説明

高パワー低損失ファイバ導波路

一般に1態様では本発明が、導波路軸(199)に沿って延びるコア(120)を取り囲むポリマー(130)およびガラス(140)という異なる誘電材料(130、140)の互層からなる高パワー低損失ファイバ導波路(100)を含む物品を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2002年12月10日に出願された米国特許仮出願第60/432059号の優先権を主張するものである。上記出願の内容は本願明細書に援用される。
本発明はファイバ導波路および導波路を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導波路は数多くの産業で重要な役割を演じている。例えば光導波路は電気通信網で広く使用されており、このような電気通信網では、異なる位置と位置との間で情報を光信号として伝えるために、光ファイバなどのファイバ導波路が使用されている。このような導波路は光信号を、好ましい1つ以上の経路に沿った伝搬に実質的に限定する。光導波路の他の用途には、内視鏡、光検出応用などの撮像の用途が含まれる。
【0003】
最も一般的なタイプのファイバ導波路は、屈折率による導光を利用して光信号を好ましい経路に限定する光ファイバである。このようなファイバは、導波路軸に沿って延びるコア領域と、導波路軸を中心にコアを取り囲み、コア領域の屈折率よりも小さな屈折率を有するクラッド領域とを含む。この屈折率差のため、相対的に屈折率の高いコアの中を実質的に導波路軸に沿って伝搬する光線は、コア−クラッド界面で全反射(TIR)を受け得る。その結果、光ファイバは、1つ以上の電磁(EM)放射モードを、コアの中を導波路軸に沿って伝搬するように導く。このような導波モードの数はコア径の増大とともに増加する。特に屈折率による導光機構は、導波路軸に平行な所与の波ベクトルに対する最低周波数導波モードよりも下の一切のクラッド・モードの存在を排除する。商業的に使用されている屈折率によってガイドされたほとんど全ての光ファイバは、屈折率差を生み出しコア−クラッド界面を生じさせるためにコアまたはクラッドあるいはその両方に不純物が添加されたシリカ・ベースのファイバである。例えば一般に使用されているシリカ光ファイバの屈折率は約1.45、屈折率差は、1.5ミクロンの範囲の波長に対して用途により約0.2%から3%である。
【0004】
プリフォームからファイバを線引きする方法は、ファイバ導波路を製造するために最も一般的に使用されている方法である。プリフォームは、所望のファイバの正確な形状および組成を有する短い(例えば長さ25から50cm(10から20インチ)の)棒である。しかし、プリフォームの直径はファイバの直径よりもはるかに大きい(例えば100倍から1000倍)。一般に、光ファイバを線引きするとき、プリフォームの材料組成は、コアの屈折率をクラッドの屈折率よりも大きくするために、プリフォームのコアに添加されたさまざまな濃度の1種または数種のドーパントを有する単一のガラスからなる。このことは、コアおよびクラッドを形成している材料がレオロジー的、化学的に同じように線引きされることを保証し、同時に、コア内での導波モードをサポートするのに十分な屈折率差を提供する。プリフォームからファイバを形成するためには、炉の中でプリフォームを、ガラスの粘度が、プリフォームからファイバを線引きできる十分に低い粘度(例えば108ポアズ未満)となる温度まで加熱する。線引きすると、プリフォームは、プリフォームと同じ断面組成および構造を有するファイバになる。ファイバの直径は、ファイバの特定のレオロジー的特性および線引き速度によって決まる。
【0005】
プリフォームは、化学蒸着(MCVD)、外付け蒸着(OVD)、プラズマ活性化化学蒸着(PCVD)および軸付け蒸着(VAD)を含む当業者に周知の多くの技法を使用して製造され得る。これらの方法はそれぞれ一般に、事前に製作しておいた管または棒の壁に気化させた原料の層をすすの形で付着させることを含む。付着の直後にそれぞれのすす層は融合する。これによってプリフォーム管を得、続いてこれをつぶして中実の棒とし、
外側を覆い、次いで線引きしてファイバにする。
【0006】
光ファイバの用途は波長および信号電力によって制限される。ファイバは、導かれる波長でのエネルギー吸収が小さい材料から形成され、欠陥が最小限であることが好ましい。吸収が大きい場合には、長いファイバ上での伝送の間に、信号強度をノイズと区別がつかないレベルにまで低減する可能性がある。比較的に吸収の小さい材料であっても、コアおよび/またはクラッドによる吸収によってファイバが加熱される。欠陥によって、導かれた放射がコアの外に散乱する可能性があり、これによってファイバが加熱する可能性もある。あるパワー密度を超えると、この加熱は、修復できないほどの損傷をファイバに与える。したがって高パワー放射源を利用する多くの用途は、放射源からその目的地へ放射を導くのに光ファイバ以外の装置を使用する。
【0007】
ある態様では本発明は、ポリマー部分およびガラス部分(例えばカルコゲン・ガラス部分)を含むフォトニック結晶導波路(例えばブラッグ・ファイバ)を特徴とする。いくつかの実施形態ではこのフォトニック結晶導波路は中空コアを含む。ポリマーとガラスからなる複数の互層(例えば渦巻形に巻かれた連続するポリマー層と連続するガラス層)によって確定されたフォトニック・バンドギャップによって、中空コアの中に放射が閉じ込められる。一般に、ガラスの層は高い屈折率を有し、ポリマー層は低い屈折率を有する。互層の光学的厚さによって基本および高次スペクトル透過窓が決定され、可視放射(例えば波長0.35から0.75ミクロンを有する放射)から赤外放射(例えば波長0.75から約15ミクロンまたはそれ以上の放射)にスケーリングすることが可能である。
【0008】
本発明はさらに、ファイバ・フォトニック結晶ファイバ導波路を製造するための方法を特徴とする。ポリマー基板をガラスの層でコーティングして平面多層フィルムを形成する。次いでこの多層フィルムを丸めて、渦巻線断面を有する中空多層管を得る。続いてこの中空管を加熱によって合着して、渦巻層を融合させ、中空ファイバ・プリフォームを得る。これを線引きしてファイバ導波路とする。
【0009】
フォトニック結晶導波路の異なる部分間の屈折率差が大きくなるように材料を選択することが可能である。屈折率差を大きくすることによって、大きなフォトニック・バンドギャップおよび全方向性反射能を有するファイバを提供することができる。フォトニック・バンドギャップが大きいと、導波路のコアを取り囲む部分への侵入深度が浅くなり、ファイバによって導かれる放射の放射損および吸収損が低減する。
【0010】
ファイバ材料の熱機械的、レオロジー的および物理化学的特性が両立するときに光学的に異なるファイバ材料を一緒に線引きすると、欠陥密度の小さいファイバを得ることができる。したがってある態様では本発明が、一緒に線引きすることが可能なガラスとポリマーの組合せ、ならびに一緒に線引きすることが可能なガラスとポリマーを選択する基準を特徴とする。
【0011】
低損失、低欠陥密度のファイバを使用して、ファイバにほとんど損傷を与えることなく高パワー放射を導くことが可能である。
一般に第1の態様では本発明が、多層構造を丸めて渦巻構造にしてファイバ導波路を形成することを含み、ファイバ導波路を形成することは、渦巻構造から得られたファイバ・プリフォームを線引きする方法を特徴とする。
【0012】
この方法の実施形態は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つ以上の特徴を含み得る。
この多層構造は、異なる屈折率を有する材料からなる少なくとも2つの層を含み得る。これらの層は、第1の材料の層と、この第1の材料層を間にはさむ一対の第2の材料の層
とを含み得る。これらの層を実質的に平らな層とすることが可能である。これらの異なる材料は、ガラスを含む第1の材料と、ポリマーを含む第2の材料とを含み得る。いくつかの実施形態では、異なる材料が高屈折率材料および低屈折率材料を含み、高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率との比が1.5よりも大きい(例えば1.8よりも大きい)。
【0013】
この方法はさらに、少なくとも第1の材料(例えばカルコゲン・ガラスなどのガラス)の第1の層を、第1の材料のそれとは異なる第2の材料(例えばPES、PEIなどのポリマー)の第2の層上に配置して、多層構造を形成することを含み得る。第1の材料は、第2の層の両面に配置することができる。この配置はスパッタリングまたは蒸着からなり得る。第1および第2の層上に追加の層を配置して多層物品を形成することが可能である。
【0014】
この多層構造を棒(例えば中空棒)に巻き付けて、渦巻構造を形成し得る。この方法は、渦巻構造を合着してプリフォームを形成し得る。合着は、渦巻構造を加熱することを含む。いくつかの実施形態では合着が、真空条件下で渦巻構造を加熱することを含む。この方法は、線引きの前にプリフォームから棒を(例えば化学エッチングによって)取り去ることを含む。
【0015】
この渦巻構造は、多層構造の互層によって取り囲まれたコアを含み得る。このファイバ導波路は、多層構造に対応する複数の層によって取り囲まれた中空コアを含み得る。
一般に他の態様では本発明が、導波路軸に沿って延びるコアを取り囲む異なる材料の互層を含むファイバ導波路を含み、互層が渦巻構造を画定する物品を特徴とする。
【0016】
この物品の実施形態は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つ以上の特徴を含み得る。
