骨髄ドリル
【課題】骨髄灌流法によりドナーからの骨髄液の採取をより迅速に行うことができる骨髄ドリルを提供する。
【解決手段】切れ刃4を先端部に備え、シャンクを後部に備える内針と、内針の先端部2a及び後部が突出するように内針を着脱自在に挿着する外套管3と、外套管3と内針との軸線回りの相対的回転を規制するロック機構と、を有し、内針は、外套管3から突出して露出する先端部2aに、先端部2aの切れ刃4によって削り取られた切削物を排出するための溝5が形成され、外套管3は、外套管3の先端縁に切れ刃15が形成されるとともに、内針の溝5と連続するように外套管3の先端縁から外套管周面の少なくとも一部に亘って螺旋溝16が形成されていることとした。
【解決手段】切れ刃4を先端部に備え、シャンクを後部に備える内針と、内針の先端部2a及び後部が突出するように内針を着脱自在に挿着する外套管3と、外套管3と内針との軸線回りの相対的回転を規制するロック機構と、を有し、内針は、外套管3から突出して露出する先端部2aに、先端部2aの切れ刃4によって削り取られた切削物を排出するための溝5が形成され、外套管3は、外套管3の先端縁に切れ刃15が形成されるとともに、内針の溝5と連続するように外套管3の先端縁から外套管周面の少なくとも一部に亘って螺旋溝16が形成されていることとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨を掘削して骨髄液を採取等するために使用される骨髄ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄液は、一般的には、骨髄穿刺針を用い、腸骨を手動で穿刺して採取される。この種の骨髄穿刺針は、管状の外套内に内針を挿着すると共に、内針の先端を外套から突出させて構成されている。外套にハンドルを取り付けた骨髄穿刺針を、皮膚を貫通させて骨に刺し、針先が骨髄に達すれば内針だけを引き抜いて外套を骨髄腔に留置するようにして使用される。
【0003】
この骨髄穿刺針を用いた骨髄液の採取方法としては、通常、吸引法が用いられている。吸引法は、骨髄穿刺針の外套をシリンジに接続し、吸引力により骨髄液を採取する方法である。ところが、この方法では、一箇所で採取される骨髄液の量が数ミリリットルと少ないため、多数箇所を穿刺し、骨髄液を採取する必要があり、また、末梢血が多量に混入するので、同種骨髄移植に用いる場合はGVHD(移植片対宿主反応病Graft versus Host Disease)の危険性が高く、免疫抑制療法が必須となる。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するため骨髄灌流法が開発された。骨髄灌流法は、滅菌した生理食塩水などの灌流液を用いて骨髄をゆっくり灌流するために、2本の骨髄針を骨髄に留置する。一方の骨髄針に骨髄採取セットを接続し、セットの骨髄液採取バッグに注射用シリンジや輸液ポンプのチューブを連結、吸引し、また他方の骨髄針に接続した灌流液入りシリンジを介して、灌流液をゆっくりと骨髄の中に注入し、骨髄液を洗い流すようにして採取用セットに必要な量の骨髄液を短時間で採取する方法である。このようにして採取された骨髄液は骨髄移植のみならず、再生医療などにも利用できる。
【0005】
しかしながら、従来から採用されている骨髄穿刺針は、ハンドルを持って手動で骨に挿入する構成であり、穿刺速度などの点から、骨髄灌流法に用いるのに適当でない。
【0006】
そこで、強力な回転力が得られる電動ドリルを用い、骨髄針で短時間に掘削穿孔する方法が望まれる。そのため、ドリル刃を設けた内針と、先端に角度を持たせた刃を設け、歯車減速機構を介して内針の回転に対して減速回転させる外套からなる骨髄針が提案されている(特許文献1)。この骨髄針は、骨髄腔までの到達時間を大幅に短縮し、しかも、外套先端部の角度を持つ刃で掘削した骨を内針のドリルの溝で外套内を上方に排出するため骨の掘削屑を体内に排出せずに外套内に排出する点で優れているが、骨組織に含まれるコラーゲン等による粘性が掘削屑の排出抵抗となり、掘削時間の短縮に限界があった。
【特許文献1】国際公開第WO03/015637号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、骨髄灌流法によりドナーからの骨髄液の採取をより迅速に行うことができる骨髄ドリルを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、切れ刃を先端部に備え、シャンクを後部に備える内針と、前記内針の先端部及び後部が突出するように該内針を着脱自在に挿着する外套管と、該外套管と前記内針との軸線回りの相対的回転を規制するロック機構と、を有し、前記内針は、前記外套管から突出して露出する先端部に、該先端部の前記切れ刃によって削り取られた切削物を排出するための溝が形成され、前記外套管は、該外套管の先端縁に切れ刃が形成されるとともに、前記内針の溝と連続するように該外套管の先端縁から外套管周面の少なくとも一部に亘って螺旋溝が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記外套管の切れ刃は、前記内針の切れ刃と連続するように形成されていることが好ましい。
【0010】
前記外套管の先端縁に形成される逃げ面は、前記内針の先端に形成される逃げ面と連続するように形成されていることが好ましい。
【0011】
前記外套管の後部に、ルアーロックコネクタが形成されていることが好ましい。
【0012】
前記外套管後部のルアーロックコネクタを密閉するキャップが、前記内針に設けられることが好ましい。
【0013】
