説明

高スループットの細胞ベースアッセイ、その使用方法及びキット

【課題】 高スループットで、細胞の生存率/維持率の高いアッセイが存在しないことはプロテオミクスの創薬能力を最大化する上での大きなボトルネックであり、本願発明はこうした問題を解決することをその課題とするものである。
【解決手段】 細胞がマルチウェルフィルタプレート内に配置され、成長する。アッセイ実施に際しては真空法又は遠心法ではなく、むしろ重力を使用して未結合のリガンドを洗い落とす。次いで細胞を検査して結合リガンドを検出する。単数又は複数の洗浄ステップを、マルチウェルフィルタプレートの各ウェルと整合する開放ウェルを有するキャリヤプレート内にマルチウェルフィルタプレートを配置する又は、マルチウェルフィルタプレートの底部に取り付けたウィック装置又は下方ドレンを使用して実施し得る。重力効果によるろ過が可能となるに十分な洗浄液を添加する。その他方法におけるそれの4倍の率で各ウェル内に細胞が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、ここに引用することによりその全部を本明細書の一部とする、2007年1月31日に提出された米国仮特許出願番号第60/898,571号の利益を主張するものである。本発明は、高スループットの細胞ベースアッセイ(細胞を用い薬剤による反応性を検討する評価)、その使用法及びそうしたアッセイ用のキットに関し、詳しくは、高スループットの、免疫学測定のような細胞アッセイ用の、重力ベースの洗浄/ろ過ステップに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞及び別のエンティティ(一般には医薬品又は医薬品候補、毒素、環境汚染その他)間における相互作用を検出するために種々の方法を用いることは斯界に既知である。細胞ベースアッセイは数多くのフォーマットにおいて広く入手可能であり、このアッセイを使用して、テスト化合物における、細胞の1つ以上のマーカー用分子(一般にはタンパク質)を発現させる作用を検出する。
一般に、細胞ベースアッセイでは分化応答性(differentiative-response)が測定され、細胞壁又は細胞内のタンパク質のような分化特異的なマーカー分子を免疫学測定する必要がある。一般に、少なくとも1つのリガンド(第1抗体またはその他エンティティ)を添加してこれを細胞のマーカー分子に結合させ、このリガンド自体によるか又は第2のリガンド(検出可能なマーカーを有する第2の抗体の如き)を使用して、蛍光法、比色法または放射能法によりマーカー分子を検出することができる。
【0003】
未結合のリガンドをそうした検出操作以前に除去する必要性が免疫学測定を複雑化している。未結合のリガンドは代表的には遠心沈殿法の洗浄プロトコルにより除去する。このプロトコルでは、添加した1つ以上のリガンドを含む液体高さが低下するので溶液に洗浄バッファを追加する。次いでこれを遠心分離し、上清を除去して細胞が少量の液体中に残される。未結合のリガンドが確実に除去されるよう、洗浄操作はしばしば3〜8回繰り返される。
このプロセスは時間浪費的で、一人が所定時間に処理できるチューブ数には限度があり、自動化するにしても簡単ではない。更には、抜き取り量や抜き取り場所の違いで、細胞は容器替えか又は液量不足(抜き出し量が多過ぎた時)によるストレスを受け又は死んでその数が減少する。同様に、背景試薬が測定を正確に行い得るに十分に除去されることが保証されるよう、洗浄回数を多めに維持する必要もある。
米国特許出願番号第2001/0055776A1号によれば、マルチウェル型のフィルタープレートを使用して真空法を用いるとずっと高スループットのフォーマットが提供されることが示唆される。低度の真空はコントロールが難しく、そうした低度の真空に対する各ウェルの反応も様々で、乾燥するウェルもあれば、過剰な流体を保持し続けて疑似ポジティブ信号を生じるウェルもあり、各ウェル間の結果は一貫性を欠いたものとなる。
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願番号第60/898,571号
【特許文献2】米国特許出願番号第2001/0055776A1号
【特許文献3】同第5,223,409号
【特許文献4】同第6,989,099号
【特許文献5】同第4,618,533号
【特許文献6】同第4,944,879号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高スループットで、細胞の生存率/維持率の高いアッセイが存在しないことはプロテオミクスの創薬能力を最大化する上での大きなボトルネックであり、本願発明はこうした問題を解決することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、細胞をマルチウェルプレート内に配置して成長させる。アッセイ実施に際しては、未結合のリガンドを真空又は遠心分離ではなくむしろ重力で洗い落とした後、細胞を検査して結合リガンドを検出する。
本発明によれば、マルチウェルフィルタープレートアッセイで使用する細胞の重力流れ洗浄法が提供される。
本発明によれば、ポリカーボネート製フィルタを有するマルチウェルフィルタプレートで使用する細胞の重力流れ洗浄法が提供される。
本発明によれば、親水性のポリカーボネート製フィルタを有するマルチウェルフィルタプレートで使用する細胞の重力流れ洗浄法が提供される。
本発明によれば、孔寸法が約3μmである親水性のポリカーボネート製フィルタを有するマルチウェルフィルタプレートで使用する、細胞の重力流れ洗浄法が提供される。
本発明によれば、細胞維持率を高めるための、親水性のポリカーボネート製フィルタを有するマルチウェルフィルタプレートで使用する細胞の重力流れ洗浄法が提供される。