この渦巻構造は、コアを複数回取り巻く異なる材料の少なくとも2つの層を含む多層構造を含み得る。異なる材料は高屈折率誘電材料および低屈折率誘電材料を含むことが可能であり、高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率との比が1.5よりも大きい(例えば1.8よりも大きい)。これらの異なる材料は、ポリマー(例えばPES)およびカルコゲン・ガラス(例えばAsSe)を含み得る。
【0017】
互層の最も内側の層は、同じ材料の以降の層の厚さよりも小さな厚さを有することができる。互層の厚さは、約8〜12ミクロンの範囲の波長(例えば波長約10.6ミクロン)のEM放射を導波路軸に沿って導くように選択することが可能である。いくつかの実施形態では互層の厚さが、約2〜5ミクロンの範囲の波長のEM放射を導波路軸に沿って導くように選択される。
【0018】
コアは中空とすることが可能である。まっすぐなファイバについて、このファイバ導波路は、選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)で約1dB/mよりも小さな伝送損を示すことが可能である。いくつかの実施形態ではこの選択された波長が約10.6ミクロンである。
【0019】
約4〜10cmの範囲の任意の曲げ半径で90度曲げたときに、ファイバ導波路は、選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)で約1.5dBよりも小さな伝送損を示すことが可能である。
【0020】
このファイバ導波路は、約300W/cm以上のパワー密度の選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)のEM放射を導波路軸に沿って導く能力を有することが可能である。いくつかの実施形態ではこの選択された波長が約1
0.6ミクロンである。ファイバ導波路が少なくとも0.3mの曲げ長さで滑らかに90度に曲げられているときでも、このファイバ導波路は、約300W/cm以上のパワー密度の選択された波長のEM放射を導波路軸に沿って導く能力を有することが可能である。
【0021】
このファイバ導波路は、約25W以上のパワーの選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)のEM放射を導波路軸に沿って導く能力を有することが可能である。いくつかの実施形態ではこの選択された波長が約10.6ミクロンである。
【0022】
一般に他の態様では本発明が、導波路軸に沿って延びるコアを取り囲むポリマーおよびガラスを含む異なる誘電材料の互層を含む高パワー低損失ファイバ導波路を含む物品を特徴とする。
【0023】
この物品の実施形態は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つ以上の特徴を含み得る。
互層は渦巻構造を画定することが可能である。渦巻構造は、コアを複数回取り巻く異なる材料の少なくとも2つの層からなる多層構造を含み得る。異なる材料は高屈折率誘電材料および低屈折率誘電材料を含むことが可能であり、高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率との比は1.5よりも大きい。異なる材料は高屈折率誘電材料および低屈折率誘電材料を含むことが可能であり、高屈折率材料の屈折率と低屈折率材料の屈折率との比は1.8よりも大きい。ガラスはカルコゲン・ガラス(例えばAsSe)を含み得る。ポリマーはPESまたはPEIを含み得る。互層の最も内側の層は、同じ材料の以降の層の厚さよりも小さな厚さを有することが可能である。互層の厚さは、約8〜12ミクロンの範囲の波長(例えば波長約10.6ミクロン)のEM放射を導波路軸に沿って導くように選択することが可能である。いくつかの実施形態では互層の厚さが、約2〜5ミクロンの範囲の波長のEM放射を導波路軸に沿って導くように選択される。
【0024】
コアは中空でもよい。
まっすぐなファイバ導波路について、このファイバ導波路は、選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)で約1dB/mよりも小さな伝送損を示すことが可能である。この選択された波長を約10.6ミクロンとすることが可能である。
【0025】
約4〜10cmの範囲の任意の曲げ半径で90度曲げたときに、ファイバ導波路は、選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)で約1.5dBよりも小さな伝送損を示すことが可能である。この選択された波長を約10.6ミクロンとすることが可能である。
【0026】
このファイバ導波路は、約300W/cm以上のパワー密度の選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)のEM放射を導波路軸に沿って導く能力を有することが可能である。この選択された波長を約10.6ミクロンとすることが可能である。
【0027】
ファイバ導波路が少なくとも0.3mの曲げ長さで滑らかに90度に曲げられているときでも、このファイバ導波路は、約300W/cm以上のパワー密度の選択された波長のEM放射を導波路軸に沿って導く能力を有することが可能である。
【0028】
このファイバ導波路は、約25W以上のパワーの選択された波長(例えば約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長)のEM放射を導波路軸に沿って導く能力を有す
ることが可能である。この選択された波長を約10.6ミクロンとすることが可能である。
【0029】
本発明の実施形態は以下の1つ以上の利点を有することができる。
フォトニック結晶ファイバ導波路は、まっすぐなファイバと曲がったファイバの両方で低い伝送損を有することが可能である。フォトニック結晶ファイバ導波路を使用して高パワーEM放射を導くことができる。フォトニック結晶ファイバ導波路を使用して、高パワー密度を有するEM放射を導くことが可能である。フォトニック結晶ファイバ導波路を使用して、IR波長(例えば波長0.75から約12ミクロンまたはそれ以上)のEM放射を導くことができる。
【0030】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の説明および図面ならびに請求項から明らかとなろう。
【0031】
図面の同じ符号は同じ要素を指す。
【特許文献1】米国特許出願第10/121452号
【特許文献2】米国特許第6130780号
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1Aを参照すると、フォトニック結晶ファイバ導波路100は、導波路軸に沿って延びるコア120と、コアを取り囲む誘電閉じ込め領域110(例えば高屈折率層と低屈折率層の互層)とを含む。閉じ込め領域110は、閉じ込め領域に機械的支持を提供する支持層150によって取り囲まれている。
【0033】
閉じ込め領域110は、異なる屈折率を有する誘電材料(例えばポリマー、ガラス)の連続層130および140を含み、それに対して他の実施形態では、閉じ込め領域を形成する同心の複数の不連続層を含む。連続層130および140は、それに沿ってフォトニック結晶ファイバ導波路が電磁放射を導く軸199を中心とした渦巻線を形成する。一方の層、例えば層140は屈折率n、厚さdの高屈折率層であり、層、例えば層130は屈折率n、厚さdの低屈折率層である。ただしn>n(n−nは例えば0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.5以上とすることが可能である)。層130および140は軸199を中心に渦巻線を描くので、軸199から延びる半径方向の断面160はそれぞれの層と2回以上交差し、高屈折率層と低屈折率層の互層を含む半径方向プロファイルを提供する。
【0034】
図1Bを参照すると、渦巻線を描くこれらの層は光学的に、層130および層140の光学的厚さに対応する周期を有する、半径方向断面160に沿った周期的な屈折率変動を提供する。すなわち、閉じ込め領域110は2重層光学周期n+nを有する。「R」は軸199から測った半径方向の位置を指す。
【0035】
層130および140の厚さ(dおよびd)および光学的厚さ(nおよびn)は変更することが可能である。いくつかの実施形態では、層130の光学的厚さと層140の光学的厚さが同じである。層の厚さは通常、ファイバの所望の光学性能に基づいて(例えば導波する波長に従って)選択される。層の厚さと光学性能との間の関係については後に論じる。層の厚さは一般にサブミクロン・サイズから数十ミクロンである。例えば、層130および140の厚さを約0.1μmから20μm(例えば約0.5から5μm)とすることが可能である。
【0036】
図1Aに示した実施形態では、閉じ込め領域110の厚さが2重層として5つ分である
。しかし実際には、閉じ込め領域110がそれよりも多くの2重層(例えば2重層として約8個分超、10個分超、15個分超、20個分超、25個分超、例えば40個分以上)を含むことができる。
【0037】
層140は、カルコゲン・ガラスなど屈折率の高い材料を含む。層130は、層140の高屈折率材料よりも屈折率が低い材料からなり、一般に機械的に柔軟である。例えば層130はしばしばポリマーからなる。層130および層140を形成する材料は一緒に線引きすることが可能な材料であることが好ましい。一緒に線引きすることが可能な材料を選択する基準については以下で論じる。
【0038】
この実施形態ではコア120が中空である。任意選択で、気体(例えば空気、窒素および/または希ガス)、液体(例えば等方性液体または液晶)などの流体を中空コアに満たすことが可能である。あるいはコア120が、閉じ込め領域110を形成する材料とレオロジー的に両立する任意の材料または材料の組合せからなることも可能である。ある実施形態ではコア120が、本願明細書に援用する2002年4月12日に出願され、現在、公告番号US−2003−0044158−A1として公告されている「HIGH INDEX−CONTRAST FIBER WAVEGUIDES AND APPLICATIONS」という名称の米国特許出願第10/121452号に記載されている材料などの、1種または数種のドーパント材料を含む。
