説明

高い熱ゲル強度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその製造方法並びにこれを含む食品

【課題】熱ゲル化温度及び熱ゲル強度の高いヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその製造方法並びにこれを含む食品を提供する。
【解決手段】グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0であり、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.05〜0.4であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその製造方法並びにこれを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等の熱可逆ゲル化性を有するセルロースエーテルは、加工食品に利用される。例えば乾燥チーズに添加することにより、加熱時の保形性が向上することが知られている(特許文献1)。凍結乾燥豆腐等の凍結乾燥食品に上記セルロースエーテルと寒天とを添加すれば、大きくても湯戻し時及び湯戻し後の冷却時に形状崩壊せず、優れた食感の食品を得ることができる(特許文献2)。また、冷凍食品に上記セルロースエーテルを添加した場合には、食品加工時や加熱解凍時に熱ゲル化し、保水することにより風味を保つことが可能である(特許文献3)。
【0003】
一般に、メチルセルロース水溶液の加熱により生じるゲルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液から生じるゲルより固くなる。従って、熱ゲル化によって保形性を向上させたい場合の添加物としては、メチルセルロースの方がヒドロキシプロピルメチルセルロースより好適となる。しかしながら、メチルセルロースの水溶液の調製においては、一度15℃以下に冷却しなければ完全な溶解ができないという問題を有している。これに対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは25℃以上の室温において水に溶解することが可能である。食品の調製においては15℃以下の冷却操作を行うことが困難な場合が多いため、優れた溶解性と熱ゲル強度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースの開発が求められてきた。
【0004】
また、一般にヒドロキシプロピルメチルセルロースの熱ゲル化温度は、メチルセルロースの熱ゲル化温度よりも高い。熱ゲル化温度が低ければ加熱時に素早くゲル化させることができるが、熱ゲル化温度が低すぎると、一旦熱ゲル化した後に自然冷却した場合に再び溶液状に戻るまでに時間がかる。例えば、コロッケ等の加熱加工食品に添加した場合、食する際にゲル化したままとなり、固すぎて食感が悪くなる恐れがある。従って、熱可逆ゲル化作用を目的としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを加工食品に添加する場合には、熱ゲル強度だけでなく、熱ゲル化温度も考慮しなければならない。
【0005】
特許文献4には、高い熱ゲル強度を有するヒドロキシアルキルメチルセルロースが記載されている。上記ヒドロキシアルキルメチルセルロースは、上記ヒドロキシアルキルエーテル化剤を添加する段階と、該ヒドロキシアルキルエーテル化剤と上記アルカリセルロースの反応後にメチルエーテル化剤を添加する段階、又は該ヒドロキシアルキルエーテル化剤のストイチオメトリックな量の60質量%以上が反応した時点において上記メチルエーテル化剤のストイチオメトリックな量の40質量%以上が未反応であるようにヒドロキシアルキルエーテル化剤とメチルエーテル化剤を添加する段階を経て製造される。しかし、このヒドロキシアルキルメチルセルロースを食品用途に用いる場合には、熱ゲル強度及び熱ゲル化温度の点で更なる改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01−080252号公報
【特許文献2】特開2005−348721号公報
【特許文献3】特開2002−51758号公報
【特許文献4】特開2008−285673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、熱ゲル化温度及び熱ゲル強度の高いヒドロキシプロピルメチルセルロース及びその製造方法並びにこれを含む食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0であり、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.05〜0.4であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを提供する。
また、本発明は、パルプをアルカリと反応させてアルカリセルロースを得る工程と、上記アルカリセルロースにメチルエーテル化剤及びヒドロキシプロピルエーテル化剤を添加して反応させヒドロキシプロピルメチルセルロースを得る工程であって、該メチルエーテル化剤の反応率が50%以上の時点における該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率が50%未満、又は該メチルエーテル化剤の反応率が30%以上の時点における該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率が30%未満となるように、該メチルエーテル化剤と該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の添加速度を調整し、上記ヒドロキシプロピルエーテル化剤が、上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)を、該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)で除した値(C/D)を0.28以下とする工程とを少なくとも含み、グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0であり、上記グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.05〜0.4であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、室温で溶解しやすく、高い熱ゲル化温度及び熱ゲル強度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースを得ることができる。