説明

高い注射安全性を備えた針無し使い捨て注射器

本発明は、少なくとも一つの圧縮棒を有するハウジング(10)、円筒/ピストンユニット(100)、プランジャー作動ラム(60)、トリガーユニット(80)、そしてばねエネルギー貯蔵器(50)を含み、ここでトリガーユニットが圧縮棒を用いて事前に張力をかけられたばねエネルギー貯蔵器をロックする針無し使い捨て注射器に関する。トリガーの間じゅう、圧縮棒(21)はトリガーユニットの少なくとも一つのトリガーエレメント(82)に沿って滑り、トリガーユニットをトリガーした後、ばねエネルギー貯蔵器はプランジャー作動ラムを用いて圧縮棒を移動しそして円筒/ピストンユニットを作動する。事前に張力をかけられたばねエネルギー貯蔵器によって負荷がかけられたときに、トリガーエレメントの互いに面する内壁、及び圧縮棒の接触面によって形成された対形成は、少なくともある領域において、プランジャー作動ラムの互いに面するカラー面、及び圧縮棒の支持面によって形成された対形成よりも高い滑り摩擦係数を有する。本発明は、その使用中に、要求される最小の接触圧力が確保される使い捨て注射器を供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの圧力棒を含むハウジングを有し、円筒/ピストンユニットを有し、ピストン作動プランジャーを有し、トリガーユニットを有し、そしてばねエネルギー貯蔵器を有し、トリガーユニットが圧力棒を用いて事前に張力をかけられたばねエネルギー貯蔵器を初期にインターロックし、トリガーの際に、圧力棒がトリガーユニットの少なくとも一つのトリガーエレメントに沿って滑り、トリガーユニットをトリガーした後、ばねエネルギー貯蔵器がピストン作動プランジャーを用いて圧力棒を移動しそして円筒/ピストンユニットを作動する使い捨て注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの使い捨て注射器は、その後に公告された特許文献1から公知である。もし、この注射器が、注射部位に作用するあまりにも低い圧力にさらされるなら、注射溶液が注射ジェットの軸に対して横方向に抜けるであろうリスクがある。これはいわゆるウエットショット(wet shot)に繋がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE10、2007、034、871
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明は、その使用によって、要求される最小の接触圧力を確保する使い捨て注射器を開発する課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、主特許請求の範囲の特徴によって解決される。この目的のために、事前に張力をかけられたばねエネルギー貯蔵器によって負荷がかけられたときに、トリガーエレメントの互いに面する内壁、及び圧力棒の隣接面の対形成(pairing)は、少なくともある領域において、ピストン作動プランジャーの互いに面するカラー面、及び圧力棒の支持面の対形成よりも高い滑り摩擦係数を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の更なる詳細は、下位の特許請求の範囲及び模式的に描かれた実施態様のそれに続く記述から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ロック位置において変形された二本の圧力棒を有する使い捨て注射器を示す。
【図2】トリガー中の使い捨て注射器を示す。
【図3】トリガー後の使い捨て注射器を示す。
【図4】図1からの詳細を示す。
【図5】図4を通した断面である。
【図6】隣接面の巻き戻しの平面図である。
【図7】図5の変形を示す。
【図8】内壁の巻き戻しの図である。
【図9】図8の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜3は三つの異なるトリガー状態における使い捨て注射器を示す。図1は、充填及びトリガーの前の使い捨て注射器を示す。図2は、トリガー中の使い捨て注射器を示し、そして図3は、トリガー後のそれを示す。
【0009】
図1〜3に示されている使い捨て注射器は、ハウジング(10)、円筒/ピストンユニット(100)、ピストン作動プランジャー(60)及びばねエネルギー貯蔵器としてのらせん圧縮ばね(50)から成る。また、トリガーエレメント(82)を有するトリガーユニット(80)、及び確保エレメント(90)がハウジング(10)上に配置されている。図1の説明において、円筒/ピストンユニット(100)は、ストッパー(128)と組み合わせてクロージャーキャップ(120)を用いて前方で閉じられている。
