説明

高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタール

本発明の対象は、70モル%以上の加水分解度を有する部分鹸化されたかまたは完全鹸化されたポリビニルエステルをアセトアルデヒドでアセタール化することにより得られた、80モル%を上廻るアセタール化度および100μm以上の平均粒度を有する、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールであって、アセタール化を0℃≦T1≦+20℃の温度T1で導入し、引続き+40℃を上廻る温度T2で継続させ、この場合温度T2は、0.05〜4時間に亘って維持され、アセタール化を閉鎖された反応器中で実施することによって特徴付けられる、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタール、その製造法ならびにその使用に関する。
【0002】
相応のポリビニルアルコールから相応のアルデヒドとのポリマー類似反応によって得られるポリビニルアセタールの製造は、既に1924年以来知られており、その際、その後に、多くのアルデヒドが相応のポリビニルアセタールの製造のために使用されている。ポリビニルアセタールは、一般に3工程法(ポリビニルアセテート→ポリビニルアルコール→ポリビニルアセタール)で製造され、その際、ビニルアセタール基と共にさらにビニルアルコール単位およびビニルアセテート単位を有する生成物が得られる。とりわけポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタールおよびポリビニルブチラール(PVB)が商業的に重要となっている。ポリビニルアセタールは、合せガラスおよび安全ガラス、高安全ガラスまたはウィンドウフィルムに使用されている。とりわけそれらの良好な顔料結合力に基づき、ポリビニルブチラールは、殊に塗料中のバインダーとして、特に印刷用インキ中でも使用される。
【0003】
ポリビニルアセタールの製造の最後の工程では、相応する部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルエステル(ポリビニルアルコール)が相応するアルデヒドで酸の存在下にアセタール化される。この場合、通常、アセタール化反応は、より低い温度T1で導入され、引続きより高い温度T2で継続および終結される。
【0004】
欧州特許出願公開第0271861号明細書A2および欧州特許出願公開第0513857号明細書A1には、アセトアルデヒドを用いて2つの異なる温度範囲でポリビニルアセトアセタールへのアセタール化を実施し、かつこの温度を定義された時間に亘って維持することが提案されている。具体的には、アセタール化を+8℃〜+17℃のT1で導入し、この温度を特に1〜6時間維持し、引続きアセタール化を+25℃〜+40℃のT2で継続させ、この温度を2〜8時間維持することが推奨されている。より低い温度T1での維持により、より高いアセタール化度が保証され、比較的中位の高さの温度水準T2での維持により、反応生成物の単一のアセタール化度が保証される。+40℃を上廻る温度の際に、前記方法でアセタール化度は、再び減少される。こうして、比較例B−5は、+50℃の温度水準T2でなおアセタール化度71.5モル%だけを達成させることができたことを示す。更に、+40℃を上廻る温度T2で製造された生成物は、非アルコール性溶剤、例えばメチルエチルケトン(MEK)中で不十分な溶解度を示す。
【0005】
更に、欧州特許出願公開第0271861号明細書A2には、ポリビニルアセトアセタールの粒度が決定的に温度T1を上廻りアセタール化の導入の際に決定されることが記載されている。+19℃以上の温度T1は、極めて粗大で不均一な粒子を生じる。更に、欧州特許出願公開第200271861号明細書A2中の実施例は、反応を継続させるための温度に粒度が依存していることを確認することができないことを示す。従って、この方法の欠点は、70モル%を上廻るアセタール化度を有する生成物が25〜75μmの平均粒度の比較的微細な粒子で生じ、70モル%を下廻る低いアセタール化度の場合にのみ100μmを上廻る平均粒度を達成することができることである。
【0006】
欧州特許出願公開第1384731号明細書A1には、アセタール化を−10℃〜+30℃の温度範囲T1で導入し、次に温度T2を50℃〜80℃へ調節することが推奨されている。しかし、この方法では80モル%を上廻るアセタール化度は達成されない。欧州特許出願公開第1284274号明細書A1、欧州特許出願公開第1369439号明細書A1およびWO 2004/026917A1には、アセタール化を−10℃〜+30℃の範囲内の温度T1で導入し、+20℃〜+60℃の範囲内の温度T2で継続させることが記載されている。しかし、この場合も80モル%を上廻るアセタール化度は得られない。アセトアルデヒドを使用する際の前記方法の欠点は、欧州特許出願公開第0271861号明細書A2の記載と同様に、+20℃〜+40℃の範囲内の温度T2で70モル%を上廻るアセタール化度の際に反応を継続させることにより、比較的微細な粒子だけが得られ、+40℃を上廻る温度で80モル%未満の比較的低いアセタール化度だけが達成されうることが記載されている。
【0007】
