説明

高伝熱性ラジアントチューブ

【課題】バーナ火炎で加熱するラジアントチューブの伝熱性能を向上させながら高寿命にし、かつ、施工も容易に行える省エネ高伝熱性ラジアントチューブを提供する。
【解決手段】バーナ火炎で加熱するラジアントチューブ1において、該チューブの直管部の長さは1500mm,内径はφ110mmで、バーナ取付側にボロンを添加したSiC焼結体からなる長さは1000mm,外径はφ100mmの保護内管2を該チューブ内径の中央に挿入し配設し、該チューブの出口側管内には、長さは1200mm,外径はφ34mm,内径はφ24mmで、内部に気孔率を有する複数の炭化珪素製細管4を図2又は図3のように7本束ねて該チューブに平行に配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉に用いられるラジアントチューブの伝熱性能を改善した高伝熱性ラジアントチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱炉では、バーナからの火炎をラジアントチューブ内に供給し、輻射熱による被加熱物の加熱を行っている。このようなラジアントチューブの一方からバーナを挿入した該チューブ入口側では高温となるが、出口側では低温となってしまい熱効率が悪かった。これは、出口側の該チューブ内の熱風が、管断面中央部の方では高温で、管断面側部の方では熱交換により低温となっている熱分布の現象による。故に、この現象により管断面中央部の高温熱風がそのまま炉外に排出されてしまい熱効率が悪かった。
【0003】
このようなラジアントチューブの熱効率改善に、スパイラル状を呈する案内羽根を設けた伝熱促進治具を該チューブ出口側内に挿入し、高温熱風を旋回させ該チューブの側壁側に流すことによって、熱効率を高める提案がなされている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−112694号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高温熱風の旋回では十分な伝熱性能が得られず、実用化には更なる改良が必要であった。
【0006】
そこで本発明は、スパイラル状案内羽根を設けた伝熱促進治具を用いるのに比べ、大幅な伝熱性能の向上が得られ、かつ、耐用寿命の向上と施工性の良い高伝熱性ラジアントチューブを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このようなラジアントチューブの伝熱性能と耐用寿命の向上による省エネの課題を解決するためになされたもので、ラジアントチューブの出口側内に複数の細管を該チューブと平行に挿入し配設することに特徴を有する。
【0008】
更に好ましくは、バーナ取付側のラジアントチューブ内にバーナの火炎を覆うように保護内管を挿入し配設することに特徴を有する。
【0009】
このような本発明は、複数の細管をラジアントチューブと平行に挿入してあるため、高温熱風の流速を阻害することはない。更に、細管がラジアントチューブと接触しているので、熱対流が良い。金属製の細管では耐熱性が十分ではなく、かつ、重くなり長期間使用しているとラジアントチューブ本体が高熱と重さで変形してしまう。好ましくは、0.5 〜10%の気孔率を有するセラミック製細管だと重さで変形し難く、更に好ましくは、熱輻射率が0.7以上の炭化珪素焼結体からなる事が最も好ましい。一方、ラジアントチューブ内径の20〜35%サイズの細管を束ねて、ラジアントチューブ内径の70〜95%に設置する設計が熱輻射を効果的に発揮できる。
【0010】
なお、ラジアントチューブとしては耐用寿命の向上も大切であり、バーナ取付側の該チューブ内にバーナの火炎を覆うように保護内管を挿入し配設することによって、穴開き現象の損傷や該チューブの軟化変形を防止できる。更に、ラジアントチューブの出口側管内に複数の細管を該チューブと平行に挿入し配設することにより高伝熱性が得られ、ラジアントチューブの耐用寿命を向上できることになる。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明によれば、複数の細管をラジアントチューブの出口側内に平行に配設してあるから、従来のラジアントチューブの出口側の熱効率の悪さを改善でき、かつ、ラジアントチューブの耐用寿命も向上できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のU字型ラジアントチューブの概念図である。
