説明

高コハク酸生産細菌

本発明は、好気性条件下および嫌気性条件下でコハク酸を生産する高い能力を有する、ハイブリッドのコハク酸生産系に関する。好気性条件下および嫌気性条件下の両方において機能し得るハイブリッドの細菌のコハク酸生産系の代謝工学は、生産プロセスをより効率的にし、かつプロセスの制御および最適化をより容易にする。この細菌は、好気性条件下および嫌気性条件下の両方において、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸またはグリオキシル酸の生産を連続的に増大する、不活化タンパク質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、大腸菌内で設計され、好気性条件下および嫌気性条件下の両方において高レベルのコハク酸を生産するように操作されたハイブリッドのコハク酸生産系に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
有用な特製薬品のコハク酸およびその誘導体は、広範な産業上の用途を有する。コハク酸は、食物、医薬、プラスティック、化粧品および織物のための原料として使用され、そして、めっきおよび排ガス消毒において使用される(非特許文献1)。コハク酸は、1,4−ブタンジオール(BDO)、テトラヒドロフランおよびγ−ブチロラクトンのようなプラスティックの前駆体のための供給原料として役立ち得る。さらに、コハク酸およびBDOは、ポリエステルのためのモノマーとして使用され得る。コハク酸のコストを下げることができれば、コハク酸は、他の大半の薬品を生産するための中間の供給原料としてより有用になる(非特許文献2)。コハク酸とともに、他の4炭素のジカルボン酸(例えば、リンゴ酸およびフマル酸)もまた、供給原料の可能性を有する。
【0003】
グルコース、キシロース、ソルビトールおよび他の「生態系を保護する(green)」再生可能な供給原料(この場合において、発酵プロセスを介して)からのコハク酸、リンゴ酸およびフマル酸の生産は、これらの酸を再生不能な供給源から誘導する、よりエネルギー集約的な方法に取って代わる手段である。コハク酸は、プロピオン酸生産細菌の嫌気性発酵の間に生成される中間体であるが、これらのプロセスは、低収量と低濃度とをもたらす。酸の混合物が大腸菌(E.coli)の発酵から生成されることが長い間公知であった。しかしながら、発酵されるグルコース1モルあたりに対して、1.2モルのギ酸、0.1モル〜0.2モルの乳酸および0.3モル〜0.4モルのコハク酸しか生成されない。その結果、カルボン酸を発酵的に生成させる努力により、所望の産物に変換されない、比較的大量の増殖物質(例えば、グルコース)をもたらした。
【0004】
慣習的に、コハク酸は嫌気性条件下で大腸菌により生成される。コハク酸の収量および生産性を増大させるために、大腸菌の嫌気性での中心的な代謝経路を代謝的に操作する、多くの試みがなされた(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11、非特許文献12)。生産条件の最適化と組み合わせた遺伝工学はまた、コハク酸生産を増大させることが示されてきた。一例は、二段階発酵生産方式を使用する、コハク酸生産変異体の大腸菌株の増殖であり、この方式は、最初の好気性の増殖段階、それに続く嫌気性の生産段階または/および二酸化炭素、水素もしくは両方のガスの混合物を使用する嫌気性発酵のヘッドスペース(headspace)条件の変更を含む(Nghiemら(1999)の特許文献1、非特許文献13)。このプロセスは、好気性段階の間のコハク酸生産の欠如およびコハク酸生産のための嫌気性増殖段階の厳密な要件により制限される。
【0005】
詳細には、特定の経路の増幅、追加または低減を介して酵素レベルを操作することは、所望の産物の高い収量をもたらし得る。大腸菌の混合酸の発酵経路を利用する、嫌気性条件下でのコハク酸生産のための種々の遺伝的改良が記載されている。一例は、大腸菌からのホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepC)の過剰発現である(非特許文献14)。別の例において、フマル酸からコハク酸への変換は、大腸菌においてネイティブのフマル酸レダクターゼ(frd)を過剰発現させることによって改善された(非特許文献15、非特許文献16)。特定の酵素は大腸菌に固有ではないが、コハク酸生産を増大させるのに役立ち得る可能性がある。Rhizobium etli由来のピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)を大腸菌へ導入することにより、コハク酸生産が増大された(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献17)。他の代謝工学(metabolic engineering)ストラテジーとしては、コハク酸の競合経路を不活化することが挙げられる。リンゴ酸デヒドロゲナーゼを、不活性化されたピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl)遺伝子および乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)遺伝子を有する宿主で過剰発現させた場合、コハク酸が主要な発酵産物となった(非特許文献11、非特許文献8)。同一の変異体株(pfl−およびldh−)における不活性なグルコースホスホトランスフェラーゼ系(ptsG)はまた、大腸菌におけるより高いコハク酸生産を得ること、および増殖を改善することが示された(非特許文献4)。
【0006】
