説明

高分子カプセル及びその製造方法

ヒドロキシククルビツリル化合物及び少なくとも2つのチオール基を有する有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセル及びその製造方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子カプセル及びその製造方法に係り、さらに具体的には、ククルビツリル誘導体及び有機化合物の共重合により形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子カプセルとは、内部に空き空間を有している高分子物質であり、小さな分子だけではなく、蛋白質またはDNAのような高分子物質を内部に封入でき、ナノ反応用容器または薬物伝達体などに応用されてきた(Langer, R. Adv. Drug Delivery Rev. 2001, 46, 125(非特許文献1))。特にセルフアセンブリ方法(J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3805(非特許文献2))やエマルジョン重合方法(Chem. Comm. 2004, 794(非特許文献3))、テンプレート方法(Adv, Mater. 2001, 13, 11(非特許文献4))などを利用して多様な形態の高分子カプセルを製造し、これを利用しようという研究が多く進められた。このうちでも、交差結合(cross-linkage)ネットワークを有する高分子カプセルは、外部環境の変化にもその特性を維持する高い安定性を示し、これらを薬物伝達体として利用しようとする研究が注目を集めたが、高分子カプセルを製造してそれらの表面に多様な生物質と相互作用する標的指向性分子(targeting molecule)を導入する過程で多くの時間と努力とがかかりすぎ、これを利用した薬物伝達現象を研究するのに限界があった。従って、高分子カプセルをさらに容易に製造し、かような高分子カプセルの表面に生物質と相互作用する標的指向性分子を容易に導入する方法が要求されており、これを利用して生体内で安定した薬物伝達体を開発する研究が必要であるというのが実情である。
【0003】
ククルビツリルは、1905年ベーレンド(R. Behrend)、マイヤー(E. Meyer)、ラスツェ(F. Rusche)によって最初に報告された物質であり、三氏の論文(Liebigs Ann. Chem. 1905, 339, 1(非特許文献5))によれば、グリコールウリル(glycoluril)と過量のホルムアルデヒドとを塩酸(HCl)存在下で縮合させて無定形の沈殿を得た後、これを熱い濃硫酸に溶かして水で希釈すれば、結晶状態で得ることができるとのことである。しかし該文献では、この化合物がC1011・2HOの化学式を有する物質であると誤って推定して構造を明らかにできなかった。
【0004】
1981年、モック(W. Mock)と共同研究者らは、該物質が6つの単量体が集まって環をなした巨大な環化合物であり、C36362412の化学式を有するという事実を明らかにし、X線回折法によりその構造を確認した(J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 7367(非特許文献6))。モックらは、この化合物をククルビト[6]ウリルと命名した。その後、ククルビト[6]ウリルの改善された合成方法が公開された(DE 196 03 377 A1(特許文献1))。
【0005】
その後、2000年に入りつつ金キムンとその共同研究者らは、既存のククルビト[6]ウリルの合成方法を改善し、ククルビト[6]ウリルだけではなく、同族体であるククルビト[n]ウリル(n=5,7,8)を合成、分離し、それぞれの構造をX線回折法で確認した(J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 540(非特許文献7))。
【0006】
一方、国際出願特許公開公報00/68232(特許文献2)には、下記参考図1のような化学式のククルビト[n]ウリルを開示している。
(参考図1)

前記化学式で、nは4ないし12の整数である。
【0007】
以上のククルビツリル誘導体は、置換基のないグリコールウリル単量体が集まってなる化合物であったが、置換基が導入されたグリコールウリルを利用して合成されたククルビツリル誘導体が開示された(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1992, 31, 1475(非特許文献8))。該論文によれば、ジメチルグリコールウリルとホルムアルデヒドとの縮合反応を介して5つのジメタノジメチルグリコールウリルが環をなしたデカメチルククルビト[5]ウリルを合成した。
【0008】
ククルビツリルは、巨大環分子化合物であって親油性の洞孔を有し、親水性の入口を両側に有している。従って、ククルビツリルは、洞孔内では親油性相互作用がなされ、6つのカルボニル基が位置した上下の2つの入口では、それぞれ水素結合、極性相互作用、陽イオン−極性相互作用などが行われ、多種の化合物とかなり安定した非共有結合を介した包接効果を示す。特に、アミノ基、カルボン酸のような作用基を有した化合物に対して非常に安定した非共有結合を介した複合体を形成し、かような特性を利用して多様な分野についての研究を持続的に行ってきている。
【0009】
本発明者らは、最近FDA(Food Drug Administration)で認証された抗ガン剤であるオキサリプラチン(oxaliplatin)とククルビツリルとが安定した非共有結合を介した複合体を形成し、ククルビツリルが薬物伝達システムとして使われた例を発表した(PCT/KR02/01755(特許文献3))。また、本発明者らは、ククルビツリルを応用した擬似ロタキサン(pseudo-rotaxane)を介してDNAの結合能力が向上するということを示し、ククルビツリルを利用したデンドリマが遺伝子伝達システムに利用されうる方法について研究、発表を行った(KR01-7169(特許文献4), Angew. Chem. Int. Ed., 2000 and 2001(非特許文献9))。