欧州特許出願公開第1270608号明細書A1には、アセタール化を+12℃または+20℃の温度T1で導入し、+60℃または+30℃の温度T2で継続させることが記載されている。しかし、80モル%未満のアセタール化度を有する生成物だけが得られる。アセトアルデヒドを使用した際の欠点は、この場合も欧州特許出願公開第0271861号明細書A2の記載と同様に、+30℃の温度T2の際に70モル%を上廻るアセタール化度で極めて微細な生成物粒子が生じ、+60℃の温度の場合には、80モル%を上廻るアセタール化度が達成されないことである。
【0008】
欧州特許出願公開第1384732号明細書A1には、アセタール化を0℃の温度T1で導入し、+25℃の温度T2で継続させることが推奨されており、欧州特許第0150293号明細書には、アセタール化を+14.4℃の温度T1で導入し、+40℃の温度T2で継続させることが推奨されている。前記方法の欠点は、70モル%を上廻るアセタール化度で欧州特許出願公開第1384732号明細書A1の場合には、生成物の沈殿が起こらず、欧州特許第0150293号明細書の場合には、25〜75μmの平均粒度の範囲内の比較的微粒状の生成物が得られることである。
【0009】
欧州特許出願公開第1557261号明細書A1には、アセタール化を−10℃〜+30℃の温度T1で導入し、+50℃〜+80℃の温度T2で継続させる方法が記載されている。種々のアルデヒドを有しかつ40〜90モル%のアセタール化度を有するポリビニルアセタールが記載されているが、しかし、既に欧州特許出願公開第0271861号明細書A2および欧州特許出願公開第0513857号明細書A1の記載から公知であるように、アセトアルデヒドで+40℃を上廻る温度で80モル%を上廻る高いアセタール化度は、達成させることができなかった。
【0010】
従って、80モル%を上廻る高いアセタール化度および100μm以上の平均粒度を有するポリビニルアセトアセタールを提供するという課題が課された。
【0011】
本発明の対象は、70モル%以上の加水分解度を有する部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルエステルをアセトアルデヒドでアセタール化することにより得られる、80モル%を上廻るアセタール化度および100μm以上の平均粒度を有する、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールであって、アセタール化を0℃≦T1≦+20℃の温度T1で導入し、引続き+40℃を上廻る温度T2で継続させ、この場合温度T2は、0.05〜4時間に亘って維持され、アセタール化を閉鎖された反応器中で実施することによって特徴付けられる、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールである。
【0012】
本発明のもう1つの対象は、70モル%以上の加水分解度を有する部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルエステルをアセトアルデヒドでアセタール化することにより、80モル%を上廻るアセタール化度および100μm以上の平均粒度を有する、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの製造法であって、アセタール化を0℃≦T1≦+20℃の温度T1で導入し、引続き+40℃を上廻る温度T2で継続させ、この場合温度T2は、0.05〜4時間に亘って維持され、アセタール化を閉鎖された反応器中で実施することによって特徴付けられる、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの製造法である。
【0013】
適当な部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルエステルは、70〜100モル%のビニルエステル単位を含有するビニルエステル重合体に由来する。適当なビニルエステルは、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖状または分枝鎖状のカルボン酸のビニルエステルである。好ましいビニルエステルは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート(イソプロペニルアセテート)、ビニルピバレートおよび、5〜11個のC原子を有するα−分枝鎖状モノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9(登録商標)またはVeoVa10(登録商標)(Resolutions社の商品名)である。特に酢酸ビニルが好ましい。
【0014】
