、哺乳動物骨格における異なる形態学的特徴の形成の際のGDP-5の役割が実証されている。GDF-5の変異は、四肢の長骨の長さの短縮、肢部および胸骨の関節発達異常を含む骨格異常の原因となる(Storm& Kingsley (1999), Development Biology, 209, 11-27)。マウスとヒトとの間のアミノ酸配列は、高度に保存されている。
【0034】
最も好ましくは、GDFサブファミリーのメンバーはGDF-5である。
GDF-5のプレプロ型のアミノ酸配列は、Swiss-Protアクセッション番号P43 0 26で寄託されたものであるか、または配列番号:3に示されるものである。アミノ酸1〜27はリーダー配列に相当し、アミノ酸28〜381プロ型に相当し、アミノ酸382〜501は成熟タンパク質に相当する。好ましくは、GDF-5はプレプロ型、プロ型または成熟GDF-5ペプチドをさす。さらに、本質的に同じ生物学的活性、好ましくは骨誘導特性を有するGDF-5の断片もまた包含される。最も好ましくは、該断片は、配列番号:3に示す配列のアミノ酸383〜501を含有する。
【0035】
本発明のデバイスまたは方法の別の好ましい態様では、該デバイスは毒性物質を含まない。
用語「毒性物質」は、好ましくは、当該技術分野において記載されている方法により使用される毒性有機溶媒および添加剤、例えばアセトニトリルを包含する。該物質は、該物質を含有するデバイスの埋め込み後に炎症および他の反応を引き起こし得る。該デバイスは、当該技術分野において記載されているコーティング方法によっては回避できない望ましくない副作用のために、治療上あまり許容され得ないものである。さらに、治療用タンパク質の開発のための国際的ガイダンスでは、製造プロセスにおいて、有害および毒性物質を避けるべきであることが求められている(詳細については: International Conference on Harmonisation(ICH), Topic Q3C; www. emea.eu.int/を参照)。しかしながら、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスは、有利なことに、このような毒性物質を含まず、したがって、治療上、充分許容可能であり、上記規制要件を満たす。
【0036】
さらに、本発明のデバイスまたは方法のさらに好ましい態様では、デバイスは感染性物質を含まない。
毒性物質に加え、デバイスに含まれる感染性物質は、デバイスを埋め込まれた被験体において重篤な感染を引き起こし得る。しかしながら、ウシまたはブタ(procine)骨由来の潜在的感染性ゼラチンが、多くの従来法において、保護タンパク質として使用されている(Lind,1996)。
【0037】
本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスを含有する医薬組成物を包含する。本発明の生産物は、医薬組成物または医療用デバイスとして製剤化され得る。該生産物の組成物は、安定剤、緩衝物質および他の賦形剤のようなさらなる化合物を含み得る。患者に適用される本発明の生産物の量は、担当医および他の臨床的要因により;好ましくは上述の方法のいずれかに従って決定される。医療分野において周知であるように、患者に適用される量は、患者の体格、体表面積、年齢、性別、投与時間および経路、一般健康状態ならびに同時に投与されている他の薬物を含む多くの要因に依存する。経過は定期的評価により監視し得る。
【0038】
本発明のおかげで、大腔を含む種々の骨欠損を処置することが可能になる。特に、大腔は、全く効率的に処置され得なかったか、自己骨材料の使用下でわずかに効率的に処置され得た。しかしながら、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの、信頼性があり、かつ効率的な骨誘導および骨伝導特性のため、広範囲の骨増強または修復が必要とされる骨欠損の処置が、今や二次手術なしで可能となった。
【0039】
本発明はまた、骨増強に使用される医薬組成物の調製のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用を包含する。
上記の用語の定義は、必要な変更を加えて、本発明の上述の使用および以下に記載のものにあてはめる。
用語「骨増強」は、骨欠損、骨内の腔または骨組織の欠損に関連する疾患および障害を処置するため、または後の埋没物の設置を準備するために支持される骨の治療的形成をいう。以下に記載する疾患および障害は、当該技術分野において周知であり、PschyrembelまたはStedmanなどの標準的な医学教本に詳細に記載されている。
【0040】
好ましくは、前記骨増強は、外傷的、悪性または人工的欠損の後に行なわれる。
【0041】
本発明の別の態様は、骨欠損処置用の医薬組成物の調製のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用に関する。