前記ロック機構は、前記キャップに設けられた係止部と、外套管に設けられて前記係止部に係止する被係止部と、を備え、該係止部が被係止部に係止することによって外套管に対する内針の軸線回りの回転を規制するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る骨髄用ドリルによれば、内針の先端部に形成された切れ刃と外套管の先端縁に形成された切れ刃によって骨が切削され、内針先端部の切れ刃によって切削された切削屑は、内針先端部の溝から外套管の外周面に形成された螺旋溝に排出され、外套管の切れ刃によって切削された切削屑も螺旋溝から排出される。従って、切り屑詰まりによる切削抵抗を低減し、骨髄液の迅速な採取を達成し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る骨髄ドリルの好適に実施形態について、以下に図1〜15を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、骨髄ドリルの第1実施形態を示す分解斜視図であり、図2は分解平面図である。図1に示すように、骨髄用ドリル1は、内針2と、内針2を挿入することができる外套管3とを有している。
【0017】
内針2は、図3,図4に拡大して示すように、その先端部に、切れ刃4と、切れ刃4によって削り取られた切削物を排出するための溝5と、が形成されている。切れ刃4は、逃げ面6とすくい面7との交線である。内針2の先端部2aは、望ましくは、所定の先端角α(図2)を有する。
【0018】
内針2の後部は、ドリルチャックに把持させるためのシャンク8が形成されている。内針2は、さらに、シャンク8の付け根部位に、円形の鍔9を備えている。内針2を外套管3に挿入していくと、内針2の先端部2aが図3に示すように外套管3から突出したところで、鍔9の一方面(前面)が、外套管3の後端に当接し、内針2をそれ以上、外套管3に挿入できなくする。
【0019】
また、鍔9の他方面は、内針2の後方から挿入されるロックキャップ10が当接し得る座面を提供する。ロックキャップ10は、多角形状(図では四角形)の通孔10aが形成された底部10bと、筒状部10cとを備え、筒状部10cの端部から突出する一対の係止部10d、10dを備えている。ロックキャップ10は、後述する外套管3のルアーロックコネクタ11を収容可能になっている。係止部10d、10dは、後述する外套管3の被係止部12に係止する。
【0020】
鍔9の他方面(後面)には、ロックキャップ10の通孔10aに嵌合し得る多角形(図示例では四角形)のプレート13が固定されている。ロックキャップ10は、通孔10aがプレート13に嵌合することによって、内針2に対して相対回転不能とされる(図6参照)。ロックキャップ10は、内針2に、溶接又はピン結合等によって固定されていてもよい。
【0021】
外套管3は、図3,図5に拡大して示すように、外套管3の先端縁に切れ刃15が形成されるとともに、外套管3の先端縁から外周の少なくとも一部に亘って螺旋溝16が形成されている。
【0022】
外套管3は、望ましくは、螺旋溝16の後方で段差部17(図1)を介して直径が太くなっていて、掘削深さを規定できるようになっている。また、外套管3の後部には、ルアーロックコネクタ11が形成されている。
【0023】
さらに、外套管3は、ルアーロックコネクタ11の付け根部に、フランジ18が形成され、このフランジ18にロックキャップ10の筒状部10cが着座するようになっている。また、このフランジ18には、図1、2に示すように、外套管3の軸方向に延びる1対の溝によって構成される被係止部12が形成され、被係止部12は、図7に示すように、ロックキャップ10の係止部10dを構成する突片を受け入れて係止可能になっている。
【0024】
図7に示すように、内針2を外套管3に挿入し、ロックキャップ10を装着すれば、ロックキャップ10は、外套管3のフランジ18に着座することよって、外套管3に形成されたルアーロックコネクタ11を密閉することができる。そして、係止部10dが被係止部12に係止することによって、内針2と外套管3との軸線回りの相対的回転が規制され、一体的に回転するようになっている。
【0025】
ロックキャップ10を外套管3のフランジ18に対して結合させるために、結合キャップ20(図1,2)を使用することができる。結合キャップ20は、内鍔20aによって画成される透孔20bを有し、透孔20bに外套管3を通して、外套管3のフランジ18に被さって、内鍔20aがフランジ18に当接し得るように構成されている。そして、結合キャップ20の外周面に凹溝20cが形成され、この凹溝20cには対向位置に1対の通孔20d、20d(図2)が形成されている。凹溝20cに、クリップ21を、図1の一点鎖線で示すようにして嵌め込み、クリップ21の両端に内向きに膨出させた係止突起21a、21aを、凹溝20cの通孔20d、20dを没入させて、結合キャップ20の内周面に突出させ、この突出部分を、外套管3のフランジ18周面に形成された周溝18aに係合させるようになっている。さらに、ロックキャップ10の係止部10dを構成する突片にも、凹部10eが形成されており、この凹部10eは、ロックキャップ10をフランジ18に着座させた時に、フランジ18の周溝18aと位置が一致するようになっており、且つ、周溝18aより少し溝が深くなっている。従って、結合キャップ20をフランジ18に嵌めて、クリップ21を装着し、クリップ21の係止突起21aをフランジ18の周溝18aに係合させた状態で、結合キャップ20を軸線回りに回転させれば、周溝18aより少し深い凹部10eに係合突起21aが嵌って係合し、図3に示すように内針2の先端部2aが外套管3の先から突出した状態で、外套管3と内針2が連結される。
【0026】
このようにして、図8に示すように、結合キャップにより内針2が外套管3に連結されることで、内針2が外套管3から抜けないようになり、この状態でドリルとして使用され得る。
【0027】
こうして結合された外套管3の螺旋溝16は、内針2の溝5と連続するように形成されている。すなわち、内針2の切れ刃4で切削された切削屑が、内針2の溝5から外套管3の螺旋溝16を通って排出されるようになっている。
【0028】
内針2の溝5から螺旋溝16を通じて切削屑を排出するため、内針2の溝5と螺旋溝16との境界には、切削屑が詰まるような隙間、段差、或いはポケット等が形成されないように構成することが好ましい。そうすることで、切り屑詰まりを防止して、切削屑が、溝5から螺旋溝16へ、スムースに排出される。また、内針2の切れ刃4と外套管3の切れ刃15との間に出来る切れ刃の隙間は、切削の際の抵抗となるため、可能な限り減らすことが好ましく、それにより、切れ味を増すことができる。