特に本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースを食品添加物として用いることにより、加熱調理中に保形性に優れた食品組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的に詳述する。
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0、好ましくは1.3〜1.6であり、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.3、更に好ましくは0.2〜0.3であるヒドロキシプロピルメチルセルロースである。メトキシル基の平均置換度が1.0未満、あるいは2.0より高いと水に溶解しにくくなり、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.05未満であると溶解するために25℃以下にする必要を生じ、0.4より高くなると水溶液の加熱によりゲル状とした時の強度が低くなりすぎる。
【0011】
これらのメトキシル基及びヒドロキシプロポキシル基の平均置換度の測定方法としては、第15改正日本薬局方のメチルセルロースに関する分析方法又は米国ASTMのD1347−72「メチルセルロースの標準テスト法(Standard Test Method for Methylcellulose)」の他、J.G.Coblerら,「ガスクロマトグラフィによるアルコキシ置換エーテルの決定(Determination of Alkoxyl Substitution Ether by Gas Chromatography)」,Talanta,1962,Vol.9,pp473−481によって測定できる。なお、上記置換度の分析方法以外にも、H−NMRや13C−NMR法等の別の測定方法で測定することも可能である。
【0012】
また、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をセルロースのグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上のヒドロキシプロピルメチルセルロースである。A/Bの値が0.305未満では、充分な熱ゲル強度が得られない。一方、A/Bの値の上限は、好ましくは0.37、より好ましくは0.35である。A/Bの値を大きくすれば熱ゲル強度を高くすることができる反面、溶解温度が25℃以下に低下してしまい、室温での溶解が困難となる場合がある。
【0013】
ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)は、グルコース単位の置換可能な3つの水酸基のうち、(1)2位、3位及び6位の炭素上の水酸基がメトキシル基に置換された場合の6位炭素上のメトキシル基の置換度、(2)2位及び6位の炭素上の水酸基がメトキシル基に置換され、3位炭素上の水酸基が非置換である場合の6位炭素上のメトキシル基の置換度、(3)3位及び6位の炭素上の水酸基がメトキシル基に置換され、2位炭素上の水酸基が非置換である場合の6位炭素上のメトキシル基の置換度、(4)6位の炭素上の水酸基がメトキシル基に置換され、2位及び3位炭素上の水酸基が非置換である場合の6位炭素上のメトキシル基の置換度の合計値をいう。また、セルロースのグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)は、(1)グルコース単位あたりにメトキシル基のみが置換した場合と、(2)同一グルコース中にメトキシル基と1つのヒドロキシプロポキシル基の両方を含む場合と、(3)グルコース単位あたりにヒドロキシプロポキシル基が置換し、該ヒドロキシプロポキシル基の水酸基部分が更にメトキシル基で置換された場合のメトキシル基の置換度の合計値をいう。
【0014】
ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)及びセルロースのグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)の測定方法は、Macromolecules,20,2413(1987)や繊維学会誌,40,T−504(1984)に記載されているように、セルロースエーテルを硫酸中で加水分解した後に中和して濾過精製したものを還元し、更にアセチル化して、13C−NMR、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーのうちのいずれかと質量分析装置を用いて同定した各々の検出グラフ特性から求めることができる。
【0015】
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースの熱ゲル化温度は、好ましくは64℃以上、更に好ましくは66℃以上、特に好ましくは68℃以上である。ここで、熱ゲル化温度とは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2質量%水溶液を1℃/分で加熱した際に、粘度が急激に低下し始める温度、すなわちゲル形成開始温度をいう。熱ゲル化温度が低いと加熱時に素早くゲル化させることができるが一方、熱ゲル化温度が低すぎると、一旦熱ゲル化した後に自然冷却した場合に再び溶液状に戻るまでに時間がかかるため、上記温度が好ましい。熱ゲル化温度の上限は、好ましくは75℃である。これより高すぎると、加熱によりゲル化が始まるまでに時間がかかり、目的とする保形性の向上が得られなくなる恐れがある。
【0016】