【0010】
また本研究チームによれば、ククルビツリルは、内部に空き空間を有しているホスト分子であり、非共有結合を介したホスト−ゲスト分子化合物を良好に形成するとのこのである(Acc. Chem. Res. 2003, 36, 621(非特許文献10))。従って、ククルビツリルとの非共有結合を介した複合体を形成できる薬物の種類は、アミン基、アンモニウム基、カルボン酸基などを有している単分子薬物以外に、蛋白質やポリペプチドのような薬物もククルビツリルを利用した薬物伝達システムの効用性を示すであろうと期待している。しかし、ククルビツリルは、多様な置換基を導入できる活性作用基を有しておらず、低い溶解度によってその用途が非常に制限的であった。従って、既存に薬物伝達体として注目されるシクロデキストリンに比べて補完的であり、非常にすぐれた包接効果にもかかわらず、薬物伝達システムとして具体的な研究がなされていなかった。
【0011】
最近本研究チームは、前記のような薬物伝達体としてのククルビツリルの限界を克服しようと持続的な研究を行った結果、制限的用途のククルビツリルに活性置換基を導入したヒドロキシククルビツリルを開発した(韓国出願公開2003−60053号公報(特許文献5)、PCT/KR02/02213(特許文献6))。
(参考図2)

前記参考図2で、RとRは互いに関係なく、水素、メチル基、ブチル基、ドデカブチル基、アリル基、プロピニル基、ヒドロキシエチル基、C−C30アルキルオキシカルボニル基、C−C30アルキルカルボニル基、C−C30アミノアルキル基、−C(=O)CH、−CHCHCHSCHCOOH、−CHCHCHSCHCHNH、−C(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHであり、XはO、SまたはNHであり、nは4ないし20の整数である。
【0012】
前記のようなヒドロキシククルビツリルは、多様な作用基の導入が容易なので、多種のククルビツリルの誘導体の合成が可能である。
【0013】
本研究チームはまた、前記ククルビツリル誘導体からなるリポゾームを利用した薬物または遺伝子伝達システムについて研究して発表を行った(韓国特許出願2004−27577号(特許文献7))。
【0014】
これより、本発明者らは、新しい薬物伝達体の必要性を認識し、前述のククルビツリルの非共有結合特性及び多様な作用基の導入が可能なククルビツリル誘導体を基として、高分子カプセルを利用した薬物伝達体について研究した結果、本発明に至ることとなった。
【0015】
【特許文献1】DE 196 03 377 A1
【特許文献2】国際出願特許公開公報00/68232
【特許文献3】PCT/KR02/01755
【特許文献4】KR01-7169
【特許文献5】韓国出願公開2003−60053号公報
【特許文献6】PCT/KR02/02213
【特許文献7】韓国特許出願2004−27577号
【非特許文献1】Langer, R. Adv. Drug Delivery Rev. 2001, 46, 125
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 3805
【非特許文献3】Chem. Comm. 2004, 794
【非特許文献4】Adv, Mater. 2001, 13, 11
【非特許文献5】Liebigs Ann. Chem. 1905, 339, 1
【非特許文献6】J. Am. Chem. Soc. 1981, 103, 7367
【非特許文献7】J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 540
【非特許文献8】Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1992, 31, 1475
【非特許文献9】Angew. Chem. Int. Ed., 2000 and 2001
【非特許文献10】Acc. Chem. Res. 2003, 36, 621
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、ククルビツリル誘導体から形成された高分子カプセルを提供することである。
【0017】
本発明の目的は、標的指向性化合物が包接されているククルビツリル誘導体から形成された高分子カプセルを提供することである。
【0018】
本発明の目的は、前記高分子カプセルの内部に、薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを提供することである。
【0019】
本発明の目的は、前記高分子カプセルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表示されるククルビツリル誘導体及び下記化学式2で表示される有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセルを提供する。

前記化学式1で、n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、XはO、SまたはNHであり、nは4ないし20の整数であり、
(HS)−Z−(SH)
前記化学式2で、ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【0021】
望ましくは、6つないしは12のアリル基(−CH−CH=CH)を有する前記化学式1の化合物が2つ以上のチオール基を有する前記化学式2の化合物との光重合反応で高分子カプセルを製造でき、これは、チオール−エン光重合反応(thiol-ene photopolymerization)として知られている公知の反応である(Macromolecules 2002, 35, 5361;Macromolecules 2003, 36, 4631)。
【0022】
前記高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の分子内の空隙に標的指向性化合物を、その標的指向性モイエティが高分子カプセル外部に露出されるように包接させることにより、高分子カプセルの表面を標的指向性化合物に変形させることができる。
