説明

高い流動及び高い弾性を有するブロック共重合体

開示されているのは、最小の添加物量で直接押し出し成形されるか又は鋳型成形でき、及び高い弾性並びに低い永久ひずみの両者を有することのできるエラストマー水素化ブロック共重合体である。前記水素化されたブロック共重合体は、押し出し成形及び鋳型成形などの融解プロセスにおいて前記水素化ブロック共重合体を加工する上で簡単にするために高いメルトフローを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、高い流動及び高い弾性を有するブロック共重合体という表題の、2004年3月3日に出願された米国暫定特許出願第60/549,570号の利点を請求する。
【0002】
(本発明の分野)
本発明は、モノアルケニルアレーン及び共役ジエンの水素化された陰イオン性ブロック共重合体、及びこのようなブロック共重合体から作製される物品に関する。本発明は特に、スチレン及びブタジエン若しくはイソプレンの水素化されたブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
モノアルケニルアレーン及び共役ジエンのブロック共重合体の調製は周知である。スチレン及びブタジエンを使用して作製される直鎖状ABAブロック共重合体に関する最初の特許のうちの1つは、米国特許第3,149,182号である。前記ブロック共重合体のための使用には、射出成形、押し出し成形、吹き込み成形、接着、及びそれらの類似法が含まれる。これらのポリマーは、屋根及び道路の造成のための瀝青の修飾などの用途においても使用されてきた。ブロック共重合体の他の使用には、フィルム、繊維、及び不織布の作製が含まれる。
【0004】
このようなブロック共重合体の一例は、Holdenほかの米国特許第4,188,432号にある。前記明細書に開示されているのは、高い衝撃のスチレン−ブタジエングラフト共重合体又は約55%以下のスチレンホモポリマーとのこれらの混合物から本質的になる脂肪性物質による衝撃に対して耐性のある成形された物品である。前記成形された物品には、ポリエチレン又はポリプロピレン及びブロック共重合体X−Y−X(各Xは約5,000ないし10,000の分子量のポリスチレンブロックであり、Yは25,000ないし50,000の分子量の水素化されたポリブタジエンブロックである。)も少量含まれる。
【0005】
ブロック共重合体の別の実施例は、Djiauwほかの米国特許第5,705,556号において見られる。この参考文献において、弾性繊維又はフィルムを作製するための押し出し成形可能なエラストマー組成物が、エラストマーブロック共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリオレフィン及び粘着性付与樹脂を使用して調製できることが開示される。前記物品は、さらに、水素化された共役ジエンブロックによって分離される少なくとも2つのモノアルケニルアレーンブロックを有するブロック共重合体を25重量%ないし75重量%を有すると記載されている。
【0006】
射出成形、押し出し成形、及び紡糸を使用してポリマーから物品を調製する分野において、使用される前記ポリマーの望ましくない特性を低下させるために加工助剤を使用することは公知である。例えば、前記繊維の押し出し成形後の機械的処理操作及び熱処理操作において上昇した温度で使用する条件下で煤煙に対して優れた安定性を有する繊維潤滑剤が、Newkirkほかの米国特許第4,273,946号に開示されている。
【0007】
前述の参照したブロック共重合体及び現在の他の従来の高度に弾性のあるブロック共重合体は、多くの望ましい特性を有する一方で、特に押し出し成形、鋳造及び紡糸の適用において加工することが困難でありうる。例えば、従来のブロック共重合体を押し出し成形するために、ポリオレフィン、増量油(extending oil)、粘着性付与樹脂及びワックス及び/又は他の加工助剤の実質的な量を使用することが一般に実施される。これらの添加物は、添加するのが困難で、しばしば弾性特性における低下を来す場合があり、煙煤及びダイス集積などの望ましくない加工上の問題を生じうる。一方で、従来のブロック共重合体は、良好な加工可能性で作製できるが、それらの機械的特性はあまりにも貧弱であるため、鋳造され及び押し出し成形される物品において一般には有用ではない。ブロック共重合体から鋳造され、押し出し成形され、及び回転される物品を調製する分野において、いずれの加工助剤をさほど、又は全く必要としないが、優れた弾性特性をなお有しているブロック共重合体を使用するような物品を調製することが望ましいであろう。
【発明の開示】
【0008】
ある態様において、本発明は、Sブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S,(S−E,(S−ES,(S−E
を有し、式中、(a)水素化の前に前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、(b)水素化の前に前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(c)水素化の前に前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(d)nが2ないし6の値を有し、Xがカップリング剤残部であり、(e)前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13%ないし15%であり、(f)水素化の前の前記ポリジエンブロックのビニル含有量が60ないし85モル%であり、(g)前記ブロック共重合体が、一般式
S−E又はS−E
を有する15重量%未満の低い分子量単位を含み、式中、S、E及びEがすでに定義されているとおりであり、(h)水素化の後、前記スチレン二重結合の約0ないし10%が水素化されており、前記共役ジエン二重結合の少なくとも80%が水素化されており、(i)前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000であり、及び(j)前記ブロック共重合体のメルトインデックスがASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量で12g/10分以上である、選択的に水素化されたブロック共重合体又はこれらの混合物である。
【0009】
さらに別の態様において、本発明は、フィルム、シート、コーティング、バンド、ストリップ、プロファイル、チューブ、鋳造物、気泡、テープ、織布、糸、フィラメント、リボン、繊維、複数の繊維及び繊維状織布からなる群から選択される物品であり、その中で前記物品はSブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