代謝工学は、代謝経路のスループットを操作することにより、プロセス生産性を相当に改善する可能性を有する。特に、特定の経路の増幅、追加または欠失により酵素レベルを操作することは、所望の産物の高い収量をもたらし得る。ハイブリッドのコハク酸生産系は、好気性条件下および嫌気性条件下の両方において、コハク酸生産を可能にする。環境の酸素状態からコハク酸生産を脱共役させることは、大量のコハク酸が生産され得る可能性を有する。
【0007】
関与する工程は、細菌種の好気性および嫌気性の中心的経路の数学的モデリングから最初に生成された、2つの最適な経路の設計を明らかにする。両方の条件の最適な設計により決定されるように、タンパク質は不活化され得る。本質的にカルボン酸生産を改善するのに必要なタンパク質の追加はまた、活性化または過剰発現され得る。
【特許文献1】米国特許第5,869,301号明細書
【非特許文献1】Zeikusら、App.Microbiol.Biotechnol.(1999)51:545−52
【非特許文献2】VaradarajanおよびMiller,Biotechnol.Prog.(1999)15:845−54
【非特許文献3】Bunchら、Microbiology(1997)143:187−195
【非特許文献4】Chatterjeeら、Appl Environ Microbiol.(2001)67:148−54
【非特許文献5】Donnellyら、App.Biochem.Biotech.(1998)70−72:187−98
【非特許文献6】Gokarnら、Biotech.Let.(1998)20:795−8
【非特許文献7】Gokarnら、Appl.Environ.Microbiol.(2000)66:1844−50
【非特許文献8】HongおよびLee、Appl.Microbiol.Biotechnol.(2002)58:286−90
【非特許文献9】Linら、Biotechnol.Prog.(2004)20:1599−604
【非特許文献10】Mat−Janら、J.Bact.(1989)171:342−8
【非特許文献11】StolsおよびDonnelly、App.Environ.Microbiol.(1997)63:2695−701
【非特許文献12】Vemuriら、Appl.Environ.Microbiol.(2002)68:1715−27
【非特許文献13】Vemuriら、J.Ind.Microbiol.Biotechnol.(2002)28:325−32
【非特許文献14】Millardら、App.Environ.Microbiol.(1996)62:1808−10
【非特許文献15】Goldbergら、App.Environ.Microbiol.(1983)45:1838−47
【非特許文献16】Wangら、App.Biochem.Biotechnol.(1998)70−72:919−28
【非特許文献17】Gokarnら、App.Microbiol.Biotechnol.(2001)56:188−95
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
好気性条件下および嫌気性条件下の両方において機能するように設計された、ハイブリッドのカルボン酸生産系を備える細菌が記載される。この細菌は、好気性条件下および嫌気性条件下の両方において、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸またはグリオキシル酸の生産を連続的に増大する、不活化タンパク質を有する。不活化タンパク質は、ACEB、ACKA、ADHE、ARCA、FUM、ICLR、MDH、LDHA、POXB、PTA、PTSGおよびSDHABから選択され得る。本発明の一実施形態において、ACKA、ADHE、ICLR、LDHA、POXB、PTA、PTSGおよびSDHABが不活化される。本発明の別の実施形態において、ACEB、ACKA、ADHE、ARCA、FUM、ICLR、MDH、LDHA、POXB、PTA、PTSGおよびSDHABの種々の組み合わせが不活化され、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸およびグリオキシル酸から選択されるカルボン酸の生産が操作される。これらのタンパク質の不活化は、ACEA、ACEB、ACEK、ACS、CITZ、FRD、GALP、PEPCおよびPYCの過剰発現と組合され得、コハク酸の収量をさらに増大させ得る。
【0009】
本発明の一実施形態において、ackA遺伝子、adhE遺伝子、arcA遺伝子、fum遺伝子、iclR遺伝子、mdh遺伝子、ldhA遺伝子、poxB遺伝子、pta遺伝子、ptsG遺伝子およびsdhAB遺伝子が破壊されている破壊株が作製される。本発明の別の実施形態において、ackA、adhE、arcA、fum、iclR、mdh、ldhA、poxB、pta、ptsGおよびsdhABの種々の組み合わせが破壊される。以下を含む遺伝子型の変異体株が記載される:
【0010】
【化1】

以下の株:
【0011】
【化2】

は、コハク酸生産株の非限定的な例を提供する。コハク酸の収量をさらに増大させるためにACEA、ACEB、ACEK、FRD、PEPCおよびPYCが過剰発現される、これらの株はまた記載される。
【0012】
さらに、変異体細菌株によりカルボン酸を生産する好気的な方法、嫌気的な方法および好気的/嫌気的な方法が記載され、この方法は、上記の変異体細菌株により培養物に播種する工程、好気性条件下でこの細菌株を培養する工程、嫌気性条件下でこの細菌株を培養する工程、およびこの培地からカルボン酸を単離する工程による。細菌株は、フラスコ、バイオリアクター、ケモスタットバイオリアクターまたはフェドバッチ(fed batch)バイオリアクター内で培養され得、カルボン酸を取得し得る。一例において、好気性条件下で細胞を培養し、迅速に高レベルのバイオマスを達成し、その後、コハク酸の収量を増大させるために嫌気性条件下でのコハク酸の生産を続けることによって、カルボン酸の収量はさらに増大される。
