高いガラス転移温度または高分子量のコポリマーを有する治療用ポリマーナノ粒子組成物
本発明の開示内容は一部、特定のガラス転移温度を有するポリマーナノ粒子を含む医薬組成物に関する。本発明の他の態様は、かかるナノ粒子を製造する方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれが全体として参照により本明細書に援用される、2009年12月15日出願の米国特許出願第61/286,559号、2010年2月22日出願の米国特許出願第61/306,729号、2010年10月22日出願の米国特許出願第61/405,778号、2009年12月16日出願の米国特許出願第61/286,831号、および2009年12月16日出願の米国特許出願第61/286,897号への優先権を主張する。
【0002】
特定の薬物(例えば、特定の組織または特定の細胞型に標的化される、または特異的な患部組織には標的化されるが、正常な組織には標的化されない)を患者に送達する、または薬物の放出を制御するシステムは長い間、有益であると認められている。例えば、作用薬を含み、かつ特定の組織または細胞型、例えば特異的な患部組織に位置付けることができる療法は、治療の必要のない体の組織における薬物の量を低減することができる。これは、薬物の細胞毒性用量が、周囲の非癌性組織を死滅させることなく癌細胞に送達されることが望まれる、癌などの症状を治療する場合に特に重要である。さらに、かかる療法は、抗癌療法において一般的な、望ましくなく、時には生命にかかわる副作用を低減させるかもしれない。例えば、ナノ粒子療法は、サイズが小さいために、体内での認識を逃れ、例えば有効量の時間、安定に維持しながら、送達を標的化し、制御することが可能となる。
【0003】
かかる治療および/または放出制御および/または標的療法を提供する療法は、有効量の薬物も送達しなければならない。有利な送達特性を有するのに、ナノ粒子のサイズを十分に小さく維持しながら、各ナノ粒子と結合した適切な量の薬物を有するナノ粒子システムを製造することは難題である。例えば、多量の治療薬をナノ粒子にローディングすることが望まれると同時に、多量すぎる薬物ローディングが用いられたナノ粒子製剤は、実際の治療に使用するにはナノ粒子が大きすぎる。さらに、例えば治療薬の迅速または即時放出を実質的に制限するために、治療用ナノ粒子を安定な状態のままにすることが望ましい。
【0004】
したがって、癌などの疾患を治療するために、患者の副作用も低減しながら、治療的レベルの薬物を送達することができる、新規なナノ粒子製剤ならびにかかるナノ粒子および組成物を製造する方法が必要とされている。
概要
一態様において、本発明の開示内容は、ガラス転移温度約37〜約50℃を有する多数のナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液を提供する。治療薬は、ドセタキセルなどのタキサン剤とすることができる。疎水性部分は、例えばポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択することができる。親水性部分は、例えばポリ(エチレン)グリコールから選択することができる。ナノ粒子はさらに、ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含むことができる。
【0005】
一実施形態において、ガラス転移温度約37〜約38℃を有する、多数の迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。かかるナノ粒子は、生体外(in vitro)溶解試験において4時間の時点で治療薬の約70〜約100%を放出する。
【0006】
他の実施形態において、ガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性(moderate release)の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。かかる治療用ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50〜約70%を放出する。
【0007】
他の実施形態において、ガラス転移温度約42〜約50℃を有する、多数の徐放性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。かかるナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50%以下を放出する。
【0008】
一実施形態において、開示されるナノ粒子は、治療薬を約0.1〜約35重量%、または0.2〜約20重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を約0〜約75重量%、または約0〜約50重量%含むことができるる。他の実施形態において、コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約16kDaを有し、コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有する。一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は数平均分子量約8.5kDaを有する。他の実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は数平均分子量約75kDaを有する。
【0009】
一実施形態において、例えば、開示される水溶液中のナノ粒子のガラス転移温度は、約37〜約39℃、または約37〜約38℃である。他の実施形態において、ナノ粒子の水性懸濁液は約39〜約41℃であってもよく、または約42〜約50℃(例えば徐放性粒子については、例えば約41〜45℃)であり得るガラス転移温度を有していてもよい。ガラス転移温度は、熱流束示差走査熱量測定または入力補償示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0010】
一実施形態において、開示されるナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で(または任意に、1、2、8または24時間の時点で)決定されるように、治療薬の約50%未満を放出する。他の実施形態では、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で(または任意に、1、2、8または24時間の時点で)決定されるように、治療薬の約50〜約70%を放出する。他の実施形態において、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で(または任意に、1、2、8または24時間の時点で)決定されるように、治療薬の約70〜約100%を放出する。
【0011】
他の態様において、本発明の開示は、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法であって:a)第1治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第1ブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)と、を含む少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子を提供する工程;b)少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;c)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子から薬物放出速度を決定する工程;d)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子の、ナノ粒子ガラス転移温度と薬物放出速度との相関性を決定する工程;を含む、方法を提供する。
【0012】
i)第1多数ポリマーナノ粒子を含む懸濁液を提供する工程であって、ナノ粒子がそれぞれ、治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマー、ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーを含む、工程;ii)懸濁液のガラス転移温度を決定する工程;iii)第1多数ポリマーナノ粒子中のホモポリマーの量を増加または低減する工程;iv)所望のガラス転移温度を有する懸濁液が得られるまで、工程i)〜iii)を繰り返す工程;を含む、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法が提供される。
【0013】
a)治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーと、を含むナノ粒子を有する多数の懸濁液を別々に調製する工程であって、各懸濁液が別個のコンパートメントにあり、各懸濁液が、所定の分子量のブロックコポリマーと、存在する場合には、所定の分子量のホモポリマーを含む工程;;b)懸濁液のそれぞれのガラス転移温度を決定する工程;c)所定のガラス転移温度を有する懸濁液を同定する工程;を含む、特異的な放出速度を有する懸濁液を同定するためにナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】開示のナノ粒子を形成するエマルジョンプロセスのフローチャートである。
【図2】開示のエマルジョンプロセスのフローダイヤグラムである。
【図3】溶融重合から回収され、かつ未知の冷却速度で冷却された場合の、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線である。
【図4A】2成分非溶媒混合物(ジエチルエーテル/ヘキサン=70/30(v/v))中へのポリマー溶液(ジクロロメタン中100mg/mL)の沈殿から回収された場合の、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線である。
【図4B】増加している分子量のPLA−PEGブロックコポリマーにおいて確認されるガラス転移を示すDSC曲線である。PLAブロック数平均分子量、Mn=10KDa(低い曲線)、15KDa、30KDaおよび50KDa。
【図4C】PLA−PEGブロックコポリマーにおけるPLAの分子量(Mn)に対するTgの依存性を示す。
【図5】沈殿プロセスから回収された場合のポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=6kDa)のDSC曲線である。
【図6A】沈殿プロセスから回収された場合のポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=75kDa)のDSC曲線を表す。
【図6B】数平均分子量(Mn)1.7KDa(低い)、4.3KDa、6KDa、10KDa、22KDa、および120KDaのホモポリマーポリ(D,L−ラクチド)におけるガラス転移温度を示す、変調型DSC曲線を表す。
【図6C】PLAホモポリマーの数平均分子量(Mn)に対するTgの依存性を示す。
【図7】ナノ粒子のDSC分析で確認される吸熱転移を定義するために使用される5ポイントの図解である。
【図8】PLA−PEG(Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)と低分子量PLAホモポリマー(Mn=6.5kDa)との混合物で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線である。
【図9】粒子の唯一のポリマー成分としてのPLA−PEG(Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線である。
【図10】PLA−PEG(Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)と高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との混合物で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線である。
【図11】PLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との混合物で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線を示す。
【図12】プロットの説明文で詳述される、異なるポリマー成分をベースとするナノ粒子からのドセタキセル(DTXL)放出速度の比較である。
【図13】異なるガラス転移温度を示すナノ粒子システムからの24時間にわたる薬物放出速度に対する温度の作用を示すグラフである。
【図14】図13に示す研究の1〜4時間の期間の拡大を示すグラフである。
【図15】本明細書に開示される種々のナノ粒子のドセタキセルの生体外放出を表す。
【図16】本明細書に開示される種々のナノ粒子のボルテゾミブの生体外放出を表す。
【図17】本明細書に開示される種々のナノ粒子のビノレルビンの生体外放出を表す。
【図18】本明細書に開示される種々のナノ粒子のビンクリスチンの生体外放出を表す。
【図19】本明細書に開示される種々のナノ粒子のベンダムスチンHClの生体外放出を表す。
【図20】本明細書に開示される種々のナノ粒子のエポチロンBの生体外放出を表す。
【図21】本明細書に開示される種々のナノ粒子のブデソニドの生体外放出を表す。
【図22】本明細書に開示される種々のナノ粒子のブデソニドの生体外放出を表す。
【図23】静脈内単回投与(0.5mg/kg)後の、ブデソニドとブデソニドナノ粒子の薬物動態学を表す。
【図24】ブデソニド、ブデソニドPTNPおよびデキサメタゾンで処理した後の、IBDのモデルにおけるラットの腸での疾患スコアを示す。
【図25】ブデソニド、ブデソニドPTNPおよびデキサメタゾンで処理した後の、IBDのモデルにおけるラットの腸管重量を示す。
【図26】種々のナノ粒におけるブデソニドの生体外放出を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
少なくとも一部分、この開示内容は、ガラス転移温度約37〜約38℃を有する迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子、および/またはガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液、および/またはガラス転移温度約42〜約50℃(または約42〜約45℃)を有する多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む徐放性医薬水性懸濁液に関する。開示のナノ粒子は、治療薬を含み、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーを含むことができる。
【0016】
例えば、ガラス転移温度約37〜約38℃を有する多数の迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含み、ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約70〜約100%を放出する医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。ガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含み、ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50〜約70%を放出する医薬水性懸濁液もまた、本明細書において提供される。他の実施形態において、ガラス転移温度約42〜約50℃を有する多数の徐放性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含み、ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50%以下を放出する医薬水性懸濁液が提供される。かかる溶解試験は当技術分野でよく知られている。かかる代表的な試験は、以下の実施例7に例示される。例えば、溶解試験は、1、4、8、12日またはそれ以上の間、懸濁液を2.5重量%ヒドロキシプロピルシクロデキストリンリン酸緩衝生理食塩水(例えば0.01Mリン酸緩衝生理食塩水)に含有させることができる。
【0017】
一般に、開示の組成物は、作用薬を含むナノ粒子を含むことができる。
開示のナノ粒子は、抗腫瘍薬、例えばタキサン剤(例えば、ドセタキセル)などの作用薬を約0.1〜約40重量%、0.2〜約35重量%、約3〜約40重量%、約5〜約30重量%、10〜約30重量%、15〜25重量%、またはさらには約4〜約25重量%含むことができる。
【0018】
本明細書で開示されるナノ粒子は、本明細書に記載されるような、1種、2種、または3種以上の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含む。例えば、意図されるナノ粒子は、生分解性ポリマーとポリエチレングリコールを含む1種または複数種のブロックコポリマーを約10〜約99重量%、生分解性ホモポリマー、例えばPLAを約0〜約50重量%、または約0〜約75重量%含むことができる。
【0019】
例示的な治療用ナノ粒子は、ポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約40〜約99、または約50〜約90重量%、ポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約40〜約80重量%含むことができる。かかるポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約15〜20kDa(または例えば約15〜約100kDa、例えば、約15〜約80kDa)を有するポリ(乳酸)、および数平均分子量約2〜約10kDa、例えば、約4〜約6kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。例えば、開示の治療用ナノ粒子は、PLA−PEGを約70〜約90重量%、作用薬を約15〜約25重量%、またはPLA−PEGを約30〜約50重量%、PLAまたはPLGAを約30〜約50重量%(または約30〜約75重量%)、作用薬を約15〜約25重量含むことができる。かかるPLA((ポリ)乳酸)は、数平均分子量約5〜約10kDaを有していてもよい。かかるPLGA(ポリ(乳酸)−co−グリコール酸)は、数平均分子量約8〜約12kDaを有していてもよい。
【0020】
他の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子は、1種または複数種の生体適合性および/または生分解性ポリマー、例えば高分子量ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたは高分子量ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを含む。例えば、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、ポリ(乳酸)を含み、数平均分子量約30〜約90kDa、または約40〜約90kDaを有していてもよい。他の実施形態において、ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約30〜約90kDa、または約40〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む。例えば、意図されるナノ粒子は、治療薬約0.1〜約40重量%、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約90重量%を含んでいてもよく、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約30〜約90kDa、または約40〜約90kDaを有するポリ(乳酸)を含んでいてもよい。一実施形態において、ポリ(乳酸)は、数平均分子量約30kDaを有する。他の実施形態において、ポリ(乳酸)は数平均分子量約50〜約80kDa、または約70〜約85kDaを有する。さらに他の実施形態、ポリ(乳酸)は、数平均分子量約50kDaを有する。一部の実施形態において、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、分子量約4〜約6kDa、または約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む。例えば、ポリ(エチレン)グリコールは、数平均分子量約5kDaまたは10kDaを有していてもよい。
【0021】
開示のナノ粒子は任意に、ポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)(PEG、例えばPLAのホモポリマーを含まない)を約1〜約50重量%または約1〜約70重量%含んでいてもよく、または任意に、ポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を約1〜約75重量%、または約10〜約50重量%または約30〜約50重量%含んでいてもよい。一実施形態において、開示のナノ粒子は、2種類のポリマー、例えばPLA−PEGとPLAを重量比約40:60〜約60:40、または約30:50〜約50:30、例えば約50:50で含むことができる。
【0022】
このような実質的にホモポリマーのポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)は、重量平均分子量約4.5〜約130kDa、例えば、約20〜約30kDa、または約100〜約130kDaを有していてもよい。かかるホモポリマーのPLAは、数平均分子量約4.5〜約90kDa、または約4.5〜約12kDa、約5.5〜約7kDa(例えば約6.5kDa)、約15〜約30kDa、または約60〜約90kDaを有していてもよい。例示的なホモポリマーのPLAは、数平均分子量約70または80kDaまたは重量平均分子量約124kDを有していてもよい。当技術分野で公知のように、ポリマーの分子量はインヘレント粘度に関係するかもしれない。一部の実施形態において、ホモポリマーPLAは、インヘレント粘度約0.2〜約0.4、例えば約0.4を有していてもよく;他の実施形態では、PLAは、インヘレント粘度約0.6〜約0.8を有していてもよい。例示的なPLGAは、数平均分子量約8〜約12kDaを有していてもよい。
【0023】
例えば、治療薬を約0.1〜約40重量%;生体適合性ポリマーを約10〜約90、または約10〜約99、または約70〜約99重量%含む、生体適合性の治療用ポリマーナノ粒子であって、その生体適合性ポリマーが、a)ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー(数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)を含む);b)ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー(数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む);からなる群から選択される、生体適合性の治療用ポリマーナノ粒子が本明細書で提供される。ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができ、例えば、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約30kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができ、あるいは数平均分子量約50kDa〜約80kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaまたは10Daを有するポリ(エチレン)グリコール、例えば数平均分子量約50kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。
【0024】
一実施形態において、開示の治療用ナノ粒子は、標的化リガンド、例えば、その必要がある被検者における前立腺癌などの疾患または障害の治療に有効な低分子量PSMAリガンドを含むことができる。特定の実施形態において、低分子量リガンドはポリマーと結合し、ナノ粒子は、特定の比のリガンド結合ポリマー(例えば、PLA−PEG−リガンド)と非官能化ポリマー(例えば、PLA−PEGまたはPLGA−PEG)を含む。ナノ粒子は、癌などの疾患または障害を治療するのに有効な量のリガンドがナノ粒子と結合するように、これらの2つのポリマーの最適な比を有することができる。
【0025】
一部の実施形態において、開示のナノ粒子はさらに、本明細書に開示されるような標的化リガンドで官能化されたPLA−PEG約0.2〜約10重量%を含み、かつ/または標的化リガンドで官能化されたポリ(乳酸)−coポリ(グリコール酸)ブロック−PEGを含むことができる。かかる標的化リガンドは、一部の実施形態において、PEGに二重結合し、例えばアルキレンリンカーを介して、例えば、PLA−PEG−アルキレン−リガンドを介してPEGに結合していてもよい。例えば、開示のナノ粒子は、PLA−PEG−リガンドまたはポリ(乳酸)−coポリ(グリコール酸)−PEG−リガンドを約0.2〜約10モル%含むことができる。
【0026】
一部の実施形態において、開示の治療用粒子および/または組成物は、色素、エバンスブルー色素などの標的化剤またはイメージング剤を含む。かかる色素は、治療用粒子に結合または会合し、または開示の組成物はかかる色素を含むことができる。例えば、エバンスブルー色素が使用され、その色素は、アルブミン、例えば血漿アルブミンと結合または会合するかもしれない。
【0027】
開示のナノ粒子は、実質的に球状(つまり、粒子は一般に、球形であるように見える)または非球状形態を有していてもよい。例えば、粒子は、膨潤または収縮すると、非球状形態となってもよい。
【0028】
開示のナノ粒子は、約1マイクロメーター未満の特有の寸法を有していてもよく、粒子のその特有の寸法は、粒子と同じ体積を有する完全な球体の直径である。例えば、粒子は、約300nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、または場合によっては約1nm未満である粒子の特有の直径を有していてもよい。特定の実施形態において、開示のナノ粒子は、直径約70〜約250nm、または約70〜約180nm、約80〜約170nm、約80〜約130nmを有していてもよい。
【0029】
一セットの実施形態において、粒子は、内部と表面を有していてもよく、その表面は、内部と異なる組成を有し、つまり、内部に存在するかもしれないが、表面には存在しない(または、逆の場合も同様)少なくとも1つの化合物があり、かつ/または少なくとも1つの化合物が、内部および表面に異なる濃度で存在する。例えば、一実施形態において、本発明のポリマー抱合体の標的化部位(つまり低分子量リガンド)などの化合物が、粒子の内部と表面の両方に存在することがあるが、粒子の内部よりも表面の濃度が高い場合には、場合によってではあるが、粒子の内部の濃度は本質的にゼロではないかもしれない、つまり粒子の内部に検出可能な量の化合物が存在する。
【0030】
場合によっては、粒子の内部は、粒子の表面よりも疎水性である。例えば、粒子の内部は、粒子の表面に対して相対的に疎水性であり、薬物または他のペイロード(payload)も疎水性であり、粒子の相対的に疎水性の中心と容易に会合する。したがって、薬物または他のペイロードは、粒子の内部に含有されることができ、粒子は、粒子周囲の外部環境からそれを保護する(または、逆の場合も同様)。例えば、被検者に投与された粒子内に含有される薬物または他のペイロードは、被検者の体から保護され、少なくとも一定の時間、体は薬物から実質的に隔離されるかもしれない。
【0031】
開示のナノ粒子は、例えば糖類を含有する溶液中で、少なくとも約24時間、約2日、3日、約4日または少なくとも約5日間、室温または25℃にて安定であることができる。
【0032】
本明細書で開示されるナノ粒子は、放出制御特性を有することができ、例えば、ある量の作用薬を患者に、例えば患者の特異的な部位に、長時間にわたって、例えば1日、1週間、またはそれ以上にわたって送達することができる。
【0033】
定義
「治療」とは、症状、疾患、障害等が改善する結果となる、いずれかの効果、例えば緩和、低減、調節または除去を含む。
「薬剤的にまたは薬理学的に許容可能な」とは、動物またはヒトに適宜投与された場合に、副反応、アレルギーまたは他の有害な反応を生じさせない分子的実体および組成物を説明するものである。ヒトに投与する場合、製剤は、生物学的製剤基準(Biologics standards)のFDA事務局によって必要とされる無菌性、発熱性、一般的安全性および純度基準を満たさなければならない。
【0034】
本明細書で使用される「医薬的に許容される担体」または「医薬的に許容される賦形剤」という用語は、薬剤投与と適合性である、あらゆる、かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤等を意味する。薬剤的に活性な物質のための、かかる媒体および作用物質(agent)の使用は、当技術分野でよく知られている。この組成物は、補足、追加機能、または増強された治療的機能を提供する、他の活性化合物も含有していてもよい。
【0035】
「個体」、「患者」または「被検者」は同義で使用され、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、最も好ましくはヒトなどの哺乳動物などの動物を含む。本発明の化合物および組成物は、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、獣医学的治療の必要がある動物、例えば、家畜(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)など他の哺乳動物に投与することもできる。「調節(Modulation)」は、アンタゴニズム(例えば、抑制)、アゴニズム、部分的アンタゴニズムおよび/または部分的アゴニズムを含む。
【0036】
本明細書において、「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床家によって求められる、組織、システム、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を誘発する主題の化合物または組成物の量を意味する。本発明の化合物および組成物は、疾患を治療するために治療有効量で投与される。あるいは、化合物の治療有効量は、所望の治療的効果および/または予防的効果を達成するのに必要な量である。
【0037】
本明細書において、「医薬的に許容される塩(1種または複数種)」という用語は、本発明の組成物で使用される化合物で存在し得る、酸性または塩基性基の塩を意味する。本質的に塩基性である、本発明の組成物に含まれる化合物は、種々の無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。かかる塩基性化合物の医薬的に許容される酸付加塩を製造するために使用される酸は、非毒性酸付加塩、つまり薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩、限定されないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチアニン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホンサン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(つまり、1、1’−メチレン−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などを形成する酸である。アミノ部位を含む、本発明の組成物に含まれる化合物は、上記の酸に加えて、種々のアミノ酸と医薬的に許容される塩を形成することができる。本質的に酸性である、本発明の組成物に含まれる化合物は、種々の薬理学的に許容可能なカチオンと塩基塩を形成することができる。かかる塩の例としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0038】
ポリマー
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子は、ポリマーのマトリックスと、治療薬とを含む。
ポリマー、例えば、コポリマーを含むナノ粒子が、本明細書において意図される。種々の分子量のポリマーが、本明細書において企図され、例えばポリマーの重量は、粒子分解速度、溶解性、水の取込み、および薬物放出キネティクスに影響するかもしれない。ポリマーの分子量は、治療される被検者において粒子が妥当な期間(数時間から、1〜2週、3〜4週、5〜6週、7〜8週等の範囲)内に生分解するように調節することができる。例えば、開示の粒子は、PLAとPEGまたはPLGAとPEGのコポリマーを含み、そのPLAまたはPLGA部分は、数平均分子量約30〜約90kDaまたは約40〜約90kDaを有すことができ、PEG部分は、分子量約4〜約6kDaを有していてもよい。例示的な実施形態において、PLAまたはPLGA部分は、数平均分子量30kDa、50kDa、65kDa、または80kDaを有していてもよい。PEG部分は、分子量約5kDa、約6、7、8、または9kDa、または約lOkDaを有していてもよい。
【0039】
開示のナノ粒子は、1種または複数種のポリマー、例えばコポリマー、例えばジブロックコポリマーとすることができる第1ポリマー、任意に、例えばホモポリマーとすることができるポリマーを含むことができる。一部の実施形態において、開示のナノ粒子は、ポリマーのマトリックスを含む。開示の治療用ナノ粒子は、ポリマーマトリックスの表面と会合し得る、ポリマーマトリックス内に封入される、ポリマーマトリックスによって囲まれる、かつ/またはポリマーマトリックス全体に分散される治療薬を含むことができる。
【0040】
開示の粒子は、一部の実施形態では、通常2つ以上のポリマーの共有結合によって互いに結合されている2種類以上のポリマー(本明細書に記載のポリマーなど)を表す、コポリマーを含んでいてもよい。したがって、コポリマーは、第1ポリマーと第2ポリマーを含み、それらは互いに結合されてブロックコポリマーを形成することができ、第1ポリマーはブロックコポリマーの第1ブロックであり、第2ポリマーはブロックコポリマーの第2ブロックである。当然のことながら、当業者であれば、ブロックコポリマーは場合によっては、ポリマーの複数のブロックを含有し、かつ本明細書で使用される「ブロックコポリマー」は、1つの第1ブロックと1つの第2ブロックのみを有するブロックコポリマーのみに制限されないことを理解されよう。例えば、ブロックコポリマーは、第1ポリマーを構成する第1ブロック、第2ポリマーを構成する第2ブロック、および第3ポリマーまたは第1ポリマーを構成する第3ブロック等を含むことができる。場合によっては、ブロックコポリマーは、任意の数の第1ポリマーの第1ブロックおよび第2ポリマーの第2ブロック(特定の場合には、第3ブロック、第4ブロック等)を含有することができる。さらに、一部の例では、他のブロックコポリマーからブロックコポリマーを形成することもできることに留意されたい。例えば、第1ブロックコポリマーは、他のポリマー(ホモポリマー、バイオポリマー、他のブロックコポリマー等)と結合し、複数種のブロックを含有する新たなブロックコポリマー形成し、かつ/または他の部位に(例えば、非ポリマー部位に)結合することができる。
【0041】
一部の実施形態において、意図されるコポリマー(例えば、ブロックコポリマー)は、両親媒性であり、つまり親水性部分と疎水性部分、または比較的親水性の部分と比較的疎水性の部分を有していてもよい。親水性ポリマーは、一般に水を引き付けるポリマーとすることができ、疎水性ポリマーは、一般に水をはじくポリマーとすることができる。親水性または水性ポリマーは、例えば、ポリマーの試料を作製し、水とのその接触角(通常、ポリマーは60度未満の接触角を有するのに対して、疎水性ポリマーは60度を超える接触角を有する)を測定することによって同定することができる。場合によっては、2種類以上のポリマーの親水性は、互いに対して測定することができ、つまり第1ポリマーは、第2ポリマーよりも高い親水性とすることができる。例えば、第1ポリマーは、第2ポリマーよりも小さな接触角を有していてもよい。
【0042】
一セットの実施形態において、本明細書で意図される高分子量ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)としては、生体適合性ポリマー、つまり、例えばT細胞を介した免疫システムによる著しい炎症および/またはポリマーの急性拒絶を起こすことなく、生体被検者に挿入または注入した場合に副反応を一般に誘発しないポリマーが挙げられる。したがって、本明細書で意図される治療用粒子は、非免疫原性であってもよい。本明細書で使用される、非免疫原性という用語は、通常、循環抗体、T細胞、または反応性免疫細胞を最小レベルでのみ誘発する、またはそれらを全く誘発せず、かつ個体においてそれ自体に対する免疫応答を通常誘発しない、その天然状態の内因性成長因子を意味する。
【0043】
生体適合性とは一般に、免疫システムの少なくとも一部分による物質の急性拒絶を意味し、つまり、被検者に埋め込まれた非生体適合性物質は、被検者における免疫応答を誘発し、それは、免疫システムによる物質の拒絶が適切にコントロールできないほど激しく、被験者からその物質を除去しなければならないほどの程度であることが多い。生体適合性を決定する簡単な試験は、生体外で細胞にポリマーを曝露することである;生体適合性ポリマーは、中程度の濃度で、例えば濃度50マイクログラム/106細胞にて、著しい細胞死を通常生じさせないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、かかる細胞によって貪食または取り込まれた場合でさえ、線維芽細胞または上皮細胞などの細胞に曝露した場合に約20%未満の細胞死を生じさせるかもしれない。本発明の種々の実施形態において有用となり得る生体適合性ポリマーの非制限的な例としては、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリグリコリド、ポリラクチド、PLGA、PLA、ポリカプロラクトン、またはこれらのポリマーおよび/または他のポリマーなどのコポリマーもしくは誘導体が挙げられる。
【0044】
特定の実施形態において、意図される生体適合性ポリマーは、生分解性であり、つまりそのポリマーは、体内などの生理学的環境内で化学的および/または生物学的に分解することができる。本明細書で使用される「生分解性ポリマー」は、細胞内に導入された場合に、細胞機構(生物学的に分解性)によって、かつ/または加水分解などの化学プロセス(化学的に分解性)によって破壊され、細胞に著しく毒性作用を及ぼすことなく、細胞が再利用または処理することができる成分が形成される、ポリマーである。一実施形態において、生分解性ポリマーおよびその分解副生成物は生体適合性であることができる。
【0045】
例えば、意図されるポリマーは、水にさらすと(例えば、被検者内で)同時に加水分解するポリマーであり、そのポリマーは、熱にさらすと(例えば、約37℃の温度で)分解する。ポリマーの分解は、使用されるポリマーまたはコポリマーに応じて、様々な速度で起こるかもしれない。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部位へと分解される時点)は、そのポリマーに応じて、およそ数日、数週、数ヶ月、または数年であるかもしれない。そのポリマーは、例えば、酵素活性または細胞機構によって、場合によっては、例えばリゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露によって生物学的に分解される。場合によっては、ポリマーは、細胞に著しく毒性作用を及ぼすことなく、細胞が再利用または処理することができる、モノマーおよび/または他の非ポリマー部位へと破壊されるかもしれない(例えば、ポリラクチドは加水分解されて乳酸を形成し、ポリグリコリドは加水分解されてグリコール酸を形成する、等)。
【0046】
一部の実施形態において、ポリマーは、本明細書において総称して「PLGA」と呼ばれる、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、例えばポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、およびポリ(ラクチド−co−グリコリド);本明細書において「PGA」と呼ばれる、グリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書において総称して「PLA」と呼ばれる、乳酸単位を含むホモポリマー、例えばポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドなどのポリエステルであることができる。一部の実施形態において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸またはポリ無水物が挙げられる。
【0047】
他の実施形態において、開示のナノ粒子で使用するために、意図されるポリエステルは、ジブロックコポリマー、例えば、PEG化ポリマーおよびコポリマー(ポリ(エチレングリコール)反復単位を含有する)、例えばラクチドおよびグリコリドの(例えば、PEG化PLA、PEG化PGA、PEG化PLGA)、PEG化ポリ(カプロラクトン)、およびその誘導体であることができる。例えば、「PEG化」ポリマーは、炎症および/または免疫原性(つまり、免疫応答を誘発する能力)のコントロールを助け、かつ/またはポリ(エチレングリコール)基が存在するために、細網内皮系(RES)を介した循環系からのクリアランス速度を下げることができる。
【0048】
場合によっては、例えば、生体部位との相互作用からポリマーを保護する、ポリマー表面の親水性層を形成することによって、ポリマーと生体部位との電荷相互作用を低減するために、ペグ化を用いることができる。場合によっては、ポリ(エチレングリコール)反復単位の付加は、食細胞システムによってポリマーの取込みを低減することによって、ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)の血漿中半減期を増加するかもしれず、それと同時に、細胞によるトランスフェクション/取込み効率が低減される。例えば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)とNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、ポリマーをアミンの末端にあるPEG基に反応させることによって、開環重合技術(ROMP)によって等、当業者には、ポリマーをPEG化する方法および技術は公知であるだろう。
【0049】
開示のナノ粒子の一部を形成することができる、意図される他のポリマーとしては、ポリ(オルトエステル)PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリリジン、PEG化ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびその誘導体が挙げられる。他の実施形態において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性のポリエステルであることができる。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)が挙げられる。
【0050】
他の実施形態において、ポリマーは、1種または複数種のアクリルポリマーである。特定の実施形態において、アクリルポリマーとしては、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記のポリマーのうちの1種または複数種を含む組み合わせが挙げられる。アクリルポリマーは、低含有率で第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーを含むことができる。
【0051】
本明細書に記載のように使用されることが意図されるPLGAは、例えば、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸比を特徴とする。一部の実施形態において、粒子のポリマー(例えば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA−PEGブロックコポリマー)における乳酸:グリコール酸モノマーの比は、水の取込み、治療薬の放出および/またはポリマー分解キネティクスなどの様々なパラメーターについて最適化されるように選択することができる。他の実施形態において、PLAポリマー鎖の末端基は、カルボン酸基、アミン基、または例えば、長鎖アルキル基またはコレステロールを有するキャップ化末端基であることができる。
【0052】
標的化部位
任意の標的化部位、つまり生物学的実体、例えば、膜成分、細胞表面受容体、前立腺に特異的な膜抗原等と結合または会合することができる部位を含むことができる。ナノ粒子が本明細書において提供される。粒子の表面上に存在する標的化部位は、粒子が特定の標的化部位、例えば、腫瘍、患部、組織、臓器、細胞型等に局在化することを可能にする。ナノ粒子はそれ自体が、「標的特異的」である。次に、薬物または他のペイロードは、場合によっては、その粒子から放出され、特定の標的化部位と局所的に相互作用することが可能となる。
【0053】
例えば、標的化部分は、用いられる標的化部位に応じて、被検者の体内の腫瘍(例えば、固形腫瘍)、患部、組織、臓器、細胞型等に粒子を局在化させることができる。例えば、低分子量PSMAリガンドは、固形腫瘍、例えば、乳房または前立腺の腫瘍または癌細胞に局在化させることができる。被検者はヒトまたは非ヒト動物とすることができる。被検者の例としては、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、ヒト等の哺乳動物が挙げられる。
【0054】
例えば、開示のコポリマーと結合する(したがって、一部の実施形態において、開示のナノ粒子の一部を形成する)、意図される低分子量PSMAリガンドは:
によって表され、かつその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオ異性体、またはラセミ化合物を含む。
【0055】
治療薬