【0029】
内針2の溝5に外套管3の螺旋溝16を連続させるため、螺旋溝16は、内針2の溝5との境界に位置する先端縁を、図5に現されているように、内針2の溝5と内針2の周面との交線によって形成される溝5の輪郭5a(図4)に一致させるように、凹状の切り欠き16aとして形成することが好ましいが、溝5の輪郭と切り欠き16aの輪郭とが一致していなくても、溝5の切削屑が螺旋溝16に排出されるように構成されていれば良い。
【0030】
溝5から螺旋溝16への切削屑の排出をスムースにするため、外套管3の切れ刃15、逃げ面25、すくい面26は、好ましくは、内針2の切れ刃4、逃げ面6、すくい面7と連続するように形成される。
【0031】
図3に示す形態は、切れ刃4と切れ刃5の角度が異なっているが、好ましくは、外套管3の切れ刃15、逃げ面25が、内針2の先端角αに一致するような角度に形成される。
【0032】
内針2と外套管3との連結は、上記例に限らず、例えば、図9に示すように、ロックキャップ100の係止部100dを形成する突片の外面に雄螺子100fを形成し、結合キャップ200の内周面に雄螺子100fに螺合する雌螺子200fを形成することよってもよい。また、図示例とは逆の構成、すなわち、図示しないが、被係止部を構成する溝が形成されたフランジを外套管に設け、係止部を構成する突片を備えたロックキャップを内針の側から挿入して装着し、結合キャップを外套管の側から挿入し、結合させる構成としてもよい。
【0033】
こうして、外套管3と相対的回転不能に結合された骨髄用ドリル1(図8)のシャンク8を、図示しないドリル駆動装置のドリルチャックによって把持させ、該ドリル駆動装置を駆動させれば、内針2と外套管3とは一体となって回転する。なお、ドリル駆動装置は、電動式、エア駆動式等でハンディタイプのドリル駆動装置を好適に使用できる。
【0034】
上記のような骨髄ドリルを用いた骨髄灌流法のための骨髄液採取セットの例を以下に説明する。
【0035】
骨髄移植や臓器移植などの対象患者であるレシピエントはX線照射などの前処理を受け、自己の免疫機能は極端に低下していることから、感染の機会を極力避けることは、移植を伴う治療法にとっては必須である。そこで、骨髄灌流法による骨髄液採取の際に、次に述べる骨髄液採取セットを用いることにより、骨髄液の無菌的ではない環境への暴露を最小限に抑えることができる。
【0036】
骨髄灌流法のための骨髄液採取セットは、骨髄液を採取する採取側サーキット30と、滅菌した生理食塩水などの灌流液を注入する注入側サーキット50とを含む。
【0037】
採取側サーキット30は、一実施形態によれば、図10に示すように、生理食塩水で採取した骨髄液を貯留するための貯液容器31と、貯液容器31に第1チューブ32を介して接続され脂肪組織などを濾過するためのフィルター33と、フィルター33に第2チューブ34を介して接続され、骨髄液採取用の外套管3Aのルアーロックコネクタ11に装着可能な第1ルアーロックコネクタ35と、第1チューブ32に介在させられた三方活栓36と、三方活栓36に第3チューブ37を介して接続され吸引シリンジ38を接続するための第2ルアーロックコネクタ39と、を備える。第2チューブ34には、ヘパリン加生理食塩水を注入するための分岐管40を設け、該分岐管40にも第3ルアーロックコネクタ41を取り付けておいて、血液凝固を防止できるようにしておくことが望ましい。なお、図中、符号42は、骨髄側への逆流を防止する一方向弁を示す。
【0038】
注入側サーキット50は、一実施形態によれば、灌流液注入用の外套管3Bのルアーロックコネクタ11に、灌流液注入用シリンジ51を接続するための管であり、外套管3Bのルアーロックコネクタ11に接続する第4ルアーロックコネクタ52と、シリンジ51或いは図示しない輸液ポンプや輸液スタンドに落差をつけて吊下げられた輸液バッグに接続する第5ルアーロックコネクタ53とをチューブ54で接続し、このチューブ54にエアートラップチャンバー55を介在させてなる。なお、採取側サーキット30及び注入側サーキット50に接続されるシリンジ38、51の注射口は、ルアーロックコネクタ39、53に接続し得るルアーロックコネクタとなっている。
【0039】
上記のような骨髄用ドリル及び骨髄採取セットを用いて、腸骨の骨髄液を採取する例を、図11〜図15を参照して説明する。
【0040】
骨髄液の採取には、図11に示すガイド針60が用いられる。このガイド針60は、骨髄用ドリル1を嵌入可能なガイド筒61と、頭部62の付いた軸針63とを備える。軸針63がガイド筒61に挿入されたときには軸針63の尖った先端63aがガイド筒61から突出するように設定されている。ガイド筒61の上端には、外鍔64が設けられている。
【0041】
図11に示すように、まず、メスで皮膚Sを切開し、該切開部からガイド針60を入れて、ガイド針60の軸針63の先端63aを骨膜Mに到達させる。これは、ガイド針60を用いずに骨髄用ドリル1だけで骨髄用ドリル1の先端を骨膜Mに到達させようとすると、骨髄用ドリル1の内針2及び外套管3の切れ刃4,15によって組織を大きく損傷させるので、これを防止するためである。また、外套管3にはガイド筒61の内径より大径のテーパー状の大径部3c(図13)が形成され、この大径部3cは、ガイド針60に対するストッパーとなり、段差部17による切削深さ制限に加えて、外套管3の挿入深さを制限して、突き抜け等の事故を予防し得る。
【0042】
なお、予め、CTスキャンなどを用いてガイド針60と骨との位置関係をチェックすることにより、骨髄用ドリル1の留置位置の決定が容易になり、又、それらの記録を残すことができる。
【0043】
次に、図12に示すように、ガイド針60の軸針63をガイド筒61から引き抜き、電動式のドリル駆動装置D(ドリルチャック部分のみ示している。)に取り付けた骨髄用ドリル1を、留置したガイド筒61に挿入する。そして、ドリル駆動装置Dを用いて骨髄用ドリル1を骨に押圧しながら回転させて骨質を穿孔する。
【0044】
