高いエネルギー移動効率を有するBRET発現系
【課題】天然のBRETに匹敵するような高効率の共鳴エネルギー移動を実現可能なキメラタンパク質を提供する。
【解決手段】C末側の蛍光蛋白質とN末側のウミシイタケルシフェラーゼを8〜26個アミノ酸からなるリンカーで連結したキメラ蛋白質。
【解決手段】C末側の蛍光蛋白質とN末側のウミシイタケルシフェラーゼを8〜26個アミノ酸からなるリンカーで連結したキメラ蛋白質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルシフェリンを用いて共鳴エネルギー移動により緑色蛍光タンパク質(GFP)
を効率よく光らせる、天然の海洋発光生物で観察されるシステムと同様に、外部励起光源を必要とせずに任意の蛍光タンパク質を本来の蛍光に近く、かつ肉眼で認識可能な明るさの発光を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
天然のGFPの発光メカニズムは、近年、「生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence Resonance Energy Transfer, BRET)」として注目を集めている。共鳴エネルギー移動が起こるためには、エネルギードナー(ルシフェラーゼ)とエネルギーアクセプター(蛍光タンパク質)の間の距離が1-10 nmに近接することが必要である。この1-10 nmという距離は、タンパク質複合体の形成において、タンパク質間相互作用が生じる物理的距離に相当するため、専らタンパク質間相互作用検出のための技術として応用されている。現在の高性能で感度の高い検出機器類を用いれば、僅かな変化でも検出可能なため、低い効率の共鳴エネルギー移動でタンパク質間相互作用を評価しているのが現状である。極論すれば、従来の方法論においては、天然のBRETに匹敵するような高効率の共鳴エネルギー移動は想定されていない。
【0003】
本発明者は、これまでのBRET技術では盲点であった、天然の生物で起こるBRETの「蛍光タンパク質を光らせる」という原点に立ち返り、ルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合による新しい応用技術を確立すべく、ルシフェリンで蛍光タンパク質を本来の発光色で光らせる技術の開発を試みた。
【0004】
BRETに関し、特許文献1では、ウミホタルルシフェラーゼ(Vluc)と黄色蛍光タンパク質(EYFP)をリンカーペプチドで連結したキメラタンパク質を開示しているが、そのエネルギー移動効率は低く、改良の余地があった。
【特許文献1】WO2004/22600
【特許文献2】WO2004/052934
【特許文献3】WO01/46694
【特許文献4】特表2006-518209
【特許文献5】特表2005-525111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然のBRETに匹敵するような高効率の共鳴エネルギー移動を実現可能なキメラタンパク質を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、従来のルシフェラーゼよりも高感度の蛍光標識を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ルシフェラーゼと蛍光タンパク質(GFP、YFPなど)を連結した従来のBRETシステムはルシフェラーゼがN末端、蛍光タンパク質がC末端側にあり、これらをリンカーペプチドで連結されていた。このような構成のBRETシステムでは、ルシフェラーゼの最大吸収波長と蛍光タンパク質の最大吸収波長のピーク強度比はほぼ1:1が限度である。この程度のエネ
ルギー移動効率の場合、高感度の測定機器では蛍光が検出可能であるが、肉眼的に観察することは不可能である。
【0008】
本発明者は、ウミシイタケルシフェラーゼと蛍光タンパク質を逆に配置し、蛍光タンパク質をN末端、ルシフェラーゼをC末端側に配置することで、ルシフェラーゼの最大吸収波長のピーク強度に対する蛍光タンパク質の最大吸収波長のピーク強度比を3倍以上に増大させ、さらにリンカーペプチドの最適化を行うことで、該ピーク強度比を4.38倍まで高めることに成功した。
【0009】
本発明者は、本発明のキメラタンパク質を用い、AcGFP、EGFP、RFPおよびEYFPで高効率の共鳴エネルギー移動が起こることを確認している。従って、本発明のシステムは、ウミシイタケルシフェラーゼと任意の蛍光タンパク質の組み合わせで機能することが明らかである。
【0010】
本リンカーを用いたBAF (BRET-based Auto-illuminated Fluorescent-protein)技術は
、これまで用いられていなかった蛍光タンパク質の利用法を提示するものである。
【0011】
本発明は、以下のキメラタンパク質、該キメラタンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現ベクター、該ベクターを導入した形質転換体を提供するものである。
1. エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質をリンカーを介して連結してなる、エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質との間に視認可能なエネルギー移動が起こり得るキメラ蛋白質であって、前記エネルギー受容蛋白質が蛍光蛋白質であり、エネルギー発生蛋白質がウミシイタケルシフェラーゼであり、リンカーが8〜26個のアミノ酸からなり、エネルギー受容蛋白質がN末端側にあり、エネルギー発生蛋白質がC末端側にあり、かつ、BRET比(エネルギー受容蛋白質の発光極大波長の強度)/(エネルギー発生蛋白質の発光極大波長の強度)が3以上であるキメラ蛋白質。
2. 蛍光蛋白質が、GFP,YFP,BFP,CFP、DsREDまたはRFPである項1
に記載のキメラ蛋白質。
3. 蛍光蛋白質がYFPである、項1に記載のキメラ蛋白質。
4. リンカーが8〜16個のアミノ酸からなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
5. リンカーが10〜14個のアミノ酸からなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
6. リンカーが12個のアミノ酸からなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
7. 項1〜6のいずれかに記載の分泌型又は膜結合型キメラ蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖。
8. 項7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
9. 項8に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
10. 項1〜6のいずれかに記載のキメラタンパク質の標識としての使用。
11. 抗原、抗体、酵素、DNA、RNA、タンパク質、糖鎖、細胞または受容体を認識可能なリガンドなどの物質を標識するための項10に記載の使用。
12. 項8に記載のベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、該形質転換体にウミシイタケルシフェリンを適用し、該キメラタンパク質からのBRETによる発光を検出することを特徴とする、形質転換体のイメージング方法。
13. 形質転換体が、原核生物細胞、真核細胞、組織、臓器、動物又は植物である、項12に記載の方法。
14. 形質転換体が、哺乳動物細胞である、項12に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明による自己完結型キメラタンパク質は、外部励起光を用いずにルシフェリンのみで、蛍光タンパク質本来の蛍光に近い発光を視認可能レベルの明るさで実現することができる。
【0013】
また、本発明のキメラタンパク質は、培養細胞あるいは動物あるいは植物で発現させて
、ルシフェリンの存在下に光らせることができる。
【0014】
本発明によるキメラタンパク質は、リンカー配列だけではなく、そのN末端或いは、C末端に任意のタンパク質を融合させることによっても、BRETスペクトルを変化させることが可能である。本発明のキメラタンパク質の立体構造に負の影響を与える(即ちBRET効率を下げる)付加的なタンパク質を融合し、その間の第2のリンカー配列を切断することで、損なわれていたBRETを回復することも可能である。
【0015】
本発明のキメラタンパク質は、ウミシイタケルシフェラーゼ単独よりも強い発光を示し、より優れたレポータータンパク質である。従って、従来のウミシイタケルシフェラーゼ標識に代えて本発明のキメラタンパク質を用いることで、より優れた酵素標識を提供できる。例えば本発明のキメラタンパク質を抗体(例えば二次抗体)と連結することで、ELISAなどの酵素免疫測定法において、より高感度に測定することが可能である。また、核、小胞体、リボゾームなどの細胞内の各エレメント、或いはこれらのエレメント間のタンパク質などの標識物質の移動を明瞭にイメージングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のキメラ蛋白質は、分子内のエネルギー移動により視認可能なレベルの蛍光が得られる特徴を有する。分子内のエネルギー移動とは、エネルギー発生蛋白質(ウミシイタケルシフェラーゼ)から放出される光エネルギーとエネルギー受容蛋白質(蛍光蛋白質)との間にエネルギー移動が起こることを意味し、エネルギー移動の結果、外部から光を与えなくても視認可能なレベルの蛍光を発する点に特徴を有し、これによりエネルギー移動の程度を定量することができる。
【0017】
本発明のキメラ蛋白質が分泌性であれば、細胞外にルシフェリンを与えることによりその存在を蛍光により容易に検出可能である。キメラ蛋白質が細胞内に局在する場合、ルシフェリンを細胞内に透過させるか、細胞破砕液を用いることで、同様に検出可能である。
【0018】
GFPのような蛍光蛋白質のみでは、蛍光による定性分析は可能であるが、外部からの励起光により蛍光を発するため定量することはできない。一方、本発明のキメラ蛋白質ではウミシイタケルシフェラーゼからの励起光により蛍光蛋白質から蛍光を発するので、キメラ蛋白質の各修飾体(リンカーペプチドにおける切断、BTBドメインやATF6など
による修飾等)をその蛍光波長のシフトに基づき各々定量することが可能である。
本発明において、リンカーは、ウミシイタケルシフェラーゼから蛍光蛋白質への光エネルギーの移動を妨げないものであれば特に限定されない。リンカーのアミノ酸の数は、通常8〜26個、好ましくは8〜16個、より好ましくは10〜14個、特に12個である。リンカーのアミノ酸数が7個以下或いは27個以上になるとエネルギー移動効率は大きく低下する。
リンカーでは、アミノ酸の数が特に重要であり、アミノ酸配列はあまり重要ではない。
本発明者が使用した18種類のリンカーのアミノ酸配列を以下に列挙する。これらのリンカーは、いずれも視認可能な蛍光を発するキメラタンパク質を得るのに有用である。
以下の表1から明らかなように、リンカーのアミノ酸数は8から12が好ましく、12が特に好ましい。
【0019】
【表1】
【0020】
上記表1に示されるように、本発明のキメラタンパク質は、いずれも従来(即ち(アク
セプターの発光極大波長での光強度)/(ドナーの発光極大波長での光強度)比率の最大
値=約1)よりも高い値を示す。蛍光タンパク質とRlucをこの方向で、8-26アミノ酸残基から成るリンカーで接続すると、従来よりも著しく高い効率のBRETが起こるという知見は、本発明により初めて見出された。
【0021】
本明細書において、ウミシイタケルシフェラーゼとしては天然のウミシイタケルシフェラーゼ(例えばRluc)を使用してもよく、安定性や発光特性などの性質が改善されたウミシイタケルシフェラーゼ(例えばRluc8、Rluc8/A123S/D162E/I163L)を使用してもよい。本明細書において、「ウミシイタケルシフェラーゼ」は、天然型のウミシイタケルシフェラーゼとルシフェラーゼの特性を変化させた任意の改変型ウミシイタケルシフェラーゼの両者を含むものである。
【0022】
蛍光蛋白質としては、グリーン蛍光蛋白質(GFP),黄色蛍光蛋白質(YFP),青色蛍光
蛋白質(BFP),シアン蛍光蛋白質(CFP)、DsRED、赤色蛍光蛋白質(RFP)な
どが例示される。なお、GFPには、EGFP、AcGFPなどの種々のGFP誘導体が含まれる。YFPについても、EYFP、Topaz、Venus、Citrineなどのアミノ酸置換した変異体が広く含
まれる。他の蛍光タンパク質についても同様に、天然の蛍光蛋白質や、アミノ酸配列を改変(置換、付加、欠失、挿入など)した変異体が広く含まれる。蛍光蛋白質として、pHに依存してRLUないし波長が変化するもの(例えばYFPなど)を使用すれば、これら蛍光蛋白質の存在する場所のpHを測定することができ、本発明のキメラ蛋白質はpHインジケータとして使用することができる。また、GFPなどのpHによりRLUないし波長があまり変化しないものは、pHに依存することなく、本発明のキメラ蛋白質あるいはそれにより標識された蛋白質等の物質を定量等することができる。
【0023】
本発明の蛍光蛋白質は、ウミシイタケルシフェラーゼから放出される光が蛍光蛋白質の励起波長になるように選択される。このような組み合わせとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。該ポリヌクレオチドにNLS(核移行シグナル)を連結すれば、キメラタンパク質
は核に移行し、核のイメージングを行うことができる。
【0026】
本発明のタンパクは,後述する本発明の遺伝子を発現ベクターに組み込み,適当な宿主細胞内で発現させることにより得ることができる。宿主細胞としては哺乳動物細胞を含む動物細胞、植物細胞、酵母などの真核生物細胞、大腸菌、枯草菌、藻類、真菌類などの原核生物細胞、植物細胞が挙げられ、そのいずれを用いてもよい。好ましい宿主細胞としては、哺乳動物培養細胞などを用いることができる。
【0027】
実施例のデータ(図3b)に示すように、本発明による自己完結型蛍光タンパク質は、外部励起光を用いずにルシフェリンのみで、蛍光タンパク質本来の蛍光に近い発光を視認可能レベルの明るさで実現する。これまでにBRETを利用して蛍光タンパク質を光らせ、色調の変化として示した成功例はなく、その意味ではルシフェリンで蛍光タンパク質を本来の蛍光と遜色ない程度に光らせることを実現したという点に本発明の特徴がある。
【0028】
ウミシイタケルシフェラーゼのルシフェリンであるセレンテラジンを用いた発光反応は、ホタルルシフェラーゼなどと違い、ATPは不要でルシフェラーゼと酸素分子さえあれば
発光可能である。セレンテラジンは、天然の生物にも包含され、それ自体抗酸化作用を有する化合物であり、強い細胞毒性などは有していない。即ちルシフェリンさえあれば、通常環境で自在に光らせることが出来る。
【0029】
本発明キメラタンパク質の特徴の一つは、安定で取り扱いが容易である点である。本発明のキメラタンパク質は、アミノ酸のみからなり、培養細胞あるいは動物あるいは植物で発現させて、ルシフェリンの存在下に光らせることができる。
【0030】
本発明によるキメラタンパク質は、リンカー配列だけではなく、そのN末端或いは、C末端に任意のタンパク質を融合させることによっても、BRETスペクトルを変化させることが可能である(図7のDRmmBTB-BAF-Y,図8のNLS-BAF-G-ATF6C参照)。本発明による自己完結型蛍光タンパク質の立体構造に負の影響を与える(即ちBRET効率を下げる)ような付加的なタンパク質を融合し、その間の第2のリンカー配列を切断することで、損なわれていたBRETを回復することも可能である。
【0031】
本発明のキメラ蛋白質は、ルシフェラーゼあるいは蛍光たんぱく質よりも強い光を発するため、従来のルシフェラーゼ或いは蛍光蛋白質の代わりに使用することができる。例えば、本発明のキメラ蛋白質をコードする遺伝子を標的プロモーターに連結してプロモーターアッセイを行うことができる。また、本発明のキメラ蛋白質は、標識対象物質と連結することにより、任意の物質を標識することができる。標識対象物質としては、抗原、抗体、酵素、DNA、RNA、タンパク質(たとえば受容体、ホルモン、サイトカインなどの生体材
料を認識可能なタンパク質) 、糖鎖(たとえばシアリルルイスXなど)、細胞または受容体を認識可能なリガンドなどの物質(たとえばホルモン、サイトカイン、リンホカイン、プ
ロスタグランジンなど)などが挙げられる。被標識物質が蛋白質/ペプチドの場合には、
本発明のキメラ蛋白質を被標識蛋白質/ペプチドに直接または適当なスペーサーを介して結合させることができる。また、糖鎖の場合には、キメラ蛋白質と糖鎖をともにビオチン化し、ストレプトアビジンを介して結合させるなどの方法を採ることができる。本発明のキメラ蛋白質は、該キメラタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入し、発現させ、セレンテラジンの存在下に発光させることで、細胞のイメージングに使用することもできる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
(1)プラスミドの作製
BAF-Y発現ベクターを作製するために、hRlucをコードする遺伝子をPCRにより増幅した
。PCRに用いられたプライマーは次の通りである:
hRL-F1, 5’-GAGCAGCTGTACAAGCATATGGCTTCCAAGGTGTACGACCCCGAG-3’(配列番号1);
hRL-R1, 5’-GCTCTAGATCACTGCTCGTTCTTCAGCACGCGCTCCAC-3’(配列番号2)。PCR断片は、BsrGIとXbaIで消化され、pEYFPのBsrGI/XbaI部位へ組み込まれ、pEYFP-Rlucが構築された。このプラスミドは、BsrGIとNdeI部位に任意のオリゴDNAをリンカー配列として挿入できる。pBAF-Y構築のために、pEYFP-RlucのBsrGI/NdeI部位に以下のオリゴDNA断片を挿入し
た:
BRET-tag12 a.a. sense, 5’- GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列
