説明

高エネルギー密度コンデンサおよび他のデバイスのための複合構造

【課題】高エネルギー密度電力変換適用で利用されて、高電圧および高温環境に耐える、コンデンサなどのエネルギー蓄積デバイスを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様では、ポリマー層と、ポリマー層上に配置されている複合層とを含有する物品が記載される。複合層は、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含み、無機コンポーネントの最大寸法は約1マイクロメートル未満である。複合層は、ポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有する。上記物品は、少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する。関連するデバイスも記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、高絶縁耐力を有し、かつ高誘電率を有する複合層を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
高抵抗率、高誘電率、低損失率および高電場絶縁耐力(Vb)を有するポリマーは、コンデンサなどの電子デバイスの誘電体として、重要な適用を有する。電子工業は、費用および性能誘導型であり、材料の費用を押し下げ、かつそれらの信頼性および性能を向上させることへの要求が絶えず増大している。ポリマー膜の押出しまたは溶液流延を伴う生産技術は、薄膜金属被覆技術と容易に組み合わせて、柔軟かつ経済的なデバイスを生むことができ、さらに、それを非常に大きな電子デバイスに製造することができるので、ポリマーベースのデバイスは長い間、重要なものであり続けている。
【0003】
ポリカーボネート、ポリプロピレンおよびポリエステルなどのポリマー膜は、キロボルト範囲で動作する薄膜静電コンデンサを製作するのに選択される絶縁媒体となっている。ポリマーベースのコンデンサは、それらに固有の低誘電損、優れた高周波数応答、低損失率(DF)、低等価直列抵抗(ESR)および高電圧容量のため、多くのパワーエレクトロニクスおよびパルスパワーの印加に選択されるコンデンサとなっている。ポリマーベースのコンデンサは、セラミックベースのコンデンサの場合に観察されるように、印加電圧に伴う容量係数がほとんどなく、金属移動も機械的なひびも生じない。
【0004】
最近10年間にわたって、高度な製造技術と新しい材料との組合せを通して、コンデンサの信頼性の著しい増大がもたらされた。加えて、コンデンサなど、ポリマーベースの電子デバイスは、コンパクトなコンデンサ構造、セルフクリアリング能力、寿命の延長およびエネルギー密度の増大を提供する。これらの利点は、小型化、単純さおよび製造費用の長所と結びついて、パワーエレクトロニクス産業におけるポリマーベースのコンデンサの広い使用を可能にしている。
【0005】
ポリマー複合物は、様々なデバイスにおいて、大量の充填剤を使用して、高誘電率を得るのに使用されている。しかし、不都合なことに、これらのデバイスの一部は、絶縁耐力ならびに衝撃強度および延性などの力学的性質の好ましくない低減を示しうるであろう。さらに、充填剤の添加は、複合材料の脆性を増大させ、それによって、加工および製作上の問題を引き起こす。
【0006】
ポリマーベースのコンデンサは、軽量かつコンパクトであり、それゆえに、様々な地上適用および空中適用に魅力的である。しかし、大部分の誘電ポリマーは、低エネルギー密度(<5J/cc)を特徴とし、かつ/または低絶縁耐力(<450kV/mm)を有し、これによってコンデンサの動作電圧が制限されうる。例えば熱安定性および寿命短縮に関する、他の不都合も、時々、これらのタイプのコンデンサに伴う。高エネルギー密度を達成するために、高誘電率および高絶縁耐力をともに有することが望ましい可能性がある。これらの2つの特性の間のトレードオフが有利ではない可能性もある。高絶縁耐力を示すほとんどの誘電ポリマーは、比較的低い誘電率を有する。観察されている最も高い絶縁耐力は、約2.2の誘電率を有する高品質ポリプロピレン薄膜における約800kV/mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0117886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高エネルギー密度電力変換適用で利用されて、高電圧および高温環境に耐える、コンデンサなどのエネルギー蓄積デバイスが必要である。加えて、上記エネルギー蓄積デバイスは、高誘電率とともに、コンデンサをプリント配線板に組み込むための、電気的、信頼性および加工要件を満たす高破壊電圧を示す必要がある。
【0009】