【0007】
本発明によれば、標的特異試薬の検出法であって、
a.細胞壁又は細胞内からなる群より選択した位置に位置付けた、選択された標的分子を持つ細胞を選択すること、
b.細胞をマルチウェルプレート上で培養すること、
c.細胞内又は細胞上の選択した標的分子用のリガンドにして、検出可能なマーカーを含み且つ検出可能なマーカーを含む第2のリガンドに付加可能なリガンドを含む試薬に細胞を接触させること、
d.細胞を重力流れにより少なくとも1回洗浄して、細胞の選択した標的分子に未結合の試薬を除去して洗浄済みの細胞を提供すること、
e.標的分子の有無を示すリガンド(燐酸化タンパク質のようなタンパク質の機能変換を含む)を検出すること、
を含む方法が提供される。
本発明によれば、上記方法に於いて、リガンドとしての一次抗体及び二次抗体を提供することが含まれる。
【0008】
本発明によれば、上記方法に於いて、リガンドとしての一次抗体及び二次抗体を提供すること及び、一次抗体に結合した二次抗体を蛍光法、化学ルミネセンス法、比色法又は放射能法により検出することを介して、標的分子に結合した一次抗体を検出すること、が含まれる。
本発明によれば、洗浄流体と、未結合の試薬とを重力ろ過するための装置であって、底部を多孔質膜で覆った2つ以上のウェルを有するフィルタプレートと、フィルタプレートの各ウェルと同数で且つ整列し、開放上部及び開放底部を有するウェルを有するキャリヤプレートと、収集トレーと、を含む装置が提供される。
本発明によれば、孔寸法が約1〜約5μm、好ましくは約3μmである親水性の膜を備えるフィルタプレートが提供される。
本発明によれば、ウェルを有するキャリヤプレートにして、前記ウェルの内径が、このキャリヤプレートと共に相互作用するフィルタプレートの各ウェルの外径よりも少なくとも若干大きいキャリヤプレートが提供される。
本発明によれば、親水性の膜を備えるフィルタプレートと、その内面を親水性としたウェルを備えるキャリヤプレートとが提供される。
マルチウェルフィルタプレートと、プレートキャリヤと、廃棄物収集体と、から形成され、細胞の重力流れ洗浄に使用するキットが提供される。
【0009】
本発明によれば、親水性の膜を有するマルチウェルフィルタプレートと、プレートキャリヤと、廃棄物/試薬収集体とから形成される、細胞の重力流れ洗浄に使用するキットが提供される。
本発明によれば、孔寸法が約3μmである親水性のポリカーボネート製の膜を有するマルチウェルフィルタープレートと、プレートキャリヤと、廃棄物/試薬収集体と、マーカータンパク質に結合可能な第1抗体と、第1抗体に結合可能であり且つ検出可能なエンティティを有する第2抗体と、から形成される、細胞の重力流れ洗浄に使用するキットが提供される。
本発明によれば、蛍光法、比色法又は放射能法により検出可能な第2抗体を備えるキットが提供される。
本発明によれば、フローサイトメトリー法により検出可能な第2抗体を備えるキットが提供される。
【発明の効果】
【0010】
高スループットで、細胞の生存率/維持率の高いアッセイ、その使用方法及びキットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、例えば、細胞のマーカー用タンパク質の発現により表示されるような、細胞の成長や分化に関するテスト化合物の効果をスクリーニングするために使用できる、高スループットの細胞ベースアッセイ及び関連するキット、そしてその使用方法を提供するものである。以下に本発明の構成部品を説明する。要約すると、細胞をフィルタプレート上で培養するフィルタプレートは、プレート上部での細胞培養やその場での洗浄を可能とする孔付きの、低リン光性材料を含む。洗浄ステップで重力ろ過を用いることで細胞の損失量が最小化される。
フィルタプレート上の細胞はリガンドを含む試薬と接触し、このリガンドが特に、代表的にはタンパク質である細胞のマーカー分子と、検出可能な薬剤とに結合する。検出可能な薬剤は、キレート化してキレート化剤となり、リガンドと結合するランタニドイオンであり得る。又はキレート化剤は、検出可能なエンティティをそこに形成又は付加した、市販入手可能な任意の抗体その他であり得る。所望であれば細胞を試薬と接触させる以前に細胞培養培地を除去することができる。随意的には、試薬を細胞培養上清に直接添加することも可能である。そうした直接添加によれば、追加の洗浄ステップを回避し得ると共に、アッセイの高スループット性が一段と高くなる。
【0012】
細胞を洗浄して未結合試薬を除去した後、蛍光法、化学ルミネセンス法、又は比色法等により、検出可能な薬品(agent)に関連する検出及び測定を実施する。エンティティの検出はマーカー分子へのリガンドの結合を示すことから、マーカー分子の出現検出のために使用することができる。蛍光法を用いるある実施例では、蛍光の時間分解蛍光測定法により、細胞ベースアッセイに特有の強い背景光が最小化され得る。
本発明の1実施例ではリガンドは一次抗体のみであり、一次及び二次の各抗体を共に使用するアッセイと比較して処理時間は短い。あるいは、一次及び二次の各抗体又は、ビオチンにカップリングさせた第1リガンドと、アビジン又はストレプトアビジンを含む第2リガンドとの如き2つのリガンドを使用しても良い。
本発明の方法は中でも、細胞分化の監視、細胞生存率の評価、又は、マーカータンパク質発現に関する種々の効果に関してテスト化合物をスクリーニング試験する場合に使用することができる。本方法は、細胞を培養するフィルタプレートを使用してマーカータンパク質を検出可能であり、高スループットスクリーニングフォーマットで使用するべく容易に適合させ得ることから、生体内の所望又は非所望の効果に関してテスト化合物をスクリーニング試験する際の重大なボトルネックが緩和される。