【0023】
また、前記変形されていない高分子カプセルの内部、または標的指向性化合物により変形された表面を有する高分子カプセルの内部に、ゲスト分子として薬理活性物質を封入させることができる。
【0024】
本発明の他の側面によれば、本発明は、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び前記化学式2の有機化合物を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、高分子カプセルに形成されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセルを製造する方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び前記化学式2の有機化合物を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、前記高分子カプセルを含有する溶液に標的指向性化合物、またはそれを溶かした溶液を加え、標的指向性化合物を高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体に包接させる段階と、共重合または包接されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、高分子カプセルを構成する化学式1のククルビツリル誘導体の分子内空隙内に標的指向性化合物が包接された、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセルを製造する方法を提供する。
【0026】
また本発明は、前記化学式1のククルビツリル誘導体、前記化学式2の有機化合物、及び薬理活性物質を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、共重合または封入されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、高分子カプセルの内部に、ゲスト分子として薬理活性物質が封入されている、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセルを製造する方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、前記化学式1のククルビツリル誘導体、前記化学式2の有機化合物、及び薬理活性物質を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、前記薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液に標的指向性化合物、またはそれを溶かした溶液を加え、標的指向性化合物を高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体に包接させる段階と、共重合、封入、または包接されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、高分子カプセルの内部に、ゲスト分子として薬理活性物質が封入され、高分子カプセルを構成する化学式1のククルビツリル誘導体の分子内の空隙内に標的指向性化合物が包接され、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセルを製造する方法を提供する。
【0028】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明が提供する高分子カプセルは、下記化学式1のククルビツリル誘導体と、2つ以上のチオール基を有する有機化合物との共重合により生成される高分子を提供する。

前記化学式1で、n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、XはO、SまたはNHであり、nは4ないし20の整数である。
【0030】
前記化学式1のククルビツリルは、さらに具体的には、6ないし12のアリル基を有する化合物がことが望ましい。
【0031】
前記ククルビツリルと共に共重合により高分子カプセルを形成する有機化合物は、2つ以上のチオール基を有し、前記化学式1のククルビツリル誘導体と共に共重合される化合物が利用され、具体的には、下記化学式2の化合物を有する化合物が利用されうる:
(HS)−Z−(SH)
前記化学式2で、ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【0032】
前記化学式2の化合物として具体的には、1,8−オクタンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択された化合物が使われうるが、それらに限定されるものではない。
【0033】
本発明が提供する前記高分子カプセルは、標的指向性化合物によりその高分子カプセルの表面が変形されうる。具体的に、かような標的指向性化合物は、高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の分子内空隙に包接されることにより、高分子カプセルの表面を変形させることができ、望ましくは、標的指向性化合物の標的指向性モイエティが高分子カプセルの外部に露出されるように、ククルビツリルの分子内空隙に包接される。
【0034】
従って、本発明の一具現例によれば、高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の分子内の空隙に標的指向性化合物が、その標的指向性モイエティが高分子カプセルの外部に露出されるように包接され、前記化学式1のククルビツリル及び化学式2の有機化合物が共重合されて形成された直径10ないし1,000nmの高分子カプセルを提供する。
【0035】
前記高分子カプセルの表面を変形するのに使われる標的指向性化合物としては、下記化学式3の化合物が使われうるが、それに限定されるものではなく、標的指向性を有しつつ高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の空洞に標的指向性モイエティが高分子カプセルの外部に露出されるように包接されうる化合物でありさえすれば、いかなる化合物でも可能である:
A−B−T
前記化学式3で、Aは、1,3−ジアミノプロピル、1,4−ジアミノブチル、1,5−ジアミノペンチル、1,6−ジアミノヘキシル、スペルミニル、スペルミジニル、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ビオロゲニル、ピリジニル、フェロセニル、またはアミノ酸であり、Bは、水素、C−C30アルキル、C−C30アルケニル、C−C30アルキニル、C−C30カルボニルアルキル、C−C30チオアルキル、C−C30アルキルスルファニル、C−C30アルキルオキシ、C−C30ヒドロキシアルキル、C−C30アルキルシリル、C−C30アミノアルキル、C−C30アミノアルキルチオアルキル、C−C30シクロアルキル、C−C30ヘテロシクロアルキル、C−C30アリール、C−C20アリールアルキル、C−C30ヘテロアリール、またはC−C20ヘテロアリールアルキルであり、Tは、糖類、ポリペプチド、蛋白質、及び遺伝子から構成されたグループから選択された標的指向性モイエティである。
【0036】
前記化学式3で、標的指向性モイエティとして使われる糖類としては、グルコース、マンノース、またはガラクトースなどが使われうるが、それらに限定されるものではない。また、標的指向性モイエティとして使われる蛋白質としては、レクチン、セレクチン、またはトランスフェリンなどが使われうるが、それらに限定されるものではない。
【0037】
前記化学式3の標的指向性化合物が前記高分子カプセル表面のククルビツリル空洞に包接される形態は、下記参考図3の通りである。
(参考図3)

【0038】
前記化学式3の化合物でAは、ククルビツリル誘導体に好ましく包接される物質であり、ククルビツリル誘導体が高分子カプセルを形成するときに高分子カプセルの表面に表れるククルビツリル誘導体に良好に包接されるように考案されたものである。かような戦略により、前記参考図3から分かるように、高分子カプセルの表面は、Bの連結部位を介してAと連結された標的指向性モイエティTに変形が可能である。
【0039】
一方、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物の共重合により形成された高分子カプセル及びその高分子カプセルの表面に標的指向性化合物が包接されている高分子カプセルは、薬理活性物質の担体として作用が可能である。前記高分子カプセルは、薬理活性物質を高分子カプセルの内部の空き空間にゲスト分子(guest molecule)として封入可能である。特に、標的指向性化合物が包接されている高分子カプセルに薬物が封入されれば、体内で標的部位にのみ特異的に作用し、薬物が標的部位以外の部位で作用して発生していた副作用が除去されうる。薬理活性物質が封入されている高分子カプセルの表面が標的指向性化合物である前記化学式3の化合物により変形された模式図を図2に示した。
【0040】
前記高分子カプセルに封入される薬理活性物質は、特別に限定される物質ではなく、薬理活性物質を有しつつ、物質の特性上、高分子カプセルの製造時に使われる溶媒に溶解されたり、または分散されうる物質でありさえすれば、いかなる薬理活性物質でも可能である。具体的に、前記薬理活性物質として、有機化合物、蛋白質、または遺伝子などが使われうる。
【0041】
前記薬理活性物質のうち有機化合物としては、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、スピロノラクトン、テストステロン、メゲステロールアセテート、ダナゾール、プロゲステロン、インドメタシン、アンフォテリシンB、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択された有機化合物が使われうるが、それらに限定されるものではない。
【0042】
前記薬理活性物質のうち蛋白質としては、人間成長ホルモン、G−CSF(Granulocyte Colony-Stimulating Factor)、GM−CSF(Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor)、エリスロポイエチン、ワクチン、抗体、インシュリン、グルカゴン、カルシトニン、ACTH(Adreno Cortico Tropic Hormone)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、視床下部分泌物質、プロラクチン、エンドルフィン、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、エンケファリン、バソプレシン、神経成長促進因子、非自然発生的アヘン様物質、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、スーパーオキサイド・ディスムターゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択された蛋白質が使われうるが、それらに限定されるものではない。
【0043】
前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物の共重合により形成される直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセルを製造する方法は、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び前記化学式2の有機化合物を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、高分子カプセルに形成されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む。
【0044】