本発明に従って、例えば、治療薬(例えば抗癌剤)、診断剤(例えば造影剤;放射性核種;および蛍光、発光、および磁性部位)、予防薬(例えばワクチン)、および/または栄養補助剤(例えばビタミン、ミネラル等)を含むいずれかの作用物質が、開示のナノ粒子によって送達される。本発明に従って送達される例示的な作用物質としては、限定されないが、小分子(例えば細胞毒性剤)、核酸(例えば、siRNA、RNAiおよびmiRNA剤)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性元素および化合物、薬物、ワクチン、免疫剤等、および/またはその組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、送達される作用物質は、癌(たとえば、乳癌、肺癌または前立腺癌)の治療に有用な作用物質である。
【0056】
その作用薬または薬物は、mTor阻害剤(例えば、シロリムス、テムシロリムス、またはエベロリムス)、ビンカアルカロイド(例えばビノレルビンまたはビンクリスチン)、ジテルペン誘導体、タキサン(例えば、パクリタキセルまたはその誘導体、例えばDHA−パクリタキセルまたはPG−paxlitaxelまたは、またはドセタキセル)、ボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物(例えば、ボルテゾミブ)、心血管作動薬(例えば、利尿剤、血管拡張薬、アンギオテンシン変換酵素、β遮断薬、アルドステロンアンタゴニスト、または血液希釈剤(blood thinner))、コルチコステロイド(例えばブデソニド、フルオシノニド、トリアムシノロン、モメタゾン、アムシノニド、ハルシノニド、シクレソニド、ベクロメタソン)、代謝拮抗剤または葉酸拮抗剤(例えば、トトレキセート)、化学療法薬(例えばエポチロンB)、窒素マスタード剤(例えば、ベンダムスチン)などの治療薬であるか、またはその作用薬または薬物はsiRNAとすることができる。
【0057】
一セットの実施形態において、ペイロードは、1つの薬物または複数の薬物の組み合わせである。かかる粒子は、例えば、標的化部位を用いて、被検者内の特定の局在的位置に薬物を含有する粒子を誘導し、例えば薬物の局在化送達が起こることを可能にする、実施形態において有用である。例示的な治療薬としては、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(gemzar)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、またはビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)またはドセタキセル(タキソテール)などのタキサン、TOR阻害剤、例えばシロリムス、テムシロリムス、またはエベロリムス、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物、例えばボルテゾミブ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、フトラフール、5’デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチン、CI−973、JM−216、エピルビシン、リン酸エトポシド、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS 103、L−フェニルアラニン・マスタード、イフォスファミドメフォスファミド、ペルフォスファミド、トロフォスファミド・カルムスチン、セムスチン、ベンダムスチン、エポチロンA−E、トミュデックス(tomudex)、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブデソニド、およびその組み合わせなどの化学療法薬が挙げられ、またはその治療薬はsiRNAとすることができる。
【0058】
一部の実施形態において、意図されるナノ粒子はタキサンを含まない(例えば、ドセタキセルを含まない)。他の実施形態において、意図されるナノ粒子は、ビンカアルカロイドまたはmTOR阻害剤を含まない。
【0059】
潜在的に適している薬物の非制限的な例としては、例えば、ドセタキセル、ミトキサントロン、およびミトキサントロン塩酸塩などの抗癌剤が挙げられる。他の実施形態において、ペイロードは、抗癌薬、例えば、20−epi−1、25ジヒドロキシビタミンD3,4−イポメアノール、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、すべてのtkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドックス、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管形成阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス、アントラマイシン、抗背方化形態形成タンパク質−1(anti-dorsalizdng morphogenetic protein)、抗エストロゲン、アンチネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィジコリン、アポトーシス遺伝子修飾因子、アポトーシス制御因子、アプリン酸、ARA−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、βアレチン、βクラマイシンB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビサントレン塩酸塩、ビザズイジニルスペルミン、ビスナフィド、ジメシル酸ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフレート、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL−2、カペシタビン、カラセライド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレストM3、カルムチン、アーン700、軟骨由来阻害剤、カルビシン塩酸塩、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、cis−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類縁体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベスシジン816、クリスナトール、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デヒドロジデミンB、デスロレリン、デキシフォスファミド、デキソルマプラチン、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ジデミンB、ジドックス、ジエチヒオルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン塩酸塩、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、デュアゾマイシン、デュオカマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキセート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロミチン、エフロミチン塩酸塩、エレメン、エルサルミトルシン、エミテフル、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン、エピルビシン塩酸塩、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子治療ベクターシステム、エソルビシン塩酸塩、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、リン酸エストラムスチンナトリウム、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロクスウリジン、フルアステロン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、フルオロダウノルビシン塩酸塩、フルオロウラシル、フルロシタビン、フォルフェニメックス、フォルメスタン、フォスキドン、フォストリエシン、フォストリエシンナトリウム、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシウレア、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イダルビシン塩酸塩、イドキシフェン、イドラマントン、イフォスファミド、イルモフォスチン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫刺激性ペプチド、インスリン様成長因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロンα−2A、インターフェロンα−2B、インターフェロンα−N1
、インターフェロンα−N3、インターフェロンβ−IA、インターフェロンγ−IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラツム、イリノテカン、イリノテカン塩酸塩、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトールスタチン、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド/エストロゲン/プロゲステロン、リュープリン、レバミソール、リアロゾール、リアロゾール塩酸塩、直鎖状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、ロソキサントロン塩酸塩、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、マイタンシン、メクロレタミン塩酸塩、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマルシン、ミトマイシン、ミトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、ミトトキシン線維芽細胞成長因子サポリン、ミトキサントロン、塩ミトキサントロン塩酸塩、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリル脂質a/ミオバクテリウム細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、MTS(multiple tumor suppressor)1ベースの療法、マスタード系抗癌剤、マイカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、N−アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチップ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素修飾因子、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、N−置換ベンズアミド、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、ピロカルピン塩酸塩、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、ピロキサントロンン塩酸塩、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、プロピルビスアクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン、プロテアソーム阻害剤、プロテインAベースの免疫修飾物質、プロテインキナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、ピューロマイシン塩酸塩、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、レニウムRE186エチドロネート、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RHレチナミド、RNAi、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメクス、ルビギノンB1、ルボキシル、サフィンゴール、サフィンゴール塩酸塩、サイントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、SDI1ミメティクス(mimetics)、セムスチン、老化由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達修飾物質、シムトラゼン、単鎖抗原結合性タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプタートナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合性タンパク質、ソネルミン、スパルホサートナトリウム、スパルホス酸、スピカマイシンD、スピロゲルマニウム塩酸塩、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、テロキサントロン塩酸塩、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、タリドミド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣薬(mimetic)、チマルファシン、チモポイエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、二塩化チタノセン、トポテカン塩酸塩、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸テストステロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツブロゾール塩酸塩、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ、尿生殖洞由来成長抑制因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンリューロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマーまたはゾルビシン塩酸塩酸塩であることができる。
【0060】
一実施形態において、作用薬は、例えば、開示のナノ粒子の一部を形成する開示の疎水性ポリマーに結合してもよく(または、結合しなくてもよい)、例えば作用薬は、PLAまたはPGLAに、またはPLA−PEGまたはPLGA−PEGなどのコポリマーのPLAまたはPLGA部分に結合(例えば、直接または連結部位を介して、共有結合)することができる。
【0061】
ナノ粒子の作製
一部の実施形態において、開示のナノ粒子は、1種または複数種のポリマーを含む溶液を提供し、ポリマー非溶媒とその溶液を接触させて粒子を製造することによって形成される。その溶液は、ポリマー非溶媒と混和性または不混和性であることができる。例えば、アセトニトリルなどの水混和性液体は、ポリマーを含有することができ、例えば、制御速度でアセトニトリルを水に注ぐことによって、アセトニトリルが、水、ポリマー非溶媒と接触すると粒子が形成される。その溶液中に含有されるポリマーは、ポリマー非溶媒と接触させると沈殿し、ナノ粒子などの粒子を形成する。2つの液体は、一方の液体が、周囲温度および圧力にて、少なくとも10重量%のレベルでもう一方の液体に可溶性ではない場合に、互いに「不混和性」である、または混和性ではないと言われる。一般に、有機溶液(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等)および水性液(例えば、水、または溶解塩もしくは他の種、細胞、または生物学的媒体、エタノールを含有する水等)は互いに対して不混和性である。例えば、第1溶液を第2溶液に注ぐことができる(適切な割合または速度で)。場合によっては、ナノ粒子などの粒子は、第1溶液が不混和性第2液体と接触した時に形成され、例えば、第1溶液が第2液体に注がれると同時に、接触によるポリマーの沈殿によって、ポリマーがナノ粒子を形成し、場合によっては、例えば、導入の速度を注意深くコントロールし、比較的遅い速度で維持した場合に、ナノ粒子を形成することができる。かかる粒子形成のコントロールは、単なる通常の実験を用いて当業者によって容易に最適化することができる。
【0062】
他の実施形態において、図1および2に示されるプロセスなどのナノエマルジョンプロセスが提供される。例えば、治療薬、第1ポリマー(例えば、PLA−PEGまたはPLGA−PEGなどのジブロックコポリマー)および任意の第2ポリマー(例えば、(PL(G)A−PEGまたはPLA)を有機溶液と合わせて、第1有機相が形成される。かかる第1相は、固形分約5〜約50重量%、例えば約5〜約40重量%、または固形分約10〜約30重量%を含有していてもよい。第1有機相を第1水溶液と合わせて、第2相が形成される。有機溶液としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、Span80等、またはその組み合わせが挙げられる。一実施形態において、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル、およびその組み合わせを含むことができる。第2相は、固形分約1〜50重量%、例えば、約5〜40重量%であることができる。水溶液は、任意に、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、ポリ酢酸ビニルおよびベンジルアルコールのうちの1種または複数種と組み合わされた水であることができる。
【0063】
例えば、油相または有機相に、非溶媒(水)と部分的にのみ混和性である溶媒を使用してもよい。したがって、十分に低い比率で混合した場合、かつ/または有機溶媒で予め飽和された水を使用した場合、油相は液状のままである。油相は、水溶液中に乳化することができ、例えば、ホモジナイザーまたは超音波処理器などの高エネルギー分散システムを使用して、液滴として、ナノ粒子へと剪断される。別名「水相」として知られるエマルジョンの水性部分は、コール酸ナトリウムからなり、かつ酢酸エチルおよびベンジルアルコールで予め飽和されている、界面活性剤溶液とすることができる。
【0064】
エマルジョン相を形成するための第2相の乳化は、1または2つの乳化段階で行われる。例えば、最初のエマルジョンを調製し、次いで乳化し、微細エマルジョンが形成される。その最初のエマルジョンは、例えば、簡単な混合、高圧ホモジナイザー、プローブ超音波処理器、撹拌子、またはローターステーター・ホモジナイザーを用いて形成することができる。その最初のエマルジョンは、例えば、プローブ超音波処理器または高圧ホモジナイザーを使用して、例えばホモジナイザーを1、2、3回またはそれ以上の回数、操作することによって、微細エマルジョンへと形成することができる。例えば、高圧ホモジナイザーを使用する場合、使用される圧力は、約1000〜約8000psi、約2000〜約4000〜約8000psi、または約4000〜約5000psi、例えば、約2000、2500、4000または5000psiであることができる。
【0065】
溶媒の抽出を完了し、粒子を固化するために、溶媒の蒸発または希釈のいずれかが必要となる場合がある。抽出のキネティクスをより良くコントロールし、プロセスをさらに拡張可能にするには、水性クエンチによる溶媒希釈を用いることができる。例えば、有機溶媒のすべてを溶解するのに十分な濃度までエマルジョンジョンを冷水に希釈し、クエンチ相を形成することができる。クエンチは、少なくとも部分的に温度約5℃以下で行われる。例えば、クエンチに使用される水は、室温より低い温度(例えば、約0〜約10℃、または約0〜約5℃)である。
【0066】
一部の実施形態において、治療薬(例えば、ドセタキセル)のすべてが、この段階で粒子に封入されるわけではなく、可溶化剤がクエンチ相に添加され、可溶化相が形成される。薬物可溶化剤は、例えば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ドデシル硫酸ナトリウム、またはコール酸ナトリウムである。例えば、Tween−80をクエンチされたナノ粒子懸濁液に添加して、遊離薬物を可溶化し、薬物結晶の形成を防ぐことができる。一部の実施形態において、薬物可溶化剤と治療薬(例えば、ドセタキセル)の比は、約100:1〜約10:1である。
【0067】
可溶化相を濾過して、ナノ粒子を回収してもよい。例えば、限外濾過膜を使用して、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、有機溶媒、遊離薬物、および他の加工助剤(界面活性剤)をかなり除去することができる。例示的な濾過は、接線フロー濾過システムを用いて行われる。例えば、溶質、ミセル、および有機溶媒を通過させると同時に、ナノ粒子を保持するのに適した孔径を有する膜を使用することによって、ナノ粒子を選択的に分離することができる。分画分子量約300〜500kDa(約5〜25nm)を有する例示的な膜を使用することができる。
【0068】
ダイアフィルトレーションは、一定容積アプローチを用いて行われ、懸濁液から濾液が除去されるのと同じ速度でダイア濾液(diafiltrate)(冷たい脱イオン水、例えば、約0〜約5℃、または0〜約10℃)が供給懸濁液に添加されることを意味する。一部の実施形態において、濾過は、第1温度約0〜約5℃または0〜約10℃、および第2温度約20〜約30℃または15〜約35℃を用いた第1濾過を含むことができる。例えば、濾過は、約0〜約5℃にて約1〜約6のダイア容積(diavolume)を処理すること、および約20〜約30℃にて少なくとも1のダイア容積(例えば、約1〜約3または約1〜2のダイア容積)を処理することを含むことができる。
【0069】
ナノ粒子懸濁液を精製し、濃縮した後、例えば、約0.2μmのデプスプレフィルターを用いて、1、2、またはそれ以上の滅菌および/またはデプスフィルターに粒子を通す。
【0070】
ナノ粒子を製造する他の実施形態において、治療薬、例えばドセタキセル、およびポリマー(ホモポリマー、コポリマー、およびリガンドを有するコポリマー)の混合物で構成される有機相が形成される。有機相は、約1:5の比(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤および一部溶解された溶媒で構成される。単に混合して、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初のエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。次いで、微細エマルジョンは、混合しながら脱イオン水に添加することによってクエンチされる。クエンチ:エマルジョンの比は約8.5:1である。次いで、Tween(例えば、Tween80)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween約2%が達成される。これは、未封入の遊離薬物を溶解する役割を果たす。次いで、遠心分離または限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによって、ナノ粒子を単離する。
【0071】
製剤の製造に使用される、ポリマーおよび治療薬または作用薬の量は、最終製剤と異なるかもしれないことを理解されたい。例えば、一部の作用薬は、ナノ粒子に完全には組み込まれず、かかる遊離治療薬は、例えば濾過除去することができる。
【0072】
医薬組成物
本発明の開示内容の他の態様に従って、本明細書で開示されるナノ粒子を医薬的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物が形成される。当業者には理解されるように、担体は、以下に記載の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過等に基づいて選択される。
【0073】
本発明の開示内容の医薬組成物は、経口的および非経口的経路など当技術分野で公知の手段によって患者に投与される。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトだけではなく、例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、および魚などの非ヒトを意味する。例えば、非ヒトは、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)とすることができる。特定の実施形態において、非経口的経路は、消化管で見られる消化酵素との接触が避けられることから望ましい。かかる実施形態に従って、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内注射)によって、経直腸、経膣、局所投与(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤として)によって、または吸入(スプレーとして)によって投与することができる。
【0074】
特定の実施形態において、本発明の開示内容のナノ粒子は、その必要がある被検者に全身的に、例えば、非経口で、または静脈内点滴または注射によって投与される。
【0075】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子を含む凍結に適した組成物が企図され、凍結に適した溶液、例えば、ショ糖および/または塩溶液がナノ粒子懸濁液に添加される。ショ糖は、例えば、凍結保護物質として作用し、凍結した場合に粒子が凝集するのを防ぐ。例えば、多数の開示のナノ粒子、ショ糖、イオン性ハロゲン化物、および水を含むナノ粒子製剤が本明細書で提供され;ナノ粒子/ショ糖/水は約3〜30%/10〜30%/50〜90%(w/w/w)または約5〜10%/10〜15%/80〜90%(w/w/w)である。例えば、かかる溶液は、本明細書で開示されるナノ粒子、ショ糖約5〜約20重量%および濃度約10〜100mMの塩化ナトリウムなどのイオン性ハロゲン化物を含むことができる。
【0076】
組成物および治療方法
本明細書で開示されるナノ粒子を医薬的に許容される担体と合わせて、医薬組成物を形成することができる。当業者には理解されるように、担体は、以下に記載の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過等に基づいて選択される。
【0077】
医薬組成物および本明細書で開示される粒子は、経口的経路および非経口的経路などの当技術分野で公知の手段によって患者に投与される。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトだけではなく、例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、および魚などの非ヒトも意味する。例えば、非ヒトは、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)とすることができる。特定の実施形態において、非経口的経路は、消化管で見られる消化酵素との接触が避けられることから望ましい。かかる実施形態に従って、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内注射)によって、経直腸、経膣、局所投与(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤として)によって、または吸入(スプレーとして)によって投与することができる。
【0078】
特定の実施形態において、開示内容のナノ粒子は、その必要がある被検者に、例えば静脈内点滴または注射によって全身投与される。
【0079】
注射可能な製剤、例えば、注射可能な滅菌水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化される。注射可能な滅菌製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としての、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液、懸濁液、またはエマルジョンとすることができる。用いることができる許容可能な賦形剤および溶媒の中では、水、リンゲル液、U.S.P.、および塩化ナトリウム等張溶液が挙げられる。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドなどのブランド固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能な製剤で使用される。一実施形態において、本発明の抱合体(conjugate)は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム1%(w/v)、TWEEN(商標)80 0.1%(v/v)を含む担体液体に懸濁される。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に滅菌水または他の注射可能な滅菌媒体に溶解または分散することができる滅菌固形組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0080】
経口投与用の固形剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。かかる固形剤形において、封入された、または未封入の抱合体を少なくとも1種類の医薬的に許容される不活性賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはケイ酸二カルシウムおよび/または(a)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、およびアカシアなどの結合剤、(c)グリセロールなどの湿潤剤(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agent)、(f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、その剤形は緩衝剤も含むことができる。
【0081】
開示のナノ粒子は、投薬を容易にするため、かつ投薬量を均一にするために、投薬単位形態で製剤化される。本明細書で使用される「投薬単位形態」という表現は、治療される患者に適したナノ粒子の物理的に別々の単位を意味する。あらゆるナノ粒子に関して、治療上有効な用量が、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタにおいて最初に推定される。動物モデルを使用して、望ましい濃度範囲および投与経路を得ることもできる。次いで、かかる情報を用いて、ヒトに投与するのに有用な用量および経路を決定することができる。ナノ粒子の治療有効性および毒性、例えば、ED50(この用量は、個体数の50%に治療上有効である)およびLD50(この用量は、個体数の50%において致死量である)は、細胞培養または実験動物における標準的製薬手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表される。大きな治療指数を示す医薬組成物が、一部の実施形態において有用である。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータが、ヒトに使用される、投薬量の範囲を定式化するのに使用される。
【0082】
例示的な実施形態において、治療薬および医薬的に許容される賦形剤をそれぞれが含む多数のナノ粒子を含む医薬組成物が開示される。
【0083】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子を含む凍結に適した組成物が企図され、凍結に適した溶液、例えば、糖(例えばショ糖)溶液がナノ粒子懸濁液に添加される。ショ糖は、例えば、凍結保護物質として作用し、凍結した場合に粒子が凝集するのを防ぐ。例えば、多数の開示のナノ粒子、ショ糖、イオン性ハロゲン化物、および水を含むナノ粒子製剤が本明細書で提供され;ナノ粒子/ショ糖/水は約5〜10%/10〜15%/80〜90%(w/w/w)で存在する。
【0084】
一部の実施形態において、本明細書で開示される治療用粒子を用いて、疾患、障害および/または病状の1つもしくは複数の症状もしくは特徴を治療、緩和、寛解、軽減し、発症を遅らせ、進行を抑制し、重症度を軽減し、かつ/または発生率を低下させることができる。本発明の治療用粒子で治療される腫瘍および癌細胞の他の種類としては、例えば以下の種類の癌:肺癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、食道癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、リンパ腫および黒色腫と関連する癌など、すべての種類の固形腫瘍が挙げられる。その腫瘍は、口腔および咽頭、消化器系、呼吸器系、骨および関節(例えば、骨転移)、軟部組織、皮膚(例えば、黒色腫)、胸、生殖器系、泌尿器系、眼球および眼窩、脳および神経系(例えば、神経膠腫)、または内分泌系(例えば、甲状腺)の(に位置する)癌と関連し、必ずしも原発腫瘍ではない。口腔と関連する組織としては、限定されないが、舌および口腔組織が挙げられる。癌は、例えば食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、および膵臓などの消化器系の組織に発生するかもしれない。呼吸器系の癌は、喉頭、肺、および気管支に影響し、例えば非小細胞肺癌腫が挙げられる。腫瘍は、男性および女性の生殖器システムを構成する子宮頸部、子宮体、卵巣、外陰部、膣、前立腺、精巣、および陰茎、および泌尿器系を構成する、膀胱、腎臓、腎盂、および輸尿管に発生するかもしれない。
【0085】
癌(例えば、乳癌または前立腺癌)を治療する開示の方法は、所望の結果を達成するのに必要な量および時間で、その必要のある被検者に、治療有効量の開示の治療用粒子を投与することを含むことができる。本発明の特定の実施形態において、「治療有効量」とは、例えば、治療される癌の1つまたは複数の症状もしくは特徴を治療、緩和、寛解、軽減し、発症を遅らせ、進行を抑制し、重症度を軽減し、かつ/または発生率を低下させるのに有効な量である。
【0086】
一部の実施形態において、エポチロン、例えばエポチロンBを含む開示の治療用ナノ粒子を使用して、その必要がある患者において、乳癌、前立腺癌、結癌腸、膠芽腫、急性リンパ性白血病、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、または小細胞肺癌などの肺癌などの癌を治療することができる。
【0087】
他の実施形態において、ブデソニドなどのコルチコステロイドを含む開示の治療用ナノ粒子を使用して、喘息、変形性関節症、皮膚炎、および炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、および/またはクローン病などの炎症性疾患の治療に使用することができる(結腸癌などの癌の治療も意図される)。
【0088】
薬物放出速度
この開示内容は一部、水性懸濁液中の薬物ローディングされたナノ粒子のガラス転移温度(Tg)を測定することによって、ナノ粒子からの薬物放出の速度を予測かつコントロールする方法に関する。例えば、懸濁条件下での測定には、静脈内投与した場合の血流におけるナノ粒子の化学組成および物理的性質を操作する必要がある。ナノ粒子製剤は、ナノ粒子のTgに基づいて所望の薬物放出速度を示すようにデザインすることもできる。
【0089】
水性懸濁液中の薬物保持粒子のガラス転移温度(Tg)は、ナノ粒子の薬物放出特性の指標であることができる。ナノ粒子懸濁液Tgを同定することによって、薬物放出特性の予測子としてそれを使用することが可能となり、所望の薬物放出速度を有するナノ粒状ポリマーおよび薬物製剤の合理的なデザインが可能となり、さらに製剤を迅速スクリーニングし、さらに研究するために、高い値の標的を同定することが可能となる。
【0090】
エマルジョンプロセスを用いてナノ粒子を形成することによって一般に、ポリマー中の薬物の非晶質固体の分散が生じる。その化学構造に応じて、ポリマーは部分的に結晶化するが、ポリマー鎖に沿った反復単位の立体規則性の欠如が原因で、ポリマーが非晶質状態をとることが多い。この剛性ガラス状態は、ポリマー溶融物を冷却することによって得られる状態と似ている。溶融物相はゴム状特性を特徴とする。ガラス状態への転移は、硬度、ヤング率、および熱容量などのポリマー材料特性の変化によって達成される。これらの特性の変化をモニターするいくつかの技術を用いて、ガラス転移温度(Tg)として知られる、このゴムがその温度にわたってガラス転移する温度(または温度範囲)を決定することができる。そのTgは、例えば、ポリマーの純度に依存するかもしれない。例えば、ナノ粒子における薬物分子または作用薬、溶媒または非溶媒分子(つまり、水)の存在は、ポリマーのTgに影響を及ぼし、例えば、ナノ粒子の高い表面:体積比は、ポリマー相の水含有率に寄与するかもしれない。水性懸濁液中のポリマーナノ粒子のTgは、同じ化学組成の中間視的ポリマー薬物混合物のTgまたは乾燥粉末状の薬物保持ナノ粒子のTgと明確に異なる。
【0091】
ナノ粒子内の薬物は、分子的に分散されるか、またはポリマーナノ粒子よりも小さな寸法のナノ結晶を形成するかもれない。どちらの場合にも、ナノ粒子からの薬物の拡散ベースの放出は、ポリマーマトリックスを通過し、かつ周囲の水相中へのその輸送に依存する。ポリマーマトリックスにおける薬物の固有の溶解性、その拡散係数、拡散経路長、ポリマーマトリックス粘度および温度自体が、ナノ粒子からの薬物放出速度の因子であるかもしれない。例えば、静脈内注射した場合に、ナノ粒子は生理学的温度(37℃)に急速に平衡化し、したがって、この温度でのポリマーマトリックスの材料特性は、薬物放出速度に影響するかもしれない。ポリマー全体にわたる薬物拡散およびナノ粒子からのその放出は、ポリマーマトリックスが37℃の剛性ガラス状態である場合には遅く、ポリマーマトリックスがこの温度でゴム状の状態である場合には比較的速い。つまり、生理学的条件下にて、37℃以下のTgを有するナノ粒子は、37℃を超えるTgを有するナノ粒子よりも速い速度で薬物を放出する。
【0092】
例えば、PLA−PEGおよび低分子量PLA(例えば、6.5kDa PLA)を含むナノ粒子は、PLA−PEGのみを含むナノ粒子よりも低いTgを有する。PLA−PEGを含有するナノ粒子に高分子量PLA(例えば、75kDa PLA)を添加すると、PLA−PEGのみ含むナノ粒子のTgを超えてTgが上昇する。ナノ粒子組成物中のPLAなどのホモポリマーの種類および量を変えることによって、Tgを変更することができ、それによってナノ粒子からの薬物放出速度が直接影響を受ける。同様に、ジブロックコポリマー(例えばPLA−PEG)のみ含有するナノ粒子のTgは一般に、ブロック(例えばPLA)を形成するコアのモル質量の関数である。ナノ粒子のポリマー成分のガラス転移温度を用いて、ある範囲の熱的特性を粒子に付与する組成物を選択することができ、その薬物放出特性の予測が可能となる。
【0093】
この開示内容は一部、所望の薬物放出プロファイルと関連する、必要な熱的特性(ガラス転移温度)を有する組み合わせを同定するために、ポリマーおよび薬物システムをスクリーニングする方法に関する。所定のナノ粒子組成物のTgをアッセイすることによって、ナノ粒子の薬物放出速度を予測することができる。Tg、またはTb、ナノ粒子のガラス転移が開始する温度に基づくスクリーニングは、所望の速度で薬物を放出するナノ粒子ポリマーの組み合わせを迅速に同定することができる。ナノ粒子作製の高処理量手段と併せて、この開示内容は、ポリマーと薬物の組み合わせを迅速にスクリーニングし、選定数のシステムに到達することを可能にし、次いで、従来のより詳細な薬物放出研究にそれをかけることができる。
【0094】
例えば、水性懸濁液条件下の薬物ローディングされたナノ粒子を示差走査熱量測定(DSC)で分析することによって、薬物放出速度とナノ粒子ガラス転移温度の相関性が実証される。DSCは、物質および標準物質への熱流量が温度の関数として測定され、その物質および標準物質が、制御温度プログラムにかけられる技術である。DSC技術としては、熱流束DSCおよび入力補償DSCが挙げられる。熱流束DSCでは、その装置は、標準物質を含有する単一セルと、ヒート・リーク(heat-leak)として働く橋によって分離された試料ホルダーとからなる。このアセンブリは、一定温度体である加熱ブロックまたは炉内に位置する。試料および標準物質プラットホームと熱的に接触する熱電対は、試料皿および標準物質皿の温度を測定し、加熱ブロック温度は、所定の速度、例えば10℃/分で上昇し(加熱サイクル)または低下する(冷却サイクル)。実験結果は、加熱ブロックに対してプロットされた、試料と標準物質皿との温度差(熱流差(ワット/グラム))からなる。それと異なり、入力補償DSCにおいて、その装置は、同一であるが2つの別々の炉からなり、一方は試料を収容し、もう一方は標準物質を収容する。この場合、一定温度で2つの炉を維持するのに必要な電力差は、示差熱流の基礎としての役割を果たす。
【0095】
変調型示差走査熱量測定(MDSC)を使用して、水性懸濁液中のナノ粒子のガラス転移温度も決定することができる。この技術では、正弦波温度調節が、線形の加熱または冷却速度でオーバーレイされる。これは、総熱流(従来のDSCで確認されるのと同様な)を可逆および非可逆熱流成分に分離する数学的方法と組み合わせられる。可逆熱流成分は、試料の熱容量、ならびに昇温速度(ramp rate)の変化に直接応答し、かつそれらが確認される時間および温度で可逆する現象に由来する。言い換えると、正弦波温度調節の時間尺度で可逆するのに十分に速い現象(例えば、ガラス転移温度)は、このシグナルに寄与する。昇温速度の変化(例えば、ガラス転移温度でのエンタルピー緩和)に応答しない現象が、非可逆熱流成分で認められる。MDSCでは、総熱流の可逆および非可逆熱流成分を分離することによって、エンタルピー緩和現象からガラス転移現象を分離することが可能となる。したがって、従来のDSCと異なり、MDSCを使用して、そのガラス転移温度で強いエンタルピー緩和を示す試料のガラス転移温度を正確に決定することが可能となる。例えば、MDSCを使用してノ粒子懸濁液を分析し、可逆熱流成分を試料温度に対してプロットする場合、その曲線は、従来のDSCで認められる曲線(試料温度に対する総熱流曲線)と類似しているように見え、従来のDSCにより認められる転移は、エンタルピー緩和よりはむしろガラス転移現象であることが確認される。
【0096】
生体外での溶解(つまり、懸濁および遠心)技術を用いて、薬物放出速度を測定することができる。ナノ粒子は、PBS中のヒドロキシプロピルβCD(Trapsol)などの放出媒体に懸濁される。一定時間後、懸濁液を遠心し、遠心チューブ底部のナノ粒子ペレットを再懸濁するのを防ぐために乱流を起こすことなく、遠心された懸濁液の上部分からの媒体試料を取り出す。次いで、その試料をHPLCによって分析し、ナノ粒子から放出された薬物の量を決定する。
【0097】
一態様において、本発明の開示内容は、ガラス転移温度約37〜約50℃を有する、多数のナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む、医薬水性懸濁液を提供する。
【0098】
疎水性部分は、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択することができる。親水性部分は、ポリ(エチレン)グリコールであることができる。ナノ粒子はさらに、ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含んでもよい。
【0099】
一実施形態において、ナノ粒子は、治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%または0〜約75重量%を含むことができる。他の実施形態において、コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約16kDaを有し、コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有する。他の実施形態において、コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約50kDaを有し、コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有する。一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約6.5kDaを有する。他の実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約75kDaを有する。
【0100】
一実施形態において、提供されるナノ粒子の水性懸濁液は、約37〜約39℃、37〜約39.5℃、39.5〜約41℃、約42〜約50℃、または約42〜約44℃であり得るガラス転移温度を有する。他の実施形態において、ナノ粒子の水性懸濁液は、約37〜約38℃であり得るガラス転移温度を有する。一部の実施形態において、提供されるナノ粒子または懸濁液は、40℃、または39.5〜約41℃のガラス転移温度を有するナノ粒子または懸濁液を含まない。ガラス転移温度の文脈における「約」という用語は一般に、+0.5℃を意味する。ガラス転移温度は、熱流束示差走査熱量測定、入力補償示差走査熱量測定、および/または変調型DSCによって測定される。
【0101】
一実施形態において、開示のナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように、治療薬の約50%未満を放出する。他の実施形態において、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように、治療薬の約50〜約70%を放出する。他の実施形態において、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように、治療薬の約70〜約100%を放出する。
【0102】
他の態様において、本発明の開示内容は、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法であって:
a)第1治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第1ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子を提供する工程;
b)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
c)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度を決定する工程;
d)ナノ粒子ガラス転移温度と、その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度との相関性を決定する工程;
を含む方法を提供する。
【0103】