を有し、式中、(a)水素化の前に前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、(b)水素化の前に前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(c)水素化の前に前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(d)nが2ないし6の値を有し、Xがカップリング剤残部であり、(e)前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13%ないし25%であり、(f)水素化の前の前記ポリジエンブロックのビニル含有量が60ないし85モル%であり、(g)前記ブロック共重合体が、一般式
S−E又はS−E
を有する15重量%未満の低い分子量単位を含み、式中、S、E及びEがすでに定義されているとおりであり、(h)水素化の後、前記スチレン二重結合の約0ないし10%が水素化されており、前記共役ジエン二重結合の少なくとも80%が水素化されており、(i)前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000であり、及び(j)前記ブロック共重合体のメルトインデックスがASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量で12g/10分以上である、選択的に水素化されたブロック共重合体又はこれらの混合物を使用して調製される。
【0010】
本発明の別の態様は、単独で又は複数の他の層との層状構造において使用できる直接的な押し出し成形によって作製される、フィルム、テープ、チューブ、ストリップ、繊維、又はフィラメントからなる群から選択される物品であるか、又は射出成形、スラッシュ成形、回転式成形、圧縮成形、及び浸漬からなる群から選択されるプロセスによって調製される透明で柔軟性のある部分であり、ここで、前記物品は、Sブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
を有し、式中、(a)水素化の前に前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、(b)水素化の前に前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(c)水素化の前に前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(d)nが2ないし6の値を有し、Xがカップリング剤残部であり、(e)前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13%ないし15%であり、(f)水素化の前の前記ポリジエンブロックのビニル含有量が60ないし85モル%であり、(g)前記ブロック共重合体が、一般式
S−E又はS−E
を有する15重量%未満の低い分子量単位を含み、式中、S、E及びEがすでに定義されているとおりであり、(h)水素化の後、前記スチレン二重結合の約0ないし10%が水素化されており、前記共役ジエン二重結合の少なくとも80%が水素化されており、(i)前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000であり、及び前記水素化されたブロック共重合体が50を超えるメルトインデックスを有し、前記ヒステリシス回復が60%を超える、選択的に水素化されたブロック共重合体又はこれらの混合物を使用して調製される。
【0011】
さらに別の態様において本発明は、Sブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
を有し、式中、(a)前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、(b)前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(c)前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、(d)nが2ないし6の値を有し、Xがカップリング剤残部であり、(e)前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13%ないし15%であり、(f)水素化の前の前記ポリジエンブロックのビニル含有量が60ないし85モル%であり、(g)前記ブロック共重合体が、一般式
S−E又はS−E
を有する15重量%未満の低い分子量単位を含み、式中、S、E及びEがすでに定義されているとおりであり、及び(h)前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000である、ブロック共重合体又はこれらの混合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ある実施態様において、本発明はSブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
を有し、式中、(a)は水素化の前に、前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、(b)水素化の前に、前記Eブロック又はEブロックが、ポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリジエンブロックである、選択的に水素化されたブロック共重合体又はこれらの混合物である。前記ブロック共重合体は3ないし6個のアームを有する直鎖状又は放射状でありうる。前記直鎖状立体配置のための一般式には、
S−E−S及び/又は(S−E及び/又は(S−E
が含まれ、式中、前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、nは2ないし6の値を有し、好ましくは2ないし4であり、より好ましくは約3の平均を有する。前記放射状立体配置のための一般式には、
【0013】
【化1】

及び
【0014】
【化2】

があり、式中前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、及びXはカップリング剤残部である。
【0015】
本明細書で使用される、「分子量」という語は、前記ポリマー又は前記共重合体のブロックのg/モルにおける真の分子量を指す。本明細書及び請求項において言及される分子量は、ASTM 3536にしたがって実施されるような、ポリスチレン較正標準物質を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定できる。GPCは、ポリマーが分子の大きさに従って分離され、最大の分子が最初に溶出する周知の方法である。前記クロマトグラフは、商業上入手可能なポリスチレン分子量標準物質を使用して較正される。そのように較正されるGPCを使用して測定されるポリマーの分子量は、スチレン当量の分子量である。前記スチレン当量の分子量は、前記ポリマーのスチレン含有量及び前記ジエンセグメントのビニル含有量が公知であるとき、真の分子量へ変換できる。使用される検出器は、好ましくは紫外線及び屈折率の組み合わせ検出器である。本明細書で表される分子量は、真の分子量へ変換された前記GPCトレースのピークで測定され、一般に「ピーク分子量」と言われる。