【0013】
本発明によれば、本発明のスクリーニング及び検出方法で使用するためのテストキットも提供される。キットは、マーカー分子用のリガンドと、マーカー分子用のリガンドの一部としてか、又は第1リガンドのみに結合する第2リガンドとしての、検出可能なエンティティと、細胞培養に好適なフィルタプレートと、フィルタプレート及びろ過物収集プレートを保持するキャリヤプレートと、を含む。このキットのフィルタプレートは、フィルタプレート上で培養される細胞を重力流れによってその場で洗い落とせる孔寸法を有する低背景リン光材料を有する。キットには、マーカータンパク質を発現させ得る細胞も含まれる。所望であれば、本発明の様々の方法のマニュアルをキットに含ませ得る。
本発明の検出及びスクリーニング法で使用し得る細胞は任意の特定形式のものには限定されず、一般には哺乳動物のものであり、人間のものであることが好ましい。そうした細胞には、一次細胞の培養物のみならず新生物細胞ライン又は通常細胞ラインが含まれる。単独又は多数の細胞を、例えば生体内に維持した状態で培養することができる。1実施例では細胞は、骨、精巣、睾丸の幹細胞、又は、重層扁平上皮、ES細胞、神経前駆細胞、グリア前駆細胞、又は、顆粒球性、核白血球性、赤血球性、巨大核細胞性、脊髄性、リンパ様、の各幹細胞を含む造血前駆細胞のように、更に分化することのできる前駆細胞である。
【0014】
本発明の方法では、検出可能なマーカー分子を発現させるべく、特定形式の細胞をその内部で培養可能な培地を使用することができる。所定の細胞形式のみならず、温度や二酸化炭素割合のようなその他の培養条件に対して適宜の培養培地を選択する点は当業者のよく知るところである(例えば、1986年のANIMAL CELL CULTURE, R.I. Freshney, ed.,を参照されたい)。
本発明に従い検出することのできるマーカー分子は代表的にはタンパク質であり、培養する細胞の性質によって決定され得、細胞表面と細胞内の各タンパク質とを含む。本発明は任意の特定のマーカータンパク質の使用に限定されるものではない。細胞内マーカータンパク質を検出しようとする場合、従来から知られるように、検出可能なエンティティを含む第1リガンド又は第2リガンドを使用して細胞を固定し、透過化してから培養することが好ましい。本発明に従い検出され得る細胞内マーカータンパク質には、これに限定しないが、ヘモグロビンA、サイトケラチン(例えばIL−4、IFN)、アクチン、シグナル伝達分子、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(骨芽細胞分化用マーカー)、フォンヴィレブランド因子、そして、GFAP、MAP2、ベータ・チューブリンIII、ネスチン、のような神経前駆細胞分化マーカー、が含まれる。
【0015】
テスト化合物の毒性を評価するべく検出可能なマーカータンパク質には多様な細胞形式のものがあり、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)、コラーゲン、グリセルアルデヒド3-燐酸デヒドロゲナーゼ、伸長因子1アルファ、ガンマアクチン、の様なタンパク質が含まれる。セルタイプ又は細胞のステージ特異的なその他のマーカータンパク質を検出して、細胞分化におけるテスト化合物の効果を評価することが可能である。そうしたマーカータンパク質には、例えば、ヘモグロビンA、グリコホリンA、GPIIbIIIa、エリスロポエチンレセプタ、CD11b、CD19、CD33、CD34、CD36、CD41、MO1、OKT3、OKT4、OKT8、OKT11、OKT16、OKM1、OKM5、Leu7、Leu9、LeuM1、LeuM3、アセチルコリンエステラーゼや、グリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)及びミエリン塩基性タンパク質のようなグリア特異性マーカータンパク質、及びその他の、ヒトの乳脂肪小球体抗原(HMFG)、ケラチン、クリスタリンのような、特殊化細胞にのみ見出されるタンパク質が含まれる。
【0016】
随意的には、各マーカータンパク質に特異的に結合するリガンドを使用して、同じ細胞内又は細胞培養物内の2つ以上のマーカータンパク質を同時にか又は順次して検出することができる。同時検出の場合は、例えば、検出可能な各エンティティに対する識別可能な励起極大及び又は発光極大を持つ別個のリガンドを使用可能である。
適宜の結合アッセイで使用した場合、マーカータンパク質に特異的に結合するリガンドのマーカータンパク質に結合する親和力は、代表的には、その他のタンパク質に結合するそれよりも少なくとも約2〜3倍、好ましくは5〜10倍、更に好ましくは20倍も高くなる。例えばリガンドが抗体であれば、適宜のアッセイにはウェスタンブロットラジオイムノアッセイのようなイムノケミカルアッセイ又は、イムノサイトケミカルアッセイが含まれる。マーカータンパク質に特異的に結合する抗体は、イムノケミカルアッセイにおいてその他のタンパク質を検出せず、且つ、溶液からマーカータンパク質を免疫沈降させるものであることが好ましい。受容体に対するリガンドの、又は、受容体であるリガンドの、リガンドに対するそれ自体の結合親和性を、ラジオイムノアッセイ、蛍光消光アッセイその他の、従来から既知の好適なアッセイによってアッセイされ得る。モノクロナール抗体又はポリクロナール抗体、一本鎖抗体、Fab断片、(Fab’)2断片その他のような抗体が本発明の方法で好都合に使用される。本明細書及び請求の範囲で使用する“抗体”とは、こうした抗体を含むものとする。
【0017】