一実施形態において、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法がさらに:
e)第2治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第2ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子を提供する工程であって、第2治療薬および第2ブロックコポリマーが第1治療薬および第1ブロックコポリマーと同一であっても異なっていてもよい工程;
f)その少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
g)その少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度および工程d)で決定される相関性に基づく、少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子の薬物放出速度を予測する工程;
を含む。
【0104】
他の実施形態において、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法はさらに、生体外溶解試験を用いて少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子からの予測薬物放出速度を確認する工程を含む。
第1および/または第2治療薬は、ドセタキセルなどのタキサン剤とすることができる。
【0105】
一実施形態において、第1および第2ブロックコポリマーの疎水性部分はそれぞれ、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択することができる。一実施形態において、第1および第2ブロックコポリマーの親水性部分はそれぞれ、ポリ(エチレン)グリコールとすることができる。一実施形態において、第1および/または第2ブロックコポリマーは、治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%を含むことができる。一実施形態において、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約16kDaまたは約50kDaを有し、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、重量平均分子量約5kDaを有していてもよい。他の実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約8.5kDaを有していてもよい。一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約75kDaを有していてもよい。一実施形態において、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約50kDaを有し、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有していてもよい。
【0106】
i)第1多数ポリマーナノ粒子を含む懸濁液を提供する工程であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマー、およびポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーを含む、工程;
ii)懸濁液のガラス転移温度を決定する工程;
iii)第1多数ポリマーナノ粒子におけるホモポリマーの量を増加または低減する工程;
iv)所望のガラス転移温度を有する懸濁液が得られるまで、工程i)〜iii)を繰り返す工程;
を含む、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法(例えば、治療薬の所定の放出速度を同定するために)も、本明細書で提供される。
【0107】
例えば、特異的な放出速度を有する懸濁液を同定するためにナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法であって:
a)治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーを含むナノ粒子を有する複数種の懸濁液を別々に調製する工程であって、各懸濁液が、別個のコンパートメントにあり、各懸濁液が、所定の分子量のブロックコポリマーと、存在する場合には、所定の分子量のホモポリマーを含む、工程;
b)懸濁液それぞれのガラス転移温度を決定する工程;
c)所定のガラス転移温度を有する懸濁液を同定する工程;
を含む方法が本明細書において提供される。
【実施例】
【0108】
ここで、本発明が一般に説明され、本発明の特定の態様および実施形態を単に説明する目的で含まれ、決して本発明を制限することを意図するものではない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。
【0109】
実施例1:PLA−PEGの製造
この合成は、マクロ開始剤としてのα−ヒドロキシ−ω−メトキシポリ(エチレングリコール)とD,L−ラクチドとの開環重合によって達成され、以下に示されるように触媒としてスズ(II)2−エチルヘキサノエートを使用して高温にて行われる(PEG Mn約5,000Da;PLA Mn約16,000Da;PEG−PLA Mn約21,000Da)。
【0110】
ポリマーは、ジクロロメタンにポリマーを溶解し、ヘキサンとジエチルエーテルの混合物中でそれを沈殿させることによって精製される。この段階から回収されるポリマーはオーブンで乾燥させるべきである。
【0111】
実施例2:ナノ粒子の製造−エマルジョンプロセス
ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマー、コポリマー、および/またはリガンドを有するコポリマー)との混合物で構成される有機相が形成される。有機相は、約1:5の比(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤および一部溶解された溶媒で構成される。高い薬物ローディングを達成するために、有機相中に固形分約30%が使用される。単に混合して(撹拌子)、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初の粗いエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。一般に、9000psigにて100ミクロンZチャンバに1〜3回通過させて、標的粒子サイズを有するエマルジョンが生成される。
【0112】
次いで、微細エマルジョンは、混合しながら所定の温度で脱イオン水に添加することによってクエンチされる。クエンチ単位操作において、攪拌下にて、冷たい水性クエンチにエマルジョンが添加される。これは、油相溶媒のかなりの部分を抽出する役割を果たし、下流濾過のためのナノ粒子が効率的に硬化される。クエンチ:エマルジョン比は約5:1である。
【0113】
Tween80 35%(重量%)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween80約4%を達成する。エマルジョンがクエンチされた後、Tween80の溶液が添加され、それは薬物可溶化剤として働き、濾過中に未封入薬物を有効に除去することが可能となる。
【0114】
粒子のTg未満に維持するのに十分に薄い懸濁液(十分に低い濃度の溶媒)は、その温度を十分に冷たく維持しなければならない。Q:E比が十分に高くない場合には、溶媒の濃度が高くなると、粒子が可塑化され、薬物が漏出する。逆に、温度が低いほど、低いQ:E比(約3:1まで)で高い薬物封入が可能となり、プロセスをより効率的に実施することが可能となる。
【0115】
次いで、ナノ粒子を接線フロー濾過プロセスによって単離し、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、クエンチ溶液から溶媒、未封入薬物および薬物可溶化剤を水中にバッファー交換する。分画分子量(MWCO)300の再生セルロース膜が使用される。一定容積ダイアフィルトレーション(DF)を行い、クエンチ溶媒、遊離薬物およびTween80を除去する。一定容積DFを実施するために、濾液が除去されるのと同じ速度で、バッファーを濃縮水(retentate)容器に添加する。
【0116】
次いで、ワークアップ中、濾過されたナノ粒子スラリーを高温まで熱サイクルにかける。最初に25℃に曝露した後に非常に急速に、少量の封入薬物(一般に5〜10%)がナノ粒子から放出される。この現象のために、ワークアップ全体の間、冷たく維持されたバッチは、送達の間または非冷凍保存のいずれかの部分の間に形成する、遊離薬物または薬物結晶に影響を受けやすい。
【0117】
濾過プロセス後、ナノ粒子懸濁液を滅菌グレードフィルター(0.2μm(絶対値))に通す。プロセスの妥当な濾過面積/時間を利用するために、プレフィルターを使用して、滅菌グレードフィルターを保護する。
【0118】
通常使用されるフィルターは、Pall SXMPDD1404(KS50P/EKSP二重層,0.1〜0.3μm(公称値));Pall Life Sciences Supor EKV0.65/0.2ミクロンの滅菌グレードPESフィルターである。
【0119】
デプスフィルターにはナノ粒子1kg当たり濾過表面積0.2m2、滅菌グレードフィルターにはナノ粒子1kg当たり濾過表面積1.3m2が使用される。
【0120】
実施例3:ポリマーの示差走査熱量測定
TA Instruments Q200またはTzero(T0)技術を備えたTA Instruments Q2000熱流束DSCを使用して、ナノ粒子およびそのポリマー成分のガラス転移温度を測定した。試料皿(ナノ粒子懸濁液20〜70μLまたはポリマー3〜10mgのいずれかを含有する)および標準物質皿(空の試料皿で構成される)を昇温速度10℃(または20℃)/分にて4〜70℃に加熱した。高純度乾燥窒素を使用して、分析中に炉をパージした。
【0121】
従来の熱流束DSCでは、2つの熱電対、試料皿および標準物質皿それぞれに1つの熱電対が使用される。炉の温度が一定加熱速度(例えば10℃/分)で上昇した場合、試料および標準物質皿質量が同一であるという条件で、試料温度(Ts)は、試料の熱容量に等しい程度に標準物質温度(Tr)よりも遅れる。温度差、ΔT=Ts−Trが、炉のブロック温度の関数として記録される。一般に、装置のアウトプットは、加熱ブロック温度に対してプロットされた単位質量当たりの熱流量からなる。単位質量当たりの熱流量(ワット/g)(y軸)は、ΔT/Rからなり、Rは、標準物質皿および試料皿を連結する(かつ支持する)コンスタンタン製ブリッジの熱抵抗である。したがって、実験が開始された時に、DSCシグナルはゼロから定常状態値(Ts−Tr)/Rへとシフトし、実験用ベースラインが確立される。加熱サイクルまたは冷却サイクルでガラス転移に遭遇した場合には、試料Tgを上回って試料熱容量が増加する結果として、定常状態値がシフトする。一般に、熱容量変化の高さ半分での温度、1/2ΔCpは、試料Tgとして定義される。
【0122】
T0技術を備えた熱流束DSCにおいて、第3熱電対は、標準物質皿および試料皿を連結する(および支持する)コンスタンタン製ブリッジの温度(T0)を測定し、熱流等式は、3つの更なる項、試料および標準物質セルの異なる抵抗を説明する項、および熱キャパシタンスの差および加熱速度の差それぞれの項からなる。以下に示すすべてのDSCデータは、T0技術を備えた装置で得られた。さらに、「T4モード」を使用して、つまり4項熱流式を用いて、データを処理した。一部の実験に関しては、「T4Pモード」を使用した。このモードでは、T4モードについて記述されることに加えて、試料皿重量と標準物質皿重量の差の補正を用いた。
【0123】
気密封止された皿を使用して、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG、Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=6kDa)、およびポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=75kDa)を含む固体ポリマー試料を分析し、T4モードを用いて装置の定数を決定した。得られたDSCの結果を図3〜7に示す。変曲法のポイント(Tg=最大勾配のポイント)を用いて、ガラス転移温度を代入した。
【0124】
図3は、溶融重合から回収し、かつ不明な冷却速度で冷却された、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。2つの異なる転移がPLA−PEG(16kDa−5kDa)ブロックコポリマーのDSC曲線で確認される。1〜10℃の転移は、PEGとPLAの混合相のTgであり、40〜50℃の転移はPEG豊富な相の融解ピークである。同様なモル質量のホモポリマーPEGは一般に、−50〜−25℃のTg’を示し、同様なモル質量のPLAホモポリマーは、範囲30〜50℃のTgを示す。確認されたTgは、純粋なPEGホモポリマーに対して予想されるTG温度と、純粋なPLAホモポリマーに対して予想される温度の間にあり、このコポリマー試料は、PEGとPLAの両方を含有する混合相で構成されることが示されている。
【0125】
図4Aは、ポリマー溶液(ジクロロメタン中100mg/mL)を二成分非溶媒混合物(ジエチルエーテル/ヘキサン=70/30(v/v))に沈殿させて回収した場合の、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。このブロックコポリマーは第1熱でTm60〜70℃を示し、結晶質PEGポリマー相が存在することが示されている。冷却後、得られたポリマーは速度10℃/分にて融解し、第2加熱曲線は低い温度のTgを示し、ポリマー溶融物から回収されたPLA−PEGブロックコポリマーに関して図3で確認されるのと同様な、PEGおよびPLAの単一混合相が示されている。
【0126】
結果を図3および4Aに示し、ブロックコポリマーシステムで確認されるガラス転移の数および種類、ならびに確認されたTgの値は、試料の履歴に応じて大幅に異なることが示唆されている。ポリマー試料(融解対沈殿)への実験経路は、その相挙動を変化させ、それによって、異なるガラス転移挙動が引き起こされる。熱履歴(融解サイクル後の冷却速度など)もまた、相の構造および熱的挙動を著しく変化させる。
【0127】
図4Bは、4種のPLA−PEGコポリマーのDSC曲線を示し、PEGブロックは数平均分子量5KDaからなり、PLAブロック数平均分子量はそれぞれ、10、15、30および50KDaである。上記で確認されるように、そのTg(および/または当てはまる場合にはTm)を超えてポリマー試料を加熱すると、熱履歴の影響が消され、同様な熱履歴を有する試料(つまり、固定冷却速度、例えば、10℃/分で溶融物から冷却された)を直接、比較することが可能となる。したがって、各システムの第2熱データのみを図4Bに示し、PLA数平均分子量が10KDaから50KDaに増加するにしたがって、PLAとPEGの混合相の変曲点(Tg値)の位置は、−6℃から33℃に増加する。図4Cは、試験された分子量範囲内で確認された傾向を示し、ポリマー分子量に対するTgの強い依存性を示している。
【0128】
図5は、沈殿プロセスから回収された場合のポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=6kDa)のDSC曲線を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。図5は、第1および第2熱サイクルの両方において30〜35℃のガラス転移を示す。ホモポリマーで予想されるように、相分離が不可能なことから、ポリマー試料への経路が異なるにもかかわらず(沈殿対融解)、Tgの差は認められない。
【0129】
図6Aは、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=75kDa)で認められる、45〜50℃のガラス転移を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。図5に示す、より低いモル質量PLAに対して、このPLA試料のより高いTg値から、ポリマー分子量が増加するにしたがって、期待されるTgの増加が示されている。図6Aにおける第1熱サイクルは、ガラス転移の高温側での吸熱ヒステリシスピークを示し、このポリマー試料が、そのTg未満でアニールされたか、または10℃/分より遅い速度(この熱サイクルで用いられた加熱速度)で(溶融物から)冷却されたことが示されている。
【0130】
図6Aで示される75KDa PLA試料で観察されるように、エンタルピー緩和現象がガラス転移温度付近で起こる場合、Tg値を正確に決定することは難しい。図6Bは、いくつかのPLAホモポリマーに関して変調型DSC実験で測定される総熱流の可逆性熱成分を示す。分析されたPLA試料の数平均分子量は、2〜120KDaの範囲である。このデータから、図6Cに示されるように、分子量範囲2〜22KDaの分子量でTg値が増加し、次いで分子量がさらに増加すると、プラトーに達することが示されている。
【0131】
実施例4:薬物含有ナノ粒子のエマルジョン調製
水性懸濁液中の薬物ローディングされたナノ粒子を製造する一般的なエマルジョン手順を以下に示す(ショ糖30重量%、粒子重量に対して薬物を約10重量%含有するポリマーナノ粒子3〜6重量%)。ポリマー24%およびドセタキセル(DTXL)6%を含む固形分30%(重量%)で構成される有機相が形成される。有機溶媒は、酢酸エチル(EA)およびベンジルアルコール(BA)であり、BAは、有機相の21%(重量%)を占める。有機相は、約1:2(油相:水相)の比で水相と混合され、その水相は、水中のコール酸ナトリウム0.5%、BA2%、およびEA4%(重量%)で構成される。単に混合して、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初のエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。次いで、微細エマルジョンは、混合しながら脱イオン水の冷却クエンチ(0〜5℃)に添加することによってクエンチされる。クエンチ:エマルジョン比は約10:1である。次いで、Tween80 35%(重量%)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween80約4%が達成される。次いで、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、ナノ粒子を単離し、濃縮する。
【0132】
Tgが抑えられた迅速放出性ナノ粒子を製造するための例示的な手順において、そのポリマーの50%はポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)であり、ポリマーの50%はポリ(D,L−ラクチド)(PLA;Mn6.5kDa)である。得られるナノ粒子は、37℃未満のガラス転移の開始を有し、したがって、生理学的温度にて相対的に迅速な拡散をベースとする放出を有する。
【0133】
Tgが増加された通常放出性(normal-releasing)ナノ粒を製造するための例示的な手順では、ポリマーの100%がポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)である。得られるナノ粒子は、約37℃でTgの開始を有する。
【0134】
Tgが増加された徐放性ナノ粒子を製造するための例示的な手順において、そのポリマーの50%がポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)であり、ポリマーの50%がポリ(D,L−ラクチド)(PLA;75kDa)である。得られるナノ粒子は、37℃を超えるTgの開始を有し、したがって、生理学的温度にて相対的に遅い拡散をベースとする放出を有する。
【0135】
実施例5:ナノ粒径および薬物含有率を決定する方法
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析した。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラント(一般的に)およびNNLS法を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方、またはAccusizer SPOSを使用して、希釈水性懸濁液中でHoribaLS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical modelを使用して解析した。
【0136】
ナノ粒子スラリーのドセタキセル含有量をスラリーの全固形分で割ることによって、薬物ローディングが計算された。ドセタキセル含有量は、アセトニトリルを使用してナノ粒子から薬物を抽出することによって決定し、アセトニトリル20%(0.016%TFA)からアセトニトリル100%(0.016%TFA)の勾配を用いてC8逆相カラム(Waters X−Bridge C8)で試料を分析した。溶離液吸光度を230nmでモニターした。ドセタキセルを約40%アセトニトリルで溶出した。勾配を100%アセトニトリルに増加し、疎水性ナノ粒子ポリマー成分、PLA−PEGおよびPLA−PEG−GL2を溶出した。ドセタキセルの定量化限界は、およそ0.5μg/mLである。スラリーの固形分は、真空および熱を用いて、懸濁液から水を除去することによって重量測定により決定する。
【0137】
実施例4に示す、徐放性、通常放出性、および迅速放出性バッチの粒径および薬物ローディングを以下の表5に示す:
【表5】
【0138】
実施例6:水性懸濁液におけるナノ粒子のTgの決定
熱流束DSCを使用して、水性懸濁液中のナノ粒子のガラス転移温度(Tg)を決定した。10℃/分または20℃/分の一定加熱速度で試料を4〜70℃に加熱した。この温度範囲の大部分において水蒸気圧が比較的高いために、水蒸気の漏れを防ぐため、気密封止皿で分析を行った。
【0139】
図8から図11は、水性懸濁液中のナノ粒子試料のDSC曲線を示す。分析されたナノ粒子試料は一般に、−20℃で凍結保存した。保存された試料を最初に、周囲温度の水浴に入れ、続いて超遠心分離法を用いてそれを遠心分離することによって解凍した。ナノ粒子懸濁液(ナノ粒子30〜50mg/mL)約4mLをポリプロピレン製ハウジングと、分画分子量限界100kDaの再生セルロース膜フィルターとを有するMillipore Amicon遠心濾過デバイスに入れた。4000×gで試料を遠心分離することによって濃縮し、3分の1ないし4分の1の濃縮体積に低減した。濃縮水(ナノ粒子約120〜150mg/mL)をガラス製シンチレーションバイアルに移し、−20℃のフリーザーに入れた。この熱処理は、ナノ粒子作製後に用いられ、かつナノ粒子のガラス転移温度未満の温度を要する処理と同一であった。したがって、この処理では、ナノ粒子作製プロセス後に、その条件に対する粒子の熱履歴は変わらない。
【0140】
図8から図11に示す吸熱転移は、図7に示すガラス転移温度を同定するために5つの点を選択することによって定義された。これらは、Tb、直線性からのDSC曲線の逸脱の開始;T1、ガラス転移の外挿開始温度;T2、ガラス転移の外挿終了温度を含む。ガラス転移温度は、2つの可能な方法のうちの1つで;熱容量の増加の半分高さでの温度(1/2ΔCp)(図7に示される)として、または変曲点として、定義される。
【0141】
図8におけるDSC曲線は、加熱速度10℃/分で4〜70℃に加熱した場合に、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと低分子量PLAホモポリマー(Mn=6.5kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されている。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TA Instrument Q200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。第1熱サイクル(上部曲線)に関して、確認されたTbおよびTg値ははそれぞれ、37℃および39.7℃である。続いて、試料を速度10℃/分で4℃に冷却し、第2熱サイクルで再び、70℃(10℃/分の加熱速度で)に加熱した。図8の下部曲線は、第2熱サイクルで確認される吸熱転移を示す。そのTbおよびTg値はそれぞれ、33℃および36.7℃にシフトする。静脈内注射用の使用では、ナノ粒子は、生理学的温度にさらされるだけであると考えられる。したがって、その薬物放出を予測する場合、第1熱サイクルのデータのみが関連性がある。
【0142】
図9におけるDSC曲線は、製剤中の唯一のポリマー成分としてPLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーから粒子が製造されている、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示す。懸濁液を加熱速度20℃/分で4〜70℃に加熱した。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TA Instrument Q200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。図9の上部曲線として示される第1熱サイクルに関して、確認されたTbおよびTg値はそれぞれ、37.3℃および41.3℃である。下部曲線は、ナノ粒子懸濁液の新たな試料の二重反復実施を示し、それぞれ、37.5℃および39.8℃のTbおよびTg値が得られた。
【0143】
図10におけるDSC曲線は、加熱速度10℃/分で4〜70℃に加熱した場合に、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されている。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TAInstrumentQ200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。第1熱サイクル(上部曲線)に関して、確認されたTbおよびTg値ははそれぞれ、43℃および44.9℃である。続いて、試料を速度10℃/分で4℃冷却し、第2熱サイクルで再び、70℃(10℃/分の加熱速度で)に加熱した。図10の下部曲線は、第2熱サイクルで確認される吸熱転移を示す。そのTbおよびTg値はそれぞれ、39℃および41℃にシフトした。
【0144】
図11におけるDSC曲線は、加熱速度20℃/分で4〜70℃に加熱した場合に、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されている。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TA Instrument Q200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。第1熱サイクルに関して、確認されたTbおよびTg値ははそれぞれ、44℃および45.3℃である。下部曲線は、ナノ粒子懸濁液の新たな試料の二重反復実施を示し、それぞれ、42.4℃および43.8℃のTbおよびTg値が得られた。
【0145】
表6Aは、上述のナノ粒子に関するDSC研究で確認された吸熱転移を示す。
【表6A】
【0146】
ドセタキセル含有ナノ粒子のガラス転移温度を確認するため、変調型DSC(MDSC)を用いて、図8から11に示されるような試料組成の粒子の異なるバッチを試験した。用いられたナノ粒子試料製造法は、上述の方法であった。振幅0.5℃の正弦波温度変動および線形昇温速度2℃/分で重ね合わされる60秒間の時間を用いて、変調型DSC実験を行った。図11Bは、総熱流の可逆性熱流成分を示す。これらのナノ粒子バッチは、図8から11に見られるような、ナノ粒子組成に対するナノ粒子ガラス転移温度の同様な依存性も示した。
【0147】
図11Bにおいて、上部MDSC曲線は、ナノ粒子(試料A)によって示される37.8℃でのTgを示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと低分子量PLAホモポリマー(Mn=6.5kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されており、封入ドセタキセルを約10重量%含有する。第2MDSC曲線は、ナノ粒子(試料B)によって示される40.1℃でのTgを示し、その粒子は、製剤中の唯一のポリマー成分としてPLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーから製造され、封入ドセタキセルを約10重量%含有する。第3MDSC曲線は、ナノ粒子(試料C)によって示される43.0℃でのTgを示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されており、封入ドセタキセルを約10重量%含有する。MDSC下部曲線は、ナノ粒子(試料D)によって示される37.3℃でのTgを示し、その粒子は、唯一のポリマー成分としてPLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーから製造され、封入ドセタキセルを含有しない。
【0148】
表6Bは、上述のナノ粒子の変調型DSC研究において確認された吸熱ガラス転移を示す。
【表6B】
【0149】
実施例7:ナノ粒子試料からの薬物放出速度
水における薬物(ドセタキセル)溶解性に関して沈降条件下にて、ナノ粒子から放出される薬物の速度を生体外で決定した。薬物可溶化剤として放出媒体として、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−βCD)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を使用して、生理学的pHおよびイオン強度で実験を行った。
【0150】
薬物約5mg/mLを含有する、ドセタキセルがローディングされたナノ粒子試料を最初に、脱イオン水で最終濃度(ドセタキセル)250μg/mLに希釈した。例えば、DTXL5mg/mLを1ml含有するバッチを冷たい脱イオン水19mLで希釈し、薬物250μg/mLを含有するナノ粒子懸濁液を合計20ml得た。
【0151】
PBS(Sigma PBS P−5368)を脱イオン水に溶解して、0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(NaCl:0.138M;KCl:0.0027M)を含有するリン酸緩衝液溶液を得ることによって、放出媒体(PBS(w/w)中2.5%HP−ΒCD)を調製した。ヒドロキシプロピルβCD(Trapsol)100gをPBS溶液3900gに溶解し、PBS中2.5%HP−ΒCDを得た。目盛り付きシリンダーを使用して、この放出媒体120mLをQorpak広口瓶(16194−290VWR番号7983Qorpak#)に移した。
【0152】
ナノ粒子スラリー(3mL)をQorpak瓶内の120mL放出媒体に添加した。瓶に蓋をし、手でスワーリング(swirling)することによって混合した。時間ゼロ(T=0)の対照試料を取り出した。ナノ粒子スラリーを放出媒体と混合した直後に試料900μLを取り出し、等しい体積(900μL)のアセトニトリルを含有するHPLCバイアルにそれを移すことによって、第1の非遠心試料を得た。後の時点で取り出された試料が受けた処理と類似の遠心処理を受けた遠心試料(第2試料)は、Qorpak瓶から試料4mLを取り、遠心チューブ(Beckmancoulter,容量4mL,番号355645)にそれを移すことによって得た。続いて、固定角ローターMLA55(S/N08U411)を用いたUltracentrifuge Optima MAX−XP(P/N393552AB,TZ08H04,カタログ番号393315)で4℃にて1時間、50,000rpm(236,000g)で試料を遠心した。遠心チューブ底部のナノ粒子ペレットを再懸濁するのを防ぐために乱流を起こすことなく、遠心試料の上部からの上清900μLを取り出した。この900μLアリコートをHPLCバイアル中のアセトニトリル900μLに移した。ナノ粒子内にまだ封入されている薬物が、遠心するとペレット化したことから(ナノ粒子と共に)、上清に見られるドセタキセルは、放出された薬物の量を表す。
【0153】
連続混合条件を維持するために37℃で保たれた水浴振盪機を使用して、Qorpac瓶内の放出試料を75rpmで連続して攪拌した。試料4mLを所定の時点で取り出し、上述のように処理し、ドセタキセル含有率を分析するためのHPLC試料が得られる。試料は一般に、0、1、2、4、および24時間の時点で抜き取られ、その時点は、著しく速い、または遅い放出のバッチを考慮に入れるために必要に応じて変更した。
【0154】
図12は、異なるポリマー材料で構成されるナノ粒子からの、37±0.5℃で放出されるドセタキセルの速度(封入ドセタキセル全体の%として)を示す。実線(上部)は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)と低分子量(Mn=6.5kDa)PLAホモポリマーの1:1(w/w)混合物で構成される「迅速」放出性システムからの薬物放出速度に相当する。破線(中央)は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)のみで構成される「通常または中間」放出性システムからの薬物放出速度に相当する。破線(下部)は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量(Mn=75kDa)PLAホモポリマーの1:1(w/w)混合物で構成される「徐」放性システムからの薬物放出速度に相当する。
【0155】
図12に示す37℃でナノ粒子から放出されるドセタキセルの速度は、ナノ粒子組成に対する強い依存性を示している。PLA−PEG(16kDa−5kDa)とPLA(Mn=6.5kDa)の混合物から製造されたナノ粒子は、放出媒体に曝露して最初の14時間以内に封入薬物の約75%が放出される、「迅速」放出プロファイルを表した。対照的に、ナノ粒子がPLA−PEG(16kDa−5kDa)のみで製造された場合には、封入薬物約65%が同様な期間にわたって放出された。ナノ粒子がPLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量PLA(Mn=75kDa)の混合物から製造された場合には、この効果はさらに増幅された。このシステムでは、薬物の約50%のみが、最初の4時間に放出された。
【0156】
表7Aから分かるように、3つのナノ粒子システムで確認された吸熱ガラス転移によって、DSC曲線が線形性(Tb)から逸脱し始めるポイントに相当する温度が、粒子の薬物放出速度を決定する重要なパラメーターであることが示されている。「迅速」放出性システムにおいて、吸熱転移は35℃で開始する。このシステムで観察される放出挙動から、セグメント運動の開始およびナノ粒子コア内の薬物拡散速度の必然的な増加によって、Tb>37℃であるシステムで観察されるよりも高い速度で薬物が粒子−水界面に達することが可能となることが示されている。「通常」放出性システムはTb=37.3℃を示し、薬物放出速度はそれに応じて遅くなる。「徐」放性システムは同様に、より高いTb(43℃)を示す。
【0157】
Tbが37℃以下である場合に認められる、有意に異なる放出速度は、薬物拡散の速度およびナノ粒子からの放出の速度に対する部分的運動の強い作用をあらわす。表7で報告されるTgおよびTe値(ガラス転移温度およびDSC曲線が再び線形となるポイント)もまた、「迅速」、「通常」、および「徐」放出性システム内で系統的に増加する。この増加は、ポリマーのセグメント運動と薬物放出速度との相関性と一致し、懸濁液条件下の所定のナノ粒子システムのガラス転移温度が、相対的な薬物放出速度を予測する手段を提供することを裏付ける。放出速度絶対値はさらに、ポリマーと薬物の混和性、水への薬物溶解性、薬物分子サイズ、およびナノ粒子内の薬物相構造(非晶質または結晶質)などの他の因子に応じて異なる。
【0158】
MDSC実験で観察された総熱流の可逆性熱成分は、吸熱ガラス転移付近で起こるエンタルピー緩和から生じる人為産物を含まない。MDSC自体は、従来のDSCと比較すると、Tg値をより正確に決定する。MDSC分析(表7Bで示されるデータ)から、37.8℃でTgを示す、PLA−PEG(16kDa−5kDa)とPLA(Mn=6.5kDa)の混合物から製造されたナノ粒子は、封入薬物の約75%が放出媒体にさらされて最初の4時間以内に放出されるという「迅速」放出プロファイルも示すことが例証されている。これは、ナノ粒子ガラス転移温度が37℃(生理学的温度)に近い場合、高度なセグメント運動によって封入薬物の相対的に迅速な放出が引き起こされることを示している。ナノ粒子がPLA−PEG(16kDa−5kDa)のみで構成されている場合、約65%の封入薬物が、同様な期間にわたって放出された。このより高いTg(40.1℃)試料におけるより低い程度のセグメント運動によって、それに応じて、封入薬物の放出が遅くなる。PLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量PLA(Mn=75kDa)の混合物から製造されたナノ粒子におけるこの傾向は続き、より高いTg(=43.0℃)でさえ、それに応じて、封入薬物のより遅い放出が生じ、最初の4時間に薬物の約50%のみが放出される。エントリー4(表7B)は、封入薬物を含まないPLA−PEG(16kDa−5kDa)で構成されるポリマーナノ粒子のガラス転移温度を示す。封入薬物を含有する、同様なポリマー組成の薬物含有ナノ粒子との比較によって、ドセタキセルが測定可能な程度に、ポリマーナノ粒子のガラス転移温度に影響を及ぼすことが例証されている。この場合には、封入ドセタキセル約10重量%がTg値を0.5℃上昇させる。このデータから、薬物含有ナノ粒子のTg値は、相当する薬物放出速度を正確に予測する手段を提供することが示されている。ポリマー成分および/または薬物とのその物理的混合物のガラス転移温度などの他の測定値は、一般的な傾向、例えばポリマー分子量の変化の作用を提供することができる。しかしながら、かかる測定値から、特定の薬物保有ナノ粒子を迅速放出性、穏やかな放出性、または徐放性として分類することはできない。
【0159】
溶融物または沈殿から回収されたPLA−PEG、および低(Mn=6.5kDa)または高(Mn=75kDa)モル質量PLAに関する、図3から7に示すDSCデータから、その熱履歴ならびに分析前のポリマー処理の経路に対する、これらのポリマーナノ粒子成分の熱的挙動の強い依存性が例証されている。したがって、ポリマー成分に関して確認されるガラス転移は、ナノ粒子の熱特性に直接相関していない。ナノ粒子作製のプロセスは、特異的な熱履歴を成分ポリマーに与え、さらにPLA−PEGなどのブロックコポリマーに、特異的な形態的および相特性を与える。
【0160】
ポリマー成分の熱的挙動は、予測可能な様式でガラス転移温度に影響する。例えば、低分子量PLA(Mn=6.5kDa)とPLA−PEG(16kDa−5kDa)の1:1(w/w)混合物から製造されたナノ粒子は、高分子量PLA(75kDa)を除く同様な混合物から製造されたナノ粒子によって示されるよりも低いTgを示す。この結果は、Tg(75kDaPLA)が、Tg(6.5kDaPLA)よりも約20℃高いことに基づく。Tgの差から、ナノ粒子組成物の選択によって、薬物放出速度を調節することが可能となる。しかしながら、かかるポリマー成分から製造されたナノ粒子の実際の転移温度は、ポリマー成分のTg値から予測することはできない。
【0161】
実施例8:薬物放出速度に対する温度の影響
「迅速」、「通常」、「徐」放出性システムにおけるナノ粒子ガラス転移温度の役割をさらに試験するために、37℃以外の3通りの温度で薬物放出速度を試験した。これらの温度は、32℃、つまり最低開始温度(Tb)よりも3〜5℃低い温度、および52℃、最高転移最終温度(Te)よりも3〜5℃高い温度を含んだ。さらに、放出速度を25℃で決定し、3種すべてのナノ粒子システムのTgよりもかなり下回る温度で挙動を確認した。
【0162】
図14に示す1〜4時間の期間を拡大して、この結果を図13に示す。ガラス転移(Tb)温度の異なる開始にもかかわらず、25℃にて、3種すべてのナノ粒子システムが、同様な薬物放出速度を示した(図13および14で三角として示されるデータポイントを参照)。この観察から、3種すべてのシステムのTgよりもかなり下回る温度にて、薬物輸送および放出の速度が類似しており、かつ比較的遅いといったようなすべての場合において、セグメント運動が制限されることが確認されている。
【0163】
52℃にて、3種すべてのナノ粒子システムは加速された薬物放出速度を示し、そのガラス転移温度をかなり上回る温度にて、ナノ粒子コアが等しく塑性(ゴム状)であることが確認された。したがって、薬物拡散速度は、52℃にて最初の30分以内にほぼすべての薬物が放出される場合と同等であり、放出速度はほぼ同一となる(図13および14において四角で示されるデータを参照)。3種すべてのナノ粒子システムについて52℃で認められたバースト放出は、37℃で認められる傾向を反映し、「徐」放性、「通常」放出性および「迅速」放出性システムは、その薬物含有量の45%、65%、および75%を直ちに放出する。
【0164】
32℃では、放出速度は同様であるが、25℃で確認される速度よりも高い(すべてのシステムで)(図13および14において丸で示されるデータを参照)。これらの結果から、ポリマーコアの薬物拡散係数および水溶性の温度依存性が示唆されており、どちらのパラメーターも温度が高くなると増加し、薬物放出速度の増加が認められた。
【0165】
実施例9ドセタキセルナノ粒子
以下の配合:理論的薬物10%(w/w)およびポリマー−PEG(16−5、30−5、50−5、または80−5 PLA−PEG)90%(w/w)を用いて、種々のPLA−PEGコポリマーを含むドセタキセルナノ粒子を製造する。全固形分%=20%である。使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。1グラムのバッチサイズに関して、薬物100mgをポリマー−PEG(16−5、30−5、50−5、または80−5 PLA−PEG)900mgと混合する。
【0166】
以下のように、ドセタキセルナノ粒子を製造する。薬物/ポリマー溶液を調製するために、適切な量の酢酸エチルおよびベンジルアルコールと共に、適切な量のドセタキセル、およびポリマーをガラスバイアルに添加する。薬物およびポリマーが完全に溶解するまで、混合物をボルテックスする。
【0167】
水溶液を調製する。16−5 PLA−PEG製剤の水相は、水中にコール酸ナトリウム0.5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。30−5 PLA−PEG製剤は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。全固形分%=20%である。50−5 PLA−PEG製剤の水相は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。全固形分%=20%である。80−5 PLA−PEG製剤の水相は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。全固形分%=20%である。より高い分子量のポリマー−PEG(つまり、30−5、50−5、または80−5 PLA−PEG)を使用した場合、水相中のコール酸ナトリウム界面活性剤の濃度は、16−5 PLA−PEGを含む粒子と同様なサイズのナノ粒子を得るために、0.5%から5%へと増加する。具体的には、適切な量のコール酸ナトリウムおよび脱イオン水を瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合する。続いて、適切な量のベンジルアルコールおよび酢酸エチルをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合する。
【0168】
水溶液に有機相を5:1(水相:油相)の比で合わせることによって、エマルジョンが形成される。有機相を水溶液に注ぎ、室温でハンドホモジナイザーを使用してホモジナイズして、粗いエマルジョンが形成される。続いて、この溶液を高圧ホモジナイザー(110S)に供給して、ナノエマルジョンが形成される。
【0169】
攪拌プレート上で攪拌しながら、5℃未満の冷たい脱イオン水中にエマルジョンをクエンチする。クエンチとエマルジョンの比は8:1である。次いで、水中のTween80をクエンチされたエマルジョンに25:1(Tween80:薬物)の比で添加する。
【0170】
接線フロー濾過(TFF)に続いて、ダイアフィルトレーションを通してナノ粒子を濃縮し、溶媒、未封入薬物およびTween80(可溶化剤)を除去する。クエンチされたエマルジョンを最初に、300KDa Pall cassette(2つの0.1m2膜)を使用したTFFを通して、容積約100mLに濃縮する。これに続いて、冷たい脱イオン水約20ダイア容積(2L)を用いてダイアフィルトレーションを行う。その体積は、収集前に最小限に抑えられ、次いで、冷水100Lを容器に添加し、すすぎのために膜を通してポンピングする。合計約100〜180mLの材料をガラスバイアルに収集する。より小さなTFFを使用して、ナノ粒子をさらに、最終容積約10〜20mLに濃縮する。
【0171】
濾過されていない最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ある容積の最終スラリーを風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させる。続いて、ナノ粒子の重量を乾燥スラリーの容積で決定する。濃縮ショ糖(ショ糖0.666g/全体g)を最終スラリー試料に添加し、ショ糖10%の最終濃度が得られる。
【0172】
0.45μm濾過された最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ショ糖を添加する前に、0.45μmシリンジフィルターを使用して、所定の容積の最終スラリー試料を濾過する。次いで、ある容積の濾過試料を風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させ、その重量を重量測定で決定する。濾過されていない最終スラリーの残存試料をショ糖と共に凍結する。
【0173】
表Aは、上述のように製造されたドセタキセルナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表A】
表Aに示すように、50−5 PLA−PEGと80−5 PLA−PEGを含むドセタキセルナノ粒子によって、それぞれ約2.75%および3.83%の薬物ローディングが得られる。
【0174】
生体外放出試験を上述のドセタキセルナノ粒子で行う。図15に図示されるように、50−5 PLA−PEGまたは80−5 PLA−PEGを使用して作製されたナノ粒子は、それより低い分子量のPLA−PEGを有するナノ粒子と比較して、ナノ粒子からのドセタキセルの放出を遅くした。