【0016】
本発明のブロック共重合体はスチレンと、ブタジエン、イソプレン及びこれらの混合物からなる群から選択されるジエンとのアニオン重合により調製される。前記重合化は、約−150℃ないし約300℃の範囲内の温度で、好ましくは約0℃ないし約100℃の範囲内の温度で適切な溶媒中で前記スチレン及びジエン単量体を有機アルカリ金属化合物と接触させることによって達成される。特に効果的なアニオン重合発動因子は、一般式RLinを有する有機リチウム化合物であり、式中Rは、1ないし20個の炭素原子を有する脂肪族、環状脂肪族、芳香族、又はアルキル置換された芳香族炭化水素基であり、nは1ないし4の値を有する。好ましい発動因子にはn−ブチルリチウム及びsec−ブチルリチウムがある。アニオン重合のための方法は周知であり、米国特許第4,039,593号及び米国再発行特許第Re27,145号などの参考文献において見出されうる。
【0017】
本発明のブロック共重合体は、2ないし6個の「アーム」の混合物を有する直鎖状、直鎖共役された、又は放射状ブロック共重合体でありうる。直鎖状ブロック共重合体は、スチレンを重合化して第一Sブロックを形成し、ブタジエンを添加してEブロックを形成した後、更なるスチレンを添加して第二Sブロックを形成することによって生成されうる。直鎖共役されたブロック共重合体は第一Sブロック及びEブロックを形成した後、前記ジブロックを二機能性カップリング剤と接触させることによって生成される。放射状ブロック共重合体は少なくとも三機能性であるカップリング剤を使用することによって調製される。
【0018】
直鎖状ブロック共重合体を調製するのに有用な二機能性カップリング剤には、例えば米国特許第3,766,301号において開示される安息香酸メチルが含まれる。放射状ブロック共重合体を形成するのに有用な2、3又は4個の機能基を有する他のカップリング剤には、例えば米国特許第3,244,664号、第3,692,874号、第4,076,915号、第5,075,377号、第5,272,214号及び第5,681,895号において開示される四塩化ケイ素及びアルコキシシラン、米国特許第3,281,383号において開示されるポリエポキシド、ポリイソシアン酸塩、ポリイミン、ポリアルデヒド、ポリケトン、ポリ無水物、ポリエステル、ポリハロゲン化物、米国特許第3,594,452号において開示されるジエステル、米国特許第3,880,954号において開示されるメトキシシラン、米国特許第3,985,830号において開示されるジビニルベンゼン、米国特許第4,104,332号において開示される三塩化1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、米国特許第4,185,042号において開示されるグリシドキシトリメトキシシラン、及び米国特許第4,379,891号において開示されるオキシジプロピルビス(トリメトキシシラン)が含まれる。
【0019】
本発明のある実施態様において、使用されるカップリング剤は、一般式R−Si−(OR’)のアルコキシシランであり、式中xは0又は1、x+y=3又は4、R及びR’は同一又は異別であり、Rはアリール、直鎖状アルキル及び分岐鎖アルキル炭化水素基から選択され、及びR’は直鎖状及び分岐鎖アルキル炭化水素基から選択される。前記アリール基は、好ましくは6ないし12個の炭素原子を有する。前記アルキル基は好ましくは1ないし12個の炭素原子を有し、より好ましくは1ないし4個の炭素原子を有する。融解条件下で、これらのアルコキシシランカップリング剤は4を超える機能性を生じるようにさらに共役できる。好ましいテトラアルコキシシランは、テトラメトキシシラン(「TMSi」)、テトラエトキシシラン(「TESi」)、テトラブトキシシラン(「TBSi」)、及びテトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン(「TEHSi」)である。好ましいトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン(「MTMS」)、メチルトリエトキシシラン(「MTES」)、イソブチルトリメトキシシラン(「IBTMO」)及びフェニルトリメトキシシラン(「PhTMO」)である。これらのうち、より好ましいのはテトラエトキシシラン及びメチルトリメトキシシランである。
【0020】
本発明のある重要な態様は、ポリマーの微小構造である。本発明に関連する微小構造は、前記Eブロック及び/又はEブロックにおける多量のビニルである。この立体配置は、前記ジエンの重合化の間の調節剤の使用によって達成できる。典型的な調節剤はジエチルエーテルである。参照によって本明細書にその開示が組み込まれる米国特許第Re27,145号及び米国特許第5,777,031号を参照されたい。有用とされるブロック共重合体を調製することに関する当業者に公知のいずれかの微小構造調節剤は、本発明のブロック共重合体を調製するのに使用できる。
【0021】
本発明の実施において、前記ブロック共重合体は、それらが水素化の前に前記E及び/又はEブロックにおける約60ないし約85モル%ビニルを有するように調製される。別の実施態様において、前記ブロック共重合体は、それらが約65ないし約85モル%ビニル含有量を有するように調製される。さらに別の実施態様において、前記ブロック共重合体は、それらが約70ないし約85モル%ビニル含有量を有するように調製される。本発明の別の実施態様は、ブロック共重合体が前記E及び/又はEブロックにおいて約73ないし約83モル%ビニル含有量を有するように調製されるブロック共重合体を含む。
【0022】
ある実施態様において、本発明は水素化されたブロック共重合体である。本発明の水素化されたブロック共重合体は、本分野で公知のいくつもの水素化プロセスのうちのいずれかを使用して選択的に水素化される。例えば、前記水素化は、例えば米国特許第3,494,942号、第3,634,594号、第3,670,054号、第3,700,633号、及び第Re.27,145号において教示されるものなどの方法を使用して達成でき、それらの開示は参照によって本明細書に組み込まれている。前記ポリスチレンブロックにおける前記芳香族不飽和を実質的にそのままに残す包合されたポリジエンブロックにおける二重結合に対して選択的ないずれかの水素化方法は、本発明の水素化されたブロック共重合体を調製するのに使用できる。
【0023】