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースの重量平均重合度は、好ましくは10〜5000、更に好ましくは80〜4000,特に好ましくは350〜2000である。高分子論文集、Vol.39,No.4,293−298(1982)に記載の分子量測定方法に従い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーと光散乱法の組み合わせによる方法により重量平均分子量を測定し、単位ヒドロキシプロピルメチルセルロース分子当たりの分子量で除して重量平均重合度を測定することができる。なお、重量平均分子量の測定における溶媒の種類や条件、温度、使用カラムや光散乱装置の波長等は、前記高分子論文集に記載された条件に限定されるものでなく適宜選定できる。また、重量平均分子量は、超遠心分離方法や粘度平均分子量からの換算によって求めることも可能である。
重量平均重合度が10より低いと、添加剤として使用した場合に充分な熱ゲル強度が得られない恐れがあり、5000より高い場合には水溶液となった時の粘性が高くなりすぎて、操作性が悪い場合がある。なお、重量平均重合度が高い方が同一濃度水溶液での熱ゲル強度は高くなる傾向を示すが、低いものでも水溶液の濃度の調整により、必要な強度を得ることができる。
【0017】
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースは、加熱時の保形性を維持する目的で食品に添加することができる。その添加量としては、食品100質量部に対して好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.3〜2質量部である。添加量が0.1質量部より少ないとゲル強度が不足する場合があり、添加量が5質量部より多すぎると所望の食品の風味や固さや粘りを得られなくなる場合がある。
本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加する食品として、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースの熱ゲル化温度よりも高い温度での加熱を必要するものであり、加熱時にヒドロキシプロピルメチルセルロースがゲル化して形状を維持することが好ましい食品や保水性を高めて風味を維持したい食品が挙げられる。具体的には、成型ポテト、オニオンリング、コロッケ、ドーナッツ、パン等の加熱加工食品、加熱を必要とするフィリング、バッター等の冷凍食品を含む食品加工用材料が挙げられる。
【0018】
次に、本発明のヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法について、説明する。まず、パルプを水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液に所定量含浸させてアルカリ化して、アルカリセルロースを得る。
ここで、本発明に使用するパルプは、木材パルプ、リンターパルプ等、通常セルロースエーテルの原料となるものであり、粉末状、シート状、チップ状等の全てのパルプの形態が使用できる。また、パルプの重合度は目標とするセルロースエーテルの粘度に応じて適宜選択することができる。
【0019】
その後、必要量の塩化メチル等のメチルエーテル化剤及び酸化プロピレン等のヒドロキシプロピルエーテル化剤を反応させてヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造する。
ここで、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは置換可能な水酸基を3つ有しており、一般にメチルエーテル化はグルコース単位の2位炭素上水酸基、6位炭素上水酸基、3位炭素上水酸基の順に反応しやすく、ヒドロキシプロピルエーテル化はグルコース単位の6位炭素上水酸基で最も起こりやすい。そこで、優先的に6位炭素上水酸基をメチル化させ、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をセルロースのグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造するために、ヒドロキシプロピルエーテル化剤よりもメチルエーテル化剤を先行反応させる。
【0020】
具体的には、本発明の効果が奏するようにすべく、得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)を、反応に供したヒドロキシプロピルエーテル化剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)で除した値(C/D)が0.28以下、好ましくは0.26以下となるようにする。なお、C/Dの下限値は、好ましくは0.15、より好ましくは0.20である。C/Dの下限値が0.15を下回ると、熱ゲル強度の改善が認められず過剰のヒドロキシプロピルエーテル化剤を使用することとなり経済的に不利になる場合がある。
ここで、反応に供したヒドロキシプロピルエーテル化剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)は、反応に供したヒドロキシプロピルエーテル化剤のモル数を反応に供したセルロースパルプのグルコース単位のモル数で除した値である。
【0021】
メチルエーテル化剤による先行反応を行うことによって、競合するヒドロキシプロピルエーテル化剤のエーテル化反応効率は低下するので、反応に供したヒドロキシプロピルエーテル化剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)が増加する。従って、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)を、反応に供したヒドロキシプロピルエーテル化剤のヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)で除した値(C/D)を、メチルエーテル化剤先行反応の指標とすることができる。
【0022】