骨髄用ドリル1の先端が骨髄に達した後、骨髄用ドリル1の結合キャップ20を回転させることによって凹部10eへの係合突起21aの係合を解けば、内針2を外套管3から抜脱可能となるので、ドリル駆動装置DのドリルチャックD1で内針2のシャンク8を把持した状態でドリル駆動装置Dを持ち上げ、内針2を外套管3から引き抜く。
【0045】
外套管3から内針2の引き抜くと、図13に示すように、それまでロックキャップ10によって密閉されていた外套管後部のルアーロックコネクタ11が現れる。すなわち、内針2を外套管3から引き抜くまでは、無菌的ではない環境へのルアーロックコネクタ11の暴露を抑え得る。図13の状態から結合キャップ20を回転させて、係合突起21aを、被係合部12を構成する溝に位置させることで、結合キャップ20を下方へ移動させ、ルアーロックコネクタ11を完全に露出させておく。
【0046】
こうして、腸骨Bの一端に外套管3を留置させ、また、これと同じ要領で腸骨Bの他端にも外套管3を留置させる。
【0047】
次に、図15に示すように、生理食塩水等の灌流液が充填された注射用シリンジ51の注射口に、第5ルアーロックコネクタ53を接続し、注入用の外套管3Bのルアーロックコネクタ11に第4ルアーロックコネクタ52を接続する。また、採取用の外套管3Aのルアーロックコネクタ11には、採取側サーキットの第1ルアーロックコネクタ35を接続する。なお、図示しないが、第5ルアーロックコネクタ53には、シリンジ51に代えて、灌流液が充填された輸液ポンプ、或いは、輸液スタンドに適当な落差をつけて取り付けられて灌流液が充填された輸液バッグを接続することもできる。
【0048】
次に、注射用シリンジ51(若しくは図示しない輸液ポンプあるいは落差を調整した輸液バッグ)から、灌流液をゆっくりと腸骨内に注入し、同時に採取側サーキットの三方活栓36をシリンジ38の吸引側に切り換えてシリンジ38を吸引操作することにより、一旦、シリンジ38内に骨髄液を吸引し、次いで三方活栓36をシリンジ38から貯液バッグ31へ排出する側に切り換え、シリンジ38を押し出し操作することにより、骨髄液を貯液バッグ31に貯留する。必要に応じて、シリンジ49から血液凝固防止用のヘパリン加生理食塩水を注入する。こうして貯液バッグ31に骨髄液が採取された後、第1チューブ32と貯液バッグ31とを接続するコネクター(不図示)を取り外して貯液バッグ31に図外の滅菌キャップを被せ、所望の場所への搬送後、あるいは直ちに遠心分離して骨髄細胞分画を回収する。このように骨髄液採取セットを用いて一貫処理することにより、無菌的ではない環境への暴露を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る骨髄用ドリルの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の骨髄用ドリルの分解平面図である。
【図3】図1の骨髄用ドリルの一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図1の骨髄用ドリルの内針の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】図1の骨髄用ドリルの外套管の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】図1の骨髄用ドリルの内針にロックキャップを装着した状態を示す斜視図である。
【図7】図1の骨髄用ドリルの内針と外針とを相対的回転不能に連結した状態を示す斜視図である。
【図8】図1の骨髄用ドリルを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図9】骨髄用ドリルのロックキャップと結合キャップの他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】図1の骨髄用ドリルを利用する骨髄液採取セットを示す平面図である。
【図11】図1の骨髄用ドリル及び図10の骨髄液採取セットを用いて骨髄液を採取する方法を説明するための説明図である。
【図12】図11に続く説明図である。
【図13】図12に続く説明図である。
【図14】図13に続く説明図である。
【図15】図14に続く説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 骨髄用ドリル
2 内針
3 外套管
4 切れ刃
5 溝
6 逃げ面
7 すくい面
8 シャンク
10 ロックキャップ
10d 係合部
11 ルアーロックコネクタ
12 被係合部
15 切れ刃
16 螺旋溝
20 結合キャップ
25 逃げ面
26 すくい面
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨を掘削して骨髄液を採取等するために使用される骨髄ドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
骨髄液は、一般的には、骨髄穿刺針を用い、腸骨を手動で穿刺して採取される。この種の骨髄穿刺針は、管状の外套内に内針を挿着すると共に、内針の先端を外套から突出させて構成されている。外套にハンドルを取り付けた骨髄穿刺針を、皮膚を貫通させて骨に刺し、針先が骨髄に達すれば内針だけを引き抜いて外套を骨髄腔に留置するようにして使用される。
【0003】
この骨髄穿刺針を用いた骨髄液の採取方法としては、通常、吸引法が用いられている。吸引法は、骨髄穿刺針の外套をシリンジに接続し、吸引力により骨髄液を採取する方法である。ところが、この方法では、一箇所で採取される骨髄液の量が数ミリリットルと少ないため、多数箇所を穿刺し、骨髄液を採取する必要があり、また、末梢血が多量に混入するので、同種骨髄移植に用いる場合はGVHD(移植片対宿主反応病Graft versus Host Disease)の危険性が高く、免疫抑制療法が必須となる。
【0004】