ビニルエステル単位とともに、場合によってはさらに、1〜15個のC原子を有するアルコールのメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル、オレフィン、ジエン、ビニル芳香族化合物およびビニルハロゲン化物を含む群からの1つまたはそれ以上のモノマーが共重合されていてもよい。アクリル酸またはメタクリル酸のエステルの群からの適当なモノマーは、1〜15個のC原子を有する非分枝鎖状または分枝鎖状のアルコールのエステルである。好ましいメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレートおよびt−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートである。特に、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n‐ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよびt‐ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレートおよびノルボルニルアクリレートが好ましい。適当なジエンは、1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。重合可能なオレフィンのための例は、エテンおよびプロペンである。ビニル芳香族化合物として、スチレンおよびビニルトルエンを重合導入することができる。ビニルハロゲン化物の群からは、通常は、塩化ビニル、塩化ビニリデンまたはフッ化ビニルが使用され、有利には塩化ビニルが使用される。前記コモノマーの割合は、ビニルエステル重合体中のビニルエステルモノマーの割合が70モル%以上であるように算定される。
【0015】
場合によっては、さらに他のコモノマーが、ビニルエステル重合体の全質量に対して、有利に0.02〜20質量%の割合で含有されていてよい。このようなコモノマーのための例は、エチレン性不飽和のモノカルボン酸およびジカルボン酸、特にクロトン酸、フマル酸およびマレイン酸;他のエチレン性不飽和のカルボン酸アミドおよびカルボン酸ニトリル、特にN−ビニルホルムアミド;また環状アミドであってその窒素上に不飽和基を有するアミド、例えばN−ビニルピロリドン;フマル酸およびマレイン酸のモノエステルおよびジエステル、例えばジエチルエステルおよびジイソプロピルエステルならびに無水マレイン酸、エチレン性不飽和のスルホン酸もしくはそれらの塩、特にビニルスルホン酸である。コモノマーとしては、カチオン性モノマー、例えばジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミドクロリド(MAPTAC)および2−トリメチルアンモニウムメチル(メタ)アクリレートクロリドも適している。更に、補助モノマーとしては、ビニルエーテルおよびビニルケトンも適している。
【0016】
重合可能なシランまたはメルカプトシランも適当なコモノマーである。好ましいのは、γ−アクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シランまたはγ−メタクリルオキシプロピルトリ(アルコキシ)シラン、α−メタクリルオキシメチルトリ(アルコキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジ(アルコキシ)シラン、ビニルアルキル−ジ(アルコキシ)シランおよびビニルトリ(アルコキシ)シランであり、その際、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、メトキシエチレン基、エトキシエチレン基、メトキシプロピレングリコールエーテル基またはエトキシプロピレングリコールエーテル基を使用することができる。このための例は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリス(1−メトキシ)−イソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチル−ジメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、トリスアセトキシビニルシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物シランである。また、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
【0017】
他の例は、予備架橋性コモノマー、例えばポリエチレン系不飽和のコモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、ブタンジールジアクリレートまたはトリアリルシアヌレート、または後架橋性コモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテルまたはN−メチロールアクリルアミドのエステル、N−メチロールメタクリルアミドのエステルおよびN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。
【0018】
これらのビニルエステル重合体は、市販されており、または該重合体は、公知方法で重合により、特に、塊状重合、懸濁重合または有機溶剤中、特に有利にはアルコール性溶液中での重合によって製造することができる。好適な溶剤および調節剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールである。該重合は、還流下に温度40℃〜100℃で実施され、そして通常の開始剤の添加によってラジカル的に開始される。
【0019】