【0042】
より好ましくは、骨欠損は、長骨欠損、または根尖切除、嚢胞もしくは腫瘍摘出もしくは抜歯または残存する歯の外科的除去後の骨欠損である。
【0043】
本発明はまた、歯周療法術における腔の充填および支持誘導組織の再生のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用に関する。
【0044】
本発明の別の態様は、サイナスフロアエレベーション、萎縮上顎および下顎堤の増強および直接埋没物の安定化に使用する医薬組成物の調製のための、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスの使用に関する。
【0045】
本発明の使用により、上記疾患の1つ以上を処置する方法もまた、本発明の範囲内であり、該方法は、少なくとも、薬学的に許容され得る形態の本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスを被験体に投与する工程を含む。好ましくは、被験体はヒトである。
【0046】
最後に、本発明は、本発明のデバイスまたは本発明の方法により得られ得るデバイスを含むキットに関する。
本発明のキットの部品は、それぞれの成分に応じてバイアルまたは他の適切な手段にて個別にパッケージされ得るか、または適当な容器もしくは多容器ユニット内に組み合わせてパッケージされ得る。キットの製造は、好ましくは、当業者に知られた標準的な手順に従う。
【0047】
以下の表は、BMP-2、BMP-7およびGDF-5のアミノ酸配列を示す:
【0048】
ヒトBMP-2 (Swiss-Prot Prim. アクセッション番号P12643);配列番号1:
文献
[1]核酸由来配列.
MEDLINE=89072730; PubMed=3201241;
Wozney J.M., Rosen V., Celeste A.J., MitsockL.M., Whitters M.J., KrizR.W., Hewick R.M., Wang E.A.;
「骨形成の新規レギュレーター:分子クローンおよび活性」;
Science 242:1528-1534(1988).
[2] 292〜396のX線結晶学(2.7オングストローム).
MEDLINE=99175323; PubMed=10074410;
Scheufler C., Sebald W., HuelsmeyerM.;
「2.7 A解像におけるヒト骨形成因子-2の結晶構造」;
J. Mol. Biol. 287:103-115(1999).
【0049】
ヒトBMP-7(Swiss-Prot Prim. アクセッション番号:P18075); 配列番号2:
文献
[1]核酸由来配列、および部分配列.
TISSUE=Placenta;
MEDLINE=90291971; PubMed=2357959;
Oezkaynak E., Rueger D.C., Drier E.A., Corbett C.,Ridge R.J., Sampath T.K., OppermannH.;
「OP-1 cDNA はTGF-βファミリーの骨原性タンパク質をコードする」;
EMBO J. 9:2085-2093(1990).
[2]核酸由来配列.
MEDLINE=91088608; PubMed=2263636;
Celeste A.J., IannazziJ.A., Taylor R.C., Hewick R.M., Rosen V., Wang E.A., Wozney J.M.;
「ウシ骨から精製された骨誘導性タンパク質に存在するトランスホーミング増殖因子βファミリーメンバーの同定」;
Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 87:9843-9847(1990).
[3]293〜431のX-線結晶学(2.8オングストローム).
MEDLINE=96149402; PubMed=8570652;
Griffith D.L., Keck P.C., Sampath T.K., Rueger D.C., Carlson W.D.;
「組換えヒト骨原性タンパク質1の三次元構造: トランスホーミング増殖因子βスーパーファミリーの構造パラダイム」;
Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 93:878-883(1996).
【0050】
ヒトGDF-5 (Swiss-Prot Prim. アクセッション番号: P43026); 配列番号3:
文献
[1]核酸由来配列.
組織=胎盤;
MEDLINE=95071375; PubMed=7980526;
Hoetten G., Neidhardt H., JacobowskyB., Pohl J.;
「組換えヒト成長/分化因子5のクローニングおよび発現」;
Biochem. Biophys. Res.Commun. 204:646-652(1994).
[2]核酸由来配列.