【0010】
ハウジング(10)は、高くなった床(39)を有する、一体物でポット形の下方に向かって開いた中空体である。ハウジングは、例えば、ガラス繊維強化ポリアミドで射出成形によって作られる。ハウジング(10)は実質的にチューブ状の形を有し、そして二つの機能領域に分けられる:一方は上方外皮(envelope)領域(31)であり、そして他方は下方固定領域(41)である。
【0011】
外皮領域(31)において、ハウジング(10)は、例えば、二つの互いに反対向きの窓状開口部(33)を有する。弾性屈曲棒としての各圧力棒(21)は個々の開口部(33)の下方端上に成形される。圧力棒(21)に対する成形部位(moulding-on site)は、固定領域(41)の丁度上方に位置している。各圧力棒(21)を形成するために、各圧力棒(21)を側部及び頂部に囲む、狭い、少なくともほぼU−形をした隙間が、外皮部分(31)の下方領域中に位置している。
【0012】
圧力棒(21)は、例えば、その長さの80%に亘って、ハウジング(10)の肉厚及び曲率を有する。この領域はまた、とりわけ弾性屈曲棒(28)の機能を有する。それは、三日月形の断面を有する。
【0013】
適切な場合、使用中に、屈曲棒の端部領域において生じる曲げ応力を低減するために、この屈曲棒(28)の一部分も矩形断面を備えることができる。
【0014】
ピストン作動プランジャー(60)が、―少なくともある部分において―、ハウジング(10)中を少ない遊びの程度で真っ直ぐに誘導され、そしてピストン作動プランジャー(60)が十分な曲げ強さを有する注射器の場合は、二つ以上の圧力棒(21)の代わりに、たった一つの圧力棒(21)の使用も可能である。
【0015】
この場合、個々の圧力棒(21)の上方自由端は、半径方向に外側に向かって突き出ているカム(22)によって形成される。カムは、中央線(5)の方向に向っている少なくとも一つの支持面(23)、及び中央線(5)から離れて面している隣接面(24)を有する。
【0016】
円筒/ピストンユニット(100)を締め付けるための保持エレメントはハウジング(10)の下方領域中に位置している。代表的実施態様において、円筒/ピストンユニット(100)は、注射溶液(1)で充填することができる透明な円筒(101)から成る。図1の説明において、ピストン(111)は前方位置にある。ピストン(111)の上方に、ピストン作動プランジャー(60)が、例えば、それがピストン(111)に触れないものの、それが、例えば、円筒(101)の上方領域においてその下方端によって縦方向に誘導されるようにハウジング(10)中に配置されている。
【0017】
ハウジング(10)の下方半分はスリーブ状のトリガーエレメント(82)によって囲まれている。トリガーエレメントは、例えば、実質的に円筒状に具体化され、そして、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体で作られる。トリガーエレメント(82)はハウジング(10)の半径方向の外面(13)上に縦方向に移動できるように搭載されている。それはトリガーエレメント(82)の端側のセットバック側面(84)の部分である鋭い端部(85)を有して後方に向かって終わる。図1によると、端部(85)の下方に、圧力棒(21)上に成形されるカム(22)の外側に向かう隣接面(24)が、トリガーエレメント(82)の内壁(59)と固定する状態で触れている。
【0018】
ハウジング(10)の後端を完全に囲んでいるトリガーキャップ(81)は、トリガーエレメント(82)に、例えば、端部(85)の近くで固定される。トリガーキャップ(81)は円周の広げられた領域(83)を含み、注射器がトリガーされると、その中にカム(22)が受け入れられる(図3を参照)。非回転対称のトリガーエレメント(82)の場合、この広げられた領域(83)の代わりに、各圧力棒(21)に対して、部分的に広がった領域又は覆われていない開口部も存在し得る。広げられた領域(83)の上方で、トリガーキャップ(81)は、滑ることができるようにハウジング(10)の外壁(13)に寄りかかっている。
【0019】
クロージャーキャップ(120)はトリガーエレメント(82)のリード端に隣接する。クロージャーキャップは円筒/ピストンユニット(100)の下方部分を包み込む。クロージャーキャップ(120)は、リード端側上に、例えば、外側の円錐状ストッパー(128)を用いて無菌状態で閉じられるルアー(Luer)内部円錐を持つアダプター開口部(127)を有する。クロージャーキャップ(120)は、この場合、ハウジング(10)の下方領域上に搭載されている。
