説明

高められたブリックスを有する植物を生産するための方法および組成物

本発明は、リコペルシコン・エスキュレンタム(Lycopersicon esculentum)およびリコペルシコン・ヒルスタム(Lycopersicon hirsutum)の間の交配後の遺伝子移入を含む子孫における、連鎖するが望ましくない農業的特性からの高められたブリックスの分離に関連する組成物および方法を提供する。さらに、本発明は、高められたブリックス特性に遺伝学的に連鎖する望ましくない農業的特性を規定する対立遺伝子を含まない、かかる高められたブリックスを含む植物、植物部分および種子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体の開示を出典明示して本明細書の一部とみなす、2009年8月31日に出願した米国仮特許出願第61/238,577に基づく優先権を主張する。
【0002】
配列表の取り込み
本開示の一部である配列表には、EFS-Web経由で送信された本発明のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を含む"SEMS096WO_ST25.txt"と題された2010年8月31日に作成したコンピュータ読み取り可能な14キロバイトのファイルが含まれる。配列表の主題は、その全体を出典明示して本明細書の一部とみなす。
【0003】
本発明は、植物育種の分野に、および、より詳細には、高められたブリックスを有するトマト植物を生産するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0004】
一般的なトマトである、リコペルシコン・エスキュレンタム(ミル),シノニム・ソラナム・リコペルシカム(Lycopersicon esculentum (Mill),syn. Solanum lycopersicum)は国内外で広く栽培されている。米国では毎年約50万エーカーのトマトが栽培され、そのうちの約40%は、処理のために成長のバランスで、新鮮な市場の消費のために栽培されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トマトの育種の一つの重要な目標は、単一の品種/雑種に様々な望ましい特性を組み合わせることである。そのような望ましい特性は、より高い収量、病気、昆虫または他の害虫に対する抵抗性、高温および干ばつに対する耐性、優れた農業品質、より高い栄養価、強化された成長率および改良された果実特性を含む。これまでの育種の努力は有益な特性を有する多数の有用なトマト系統および品種の数を提供しているが、さらに改良された特性を有する新しい系統や品種に対する当該技術分野における必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1の態様において、本発明は、高められたブリックスを付与するリコペルシコン・ヒルスタム(Lycopersicon hirsutum)のhir4対立遺伝子を含むトマト植物を提供し、ここに該植物は、貧弱な植物習性を付与するリコペルシコン・ヒルスタムのhir4対立遺伝子に遺伝学的に連鎖する対立遺伝子を欠いている。特定の実施形態において、トマト植物はhir4対立遺伝子を含む。
【0007】
別の態様において、本発明は、本発明のトマト植物または植物の一部分を提供する。特定の実施形態において、植物の部分は、細胞、種子、根、茎、葉、果実、花または花粉である。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、高められたブリックスを含むトマト植物を得るための方法を提供し、かかる方法は:(a)高められたブリックスを付与し、貧弱な植物習性を付与するリコペルシコン・ヒルスタム対立遺伝子に植物において遺伝学的に連鎖するリコペルシコン・ヒルスタムからのhir4対立遺伝子に対してヘテロ接合性のトマト植物を得、ここに、該植物はリコペルシコン・エスキュレンタムにおける対応する遺伝子座に対してヘテロ接合性であり;(b)該植物の子孫を得;ついで(c)子孫がhir4対立遺伝子を含むが貧弱な植物の習性を付与する対立遺伝子は含まないように遺伝子組換えが起こった少なくとも第1の子孫を選択することを含む。この方法によって生産される植物も提供する。例えば、上昇したブリックスを付与し、貧弱な植物の習性を付与するそれに遺伝学的に連鎖したリコペルシコン・ヒルスタム対立遺伝子を欠くリコペルシコン・ヒルスタムからのhir4対立遺伝子を含む、本発明によって生産される植物またはその一部分が本発明によって提供される。
【0009】
1の実施形態において、子孫植物を選択することは、(1)リコペルシコン・ヒルスタムにおけるhir4対立遺伝子に遺伝学的に連鎖した遺伝子マーカーを含み、および/または、リコペルシコン・エスキュレンタムからの対応する遺伝子座に存在する遺伝子マーカーを欠き、および(2)リコペルシコン・ヒルスタムにおける貧弱な植物の習性を付与する対立遺伝子に遺伝学的に連鎖した遺伝子マーカーを欠き、および/または、リコペルシコン・エスキュレンタムからの対応する遺伝子座に存在する遺伝子マーカーを含む子孫植物を同定することを含む。もう1の実施形態において、子孫植物を選択することは、TG155対立遺伝子、ANTL対立遺伝子、C2_At3gl6150対立遺伝子、cTOE-6-D11対立遺伝子、CT50対立遺伝子、C2_At4g33350対立遺伝子、CT73対立遺伝子、TG443対立遺伝子、TG500対立遺伝子、NL0233688対立遺伝子、NL0233750対立遺伝子、NL0233794対立遺伝子、NL0233797対立遺伝子、NL0233922対立遺伝子、NL0234257対立遺伝子、NL0234328対立遺伝子、NL0234071対立遺伝子、NL0234055対立遺伝子、NL0233999対立遺伝子およびNL0215788対立遺伝子よりなる群から選択される少なくとも1の対立遺伝子を検出することを含む。
【0010】
さらなる実施形態において、選択した対立遺伝子はオリゴヌクレオチド・プライマー対(またはその複数)を用いるPCRベースの方法によって検出する。例えば、TG155対立遺伝子は、配列番号:1および配列番号:2を含むプライマー対を用いて検出し得;ANTL対立遺伝子は、配列番号:9および配列番号:10を含むプライマー対を用いて検出し得;C2_At3gl6150対立遺伝子は、配列番号:11および配列番号:12を含むプライマー対を用いて検出し得;cTOE-6-D11対立遺伝子は、配列番号:13および配列番号:14を含むプライマー対を用いて検出し得;CT50対立遺伝子は、配列番号:15および配列番号:16を含むプライマー対を用いて検出し得;C2_At4g33350対立遺伝子は、配列番号:17および配列番号:18を含むプライマー対を用いて検出し得;CT73対立遺伝子は、配列番号:19および配列番号:20を含むプライマー対を用いて検出し得;TG443対立遺伝子は、配列番号:21および配列番号:22を含むプライマー対を用いて検出し得;TG500対立遺伝子は、配列番号:5および配列番号:6を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0233688対立遺伝子は、配列番号:23および配列番号:24を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0233750対立遺伝子は、配列番号:27および配列番号:28を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0233794対立遺伝子は、配列番号:31および配列番号:32を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0233797対立遺伝子は、配列番号:35および配列番号:36を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0233922対立遺伝子は、配列番号:39および配列番号:40を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0234257対立遺伝子は、配列番号:43および配列番号:44を含むプライマー対を用いて検出し得;NL0234328対立遺伝子は、配列番号:47および配列番号:48を含むプライマー対を用いて検出し得;またはNL0234071対立遺伝子は、配列番号:51および配列番号:52を含むプライマー対を用いて検出し得る。
【0011】
他の実施形態において、選択した対立遺伝子は、配列番号:55-56;配列番号:57-58;配列番号:59-60;配列番号:61-62;および/または配列番号:63-64の間で規定される多型の存在を検出するように設計されたオリゴヌクレオチド・プライマー対(またはその複数)を用いるPCRベースの方法によって検出する。特定の実施形態において、対立遺伝子を検出することは、配列番号:55または配列番号:56のヌクレオチド46;配列番号:57または配列番号:58のヌクレオチド61;配列番号:59または配列番号:60のヌクレオチド61;配列番号:61または配列番号:62のヌクレオチド61;または配列番号:63または配列番号:64のヌクレオチド61に対応する遺伝子移入エル・ヒルスタム配列中のポジションの単一ヌクレオチド多型を検出することを含む。
【0012】