本発明の他の実施例では、一次抗体又はビオチン、又はストレプトアビジンラベル化リガンドのような第1リガンドをマーカータンパク質に結合させる。次いで、ランタニドキレートその他の検出可能なエンティティーに共役する第2リガンドを第1リガンドに結合させる。例えば、第1リガンドは一次抗体、第2リガンドは二次抗体であり得る。数多くの好適な一次及び二次の各抗体対が斯界に知られており、それらを本発明のこの実施例で使用することができる。あるいは、第1リガンドがビオチン部位を含み得、第2リガンドがアビジン又はストレプトアビジンを含み得る。所望であれば第1リガンドがアビジン又はストレプトアビジンを含み得、第2リガンドがビオチン部位を含み得る。斯界に既知のように、特異的に結合するその他の抗体対を使用できる。
検出は量的又は質的なものであり得る。蛍光は時間遅延を用いる方法で検出することが好ましく、それにより、被検出信号に特定的ではない背景蛍光の寄与度が低減又は排除される。好ましい検出法は時間分解蛍光測定法である。放射性エンティティーのみならず、様々な比色エンティティーを使用可能である。
【0018】
非結合リガンドを除去するために必要な洗浄ステップは、イムノアッセイに特有の労働集約性やそのスループットを低下させる一因である。洗浄中又は細胞培養地移行中に細胞が失われる点も重要な問題である。この問題は、細胞をその上部で培養する多孔質フィルタプレート及びその場での重力洗浄を用いることで、現行のアッセイでは本質的に排除されている。フィルタプレートの孔は、培養培地、洗浄流体、未結合のリガンド等を重力作用下に通過させるに十分である一方、培養細胞を維持する平均寸法を有する。この平均孔寸法は、ウェル内の液体量が十分ではない場合にフィルタプレートが例えば5μm〜30μm径の寸法範囲の細胞のための培養プレートとして作用するに十分な表面張力を生じるようなものである。本発明の方法において有益なフィルタプレートの平均孔寸法は、代表的には0.45及び5μmの間、好ましくは約1.0及び5.0μmの間、更に好ましくは約3.0μmである。
【0019】
かくして、本発明の方法では、細胞培養上の相容性を有し且つその少なくとも表面を、背景燐光性及び非特異的タンパク質結合特性の低い膜材料から構成したフィルタプレートを使用することが理想的である。受容し得る低背景燐光性は、例えば蛍光分光光度計(例えば、EG&GWallac社のVictor又はVictor2又は同等品)で計測したカウント値が、好ましくは約10,000又はそれ未満、より好ましくは約5000又はそれ未満、更に好ましくは約500又はそれ未満のものである。更には、フィルタプレートは十分な重力ろ過速度を有し且つ蒸発を最小化するための上下の各カバーを有するべきである。各フィルタプレートは周知の96又は384ウェルフォーマットにおいて入手可能であると共に、細胞を見ることのできる透明な膜材料を持つことが好ましい。
本発明のフィルタープレート用として好適な材料はルーチン的なスクリーニング技法を使用して調べることが可能であり、低リン光性で、非特異的タンパク質結合性が低く、その特性上、細胞培養要件に適合し且つフィルタプレートにおける細胞の培養及びその場での洗浄の何れも可能とする平均直径を有する孔を形成し得る、例えばポリカーボネートのような材料が一般に好適である。
【0020】
市販入手可能な多数のフィルタプレートについて、本発明のアッセイでの使用に好適であるかを調査した。マサチューセッツ州Billericaのミリポア社から入手できるMultiScreen(商標名)PCFフィルタプレートでは、背景リン光カウント数は約5000であり、励起波長は340nm、発光波長は615nmであった。更により好ましいものは、同ミリポア社から入手可能なMultiScreen(商標名)Fluoresenceプレートとして設計された黒いポリカーボネート膜プレートである。
マーカー分子発現性をスクリーニングするテスト化合物は、斯界に周知の任意の薬理学的医薬品又は、薬理活性の有無がこれまで知られていない化合物であり得る。被検物質は実験室で自然発生又は合成され得、微生物、動物、又は植物から隔離され得、又は組み替え的に発生され、又は恐らくは斯界に既知の化学的方法により合成され得る。
本発明は高スループットスクリーニングに寄与することから、テスト化合物は代表的には化合物ライブラリから入手される。テスト化合物のコンビナトリアルライブラリ発生法は斯界に既知であり、これに限定しないが、“生物学ライブラリ法”、“空間的にアドレス可能な平行固相又は溶液相ライブラリ法”、“デコンボリューションを要する合成ライブラリ法”、“1ビード1化合物ライブラリ法”、“アフィニティークロマトグラフ選択(15−21)を使用する合成ライブラリ法”、が含まれる。生物学ライブラリ法はポリペプチドに限定されるが、その他の4つの各方法はポリペプチド、非ペプチドオリゴノマー又は化合物(13)の低分子ライブラリに適合可能である。しかしながら、本発明はテスト化合物発生法又はテスト化合物源に限定されるものでは全くない。
【0021】
テスト化合物は例えば、溶液中の細胞、ビード上の細胞、プラスミド、又はファージに対して提示される。米国特許第5,223,409号を参照されたい。随意的には、マーカー分子発現に対するテスト化合物の影響度を定量化することができる。例えば、ランタニドイオンに関連する蛍光をテスト化合物の存在下に定量化(第1蛍光)し、またこの蛍光をテスト化合物無しの状態下に定量化(第2蛍光)することが可能である。第1蛍光量から第1蛍光量を差し引けば2つの蛍光量の差が得られ、かくして、この実施例ではタンパク質であるマーカー分子発現上のテスト化合物の影響度が分かる。第1蛍光及び第2蛍光は、比較を有効に実施し得るよう、本ケースではランタニドイオン(例えばユーロピウム)である同一形式の検出自在エンティティーと関連されることが好ましい。
【0022】