したがって、かなり高い誘電率および比較的高い絶縁耐力を有する物品を特定することは重要である。前述の問題に対処し、かつ電子工業適用における現在の要求に応じるであろう物品が必要である。さらに、様々な電子デバイス、例えばコンデンサを用いたもので使用するための、高品質なポリマーベースの物品を用意する、より単純で用途が広い方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、ポリマー層と、ポリマー層上に配置されている複合層とを含む物品を提供する。複合層は、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含み、無機コンポーネントの最大寸法は約1マイクロメートル未満である。複合層は、ポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有する。物品は少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する。
【0011】
本発明の別の態様によると、ポリイミド(例えば、ポリエーテルイミド、シアノ改質ポリエーテルイミドなど)、シアノエチルセルロース、セルローストリアセテート、ポリビニリジンヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリカーボネートから選択される少なくとも1つのポリマーを含むポリマー層と、熱可塑性ポリマーおよび無機コンポーネントを含む複合層とを含む物品が開示される。物品は少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する。
【0012】
本発明の別の態様は、絶縁構造によって隔てられている2つのコンダクターを含み、絶縁構造がポリマー層と、ポリマー層上に配置されている複合層とを含むコンデンサを提供する。複合層は、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含み、無機コンポーネントの最大寸法が約1マイクロメートル未満である。複合層は、ポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有し、物品は、少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する。
【0013】
本発明のこれらの特徴および他の特徴、態様ならびに利点は、添付図面を参照して以下の「発明を実施するための形態」を読む場合に、よりよく理解されるであろう。添付図面では、全図面を通して、同様のパーツが同様の文字で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一態様による、物品の部分の横断面図である。
【図2】本発明の一態様による、物品の部分の横断面図である。
【図3】本発明の一態様による、複合膜の厚さに対する絶縁耐力のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特定の特徴のみを本明細書に例示および記載するが、当業者には、多くの修正形態および変更形態が想起されるであろう。したがって、添付の「特許請求の範囲」は、本発明の真の趣旨の範囲内にあるそのような修正形態および変更形態をすべて包含するものと理解するべきである。本明細書および「特許請求の範囲」において、以下の意味を有するいくつかの用語が言及されるであろう。
【0016】
数詞がない場合は、文脈が別段のことを明確に指示しない限り、複数の参照を包含する。概数を表すことばは、本明細書および「特許請求の範囲」全体において本出願で使用される場合、それが関係する基本機能に変化をもたらすことなく変動できるであろういかなる量の表現も修飾するように適用されうる。したがって、「約」などの用語によって修飾されている値は、指定されている正確な値に限定されるものではない。場合によって、概数を表すことばは、その値を測定するための器具の精度に対応するものでありうる。同様に、ある用語と結合して「フリー」が使用されうる。これは、修飾された用語の自由も依然として考慮に入るが、わずかな数または極微量を包含しうる。
【0017】
本出願で使用される場合、「うる」および「ありうる」は、1セットの状況内における出現の可能性、指定された特性、特徴または機能の保有、および/または限定されている動詞に関連する性能、能力または可能性のうちの1つまたは複数を表すことによる別の動詞の限定を示す。したがって、「うる」および「ありうる」の使用は、一部の状況では、修飾されている用語が時々、妥当でない、可能でない、または適していない可能性も考慮に入れつつ、修飾されている用語が、示されている能力、機能または使用に見かけ上妥当である、可能である、または適していることを示す。例えば、一部の状況では、ある事象または能力が予測でき、一方、他の状況ではその事象または能力が起こりえず−この区別が「うる」および「ありうる」という用語によって取り込まれる。
【0018】
「オプション」または「任意選択で」は、それに続いて記載されている事象または状況が起こっても、起こらなくてもよいこと、ならびにこの記載にはその事象が起こる場合およびそれが起こらない場合が含まれることを意味する。
【0019】
本出願で考慮される誘電特性の一部は、誘電率および絶縁耐力である。誘電材料の「誘電率」は、真空中における同じ構成の電極の静電容量に対する、電極の間および周囲の空間が誘電体で満たされている場合のコンデンサの静電容量の比である。本出願で使用される場合、「絶縁耐力」は、印加ACまたはDC電圧下におけるポリマー(誘電)材料の絶縁破壊抵抗の尺度を指す。絶縁破壊に先だって印加される電圧を誘電(ポリマー)材料の厚さで割って、絶縁耐力値を得る。絶縁耐力は通常、キロボルト(ミリメータ当たり)(kV/mm)など、長さの単位の上に電位差の単位がくる形で測定される。本出願で使用される場合、別段の指示がない限り、「高温」という用語は、摂氏約100度(℃)を超える温度を指す。