【0013】
1モルの基質あたり、少なくとも2モルのカルボン酸が生産され、好ましくは1モルの基質あたり、少なくとも3モルのカルボン酸が生産される、細菌株および培養方法が記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(本発明の実施形態の説明)
本明細書に記載されるカルボン酸は、構造、pHおよび存在するイオンに依存して、塩、酸、塩基または誘導体であり得る。例えば、用語「コハク酸塩(succinate)」および「コハク酸(succinic acid)」は、本明細書において交換可能に使用される。コハク酸はまた、ブタン二酸(C)とも呼ばれる。本明細書で使用される化学薬品としては、ギ酸、グリオキシル酸、乳酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸(OAA)、ホスホエノールピルビン酸(PEP)およびピルビン酸が挙げられる。細菌の代謝経路(クレブス回路(クエン酸回路、トリカルボン酸回路またはTCA回路とも呼ばれる)が挙げられる)は、LehningerのPrinciples of Biochemistryおよび他の生化学の教科書に見出され得る。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に結合した」または「作動可能に連結した」は、機能的に結合した核酸配列をいう。
【0016】
「低下した活性」または「不活化」とは、適切なコントロール種と比べて、タンパク質の活性の少なくとも75%の低下であるように本明細書で定義される。好ましくは、活性の少なくとも80%の低下、少なくとも85%の低下、少なくとも90%の低下、少なくとも95%の低下が達成され、そして、最も好ましい実施形態において、この活性は無くなる(100%)。タンパク質は、インヒビター、突然変異または発現もしくは翻訳の抑圧などによって不活化され得る。
【0017】
「過剰発現」または「過剰発現された」とは、適切なコントロール種と比べて、少なくとも150%のタンパク質の活性であるように本明細書において定義される。過剰発現は、より活性な形態または阻害に耐性である形態を産生するようにタンパク質を突然変異させること、インヒビターを除去すること、あるいは活性化因子を添加することなどによって達成され得る。過剰発現はまた、リプレッサーを除去すること、細胞に複数のコピーの遺伝子を追加すること、または内因性遺伝子をアップレギュレートすることなどによっても達成され得る。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「破壊」および「破壊株」は、遺伝子の活性が低減されるような様式で、ネイティブの遺伝子またはプロモーターが、突然変異、欠失、妨害またはダウンレギュレートされる細胞株をいう。遺伝子は、全体的なゲノムDNA配列のノックアウトまたは除去によって完全に(100%)減少され得る。読み枠突然変異、早期の終止コドン、重要な残基の点突然変異または欠失もしくは挿入などを使用することによって、活性なタンパク質の転写および/または翻訳を完全に防止することにより、遺伝子産物を完全に(100%)不活化することができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「組換えの」は、遺伝子操作された物質に関するか、遺伝子操作された物質に由来するか、または遺伝子操作された物質を含むことである。
【0020】
遺伝子は以下のように短縮される:イソクエン酸リアーゼ(aceA(iclとしても公知である));リンゴ酸シンターゼ(aceB);グリオキシル酸バイパスオペロン(shunt operon)(aceBAK);イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(aceK);アセテートキナーゼ−ホスホトランスアセチラーゼ(ackA−pta);アコニテートヒドラターゼ1およびアコニテートヒドラターゼ2(acnAおよびacnB);アセチルCoAシンテターゼ(acs);アルコールデヒドロゲナーゼ(adhE);好気呼吸調節制御因子(aerobic respiratory control regulator)AおよびB(arcAB);過酸化物感受性(arg−lac);アルコールアセチルトランスフェラーゼ1およびアルコールアセチルトランスフェラーゼ2(atf1およびatf2);推定カダベリン/リジンアンチポーター(cadR);クエン酸シンターゼ(citZ);脂肪酸分解レギュロン(fadR);フマル酸レダクターゼ(frd);フルクトースレギュロン(fruR);フマラーゼA、フマラーゼBまたはフマラーゼC(fumABC);ガラクトースパーミアーゼ(galactose permease)(galP);イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(icd);イソクエン酸リアーゼ(icl);aceBAKオペロンリプレッサー(iclR);乳酸デヒドロゲナーゼ(ldhA);リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh);ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepC);ピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl);ピルビン酸オキシダーゼ(poxB);ホスホトランスフェラーゼ系遺伝子FおよびG(ptsFおよびptsG);ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc);グアノシン3’,5’−ビスピロリン酸シンテターゼI(relA1);リボソームタンパク質S12(rpsL);ならびにコハク酸デヒドロゲナーゼ(sdh)。Δlac(arg−lac)205(Ul69)は、細胞をHに感作させる遺伝子を保持するarg−lac領域の染色体の欠失である(51)。PYCは様々な種に由来し得、Lactococcus lactis pycは、一例として表現される(AF068759)。