【0175】
実施例10ボルテゾミブナノ粒子
以下の配合:理論的薬物30%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5、30−5、50−5、65−5、または80−5 PLA−PEG)70%(w/w)を用いて、種々のPLA−PEGコポリマーを含むボルテゾミブナノ粒子を製造する。全固形分%=20%である。使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。1グラムのバッチサイズに関して、薬物300mgをポリマー−PEG(16/5、30−5、50−5、65−5、または80−5 PLA−PEG)700mgと混合する。
【0176】
ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ボルテゾミブナノ粒子を製造する。
【0177】
表Bは、上述のように製造されたボルテゾミブナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表B】
生体外放出試験を、上述のボルテゾミブナノ粒子で行う。図16で図示するように、50−5 PLA−PEGを組み込むことによって、ナノ粒子からのボルテゾミブの放出が遅くなった。
【0178】
実施例11ビノレルビンナノ粒子
以下の配合:理論的薬物20%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5または50−5 PLA−PEG)80%(w/w)を用いて、16−5または50−5 PLA−PEGコポリマを含むビノレルビンナノ粒子を製造する。16−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=20%であり;50−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=30%である。すべてのナノ粒子に関して、使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。
【0179】
ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ビノレルビンナノ粒子を製造する。
【0180】
表Cは、上述のように製造されたビノレルビンナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【0181】
【表C】
上述のビノレルビンナノ粒子について生体外放出試験を行う。図17に図示するように、50−5 PLA−PEGを使用して製造されたナノ粒子は、16−5 PLA−PEGで製造されたナノ粒子と比較して、ナノ粒子からのビノレルビンの放出が遅くなった。
【0182】
実施例12ビンクリスチンナノ粒子
以下の配合:理論的薬物20%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5または50−5 PLA−PEG)80%(w/w)を用いて、16−5または50−5 PLA−PEGコポリマーを含むビンクリスチンナノ粒子を製造する。16−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=40%であり;50−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=20%である。すべてのナノ粒子に関して、使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。
【0183】
ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ビンクリスチンナノ粒子を製造する。
【0184】
表Dは、上述のように製造されたビノレルビンナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表D】
上述のビンクリスチンナノ粒子について生体外放出試験を行う。図18に図示するように、50−5 PLA−PEGを組み込むことによって、ナノ粒子からのビンクリスチンの放出が遅くなった。
【0185】
実施例13ベンダムスチンナノ粒子
以下の配合:理論的薬物17%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5または50−5 PLA−PEG)83%(w/w)を用いて、塩化メチレン中ポリマー濃度20%(w/w)にて、16−5または50−5 PLA−PEGコポリマーを含むベンダムスチンHClナノ粒子を製造する。ベンダムスチンHClを1:1の比でテトラフェニルホウ酸ナトリウムで錯体化する。全固形分%=40%である。使用される溶媒は、ベンジルアルコール32%および塩化メチレン68%(w/w)である。
【0186】
エマルジョンを氷浴中で10分間回転させながら、真空を引くことによって回転蒸発器上のエマルジョンから塩化メチレンが除去される、更なる工程を有する、ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ベンダムスチンナノ粒子を製造する。
【0187】
表Eは、上述のように製造されたビノレルビンナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表E】
上述のベンダムスチンナノ粒子について生体外放出試験を行う。図19に図示するように、50−5 PLA−PEGを使用して製造されたナノ粒子は、16−5 PLA−PEGを使用して製造されたナノ粒子と比較して、ナノ粒子からのベンダムスチンの遅い放出を示した。
【0188】
実施例14 エポチロンでのナノ粒子の製造
以下の配合:
理論的薬物10%(w/w)
ポリマー−PEG、16−5 PLA−PEGまたは50−5 PLA−PEG90%(w/w)
全固形分%=20%
溶媒:ベンジルアルコール21%、酢酸エチル79%(w/w)
を用いて、エポチロンBナノ粒子を製造した。
【0189】
1グラムのバッチサイズに関して、薬物100mgをポリマー−PEG:16−5または50−5 PLA−PEG900mgと混合した。
【0190】
エポチロンBナノ粒子を以下のように製造した。薬物/ポリマー溶液を調製するために、酢酸エチル3.16gと共に、エポチロンB100mgを7mLガラスバイアルに添加した。薬物の大部分が溶解するまで、混合物をボルテックスした。続いて、ベンジルアルコール0.840gをガラスバイアルに添加し、薬物が完全に溶解するまでボルテックスした。最後に、ポリマー−PEG900mgを混合物に添加し、すべて溶解するまでボルテックスした。
【0191】
16−5 PLA−PEG製剤または50−5 PLA−PEG製剤のいずれかの水溶液を調製した。16−5 PLA−PEG製剤の水溶液は、水中にコール酸ナトリウム0.1%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有した。具体的には、コール酸ナトリウム1gおよび脱イオン水939gを1L瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。続いて、ベンジルアルコール20gおよび酢酸エチル40gをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、すべて溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。50−5 PLA−PEG製剤の水溶液は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有した。具体的には、コール酸ナトリウム50gおよび脱イオン水890gを1L瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。続いて、ベンジルアルコール20gおよび酢酸エチル40gをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、すべて溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。
【0192】
水溶液に有機相を5:1(水相:油相)の比で合わせることによって、エマルジョンを形成した。有機相を水溶液に注ぎ、手持ち式ホモジナイザーを使用して室温で10秒間ホモジナイズして、粗いエマルジョンを形成した。続いて、この溶液を高圧ホモジナイザー(110S)を通して供給した。16−5 PLA−PEG製剤に関しては、2つの別個のパスに対して圧力を9000psiに設定し、ナノエマルジョンを形成した。50−5 PLA−PEG製剤に関しては、2つの別個のパスに対して圧力を9000psiに設定し、ゲージ圧力45psi(9900psi)に設定し、次いで更なる2つのパスに対してゲージ圧60psi(13200psi)に増加した。
【0193】
攪拌プレート上で攪拌しながら、エマルジョンを5℃未満の冷たい脱イオン水中にクエンチした。クエンチとエマルジョンの比は8:1であった。次いで、水中のTween80 35%(w/w)をクエンチされたエマルジョンに25:1(Tween80:薬物)の比で添加した。
【0194】
接線フロー濾過(TFF)に続いて、ダイアフィルトレーションを通してナノ粒子を濃縮し、溶媒、未封入薬物および可溶化剤を除去した。クエンチされたエマルジョンを最初に、300KDa Pall cassette(2つの0.1m2膜)を使用したTFFを通して容積約100mLに濃縮した。これに続いて、冷たい脱イオン水約20ダイア容積(2L)を用いてダイアフィルトレーションを行った。その体積は、収集前に最小限に抑えられ、次いで、冷水100Lを容器に添加し、すすぎのために膜を通してポンピングした。約100〜180mLの材料をガラスバイアルに収集した。より小さなTFFを使用して、ナノ粒子をさらに、最終容積約10〜20mLに濃縮した。
【0195】
濾過されていない最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ある容積の最終スラリーを風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させた。続いて、ナノ粒子の重量を乾燥スラリーの容積で決定した。濃縮ショ糖(ショ糖0.666g/全体g)を最終スラリー試料に添加し、ショ糖10%の最終濃度が得られた。
【0196】
0.45μm濾過された最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ショ糖を添加する前に、0.45μmシリンジフィルターを使用して、最終スラリー試料の一部を濾過した。次いで、ある定容積の濾過試料を風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させた。濾過されていない最終スラリーの残存試料を、ショ糖(10重量)をそれに溶解した後に凍結した。
【0197】
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析した。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラント(一般的)およびNNLS法(TP008)を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方を使用して、希釈水性懸濁液中でHoriba LS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical model(TP009)を使用して解析した。
【0198】
表Fは、上述の粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表F】
【0199】
実施例15 生体外での放出
ナノ粒子からのエポチロンBの生体外放出を決定するために、ナノ粒子をPBS放出媒体に懸濁し、37℃の水浴でインキュベートした。試料を特定の時点で収集した。超遠心分離法を用いて、ナノ粒子から放出薬物を分離した。
【0200】
図20は、16−5 PLA−PEGおよび50/5 PLA/PEG製剤についての生体外放出研究の結果を示す。データから、1時間後に16/5 PLA/PEG製剤からEpoBが100%放出されたことが示されている。50/5 PLA/PEG製剤は、1時間の時点で0%放出し、2時間で60%放出し、4時間で70%放出し、24時間の時点で80%を超える薬物放出を有する、より徐放性の製剤である。この2種類の製剤によって、ナノ粒子内にエポチロンBを封入する能力、および製剤に使用されるポリマーの種類の選択によって生体外放出が影響を受ける能力が実証されている。
【0201】
実施例16 ナノ粒子の製造−ブデソニド
別段の指定がない限り、以下のようにすべてのブデソニドバッチを製造した。薬物およびポリマー(16/5 PLA−PEG)成分を油相有機溶媒システム、一般に酢酸エチル(EA)70%およびベンジルアルコール(BA)30%に固形分20または30重量%で溶解した。水相は主に、界面活性剤としてのコール酸ナトリウム(SC)と共に、ベンジルアルコール2%および酢酸エチル4%で予め飽和された水からなる。油相:水相比1:5または1:10にてローターステーター均質化の下で、油相を水相に加えることによって、粗いO/W型エマルジョンを調製した。100μmZ相互作用チャンバを介して9000psiにてマイクロフルイディクス高圧ホモジナイザー(一般にM110S pneumatic)を通して、その粗いエマルジョンを処理することによって、微細エマルジョンを調製した。次いで、クエンチ:エマルジョン比10:1または5:1にて、エマルジョンを脱イオン水クエンチ中にクエンチした。次いで、ポリソルベート80(Tween80)をプロセス可溶化剤として添加し、未封入薬物を可溶化した。次いで、限外濾過に続いてダイアフィルトレーションでバッチを処理し、溶媒、未封入薬物および可溶化剤を除去した。このプロセスを図1および2に図示する。
【0202】
Brookhaven DLSおよび/またはHoribaレーザー回折によって、粒径測定を行った。薬物ローディングを決定するために、スラリー試料をHPLCおよび[固形分]分析にかけた。次いで、凍結前に、スラリー保持物(retain)をショ糖で10%に希釈した。別段の指定がない限り、記載のすべての比は重量に基づく。未封入薬物を除去するために、クエンチ後にTween80を使用してもよい。
【0203】
生体外放出方法を用いて、室温および37℃条件の両方でナノ粒子からの初期のバースト段階放出を決定する。APIのためにナノ粒子を沈降条件に置き、水浴中で混合する。放出薬物および封入薬物は、超遠心機を用いて分離される。
【0204】
遠心システムは以下のように行われる:130ml放出媒体(1×PBS中2.5%ヒドロキシルβシクロデキストリン)を含むガラス瓶に、脱イオン水中のブデソニドナノ粒子(ブデソニドPLGA/PLAナノ粒子約250μg/mL)のスラリー3mLを入れ、振盪機を使用してそれを150rpmで連続して攪拌する。所定の時点で、試料のアリコート(4mL)を取り出した。試料を236,000gにて60分間遠心分離し、上清をブデソニド含有量についてアッセイして、放出されたブデソニドを測定する。
【0205】
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析する。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラントおよびNNLS法を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方を使用して、希釈水性懸濁液中でHoriba LS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical model(TP009)を使用して解析した。
【0206】
実施例17
以下のパラメーターを変化させることによってQ:E比を変化させて(5:1、15:1および30:1);初期[ブデソニド]を10%に低減することによって「固形分」を30%に増加して;界面活性剤を0.5%に低減することによって粒径を増加して;様々な薬物ローディングを有するナノ粒子を作製した。
【0207】
固形分30%、薬物10%で単一のエマルジョンを生成し、Q:E比5:1、15:1および30:1にてエマルジョンを3つの異なるクエンチに分割した。粒径は137nmであり、薬物ローディングは3.4%〜4%の範囲であった。薬物ローディングの増加は、[固形分]および粒径が増加によるものであり、Q:E比の変化は、薬物ローディングに対して有意な影響を及ぼさないように思われた。
【0208】
実施例16の製剤およびプロセスを用いて、固形分30%を用いて、スケールアップのために10gバッチを調製し、10%マイクロフルイディクスM110EH電気高圧ホモジナイザーを使用して、200umZチャンバを用いて900psiにてこのバッチを製造した。粒径は113nmであり、薬物ローディングは3.8%(バッチ55−40,対照)であった。
【0209】
実施例18 ナノ粒子
実施例16の基本手順および以下のパラメーターを用いて、ナノ粒子の種々のバッチを調製した。
固形分40%で中MWのPLA(IV(インヘレント粘度)=0.3)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号52−198
[固形分]40%、薬物10%を有し、酢酸エチル/ベンジルアルコール(60/40)を使用した16/5 PLA−PEG:バッチ番号58−27−1
[固形分]40%、[薬物]5%を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号58−27−2
固形分40%で高MWのPLA(IV=0.6〜0.8)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号41−171−A
DSPE−PEG(2k)を有する高MWのPLA(IV=0.6〜0.8):バッチ番号41−171−Bおよび61−8−B
固形分75%で高MWのPLA(IV=0.6〜0.8)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号41−176
固形分75%および50%でドープされた高MWのPLA(IV=0.6〜0.8)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号41−183−AおよびB
インヘレント粘度0.3を有する、中MWのPLAは、Surmodics(aka Lakeshore(LS))から入手した。16/5 PLA−PEGは、Boehringer Ingelheim(バッチ41−176)またはPolymer Source(バッチ41−183)から入手した。Mn80kDa、Mw124kDaを有する高MWのPLAはSurmodicsから入手した。
【0210】
表Gは、ナノ粒子バッチのサイズおよび薬物ローディングを示す:
【表G】
各バッチの生体外放出を図21に示す。注:1時間の時点でのバッチ41−171−Aは、遠心されていない試料の1つによって生じたアウトライヤーであり、極端に低い読み取り値である。バッチ41−171−B(脂質製剤)と41−183−A(高MWのPLA)のどちらも、2時間の時点で50%以下の薬物放出を示し、他の製剤は2時間以内に70〜100%を放出していた。
【0211】
実施例19 動物研究用のバッチ
10gバッチを調製し、バッチ41−176および41−183−Aで見られる薬物ローディングおよび放出を確認しただけでなく、動物研究用の材料も得た。粒径は183nmであり、薬物ローディングは5.03%であった。水相[界面活性剤]を除いては、製剤およびプロセスのパラメーターを直線的に倍率変更した。以下の表Hは、バッチ間の主要な差を列挙する。
【0212】
【表H】
PK研究のために、10gバッチ、バッチ番号62−30を選択し、薬物放出について最初に試験して、図22に示すように、その放出が41−176および41−183−Aに類似していることを確認した。
【0213】
実施例20 ラットの研究:薬物動態学
0時点にて、ラット(頚静脈にカニューレが挿入された雄のSDラット,約300g)に、ブデソニドまたはブデソニド封入受動的標的化ナノ粒子(PTNP)(実施例16で製造された)を0.5mg/kgで単回静脈内投与した。投与後の様々な時点で、頚静脈カニューレから、リチウムヘパリンを含有するチューブに血液試料を採取し、血漿を調製した。血漿からブデソニドを抽出し、続いてLCMS分析によって、血漿レベルを決定した。このPK研究からの結果を図23に示す。
【0214】
コポリマーナノ粒子にブデソニドを封入することによって、最高血漿中濃度(Cmax)が11倍増加し、半減期(t1/2)が4倍増加し、薬物血中濃度時間曲線下面積(AUC)が36倍増加した。ブデソニドの封入によって、分布容積(Vz)も1/9に減少し、血漿クリアランス(Cl)も1/37に減少する。これらのパラメーターそれぞれが、ブデソニドのナノ粒子封入によって、ステロイドの組織分布を犠牲にして、ブデソニドの血漿局在化が促進されることを示している。表Iは、ブデソニドおよびブデソニドPTNPの薬物動態学的分析を説明する。
【0215】
【表I】
【0216】
実施例21 炎症性疾患のラットモデル
炎症の有効性モデルとして炎症性腸疾患(IBD)のモデルでブデソニドおよびブデソニドPTNPを比較した。このモデルでは、雌のラットに24時間間隔にてインドメタシン8mg/kgで2回皮下投与し、小腸においてクローン病で発生する病変と似ている病変を誘発した。インドメタシン処置の1日前(−1日目)に、賦形剤、ブデソニド(0.02、0.2または2mg/kg)またはブデソニドPTNP(0.02、0.2または2mg/kg)の静脈内投与による毎日の処置、またはデキサメタゾン(0.1mg/kg)の経口投与による毎日の処置を開始し、合計5日間(−1日〜3日)続けた。動物を4日目に安楽死させ、小腸内のリスクのある10cm領域に、肉眼での病態についてスコアをつけ、計量した。
【0217】
スコア0が正常であり、スコア5がIBD症状が原因の死を示す、疾患スコアリングシステムを用いた場合、正常なラットは平均スコア0、および平均腸管重量0.488gを有する。それと異なり、インドメタシン誘発IBDの賦形剤処理された対照は、平均臨床スコア2.7(図24)、平均腸管重量2.702g(図25)を有した。用量0.02mg/kg(52%減少)、0.2mg/kg(53%減少)および2mg/kg(59%減少;図24)にてブデソニドで処理した後、腸管のスコアは、正常に向かって有意に減少した。同じように、用量0.02mg/kg(59%減少)、0.2mg/kg(96%減少)および2mg/kg(93%減少;図24)にてブデソニドPTNPで処理した後、腸管のスコアは、正常に向かって有意に減少した。同用量のブデソニド不含薬物で処理された動物と比較して、ブデソニドPTNP0.2mg/kg(94%)またはブデソニドPTNP2mg/kg(85%)で処理することによって、小腸のスコアもまた有意に減少した(図25)。
【0218】
用量0.02mg/kg(52%減少)、0.2mg/kg(53%減少)および2mg/kg(59%減少;図8)にてブデソニドで処理した後、小腸重量が正常に向かって有意に減少した。同じように、用量0.02mg/kg(64%減少)、0.2mg/kg(93%減少)および2mg/kg(90%減少;図25)にてブデソニドPTNPで処理した後、腸管の重量は、正常に向かって有意に減少した。同用量のブデソニド不含薬物で処理された動物と比較して、ブデソニドPTNP0.2mg/kg(86%)またはブデソニドPTNP2mg/kg(74%)で処理することによって、小腸の重量もまた有意に減少した(図24)。この研究の結果から、ブデソニドまたはブデソニドPTNPで毎日、静脈内投与により処置することによって、ラットにおけるインドメタシン誘発炎症性腸疾患と関連する臨床パラメーターが有意に抑制され、ブデソニドPTNP処置は、相当する用量レベルでのブデソニド処置と比較して有意に有利な効果を有することが示されている。
【0219】
実施例22−交互コポリマーを有する粒子
実施例16の基本手順に従って、以下のようにLA−PEGコポリマーと共にブデソニドからナノ粒子を形成した:
50/5 PLA−PEG:(PLA Mw=50;PEG Mw=5);バッチ番号55−106−A
50/5 PLA−PEGおよび高MW(75Mn PLA:バッチ番号55−106−B
80/10 PLA−PEG:バッチ番号55−106−A
80/10 PLA−PEGおよび高MW PLA:55−106−B
バッチBおよびDは、ポリマー全体の50%でドープされた高MWの75Mn PLAを有した。表Jは薬物ローディング重量%を示す:
【0220】
【表J】
薬物放出研究を行い、コポリマーMWが変化することによって、薬物放出の速度を遅くするのに影響があるかどうかを確かめた。図26は、バッチ番号55−106−B、つまり高MW PLAがドープされた50/5 PLA−PEGを示し、対照製剤62−30に類似していると思われる。
【0221】
均等物
当業者であれば、単なる慣例の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解されるであろう、あるいは確かめることができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
参照による援用
本明細書に記載のすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、および他の参考文献の内容全体が、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、それぞれが全体として参照により本明細書に援用される、2009年12月15日出願の米国特許出願第61/286,559号、2010年2月22日出願の米国特許出願第61/306,729号、2010年10月22日出願の米国特許出願第61/405,778号、2009年12月16日出願の米国特許出願第61/286,831号、および2009年12月16日出願の米国特許出願第61/286,897号への優先権を主張する。
【0002】
特定の薬物(例えば、特定の組織または特定の細胞型に標的化される、または特異的な患部組織には標的化されるが、正常な組織には標的化されない)を患者に送達する、または薬物の放出を制御するシステムは長い間、有益であると認められている。例えば、作用薬を含み、かつ特定の組織または細胞型、例えば特異的な患部組織に位置付けることができる療法は、治療の必要のない体の組織における薬物の量を低減することができる。これは、薬物の細胞毒性用量が、周囲の非癌性組織を死滅させることなく癌細胞に送達されることが望まれる、癌などの症状を治療する場合に特に重要である。さらに、かかる療法は、抗癌療法において一般的な、望ましくなく、時には生命にかかわる副作用を低減させるかもしれない。例えば、ナノ粒子療法は、サイズが小さいために、体内での認識を逃れ、例えば有効量の時間、安定に維持しながら、送達を標的化し、制御することが可能となる。
【0003】
かかる治療および/または放出制御および/または標的療法を提供する療法は、有効量の薬物も送達しなければならない。有利な送達特性を有するのに、ナノ粒子のサイズを十分に小さく維持しながら、各ナノ粒子と結合した適切な量の薬物を有するナノ粒子システムを製造することは難題である。例えば、多量の治療薬をナノ粒子にローディングすることが望まれると同時に、多量すぎる薬物ローディングが用いられたナノ粒子製剤は、実際の治療に使用するにはナノ粒子が大きすぎる。さらに、例えば治療薬の迅速または即時放出を実質的に制限するために、治療用ナノ粒子を安定な状態のままにすることが望ましい。
【0004】
したがって、癌などの疾患を治療するために、患者の副作用も低減しながら、治療的レベルの薬物を送達することができる、新規なナノ粒子製剤ならびにかかるナノ粒子および組成物を製造する方法が必要とされている。
概要
一態様において、本発明の開示内容は、ガラス転移温度約37〜約50℃を有する多数のナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液を提供する。治療薬は、ドセタキセルなどのタキサン剤とすることができる。疎水性部分は、例えばポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択することができる。親水性部分は、例えばポリ(エチレン)グリコールから選択することができる。ナノ粒子はさらに、ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含むことができる。
【0005】
一実施形態において、ガラス転移温度約37〜約38℃を有する、多数の迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。かかるナノ粒子は、生体外(in vitro)溶解試験において4時間の時点で治療薬の約70〜約100%を放出する。
【0006】
他の実施形態において、ガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性(moderate release)の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。かかる治療用ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50〜約70%を放出する。
【0007】
他の実施形態において、ガラス転移温度約42〜約50℃を有する、多数の徐放性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、そのナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、を含む医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。かかるナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50%以下を放出する。
【0008】
一実施形態において、開示されるナノ粒子は、治療薬を約0.1〜約35重量%、または0.2〜約20重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を約0〜約75重量%、または約0〜約50重量%含むことができるる。他の実施形態において、コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約16kDaを有し、コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有する。一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は数平均分子量約8.5kDaを有する。他の実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は数平均分子量約75kDaを有する。
【0009】
一実施形態において、例えば、開示される水溶液中のナノ粒子のガラス転移温度は、約37〜約39℃、または約37〜約38℃である。他の実施形態において、ナノ粒子の水性懸濁液は約39〜約41℃であってもよく、または約42〜約50℃(例えば徐放性粒子については、例えば約41〜45℃)であり得るガラス転移温度を有していてもよい。ガラス転移温度は、熱流束示差走査熱量測定または入力補償示差走査熱量測定によって測定することができる。
【0010】
一実施形態において、開示されるナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で(または任意に、1、2、8または24時間の時点で)決定されるように、治療薬の約50%未満を放出する。他の実施形態では、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で(または任意に、1、2、8または24時間の時点で)決定されるように、治療薬の約50〜約70%を放出する。他の実施形態において、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で(または任意に、1、2、8または24時間の時点で)決定されるように、治療薬の約70〜約100%を放出する。
【0011】
他の態様において、本発明の開示は、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法であって:a)第1治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第1ブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)と、を含む少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子を提供する工程;b)少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;c)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子から薬物放出速度を決定する工程;d)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子の、ナノ粒子ガラス転移温度と薬物放出速度との相関性を決定する工程;を含む、方法を提供する。
【0012】
i)第1多数ポリマーナノ粒子を含む懸濁液を提供する工程であって、ナノ粒子がそれぞれ、治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマー、ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーを含む、工程;ii)懸濁液のガラス転移温度を決定する工程;iii)第1多数ポリマーナノ粒子中のホモポリマーの量を増加または低減する工程;iv)所望のガラス転移温度を有する懸濁液が得られるまで、工程i)〜iii)を繰り返す工程;を含む、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法が提供される。
【0013】
a)治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーと、を含むナノ粒子を有する多数の懸濁液を別々に調製する工程であって、各懸濁液が別個のコンパートメントにあり、各懸濁液が、所定の分子量のブロックコポリマーと、存在する場合には、所定の分子量のホモポリマーを含む工程;;b)懸濁液のそれぞれのガラス転移温度を決定する工程;c)所定のガラス転移温度を有する懸濁液を同定する工程;を含む、特異的な放出速度を有する懸濁液を同定するためにナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】開示のナノ粒子を形成するエマルジョンプロセスのフローチャートである。
【図2】開示のエマルジョンプロセスのフローダイヤグラムである。
【図3】溶融重合から回収され、かつ未知の冷却速度で冷却された場合の、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線である。
【図4A】2成分非溶媒混合物(ジエチルエーテル/ヘキサン=70/30(v/v))中へのポリマー溶液(ジクロロメタン中100mg/mL)の沈殿から回収された場合の、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線である。
【図4B】増加している分子量のPLA−PEGブロックコポリマーにおいて確認されるガラス転移を示すDSC曲線である。PLAブロック数平均分子量、Mn=10KDa(低い曲線)、15KDa、30KDaおよび50KDa。
【図4C】PLA−PEGブロックコポリマーにおけるPLAの分子量(Mn)に対するTgの依存性を示す。
【図5】沈殿プロセスから回収された場合のポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=6kDa)のDSC曲線である。
【図6A】沈殿プロセスから回収された場合のポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=75kDa)のDSC曲線を表す。
【図6B】数平均分子量(Mn)1.7KDa(低い)、4.3KDa、6KDa、10KDa、22KDa、および120KDaのホモポリマーポリ(D,L−ラクチド)におけるガラス転移温度を示す、変調型DSC曲線を表す。
【図6C】PLAホモポリマーの数平均分子量(Mn)に対するTgの依存性を示す。
【図7】ナノ粒子のDSC分析で確認される吸熱転移を定義するために使用される5ポイントの図解である。
【図8】PLA−PEG(Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)と低分子量PLAホモポリマー(Mn=6.5kDa)との混合物で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線である。
【図9】粒子の唯一のポリマー成分としてのPLA−PEG(Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線である。
【図10】PLA−PEG(Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)と高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との混合物で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線である。
【図11】PLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との混合物で構成されるナノ粒子で確認される吸熱ガラス転移を示すDSC曲線を示す。
【図12】プロットの説明文で詳述される、異なるポリマー成分をベースとするナノ粒子からのドセタキセル(DTXL)放出速度の比較である。
【図13】異なるガラス転移温度を示すナノ粒子システムからの24時間にわたる薬物放出速度に対する温度の作用を示すグラフである。
【図14】図13に示す研究の1〜4時間の期間の拡大を示すグラフである。
【図15】本明細書に開示される種々のナノ粒子のドセタキセルの生体外放出を表す。
【図16】本明細書に開示される種々のナノ粒子のボルテゾミブの生体外放出を表す。
【図17】本明細書に開示される種々のナノ粒子のビノレルビンの生体外放出を表す。
【図18】本明細書に開示される種々のナノ粒子のビンクリスチンの生体外放出を表す。
【図19】本明細書に開示される種々のナノ粒子のベンダムスチンHClの生体外放出を表す。
【図20】本明細書に開示される種々のナノ粒子のエポチロンBの生体外放出を表す。
【図21】本明細書に開示される種々のナノ粒子のブデソニドの生体外放出を表す。
【図22】本明細書に開示される種々のナノ粒子のブデソニドの生体外放出を表す。
【図23】静脈内単回投与(0.5mg/kg)後の、ブデソニドとブデソニドナノ粒子の薬物動態学を表す。
【図24】ブデソニド、ブデソニドPTNPおよびデキサメタゾンで処理した後の、IBDのモデルにおけるラットの腸での疾患スコアを示す。
【図25】ブデソニド、ブデソニドPTNPおよびデキサメタゾンで処理した後の、IBDのモデルにおけるラットの腸管重量を示す。
【図26】種々のナノ粒におけるブデソニドの生体外放出を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
少なくとも一部分、この開示内容は、ガラス転移温度約37〜約38℃を有する迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子、および/またはガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液、および/またはガラス転移温度約42〜約50℃(または約42〜約45℃)を有する多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む徐放性医薬水性懸濁液に関する。開示のナノ粒子は、治療薬を含み、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーを含むことができる。
【0016】
例えば、ガラス転移温度約37〜約38℃を有する多数の迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含み、ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約70〜約100%を放出する医薬水性懸濁液が本明細書において提供される。ガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含み、ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50〜約70%を放出する医薬水性懸濁液もまた、本明細書において提供される。他の実施形態において、ガラス転移温度約42〜約50℃を有する多数の徐放性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含み、ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で治療薬の約50%以下を放出する医薬水性懸濁液が提供される。かかる溶解試験は当技術分野でよく知られている。かかる代表的な試験は、以下の実施例7に例示される。例えば、溶解試験は、1、4、8、12日またはそれ以上の間、懸濁液を2.5重量%ヒドロキシプロピルシクロデキストリンリン酸緩衝生理食塩水(例えば0.01Mリン酸緩衝生理食塩水)に含有させることができる。
【0017】
一般に、開示の組成物は、作用薬を含むナノ粒子を含むことができる。
開示のナノ粒子は、抗腫瘍薬、例えばタキサン剤(例えば、ドセタキセル)などの作用薬を約0.1〜約40重量%、0.2〜約35重量%、約3〜約40重量%、約5〜約30重量%、10〜約30重量%、15〜25重量%、またはさらには約4〜約25重量%含むことができる。
【0018】
本明細書で開示されるナノ粒子は、本明細書に記載されるような、1種、2種、または3種以上の生体適合性および/または生分解性ポリマーを含む。例えば、意図されるナノ粒子は、生分解性ポリマーとポリエチレングリコールを含む1種または複数種のブロックコポリマーを約10〜約99重量%、生分解性ホモポリマー、例えばPLAを約0〜約50重量%、または約0〜約75重量%含むことができる。
【0019】
例示的な治療用ナノ粒子は、ポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約40〜約99、または約50〜約90重量%、ポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを約40〜約80重量%含むことができる。かかるポリ(乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約15〜20kDa(または例えば約15〜約100kDa、例えば、約15〜約80kDa)を有するポリ(乳酸)、および数平均分子量約2〜約10kDa、例えば、約4〜約6kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。例えば、開示の治療用ナノ粒子は、PLA−PEGを約70〜約90重量%、作用薬を約15〜約25重量%、またはPLA−PEGを約30〜約50重量%、PLAまたはPLGAを約30〜約50重量%(または約30〜約75重量%)、作用薬を約15〜約25重量含むことができる。かかるPLA((ポリ)乳酸)は、数平均分子量約5〜約10kDaを有していてもよい。かかるPLGA(ポリ(乳酸)−co−グリコール酸)は、数平均分子量約8〜約12kDaを有していてもよい。
【0020】
他の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子は、1種または複数種の生体適合性および/または生分解性ポリマー、例えば高分子量ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたは高分子量ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーを含む。例えば、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、ポリ(乳酸)を含み、数平均分子量約30〜約90kDa、または約40〜約90kDaを有していてもよい。他の実施形態において、ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約30〜約90kDa、または約40〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む。例えば、意図されるナノ粒子は、治療薬約0.1〜約40重量%、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約90重量%を含んでいてもよく、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約30〜約90kDa、または約40〜約90kDaを有するポリ(乳酸)を含んでいてもよい。一実施形態において、ポリ(乳酸)は、数平均分子量約30kDaを有する。他の実施形態において、ポリ(乳酸)は数平均分子量約50〜約80kDa、または約70〜約85kDaを有する。さらに他の実施形態、ポリ(乳酸)は、数平均分子量約50kDaを有する。一部の実施形態において、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、分子量約4〜約6kDa、または約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む。例えば、ポリ(エチレン)グリコールは、数平均分子量約5kDaまたは10kDaを有していてもよい。
【0021】
開示のナノ粒子は任意に、ポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)(PEG、例えばPLAのホモポリマーを含まない)を約1〜約50重量%または約1〜約70重量%含んでいてもよく、または任意に、ポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を約1〜約75重量%、または約10〜約50重量%または約30〜約50重量%含んでいてもよい。一実施形態において、開示のナノ粒子は、2種類のポリマー、例えばPLA−PEGとPLAを重量比約40:60〜約60:40、または約30:50〜約50:30、例えば約50:50で含むことができる。
【0022】