番号3);BRET-tag 12 a.a. antisense 5’- TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT
-3’(配列番号4)。BAF-Yのリンカー配列への1アミノ酸置換変異体作製のために、以下に示す幾つかのオリゴDNA断片が用いられた:
S239A-F, 5’-GTACAAGGCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号5);
S239A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGCCTT3’ (配列番号6);
G240A-F, 5’-GTACAAGTCGGCGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号7);
G240A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCGCCGACTT-3’ (配列番号8); L241A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号9); L241A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’ (配列番号10); R242A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGGCGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号11); R242A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCGCCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号12); S243A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGGCCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号13); S243A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGGCCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号14); R244A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号15); R244A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号16); Q246A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’ (配列
番号17); Q246A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号18);
L248A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGGCGGCGAC-3’ (配列番号19); L248A-R, 5’-TAGTCGCCGCCGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号20); H250A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGGC-3’ (配列番号21); H250A-R, 5’-TAGCCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号22)。
それぞれのオリゴDNAのペアはアニールされ、pEYFP-RlucのBsrGI/NdeI部位に挿入された
。
【0033】
大腸菌の発現プラスミドを作製するため、Rluc、BAF-YおよびBAF-Y変異体をコードする遺伝子を以下に示すプライマーにより、PCRにより増幅した。個々のPCR断片はpCold-TF DNAのNdeI-XbaI部位にサブクローニングされ、pCT-hRL,、pCT-BAF-Yおよび pCT-BAF-YR244
Aを得た。
PCRに使われたプライマーは、以下に示す通りである:
TFEGFP-F, GTCGCCCATATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC-3’ (配列番号23);
TFhRL-F, 5’-CCGCTCGAGGCTAGCATGGCTTCCAAGGTGTACGACCCCGAG-3’ (配列番号24); TFhRL-R, 5’-GTTATCTAGAATTACTGCTCGTTCTTCAGCACGC-3’ (配列番号25)。
【0034】
(2)リコンビナントタンパク質の調製
リコンビナントRluc、BAF-YR244A、および派生変異タンパク質はTFタグ融合タンパク質として大腸菌BL21株において低温ショック誘導性プロモーターシステムにより合成された。リコンビナントタンパク質はNi-NTAアフィニティーカラムで精製され、BCAタンパク質
定量キットで、定量された。精製タンパク質はHRV-3Cプロテアーゼで限定分解され、成熟リコンビナントタンパク質が得られた。
【0035】
(3)細胞培養およびトランスフェクション
HeLa細胞およびNIH3T3細胞は10%ウシ胎仔血清が添加されたダルベッコモディファイドイーグル培地(DMEM)で37℃に維持された。細胞はトランスフェクションの1日前に6ウ
ェルプレートに1ウェルあたり4-6x105細胞で撒かれた。トランジェントトランスフェクションはHeLa細胞に対してはリポフェクトアミン2000試薬を、NIH3T3細胞に対してはリポフェクトアミンプラス試薬を用いて行われた。トランスフェクション後30時間で、細胞は2 ml PBSで洗われた後、細胞はPassive lysis bufferで抽出された。
【0036】
(4)スペクトル測定
スペクトル測定はAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)を用いて行われた。測定
は、トランスフェクトされた細胞の抽出液あるいはリコンビナントタンパク質40μlに基
質として1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることで行われた。基質添加後直ちに以
下の条件で生物発光スペクトルが測定された。即ち、細胞抽出液に対しては、0.5 mmのスリット幅で3秒間、リコンビナントタンパク質に対しては、0.25 mmのスリット幅で20秒
間の測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性を補正され、極大波長の値
を1として標準化された。
【0037】
(5)定量的生物発光量測定
等モルのリコンビナントタンパク質は、Rlucアッセイバッファー(500 mM NaCl, 50 mM
Tris-HCl (pH 8.0), 1.0 mM EDTA, 1 mg/ml bovine gelatin, 0.02% Azide)で希釈された。発光量はLuminescencer-MCA (アトー)を用いて、10秒間の積算により行われた。
【0038】
(6)共焦点顕微鏡観察
HeLa細胞はRluc-EYFPあるいはBAF-Yをコードする発現ベクターをトランスフェクトされ、9時間後、トリプシン処理により剥がされ、ガラスベースディッシュに撒き直された。
トランスフェクション30時間後に、生きた細胞の蛍光画像が、共焦点顕微鏡(RT2000; Bio-Rad Laboratories)を用いて撮影された。
【0039】
(7)In vivo BRETスペクトルの測定
BAF-YR244Aの発現プラスミドがNIH3T3細胞にトランスフェクトされ、30時間後に細胞はPBSで2回洗浄された。終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen(プロメガ)が添加
され、直ちに培養ディッシュごと生きた細胞内でのスペクトルが、AB1850スペクトロフォトメーター (アトー)で測定された。
【0040】
(8)BAFタンパク質を用いたIn vivo 1細胞イメージング
BAF-YR244A,、NLS-BAF-Y およびNLS-BAF-Y-NESをコードする発現プラスミドをNIH3T3細胞へ導入した。トランスフェクション10時間後に、細胞はトリプシン処理により剥がされ
、ガラスベースディッシュに撒き直された。トランスフェクション後30時間で培地をフェノールレッドフリーの培地に交換し、終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen(プ
ロメガ)が添加された。細胞はその後、AB3000B Cellgraph (アトー)を用いて観察された。
【0041】
(9)高効率生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)によるBAF-Y (BRET-based Auto-illuminated Fluorescent protein on EYFP)の創製(図1)。
a. Rluc(ウミシイタケルシフェラーゼ)とEYFPから成る人工融合タンパク質の模式図。SGLRSRAQALATがリンカーペプチドである。
b. Rluc、Rluc-EYFP、およびBAF-YをHeLa細胞で発現させ、得られた細胞抽出液にRlucの
ルシフェリンであるセレンテラジンを添加した際の発光スペクトル。Rluc(青線)のスペクトルが、BAF-Y分子内でのRlucとEYFPの間で起こる共鳴エネルギー移動により、EYFPの
発光スペクトルに近いスペクトルに変化する。Rluc-EYFPは対照で、高効率の共鳴エネル
ギー移動が起こるためには、12アミノ酸残基から成るリンカーペプチド配列でEYFP-Rluc
の順序で連結させることが重要である。BRETの効率を評価する指標として、BRET 比率を
(スペクトルの525 nm(EYFPの発光極大波長)の値)/(スペクトルの480 nm(Rlucの発
光極大波長)の値)で表す(従来の最高値は1, Otsuji et al.)と、Rluc-EYFPは1.06、BAF-Yは3.32である。
c. Rluc-EYFPとBAF−Yの細胞内局在性。9 nm以下或いは60 kD以下のタンパク質は細胞内
で受動拡散により、核内に分布することに着目し、両タンパク質(Rluc-EYFP、BAF-Y共に同一アミノ酸組成で推定分子量は64 kDa)の細胞内局在性を共焦点顕微鏡で観察した。共に核にも分布することから、見かけの大きさは、予想よりも小さいことが推察される。同時に高効率の共鳴エネルギー移動が起こるためには、EYFPとRlucの相対的配向性が重要である。
【0042】
(10)Alaスキャニングによるより高効率のBAF-Y変異体の探索(図2)
a. リンカーペプチド内にAla置換により、変異を導入し、図1と同様にスペクトルの測定
を行った結果を表す。リンカーペプチドをSGLRSAAQALATとした時(BAF-YR244A)にBRET比率は最大4.38を示した(N=5)。
b. BAF-YR244Aの発光スペクトル。480 nmの肩が低くなり、525 nmのEYFPの発光スペクトルが優位になっている。
【0043】
(11)大腸菌での組換えタンパク質を作製した際のBAF-YR244Aの特性(図3)。
a. 低温誘導性プロモーターでの発現系を用いて、組換えタンパク質を作製した。タンパ
ク質のフォールディングを高めるために、大腸菌内シャペロン(Trigger-Factor (TF))と
の融合タンパク質として作製し、精製後、配列特異的プロテアーゼで切断し、成熟タンパク質を得た。実施例はTFタグの混合溶液で行った(成熟タンパク質の安定化と後で述べるタンパク質量補正のためにTFタグ部分を利用した)。
b. Rluc、BAF-GR244A、BAF-YR244Aの成熟組換えタンパク質溶液にセレンテラジンを添加
後の発光の様子をデジタルカメラで撮影した。Rluc単独では青色発光であるが、BAF-GR244AではEGFP本来の緑色に近い発光を、BAF-YR244AではEYFP本来の黄緑色に近い発光を示した。これは、外部励起光および、励起光遮断のための光学フィルターを用いずに、その代わりにセレンテラジンを用いて蛍光タンパク質を本来の発光色に近い色で発光させた世界で初めての例である。
c. TF-タグ部分(それぞれの組換えタンパク質で共通)で、量的補正を行った。計算上、4 pmolesのタンパク質をSDS-PAGEで分離後、CBB染色を施した。レーン1;Rluc、レーン
2;BAF-YR244A。
d. 4 pmolesの組換えタンパク質に100 pmolesのセレンテラジンを加えて、定量性がある
測定条件で、発光スペクトルを測定した。発光量はスペクトルの積算値、即ち各スペクトルが囲む面積として評価すると、BAF-YR244AはRlucの約4倍明るくなっていた(N=5)。
【0044】
(12)BAF-YR244Aの定量的直線性をRlucと比較(図4)。
等モルの組換えタンパク質を10倍ごとに段階希釈し、マルチカラールミノメーター(ATTO)を用いて、発光量(10秒間の積算)で測定した。
a. フィルター無しの測定結果(10秒間の積算)。
b. 560 nmより長波長域の光を透過させるロングパスフィルターを用いた時の測定結果(10秒間の積算)。共に測定回数は3回で、各測定ポイントの平均値をプロットし、標準偏差を誤差棒として示したが、シンボルに隠れて見えていない。
共に全ての測定ポイントでBAF-YR244AがRluc より発光量が高く、少なくとも6桁の濃度範囲で定量的直線性を示した。特にRlucの定量限界付近で、明るいことにより、より確かな定量性を示した。
【0045】
(13)BAF-Yを用いた1細胞レベルでのIn vivo BRETイメージング(図5)。
a. BAF-YR244A分子内の共鳴エネルギー移動が生細胞内の生理的環境で起こることの確認
。BAF-YR244AをNIH3T3細胞に導入し、充分発現させた後、セレンテラジン誘導体(ViviRen、プロメガ)を添加し、生細胞内で起こる共鳴エネルギー移動をBRETスペクトルとして
測定した。試験管内とほぼ同様の高効率BRETを生細胞内でも確認した。
b. ViviRen を添加後のBAF-Y変異体を発現させたNIH3T3細胞の1細胞BRET-イメージング。細胞内局在性が異なる3種のBAF-Y変異体をNIH3T3細胞に導入し、ViviRenを添加して、ルシフェリンールシフェラーゼ反応を利用した蛍光タンパク質のイメージングを試みた。515 nmよりも長波長域の光を透過するロングパスフィルターを用いた際にも、フィルター無しの時と遜色ない、細胞イメージングに成功した。これも外部励起光を用いずにルシフェリンのみで蛍光タンパク質を光らせ、1細胞レベルでのイメージングに成功した世界初の
事例である。
(14)ウミシイタケルシフェラーゼとウミシイタケGFP の間でのBRETのスペクトルを示す(図6)。
(15)高効率BRETの回復、付加データ1(図7)
BAF-YのN端にダイマーを形成するようなドメイン(この場合BTBドメイン)を融合するこ
とにより、BAF-Yタンパク質の立体障害ストレスが生じ、BRET効率の低下が観測される。
第二のリンカー部に適当なプロテアーゼ切断配列などを挿入することで、プロテアーゼで切断された際に、高効率BRETの回復が期待できる(In vitro & In vivo)。
【0046】
(16)高効率BRETの回復、付加データ2(図8)
NLS-BAF-GのC端にATF6のC末部分(ATF6-C)を融合すると、培養細胞内では、BRET効率の
著しい低下が認められる。恐らく、ATF6が小胞体膜に組み込まれることによる立体構造的ストレスによるものと考えられる。第二のリンカー部での切断(例えばCaspase)が起こ
ると高効率BRETが回復して、青色から緑色への発光色変化が起こり、且つNLS-BAF-G部分
の小胞体膜から核への移行が期待される(In vivo)。
【0047】
実施例2
以下において、「BAF-YR244A」を単に「BAF-Y」と記載する
(1)pH依存的なBAF-Yのスペクトル測定
測定バッファーは、pH 6.3, pH 6.6, pH 6.9, pH 7.2, pH 7.5, pH 7.8, およびpH 8.1に調整した150 mM BIS-TRIS-propane, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA水溶液を用いた。それぞ
れのpHに調整したバッファー39 μlに各リコンビナントタンパク質溶液1 μlを加え、均
一な溶液とした。これに100 μMのセレンテラジン溶液を1.5 μl加え、直ちにAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)にて、スリット幅0.25 mm、3秒間の露光条件にて、スペ
クトルの測定を行った。結果を図9に示す。
【0048】
(2)塩濃度依存的なBAF-Yのスペクトル測定
測定バッファーは、0 mM NaCl、35 mM NaCl、および300 mM NaClを含む、50 mM Tris-HCl (pH 8.0)水溶液を用いた。それぞれの塩濃度に調整した測定バッファー40 μlに各リ
コンビナントタンパク質溶液1 μlを加え、均一な溶液とした。これに100 μMのセレンテラジン溶液を1 μl加え、直ちにAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)にて、スリット幅0.25 mm、1秒間の露光条件にて、スペクトルの測定を行った。Rlucについての結果を図10a に、BAF-Yについての結果を図10bに各々示す。
【0049】
(3)プラスミドの作製
既に報告されている8個の点突然変異(A55T, C124A, S130A, K136R, A143M, M185V, M253L, S287L)を導入したRluc変異体(Rluc8)(A. M.Loening et al., Protein Engineering, Design and Selection vol.19 no.9 pp.391-400 (2006))を作製するために, Rlucに8個の1アミノ酸置換変異を導入した。部位特異的置換変異導入はQuickChange II XL Kit
(STRATAGENE)を用いて行われた。8箇所の部位特異的置換変異導入に用いられたプライマーは以下の通りである。