【0020】
ハウジング(10)中に配置されるピストン作動プランジャー(60)は二つの領域に分けられる。下方の領域はピストンスライド(76)である。その直径は、円筒(101)の後方領域の内径よりも幾分小さい。ピストンスライド(76)の下方端面は、ピストン(111)上に直接、作用する。
【0021】
ピストン作動プランジャー(60)の上方領域、すなわち、プランジャー板(73)は、少なくともある領域では円筒状の平らなディスクであり、その外径は外皮領域(31)中のハウジング(10)の内径より二、三十分の一ミリメーターだけ小さい。下方端側はピストンスライド(76)の周りに配置されるカラー面(75)を有する。カラー面は、切頭円錐形外皮の形を有し、その頂角は約100〜140度である。示された代表的実施態様において、カラー面(75)は140度の頂角を有する。切頭円錐形外皮の仮想頂点はピストンスライド(76)の領域中の中央線(5)上に横たわる。カラー面(75)も球状に曲げることができる。
【0022】
明らかに、ピストンスライド76もプランジャー板73から分離された別の部品として具体化され得る。この目的のために、ピストンスライドは次いでハウジング10の内壁上を誘導される。
【0023】
らせん圧縮ばね(50)は、プランジャー板(73)、及びハウジング(10)の高くなった床(39)の間に、事前に張力をかけられて座する。らせん圧縮ばね(50)は、ハウジング(10)の高くなった床(39)上に支持され、ここでスペーサースリーブ(19)が間に置かれている。らせん圧縮ばね(50)のバネ力はプランジャー板(73)を介して圧力棒(21)に伝えられる。カラー面(75)の傾きのために、圧力棒(21)はくさび歯車のように半径方向に外側へ強制的に動かされる。トリガースリーブ(82)はこの半径方向の力を永久に支える。
【0024】
プランジャー板(73)の上方に、ピストン作動プランジャー(60)は誘導ピン(62)を有する。誘導ピンは、らせん圧縮ばね(50)を誘導し、又はそれによって誘導される。使い捨て注射器の作動の際に ピストン(111)に作用するピストンスライド(76)は、プランジャー板(73)の下方に、誘導ピン(62)に連続して中央に位置している。ピストンスライド(76)は、円錐形の、前に向かってアーチ型をした端面(77)の外皮を有する(とりわけ図2を参照)。この端面(77)を用いて、ピストンスライドはトリガーの際に、ピストン(111)の相補的な形をした端面と接触する(図3を参照)。両方の円錐は少なくともほぼ同じ円錐角を有する。
【0025】
使い捨て注射器が充填されそして使用される前に、ばねエネルギー貯蔵器(50)は事前に張力をかけられる(図1を参照)。二つの張力をかけられた圧力棒(21)は、その事前に張力をかけられた位置において、そのプランジャー板(73)の上にピストン作動プランジャー(60)を保持する。この目的のために、圧力棒(21)の支持面(23)はプランジャー板(73)上に支持されている。支持面(23)、及びプランジャー板(73)上の対応する場所の間の各接触面積のサイズは、2〜20平方ミリメーターの範囲にある。支持面に面し、そしてそれを用いてそれが対形成を形成する支持面(23)及びカラー面(75)の両者は、例えば、10ミクロンより小さな平均粗さ値を有する。例えば、平均粗さ値は6ミクロンである。
【0026】
圧力棒(21)及びプランジャー板(73)の曲げ弾性によって、支持棒(21)は少なくともほぼ半径方向に外側へとトリガーエレメント(82)に抗して押される。そこで、それらはカム(22)を介してトリガーエレメント(82)に寄りかかる。カム(22)は、この場合、例えば、圧力棒(21)の各自由上方端の下方5〜20ミリメーターに位置合わせすることができる。
【0027】
図1及び4によると、張力をかけられた使い捨て注射器のプランジャー板(73)はカラー面(75)を介して支持面(23)上に横たわる。この場合、くさび表面の機能を実行する支持面(23)は、140度の頂角を有する切頭円錐形外皮の形を有する。
【0028】
適切な場合、圧力棒(21)又はカラー面(75)は、少なくとも接触領域においてセラミック製の外装を有する。カラー面(75)は、例えば、接着剤で上に接合された切頭円錐形外皮の形をしたワッシャーによって強化することができる。
【0029】