従来技術で公知であり、本発明の水素化されたブロック共重合体を調製するのに有用な方法は、適切な触媒、特に鉄グループ金属原子、特にニッケル又はコバルトを含む触媒又は触媒前駆体及びアルミニウムアルキルなどの適切な還元剤の使用を包含する。又有用なのはチタンベースの触媒系である。一般に、前記水素化は、約20℃ないし約100℃の範囲内の温度で、及び約100psig(689kPa)ないし約5,000psig(34,473kPa)の範囲内の水素分圧で適切な溶媒中で達成できる。溶液全体に基づいた鉄グループ金属の重量比で約10ppmないし約500ppmの範囲内の触媒濃度が一般に使用され、水素化条件での接触は一般に約60ないし約240分の範囲の時間で持続される。前記水素化が完了した後、前記水素化触媒及び触媒残部は一般に前記ポリマーから分離される。
【0024】
本発明の実施において、前記水素化されたブロック共重合体は80%を超える水素化度を有する。このことは、前記E又はEブロックにおける共役ジエン二重結合の80%を超えるものがアルケンからアルカンへ水素化されたことを意味する。ある実施態様において、前記E又はEブロックは約90%を超える水素化度を有する。別の実施態様において、前記E又はEブロックは約95%を超える水素化度を有する。
【0025】
本発明の実施において、前記ブロック共重合体のスチレン含有量は約13%ないし約25重量%である。ある実施態様において、前記ブロック共重合体のスチレン含有量は約15%ないし約24%である。これらの範囲内のいずれかのスチレン含有量が本発明とともに使用できる。水素化後、前記Sブロックにおけるスチレン二重結合の0ないし10%は、本発明の実施において水素化されている。
【0026】
本発明のブロック共重合体における前記Sブロックの各々の分子量は、本発明のブロック共重合体において約5,000ないし約7,000である。ある実施態様において、前記Sブロックの各々の分子量は約5,800ないし約6,600である。本発明のブロック共重合体のSブロックはこれらの範囲内のいずれかの分子量を有するポリスチレンブロックでありうる。
【0027】
本発明の実施において、前記Eブロックは単一のポリジエンブロックである。これらのポリジエンブロックは、約40,000ないし約70,000の範囲の分子量を有することができる。前記Eブロックは、約20,000ないし約35,000の範囲の分子量を有するポリジエンブロックである。ある実施態様において、前記Eブロックの分子量の範囲は約45,000ないし約60,000であり、共役される前の共役されるブロック共重合体の各Eブロックについての分子量の範囲は約22,500ないし約30,000である。
【0028】
従来の水素化されたブロック共重合体を上回る本発明の1つの利点は、簡単に鋳造できるか又は連続して成形若しくはフィルムへと押し出し成形できるか若しくは繊維へと紡糸できる高いメルトフローを有することである。この特徴によって、エンドユーザーは、特性を劣化させ、領域夾雑、煤煙を生じ、鋳型及びダイス上に堆積される添加物の使用を回避できるか又は少なくとも制限できる。しかし、本発明の水素化されたブロック共重合体は、非効率的な共役由来のジブロックなどの、これらの望ましくない効果を生じうる夾雑物質が非常に低い。本発明のブロック共重合体及び水素化されたブロック共重合体のジブロック含有量は15重量%未満であり、このようなジブロックは一般式
SE又はSE
を有し、式中、S、E及びEはすでに定義されるとおりである。ある実施態様において、前記ジブロックレベルは10%未満であり、別の実施態様においては8%未満である。例えば、前記水素化されたブロック共重合体の構造が(S−EXである場合、前記ブロック共重合体は、前記S−E種の10%未満を含有する。すべての百分率は重量比による。
【0029】
本発明の水素化されたブロック共重合体のある特徴は、それらが低い秩序−無秩序温度を有することである。本発明の水素化されたブロック共重合体の秩序−無秩序温度(ODT)は、典型的に約250℃未満である。250℃を超えると、前記ポリマーは加工するのがより困難であるが、いくつかの適用についての特定の場合には250℃を超えるODTが利用できる。あるこのような場合は、前記ブロック共重合体が他の構成要素と組み合わさって加工を改善するときである。このような他の成分は、熱可塑性ポリマー、油、樹脂、ワックス又はその類似物であってもよい。ある実施態様において、前記ODTは約240℃未満である。好ましくは、本発明の水素化されたブロック共重合体は約210℃ないし約240℃のODTを有する。この特性はいくつかの適用において重要であり得る。なぜなら、前記ODTが210℃を下回るとき、前記ブロック共重合体は望ましくない過剰の又は低い力であるずれを呈しうるからである。本発明の目的のため、前記秩序−無秩序温度は、これを上回った時、毛細管流体力学又は動的流体力学によって0剪断粘性が測定できる温度として定義される。
【0030】
本発明の目的について、「メルトインデックス」という語は、ASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量での前記ポリマーのメルトフローの基準である。それは、10分間に融解レオメータのオリフィスを通過するポリマーのgの単位で表される。本発明の水素化されたブロック共重合体はより高いメルトインデックスを有する同様の水素化されたブロック共重合体と比べより簡単に加工できる望ましい高いメルトインデックスを有する。ある実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は12以上のメルトインデックスを有する。別の実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は20以上のメルトインデックスを有する。さらに別の実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は40以上のメルトインデックスを有する。本発明の別の実施態様には、約20ないし約100のメルトインデックスを有する水素化されたブロック共重合体が含まれる。本発明のさらに別の実施態様は、約50ないし約85のメルトインデックスを有する水素化されたブロック共重合体を含む。
【0031】
本発明の水素化されたブロック共重合体は、融解に基づいた加工を要する物品を調製する上での使用に特に適している。例えば、本発明の水素化されたブロック共重合体は、射出成形、オーバーモールディング(over molding)、インサート成形、浸漬、押し出し成形、回転成形(rotomolding)、スラッシュ成形、紡糸、フィルム作製、及び起泡からなる群から選択されるプロセスにおいて使用できる。このようなプロセスを使用して作製される物品には、フィルム、シート、コーティング、バンド、ストリップ、プロファイル、チューブ、塑像物、気泡、テープ、織布、糸、フィラメント、リボン、繊維、複数の繊維、繊維状織布及び複数のフィルム及び又は繊維層を含有する層状物がある。
【0032】