【0039】
コアおよび閉じ込め領域120および110は、異なる屈折率を有する複数の誘電材料を含むことができる。このような場合には、所与の領域の「平均屈折率」を考えることができる。これは、その領域の諸成分の重み付けされた屈折率の和を表し、それぞれの屈折率は、その領域内でその成分が占める面積によって重み付けされている。しかし、層130と140の間の境界は屈折率の変化によって画定される。この変化は、2種類の異なる誘電材料の界面によって、または同じ誘電材料内の異なるドーパント濃度(例えばシリカ内の異なるドーパント濃度)によって生じさせることができる。
【0040】
誘電閉じ込め領域110は、第1の波長範囲に含まれるEM放射が誘電コア120の中を導波路軸199に沿って伝搬するように導く。閉じ込め機構は、第1の波長範囲を含むバンドギャップを形成する領域110のフォトニック結晶構造に基づく。この閉じ込め機構は屈折率カイド型ではないので、コアの屈折率が、コアに隣接した閉じ込め領域の屈折率よりも高い必要はない。反対に、コア120の平均屈折率を、閉じ込め領域110の平均屈折率よりも低くすることもできる。例えばコア120を空気、他の気体、例えば窒素、または実質的に真空にすることができる。このような場合、このコアの中を導かれるEM放射は、多くの気体がシリカまたは他のこのような固体材料よりも小さな吸収および非線形相互作用定数を有することを反映して、シリカ・コアの中を導かれるEM放射よりもはるかに小さい損失およびはるかに小さい非線形相互作用を有する。追加の実施形態では例えば、周囲の閉じ込め領域の構造的な支持となり、その一方で空気を主とするコアを画定する多孔質誘電材料をコア120が含む。したがってコア120は均一な屈折率プロファイルを有する必要がない。
【0041】
閉じ込め領域110の層130と140はブラッグ・ファイバ(Bragg fiber)として知られているファイバを形成する。渦巻線形に巻かれたこれらの層の周期的な光学構造は、(ブラッグ・ミラーとしても知られている)平面誘電スタック反射器の互層に似ている。閉じ込め領域110の層および誘電スタック反射器の平らな互層はともにフォトニック結晶構造の例である。フォトニック結晶構造は、ジョン D.ジョナポラス(John D.Joannopoulos)他著「Photonic Crystals」(プリンストン・ユニバーシティ・プレス(Princeton University Press)、米ニュージャージー州プリンストン(Princeton)、199
5年)に全般的に説明されている。
【0042】
本願明細書で使用するとき、フォトニック結晶は、フォトニック結晶中にフォトニック・バンドギャップを生み出す屈折率変調を有する誘電体構造である。本願明細書で使用するフォトニック・バンドギャップは、誘電体構造中にアクセス可能な拡張された(すなわち伝搬、非局在化)状態がない波長(または逆数をとれば周波数)範囲である。一般に、この構造は周期的な誘電体構造だが、例えばより複雑な「準結晶」を含むこともできる。フォトニック結晶を、バンドギャップ構造から外れた「欠陥」領域と組み合わせることによって、このバンドギャップを使用して、光を閉じ込め、導き、かつ/または局在化することが可能である。さらに、このギャップの上下の波長には、アクセス可能な拡張状態が存在し、低屈折率領域にも光を閉じ込めることができる(先に説明したものなどの屈折率ガイドされたTIR構造とは対照的である)。用語「アクセス可能な」状態は、系のある対称性または保存則によって結合が禁止されない状態を意味する。例えば2次元系では、偏光が保存され、そのため同様の偏光の状態だけをバンドギャップから排除すればよい。(一般的なファイバなどの)均一な断面を有する導波路では、波数ベクトルβが保存され、そのためフォトニック結晶導波モードをサポートするためには、所与のβを有する状態だけをバンドギャップから排除すればよい。さらに、円柱対称性を有する導波路では、「角運動量」インデックスmが保存され、そのため同じmを有するモードだけをバンドギャップから排除すればよい。要するに、高対称系では、対称性に関係なく全ての状態が排除される完全なバンドギャップに比べてフォトニック・バンドギャップに対する要件がかなり緩和される。
【0043】
したがって、EM放射はこの誘電スタック反射器の中を伝搬し得ないので、フォトニック・バンドギャップにおいてこの誘電スタック反射器の反射性は高い。同様に、閉じ込め領域110の層は、バンドギャップの入射光線に対する反射性が高いので、この層は閉じ込めを提供する。厳密に言えば、フォトニック結晶がバンドギャップで完全に反射性であるのは、フォトニック結晶内の屈折率変調が無限の広がりを有するときだけである。そうでない場合には、フォトニック結晶の両側の伝搬モードを結合する一過性モードを通して入射放射がフォトニック結晶を「トンネル」することが可能である。しかし実際には、このようなトンネリングのレートは、フォトニック結晶の厚さ(例えば互層の数)とともに指数関数的に低下する。これはさらに、閉じ込め領域の屈折率差の大きさとともに低下する。
【0044】
さらに、フォトニック・バンドギャップは伝搬ベクトルの比較的に小さな領域の上でだけ広がることができる。例えば、誘電スタックは垂直入射光線に対する反射性は高いが、斜めに入射した光線に対する反射性は部分的でしかない。「完全フォトニック・バンドギャップ」は、全ての可能な波数ベクトルおよび全ての偏光の上に及ぶバンドギャップである。一般に、完全フォトニック・バンドギャップは、3つの次元に沿った屈折率変調を有するフォトニック結晶とだけ関連している。しかし、隣接する誘電材料からフォトニック結晶に入射するEM放射の文脈では、隣接する誘電材料が伝搬EMモードをサポートする全ての可能な波数ベクトルおよび偏光に対するフォトニック・バンドギャップである「全方向性フォトニック・バンドギャップ」を定義することが可能である。同じ意味で、全方向性フォトニック・バンドギャップを、ライト・ライン(light line)よりも上の全てのEMモードに対するフォトニック・バンドギャップと定義することも可能である。このライト・ラインは、フォトニック結晶に隣接する材料によってサポートされた最低周波数伝搬モードを定義する。例えば空気中ではライト・ラインがおおよそω=cβによって与えられる。上式でωは放射の角周波数、βは波数ベクトル、cは光速である。全方向性平面反射器の説明が、本願明細書に援用する米国特許第6130780号に開示されている。さらに、誘電体の互層を使用して、円柱形の導波路幾何形状に(平面限界の)全方向反射を提供することが、本願明細書に援用する「OMNIDIRECTIONAL
MULTILAYER DEVICE FOR ENHANCED OPTICAL WAVEGUIDING」という名称のヨエル・フィンク(Yoel Fink)他の米国特許第6463200号に開示されている。
【0045】
閉じ込め領域110の互層130および140がコア120に関して全方向バンドギャップを生み出すとき、コアから閉じ込め領域に入射するEM放射は原理上完全に反射されるので、導波モードは強く閉じ込められる。しかし、このような完全な反射が起こるのは層の数が無限であるときだけである。層の数が有限(例えば2重層として約10個)のときには、全方向フォトニック・バンドギャップは例えば、0°から80°までの全ての入射角および全方向バンドギャップに周波数を有するEM放射の全ての偏光に対して、平面幾何形状で少なくとも95%の反射に対応する。さらに、フォトニック結晶ファイバ導波路100が、全方向性でないバンドギャップを有する閉じ込め領域を有するときであっても、この導波路は依然として強い導波モード、例えばバンドギャップの周波数範囲について0.1dB/km未満の放射損を有するモードをサポートする。一般に、バンドギャップが全方向性であるか否かは、互層によって生み出されるバンドギャップのサイズ(一般に2つの層の屈折率差とともに変化する)およびフォトニック結晶の屈折率が最も小さい成分によって決まる。
【0046】
ブラッグ構成に似た構成では、高屈折率層の屈折率および厚さを変更することができ、かつ/または低屈折率層の屈折率および厚さを変更することができる。閉じ込め領域はさらに、1周期当たり3つ以上の層(例えば1周期当たり3つまたはそれ以上の層)を含む周期構造を含むことができる。さらに、屈折率変調はファイバ半径の関数として閉じ込め領域の中で連続的にまたは不連続的に変更することができる。一般に、閉じ込め領域は、フォトニック・バンドギャップを生み出す任意の屈折率変調に基づくことができる。
【0047】
多層構造110は半径方向の軸に関して周期的な屈折率変動を有するため、この実施形態では多層構造110がブラッグ反射器を形成する。適当な屈折率変動は約1/4波長条件である。垂直入射では、それぞれの層が等しい光学的厚さλ/4を有し、または同じことだがd/d=n/nである「1/4波長」スタックに対して最大バンドギャップが得られることがよく知られている。dおよびnは高屈折率および低屈折率層の厚さおよび屈折率を指す。これらはそれぞれ層240および230に対応する。垂直入射はβ=0に対応する。円柱形導波路では、所望のモードが一般にライト・ラインω=cβの近くにある(大きなコア半径限界では、最も低い次数のモードが実質上、z軸すなわち導波路軸に沿って伝搬する平面波である)。この場合、1/4波長条件は下式のようになる。
【0048】
【数1】

【0049】
この1/4波長条件は円柱形幾何形状によって修正されるため、厳密に言えば、この式は必ずしも最適ではない。円柱形幾何形状では、それぞれの層の光学的厚さがその半径方向の座標とともに滑らかに変化する必要がある。それにもかかわらずこの式は、特に中央バンドギャップ波長よりも大きなコア半径に対して、多くの望ましい特性を最適化するための優れた指針となることが分かっている。