他の実施形態において、NL0234055対立遺伝子は、配列番号:55および/または配列番号:56内の配列を増幅するように設計したプライマー対を用いて検出し得;NL0234071対立遺伝子は、配列番号:57および/または配列番号:58内の配列を増幅するように設計したプライマー対を用いて検出し得;NL0234257対立遺伝子は、配列番号:59および/または配列番号:60内の配列を増幅するように設計したプライマー対を用いて検出し得;NL0233999対立遺伝子は、配列番号:61および/または配列番号:62内の配列を増幅するように設計したプライマー対を用いて検出し得;またはNL0215788対立遺伝子は、配列番号:63および/または配列番号:64内の配列を増幅するように設計したプライマー対を用いて検出し得る。
【0013】
いまだもう1の態様において、本発明は、高められたブリックスを付与するリコペルシコン・ヒルスタムのhir4対立遺伝子を含む染色体セグメントを植物に遺伝子移入することを含む、高められたブリックを含むトマト植物を生産する方法を提供し、ここに、該セグメントは、貧弱な植物の習性を付与するリコペルシコン・ヒルスタムのhir4対立遺伝子に遺伝学的に連鎖した第2の対立遺伝子を欠いている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、左側に示されている基準点として作用するDNAマーカーを含むトマト第4染色体を示している。公的に利用可能なTomato−EXPENN2000マップ(SOLゲノミックス・ネットワーク、コーネル大学)からのマーカー位置(cM)が、染色体の右側に示されている。右側の吹き出しセグメントは、マーカーTG155およびTG500によって描かれる、PSQ−24−2189に改良されたTA517 hir4遺伝子移入の場所につづく精密なマッピングの努力をとおして復元されたhir4組換体クラスを示す。白いバーはリコペルシコン・エスキュレンタム対立遺伝子を示し、灰色のバーは、リコペルシコン・ヒルスタム対立遺伝子を示す。組換えのブレークポイントは、マーカー遺伝子型情報に基づく推計値である。別の組換体クラスは文字で示し、それぞれの組換体クラス内で同定されたF3植物の数は、各セグメントの最下部に記載している。
【0015】
【図2A−2D】図2A-Dは、組換体クラスのチリの圃場試験からのブリックスおよび植物習性データを示す:A)クラスAとA'との間のブリックスおよび植物習性データの比較;B)クラスAとクラスB'、C'、D'およびE'の平均との間のブリックスおよび植物習性データの比較;C)クラスB、DおよびEの平均とクラスB'、C'、D'およびE'の平均との間のブリックスおよび植物習性データの比較;D)各クラスについてブリックスおよび植物習性について認められた平均値を表す。ブリックスレベルは、%可溶性固形物として報告し、植物習性は数字スケールで等級付けする(1=許容し得る植物習性および9=貧弱な植物習性)。すべてのエラーバーは標準偏差を表す。
【0016】
【図3A−3G】図3A-Gは、個々の植物のチリの圃場試験からのブリックスおよび植物習性データを示す。2の固定した遺伝子型クラスの子孫は各分離しているヘテロ接合性の組換体系統から同定され、そのうちの1は遺伝子移入領域中のエル・ヒルスタム対立遺伝子(「hir」)について、1は遺伝子移入中のエル・エスキュレンタム対立遺伝子(陰性対照、「esc」と命名する)について固定していた。ブリックスレベルは%可溶性固形物として報告し、植物習性は数字スケールで等級付けする(1=許容し得る植物習性および9=貧弱な植物習性)。
【0017】
【図4A−4B】図4A-Bは、組換体クラスについてのカリフォルニア州ウッドランド圃場試験からのブリックスおよび植物習性データを示す:A)クラスAとA'との間のブリックスおよび植物習性データの比較;B)は各クラスについてのブリックスおよび植物習性について認められた平均値を表す。ブリックスレベルは%可溶性固形物として報告し、植物習性は数字スケールで等級付けする(1=許容し得る植物習性および9=貧弱な植物習性)。すべてのエラーバーは標準偏差を表す。
【0018】
【図5A−5K】図5A-Kは、個々の植物についてのカリフォルニア州ウッドランド圃場試験からのブリックスおよび植物習性データを示す。2の固定した遺伝子型クラスの子孫は各分離しているヘテロ接合性の組換体系統から同定され、そのうちの1は遺伝子移入領域中のエル・ヒルスタム対立遺伝子(「hir」)について、1は遺伝子移入中のエル・エスキュレンタム対立遺伝子(陰性対照、「esc」と命名する)について固定していた。ブリックスレベルは%可溶性固形物として報告し、植物習性は数字スケールで等級付けする(1=許容し得る植物習性および9=貧弱な植物習性)。すべてのエラーバーは標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、下記の組換体遺伝子移入を含む植物が、高められたブリックス特性と一緒に以前に移行された貧弱な植物習性のような望ましくない農業特性を示すこともなく、高められたレベルのブリックスを示すような、リコペルシコン・ヒルスタムからの遺伝子移入、例えばhir4対立遺伝子(またはその複数)を含むトマト(リコペルシコン・エスキュレンタム)の植物、種子および誘導体に関連する方法および組成物を提供する。hir4対立遺伝子(またはその複数)を含む系統は知られており、例えば、合衆国カリフォルニア州95616、デービス、ワン・シールズ・アベニューにあるカリフォルニア大学デービス校のTomato Genetics Resource Center(http://tgrc.ucdavis.edu;植物科学学科、メールストップ3)から入手可能である。
【0020】
特定の実施形態において、本発明は、高められたレベルのブリックスを付与するhir4対立遺伝子を保有するが貧弱な植物習性に関連するリコペルシコン・ヒルスタム由来の対立遺伝子は欠いている組換体遺伝子移入を含むトマト植物に関する。特定の実施形態において、かかる系統の植物の部分も意図され、それには細胞、胚、種子、根、茎、葉、果実、花および花粉が含まれる。
【0021】
本発明のもう1の態様は少なくとも1の組換体リコペルシコン・ヒルスタム遺伝子移入を含むトマト植物を得るための方法を提供し、ここに該トマト植物は高められたレベルのブリックスを示すが、貧弱な植物習性は欠いている。特定の実施形態において、かかる植物を得るための方法は、リコペルシコン・ヒルスタムからのhir4対立遺伝子(またはその複数)についてヘテロ接合性であるトマト植物を得、かかる植物から子孫を得、ついで、1またはそれを超えるかかる子孫植物を選択することを含み、ここに、驚くべきことには、子孫がhir4対立遺伝子を含むが貧弱な植物習性を付与する対立遺伝子は含まないような遺伝子組換えが生じる。
【0022】
特定の実施形態において、本発明は、hir4対立遺伝子(またはその複数)に遺伝学的に連鎖する1またはそれを超える遺伝子マーカーを同定することによってかかる対立遺伝子(またはその複数)を含む子孫植物を得ることを含む方法を提供する。遺伝子マーカーを同定することは、表現型、遺伝学的、または生化学的な試験を含み、本明細書に記載する1またはそれを超える対立遺伝子の存在について親および/または子孫植物をスクリーニングすることを含み得、それは、例えば、リコペルシコン・ヒルスタムからのマーカーTG155、ANTL、NL0233688、NL0233750、NL0233794、NL0233797、NL0233922、NL0234257、NL0234328およびNL0234071の1またはそれを超える対立遺伝子ならびにリコペルシコン・エスキュレンタムからのマーカーC2_At3gl6150の1またはそれを超える対立遺伝子が含まれる。NL0234055、NL0233999およびNL0215788を含む関心のある他のマーカーの対立遺伝子の存在も検出し得る。特定の実施形態において、2またはそれを超える遺伝子マーカーの存在をスクリーニングし得る。
【0023】
特定の実施形態において、本発明の方法は、マーカーTG155およびTG500の間およびそれらの1またはそれを超えるものを含ンでマッピングされる、リコペルシコン・ヒルスタム由来の遺伝子移入を含むトマト植物を同定することを含み、ここに該遺伝子移入は高められたレベルのブリックスを付与し、貧弱な植物習性のような望ましくない特性を付与する対立遺伝子を欠く。詳細な実施形態において、該方法は、以下の遺伝子座:TG155、ANTL、NL0233688、NL0233750、NL0233794、NL0233797、NL0233922、NL0234257、NL0234328、NL0234071、NL0234055、NL0233999およびNL0215788のうちの1またはそれを超えるものにリコペルシコン・ヒルスタム対立遺伝子(またはその複数);および/または以下の遺伝子座:C2_At3gl6150 cTOE-6-D11および-CT50のうちの1またはそれを超えるものにリコペルシコン・エスキュレンタム対立遺伝子(またはその複数)を含むトマト植物を同定することを含み、それは高められたレベルのブリックスおよび貧弱な植物習性の不存在を示す。
【0024】