本発明の水素化された共重合体がこのような低い秩序−無秩序温度及び加工助剤を使用せずに物品を調製するのに使用できる高いメルトインデックスを有する一方、このような助剤及び他の添加物を使用することが望ましいこともある。このような添加物の典型的なものは、他のブロック共重合体、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、粘着性付与樹脂、エンドブロック(end block)樹脂、ポリマー増量油(polymer extending oil)、ワックス、賦形剤、補強剤、潤滑剤、安定剤、高性能熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである。
【0033】
前記添加物がオレフィンポリマーであるとき、典型的なポリマーには、例えば、エチレンホモポリマー、エチレン/α−オレフィン共重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィン共重合体、高衝撃ポリプロピレン、ブチレンホモポリマー、ブチレン/αオレフィン共重合体、及び他のαオレフィン共重合体又はインターポリマー(interpolymer)が含まれる。代表的なポリオレフィンには、例えば実質的に直鎖状のエチレンポリマー、均質に分岐される直鎖状エチレンポリマー、不均質に分岐される直鎖状エチレンポリマーがあるがそれらには制限されず、それらには直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度又は非常に低密度のポリエチレン(ULDPE又はVLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)及び高圧低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。以下に含まれる他のポリマーは、エチレン/アクリル酸(EAA)共重合体、エチレン/メタクリル酸(EMAA)イオノマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)共重合体、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)共重合体、エチレン/環状オレフィン共重合体、ポリプロピレンホモポリマー及び共重合体、プロピレン/スチレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、ポリブチレン、エチレン一酸化炭素インターポリマー(interpolymer)(例、エチレン/一酸化炭素(ECO)共重合体、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素ターポリマー(terpolymer)、及びその類似物である。好ましいのは、ポリエチレン及びポリプロピレン共重合体、プラストマー、エラストマー及びインターポリマー(interpolymer)などの透明性の高い柔軟なオレフィンポリマーである。実施例には、Dow Chemical社製のAffinity, Engage and Versifyポリマー、及びExxon Mobil社製のExact and Vistamaxxポリマーが含まれる。以下に含まれるさらに他のポリマーは、塩化ポリビニル(PVC)及びPVCと他の材料との配合物である。
【0034】
本発明の水素化された共重合体はスチレンポリマーと混合することもできる。スチレンポリマーには例えば、結晶ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン、中程度の衝撃のポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン(ABS)ポリマー、シンジオタクチック(syndiotactic)ポリスチレン及びスチレン/オレフィン共重合体が含まれる。代表的なスチレン/オレフィン共重合体は、好ましくは少なくとも20重量%の共重合されたスチレン単量体を含有する、実質的にランダムなエチレン/スチレン共重合体又はプロピレン/スチレン共重合体である。Himont社(現Basell社)によって本来開発された商標名Interloy(R)のもとで提供されるものなどのスチレンにより接合されたポリプロピレンポリマーも含まれる。本発明の水素化された共重合体は、スチレン−ジエン−スチレントリブロック、放射型又は星型のブロックポリマー、スチレン−ジエンジブロックポリマー、及びこれらのポリマーの水素化バージョンなどの他のブロック共重合体とも混合できる。使用できる高ビニルポリマーの実施例にはKurraray社製のHybrar(R)及びJSR社製のDynaronが含まれる。
【0035】
本発明の明細書及び請求項の目的のため、「高性能熱可塑性樹脂」という語は以下の表1に列挙され、米国特許第4,107,131号にさらに定義されるクラスに見られるさまざまなポリマーを包含し、米国特許第4,107,131号の開示は参照によって本明細書に組み込まれている。
【0036】
【表1】

【0037】
本発明の水素化されたブロック共重合体とともに使用される添加物が粘着性付与樹脂であるとき、典型的な樹脂にはポリスチレンブロック相溶性樹脂及び中間ブロック相溶性樹脂が含まれる。前記ポリスチレンブロック相溶性樹脂は、クマロン−インデン樹脂、ポリインデン樹脂、ポリ(メチルインデン)樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルトルエン−αメチルスチレン樹脂、αメチルスチレン樹脂及びポリフェニレンエーテル、特にポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)の群から選択できる。このような樹脂は例えば、「HERCURES」、「ENDEX」、「KRISTALEX」、「NEVCHEM」及び「PICCOTEX」の登録商標のもとで販売される。前記水素化された(中間)ブロックと適合性のある樹脂は、適合性C5炭化水素樹脂、水素化されたC5炭化水素樹脂、スチレン化されるC5樹脂、C5/C9樹脂、スチレン化されるテルペン樹脂、十分に水素化されたか又は部分的に水素化されたC9炭化水素樹脂、ロジンエステル(rosins ester)、ロジン(rosins)誘導体及びこれらの混合物からなる群から選択されることができる。これらの樹脂は例えば、「REGALITE」、「REGALREZ」、「ESCOREZ」及び「ARKON」の登録商標のもとで販売される。又、ポリスチレンブロック相溶性樹脂及び中間ブロック相溶性樹脂の両者を使用することもできる。
【0038】
添加物がエラストマーポリエチレン又はポリプロピレン共重合体であるとき、例として、Dow Chemical社製のAffinity, Engage and Versifyポリマー、及びExxon Mobil社製のExact and Vistamaxxポリマーが含まれる。
【0039】