【0021】
略語:アンピシリン(Ap);オキサシリン(Ox);カルベニシリン(Cn);クロラムフェニコール(Cm);カナマイシン(Km);ストレプトマイシン(Sm);テトラサイクリン(Tc);ナリジクス酸(Nal);エリスロマイシン(Em);アンピシリン耐性(Ap);チアンフェニコール/クロラムフェニコール耐性(Thi/Cm);マクロライド、リンコサミド(lincosamide)およびストレプトグラミン(streptogramin)A耐性(MLS);ストレプトマイシン耐性(Sm);カナマイシン耐性(Km);グラム陰性の複製起点(ColE1);ならびにグラム陽性の複製起点(OriII)。一般的な制限酵素および制限部位は、NEB(登録商標)(NEW ENGLAND BlOLABS(登録商標),www.neb.com)およびINVITROGEN(登録商標)(www.invitrogen.com)において見出され得る。ATCC(登録商標):AMERICAN TYPE CULTURE COLLECTIONTM(www.atcc.org)。
【0022】
本発明の特定の実施形態において使用されるプラスミドおよび株は、表1および表2に示される。MG1655は、F接合に欠陥を有し、Guyerら(18)に報告されるようにFλ自然発生変異体である。経路の欠失を、P1ファージ導入およびλ赤色(red)リコンビナーゼに基づく1工程の不活化を使用して実行した(10)。プラスミドおよび変異体大腸菌株の構築を、本明細書に引用され、Sambrook(38)およびAusebel(5)に記載される標準的な生化学技術を使用して実行した。
【0023】
【表1】

各実験のために、適切な場合、株をプラスミドにより新規に形質転換する。単一のコロニーを適切な抗生物質を含むプレート上に再ストリークする。単一のコロニーを、適切な抗生物質を含有する50mlのLB培地を含む250ml振とうフラスコに移し、12時間、250rpmで振とうしながら37℃で好気的に増殖させる。細胞をLB培地で二回洗い、1%v/vで、適切な抗生物質濃度を含有する400mlのLB培地をそれぞれ含む2L振とうフラスコに播種し、12時間、250rpmで振とうしながら37℃で好気的に増殖させる。適切な細胞バイオマス(約1.4gCDW)を遠心分離で集め、上清を捨てる。60mlの好気性LB培地または60mlの嫌気性LB培地(20g/Lのグルコース、1g/LのNaHCO3を補充したLBブロス培地)により細胞を再懸濁し、直ちに約10 OD600の濃度でリアクターに播種する。NaHCOを培地に添加した。なぜなら、NaHCOのpH緩衝能力およびCOを供給する能力により、細胞増殖およびカルボン酸生産を促進したからである。適切な抗生物質を、株に依存して添加する。
【実施例】
【0024】
(実施例1:乳酸、酢酸およびエタノールの阻害)
好気性条件下および嫌気性条件下の両方においてカルボン酸を生産する、ハイブリッドの細菌株は、バイオマス生成が低い、嫌気性プロセスの制限を克服し得る。バイオマスは、発酵プロセスの開始において、好気性条件下で生成され得る。この段階の間、カルボン酸は、好気的な代謝合成経路により大量に生成され、時間とコストとを節約する。一旦、高いバイオマスが得られると、高い収量で炭素源をカルボン酸へさらに変換するために、嫌気性条件を変換するように環境が切り替えられ得るか、または環境が嫌気性条件を変換することを可能にし得る。再設計された嫌気性コハク酸発酵経路を使用することにより、カルボン酸の収量が、グルコース1モルあたり、2モルまたは3モルよりはるかに多い産物まで増大することが想定される。
【0025】
まず、カルボン酸生産のため、TCA回路への流入を増大させるために、好気性代謝における2つの酢酸経路(ピルビン酸オキシダーゼ(POXB)およびアセテートキナーゼ−ホスホトランスアセチラーゼ(ACKA−PTA))を不活化する(図1)。一旦、これらの2つの経路が不活化されると、酢酸生産がかなり低下し、より多くの炭素の流入がTCA回路を駆動させる。
【0026】
さらに、乳酸を介しての炭素の流入を、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を不活化することにより低下させる。ハイブリッドのコハク酸生産系の嫌気的な設計部分は、大腸菌の混合酸発酵経路における複数の経路の不活化からなる。乳酸デヒドロゲナーゼ(LDHA)およびアルコールデヒドロゲナーゼ(ADHE)は、NADHおよび炭素原子の両方を保存するために不活化される(図1)。NADHは、発酵性のカルボン酸合成経路に必要とされる。炭素の保存は、発酵性のカルボン酸合成経路への炭素の流入を増大させる。
【0027】
次に、グルコースホスホトランスフェラーゼ系(PTSG)もまた、コハク酸合成のためのホスホエノールピルビン酸(PEP)プールを増大させるために不活化される(図1)。PEPはOAAへの前駆体であり、OAAはコハク酸合成のための主要な前駆体である。PTSGを不活化することはまた、好気性代謝の炭素のスループットを増大させる。これら全ての遺伝的改変により、ここで、ハイブリッドの生産系の好気的な設計は、カルボン酸生産のための2つの経路を含む;そのうちの一方はTCA回路の酸化的な分岐(branch)であり、他方はグリオキシル酸回路である。