カム(22)の隣接面(24)は円錐の部分であり、その最大直径は、例えば、ハウジング(10)の外径より3〜4ミリメーター大きい。使い捨て注射器に張力がかけられるとき、隣接面(24)はスリーブ状のトリガーエレメント(82)の内壁(59)に接触する。接触領域は図4において拡大されて示されている。従って、隣接面(24)は、個々の圧力棒(21)が曲がるせいで、中でもその下方領域において、トリガーエレメント(82)の内壁(59)に抗して押しつけられている。隣接面(24)は構造化され又は粗くされ得る。例えば、それは、横方向の隣接面(24)の巻き戻しの平面図(図6を参照)、又はダイアモンドパターン(図7を参照)において縦溝を配置させてよい。これらのパターンは、例えば、均一に配置されている。隣接面(24)の平均粗さ値は、例えば、10ミクロンより大きい。
【0030】
図7の説明において、個々の圧力棒(21)の隣接面(24)の幅は底から上方に向かって大きくなる。このようにして、内壁(59)に対して隣接面(24)を押しつける圧力は上方においてよりも下方領域においてより大きい。この効果を強化するために、隣接面(24)は、横方向に内壁(59)よりも小さい半径を有することができる(図5を参照)。従って接触面の幅は、個々の圧力棒(21)の幅より小さいものであり得る。
【0031】
使い捨て注射器の使用を可能にするために、円筒/ピストンユニット(100)は最初に充填されなければならない。この目的のために、ストッパー(128)はアダプター開口部(127)から除かれ、そして注射溶液(1)は、例えば、中に押しつけられ又は引き込まれる。この場合、 ピストン(111)は押し戻され又は引き戻される。
【0032】
注射器をリリースするために、固定エレメント(90)、例えば切り取りバンデロール(94)は、クロージャーキャップ(120)及びトリガーエレメント(82)の間の接着結合が解消されるように、引っ込められる。クロージャーキャップ(120)は引っ込められる。使い捨て注射器は注射部位上に位置合わせされる。ばねエネルギー貯蔵器(50)は張力をかけられ;圧力棒(21)はプランジャー板(73)のカラー面(75)を支持し続ける。
【0033】
ここで、トリガーエレメント(82)は円筒/ピストンユニット(100)の方向に移動することができる(図2を参照)。図2において説明された状態は静的なものではない;従って以後それは架空の状態として表示されるであろう。
【0034】
使い捨て注射器のトリガーの際に、トリガーエレメント(82)は、トリガー運動の方向(6)に、直線的に下方へ、すなわち注射部位の方向にハウジング(10)の外壁(13)上を滑る。圧力棒(21)の隣接面(24)は端部(85)を介して滑る。圧力棒(21)は弾性的に外側に向かってそれらの実際の出発位置に曲がり、そしてばねエレメント(50)の力の下で、半径方向に外側に向かって広げられた領域(83)内にジャンプする。
【0035】
ハウジング(10)に関して、広げられた領域(83)は、それが、トリガープロセス中に、それらのカム(22)を用いて外側に強制的に動かされそして後退させられる圧力棒(21)を受けることができるように正確に位置合わせされ、そして構成される。広げられた部分(83)の内側の外形は、例えば、この場合、注射器の中心線(5)に垂直であるセットバック側面(84)を有するチャンネルである。カム(22)が広げられた領域内に移動されるや否や、ピストン作動プランジャー(60)は妨害されずに下方に発射する(図3を参照)。ピストン(111)は下方に押しつけられる。円筒(100)が空になる。
【0036】
トリガーエレメント(82)の内壁(59)は、例えば、それに沿って隣接面(24)が滑る領域において粗くされ又は構造化される。その粗さ値は、例えば、隣接面(24)の粗さ値に対応する。構造化される場合、パターンは、図6又は7においてそれが説明されているように具体化することができる。
【0037】
しかしながら、内壁(59)の構造的密度及び/又は粗さは、トリガーエレメント(82)の内壁(59)に対する隣接面(24)の動きのストロークと共に上昇することができる。図8は、例えば、鋭い端部(85)に隣接し、そしてその間の距離が底から上方へと減少する互いに平行なスロットを有する構造的パターンの非常に拡大された図である。図9は、その目盛がその実施態様において正及び/又は負(positive and/or negative)であってよい目盛パターンを示す。目盛の間の距離は、相対的な動きの方向に、底から上方へと増加する。トリガー前に隣接面(24)が寄りかかる内壁(59)の接触面の最も低い領域は、例えば、構造化されていない。
【0038】