前述の添加物が使用できる一方で、煙煤、ダイス蓄積、鋳型蓄積、領域夾雑、及びそれらの類似を含むがそれには制限されない固有の問題を回避するために前述の添加物の使用を制限することはしばしば望ましい。ある実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体を使用して調製される物品に存在する添加物の総濃度は、重量比で約0.001%ないし約25%である。別の実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体を使用して調製される物品に存在する添加物の総濃度は、重量比で約0.001%ないし約10%である。さらに別の実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体を使用して調製される物品に存在する添加物の総濃度は、重量比で約0.001%ないし約5%である。本発明の別の実施態様には、本発明の水素化されたブロック共重合体を使用して調製される物品に存在する添加物の総濃度が、重量比で約0.001%ないし約1%である場合が含まれる。
【0040】
本発明のポリマーは、そのままポリマーとして、又は配合物中でのいずれかで多くの用途に使用できる。以下のさまざまな最終用途及び/又はプロセスが例示されるが、本発明に対して制限を加えてはいない。すなわち、
・ポリマー修飾用途
・玩具、医療用デバイスの射出成形
・押し出し成形フィルム、チューブ、外形
・エアバッグ、ハンドルなどの自動車パーツ、個人用ケア、グリップ、やわらかい感触の適用品のためのオーバーモールディング(over molding)用途
・グローブなどの浸漬された用品
・シート成形化合物又はトレイのためのバルク成形化合物などにおけるサーモセット用途
・玩具及び他の物品のための回転成形
・自動車外板のスラッシュ成形
・コーティングのための熱溶射
・医療用デバイスのためのブロンフィルム
・ホットメルト接着剤
・自動車/産業用パーツのためのブロー成形
・個人用衛生用品のためのフィルム及び繊維
・機能化されたポリマーのための層
・屋根板
・ジオメンブレン用途
である。
【0041】
本発明の水素化されたブロック共重合体は非常に弾性のある特性を有し、なおかつ非常に高いメルトインデックスも有する。ある実施態様において、本発明の水素化されたブロック共重合体は、300%までの伸長後の第一収縮周期において50%を超えるヒステリシス回復及び20%未満の永久ひずみを有する。例えば、本発明の好ましい実施態様は、50を超えるメルトインデックス及び60%を超えるヒステリシス回復を有する水素化されたブロック共重合体である。前記実施態様は、単独で又は複数の他の層による層状構造において使用できる直接的な押し出し成形によって作製されるフィルム、テープ、チューブ、ストリップ、繊維、又はフィラメントからなる群から選択される物品、又は射出成形、スラッシュ成形、回転成形、圧縮成形、及び浸漬からなる群から選択されるプロセスによって調製される透明で柔軟な部分を調製するのに特に有用である。
【0042】
安定剤、増量油(extender oil)、ワックス、粘着性付与樹脂、エンドブロック樹脂、表面修飾剤及びポリオレフィンを含む群から選択される流動、剛性又は弾性を向上させる添加物の重量比で0.001%ないし10%を必要に応じて含むこれらの物品が調製できる。存在するとき、前記添加物はポリエチレン又はポリプロピレンのホモポリマー又は共重合体を含むことができる。ある実施態様において、前記ポリエチレン又はポリプロピレンのホモポリマー又は共重合体は、ポリエチレン又はポリプロピレンのプラストマー、エラストマー又はインターポリマー(interpolymer)でありうる高い透明度のポリプロピレン共重合体である。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。前記実施例は、本発明の範囲を制限するよう企図されてはおらず、前記実施例はそのように解釈されるべきではない。量は特段の記載がなければ重量部分又は重量%である。
【0044】
(実施例1)
微小構造調節剤の存在下でのスチレンのアニオン重合、次いでブタジエンのアニオン重合、その後のカップリング及び次いで水素化によって、水素化されたブロック共重合体を調製する。シクロヘキサン361g及びスチレン16.7kgを反応器へ投入することによって、ジブロックポリマー陰イオンであるS−B−Liを調製する。前記反応器の温度は約40℃まで上昇した。s−ブチルリチウムのわずかな一定分量を色彩の第一兆候まで添加することによって不純物を除去した。シクロヘキサンに溶解したs−ブチルリチウムの約12重量%溶液の1900mlの溶液を添加し、前記スチレンを約60℃で完全に重合化させた。前記反応において生成されるポリスチレンの分子量はGPCにより6,400であると測定された。1,2−ジエトキシプロパン320gを添加した後、ブタジエン72.6kgを約60℃の温度に保つ速度で添加した。前記ブタジエンの重合終了時に回収される試料は、H NMRに基づいた21.3重量%のスチレン含有量及び69%のビニル含有量、及びGPCによって測定される35,000の総分子量を有した。前記ブタジエンの大部分の重合後、イソプレン623gを添加した。前記イソプレンを重合後、TESi257gを添加し、カップリング反応を60℃で60分間進行させた。メタノール(8.5g、Li1モルあたり0.1モル)を添加して前記反応を終了した。最終生成物は91%のカップリング効率を有し、カップリング後の種の72%は直鎖状、残りの28%が3アームの放射状であった。
【0045】
前記ポリマーの試料をコバルトネオデカン酸アルミニウムトリエチル触媒(Al/Co=1.7モル/モル)の溶液の[Co]として20ppmの存在下で0.09meq/gの残余オレフィン濃度になるよう水素化した。これらの条件下で水素化した後、前記ポリマーは91%がカップリングしたままであった。前記触媒をリン酸水溶液で洗浄することによって除去し、水素化されたポリマーに対して典型的な条件下で水蒸気蒸留を介して前記ポリマーを回収した。
【0046】
前記スチレンブロック及びブタジエン/イソプレンブロックの分子量が決定できるよう試料を採取した。水素化前の1,2立体配置におけるブタジエンの量及びカップリング効率も決定した。前記水素化されたブロック共重合体をメルトフロー及びODTについて検査した。前記検査の結果を以下の表1に表す。
【0047】
(実施例2)
微小構造調節剤の存在下でのスチレンの、次いでブタジエンのアニオン重合、その後のカップリング及び次いで水素化によって、水素化されたブロック共重合体を調製した。ジブロックポリマー陰イオンであるS−B−Liを、シクロヘキサン348g及びスチレン26kgを反応器へ投入することによって調製した。前記反応器の温度は、約40℃まで上昇した。s−ブチルリチウムのわずかな一定分量を色彩の第一兆候まで添加することによって不純物を除去した。シクロヘキサンに溶解したs−ブチルリチウムの約12重量%溶液の3,160mlの溶液を添加し、前記スチレンを約60℃で完全に重合した。前記反応において生成されるポリスチレンの分子量はGPCにより6,200であると測定された。前記温度を60℃に維持し、1,2−ジエトキシプロパン450gを添加した後、前記温度が約60℃のままになるような速度でブタジエン90kgを添加した。前記ブタジエン重合化の終了時に回収される試料は、H NMRに基づいた22重量%のスチレン含有量及び81%のビニル含有量及びGPCによって測定される30,200の総分子量を有した。イソプレンを重合した後、TESi363gを添加し、カップリング反応を60℃で60分間進行させた。メタノール(15g、Li1モルあたり0.1モル)を添加して前記反応を終了した。最終生成物は89%のカップリング効率を有し、カップリング後の種の65%は直鎖状、残りの35%が3アームの放射状であった。