【0028】
この時点において、カルボン酸は、TCA回路の酸化的な分岐から生成される。TCA回路のタンパク質のいずれか一つの不活化は、分岐されたカルボン酸合成経路を生成する。炭素は、OAA−リンゴ酸経路とクエン酸−グリオキシル酸経路またはクエン酸イソクエン酸経路との両方を通って流れる。図2においてコハク酸について実証されるように、分岐されたカルボン酸経路は、好気性代謝および嫌気性代謝の両方を介して、カルボン酸産物の連続的な生産を可能にする。
【0029】
(実施例2:グリオキシル酸バイパス(shunt)の流入の増大)
以前に示されているように、ネイティブのACEAおよびACEBの存在は、さらなる発現を必要とせずにカルボン酸生産を駆動するのに十分である。しかしながら、ネイティブの発現レベルは、フィードバック阻害に影響されやすく、かつ環境の好気性条件または嫌気性条件に感受性である。グリオキシル酸バイパスの構成的な活性化は、カルボン酸合成のための高レベルの好気性代謝を維持するのに必須である。この活性化は、aceBAKオペロンリプレッサー(ICLR)を不活化することにより可能になる。図1に見られるように、グリオキシル酸バイパスの活性化は、高レベルのカルボン酸生産を達成する両方の混合的な発酵環境のを提供する。
【0030】
(実施例3:コハク酸生産)
コハク酸デヒドロゲナーゼ(SDHAB)の不活化は、好気性条件下でのコハク酸の蓄積を可能にする(図1)。コハク酸は、通常、好気性条件下で蓄積しない。なぜなら、コハク酸は、電子伝達系に電子を供給するため、およびにオキサロ酢酸(OAA)を充填するためにTCA回路で酸化されるからである。図2に示される、分岐された代謝経路は、コハク酸を生成する炭素の流入のための、好気性、嫌気性かつ構成的な経路を提供する。二重の合成経路の存在は、純粋な好気性培養条件または純粋な嫌気性培養条件に対する必要性を軽減させ、より厳密性の低い基準のもとでの産業的な培養条件を可能にする。
【0031】
(実施例4:カルボン酸生産)
コハク酸生産は、カルボン酸生産のためのプロトタイプの代謝経路として記載される。他のカルボン酸は、TCAの変換酵素のうちのいずれかを不活化することによる、この系を使用して生産され得る。特に、フマラーゼ(FUM)の不活化は、分岐されたフマル酸生産株を生成する。同様に、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)の不活化は、分岐されたリンゴ酸生産株を生成する。グリオキシル酸は、リンゴ酸シンターゼ(ACEB)を不活化し、かつイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(ACEK)活性を増大させることにより生産され得る。
【0032】
細菌の生産系を使用する、種々の大量の特製薬品(フマル酸、リンゴ酸、OAAおよびグリオキシル酸が挙げられる)の生産は、これらの物質のための再生可能かつ低コストの供給源を提供する。好気性条件下および嫌気性条件下の両方においてカルボン酸を生産する細菌株を使用して、培養条件の制限を弱め、それにより大量の薬品生産のコストを軽減する。
【0033】
(実施例5:収量の増大)
ハイブリッドのコハク酸生産系のための好気性ネットワーク設計および嫌気性ネットワーク設計の両方としては、大腸菌の遺伝子破壊(ΔsdhAB、ΔackA−pta、ΔpoxB、ΔiclR、ΔptsG、ΔldhAおよびΔadhE)の種々の組み合わせが挙げられる。さらに、ピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)およびホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepC)は、単一のプラスミド上の系において同時発現され得る(図1)。PYC活性およびPEPC活性を増大させることは、顕著にコハク酸合成のためのOAAプールを増大させる。PYCはピルビン酸を直接OAAに変換し、PEPCはPEPを直接OAAに変換する。最終的に、ハイブリッドのコハク酸生産は、これらの経路への炭素の流入を駆動するPYCおよびPEPCの過剰発現とともにコハク酸合成のための3つの経路を含む(図2)。第一の経路は、TCA回路の酸化的分岐であり、これは好気的に機能する。第二の経路は、還元的な発酵性のコハク酸合成経路であり、これは嫌気性的に機能する。第三の経路は、グリオキシル酸回路であり、これは、一旦活性化されると、好気的および嫌気性的に機能する。
【0034】
ハイブリッドのコハク酸生産系へのさらなる改善としては、ピルビン酸をコハク酸合成経路へ導く、リンゴ酸デヒドロゲナーゼの過剰発現が挙げられる。このことは、あらゆるピルビン酸蓄積を低下させることにより、生産速度を改善し得る。グリオキシル酸回路内の経路はまた、循環効率を改善するために過剰発現され得る(すなわち、クエン酸シンターゼ、アコニターゼ、イソクエン酸リアーゼ、リンゴ酸シンターゼ)。グルコース輸送系の操作はまた、コハク酸合成経路への炭素のスループットを改善し得る。一例は、ガラクトースパーミアーゼ(GALP)である。これは、酢酸生産を低下させる一方で、グルコース取り込みを改善するために潜在的に使用され得る。外的に添加された酢酸の存在下でのアセチルCoAシンテターゼ(ACS)の過剰発現はまた、コハク酸の収量をさらに増大させる潜在的なストラテジーである。理論的に、ACSは、酢酸を消費してアセチルCoAのプールを増大し得るが、その一方で、OAAのプールが単純にグルコースから生成され得る。グリオキシル酸回路のOAA基質要求量とアセチルCoA基質要求量とを脱共役させることにより、コハク酸についての達成可能な最大限の理論上の収量を生じ得る。OAAプールを吸い出し得る他の経路を除去することによっても、このプロセスを亢進させ得る。