【0020】
上記の通り、一実施形態において、本発明は、ポリマー層と、ポリマー層上に配置されている複合層とを含む物品を提供する。複合層は、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含む。無機コンポーネントの最大寸法は、約1マイクロメートル未満である。複合層は、ポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有する。物品は少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する。
【0021】
この発明の様々な実施形態によるポリマー層として、様々なポリマーが使用されうる。一実施形態において、ポリマー層には、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーが含まれる。ポリマー層は、熱可塑性ポリマーのブレンドまたは熱硬化性ポリマーによる熱可塑性ポリマーのブレンドを含みうる。別の実施形態では、ポリマー層は、結晶性ポリマーまたは非晶質ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーの非限定的な例には、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(例えば、ポリスチレンまたはゴム改質ポリスチレンとのブレンド)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シアノ改質ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリジン−トリフルオロエチレンP(VDF−TrFE)、ポリ塩化ビニリデンテトラフルオロエチレンコポリマーP(VDF−TFE)、ポリビニリジントリフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−TFE−HFE)、ポリビニリジンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−HFE)およびポリ(フッ化ビニリジン−トリフルオロエチレン−クロロフルオロエチレン)ターポリマー、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルスクロース、シアノエチル含有有機ポリシロキサンまたはシアノエチルセルロースが含まれる。
【0022】
様々なポリマーの物理的ブレンドも使用できる。さらに、様々なコポリマー、例えばスターブロックコポリマー、グラフトコポリマー、交互ブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、イオノマー、デンドリマー、および様々なポリマーの反応生成物も使用されうる。異なる種類のポリマーは異なる加工を必要とし、当業者ならば、特定のポリマーまたはポリマーブレンドに必要であろう加工条件を容易に特定できるであろう。
【0023】
熱可塑性ポリマーとブレンドできる熱硬化性ポリマーの非限定的な例には、エポキシ/アミン樹脂、エポキシ/無水物、イソシアネート/アミン、イソシアネート/アルコール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、不飽和ポリエステルおよびビニルエステルブレンド、不飽和ポリエステル/ウレタンハイブリッド樹脂、ポリウレタン−尿素、反応性ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、反応性ポリアミド、ウレタンポリエステルなどのポリウレタン、シリコーンポリマー、フェノールポリマー、アミノポリマー、エポキシポリマー、ビスマレイミド、ポリフェニレンエーテル(熱硬化性グレード)、ならびに以上のもののうち少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0024】
一実施形態において、ポリマー層のポリマーの平均分子量は、約10,000から約100,000までの範囲にある。一実施形態において、ポリマー層は、ASTM D 882−02を使用して測定した場合、少なくとも約5,000psiの機械的強度を示す。
【0025】
物品は複合層を含む。本出願で使用される場合、「複合」という用語は、複数のコンポーネントでできている材料を指すものとする。したがって、この実施形態において、複合層は、ポリマーまたはコポリマーと、少なくとも1種の無機構成成分、例えば充填材とを含有するポリマー複合物である。
【0026】
一実施形態において、複合層は、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマーには、ポリマー層に関して上に記載した様々な材料が含まれるが、それらに限定されるものではない。上記のように、様々なポリマーの多くの物理的ブレンド、コポリマーおよび反応生成物も使用されうる。一実施形態において、ポリマー層のポリマーと複合層の熱可塑性ポリマーは、同じポリマーでありうる。別の実施形態では、ポリマー層のポリマーと複合層の熱可塑性ポリマーは、異なるポリマーでありうる。
【0027】