本発明の装置は好ましくは図1に示すような3つの構成部品、すなわち、マルチウェルフィルタプレート2と、キャリヤプレート4と、ろ過物収集トレー6又はマニホルドと、を含み、マルチウェルフィルタプレート2は、実質的に平坦な上面から下方に伸延する一連の2つ以上のウェル8を有する。プレート2ウェル数は必要容積量及びマルチウェルフィルタプレート2の大きさによって変化され得、代表的には8、24、48、96、384個である。
各ウェル8はその下方部分に、ウェル8を選択的にシールする多孔質フィルタ12を有する。キャリヤプレート4はこのキャリヤプレートを貫いて伸延する一連の解法ウェル10を有し、各ウェル10はマルチウェルフィルタプレート2の各ウェル8の外径よりも若干大きい内径を有する。ウェル10はウェル8と同数であり且つウェル8と整列する。
1実施例ではキャリヤプレート4のウェル10の内径は、マルチウェルフィルタプレート2をキャリヤプレート4に挿通した時にウェル10とウェル8との間に空隙(〜0.2〜0.5mm)が生じる程に十分に大きい。
【0023】
別の実施例ではキャリヤプレート4のウェル10の内径部分は、親水性ポリマーを選択するなどにより親水性を本来有するか又は、疎水性のコーティングを施す。あるいは又は更には、キャリヤプレートの各ウェル10の開放底部にテーパ付けして、個々を通過する液体の収集体又はスパウト14とすることができる。これにより、洗浄その他の本発明の方法の液体関連ステップ中の交叉汚染や飛散が制限される。
更に他の実施例ではトレー6が、マルチウェルプレート2のウェル8の下方のトレー内に配置した吸収パッド又はリブセット(図5参照)のようなウィック装置16を収納し得る。このウィック装置は、ウェル8のフィルタの外側底面上に形成された液滴を引き寄せるために使用する。ウィックはフィルタの底部から離間される。そうしたウィック装置の幾つかは、ここに引用することによりその全部を本明細書の一部とする米国特許第6,989,099号に記載される。
【0024】
膜はポリマーから形成した微孔質膜であり得るが、そうしたポリマーは、超高分子重量ポリエチレン、ポリプロピレン、EVAコポリマー及びポリアルファオレフィンのようなポリオレフィン、メタロセンオレフィニックポリマー、ポリカーボネート、PVC、のようなビニルコポリマー、ナイロンのようなポリアミド、ポリエステル、セルロース、セルロースアセテート、再生セルロース、セルロース複合材、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)及びそれらの混合物、から選択したポリマーから形成され得、用途、所望される流れ特性その他で使用する細胞寸法に応じて選択される。
膜は、ポリカーボネート、PVDF、ナイロン(ナイロン66)又はポリエーテルスルホン(PES)から選択することが好ましい。
【0025】
膜は、本来親水性のものであるか又は、第2のポリマーをベースポリマーに添加する(ポリスルホンをPVPにの如く)、又は、米国特許第4,618,533号や同第4,944,879号において既知の如く、膜に架橋、グラフトしたコーティング、あるいはそうでなければ膜を覆って不可逆的に被着したコーティングを使用して親水性としたものであることが好ましい。膜は、前記米国特許第4,618,533号による如くして親水性コーティングを被着させたポリカーボネート、PVDF又はPES製のものであることが好ましい。そうした膜は、Durapore(商標名)親水性PVDF膜、Millipore Express(商標名)又はMillipore Express(商標名)Plus PES膜、又はIsopore 親水性ポリカーボネート膜、の名称でマサチューセッツ州Billericaのミリポア社を含む色々の調達先から入手可能である。
孔寸法は、細胞の、膜孔への引き込み又は通過を防止するに十分小さいが、流れ特性を良好化するには十分大きくすべきであって、その最適寸法は細胞の形式次第であるが、好ましくは直径約0.45μm〜約5μm、より好ましくは約1μm〜約3.5μm、最も好ましくは約2〜約3μmである。殆どの細胞は直径が7μm以上(血小板が3μm、赤血球が5μmであるのを除き)であるので、直径が約3μmの孔を有する膜を使用すれば、細胞通過が防止される一方で、受け入れ得る流量が提供される。
【0026】
対称的又は非対称的な膜を使用することができる。対称的な膜はその厚み部分を通しての孔寸法が実質的に一定であり(一般には、膜の第1面から反対側の第2面にかけての孔寸法差が2倍未満)、非対称的な膜ではその厚み部分を通しての孔寸法の少なくとも一部分が、またしばしばその全体が変化する(一般には、膜の第1面から反対側の第2面にかけての孔寸法差が2〜1000倍)。本発明の1実施例では対称的な膜が好ましく、別の実施例では、細胞に面する側がタイトサイドである非対称的な膜が好ましく、また別の実施例では、開放サイドが細胞に面しており、その孔寸法が約5μm未満である非対称的な膜が好ましい。
【0027】
本発明の装置は、そのマルチウェルフィルタプレート2、キャリヤプレート4、及び又は収集プレート6に、種々の構成部品を整列下に相互保持するガイド部材をも有し得る。本実施例に示すように、キャリヤプレート4上のリム18が、キャリヤプレートを収集プレート6上に整列させるべく使用される。マルチウェルフィルタプレート2は、その各ウェル8をキャリヤプレート4の各ウェルに挿入することでキャリヤプレート4上でセンタリングされる。
所望であれば各プレートが単一方向に於いてのみ組み立てられることが保証されるよう、所望であれば各プレート(2、4)上の整列ピン、ノックオフカマー及びその他周知の装置も使用できる。