【0050】
フォトニック結晶ファイバ導波路のいくつかの実施形態が、2002年1月25日に出願され、現在、公告番号US−2002−0164137−A1として公告されている本
願明細書に援用するスティーブン G.ジョンソン(Steven G.Johnson)他の「LOW−LOSS PHOTONIC CRYSTAL FIBER HAVING LARGE CORE RADIUS」という名称の米国特許出願第10/057258号に記載されている。
【0051】
コア120の半径は、ファイバ120の最終用途に応じて変更できる。コアの半径は、ファイバによって導波されるエネルギーの波長または波長範囲によって、およびファイバがシングル・モード・ファイバなのかまたはマルチモード・ファイバなのかによって変わってくる。例えばファイバが可視波長(例えば波長約400nmから800nm)を導くシングル・モード・ファイバである場合には、コア半径は、サブミクロンから数ミクロン程度(例えば約0.5μmから5μm)となる。しかしファイバがIR波長(約2μmから15μm、例えば10.6μm)を導くマルチモード・ファイバである場合には、コア半径は、数十から数千ミクロン程度(例えば約10μmから2,000μm、例えば500μmから1,000μm)となる。コア半径は約5λ超(例えば約10λ超、20λ超、30λ超、50λ超、100λ超)である。ただしλは導かれるエネルギーの波長である。
【0052】
以前に論じたとおり、支持層150は閉じ込め領域110に機械的支持を提供する。支持層150の厚さは希望に応じて変更することが可能である。いくつかの実施形態では、支持層150が閉じ込め領域110よりもかなり厚い。例えば支持層150の厚さを、閉じ込め領域110の厚さの約10倍以上(例えば20倍超、30倍超、50倍超)とすることが可能である。
【0053】
支持層150の組成は通常、閉じ込め領域110に対して所望の機械的支持および保護が提供されるように選択される。多くの実施形態では、支持層150が、閉じ込め領域110と一緒に線引きすることが可能な材料から形成される。一緒に線引きするのに適した材料を選択するための基準については後に論じる。いくつかの実施形態では、閉じ込め領域110の形成に使用される材料と同じ材料から支持層を形成する。例えば、層130がポリマーから形成される場合、支持層150を同じポリマーから形成することが可能である。
【0054】
次に、閉じ込め領域110の層130および140の組成について説明する。高屈折率部分(例えば層140)を形成するのに適当な高さの屈折率を有する材料には、カルコゲン・ガラス(例えば硫黄、セレンおよび/またはテルルなどのカルコゲン元素を含んだガラス)、重金属酸化物ガラス、アモルファス合金およびこれらの組合せが含まれる。
【0055】
カルコゲン元素の他に、カルコゲン・ガラスは以下の1つ以上の元素を含むことができる:ホウ素、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、インジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、カドミウム、ランタンおよびハロゲン化物(フッ素、塩素、臭化物、ヨウ素)。
【0056】
カルコゲン・ガラスは2成分または3成分ガラス、例えばAs−S、As−Se、Ge−S、Ge−Se、As−Te、Sb−Se、As−S−Se、S−Se−Te、As−Se−Te、As−S−Te、Ge−S−Te、Ge−Se−Te、Ge−S−Se、As−Ge−Se、As−Ge−Te、As−Se−Pb、As−S−Tl、As−Se−Tl、As−Te−Tl、As−Se−Ga、Ga−La−S、Ge−Sb−Se、あるいはこれらの元素に基づくAs−Ga−Ge−S、Pb−Ga−Ge−Sなどの複合多成分ガラスとすることが可能である。カルコゲン・ガラスの中のそれぞれの元素の比率は変更可能である。適当な高さの屈折率を有するカルコゲン・ガラスは例えば、ヒ素5〜30モル%、ゲルマニウム20〜40モル%、セレン30〜60モル%から形成される。
【0057】
高屈折率を有する重金属酸化物ガラスの例には、Bi含有ガラス、PbO含有ガラス、Tl含有ガラス、Ta含有ガラス、TiO含有ガラスおよびTeO含有ガラスが含まれる。
【0058】
適当な高さの屈折率を有するアモルファス合金には、Al−Te、R−Te(Se)が含まれる(R=アルカリ)。
低屈折率部分(例えば層130)を形成するのに適当な低さの屈折率を有する材料には、酸化物ガラス、ハロゲン化物ガラス、ポリマーおよびこれらの組合せが含まれる。炭酸エステル(例えばポリカーボネート(PC))、スルホン(例えばポリ(エーテルスルホン)(PES))、エーテルイミド(例えばポリ(エーテルイミド)(PEI))、およびアクリル酸エステル(例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA))類のポリマー、ならびにフルオロポリマーを含むポリマーも釣り合いのよい候補である。
【0059】
適当な酸化物ガラスには例えば、以下の1種または数種の化合物を含むガラスが含まれる:MO 0〜40モル%(MはLi、Na、K、RbまたはCs);M’O 0〜40モル%(M’はMg、Ca、Sr、Ba、ZnまたはPb);M” 0〜40モル%(M”はB、Al、Ga、In、SnまたはBi);P 0〜60モル%;およびSiO 0〜40モル%。
【0060】
フォトニック結晶ファイバ導波路の部分は任意選択で他の材料を含み得る。例えば、任意の部分が、自体の屈折率を変化させる1種または数種の材料を含み得る。部分は、自体の屈折率を増大させる材料を含み得る。このような材料には例えば、ホウケイ酸ガラスを含んでいる部分の屈折率を増大させる酸化ゲルマニウムが含まれる。あるいは、部分は、自体の屈折率を低下させる材料を含むことも可能である。例えば酸化ホウ素は、ホウケイ酸ガラスを含んでいる部分の屈折率を低下させる。
【0061】
高屈折率差ファイバ導波路の部分は均質または不均質とすることが可能である。例えば、1つ以上の部分が、不均質部分を形成するためにホスト材料に埋め込まれた1種類の材料のナノ粒子(例えば導波波長の光の散乱を最小限に抑える十分に小さな粒子)を含み得る。この1例が、高屈折率カルコゲン・ガラスのナノ粒子をポリマー・ホストの中に埋め込むことによって形成された高屈折率ポリマー複合材料である。他の例には、無機ガラス・マトリックス中のCdSeおよび/またはPbSeナノ粒子などがある。
【0062】
ファイバ導波路の部分は、自体の機械的、レオロジー的および/または熱力学的ふるまいを変化させる材料を含み得る。例えば、1つ以上の部分が可塑剤を含み得る。部分は、結晶化またはファイバ内での他の望ましくない相的ふるまいを抑える材料を含むことができる。例えばポリマーの結晶化は、架橋剤(例えば感光性架橋剤)を含めることによって抑えることができる。他の例として、ガラス・セラミック材料が望ましい場合には、TiO、ZrOなどの核生成剤を材料に含めることが可能である。
【0063】
部分はさらに、ファイバの隣接する部分間(例えば低屈折率層と高屈折率層の間)の界面に影響を及ぼすように設計された化合物を含み得る。このような化合物には接着促進剤、相溶化剤などがある。例えば、シリカ・ベースのガラス部分とポリマー部分の間の接着を促進するためにオルガノシラン化合物を使用することが可能である。例えば、リンまたはPは、カルコゲニド・ガラスと酸化物ガラスの両方と両立し、これらのガラスから形成された部分間の接着を促進することができる。
【0064】
ファイバ導波路は、特定のファイバ導波路応用に固有の追加の材料を含むことができる。例えばファイバ増幅器では、ファイバ内の光信号と相互作用してファイバによる1つ以
上の光波長の吸収または発光を増強する能力を有する任意のドーパントまたはドーパントの組合せ、例えばエルビウム・イオン、イッテルビウム・イオン、ネオジム・イオン、ホルミウム・イオン、ジスプロシウム・イオンおよび/またはツリウム・イオンなどの少なくとも1種の希土類イオンから任意の部分を形成することが可能である。
【0065】
高屈折率差導波路の部分は、1種または数種の非線形材料を含み得る。非線形材料は、導波路の非線形応答を増強する材料である。具体的には非線形材料はシリカよりも大きな非線形応答を有する。例えば非線形材料は、シリカのカー非線形インデックス(Kerr
nonlinear index)よりも大きい(すなわち3.5×10−20/W超、例えば5×10−20/W超、10×10−20/W超、20×10−20/W超、100×10−20/W超、200×10−20/W超の)カー非線形インデックスn(2)を有する。
【0066】
線引き工程を使用して頑丈なファイバ導波路を製造するときには、所望の光学特性を有する材料の組合せの全てが適当というわけではない。一般に、レオロジー的、熱機械的および物理化学的に両立する材料を選択しなければならない。両立する材料を選択するためのいくつかの基準について次に論じる。
【0067】
第1の基準は、レオロジー的に両立する材料を選択することである。言い換えると、ファイバの線引きおよび動作のさまざまな段階で遭遇する温度に対応する幅広い温度範囲にわたって同様の粘度を有する材料を選択しなければならない。粘度は、加えられたせん断応力下での流動に対する流体の抵抗である。本願明細書ではポアズを単位として粘度を表す。レオロジー的両立性に関して詳しく述べる前に、所与の材料に対する一組の特性温度を定義しておくことは有用である。この特性温度は所与の材料が特定の粘度を有する温度である。
【0068】