メチルエーテル化剤とヒドロキシプロピルエーテル化剤は、同時に添加してもメチルエーテル化剤を先に添加してもよいが、添加する合計のメチルエーテル化剤の反応率が50%以上の時点において、添加する合計のヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率が50%未満となるよう、又は添加する合計のメチルエーテル化剤を基準とする反応率が30%以上の時点において、添加する合計のヒドロキシプロピルエーテル化剤を基準とする反応率が30%未満となるようメチルエーテル化剤あるいはヒドロキシプロピルエーテル化剤を連続又は適宜仕込みながら製造するのが好ましい。ここで、メチルエーテル化剤の反応率とは、ストイチオメトリックな量に対する任意の時点の反応量のモル比をいう。例えば、塩化メチルの反応の場合は、塩化メチルが反応すると等モル量のアルカリが消費されるため、塩化メチルの反応率とは、反応機内初期アルカリ量に対する現時点のメチルエーテル化剤の反応量のモル比を表す。従って、最終的にアルカリに対してストイチオメトリックな量以上のメチルエーテル化剤を加えたとしても、その過剰分は反応率の計算には無関係である。同様に、ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率とは、最終的に反応機に加えた全量のヒドロキシプロピルエーテル化剤に対する現時点の反応量の比をいう。
【0023】
メチルエーテル化剤又はヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率は、反応機から素早くメチルエーテル化剤又はヒドロキシプロピルエーテル化剤を除去・回収することにより、その時点で反応機内に残留していたメチルエーテル化剤又はヒドロキシプロピルエーテル化剤の量を調べ、最終的に反応機に加えるはずだったメチルエーテル化剤又はヒドロキシプロピルエーテル化剤の量で除する方法(但し、メチルエーテル化剤はストイチオメトリックな量を基準とする)により求めることができる。また、実験により求められた化学反応速度式によるシミュレーションを用いることによっても求めることができる。
なお、ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応機への仕込み開始時期は、メチルエーテル化剤の反応率が好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上になってから開始する。
【0024】
メチルエーテル化剤とヒドロキシプロピルエーテル化剤との反応機への仕込み速度の比は、メチルエーテル化剤/ヒドロキシプロピルエーテル化剤としてモルベースで好ましくは3以上、更に好ましくは5以上、特に好ましくは15以上である。
また、メチルエーテル化剤の仕込み時間は5〜60分が好ましく、ヒドロキシプロピルエーテル化剤の仕込み時間は20〜80分が好ましい。但し、前記20〜80分には、メチルエーテル化剤仕込み開始からヒドロキシプロピルエーテル化剤を仕込み開始までの遅れ時間を含まない時間である。
更に、ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応機への仕込みは、メチルエーテル化剤仕込み開始から好ましくは0〜70分後、より好ましくは10〜60分後、更に好ましくは20〜60分後に開始するのが望ましい。
このような仕込み時間及び仕込みタイミングで行うことにより、ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応機への仕込み開始時期に、メチルエーテル化剤の反応率が好ましくは5%以上、特に好ましくは10%以上になってから開始することができる。
また、添加する合計のメチルエーテル化剤の反応率が50%以上の時点において、添加する合計のヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率が50%未満となるか又は添加する合計のメチルエーテル化剤を基準とする反応率が30%以上の時点において、添加する合計のヒドロキシプロピルエーテル化剤を基準とする反応率が30%未満となる。その結果、グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0であり、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.05〜0.4であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを製造することができる。
【0025】
エーテル化反応の温度は、C/Dが本発明の値となれば特に制限はないが、好ましくは、反応初期(いずれかのエーテル化剤の供給開始時点)が50〜80℃の範囲であり、0.5時間後に50〜80℃の範囲、1時間後に55〜90℃の範囲、1.5時間後に65〜110℃の範囲、2時間後に80〜110℃の範囲にする。その後は、好ましくは80〜110℃を保持する。上記スケジュールにかかわらずエーテル化反応が完結した時点で反応を終了してよい。
なお、本発明に使用するエーテル化反応におけるC/D値、メチルエーテル化剤とヒドロキシプロピルエーテル化剤の仕込み方法以外の製造条件は、公知の方法を使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
木材由来の日本製紙社製の高純度溶解パルプをローラーミルにより粉砕し、目開き600μmの篩を通過させ、栗本製作所製の2軸混練機KRCニーダーS1型(パドル径25mm、外径255mm、L/D=10.2、内容積0.12リットル、回転数100rpm)に10g/分で定量供給し、同時に49質量%水酸化ナトリウム溶液をパルプ供給口に設けた注入口より13.7g/分で定量供給しセルロースにアルカリ水溶液を付加したアルカリセルロースを得た。約30分間の連続運転により得られたアルカリセルロースのうち、561g(セルロース分230g)をプロシェア型内部攪拌羽つきの圧力容器に仕込み、−97kPaまで減圧後、窒素を封入して大気圧まで戻した。更に、−97kPaまで再減圧した。