通常の開始剤のための例は、ペルカーボネート、例えばシクロヘキシルペルオキシジカーボネートまたはペルエステル、例えばt−ブチルペルネオデカノエートまたはt−ブチルペルピバレートである。分子量の調節は、公知方法で調節剤の添加によって、溶剤含量によって、開始剤濃度の変更によって、および温度の変更によって行なうことができる。重合の完了後に、溶剤ならびに場合により過剰のモノマーおよび調節剤は留去されてよい。
【0020】
ビニルエステル重合体のエステル交換または鹸化は、自体公知の方法で、例えばベルト法(Bandverfahren)またはニーダー法(Kneterverfahren)により、アルカリ中または酸中で酸または塩基を添加しながら行なわれる。特に、ビニルエステル固体樹脂は、アルコール、例えばメタノール中に、15〜70質量%の固体含量に調節しながら取り込まれる。エステル交換または加水分解は、例えばNaOH、KOHまたはNaOCH3の添加によって塩基性で実施することが好ましい。塩基は、一般にエステル単位1モルあたり1〜5モル%の量で使用される。エステル交換または加水分解は、20℃〜70℃の温度で実施される。エステル交換または加水分解の終結後、反応混合物は、場合によっては中和され、溶剤は、留去され、ポリビニルアルコールは、粉末または顆粒として得られる。しかし、ポリビニルアルコールは、水を連続的に添加する一方で、溶剤を留去することによって、水溶液として取得されてもよい。
【0021】
この場合、加水分解度が96モル%以上である重合体は、完全鹸化されたポリビニルアルコールと呼称される。加水分解度が70モル%以上で96モル%以下を有するものは、部分鹸化されたポリビニルエステルと呼称される。部分鹸化または完全鹸化されたビニルエスエル重合体は、特に70モル%〜99.9モル%、特に有利に90モル%〜99.9モル%の加水分解度を有する。ポリビニルアルコールの粘度(DIN53015、ヘップラーによる方法;水中の4%溶液)は、1〜40mPas、特に1〜30mPasであり、この粘度は、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルエステルの分子量および重合度についての尺度として使用される。使用されるポリビニルアルコールの重合度は、特に少なくとも100である。
【0022】
アセタール化のために、その半アセタールまたは完全アセタールまたはアルデヒド水和物の形で使用されてもよいアセトアルデヒドが使用される。この場合に、アセトアルデヒドの添加量は、所望のアセタール化度に応じて左右される。通常、本発明による方法の場合には、理論的量に対して過剰量のアセトアルデヒドが使用される。特に、アセタール化度は、83モル%を上廻る。
【0023】
アセタール化のために、部分鹸化または完全鹸化されたポリビニルエステルは、特に水性媒体中に取り込まれる。通常は、該水溶液の固体含量は、4〜30質量%に調節される。アセタール化は、酸性触媒、例えば塩酸、硫酸、硝酸または燐酸の存在下に行なわれる。この場合、酸性触媒の含量は、望ましい反応速度、触媒の触媒作用、望ましいアセタール化度および達成しようと努力される製品純度により左右される。塩酸を使用する場合には、全反応配合物に対して2質量%を上廻るが、しかし、全反応配合物に対して12質量%を下廻る塩酸の酸性触媒に対する含量は、好ましいことが判明した。全反応配合物に対して塩酸3〜8質量%の含量は、本発明による方法に対して特に好ましい。
【0024】
この場合、アセタール化は、種々の方法で実施されることができる:ポリビニルアルコール、酸性触媒および水を装入することができ、アセトアルデヒドは、種々の計量供給速度での反応を開始させるために添加されることができる。更に、ポリビニルアルコールおよび/または水および/または酸性触媒の一部分を装入し、アルデヒドおよび残りの量のポリビニルアルコールおよび/または水および/または酸性触媒を種々の計量供給速度ならびに異なる時間で添加することも可能である。同様に、酸性触媒は、アセタール化の開始のために、反応成分のポリビニルアルコール、水およびアセトアルデヒドの一部分、または反応成分のポリビニルアルコール、水およびアセトアルデヒドの全体量に種々の計量供給速度で添加されてよい。
【0025】
反応の開始時に、この反応混合物は、0℃≦T1≦+20℃、特に+2℃≦T1≦+16℃の温度T1に冷却される。アセタール化反応は、アセトアルデヒド、またはその半アセタールまたは完全アセタールの添加によって開始される。特に、この配合物は、この温度範囲内に0.5〜4時間、維持される。
【0026】
引続き、この配合物は、+40℃を上廻る、特に+45℃以上の温度T2、特に有利に+40℃<T2<+55℃または+45℃≦T2≦+50℃に加熱され、この温度で0.05〜4時間維持される。我々の試験において、アセトアルデヒドでのアセタール化の場合には、粒度は、温度T2により極めて影響を及ぼされうることを確認することができた。即ち、+40℃を上廻る温度T2の場合には、温度T1の調節とは無関係に、80モル%を上廻る、特に83モル%を上廻るアセタール化度および100μm≦の平均粒度を有する生成物を得ることに成功する。本質的なことは、アセタール化を閉鎖された系中で環境とのガス交換なしに実施することである。
【0027】
固体の反応生成物は、濾過および後接続された洗浄工程によって単離される。更に、存在する酸残基の安定化および中和のために、アルカリが添加されてよい。沈殿および後処理中に、乳化剤を用いて作業して、ポリビニルアセタールの水性懸濁液を安定化させることができる。それによって得られたポリビニルアセトアセタールの平均粒度は、100μm以上、特に100〜300μmである。