そこで、これらの問題を解決するため骨髄灌流法が開発された。骨髄灌流法は、滅菌した生理食塩水などの灌流液を用いて骨髄をゆっくり灌流するために、2本の骨髄針を骨髄に留置する。一方の骨髄針に骨髄採取セットを接続し、セットの骨髄液採取バッグに注射用シリンジや輸液ポンプのチューブを連結、吸引し、また他方の骨髄針に接続した灌流液入りシリンジを介して、灌流液をゆっくりと骨髄の中に注入し、骨髄液を洗い流すようにして採取用セットに必要な量の骨髄液を短時間で採取する方法である。このようにして採取された骨髄液は骨髄移植のみならず、再生医療などにも利用できる。
【0005】
しかしながら、従来から採用されている骨髄穿刺針は、ハンドルを持って手動で骨に挿入する構成であり、穿刺速度などの点から、骨髄灌流法に用いるのに適当でない。
【0006】
そこで、強力な回転力が得られる電動ドリルを用い、骨髄針で短時間に掘削穿孔する方法が望まれる。そのため、ドリル刃を設けた内針と、先端に角度を持たせた刃を設け、歯車減速機構を介して内針の回転に対して減速回転させる外套からなる骨髄針が提案されている(特許文献1)。この骨髄針は、骨髄腔までの到達時間を大幅に短縮し、しかも、外套先端部の角度を持つ刃で掘削した骨を内針のドリルの溝で外套内を上方に排出するため骨の掘削屑を体内に排出せずに外套内に排出する点で優れているが、骨組織に含まれるコラーゲン等による粘性が掘削屑の排出抵抗となり、掘削時間の短縮に限界があった。
【特許文献1】国際公開第WO03/015637号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、骨髄灌流法によりドナーからの骨髄液の採取をより迅速に行うことができる骨髄ドリルを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、切れ刃を先端部に備え、シャンクを後部に備える内針と、前記内針の先端部及び後部が突出するように該内針を着脱自在に挿着する外套管と、該外套管と前記内針との軸線回りの相対的回転を規制するロック機構と、を有し、前記内針は、前記外套管から突出して露出する先端部に、該先端部の前記切れ刃によって削り取られた切削物を排出するための溝が形成され、前記外套管は、該外套管の先端縁に切れ刃が形成されるとともに、前記内針の溝と連続するように該外套管の先端縁から外套管周面の少なくとも一部に亘って螺旋溝が形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記外套管の切れ刃は、前記内針の切れ刃と連続するように形成されていることが好ましい。
【0010】
前記外套管の先端縁に形成される逃げ面は、前記内針の先端に形成される逃げ面と連続するように形成されていることが好ましい。
【0011】
前記外套管の後部に、ルアーロックコネクタが形成されていることが好ましい。
【0012】
前記外套管後部のルアーロックコネクタを密閉するキャップが、前記内針に設けられることが好ましい。
【0013】
前記ロック機構は、前記キャップに設けられた係止部と、外套管に設けられて前記係止部に係止する被係止部と、を備え、該係止部が被係止部に係止することによって外套管に対する内針の軸線回りの回転を規制するように構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る骨髄用ドリルによれば、内針の先端部に形成された切れ刃と外套管の先端縁に形成された切れ刃によって骨が切削され、内針先端部の切れ刃によって切削された切削屑は、内針先端部の溝から外套管の外周面に形成された螺旋溝に排出され、外套管の切れ刃によって切削された切削屑も螺旋溝から排出される。従って、切り屑詰まりによる切削抵抗を低減し、骨髄液の迅速な採取を達成し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る骨髄ドリルの好適に実施形態について、以下に図1〜15を参照しつつ説明する。
【0016】
図1は、骨髄ドリルの第1実施形態を示す分解斜視図であり、図2は分解平面図である。図1に示すように、骨髄用ドリル1は、内針2と、内針2を挿入することができる外套管3とを有している。
【0017】
内針2は、図3,図4に拡大して示すように、その先端部に、切れ刃4と、切れ刃4によって削り取られた切削物を排出するための溝5と、が形成されている。切れ刃4は、逃げ面6とすくい面7との交線である。内針2の先端部2aは、望ましくは、所定の先端角α(図2)を有する。
【0018】
内針2の後部は、ドリルチャックに把持させるためのシャンク8が形成されている。内針2は、さらに、シャンク8の付け根部位に、円形の鍔9を備えている。内針2を外套管3に挿入していくと、内針2の先端部2aが図3に示すように外套管3から突出したところで、鍔9の一方面(前面)が、外套管3の後端に当接し、内針2をそれ以上、外套管3に挿入できなくする。
【0019】
また、鍔9の他方面は、内針2の後方から挿入されるロックキャップ10が当接し得る座面を提供する。ロックキャップ10は、多角形状(図では四角形)の通孔10aが形成された底部10bと、筒状部10cとを備え、筒状部10cの端部から突出する一対の係止部10d、10dを備えている。ロックキャップ10は、後述する外套管3のルアーロックコネクタ11を収容可能になっている。係止部10d、10dは、後述する外套管3の被係止部12に係止する。
【0020】
鍔9の他方面(後面)には、ロックキャップ10の通孔10aに嵌合し得る多角形(図示例では四角形)のプレート13が固定されている。ロックキャップ10は、通孔10aがプレート13に嵌合することによって、内針2に対して相対回転不能とされる(図6参照)。ロックキャップ10は、内針2に、溶接又はピン結合等によって固定されていてもよい。
【0021】
外套管3は、図3,図5に拡大して示すように、外套管3の先端縁に切れ刃15が形成されるとともに、外套管3の先端縁から外周の少なくとも一部に亘って螺旋溝16が形成されている。
【0022】
外套管3は、望ましくは、螺旋溝16の後方で段差部17(図1)を介して直径が太くなっていて、掘削深さを規定できるようになっている。また、外套管3の後部には、ルアーロックコネクタ11が形成されている。
【0023】