このような実質的にホモポリマーのポリ(乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)は、重量平均分子量約4.5〜約130kDa、例えば、約20〜約30kDa、または約100〜約130kDaを有していてもよい。かかるホモポリマーのPLAは、数平均分子量約4.5〜約90kDa、または約4.5〜約12kDa、約5.5〜約7kDa(例えば約6.5kDa)、約15〜約30kDa、または約60〜約90kDaを有していてもよい。例示的なホモポリマーのPLAは、数平均分子量約70または80kDaまたは重量平均分子量約124kDを有していてもよい。当技術分野で公知のように、ポリマーの分子量はインヘレント粘度に関係するかもしれない。一部の実施形態において、ホモポリマーPLAは、インヘレント粘度約0.2〜約0.4、例えば約0.4を有していてもよく;他の実施形態では、PLAは、インヘレント粘度約0.6〜約0.8を有していてもよい。例示的なPLGAは、数平均分子量約8〜約12kDaを有していてもよい。
【0023】
例えば、治療薬を約0.1〜約40重量%;生体適合性ポリマーを約10〜約90、または約10〜約99、または約70〜約99重量%含む、生体適合性の治療用ポリマーナノ粒子であって、その生体適合性ポリマーが、a)ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー(数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)を含む);b)ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー(数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む);からなる群から選択される、生体適合性の治療用ポリマーナノ粒子が本明細書で提供される。ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができ、例えば、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーは、数平均分子量約30kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができ、あるいは数平均分子量約50kDa〜約80kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaまたは10Daを有するポリ(エチレン)グリコール、例えば数平均分子量約50kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含むことができる。
【0024】
一実施形態において、開示の治療用ナノ粒子は、標的化リガンド、例えば、その必要がある被検者における前立腺癌などの疾患または障害の治療に有効な低分子量PSMAリガンドを含むことができる。特定の実施形態において、低分子量リガンドはポリマーと結合し、ナノ粒子は、特定の比のリガンド結合ポリマー(例えば、PLA−PEG−リガンド)と非官能化ポリマー(例えば、PLA−PEGまたはPLGA−PEG)を含む。ナノ粒子は、癌などの疾患または障害を治療するのに有効な量のリガンドがナノ粒子と結合するように、これらの2つのポリマーの最適な比を有することができる。
【0025】
一部の実施形態において、開示のナノ粒子はさらに、本明細書に開示されるような標的化リガンドで官能化されたPLA−PEG約0.2〜約10重量%を含み、かつ/または標的化リガンドで官能化されたポリ(乳酸)−coポリ(グリコール酸)ブロック−PEGを含むことができる。かかる標的化リガンドは、一部の実施形態において、PEGに二重結合し、例えばアルキレンリンカーを介して、例えば、PLA−PEG−アルキレン−リガンドを介してPEGに結合していてもよい。例えば、開示のナノ粒子は、PLA−PEG−リガンドまたはポリ(乳酸)−coポリ(グリコール酸)−PEG−リガンドを約0.2〜約10モル%含むことができる。
【0026】
一部の実施形態において、開示の治療用粒子および/または組成物は、色素、エバンスブルー色素などの標的化剤またはイメージング剤を含む。かかる色素は、治療用粒子に結合または会合し、または開示の組成物はかかる色素を含むことができる。例えば、エバンスブルー色素が使用され、その色素は、アルブミン、例えば血漿アルブミンと結合または会合するかもしれない。
【0027】
開示のナノ粒子は、実質的に球状(つまり、粒子は一般に、球形であるように見える)または非球状形態を有していてもよい。例えば、粒子は、膨潤または収縮すると、非球状形態となってもよい。
【0028】
開示のナノ粒子は、約1マイクロメーター未満の特有の寸法を有していてもよく、粒子のその特有の寸法は、粒子と同じ体積を有する完全な球体の直径である。例えば、粒子は、約300nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約30nm未満、約10nm未満、約3nm未満、または場合によっては約1nm未満である粒子の特有の直径を有していてもよい。特定の実施形態において、開示のナノ粒子は、直径約70〜約250nm、または約70〜約180nm、約80〜約170nm、約80〜約130nmを有していてもよい。
【0029】
一セットの実施形態において、粒子は、内部と表面を有していてもよく、その表面は、内部と異なる組成を有し、つまり、内部に存在するかもしれないが、表面には存在しない(または、逆の場合も同様)少なくとも1つの化合物があり、かつ/または少なくとも1つの化合物が、内部および表面に異なる濃度で存在する。例えば、一実施形態において、本発明のポリマー抱合体の標的化部位(つまり低分子量リガンド)などの化合物が、粒子の内部と表面の両方に存在することがあるが、粒子の内部よりも表面の濃度が高い場合には、場合によってではあるが、粒子の内部の濃度は本質的にゼロではないかもしれない、つまり粒子の内部に検出可能な量の化合物が存在する。
【0030】
場合によっては、粒子の内部は、粒子の表面よりも疎水性である。例えば、粒子の内部は、粒子の表面に対して相対的に疎水性であり、薬物または他のペイロード(payload)も疎水性であり、粒子の相対的に疎水性の中心と容易に会合する。したがって、薬物または他のペイロードは、粒子の内部に含有されることができ、粒子は、粒子周囲の外部環境からそれを保護する(または、逆の場合も同様)。例えば、被検者に投与された粒子内に含有される薬物または他のペイロードは、被検者の体から保護され、少なくとも一定の時間、体は薬物から実質的に隔離されるかもしれない。
【0031】
開示のナノ粒子は、例えば糖類を含有する溶液中で、少なくとも約24時間、約2日、3日、約4日または少なくとも約5日間、室温または25℃にて安定であることができる。
【0032】
本明細書で開示されるナノ粒子は、放出制御特性を有することができ、例えば、ある量の作用薬を患者に、例えば患者の特異的な部位に、長時間にわたって、例えば1日、1週間、またはそれ以上にわたって送達することができる。
【0033】
定義
「治療」とは、症状、疾患、障害等が改善する結果となる、いずれかの効果、例えば緩和、低減、調節または除去を含む。
「薬剤的にまたは薬理学的に許容可能な」とは、動物またはヒトに適宜投与された場合に、副反応、アレルギーまたは他の有害な反応を生じさせない分子的実体および組成物を説明するものである。ヒトに投与する場合、製剤は、生物学的製剤基準(Biologics standards)のFDA事務局によって必要とされる無菌性、発熱性、一般的安全性および純度基準を満たさなければならない。
【0034】
本明細書で使用される「医薬的に許容される担体」または「医薬的に許容される賦形剤」という用語は、薬剤投与と適合性である、あらゆる、かつすべての溶媒、分散媒体、コーティング、等張化剤および吸収遅延剤等を意味する。薬剤的に活性な物質のための、かかる媒体および作用物質(agent)の使用は、当技術分野でよく知られている。この組成物は、補足、追加機能、または増強された治療的機能を提供する、他の活性化合物も含有していてもよい。
【0035】
「個体」、「患者」または「被検者」は同義で使用され、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、最も好ましくはヒトなどの哺乳動物などの動物を含む。本発明の化合物および組成物は、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、獣医学的治療の必要がある動物、例えば、家畜(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)など他の哺乳動物に投与することもできる。「調節(Modulation)」は、アンタゴニズム(例えば、抑制)、アゴニズム、部分的アンタゴニズムおよび/または部分的アゴニズムを含む。
【0036】
本明細書において、「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師または他の臨床家によって求められる、組織、システム、動物またはヒトの生物学的応答または医学的応答を誘発する主題の化合物または組成物の量を意味する。本発明の化合物および組成物は、疾患を治療するために治療有効量で投与される。あるいは、化合物の治療有効量は、所望の治療的効果および/または予防的効果を達成するのに必要な量である。
【0037】
本明細書において、「医薬的に許容される塩(1種または複数種)」という用語は、本発明の組成物で使用される化合物で存在し得る、酸性または塩基性基の塩を意味する。本質的に塩基性である、本発明の組成物に含まれる化合物は、種々の無機酸および有機酸と多種多様な塩を形成することができる。かかる塩基性化合物の医薬的に許容される酸付加塩を製造するために使用される酸は、非毒性酸付加塩、つまり薬理学的に許容可能なアニオンを含有する塩、限定されないが、リンゴ酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチアニン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホンサン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(つまり、1、1’−メチレン−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエート))などを形成する酸である。アミノ部位を含む、本発明の組成物に含まれる化合物は、上記の酸に加えて、種々のアミノ酸と医薬的に許容される塩を形成することができる。本質的に酸性である、本発明の組成物に含まれる化合物は、種々の薬理学的に許容可能なカチオンと塩基塩を形成することができる。かかる塩の例としては、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リチウム、亜鉛、カリウム、および鉄塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0038】
ポリマー
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子は、ポリマーのマトリックスと、治療薬とを含む。
ポリマー、例えば、コポリマーを含むナノ粒子が、本明細書において意図される。種々の分子量のポリマーが、本明細書において企図され、例えばポリマーの重量は、粒子分解速度、溶解性、水の取込み、および薬物放出キネティクスに影響するかもしれない。ポリマーの分子量は、治療される被検者において粒子が妥当な期間(数時間から、1〜2週、3〜4週、5〜6週、7〜8週等の範囲)内に生分解するように調節することができる。例えば、開示の粒子は、PLAとPEGまたはPLGAとPEGのコポリマーを含み、そのPLAまたはPLGA部分は、数平均分子量約30〜約90kDaまたは約40〜約90kDaを有すことができ、PEG部分は、分子量約4〜約6kDaを有していてもよい。例示的な実施形態において、PLAまたはPLGA部分は、数平均分子量30kDa、50kDa、65kDa、または80kDaを有していてもよい。PEG部分は、分子量約5kDa、約6、7、8、または9kDa、または約lOkDaを有していてもよい。
【0039】
開示のナノ粒子は、1種または複数種のポリマー、例えばコポリマー、例えばジブロックコポリマーとすることができる第1ポリマー、任意に、例えばホモポリマーとすることができるポリマーを含むことができる。一部の実施形態において、開示のナノ粒子は、ポリマーのマトリックスを含む。開示の治療用ナノ粒子は、ポリマーマトリックスの表面と会合し得る、ポリマーマトリックス内に封入される、ポリマーマトリックスによって囲まれる、かつ/またはポリマーマトリックス全体に分散される治療薬を含むことができる。
【0040】
開示の粒子は、一部の実施形態では、通常2つ以上のポリマーの共有結合によって互いに結合されている2種類以上のポリマー(本明細書に記載のポリマーなど)を表す、コポリマーを含んでいてもよい。したがって、コポリマーは、第1ポリマーと第2ポリマーを含み、それらは互いに結合されてブロックコポリマーを形成することができ、第1ポリマーはブロックコポリマーの第1ブロックであり、第2ポリマーはブロックコポリマーの第2ブロックである。当然のことながら、当業者であれば、ブロックコポリマーは場合によっては、ポリマーの複数のブロックを含有し、かつ本明細書で使用される「ブロックコポリマー」は、1つの第1ブロックと1つの第2ブロックのみを有するブロックコポリマーのみに制限されないことを理解されよう。例えば、ブロックコポリマーは、第1ポリマーを構成する第1ブロック、第2ポリマーを構成する第2ブロック、および第3ポリマーまたは第1ポリマーを構成する第3ブロック等を含むことができる。場合によっては、ブロックコポリマーは、任意の数の第1ポリマーの第1ブロックおよび第2ポリマーの第2ブロック(特定の場合には、第3ブロック、第4ブロック等)を含有することができる。さらに、一部の例では、他のブロックコポリマーからブロックコポリマーを形成することもできることに留意されたい。例えば、第1ブロックコポリマーは、他のポリマー(ホモポリマー、バイオポリマー、他のブロックコポリマー等)と結合し、複数種のブロックを含有する新たなブロックコポリマー形成し、かつ/または他の部位に(例えば、非ポリマー部位に)結合することができる。
【0041】
一部の実施形態において、意図されるコポリマー(例えば、ブロックコポリマー)は、両親媒性であり、つまり親水性部分と疎水性部分、または比較的親水性の部分と比較的疎水性の部分を有していてもよい。親水性ポリマーは、一般に水を引き付けるポリマーとすることができ、疎水性ポリマーは、一般に水をはじくポリマーとすることができる。親水性または水性ポリマーは、例えば、ポリマーの試料を作製し、水とのその接触角(通常、ポリマーは60度未満の接触角を有するのに対して、疎水性ポリマーは60度を超える接触角を有する)を測定することによって同定することができる。場合によっては、2種類以上のポリマーの親水性は、互いに対して測定することができ、つまり第1ポリマーは、第2ポリマーよりも高い親水性とすることができる。例えば、第1ポリマーは、第2ポリマーよりも小さな接触角を有していてもよい。
【0042】
一セットの実施形態において、本明細書で意図される高分子量ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)としては、生体適合性ポリマー、つまり、例えばT細胞を介した免疫システムによる著しい炎症および/またはポリマーの急性拒絶を起こすことなく、生体被検者に挿入または注入した場合に副反応を一般に誘発しないポリマーが挙げられる。したがって、本明細書で意図される治療用粒子は、非免疫原性であってもよい。本明細書で使用される、非免疫原性という用語は、通常、循環抗体、T細胞、または反応性免疫細胞を最小レベルでのみ誘発する、またはそれらを全く誘発せず、かつ個体においてそれ自体に対する免疫応答を通常誘発しない、その天然状態の内因性成長因子を意味する。
【0043】
生体適合性とは一般に、免疫システムの少なくとも一部分による物質の急性拒絶を意味し、つまり、被検者に埋め込まれた非生体適合性物質は、被検者における免疫応答を誘発し、それは、免疫システムによる物質の拒絶が適切にコントロールできないほど激しく、被験者からその物質を除去しなければならないほどの程度であることが多い。生体適合性を決定する簡単な試験は、生体外で細胞にポリマーを曝露することである;生体適合性ポリマーは、中程度の濃度で、例えば濃度50マイクログラム/106細胞にて、著しい細胞死を通常生じさせないポリマーである。例えば、生体適合性ポリマーは、かかる細胞によって貪食または取り込まれた場合でさえ、線維芽細胞または上皮細胞などの細胞に曝露した場合に約20%未満の細胞死を生じさせるかもしれない。本発明の種々の実施形態において有用となり得る生体適合性ポリマーの非制限的な例としては、ポリジオキサノン(PDO)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(グリセロールセバケート)、ポリグリコリド、ポリラクチド、PLGA、PLA、ポリカプロラクトン、またはこれらのポリマーおよび/または他のポリマーなどのコポリマーもしくは誘導体が挙げられる。
【0044】
特定の実施形態において、意図される生体適合性ポリマーは、生分解性であり、つまりそのポリマーは、体内などの生理学的環境内で化学的および/または生物学的に分解することができる。本明細書で使用される「生分解性ポリマー」は、細胞内に導入された場合に、細胞機構(生物学的に分解性)によって、かつ/または加水分解などの化学プロセス(化学的に分解性)によって破壊され、細胞に著しく毒性作用を及ぼすことなく、細胞が再利用または処理することができる成分が形成される、ポリマーである。一実施形態において、生分解性ポリマーおよびその分解副生成物は生体適合性であることができる。
【0045】
例えば、意図されるポリマーは、水にさらすと(例えば、被検者内で)同時に加水分解するポリマーであり、そのポリマーは、熱にさらすと(例えば、約37℃の温度で)分解する。ポリマーの分解は、使用されるポリマーまたはコポリマーに応じて、様々な速度で起こるかもしれない。例えば、ポリマーの半減期(ポリマーの50%がモノマーおよび/または他の非ポリマー部位へと分解される時点)は、そのポリマーに応じて、およそ数日、数週、数ヶ月、または数年であるかもしれない。そのポリマーは、例えば、酵素活性または細胞機構によって、場合によっては、例えばリゾチーム(例えば、比較的低いpHを有する)への曝露によって生物学的に分解される。場合によっては、ポリマーは、細胞に著しく毒性作用を及ぼすことなく、細胞が再利用または処理することができる、モノマーおよび/または他の非ポリマー部位へと破壊されるかもしれない(例えば、ポリラクチドは加水分解されて乳酸を形成し、ポリグリコリドは加水分解されてグリコール酸を形成する、等)。
【0046】
一部の実施形態において、ポリマーは、本明細書において総称して「PLGA」と呼ばれる、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー、例えばポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、およびポリ(ラクチド−co−グリコリド);本明細書において「PGA」と呼ばれる、グリコール酸単位を含むホモポリマー、および本明細書において総称して「PLA」と呼ばれる、乳酸単位を含むホモポリマー、例えばポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸、ポリ−L−ラクチド、ポリ−D−ラクチド、およびポリ−D,L−ラクチドなどのポリエステルであることができる。一部の実施形態において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸またはポリ無水物が挙げられる。
【0047】
他の実施形態において、開示のナノ粒子で使用するために、意図されるポリエステルは、ジブロックコポリマー、例えば、PEG化ポリマーおよびコポリマー(ポリ(エチレングリコール)反復単位を含有する)、例えばラクチドおよびグリコリドの(例えば、PEG化PLA、PEG化PGA、PEG化PLGA)、PEG化ポリ(カプロラクトン)、およびその誘導体であることができる。例えば、「PEG化」ポリマーは、炎症および/または免疫原性(つまり、免疫応答を誘発する能力)のコントロールを助け、かつ/またはポリ(エチレングリコール)基が存在するために、細網内皮系(RES)を介した循環系からのクリアランス速度を下げることができる。
【0048】
場合によっては、例えば、生体部位との相互作用からポリマーを保護する、ポリマー表面の親水性層を形成することによって、ポリマーと生体部位との電荷相互作用を低減するために、ペグ化を用いることができる。場合によっては、ポリ(エチレングリコール)反復単位の付加は、食細胞システムによってポリマーの取込みを低減することによって、ポリマー(例えば、コポリマー、例えば、ブロックコポリマー)の血漿中半減期を増加するかもしれず、それと同時に、細胞によるトランスフェクション/取込み効率が低減される。例えば、EDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)とNHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)を使用して、ポリマーをアミンの末端にあるPEG基に反応させることによって、開環重合技術(ROMP)によって等、当業者には、ポリマーをPEG化する方法および技術は公知であるだろう。
【0049】
開示のナノ粒子の一部を形成することができる、意図される他のポリマーとしては、ポリ(オルトエステル)PEG化ポリ(オルトエステル)、ポリリジン、PEG化ポリリジン、ポリ(エチレンイミン)、PEG化ポリ(エチレンイミン)、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)、ポリ[α−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸]、およびその誘導体が挙げられる。他の実施形態において、ポリマーは、カチオン性側鎖を有する分解性のポリエステルであることができる。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L−ラクチド−co−L−リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4−ヒドロキシ−L−プロリンエステル)が挙げられる。
【0050】
他の実施形態において、ポリマーは、1種または複数種のアクリルポリマーである。特定の実施形態において、アクリルポリマーとしては、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、グリシジルメタクリレートコポリマー、ポリシアノアクリレート、および上記のポリマーのうちの1種または複数種を含む組み合わせが挙げられる。アクリルポリマーは、低含有率で第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸およびメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーを含むことができる。
【0051】
本明細書に記載のように使用されることが意図されるPLGAは、例えば、約85:15、約75:25、約60:40、約50:50、約40:60、約25:75、または約15:85の乳酸:グリコール酸比を特徴とする。一部の実施形態において、粒子のポリマー(例えば、PLGAブロックコポリマーまたはPLGA−PEGブロックコポリマー)における乳酸:グリコール酸モノマーの比は、水の取込み、治療薬の放出および/またはポリマー分解キネティクスなどの様々なパラメーターについて最適化されるように選択することができる。他の実施形態において、PLAポリマー鎖の末端基は、カルボン酸基、アミン基、または例えば、長鎖アルキル基またはコレステロールを有するキャップ化末端基であることができる。
【0052】
標的化部位
任意の標的化部位、つまり生物学的実体、例えば、膜成分、細胞表面受容体、前立腺に特異的な膜抗原等と結合または会合することができる部位を含むことができる。ナノ粒子が本明細書において提供される。粒子の表面上に存在する標的化部位は、粒子が特定の標的化部位、例えば、腫瘍、患部、組織、臓器、細胞型等に局在化することを可能にする。ナノ粒子はそれ自体が、「標的特異的」である。次に、薬物または他のペイロードは、場合によっては、その粒子から放出され、特定の標的化部位と局所的に相互作用することが可能となる。
【0053】
例えば、標的化部分は、用いられる標的化部位に応じて、被検者の体内の腫瘍(例えば、固形腫瘍)、患部、組織、臓器、細胞型等に粒子を局在化させることができる。例えば、低分子量PSMAリガンドは、固形腫瘍、例えば、乳房または前立腺の腫瘍または癌細胞に局在化させることができる。被検者はヒトまたは非ヒト動物とすることができる。被検者の例としては、限定されないが、イヌ、ネコ、ウマ、ロバ、ウサギ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、霊長類、ヒト等の哺乳動物が挙げられる。
【0054】
例えば、開示のコポリマーと結合する(したがって、一部の実施形態において、開示のナノ粒子の一部を形成する)、意図される低分子量PSMAリガンドは:
によって表され、かつその鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオ異性体、またはラセミ化合物を含む。
【0055】
治療薬
本発明に従って、例えば、治療薬(例えば抗癌剤)、診断剤(例えば造影剤;放射性核種;および蛍光、発光、および磁性部位)、予防薬(例えばワクチン)、および/または栄養補助剤(例えばビタミン、ミネラル等)を含むいずれかの作用物質が、開示のナノ粒子によって送達される。本発明に従って送達される例示的な作用物質としては、限定されないが、小分子(例えば細胞毒性剤)、核酸(例えば、siRNA、RNAiおよびmiRNA剤)、タンパク質(例えば、抗体)、ペプチド、脂質、炭水化物、ホルモン、金属、放射性元素および化合物、薬物、ワクチン、免疫剤等、および/またはその組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、送達される作用物質は、癌(たとえば、乳癌、肺癌または前立腺癌)の治療に有用な作用物質である。
【0056】
その作用薬または薬物は、mTor阻害剤(例えば、シロリムス、テムシロリムス、またはエベロリムス)、ビンカアルカロイド(例えばビノレルビンまたはビンクリスチン)、ジテルペン誘導体、タキサン(例えば、パクリタキセルまたはその誘導体、例えばDHA−パクリタキセルまたはPG−paxlitaxelまたは、またはドセタキセル)、ボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物(例えば、ボルテゾミブ)、心血管作動薬(例えば、利尿剤、血管拡張薬、アンギオテンシン変換酵素、β遮断薬、アルドステロンアンタゴニスト、または血液希釈剤(blood thinner))、コルチコステロイド(例えばブデソニド、フルオシノニド、トリアムシノロン、モメタゾン、アムシノニド、ハルシノニド、シクレソニド、ベクロメタソン)、代謝拮抗剤または葉酸拮抗剤(例えば、トトレキセート)、化学療法薬(例えばエポチロンB)、窒素マスタード剤(例えば、ベンダムスチン)などの治療薬であるか、またはその作用薬または薬物はsiRNAとすることができる。
【0057】
一セットの実施形態において、ペイロードは、1つの薬物または複数の薬物の組み合わせである。かかる粒子は、例えば、標的化部位を用いて、被検者内の特定の局在的位置に薬物を含有する粒子を誘導し、例えば薬物の局在化送達が起こることを可能にする、実施形態において有用である。例示的な治療薬としては、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ゲムシタビン(gemzar)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル(5−FU)、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、またはビンクリスチンなどのビンカアルカロイド;ブレオマイシン、パクリタキセル(タキソール)またはドセタキセル(タキソテール)などのタキサン、TOR阻害剤、例えばシロリムス、テムシロリムス、またはエベロリムス、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物、例えばボルテゾミブ、ブスルファン、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT−11、10−ヒドロキシ−7−エチルカンプトテシン(SN38)、ダカルバジン、S−Iカペシタビン、フトラフール、5’デオキシフルオロウリジン、UFT、エニルウラシル、デオキシシチジン、5−アザシトシン、5−アザデオキシシトシン、アロプリノール、2−クロロアデノシン、トリメトレキサート、アミノプテリン、メチレン−10−デアザアミノプテリン(MDAM)、オキサプラチン、ピコプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン、白金−DACH、オルマプラチン、CI−973、JM−216、エピルビシン、リン酸エトポシド、9−アミノカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、カレニテシン、9−ニトロカンプトテシン、TAS 103、L−フェニルアラニン・マスタード、イフォスファミドメフォスファミド、ペルフォスファミド、トロフォスファミド・カルムスチン、セムスチン、ベンダムスチン、エポチロンA−E、トミュデックス(tomudex)、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アムサクリン、カレニテシン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、アマンタジン、リマンタジン、ラミブジン、ジドブジン、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブデソニド、およびその組み合わせなどの化学療法薬が挙げられ、またはその治療薬はsiRNAとすることができる。
【0058】
一部の実施形態において、意図されるナノ粒子はタキサンを含まない(例えば、ドセタキセルを含まない)。他の実施形態において、意図されるナノ粒子は、ビンカアルカロイドまたはmTOR阻害剤を含まない。
【0059】
潜在的に適している薬物の非制限的な例としては、例えば、ドセタキセル、ミトキサントロン、およびミトキサントロン塩酸塩などの抗癌剤が挙げられる。他の実施形態において、ペイロードは、抗癌薬、例えば、20−epi−1、25ジヒドロキシビタミンD3,4−イポメアノール、5−エチニルウラシル、9−ジヒドロタキソール、アビラテロン、アシビシン、アクラルビシン、アコダゾール塩酸塩、アクロニン、アシルフルベン、アデシペノール、アドゼレシン、アルデスロイキン、すべてのtkアンタゴニスト、アルトレタミン、アンバムスチン、アンボマイシン、酢酸アメタントロン、アミドックス、アミホスチン、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アムルビシン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アンドログラホリド、血管形成阻害剤、アンタゴニストD、アンタゴニストG、アンタレリックス、アントラマイシン、抗背方化形態形成タンパク質−1(anti-dorsalizdng morphogenetic protein)、抗エストロゲン、アンチネオプラストン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、グリシン酸アフィジコリン、アポトーシス遺伝子修飾因子、アポトーシス制御因子、アプリン酸、ARA−CDP−DL−PTBA、アルギニンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アスラクリン、アタメスタン、アトリムスチン、アキシナスタチン1、アキシナスタチン2、アキシナスタチン3、アザシチジン、アザセトロン、アザトキシン、アザチロシン、アゼテパ、アゾトマイシン、バッカチンIII誘導体、バラノール、バチマスタット、ベンゾクロリン、ベンゾデパ、ベンゾイルスタウロスポリン、βラクタム誘導体、βアレチン、βクラマイシンB、ベツリン酸、BFGF阻害剤、ビカルタミド、ビサントレン、ビサントレン塩酸塩、ビザズイジニルスペルミン、ビスナフィド、ジメシル酸ビスナフィド、ビストラテンA、ビゼレシン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、BRC/ABLアンタゴニスト、ブレフレート、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブドチタン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カクチノマイシン、カルシポトリオール、カルホスチンC、カルステロン、カンプトテシン誘導体、カナリポックスIL−2、カペシタビン、カラセライド、カルベチマー、カルボプラチン、カルボキサミド−アミノ−トリアゾール、カルボキシアミドトリアゾール、カレストM3、カルムチン、アーン700、軟骨由来阻害剤、カルビシン塩酸塩、カルゼレシン、カゼインキナーゼ阻害剤、カスタノスペルミン、セクロピンB、セデフィンゴール、セトロレリクス、クロラムブシル、クロリン、クロロキノキサリンスルホンアミド、シカプロスト、シロレマイシン、シスプラチン、cis−ポルフィリン、クラドリビン、クロミフェン類縁体、クロトリマゾール、コリスマイシンA、コリスマイシンB、コンブレタスタチンA4、コンブレタスタチン類似体、コナゲニン、クランベスシジン816、クリスナトール、メシル酸クリスナトール、クリプトフィシン8、クリプトフィシンA誘導体、キュラシンA、シクロペンタントラキノン、シクロホスファミド、シクロプラタム、シペマイシン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、細胞溶解因子、サイトスタチン、ダカルバジン、ダクリキシマブ、ダクチノマイシン、ダウノルビシン塩酸塩、デシタビン、デヒドロジデミンB、デスロレリン、デキシフォスファミド、デキソルマプラチン、デクスラゾキサン、デクスベラパミル、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ジデミンB、ジドックス、ジエチヒオルスペルミン、ジヒドロ−5−アザシチジン、ジオキサマイシン、ジフェニルスピロムスチン、ドセタキセル、ドコサノール、ドラセトロン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドキソルビシン塩酸塩、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、ドロナビノール、デュアゾマイシン、デュオカマイシンSA、エブセレン、エコムスチン、エダトレキセート、エデルホシン、エドレコロマブ、エフロミチン、エフロミチン塩酸塩、エレメン、エルサルミトルシン、エミテフル、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、エピルビシン、エピルビシン塩酸塩、エプリステリド、エルブロゾール、赤血球遺伝子治療ベクターシステム、エソルビシン塩酸塩、エストラムスチン、エストラムスチン類似体、リン酸エストラムスチンナトリウム、エストロゲンアゴニスト、エストロゲンアンタゴニスト、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、エキセメスタン、ファドロゾール、ファドロゾール塩酸塩、ファザラビン、フェンレチニド、フィルグラスチム、フィナステリド、フラボピリドール、フレゼラスチン、フロクスウリジン、フルアステロン、フルダラビン、リン酸フルダラビン、フルオロダウノルビシン塩酸塩、フルオロウラシル、フルロシタビン、フォルフェニメックス、フォルメスタン、フォスキドン、フォストリエシン、フォストリエシンナトリウム、フォテムスチン、ガドリニウムテキサフィリン、硝酸ガリウム、ガロシタビン、ガニレリクス、ゼラチナーゼ阻害剤、ゲムシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、グルタチオン阻害剤、ヘプスルファム、ヘレグリン、ヘキサメチレンビスアセトアミド、ヒドロキシウレア、ヒペリシン、イバンドロン酸、イダルビシン、イダルビシン塩酸塩、イドキシフェン、イドラマントン、イフォスファミド、イルモフォスチン、イロマスタット、イミダゾアクリドン、イミキモド、免疫刺激性ペプチド、インスリン様成長因子−1受容体阻害剤、インターフェロンアゴニスト、インターフェロンα−2A、インターフェロンα−2B、インターフェロンα−N1
、インターフェロンα−N3、インターフェロンβ−IA、インターフェロンγ−IB、インターフェロン、インターロイキン、イオベングアン、ヨードドキソルビシン、イプロプラツム、イリノテカン、イリノテカン塩酸塩、イロプラクト、イルソグラジン、イソベンガゾール、イソホモハリコンドリンB、イタセトロン、ジャスプラキノリド、カハラリドF、ラメラリン−Nトリアセテート、ランレオチド、酢酸ランレオチド、レイナマイシン、レノグラスチム、硫酸レンチナン、レプトールスタチン、レトロゾール、白血病抑制因子、白血球αインターフェロン、酢酸ロイプロリド、ロイプロリド/エストロゲン/プロゲステロン、リュープリン、レバミソール、リアロゾール、リアロゾール塩酸塩、直鎖状ポリアミン類似体、親油性二糖ペプチド、親油性白金化合物、リソクリナミド、ロバプラチン、ロンブリシン、ロメトレキソール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、ロニダミン、ロソキサントロン、ロソキサントロン塩酸塩、ロバスタチン、ロキソリビン、ルルトテカン、ルテチウムテキサフィリン、リソフィリン、溶解性ペプチド、マイタンシン、マンノスタチンA、マリマスタット、マソプロコール、マスピン、マトリリシン阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、マイタンシン、メクロレタミン塩酸塩、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルバロン、メルカプトプリン、メテレリン、メチオニナーゼ、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトクロプラミド、メトプリン、メツレデパ、微細藻類プロテインキナーゼC阻害剤、MIF阻害剤、ミフェプリストン、ミルテホシン、ミリモスチム、ミスマッチ二本鎖RNA、ミチンドミド、ミトカルシン、ミトクロミン、ミトギリン、ミトグアゾン、ミトラクトール、ミトマルシン、ミトマイシン、ミトマイシン類似体、ミトナフィド、ミトスペル、ミトタン、ミトトキシン線維芽細胞成長因子サポリン、ミトキサントロン、塩ミトキサントロン塩酸塩、モファロテン、モルグラモスチム、モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、モノホスホリル脂質a/ミオバクテリウム細胞壁SK、モピダモール、多剤耐性遺伝子阻害剤、MTS(multiple tumor suppressor)1ベースの療法、マスタード系抗癌剤、マイカペルオキシドB、マイコバクテリア細胞壁抽出物、ミコフェノール酸、ミリアポロン、N−アセチルジナリン、ナファレリン、ナグレスチップ、ナロキソン/ペンタゾシン、ナパビン、ナフテルピン、ナルトグラスチム、ネダプラチン、ネモルビシン、ネリドロン酸、中性エンドペプチダーゼ、ニルタミド、ニサマイシン、一酸化窒素修飾因子、ニトロキシド酸化防止剤、ニトルリン、ノコダゾール、ノガラマイシン、N−置換ベンズアミド、O6−ベンジルグアニン、オクトレオチド、オキセノン、オリゴヌクレオチド、オナプリストン、オンダンセトロン、オラシン、経口サイトカイン誘導物質、オルマプラチン、オサテロン、オキサリプラチン、オキサウノマイシン、オキシスラン、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、パクリタキセル誘導体、パラウアミン、パルミトイルリゾキシン、パミドロン酸、パナキシトリオール、パノミフェン、パラバクチン、パゼリプチン、ペガスパルガーゼ、ペルデシン、ペリオマイシン、ペンタムスチン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、ペントスタチン、ペントロゾール、硫酸ペプロマイシン、ペルフルブロン、ペルホスファミド、ペリリルアルコール、フェナジノマイシン、酢酸フェニル、ホスファターゼ阻害剤、ピシバニール、ピロカルピン塩酸塩、ピポブロマン、ピポスルファン、ピラルビシン、ピリトレキシム、ピロキサントロンン塩酸塩、プラセチンA、プラセチンB、プラスミノゲン活性化因子阻害剤、白金錯体、白金化合物、白金−トリアミン錯体、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、プロカルバジン塩酸塩、プロピルビスアクリドン、プロスタグランジンJ2、前立腺癌抗アンドロゲン、プロテアソーム阻害剤、プロテインAベースの免疫修飾物質、プロテインキナーゼC阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤、ピューロマイシン、ピューロマイシン塩酸塩、プルプリン、ピラゾロアクリジン、ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体、RAFアンタゴニスト、ラルチトレキセド、ラモセトロン、RASファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、RAS阻害剤、RAS−GAP阻害剤、脱メチル化レテリプチン、レニウムRE186エチドロネート、リゾキシン、リボプリン、リボザイム、RHレチナミド、RNAi、ログレチミド、ロヒツキン、ロムルチド、ロキニメクス、ルビギノンB1、ルボキシル、サフィンゴール、サフィンゴール塩酸塩、サイントピン、SarCNU、サルコフィトールA、サルグラモスチム、SDI1ミメティクス(mimetics)、セムスチン、老化由来阻害剤1、センスオリゴヌクレオチド、シグナル伝達阻害剤、シグナル伝達修飾物質、シムトラゼン、単鎖抗原結合性タンパク質、シゾフィラン、ソブゾキサン、ボロカプタートナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、ソルベロール、ソマトメジン結合性タンパク質、ソネルミン、スパルホサートナトリウム、スパルホス酸、スピカマイシンD、スピロゲルマニウム塩酸塩、スピロムスチン、スピロプラチン、スプレノペンチン、スポンジスタチン1、スクアラミン、幹細胞阻害剤、幹細胞分裂阻害剤、スチピアミド、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ストロメライシン阻害剤、スルフィノシン、スロフェヌル、超活性血管作動性腸管ペプチドアンタゴニスト、スラジスタ、スラミン、スワインソニン、合成グリコサミノグリカン、タリソマイシン、タリムスチン、タモキシフェンメチオジド、タウロムスチン、タザロテン、テコガランナトリウム、テガフル、テルラピリリウム、テロメラーゼ阻害剤、テロキサントロン塩酸塩、テモポルフィン、テモゾロミド、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、テトラクロロデカオキシド、テトラゾミン、タリブラスチン、タリドミド、チアミプリン、チオコラリン、チオグアニン、チオテパ、トロンボポエチン、トロンボポエチン模倣薬(mimetic)、チマルファシン、チモポイエチン受容体アゴニスト、チモトリナン、甲状腺刺激ホルモン、チアゾフリン、スズエチルエチオプルプリン、チラパザミン、二塩化チタノセン、トポテカン塩酸塩、トプセンチン、トレミフェン、クエン酸トレミフェン、全能性幹細胞因子、翻訳阻害剤、酢酸テストステロン、トレチノイン、トリアセチルウリジン、トリシリビン、リン酸トリシリビン、トリメトレキサート、グルクロン酸トリメトレキサート、トリプトレリン、トロピセトロン、ツブロゾール塩酸塩、ツロステリド、チロシンキナーゼ阻害剤、チルホスチン、UBC阻害剤、ウベニメクス、ウラシルマスタード、ウレデパ、尿生殖洞由来成長抑制因子、ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト、バプレオチド、バリオリンB、ベラレソール、ベラミン、ベルジン、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンリューロシン、ビノレルビン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、ビンキサルチン、硫酸ビンゾリジン、ビタキシン、ボロゾール、ザノテロン、ゼニプラチン、ジラスコルブ、ジノスタチン、ジノスタチンスチマラマーまたはゾルビシン塩酸塩酸塩であることができる。
【0060】
一実施形態において、作用薬は、例えば、開示のナノ粒子の一部を形成する開示の疎水性ポリマーに結合してもよく(または、結合しなくてもよい)、例えば作用薬は、PLAまたはPGLAに、またはPLA−PEGまたはPLGA−PEGなどのコポリマーのPLAまたはPLGA部分に結合(例えば、直接または連結部位を介して、共有結合)することができる。
【0061】
ナノ粒子の作製
一部の実施形態において、開示のナノ粒子は、1種または複数種のポリマーを含む溶液を提供し、ポリマー非溶媒とその溶液を接触させて粒子を製造することによって形成される。その溶液は、ポリマー非溶媒と混和性または不混和性であることができる。例えば、アセトニトリルなどの水混和性液体は、ポリマーを含有することができ、例えば、制御速度でアセトニトリルを水に注ぐことによって、アセトニトリルが、水、ポリマー非溶媒と接触すると粒子が形成される。その溶液中に含有されるポリマーは、ポリマー非溶媒と接触させると沈殿し、ナノ粒子などの粒子を形成する。2つの液体は、一方の液体が、周囲温度および圧力にて、少なくとも10重量%のレベルでもう一方の液体に可溶性ではない場合に、互いに「不混和性」である、または混和性ではないと言われる。一般に、有機溶液(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド等)および水性液(例えば、水、または溶解塩もしくは他の種、細胞、または生物学的媒体、エタノールを含有する水等)は互いに対して不混和性である。例えば、第1溶液を第2溶液に注ぐことができる(適切な割合または速度で)。場合によっては、ナノ粒子などの粒子は、第1溶液が不混和性第2液体と接触した時に形成され、例えば、第1溶液が第2液体に注がれると同時に、接触によるポリマーの沈殿によって、ポリマーがナノ粒子を形成し、場合によっては、例えば、導入の速度を注意深くコントロールし、比較的遅い速度で維持した場合に、ナノ粒子を形成することができる。かかる粒子形成のコントロールは、単なる通常の実験を用いて当業者によって容易に最適化することができる。
【0062】