使い捨て注射器のトリガーの前及びトリガー中に、らせんばね(50)はカム(22)を、プランジャー板(73)を介して外側に押し付ける。カラー面(75)及び支持面(23)の対形成の大きな接触面積及び低い表面粗さに起因する低い滑り摩擦係数のせいで、このくさび歯車は高い効率を有する。
【0039】
使い捨て注射器をトリガーするために、一旦、それが注射部位上に取り付けられると、オペレーターは最初に、特に隣接面(24)及び内壁(59)の間の接触力によって生じる接着摩擦を克服しなければならない。対形成の接触面積が小さいほど、そして表面粗さが粗いほど、この接着摩擦は高くなる。
【0040】
従って、接着摩擦力が高いほど、使用者は使い捨て注射器を注射部位に対してより強く押し付けるであろう。このように、静的状態において、隣接面(24)及び内壁(59)の対形成の粗さ値が高いと、使用者は使い捨て注射器を一旦、位置を合わせされると、注射部位に対して最小の力を用いて確実に押し付け続けることになる。
【0041】
トリガー中に使用者が接着摩擦力を克服するや否や、トリガーエレメント(82)の内壁(59)は隣接面(24)に沿って滑る。これら二つの表面(24、59)の対形成の滑り摩擦係数は、関与する材料、表面粗さ及び/又は表面構造及び表面圧力に依存する。この対形成の滑り摩擦係数は、カラー面(75)及び支持面(23)によって形成される対形成の滑り摩擦係数より大きい。もし、例えば、隣接面(24)及び内壁(59)が図6による構造を有して具体化されるならば、ほぼ一定の高い供給力が、例えば、トリガーエレメント(82)の移動のために要求される。従って、使用者は、安全な注射のために要求される押し込み力に等しいか又はそれより大きな力を用いて使い捨て注射器を注射部位に対して押し付け続けるであろう。
【0042】
使用者は、後方グリップ側面(25)が端部(85)に到達完了するまで、この力をかける必要がある。カラー面(75)及び支持面(23)によって形成される対形成の滑り摩擦が低いため、かつ小さなくさび角のため、カム(22)は広げられた領域(83)内に急に移動される。
【0043】
使い捨て注射器のトリガーの際に、その内壁(59)は、例えば、図8に記載の構造を有し、トリガーのために要求される力はトリガーエレメント(82)の移動中に増大する。こうして、使用者は使い捨て注射器を注射部位に対して益々強く押すことを強いられる。このことによって、ばねエネルギーが開放されるときに、ウエットショットが防止されるほど力強く、使い捨て注射器が注射部位に対して確実に押し付けられることになる。
【0044】
接着摩擦を克服するために要求されるトリガーエレメント(82)の供給力は、滑り摩擦を克服するために要求される供給力より小さいものであり得る。この目的のために、内壁(59)は、例えば、図9において説明された通りに具体化され得る。トリガーの前に、その中に隣接面(24)が隣接する内壁(59)の領域は、この場合、例えば、低い表面粗さを有する。隣接面(24)がこの領域を去るや否や、粗さ、従って滑り摩擦係数は上昇する。例えば、使用者はこのようにして、トリガー目的のために、均一な又は直線的に上昇する力をかけることを強いられ得る。カム(22)の飛び出しの直前にかけられなければならない少なくとも供給力は、安全な注射のために要求される最小接触力に等しいか又はそれより大きい。
【0045】
適切な場合、ピストン作動プランジャー(60)、圧力棒(21)及びトリガーエレメント(82)の材料は同じであり得る。
【0046】
図中において説明された変形において、圧力棒(21)及びプランジャー板(73)の間の唯一の接触区域は、滑るように互いに接触する表面(23)及び(75)として具体化される。一つの特別な構成において、注射器の作動の際に、ローラーが搭載された、すなわち、低い摩擦状態で、プランジャー板の表面(75)から回転して離れるローラーは、個々の圧力棒(21)の各表面(23)中に搭載することができる。
【0047】
ハウジング(10)上のトリガーエレメント(82)の直線的な滑り運動の代わりにらせん状の動きも供され得る。この場合、トリガーエレメント(82)及びハウジング(10)は、例えば、結合リンク又はリンクブロックを介して、一方が他方の上に誘導される。適切な場合、トリガーはハウジング(10)及びトリガーエレメント(82)の間の純粋な旋回運動によって実施されてもよい。この場合、旋回軸は中心線(5)であろう。
【0048】
明らかに、種々の前述の実施態様を互いに組合せることも考えられ得る。
【符号の説明】
【0049】
1 注射溶液;医薬品
5 注射器の中心線、縦方向
6 (82)のトリガー動き方向、下方動き方向の矢印