【0028】
粗大な粒形により、本発明によるポリビニルアセトアセタールは、より高い嵩密度、明らかに僅かなダスト含量および改善された流動能を有する。これら全てのことは、より低い輸送費、より良好な貯蔵能力の利用およびポリビニルアセトアセタール溶液の調製の際の簡易化された取扱いにとって好ましい。より粗大な生成物粒子は、溶剤中でのより僅かな凝集傾向を有し、したがってポリビニルアセトアセタールの溶解速度も、明らかに改善されている。
【0029】
高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールは、殊に印刷用インキ中のバインダーとしての使用に適している。好適な印刷用インキ配合物は、当業者に公知であり、かつ一般に、顔料成分、例えばジアゾ顔料またはフタロシアニン顔料5〜50質量%、ポリビニルアセタールバインダー4〜25質量%および溶剤、例えばアルコール、例えばエタノールまたはエステル、例えばエチルアセテートを含有する。場合によっては、さらに他の添加剤、例えば遅延剤、付着助剤、可塑剤および別の添加剤、例えば充填剤またはロウが含有されていてよい。
【0030】
高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールは、合せガラスおよび安全ガラス、高安全ガラスまたはウィンドウフィルムにも適している。
【0031】
更に、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールは、水を基礎とするかまたは有機溶剤を基礎とする塗料中のバインダーとして、例えばノズルの内部被覆のためのバインダーとして有利に使用されることができる。高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの他の使用分野は、耐蝕剤中のバインダーとしての使用である。更に、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールは、セラミック工業におけるバインダーとしても、特にセラミック未焼結成形体用のバインダーとしても適している。射出成形(粉末射出成形)におけるセラミック粉末および金属粉末のためのバインダーとしての使用を挙げることもできる。
【0032】
更に、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールは、写真フィルムのためのバインダーとして使用されてよい。この高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールは、殊に写真材料、例えば熱転写用フィルム(heat transfer sheet)のためのバインダーとして有利に使用することができる。このようなフィルムは、一般に支持体フィルムおよび熱転写層からなり、この場合ポリビニルアセトアセタールは、バインダーとして使用される。
【0033】
以下の実施例は、本発明の更なる説明に役立つが、本発明を何ら制限するものではない。
【実施例】
【0034】
全ての実施例で全反応材料を100kgに規格化した。
【0035】
実施例1:
閉鎖された反応器中に、水73.7kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール5.2kg、粘度2.9mPas(DIN 53015;ヘプラーによる方法、4%の水溶液;重合度320;Mw約14000;加水分解度97.8モル%)の水溶液を20%の塩酸溶液18kgと一緒に装入した。この装入物を撹拌下に+10℃(温度T1)に冷却した。引続き、30分間の時間でアセトアルデヒド3.2kgを添加した。更に、+10℃での40分間の反応時間後に、この温度を180分間に亘り25℃に上昇させ、そしてこの温度T2をさらに180分間維持した。その後、この生成物を濾過し、濾液が中性に反応するまで蒸留水で洗浄した。引続き、少なくとも98質量%の固体含量になるまで乾燥を行なった。
【0036】
ビニルアルコール単位11.9質量%を有する白色の粉末状ポリビニルアセトアセタールが得られた。アセタール化度は、83.7モル%であり、平均粒度は、120μmであった。この生成物は、95%のエタノールおよびメチルエチルケトン(MEK)中で明らかに可溶性であった。
【0037】
実施例2:
閉鎖された反応器中に、水55.2kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール6.5kg、粘度3.4mPas(DIN 53015;ヘプラーによる方法、4%の水溶液;重合度400;Mw約18000;加水分解度97.9モル%)の水溶液を20%の塩酸溶液34.5kgと一緒に装入した。この装入物を撹拌下に+16℃(温度T1)に冷却した。引続き、30分間の時間でアセトアルデヒド3.8kgを添加した。更に、+16℃での60分間の反応時間後に、この温度を300分間に亘り50℃に上昇させ、そしてこの温度T2をさらに5分間維持した。その後、この生成物を濾過し、蒸留水で洗浄し、水中に再懸濁させた。酸性触媒の存在する残基をNaOHで中和した。最後に、生成物を再び濾別し、再び蒸留水で洗浄し、引続き少なくとも98.5質量%の固体含量になるまで乾燥を行なった。