(1)A55T アミノ酸置換のプライマーセット
RlucA55T sence, CTGCATGGTAACGCTACCTCCAGCTACCTGT (配列番号43)と
RlucA55T antisense, ACAGGTAGCTGGAGGTAGCGTTACCATGCAG (配列番号44);
(2)C124Aアミノ酸置換のプライマーセット
RlucC124A sense, GTGGGCCACGACTGGGGGGCTGCTCTGGCCTTTCACTACTCCTA (配列番号45)と
RlucC124A antisense, TAGGAGTAGTGAAAGGCCAGAGCAGCCCCCCAGTCGTGGCCCAC (配列番号46);
(3)S130Aアミノ酸置換のプライマーセット
RlucS130A sense, CTGGCCTTTCACTACACCTACGAGCACCAAG (配列番号47)と
RlucS130A antisense, CTTGGTGCTCGTAGGTGTAGTGAAAGGCCAG (配列番号48);
(4)K136Rアミノ酸置換のプライマーセット
RlucK136R sense, ACGAGCACCAAGACAGGATCAAGGCCATCGT (配列番号49)と
RlucK136R antisense, ACGATGGCCTTGATCCTGTCTTGGTGCTCGT (配列番号50);
(5)A143Mアミノ酸置換のプライマーセット
RlucA143Msense, AGGATCAAGGCCATCGTCCACATGGAGAGTGTCGTGGACGTGATC (配列番号51)と
RlucA143M antisense, GATCACGTCCACGACACTCTCCATGTGGACGATGGCCTTGATCCT (配列番号52);(6)M185Vアミノ酸置換のプライマーセット
RlucM185V sense, CTTCTTCGTCGAGACCGTGCTCCCAAGCAAGAT (配列番号53)と
RlucM185V antisense, ATCTTGCTTGGGAGCACGGTCTCGACGAAGAAG (配列番号54);
(7)M253Lアミノ酸置換のプライマーセット
RlucM253L sense, GACGATCTGCCTAAGCTGTTCATCGAGTCCG (配列番号55)と
RlucM253L antisense, CGGACTCGATGAACAGCTTAGGCAGATCGTC (配列番号56);
(8) S287Lアミノ酸置換のプライマーセット
RlucS287L sense, AAGGTGAAGGGCCTCCACTTCCTCCAGGAGGACGCTCCAGATGA (配列番号57)と
RlucS287L antisense, TCATCTGGAGCGTCCTCCTGGAGGAAGTGGAGGCCCTTCACCTT (配列番号58)。
【0050】
各々の1アミノ酸置換変異を導入されたクローンはシークエンス解析により塩基配列を確かめた。この操作を連続して繰り返すことにより8箇所に1アミノ酸置換変異を有するpCMV-EYFP-Rluc8を構築した。 pCMV-EYFP-Rluc と pCMV-EYFP-Rluc8 は EYFP をコードする領域を除くため、AgeI及びNdeIで消化され、DNA末端を平滑化した後、 セルフライゲーションによりpCMV-Rluc及びpCMV-Rluc8を得た。R244A oligo DNAペア(R244A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号15)と R244A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号16)のアニーリングしたDNA断片)がpCMV-EYFP-Rluc8のBsrGI/NdeI部位に挿入されることにより、pCMV-eBAF-Y(eBAF-Y、enhanced BAF-Yの略)を得た。
【0051】
ヒストンH2AX-eBAF-Y 発現プラスミドを構築するために, ヒストンH2AX cDNA(GenBank
のアクセッション番号:NM_002105)をPCR反応により増幅した。PCR反応に用いられたプ
ライマーは以下である。N-H2AX-F-Xh, 5’-CCGACTCGAATGTCGGGCCGCGGCAAGAC-3’ (配列番号59); と N-H2AX-R-Hd3, GCCCAAGCTTCGTACTCCTGG GAGGCCTGGG-3’ (配列番号60)。 増幅されたPCR断片はXhoIとHindIIIで消化され、XhoI/HindIII-消化されたpCMV-eBAF-Yに挿入され、 pCMV-H2AX-eBAF-Yが構築された。eBAF-Y-H2AX発現プラスミドを構築するために, ヒストンH2AX cDNAをPCR反応により増幅した。PCR反応に用いられたプライマーは以下で
ある。C-H2AX-F-Kpn, 5’-CCGAGGTACCATGTCGGGCCGCGGCAAGAC-3’ (配列番号61)と C-H2AX-R-Bam, 5’-GGCGGAATCCTTAGTACTCCTGGGAGGCCT-3’ (配列番号62)である。増幅されたPCR断片はKpnIとBamHI HindIIIで消化され、KpnI/BamHI-消化されたpCMV-eBAF-Yに挿入され
、pCMV-eBAF-Y-H2AXが構築された。
【0052】
(4)細胞培養およびトランスフェクション
HeLa細胞(発光強度比較実験)またはNIH3T3細胞(発光の短期間安定性評価実験)は10%ウシ胎仔血清が添加されたダルベッコモディファイドイーグル培地(DMEM)で37℃に維持された。細胞はトランスフェクションの1日前に6ウェルプレートに1ウェルあたり4-6x105細胞で撒かれた。トランジェントトランスフェクションはHeLa細胞に対してはリポ
フェクトアミン2000試薬を用いてNIH3T3細胞に対してはリポフェクトアミンプラス試薬を用いて行われた。トランスフェクションに用いられた各発現プラスミドは、Rluc(もしくはRluc8)cDNA部分で等モルになるように調整され、トランスフェクション効率の補正の
ため、内部標準として北米産ホタルルシフェラーゼの発現プラスミドとコトランスフェクションされた。トランスフェクション後、30時間(発光強度比較実験)24時間、48時間、及び72時間の各タイムポイントで(発光の短期間安定性評価実験)、細胞は2 ml PBSで洗われた後、Passive lysis bufferで抽出された。
・発光強度比較実験
各抽出液はルミノメーターでホタルルシフェラーゼの発光活性を測定した後、各抽出液のスペクトル測定はAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)を用いて行われた。測定は
、トランスフェクトされた細胞の抽出液40μlに基質として1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることで行われた。基質添加後直ちに以下の条件で生物発光スペクトルが測定された。即ち、細胞抽出液に対しては、0.25 mmのスリット幅で3秒間、リコンビナントタ
ンパク質に対しては、0.25 mmのスリット幅で20秒間の測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性を補正された。各サンプルについて独立4回の測定が行われた。各
データはホタルルシフェラーゼの活性により、トランスフェクション効率の補正が施された。
・ 発光の短期間安定性評価実験
各抽出液はルミノメーターでホタルルシフェラーゼの発光活性を測定した後、続いてセレンテラジン発光溶液を加えることで行われた。実験は独立3回行われた。各データはホタ
ルルシフェラーゼの活性により、トランスフェクション効率の補正が施された。
【0053】
結果を図11に示す。
【0054】
(5)In vivo BRETスペクトルの測定
eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yの発現プラスミドがNIH3T3細胞にトランスフェクトされ、30時間後に細胞はPBSで2回洗浄された。終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen
(プロメガ)が添加され、直ちに培養ディッシュごと生きた細胞内でのスペクトルが、AB1850スペクトロフォトメーター (アトー)で測定された。
【0055】
BAFタンパク質を用いたIn vivo 1細胞イメージング
eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yをコードする発現プラスミドをNIH3T3細胞へ導入した。トランスフェクション10時間後に、細胞はトリプシン処理により剥がされ、ガラスベースディッシュに撒き直された。トランスフェクション後30時間で培地をフェノールレッドフ
リーの培地に交換し、終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen(プロメガ)が添加
された。細胞はその後、40xレンズが取り付けられたAB3000B Cellgraph (アトー)を用いて10秒間の露光条件により1分間隔で観察された。結果を図12に示す。
実施例3
プラスミドの作製
既に報告されているRLucの変異体(RLuc8/A123S/D162E/I163L及びRLuc8.6-532)(A.M.Loening rt al., Nature Methods, vol.4 no.8 pp.641-643 (2007))を作製するためRLucに3もしくは4個の1アミノ酸置換変異を導入した。部位特異的置換変異導入はQuickChange
II XL Kit (STRATAGENE)を用いて行われた。
・eBAF-YへのRLuc8/A123S/D162E/I163L変異の導入
eBAF-Y(BAF-YのRLuc部分をRLuc8に置換した変異体、enhanced BAF-Yの略)のRLuc8部分
に更にA123S及びD162E/I163Lの変異を二段階で導入した。変異導入に際して、用いたプライマーセットは以下である。
RLuc8A123S sense,
5’-GGCCACGACTGGGGGtCTgcTCTGGCCTTTCA-3’(配列番号63);
RLuc8A123S anti,
5’-TGAAAGGCCAGAgcAGaCCCCCAGTCGTGGCC-3’ (配列番号64);
RLuc8AD162E_I163L sense, 5’-GGCCTGACATCGAGGAGGAacTCGCCCTGATCAAGAGCGA-3’(配列番号65);
RLuc8AD162E_I163L anti, 5’-TCGCTCTTGATCAGGGCGAgtTCCTCCTCGATGTCAGGCC-3’(配列番
号66)
(小文字表記は変異導入部位)。
【0056】
尚、各ステップにおいて余分な変異等が生じていないことはDNAシーケンスを決定する
ことにより確認済みである。上記変異を導入されたプラスミド(pBAF-Y_m3)は、BsrGI
とNdeIで消化され、生じたBsrGI/NdeI部位に以下のオリゴDNA断片を挿入した。導入した
オリゴDNAの配列は以下である。
BRET-tag12 a.a. sense, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号67);
BRET-tag 12 a.a. antisense, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配
列番号68);
S239A-F,
5’-GTACAAGGCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号69);
S239A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGCCTT3’(配列番号70);
G240A-F,
5’-GTACAAGTCGGCGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号71);
G240A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCGCCGACTT-3’(配列番号72);
L241A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号73);
L241A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’(配列番号74);
R242A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGGCGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号75);
R242A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCGCCAGCCCCGACTT-3’(配列番号76);
S243A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGGCCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号77);
S243A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGGCCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号78);
R244A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号79);
R244A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号80);
Q246A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号81);
Q246A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号82);
L248A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGGCGGCGAC-3’(配列番号83);
L248A-R,
5’-TAGTCGCCGCCGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号84);
T250A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGGC-3’(配列番号85);
T250A-R,
5’-TAGCCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号86);
L241R244A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号87);
L241R244A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’ (配列番号88);
R244Q246A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号89);
R244Q246A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号90);
L241R244Q246A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCGCGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号91);
L241R244Q246A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCGCGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’(配列番号92);
R244G-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号93);
R244G-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号94);
all-A-F,
5’-GTACAAGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGC-3’(配列番号95);
all-A-R,
5’-TAGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCTT-3’(配列番号96)。
【0057】
それぞれのオリゴDNAのペアはアニールされ、上記プラスミドのBsrGI/NdeI部位に挿入
された(改良された新しいBAF-Yの作製、実施例として例示したのは、L241R244Q246Aの配
列であるが、上記試した全てのリンカーで480 nmのスペクトルの肩は解消している;図13、図14)。
・ eBAF-R1の作製
TurboRFP(EVROGEN社)のアミノ酸配列を変えずに内因性のBsrGI部位を潰し、新たにBsrGI部位を生成するために、置換変異を導入した(pTurboRFP’-C)。変異導入に際して、用いたプライマーセットは以下である。
TurboRFPΔBsrGI-F,
5’-CATGCACATGAAGCTcTACATGGAGGGCACC-3’(配列番号97);
TurboRFPΔBsrGI-R,
5’-GGTGCCCTCCATGTAgAGCTTCATGTGCATG-3’(配列番号98);
TurboRFP+BsrGI-F,
5’-GACCTCCCTAGCAAACTGGtGtACAGAGATGAATCCGGACT-3’(配列番号99);
TurboRFP+BsrGI-R,
5’-AGTCCGGATTCATCTCTGTaCaCCAGTTTGCTAGGGAGGTC-3’(配列番号100)。
この置換変異を導入することにより、TurboRFPにG227V/H228Yの2アミノ酸置換が導入される。作製したpTurboRFP’-CをNheI及びBsrGIで消化し、TurboRFPcDNAを取得した。これ
をpeBAF-YのNheI/BsrGI部位に挿入し、蛍光タンパク質部分をEYFPからRFPに置換した(peBAF-TgR)。これをBsrGIとNdeIで消化し、これに前項のオリゴDANペアを導入し、スペク