焼なまし点Tは、材料の粘度が1013ポアズとなる温度である。Tは、オートン・セラミック・ファウンデーション(Orton Ceramic Foundation)社(米オハイオ州ウェスタービル(Westerville))のModel SP−2A Systemを使用して測定することが可能である。Tは一般に、ガラス片の粘度が残留応力の解放を許す十分に低い粘度になる温度である。
【0069】
軟化点Tは、材料の粘度が107.65ポアズとなる温度である。Tは、軟化点計測器、例えばオートン・セラミック・ファウンデーション(Orton Ceramic
Foundation)社(米オハイオ州ウェスタービル(Westerville))のModel SP−3Aを使用して測定することが可能である。軟化点は、材料の流動の性質が可塑性から粘性に変化する温度に関係する。
【0070】
加工点Tは、材料の粘度が10ポアズとなる温度である。Tは、ガラス粘度計、例えばオートン・セラミック・ファウンデーション(Orton Ceramic Foundation)社(米オハイオ州ウェスタービル(Westerville))のModel SP−4Aを使用して測定することが可能である。加工点は、ガラスを容易にファイバに線引きすることが可能な温度に関係する。例えば材料が無機ガラスであるいくつかの実施形態では、材料の加工点温度が250℃超、例えば約300℃,400℃、500℃またはそれ以上であり得る。
【0071】
融点Tは、材料の粘度が10ポアズとなる温度である。Tも、ガラス粘度計、例えばオートン・セラミック・ファウンデーション(Orton Ceramic Foundation)社(米オハイオ州ウェスタービル(Westerville))のModel SP−4Aを使用して測定することが可能である。融点は、ガラスが液体になり
、ファイバの幾何学的形状の維持に関してファイバの線引き工程の制御が非常に難しくなる温度に関係する。
【0072】
レオロジー的に両立するためには、幅広い温度範囲、例えばファイバを線引きする温度から、ファイバが識別可能な速度では応力をもはや解放し得ない温度(例えばT)までの温度範囲にわたって、2種類の材料が同様の粘度を有していなければならない。したがって、線引きされたときにこの2種類の材料が似通った速度で流動するように、両立する2種類の材料の加工温度は同様でなければならない。例えば、第1の材料の粘度η(T)を第2の材料の加工温度Tw2で測定した場合、η(Tw2)は少なくとも10ポアズ、例えば10ポアズまたは10ポアズであり、かつ10ポアズ以下でなければならない。さらに、線引きしたファイバが冷却するにつれて、両方の材料のふるまいは同様の温度で粘性から弾性に変化しなければならない。言い換えると、この2種類の材料の軟化温度は同様でなければならない。例えば、第2の材料の軟化温度Tsで、第1の材料の粘度η(Ts2)は少なくとも10ポアズ、例えば10ポアズまたは10のポアズであり、かつ10ポアズ以下でなければならない。好ましい実施形態では、両方の材料を一緒に焼きなますことが可能でなければならず、そのため、第2の材料の焼なまし温度Ta2での第1の材料の粘度η(Ta2)は、少なくとも10ポアズ(例えば少なくとも10ポアズ、少なくとも1010ポアズ、少なくとも1011ポアズ、少なくとも1012ポアズ、少なくとも1013ポアズ、少なくとも1014ポアズ)でなければならない。
【0073】
レオロジー的に両立するためにはさらに、温度に対する両方の材料の粘度変化(すなわち粘度の傾き)ができるだけ一致していることが好ましい。
第2の選択基準は、焼なまし温度と室温の間の温度でそれぞれの材料の熱膨張率(TEC)が似通っていなければならないことである。言い換えると、ファイバが冷却し、そのレオロジーが液体状から固体状に変化するときに、両方の材料の体積が同様の量だけ変化しなければならない。2種類の材料のTECの一致が十分でない場合には、2つのファイバ部分間の大きな体積変化の差の結果、大量の残留応力が発生する可能性があり、それによって1つ以上の部分に亀裂が入り、かつ/または剥離が生じる可能性がある。材料の破壊応力よりも十分に低い応力であっても残留応力が遅れ破壊を引き起こす可能性もある。
【0074】
TECは、温度変化に伴う試料の長さのごくわずかな変化の尺度である。このパラメータは、所与の材料に対して、温度−長さ曲線(またはこれと等価の温度−体積曲線)の傾きから計算することが可能である。材料の温度−長さ曲線は、例えば、オートン・セラミック・ファウンデーション(Orton Ceramic Foundation)社(米オハイオ州ウェスタービル(Westerville))のModel 1200D膨張計などの膨張計を使用して測定することが可能である。TECは、選択された温度範囲にわたって、または所与の温度での瞬時変化として測定することが可能である。この量の単位は℃−1である。
【0075】
多くの材料で、温度−長さ曲線には異なる傾きを有する2つの直線領域が存在する。曲線が第1の直線領域から第2の直線領域に変化する遷移領域が存在する。この領域は、ガラス試料のふるまいが、固体材料に通常関連したふるまいから、粘性流体に通常関連したふるまいに遷移するガラス転移に関連する。これは連続的な遷移であり、傾きの不連続な変化とは対称的に、温度−体積曲線の傾きの緩やかな変化によって特徴づけられる。ガラス転移温度Tは、外挿したガラス固体の線と粘性流体の線とが交差する温度と定義される。ガラス転移温度は、ぜい性固体から流動可能な固体への材料レオロジーの変化に関連した温度である。物理的にはガラス転移温度は、材料の中の分子のさまざまな平行移動モードおよび回転モードを励起するのに必要な熱エネルギーに関係する。ガラス転移温度はしばしば、粘度が1013ポアズとなるおおよその焼なまし点とされるが、実際には、測
定されるTgは相対的な値であり、測定法に左右される。
【0076】
膨張計を使用して膨張計軟化点Tdsを測定することも可能である。膨張計は、試料に小さな圧縮荷重をかけその試料を加熱することによって機能する。試料の温度が十分に高くなると材料は軟化し始め、圧縮荷重が、体積または長さの低減として観察される試料の曲がりを引き起こす。この相対値を膨張計軟化点と呼び、これは通常、材料の粘度が1010から1012.5ポアズであるときに生じる。材料の正確なTds値は通常、装置および測定パラメータに依存する。同様の装置および測定パラメータが使用されるときには、この温度は、この粘度範囲におけるさまざまな材料のレオロジー的両立性の有用な尺度を提供する。
【0077】
先に述べたとおり、TECを一致させることは、線引き工程中のファイバに発生する過大な残留応力を持たないファイバを得るための重要な考慮事項である。一般に、2つの材料のTECが十分には一致していないとき、残留応力は弾性応力として生じる。弾性応力成分は、ガラス転移温度から室温(例えば25℃)まで冷却されるときのファイバのさまざまな材料間の体積収縮の差から生じる。体積変化は、TECおよび温度変化によって決定される。線引き工程中にファイバの材料が任意の界面で融合されまたは接合される実施形態では、材料のTECの違いによって界面に応力が生じる。一方の材料は引っ張られ(正の応力)、もう一方の材料は圧縮され(負の応力)、そのため全体の応力はゼロになる。穏やかな圧縮応力は通常、ガラス・ファイバにとって大きな問題ではないが、引張応力は望ましくなく、時間がたつと破損につながる可能性がある。したがって、線引き時にファイバに生じる弾性応力を最小化するために成分材料のTECの差を最小化することが望ましい。例えば、2つの異なる材料から形成された複合ファイバでは、膨張計を用いて加熱速度3℃/分で測定したTと室温との間のそれぞれのガラスのTECの絶対差が、5×10−6−1以下(例えば4×10−6−1以下、3×10−6−1以下、2×10−6−1以下、1×10−6−1以下、5×10−7−1以下、4×10−7−1以下、3×10−7−1以下、2×10−7−1以下)でなければならない。
【0078】
同様のTECを有する材料を選択することによって弾性応力成分を最小化することが可能だが、残留応力は粘弾性応力成分からも発生し得る。粘弾性応力成分は、成分材料のひずみ点温度またはガラス転移温度に十分な差があるときに生じる。Tよりも低い温度に冷却されると、材料はかなりの大きさの体積収縮を受ける。冷却時のこの遷移で粘度が変化すると、応力を緩和するために必要な時間はゼロ(瞬時)から数分まで増大する。例えば異なるガラス転移範囲(および異なるT)を有するガラスおよびポリマーでできた複合プリフォームを考える。線引きの初期、ガラスおよびポリマーは粘性流体としてふるまい、線引きひずみに起因する応力はすぐに緩和される。線引き炉の最も熱い部分を出ると、ファイバは急速に熱を失い、ファイバ材料の粘度および応力緩和時間を指数関数的に増大させる。Tまで冷却させると、ガラスおよびポリマーは事実上それ以上の応力を解放することができない。応力緩和時間が線引き速度に比べて非常に大きくなっているためである。そのため、成分材料が異なるT値を有しているとすると、Tまで冷却した第1の材料はもはや応力を低減させることができず、第2の材料は依然としてそのTよりも高く、材料間で発生した応力を解放することが可能である。第2の材料がTまで冷却されると、材料間に生じた応力はもはや効果的には緩和されない。さらにこの時点で、第2のガラスの体積収縮は、(温度がそのTよりも低く、ぜい性固体としてふるまっている)第1の材料の体積収縮よりもはるかに大きい。このような状況の結果、ガラスとポリマーの間には十分な応力が発生し、その結果、一方または両方の部分が機械的に破損する。このことから、線引き時にファイバに生じる粘弾性応力を最小化するためには成分材料間のTの差を最小化することが望ましいという、ファイバ材料を選択するための第3の選択基準が導かれる。第1の材料のガラス転移温度Tg1は、第2の材料のガラス転移温度Tg2から100℃以内であることが好ましい(例えば|Tg1−Tg2|が90℃未満
、80℃未満、70℃未満、60℃未満、50℃未満、40℃未満、30℃未満、20℃未満、10℃未満でなければならない)。