組織=関節軟骨;
MEDLINE=95050604; PubMed=7961761;
Chang S., Hoang B., Thomas J.T., Vukicevic S., Luyten F.P., Ryba N.J.P., Kozak C.A., Reddi A.H., Moos M.;
「軟骨由来形成因子. ヒト胚発生中の長骨において優先的に発現されるトランスホーミング増殖因子βスーパーファミリーの新規メンバー」;
J. Biol. Chem. 269:28227-28234(1994).
【0051】
単に例示するのみであって、本発明の範囲の限定を構成するものでない以下の生物学的実施例を参照することにより、本発明を記載する。
【実施例】
【0052】
実施例1: RP-HPLCによる溶液中のGDF-5の定量
GDF-5含量を逆相(RP-)HPLC-解析により測定した。試料のアリコートを、Poros C8-18カラム(R2/10, 2.1* 30 mm, Applied Biosystems)を用いて解析した。21%アセトニトリル中0.1%ギ酸(溶媒A)および84%アセトニトリル中0.1%ギ酸(溶媒B)を溶媒として流速0.4 ml/分で使用した。溶出プロフィールを220 nmでの吸収を測定することにより記録した。GDF-5の量を、標準曲線を用いて220nmでのピーク領域から計算した。
【0053】
実施例2: 固定化タンパク質の抽出および定量
方法A:
コーティングしたβ-TCP(40mg)を、700μl溶液マトリックス(1.22 mol/lクエン酸, 1.22 mol/l HCl, 8 mol/l 尿素)中に懸濁し、60分間4℃でインキュベートした。遠心分離(13200* g、2 分)後、50μlの上清みを RP_HPLCにより解析した。(実施例1参照)。それぞれのマトリックス溶液において種々のGDF-5の量を用いて標準曲線を作成した。
【0054】
方法B:
コーティングしたβ-TCP(40mg)を、700μl溶液マトリックス(10mmol/l Tris/HCl、pH7.4、8 mol/l 尿素、100mmol/lEDTA)に懸濁し、60分間4℃でインキュベートし、遠心分離(13,500 * gで5分間)した。続いて、上清みを方法Aで先に記載したようにして定量するか、またはさらに解析した。
【0055】
実施例3:異なるpH値でのrhGDF-5の溶解性
GDF-5を4mg/ml 10mmol/l HClの濃度に調整する。ストック溶液のアリコート(50μl)を、それぞれpH値が異なる5mmol/l 酢酸、5mmol/l H3PO4/NaOH、150mmol/l NaClを用いて1:100に希釈する。試料を15分間インキュベートし、遠心分離(13,200 * gで2分間)した。上清みのpH値およびタンパク質含量を測定した。第2試験において、ストック溶液を、それぞれpH値が異なる20mmol/l アルギニン/HOAc を用いて希釈した。図1および2のデータは、低イオン強度(≦20mmol/l)のバッファー中のGDF-5は酸性(pH≦ 5)またはアルカリ性(>pH10)溶液においてのみ可溶性であることを示す。しかしながら、6.0〜9.5の間のpH域では、溶解性は<5μg/mlである。
【0056】
実施例4: 異なるpH値での異なるイオン強度を有する2つのバッファーにおけるGDF-5の溶解性
GDF-5を4mg/ml 10mmol/l HClの濃度に調整する。ストック溶液のアリコート(50μl)を、10mmol/l 酢酸/NaOHおよびそれぞれpH値が異なる5mmol/l 酢酸、5mmol/l H3PO4/NaOH、150mmol/l NaClを用いて1:100に希釈する。試料を15分間インキュベートし、遠心分離(13,200 * gで2分間)した。上清みのpH値およびタンパク質含量を測定する。図3のデータは、測定したすべてのpH値で、生理学的条件に相当する高イオン強度のバッファー中のGDF-5の溶解性は、低イオン強度(約10mmol/l)のバッファーの場合よりも有意に低いことを示す。
【0057】
実施例5: 異なる溶媒中におけるGDF-5の溶解性
凍結乾燥GDF-5を精製アセトニトリルに溶解し、15分間室温でインキュベートし、遠心分離(13,200* g、2分間)した。上清みにおいてGDF-5は検出され得なかった。
【0058】
凍結乾燥GDF-5(50μg)を50μl 75%アセトニトリルに溶解し、15分間室温でインキュベートし、遠心分離(13,200 * g、2分間)した。上清みにおいて、pHを測定し、GDF-5の含量を測定した。使用したGDF-5が100%検出され、溶液のpH値は3.0であった。続いて、NaOHを添加することによりpH値をpH7.4に調整し、15分間室温で再度インキュベートし、遠心分離した。溶解性60μg/mlに相当するわずか3μg/mlが検出された。
【0059】
データは、GDF-5が、精製アセトニトリルには可溶性でないが、アセトニトリルを含有する酸性水溶液には可溶性であることを示す。水性系において見られた結果によると、アセトニトリル-水-混合物中における溶解性はpHが上昇するにつれて減少する。
【0060】
実施例6: β-TCPのコーティング中におけるGDF-5溶液のpH値の変化