複合層は、少なくとも1種の無機コンポーネントを含む。一実施形態において、無機コンポーネントには、セラミック材料が含まれる。別の実施形態では、無機コンポーネントには、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属、金属酸化物、窒化物、灰チタン石、リン化物、硫化物、粉末状強誘電性材料およびケイ化物から選択される少なくとも1つが含まれる。無機コンポーネントの非限定的な例には、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化ホウ素、酸化アルミニウム(例えばアルミナまたはヒュームドアルミナ)、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化セシウム、イットリア、シリコン酸化物(例えば、シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、コロイダルシリカのディスパージョンおよび沈降シリカ)、ジルコン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛、酸化セリウム、酸化銅、酸化カルシウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタル、酸化ジルコニウム鉛、酸化ジルコニウムチタン鉛(Pb(ZrTi1−x)O、式中、x≧0.01)、ランタン添加ジルコニウム酸化チタン鉛、ランタン添加酸化ジルコニウム鉛、SrBiTa、PbNi1/3Nb2/3TiO−PbTiO、PbMg1/3Nb2/3TiO−PbTiO、NaNbO;(K,Na)(Nb,Ta)O;KNbO;BaZrO;Na0.250.25Bi0.5TiO;Ag(Ta,Nb)O;Na0.5Bi0.5TiO−K0.5Bi0.5TiO−BaTiOストロンチウム添加マンガン酸ランタン、チタン酸カルシウム銅(CaCuTi12)、チタン酸カドミウム銅(CdCuTi12)、ランタン添加CaMnOおよび(Li,Ti)添加NiO、BaFe1219、(Bi,La,Tb)(Fe,Mn,Dy,Pr)O、BaCoFe2441、YFe12、NiZnFe、Cu0.2Mg0.4Zn0.4Fe、Fe、(Cu,Ni,Zn)Fe、TbMn、PbNi1/33Nb2/3TiO−CuNiZnおよびBaTiO−NiZnFeが含まれる。
【0028】
一実施形態において、無機コンポーネントは、チタン酸バリウム(BaTiO)、窒化ホウ素、酸化アルミニウム(アルミナ)、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、酸化セシウム、イットリア、シリカ、酸化セリウム、酸化銅、酸化カルシウム、五酸化ニオブ、五酸化タンタルおよび酸化ジルコニウム鉛から選択された少なくとも1つである。別の実施形態に、無機コンポーネントは、ランタン添加ジルコニウム酸化チタン鉛、PbNi1/3Nb2/3TiO−PbTiO、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化アルミニウムおよびチタン酸バリウムストロンチウムから選択される少なくとも1つである。
【0029】
無機コンポーネントは、様々な形または形態でありうる。例には、微粒子(例えば、実質的に球状の粒子)、繊維、小板、破片、ひげ結晶またはロッドが含まれる。無機コンポーネントは、様々な大きさでありうるが、一部の特定の実施形態では、約1マイクロメートル未満の粒度を有する。
【0030】
一実施形態において、無機コンポーネント(例えば、粒子)は、指定した粒度、粒度分布、平均粒子表面積、粒形および粒子断面形状を有する形態で使用されうる。無機コンポーネントは、円形、楕円形、三角形、長方形、多角形、または以上の形状のうちの少なくとも1つを含む組合せでありうる断面形状を有しうる。一実施形態において、無機コンポーネントは、最大寸法が約1マイクロメートル未満であるように、選択された寸法を有する。別の実施形態では、無機コンポーネントの最大寸法が約500ナノメートル未満である。別の実施形態では、無機コンポーネントの最大寸法が約100ナノメートル未満である。寸法は、直径、表面の輪郭、長さなどでありうる。さらに別の実施形態では、無機コンポーネントの最大寸法が約10ナノメートルから約500ナノメートルまでの範囲にある。一実施形態において、無機コンポーネントは、約1超のアスペクト比を有する繊維または小板でありうる。無機コンポーネントは、複合層への組込み前に、凝集体または凝集塊でありうる。本出願で使用される場合、「凝集体」は、相互に物理的に接触した複数の無機コンポーネント粒子が含まれ、一方、「凝集塊」は、相互に物理的に接触した複数の凝集体と定義されうる。
【0031】
一実施形態において、無機コンポーネントは、複合層の総重量をベースにして少なくとも約5重量パーセントの量で、複合層に存在しうる。別の実施形態では、無機コンポーネントは、複合層の総重量をベースにして約5重量パーセントから約90重量パーセントまでの量で、複合層に存在しうる。さらに別の実施形態では、無機コンポーネントは、複合層の総重量をベースにして約30重量パーセントから約70重量パーセントまでの量で、複合層に存在しうる。
【0032】