【0079】
成分材料間の差に起因する線引きしたファイバの永久応力を発生させる2つの機構(すなわち弾性および粘弾性)が存在するため、これらの機構を使用して互いを相殺することができる。例えば、材料のTの不一致が反対の符号の応力を生み出す場合、ファイバを構成している材料は、熱膨張の不一致によって引き起こされる応力を自然に相殺することができる。反対に、材料の熱膨張が全体の永久応力を低減させる場合には、材料間のTのより大きな差は許容される。熱膨張とガラス転移温度差の併用効果を評価する1つの方法は、それぞれの成分材料の温度−長さ曲線を比較する方法である。上記の傾き−接線法を使用してそれぞれの材料のTを見つけた後に、低いほうのT温度値のところで曲線が一致するように一方の曲線を縦軸に沿って移動させる。室温でのy切片の差は、ガラスが結合されなかった場合に予想されるひずみεを与える。Tから室温までの温度範囲でより大きな量の収縮を示す材料の予想される引張応力σは、下式から単純に計算することが可能である。
【0080】
σ=E・ε
上式でEはその材料の弾性率である。一般に、100MPa未満(例えば50MPa未満、30MPa未満)の残留応力値は、2つの材料が両立することを示すのに十分な小ささである。
【0081】
第4の選択基準は候補材料の熱安定性が一致することである。熱安定性の尺度は温度間隔(T−T)によって与えられる。上式でTは、それぞれの分子がその最も低いエネルギー状態を見つけることが可能な程度に材料をゆっくりと冷却したときに結晶化が始まる温度である。したがって、結晶相は、材料にとってガラス相よりもエネルギー的により有利な状態である。しかし、ファイバ導波路応用に関して言えば材料のガラス相は一般に、結晶相に優る性能および/または製造利点を有する。結晶化温度がガラス転移温度に近いほど、材料は線引き中に結晶化されやすく、このことはファイバにとって有害である(例えば伝送損を増大させ得る光学的不均一性をファイバに導入する)。通常は、熱安定性間隔(T−T)が少なくとも80℃(例えば少なくとも100℃)あれば、プリフォームからファイバを線引きすることによって材料をファイバにするのに十分である。好ましい実施形態では、熱安定性間隔が少なくとも120℃、例えば150℃、200℃またはそれ以上である。Tは、示差熱分析計(DTA)、示差走査熱量計(DSC)などの熱分析機器を使用して測定することが可能である。
【0082】
一緒に線引きすることが可能な材料を選択するときに考慮すべき他の事項は、材料の融解温度Tである。融解温度では、材料の粘度が低くすぎて、ファイバの線引き工程中に正確なジオメトリーをうまく維持することができない。したがって好ましい実施形態では、一方の材料の融解温度が、レオロジー的に両立する第2の材料の加工温度よりも高い。言い換えると、プリフォームを加熱したときに、プリフォームのいずれかの材料が融解する前に、プリフォームの温度が、プリフォームをうまく線引きすることが可能な温度に達する。
【0083】
一緒に線引きすることが可能であり、閉じ込め領域の層間の高い屈折率差を有するフォトニック結晶ファイバ導波路を提供する1対の材料の1例は、AsSeとポリマーPESである。AsSeのガラス転移温度(T)は約180℃、熱膨張率(TEC)は約24×10−6/℃である。10.6μmでAsSeの屈折率は2.7775、吸収係数αは5.8dB/mである。この屈折率は、Proc.SPIE、505、11(1984)に記載されているハルトウニ(Hartouni)らの測定により、吸収係数、「Physics and Applications of Non−Cryst
alline Semiconductors in Optoelectronics」、A.アンドリーシュ(A.Andriesh)およびM.ベルトロッチ(M.Bertolotti)編、NATO ASI Series、3、High Technology、36巻、155ページ(1996)に記載されているボイト(Voigt)およびリンケ(Linke)の測定による。これらの参考文献はともに本願明細書に援用される。PESのTECは約55×10−6/℃、屈折率は約1.65である。
【0084】
いくつかの実施形態では、導波路100などのフォトニック結晶ファイバ導波路を、平面多層物品を丸めて渦巻構造にし、この渦巻構造から得られたプリフォームからファイバを線引きすることによって製造する。
【0085】
図2Aを参照する。プリフォームを調製するため、ポリマー・フィルム210の表面211にガラスを付着させる220。このガラスは、熱蒸着、化学蒸着またはスパッタリングを含むいくつかの方法によって付着させることが可能である。図2Bを参照する。この付着工程によって、ポリマー・フィルム210上のガラス層230からなる多層物品240を得る。
【0086】
図2Cを参照する。この付着工程に続き、心棒255(例えばホウケイ酸ガラスなどの中空ガラスまたはポリマー管)に多層フィルム240を巻き付けて、渦巻管を形成する。次いでこの渦巻管に、数枚(例えば約3枚から10枚)のポリマー・フィルムを巻き付けてプリフォーム・ラップを形成する。いくつかの実施形態では、このポリマー・フィルムが、多層物品を形成するのに使用されたものと同じポリマーまたはガラスから作られる。真空条件下でこのプリフォーム・ラップを、多層フィルム240および渦巻管に巻き付けられたフィルムを形成しているポリマーおよびガラスのガラス転移温度よりも高い温度まで加熱する。プリフォーム・ラップは、渦巻管の層が互いに融合し、渦巻管が渦巻管に巻き付けられたポリマー・フィルムと融合するのに十分な時間加熱する。加熱温度および加熱時間は、プレフォーム・ラップの組成に依存する。例えばこの多層がAsSeとPESからなり、ラッピング・フィルムがPESからなる場合には一般に、200〜300℃(例えば約250℃)で15〜20分(例えば約18分)加熱すれば十分である。この加熱はさまざまな層を互いに融合させ、渦巻管とラッピング・フィルムとを合着させる。合着後の構造が図2Dに示されている。渦巻管は合着して、丸められた多層フィルム240に対応する多層領域260になっている。巻き付けたポリマー・フィルムは合着して単一の支持クラッド270となっている。この合着後の構造は心棒255の中空コア250を保持している。
【0087】
渦巻管にポリマー・フィルムを巻き付けて支持クラッド270とする代わりに、渦巻管の外径に一致した内径を有する中空管に渦巻管を挿入することも可能である。
合着後の構造から心棒255を取り去って中空プリフォームを得る。次いでこれを線引きしてファイバにする。プリフォームは、最終的なファイバと同じ組成および同じ相対寸法(例えば閉じ込め領域の層の厚さに対するコア半径)を有する。ファイバの絶対寸法は使用する線引き比に依存する。(例えば数千メートルの)長いファイバを線引きすることができる。次いで線引きしたファイバを所望の長さに切断することが可能である。
【0088】
心棒が渦巻管の堅固な支持となるように、合着は、心棒のガラス転移よりも低い温度で実施されることが好ましい。このことは多層フィルムが真空条件下でつぶれないことを保証する。心棒の組成は、合着後に多層管の最も内側の層から外れるように選択することが可能である。あるいは、合着時に心棒が多層管の最も内側の層に接着する場合、心棒は例えばエッチングによって化学的に除去することもできる。例えば、心棒がガラス毛管である実施形態では、例えばフッ化水素酸を使用して心棒をエッチングしてプリフォームを得ることが可能である。
【0089】
中実のコアが望ましい実施形態では、ファイバの他の部分と一緒に線引きされる中実の心棒の周りに多層管を合着することが可能である。あるいは他の実施形態では、心棒を用いずに多層フィルムを丸めて自己支持型の渦巻管を得ることも可能である。
【0090】
いくつかの実施形態では、ポリマー・フィルム210の両面をガラスでコーティングすることが可能である。それぞれのガラス層の厚さが、片面だけに付着させたガラス層の厚さの半分でよいため、この方法は有利である。薄いガラス層は一般に、丸める間に起こり得る機械的応力損傷を受けにくい。
【0091】
以上に論じた技法を使用して調製したフォトニック結晶ファイバ導波路は低い欠陥密度を有する。導波路は例えば、ファイバ10メートル当たり約1個未満(例えばファイバ20メートル当たり約1個未満、ファイバ50メートル当たり約1個未満、ファイバ100メートル当たり約1個未満)の欠陥を有する。欠陥には、材料欠陥(例えば不純物)と構造欠陥(例えば層間剥離、層の亀裂)の両方が含まれ、これらはともに、導かれた放射をコアから散乱させて信号損失を引き起こし、ファイバの局部加熱を生じさせ得る。したがって、信号損失に敏感な応用(例えばファイバによって吸収された放射によってファイバが損傷する可能性がある高パワー応用)ではファイバ欠陥を低減させることが望ましい。
【0092】
基板の両面を覆うガラス・フィルムから形成されたフォトニック結晶ファイバ導波路は、ガラス・フィルムが片面だけを覆うファイバ導波路とは少し異なる屈折率プロファイルを提供する。例えば図3Aおよび3Bを参照すると、両面がコーティングされた多層フィルムから形成されたファイバの閉じ込め領域310は、連続した渦巻ポリマー層330/ガラス層340を有する。ガラス層340の最も内側の領域340Aおよび最も外側の領域340Bはポリマーを覆う単一のガラス層に対応し、それに比べて他の領域は2倍の層厚を有する。半径方向の断面360でとったその屈折率プロファイルが図3Bに示されている。
【0093】
いくつかの実施形態では、丸める前に2枚以上の多層フィルムを調製し重ね合わせる。このようにすると、フィルムのサイズを増大させることなく閉じ込め領域の層の数を増やすことが可能になる。
【0094】