トルを検討した。R244Q246Aをリンカーとした際に最もBRET効率が高く、これをpeBAF-R1
とした(図15)。
【0058】
・eBAF-YへのRLuc8/A123S/D162E/I163L/V185L(RLuc8.6-532)変異の導入
前述のRLuc8/A123S/D162E/I163Lを導入したBAF-Yプラスミド・pBAF-Y_m3にV185L変異を
導入した。変異導入に際して、用いたプライマーセットは以下である。
RLuc8V185L sense,
5’-TTCTTCGTCGAGACCcTGCTCCCAAGCAAGA-3’(配列番号101);
RLuc8V185L anti,
5’-TCTTGCTTGGGAGCAgGGTCTCGACGAAGAA-3’(配列番号102)。変異を導入したプラスミドをpeBAF-Y.6-532とした。
【0059】
・ eBAF-R2の作製
peBAF-Y.6-532をNheI及びBsrGIで消化し、EYFP cDNAを除去し、その代わりにTurboRFP’/NheI-BsrGI断片を挿入し、これをpeBAF-R2とした(図16)。
【0060】
細胞培養およびトランスフェクション
HeLa細胞およびNIH3T3細胞は10%ウシ胎仔血清が添加されたダルベッコモディファイドイーグル培地(DMEM)で37℃に維持された。細胞はトランスフェクションの1日前に6ウ
ェルプレートに1ウェルあたり4-6x105細胞で撒かれた。トランジェントトランスフェクションはHeLa細胞に対してはリポフェクトアミン2000試薬を、NIH3T3細胞に対してはリポフェクトアミンプラス試薬を用いて行われた。トランスフェクション後30時間で、細胞は2 ml PBSで洗われた後、細胞はPassive lysis bufferで抽出された。
【0061】
スペクトル測定
スペクトル測定はAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)を用いて行われた。測定
は、トランスフェクトされた細胞の抽出液40μlに基質として1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることで行われた。基質添加後直ちに以下の条件で生物発光スペクトルが測定された。即ち、細胞抽出液に対しては、0.25 mmのスリット幅で3秒間もしくは20秒間の測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性を補正され、極大波長の値を1と
して標準化された(図13、図14、図15、図16)。
【0062】
・pDRmmBTB-Casp8-BAF-Yの作製
pDRmmBTB-HdS-BAF-YをHindIII及びSalIで消化し、HindIII/SalI部位に、以下のオリゴDNAペアを挿入した。
BTBHdCasp8Slsense,
5’-AGCTTCGAGCGGGCTGGAGACGGATGGGGTCGACTC-3’(配列番号103);
BTBHdCasp8Slanti,
5’-AGCTGAGTCGACCCCATCCGTCTCCAGCCCGCTCGA-3’(配列番号104)。
生じたプラスミドをpDRmmBTB-Casp8-BAF-Yとした。
【0063】
・pCII-DRmmBTB-Casp8-BAF-Yの作製
大腸菌の発現プラスミドを作製するため、pDRmmBTB-Casp8-BAF-Yをコードする遺伝子を以下に示すプライマーにより、PCRにより増幅した。得られたPCR断片はpCold-II DNA(TAKARA)のNdeI-XbaI部位にサブクローニングされ、pCII-DRmmBTB-Casp8-BAF-Yを得た。PCRに使われたプライマーは、以下に示す通りである:
DsRedmFwdColdTF-F,
5’-GTCGCCCATATGGACAACACCGAGGACGTCA-3’(配列番号105);
TFhRL-R,
5’-GTTATCTAGAATTACTGCTCGTTCTTCAGCACGC-3’(配列番号106)。
【0064】
リコンビナントタンパク質の調製
リコンビナントDRmmBTB-Casp8-BAF-Yは大腸菌BL21株において低温ショック誘導性プロ
モーターシステムにより合成された。リコンビナントタンパク質はNi-NTAアフィニティーカラムで精製され、成熟リコンビナントタンパク質が得られた(図17、図18)。
【0065】
リコンビナントタンパク質のIn vitro Caspase-8消化とスペクトル測定
大腸菌から精製されたリコンビナントタンパク質1x ICE standards buffer (100 mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 % glycrol, 0.1 % CHAPS)で10倍希釈し、これにリコンビナントCaspase-8 (Calbiochem)を加え、30℃で加温した。十分時間反応後、反応液の一部をTE(10 mM Tris-HCl(pH 8.0), 1 mM EDTA)にて8倍希釈し、希釈液40μlに対して1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることでスペクトル測定を行った。スペクトルの測定条件はslit幅0.25 mm、20℃で2秒間の露光測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性
を補正され、相対発光強度と極大波長の値を1とした標準化により評価された。また、反応液の一部はSDS-PAGEに供し、分子サイズで分離した後、クマッシー染色を施した。DRmmBTB-Casp8-BAF-Yは、Caspase-8で消化されて、DRmmBTB部分とBAF-Yに分離することにより、DRmmBTB部分によりなされていたBAF-YのBRETの阻害が解除され、標準化スペクトルでの480 nmの肩の相対的な減少(図17)及び発光量の増加(図18)が起こると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
これまでの蛍光タンパク質の利用は専ら励起光源に制約されており、研究分野以外では
殆ど利用されていない。また、強力な励起光源により蛍光タンパク質を励起させるため、蛍光タンパク質の蛍光検出のためには、特殊な光学フィルターを用いる必要がある。一方で、本発明によるキメラタンパク質は、蛍光タンパク質分子の極近傍で蛍光タンパク質を励起するのに適当な強度のエネルギーをピンポイントで照射するため、特殊な光学フィルターを用いる必要はない。即ち、ルシフェリン(特にセレンテラジン)と本発明による自己完結型蛍光タンパク質だけで実現可能な非常に単純なシステムである。これまで実現が全く想定されていなかった分野でのルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合による生物発光の応用の扉を開くものである。
【0067】
本発明のコアであるリンカー領域のアミノ酸配列を変えることで、BRETスペクトルパターンを変化させることができ、ルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合により、青色から黄緑色までの色調を任意に変化させられる「color tuning」技術として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】高効率生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)によるBAF-Y (BRET-based Auto-illuminated Fluorescent protein on EYFP)の創製。
【図2】Alaスキャニングによるより高効率のBAF-Y変異体の探索。
【図3】大腸菌での組換えタンパク質を作製した際のBAF-YR244Aの特性。
【図4】BAF-YR244Aの定量的直線性をRlucとの比較。
【図5】BAF-Yを用いた1細胞レベルでのIn vivo BRETイメージング。
【図6】ウミシイタケルシフェラーゼとウミシイタケGFP の間でのBRETのスペクトルを示す。
【図7】高効率BRETの回復、付加データ1
【図8】高効率BRETの回復、付加データ2
【図9a】BAF-YにおけるBRETのpH依存性。(supplementary Fig.3a,3b)pH依存的なBAF-YのBRETスペクトルの変化(標準化スペクトル)。各スペクトルの発光極大波長の値を1として標準化したスペクトルでのBRET効率の変化を評価すると、pH 6.3からpH 8.1の間でRlucの標準化スペクトルのパターンには変化は見られないが、BAF-Yに関しては、非常に大きな変化が認められる。
【図9b】BAF-YにおけるBRETのpH依存性。(supplementary Fig.3a,3b)pH依存的なBAF-YのBRETスペクトルの変化(相対発光強度によるスペクトルの評価)。Rlucの発光強度は、pH 6.3からpH 7.2の間では、概ね一定レベルであるが、pH 7.5からpH 8.1にかけて、発光活性が低下する。BAF-Yに関しても、pHが高くなるにしたがい、480付近のRlucの発光極大の相対的割合が低下し、逆にEYFPの蛍光極大波長付近でのスペクトルがドミナントになる。これは酸性領域でのEYFPの蛍光不安定性と、pH依存的なRlucの発光活性のバランスの総和によるものと考えられる。このBAF-Y分子内で認められるBRETのpH依存性は、BAF-YがpHインジケーターとして応用できる可能性を示唆する。また、この性質はpHにより発光色を青色-黄緑色の間で変化させる技術としても応用可能である。
【図10a】BAF-YにおけるBRETの塩濃度依存性。(supplementary Fig.4)Rlucに関しては塩濃度増加による発光活性の上昇が認められるものの、標準化された発光スペクトルへの影響は見られない。塩によるタンパク質の安定化に依るものと考えられる。
【図10b】BAF-YにおけるBRETの塩濃度依存性。(supplementary Fig.4)BAF-Yに関してはRlucと同様に塩濃度増加による発光強度の亢進が認められる。一方で標準化されたBRETスペクトルおいて、軽微ではあるが、BRET効率の若干の低下が認められる。これは、Rlucが塩により安定化して上昇する発光活性とEYFPの[Cl-](塩化物イオン濃度)感受性の蛍光不安定性のバランスによるものと推察される。BAF-Yを生理活性インジケーター、あるいは生理活性プローブとして利用する際のバッファー組成を決定する上で重要な因子となる。
【図11】改良されたRluc変異体(RlucA55T/C124A/S130A/K136R/A143M/M185V/M253L/S287L, Rluc8)を導入したenhanced BAF-Y(eBAF-Y)の開発。(Fig.2)a. Loening AMらにより報告された、発光強度が改善された変異体・Rluc8をBAF-Y中のRlucの代わりに導入することにより、オリジナルRlucより発光強度を25倍以上増したBAF-Y変異体・enhanced BAF-Y(eBAF-Y)の作製に成功した。このことは将来的に更なるRlucの改善をBAF-Yの改良に応用可能であることを強く示唆する。b. eBAF-Yは、Rluc8以上に細胞内で安定に発現する。このことは、eBAF-YがRluc8よりも単に明るいだけではなく、安定に発光する点において利点となる。
【図12】(e)BAF-Yの生物発光タグとしての応用。(Fig.3)コアヒストンを構成するヒストン8量体の構成成分であるヒストンH2AのサブタイプであるヒストンH2AXとeBAF-Yの融合タンパク質、eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yを作製した。In vivo BRETスペクトルの測定により、eBAF-Yは、ヒストンH2AXのN末端、C末端の何れに融合しても、高効率BRETを維持することができる。また、in vivo BRETイメージングにおいて、eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yは共に核に局在し、H2AX本来の細胞内分布様式を再現することができる。よって(e)BAF-Yは生物発光タグとして、生物発光によりタンパク質の生細胞内での動態を可視化するツールとして用いることが可能である。
【図13】実施例3で得られたnew BAF-Yと、実施例2で得られたBAF-Yとの比較:new BAF-Y は、Rlucの代わりにRluc変異体(Rluc8/A123S/D162E/I163L)を用いたBAF-Yである。グラフには、リンカー配列がSGARSAAAALATの結果を示す。他に試した全てのリンカー(SGLRSRAH、SGLRSRAQALAT、AGLRSRAQALAT、SALRSRAQALAT、SGARSRAQALAT、SGLASRAQALAT、SGLRARAQALAT、SGLRSAAQALAT、SGLRSRAAALAT、SGLRSRAQAAAT、SGLRSRAQALAA、SGARSAAQALAT、SGARSAAAALAT、SGLRSGAQALAT、AAAAAAAAAAAA)でも実施例2のBAF-Yより、優れていた。new BAF-Y では、480nm付近のスペクトルの肩が解消されている。new BAF-Y の527nm/480nm値は7.46である。見かけ上のBRET効率が上昇することでEYFPの蛍光極大波長(527nm)と一致するようになった。
【図14】実施例3で得られたnew BAF-Y、オリジナルのRluc、従来のBAF-A(AcGFP -Rluc)、BAF-G(EGFP -Rluc)のスペクトルとの比較を示す。
【図15】赤色蛍光タンパク質(RFP)を用いたBAF-Rの結果:RFP(TurboRFP)とRluc8をこの順序でリンカー配列、SGLRSAAAALATで繋いだものである。Rluc8を用いているのでeBAF-R1と表記した。ドナーとアクセプターの最大波長の開きが91nmあり、高い分離能のBRETアッセイが可能であることが示された
【図16】赤色蛍光タンパク質(RFP)を用いたBAF-Rの結果。:RFP(TurboRFP)とRluc8.6-532をこの順序でリンカー配列、SGLRSRAHで繋いだものである。BRETでRFPの蛍光最大波長がドミナントになる1分子BRETタンパク質が得られた。
【図17】BAF-Yの応用技術(BRET阻害からの回復の実施例):付加データ1(図7)の具体的実施例で、標準化スペクトルを表す。DRmmBTBHdSBAF-YのBTBドメインとBAF-Yの間のスペースにASSGLETDGVDSASの配列を導入した。下線部のLETDはCaspase-8の特異的認識切断配列である。リコンビナントタンパク質を、試験管内で、リコンビナントCaspase-8と混ぜ、切断した結果である。BRET効率を下げている、DRmmBTB部分を切断することで、BRET効率が回復し(恐らく、BAF-Yへの立体構造の歪みが解消され)、それが480nm付近の肩が下がるという形で現れている。In setは、Caspase-8有り、無しでのリコンビナントタンパク質をSDS-PAGEで分離し、CBB染色を施したものである。Caspase-8による消化により、BAF-YとBRET阻害部分(DRmmBTB)に分解される。
【図18】BAF-Yの応用技術(BRET阻害からの回復の実施例):付加データ1(図7)の具体的実施例で、相対的発光強度スペクトルを表しています。BRETの阻害からの回復により、同一分子で相対発光強度がより増幅されることが示された。即ち、モニタリングしたい反応が起こることで、より発光強度が増すことが示された。
【0069】
尚、Rluc変異体(Rluc8/A123S/D162E/I163LおよびRluc8.6-532)は、何れもNature Methods, Vol.4, No.8, p641-643 (2007)で報告されたものを使用した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルシフェリンを用いて共鳴エネルギー移動により緑色蛍光タンパク質(GFP)
を効率よく光らせる、天然の海洋発光生物で観察されるシステムと同様に、外部励起光源を必要とせずに任意の蛍光タンパク質を本来の蛍光に近く、かつ肉眼で認識可能な明るさの発光を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
天然のGFPの発光メカニズムは、近年、「生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence Resonance Energy Transfer, BRET)」として注目を集めている。共鳴エネルギー移動が起こるためには、エネルギードナー(ルシフェラーゼ)とエネルギーアクセプター(蛍光タンパク質)の間の距離が1-10 nmに近接することが必要である。この1-10 nmという距離は、タンパク質複合体の形成において、タンパク質間相互作用が生じる物理的距離に相当するため、専らタンパク質間相互作用検出のための技術として応用されている。現在の高性能で感度の高い検出機器類を用いれば、僅かな変化でも検出可能なため、低い効率の共鳴エネルギー移動でタンパク質間相互作用を評価しているのが現状である。極論すれば、従来の方法論においては、天然のBRETに匹敵するような高効率の共鳴エネルギー移動は想定されていない。
【0003】
本発明者は、これまでのBRET技術では盲点であった、天然の生物で起こるBRETの「蛍光タンパク質を光らせる」という原点に立ち返り、ルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合による新しい応用技術を確立すべく、ルシフェリンで蛍光タンパク質を本来の発光色で光らせる技術の開発を試みた。
【0004】
BRETに関し、特許文献1では、ウミホタルルシフェラーゼ(Vluc)と黄色蛍光タンパク質(EYFP)をリンカーペプチドで連結したキメラタンパク質を開示しているが、そのエネルギー移動効率は低く、改良の余地があった。
【特許文献1】WO2004/22600
【特許文献2】WO2004/052934
【特許文献3】WO01/46694
【特許文献4】特表2006-518209
【特許文献5】特表2005-525111