改良されたトマト風味に関連付けされている定量的に測定可能な特性は糖質および酸を含み、併せて総可溶性固形物(TSS)またはブリックスと呼ばれる(Fultonら,2002;Malundoら,1995)。野生種のトマトにおけるブリックスレベルは、果実新鮮重量の15%も高いことが報告されており、これは栽培トマト品種のもののほぼ3倍である(Fridmanら,2000)。しかしながら、現在まで、リコペルシコン・ヒルスタムからのもののように高められたブリックスと関連する幾つかのQTLは、貧弱な植物習性の望ましくない特性と関連付けられている。これらの望ましくない特性の存在は、トマト植物におけるこのソースからのブリックスの上昇の適用を妨げている。しかしながら、本発明は、リコペルシコン・ヒルスタムからの高められたブリックスおよび有害な特性の非干渉化を初めて許容する。したがって、本発明は、高められたブリックスを付与するリコペルシコン・ヒルスタムからの遺伝子移入領域を含むが、望ましくない特性についてのQTLを含むリコペルシコン・ヒルスタム由来の領域を欠く組換体子孫トマト植物の効率的なスクリーニングおよび同定を許容する。
【0025】
「組換体」遺伝子移入の形成は、hir4 QTL(またはその複数)に極めて近くの組換え事象(またはその複数)によって引き起こされると理解される。組換体遺伝子移入を含む植物、すなわち、高められたブリックスを規定するQTLに近い組換え事象を受けた植物は、本明細書に提供する方法に従って分子および/または表現型マーカーを用いることによって効率的にスクリーニングし得る。したがって、hir4遺伝子移入によって規定されるQTLに関して分離する(すなわち、ヘテロ接合性である)植物集団またはかかる集団の子孫は、稀な組換体表現型を有する植物についてスクリーニングし得る。かかる植物は本明細書に記載するリコペルシコン・ヒルスタムのQTL(またはその複数)に関する貧弱な植物の習性特性を欠くことと組み合わせて高められたブリックスを提供し得る。
【0026】
A.高められたレベルのブリックスを示すトマト系統の育種
【0027】
本発明の1の態様は、高められたレベルのブリックスを付与する組換体リコペルシコン・ヒルスタム遺伝子移入を含むトマト系統とそれ自体または第2の植物とを交配する方法、ならびにかかる方法によって生産した種子および植物に関する。これらの方法は、以前は高められたブリックス特性と関連していた農学的に望ましくない特性なしに高められたレベルのブリックスを示す栽培トマト系統および雑種の生産および繁殖に使用し得る。
【0028】
本発明によれば、高められたブリックス系統につづいて望ましい選択の世代を交配し、ついで均一な系統の発育について同系交配することによって新規な品種を創製し得る。新しい品種は、いずれかの第2の植物と交配することによっても創製し得る。新規な系統を発達させるための交配にかかる第2の植物を選択することにおいては、それ自体が1またはそれを超える選択した望ましい特徴を示すか、または雑種組合せにある場合に望ましい特徴(またはその複数)を示す植物を選択することが望ましい場合がある。最初の交配を行えば、同系交配および選択をつづいて用いて新しい品種を生産する。均一な系統を発達のために、5またはそれを超える世代の自家受粉および選択が典型的である場合もある。
【0029】
新しい品種の均一な系統は、二重の半数体によっても開発し得る。この技術は、複数世代の自家受粉および選択を必要とすることなく真性の育種系統の創製を許容する。このようにして、真性の育種系統を1の世代において生産し得る。半数体の胚は小胞子、花粉、葯培養物または子房の培養物から生産し得る。ついで、半数体胚を自律的または化学処理(例えば、コルヒチン処理)によって倍加し得る。別法として、半数体胚を半数体植物に生育させ、染色体倍加を誘導する処理をし得る。いずれの場合においても、繁殖可能なホモ接合性の植物が得られる。本発明によれば、ホモ接合性の系統を達成するために本発明の高められたブリックス系統またはその子孫に関連して、かかるいずれの技術も使用し得る。
【0030】
戻し交配を用いても同系繁殖体植物を改良し得る。戻し交配は高められたブリックスのような特定の望ましい特性を、1の同系繁殖体または非−同系繁殖体ソースからその特性を欠く同系繁殖体に移行する。これは、例えば、優れた同系繁殖体(反復親)を、問題の特性について適当な遺伝子座または複数の遺伝子座を担っているドナーソース(非−反復親)に最初に交配することによって行い得る。ついで、この交配の子孫を優れた反復親に戻し交配し、つづいて非−反復親から移行されるべき望ましい特性について得られた子孫を選択する。望ましい特性について選択した5またはそれを超える戻し交配世代後は、子孫は移行された特徴を制御する遺伝子座についてヘテロ接合性であるが、大部分またはほぼ全ての他の遺伝子座については優れた親と同様である。最後の戻し交配世代は自家受粉して、移行する特性について純粋な育種子孫を得る。このようにして、本発明により提供される組換え対立遺伝子は、いずれのトマト遺伝子型にも遺伝子移入し得る。
【0031】
同様に、エリート植物品種背景へのドナー植物からの対立遺伝子の組込みによる改良された特性を持つトマト品種の開発は、Advanced Backcross QTL (AB-QTL) 解析(TanksleyおよびNelson,1996)方法に続いて微細マッピング解析を用いて効率的に達成できる。高度な戻し交配QTL解析は、ドナー生殖質からの潜在的に有用な対立遺伝子の同時の同定、およびマーカー利用選択を用いるエリート育種材料への対立遺伝子の組込みを可能とする育種戦略である。AB-QTL解析は野生×エリート雑種の生成に続いての分子マーカーおよび表現型選択と結び付けたエリート親への一連の戻し交配を介して達成される。戻し交配集団は、望ましい特性のためのQTL解析に付され、エリート品種遺伝的背景に遺伝子移入される有用なドナー対立遺伝子を含むゲノム領域を同定し、準同質遺伝子系統(NIL)を創製する。最終的には、NILおよびエリート親対照は、繰り返された圃場試験における特性につき評価される(Bernacchiら,1998a)。AB-QTL解析に加えて、引き続いての微細マッピング解析をしばしば用いて、注目する特性に影響を及ぼす対立遺伝子を正確に示し、望ましくない対立遺伝子への連鎖を除去する。これは低減された重複する遺伝子移入を持つサブNILを生成するさらなる戻し交配によって達成され、これは、さらに所望の特性に寄与する遺伝子移入セグメントをより正確に規定するためにQTL解析および分子マーカーにより特徴付けられる。
【0032】
適切な反復親の選択は、成功した戻し交配手順のための重要な段階である。戻し交配プロトコールの目的は、元来の品種の単一の特性または特徴を改変または置換することである。これを達成するために、残りの所望の遺伝子のすべて、したがって、元来の品種の所望の生理的および形態学的な構成を本質的に保持しつつ、反復品種の単一遺伝子座は、非反復親から所望の遺伝子座で改変または置換される。特定の非反復親の選択は、戻し交配の目的に依存するであろう;主要目的の1つは植物に商業上望ましい特性を加えることである。正確な戻し交配プロトコールは、適切な試験プロトコールを決定するために改変される特性または形質に依存するであろう。転移させる特性が優性対立遺伝子である場合の戻し交配方法は単純化されるが、劣性対立遺伝子も転移し得る。この場合には、所望の特性が成功裡に転移したかを決定する子孫の試験を導入することが必要であり得る。
【0033】
また、トマト品種は、2を超える親から発生できる。改変戻し交配として知られる技術は、戻し交配の間に異なる反復親を用いる。改変戻し交配を用いて、元来の反復親をある種のより望ましい特性を有する品種と置換し得るか、または複数の親を用いて、各々とは異なる望ましい特性を得ることもできる。
【0034】
新しい同系交配の開発において規則的には選択されないが、戻し交配技術によって改良できる多数の単一遺伝子座特性が同定されている。単一遺伝子座特性は、遺伝子組み換えである得;これらの例には、限定されるものではないが、除草剤抵抗性、細菌、菌類またはウィルス病に対する抵抗性、耐虫性、改変した脂肪酸または炭水化物の代謝、および改変した栄養価が含まれる。これらは、核を介して一般的に遺伝した遺伝子を含む。
【0035】
単一遺伝子座が優性特性として作用する場合に、直接選択が適用し得る。育種用トマト植物の選択は、植物の表現型に必ずしも依存せず、代わって、遺伝研究に基づくことができる。例えば、注目する特性に密接に遺伝学的に連鎖した適切な遺伝子マーカーを利用できる。かかる1つのマーカーを用いて、特定の交配の子孫における特性の存在または不存在を同定でき、育種継続のための子孫の選択に用いることができる。この技術を一般的にマーカー利用選択という。また、植物における注目する特性の相対的な存在または不存在を同定できるいずれかの他の型の遺伝子マーカーまたは他のアッセイは、育種目的に有用であることができる。
【0036】
マーカー利用選択についての一般的手順は、当該技術分野においてよく知られている。かかる方法は、劣性特性および可変表現型の場合または従来のアッセイがより高価、時間消費または不利であり得る場合に、特別に有用性のものであろう。本発明により用いることができた遺伝子マーカーの型は、必ずしも限定されるものではないが、単純配列長多型(SSLP)(Williamsら,1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリント法(DAF)、配列特徴付け増幅領域(Sequence Characterized Amplified Region,SCAR)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(Arbitrary Primed Polymerase Chain Reaction,AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(特に、ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなすEP534858)および一塩基変異多型(SNP)(Wangら,1998)を含む。