反応容器において、200mg β-TCPを、GDF-5 (1mg/ml; HCl溶液からの凍結乾燥品から調製)を含有するコーティング溶液200μlと混合する。懸濁液のpH値を30分間観察する。図4〜5に示す結果は、約2分後、懸濁液のpHはpH>6.5の範囲に達し、これは、例えば、10mmol/l HClまたは75%アセトニトリルなどの非緩衝コーティング溶液を使用した場合(75%アセトニトリルにおける酸性初期pHは、残留HCl量によりもたらされる)、GDF-5の溶解性の臨界である。不十分な溶解性のため、タンパク質の沈殿および凝集形成が起こり、これは、クーマシー染色(実施例7参照)により検出され得る。
酢酸緩衝コーティング溶液(図6)の使用は、コーティング中のpH上昇の低下を引き起こす。非緩衝溶液においてpHは8まで上昇するが、酢酸(40-80mmol/l)-緩衝コーティング溶液のpHは、pH5.4で自身の最大に達する。したがって、コーティングプロセス中の充分な溶解性が保証される。使用されるGDF-5は、沈澱が起こることなく均一に分散され、担体と結合する (実施例7参照)。
pH上昇の遅延は、60%エタノールの使用によっても達成される。遅延は、担体全体へのGDF-5の均一分布を達成するのに充分である(実施例7参照)。
【0061】
実施例7: コーティングの均一性の検出
吸着されたタンパク質を、担体においてクーマシーブリリアントブルーでの染色により可視化する。青色の分布はβ-TCP担体上のそれぞれのタンパク質の分布に関連する。
【0062】
3-4個のコーティングされた顆粒を、96-ウェルプレートの穴内で200μl染色溶液(60% PBS、40%メタノール、0.4%クーマシーブリリアントブルーR250)とともにインキュベートし、30分間室温でインキュベートする。非コーティング担体を対照と同様に処理する。対照として使用した非コーティング担体が完全に脱色されるまで、60% PBS、40%メタノールで洗浄することにより過剰の染色剤を除去する。染色された担体を40℃で乾燥し、写真により記録する。
【0063】
実施例8: 顆粒(I)のコーティング
200mgβ-TCP (0.5〜1.0 mm顆粒径)を、乾燥形態で2R-ガラスに入れる。rhGDF-5(10mM HCl中4mg/ml)のストック溶液を、対応するコーティングバッファーで1μg/mlまで希釈する。このようにして得られたGDF-5溶液200μlをβ-TCP上にピペッティングし、吸収させる。湿った顆粒を1時間25℃でインキュベートし、次いで、真空乾燥した。
【0064】
実施例9: 顆粒(II)のコーティング
200mgβ-TCP (0.5〜1.0 mm顆粒径)を、乾燥形態で2R-ガラスに入れる。rhGDF-5(10mM HCl中4mg/ml)のストック溶液を、対応するコーティングバッファーで1μg/mlまで希釈する。このようにして得られたGDF-5溶液200μlをβ-TCP上にピペッティングし、吸収させる。湿った顆粒を1時間25℃でインキュベートし、次いで、凍結乾燥した。
【0065】
実施例10: ブロックのコーティング
360mgの質量を有するβ-TCPブロックを適当な反応容器(Eppendorf)に入れ、500μl のコーティング溶液と混合し、1時間インキュベートし、次いで、真空-または凍結-乾燥した。
【0066】
実施例11: 異なるコーティング方法の比較
酢酸-緩衝コーティング溶液の使用により、沈殿形成が有意に低減され得る。別の改善がスクロースの添加によってなされた。スクロースありおよびスクロースなしでのコーティングの質を図7に示す。スクロースなしでは個々の沈殿がなお暗青斑点として認識され得るが、スクロースの存在下でのコーティングは、斑点のないコーティングをもたらす。
【0067】
コーティングの均一性の重要性は、研究中に、それぞれ、60%エタノールおよび20mmol/l グリシン/NaOH、pH10中のコーティング溶液を用いて作製した2つの調製物を比較すると明白になる。60%エタノールの存在下では均一分布が達成されたが(図8)、グリシンの存在下では担体表面上で有意な沈殿形成が起こる(図9)。両担体を、ラット頭蓋冠欠損モデルにおいて比較した(下記参照)。
【0068】
実施例12: ラットにおける全層頭蓋冠欠損モデル
rhGDF-5(50μg/25mgのβ-TCP)をコートしたβ-TCPを、異なるコーティングバッファー(20mmol/l グリシン/NaOH、pH10 (C1)および60%エタノール(C2))を用いて製造した。Tiletamine-Zolazepam (ZOLETIL(登録商標) VIRBAC, CARROS, France,50mg/kg, IM)の筋肉内注射によりラットを麻酔した。頭蓋の背面部を除毛した。次いで、殺菌石鹸(VETEDINE(登録商標), VETOQUINOL, LURE, France)で皮膚をこすった。ポビドンヨード(VETEDINE(登録商標) 溶液,VETOQUINOL, LURE, France)などの防腐薬で外科的処置部位をこすった。矢状縫合に沿って頭皮を20 mm切開し、皮膚、筋系および骨膜を裏返し、頭頂骨を露出させた。6mmのトレフィンバー(COVELY, GENAY, France)を用い、滅菌生理学的溶液(AGUETTANT,LYON, France)で常時洗浄しながら頭頂骨の背面部に矢状縫合に水平な欠損を作製した。1匹の動物あたり2つの同一の欠損を作製した。脳硬膜を損傷しないように、および上矢状静脈洞に穿刺しないように注意した。埋没物を適用した後、骨膜および筋肉を元のように縫合し、頭皮を縫合した(ポリプロピレン糸, Prolene(登録商標), ETHNOR, ISSY LES MOULINEAUX, France)。