図3に示すように、マルチウェルフィルタプレート2Aは特に細胞成長用のものであり得、前記ミリポア社からMultiScreen(商標名)CaCo2細胞プレートの名称の下に市販入手可能であるが、ウェル8Aを収納し、各ウェル8Aには、細胞がその内部で成長する培地を収納する図示しない閉じたウェルへのアクセスを提供するポート9が隣り合って配置される。
【0028】
本発明の装置は、マルチウェルフィルタプレート2及び2Aの各ウェル8及び8Aがキャリヤプレート6の各ウェル10に少なくとも部分的に挿入されるようにして組み立てる。次いで、キャリアプレート4を収集プレート6に嵌めてから固定するか、又はマルチウェルプレート2又は2Aを挿入させる前に固定する。
本発明の1方法(図6に示す)では、その第1ステップ100において、細胞培養トレー(図示せず)内に配置したマルチウェルフィルタプレート2又は2A内で、細胞を所望の密度になるまで成長させる。第2ステップ102では、マルチウェルフィルタプレート2又は2Aaを細胞培養トレーから取り出し、先に説明したようにキャリヤプレート4内に配置する。
キャリヤプレート4は収集プレート6にすでに固着されているか、又はそうでない場合はこのキャリヤプレートを、合致するマルチウェルフィルタプレート2と共に収集プレート状部に固着する。各ウェル8に収納される液体高さは、細胞生存を支援する高さよりもずっと低く、フィルタプレートの各孔の流れ抵抗に打ち勝つには不十分なものである。
【0029】
第3ステップ104では、使用する検出システムに依存して1つ以上のウェルに少なくとも1つの試薬を添加して培養し、細胞又は細胞によって発現するマーカー分子と、試薬とを相互作用させる。次いで、洗浄バッファー(水、バッファー処理水、洗浄液その他のような)を、この液体がフィルタプレートの各孔を貫いて重力の影響下にキャリヤプレートのウェル10を出、次いで収集プレート6に入るに十分な液体高さとなる量において単に添加することにより、未結合の試薬を1回以上洗浄する。
所望であれば、第2抗体のような追加試薬を連続的に添加し、その追加の合間に1回以上の洗浄を所望に応じて実施して未結合材料を除去し、かくして、代表的には検出ステップ中にそうした未結合材料が出現することで生じる背景ノイズを減少させ得る。
次いで、最終ステップ108ではマーカー分子の存在の有無と、その所望量を検出する。代表的な検出試薬には、これに限定しないが、抗体、染料、リガンド、化学ルミネセントケミカル、放射性アイソトープ、化合物その他、が含まれ、これらを一般に、蛍光法、フローサイトメリー法、放射能、光学密度測定その他の如き方法を用いて検出する。
【0030】
本発明に従う他の方法では、各細胞は第1ステップ100Aのどこかで成長され、マルチウェルフィルタプレート2の各ウェル8に追加される。それ以降のプロセスは先に説明したそれと実質的に同じである。
何れの方法に於いても、しかし特にはマルチウェルフィルタプレート2の各ウェル8に細胞を添加する方法では、少なくともキャリヤプレート4をその使用以前に予めプレウェット処理する。所望であれば、マルチウェルフィルタプレート2のフィルタもプレウェット処理することにより、液体流れを増長させ得るが、これは、何れか又は両方の構成部品を別個にプレウェット処理するか又は、両構成部品をプレウェット処理する場合は、組み立てサブユニットとして同時にプレウェット処理することにより実施し得る。
バッファ処理した平衡塩溶液及びその他を使用してフィルタ及びキャリヤプレート4の各表面をプレウェット処理することができる。
プラズマ処理を用いるなどしてキャリヤプレートを親水化すると、システムに液体を重力流下させるに要する時間が半減することが分かった。代表的なシステムでは、使用する液体、ウェルの内容積、ウェル内の細胞密度、といった様々なパラメータに依存して、液体を流動させるまでには約2〜5分を要する。親水性のキャリヤプレートを備える同じシステムでは流体は約1〜2分で流れるようになる。
ろ過プロセスは、液体それ自体の高さ又はその体積から来る圧力で駆動されることから、システムを重力駆動する場合は追加する液体量が重要となる。
【0031】
一般に、親水性のポリカーボネート製の、孔寸法が3μmの膜を使用する96ウェル型プレートでは、約100μリットルの液体が流れずに保持されることが分かった。洗浄液を追加することで、液体高さはシステムを受け入れ可能な速度で重力下に流通するに十分なものとなる。追加する洗浄液量は代表的には、ウェル容積や洗浄の所望の速度及び完全性にもよるが、約100〜250μリットルである。
ある例では、必要というわけではないが、振動又は揺動によりプロセス速度が助長され得る。
液体高さが十分低下すると、液体はもはや固有の流れ抵抗に打ち勝つことができなくなるのでろ過作用が止まる。これは、真空ろ過又は遠心ろ過法で生じるようなウェルの乾燥が防止される点で本発明の興味深く且つ有益な特徴と言える。また、細胞や液体に対する力(重力)が穏やかなので、細胞の損傷又は溶解量僅かで、検出の妨げとなりうる液体のフォーム形成量も僅かであるか又は全く無い。更には、真空法や遠心法のような、何れも細胞をフィルタ内に強制的に引き込む及び又はフィルタを貫かせるために十分高い力を要する方法と比較して、ろ過操作による細胞損失量が最小化される。
【0032】
本発明は粘着性の細胞のみならず自由浮遊性(懸濁性)の細胞と共に使用することができる。粘着性の細胞を使用する場合、それらの細胞をマイクロキャリヤビード、不織布その他の、スカッフォルディングシステムの如きキャリヤ上で成長させ、プレート内の各孔に向かう通路が、流体に対して尚、アクセス可能であるようにすることが好ましい。あるいは、粘着性の細胞を最適密度未満において成長させる又はプロセス処理する前に細胞をトリプシン処理することができる。