複合層は、様々な方法で用意することができる。そのような方法には、溶融混合、溶液混合もしくは同様な方法、または以上の混合方法のうちの少なくとも1つを含む組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。溶融混合は、せん断力、伸展力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、または以上の力もしくはエネルギー形態のうちの少なくとも1つを含む組合せの使用を伴う。溶融混合は、通常、加工機器を用いて行われ、前述の力は、単一スクリュー、複数のスクリュー、噛合共回転もしくは反回転スクリュー、非噛合共回転もしくは反回転スクリュー、往復スクリュー、ピン付きのスクリュー、ピン付きのバレル、ロール、ラム、らせんローター、または以上のもののうち少なくとも1つを含む組合せによって作用する。
【0033】
一実施形態において、複合層は、ポリマー層の絶縁耐力より少なくとも約10パーセント(%)小さい絶縁耐力を有する。別の実施形態では、複合層は、ポリマー層の絶縁耐力より少なくとも約50パーセント小さい絶縁耐力を有する。
【0034】
一実施形態において、複合層は、ポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有する。別の実施形態では、複合層は、ポリマー層の誘電率より少なくとも約60パーセント大きい誘電率を有する。
【0035】
物品(10)の、本発明の一実施形態の概略図を図1に示す。ポリマー層(12){「キャッピング層」とも呼ばれる}が複合層(14)と接触している。
【0036】
別の実施形態では、上記ポリマー層が複合層の第1の表面と接触しており、第2のポリマー層が複合層の第2の表面と接触しており、複合層の前記第2の表面が複合層の前記第1の表面の実質的に反対側にある。図2は、ポリマー層(22)が複合層(30)の第1の表面(26)と接触している物品(20)の概略図を表す。第2のポリマー層(24)は、複合層(30)の第2の表面(28)と接触している。ゆえに、この実施形態において、物品は、第1のポリマー層と第2のポリマー層との間に「サンドイッチされている」複合層を含む。
【0037】
複合層上にポリマー層を形成する様々な方法が当技術分野で知られている。一実施形態において、ポリマー層は、化学蒸着(CVD)、スピンコーティング、溶媒キャスト、ディップコーティング、原子層蒸着(ALD)、膨張熱プラズマ(ETP)、イオンプレーティング、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)、金属有機化学蒸着(MOCVD)(有機金属化学蒸着(OMCVD)とも呼ばれる)、金属有機気相エピタキシー(MOVPE)、ならびにスパッタリング、反応性電子ビーム(e−ビーム)蒸着およびプラズマスプレーなどの物理的蒸着方法などの方法によって、複合層の選択された表面に付着させることができる。ポリマー層と複合層との間の境界面におけるいかなる空隙または欠陥も、その物品の誘電特性の低減を引き起こしうる。したがって、連続的かつ均一なポリマー層を形成するように注意しなければならない。
【0038】
一実施形態において、複合層は、ポリマー層の厚さより少なくとも約50%大きい厚さを有する。別の実施形態では、複合層は、ポリマー層の厚さの約100%から約400%までの範囲にある厚さを有する。
【0039】
一実施形態において、物品は、約3から約100までの範囲の誘電率を有する。一実施形態において、物品は、少なくとも約150kV/mm(キロボルト(1ミリメートル当たり))の絶縁耐力を有する。別の実施形態では、物品は約150kV/mmから約700kV/mmまでの範囲の絶縁耐力を有する。さらに別の実施形態では、物品は、約300kV/mmから約500kV/mmまでの範囲の絶縁耐力を有する。
【0040】
この発明の実施形態の主要な利点は、より高エネルギーの環境でも良好に機能する物品の性能に関する。複合層の誘電率の増大と比較して、ポリマー層の絶縁耐性が高いほど、より大きな電圧低下の影響に耐えることができる。このようにして、低電位差状態下における複合層の破損の可能性が最小化または除去される。別の実施形態では、ポリマー層および複合層の組合せによって、最適な、絶縁破壊の力にも耐える、かつ高誘電率も示す物品が可能となる。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明による方法および実施形態を例示するものであり、それゆえ、「特許請求の範囲」を限定するものと解釈するべきではない。
【0042】
別段に特定されない限り、すべての成分は、Alpha Aesar,Inc.(Ward Hill、Massachusetts)、Sigma Aldrich(St.Louis、Missouri)、Spectrum Chemical Mfg.Corp.(Gardena、California)などの一般的化学供給業者から購入可能でありうる。
【0043】