他の実施形態において、図1および2に示されるプロセスなどのナノエマルジョンプロセスが提供される。例えば、治療薬、第1ポリマー(例えば、PLA−PEGまたはPLGA−PEGなどのジブロックコポリマー)および任意の第2ポリマー(例えば、(PL(G)A−PEGまたはPLA)を有機溶液と合わせて、第1有機相が形成される。かかる第1相は、固形分約5〜約50重量%、例えば約5〜約40重量%、または固形分約10〜約30重量%を含有していてもよい。第1有機相を第1水溶液と合わせて、第2相が形成される。有機溶液としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ベンジルアルコール、Tween80、Span80等、またはその組み合わせが挙げられる。一実施形態において、有機相は、ベンジルアルコール、酢酸エチル、およびその組み合わせを含むことができる。第2相は、固形分約1〜50重量%、例えば、約5〜40重量%であることができる。水溶液は、任意に、コール酸ナトリウム、酢酸エチル、ポリ酢酸ビニルおよびベンジルアルコールのうちの1種または複数種と組み合わされた水であることができる。
【0063】
例えば、油相または有機相に、非溶媒(水)と部分的にのみ混和性である溶媒を使用してもよい。したがって、十分に低い比率で混合した場合、かつ/または有機溶媒で予め飽和された水を使用した場合、油相は液状のままである。油相は、水溶液中に乳化することができ、例えば、ホモジナイザーまたは超音波処理器などの高エネルギー分散システムを使用して、液滴として、ナノ粒子へと剪断される。別名「水相」として知られるエマルジョンの水性部分は、コール酸ナトリウムからなり、かつ酢酸エチルおよびベンジルアルコールで予め飽和されている、界面活性剤溶液とすることができる。
【0064】
エマルジョン相を形成するための第2相の乳化は、1または2つの乳化段階で行われる。例えば、最初のエマルジョンを調製し、次いで乳化し、微細エマルジョンが形成される。その最初のエマルジョンは、例えば、簡単な混合、高圧ホモジナイザー、プローブ超音波処理器、撹拌子、またはローターステーター・ホモジナイザーを用いて形成することができる。その最初のエマルジョンは、例えば、プローブ超音波処理器または高圧ホモジナイザーを使用して、例えばホモジナイザーを1、2、3回またはそれ以上の回数、操作することによって、微細エマルジョンへと形成することができる。例えば、高圧ホモジナイザーを使用する場合、使用される圧力は、約1000〜約8000psi、約2000〜約4000〜約8000psi、または約4000〜約5000psi、例えば、約2000、2500、4000または5000psiであることができる。
【0065】
溶媒の抽出を完了し、粒子を固化するために、溶媒の蒸発または希釈のいずれかが必要となる場合がある。抽出のキネティクスをより良くコントロールし、プロセスをさらに拡張可能にするには、水性クエンチによる溶媒希釈を用いることができる。例えば、有機溶媒のすべてを溶解するのに十分な濃度までエマルジョンジョンを冷水に希釈し、クエンチ相を形成することができる。クエンチは、少なくとも部分的に温度約5℃以下で行われる。例えば、クエンチに使用される水は、室温より低い温度(例えば、約0〜約10℃、または約0〜約5℃)である。
【0066】
一部の実施形態において、治療薬(例えば、ドセタキセル)のすべてが、この段階で粒子に封入されるわけではなく、可溶化剤がクエンチ相に添加され、可溶化相が形成される。薬物可溶化剤は、例えば、Tween80、Tween20、ポリビニルピロリドン、シクロデキストラン、ドデシル硫酸ナトリウム、またはコール酸ナトリウムである。例えば、Tween−80をクエンチされたナノ粒子懸濁液に添加して、遊離薬物を可溶化し、薬物結晶の形成を防ぐことができる。一部の実施形態において、薬物可溶化剤と治療薬(例えば、ドセタキセル)の比は、約100:1〜約10:1である。
【0067】
可溶化相を濾過して、ナノ粒子を回収してもよい。例えば、限外濾過膜を使用して、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、有機溶媒、遊離薬物、および他の加工助剤(界面活性剤)をかなり除去することができる。例示的な濾過は、接線フロー濾過システムを用いて行われる。例えば、溶質、ミセル、および有機溶媒を通過させると同時に、ナノ粒子を保持するのに適した孔径を有する膜を使用することによって、ナノ粒子を選択的に分離することができる。分画分子量約300〜500kDa(約5〜25nm)を有する例示的な膜を使用することができる。
【0068】
ダイアフィルトレーションは、一定容積アプローチを用いて行われ、懸濁液から濾液が除去されるのと同じ速度でダイア濾液(diafiltrate)(冷たい脱イオン水、例えば、約0〜約5℃、または0〜約10℃)が供給懸濁液に添加されることを意味する。一部の実施形態において、濾過は、第1温度約0〜約5℃または0〜約10℃、および第2温度約20〜約30℃または15〜約35℃を用いた第1濾過を含むことができる。例えば、濾過は、約0〜約5℃にて約1〜約6のダイア容積(diavolume)を処理すること、および約20〜約30℃にて少なくとも1のダイア容積(例えば、約1〜約3または約1〜2のダイア容積)を処理することを含むことができる。
【0069】
ナノ粒子懸濁液を精製し、濃縮した後、例えば、約0.2μmのデプスプレフィルターを用いて、1、2、またはそれ以上の滅菌および/またはデプスフィルターに粒子を通す。
【0070】
ナノ粒子を製造する他の実施形態において、治療薬、例えばドセタキセル、およびポリマー(ホモポリマー、コポリマー、およびリガンドを有するコポリマー)の混合物で構成される有機相が形成される。有機相は、約1:5の比(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤および一部溶解された溶媒で構成される。単に混合して、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初のエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。次いで、微細エマルジョンは、混合しながら脱イオン水に添加することによってクエンチされる。クエンチ:エマルジョンの比は約8.5:1である。次いで、Tween(例えば、Tween80)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween約2%が達成される。これは、未封入の遊離薬物を溶解する役割を果たす。次いで、遠心分離または限外濾過/ダイアフィルトレーションのいずれかによって、ナノ粒子を単離する。
【0071】
製剤の製造に使用される、ポリマーおよび治療薬または作用薬の量は、最終製剤と異なるかもしれないことを理解されたい。例えば、一部の作用薬は、ナノ粒子に完全には組み込まれず、かかる遊離治療薬は、例えば濾過除去することができる。
【0072】
医薬組成物
本発明の開示内容の他の態様に従って、本明細書で開示されるナノ粒子を医薬的に許容される担体と組み合わせて、医薬組成物が形成される。当業者には理解されるように、担体は、以下に記載の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過等に基づいて選択される。
【0073】
本発明の開示内容の医薬組成物は、経口的および非経口的経路など当技術分野で公知の手段によって患者に投与される。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトだけではなく、例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、および魚などの非ヒトを意味する。例えば、非ヒトは、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)とすることができる。特定の実施形態において、非経口的経路は、消化管で見られる消化酵素との接触が避けられることから望ましい。かかる実施形態に従って、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内注射)によって、経直腸、経膣、局所投与(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤として)によって、または吸入(スプレーとして)によって投与することができる。
【0074】
特定の実施形態において、本発明の開示内容のナノ粒子は、その必要がある被検者に全身的に、例えば、非経口で、または静脈内点滴または注射によって投与される。
【0075】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子を含む凍結に適した組成物が企図され、凍結に適した溶液、例えば、ショ糖および/または塩溶液がナノ粒子懸濁液に添加される。ショ糖は、例えば、凍結保護物質として作用し、凍結した場合に粒子が凝集するのを防ぐ。例えば、多数の開示のナノ粒子、ショ糖、イオン性ハロゲン化物、および水を含むナノ粒子製剤が本明細書で提供され;ナノ粒子/ショ糖/水は約3〜30%/10〜30%/50〜90%(w/w/w)または約5〜10%/10〜15%/80〜90%(w/w/w)である。例えば、かかる溶液は、本明細書で開示されるナノ粒子、ショ糖約5〜約20重量%および濃度約10〜100mMの塩化ナトリウムなどのイオン性ハロゲン化物を含むことができる。
【0076】
組成物および治療方法
本明細書で開示されるナノ粒子を医薬的に許容される担体と合わせて、医薬組成物を形成することができる。当業者には理解されるように、担体は、以下に記載の投与経路、標的組織の位置、送達される薬物、薬物送達の時間経過等に基づいて選択される。
【0077】
医薬組成物および本明細書で開示される粒子は、経口的経路および非経口的経路などの当技術分野で公知の手段によって患者に投与される。本明細書で使用される「患者」という用語は、ヒトだけではなく、例えば、哺乳動物、鳥、爬虫類、両生類、および魚などの非ヒトも意味する。例えば、非ヒトは、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類、またはブタ)とすることができる。特定の実施形態において、非経口的経路は、消化管で見られる消化酵素との接触が避けられることから望ましい。かかる実施形態に従って、本発明の組成物は、注射(例えば、静脈内、皮下または筋肉内、腹腔内注射)によって、経直腸、経膣、局所投与(粉末、クリーム、軟膏または点滴剤として)によって、または吸入(スプレーとして)によって投与することができる。
【0078】
特定の実施形態において、開示内容のナノ粒子は、その必要がある被検者に、例えば静脈内点滴または注射によって全身投与される。
【0079】
注射可能な製剤、例えば、注射可能な滅菌水性または油性懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化される。注射可能な滅菌製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液としての、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液、懸濁液、またはエマルジョンとすることができる。用いることができる許容可能な賦形剤および溶媒の中では、水、リンゲル液、U.S.P.、および塩化ナトリウム等張溶液が挙げられる。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドなどのブランド固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能な製剤で使用される。一実施形態において、本発明の抱合体(conjugate)は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム1%(w/v)、TWEEN(商標)80 0.1%(v/v)を含む担体液体に懸濁される。注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に滅菌水または他の注射可能な滅菌媒体に溶解または分散することができる滅菌固形組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0080】
経口投与用の固形剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が挙げられる。かかる固形剤形において、封入された、または未封入の抱合体を少なくとも1種類の医薬的に許容される不活性賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはケイ酸二カルシウムおよび/または(a)デンプン、ラクトース、ショ糖、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤または増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、およびアカシアなどの結合剤、(c)グリセロールなどの湿潤剤(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(e)パラフィンなどの溶解遅延剤(solution retarding agent)、(f)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(g)例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合には、その剤形は緩衝剤も含むことができる。
【0081】
開示のナノ粒子は、投薬を容易にするため、かつ投薬量を均一にするために、投薬単位形態で製剤化される。本明細書で使用される「投薬単位形態」という表現は、治療される患者に適したナノ粒子の物理的に別々の単位を意味する。あらゆるナノ粒子に関して、治療上有効な用量が、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌ、またはブタにおいて最初に推定される。動物モデルを使用して、望ましい濃度範囲および投与経路を得ることもできる。次いで、かかる情報を用いて、ヒトに投与するのに有用な用量および経路を決定することができる。ナノ粒子の治療有効性および毒性、例えば、ED50(この用量は、個体数の50%に治療上有効である)およびLD50(この用量は、個体数の50%において致死量である)は、細胞培養または実験動物における標準的製薬手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表される。大きな治療指数を示す医薬組成物が、一部の実施形態において有用である。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータが、ヒトに使用される、投薬量の範囲を定式化するのに使用される。
【0082】
例示的な実施形態において、治療薬および医薬的に許容される賦形剤をそれぞれが含む多数のナノ粒子を含む医薬組成物が開示される。
【0083】
一部の実施形態において、本明細書で開示されるナノ粒子を含む凍結に適した組成物が企図され、凍結に適した溶液、例えば、糖(例えばショ糖)溶液がナノ粒子懸濁液に添加される。ショ糖は、例えば、凍結保護物質として作用し、凍結した場合に粒子が凝集するのを防ぐ。例えば、多数の開示のナノ粒子、ショ糖、イオン性ハロゲン化物、および水を含むナノ粒子製剤が本明細書で提供され;ナノ粒子/ショ糖/水は約5〜10%/10〜15%/80〜90%(w/w/w)で存在する。
【0084】
一部の実施形態において、本明細書で開示される治療用粒子を用いて、疾患、障害および/または病状の1つもしくは複数の症状もしくは特徴を治療、緩和、寛解、軽減し、発症を遅らせ、進行を抑制し、重症度を軽減し、かつ/または発生率を低下させることができる。本発明の治療用粒子で治療される腫瘍および癌細胞の他の種類としては、例えば以下の種類の癌:肺癌、頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、食道癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、腎癌、リンパ腫および黒色腫と関連する癌など、すべての種類の固形腫瘍が挙げられる。その腫瘍は、口腔および咽頭、消化器系、呼吸器系、骨および関節(例えば、骨転移)、軟部組織、皮膚(例えば、黒色腫)、胸、生殖器系、泌尿器系、眼球および眼窩、脳および神経系(例えば、神経膠腫)、または内分泌系(例えば、甲状腺)の(に位置する)癌と関連し、必ずしも原発腫瘍ではない。口腔と関連する組織としては、限定されないが、舌および口腔組織が挙げられる。癌は、例えば食道、胃、小腸、結腸、直腸、肛門、肝臓、胆嚢、および膵臓などの消化器系の組織に発生するかもしれない。呼吸器系の癌は、喉頭、肺、および気管支に影響し、例えば非小細胞肺癌腫が挙げられる。腫瘍は、男性および女性の生殖器システムを構成する子宮頸部、子宮体、卵巣、外陰部、膣、前立腺、精巣、および陰茎、および泌尿器系を構成する、膀胱、腎臓、腎盂、および輸尿管に発生するかもしれない。
【0085】
癌(例えば、乳癌または前立腺癌)を治療する開示の方法は、所望の結果を達成するのに必要な量および時間で、その必要のある被検者に、治療有効量の開示の治療用粒子を投与することを含むことができる。本発明の特定の実施形態において、「治療有効量」とは、例えば、治療される癌の1つまたは複数の症状もしくは特徴を治療、緩和、寛解、軽減し、発症を遅らせ、進行を抑制し、重症度を軽減し、かつ/または発生率を低下させるのに有効な量である。
【0086】
一部の実施形態において、エポチロン、例えばエポチロンBを含む開示の治療用ナノ粒子を使用して、その必要がある患者において、乳癌、前立腺癌、結癌腸、膠芽腫、急性リンパ性白血病、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、または小細胞肺癌などの肺癌などの癌を治療することができる。
【0087】
他の実施形態において、ブデソニドなどのコルチコステロイドを含む開示の治療用ナノ粒子を使用して、喘息、変形性関節症、皮膚炎、および炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、および/またはクローン病などの炎症性疾患の治療に使用することができる(結腸癌などの癌の治療も意図される)。
【0088】
薬物放出速度
この開示内容は一部、水性懸濁液中の薬物ローディングされたナノ粒子のガラス転移温度(Tg)を測定することによって、ナノ粒子からの薬物放出の速度を予測かつコントロールする方法に関する。例えば、懸濁条件下での測定には、静脈内投与した場合の血流におけるナノ粒子の化学組成および物理的性質を操作する必要がある。ナノ粒子製剤は、ナノ粒子のTgに基づいて所望の薬物放出速度を示すようにデザインすることもできる。
【0089】
水性懸濁液中の薬物保持粒子のガラス転移温度(Tg)は、ナノ粒子の薬物放出特性の指標であることができる。ナノ粒子懸濁液Tgを同定することによって、薬物放出特性の予測子としてそれを使用することが可能となり、所望の薬物放出速度を有するナノ粒状ポリマーおよび薬物製剤の合理的なデザインが可能となり、さらに製剤を迅速スクリーニングし、さらに研究するために、高い値の標的を同定することが可能となる。
【0090】
エマルジョンプロセスを用いてナノ粒子を形成することによって一般に、ポリマー中の薬物の非晶質固体の分散が生じる。その化学構造に応じて、ポリマーは部分的に結晶化するが、ポリマー鎖に沿った反復単位の立体規則性の欠如が原因で、ポリマーが非晶質状態をとることが多い。この剛性ガラス状態は、ポリマー溶融物を冷却することによって得られる状態と似ている。溶融物相はゴム状特性を特徴とする。ガラス状態への転移は、硬度、ヤング率、および熱容量などのポリマー材料特性の変化によって達成される。これらの特性の変化をモニターするいくつかの技術を用いて、ガラス転移温度(Tg)として知られる、このゴムがその温度にわたってガラス転移する温度(または温度範囲)を決定することができる。そのTgは、例えば、ポリマーの純度に依存するかもしれない。例えば、ナノ粒子における薬物分子または作用薬、溶媒または非溶媒分子(つまり、水)の存在は、ポリマーのTgに影響を及ぼし、例えば、ナノ粒子の高い表面:体積比は、ポリマー相の水含有率に寄与するかもしれない。水性懸濁液中のポリマーナノ粒子のTgは、同じ化学組成の中間視的ポリマー薬物混合物のTgまたは乾燥粉末状の薬物保持ナノ粒子のTgと明確に異なる。
【0091】
ナノ粒子内の薬物は、分子的に分散されるか、またはポリマーナノ粒子よりも小さな寸法のナノ結晶を形成するかもれない。どちらの場合にも、ナノ粒子からの薬物の拡散ベースの放出は、ポリマーマトリックスを通過し、かつ周囲の水相中へのその輸送に依存する。ポリマーマトリックスにおける薬物の固有の溶解性、その拡散係数、拡散経路長、ポリマーマトリックス粘度および温度自体が、ナノ粒子からの薬物放出速度の因子であるかもしれない。例えば、静脈内注射した場合に、ナノ粒子は生理学的温度(37℃)に急速に平衡化し、したがって、この温度でのポリマーマトリックスの材料特性は、薬物放出速度に影響するかもしれない。ポリマー全体にわたる薬物拡散およびナノ粒子からのその放出は、ポリマーマトリックスが37℃の剛性ガラス状態である場合には遅く、ポリマーマトリックスがこの温度でゴム状の状態である場合には比較的速い。つまり、生理学的条件下にて、37℃以下のTgを有するナノ粒子は、37℃を超えるTgを有するナノ粒子よりも速い速度で薬物を放出する。
【0092】
例えば、PLA−PEGおよび低分子量PLA(例えば、6.5kDa PLA)を含むナノ粒子は、PLA−PEGのみを含むナノ粒子よりも低いTgを有する。PLA−PEGを含有するナノ粒子に高分子量PLA(例えば、75kDa PLA)を添加すると、PLA−PEGのみ含むナノ粒子のTgを超えてTgが上昇する。ナノ粒子組成物中のPLAなどのホモポリマーの種類および量を変えることによって、Tgを変更することができ、それによってナノ粒子からの薬物放出速度が直接影響を受ける。同様に、ジブロックコポリマー(例えばPLA−PEG)のみ含有するナノ粒子のTgは一般に、ブロック(例えばPLA)を形成するコアのモル質量の関数である。ナノ粒子のポリマー成分のガラス転移温度を用いて、ある範囲の熱的特性を粒子に付与する組成物を選択することができ、その薬物放出特性の予測が可能となる。
【0093】
この開示内容は一部、所望の薬物放出プロファイルと関連する、必要な熱的特性(ガラス転移温度)を有する組み合わせを同定するために、ポリマーおよび薬物システムをスクリーニングする方法に関する。所定のナノ粒子組成物のTgをアッセイすることによって、ナノ粒子の薬物放出速度を予測することができる。Tg、またはTb、ナノ粒子のガラス転移が開始する温度に基づくスクリーニングは、所望の速度で薬物を放出するナノ粒子ポリマーの組み合わせを迅速に同定することができる。ナノ粒子作製の高処理量手段と併せて、この開示内容は、ポリマーと薬物の組み合わせを迅速にスクリーニングし、選定数のシステムに到達することを可能にし、次いで、従来のより詳細な薬物放出研究にそれをかけることができる。
【0094】
例えば、水性懸濁液条件下の薬物ローディングされたナノ粒子を示差走査熱量測定(DSC)で分析することによって、薬物放出速度とナノ粒子ガラス転移温度の相関性が実証される。DSCは、物質および標準物質への熱流量が温度の関数として測定され、その物質および標準物質が、制御温度プログラムにかけられる技術である。DSC技術としては、熱流束DSCおよび入力補償DSCが挙げられる。熱流束DSCでは、その装置は、標準物質を含有する単一セルと、ヒート・リーク(heat-leak)として働く橋によって分離された試料ホルダーとからなる。このアセンブリは、一定温度体である加熱ブロックまたは炉内に位置する。試料および標準物質プラットホームと熱的に接触する熱電対は、試料皿および標準物質皿の温度を測定し、加熱ブロック温度は、所定の速度、例えば10℃/分で上昇し(加熱サイクル)または低下する(冷却サイクル)。実験結果は、加熱ブロックに対してプロットされた、試料と標準物質皿との温度差(熱流差(ワット/グラム))からなる。それと異なり、入力補償DSCにおいて、その装置は、同一であるが2つの別々の炉からなり、一方は試料を収容し、もう一方は標準物質を収容する。この場合、一定温度で2つの炉を維持するのに必要な電力差は、示差熱流の基礎としての役割を果たす。
【0095】
変調型示差走査熱量測定(MDSC)を使用して、水性懸濁液中のナノ粒子のガラス転移温度も決定することができる。この技術では、正弦波温度調節が、線形の加熱または冷却速度でオーバーレイされる。これは、総熱流(従来のDSCで確認されるのと同様な)を可逆および非可逆熱流成分に分離する数学的方法と組み合わせられる。可逆熱流成分は、試料の熱容量、ならびに昇温速度(ramp rate)の変化に直接応答し、かつそれらが確認される時間および温度で可逆する現象に由来する。言い換えると、正弦波温度調節の時間尺度で可逆するのに十分に速い現象(例えば、ガラス転移温度)は、このシグナルに寄与する。昇温速度の変化(例えば、ガラス転移温度でのエンタルピー緩和)に応答しない現象が、非可逆熱流成分で認められる。MDSCでは、総熱流の可逆および非可逆熱流成分を分離することによって、エンタルピー緩和現象からガラス転移現象を分離することが可能となる。したがって、従来のDSCと異なり、MDSCを使用して、そのガラス転移温度で強いエンタルピー緩和を示す試料のガラス転移温度を正確に決定することが可能となる。例えば、MDSCを使用してノ粒子懸濁液を分析し、可逆熱流成分を試料温度に対してプロットする場合、その曲線は、従来のDSCで認められる曲線(試料温度に対する総熱流曲線)と類似しているように見え、従来のDSCにより認められる転移は、エンタルピー緩和よりはむしろガラス転移現象であることが確認される。
【0096】
生体外での溶解(つまり、懸濁および遠心)技術を用いて、薬物放出速度を測定することができる。ナノ粒子は、PBS中のヒドロキシプロピルβCD(Trapsol)などの放出媒体に懸濁される。一定時間後、懸濁液を遠心し、遠心チューブ底部のナノ粒子ペレットを再懸濁するのを防ぐために乱流を起こすことなく、遠心された懸濁液の上部分からの媒体試料を取り出す。次いで、その試料をHPLCによって分析し、ナノ粒子から放出された薬物の量を決定する。
【0097】
一態様において、本発明の開示内容は、ガラス転移温度約37〜約50℃を有する、多数のナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む、医薬水性懸濁液を提供する。
【0098】
疎水性部分は、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択することができる。親水性部分は、ポリ(エチレン)グリコールであることができる。ナノ粒子はさらに、ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含んでもよい。
【0099】
一実施形態において、ナノ粒子は、治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%または0〜約75重量%を含むことができる。他の実施形態において、コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約16kDaを有し、コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有する。他の実施形態において、コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約50kDaを有し、コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有する。一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約6.5kDaを有する。他の実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約75kDaを有する。
【0100】
一実施形態において、提供されるナノ粒子の水性懸濁液は、約37〜約39℃、37〜約39.5℃、39.5〜約41℃、約42〜約50℃、または約42〜約44℃であり得るガラス転移温度を有する。他の実施形態において、ナノ粒子の水性懸濁液は、約37〜約38℃であり得るガラス転移温度を有する。一部の実施形態において、提供されるナノ粒子または懸濁液は、40℃、または39.5〜約41℃のガラス転移温度を有するナノ粒子または懸濁液を含まない。ガラス転移温度の文脈における「約」という用語は一般に、+0.5℃を意味する。ガラス転移温度は、熱流束示差走査熱量測定、入力補償示差走査熱量測定、および/または変調型DSCによって測定される。
【0101】
一実施形態において、開示のナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように、治療薬の約50%未満を放出する。他の実施形態において、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように、治療薬の約50〜約70%を放出する。他の実施形態において、ナノ粒子は、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように、治療薬の約70〜約100%を放出する。
【0102】
他の態様において、本発明の開示内容は、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法であって:
a)第1治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第1ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子を提供する工程;
b)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
c)その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度を決定する工程;
d)ナノ粒子ガラス転移温度と、その少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度との相関性を決定する工程;
を含む方法を提供する。
【0103】
一実施形態において、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法がさらに:
e)第2治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第2ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子を提供する工程であって、第2治療薬および第2ブロックコポリマーが第1治療薬および第1ブロックコポリマーと同一であっても異なっていてもよい工程;
f)その少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
g)その少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度および工程d)で決定される相関性に基づく、少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子の薬物放出速度を予測する工程;
を含む。
【0104】
他の実施形態において、治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法はさらに、生体外溶解試験を用いて少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子からの予測薬物放出速度を確認する工程を含む。
第1および/または第2治療薬は、ドセタキセルなどのタキサン剤とすることができる。
【0105】
一実施形態において、第1および第2ブロックコポリマーの疎水性部分はそれぞれ、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択することができる。一実施形態において、第1および第2ブロックコポリマーの親水性部分はそれぞれ、ポリ(エチレン)グリコールとすることができる。一実施形態において、第1および/または第2ブロックコポリマーは、治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%を含むことができる。一実施形態において、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約16kDaまたは約50kDaを有し、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、重量平均分子量約5kDaを有していてもよい。他の実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約8.5kDaを有していてもよい。一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)は、数平均分子量約75kDaを有していてもよい。一実施形態において、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分は、数平均分子量約50kDaを有し、第1および/または第2ブロックコポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分は、数平均分子量約5kDaを有していてもよい。
【0106】
i)第1多数ポリマーナノ粒子を含む懸濁液を提供する工程であって、ナノ粒子のそれぞれが、治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマー、およびポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーを含む、工程;
ii)懸濁液のガラス転移温度を決定する工程;
iii)第1多数ポリマーナノ粒子におけるホモポリマーの量を増加または低減する工程;
iv)所望のガラス転移温度を有する懸濁液が得られるまで、工程i)〜iii)を繰り返す工程;
を含む、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法(例えば、治療薬の所定の放出速度を同定するために)も、本明細書で提供される。
【0107】
例えば、特異的な放出速度を有する懸濁液を同定するためにナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法であって:
a)治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーを含むナノ粒子を有する複数種の懸濁液を別々に調製する工程であって、各懸濁液が、別個のコンパートメントにあり、各懸濁液が、所定の分子量のブロックコポリマーと、存在する場合には、所定の分子量のホモポリマーを含む、工程;
b)懸濁液それぞれのガラス転移温度を決定する工程;
c)所定のガラス転移温度を有する懸濁液を同定する工程;
を含む方法が本明細書において提供される。
【実施例】
【0108】
ここで、本発明が一般に説明され、本発明の特定の態様および実施形態を単に説明する目的で含まれ、決して本発明を制限することを意図するものではない、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されよう。
【0109】
実施例1:PLA−PEGの製造
この合成は、マクロ開始剤としてのα−ヒドロキシ−ω−メトキシポリ(エチレングリコール)とD,L−ラクチドとの開環重合によって達成され、以下に示されるように触媒としてスズ(II)2−エチルヘキサノエートを使用して高温にて行われる(PEG Mn約5,000Da;PLA Mn約16,000Da;PEG−PLA Mn約21,000Da)。
【0110】
ポリマーは、ジクロロメタンにポリマーを溶解し、ヘキサンとジエチルエーテルの混合物中でそれを沈殿させることによって精製される。この段階から回収されるポリマーはオーブンで乾燥させるべきである。
【0111】
実施例2:ナノ粒子の製造−エマルジョンプロセス
ドセタキセル(DTXL)とポリマー(ホモポリマー、コポリマー、および/またはリガンドを有するコポリマー)との混合物で構成される有機相が形成される。有機相は、約1:5の比(油相:水相)で水相と混合され、水相は、界面活性剤および一部溶解された溶媒で構成される。高い薬物ローディングを達成するために、有機相中に固形分約30%が使用される。単に混合して(撹拌子)、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初の粗いエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。一般に、9000psigにて100ミクロンZチャンバに1〜3回通過させて、標的粒子サイズを有するエマルジョンが生成される。
【0112】
次いで、微細エマルジョンは、混合しながら所定の温度で脱イオン水に添加することによってクエンチされる。クエンチ単位操作において、攪拌下にて、冷たい水性クエンチにエマルジョンが添加される。これは、油相溶媒のかなりの部分を抽出する役割を果たし、下流濾過のためのナノ粒子が効率的に硬化される。クエンチ:エマルジョン比は約5:1である。
【0113】
Tween80 35%(重量%)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween80約4%を達成する。エマルジョンがクエンチされた後、Tween80の溶液が添加され、それは薬物可溶化剤として働き、濾過中に未封入薬物を有効に除去することが可能となる。
【0114】
粒子のTg未満に維持するのに十分に薄い懸濁液(十分に低い濃度の溶媒)は、その温度を十分に冷たく維持しなければならない。Q:E比が十分に高くない場合には、溶媒の濃度が高くなると、粒子が可塑化され、薬物が漏出する。逆に、温度が低いほど、低いQ:E比(約3:1まで)で高い薬物封入が可能となり、プロセスをより効率的に実施することが可能となる。
【0115】
次いで、ナノ粒子を接線フロー濾過プロセスによって単離し、ナノ粒子懸濁液を濃縮し、クエンチ溶液から溶媒、未封入薬物および薬物可溶化剤を水中にバッファー交換する。分画分子量(MWCO)300の再生セルロース膜が使用される。一定容積ダイアフィルトレーション(DF)を行い、クエンチ溶媒、遊離薬物およびTween80を除去する。一定容積DFを実施するために、濾液が除去されるのと同じ速度で、バッファーを濃縮水(retentate)容器に添加する。
【0116】
次いで、ワークアップ中、濾過されたナノ粒子スラリーを高温まで熱サイクルにかける。最初に25℃に曝露した後に非常に急速に、少量の封入薬物(一般に5〜10%)がナノ粒子から放出される。この現象のために、ワークアップ全体の間、冷たく維持されたバッチは、送達の間または非冷凍保存のいずれかの部分の間に形成する、遊離薬物または薬物結晶に影響を受けやすい。
【0117】
濾過プロセス後、ナノ粒子懸濁液を滅菌グレードフィルター(0.2μm(絶対値))に通す。プロセスの妥当な濾過面積/時間を利用するために、プレフィルターを使用して、滅菌グレードフィルターを保護する。
【0118】
通常使用されるフィルターは、Pall SXMPDD1404(KS50P/EKSP二重層,0.1〜0.3μm(公称値));Pall Life Sciences Supor EKV0.65/0.2ミクロンの滅菌グレードPESフィルターである。
【0119】
デプスフィルターにはナノ粒子1kg当たり濾過表面積0.2m2、滅菌グレードフィルターにはナノ粒子1kg当たり濾過表面積1.3m2が使用される。
【0120】
実施例3:ポリマーの示差走査熱量測定
TA Instruments Q200またはTzero(T0)技術を備えたTA Instruments Q2000熱流束DSCを使用して、ナノ粒子およびそのポリマー成分のガラス転移温度を測定した。試料皿(ナノ粒子懸濁液20〜70μLまたはポリマー3〜10mgのいずれかを含有する)および標準物質皿(空の試料皿で構成される)を昇温速度10℃(または20℃)/分にて4〜70℃に加熱した。高純度乾燥窒素を使用して、分析中に炉をパージした。
【0121】
従来の熱流束DSCでは、2つの熱電対、試料皿および標準物質皿それぞれに1つの熱電対が使用される。炉の温度が一定加熱速度(例えば10℃/分)で上昇した場合、試料および標準物質皿質量が同一であるという条件で、試料温度(Ts)は、試料の熱容量に等しい程度に標準物質温度(Tr)よりも遅れる。温度差、ΔT=Ts−Trが、炉のブロック温度の関数として記録される。一般に、装置のアウトプットは、加熱ブロック温度に対してプロットされた単位質量当たりの熱流量からなる。単位質量当たりの熱流量(ワット/g)(y軸)は、ΔT/Rからなり、Rは、標準物質皿および試料皿を連結する(かつ支持する)コンスタンタン製ブリッジの熱抵抗である。したがって、実験が開始された時に、DSCシグナルはゼロから定常状態値(Ts−Tr)/Rへとシフトし、実験用ベースラインが確立される。加熱サイクルまたは冷却サイクルでガラス転移に遭遇した場合には、試料Tgを上回って試料熱容量が増加する結果として、定常状態値がシフトする。一般に、熱容量変化の高さ半分での温度、1/2ΔCpは、試料Tgとして定義される。
【0122】
T0技術を備えた熱流束DSCにおいて、第3熱電対は、標準物質皿および試料皿を連結する(および支持する)コンスタンタン製ブリッジの温度(T0)を測定し、熱流等式は、3つの更なる項、試料および標準物質セルの異なる抵抗を説明する項、および熱キャパシタンスの差および加熱速度の差それぞれの項からなる。以下に示すすべてのDSCデータは、T0技術を備えた装置で得られた。さらに、「T4モード」を使用して、つまり4項熱流式を用いて、データを処理した。一部の実験に関しては、「T4Pモード」を使用した。このモードでは、T4モードについて記述されることに加えて、試料皿重量と標準物質皿重量の差の補正を用いた。
【0123】
気密封止された皿を使用して、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG、Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=6kDa)、およびポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=75kDa)を含む固体ポリマー試料を分析し、T4モードを用いて装置の定数を決定した。得られたDSCの結果を図3〜7に示す。変曲法のポイント(Tg=最大勾配のポイント)を用いて、ガラス転移温度を代入した。
【0124】
図3は、溶融重合から回収し、かつ不明な冷却速度で冷却された、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。2つの異なる転移がPLA−PEG(16kDa−5kDa)ブロックコポリマーのDSC曲線で確認される。1〜10℃の転移は、PEGとPLAの混合相のTgであり、40〜50℃の転移はPEG豊富な相の融解ピークである。同様なモル質量のホモポリマーPEGは一般に、−50〜−25℃のTg’を示し、同様なモル質量のPLAホモポリマーは、範囲30〜50℃のTgを示す。確認されたTgは、純粋なPEGホモポリマーに対して予想されるTG温度と、純粋なPLAホモポリマーに対して予想される温度の間にあり、このコポリマー試料は、PEGとPLAの両方を含有する混合相で構成されることが示されている。
【0125】
図4Aは、ポリマー溶液(ジクロロメタン中100mg/mL)を二成分非溶媒混合物(ジエチルエーテル/ヘキサン=70/30(v/v))に沈殿させて回収した場合の、ポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(エチレングリコール)(PLA−PEG,Mn PLAブロック=16kDa;Mn PEGブロック=5kDa)のDSC曲線を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。このブロックコポリマーは第1熱でTm60〜70℃を示し、結晶質PEGポリマー相が存在することが示されている。冷却後、得られたポリマーは速度10℃/分にて融解し、第2加熱曲線は低い温度のTgを示し、ポリマー溶融物から回収されたPLA−PEGブロックコポリマーに関して図3で確認されるのと同様な、PEGおよびPLAの単一混合相が示されている。
【0126】
結果を図3および4Aに示し、ブロックコポリマーシステムで確認されるガラス転移の数および種類、ならびに確認されたTgの値は、試料の履歴に応じて大幅に異なることが示唆されている。ポリマー試料(融解対沈殿)への実験経路は、その相挙動を変化させ、それによって、異なるガラス転移挙動が引き起こされる。熱履歴(融解サイクル後の冷却速度など)もまた、相の構造および熱的挙動を著しく変化させる。
【0127】
図4Bは、4種のPLA−PEGコポリマーのDSC曲線を示し、PEGブロックは数平均分子量5KDaからなり、PLAブロック数平均分子量はそれぞれ、10、15、30および50KDaである。上記で確認されるように、そのTg(および/または当てはまる場合にはTm)を超えてポリマー試料を加熱すると、熱履歴の影響が消され、同様な熱履歴を有する試料(つまり、固定冷却速度、例えば、10℃/分で溶融物から冷却された)を直接、比較することが可能となる。したがって、各システムの第2熱データのみを図4Bに示し、PLA数平均分子量が10KDaから50KDaに増加するにしたがって、PLAとPEGの混合相の変曲点(Tg値)の位置は、−6℃から33℃に増加する。図4Cは、試験された分子量範囲内で確認された傾向を示し、ポリマー分子量に対するTgの強い依存性を示している。
【0128】
図5は、沈殿プロセスから回収された場合のポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=6kDa)のDSC曲線を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。図5は、第1および第2熱サイクルの両方において30〜35℃のガラス転移を示す。ホモポリマーで予想されるように、相分離が不可能なことから、ポリマー試料への経路が異なるにもかかわらず(沈殿対融解)、Tgの差は認められない。
【0129】
図6Aは、ポリ(D,L−ラクチド)(PLA,Mn=75kDa)で認められる、45〜50℃のガラス転移を示す。DSC測定を繰り返した。上部曲線は第1熱であり、下部曲線は第2熱である。図5に示す、より低いモル質量PLAに対して、このPLA試料のより高いTg値から、ポリマー分子量が増加するにしたがって、期待されるTgの増加が示されている。図6Aにおける第1熱サイクルは、ガラス転移の高温側での吸熱ヒステリシスピークを示し、このポリマー試料が、そのTg未満でアニールされたか、または10℃/分より遅い速度(この熱サイクルで用いられた加熱速度)で(溶融物から)冷却されたことが示されている。
【0130】