さらに、外套管3は、ルアーロックコネクタ11の付け根部に、フランジ18が形成され、このフランジ18にロックキャップ10の筒状部10cが着座するようになっている。また、このフランジ18には、図1、2に示すように、外套管3の軸方向に延びる1対の溝によって構成される被係止部12が形成され、被係止部12は、図7に示すように、ロックキャップ10の係止部10dを構成する突片を受け入れて係止可能になっている。
【0024】
図7に示すように、内針2を外套管3に挿入し、ロックキャップ10を装着すれば、ロックキャップ10は、外套管3のフランジ18に着座することよって、外套管3に形成されたルアーロックコネクタ11を密閉することができる。そして、係止部10dが被係止部12に係止することによって、内針2と外套管3との軸線回りの相対的回転が規制され、一体的に回転するようになっている。
【0025】
ロックキャップ10を外套管3のフランジ18に対して結合させるために、結合キャップ20(図1,2)を使用することができる。結合キャップ20は、内鍔20aによって画成される透孔20bを有し、透孔20bに外套管3を通して、外套管3のフランジ18に被さって、内鍔20aがフランジ18に当接し得るように構成されている。そして、結合キャップ20の外周面に凹溝20cが形成され、この凹溝20cには対向位置に1対の通孔20d、20d(図2)が形成されている。凹溝20cに、クリップ21を、図1の一点鎖線で示すようにして嵌め込み、クリップ21の両端に内向きに膨出させた係止突起21a、21aを、凹溝20cの通孔20d、20dを没入させて、結合キャップ20の内周面に突出させ、この突出部分を、外套管3のフランジ18周面に形成された周溝18aに係合させるようになっている。さらに、ロックキャップ10の係止部10dを構成する突片にも、凹部10eが形成されており、この凹部10eは、ロックキャップ10をフランジ18に着座させた時に、フランジ18の周溝18aと位置が一致するようになっており、且つ、周溝18aより少し溝が深くなっている。従って、結合キャップ20をフランジ18に嵌めて、クリップ21を装着し、クリップ21の係止突起21aをフランジ18の周溝18aに係合させた状態で、結合キャップ20を軸線回りに回転させれば、周溝18aより少し深い凹部10eに係合突起21aが嵌って係合し、図3に示すように内針2の先端部2aが外套管3の先から突出した状態で、外套管3と内針2が連結される。
【0026】
このようにして、図8に示すように、結合キャップにより内針2が外套管3に連結されることで、内針2が外套管3から抜けないようになり、この状態でドリルとして使用され得る。
【0027】
こうして結合された外套管3の螺旋溝16は、内針2の溝5と連続するように形成されている。すなわち、内針2の切れ刃4で切削された切削屑が、内針2の溝5から外套管3の螺旋溝16を通って排出されるようになっている。
【0028】
内針2の溝5から螺旋溝16を通じて切削屑を排出するため、内針2の溝5と螺旋溝16との境界には、切削屑が詰まるような隙間、段差、或いはポケット等が形成されないように構成することが好ましい。そうすることで、切り屑詰まりを防止して、切削屑が、溝5から螺旋溝16へ、スムースに排出される。また、内針2の切れ刃4と外套管3の切れ刃15との間に出来る切れ刃の隙間は、切削の際の抵抗となるため、可能な限り減らすことが好ましく、それにより、切れ味を増すことができる。
【0029】
内針2の溝5に外套管3の螺旋溝16を連続させるため、螺旋溝16は、内針2の溝5との境界に位置する先端縁を、図5に現されているように、内針2の溝5と内針2の周面との交線によって形成される溝5の輪郭5a(図4)に一致させるように、凹状の切り欠き16aとして形成することが好ましいが、溝5の輪郭と切り欠き16aの輪郭とが一致していなくても、溝5の切削屑が螺旋溝16に排出されるように構成されていれば良い。
【0030】
溝5から螺旋溝16への切削屑の排出をスムースにするため、外套管3の切れ刃15、逃げ面25、すくい面26は、好ましくは、内針2の切れ刃4、逃げ面6、すくい面7と連続するように形成される。
【0031】
図3に示す形態は、切れ刃4と切れ刃5の角度が異なっているが、好ましくは、外套管3の切れ刃15、逃げ面25が、内針2の先端角αに一致するような角度に形成される。
【0032】
内針2と外套管3との連結は、上記例に限らず、例えば、図9に示すように、ロックキャップ100の係止部100dを形成する突片の外面に雄螺子100fを形成し、結合キャップ200の内周面に雄螺子100fに螺合する雌螺子200fを形成することよってもよい。また、図示例とは逆の構成、すなわち、図示しないが、被係止部を構成する溝が形成されたフランジを外套管に設け、係止部を構成する突片を備えたロックキャップを内針の側から挿入して装着し、結合キャップを外套管の側から挿入し、結合させる構成としてもよい。
【0033】
こうして、外套管3と相対的回転不能に結合された骨髄用ドリル1(図8)のシャンク8を、図示しないドリル駆動装置のドリルチャックによって把持させ、該ドリル駆動装置を駆動させれば、内針2と外套管3とは一体となって回転する。なお、ドリル駆動装置は、電動式、エア駆動式等でハンディタイプのドリル駆動装置を好適に使用できる。
【0034】
上記のような骨髄ドリルを用いた骨髄灌流法のための骨髄液採取セットの例を以下に説明する。
【0035】
骨髄移植や臓器移植などの対象患者であるレシピエントはX線照射などの前処理を受け、自己の免疫機能は極端に低下していることから、感染の機会を極力避けることは、移植を伴う治療法にとっては必須である。そこで、骨髄灌流法による骨髄液採取の際に、次に述べる骨髄液採取セットを用いることにより、骨髄液の無菌的ではない環境への暴露を最小限に抑えることができる。
【0036】
骨髄灌流法のための骨髄液採取セットは、骨髄液を採取する採取側サーキット30と、滅菌した生理食塩水などの灌流液を注入する注入側サーキット50とを含む。
【0037】