【0035】
(実施例6:バッチ発酵)
上記の戦略的な遺伝子操作の全ての結果として、大腸菌の変異体株は、ハイブリッドのコハク酸生産系(図2)として作製される。この変異体株は、いかなる大気の酸素の圧力であっても高レベルのコハク酸を生産し得る。特定のコハク酸合成経路は、常に、環境の酸素状態に依存せずに活発にコハク酸を生産する。この要因は、非常に重要である。なぜなら、これは、高く通気された培養を維持するのに伴う問題を回避し、好気性増殖から嫌気性増殖へ転移する間、細胞が効率的にコハク酸を生産することを可能にするからである。このことは、操作のより高い柔軟性および培養プロトコールのより高い柔軟性を確実にする。発酵器の操作制御パラメータは、大いに広がる。
【0036】
以前は、好気性バッチ発酵は、バイオマスを増大させることが必要とされた。好気性バッチ発酵は、1.0L NEW BRUNSWICK SCIENTIFIC BIOFLO 110TM発酵器内の600mlの培地体積により実行されていた。温度は37℃で維持され、攪拌速度は800rpmで一定であった。使用された入り口の気流は1.5L/minであった。溶存酸素を、ポーラグラフィ酸素電極(NEW BRUNSWICK SCIENTIFICTM)を使用してモニタリングし、実験を通して80%より高い飽和状態に維持した。通気を維持し、溶存酸素濃度をモニタリングするために注意が必要とされた。これらの厳密な好気性増殖条件は、大量のモル濃度のカルボン酸収量を代償にしてバイオマスを増大させることを可能にする。ハイブリッドのカルボン酸生産系は、酸素のストリンジェンシーを低下させ、バイオマスの増大と大量の産物の収量との利益を提供する。
【0037】
(実施例7:ケモスタット発酵)
ケモスタット実験を、0.1hr−1の希釈率、好気性条件下で実行する。この希釈率は、細菌株の特異的な増殖速度(これは、事前のバッチ培養研究の対数増殖期のデータから得られる)に基づいてカスタマイズされなければならない。600mlのバッチ培養は、先に記載される培養条件を使用し、そして1.5N HNOおよび2N NaCOを使用して7.0に制御され得る、ガラス電極を使用してpHをモニタリングして、ケモスタット(chemostatically)により維持され得る。播種後、培養を、12時間〜14時間、バッチ様式で増殖させ、その後、ケモスタットを開始するために供給ポンプおよび排出ポンプを起動させる。連続的な培養は、5滞留時間(residence time)後に安定状態に達した。最適な密度および代謝産物を、5および6滞留時間でのサンプルから測定し、次に、安定状態が確立され得ることを確かめるために比較する。
【0038】
ハイブリッドの生産系により、増殖条件は、酸素負荷の厳密な境界を含まないカルボン酸生産のために最適化され得る。培養条件のわずかな変化は代謝生産を制限せず、それゆえ、酸素負荷は、コストを減らし、生産性を増大させる最適化プロセスの間、重要度は低くなる。
【0039】
(実施例8:フェドバッチ発酵)
同様に、好気性条件下で実施されるフェドバッチは酸素負荷要求量により同様に制限された。最初の培地体積は、記載されるように1.0−L発酵器内の400mlである。グルコースは、バッチ実験結果から得られる、研究される株の特異的な増殖速度にしたがって指数関数的に供給される。グルコース供給のために使用されるプログラムは、NEW BRUNSWICK SCIENTIFICTMのBIOCOMMAND PLUSTM BioProcessing Softwareである。播種後、バイオリアクター内の培養を、14時間までバッチ様式で増殖させ、その後、フェドバッチを開始するためにグルコースポンプを起動させる。
【0040】
ハイブリッドのカルボン酸生産系は、好気性条件下および嫌気性条件下で大量のカルボン酸を生産する高い能力を有する。このコハク酸生産系は、基本的に両方の条件下で機能し得、生産プロセスをより効率的に、かつプロセスの制御および最適化をより容易にし得る。したがって、最も効率的な培養増殖および大量のバイオマス/生体触媒の生産の2つの工程は、好気性条件下でなされ得、この条件において、コハク酸が最も効率的に蓄積され、そして高い細胞密度において酸素が制限されるようになる場合、より多くのモル濃度の効率的な嫌気性変換プロセスが優勢になる。この切り替えの間、培養を分離する必要も、培養を操作的に変更する必要も無いので、大規模リアクターに容易に適合可能である。カルボン酸生産は、グルコース1モルあたり、1モルよりはるかに多いレベルのカルボン酸まで増大され得、いくつかのモデルは、グルコース1モルあたり、2モル、3モル以上の高い収量の産物を予測する。
【0041】
本明細書に引用される全ての参考文献は、明らかに参考として援用される。参考文献を、便利のために再度、本明細書において列挙する。
【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ハイブリッドのコハク酸生産系の設計および構築。