図6Aで示される75KDa PLA試料で観察されるように、エンタルピー緩和現象がガラス転移温度付近で起こる場合、Tg値を正確に決定することは難しい。図6Bは、いくつかのPLAホモポリマーに関して変調型DSC実験で測定される総熱流の可逆性熱成分を示す。分析されたPLA試料の数平均分子量は、2〜120KDaの範囲である。このデータから、図6Cに示されるように、分子量範囲2〜22KDaの分子量でTg値が増加し、次いで分子量がさらに増加すると、プラトーに達することが示されている。
【0131】
実施例4:薬物含有ナノ粒子のエマルジョン調製
水性懸濁液中の薬物ローディングされたナノ粒子を製造する一般的なエマルジョン手順を以下に示す(ショ糖30重量%、粒子重量に対して薬物を約10重量%含有するポリマーナノ粒子3〜6重量%)。ポリマー24%およびドセタキセル(DTXL)6%を含む固形分30%(重量%)で構成される有機相が形成される。有機溶媒は、酢酸エチル(EA)およびベンジルアルコール(BA)であり、BAは、有機相の21%(重量%)を占める。有機相は、約1:2(油相:水相)の比で水相と混合され、その水相は、水中のコール酸ナトリウム0.5%、BA2%、およびEA4%(重量%)で構成される。単に混合して、またはローターステーター・ホモジナイザーを使用して、2つの相を合わせることによって、最初のエマルジョンが形成される。次いで、高圧ホモジナイザーを使用して、最初のエマルジョンが微細エマルジョンへと形成される。次いで、微細エマルジョンは、混合しながら脱イオン水の冷却クエンチ(0〜5℃)に添加することによってクエンチされる。クエンチ:エマルジョン比は約10:1である。次いで、Tween80 35%(重量%)の溶液をクエンチに添加し、全体でTween80約4%が達成される。次いで、限外濾過/ダイアフィルトレーションによって、ナノ粒子を単離し、濃縮する。
【0132】
Tgが抑えられた迅速放出性ナノ粒子を製造するための例示的な手順において、そのポリマーの50%はポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)であり、ポリマーの50%はポリ(D,L−ラクチド)(PLA;Mn6.5kDa)である。得られるナノ粒子は、37℃未満のガラス転移の開始を有し、したがって、生理学的温度にて相対的に迅速な拡散をベースとする放出を有する。
【0133】
Tgが増加された通常放出性(normal-releasing)ナノ粒を製造するための例示的な手順では、ポリマーの100%がポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)である。得られるナノ粒子は、約37℃でTgの開始を有する。
【0134】
Tgが増加された徐放性ナノ粒子を製造するための例示的な手順において、そのポリマーの50%がポリラクチド−ポリ(エチレングリコール)ジブロックコポリマー(PLA−PEG;16kDa−5kDa)であり、ポリマーの50%がポリ(D,L−ラクチド)(PLA;75kDa)である。得られるナノ粒子は、37℃を超えるTgの開始を有し、したがって、生理学的温度にて相対的に遅い拡散をベースとする放出を有する。
【0135】
実施例5:ナノ粒径および薬物含有率を決定する方法
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析した。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラント(一般的に)およびNNLS法を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方、またはAccusizer SPOSを使用して、希釈水性懸濁液中でHoribaLS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical modelを使用して解析した。
【0136】
ナノ粒子スラリーのドセタキセル含有量をスラリーの全固形分で割ることによって、薬物ローディングが計算された。ドセタキセル含有量は、アセトニトリルを使用してナノ粒子から薬物を抽出することによって決定し、アセトニトリル20%(0.016%TFA)からアセトニトリル100%(0.016%TFA)の勾配を用いてC8逆相カラム(Waters X−Bridge C8)で試料を分析した。溶離液吸光度を230nmでモニターした。ドセタキセルを約40%アセトニトリルで溶出した。勾配を100%アセトニトリルに増加し、疎水性ナノ粒子ポリマー成分、PLA−PEGおよびPLA−PEG−GL2を溶出した。ドセタキセルの定量化限界は、およそ0.5μg/mLである。スラリーの固形分は、真空および熱を用いて、懸濁液から水を除去することによって重量測定により決定する。
【0137】
実施例4に示す、徐放性、通常放出性、および迅速放出性バッチの粒径および薬物ローディングを以下の表5に示す:
【表5】
【0138】
実施例6:水性懸濁液におけるナノ粒子のTgの決定
熱流束DSCを使用して、水性懸濁液中のナノ粒子のガラス転移温度(Tg)を決定した。10℃/分または20℃/分の一定加熱速度で試料を4〜70℃に加熱した。この温度範囲の大部分において水蒸気圧が比較的高いために、水蒸気の漏れを防ぐため、気密封止皿で分析を行った。
【0139】
図8から図11は、水性懸濁液中のナノ粒子試料のDSC曲線を示す。分析されたナノ粒子試料は一般に、−20℃で凍結保存した。保存された試料を最初に、周囲温度の水浴に入れ、続いて超遠心分離法を用いてそれを遠心分離することによって解凍した。ナノ粒子懸濁液(ナノ粒子30〜50mg/mL)約4mLをポリプロピレン製ハウジングと、分画分子量限界100kDaの再生セルロース膜フィルターとを有するMillipore Amicon遠心濾過デバイスに入れた。4000×gで試料を遠心分離することによって濃縮し、3分の1ないし4分の1の濃縮体積に低減した。濃縮水(ナノ粒子約120〜150mg/mL)をガラス製シンチレーションバイアルに移し、−20℃のフリーザーに入れた。この熱処理は、ナノ粒子作製後に用いられ、かつナノ粒子のガラス転移温度未満の温度を要する処理と同一であった。したがって、この処理では、ナノ粒子作製プロセス後に、その条件に対する粒子の熱履歴は変わらない。
【0140】
図8から図11に示す吸熱転移は、図7に示すガラス転移温度を同定するために5つの点を選択することによって定義された。これらは、Tb、直線性からのDSC曲線の逸脱の開始;T1、ガラス転移の外挿開始温度;T2、ガラス転移の外挿終了温度を含む。ガラス転移温度は、2つの可能な方法のうちの1つで;熱容量の増加の半分高さでの温度(1/2ΔCp)(図7に示される)として、または変曲点として、定義される。
【0141】
図8におけるDSC曲線は、加熱速度10℃/分で4〜70℃に加熱した場合に、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと低分子量PLAホモポリマー(Mn=6.5kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されている。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TA Instrument Q200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。第1熱サイクル(上部曲線)に関して、確認されたTbおよびTg値ははそれぞれ、37℃および39.7℃である。続いて、試料を速度10℃/分で4℃に冷却し、第2熱サイクルで再び、70℃(10℃/分の加熱速度で)に加熱した。図8の下部曲線は、第2熱サイクルで確認される吸熱転移を示す。そのTbおよびTg値はそれぞれ、33℃および36.7℃にシフトする。静脈内注射用の使用では、ナノ粒子は、生理学的温度にさらされるだけであると考えられる。したがって、その薬物放出を予測する場合、第1熱サイクルのデータのみが関連性がある。
【0142】
図9におけるDSC曲線は、製剤中の唯一のポリマー成分としてPLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーから粒子が製造されている、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示す。懸濁液を加熱速度20℃/分で4〜70℃に加熱した。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TA Instrument Q200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。図9の上部曲線として示される第1熱サイクルに関して、確認されたTbおよびTg値はそれぞれ、37.3℃および41.3℃である。下部曲線は、ナノ粒子懸濁液の新たな試料の二重反復実施を示し、それぞれ、37.5℃および39.8℃のTbおよびTg値が得られた。
【0143】
図10におけるDSC曲線は、加熱速度10℃/分で4〜70℃に加熱した場合に、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されている。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TAInstrumentQ200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。第1熱サイクル(上部曲線)に関して、確認されたTbおよびTg値ははそれぞれ、43℃および44.9℃である。続いて、試料を速度10℃/分で4℃冷却し、第2熱サイクルで再び、70℃(10℃/分の加熱速度で)に加熱した。図10の下部曲線は、第2熱サイクルで確認される吸熱転移を示す。そのTbおよびTg値はそれぞれ、39℃および41℃にシフトした。
【0144】
図11におけるDSC曲線は、加熱速度20℃/分で4〜70℃に加熱した場合に、ナノ粒子懸濁液によって示される吸熱転移を示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されている。分析されたナノ粒子試料は、封入されたドセタキセルを約10重量%含有した。TA Instrument Q200熱流束DSCを用いて、分析を行った。DSC測定を繰り返した。第1熱サイクルに関して、確認されたTbおよびTg値ははそれぞれ、44℃および45.3℃である。下部曲線は、ナノ粒子懸濁液の新たな試料の二重反復実施を示し、それぞれ、42.4℃および43.8℃のTbおよびTg値が得られた。
【0145】
表6Aは、上述のナノ粒子に関するDSC研究で確認された吸熱転移を示す。
【表6A】
【0146】
ドセタキセル含有ナノ粒子のガラス転移温度を確認するため、変調型DSC(MDSC)を用いて、図8から11に示されるような試料組成の粒子の異なるバッチを試験した。用いられたナノ粒子試料製造法は、上述の方法であった。振幅0.5℃の正弦波温度変動および線形昇温速度2℃/分で重ね合わされる60秒間の時間を用いて、変調型DSC実験を行った。図11Bは、総熱流の可逆性熱流成分を示す。これらのナノ粒子バッチは、図8から11に見られるような、ナノ粒子組成に対するナノ粒子ガラス転移温度の同様な依存性も示した。
【0147】
図11Bにおいて、上部MDSC曲線は、ナノ粒子(試料A)によって示される37.8℃でのTgを示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと低分子量PLAホモポリマー(Mn=6.5kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されており、封入ドセタキセルを約10重量%含有する。第2MDSC曲線は、ナノ粒子(試料B)によって示される40.1℃でのTgを示し、その粒子は、製剤中の唯一のポリマー成分としてPLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーから製造され、封入ドセタキセルを約10重量%含有する。第3MDSC曲線は、ナノ粒子(試料C)によって示される43.0℃でのTgを示し、その粒子は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーと高分子量PLAホモポリマー(Mn=75kDa)との50/50(重量比)混合物から製造されており、封入ドセタキセルを約10重量%含有する。MDSC下部曲線は、ナノ粒子(試料D)によって示される37.3℃でのTgを示し、その粒子は、唯一のポリマー成分としてPLA−PEG(16kDa−5kDa)コポリマーから製造され、封入ドセタキセルを含有しない。
【0148】
表6Bは、上述のナノ粒子の変調型DSC研究において確認された吸熱ガラス転移を示す。
【表6B】
【0149】
実施例7:ナノ粒子試料からの薬物放出速度
水における薬物(ドセタキセル)溶解性に関して沈降条件下にて、ナノ粒子から放出される薬物の速度を生体外で決定した。薬物可溶化剤として放出媒体として、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HP−βCD)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液を使用して、生理学的pHおよびイオン強度で実験を行った。
【0150】
薬物約5mg/mLを含有する、ドセタキセルがローディングされたナノ粒子試料を最初に、脱イオン水で最終濃度(ドセタキセル)250μg/mLに希釈した。例えば、DTXL5mg/mLを1ml含有するバッチを冷たい脱イオン水19mLで希釈し、薬物250μg/mLを含有するナノ粒子懸濁液を合計20ml得た。
【0151】
PBS(Sigma PBS P−5368)を脱イオン水に溶解して、0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(NaCl:0.138M;KCl:0.0027M)を含有するリン酸緩衝液溶液を得ることによって、放出媒体(PBS(w/w)中2.5%HP−ΒCD)を調製した。ヒドロキシプロピルβCD(Trapsol)100gをPBS溶液3900gに溶解し、PBS中2.5%HP−ΒCDを得た。目盛り付きシリンダーを使用して、この放出媒体120mLをQorpak広口瓶(16194−290VWR番号7983Qorpak#)に移した。
【0152】
ナノ粒子スラリー(3mL)をQorpak瓶内の120mL放出媒体に添加した。瓶に蓋をし、手でスワーリング(swirling)することによって混合した。時間ゼロ(T=0)の対照試料を取り出した。ナノ粒子スラリーを放出媒体と混合した直後に試料900μLを取り出し、等しい体積(900μL)のアセトニトリルを含有するHPLCバイアルにそれを移すことによって、第1の非遠心試料を得た。後の時点で取り出された試料が受けた処理と類似の遠心処理を受けた遠心試料(第2試料)は、Qorpak瓶から試料4mLを取り、遠心チューブ(Beckmancoulter,容量4mL,番号355645)にそれを移すことによって得た。続いて、固定角ローターMLA55(S/N08U411)を用いたUltracentrifuge Optima MAX−XP(P/N393552AB,TZ08H04,カタログ番号393315)で4℃にて1時間、50,000rpm(236,000g)で試料を遠心した。遠心チューブ底部のナノ粒子ペレットを再懸濁するのを防ぐために乱流を起こすことなく、遠心試料の上部からの上清900μLを取り出した。この900μLアリコートをHPLCバイアル中のアセトニトリル900μLに移した。ナノ粒子内にまだ封入されている薬物が、遠心するとペレット化したことから(ナノ粒子と共に)、上清に見られるドセタキセルは、放出された薬物の量を表す。
【0153】
連続混合条件を維持するために37℃で保たれた水浴振盪機を使用して、Qorpac瓶内の放出試料を75rpmで連続して攪拌した。試料4mLを所定の時点で取り出し、上述のように処理し、ドセタキセル含有率を分析するためのHPLC試料が得られる。試料は一般に、0、1、2、4、および24時間の時点で抜き取られ、その時点は、著しく速い、または遅い放出のバッチを考慮に入れるために必要に応じて変更した。
【0154】
図12は、異なるポリマー材料で構成されるナノ粒子からの、37±0.5℃で放出されるドセタキセルの速度(封入ドセタキセル全体の%として)を示す。実線(上部)は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)と低分子量(Mn=6.5kDa)PLAホモポリマーの1:1(w/w)混合物で構成される「迅速」放出性システムからの薬物放出速度に相当する。破線(中央)は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)のみで構成される「通常または中間」放出性システムからの薬物放出速度に相当する。破線(下部)は、PLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量(Mn=75kDa)PLAホモポリマーの1:1(w/w)混合物で構成される「徐」放性システムからの薬物放出速度に相当する。
【0155】
図12に示す37℃でナノ粒子から放出されるドセタキセルの速度は、ナノ粒子組成に対する強い依存性を示している。PLA−PEG(16kDa−5kDa)とPLA(Mn=6.5kDa)の混合物から製造されたナノ粒子は、放出媒体に曝露して最初の14時間以内に封入薬物の約75%が放出される、「迅速」放出プロファイルを表した。対照的に、ナノ粒子がPLA−PEG(16kDa−5kDa)のみで製造された場合には、封入薬物約65%が同様な期間にわたって放出された。ナノ粒子がPLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量PLA(Mn=75kDa)の混合物から製造された場合には、この効果はさらに増幅された。このシステムでは、薬物の約50%のみが、最初の4時間に放出された。
【0156】
表7Aから分かるように、3つのナノ粒子システムで確認された吸熱ガラス転移によって、DSC曲線が線形性(Tb)から逸脱し始めるポイントに相当する温度が、粒子の薬物放出速度を決定する重要なパラメーターであることが示されている。「迅速」放出性システムにおいて、吸熱転移は35℃で開始する。このシステムで観察される放出挙動から、セグメント運動の開始およびナノ粒子コア内の薬物拡散速度の必然的な増加によって、Tb>37℃であるシステムで観察されるよりも高い速度で薬物が粒子−水界面に達することが可能となることが示されている。「通常」放出性システムはTb=37.3℃を示し、薬物放出速度はそれに応じて遅くなる。「徐」放性システムは同様に、より高いTb(43℃)を示す。
【0157】
Tbが37℃以下である場合に認められる、有意に異なる放出速度は、薬物拡散の速度およびナノ粒子からの放出の速度に対する部分的運動の強い作用をあらわす。表7で報告されるTgおよびTe値(ガラス転移温度およびDSC曲線が再び線形となるポイント)もまた、「迅速」、「通常」、および「徐」放出性システム内で系統的に増加する。この増加は、ポリマーのセグメント運動と薬物放出速度との相関性と一致し、懸濁液条件下の所定のナノ粒子システムのガラス転移温度が、相対的な薬物放出速度を予測する手段を提供することを裏付ける。放出速度絶対値はさらに、ポリマーと薬物の混和性、水への薬物溶解性、薬物分子サイズ、およびナノ粒子内の薬物相構造(非晶質または結晶質)などの他の因子に応じて異なる。
【0158】
MDSC実験で観察された総熱流の可逆性熱成分は、吸熱ガラス転移付近で起こるエンタルピー緩和から生じる人為産物を含まない。MDSC自体は、従来のDSCと比較すると、Tg値をより正確に決定する。MDSC分析(表7Bで示されるデータ)から、37.8℃でTgを示す、PLA−PEG(16kDa−5kDa)とPLA(Mn=6.5kDa)の混合物から製造されたナノ粒子は、封入薬物の約75%が放出媒体にさらされて最初の4時間以内に放出されるという「迅速」放出プロファイルも示すことが例証されている。これは、ナノ粒子ガラス転移温度が37℃(生理学的温度)に近い場合、高度なセグメント運動によって封入薬物の相対的に迅速な放出が引き起こされることを示している。ナノ粒子がPLA−PEG(16kDa−5kDa)のみで構成されている場合、約65%の封入薬物が、同様な期間にわたって放出された。このより高いTg(40.1℃)試料におけるより低い程度のセグメント運動によって、それに応じて、封入薬物の放出が遅くなる。PLA−PEG(16kDa−5kDa)と高分子量PLA(Mn=75kDa)の混合物から製造されたナノ粒子におけるこの傾向は続き、より高いTg(=43.0℃)でさえ、それに応じて、封入薬物のより遅い放出が生じ、最初の4時間に薬物の約50%のみが放出される。エントリー4(表7B)は、封入薬物を含まないPLA−PEG(16kDa−5kDa)で構成されるポリマーナノ粒子のガラス転移温度を示す。封入薬物を含有する、同様なポリマー組成の薬物含有ナノ粒子との比較によって、ドセタキセルが測定可能な程度に、ポリマーナノ粒子のガラス転移温度に影響を及ぼすことが例証されている。この場合には、封入ドセタキセル約10重量%がTg値を0.5℃上昇させる。このデータから、薬物含有ナノ粒子のTg値は、相当する薬物放出速度を正確に予測する手段を提供することが示されている。ポリマー成分および/または薬物とのその物理的混合物のガラス転移温度などの他の測定値は、一般的な傾向、例えばポリマー分子量の変化の作用を提供することができる。しかしながら、かかる測定値から、特定の薬物保有ナノ粒子を迅速放出性、穏やかな放出性、または徐放性として分類することはできない。
【0159】
溶融物または沈殿から回収されたPLA−PEG、および低(Mn=6.5kDa)または高(Mn=75kDa)モル質量PLAに関する、図3から7に示すDSCデータから、その熱履歴ならびに分析前のポリマー処理の経路に対する、これらのポリマーナノ粒子成分の熱的挙動の強い依存性が例証されている。したがって、ポリマー成分に関して確認されるガラス転移は、ナノ粒子の熱特性に直接相関していない。ナノ粒子作製のプロセスは、特異的な熱履歴を成分ポリマーに与え、さらにPLA−PEGなどのブロックコポリマーに、特異的な形態的および相特性を与える。
【0160】
ポリマー成分の熱的挙動は、予測可能な様式でガラス転移温度に影響する。例えば、低分子量PLA(Mn=6.5kDa)とPLA−PEG(16kDa−5kDa)の1:1(w/w)混合物から製造されたナノ粒子は、高分子量PLA(75kDa)を除く同様な混合物から製造されたナノ粒子によって示されるよりも低いTgを示す。この結果は、Tg(75kDaPLA)が、Tg(6.5kDaPLA)よりも約20℃高いことに基づく。Tgの差から、ナノ粒子組成物の選択によって、薬物放出速度を調節することが可能となる。しかしながら、かかるポリマー成分から製造されたナノ粒子の実際の転移温度は、ポリマー成分のTg値から予測することはできない。
【0161】
実施例8:薬物放出速度に対する温度の影響
「迅速」、「通常」、「徐」放出性システムにおけるナノ粒子ガラス転移温度の役割をさらに試験するために、37℃以外の3通りの温度で薬物放出速度を試験した。これらの温度は、32℃、つまり最低開始温度(Tb)よりも3〜5℃低い温度、および52℃、最高転移最終温度(Te)よりも3〜5℃高い温度を含んだ。さらに、放出速度を25℃で決定し、3種すべてのナノ粒子システムのTgよりもかなり下回る温度で挙動を確認した。
【0162】
図14に示す1〜4時間の期間を拡大して、この結果を図13に示す。ガラス転移(Tb)温度の異なる開始にもかかわらず、25℃にて、3種すべてのナノ粒子システムが、同様な薬物放出速度を示した(図13および14で三角として示されるデータポイントを参照)。この観察から、3種すべてのシステムのTgよりもかなり下回る温度にて、薬物輸送および放出の速度が類似しており、かつ比較的遅いといったようなすべての場合において、セグメント運動が制限されることが確認されている。
【0163】
52℃にて、3種すべてのナノ粒子システムは加速された薬物放出速度を示し、そのガラス転移温度をかなり上回る温度にて、ナノ粒子コアが等しく塑性(ゴム状)であることが確認された。したがって、薬物拡散速度は、52℃にて最初の30分以内にほぼすべての薬物が放出される場合と同等であり、放出速度はほぼ同一となる(図13および14において四角で示されるデータを参照)。3種すべてのナノ粒子システムについて52℃で認められたバースト放出は、37℃で認められる傾向を反映し、「徐」放性、「通常」放出性および「迅速」放出性システムは、その薬物含有量の45%、65%、および75%を直ちに放出する。
【0164】
32℃では、放出速度は同様であるが、25℃で確認される速度よりも高い(すべてのシステムで)(図13および14において丸で示されるデータを参照)。これらの結果から、ポリマーコアの薬物拡散係数および水溶性の温度依存性が示唆されており、どちらのパラメーターも温度が高くなると増加し、薬物放出速度の増加が認められた。
【0165】
実施例9ドセタキセルナノ粒子
以下の配合:理論的薬物10%(w/w)およびポリマー−PEG(16−5、30−5、50−5、または80−5 PLA−PEG)90%(w/w)を用いて、種々のPLA−PEGコポリマーを含むドセタキセルナノ粒子を製造する。全固形分%=20%である。使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。1グラムのバッチサイズに関して、薬物100mgをポリマー−PEG(16−5、30−5、50−5、または80−5 PLA−PEG)900mgと混合する。
【0166】
以下のように、ドセタキセルナノ粒子を製造する。薬物/ポリマー溶液を調製するために、適切な量の酢酸エチルおよびベンジルアルコールと共に、適切な量のドセタキセル、およびポリマーをガラスバイアルに添加する。薬物およびポリマーが完全に溶解するまで、混合物をボルテックスする。
【0167】
水溶液を調製する。16−5 PLA−PEG製剤の水相は、水中にコール酸ナトリウム0.5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。30−5 PLA−PEG製剤は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。全固形分%=20%である。50−5 PLA−PEG製剤の水相は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。全固形分%=20%である。80−5 PLA−PEG製剤の水相は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有する。全固形分%=20%である。より高い分子量のポリマー−PEG(つまり、30−5、50−5、または80−5 PLA−PEG)を使用した場合、水相中のコール酸ナトリウム界面活性剤の濃度は、16−5 PLA−PEGを含む粒子と同様なサイズのナノ粒子を得るために、0.5%から5%へと増加する。具体的には、適切な量のコール酸ナトリウムおよび脱イオン水を瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合する。続いて、適切な量のベンジルアルコールおよび酢酸エチルをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合する。
【0168】
水溶液に有機相を5:1(水相:油相)の比で合わせることによって、エマルジョンが形成される。有機相を水溶液に注ぎ、室温でハンドホモジナイザーを使用してホモジナイズして、粗いエマルジョンが形成される。続いて、この溶液を高圧ホモジナイザー(110S)に供給して、ナノエマルジョンが形成される。
【0169】
攪拌プレート上で攪拌しながら、5℃未満の冷たい脱イオン水中にエマルジョンをクエンチする。クエンチとエマルジョンの比は8:1である。次いで、水中のTween80をクエンチされたエマルジョンに25:1(Tween80:薬物)の比で添加する。
【0170】
接線フロー濾過(TFF)に続いて、ダイアフィルトレーションを通してナノ粒子を濃縮し、溶媒、未封入薬物およびTween80(可溶化剤)を除去する。クエンチされたエマルジョンを最初に、300KDa Pall cassette(2つの0.1m2膜)を使用したTFFを通して、容積約100mLに濃縮する。これに続いて、冷たい脱イオン水約20ダイア容積(2L)を用いてダイアフィルトレーションを行う。その体積は、収集前に最小限に抑えられ、次いで、冷水100Lを容器に添加し、すすぎのために膜を通してポンピングする。合計約100〜180mLの材料をガラスバイアルに収集する。より小さなTFFを使用して、ナノ粒子をさらに、最終容積約10〜20mLに濃縮する。
【0171】
濾過されていない最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ある容積の最終スラリーを風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させる。続いて、ナノ粒子の重量を乾燥スラリーの容積で決定する。濃縮ショ糖(ショ糖0.666g/全体g)を最終スラリー試料に添加し、ショ糖10%の最終濃度が得られる。
【0172】
0.45μm濾過された最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ショ糖を添加する前に、0.45μmシリンジフィルターを使用して、所定の容積の最終スラリー試料を濾過する。次いで、ある容積の濾過試料を風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させ、その重量を重量測定で決定する。濾過されていない最終スラリーの残存試料をショ糖と共に凍結する。
【0173】
表Aは、上述のように製造されたドセタキセルナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表A】
表Aに示すように、50−5 PLA−PEGと80−5 PLA−PEGを含むドセタキセルナノ粒子によって、それぞれ約2.75%および3.83%の薬物ローディングが得られる。
【0174】
生体外放出試験を上述のドセタキセルナノ粒子で行う。図15に図示されるように、50−5 PLA−PEGまたは80−5 PLA−PEGを使用して作製されたナノ粒子は、それより低い分子量のPLA−PEGを有するナノ粒子と比較して、ナノ粒子からのドセタキセルの放出を遅くした。
【0175】
実施例10ボルテゾミブナノ粒子
以下の配合:理論的薬物30%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5、30−5、50−5、65−5、または80−5 PLA−PEG)70%(w/w)を用いて、種々のPLA−PEGコポリマーを含むボルテゾミブナノ粒子を製造する。全固形分%=20%である。使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。1グラムのバッチサイズに関して、薬物300mgをポリマー−PEG(16/5、30−5、50−5、65−5、または80−5 PLA−PEG)700mgと混合する。
【0176】
ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ボルテゾミブナノ粒子を製造する。
【0177】
表Bは、上述のように製造されたボルテゾミブナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表B】
生体外放出試験を、上述のボルテゾミブナノ粒子で行う。図16で図示するように、50−5 PLA−PEGを組み込むことによって、ナノ粒子からのボルテゾミブの放出が遅くなった。
【0178】
実施例11ビノレルビンナノ粒子
以下の配合:理論的薬物20%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5または50−5 PLA−PEG)80%(w/w)を用いて、16−5または50−5 PLA−PEGコポリマを含むビノレルビンナノ粒子を製造する。16−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=20%であり;50−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=30%である。すべてのナノ粒子に関して、使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。
【0179】
ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ビノレルビンナノ粒子を製造する。
【0180】
表Cは、上述のように製造されたビノレルビンナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【0181】
【表C】
上述のビノレルビンナノ粒子について生体外放出試験を行う。図17に図示するように、50−5 PLA−PEGを使用して製造されたナノ粒子は、16−5 PLA−PEGで製造されたナノ粒子と比較して、ナノ粒子からのビノレルビンの放出が遅くなった。
【0182】
実施例12ビンクリスチンナノ粒子
以下の配合:理論的薬物20%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5または50−5 PLA−PEG)80%(w/w)を用いて、16−5または50−5 PLA−PEGコポリマーを含むビンクリスチンナノ粒子を製造する。16−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=40%であり;50−5 PLA−PEGを含むナノ粒子では:全固形分%=20%である。すべてのナノ粒子に関して、使用される溶媒は、ベンジルアルコール21%および酢酸エチル79%(w/w)である。
【0183】
ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ビンクリスチンナノ粒子を製造する。
【0184】
表Dは、上述のように製造されたビノレルビンナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表D】
上述のビンクリスチンナノ粒子について生体外放出試験を行う。図18に図示するように、50−5 PLA−PEGを組み込むことによって、ナノ粒子からのビンクリスチンの放出が遅くなった。
【0185】
実施例13ベンダムスチンナノ粒子
以下の配合:理論的薬物17%(w/w)およびポリマー−PEG(16/5または50−5 PLA−PEG)83%(w/w)を用いて、塩化メチレン中ポリマー濃度20%(w/w)にて、16−5または50−5 PLA−PEGコポリマーを含むベンダムスチンHClナノ粒子を製造する。ベンダムスチンHClを1:1の比でテトラフェニルホウ酸ナトリウムで錯体化する。全固形分%=40%である。使用される溶媒は、ベンジルアルコール32%および塩化メチレン68%(w/w)である。
【0186】
エマルジョンを氷浴中で10分間回転させながら、真空を引くことによって回転蒸発器上のエマルジョンから塩化メチレンが除去される、更なる工程を有する、ドセタキセルナノ粒子について上述のプロトコルと同様なプロトコルを用いて、ベンダムスチンナノ粒子を製造する。
【0187】
表Eは、上述のように製造されたビノレルビンナノ粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表E】
上述のベンダムスチンナノ粒子について生体外放出試験を行う。図19に図示するように、50−5 PLA−PEGを使用して製造されたナノ粒子は、16−5 PLA−PEGを使用して製造されたナノ粒子と比較して、ナノ粒子からのベンダムスチンの遅い放出を示した。
【0188】
実施例14 エポチロンでのナノ粒子の製造
以下の配合:
理論的薬物10%(w/w)
ポリマー−PEG、16−5 PLA−PEGまたは50−5 PLA−PEG90%(w/w)
全固形分%=20%
溶媒:ベンジルアルコール21%、酢酸エチル79%(w/w)
を用いて、エポチロンBナノ粒子を製造した。
【0189】
1グラムのバッチサイズに関して、薬物100mgをポリマー−PEG:16−5または50−5 PLA−PEG900mgと混合した。
【0190】
エポチロンBナノ粒子を以下のように製造した。薬物/ポリマー溶液を調製するために、酢酸エチル3.16gと共に、エポチロンB100mgを7mLガラスバイアルに添加した。薬物の大部分が溶解するまで、混合物をボルテックスした。続いて、ベンジルアルコール0.840gをガラスバイアルに添加し、薬物が完全に溶解するまでボルテックスした。最後に、ポリマー−PEG900mgを混合物に添加し、すべて溶解するまでボルテックスした。
【0191】
16−5 PLA−PEG製剤または50−5 PLA−PEG製剤のいずれかの水溶液を調製した。16−5 PLA−PEG製剤の水溶液は、水中にコール酸ナトリウム0.1%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有した。具体的には、コール酸ナトリウム1gおよび脱イオン水939gを1L瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。続いて、ベンジルアルコール20gおよび酢酸エチル40gをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、すべて溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。50−5 PLA−PEG製剤の水溶液は、水中にコール酸ナトリウム5%、ベンジルアルコール2%、および酢酸エチル4%を含有した。具体的には、コール酸ナトリウム50gおよび脱イオン水890gを1L瓶に添加し、それらが溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。続いて、ベンジルアルコール20gおよび酢酸エチル40gをコール酸ナトリウム/水混合物に添加し、すべて溶解するまで、攪拌プレートを使用して混合した。
【0192】
水溶液に有機相を5:1(水相:油相)の比で合わせることによって、エマルジョンを形成した。有機相を水溶液に注ぎ、手持ち式ホモジナイザーを使用して室温で10秒間ホモジナイズして、粗いエマルジョンを形成した。続いて、この溶液を高圧ホモジナイザー(110S)を通して供給した。16−5 PLA−PEG製剤に関しては、2つの別個のパスに対して圧力を9000psiに設定し、ナノエマルジョンを形成した。50−5 PLA−PEG製剤に関しては、2つの別個のパスに対して圧力を9000psiに設定し、ゲージ圧力45psi(9900psi)に設定し、次いで更なる2つのパスに対してゲージ圧60psi(13200psi)に増加した。
【0193】
攪拌プレート上で攪拌しながら、エマルジョンを5℃未満の冷たい脱イオン水中にクエンチした。クエンチとエマルジョンの比は8:1であった。次いで、水中のTween80 35%(w/w)をクエンチされたエマルジョンに25:1(Tween80:薬物)の比で添加した。
【0194】
接線フロー濾過(TFF)に続いて、ダイアフィルトレーションを通してナノ粒子を濃縮し、溶媒、未封入薬物および可溶化剤を除去した。クエンチされたエマルジョンを最初に、300KDa Pall cassette(2つの0.1m2膜)を使用したTFFを通して容積約100mLに濃縮した。これに続いて、冷たい脱イオン水約20ダイア容積(2L)を用いてダイアフィルトレーションを行った。その体積は、収集前に最小限に抑えられ、次いで、冷水100Lを容器に添加し、すすぎのために膜を通してポンピングした。約100〜180mLの材料をガラスバイアルに収集した。より小さなTFFを使用して、ナノ粒子をさらに、最終容積約10〜20mLに濃縮した。
【0195】
濾過されていない最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ある容積の最終スラリーを風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させた。続いて、ナノ粒子の重量を乾燥スラリーの容積で決定した。濃縮ショ糖(ショ糖0.666g/全体g)を最終スラリー試料に添加し、ショ糖10%の最終濃度が得られた。
【0196】
0.45μm濾過された最終スラリーの固形分濃度を決定するために、ショ糖を添加する前に、0.45μmシリンジフィルターを使用して、最終スラリー試料の一部を濾過した。次いで、ある定容積の濾過試料を風袋引きされた20mLシンチレーションバイアルに添加し、凍結乾燥(lyo)/オーブンで真空下にて乾燥させた。濾過されていない最終スラリーの残存試料を、ショ糖(10重量)をそれに溶解した後に凍結した。
【0197】
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析した。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラント(一般的)およびNNLS法(TP008)を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方を使用して、希釈水性懸濁液中でHoriba LS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical model(TP009)を使用して解析した。
【0198】
表Fは、上述の粒子の粒径および薬物ローディングを示す。
【表F】
【0199】
実施例15 生体外での放出
ナノ粒子からのエポチロンBの生体外放出を決定するために、ナノ粒子をPBS放出媒体に懸濁し、37℃の水浴でインキュベートした。試料を特定の時点で収集した。超遠心分離法を用いて、ナノ粒子から放出薬物を分離した。
【0200】
図20は、16−5 PLA−PEGおよび50/5 PLA/PEG製剤についての生体外放出研究の結果を示す。データから、1時間後に16/5 PLA/PEG製剤からEpoBが100%放出されたことが示されている。50/5 PLA/PEG製剤は、1時間の時点で0%放出し、2時間で60%放出し、4時間で70%放出し、24時間の時点で80%を超える薬物放出を有する、より徐放性の製剤である。この2種類の製剤によって、ナノ粒子内にエポチロンBを封入する能力、および製剤に使用されるポリマーの種類の選択によって生体外放出が影響を受ける能力が実証されている。
【0201】
実施例16 ナノ粒子の製造−ブデソニド
別段の指定がない限り、以下のようにすべてのブデソニドバッチを製造した。薬物およびポリマー(16/5 PLA−PEG)成分を油相有機溶媒システム、一般に酢酸エチル(EA)70%およびベンジルアルコール(BA)30%に固形分20または30重量%で溶解した。水相は主に、界面活性剤としてのコール酸ナトリウム(SC)と共に、ベンジルアルコール2%および酢酸エチル4%で予め飽和された水からなる。油相:水相比1:5または1:10にてローターステーター均質化の下で、油相を水相に加えることによって、粗いO/W型エマルジョンを調製した。100μmZ相互作用チャンバを介して9000psiにてマイクロフルイディクス高圧ホモジナイザー(一般にM110S pneumatic)を通して、その粗いエマルジョンを処理することによって、微細エマルジョンを調製した。次いで、クエンチ:エマルジョン比10:1または5:1にて、エマルジョンを脱イオン水クエンチ中にクエンチした。次いで、ポリソルベート80(Tween80)をプロセス可溶化剤として添加し、未封入薬物を可溶化した。次いで、限外濾過に続いてダイアフィルトレーションでバッチを処理し、溶媒、未封入薬物および可溶化剤を除去した。このプロセスを図1および2に図示する。
【0202】
Brookhaven DLSおよび/またはHoribaレーザー回折によって、粒径測定を行った。薬物ローディングを決定するために、スラリー試料をHPLCおよび[固形分]分析にかけた。次いで、凍結前に、スラリー保持物(retain)をショ糖で10%に希釈した。別段の指定がない限り、記載のすべての比は重量に基づく。未封入薬物を除去するために、クエンチ後にTween80を使用してもよい。
【0203】
生体外放出方法を用いて、室温および37℃条件の両方でナノ粒子からの初期のバースト段階放出を決定する。APIのためにナノ粒子を沈降条件に置き、水浴中で混合する。放出薬物および封入薬物は、超遠心機を用いて分離される。
【0204】
遠心システムは以下のように行われる:130ml放出媒体(1×PBS中2.5%ヒドロキシルβシクロデキストリン)を含むガラス瓶に、脱イオン水中のブデソニドナノ粒子(ブデソニドPLGA/PLAナノ粒子約250μg/mL)のスラリー3mLを入れ、振盪機を使用してそれを150rpmで連続して攪拌する。所定の時点で、試料のアリコート(4mL)を取り出した。試料を236,000gにて60分間遠心分離し、上清をブデソニド含有量についてアッセイして、放出されたブデソニドを測定する。
【0205】
2つの技術、動的光散乱(DLS)およびレーザー回折(LD)によって、粒径を分析する。90度で散乱される660nmレーザーを使用して、希釈水性懸濁液中で25℃にてBrookhaven ZetaPals装置を使用して、DLSを行い、キュミュラントおよびNNLS法を用いて解析した。90度で散乱される、633nmのHeNeレーザーおよび405nmのLEDの両方を使用して、希釈水性懸濁液中でHoriba LS950装置でレーザー回折を行い、Mie optical model(TP009)を使用して解析した。
【0206】
実施例17
以下のパラメーターを変化させることによってQ:E比を変化させて(5:1、15:1および30:1);初期[ブデソニド]を10%に低減することによって「固形分」を30%に増加して;界面活性剤を0.5%に低減することによって粒径を増加して;様々な薬物ローディングを有するナノ粒子を作製した。
【0207】
固形分30%、薬物10%で単一のエマルジョンを生成し、Q:E比5:1、15:1および30:1にてエマルジョンを3つの異なるクエンチに分割した。粒径は137nmであり、薬物ローディングは3.4%〜4%の範囲であった。薬物ローディングの増加は、[固形分]および粒径が増加によるものであり、Q:E比の変化は、薬物ローディングに対して有意な影響を及ぼさないように思われた。
【0208】
実施例16の製剤およびプロセスを用いて、固形分30%を用いて、スケールアップのために10gバッチを調製し、10%マイクロフルイディクスM110EH電気高圧ホモジナイザーを使用して、200umZチャンバを用いて900psiにてこのバッチを製造した。粒径は113nmであり、薬物ローディングは3.8%(バッチ55−40,対照)であった。
【0209】
実施例18 ナノ粒子
実施例16の基本手順および以下のパラメーターを用いて、ナノ粒子の種々のバッチを調製した。
固形分40%で中MWのPLA(IV(インヘレント粘度)=0.3)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号52−198
[固形分]40%、薬物10%を有し、酢酸エチル/ベンジルアルコール(60/40)を使用した16/5 PLA−PEG:バッチ番号58−27−1
[固形分]40%、[薬物]5%を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号58−27−2