採取側サーキット30は、一実施形態によれば、図10に示すように、生理食塩水で採取した骨髄液を貯留するための貯液容器31と、貯液容器31に第1チューブ32を介して接続され脂肪組織などを濾過するためのフィルター33と、フィルター33に第2チューブ34を介して接続され、骨髄液採取用の外套管3Aのルアーロックコネクタ11に装着可能な第1ルアーロックコネクタ35と、第1チューブ32に介在させられた三方活栓36と、三方活栓36に第3チューブ37を介して接続され吸引シリンジ38を接続するための第2ルアーロックコネクタ39と、を備える。第2チューブ34には、ヘパリン加生理食塩水を注入するための分岐管40を設け、該分岐管40にも第3ルアーロックコネクタ41を取り付けておいて、血液凝固を防止できるようにしておくことが望ましい。なお、図中、符号42は、骨髄側への逆流を防止する一方向弁を示す。
【0038】
注入側サーキット50は、一実施形態によれば、灌流液注入用の外套管3Bのルアーロックコネクタ11に、灌流液注入用シリンジ51を接続するための管であり、外套管3Bのルアーロックコネクタ11に接続する第4ルアーロックコネクタ52と、シリンジ51或いは図示しない輸液ポンプや輸液スタンドに落差をつけて吊下げられた輸液バッグに接続する第5ルアーロックコネクタ53とをチューブ54で接続し、このチューブ54にエアートラップチャンバー55を介在させてなる。なお、採取側サーキット30及び注入側サーキット50に接続されるシリンジ38、51の注射口は、ルアーロックコネクタ39、53に接続し得るルアーロックコネクタとなっている。
【0039】
上記のような骨髄用ドリル及び骨髄採取セットを用いて、腸骨の骨髄液を採取する例を、図11〜図15を参照して説明する。
【0040】
骨髄液の採取には、図11に示すガイド針60が用いられる。このガイド針60は、骨髄用ドリル1を嵌入可能なガイド筒61と、頭部62の付いた軸針63とを備える。軸針63がガイド筒61に挿入されたときには軸針63の尖った先端63aがガイド筒61から突出するように設定されている。ガイド筒61の上端には、外鍔64が設けられている。
【0041】
図11に示すように、まず、メスで皮膚Sを切開し、該切開部からガイド針60を入れて、ガイド針60の軸針63の先端63aを骨膜Mに到達させる。これは、ガイド針60を用いずに骨髄用ドリル1だけで骨髄用ドリル1の先端を骨膜Mに到達させようとすると、骨髄用ドリル1の内針2及び外套管3の切れ刃4,15によって組織を大きく損傷させるので、これを防止するためである。また、外套管3にはガイド筒61の内径より大径のテーパー状の大径部3c(図13)が形成され、この大径部3cは、ガイド針60に対するストッパーとなり、段差部17による切削深さ制限に加えて、外套管3の挿入深さを制限して、突き抜け等の事故を予防し得る。
【0042】
なお、予め、CTスキャンなどを用いてガイド針60と骨との位置関係をチェックすることにより、骨髄用ドリル1の留置位置の決定が容易になり、又、それらの記録を残すことができる。
【0043】
次に、図12に示すように、ガイド針60の軸針63をガイド筒61から引き抜き、電動式のドリル駆動装置D(ドリルチャック部分のみ示している。)に取り付けた骨髄用ドリル1を、留置したガイド筒61に挿入する。そして、ドリル駆動装置Dを用いて骨髄用ドリル1を骨に押圧しながら回転させて骨質を穿孔する。
【0044】
骨髄用ドリル1の先端が骨髄に達した後、骨髄用ドリル1の結合キャップ20を回転させることによって凹部10eへの係合突起21aの係合を解けば、内針2を外套管3から抜脱可能となるので、ドリル駆動装置DのドリルチャックD1で内針2のシャンク8を把持した状態でドリル駆動装置Dを持ち上げ、内針2を外套管3から引き抜く。
【0045】
外套管3から内針2の引き抜くと、図13に示すように、それまでロックキャップ10によって密閉されていた外套管後部のルアーロックコネクタ11が現れる。すなわち、内針2を外套管3から引き抜くまでは、無菌的ではない環境へのルアーロックコネクタ11の暴露を抑え得る。図13の状態から結合キャップ20を回転させて、係合突起21aを、被係合部12を構成する溝に位置させることで、結合キャップ20を下方へ移動させ、ルアーロックコネクタ11を完全に露出させておく。
【0046】
こうして、腸骨Bの一端に外套管3を留置させ、また、これと同じ要領で腸骨Bの他端にも外套管3を留置させる。
【0047】
次に、図15に示すように、生理食塩水等の灌流液が充填された注射用シリンジ51の注射口に、第5ルアーロックコネクタ53を接続し、注入用の外套管3Bのルアーロックコネクタ11に第4ルアーロックコネクタ52を接続する。また、採取用の外套管3Aのルアーロックコネクタ11には、採取側サーキットの第1ルアーロックコネクタ35を接続する。なお、図示しないが、第5ルアーロックコネクタ53には、シリンジ51に代えて、灌流液が充填された輸液ポンプ、或いは、輸液スタンドに適当な落差をつけて取り付けられて灌流液が充填された輸液バッグを接続することもできる。
【0048】
次に、注射用シリンジ51(若しくは図示しない輸液ポンプあるいは落差を調整した輸液バッグ)から、灌流液をゆっくりと腸骨内に注入し、同時に採取側サーキットの三方活栓36をシリンジ38の吸引側に切り換えてシリンジ38を吸引操作することにより、一旦、シリンジ38内に骨髄液を吸引し、次いで三方活栓36をシリンジ38から貯液バッグ31へ排出する側に切り換え、シリンジ38を押し出し操作することにより、骨髄液を貯液バッグ31に貯留する。必要に応じて、シリンジ49から血液凝固防止用のヘパリン加生理食塩水を注入する。こうして貯液バッグ31に骨髄液が採取された後、第1チューブ32と貯液バッグ31とを接続するコネクター(不図示)を取り外して貯液バッグ31に図外の滅菌キャップを被せ、所望の場所への搬送後、あるいは直ちに遠心分離して骨髄細胞分画を回収する。このように骨髄液採取セットを用いて一貫処理することにより、無菌的ではない環境への暴露を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る骨髄用ドリルの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1の骨髄用ドリルの分解平面図である。
【図3】図1の骨髄用ドリルの一部を拡大して示す平面図である。