【0038】
ビニルアルコール単位11.0質量%を有する白色の粉末状ポリビニルアセトアセタールが得られた。アセタール化度は、84.8モル%であり、平均粒度は、110μmであった。この生成物は、95%のエタノールおよびメチルエチルケトン(MEK)中で明らかに可溶性であった。
【0039】
実施例3:
閉鎖された反応器中に、水56.2kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール5.5kg、粘度5.4mPas(DIN 53015;ヘプラーによる方法、4%の水溶液;重合度850;Mw約38000;加水分解度98.1モル%)の水溶液を20%の塩酸溶液34.5kgと一緒に装入した。この装入物を撹拌下に+14℃(温度T1)に冷却した。引続き、30分間の時間でアセトアルデヒド3.8kgを添加した。更に、+14℃での60分間の反応時間後に、この温度を300分間に亘り50℃に上昇させ、そしてこの温度T2をさらに5分間維持した。その後、この生成物を濾過し、蒸留水で洗浄し、水中に再懸濁させた。酸性触媒の存在する残基をNaOHで中和した。最後に、生成物を再び濾別し、再び蒸留水で洗浄し、引続き少なくとも98.5質量%の固体含量になるまで乾燥を行なった。ビニルアルコール単位10.2質量%を有する白色の粉末状ポリビニルアセトアセタールが得られた。アセタール化度は、85.8モル%であり、平均粒度は、110μmであった。この生成物は、95%のエタノールおよびメチルエチルケトン(MEK)中で明らかに可溶性であった。
【0040】
実施例4:
閉鎖された反応器中に、水58.4kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール5.4kg、粘度5.4mPas(DIN 53015;ヘプラーによる方法、4%の水溶液;重合度850;Mw約38000;加水分解度98.1モル%)の水溶液を20%の塩酸溶液32.5kgと一緒に装入した。この装入物を撹拌下に+7℃(温度T1)に冷却した。引続き、30分間の時間でアセトアルデヒド3.7kgを添加した。更に、40分間の反応時間後に、温度を280分間に亘り50℃に上昇させ、そしてこの温度T2をさらに10分間維持した。その後、この生成物を濾過し、蒸留水で洗浄し、水中に再懸濁させた。酸性触媒の存在する残基をNaOHで中和した。最後に、生成物を再び濾別し、再び蒸留水で洗浄し、引続き少なくとも98.5質量%の固体含量になるまで乾燥を行なった。
【0041】
ビニルアルコール単位11.6質量%を有する白色の粉末状ポリビニルアセトアセタールが得られた。アセタール化度は、84.1モル%であり、平均粒度は、155μmであった。この生成物は、95%のエタノールおよびメチルエチルケトン(MEK)中で明らかに可溶性であった。
【0042】
比較例1:
閉鎖された反応器中に、水60.4kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール5.8kg、粘度3.4mPas(DIN 53015;ヘプラーによる方法、4%の水溶液;重合度400;Mw約18000;加水分解度97.9モル%)の水溶液を20%の塩酸溶液30kgと一緒に装入した。この装入物を撹拌下に+10℃(温度T1)に冷却した。引続き、30分間の時間でアセトアルデヒド3.8kgを添加した。更に、40分間の反応時間後に、温度を180分間に亘り30℃に上昇させ、そしてこの温度T2をさらに150分間維持した。その後、この生成物を濾過し、濾液が中性に反応するまで蒸留水で洗浄した。引続き、少なくとも98質量%の固体含量になるまで乾燥を行なった。ビニルアルコール単位11.5質量%を有する白色の粉末状ポリビニルアセトアセタールが得られた。アセタール化度は、84.2モル%であり、平均粒度は、40μmであった。この生成物は、95%のエタノールおよびメチルエチルケトン(MEK)中で明らかに可溶性であった。
【0043】
比較例2(欧州特許出願公開第0271861号明細書A2中の実施例B−8):
反応器中に、水78.1kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール6.2kg(重合度500;加水分解度98.8モル%)の水溶液を35%の塩酸溶液11.7kgと一緒に装入した。この装入物を+11℃(温度T1)に冷却した。引続き、アセトアルデヒド4.0kgを添加した。30分後、沈殿が起こり、反応を+30℃の温度T2で180分間継続させた。その後に、生成物を水で洗浄し、中和した。
【0044】
75.0モル%のアセタール化度を有するポリビニルアセトアセタールが得られ、平均粒度は、40μmであった。
【0045】
比較例3(欧州特許出願公開第0271861号明細書A2中の実施例B−5):
反応器中に、水78.1kg中の完全鹸化されたポリビニルアルコール5.8kg(重合度2400;加水分解度98.8モル%)の水溶液を35%の塩酸溶液17.2kgと一緒に装入した。この装入物を+11℃(温度T1)に冷却した。引続き、アセトアルデヒド3.8kgを添加した。120分後、沈殿が起こり、反応を+50℃の温度T2で180分間継続させた。その後に、生成物を水で洗浄し、中和した。
【0046】