固形分40%で高MWのPLA(IV=0.6〜0.8)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号41−171−A
DSPE−PEG(2k)を有する高MWのPLA(IV=0.6〜0.8):バッチ番号41−171−Bおよび61−8−B
固形分75%で高MWのPLA(IV=0.6〜0.8)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号41−176
固形分75%および50%でドープされた高MWのPLA(IV=0.6〜0.8)を有する16/5 PLA−PEG:バッチ番号41−183−AおよびB
インヘレント粘度0.3を有する、中MWのPLAは、Surmodics(aka Lakeshore(LS))から入手した。16/5 PLA−PEGは、Boehringer Ingelheim(バッチ41−176)またはPolymer Source(バッチ41−183)から入手した。Mn80kDa、Mw124kDaを有する高MWのPLAはSurmodicsから入手した。
【0210】
表Gは、ナノ粒子バッチのサイズおよび薬物ローディングを示す:
【表G】
各バッチの生体外放出を図21に示す。注:1時間の時点でのバッチ41−171−Aは、遠心されていない試料の1つによって生じたアウトライヤーであり、極端に低い読み取り値である。バッチ41−171−B(脂質製剤)と41−183−A(高MWのPLA)のどちらも、2時間の時点で50%以下の薬物放出を示し、他の製剤は2時間以内に70〜100%を放出していた。
【0211】
実施例19 動物研究用のバッチ
10gバッチを調製し、バッチ41−176および41−183−Aで見られる薬物ローディングおよび放出を確認しただけでなく、動物研究用の材料も得た。粒径は183nmであり、薬物ローディングは5.03%であった。水相[界面活性剤]を除いては、製剤およびプロセスのパラメーターを直線的に倍率変更した。以下の表Hは、バッチ間の主要な差を列挙する。
【0212】
【表H】
PK研究のために、10gバッチ、バッチ番号62−30を選択し、薬物放出について最初に試験して、図22に示すように、その放出が41−176および41−183−Aに類似していることを確認した。
【0213】
実施例20 ラットの研究:薬物動態学
0時点にて、ラット(頚静脈にカニューレが挿入された雄のSDラット,約300g)に、ブデソニドまたはブデソニド封入受動的標的化ナノ粒子(PTNP)(実施例16で製造された)を0.5mg/kgで単回静脈内投与した。投与後の様々な時点で、頚静脈カニューレから、リチウムヘパリンを含有するチューブに血液試料を採取し、血漿を調製した。血漿からブデソニドを抽出し、続いてLCMS分析によって、血漿レベルを決定した。このPK研究からの結果を図23に示す。
【0214】
コポリマーナノ粒子にブデソニドを封入することによって、最高血漿中濃度(Cmax)が11倍増加し、半減期(t1/2)が4倍増加し、薬物血中濃度時間曲線下面積(AUC)が36倍増加した。ブデソニドの封入によって、分布容積(Vz)も1/9に減少し、血漿クリアランス(Cl)も1/37に減少する。これらのパラメーターそれぞれが、ブデソニドのナノ粒子封入によって、ステロイドの組織分布を犠牲にして、ブデソニドの血漿局在化が促進されることを示している。表Iは、ブデソニドおよびブデソニドPTNPの薬物動態学的分析を説明する。
【0215】
【表I】
【0216】
実施例21 炎症性疾患のラットモデル
炎症の有効性モデルとして炎症性腸疾患(IBD)のモデルでブデソニドおよびブデソニドPTNPを比較した。このモデルでは、雌のラットに24時間間隔にてインドメタシン8mg/kgで2回皮下投与し、小腸においてクローン病で発生する病変と似ている病変を誘発した。インドメタシン処置の1日前(−1日目)に、賦形剤、ブデソニド(0.02、0.2または2mg/kg)またはブデソニドPTNP(0.02、0.2または2mg/kg)の静脈内投与による毎日の処置、またはデキサメタゾン(0.1mg/kg)の経口投与による毎日の処置を開始し、合計5日間(−1日〜3日)続けた。動物を4日目に安楽死させ、小腸内のリスクのある10cm領域に、肉眼での病態についてスコアをつけ、計量した。
【0217】
スコア0が正常であり、スコア5がIBD症状が原因の死を示す、疾患スコアリングシステムを用いた場合、正常なラットは平均スコア0、および平均腸管重量0.488gを有する。それと異なり、インドメタシン誘発IBDの賦形剤処理された対照は、平均臨床スコア2.7(図24)、平均腸管重量2.702g(図25)を有した。用量0.02mg/kg(52%減少)、0.2mg/kg(53%減少)および2mg/kg(59%減少;図24)にてブデソニドで処理した後、腸管のスコアは、正常に向かって有意に減少した。同じように、用量0.02mg/kg(59%減少)、0.2mg/kg(96%減少)および2mg/kg(93%減少;図24)にてブデソニドPTNPで処理した後、腸管のスコアは、正常に向かって有意に減少した。同用量のブデソニド不含薬物で処理された動物と比較して、ブデソニドPTNP0.2mg/kg(94%)またはブデソニドPTNP2mg/kg(85%)で処理することによって、小腸のスコアもまた有意に減少した(図25)。
【0218】
用量0.02mg/kg(52%減少)、0.2mg/kg(53%減少)および2mg/kg(59%減少;図8)にてブデソニドで処理した後、小腸重量が正常に向かって有意に減少した。同じように、用量0.02mg/kg(64%減少)、0.2mg/kg(93%減少)および2mg/kg(90%減少;図25)にてブデソニドPTNPで処理した後、腸管の重量は、正常に向かって有意に減少した。同用量のブデソニド不含薬物で処理された動物と比較して、ブデソニドPTNP0.2mg/kg(86%)またはブデソニドPTNP2mg/kg(74%)で処理することによって、小腸の重量もまた有意に減少した(図24)。この研究の結果から、ブデソニドまたはブデソニドPTNPで毎日、静脈内投与により処置することによって、ラットにおけるインドメタシン誘発炎症性腸疾患と関連する臨床パラメーターが有意に抑制され、ブデソニドPTNP処置は、相当する用量レベルでのブデソニド処置と比較して有意に有利な効果を有することが示されている。
【0219】
実施例22−交互コポリマーを有する粒子
実施例16の基本手順に従って、以下のようにLA−PEGコポリマーと共にブデソニドからナノ粒子を形成した:
50/5 PLA−PEG:(PLA Mw=50;PEG Mw=5);バッチ番号55−106−A
50/5 PLA−PEGおよび高MW(75Mn PLA:バッチ番号55−106−B
80/10 PLA−PEG:バッチ番号55−106−A
80/10 PLA−PEGおよび高MW PLA:55−106−B
バッチBおよびDは、ポリマー全体の50%でドープされた高MWの75Mn PLAを有した。表Jは薬物ローディング重量%を示す:
【0220】
【表J】
薬物放出研究を行い、コポリマーMWが変化することによって、薬物放出の速度を遅くするのに影響があるかどうかを確かめた。図26は、バッチ番号55−106−B、つまり高MW PLAがドープされた50/5 PLA−PEGを示し、対照製剤62−30に類似していると思われる。
【0221】
均等物
当業者であれば、単なる慣例の実験を用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を理解されるであろう、あるいは確かめることができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
参照による援用
本明細書に記載のすべての特許、公開特許出願、ウェブサイト、および他の参考文献の内容全体が、参照によりその全体が本明細書に明示的に援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度約37〜約38℃を有する多数の迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、前記ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む医薬水性懸濁液。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で前記治療薬の約70〜約100%を放出する請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項3】
ガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、前記ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む医薬水性懸濁液。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で前記治療薬の約50〜約70%を放出する請求項3に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項5】
ガラス転移温度約42〜約50℃を有する多数の徐放性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、前記ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む医薬水性懸濁液。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で前記治療薬の約50%以下を放出する請求項5に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項7】
前記疎水性部分が、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択される請求項1から6のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項8】
前記親水性部分がポリ(エチレン)グリコールである請求項1から7のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、ポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)をさらに含む請求項1から8のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、治療薬約0.1〜約40重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるポリマー約0〜約75重量%を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項11】
前記コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分が、数平均分子量約16kDaを有し、かつ前記コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分が、数平均分子量約5kDaを有する請求項8から10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項12】
前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)部分が、数平均分子量約30〜約90kDaを有する請求項7から10に記載の懸濁液。
【請求項13】
前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)部分が、数平均分子量約50〜約80kDaを有する請求項7から10に記載の懸濁液。
【請求項14】
前記コポリマーの前記ポリ(エチレン)グリコール部分が、数平均分子量約4〜約6kDaを有する請求項7から13のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項15】
前記コポリマーの前記ポリ(エチレン)グリコール部分が、数平均分子量約5kDaを有する請求項6から10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項16】
前記ポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーが、数平均分子量約4.5〜約130kDaを有する請求項9から16のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項17】
前記ポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーが、インヘレント粘度約0.2〜約0.9を有する請求項9から16のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーがポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーであり、前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)部分が、数平均分子量約16kDaを有し、かつ前記ナノ粒子がさらに、数平均分子量約4.5〜約8.0kDaを有するポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーを含む請求項1または2に記載の懸濁液。
【請求項19】
前記ブロックコポリマーがポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーであり、前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)部分が、数平均分子量約16kDaを有し、かつ前記ナノ粒子がさらに、数平均分子量約70〜約85kDa有するポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーを含む請求項5または6に記載の懸濁液。
【請求項20】
前記ガラス転移温度が、熱流束示差走査熱量測定または入力補償示差走査熱量測定によって測定される請求項1から19のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項21】
前記ガラス転移温度が、変調型示差走査熱量測定(MDSC)または温度変調型示差走査熱量測定(MTDSC)によって測定される請求項1から19のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項22】
前記治療薬がドセタキセルである請求項21に記載の懸濁液。
【請求項23】
前記治療薬が、ビンカアルカロイド、窒素マスタード剤、mTOR阻害剤、およびボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物からなる群から選択される請求項1から10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項24】
前記治療薬が、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン;シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、およびボルテゾミブからなる群から選択される請求項23に記載の懸濁液。
【請求項25】
前記治療薬がエポチロンである請求項1から20のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項26】
前記治療薬がコルチコステロイドである請求項1から20のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項27】
コルチコステロイドが、ブデソニド、フルオシノニド、トリアムシノロン、モメタゾン、アムシノニド、ハルシノニド、シクレソニド、ベクロメタソンまたはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される請求項26に記載の懸濁液。
【請求項28】
前記コルチコステロイドがブデソニドである請求項27に記載の懸濁液。
【請求項29】
その必要がある患者に、請求項21〜25のいずれか一項に記載の懸濁液を有効量で投与することを含む、乳癌、肺癌または前立腺癌を治療する方法。
【請求項30】
その必要がある患者に、請求項26〜28のいずれか一項に記載の懸濁液を有効量で投与することを含む、喘息、変形性関節症、皮膚炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療する方法。
【請求項31】
その必要がある患者に、請求項25に記載の懸濁液を有効量で投与することを含む神経変性疾患を治療する方法。
【請求項32】
a)第1治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第1ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子を提供する工程;
b)前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
c)前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度を決定する工程;
d)前記ナノ粒子ガラス転移温度と前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの前記薬物放出速度との相関性を決定する工程;
を含む治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法。
【請求項33】
e)第2治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第2ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子を提供する工程であって、前記第2治療薬および第2ブロックコポリマーが、前記第1治療薬および第1ブロックコポリマーと同一または異なっていてもよい、工程;
f)前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
g)前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子の前記ナノ粒子ガラス転移温度および工程d)で決定される前記相関性に基づいて、前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子の薬物放出速度を予測する工程;
をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項34】
h)生体外溶解試験を用いて、前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子からの予測薬物放出速度を確認する工程をさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1および/または第2治療薬がタキサン剤である請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記タキサン剤がドセタキセルである請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1および第2ブロックコポリマーの前記疎水性部分がそれぞれ、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択され、かつ前記第1および第2ブロックコポリマーの前記親水性部分がそれぞれ、ポリ(エチレン)グリコールである請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1ブロックコポリマーが、前記第1治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%;を含む請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分が、重量平均分子量約16kDaを有し、かつ前記第1ブロックコポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分が、重量平均分子量約5kDaを有する請求項32から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度が、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように前記第1治療薬の約50%未満である請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度が、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように前記第1治療薬の約70〜約100%である請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2ブロックコポリマーが、前記第2治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%;を含む請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記第2ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分が、重量平均分子量約16kDaを有し、かつ前記第2ブロックコポリマーの前記ポリ(エチレン)グリコール部分が、重量平均分子量約5kDaを有する請求項34に記載の方法。
【請求項44】
i)第1多数ポリマーナノ粒子を含む懸濁液を提供する工程であって、前記ナノ粒子がそれぞれ、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーとを含む工程;
ii)前記懸濁液のガラス転移温度を決定する工程;
iii)前記第1多数ポリマーナノ粒子における前記ホモポリマー量を増加または低減する工程;
iv)所望のガラス転移温度を有する懸濁液が得られるまで、工程i)〜iii)を繰り返す工程;
を含む、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法。
【請求項45】
特異的な放出速度を有する懸濁液を同定するために、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法であって:
a)治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーとを含むナノ粒子を有する複数の懸濁液を別々に調製する工程であって;各懸濁液が、別個のコンパートメントにあり、各懸濁液が、所定の分子量のブロックコポリマーと、存在する場合には、所定の分子量のホモポリマーを含む工程;
b)前記懸濁液それぞれのガラス転移温度を決定する工程;
c)所定のガラス転移温度を有する懸濁液を同定する工程;を含む方法。
【請求項46】
治療薬約0.1〜約40重量%;
生体適合性ポリマー約10〜約99重量%;
を含む、生体適合性治療用ポリマーナノ粒子であって、前記生体適合性ポリマーが、
a)数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)を含む、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー;
b)数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含むジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー;
からなる群から選択される生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項47】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたは前記ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコーを含む請求項46に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項48】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約30kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項46または47に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項49】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約50〜約80kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaまたは10kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項46または48のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項50】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約50kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項46から47または49のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項51】
前記治療薬が、ビンカアルカロイド、窒素マスタード剤、タキサン、mTOR阻害剤、およびボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物、およびエポチロンからなる群から選択される請求項46から50のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項52】
前記治療薬が、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン;ドセタキセル、パクリタキセル、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、ボルテゾミブ、およびエポチロンからなる群から選択される請求項46から51のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項53】
前記治療薬がドセタキセルである請求項46から52のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項54】
治療薬約1〜約20重量%、ジブロックコポリマー約50〜約90重量%を含む請求項46から53のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項1】
ガラス転移温度約37〜約38℃を有する多数の迅速放出性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、前記ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む医薬水性懸濁液。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で前記治療薬の約70〜約100%を放出する請求項1に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項3】
ガラス転移温度約39〜約41℃を有する穏やかな放出性の多数の生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、前記ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む医薬水性懸濁液。
【請求項4】
前記ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で前記治療薬の約50〜約70%を放出する請求項3に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項5】
ガラス転移温度約42〜約50℃を有する多数の徐放性生体適合性治療用ナノ粒子を含む医薬水性懸濁液であって、前記ナノ粒子のそれぞれが、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーとを含む医薬水性懸濁液。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、生体外溶解試験において4時間の時点で前記治療薬の約50%以下を放出する請求項5に記載の治療用ナノ粒子。
【請求項7】
前記疎水性部分が、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択される請求項1から6のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項8】
前記親水性部分がポリ(エチレン)グリコールである請求項1から7のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、ポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)をさらに含む請求項1から8のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、治療薬約0.1〜約40重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるポリマー約0〜約75重量%を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項11】
前記コポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分が、数平均分子量約16kDaを有し、かつ前記コポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分が、数平均分子量約5kDaを有する請求項8から10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項12】
前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)部分が、数平均分子量約30〜約90kDaを有する請求項7から10に記載の懸濁液。
【請求項13】
前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)部分が、数平均分子量約50〜約80kDaを有する請求項7から10に記載の懸濁液。
【請求項14】
前記コポリマーの前記ポリ(エチレン)グリコール部分が、数平均分子量約4〜約6kDaを有する請求項7から13のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項15】
前記コポリマーの前記ポリ(エチレン)グリコール部分が、数平均分子量約5kDaを有する請求項6から10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項16】
前記ポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーが、数平均分子量約4.5〜約130kDaを有する請求項9から16のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項17】
前記ポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーが、インヘレント粘度約0.2〜約0.9を有する請求項9から16のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項18】
前記ブロックコポリマーがポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーであり、前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)部分が、数平均分子量約16kDaを有し、かつ前記ナノ粒子がさらに、数平均分子量約4.5〜約8.0kDaを有するポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーを含む請求項1または2に記載の懸濁液。
【請求項19】
前記ブロックコポリマーがポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーであり、前記コポリマーの前記ポリ(D,L−乳酸)部分が、数平均分子量約16kDaを有し、かつ前記ナノ粒子がさらに、数平均分子量約70〜約85kDa有するポリ(D,L−乳酸)ホモポリマーを含む請求項5または6に記載の懸濁液。
【請求項20】
前記ガラス転移温度が、熱流束示差走査熱量測定または入力補償示差走査熱量測定によって測定される請求項1から19のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項21】
前記ガラス転移温度が、変調型示差走査熱量測定(MDSC)または温度変調型示差走査熱量測定(MTDSC)によって測定される請求項1から19のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項22】
前記治療薬がドセタキセルである請求項21に記載の懸濁液。
【請求項23】
前記治療薬が、ビンカアルカロイド、窒素マスタード剤、mTOR阻害剤、およびボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物からなる群から選択される請求項1から10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項24】
前記治療薬が、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン;シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、およびボルテゾミブからなる群から選択される請求項23に記載の懸濁液。
【請求項25】
前記治療薬がエポチロンである請求項1から20のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項26】
前記治療薬がコルチコステロイドである請求項1から20のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項27】
コルチコステロイドが、ブデソニド、フルオシノニド、トリアムシノロン、モメタゾン、アムシノニド、ハルシノニド、シクレソニド、ベクロメタソンまたはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される請求項26に記載の懸濁液。
【請求項28】
前記コルチコステロイドがブデソニドである請求項27に記載の懸濁液。
【請求項29】
その必要がある患者に、請求項21〜25のいずれか一項に記載の懸濁液を有効量で投与することを含む、乳癌、肺癌または前立腺癌を治療する方法。
【請求項30】
その必要がある患者に、請求項26〜28のいずれか一項に記載の懸濁液を有効量で投与することを含む、喘息、変形性関節症、皮膚炎、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、またはクローン病を治療する方法。
【請求項31】
その必要がある患者に、請求項25に記載の懸濁液を有効量で投与することを含む神経変性疾患を治療する方法。
【請求項32】
a)第1治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第1ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子を提供する工程;
b)前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
c)前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度を決定する工程;
d)前記ナノ粒子ガラス転移温度と前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの前記薬物放出速度との相関性を決定する工程;
を含む治療用ポリマーナノ粒子組成物の薬物放出速度を決定する方法。
【請求項33】
e)第2治療薬、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有する第2ブロックコポリマー、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含む少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子を提供する工程であって、前記第2治療薬および第2ブロックコポリマーが、前記第1治療薬および第1ブロックコポリマーと同一または異なっていてもよい、工程;
f)前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子のナノ粒子ガラス転移温度を決定する工程;
g)前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子の前記ナノ粒子ガラス転移温度および工程d)で決定される前記相関性に基づいて、前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子の薬物放出速度を予測する工程;
をさらに含む請求項23に記載の方法。
【請求項34】
h)生体外溶解試験を用いて、前記の少なくとも1種類の第2多数ポリマーナノ粒子からの予測薬物放出速度を確認する工程をさらに含む請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1および/または第2治療薬がタキサン剤である請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記タキサン剤がドセタキセルである請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1および第2ブロックコポリマーの前記疎水性部分がそれぞれ、ポリ(D,L−乳酸)およびポリ(乳酸−co−グリコール酸)から選択され、かつ前記第1および第2ブロックコポリマーの前記親水性部分がそれぞれ、ポリ(エチレン)グリコールである請求項32から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1ブロックコポリマーが、前記第1治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%;を含む請求項32から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分が、重量平均分子量約16kDaを有し、かつ前記第1ブロックコポリマーのポリ(エチレン)グリコール部分が、重量平均分子量約5kDaを有する請求項32から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度が、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように前記第1治療薬の約50%未満である請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記の少なくとも1種類の第1多数ポリマーナノ粒子からの薬物放出速度が、生体外溶解試験において4時間の時点で決定されるように前記第1治療薬の約70〜約100%である請求項32から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第2ブロックコポリマーが、前記第2治療薬約0.2〜約35重量%;ポリ(D,L−乳酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ブロック−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー約10〜約99重量%;ポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)約0〜約50重量%;を含む請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記第2ブロックコポリマーのポリ(D,L−乳酸)部分が、重量平均分子量約16kDaを有し、かつ前記第2ブロックコポリマーの前記ポリ(エチレン)グリコール部分が、重量平均分子量約5kDaを有する請求項34に記載の方法。
【請求項44】
i)第1多数ポリマーナノ粒子を含む懸濁液を提供する工程であって、前記ナノ粒子がそれぞれ、治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーとを含む工程;
ii)前記懸濁液のガラス転移温度を決定する工程;
iii)前記第1多数ポリマーナノ粒子における前記ホモポリマー量を増加または低減する工程;
iv)所望のガラス転移温度を有する懸濁液が得られるまで、工程i)〜iii)を繰り返す工程;
を含む、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法。
【請求項45】
特異的な放出速度を有する懸濁液を同定するために、ナノ粒子懸濁液をスクリーニングする方法であって:
a)治療薬と、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分を有するブロックコポリマーと、任意にポリ(D,L−乳酸)またはポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)から選択されるホモポリマーとを含むナノ粒子を有する複数の懸濁液を別々に調製する工程であって;各懸濁液が、別個のコンパートメントにあり、各懸濁液が、所定の分子量のブロックコポリマーと、存在する場合には、所定の分子量のホモポリマーを含む工程;
b)前記懸濁液それぞれのガラス転移温度を決定する工程;
c)所定のガラス転移温度を有する懸濁液を同定する工程;を含む方法。
【請求項46】
治療薬約0.1〜約40重量%;
生体適合性ポリマー約10〜約99重量%;
を含む、生体適合性治療用ポリマーナノ粒子であって、前記生体適合性ポリマーが、
a)数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)を含む、ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー;
b)数平均分子量約30〜約90kDaを有するポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)を含むジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマー;
からなる群から選択される生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項47】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーまたは前記ジブロックポリ(乳酸)−co−ポリ(グリコール酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、分子量約4〜約12kDaを有するポリ(エチレン)グリコーを含む請求項46に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項48】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約30kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項46または47に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項49】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約50〜約80kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaまたは10kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項46または48のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項50】
前記ジブロックポリ(乳酸)−ポリ(エチレン)グリコールコポリマーが、数平均分子量約50kDaを有するポリ(乳酸)および数平均分子量約5kDaを有するポリ(エチレン)グリコールを含む請求項46から47または49のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項51】
前記治療薬が、ビンカアルカロイド、窒素マスタード剤、タキサン、mTOR阻害剤、およびボロン酸エステルまたはペプチドボロン酸化合物、およびエポチロンからなる群から選択される請求項46から50のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項52】
前記治療薬が、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ビンクリスチン;ドセタキセル、パクリタキセル、シロリムス、テムシロリムス、エベロリムス、ボルテゾミブ、およびエポチロンからなる群から選択される請求項46から51のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項53】
前記治療薬がドセタキセルである請求項46から52のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【請求項54】
治療薬約1〜約20重量%、ジブロックコポリマー約50〜約90重量%を含む請求項46から53のいずれか一項に記載の生体適合性治療用ポリマーナノ粒子。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2013−514377(P2013−514377A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544768(P2012−544768)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060564
【国際公開番号】WO2011/084513
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060564
【国際公開番号】WO2011/084513
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(510083773)バインド バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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