6週間追跡した後、動物を、ZOLETIL(登録商標) (50mg/kg)の筋肉内注射により麻酔し、次いでDOLETHALND (ペントバルビタールナトリウム(sodique), VETOQUINOL, LURE, France)の致死量(dosis)注射により安楽死させた。
外植片をサンプリングし、10%緩衝ホルマリン溶液注で固定した。その後、試料を高濃度アルコール溶液中で脱水し、PMMA(ポリメチルメタクリレート, Merck KGaA,Darmstadt, Germany)中に包した。Donath (Donath K. BreunerG., 軟組織の残存を伴う非脱石灰骨および歯の研究方法. J. Oral. Pathol. 11, 318-326, 1982)から採用したマイクロカット(microcutting)および磨砕技術により、20μm厚の切片を得た。定性および半定量光学顕微鏡解析ため、切片を改変Paragonで染色した。
x4,x10, x25およびx40対物レンズを備えたPolyvar顕微鏡(REICHERT)を用いて組織学的切片を観察した。
【0069】
C2処置部位において大量の骨髄および骨芽細胞が観察された。対照的に、C1では骨形成が良好でなかった。C2では、C1と比べて埋没物質の分解も増大していた。埋没物質の組織形態計測的解析の結果については、表1ならびに図10および11を参照のこと。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例13: BMP-2によるβ-TCPのコーティング
200mg βTCP(0.5〜1.0 mm顆粒径)を2R-ガラスに充填する。BMP-2のストック溶液を、対応するコーティングバッファー(10mmol/l 酢酸、10%スクロース)で1mg/mlまで希釈する。200μlのコーティング溶液をβ-TCPとともにインキュベートし(1時間、4℃)、凍結乾燥した。コーティングした担体上のBMP-2の分布をクーマシー染色により示した(図12)。
【0072】
実施例14: スクロースおよびトレハロースの存在下でのコーティングプロセスの比較
200mg β-TCP(0.5〜1.0mm顆粒径)を2R-ガラスに充填する。GDF-5(10mmol/l HCl中4mg/ml)のストック溶液を対応するコーティングバッファーで1mg/mlまで希釈する。2種類のコーティングバッファーは、それぞれ、10%スクロースおよび10%トレハロースを含んでいる。200μlのコーティング溶液をβ-TCP とともにインキュベートし(1時間、4℃)、および凍結乾燥した。コーティングした担体上のGDF-5の分布をクーマシー染色により示した(図13)。
【0073】
実施例15: エタノールおよびマンニトールの存在下でのコーティングの比較
200mg β-TCP(0.5〜1.0mm顆粒径)を2R-ガラスに充填する。GDF-5(10mmol/l HCl中4mg/ml)のストック溶液を対応するコーティングバッファーで1mg/mlまで希釈する。2種類のコーティングバッファーは、それぞれ、60%エタノールおよび10%マンニトール, 10mmol/l酢酸を含んでいる。200μlのコーティング溶液をβ-TCPとともにインキュベートし(1時間、4℃)、および凍結乾燥した。コーティングした担体上のGDF-5の分布をクーマシー染色により示した(図14)。
【0074】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有してなり、該担体が該タンパク質で均一に被覆されている、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイス。
【請求項2】
(a)溶解した骨誘導性タンパク質、およびリン酸カルシウムを含有する担体と接触した場合、該担体の均一な被覆を可能にするのに十分な時間の間、タンパク質の溶解を維持する緩衝液を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液とリン酸カルシウムを含む担体とを接触させる工程;
(c)該溶解タンパク質での該担体の表面の均一な被覆を可能にする工程;および
(d)工程(c)で得られる被覆担体を乾燥させる工程、