Alpha Aesar,Inc製の平均粒度45nmを有するアルミナ粒子を、樹脂およびアルミナの総重量をベースにして5重量パーセントで、シアノエチルプルラン(CRS(商標))ポリマー樹脂(信越化学工業製)中に混合して、ナノコンポジットを形成させた。シアノエチルプルランポリマー樹脂を、シアノエチルプルランポリマー樹脂と溶媒の溶液の総重量をベースにして10重量%の量で溶媒に加えた。溶液流延用に使用された溶媒は、ジメチルホルムアミド(DMF)であった。その後、ナノコンポジットを溶媒中に溶解させ、ガラス基板上に流し入れ膜を形成させた。その後、膜を約150°Cで約2時間乾燥させた。規定された時間の終わりに、スピンコーティング付着法を用いて、ポリエーテルイミドの層を複合膜上に付着させて、キャッピング層を形成させた。その後、複合膜をキャッピング層と共に約150°Cで約2時間乾燥させて、キャッピングされた複合膜を形成させた。キャッピングされた複合膜をシリコンウエハからはがし、真空オーブン中で終夜約15の°Cで乾燥させた。キャスティングおよび乾燥後の膜の厚さは、5〜20ミクロンであった。ポリエーテルイミドがキャッピング層であるポリエーテルイミド−アルミナ複合層も、上述の方法を用いて作製した。
【0044】
誘電率の測定は、Hewlett Packard Corporationから購入可能な誘電アナライザーモデルHP4285Aを使用して、100〜105Hzの周波数範囲で室温で行った。
【0045】
誘電絶縁耐力は、ASTM D149(方法A)に従って測定した。膜をシリコーン油中に浸漬し、高電圧サプライを用いて直流(DC)電圧を印加した。絶縁破壊の測定には球−平板セットアップを用いた。一番上の電極であるステンレス鋼球の直径は、1/4インチ(6.25ミリメートル)であった。底部電極はステンレス鋼板であった。球状電極を高電位に接続し、一方、平板電極を地電位に接続した。試験は、段階的電圧を使用して室温で行った。次の上昇高電圧が印加される前の各々の電圧段階は500V/秒であった。絶縁破壊が起こるまでこの過程は進行させた。試料が急激な電流増加を示したときに、絶縁破壊は起こったと言われる。絶縁耐力は、この電圧を試料の厚さで割ることによって計算した。
【0046】
図3は、「純粋な」ポリマー、純粋な複合材料(ポリマー+無機コンポーネント)、および2通りの異なったアルミナ濃度(2.5重量パーセントおよび5重量パーセント)を含有し、Ultem(登録商標)キャッピング層を有するUltem(登録商標)PEIベースのナノコンポジットなどの様々な材料の絶縁耐力を表す。2通りの異なったアルミナ濃度(2.5重量パーセントおよび5重量パーセント)を含有するUltem(登録商標)PEIベースのナノコンポジット、およびUltem PEI(登録商標)またはUltem(登録商標)ベースの複合膜は、スピンコーティング方法を用い、約150°Cで乾燥させてシリコンウエハ上に付着させた。Ultem(登録商標)膜は、キャッピング層として使用され、乾燥Ultem(登録商標)−アルミナ複合膜上に付着させた。全膜の厚さを5〜20マイクロメートルの範囲に制御した。図3から観察されるように、純粋なポリマー(すなわち、Ultem(登録商標)材料)が、約550の最も高い平均絶縁耐力を有した。一方、純粋な複合物、すなわち、Ultem(登録商標)材料+2.5重量部Alが最も低かった。キャッピング層を有する複合膜は、純粋な複合層より高い平均絶縁耐力を有することが判明した。しかし、5重量パーセントのAlを含む複合物を有する二層は、依然として高い誘電率値を保持しながら、純粋なポリマーのものと実質的に等しい平均絶縁耐力を有したことが判明した。2.5重量パーセントのAlを含む複合物を有する二層系は、絶縁耐力の有意な増大を示さなかったことが観察された可能性がある。
【0047】
典型的な実施形態に関して本発明を記載したが、当業者には、様々な変更がなされうること、および発明の趣旨を逸脱しない範囲で、均等物をその要素の代用にできることが理解されよう。加えて、特定の状況または材料が本発明の教示に適応するように、本質的な範囲を逸脱しない範囲で多くの修正を行うことができる。したがって、意図されている本発明は、この発明を実行するために企図されている「発明を実施するための形態」として開示されている特定の実施形態に限定されず、添付の「特許請求の範囲」の範囲内に入るすべての実施形態が本発明に包含されるであろう。
【符号の説明】
【0048】
10 物品
12 ポリマー層
14 複合層
20 物品
22 ポリマー層
24 第2のポリマー層
26 複合層(30)の第1の表面
28 複合層(30)の第2の表面
30 複合層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー層と、
ポリマー層上に配置されている複合層であり、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含み、無機コンポーネントの最大寸法が約1マイクロメートル未満である複合層と
を含む物品であって、
前記複合層がポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有し、物品が少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する
物品。
【請求項2】