次に、加圧ポンプを用いて塩化メチル210gを30分間で反応機に仕込んだ。塩化メチル仕込み開始から10分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への仕込みを開始した。酸化プロピレンは95gを50分間で反応機に仕込んだ。反応機の内温は50〜80℃からスタートし0.5時間後に50〜80℃の範囲、1時間後に55〜90℃の範囲、1.5時間後に65〜110℃の範囲、2時間後に80〜110℃の範囲になるよう調節されエーテル化反応を完結させた。サンプリングのために同じ条件で別途行った実験では、酸化プロピレン仕込み開始時点の塩化メチルの反応率は5%だった。
塩化メチル仕込み開始から40分後の時点において、塩化メチルの反応率は30%、酸化プロピレンの反応率は20%だった。塩化メチル仕込み開始から60分後の時点において、塩化メチルの反応率は50%、酸化プロピレンの反応率は48%だった。塩化メチル/酸化プロピレン仕込み速度比は5.50だった。
反応物を95℃以上の熱水にて洗浄し、乾燥して小型ウィリーミルにて乾燥した。第15改正日本薬局方記載のヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の置換度分析方法により分析し、メトキシル基の平均置換度1.44、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度0.24のヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)を反応に供したヒドロキシプロピルエーテル化剤のセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)で除した値(C/D)は、0.27であった。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロース50mgに3質量%の硫酸水溶液2mlを加え140℃にて3時間加水分解を行った後、炭酸バリウムを約0.7g加えて中和した。3mlのメタノールを加えて加水分解物を溶解分散し、500Gにて遠心分離した後に、上澄み液を0.45μmの目開きのフィルターで濾過した。1.5gのNaBHを0.2規定のNaOH水溶液10ml中に溶かした溶液120μlを加えて、グルコース環の還元を37〜38℃にて1時間行い、酢酸100μlを加えた後、溶媒を乾固させ、ピリジン1ml、無水酢酸0.5mlを加えて120℃にて1.5時間アセチル化した。500Gにて遠心分離した後に、上澄み液を0.45μmの目開きのフィルターで濾過した。再び溶媒を除去し、ジエチレングリコールジメチルエーテル1mlに再溶解した後、150〜280℃に昇温したJ&W社のDB−5カラムに1μlを通し、FID検出器にて各分解成分の保持時間を測定した。予め各検出ピークについて質量分析装置にて分解成分の構造を同定したピークによる同定と面積比により、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)とセルロースのグルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度(B)を求め、(A/B)を算出したところ0.307であった。
なお、熱ゲル強度は、得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの10質量%水溶液を調製した後、50mlのビーカー内に入れ90℃のバス内で40分間熱ゲル化させ、レオテック社製のレオメーターによりゲルの上部より、20mm直径の円盤型プランジャーを2cm/分にて2cm貫入させた時にかかる最大の力を測定し円盤の面積で除した値により求めた。
【0027】
[実施例2]
塩化メチル仕込み開始から20分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への仕込みを開始し、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.24になるように酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0028】
[実施例3]
塩化メチル仕込み開始から30分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への仕込みを開始し、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.24になるように酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0029】
[実施例4]
塩化メチル仕込み開始から30分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンを40分かけて仕込み、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.24になるように酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0030】
[実施例5]
塩化メチル仕込み開始から30分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンを60分かけて仕込み、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.24になるよう酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0031】
[実施例6]
塩化メチル仕込み開始と同時に酸化プロピレンの仕込みを開始し、ヒドロキシプロポキシル基が0.24になるよう酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0032】
[実施例7]
塩化メチル仕込み開始と同時に酸化プロピレンの仕込みを開始し、塩化メチルの仕込み時間を5分とする以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0033】
[実施例8]