を含むインビボで骨誘導特性および骨伝達特性を有するデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記緩衝液が100mmol/l未満、50mmol/l未満または20mmol/l未満の緩衝液濃度を有する請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記緩衝液が弱酸を含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記弱酸が酢酸またはコハク酸である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記緩衝液が糖類をさらに含有する請求項2〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記糖類が二糖である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記二糖がスクロースまたはトレハロースである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記緩衝液がアルコールを含有する請求項2〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールがエタノールまたはマンニトールである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記リン酸カルシウムがβリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、アパタイトまたはリン酸カルシウム含有セメントである請求項1記載のデバイスまたは請求項2〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記骨誘導性タンパク質がTGF-βファミリーのメンバーである請求項1記載のデバイス、請求項2〜10記載の方法または請求項11記載のデバイスまたは方法。
【請求項13】
前記TGF-βファミリーのメンバーがBMPサブファミリーのメンバーである請求項12記載のデバイスまたは方法。
【請求項14】
前記BMPファミリーのメンバーがBMP2またはBMP7である請求項13記載のデバイスまたは方法。
【請求項15】
前記TGF-βファミリーのメンバーがGDF-5、GDF-6およびGDF-7の群のタンパク質である請求項12記載のデバイスまたは方法。
【請求項16】
GDFがGDF-5である請求項15記載のデバイスまたは方法。
【請求項17】
前記デバイスが毒性物質を含まない請求項1記載のデバイス、請求項2〜10いずれか記載の方法または請求項11〜16いずれか記載のデバイスまたは方法。
【請求項18】
前記デバイスが感染性物質を含まない請求項1記載のデバイス、請求項2〜10いずれか記載の方法または請求項11〜17いずれか記載のデバイスまたは方法。
【請求項19】
請求項1、もしくは11〜18記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスを含有してなる医薬組成物。
【請求項20】
骨増強のために使用される医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項21】
骨増強が外傷性、悪性または人為的欠損後、または引き続く埋没物の設置に必要である請求項20記載の使用。
【請求項22】
骨欠損の処置のための医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項23】
前記骨欠損が長骨欠損、顎顔面領域における欠損または根尖切除、膿疱または腫瘍の摘出術、抜歯、または残存する歯の外科的除去後の骨欠損である請求項22記載の使用。
【請求項24】
変性および外傷性椎間板疾患の処置のための医薬組成物の調製のための請求項1もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項25】
骨離開を処置するための医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項26】
萎縮性の上顎または下顎堤のサイナスフロアエレベーションまたは増強に使用するための医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項27】
請求項1、もしくは10〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18記載の方法により得られうるデバイスを含有してなるキット。
【請求項1】
リン酸カルシウムおよび骨誘導性タンパク質を含む担体を含有してなり、該担体が該タンパク質で均一に被覆されている、インビボで骨誘導性および骨伝達特性を有するデバイス。
【請求項2】
(a)溶解した骨誘導性タンパク質、およびリン酸カルシウムを含有する担体と接触した場合、該担体の均一な被覆を可能にするのに十分な時間の間、タンパク質の溶解を維持する緩衝液を含有する溶液を提供する工程;
(b)工程(a)の溶液とリン酸カルシウムを含む担体とを接触させる工程;
(c)該溶解タンパク質での該担体の表面の均一な被覆を可能にする工程;および
(d)工程(c)で得られる被覆担体を乾燥させる工程、