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、天然のBRETに匹敵するような高効率の共鳴エネルギー移動を実現可能なキメラタンパク質を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、従来のルシフェラーゼよりも高感度の蛍光標識を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ルシフェラーゼと蛍光タンパク質(GFP、YFPなど)を連結した従来のBRETシステムはルシフェラーゼがN末端、蛍光タンパク質がC末端側にあり、これらをリンカーペプチドで連結されていた。このような構成のBRETシステムでは、ルシフェラーゼの最大吸収波長と蛍光タンパク質の最大吸収波長のピーク強度比はほぼ1:1が限度である。この程度のエネ
ルギー移動効率の場合、高感度の測定機器では蛍光が検出可能であるが、肉眼的に観察することは不可能である。
【0008】
本発明者は、ウミシイタケルシフェラーゼと蛍光タンパク質を逆に配置し、蛍光タンパク質をN末端、ルシフェラーゼをC末端側に配置することで、ルシフェラーゼの最大吸収波長のピーク強度に対する蛍光タンパク質の最大吸収波長のピーク強度比を3倍以上に増大させ、さらにリンカーペプチドの最適化を行うことで、該ピーク強度比を4.38倍まで高めることに成功した。
【0009】
本発明者は、本発明のキメラタンパク質を用い、AcGFP、EGFP、RFPおよびEYFPで高効率の共鳴エネルギー移動が起こることを確認している。従って、本発明のシステムは、ウミシイタケルシフェラーゼと任意の蛍光タンパク質の組み合わせで機能することが明らかである。
【0010】
本リンカーを用いたBAF (BRET-based Auto-illuminated Fluorescent-protein)技術は
、これまで用いられていなかった蛍光タンパク質の利用法を提示するものである。
【0011】
本発明は、以下のキメラタンパク質、該キメラタンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含む発現ベクター、該ベクターを導入した形質転換体を提供するものである。
1. エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質をリンカーを介して連結してなる、エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質との間に視認可能なエネルギー移動が起こり得るキメラ蛋白質であって、前記エネルギー受容蛋白質が蛍光蛋白質であり、エネルギー発生蛋白質がウミシイタケルシフェラーゼであり、リンカーが8〜26個のアミノ酸からなり、エネルギー受容蛋白質がN末端側にあり、エネルギー発生蛋白質がC末端側にあり、かつ、BRET比(エネルギー受容蛋白質の発光極大波長の強度)/(エネルギー発生蛋白質の発光極大波長の強度)が3以上であるキメラ蛋白質。
2. 蛍光蛋白質が、GFP,YFP,BFP,CFP、DsREDまたはRFPである項1
に記載のキメラ蛋白質。
3. 蛍光蛋白質がYFPである、項1に記載のキメラ蛋白質。
4. リンカーが8〜16個のアミノ酸からなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
5. リンカーが10〜14個のアミノ酸からなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
6. リンカーが12個のアミノ酸からなる、項1に記載のキメラ蛋白質。
7. 項1〜6のいずれかに記載の分泌型又は膜結合型キメラ蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖。
8. 項7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
9. 項8に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
10. 項1〜6のいずれかに記載のキメラタンパク質の標識としての使用。
11. 抗原、抗体、酵素、DNA、RNA、タンパク質、糖鎖、細胞または受容体を認識可能なリガンドなどの物質を標識するための項10に記載の使用。
12. 項8に記載のベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、該形質転換体にウミシイタケルシフェリンを適用し、該キメラタンパク質からのBRETによる発光を検出することを特徴とする、形質転換体のイメージング方法。
13. 形質転換体が、原核生物細胞、真核細胞、組織、臓器、動物又は植物である、項12に記載の方法。
14. 形質転換体が、哺乳動物細胞である、項12に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明による自己完結型キメラタンパク質は、外部励起光を用いずにルシフェリンのみで、蛍光タンパク質本来の蛍光に近い発光を視認可能レベルの明るさで実現することができる。
【0013】
また、本発明のキメラタンパク質は、培養細胞あるいは動物あるいは植物で発現させて
、ルシフェリンの存在下に光らせることができる。
【0014】
本発明によるキメラタンパク質は、リンカー配列だけではなく、そのN末端或いは、C末端に任意のタンパク質を融合させることによっても、BRETスペクトルを変化させることが可能である。本発明のキメラタンパク質の立体構造に負の影響を与える(即ちBRET効率を下げる)付加的なタンパク質を融合し、その間の第2のリンカー配列を切断することで、損なわれていたBRETを回復することも可能である。
【0015】
本発明のキメラタンパク質は、ウミシイタケルシフェラーゼ単独よりも強い発光を示し、より優れたレポータータンパク質である。従って、従来のウミシイタケルシフェラーゼ標識に代えて本発明のキメラタンパク質を用いることで、より優れた酵素標識を提供できる。例えば本発明のキメラタンパク質を抗体(例えば二次抗体)と連結することで、ELISAなどの酵素免疫測定法において、より高感度に測定することが可能である。また、核、小胞体、リボゾームなどの細胞内の各エレメント、或いはこれらのエレメント間のタンパク質などの標識物質の移動を明瞭にイメージングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のキメラ蛋白質は、分子内のエネルギー移動により視認可能なレベルの蛍光が得られる特徴を有する。分子内のエネルギー移動とは、エネルギー発生蛋白質(ウミシイタケルシフェラーゼ)から放出される光エネルギーとエネルギー受容蛋白質(蛍光蛋白質)との間にエネルギー移動が起こることを意味し、エネルギー移動の結果、外部から光を与えなくても視認可能なレベルの蛍光を発する点に特徴を有し、これによりエネルギー移動の程度を定量することができる。
【0017】
本発明のキメラ蛋白質が分泌性であれば、細胞外にルシフェリンを与えることによりその存在を蛍光により容易に検出可能である。キメラ蛋白質が細胞内に局在する場合、ルシフェリンを細胞内に透過させるか、細胞破砕液を用いることで、同様に検出可能である。
【0018】
GFPのような蛍光蛋白質のみでは、蛍光による定性分析は可能であるが、外部からの励起光により蛍光を発するため定量することはできない。一方、本発明のキメラ蛋白質ではウミシイタケルシフェラーゼからの励起光により蛍光蛋白質から蛍光を発するので、キメラ蛋白質の各修飾体(リンカーペプチドにおける切断、BTBドメインやATF6など
による修飾等)をその蛍光波長のシフトに基づき各々定量することが可能である。
本発明において、リンカーは、ウミシイタケルシフェラーゼから蛍光蛋白質への光エネルギーの移動を妨げないものであれば特に限定されない。リンカーのアミノ酸の数は、通常8〜26個、好ましくは8〜16個、より好ましくは10〜14個、特に12個である。リンカーのアミノ酸数が7個以下或いは27個以上になるとエネルギー移動効率は大きく低下する。
リンカーでは、アミノ酸の数が特に重要であり、アミノ酸配列はあまり重要ではない。
本発明者が使用した18種類のリンカーのアミノ酸配列を以下に列挙する。これらのリンカーは、いずれも視認可能な蛍光を発するキメラタンパク質を得るのに有用である。
以下の表1から明らかなように、リンカーのアミノ酸数は8から12が好ましく、12が特に好ましい。
【0019】
【表1】
【0020】
上記表1に示されるように、本発明のキメラタンパク質は、いずれも従来(即ち(アク
セプターの発光極大波長での光強度)/(ドナーの発光極大波長での光強度)比率の最大
値=約1)よりも高い値を示す。蛍光タンパク質とRlucをこの方向で、8-26アミノ酸残基から成るリンカーで接続すると、従来よりも著しく高い効率のBRETが起こるという知見は、本発明により初めて見出された。
【0021】
本明細書において、ウミシイタケルシフェラーゼとしては天然のウミシイタケルシフェラーゼ(例えばRluc)を使用してもよく、安定性や発光特性などの性質が改善されたウミシイタケルシフェラーゼ(例えばRluc8、Rluc8/A123S/D162E/I163L)を使用してもよい。本明細書において、「ウミシイタケルシフェラーゼ」は、天然型のウミシイタケルシフェラーゼとルシフェラーゼの特性を変化させた任意の改変型ウミシイタケルシフェラーゼの両者を含むものである。
【0022】
蛍光蛋白質としては、グリーン蛍光蛋白質(GFP),黄色蛍光蛋白質(YFP),青色蛍光
蛋白質(BFP),シアン蛍光蛋白質(CFP)、DsRED、赤色蛍光蛋白質(RFP)な
どが例示される。なお、GFPには、EGFP、AcGFPなどの種々のGFP誘導体が含まれる。YFPについても、EYFP、Topaz、Venus、Citrineなどのアミノ酸置換した変異体が広く含
まれる。他の蛍光タンパク質についても同様に、天然の蛍光蛋白質や、アミノ酸配列を改変(置換、付加、欠失、挿入など)した変異体が広く含まれる。蛍光蛋白質として、pHに依存してRLUないし波長が変化するもの(例えばYFPなど)を使用すれば、これら蛍光蛋白質の存在する場所のpHを測定することができ、本発明のキメラ蛋白質はpHインジケータとして使用することができる。また、GFPなどのpHによりRLUないし波長があまり変化しないものは、pHに依存することなく、本発明のキメラ蛋白質あるいはそれにより標識された蛋白質等の物質を定量等することができる。
【0023】
本発明の蛍光蛋白質は、ウミシイタケルシフェラーゼから放出される光が蛍光蛋白質の励起波長になるように選択される。このような組み合わせとしては、例えば以下のものが挙げられる。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。該ポリヌクレオチドにNLS(核移行シグナル)を連結すれば、キメラタンパク質
は核に移行し、核のイメージングを行うことができる。
【0026】
本発明のタンパクは,後述する本発明の遺伝子を発現ベクターに組み込み,適当な宿主細胞内で発現させることにより得ることができる。宿主細胞としては哺乳動物細胞を含む動物細胞、植物細胞、酵母などの真核生物細胞、大腸菌、枯草菌、藻類、真菌類などの原核生物細胞、植物細胞が挙げられ、そのいずれを用いてもよい。好ましい宿主細胞としては、哺乳動物培養細胞などを用いることができる。
【0027】
実施例のデータ(図3b)に示すように、本発明による自己完結型蛍光タンパク質は、外部励起光を用いずにルシフェリンのみで、蛍光タンパク質本来の蛍光に近い発光を視認可能レベルの明るさで実現する。これまでにBRETを利用して蛍光タンパク質を光らせ、色調の変化として示した成功例はなく、その意味ではルシフェリンで蛍光タンパク質を本来の蛍光と遜色ない程度に光らせることを実現したという点に本発明の特徴がある。
【0028】
ウミシイタケルシフェラーゼのルシフェリンであるセレンテラジンを用いた発光反応は、ホタルルシフェラーゼなどと違い、ATPは不要でルシフェラーゼと酸素分子さえあれば
発光可能である。セレンテラジンは、天然の生物にも包含され、それ自体抗酸化作用を有する化合物であり、強い細胞毒性などは有していない。即ちルシフェリンさえあれば、通常環境で自在に光らせることが出来る。
【0029】
本発明キメラタンパク質の特徴の一つは、安定で取り扱いが容易である点である。本発明のキメラタンパク質は、アミノ酸のみからなり、培養細胞あるいは動物あるいは植物で発現させて、ルシフェリンの存在下に光らせることができる。
【0030】
本発明によるキメラタンパク質は、リンカー配列だけではなく、そのN末端或いは、C末端に任意のタンパク質を融合させることによっても、BRETスペクトルを変化させることが可能である(図7のDRmmBTB-BAF-Y,図8のNLS-BAF-G-ATF6C参照)。本発明による自己完結型蛍光タンパク質の立体構造に負の影響を与える(即ちBRET効率を下げる)ような付加的なタンパク質を融合し、その間の第2のリンカー配列を切断することで、損なわれていたBRETを回復することも可能である。
【0031】
本発明のキメラ蛋白質は、ルシフェラーゼあるいは蛍光たんぱく質よりも強い光を発するため、従来のルシフェラーゼ或いは蛍光蛋白質の代わりに使用することができる。例えば、本発明のキメラ蛋白質をコードする遺伝子を標的プロモーターに連結してプロモーターアッセイを行うことができる。また、本発明のキメラ蛋白質は、標識対象物質と連結することにより、任意の物質を標識することができる。標識対象物質としては、抗原、抗体、酵素、DNA、RNA、タンパク質(たとえば受容体、ホルモン、サイトカインなどの生体材
料を認識可能なタンパク質) 、糖鎖(たとえばシアリルルイスXなど)、細胞または受容体を認識可能なリガンドなどの物質(たとえばホルモン、サイトカイン、リンホカイン、プ
ロスタグランジンなど)などが挙げられる。被標識物質が蛋白質/ペプチドの場合には、
本発明のキメラ蛋白質を被標識蛋白質/ペプチドに直接または適当なスペーサーを介して結合させることができる。また、糖鎖の場合には、キメラ蛋白質と糖鎖をともにビオチン化し、ストレプトアビジンを介して結合させるなどの方法を採ることができる。本発明のキメラ蛋白質は、該キメラタンパク質をコードする遺伝子を宿主に導入し、発現させ、セレンテラジンの存在下に発光させることで、細胞のイメージングに使用することもできる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことはいうまでもない。
実施例1
(1)プラスミドの作製
BAF-Y発現ベクターを作製するために、hRlucをコードする遺伝子をPCRにより増幅した
。PCRに用いられたプライマーは次の通りである:
hRL-F1, 5’-GAGCAGCTGTACAAGCATATGGCTTCCAAGGTGTACGACCCCGAG-3’(配列番号1);
hRL-R1, 5’-GCTCTAGATCACTGCTCGTTCTTCAGCACGCGCTCCAC-3’(配列番号2)。PCR断片は、BsrGIとXbaIで消化され、pEYFPのBsrGI/XbaI部位へ組み込まれ、pEYFP-Rlucが構築された。このプラスミドは、BsrGIとNdeI部位に任意のオリゴDNAをリンカー配列として挿入できる。pBAF-Y構築のために、pEYFP-RlucのBsrGI/NdeI部位に以下のオリゴDNA断片を挿入し
た:
BRET-tag12 a.a. sense, 5’- GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列
番号3);BRET-tag 12 a.a. antisense 5’- TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT
-3’(配列番号4)。BAF-Yのリンカー配列への1アミノ酸置換変異体作製のために、以下に示す幾つかのオリゴDNA断片が用いられた:
S239A-F, 5’-GTACAAGGCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号5);
S239A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGCCTT3’ (配列番号6);
G240A-F, 5’-GTACAAGTCGGCGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号7);
G240A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCGCCGACTT-3’ (配列番号8); L241A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号9); L241A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’ (配列番号10); R242A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGGCGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号11); R242A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCGCCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号12); S243A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGGCCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号13); S243A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGGCCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号14); R244A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号15); R244A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号16); Q246A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’ (配列
番号17); Q246A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号18);