また、高分子カプセルの内部に、薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを製造する方法は、前記化学式1のククルビツリル誘導体、前記化学式2の有機化合物、及び薬理活性物質を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、共重合または封入されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む。
【0045】
標的指向性化合物により表面が変形された高分子カプセルを製造するためには、前記段階のうち、高分子カプセルが生成された後に標的指向性化合物または標的指向性化合物を溶かした溶液を加えればよい。具体的には、標的指向性化合物により表面が変形された高分子カプセルを製造する方法は、前記化学式1のククルビツリル誘導体、前記化学式2の有機化合物を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、前記高分子カプセルを含有する溶液に標的指向性化合物またはそれを溶かした溶液を加え、標的指向性化合物を高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体に包接させる段階と、共重合または包接されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む。
【0046】
また、前記標的指向性化合物が包接されている高分子カプセルの内部に、薬物が封入されている高分子カプセルを製造する方法は、化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物との共重合により獲得された、薬物が封入されていないか、または封入されている高分子カプセルを形成した後、標的指向性化合物または標的指向性化合物を溶かした溶液を加えればよい。具体的に、高分子カプセルの内部に、薬物が封入されて標的指向性化合物により表面が変形された高分子カプセルを製造する方法は、前記化学式1のククルビツリル誘導体、前記化学式2の有機化合物、及び薬理活性物質を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、前記薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液に標的指向性化合物またはそれを溶かした溶液を加え、標的指向性化合物を高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体に包接させる段階と、共重合、封入または包接されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む。
【0047】
前記高分子カプセルの製造方法で、有機溶媒に化学式1のククルビツリル誘導体、化学式2の有機化合物そして薬理活性物質を溶解する順序には決まりはなく、いずれも先に溶解可能である。
【0048】
前記高分子カプセルの製造方法いずれでも、有機溶媒としては、化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を溶解できる溶媒を使用でき、かような溶媒としては、クロロホルム、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択された溶媒があるが、それらに限定されるものではない。溶媒の量は、前記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物が全部溶解されうるほどに十分な量の溶媒を使用でき、薬理活性物質が使われる場合、薬理活性物質までともに十分に溶解できるほどに十分な量の溶媒を使用する。
【0049】
前記製造方法で、高分子カプセルを形成するために化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させる段階で、前記段階での共重合は、当該技術分野に公知されている共重合方法を使用でき、具体的には、紫外線を加えることによって共重合を誘発できる。共重合を誘発するために、紫外線を約6時間加えれば、反応がほぼ進み、それ以上の時間加えてもよい。前記紫外線は、望ましくは256nmまたは300nmの波長範囲の紫外線を使用する。前記紫外線を加えるとき、反応物の温度は室温でもって反応させることができる。
【0050】
前記共重合反応時に、前記ククルビツリル誘導体及び有機化合物の溶液に紫外線を加える前に、ラジカル開始剤を加えることができ、かようなラジカル開始剤の付加により、ククルビツリル誘導体及び有機化合物の共重合反応をさらに促進させることができる。かようなラジカル開始剤は、AIBN、K、(NH、過酸化ベンゾイル、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択されうるが、それらに限定されるものではなく、当業者に公知されている任意のラジカル開始剤を使用できる。
【0051】
前記製造方法のうち、薬理活性物質が封入されているか、または封入されていない高分子カプセルの表面に、前記化学式3の化合物を包接させて標的指向性化合物により変形された表面性質を有する高分子カプセルを形成する段階で、前記標的指向性化合物を溶かした溶液を高分子カプセルが分散されている溶液に加えることができ、または前記標的指向性化合物を溶媒に溶かして溶液として加えずに、直接高分子カプセルが分散されている溶液に加えて溶かすことも可能である。
【0052】
前記のような方法により製造された、ククルビツリル誘導体及び有機化合物の共重合により形成された高分子カプセルは、平面の基板に生成物溶液を一滴落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡で高分子カプセルの実体を確認することができ、その高分子カプセルの直径は、動的散乱装置(Dynamic Light Scattering Spectrophotometer)を利用して測定できる。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、ククルビツリルが有機化合物と共に共重合されて形成された高分子カプセル、標的指向性化合物により変形された表面を有した高分子カプセル、その高分子カプセルに薬物が封入されている高分子カプセル、及び標的指向性化合物により変形された表面を有した高分子カプセルに薬物が封入されている高分子カプセル、そしてそれらの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、本発明について実施例をもって詳細に説明する。それらの実施例は、本発明について説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されることがあってはならない。