【0037】
B.遺伝子工学による本発明のトマト系統に由来した植物
【0038】
戻し交配によるならびに直接的に植物に導入できる多数の有用な特性は、形質転換技術により導入されるものである。したがって、遺伝子形質転換を用いて、選択された導入遺伝子を本発明の植物に挿入し得るか、あるいは別法として、遺伝子形質転換を戻し交配により導入できる導入遺伝子の調製に用い得る。当業者によく知られ、多数の作物種に適用可能な植物の形質転換のための方法は、限定されるものではないが、エレクトロポレーション、微粒子銃、アグロバクテリウム媒介形質転換およびプロトプラストによる直接的DNA取り込みを含む。
【0039】
トマト細胞の形質転換に用いるベクターは、ベクターが細胞中で挿入されたDNAを発現することができる限りは、限定されない。例えば、トマト細胞における構成性遺伝子発現用プロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター)、および外因性刺激により誘導可能なプロモーターを含むベクターを用いることができる。適切なベクターの例は、pBIバイナリーベクターを含む。ベクターが導入される「トマト細胞」は、培養細胞懸濁液、プロトプラスト、葉部およびカルスのごとき、種々の形態のトマト細胞を含む。
【0040】
エレクトロポレーションによって形質転換を達成するために、細胞または胚形成カルスの懸濁培養物のごとき、いずれの脆弱な組織も使用し得るか、あるいは別法として、未熟胚または他の組織化された組織を直接的に形質転換し得る。この技術において、細胞をペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ(pectolyase))に曝露することにより、選定した細胞、または制御された方法で機械的に傷つけた組織の細胞壁を部分的に分解するであろう。
【0041】
形質転換用DNAセグメントを植物細胞に送達する特に有効な方法は、微粒子銃である。この方法において、粒子が核酸で覆われ、推進力によって細胞に送達される。
典型的な粒子は、タングステン、白金および好ましくは金よりなるものを含む。爆撃のために、懸濁液中の細胞は、フィルターまたは固形培養培地で濃縮される。別法として、未熟胚または他の標的細胞は固形培養培地に配置し得る。爆撃すべき細胞は、マクロプロジェクタイル停止プレート(macroprojectile stopping plate)下の適当な距離に位置する。
【0042】
加速によってDNAを植物細胞に送達する方法の例示的な具体例は、Biolistics Particle Delivery Systemであり、これを用いて、ステンレス鋼またはNYTEXのスクリーンのごときスクリーンを介して、DNAまたは細胞で覆われた粒子を標的細胞で覆われた表面に推進できる。スクリーンは、粒子が大きな集合体で受容細胞に送達されないように粒子を分散する。プロジェクタイル装置と爆撃すべき細胞との間に介在するスクリーンは、プロジェクタイル集合体のサイズを減少させ、大きすぎるプロジェクタイルによる受容細胞に加わる損傷を減少させることによって高い頻度の形質転換に寄与し得ると考えられる。
【0043】
アグロバクテリウム媒介転移は、遺伝子座を植物細胞へ導入するためのもう一つの広く適用可能な系である。当該技術の利点は、DNAが全植物組織中に導入され得ることであり、それにより、プロトプラストから無傷の植物の再生のための必要性を回避し得る。最新のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、E. coliおよびアグロバクテリウム(および他の根粒菌)中で複製することができ、簡便な操作を可能にする(Kleeら,1985;Broothaertsら,2005)。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子転移のためのベクターにおける最近の技術的な進歩は、ベクター中の遺伝子および制限酵素部位の配置を改良して、種々のポリペプチドをコードする遺伝子を発現可能にするベクターの構築を促進したことである。記載されたベクターは、挿入されたポリペプチドをコードする遺伝子の直接的な発現のために、プロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接した簡便なマルチリンカー領域を有する。加えて、病原化(armed)および非病原化(disarmed)Ti遺伝子を含むアグロバクテリウムが形質転換のために用いることができる。
【0044】
アグロバクテリウム媒介形質転換が有効である植物系統において、それは、遺伝子座転移の容易さおよび規定された性質のために最適な方法である。DNAを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム媒介植物組み込みベクターの使用は、当該技術分野によく知られている(Fraleyら,1985;米国特許第5,563,055号)。
【0045】
また、植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーションおよびこれらの処理の組合せに基づく方法を用いて達成できる(例えば、Potrykusら,1985;Omirullehら,1993;Frommら,1986;Uchimiyaら,1986;Marcotteら,1988を参照)。植物の形質転換および外因性遺伝学的要素の発現は、Choiら (1994)およびEllulら (2003)に例示されている。
【0046】
多数のプロモーターが、注目するいずれかの遺伝子の植物遺伝子発現について有用であり、限定されるものではないが、選択性マーカー、獲得性マーカー、害虫耐性、病気耐性、栄養強化のための遺伝子および作物学的に注目するいずれかの他の遺伝子を含む。トマト植物遺伝子発現に有用な構成的プロモーターの例は、限定されるものではないが、単子葉植物(例えば、Dekeyserら,1990;TeradaおよびShimamoto,1990を参照)を含めた大部分の植物組織において、構成的に高レベルの発現を与えるカリフラワーモザイクウイルス(CaMV) P-35Sプロモーター(例えば、Odelら,1985を参照);CaMV 35Sプロモーターのタンデム重複版(P-e35S)である、ノパリンシンターゼプロモーター(Anら,1988)、オクトピンシンターゼプロモーター(Frommら,1989);ならびに米国特許第5,378,619号に記載されたゴマノハグサモザイクウイルス(P-FMV)プロモーターおよびFMVプロモーターの改良版(P-eFMV) (ここで、P-FMVのプロモーター配列は、タンデムで重複している)、カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター、サトウキビバチルスウイルスプロモーター、ツユクサ黄斑ウイルスプロモーター、ならびに植物細胞中で発現することが知られた他の植物DNAウイルスプロモーターを含む。
【0047】
環境、ホルモン、化学物質、および/または発生シグナルに応答して調節される種々の植物遺伝子プロモーターが、植物細胞中の作動可能に連結した遺伝子の発現のために用いることができ、該プロモーターは、(1)高温(Callisら,1988)、(2)光(例えば、エンドウrbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeierら,1989;トウモロコシrbcSプロモーター、SchaffnerおよびSheen,1991;またはクロロフィルa/b-結合タンパク質プロモーター、Simpsonら,1985)、(3) ホルモン、例えば、アブシシン酸(Marcotteら,1989)、(4) 創傷(例えば、wunl、Siebertzら,1989);または(5) 化学物質、例えば、ジャスモン酸メチル、サリチル酸もしくはSafenerにより調節されるプロモーターを含む。また、器官特異的プロモーター(例えば、Roshalら,1987;Schernthaneら,1988;Bustosら,1989)を使用することが有利であり得る。
【0048】
本発明のトマト植物に導入され得る典型的な核酸は、例えば、もう一つの種由来のDNA配列もしくは遺伝子、または同じ種に由来するかもしくは同じ種に存在するが、古典的な生殖もしくは育種技術よりむしろ遺伝子工学的方法により受容細胞に導入され得る遺伝子もしくは配列を含む。しかしながら、また、「外因性」なる用語は、形質転換される細胞中に通常存在しないか、または単に形質転換DNA断片もしくは遺伝子に見出されるような形態、構造等で存在しない遺伝子、または通常存在するが、天然の発現様式とは異なる方法で発現させる(例えば、過剰発現させる)ことを望む遺伝子を意味することを意図する。かくして、「外因性」遺伝子もしくはDNAなる用語は、同様の遺伝子がすでに細胞中に存在し得るか否かにかかわらず、受容細胞に導入されるいずれかの遺伝子またはDNA断片を意味することを意図する。外因性DNAに含まれるDNAの型は、植物細胞中にすでに存在するDNA、もう一つの植物由来のDNA、異なる生物由来のDNA、または遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA配列のごとき外部で生成されるDNA、または遺伝子の合成もしくは改変型をコードするDNA配列を含むことができる。