【0048】
前記ポリマーの試料をニッケルオクタン酸アルミニウムトリエチル触媒(Al/Ni=2.1モル/モル)の20ppmNi/溶液の存在下で0.17meq/gの残余オレフィン濃度になるよう水素化した。これらの条件下で水素化した後、前記ポリマーは89%カップリングしていた。前記触媒をリン酸水溶液で洗浄することによって除去し、水素化されたポリマーに対して典型的な条件下で水蒸気蒸留を介して前記ポリマーを回収した。
【0049】
前記スチレンブロック及びブタジエンブロックの分子量が決定できるよう試料を採取した。水素化前の1,2立体配置におけるブタジエンの量及びカップリング効率も決定した。前記水素化されたブロック共重合体をメルトフロー及びODTについて検査した。前記検査の結果を以下の表1に表す。
【0050】
(実施例3)
水素化されたブロック共重合体を微小構造調節剤の存在下でのスチレンの、次いでブタジエンのアニオン重合、その後のカップリング及び次いで水素化により調製した。ジブロックポリマー陰イオンであるS−B−Liを、シクロヘキサン243kg及びスチレン20kgを反応器へ投入することによって調製した。前記反応器の温度は約40℃まで上昇した。s−ブチルリチウムのわずかな一定分量を色彩の第一兆候まで添加することによって不純物を除去した。シクロヘキサンに溶解したs−ブチルリチウムの約12重量%溶液の2,500mlの溶液を添加し、前記スチレンを約60℃で完全に重合化させた。前記反応において生成されるポリスチレンの分子量はGPCにより6,100であると測定された。温度を60℃に維持し、1,2−ジエトキシプロパン210gを添加した後、前記温度が約60℃のままになるような速度でブタジエン60kgを添加した。前記ブタジエン重合化の終了時に回収される試料は、H NMRに基づいた22重量%のスチレン含有量及び76%のビニル含有量及びGPCによって測定される27,700の総分子量を有した。前記ブタジエンを重合した後、TESi243gを添加し、カップリング反応を60℃で60分間進行させた。最終生成物は94%のカップリング効率を有し、カップリング後の種の62%は直鎖状、残りの38%が3アームの放射状であった。
【0051】
前記ポリマーの試料をニッケルオクタン酸アルミニウムトリエチル触媒(Al/Ni=2.1モル/モル)の10ppmNi/溶液の存在下で0.17meq/gの残余オレフィン濃度になるよう水素化した。これらの条件下で水素化した後、前記ポリマーは89%がカップリングしたままであった。前記触媒をリン酸水溶液で洗浄することによって除去し、水素化されたポリマーに対して典型的な条件下で水蒸気蒸留を介して前記ポリマーを回収した。
【0052】
前記スチレンブロック及びブタジエンブロックの分子量が決定できるよう試料を採取した。水素化前の1,2立体配置におけるブタジエンの量及びカップリング効率も決定した。前記水素化されたブロック共重合体をメルトフロー及びODTについて検査した。前記検査の結果を以下の表1に表す。
【0053】
(実施例4)
前記スチレンブロックが6,200の分子量を有し、カップリング前の総分子量が33,200であり、ビニル含有量が78%であり、カップリング度が97%であるように前記スチレン及びブタジエンの投入を変化させ、実施例2及び3の方法によりポリマーを調製した。水素化後、カップリング効率は96%であり、残余不飽和は0.1meq/gであった。
【0054】
(実施例5)
メチルトリメトキシシランをカップリング剤として使用したことを除き、実施例2及び3の方法によってポリマーを調製した。スチレンブロックが6,200の分子量を有し、カップリング前の総分子量が32,800であり、ビニル含有量が76であり、カップリング度が94であるように、前記スチレン及びブタジエンを投入した。
【0055】
(実施例6)
テトラメトキシシランをカップリング剤として使用したことを除き、実施例2及び3の方法によってポリマーを調製した。スチレンブロックが6,100の分子量を有し、カップリング前の総分子量が34,500であり、ビニル含有量が76であり、カップリング度が95であるように、前記スチレン及びブタジエンを負荷した。
【0056】
比較例I、II及びIII
比較上の水素化されたブロック共重合体I及びIIを調製し、実施例2と実質的に同一に検査したが、例外は前記スチレンブロック分子量が本発明の最大分子量よりも大きいことであった。比較例IIIを、スチレン、次いでブタジエン、次いでスチレンの連続的な重合化の後に水素化することによって調製した。前記検査の結果を以下の表1に表す。
【0057】
【表2】

【0058】
実施例1ないし4及び比較例IないしIIIは、前記Sブロックの分子量がメルトインデックス及び/又はODTに及ぼす有意な効果を有しうることを示した。
【0059】
(実施例5ないし7)
フィルムを表1にあるポリマーのいくつかから、0.15%放出剤及び0.02%Ethanox330安定剤を添加した後、230℃でDavis Standardキャストフィルムライン上で押し出し成形することによって調製した。ポリマー2及び3は低い押し出し成形圧力を付与し、それらの高い流動のため滑らかで透明なフィルムを形成した。比較例IIIは高い押し出し成形背景圧力により粗めのフィルムを形成した。ASTM D412にしたがって押し出し成形の方向で測定されるこれらのフィルムの弾力特性及びヒステリシス特性を表2に示す。300%に至る伸長後の高い第一周期回復及び低い永久ひずみによって示される優れた張力及び弾性をすべてが示す。
【0060】
【表3】

【0061】
(実施例8ないし16)
実施例3のポリマーを、30のメルトフローを有するポリプロピレン共重合体であるDow Chemical社製6D43、低分子量ポリプロピレンホモポリマーであるEastman Chemical社製Estaflex P1010、Eastman Chemical社からREGALREZ1126として商業的に入手可能な水素化された炭化水素樹脂及びNova Chemical社からNOVA555として商業的に入手可能なポリスチレンと、表4に示される割合で、220℃でBrabenderミキサーを使用して、前記ミキサーを約65rpmで作動して配合した。前記配合した水素化された共重合体を前述のように検査し、前記結果を以下の表3に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