10 ハウジング、一体物
13 外面、円筒状、
19 スペーサースリーブ

21 圧力棒、支持棒;引っ張りフック
22 カム
23 支持面
24 隣接面
25 後方グリップ側面
28 屈曲棒

31 外皮領域
33 開口部
39 床

41 円筒/ピストンユニットのための固定領域

50 ばねエレメント、らせん圧縮ばね、ばねエネルギー貯蔵器
59 (82)の内壁

60 ピストン作動プランジャー
62 誘導ピン
63 穴、貫通穴

73 プランジャー板
75 カラー面、円錐状
76 ピストンスライド
77 ピストン端面、円錐形の外皮

80 トリガーユニット
81 トリガーキャップ
82 トリガーエレメント、
83 広げられた領域
84 セットバック側面
85 端部、鋭い端をした

90 開封明示クロージャー、バンデロール、固定エレメント
94 切り取りバンデロール

100 円筒/ピストンユニット
101 円筒

111 ピストン

120 クロージャーキャップ、接着シール
127 アダプター開口部
128 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの圧力棒(21)を含むハウジング(10)を有し、円筒/ピストンユニット(100)を有し、ピストン作動プランジャー(60)を有し、トリガーユニット(80)を有し、そしてばねエネルギー貯蔵器(50)を有し、トリガーユニット(80)が圧力棒(21)を用いて事前に張力をかけられたばねエネルギー貯蔵器(50)を初期にインターロックし、トリガーの際に、圧力棒(21)がトリガーユニット(80)の少なくとも一つのトリガーエレメント(82)に沿って滑り、そしてトリガーユニット(80)のトリガーの後、ばねエネルギー貯蔵器(50)がピストン作動プランジャー(60)を用いて圧力棒(21)を移動しそして円筒/ピストンユニット(100)を作動する使い捨て注射器であって、事前に張力をかけられたばねエネルギー貯蔵器(50)によって負荷がかけられたときに、トリガーエレメント(82)の互いに面する内壁(59)、及び圧力棒(21)の隣接面(24)の対形成が、少なくともある領域において、ピストン作動プランジャー(60)の互いに面するカラー面(75)、及び圧力棒(21)の支持面(23)の対形成よりも高い滑り摩擦係数を有することを特徴とする使い捨て注射器。
【請求項2】
トリガーエレメント(82)が、少なくともある領域においてスリーブ状にハウジング(10)を囲むことを特徴とする、請求項1に記載の使い捨て注射器。
【請求項3】
二つの圧力棒(21)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の使い捨て注射器。
【請求項4】
隣接面(24)及び/又は内壁(59)の平均粗さ値が、少なくともこれらの表面(24、59)の接触領域において10ミクロン以上であることを特徴とする、請求項1に記載の使い捨て注射器。
【請求項5】
トリガーエレメント(82)の内壁の粗さが鋭い端部(85)の方向に増すことを特徴とする、請求項1に記載の使い捨て注射器。
【請求項6】
使用される隣接面(24)の幅が個々の圧力棒(21)の幅より小さいことを特徴とする、請求項1に記載の使い捨て注射器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2012−502707(P2012−502707A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527226(P2011−527226)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/006065
【国際公開番号】WO2010/034380
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】