【0049】
何千とは言わないまでも何百もの異なる遺伝子が公知であり、本発明によるトマト植物に潜在的に導入できる。トマト植物に導入するために選択され得る特定の遺伝子および対応する表現型の非限定の例は、昆虫耐性、例えば、バチルス・チューリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)(B.t.)遺伝子、害虫耐性、例えば、菌類病制御のための遺伝子、除草剤耐性、例えば、グリホサート耐性を与える遺伝子、および質改善のための遺伝子、例えば、収量、栄養強化、環境もしくはストレス耐性、または植物生理、成長、発生、形態もしくは植物生成物におけるいずれかの望ましい変化についての1またはそれを超える遺伝子を含む。例えば、構造遺伝子は、害虫耐性を与えるいずれの遺伝子も含み、限定されるものではないが、WO 99/31248(ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)、米国特許第5,689,052号(ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)、米国特許第5,500,365号(ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)および米国特許第5,880,275号(ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)に記載されたBacillus害虫制御タンパク質遺伝子を含む。もう一つの具体例において、構造遺伝子は、限定されるものではないが、米国特許第5,633,435号(ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)に記載されたアグロバクテリウム株CP4グリホサート耐性EPSPS遺伝子(aroA:CP4)、または米国特許第5,463,175号(ここに出典明示してそのすべてを本明細書の一部とみなす)に記載されたグリホサート酸化還元酵素遺伝子(GOX)を含めた遺伝子により与えられる、除草剤グリホサートに対する耐性を与えることができる。
【0050】
別法として、DNAコード配列は、例えば、アンチセンスもしくは共抑制媒介機序により内因性遺伝子発現の標的化抑制を引き起こす非翻訳RNA分子をコードすることにより、これらの表現型に影響できる(例えば、Birdら,1991を参照)。また、RNAは、所望の内因性mRNA産物を切断するように設計された触媒RNA分子(すなわち、リボザイム)であることができる(例えば、GibsonおよびShillito,1997を参照)。かくして、注目する表現型もしくは形態変化を発現するタンパク質またはmRNAを生成するいずれの遺伝子も、本発明の実施に有用である。
【0051】
C.定義
【0052】
本明細書の記載および表において、多数の用語が使用される。本明細書および特許請求の範囲の明確でかつ一致した理解を提供するために、以下の定義が提供される:
【0053】
対立遺伝子:遺伝子座の1またはそれを超える択一的形態のいずれかであり、その対立遺伝子のすべてが1の特性または特徴に関連する。二倍体細胞または生物においては、所定の遺伝子の2個の対立遺伝子が一対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0054】
戻し交配:育種者が雑種子孫を繰り返し交配するプロセスであり、例えば、雑種子孫の親の一方に戻した第1世代雑種(F)。戻し交配を用いて、1の遺伝学的背景から1またはそれを超える単一遺伝子座変換を他のものに導入できる。
【0055】
ブリックス:トマト中の糖質および酸のごとき可溶性固形物の総含量。
【0056】
栽培トマト:例えば、Lycopersicon esculentumと典型的に分類される、消費に適し、商業栽培用の要件を満たすトマト。トマト植物自体および消費に適するその部分、例えば、果実に加えて、本発明は、繁殖に適する植物の部分または誘導体を含む。繁殖に適する部分の例は、葉、茎、根、シュート等のごとき器官組織、プロトプラスト、体細胞胚、葯、葉柄、培養物中の細胞等である。繁殖に適する誘導体は、例えば、種子である。本発明による植物は、従来方法、また、植物部分からの組織培養技術により培養または増殖できる。
【0057】
交配:2の親株の接合。
【0058】
他家受粉:異なる植物からの2つの配偶子の結合による受精。
【0059】
二倍体:2組の染色体を有する細胞または生物。
【0060】
去勢:植物の雄性生殖器官の除去、または雄性不稔性を与える細胞質もしくは核の遺伝因子または化学物質を用いた器官の不活性化。
【0061】
酵素:生物学的反応において触媒として作用できる分子。
【0062】
雑種:2つの非同系植物の交配の第1世代の子孫。
【0063】
遺伝子型:細胞または生物の遺伝学的構成。
【0064】
一倍体:二倍体中の2組の染色体のうちの1組を有する細胞または生物。
【0065】
連鎖:同じ染色体上の対立遺伝子が、それらの遺伝が独立している場合に、偶然に期待されるよりも高頻度で一緒に分離する傾向がある現象。
【0066】
LODスコア:2つの遺伝子座間の連鎖距離の見積りの信頼レベル。
【0067】
マーカー:環境分散成分を有さない、すなわち1の遺伝率の、好ましくは共優性様式で遺伝する容易に検出可能な(二倍体ヘテロ接合体中の遺伝子座の双方の対立遺伝子が容易に検出可能である)表現型。
【0068】
表現型:遺伝子発現の顕在化である、細胞または生物の検出可能な特性。
【0069】
貧弱な植物習性:貧弱な植物習性は、植物栄養成長の増大により特徴付けされる。貧弱な植物習性を持つトマト植物は、より規定された栄養成長を持つ望ましい植物習性の栽培トマト植物との比較において、増加した栄養成長を示す。トマトの植物習性は、1〜9のスケールで評価され、ここに、1は許容できる植物習性であり、9は貧弱な植物習性である。
【0070】
量的特性座位(QTL):量的特性座位(QTL)とは、通常は連続して分布する数値的に表示可能な特性を、ある程度まで制御する遺伝子座をいう。
【0071】
組換えの事象は、減数分裂の乗換え(crossing-over)を意味すると理解される。
【0072】
再生:組織培養物からの植物の発生。
【0073】
自家受粉:同じ植物の葯から柱頭への花粉の移行。
【0074】
単一遺伝子座変換(コンバージョン)植物:戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって開発された植物であって、戻し交配技術を介しておよび/または遺伝学的形質転換により品種に移された単一遺伝子座の特徴に加えて、トマト品種の実質的にすべての形態学的および生理学的特徴が回復した植物。
【0075】
実質的に同等:比較した場合に、平均から統計学的な有意差(例えば、p = 0.05)を示さない特性。
【0076】
組織培養物:同一または異なる型の単離した細胞を含む組成物、または植物の部分に組織化したかかる細胞の収集物。
【0077】
導入遺伝子:形質転換によりトマト植物のゲノムに導入された配列を含む遺伝子座。
【0078】
前記の発明を明確性および理解を目的として例示または例によりいくらか詳細に記載したが、添付した特許請求の範囲の範囲のみによって限定されるように、ある種の変化および変形を本発明の範囲内で実施することができることは明らかであろう。
【実施例】
【0079】
本明細書に引用したすべての参考文献をここに出典明示して特に本明細書の一部とみなす。
実施例1
エル・ヒルスタム遺伝子移入されたエル・エスキュレンタム植物の創生およびその確認
【0080】
高められたブリックスを与える染色体4のロングアーム上にリコペルシコン・ヒルスタム遺伝子移入された(TA517)およびされていない(99GHB1136.1005)エリート繁殖株を交配してF1子孫を作成した。TA517、エル・ヒルスタム遺伝子移入された高ブリックス株は、コーネル大学のSteven Tanksley博士から入手した (Bernacchiら,Theor. Appl. Genet., 97: 170-180, 1998b; Monforte and Tanksley, Genome, 43:803, 2000)。99GHB1136.1005は親近交株である。
【0081】
親株 99GHB1136.1005をTA517に交配し、その後、4回近交株HP987に戻し交配し、その後、6世代の血統選択、ついで、BC4F6にバルク・イン(bulking in)した。交配、戻し交配および血統選択のこの組合せは、トマト株PSQ-24-2189を生じた。すべての交配および血統選択は、カルフォルニア州ウッドランド(Woodland)およびチリのコリナ(Colina)およびメリピージャ(Melipilla)の圃場試験場で行われた。これらの交配は以下に示すようにして行われた。
【0082】
【表1】