塩化メチル仕込み開始から30分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への仕込みを開始し、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.14になるように酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0034】
[実施例9]
アルカリセルロース製造の際の49質量%水酸化ナトリウム溶液の供給速度を14.5g/分、プロシェア型内部攪拌羽つきの圧力容器に仕込むアルカリセルロースの量を607g(セルロース分230g)、塩化メチルの仕込量を240g、塩化メチル仕込み開始から30分後に加圧ポンプを用いて酸化プロピレンの反応機への仕込みを開始し、ヒドロキシプロポキシル基の平均置換度が0.10になるように酸化プロピレンの総仕込量を調節する以外は、実施例1と同様に行った。結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
[実施例10]
実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、特開2005−348721号公報の実施例1に記載されている以下のようにして凍結乾燥の豆腐を調製した。
豆乳粉(第一タンパク社製)200g、アルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)2.0g、寒天(伊那食品社製)1.5g、実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロース5.0gをよく混合した。これに熱水150gを加えて、30分間煮沸水浴中で攪拌した。次いで、この分散液を15℃以下まで攪拌しながら冷却した。凝固剤として硫酸カルシウム(和光純薬社製)6質量%水溶液を15g加えて攪拌し、ガーゼでろ過した。ろ液を市販の製氷皿に流し、30分間沸騰水浴中にて加熱した。これを冷却し、−40℃で20時間凍結させた後、真空下で乾燥させることにより、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び寒天入り凍結乾燥豆腐を作製した。このヒドロキシプロピルメチルセルロース及び寒天入り凍結乾燥豆腐(5×3×3cm)に熱水を加えたところ、湯戻し時、また湯戻し後冷却時に形状を保っていた。また実際に食してみたところ、湯戻りもよく、生の絹ごし豆腐のようなツルッとした優れた食感を呈していた。
【0037】
[実施例11]
実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、以下のように成型ポテトを作成した。
実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース2.5g、食塩3.0gコショウ3.0gをよく混合した。
一方、ジャガイモの皮をむき、茹でて潰した500gのジャガイモを作成した。このジャガイモの品温が80℃の時に、塩・コショウと混合した実施例1のヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加し、滑らかに、かつ均一に混ざるまでよく攪拌した。
攪拌した後、30g/個に分割し、任意の形に成型をし、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む成型ポテトを作成した。このヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む成型ポテトを180℃の調理油で3分間油調したところ、成型された形が崩れることがなく、成型ポテトの表面に割れも見られなかった。
【0038】
[比較例1]
グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.43であり、グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.23であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.300であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる以外は、実施例11と同様に成型ポテトを作成した。このポテトを180℃の調理油で3分間油調したところ、成型された形が崩れることは無かったが、成型ポテトの表面に割れ目が見られた。
【0039】
[実施例12]
実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、以下のように、カスタードクリームフィリングを作成した。
(フィリングの作成)
実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5g、グラニュー糖2.8gをよく粉体混合した。タピオカスターチ(日本食品化工社製)2.0gを水9.0gに分散させた
一方、牛乳62.2gにグラニュー糖14.0g及び卵黄9.0gを加えて沸騰させ、ここにグラニュー糖と実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを混合したものを加えて均一に分散させた。更に、水に分散させたタピオカスターチを加えて加熱攪拌し、均一に分散させた後に、ラム酒0.4g、バニラエッセンス0.1gを加えて、15℃まで冷却し、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むカスタードクリームフィリングを作成した。このカスタードクリームフィリングの水分を測定したところ27%であった。
なお、カスタードクリームフィリング中の水分は、作成したカスタードクリームのうち5gを105℃のオーブンで2時間乾燥させ、乾燥した減量を水分として計算した。
(フィリングの評価)
強力粉250g、ドライイースト5g、砂糖20g、塩5g、ショートニング20gを混合したところに、卵50g及び牛乳120gを混合したものを加えて、均一にまとまるまで混練した。作成した生地を50g/個に分割し、生地が2倍に膨らむまで35℃で発酵させた。