71.5モル%のアセタール化度を有するポリビニルアセトアセタールが得られ、平均粒度は、60μmであった。生成物は、メチルエチルケトン(MEK)中で不溶性であった。
【0047】
次の表1中には、最も重要な配合物データーならびに実施例および比較例の最も重要な分析結果がよりいっそう分かり易くするためにまとめられている。実施例1〜4は、ポリビニルアセトアセタールの製造の際に、アセタール化が開始される温度T1とは無関係に、+40℃を上廻る温度T2での反応の継続によって閉鎖された反応器中で、100μm以上の平均粒度および80モル%を上廻るアセタール化度を達成させることができることを証明する。生成物の全ては、メチルエチルケトン中で明らかに可溶性である。
【0048】
比較例1は、実施例1、2および4と比較可能な処方および類似の反応の実施で、しかし、+30℃の温度T2で、閉鎖された反応器中で実際に84.2モル%の高いアセタール化度を得ることができるが、それにも拘わらず、40μmの平均粒度の比較的微細な粒子だけを得ることができることを示す。比較例2(=欧州特許出願公開第0271861号明細書A2中の実施例B−8)は、閉鎖されていない反応器中で、実施例1、2、4および比較例1と比較可能な処方および類似の反応の実施で、80モル%を上廻るアセタール化度を達成することができず、+30℃の温度T2が、40μmの比較的微細な粒形を必然的に伴なうことを示す。
【0049】
比較例3(=欧州特許出願公開第0271861号明細書A2中の比較例B−5)は、閉鎖されていない反応器中で+50℃の温度T2で80モル%を上廻る高いアセタール化度も100μmを上廻る平均粒度も達成することができないことを示す。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
70モル%以上の加水分解度を有する部分鹸化されたかまたは完全鹸化されたポリビニルエステルをアセトアルデヒドでアセタール化することにより得られた、80モル%を上廻るアセタール化度および100μm以上の平均粒度を有する、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールにおいて、アセタール化を0℃≦T1≦+20℃の温度T1で導入し、引続き+40℃を上廻る温度で継続させ、この場合温度T2は、0.05〜4時間に亘って維持され、アセタール化を閉鎖された反応器中で実施することを特徴とする、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタール。
【請求項2】
70モル%以上の加水分解度を有する部分鹸化されたかまたは完全鹸化されたポリビニルエステルをアセトアルデヒドでアセタール化することにより、80モル%を上廻るアセタール化度および100μm以上の平均粒度を有する、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールを製造する方法において、アセタール化を0℃≦T1≦+20℃の温度T1で導入し、引続き+40℃を上廻る温度T2で継続させ、この場合温度T2は、0.05〜4時間に亘って維持され、アセタール化を閉鎖された反応器中で実施することを特徴とする、高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの製造法である。
【請求項3】
温度が40℃<T2≦+55℃である、請求項2記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの製造法。
【請求項4】
アセタール化を環境とのガス交換なしに実施する、請求項2または3記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの製造法。
【請求項5】
印刷用インキ中のバインダーとしての請求項1記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの使用。
【請求項6】
塗料中および耐蝕剤中のバインダーとしての請求項1記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの使用。
【請求項7】
セラミック未焼結成形体、セラミック粉末および金属粉末のためのバインダーとしての請求項1記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの使用。
【請求項8】
写真フィルムためのバインダーとしての請求項1記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの使用。
【請求項9】
光温図表ためのバインダーとしての請求項1記載の高アセタール化された粗粒状ポリビニルアセトアセタールの使用。

【公表番号】特表2009−538944(P2009−538944A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512557(P2009−512557)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055079
【国際公開番号】WO2007/137999
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】