【0083】
PSQ-24-2189(高められたブリックスレベルのドナー株)を、ついで、PSQ-25-252(レシピエント株)に交配した。この交配から作製されたF1を自家繁殖して、圃場でF2子孫を作製した。これらのF2子孫を、マーカー遺伝子移入部位に隣接するマーカー(TG155およびTG500)を用いてスクリーニングして、リコペルシコン・ヒルスタム由来の遺伝子移入領域の子孫ヘテロ接合を同定した。ヘテロ接合F2植物を自家繁殖して、隔離されたF3子孫を作製し、それらをマーカーTG155およびTG500でスクリーニングして、遺伝子移入領域内の希少な組換えを同定した。これらの交配は以下に示すように行った。
【表2】

【0084】
マーカーTG155およびTG500は、Taqmanアッセイとして入手可能である。詳細は表1を参照せよ。
【0085】
表1.TG155およびTG500についてのTaqmanアッセイ詳細
【表3】

【0086】
Taqmanプロトコールは以下であった。5μLの反応体積は、以下の成分:0.4375μLの水、2.5μLのROXとの2Xミックス、0.0625μLの80Xミックス、および2μLのテンプレートを含む。温度周期条件は以下である:50℃2分間の初期保持、その後、95℃2分間の保持、その後、95℃15秒間、60℃1分間を40サイクル;25℃にて最終保持をともなう。熱サイクル後、反応物をABI 7900プレートリーダーで分析した。
【0087】
図1は、リコペルシコン・ヒルスタム由来の遺伝子移入のおよその場所およびマーカーTG155およびTG500の相対位置を示す。テーブル2は、スクリーニングの結果を示す。75のF3組換え体を、スクリーニングされた3072種の植物から同定し、確認した。
【0088】
表2.F3個体群中の隣接マーカーTG155およびTG500でスクリーニングしてhir4遺伝子移入組換え体を同定した結果
【表4】


実施例2
F3個体群の遺伝子型決定
【0089】
実施例1に示される血統の開発による圃場解析は、エル・ヒルスタム遺伝子移入フラグメント(高められたブリックスレベルを生じる)と不良植物習性との間のつながりを示した。高ブリックスQTLと不良植物習性に寄与するQTLとの間のイベントを壊すつながりを追跡する能力を同定し提供するために、マーカーTG155およびTG500に介在するさらなるマーカーを開発した。表3に示す介在マーカーの各々についての切断増幅多型配列(Cleaved amplified polymorphic sequence (CAPS))アッセイは、配列解析を実行し、PCR増幅用のプライマーをデザインし、適当な増幅を確認し、ついで、多型につきスクリーニングすることによって開発した。
【0090】
表3.マーカー配列およびアッセイ情報
【表5】

【0091】
マーカーCAPSアッセイのPCR部分を準備するために、7μLの反応物を以下のプロトコールにしたがって調製した:3.5μLのUSB 2Xミックス、0.47μLの順方向プライマー (5 μM)、0.47μLの逆方向プライマー(5 μM)、2μLのテンプレート、0.56μLの水。熱サイクルプロファイルは以下に特定する。
【0092】
TD62-56ロングPCRプルファイル:95℃にて5分間の初期保持;以下:95℃30秒間、62℃*30秒間、72℃3分30秒間の13サイクル、ここに、「*」は、62℃からアニーリング温度を56℃の最終アニーリング温度にまで、1サイクル毎に−0.5℃低下することを意味する。この後、以下:95℃30秒間、56℃30秒間、72℃にて7分間の最終延長を伴う72℃3分30秒間の23サイクルおよび25℃での最終保持を行う。
【0093】
TD58-52ロングPCRプロファイル:95℃5分間の初期保持;以下:58℃* 30秒間、72℃3分30秒間の12サイクル、ここに、「*」は、58℃からアニーリング温度を52℃の最終アニーリング温度にまで、1サイクル毎に−0.5℃低下することを意味する。この後、以下:95℃にて30秒間、52℃にて30秒間、72℃にて7分間の最終延長を伴う72℃にて3分30秒間の23サイクルおよび25℃での最終保持を行う。
【0094】
51ロングPCR プロファイル:95℃5分間の初期保持、以下:95℃30秒間、50℃30秒間、72℃にて7分間の最終延長を伴う72℃3分30秒間の35サイクルおよび25℃での最終保持を行う。
【0095】
PCR増幅後、反応産物を適当な制限酵素ミックスで消化した。酵素ミックスは、以下のスペックにしたがって調製した:0.93μLの10X BSAを含む3μLの総反応体積、1.8μLの10X バッファー、および0.27μLの酵素。
【0096】
CAPSアッセイを実行するために、3μLの制限酵素ミックスを各PCR反応物に添加し、消化反応物をその酵素にとって適当な温度にて、少なくとも3時間インキュベートした。PCR産物の消化後、反応物を、1X TAEバッファー中でおよそ1.5〜2時間、120ボルトにて、2%寒天ゲル上で泳動した。
【0097】
実施例1からの75個のF3組換え体のうち、42がマーカーANTLとC2_At3g16150との間に組換えブレークポイント(recombination breakpoint)を有し(1.37%組換え頻度;図1中の組換えクラスAおよびA');6種の植物(0.20%)がマーカーC2_At3g16150とcTOE-6-D11との間にブレークポイントを有し(図1中の組換えクラスBおよびB');5つ(0.16%)がマーカーcTOE-6-D11とCT50との間にブレークポイントを有し(組換えクラスC、図1);15(0.49%)がマーカーCT50とC2_At4g33350との間にブレークポイントを有し(組換えクラスDおよびD'、図1);7種の植物(0.23%)がマーカーC2_At4g33350とCT73との間に組換えブレークポイント(組換えクラスEおよびE‘、図1)を有していた。組換えクラスC、すなわちTG155にエル・ヒルスタム対立遺伝子およびマーカーcTOE-6-D11とCT50との間にブレークポイントを有するものには、何も植物が同定されなかった。組換体F3子孫をついで自家繁殖して、組換体遺伝子型組換体遺伝子型に固定した。自家繁殖子孫を隣接マーカーでもう一度スクリーニングして回収し、組換体遺伝子型に固定化されたホモ接合植物を確認した。ホモ接合組換体の表現型決定は、ブリックス座の一のより正確な決定を可能とした。