発酵させた生地を小判型に伸ばし、中心部に実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むカスタードクリームフィリング25gをのせ、生地を半分に折りたたんで開口部を押さえて閉じ、クリームパンを作成した。このクリームパンを180℃に温めたオーブンにいれ、20分間焼成した。焼成後も中に充填したクリームが外側にはみ出すことがなかった。また、焼成後のクリームパンの中のクリームの水分を実施例12と同様の方法により測定したところ26%であり、焼成中のクリームからの水分蒸発が抑えられていた。
【0040】
[比較例2]
グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.43であり、グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.23であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.300であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる以外は、実施例12と同様にクリームパンを作成した。
このクリームパンを180℃のオーブンで20分間焼成したところ、焼成後も中に充填したクリームが外側にはみ出すことがなかったが、焼成後のクリームパンの中のクリームの水分を測定したところ23%であり、焼成中のクリームから水分が蒸発しており、実施例12で作成したクリームに比べて乾燥した食感になっていた。
【0041】
[実施例13]
実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、以下のように、グルテンフリーパンを作成した。
製菓用米粉200g(群馬製粉)、タピオカスターチ50g(日本食品化工)、実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロース5.0g、食塩5.0g、砂糖20g、スキムミルク10g、ショートニング17.5gをよく混合した。220gのぬるま湯(35℃)に10.0gのドライイーストを溶解したものを混合した粉体に加え、均一になるまでハンドミキサーでよく攪拌した。均一になった生地を縦8cm、横18cm、高さ8cmの型に流し、2倍の大きさになるまで発酵器を用いて発酵させた。発酵後の生地を210℃に温めたオーブンで20分間加熱して、焼成後に型から取り出し、実施例1で選択されるヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むグルテンフリーパンを作成した。焼成後のパンの高さは10cmであった。
【0042】
[比較例3]
グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.43であり、グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.23であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.300であるヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いる以外は、実施例13と同様にグルテンフリーパンを作成した。
焼成後のパンの高さは8.5cmであり、実施例13と比較してヒドロキシプロピルメチルセルロースのゲル強度が低いために、気泡の合一化が見られ、実施例13で作成したパンよりも硬い食感であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0であり、グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.05〜0.4であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【請求項2】
熱ゲル化温度が64℃以上である請求項1に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む食品。
【請求項4】
パルプをアルカリと反応させてアルカリセルロースを得る工程と、
上記アルカリセルロースにメチルエーテル化剤及びヒドロキシプロピルエーテル化剤を添加して反応させヒドロキシプロピルメチルセルロースを得る工程であって、該メチルエーテル化剤の反応率が50%以上の時点における該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率が50%未満、又は該メチルエーテル化剤の反応率が30%以上の時点における該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の反応率が30%未満となるように、該メチルエーテル化剤と該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の添加速度を調整し、上記ヒドロキシプロピルエーテル化剤が、上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)を、該ヒドロキシプロピルエーテル化剤の上記ヒドロキシプロピルメチルセルロースのグルコース単位あたりのモル数(D)で除した値(C/D)を0.28以下とする工程と
を少なくとも含み、
グルコース単位あたりのメトキシル基の平均置換度が1.0〜2.0であり、上記グルコース単位あたりのヒドロキシプロポキシル基の平均置換度(C)が0.05〜0.4であるヒドロキシプロピルメチルセルロースであって、ヒドロキシプロポキシル基により置換された水酸基がないグルコース単位の6位炭素上の水酸基に直接置換しているメトキシル基の置換度(A)をグルコース単位あたりのメトキシル基の置換度(B)で除した値(A/B)が0.305以上であるヒドロキシプロピルメチルセルロースの製造方法。

【公開番号】特開2011−144350(P2011−144350A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144889(P2010−144889)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】