【図2】大腸菌内のハイブリッドのコハク酸生産系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセテートキナーゼ(ACK)タンパク質、ピルビン酸オキシダーゼ(POXB)タンパク質およびホスホトランスアセチラーゼ(PTA)タンパク質の低下した活性を含み、かつ、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、好気呼吸調節制御因子(aerobic respiratory control regulator)(ARC)、脂肪酸分解レギュロン(FADR)、フルクトースレギュロン(FRUR)、フマラーゼ(FUM)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(ICD)、イソクエン酸リアーゼ(ICL)、aceBAKオペロンリプレッサー(ICLR)、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL)、ホスホトランスフェラーゼ系F(PTSF)およびホスホトランスフェラーゼ系G(PTSG)ならびにコハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)からなる群より選択される1つ以上のタンパク質の低下した活性をさらに含む、改変された細菌。
【請求項2】
ACK、ADH、POXB、PTAおよびSDHの低下した活性を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項3】
ACK、ADH、ICLR、LDH、POXB、PTAおよびSDHの低下した活性を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項4】
ACK、ADH、ICLR、LDH、POXB、PTA、PTSGおよびSDHの低下した活性を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項5】
ACK、ADH、ICLR、LDH、POXB、PTA、PTSGおよびSDHの低下した活性を含み、GALPの増加した活性を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項6】
SBS552MG、MBS553MGおよびMBS554MGからなる群より選択される、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項7】
イソクエン酸リアーゼ(ACEA)、リンゴ酸シンターゼ(ACEB)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(ACEK)、アコニターゼ(ACN)、アセチルCoAシンテターゼ(ACS)、クエン酸シンターゼ(CITZ)、フマル酸レダクターゼ(FRD)、ガラクトースパーミアーゼ(galactose permease)(GALP)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)およびピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)からなる群より選択される1つ以上のタンパク質の低下した活性を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項8】
アルコールデヒドロゲナーゼ(adh)、アセテートキナーゼ(ack)、好気呼吸調節制御因子(arc)、脂肪酸分解レギュロン(fadR)、フマル酸レダクターゼ(frd)、フルクトースレギュロン(fruR)、フマラーゼ(fum)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(icd)、イソクエン酸リアーゼ(icl)、aceBAKオペロンリプレッサー(iclR)、乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh)、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl)、ピルビン酸オキシダーゼ(poxB)、ホスホトランスアセチラーゼ(pta)、ホスホトランスフェラーゼ系F(ptsF)およびホスホトランスフェラーゼ系G(ptsG)ならびにコハク酸デヒドロゲナーゼ(sdh)からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の破壊を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項9】
イソクエン酸リアーゼ(aceA)、リンゴ酸シンターゼ(aceB)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(aceK)、アコニターゼ(acn)、アセチルCoAシンテターゼ(acs)、クエン酸シンターゼ(citZ)、ガラクトースパーミアーゼ(galP)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepC)およびピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の過剰発現を含む、請求項1に記載の改変された細菌。
【請求項10】
アセテートキナーゼ(ack)、ピルビン酸オキシダーゼ(poxB)およびホスホトランスアセチラーゼ(pta)の破壊を含み、かつ、アルコールデヒドロゲナーゼ(adh)、好気呼吸調節制御因子(arc)、脂肪酸分解レギュロン(fadR)、フマル酸レダクターゼ(frd)、フルクトースレギュロン(fruR)、フマラーゼ(fum)、ガラクトースパーミアーゼ(galP)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(icd)、イソクエン酸リアーゼ(icl)、aceBAKオペロンリプレッサー(iclR)、乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh)、ピルビン酸ギ酸リアーゼ(pfl)、ホスホトランスフェラーゼ系F(ptsF)およびホスホトランスフェラーゼ系G(ptsG)ならびにコハク酸デヒドロゲナーゼ(sdh)からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の破壊をさらに含む、遺伝子操作された細菌細胞。