実施例3
チリでの植物育成における高められたブリックスの保持および所望しない形質の排除を実証する圃場試験
【0098】
75の隔離組換体F4ファミリーのうち45が、10年目にチリで生育され、ブリックスおよび草性(植物習性)につき評価された。表2に示されるマーカーパネルでの精密マッピング評価を行って、組換体株を決定し、そこでは、所望する上昇したレベルのブリックスと、リコペルシコン・ヒルスタム由来の所望しない(不良植物習性形質)との間のつながりが破壊されていた。観測した各マーカー位置でのリコペルシコン・ヒルスタム(hir)またはリコペルシコン・エスキュレンタム(esc)のいずれかの対立遺伝子の存在に依存して、組換体をクラスにひとまとめにした。表4はクラスの詳細であり、それは、図1にも模式的に示され、実施例2に導入された。クラスCには組換体は回収されなかった。
【0099】
表4.マーカー遺伝子型で指定される組換えクラス
【表6】

【0100】
介在性マーカーにてのマーカー遺伝子型を植物表現型に相関付けして対象とする組換体を同定する手段を提供する。図2に示すデータは、不良植物習性において関連する増加を有する高められたブリックスと、マーカーTG155/ANTLおよびC2_At3g16150の間の領域におけるリコペルシコン・ヒルスタムから遺伝子移入された遺伝子セグメントとの間の相関を示す。
【0101】
この情報を用いて、研究は、つぎに、クラスA指定の個別の植物に注力され、高められたレベルのブリックスおよび許容可能な草性を表す組換体の同定および分子的特徴付けに努力した(図4)。マーカーTG155/ANTLおよびC2_At3g16150の間にエル・ヒルスタム対立遺伝子を持つ組換えクラスのなかで、クラスAは集約的に、ブリックスレベルに対応する増加を持つエル・ヒルスタム由来の最少遺伝子移入領域を含有する。図3は、この試験からの個別のクラスA組換体についてのブリックスおよび植物習性表現型を詳細に説明する。

実施例4
カルフォルニア州ウッドランドでの植物育成における高められたブリックスの保持および所望しない形質の排除を実証する圃場試験
【0102】
圃場評価を10年目にカルフォルニア州ウッドランドで繰り返した。元々の75の組換体のうち27について固定された子孫をこの試験において評価した。実施例3のチリ試験のように、エル・エスキュレンタム対象 (esc)を同一の分離された系統から同定して、バックグラウンド影響を最小限にした。
【0103】
その株につき入手可能なすでに作製した遺伝子型および表現型データならびにカルフォルニア州ウッドランド圃場試験から得た表現型データの評価を行って、チリからの結果を確認し、エル・ヒルスタムからの所望する高められたブリックスと所望しない 不良植物習性形質との間で系統が崩壊している組換体株を同定した。組換体植物を、観察した各マーカー位置でのエル・ヒルスタム(hir)またはエル・エスキュレンタム(esc)のいずれかの対立遺伝子の存在に依存してクラスにふたたびひとまとめにした。カルフォルニア州ウッドランド圃場試験からの結果を図4に示す。これらの結果は、チリからの結果を考慮すると、クラスAにひとまとめにした組換体フラグメントは許容可能な植物習性についての可能性とともに増加したブリックスを示すことを示す。カルフォルニア州ウッドランド圃場試験からのクラスA群内の個別の組換体植物の評価に由来するデータは図5に表わされる。

実施例5
高められたブリックスおよび許容可能な植物習性を示す株の同定
【0104】
チリおよびカルフォルニア圃場試験(実施例3および4)からのマーカー遺伝子型の植物表現型での解析は、高められたブリックスと不良植物習性との間で破壊されたつながりを持つ7つの組換体の同定に導いた。図3および5、組換体A_01, A_02, A_03, A_05, A_06, A_07, およびA_0を参照せよ。これらの7つのうち3つの組換体、A_01、A_06、およびA_09は、もっとも望ましいつながりを破壊する高められたブリックスおよび許容可能な植物習性プロファイルを示す。

実施例6
精密マッピング連鎖破壊イベント
【0105】
このつながり破壊イベントを生じる組換えブレークポイントをさらに描写するため、さらに精密マッピングが行われるであろう。Taqmanアッセイに転換したSNPマーカーをエル・エスキュレンタムおよびエル・ヒルスタム、株LAl 777、対象について試験して、多型性特徴がそれらの10のマーカーに存在するかどうかを決定した。試験されたそれらのもののうち、8つが2つの対象の間で多型性であった。これらの8つのマーカーは、以下の表5に示され、上記の実施例5で列記された7つの株におけるつながりを破壊する組換えブレークポイントをさらにマップするために用いられ、それらの組換えイベントの同定のためのトラッキングマーカーとして用いられた(実施例7も参照せよ)。
【0106】
表5.連鎖破壊する精密マッピングおよび組換えイベントの同定用のSNPマーカーTaqmanアッセイ
【表7】

実施例7
さらなるマーカーの同定およびhir4 ブリックスQTL領域におけるさらなる精密マッピング
【0107】
染色体4のhir4領域における遺伝子さらなるマッピングを行い、ブリックス QTL位置および組換体ブレークポイントの場所の向上した識別のための修正遺伝子マップの作成を可能とした。QTL場所は、修正遺伝子マップのマーカーNL0234055とNL0215788との間に確定された。図1中に示されるマップと比較して、マーカーTG155およびCT50は、今や、修正遺伝子マップ上、それぞれ、位置82.2 cMおよび87.0 cMに見いだされるが、マーカーNL0234055, NL0234071, NL0234257, NL0233999, およびNL0215788の各々の新規または修正マップ位置は表6に示され、85.2 cMと89 cMとの間の位置にある。表6に示される配列(配列番号:55〜64)は、PCR-ベースアッセイを作製するのに用いることができる単一ヌクレオチド多型性を画定して、所望するブリックス 表現型を含有し、不良植物習性を呈示せず、より小さなエル・ヒルスタム遺伝子移入フラグメントを含有する目的の組換体株を同定した。例えば、マーカーNL0234055は、SNPによって配列番号:55〜56の位置46にあると確定される。
【0108】
表6.PCRアッセイをデザインして精密マッピングおよび染色体4上の組換えイベントの同定についてのつながりブレークポイントを確定するさらなる遺伝子マーカーおよびSNP「対立遺伝子1」はエル・ヒルスタム由来配列を表し、「対立遺伝子2」はエル・エスキュレンタム由来配列を表す。
【表8】