先に論じたとおり、フォトニック結晶ファイバ導波路を使用してIR放射を導くことが可能である。IR放射は、約0.7ミクロンから20ミクロン(例えば約2から5ミクロン、または約8から12ミクロン)の波長を有する。いくつかの実施形態では、フォトニック結晶ファイバ導波路を使用して、約6.5ミクロンまたは10.6ミクロンの波長を有する放射を発射するCOレーザなどのIRレーザからの放射を導くことが可能である。IRエネルギーを発射することが可能なレーザにはこの他、Nd:YAGレーザ(例えば波長1.064ミクロン)、Er:YAGレーザ(例えば波長2.94ミクロン)、Er,Cr:YSGG(エルビウム、クロムをドープしたイットリウム・スカンジウム・ガリウム・ガーネット)レーザ(例えば波長2.796ミクロン)、Ho:YAGレーザ(例えば波長2.1ミクロン)、自由電子レーザ(例えば波長6から7ミクロン)、量子カスケード・レーザ(例えば波長3から5ミクロン)などがある。
【0095】
いくつかの実施形態では、フォトニック結晶ファイバ導波路を使用して、極めて高いパワー密度を有する放射を導くことが可能である。例えば導波路を使用して、約100W/cmを超えるパワー密度(例えば約300W/cm超、500W/cm超、1kW/cm超、例えば約10kW/cm以上のパワー密度)を有する放射を導くことが可能である。コアの中を導かれる放射の吸収が小さいため、特に中空コア導波路はこのような応用によく適している。導波波長の吸収が小さい材料を導波路の閉じ込め領域の材料に
選択することによって、吸収損をさらに軽減することが可能である。先に論じたとおり、例えばカルコゲン・ガラスはIR波長での吸収が小さく、高パワーIR導波路によく適している。導波路性能を低下させるだけでなく導波路に損傷を与える可能性もある放射損は、高い屈折率差を有する材料を閉じ込め領域の材料として選択することによってさらに低減させることが可能である。
【0096】
高パワー・レーザからの放射をファイバに結合することによってファイバ導波路中に高パワー密度を生み出すことが可能である。例えば、先に挙げたいくつかのレーザなどの高パワーIRレーザからの放射をフォトニック結晶ファイバ導波路を使用して導くことが可能である。レーザの出力パワーは約1ワット超(例えば約5ワット、10ワット、25ワットまたはそれ以上)とすることが可能である。いくつかの応用では、レーザの出力エネルギーを約100ワット超、例えば数百ワット(例えば約200ワット超、300ワット超、500ワット超、1キロワット超)とすることが可能である。
【0097】
いくつかの実施形態では、フォトニック結晶ファイバ導波路が比較的に小さい伝送損を有する。例えば、伝送損を約2dB/m未満(例えば約1dB/m未満、0.5dB/m未満、例えば0.2dB/m以下)とすることが可能である。このファイバ導波路はIR波長、例えば約3〜5ミクロン(例えば約3.5ミクロン)または約10〜12ミクロン(例えば約10.6ミクロン)のある波長でで、低い伝送損を有することが可能である。同様の材料から作られたTIR光ファイバに比べて伝送損を大幅に(例えば1〜3桁以上)低くすることが可能である。例えば中空コアとカルコゲン・ガラス/ポリマーの閉じ込め領域とを有するフォトニック結晶ファイバ導波路は、カルコゲン・ガラス・コアとポリマー・クラッドとを有するTIRファイバよりもかなり低い伝送損を有する。例えばAsSeでの損失は10.6ミクロンで約7〜10dB/mと報告されており、PESでの損失は10.6ミクロンで約100,000dB/mである。これとは対照的に、AsSe/PES閉じ込め領域を有するフォトニック結晶ファイバ導波路の損失は約1dB/m未満とすることが可能である。この比較的に低い損失は、導かれた電磁波のファイバの閉じ込め領域への侵入深度が浅いことによって可能になると考えられる。したがってたとえ閉じ込め領域の材料が導波波長で比較的に高い吸収を有するとしても、導かれる放射と材料の間の相互作用は最小限にとどまる。
【0098】
フォトニック結晶ファイバ導波路はさらに、ファイバの曲がりに起因する比較的に小さい損失を受ける。例えば、曲率半径約10cm未満(例えば約5cm未満、例えば4cm以下)でファイバを90度曲げても、損失は約2dB未満(例えば1.5dB、1dB、0.5dBまたはそれ以下)である。曲げに関連した損失が比較的に小さいことは、使用中にファイバが曲がっても伝送信号の相対強度があまり変化しないことが好ましい多くのファイバ用途において有利である。
【0099】
伝送損(例えば固有損失および/または曲がりに起因する損失)が小さいことは一般に高パワー応用でも有利である。高パワー応用では、ファイバに沿って失われるパワーによって放射源からその目的地に送達されるパワーが低減することに加えて、ファイバの損傷も起こり得る。
【実施例1】
【0100】
厚さ25〜50ミクロンのPESフィルムに熱蒸着を使用して厚さ5〜10ミクロンのAsSeを付着させ、続いてこのコーティングされたフィルムを中空ガラス心棒に巻き付けることによって、さまざまなファイバを製造した。この管を厚いPESの外層で覆い、これを真空条件下で加熱して合着させた。合着後、心棒の中空コアにフッ化水素酸を導入することによって心棒をエッチングして除去した。このエッチングによって多層プリフォームを得た。これをそれぞれを光ファイバ線引き塔に入れ、線引きして数十から数百
メートルのファイバにした。
【0101】
線引き工程中にファイバの外径(OD)を監視することによってそれぞれのファイバのフォトニック・バンドギャップの名目位置を求めた。フォトニック・バンドギャップ位置は、OD測定によって提供される線引き比から求めた。ファイバODの一般的な標準偏差はファイバODの約1パーセントであった。
【0102】
図4Aおよび4Bを参照する。ファイバの1断面の走査型電子顕微鏡(SEM)分析によれば、線引きしたファイバは比例した層厚比を概ね維持し、製造工程に関連した熱サイクリングおよび伸長の間にPESとAsSeフィルムはよく接着した。図4Aおよび4Bに示した多層構造では、PES層(灰色)の厚さが約900nm、AsSe層(明色)の厚さが約270nmであった(最初および最後のAsSe層を除く。これらの層の厚さは135nmであった)。
【0103】
フーリエ変換赤外線(FTIR)分光計(Nicolet Magna 860)を用い、ファイバに光を結合する放物面鏡および外部検出器を使用して、広帯域ファイバ透過スペクトルを測定した。2つの異なる層構造を有するファイバに対するこれらの測定の結果を図5に示す。スペクトルごとに、基本および高次フォトニック・バンドギャップの光が導かれた。
【0104】
直径700〜750ミクロンの中空コアを有し、ODが1300〜1400ミクロンであり、10〜11ミクロン波長にまたがる基本フォトニック・バンドギャップを有するいくつかのファイバを調製した。図6Aは、長さ約30cmのまっすぐなファイバを使用して測定した、これらのファイバのうちの1つのファイバのFTIR透過スペクトルを示している。
【0105】
これらのファイバの伝送損を定量するため、ファイバ・カットバック測定を実施した。これらの測定は、約4メートルのまっすぐなファイバを通して伝送される放射の強度を、より短い長さに切断された同じファイバを通して伝送される強度と比較することを含む(図6B参照)。この試験は、複数のファイバに対して実施し、その結果は、異なる試験ファイバに関してほぼ同じであることが分かった。測定は、25ワットのCOレーザ(GEM−25、Coherent−DEOS)および高パワー検出器(818T−10検出器、ニューポート(Newport)社)を使用して実施した。ファイバ切断中の入力結合条件および伝搬条件の変動を低減させるために、ファイバはまっすぐに保持し、ファイバの両端および両端間の複数の箇所で固定した。レーザ・ビームは、集束レンズおよび直径500ミクロンのピンホール開口を通してからファイバに結合した。さらに、不良位置合せによる偶発性のレーザ損傷を低減させるため、ファイバの入力端面を金属フィルムでコーティングした。
【0106】
約10.6ミクロンにおけるファイバの基本バンドギャップの伝送損は、図6Bに示すように約0.95dB/mと測定され、推定される測定の不確かさは約0.15dB/mであった。約10.6ミクロンを中心とするバンドギャップを有するファイバの曲げ解析(次に論じる)によれば、曲げ半径4〜10cmで90度曲げたときの曲げ損失は約1.5dB/m未満であった。
【0107】
曲げ損失の測定は、広帯域FTIR源および10.6ミクロンで動作するCOレーザを使用して実施した。それぞれの測定では、さまざまな半径の金属円筒に巻き付けてファイバを90度曲げた。曲げの後のファイバの量はそれぞれのケースで約15cmであった。この部分はそれぞれのケースでまっすぐに保った。図7に、FTIR分光計を使用して測定した、長さ約50cmのまっすぐなファイバとさまざまな曲げ半径で曲げた同じファ
イバの相対強度を示す。
【0108】
図7に示したFTIR曲げ測定は、最も大きな半径での曲げに対して1dB未満の全曲げ損失値を与える。これらの結果を補強するため、長さ約2.5mのファイバを使用したCOレーザ測定を用いて同様の試験を実施した。図8に、COレーザでの、曲げのないファイバに対する90度の曲げのdBで表した平均曲げ損失を示す。
【0109】
このCOレーザ曲げ損失の結果は、数回の試行の平均を表し、観察された損失の変動は約0.2dB程度であった。COレーザを使用して得られた結果は、FTIR装置を使用して得られた結果と同じ定性的特性を有していた。使用したさまざまな源は、さまざまなコヒーレンシ、開口数および偏光状態を有していたことに留意されたい。したがってそれらはさまざまな損失特性を有するモードに結合することが予想された。
【0110】