L248A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGGCGGCGAC-3’ (配列番号19); L248A-R, 5’-TAGTCGCCGCCGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号20); H250A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGGC-3’ (配列番号21); H250A-R, 5’-TAGCCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号22)。
それぞれのオリゴDNAのペアはアニールされ、pEYFP-RlucのBsrGI/NdeI部位に挿入された
。
【0033】
大腸菌の発現プラスミドを作製するため、Rluc、BAF-YおよびBAF-Y変異体をコードする遺伝子を以下に示すプライマーにより、PCRにより増幅した。個々のPCR断片はpCold-TF DNAのNdeI-XbaI部位にサブクローニングされ、pCT-hRL,、pCT-BAF-Yおよび pCT-BAF-YR244
Aを得た。
PCRに使われたプライマーは、以下に示す通りである:
TFEGFP-F, GTCGCCCATATGGTGAGCAAGGGCGAGGAGC-3’ (配列番号23);
TFhRL-F, 5’-CCGCTCGAGGCTAGCATGGCTTCCAAGGTGTACGACCCCGAG-3’ (配列番号24); TFhRL-R, 5’-GTTATCTAGAATTACTGCTCGTTCTTCAGCACGC-3’ (配列番号25)。
【0034】
(2)リコンビナントタンパク質の調製
リコンビナントRluc、BAF-YR244A、および派生変異タンパク質はTFタグ融合タンパク質として大腸菌BL21株において低温ショック誘導性プロモーターシステムにより合成された。リコンビナントタンパク質はNi-NTAアフィニティーカラムで精製され、BCAタンパク質
定量キットで、定量された。精製タンパク質はHRV-3Cプロテアーゼで限定分解され、成熟リコンビナントタンパク質が得られた。
【0035】
(3)細胞培養およびトランスフェクション
HeLa細胞およびNIH3T3細胞は10%ウシ胎仔血清が添加されたダルベッコモディファイドイーグル培地(DMEM)で37℃に維持された。細胞はトランスフェクションの1日前に6ウ
ェルプレートに1ウェルあたり4-6x105細胞で撒かれた。トランジェントトランスフェクションはHeLa細胞に対してはリポフェクトアミン2000試薬を、NIH3T3細胞に対してはリポフェクトアミンプラス試薬を用いて行われた。トランスフェクション後30時間で、細胞は2 ml PBSで洗われた後、細胞はPassive lysis bufferで抽出された。
【0036】
(4)スペクトル測定
スペクトル測定はAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)を用いて行われた。測定
は、トランスフェクトされた細胞の抽出液あるいはリコンビナントタンパク質40μlに基
質として1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることで行われた。基質添加後直ちに以
下の条件で生物発光スペクトルが測定された。即ち、細胞抽出液に対しては、0.5 mmのスリット幅で3秒間、リコンビナントタンパク質に対しては、0.25 mmのスリット幅で20秒
間の測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性を補正され、極大波長の値
を1として標準化された。
【0037】
(5)定量的生物発光量測定
等モルのリコンビナントタンパク質は、Rlucアッセイバッファー(500 mM NaCl, 50 mM
Tris-HCl (pH 8.0), 1.0 mM EDTA, 1 mg/ml bovine gelatin, 0.02% Azide)で希釈された。発光量はLuminescencer-MCA (アトー)を用いて、10秒間の積算により行われた。
【0038】
(6)共焦点顕微鏡観察
HeLa細胞はRluc-EYFPあるいはBAF-Yをコードする発現ベクターをトランスフェクトされ、9時間後、トリプシン処理により剥がされ、ガラスベースディッシュに撒き直された。
トランスフェクション30時間後に、生きた細胞の蛍光画像が、共焦点顕微鏡(RT2000; Bio-Rad Laboratories)を用いて撮影された。
【0039】
(7)In vivo BRETスペクトルの測定
BAF-YR244Aの発現プラスミドがNIH3T3細胞にトランスフェクトされ、30時間後に細胞はPBSで2回洗浄された。終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen(プロメガ)が添加
され、直ちに培養ディッシュごと生きた細胞内でのスペクトルが、AB1850スペクトロフォトメーター (アトー)で測定された。
【0040】
(8)BAFタンパク質を用いたIn vivo 1細胞イメージング
BAF-YR244A,、NLS-BAF-Y およびNLS-BAF-Y-NESをコードする発現プラスミドをNIH3T3細胞へ導入した。トランスフェクション10時間後に、細胞はトリプシン処理により剥がされ
、ガラスベースディッシュに撒き直された。トランスフェクション後30時間で培地をフェノールレッドフリーの培地に交換し、終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen(プ
ロメガ)が添加された。細胞はその後、AB3000B Cellgraph (アトー)を用いて観察された。
【0041】
(9)高効率生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)によるBAF-Y (BRET-based Auto-illuminated Fluorescent protein on EYFP)の創製(図1)。
a. Rluc(ウミシイタケルシフェラーゼ)とEYFPから成る人工融合タンパク質の模式図。SGLRSRAQALATがリンカーペプチドである。
b. Rluc、Rluc-EYFP、およびBAF-YをHeLa細胞で発現させ、得られた細胞抽出液にRlucの
ルシフェリンであるセレンテラジンを添加した際の発光スペクトル。Rluc(青線)のスペクトルが、BAF-Y分子内でのRlucとEYFPの間で起こる共鳴エネルギー移動により、EYFPの
発光スペクトルに近いスペクトルに変化する。Rluc-EYFPは対照で、高効率の共鳴エネル
ギー移動が起こるためには、12アミノ酸残基から成るリンカーペプチド配列でEYFP-Rluc
の順序で連結させることが重要である。BRETの効率を評価する指標として、BRET 比率を
(スペクトルの525 nm(EYFPの発光極大波長)の値)/(スペクトルの480 nm(Rlucの発
光極大波長)の値)で表す(従来の最高値は1, Otsuji et al.)と、Rluc-EYFPは1.06、BAF-Yは3.32である。
c. Rluc-EYFPとBAF−Yの細胞内局在性。9 nm以下或いは60 kD以下のタンパク質は細胞内
で受動拡散により、核内に分布することに着目し、両タンパク質(Rluc-EYFP、BAF-Y共に同一アミノ酸組成で推定分子量は64 kDa)の細胞内局在性を共焦点顕微鏡で観察した。共に核にも分布することから、見かけの大きさは、予想よりも小さいことが推察される。同時に高効率の共鳴エネルギー移動が起こるためには、EYFPとRlucの相対的配向性が重要である。
【0042】
(10)Alaスキャニングによるより高効率のBAF-Y変異体の探索(図2)
a. リンカーペプチド内にAla置換により、変異を導入し、図1と同様にスペクトルの測定
を行った結果を表す。リンカーペプチドをSGLRSAAQALATとした時(BAF-YR244A)にBRET比率は最大4.38を示した(N=5)。
b. BAF-YR244Aの発光スペクトル。480 nmの肩が低くなり、525 nmのEYFPの発光スペクトルが優位になっている。
【0043】
(11)大腸菌での組換えタンパク質を作製した際のBAF-YR244Aの特性(図3)。
a. 低温誘導性プロモーターでの発現系を用いて、組換えタンパク質を作製した。タンパ
ク質のフォールディングを高めるために、大腸菌内シャペロン(Trigger-Factor (TF))と
の融合タンパク質として作製し、精製後、配列特異的プロテアーゼで切断し、成熟タンパク質を得た。実施例はTFタグの混合溶液で行った(成熟タンパク質の安定化と後で述べるタンパク質量補正のためにTFタグ部分を利用した)。
b. Rluc、BAF-GR244A、BAF-YR244Aの成熟組換えタンパク質溶液にセレンテラジンを添加
後の発光の様子をデジタルカメラで撮影した。Rluc単独では青色発光であるが、BAF-GR244AではEGFP本来の緑色に近い発光を、BAF-YR244AではEYFP本来の黄緑色に近い発光を示した。これは、外部励起光および、励起光遮断のための光学フィルターを用いずに、その代わりにセレンテラジンを用いて蛍光タンパク質を本来の発光色に近い色で発光させた世界で初めての例である。
c. TF-タグ部分(それぞれの組換えタンパク質で共通)で、量的補正を行った。計算上、4 pmolesのタンパク質をSDS-PAGEで分離後、CBB染色を施した。レーン1;Rluc、レーン
2;BAF-YR244A。
d. 4 pmolesの組換えタンパク質に100 pmolesのセレンテラジンを加えて、定量性がある
測定条件で、発光スペクトルを測定した。発光量はスペクトルの積算値、即ち各スペクトルが囲む面積として評価すると、BAF-YR244AはRlucの約4倍明るくなっていた(N=5)。
【0044】
(12)BAF-YR244Aの定量的直線性をRlucと比較(図4)。
等モルの組換えタンパク質を10倍ごとに段階希釈し、マルチカラールミノメーター(ATTO)を用いて、発光量(10秒間の積算)で測定した。
a. フィルター無しの測定結果(10秒間の積算)。
b. 560 nmより長波長域の光を透過させるロングパスフィルターを用いた時の測定結果(10秒間の積算)。共に測定回数は3回で、各測定ポイントの平均値をプロットし、標準偏差を誤差棒として示したが、シンボルに隠れて見えていない。
共に全ての測定ポイントでBAF-YR244AがRluc より発光量が高く、少なくとも6桁の濃度範囲で定量的直線性を示した。特にRlucの定量限界付近で、明るいことにより、より確かな定量性を示した。
【0045】
(13)BAF-Yを用いた1細胞レベルでのIn vivo BRETイメージング(図5)。
a. BAF-YR244A分子内の共鳴エネルギー移動が生細胞内の生理的環境で起こることの確認
。BAF-YR244AをNIH3T3細胞に導入し、充分発現させた後、セレンテラジン誘導体(ViviRen、プロメガ)を添加し、生細胞内で起こる共鳴エネルギー移動をBRETスペクトルとして
測定した。試験管内とほぼ同様の高効率BRETを生細胞内でも確認した。
b. ViviRen を添加後のBAF-Y変異体を発現させたNIH3T3細胞の1細胞BRET-イメージング。細胞内局在性が異なる3種のBAF-Y変異体をNIH3T3細胞に導入し、ViviRenを添加して、ルシフェリンールシフェラーゼ反応を利用した蛍光タンパク質のイメージングを試みた。515 nmよりも長波長域の光を透過するロングパスフィルターを用いた際にも、フィルター無しの時と遜色ない、細胞イメージングに成功した。これも外部励起光を用いずにルシフェリンのみで蛍光タンパク質を光らせ、1細胞レベルでのイメージングに成功した世界初の
事例である。
(14)ウミシイタケルシフェラーゼとウミシイタケGFP の間でのBRETのスペクトルを示す(図6)。
(15)高効率BRETの回復、付加データ1(図7)
BAF-YのN端にダイマーを形成するようなドメイン(この場合BTBドメイン)を融合するこ
とにより、BAF-Yタンパク質の立体障害ストレスが生じ、BRET効率の低下が観測される。
第二のリンカー部に適当なプロテアーゼ切断配列などを挿入することで、プロテアーゼで切断された際に、高効率BRETの回復が期待できる(In vitro & In vivo)。
【0046】
(16)高効率BRETの回復、付加データ2(図8)
NLS-BAF-GのC端にATF6のC末部分(ATF6-C)を融合すると、培養細胞内では、BRET効率の
著しい低下が認められる。恐らく、ATF6が小胞体膜に組み込まれることによる立体構造的ストレスによるものと考えられる。第二のリンカー部での切断(例えばCaspase)が起こ
ると高効率BRETが回復して、青色から緑色への発光色変化が起こり、且つNLS-BAF-G部分
の小胞体膜から核への移行が期待される(In vivo)。
【0047】
実施例2
以下において、「BAF-YR244A」を単に「BAF-Y」と記載する
(1)pH依存的なBAF-Yのスペクトル測定
測定バッファーは、pH 6.3, pH 6.6, pH 6.9, pH 7.2, pH 7.5, pH 7.8, およびpH 8.1に調整した150 mM BIS-TRIS-propane, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA水溶液を用いた。それぞ
れのpHに調整したバッファー39 μlに各リコンビナントタンパク質溶液1 μlを加え、均
一な溶液とした。これに100 μMのセレンテラジン溶液を1.5 μl加え、直ちにAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)にて、スリット幅0.25 mm、3秒間の露光条件にて、スペ
クトルの測定を行った。結果を図9に示す。
【0048】
(2)塩濃度依存的なBAF-Yのスペクトル測定
測定バッファーは、0 mM NaCl、35 mM NaCl、および300 mM NaClを含む、50 mM Tris-HCl (pH 8.0)水溶液を用いた。それぞれの塩濃度に調整した測定バッファー40 μlに各リ
コンビナントタンパク質溶液1 μlを加え、均一な溶液とした。これに100 μMのセレンテラジン溶液を1 μl加え、直ちにAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)にて、スリット幅0.25 mm、1秒間の露光条件にて、スペクトルの測定を行った。Rlucについての結果を図10a に、BAF-Yについての結果を図10bに各々示す。
【0049】
(3)プラスミドの作製
既に報告されている8個の点突然変異(A55T, C124A, S130A, K136R, A143M, M185V, M253L, S287L)を導入したRluc変異体(Rluc8)(A. M.Loening et al., Protein Engineering, Design and Selection vol.19 no.9 pp.391-400 (2006))を作製するために, Rlucに8個の1アミノ酸置換変異を導入した。部位特異的置換変異導入はQuickChange II XL Kit
(STRATAGENE)を用いて行われた。8箇所の部位特異的置換変異導入に用いられたプライマーは以下の通りである。
(1)A55T アミノ酸置換のプライマーセット
RlucA55T sence, CTGCATGGTAACGCTACCTCCAGCTACCTGT (配列番号43)と
RlucA55T antisense, ACAGGTAGCTGGAGGTAGCGTTACCATGCAG (配列番号44);
(2)C124Aアミノ酸置換のプライマーセット
RlucC124A sense, GTGGGCCACGACTGGGGGGCTGCTCTGGCCTTTCACTACTCCTA (配列番号45)と
RlucC124A antisense, TAGGAGTAGTGAAAGGCCAGAGCAGCCCCCCAGTCGTGGCCCAC (配列番号46);
(3)S130Aアミノ酸置換のプライマーセット
RlucS130A sense, CTGGCCTTTCACTACACCTACGAGCACCAAG (配列番号47)と
RlucS130A antisense, CTTGGTGCTCGTAGGTGTAGTGAAAGGCCAG (配列番号48);
(4)K136Rアミノ酸置換のプライマーセット
RlucK136R sense, ACGAGCACCAAGACAGGATCAAGGCCATCGT (配列番号49)と
RlucK136R antisense, ACGATGGCCTTGATCCTGTCTTGGTGCTCGT (配列番号50);
(5)A143Mアミノ酸置換のプライマーセット
RlucA143Msense, AGGATCAAGGCCATCGTCCACATGGAGAGTGTCGTGGACGTGATC (配列番号51)と
RlucA143M antisense, GATCACGTCCACGACACTCTCCATGTGGACGATGGCCTTGATCCT (配列番号52);(6)M185Vアミノ酸置換のプライマーセット
RlucM185V sense, CTTCTTCGTCGAGACCGTGCTCCCAAGCAAGAT (配列番号53)と
RlucM185V antisense, ATCTTGCTTGGGAGCACGGTCTCGACGAAGAAG (配列番号54);
(7)M253Lアミノ酸置換のプライマーセット
RlucM253L sense, GACGATCTGCCTAAGCTGTTCATCGAGTCCG (配列番号55)と
RlucM253L antisense, CGGACTCGATGAACAGCTTAGGCAGATCGTC (配列番号56);
(8) S287Lアミノ酸置換のプライマーセット
RlucS287L sense, AAGGTGAAGGGCCTCCACTTCCTCCAGGAGGACGCTCCAGATGA (配列番号57)と
RlucS287L antisense, TCATCTGGAGCGTCCTCCTGGAGGAAGTGGAGGCCCTTCACCTT (配列番号58)。
【0050】