【0109】
ここに開示し特許請求するすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして過度な実験なくして作製し実行できる。本発明の組成物および方法は好ましい具体例という観点で記載されてきたが、本発明の概念、精神および範疇から逸脱することなく、それらの組成物および/または方法に対して、およびここに記載された方法のステップまたはステップのシーケンスに変形を施すことができることは、当業者に明らかであろう。より詳しくは、化学的および薬理学的の双方に関連するある剤をここに記載される剤を置換することができるが、同一または同様の結果を達成できるであろう。当業者に明らかなすべてのそのような同様の置換物および変形は、付随する特許請求の範囲で規定される本発明の精神、範疇および概念のうちであるとみなされる。

参考文献
【0110】
以下の参照は、それらが例示的手順またはここに記載されるものを補う他の詳細を提供する限度において、出典明示して本明細書に含まれるとみなされる。
米国特許第5,378,619号
米国特許第5,463,175号
米国特許第5,500,365号
米国特許第5,563,055号
米国特許第5,633,435号
米国特許第5,689,052号
米国特許第5,880,275号
米国特許第6,806,399号
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欧州特許第534 858号
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国際公開第99/31248号
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
高められたブリックスを付与するリコペルシコン・ヒルスタム(Lycopersicon hirsutum)のhir4対立遺伝子を含むトマト植物であって、ここに該植物は貧弱な植物習性を付与するリコペルシコン・ヒルスタムのhir4対立遺伝子に遺伝学的に連鎖する対立遺伝子を欠く該トマト植物。
【請求項2】
請求項1記載のトマト植物の植物部分。
【請求項3】
該部分が細胞、種子、根、茎、葉、果実、花または花粉である請求項3記載の植物部分。
【請求項4】
高められたブリックスを含むトマト植物を得るための方法であって、
(a)高められたブリックスを付与し、かつ、貧弱な植物習性を付与するリコペルシコン・ヒルスタムの対立遺伝子に植物において遺伝学的に連鎖するリコペルシコン・ヒルスタムからのhir4対立遺伝子についてヘテロ接合であるトマト植物を得;
(b)植物の子孫を得;ついで
(c)子孫がhir4を含むが、貧弱な植物習性を付与する対立遺伝子は含まないように遺伝子組換えが生じた少なくとも第1の子孫植物を選択する
ことを含む該方法。
【請求項5】
子孫植物を選択することが、(1)リコペルシコン・ヒルスタムにおけるhir4対立遺伝子に遺伝学的に連鎖する遺伝子マーカーを含み、および/または、リコペルシコン・エスキュレンタム(Lycopersicon esculentum)からの対応する遺伝子座に存在する遺伝子マーカーを欠き、および(2)リコペルシコン・ヒルスタムにおいて貧弱な植物習性を付与する対立遺伝子に遺伝学的に連鎖した遺伝子マーカーを欠き、および/または、リコペルシコン・エスキュレンタムからの対応する遺伝子座に存在する遺伝子マーカーを含む、子孫植物を同定することを含む請求項4記載の方法。
【請求項6】
子孫植物を選択することが、TG155対立遺伝子、ANTL対立遺伝子、C2_At3gl6150対立遺伝子、cTOE-6-D11対立遺伝子、CT50対立遺伝子、C2_At4g33350対立遺伝子、CT73対立遺伝子、TG443対立遺伝子、TG500対立遺伝子、NL0233688対立遺伝子、NL0233750対立遺伝子、NL0233794対立遺伝子、NL0233797対立遺伝子、NL0233922対立遺伝子、NL0234257対立遺伝子、NL0234328対立遺伝子、NL0234071対立遺伝子、NL0234055対立遺伝子、NL0233999対立遺伝子およびNL0215788対立遺伝子よりなる群から選択される少なくとも1の対立遺伝子を検出することを含む請求項4記載の方法。
【請求項7】
(a)対立遺伝子を、オリゴヌクレオチド・プライマー対(またはその複数)を用いるPCRベースの方法によって検出し;かつ
(b)TG155対立遺伝子は配列番号:1および配列番号:2を含むプライマー対を用いて検出し;ANTL対立遺伝子は配列番号:9および配列番号:10を含むプライマー対を用いて検出し;C2_At3gl6150対立遺伝子は配列番号:11および配列番号:12を含むプライマー対を用いて検出し;cTOE-6-D11対立遺伝子は配列番号:13および配列番号:14を含むプライマー対を用いて検出し;CT50対立遺伝子は配列番号:15および配列番号:16を含むプライマー対を用いて検出し;C2_At4g33350対立遺伝子は配列番号:17および配列番号:18を含むプライマー対を用いて検出し;CT73対立遺伝子は配列番号:19および配列番号:20を含むプライマー対を用いて検出し;TG443対立遺伝子は配列番号:21および配列番号:22を含むプライマー対を用いて検出し;TG500対立遺伝子は配列番号:5および配列番号:6を含むプライマー対を用いて検出し;NL0233688対立遺伝子は配列番号:23および配列番号:24を含むプライマー対を用いて検出し;NL0233750対立遺伝子は配列番号:27および配列番号:28を含むプライマー対を用いて検出し;NL0233794対立遺伝子は配列番号:31および配列番号:32を含むプライマー対を用いて検出し;NL0233797対立遺伝子は配列番号:35および配列番号:36を含むプライマー対を用いて検出し;NL0233922対立遺伝子は配列番号:39および配列番号:40を含むプライマー対を用いて検出し;NL0234257対立遺伝子は配列番号:43および配列番号:44を含むプライマー対を用いて検出し;NL0234328対立遺伝子は配列番号:47および配列番号:48を含むプライマー対を用いて検出し;またはNL0234071対立遺伝子は配列番号:51および配列番号:52を含むプライマー対を用いて検出する請求項6記載の方法。
【請求項8】
対立遺伝子を検出することが、配列番号:55または配列番号:56のヌクレオチド46;配列番号:57または配列番号:58のヌクレオチド61;配列番号:59または配列番号:60のヌクレオチド61;配列番号:61または配列番号:62のヌクレオチド61;または配列番号:63または配列番号:64のヌクレオチド61に対応する遺伝子移入エル・ヒルスタム配列中のポジションの単一ヌクレオチド多型を検出することを含む請求項6記載の方法。
【請求項9】
請求項5記載の方法によって生産した植物。
【請求項10】
植物が、高められたブリックスを付与し、かつ、貧弱な植物習性を付与するそれに遺伝学的に連鎖したリコペルシコン・ヒルスタム対立遺伝子を欠く、リコペルシコン・ヒルスタムからのhir4対立遺伝子を含む請求項8記載の植物。
【請求項11】
細胞、種子、根、茎、葉、果実、花および花粉よりなる群から選択される請求項9記載の植物の部分。
【請求項12】
(a)高められたブリックスを付与するリコペルシコン・ヒルスタムのhir4対立遺伝子を含む染色体セグメントを植物に遺伝子移入することを含み、ここに該セグメントが貧弱な植物習性を付与するリコペルシコン・ヒルスタムのhir4対立遺伝子に遺伝学的に連鎖する第2の対立遺伝子を欠く、高められたブリックスを含むトマト植物を生産する方法。

【図1】
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【図2A−B】
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【図2C−D】
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【図3A−G】
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【図4A−B】
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【図5A−F】
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【図5G−K】
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【公表番号】特表2013−502935(P2013−502935A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527099(P2012−527099)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047352
【国際公開番号】WO2011/026116
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(500195035)セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツド (17)
【氏名又は名称原語表記】Seminis Vegetable Seeds,Inc.
【Fターム(参考)】