COレーザからファイバに結合された最大レーザ・パワー密度は約300のW/mであり、これは、紙およびPESフィルム(ファイバの主成分)を通して穴を燃やすのに十分であった。放射が中空ファイバ・コアに適切に結合されたとき、ファイバの損傷は観察されなかった。COレーザ(GEM−25、Coherent−DEOS)はHeNeレーザを使用して位置を合わせた。HeNeレーザを使用してCOレーザの経路を追跡した。これによって比較的に低いパワーのレーザで装置の位置を合わせることができる。参照ビームを分割するためレーザとファイバの間にZnSeビームスプリッタを置いた。ビームスプリッタを透過したビームは、ファイバに結合する前に、レンズ・アセンブリを使用して集中してピンホール開口を通した。GPIB/Labviewコンピュータ・インタフェースを有するNewportデュアル・チャネル・パワー・メータを使用して、ビームスプリッタ参照ビームおよびファイバ出力からデータを同時に集めた。
【0111】
カットバック測定では、素速いカミソリ切断動作を使用してファイバを切断し、合理的に再現可能な切断を生み出した。切断における残留変動を考慮するため、図6Bに示したカットバック測定データの記録されたそれぞれのデータ・ポイントの周囲で短い切断(例えば1〜2mm)を実施した。切断によってパワー・レベルはあまり変化しなかったが、明らかに劣等な切断からのデータは破棄した。1つの切断長のそれぞれの切断の測定データを平均して、図6Bに示したデータを得た。さらに、それぞれの切断の後に測定した透過ビームと参照ビームの間のパワー比を数分間にわたって時間平均した。
【0112】
COレーザの入力結合条件を変化させることによって、長さ約4メートル、コア径約700ミクロンのファイバで、ファイバの可変モード出力パターンも観察した。ファイバは名目上まっすぐに保持した。モーダル出力パターンは、Spiricon Pyrocam IIIを使用して出力ビームを撮像することによって観察した。さまざまなモード・パターンの撮像は、ファイバが比較的に少ない数のモードで動作することを示唆した(例えばこれらのファイバは約10以下の導波モードを有する)。
【0113】
追加の実施形態
本発明のいくつかの実施形態を説明した。それでもやはり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな変更を実施できることを理解されたい。したがって、他の実施形態は特許請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1A】フォトニック結晶ファイバ導波路の1実施形態の断面図。
【図1B】図1Aに示したフォトニック結晶ファイバ導波路の一部の屈折率プロファイルを示す図。
【図2A】フォトニック結晶ファイバ導波路を製造するための方法の1工程を示す概略図。
【図2B】フォトニック結晶ファイバ導波路を製造するための方法の1工程を示す概略図。
【図2C】フォトニック結晶ファイバ導波路を製造するための方法の1工程を示す概略図。
【図2D】フォトニック結晶ファイバ導波路を製造するための方法の1工程を示す概略図。
【図3A】フォトニック結晶ファイバ導波路の1実施形態の閉じ込め領域の断面図。
【図3B】図3Aに示した閉じ込め領域の屈折率プロファイルを示す図。
【図4A】フォトニック結晶ファイバ導波路の1例のSEM顕微鏡写真。
【図4B】フォトニック結晶ファイバ導波路の1例のSEM顕微鏡写真。
【図5】フォトニック結晶ファイバ導波路の2つの異なる例の透過スペクトルを示す図。最も高い透過ピークはそれぞれのケースの1次フォトニック・バンドギャップに対応し、矢印はより高次のバンドギャップを指示する。
【図6A】フォトニック結晶ファイバ導波路の1例の透過スペクトルを示す図。
【図6B】異なる長さに切断されたフォトニック結晶ファイバ導波路の1例の、ファイバ長に対する透過パワーの対数を示す図。図の傾きはdB/mである。
【図7】さまざまな曲率半径で曲げられたファイバの透過スペクトルを示す図。
【図8】損失値は、曲がったファイバを透過した全パワーを、まっすぐに保持した同じファイバと比較することによって得た、COレーザからのEM放射がフォトニック結晶ファイバ導波路を透過するときの曲げ損失を曲率の関数として示す図。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路軸に沿って延びるコアを取り囲む、ポリマーおよびガラス等の異なる誘電材料の互層からなる高パワー低損失ファイバ導波路からなる物品。
【請求項2】
前記互層が渦巻構造を形成する請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記渦巻構造が、前記コアを複数回取り巻く、前記異なる材料の少なくとも2つの層からなる多層構造である請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記異なる材料が高屈折率誘電材料および低屈折率誘電材料からなり、該高屈折率材料の屈折率と該低屈折率材料の屈折率との比が1.5よりも大きい請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記異なる材料が高屈折率誘電材料および低屈折率誘電材料からなり、該高屈折率材料の屈折率と該低屈折率材料の屈折率との比が1.8よりも大きい請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ガラスがカルコゲン・ガラスからなる請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記カルコゲン・ガラスがAsSeからなる請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記ポリマーがPESまたはPEIからなる請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記互層の最も内側の層が、同じ材料の以降の層の厚さよりも小さな厚さを有する請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記互層の厚さが、波長約10.6ミクロンのEM放射を前記導波路軸に沿って導くように選択されている請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記互層の厚さが、約8〜12ミクロンの範囲の波長のEM放射を前記導波路軸に沿って導くように選択されている請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記互層の厚さが、約2〜5ミクロンの範囲の波長のEM放射を前記導波路軸に沿って導くように選択されている請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記コアが中空である請求項1に記載の物品。
【請求項14】
まっすぐな前記ファイバ導波路について、前記ファイバ導波路が、選択された波長で約1dB/mよりも小さな伝送損を示す請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記選択された波長が約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長である請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記選択された波長が約10.6ミクロンである請求項15に記載の物品。
【請求項17】
約4〜10cmの範囲の任意の曲げ半径で90度曲げたときに、前記ファイバ導波路が、選択された波長で約1.5dBよりも小さな伝送損を示す請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記選択された波長が約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長である請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記選択された波長が約10.6ミクロンである請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記ファイバ導波路が、約300W/cm以上のパワー密度の選択された波長のEM放射を前記導波路軸に沿って導く能力を有する請求項1に記載の物品。
【請求項21】
前記選択された波長が約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長である請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記選択された波長が約10.6ミクロンである請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記ファイバ導波路が少なくとも0.3mの曲げ長さで滑らかに約90度に曲げられているときでも、前記ファイバ導波路が、約300W/cm以上のパワー密度の前記選択された波長の前記EM放射を前記導波路軸に沿って導く能力を有する請求項20に記載の物品。
【請求項24】
前記ファイバ導波路が、約25W以上のパワーの選択された波長の前記EM放射を前記導波路軸に沿って導く能力を有する請求項1に記載の物品。
【請求項25】
前記選択された波長が約0.75から約10.6ミクロンまでの範囲の波長である請求項24に記載の物品。
【請求項26】
前記選択された波長が約10.6ミクロンである請求項24に記載の物品。

【図4A】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−509253(P2006−509253A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558680(P2004−558680)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/039344
【国際公開番号】WO2004/052078
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】