【図2】本発明の一実施例である複数の細管の束の斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例である複数の細管の束の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、炉に挿入される本発明の一例であるU字型ラジアントチューブを示す概念図である。ラジアントチューブは炉に挿入される部分が長いので直線部を省略線で省略してある。
【0014】
図1に示すように、炉壁5に炉内部に向けてU字型ラジアントチューブ1が挿入されており、該チューブのバーナ取付側には該チューブ内にバーナ31の火炎32を覆うように保護内管2を挿入し配設されている。更に、該チューブの出口側内に複数の細管4の省略図でラジアントチューブ1と平行に挿入し配設されている。このように高温熱風61が十分に熱交換され、熱風62が排出される。一般には、出口側内に熱交換器(図示せず)を具備させ、バーナ31の燃焼用空気として供給すると省エネとなる。なお、複数の細管4は図2に示すように、複数の同径の管が束状になっている。更に、別の複数の細管4の変化例である図3に示すように、複数の径の異なる細管4が束状になっている。
【0015】
本発明は、U字形状,W字形状,ストレート形状等の金属製ラジアントチューブに用いられるが、セラミック製ラジアントチューブでも効果を有する。バーナ取付側の保護内管は金属製管でも良いが、焼結助剤としてボロンを添加したSiC質焼結体等の高伝熱性セラミック管の方が、軽量で耐火性があり好ましい材料である。なお、該保護内管には足部を設けてラジアントチューブ内径の中央に配置したほうが、熱効率が良く耐用寿命があり好ましい。
【0016】
一方、ラジアントチューブの出口側管内に平行に配設された複数の細管は、金属製細管だと重くなり、長期間使用しているとラジアントチューブ本体が変形してしまう。従って、好ましい材料として、0.5〜10%の気孔率を有するSiC質焼結体が適してる。また、ラジアントチューブの出口側直管に出来るだけ長く挿入すると熱効率が良いが、短い細管の束を数段に分けて挿入しても、該チューブに平行に配置してあれば熱効率が落ちることは無い。なお、複数の細管は同一径だけでなく、該チューブ中央部は図3に示すように小径の細管とすると熱効率は更に良くなる。
【0017】
公知のスパイラル状案内羽根を設けた伝熱促進治具は、熱風で動かされ易く、伝熱性も十分でないのに比べ、本発明で用いる複数の細管は、固体同士の熱伝導が良く、熱風で動かされることも無い。また、バーナ取付側にバーナの火炎を覆うように保護内管を挿入し配設することによって、火炎が集中しラジアントチューブの耐用寿命と熱効率の向上が図れる。
【実施例】
【0018】
具体例としてU字型金属製ラジアントチューブついて説明する。該チューブの直管部の長さは1500mm,内径はφ110mmで、バーナ取付側にボロンを添加したSiC焼結体からなる長さは1000mm,外径はφ100mmの保護内管を挿入し配設する。なお、該保護内管には足部(図示せず)を設けて該チューブ内径の中央に配置してある。一方、内部に気孔率を有する炭化珪素製細管は、長さは1200mm,外径はφ34mm,内径はφ24mmで、図2のように7本束ねて該チューブの出口側管内に平行に配設した。
【0019】
このようにして、バーナで1年間燃焼したところ、炉内温度873℃の条件下で、細管設置部のラジアントチューブ側の平均温度を約10〜20℃上昇させることができ、しかもラジアントチューブより排出される熱風の温度を約10〜30℃低下できることで熱損失が減少され大きな省エネ効果が得られた。
【符号の説明】
【0020】
1 ラジアントチューブ
2 保護内管
31 バーナ
4 複数の細管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナ火炎で加熱するラジアントチューブにおいて、ラジアントチューブの出口側管内に複数の細管を該チューブと平行に挿入し配設することを特徴とする高伝熱性ラジアントチューブ。
【請求項2】
前記ラジアントチューブにおいて、バーナ取付側の該チューブ内にバーナの火炎を覆うように保護内管を挿入し配設することを特徴とする請求項1に記載された高伝熱性ラジアントチューブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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