各プレート、キット、そして本発明の方法を、市販の任意の液体取り扱い装置を使用して容易に自動化することが可能であり、そうした自動化に際して必要なのは、所望時のみに流体が流れるようにすると共に、ステップ数のみならず各ステップ間の時間を、各洗浄ステップが十分な時間行われて未結合材料が正しく除去されることが保証されるように調整するべく、各ステップで追加する液体量を調節すること及び又は先に説明したようなプレウェット処理を追加することである。
【0033】
例1
細胞ベースアッセイのための、細胞の重力ベースろ過を以下のプロトコルで実施した。
Jurkat細胞(T細胞性リンパ芽球性細胞ライン)を、孔直径が3μmの親水性ポリカーボネート製フィルタを収納する2つの96ウェル型フィルタプレート(10%FCS(ウシ胎児血清)を収容する完全培地内の、最終容積100μリットルのもの)内で培養した。アッセイのウェル当たりの細胞数は100,000個であった。
アッセイ当日に各フィルタプレートの底部をPBSを用いて予備ウェット処理し、キャリアプレート内に配置した。
次いで、組み立てた装置を液体ろ過物収集器上に配置した。
ウェル当り200μリットルの洗浄バッファ(1%FBS又はBSAを含有するPBS)を追加して各細胞を洗浄した。
ウェルに洗浄バッファを追加すると液体が各ウェルから流れ出して液滴を形成し、液滴は重力を介して液体ろ過物収集機内に入った(この間、細胞はウェル内に維持された)。流出した液体は液体ろ過物収集器内に収集された。
約2分後、各ウェルからの流出が無い、又は極めて少なくなる平衡状態に至った。ウェルに残留する液体量は約100μリットルであった。
洗浄バッファ200μリットルを更に追加した。
【0034】
次いで、一方のプレート(発明プレート)の各細胞をCD45特異化抗体(抗CD45)を使用して処理し、他方のプレート(コントロールプレート)をコントロール抗体(アイソトープ)(抗体の最終濃度は何れの場合も〜3μg/ml)で処理し、30分間培養した。培養中、各ウェル内には液体が維持され細胞が乾燥することはなかった。
余剰の未結合抗体を、先に示したようにステップ3及び4で3回洗浄して除去した。
2次抗体(Alexa 488 conjugated/Invitrogen社より入手可能)を各フィルタプレートのウェルに添加して30分間培養した後、上記ステップ3及び4に示したように3回洗浄した。
調製した細胞試料Guava製のベンチトップ型フローサイトメーター(蛍光検出)を使用して分析した。
図8に示すように、抗CD45で染色された細胞数が図で左側のヒストグラムに表され、アイソトープ抗体によってのみ染色されたコントロール細胞数が右側のヒストグラムに表されている。図8には蛍光測定値をまとめた表も示される。
【0035】
例2
本例では例1のプロトコルに従って細胞をテストし、米国特許出願番号第2001/0055776A1の真空法によって調製した細胞の洗浄の場合と比較した。
本発明では細胞を6回洗浄した。
真空法では孔寸法が0.4μmであるポリカーボネート製のフィルタプレートを使用し、先に参照した米国特許出願番号において記載されるような水銀高約5インチ(約12.7mm)において洗浄を3回実施した。
両プレート内に残存する細胞をATPベースの蛍光測定法で計測した。
図9では、各ウェルに入った細胞数をグラフのX軸伸した側に表示した。本発明の方法及び装置と従来のそれの夫々における回収率を別個に示した。グラフ上の、実線表示される棒グラフから伸びる線は、棒グラフで表す平均値と比較した場合の、各ウェルにおける変動量を表す。このグラフからは、本発明によれば従来の真空法のそれよりも驚く程且つ予期せぬ程に著しく良好な細胞保持状況が提供されることが明らかである。大抵の場合、本発明の方法及び装置による成果は従来のそれよりも4倍以上良好である。
【0036】
例3
重力ベースのろ過を使用して細胞ベースのアポートシスアッセイを実施した。
カスパーゼの蛍光色素ラベル化した抑制剤(FLICa)を生細胞に露呈し、FLICAsを活性化アポートシスに結合(2001年Smolewski他)させてこれらの試薬をアポートシス細胞に吸収させた。細胞を、37℃の温度下に2時間に渡り、濃度が徐々に増大する周知のアポートシス誘導物質で処理した。誘導後、細胞をFLICAsで処理した。細胞を洗浄バッファーで4回重力洗浄して非アポートシス細胞から未結合のFLICAsを除去した。重力洗浄後、FLCIAsラベル化した細胞(FAM−VAD−FMK、パンカスパーゼFLICA)をフローサイトメトリー法により検査した。
図10A及び10Bには、誘導(10,063,0.06ミクロモルのスタウロスポリン)及び非誘導のコントロール試料からのFAM−VAD−FMK染色細胞のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。アポートシス細胞群(各ヒストグラムの緑の群)が、誘導体(スタウロスポリン)の濃度増大の関数として増加していることが当業者には明らかである。
図10Bは、フローサイトメトリー法による分析に基づくポジティブ群のFAM割合を数値プロットしたグラフである。量反応に注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の装置の1実施例の分解斜視図である。
【図2】本発明の装置の1実施例の断面図である。
【図3】本発明の装置で使用するフィルタプレートの他の実施例の平面図である。
【図4】本発明の装置で使用するウィック装置の断面図である。
【図5】本発明の他の実施例の断面図である。
【図6】本発明に従う方法のブロックダイヤグラム図である。
【図7】本発明に従う他の方法のブロックダイヤグラム図である。
【図8】例1からのデータを示すグラフである。
【図9】例2からのデータを示すグラフである。
【図10A】例3からのデータを示すグラフである。