ポリマー層が、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、シアノ改質ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリジン−トリフルオロエチレンP(VDF−TrFE)、ポリビニリデンテトラフルオロエチレンコポリマーP(VDF−TFE)、ポリビニリジントリフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−TFE−HFE)、ポリビニリジンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−HFE)、ポリ(フッ化ビニリジン−トリフルオロエチレン−クロロフルオロエチレン)ターポリマー、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルスクロース、シアノエチル含有有機ポリシロキサン、シアノエチルセルロース、ならびに以上のポリマーのうちの少なくとも1つを含む混合物、コポリマーおよび反応生成物から選択される少なくとも1つである、請求項1記載の物品。
【請求項3】
複合層の熱可塑性ポリマーが、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリアルキルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリ酢酸ビニル、液晶ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、芳香族ポリエステル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、シアノ改質ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリジン−トリフルオロエチレンP(VDF−TrFE)、ポリビニリデンテトラフルオロエチレンコポリマーP(VDF−TFE)、ポリビニリジントリフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−TFE−HFE)、ポリビニリジンヘキサフルオロプロピレンコポリマーP(VDF−HFE)およびポリ(フッ化ビニリジン−トリフルオロエチレン−クロロフルオロエチレン)ターポリマー、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルスクロース、シアノエチル含有有機ポリシロキサン、シアノエチルセルロース、ならびに以上のポリマーのうちの少なくとも1つを含む混合物、コポリマーおよび反応生成物から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は請求項2記載の物品。
【請求項4】
無機コンポーネントが、セラミック材料、ホウ化物、炭化物、ケイ酸塩、カルコゲニド、水酸化物、金属、金属酸化物、窒化物、灰チタン石、リン化物、硫化物、粉末状強誘電性材料およびケイ化物から選択される少なくとも1つである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の物品。
【請求項5】
無機コンポーネントが実質的に球状粒子の形であり、約1マイクロメートル未満の平均粒度を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の物品。
【請求項6】
複合層が、ポリマー層の絶縁耐力より少なくとも約10パーセント少さい絶縁耐力を有する、請求項1乃至の請求項5いずれか1項記載の物品。
【請求項7】
複合層が、ポリマー層の厚さより少なくとも約50パーセント大きい厚さを有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記ポリマー層が複合層の第1の表面と接触していおり、第2のポリマー層が複合層の第2の表面と接触しており、複合層の前記第2の表面が複合層の前記第1の表面の実質的に反対側にあり、
複合層の誘電率が第2のポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の物品。
【請求項9】
ポリエーテルイミド、シアノ改質ポリエーテルイミドおよびシアノエチルセルロースから選択される少なくとも1つのポリマーを含むポリマー層と、
熱可塑性ポリマーならびにランタン添加ジルコニウム酸化チタン鉛、PbNi1/3Nb2/3TiO−PbTiO、チタン酸バリウム(BaTiO)およびこれらの組合せから選択された無機コンポーネントを含む複合層と
を含み、
少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する物品。
【請求項10】
絶縁構造によって隔てられている2つのコンダクターを含むコンデンサであって、絶縁構造が、
ポリマー層と、
ポリマー層上に配置されている複合層であり、選択された寸法を有する少なくとも1つの無機コンポーネントを含有する熱可塑性ポリマーを含み、無機コンポーネントの最大寸法が約1マイクロメートル未満である複合層と
を含み、
複合層がポリマー層の誘電率より少なくとも約30パーセント大きい誘電率を有し、
絶縁構造が少なくとも約150kV/mmの絶縁耐力を有する
コンデンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−278430(P2010−278430A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−109811(P2010−109811)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】