【請求項11】
ack−pta、adh、ldh、poxBおよびsdhの破壊を含む、請求項10に記載の遺伝子操作された細菌細胞。
【請求項12】
ack、adh、iclR、ldh、poxB、ptaおよびsdhの破壊を含む、請求項10に記載の遺伝子操作された細菌細胞。
【請求項13】
ack、adh、iclR、ldh、poxB、pta、ptsGおよびsdhの破壊を含む、請求項10に記載の遺伝子操作された細菌細胞。
【請求項14】
ack、adh、iclR、ldh、poxB、pta、ptsGおよびsdhの破壊を含み、GALPの増大した活性を含む、請求項10に記載の遺伝子操作された細菌細胞。
【請求項15】
イソクエン酸リアーゼ(aceA)、リンゴ酸シンターゼ(aceB)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(aceK)、アコニターゼ(acn)、アセチルCoAシンテターゼ(acs)、クエン酸シンターゼ(citZ)、ガラクトースパーミアーゼ(galP)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(pepC)およびピルビン酸カルボキシラーゼ(pyc)からなる群より選択される遺伝子の過剰発現を含む、請求項10に記載の遺伝子操作された細菌細胞。
【請求項16】
細菌培養中でカルボン酸を生産する方法であって、該方法は、
a)培養中に細菌を提供する工程であって、ここで、該細菌は、ACKタンパク質、POXBタンパク質およびPTAタンパク質の低下した活性を含み、さらに、
i)ADH、ARC、FADR、FRD、FRUR、FUM、ICD、ICL、ICLR、LDH、MDH、PFL、PTA、PTSF、PTSGおよびSDHからなる群より選択される1つ以上のタンパク質の低下した活性、
ii)ACEA、ACEB、ACEK、ACN、ACS、CITZ、GALP、PEPCおよびPYCからなる群より選択される1つ以上のタンパク質の低下した活性、または
iii)i)およびii)の両方を含む、工程;
b)該細菌に糖基質を供給する工程;
c)好気性条件下で、該細菌が該糖を代謝して十分なバイオマスになることを可能にする工程;
d)嫌気性条件下で、該細菌が該糖を代謝してカルボン酸生産を最大限にすることを可能にする工程;ならびに、
e)該カルボン酸を該培養から回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
前記細菌が、ack、adh、iclR、ldh、poxB、pta、ptsGおよびsdhの破壊を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌が、ack、adh、iclR、ldh、poxB、pta、ptsGおよびfumの破壊を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記細菌が、ack、adh、iclR、ldh、poxB、pta、ptsGおよびmdhの破壊を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記細菌が、イソクエン酸リアーゼ(ACEA)、リンゴ酸シンターゼ(ACEB)、イソクエン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ/ホスホリラーゼ(ACEK)、アコニターゼ(ACN)、アセチルCoAシンテターゼ(ACS)、クエン酸シンターゼ(CITZ)、フマル酸レダクターゼ(FRD)、ガラクトースパーミアーゼ(GALP)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)およびピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)からなる群より選択されるタンパク質の増加した活性を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記培養が、フラスコ培養、バッチ培養、フェドバッチ培養またはケモスタット培養である、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記培養が好気性での増殖条件であり、ヘッドガス(head gas)を交換することなく、カルボン酸生産が嫌気性条件下で続けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記カルボン酸が、グルコース1モルあたり2モルより多く回収される、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記カルボン酸が、グルコース1モルあたり3モルより多く回収される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−513023(P2008−513023A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532568(P2007−532568)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033408
【国際公開番号】WO2006/034156
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(504080087)ライス ユニバーシティー (6)
【Fターム(参考)】