各々の1アミノ酸置換変異を導入されたクローンはシークエンス解析により塩基配列を確かめた。この操作を連続して繰り返すことにより8箇所に1アミノ酸置換変異を有するpCMV-EYFP-Rluc8を構築した。 pCMV-EYFP-Rluc と pCMV-EYFP-Rluc8 は EYFP をコードする領域を除くため、AgeI及びNdeIで消化され、DNA末端を平滑化した後、 セルフライゲーションによりpCMV-Rluc及びpCMV-Rluc8を得た。R244A oligo DNAペア(R244A-F, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’ (配列番号15)と R244A-R, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’ (配列番号16)のアニーリングしたDNA断片)がpCMV-EYFP-Rluc8のBsrGI/NdeI部位に挿入されることにより、pCMV-eBAF-Y(eBAF-Y、enhanced BAF-Yの略)を得た。
【0051】
ヒストンH2AX-eBAF-Y 発現プラスミドを構築するために, ヒストンH2AX cDNA(GenBank
のアクセッション番号:NM_002105)をPCR反応により増幅した。PCR反応に用いられたプ
ライマーは以下である。N-H2AX-F-Xh, 5’-CCGACTCGAATGTCGGGCCGCGGCAAGAC-3’ (配列番号59); と N-H2AX-R-Hd3, GCCCAAGCTTCGTACTCCTGG GAGGCCTGGG-3’ (配列番号60)。 増幅されたPCR断片はXhoIとHindIIIで消化され、XhoI/HindIII-消化されたpCMV-eBAF-Yに挿入され、 pCMV-H2AX-eBAF-Yが構築された。eBAF-Y-H2AX発現プラスミドを構築するために, ヒストンH2AX cDNAをPCR反応により増幅した。PCR反応に用いられたプライマーは以下で
ある。C-H2AX-F-Kpn, 5’-CCGAGGTACCATGTCGGGCCGCGGCAAGAC-3’ (配列番号61)と C-H2AX-R-Bam, 5’-GGCGGAATCCTTAGTACTCCTGGGAGGCCT-3’ (配列番号62)である。増幅されたPCR断片はKpnIとBamHI HindIIIで消化され、KpnI/BamHI-消化されたpCMV-eBAF-Yに挿入され
、pCMV-eBAF-Y-H2AXが構築された。
【0052】
(4)細胞培養およびトランスフェクション
HeLa細胞(発光強度比較実験)またはNIH3T3細胞(発光の短期間安定性評価実験)は10%ウシ胎仔血清が添加されたダルベッコモディファイドイーグル培地(DMEM)で37℃に維持された。細胞はトランスフェクションの1日前に6ウェルプレートに1ウェルあたり4-6x105細胞で撒かれた。トランジェントトランスフェクションはHeLa細胞に対してはリポ
フェクトアミン2000試薬を用いてNIH3T3細胞に対してはリポフェクトアミンプラス試薬を用いて行われた。トランスフェクションに用いられた各発現プラスミドは、Rluc(もしくはRluc8)cDNA部分で等モルになるように調整され、トランスフェクション効率の補正の
ため、内部標準として北米産ホタルルシフェラーゼの発現プラスミドとコトランスフェクションされた。トランスフェクション後、30時間(発光強度比較実験)24時間、48時間、及び72時間の各タイムポイントで(発光の短期間安定性評価実験)、細胞は2 ml PBSで洗われた後、Passive lysis bufferで抽出された。
・発光強度比較実験
各抽出液はルミノメーターでホタルルシフェラーゼの発光活性を測定した後、各抽出液のスペクトル測定はAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)を用いて行われた。測定は
、トランスフェクトされた細胞の抽出液40μlに基質として1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることで行われた。基質添加後直ちに以下の条件で生物発光スペクトルが測定された。即ち、細胞抽出液に対しては、0.25 mmのスリット幅で3秒間、リコンビナントタ
ンパク質に対しては、0.25 mmのスリット幅で20秒間の測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性を補正された。各サンプルについて独立4回の測定が行われた。各
データはホタルルシフェラーゼの活性により、トランスフェクション効率の補正が施された。
・ 発光の短期間安定性評価実験
各抽出液はルミノメーターでホタルルシフェラーゼの発光活性を測定した後、続いてセレンテラジン発光溶液を加えることで行われた。実験は独立3回行われた。各データはホタ
ルルシフェラーゼの活性により、トランスフェクション効率の補正が施された。
【0053】
結果を図11に示す。
【0054】
(5)In vivo BRETスペクトルの測定
eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yの発現プラスミドがNIH3T3細胞にトランスフェクトされ、30時間後に細胞はPBSで2回洗浄された。終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen
(プロメガ)が添加され、直ちに培養ディッシュごと生きた細胞内でのスペクトルが、AB1850スペクトロフォトメーター (アトー)で測定された。
【0055】
BAFタンパク質を用いたIn vivo 1細胞イメージング
eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yをコードする発現プラスミドをNIH3T3細胞へ導入した。トランスフェクション10時間後に、細胞はトリプシン処理により剥がされ、ガラスベースディッシュに撒き直された。トランスフェクション後30時間で培地をフェノールレッドフ
リーの培地に交換し、終濃度60 μMのセレンテラジン誘導体ViviRen(プロメガ)が添加
された。細胞はその後、40xレンズが取り付けられたAB3000B Cellgraph (アトー)を用いて10秒間の露光条件により1分間隔で観察された。結果を図12に示す。
実施例3
プラスミドの作製
既に報告されているRLucの変異体(RLuc8/A123S/D162E/I163L及びRLuc8.6-532)(A.M.Loening rt al., Nature Methods, vol.4 no.8 pp.641-643 (2007))を作製するためRLucに3もしくは4個の1アミノ酸置換変異を導入した。部位特異的置換変異導入はQuickChange
II XL Kit (STRATAGENE)を用いて行われた。
・eBAF-YへのRLuc8/A123S/D162E/I163L変異の導入
eBAF-Y(BAF-YのRLuc部分をRLuc8に置換した変異体、enhanced BAF-Yの略)のRLuc8部分
に更にA123S及びD162E/I163Lの変異を二段階で導入した。変異導入に際して、用いたプライマーセットは以下である。
RLuc8A123S sense,
5’-GGCCACGACTGGGGGtCTgcTCTGGCCTTTCA-3’(配列番号63);
RLuc8A123S anti,
5’-TGAAAGGCCAGAgcAGaCCCCCAGTCGTGGCC-3’ (配列番号64);
RLuc8AD162E_I163L sense, 5’-GGCCTGACATCGAGGAGGAacTCGCCCTGATCAAGAGCGA-3’(配列番号65);
RLuc8AD162E_I163L anti, 5’-TCGCTCTTGATCAGGGCGAgtTCCTCCTCGATGTCAGGCC-3’(配列番
号66)
(小文字表記は変異導入部位)。
【0056】
尚、各ステップにおいて余分な変異等が生じていないことはDNAシーケンスを決定する
ことにより確認済みである。上記変異を導入されたプラスミド(pBAF-Y_m3)は、BsrGI
とNdeIで消化され、生じたBsrGI/NdeI部位に以下のオリゴDNA断片を挿入した。導入した
オリゴDNAの配列は以下である。
BRET-tag12 a.a. sense, 5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号67);
BRET-tag 12 a.a. antisense, 5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配
列番号68);
S239A-F,
5’-GTACAAGGCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号69);
S239A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGCCTT3’(配列番号70);
G240A-F,
5’-GTACAAGTCGGCGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号71);
G240A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCGCCGACTT-3’(配列番号72);
L241A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号73);
L241A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’(配列番号74);
R242A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGGCGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号75);
R242A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCGCCAGCCCCGACTT-3’(配列番号76);
S243A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGGCCAGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号77);
S243A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCTGGCCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号78);
R244A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号79);
R244A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号80);
Q246A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号81);
Q246A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号82);
L248A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGGCGGCGAC-3’(配列番号83);
L248A-R,
5’-TAGTCGCCGCCGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号84);
T250A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCAGGGCGCAGGCGTTGGCGGC-3’(配列番号85);
T250A-R,
5’-TAGCCGCCAACGCCTGCGCCCTGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号86);
L241R244A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCGCGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号87);
L241R244A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCGCGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’ (配列番号88);
R244Q246A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGCGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号89);
R244Q246A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCGCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号90);
L241R244Q246A-F,
5’-GTACAAGTCGGGGGCGCGGAGCGCGGCGGCGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号91);
L241R244Q246A-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCGCCGCCGCGCTCCGCGCCCCCGACTT-3’(配列番号92);
R244G-F,
5’-GTACAAGTCGGGGCTGCGGAGCGGGGCGCAGGCGTTGGCGAC-3’(配列番号93);
R244G-R,
5’-TAGTCGCCAACGCCTGCGCCCCGCTCCGCAGCCCCGACTT-3’(配列番号94);
all-A-F,
5’-GTACAAGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGCGGC-3’(配列番号95);
all-A-R,
5’-TAGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCGCCTT-3’(配列番号96)。
【0057】
それぞれのオリゴDNAのペアはアニールされ、上記プラスミドのBsrGI/NdeI部位に挿入
された(改良された新しいBAF-Yの作製、実施例として例示したのは、L241R244Q246Aの配
列であるが、上記試した全てのリンカーで480 nmのスペクトルの肩は解消している;図13、図14)。
・ eBAF-R1の作製
TurboRFP(EVROGEN社)のアミノ酸配列を変えずに内因性のBsrGI部位を潰し、新たにBsrGI部位を生成するために、置換変異を導入した(pTurboRFP’-C)。変異導入に際して、用いたプライマーセットは以下である。
TurboRFPΔBsrGI-F,
5’-CATGCACATGAAGCTcTACATGGAGGGCACC-3’(配列番号97);
TurboRFPΔBsrGI-R,
5’-GGTGCCCTCCATGTAgAGCTTCATGTGCATG-3’(配列番号98);
TurboRFP+BsrGI-F,
5’-GACCTCCCTAGCAAACTGGtGtACAGAGATGAATCCGGACT-3’(配列番号99);
TurboRFP+BsrGI-R,
5’-AGTCCGGATTCATCTCTGTaCaCCAGTTTGCTAGGGAGGTC-3’(配列番号100)。
この置換変異を導入することにより、TurboRFPにG227V/H228Yの2アミノ酸置換が導入される。作製したpTurboRFP’-CをNheI及びBsrGIで消化し、TurboRFPcDNAを取得した。これ
をpeBAF-YのNheI/BsrGI部位に挿入し、蛍光タンパク質部分をEYFPからRFPに置換した(peBAF-TgR)。これをBsrGIとNdeIで消化し、これに前項のオリゴDANペアを導入し、スペク
トルを検討した。R244Q246Aをリンカーとした際に最もBRET効率が高く、これをpeBAF-R1
とした(図15)。
【0058】
・eBAF-YへのRLuc8/A123S/D162E/I163L/V185L(RLuc8.6-532)変異の導入
前述のRLuc8/A123S/D162E/I163Lを導入したBAF-Yプラスミド・pBAF-Y_m3にV185L変異を
導入した。変異導入に際して、用いたプライマーセットは以下である。
RLuc8V185L sense,
5’-TTCTTCGTCGAGACCcTGCTCCCAAGCAAGA-3’(配列番号101);
RLuc8V185L anti,
5’-TCTTGCTTGGGAGCAgGGTCTCGACGAAGAA-3’(配列番号102)。変異を導入したプラスミドをpeBAF-Y.6-532とした。
【0059】
・ eBAF-R2の作製
peBAF-Y.6-532をNheI及びBsrGIで消化し、EYFP cDNAを除去し、その代わりにTurboRFP’/NheI-BsrGI断片を挿入し、これをpeBAF-R2とした(図16)。
【0060】
細胞培養およびトランスフェクション
HeLa細胞およびNIH3T3細胞は10%ウシ胎仔血清が添加されたダルベッコモディファイドイーグル培地(DMEM)で37℃に維持された。細胞はトランスフェクションの1日前に6ウ
ェルプレートに1ウェルあたり4-6x105細胞で撒かれた。トランジェントトランスフェクションはHeLa細胞に対してはリポフェクトアミン2000試薬を、NIH3T3細胞に対してはリポフェクトアミンプラス試薬を用いて行われた。トランスフェクション後30時間で、細胞は2 ml PBSで洗われた後、細胞はPassive lysis bufferで抽出された。
【0061】
スペクトル測定
スペクトル測定はAB1850スペクトロフォトメーター (アトー)を用いて行われた。測定
は、トランスフェクトされた細胞の抽出液40μlに基質として1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることで行われた。基質添加後直ちに以下の条件で生物発光スペクトルが測定された。即ち、細胞抽出液に対しては、0.25 mmのスリット幅で3秒間もしくは20秒間の測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性を補正され、極大波長の値を1と
して標準化された(図13、図14、図15、図16)。
【0062】
・pDRmmBTB-Casp8-BAF-Yの作製
pDRmmBTB-HdS-BAF-YをHindIII及びSalIで消化し、HindIII/SalI部位に、以下のオリゴDNAペアを挿入した。
BTBHdCasp8Slsense,