実施例9、10及び11は、ヒステリシス回復を犠牲にして100及び300%の伸長時の係数によって示される剛性を増大させるようポリプロピレンを添加できることを示した。実施例12は、粘着性付与樹脂Regalrez1126の添加時と同様、結晶性P1010ポリプロピレンの添加がより少なければ係数が低下することを示した。粘着性付与樹脂とPS又はPPとの組み合わせは、透明度を維持しながら流量又は剛性を亢進するのに使用できるが、しかしながら、修飾のないベースポリマーは前記配合物のほとんどと比較して特性のより優れたバランスを保持した。このことは、添加物の最小量とともに良質のポリマーを使用する実際のプロセスにおいて物品を作製する重要性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S, (S−E, (S−ES, (S−E
を有する、選択的に水素化されたブロック共重合体又はこれらの混合物
(ここで、
(a)水素化の前に、前記Sブロックはポリスチレンブロックであり、
(b)水素化の前に、前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、
(c)水素化の前に、前記Eブロックはポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、
(d)nは2ないし6の値を有する整数であり、及びXはカップリング剤残部であり、
(e)前記ブロック共重合体のスチレン含有量は、13%ないし25重量%であり、
(f)水素化の前における前記ポリジエンブロックのビニル含有量は、70ないし85モル%であり、
(g)前記ブロック共重合体は、一般式
S−E又はS−E
を有する低分子量単位を15重量%未満包含し、ここで、S、E及びEはすでに定義されているとおりであり、
(h)水素化の後、スチレン二重結合の約0ないし10%は、水素化されており、及び共役ジエン二重結合の少なくとも80%が水素化されており、
(i)前記Sブロックの各々の分子量は、5,000ないし7,000であり、及び
(j)前記ブロック共重合体のメルトインデックスは、ASTM D1238にしたがって230℃及び2.16kg重量で12g/10分以上である。)。
【請求項2】
ブロック共重合体の秩序−無秩序温度(ODT)が250℃未満である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
ブロック共重合体のスチレン含有量が15%ないし24重量%であり、及びポリジエンブロックのビニル含有量が73ないし83モル%である、請求項1又は請求項2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
Sブロックの各々の分子量が5,800ないし6,600である、請求項1ないし3のうちのいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
E又はEブロックが90%を超える水素化度を有する、請求項1ないし4のうちのいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
210℃ないし240℃の秩序−無秩序温度を有する、請求項1ないし5のうちのいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
50%を超えるヒステリシス回復、及び300%への伸長後の第一の退縮周期における20%未満の永久ひずみを有する、請求項1ないし6のうちのいずれか一項に記載のブロック共重合体。
【請求項8】
射出成形、インサート成形、オーバーモールディング、浸漬、押し出し成形、回転成形、スラッシュ成形、紡糸、フィルム作製、及び起泡から選択されるプロセスによって調製され、及び請求項1ないし7のうちのいずれか一項の水素化されたブロック共重合体を使用して調製され、フィルム、シート、コーティング、バンド、ストリップ、プロファイル、チューブ、塑像物、発泡体、テープ、織布、糸、フィラメント、リボン、繊維、複数の繊維及び繊維状織布から選択される物品。
【請求項9】
水素化されたブロック共重合体が、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、粘着性付与樹脂、ポリマー増量油、賦形剤、強化剤、潤滑剤、高性能熱可塑性樹脂、及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の添加物の約25重量%までをさらに含む、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
添加物が、プラストマー、エラストマー又はインターポリマー又は高い透明性のポリプロピレン共重合体であるポリエチレン若しくはポリプロピレンホモポリマー若しくは共重合体から選択される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
Sブロック及びE又はEブロックを有し、一般式
S−E−S,(S−E,(S−ES,(S−E
を有するブロック共重合体又はこれらの混合物
(ここで、
(a)前記Sブロックがポリスチレンブロックであり、
(b)前記Eブロックがポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物から選択され、40,000ないし70,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、
(c)前記Eブロックが、ポリブタジエン、ポリイソプレン及びこれらの混合物から選択され、20,000ないし35,000の分子量を有するポリジエンブロックであり、
(d)nが2ないし6の値を有する整数であり、及びXがカップリング剤残部であり、
(e)前記ブロック共重合体のスチレン含有量が13%ないし15%であり、
(f)前記ポリジエンブロックのビニル含有量が70ないし85%であり、
(g)前記ブロック共重合体は、一般式
S−E又はS−E
を有する低分子量単位を15重量%未満包含し、ここでS、E及びEはすでに定義されているとおりであり、及び
(h)前記Sブロックの各々の分子量が5,000ないし7,000である。)。

【公表番号】特表2007−526388(P2007−526388A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501871(P2007−501871)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/006283
【国際公開番号】WO2005/092936
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(501140348)クレイトン・ポリマーズ・リサーチ・ベー・ベー (44)
【Fターム(参考)】