を含むインビボで骨誘導特性および骨伝達特性を有するデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記緩衝液が100mmol/l未満、50mmol/l未満または20mmol/l未満の緩衝液濃度を有する請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記緩衝液が弱酸を含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記弱酸が酢酸またはコハク酸である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記緩衝液が糖類をさらに含有する請求項2〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記糖類が二糖である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記二糖がスクロースまたはトレハロースである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記緩衝液がアルコールを含有する請求項2〜8いずれか記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールがエタノールまたはマンニトールである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記リン酸カルシウムがβリン酸三カルシウム、αリン酸三カルシウム、アパタイトまたはリン酸カルシウム含有セメントである請求項1記載のデバイスまたは請求項2〜10いずれか記載の方法。
【請求項12】
前記骨誘導性タンパク質がTGF-βファミリーのメンバーである請求項1記載のデバイス、請求項2〜10記載の方法または請求項11記載のデバイスまたは方法。
【請求項13】
前記TGF-βファミリーのメンバーがBMPサブファミリーのメンバーである請求項12記載のデバイスまたは方法。
【請求項14】
前記BMPファミリーのメンバーがBMP2またはBMP7である請求項13記載のデバイスまたは方法。
【請求項15】
前記TGF-βファミリーのメンバーがGDF-5、GDF-6およびGDF-7の群のタンパク質である請求項12記載のデバイスまたは方法。
【請求項16】
GDFがGDF-5である請求項15記載のデバイスまたは方法。
【請求項17】
前記デバイスが毒性物質を含まない請求項1記載のデバイス、請求項2〜10いずれか記載の方法または請求項11〜16いずれか記載のデバイスまたは方法。
【請求項18】
前記デバイスが感染性物質を含まない請求項1記載のデバイス、請求項2〜10いずれか記載の方法または請求項11〜17いずれか記載のデバイスまたは方法。
【請求項19】
請求項1、もしくは11〜18記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスを含有してなる医薬組成物。
【請求項20】
骨増強のために使用される医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項21】
骨増強が外傷性、悪性または人為的欠損後、または引き続く埋没物の設置に必要である請求項20記載の使用。
【請求項22】
骨欠損の処置のための医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項23】
前記骨欠損が長骨欠損、顎顔面領域における欠損または根尖切除、膿疱または腫瘍の摘出術、抜歯、または残存する歯の外科的除去後の骨欠損である請求項22記載の使用。
【請求項24】
変性および外傷性椎間板疾患の処置のための医薬組成物の調製のための請求項1もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項25】
骨離開を処置するための医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項26】
萎縮性の上顎または下顎堤のサイナスフロアエレベーションまたは増強に使用するための医薬組成物の調製のための請求項1、もしくは11〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18いずれか記載の方法により得られうるデバイスの使用。
【請求項27】
請求項1、もしくは10〜18いずれか記載のデバイスまたは請求項2〜18記載の方法により得られうるデバイスを含有してなるキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−75737(P2010−75737A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299102(P2009−299102)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【分割の表示】特願2003−545351(P2003−545351)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(504129939)スキール テヒノロギー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【分割の表示】特願2003−545351(P2003−545351)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(504129939)スキール テヒノロギー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]