【図10B】例3からのデータを示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
2 マルチウェルフィルタプレート
4 キャリヤプレート
6 ろ過物収集トレー
8 ウェル
10 上面
12 多孔質フィルタ
14 スパウト
16 ウィック装置
18 リム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的特異試薬の検出法であって、
a.細胞壁又は細胞内からなる群より選択した位置に位置付けた、選択された標的分子を持つ細胞を選択すること、
b.細胞をマルチウェルフィルタプレート上で培養すること、
c.細胞内又は細胞上の選択した標的分子用のリガンドにして、検出可能なマーカーを含み且つ検出可能なマーカーを含む第2のリガンドに付加可能なリガンドを含む試薬を細胞に接触させること、
d.細胞を重力流れにより少なくとも1回洗浄して、細胞の選択した標的分子に未結合の試薬を除去して洗浄済み細胞を提供すること、
e.標的分子の有無を示すリガンドを探すこと、
を含む方法。
【請求項2】
標的特異試薬の検出法であって、
a.細胞壁又は細胞内からなる群より選択した位置に位置付けた、選択された標的分子を持つ細胞を選択すること、
b.細胞をマルチウェルフィルタプレート上で培養すること、
c.細胞内又は細胞上の選択した標的分子用のリガンドにして、検出可能なマーカーを含み且つ検出可能なマーカーを含む第2のリガンドに付加可能なリガンドを含む試薬を細胞に接触させること、
d.細胞を重力流れにより少なくとも1回洗浄して、細胞の選択した標的分子に未結合の試薬を除去して洗浄済み細胞を提供すること、
e.標的分子の有無を示すリガンドを探すこと、
を含む方法。
【請求項3】
プレートがポリカーボネート製のフィルタを有している請求項1の方法。
【請求項4】
プレートが親水性の、ポリカーボネート製のフィルタを有している請求項1の方法。
【請求項5】
フィルターが、孔寸法が約3μmの多孔質のポリカーボネート製のものである請求項1の方法。
【請求項6】
フィルターが多孔質で、親水性で、ポリカーボネート製のものであり、孔寸法が約3μmである請求項1の方法。
【請求項7】
リガンドが、蛍光物質、放射性物質、化学ルミネセント法、光吸収及び光学密度測定から成る群から選択した検出可能なエンティティーを有する請求項1の方法。
【請求項8】
分子がマーカータンパク質である請求項1の方法。
【請求項9】
分子が、細胞特異的なマーカータンパク質である請求項1の方法。
【請求項10】
分子が、細胞表面タンパク質であるマーカータンパク質である請求項1の方法。
【請求項11】
分子が、細胞の細胞内タンパク質であるマーカータンパク質である請求項1の方法。
【請求項12】
イムノアッセイの検出法であって、
a.細胞壁又は細胞内からなる群より選択した位置に位置付けた、選択された標的タンパク質を持つ細胞を選択すること、
b.多孔質で、親水性のポリカーボネート製で、平均孔寸法が約3μmであるマルチウェルフィルタプレート上で細胞を培養すること、
c.検出可能なマーカーを含む抗体と、検出可能なマーカーを含む第2抗体に付着し得る抗体とからなる群から選択した、選択されたターゲットタンパク質用の少なくとも1つの抗体に細胞を接触させること、
d.細胞を重力流れにより少なくとも1回洗浄し、選択された標的タンパク質に結合しなかった抗体を除去して洗浄された細胞を得ること、
e.検出装置を用いて抗体を検索して標的タンパク質の有無を表示させること、
を含む方法。
【請求項13】
標的特異試薬の検出法であって、
a.選択された標的分子を有する細胞を選択すること、
b.低背景蛍光で、細胞をその上部で培養可能とし且つその場での重力洗浄を可能とする孔を有するマルチウェルフィルタプレート上で細胞を培養すること、
c.細胞の選択した標的分子用の一次リガンドを含む試薬に細胞を接触させること、
d.細胞を重力流れにより少なくとも1回洗浄し、細胞の選択した標的分子に結合しなかった一次リガンドを除去すること、
e.一次リガンドに付着し得且つ検出可能なマーカーを有する二次リガンドを添加すること、
f.細胞を重力流れにより少なくとも1回洗浄し、細胞の選択した標的分子に結合しなかった二次リガンドを除去し、洗浄された細胞を得ること、
g.検出可能なマーカーを検索して、標的分子の有無を表示させること、
を含む方法。
【請求項14】
イムノアッセイを実施するためのキットであって、
孔寸法が約1〜3μmの親水性の膜を有するマルチウェルフィルタプレートと、
開放上部及び開放底部を有し、マルチウェルフィルタプレートの各ウェルと整合し且つ整列可能なウェルを有するマルチウェルキャリヤーと、
マルチウェルキャリヤーの底面をその上面に支持し得るろ過物収集体と、
を含み、
マルチウェルフィルタプレートがマルチウェルキャリヤーの上面上に支持されたキット。
【請求項15】
膜が、孔寸法が3μmのポリカーボネート製のフィルタである請求項14のキット。
【請求項16】
細胞のマーカータンパク質に結合する第1抗体を更に含む請求項14のキット。
【請求項17】
細胞のマーカータンパク質に結合する第1抗体と、検出可能なエンティティーを収納し、第1抗体に結合可能な第2抗体とを更に含む請求項14のキット。
【請求項18】
1つ以上の洗浄バッファを更に含む請求項14のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2008−200037(P2008−200037A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−21013(P2008−21013)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】