5’-AGCTTCGAGCGGGCTGGAGACGGATGGGGTCGACTC-3’(配列番号103);
BTBHdCasp8Slanti,
5’-AGCTGAGTCGACCCCATCCGTCTCCAGCCCGCTCGA-3’(配列番号104)。
生じたプラスミドをpDRmmBTB-Casp8-BAF-Yとした。
【0063】
・pCII-DRmmBTB-Casp8-BAF-Yの作製
大腸菌の発現プラスミドを作製するため、pDRmmBTB-Casp8-BAF-Yをコードする遺伝子を以下に示すプライマーにより、PCRにより増幅した。得られたPCR断片はpCold-II DNA(TAKARA)のNdeI-XbaI部位にサブクローニングされ、pCII-DRmmBTB-Casp8-BAF-Yを得た。PCRに使われたプライマーは、以下に示す通りである:
DsRedmFwdColdTF-F,
5’-GTCGCCCATATGGACAACACCGAGGACGTCA-3’(配列番号105);
TFhRL-R,
5’-GTTATCTAGAATTACTGCTCGTTCTTCAGCACGC-3’(配列番号106)。
【0064】
リコンビナントタンパク質の調製
リコンビナントDRmmBTB-Casp8-BAF-Yは大腸菌BL21株において低温ショック誘導性プロ
モーターシステムにより合成された。リコンビナントタンパク質はNi-NTAアフィニティーカラムで精製され、成熟リコンビナントタンパク質が得られた(図17、図18)。
【0065】
リコンビナントタンパク質のIn vitro Caspase-8消化とスペクトル測定
大腸菌から精製されたリコンビナントタンパク質1x ICE standards buffer (100 mM Tris-HCl (pH 7.5), 10 % glycrol, 0.1 % CHAPS)で10倍希釈し、これにリコンビナントCaspase-8 (Calbiochem)を加え、30℃で加温した。十分時間反応後、反応液の一部をTE(10 mM Tris-HCl(pH 8.0), 1 mM EDTA)にて8倍希釈し、希釈液40μlに対して1μlの100 μMのセレンテラジンを加えることでスペクトル測定を行った。スペクトルの測定条件はslit幅0.25 mm、20℃で2秒間の露光測定である。全てのスペクトルはCCDカメラの光感受特性
を補正され、相対発光強度と極大波長の値を1とした標準化により評価された。また、反応液の一部はSDS-PAGEに供し、分子サイズで分離した後、クマッシー染色を施した。DRmmBTB-Casp8-BAF-Yは、Caspase-8で消化されて、DRmmBTB部分とBAF-Yに分離することにより、DRmmBTB部分によりなされていたBAF-YのBRETの阻害が解除され、標準化スペクトルでの480 nmの肩の相対的な減少(図17)及び発光量の増加(図18)が起こると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
これまでの蛍光タンパク質の利用は専ら励起光源に制約されており、研究分野以外では
殆ど利用されていない。また、強力な励起光源により蛍光タンパク質を励起させるため、蛍光タンパク質の蛍光検出のためには、特殊な光学フィルターを用いる必要がある。一方で、本発明によるキメラタンパク質は、蛍光タンパク質分子の極近傍で蛍光タンパク質を励起するのに適当な強度のエネルギーをピンポイントで照射するため、特殊な光学フィルターを用いる必要はない。即ち、ルシフェリン(特にセレンテラジン)と本発明による自己完結型蛍光タンパク質だけで実現可能な非常に単純なシステムである。これまで実現が全く想定されていなかった分野でのルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合による生物発光の応用の扉を開くものである。
【0067】
本発明のコアであるリンカー領域のアミノ酸配列を変えることで、BRETスペクトルパターンを変化させることができ、ルシフェラーゼと蛍光タンパク質の融合により、青色から黄緑色までの色調を任意に変化させられる「color tuning」技術として応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】高効率生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)によるBAF-Y (BRET-based Auto-illuminated Fluorescent protein on EYFP)の創製。
【図2】Alaスキャニングによるより高効率のBAF-Y変異体の探索。
【図3】大腸菌での組換えタンパク質を作製した際のBAF-YR244Aの特性。
【図4】BAF-YR244Aの定量的直線性をRlucとの比較。
【図5】BAF-Yを用いた1細胞レベルでのIn vivo BRETイメージング。
【図6】ウミシイタケルシフェラーゼとウミシイタケGFP の間でのBRETのスペクトルを示す。
【図7】高効率BRETの回復、付加データ1
【図8】高効率BRETの回復、付加データ2
【図9a】BAF-YにおけるBRETのpH依存性。(supplementary Fig.3a,3b)pH依存的なBAF-YのBRETスペクトルの変化(標準化スペクトル)。各スペクトルの発光極大波長の値を1として標準化したスペクトルでのBRET効率の変化を評価すると、pH 6.3からpH 8.1の間でRlucの標準化スペクトルのパターンには変化は見られないが、BAF-Yに関しては、非常に大きな変化が認められる。
【図9b】BAF-YにおけるBRETのpH依存性。(supplementary Fig.3a,3b)pH依存的なBAF-YのBRETスペクトルの変化(相対発光強度によるスペクトルの評価)。Rlucの発光強度は、pH 6.3からpH 7.2の間では、概ね一定レベルであるが、pH 7.5からpH 8.1にかけて、発光活性が低下する。BAF-Yに関しても、pHが高くなるにしたがい、480付近のRlucの発光極大の相対的割合が低下し、逆にEYFPの蛍光極大波長付近でのスペクトルがドミナントになる。これは酸性領域でのEYFPの蛍光不安定性と、pH依存的なRlucの発光活性のバランスの総和によるものと考えられる。このBAF-Y分子内で認められるBRETのpH依存性は、BAF-YがpHインジケーターとして応用できる可能性を示唆する。また、この性質はpHにより発光色を青色-黄緑色の間で変化させる技術としても応用可能である。
【図10a】BAF-YにおけるBRETの塩濃度依存性。(supplementary Fig.4)Rlucに関しては塩濃度増加による発光活性の上昇が認められるものの、標準化された発光スペクトルへの影響は見られない。塩によるタンパク質の安定化に依るものと考えられる。
【図10b】BAF-YにおけるBRETの塩濃度依存性。(supplementary Fig.4)BAF-Yに関してはRlucと同様に塩濃度増加による発光強度の亢進が認められる。一方で標準化されたBRETスペクトルおいて、軽微ではあるが、BRET効率の若干の低下が認められる。これは、Rlucが塩により安定化して上昇する発光活性とEYFPの[Cl-](塩化物イオン濃度)感受性の蛍光不安定性のバランスによるものと推察される。BAF-Yを生理活性インジケーター、あるいは生理活性プローブとして利用する際のバッファー組成を決定する上で重要な因子となる。
【図11】改良されたRluc変異体(RlucA55T/C124A/S130A/K136R/A143M/M185V/M253L/S287L, Rluc8)を導入したenhanced BAF-Y(eBAF-Y)の開発。(Fig.2)a. Loening AMらにより報告された、発光強度が改善された変異体・Rluc8をBAF-Y中のRlucの代わりに導入することにより、オリジナルRlucより発光強度を25倍以上増したBAF-Y変異体・enhanced BAF-Y(eBAF-Y)の作製に成功した。このことは将来的に更なるRlucの改善をBAF-Yの改良に応用可能であることを強く示唆する。b. eBAF-Yは、Rluc8以上に細胞内で安定に発現する。このことは、eBAF-YがRluc8よりも単に明るいだけではなく、安定に発光する点において利点となる。
【図12】(e)BAF-Yの生物発光タグとしての応用。(Fig.3)コアヒストンを構成するヒストン8量体の構成成分であるヒストンH2AのサブタイプであるヒストンH2AXとeBAF-Yの融合タンパク質、eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yを作製した。In vivo BRETスペクトルの測定により、eBAF-Yは、ヒストンH2AXのN末端、C末端の何れに融合しても、高効率BRETを維持することができる。また、in vivo BRETイメージングにおいて、eBAF-Y-H2AXおよびH2AX-eBAF-Yは共に核に局在し、H2AX本来の細胞内分布様式を再現することができる。よって(e)BAF-Yは生物発光タグとして、生物発光によりタンパク質の生細胞内での動態を可視化するツールとして用いることが可能である。
【図13】実施例3で得られたnew BAF-Yと、実施例2で得られたBAF-Yとの比較:new BAF-Y は、Rlucの代わりにRluc変異体(Rluc8/A123S/D162E/I163L)を用いたBAF-Yである。グラフには、リンカー配列がSGARSAAAALATの結果を示す。他に試した全てのリンカー(SGLRSRAH、SGLRSRAQALAT、AGLRSRAQALAT、SALRSRAQALAT、SGARSRAQALAT、SGLASRAQALAT、SGLRARAQALAT、SGLRSAAQALAT、SGLRSRAAALAT、SGLRSRAQAAAT、SGLRSRAQALAA、SGARSAAQALAT、SGARSAAAALAT、SGLRSGAQALAT、AAAAAAAAAAAA)でも実施例2のBAF-Yより、優れていた。new BAF-Y では、480nm付近のスペクトルの肩が解消されている。new BAF-Y の527nm/480nm値は7.46である。見かけ上のBRET効率が上昇することでEYFPの蛍光極大波長(527nm)と一致するようになった。
【図14】実施例3で得られたnew BAF-Y、オリジナルのRluc、従来のBAF-A(AcGFP -Rluc)、BAF-G(EGFP -Rluc)のスペクトルとの比較を示す。
【図15】赤色蛍光タンパク質(RFP)を用いたBAF-Rの結果:RFP(TurboRFP)とRluc8をこの順序でリンカー配列、SGLRSAAAALATで繋いだものである。Rluc8を用いているのでeBAF-R1と表記した。ドナーとアクセプターの最大波長の開きが91nmあり、高い分離能のBRETアッセイが可能であることが示された
【図16】赤色蛍光タンパク質(RFP)を用いたBAF-Rの結果。:RFP(TurboRFP)とRluc8.6-532をこの順序でリンカー配列、SGLRSRAHで繋いだものである。BRETでRFPの蛍光最大波長がドミナントになる1分子BRETタンパク質が得られた。
【図17】BAF-Yの応用技術(BRET阻害からの回復の実施例):付加データ1(図7)の具体的実施例で、標準化スペクトルを表す。DRmmBTBHdSBAF-YのBTBドメインとBAF-Yの間のスペースにASSGLETDGVDSASの配列を導入した。下線部のLETDはCaspase-8の特異的認識切断配列である。リコンビナントタンパク質を、試験管内で、リコンビナントCaspase-8と混ぜ、切断した結果である。BRET効率を下げている、DRmmBTB部分を切断することで、BRET効率が回復し(恐らく、BAF-Yへの立体構造の歪みが解消され)、それが480nm付近の肩が下がるという形で現れている。In setは、Caspase-8有り、無しでのリコンビナントタンパク質をSDS-PAGEで分離し、CBB染色を施したものである。Caspase-8による消化により、BAF-YとBRET阻害部分(DRmmBTB)に分解される。
【図18】BAF-Yの応用技術(BRET阻害からの回復の実施例):付加データ1(図7)の具体的実施例で、相対的発光強度スペクトルを表しています。BRETの阻害からの回復により、同一分子で相対発光強度がより増幅されることが示された。即ち、モニタリングしたい反応が起こることで、より発光強度が増すことが示された。
【0069】
尚、Rluc変異体(Rluc8/A123S/D162E/I163LおよびRluc8.6-532)は、何れもNature Methods, Vol.4, No.8, p641-643 (2007)で報告されたものを使用した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質をリンカーを介して連結してなる、エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質との間に視認可能なエネルギー移動が起こり得るキメラ蛋白質であって、前記エネルギー受容蛋白質が蛍光蛋白質であり、エネルギー発生蛋白質がウミシイタケルシフェラーゼであり、リンカーが8〜26個のアミノ酸からなり、エネルギー受容蛋白質がN末端側にあり、エネルギー発生蛋白質がC末端側にあり、かつ、BRET比(エネルギー受容蛋白質の発光極大波長の強度)/(エネルギー発生蛋白質の発光極大波長の強度)が3以上であるキメラ蛋白質。
【請求項2】
蛍光蛋白質が、GFP,YFP,BFP,CFP、DsREDまたはRFPである請求項1に
記載のキメラ蛋白質。
【請求項3】
蛍光蛋白質がYFPである、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項4】
リンカーが8〜16個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項5】
リンカーが10〜14個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項6】
リンカーが12個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の分泌型又は膜結合型キメラ蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のキメラタンパク質の標識としての使用。
【請求項11】
抗原、抗体、酵素、DNA、RNA、タンパク質、糖鎖、細胞または受容体を認識可能なリガンドなどの物質を標識するための請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項9に記載のベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、該形質転換体にウミシイタケルシフェリンを適用し、該キメラタンパク質からのBRETによる発光を検出することを特徴とする、形質転換体のイメージング方法。
【請求項13】
形質転換体が、原核生物細胞、真核細胞、組織、臓器、動物又は植物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
形質転換体が、哺乳動物細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項1】
エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質をリンカーを介して連結してなる、エネルギー受容蛋白質とエネルギー発生蛋白質との間に視認可能なエネルギー移動が起こり得るキメラ蛋白質であって、前記エネルギー受容蛋白質が蛍光蛋白質であり、エネルギー発生蛋白質がウミシイタケルシフェラーゼであり、リンカーが8〜26個のアミノ酸からなり、エネルギー受容蛋白質がN末端側にあり、エネルギー発生蛋白質がC末端側にあり、かつ、BRET比(エネルギー受容蛋白質の発光極大波長の強度)/(エネルギー発生蛋白質の発光極大波長の強度)が3以上であるキメラ蛋白質。
【請求項2】
蛍光蛋白質が、GFP,YFP,BFP,CFP、DsREDまたはRFPである請求項1に
記載のキメラ蛋白質。
【請求項3】
蛍光蛋白質がYFPである、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項4】
リンカーが8〜16個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項5】
リンカーが10〜14個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項6】
リンカーが12個のアミノ酸からなる、請求項1に記載のキメラ蛋白質。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の分泌型又は膜結合型キメラ蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたはその相補鎖。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項9】
請求項8に記載のベクターによって形質転換された形質転換体。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載のキメラタンパク質の標識としての使用。
【請求項11】
抗原、抗体、酵素、DNA、RNA、タンパク質、糖鎖、細胞または受容体を認識可能なリガンドなどの物質を標識するための請求項10に記載の使用。
【請求項12】
請求項9に記載のベクターを宿主に導入して形質転換体を作製し、該形質転換体にウミシイタケルシフェリンを適用し、該キメラタンパク質からのBRETによる発光を検出することを特徴とする、形質転換体のイメージング方法。
【請求項13】
形質転換体が、原核生物細胞、真核細胞、組織、臓器、動物又は植物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
形質転換体が、哺乳動物細胞である、請求項12に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−283959(P2008−283959A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267756(P2007−267756)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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