【図4】図1の骨髄用ドリルの内針の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】図1の骨髄用ドリルの外套管の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】図1の骨髄用ドリルの内針にロックキャップを装着した状態を示す斜視図である。
【図7】図1の骨髄用ドリルの内針と外針とを相対的回転不能に連結した状態を示す斜視図である。
【図8】図1の骨髄用ドリルを組み立てた状態を示す斜視図である。
【図9】骨髄用ドリルのロックキャップと結合キャップの他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】図1の骨髄用ドリルを利用する骨髄液採取セットを示す平面図である。
【図11】図1の骨髄用ドリル及び図10の骨髄液採取セットを用いて骨髄液を採取する方法を説明するための説明図である。
【図12】図11に続く説明図である。
【図13】図12に続く説明図である。
【図14】図13に続く説明図である。
【図15】図14に続く説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 骨髄用ドリル
2 内針
3 外套管
4 切れ刃
5 溝
6 逃げ面
7 すくい面
8 シャンク
10 ロックキャップ
10d 係合部
11 ルアーロックコネクタ
12 被係合部
15 切れ刃
16 螺旋溝
20 結合キャップ
25 逃げ面
26 すくい面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切れ刃を先端部に備え、シャンクを後部に備える内針と、
前記内針の先端部及び後部が突出するように該内針を着脱自在に挿着する外套管と、
該外套管と前記内針との軸線回りの相対的回転を規制するロック機構と、を有し、
前記内針は、前記外套管から突出して露出する先端部に、該先端部の前記切れ刃によって削り取られた切削物を排出するための溝が形成され、
前記外套管は、該外套管の先端縁に切れ刃が形成されるとともに、前記内針の溝と連続するように該外套管の先端縁から外套管周面の少なくとも一部に亘って螺旋溝が形成されていることを特徴とする骨髄ドリル。
【請求項2】
前記外套管の切れ刃が、前記内針の切れ刃と連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨髄ドリル。
【請求項3】
前記外套管の先端縁に形成される逃げ面が、前記内針の先端に形成される逃げ面と連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨髄ドリル。
【請求項4】
前記外套管の後部に、ルアーロックコネクタが形成されていることを特徴とする請求項1記載の骨髄ドリル。
【請求項5】
前記外套管後部のルアーロックコネクタを密閉するキャップが、前記内針に設けられることを特徴とする請求項4記載の骨髄ドリル。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記キャップに設けられた係止部と、外套管に設けられて前記係止部に係止する被係止部と、を備え、該係止部が被係止部に係止することによって外套管に対する内針の軸線回りの回転を規制するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の骨髄ドリル。
【請求項1】
切れ刃を先端部に備え、シャンクを後部に備える内針と、
前記内針の先端部及び後部が突出するように該内針を着脱自在に挿着する外套管と、
該外套管と前記内針との軸線回りの相対的回転を規制するロック機構と、を有し、
前記内針は、前記外套管から突出して露出する先端部に、該先端部の前記切れ刃によって削り取られた切削物を排出するための溝が形成され、
前記外套管は、該外套管の先端縁に切れ刃が形成されるとともに、前記内針の溝と連続するように該外套管の先端縁から外套管周面の少なくとも一部に亘って螺旋溝が形成されていることを特徴とする骨髄ドリル。
【請求項2】
前記外套管の切れ刃が、前記内針の切れ刃と連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨髄ドリル。
【請求項3】
前記外套管の先端縁に形成される逃げ面が、前記内針の先端に形成される逃げ面と連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の骨髄ドリル。
【請求項4】
前記外套管の後部に、ルアーロックコネクタが形成されていることを特徴とする請求項1記載の骨髄ドリル。
【請求項5】
前記外套管後部のルアーロックコネクタを密閉するキャップが、前記内針に設けられることを特徴とする請求項4記載の骨髄ドリル。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記キャップに設けられた係止部と、外套管に設けられて前記係止部に係止する被係止部と、を備え、該係止部が被係止部に係止することによって外套管に対する内針の軸線回りの回転を規制するように構成されていることを特徴とする請求項5記載の骨髄ドリル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−178468(P2008−178468A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12791(P2007−12791)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000153258)株式会社JIMRO (6)
【出願人】(500409219)学校法人関西医科大学 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000153258)株式会社JIMRO (6)
【出願人】(500409219)学校法人関西医科大学 (36)
【Fターム(参考)】
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