【実施例1】
【0055】
高分子カプセルの製造(1)
1.0mgのアリルオキシククルビト[12]ウリルを約10mLのメチルアルコールに完全に溶かした後、40mgの1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールを加えて溶解させた。6時間ほど256nmと300nmとの紫外線を加えた後、透析過程を介して、重合されずに残っているアリルオキシククルビト[12]ウリル及び1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールを除去した。
【0056】
生成物溶液を平面の基板に一粒落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡(XL 30S, Philips)で高分子カプセルの実体を確認し、その高分子カプセルの直径を動的散乱装置(ELS-8000, O, Ostuka Electronics Co., Ltd.)を利用して測定した。
【0057】
前記電子走査顕微鏡で観察した結果を撮影した写真を図1に示した。図1に示されているように、高分子カプセルが生成されていることが確認され、動的散乱装置により測定した高分子カプセルの直径は、平均100nmであった。
【実施例2】
【0058】
高分子カプセルの製造(2)
1.0mgのアリルオキシククルビト[12]ウリルを約10mLのメチルアルコールに完全に溶かした後、40mgの2,8−オクタンジチオールを加えて溶解させた。6時間ほど256nmと300nmとの紫外線を加えた後、透析過程を介して、重合されずに残っているアリルオキシククルビト[12]ウリル及び1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールを除去した。
【0059】
生成物溶液を平面の基板に一滴落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡(XL30S, Philips)で高分子カプセルの実体を確認し、その高分子カプセルの直径を動的散乱装置(ELS-8000, O, Ostuka Electronics Co., Ltd.)を利用して測定した。その結果、平均120nmサイズの高分子カプセルが生成されていることを確認した。
【実施例3】
【0060】
アルブミンが封入されている高分子カプセルの製造
1.0mgのアリルオキシククルビト[12]ウリルを約10mLのメチルアルコールに完全に溶かした後、40mgの1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールと1mgのアルブミンとを加えて溶解させた。6時間ほど256nmと300nmとの紫外線を加えた後、透析過程を介して、重合されずに残っているアリルオキシククルビト[12]ウリル、1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオール、及び封入されずに残っているアルブミンを除去した。
【0061】
生成物溶液を平面の基板に一滴落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡(XL30S, Philips)で高分子カプセルの実体を確認し、その高分子カプセルの直径を動的散乱装置(ELS-8000, O, Ostuka Electronics Co., Ltd.)を利用して測定した。その結果、平均120nmサイズの高分子カプセルが生成されていることを確認した。
【実施例4】
【0062】
ヒドロコルチゾンが封入されている高分子カプセルの製造
1.0mgのアリルオキシククルビト[12]ウリルを約10mLのメチルアルコールに完全に溶かした後、40mgの1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールと1mgのヒドロコルチゾンとを加えて溶解させた。6時間ほど256nmと300nmとの紫外線を加えた後、透析過程を介して、重合されずに残っているアリルオキシククルビト[12]ウリル、1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオール、及び封入されずに残っているヒドロコルチゾンを除去した。
【0063】
生成物溶液を平面の基板に一滴落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡(XL30S, Philips)で高分子カプセルの実体を確認し、その高分子カプセルの直径を動的散乱装置(ELS-8000, O, Ostuka Electronics Co., Ltd.)を利用して測定した。その結果、平均110nmサイズの高分子カプセルが生成されていることを確認した。
【実施例5】
【0064】
アルブミンが封入されてマンノースに変形された表面を有する高分子カプセルの製造
1.0mgのアリルオキシククルビト[12]ウリルを約10mLのメチルアルコールに完全に溶かした後、40mgの1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールと1mgのアルブミンとを加えて溶解させた。6時間ほど256nmと300nmとの紫外線を加えた後、スペルミジンがマンノースのC1位置に置換されている化合物(マンノース−スペルミジン)0.5mgを加えて溶かした後で一日放置した。その後、透析過程を介して、重合されずに残っているアリルオキシククルビト[12]ウリル及び1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオール、封入されずに残っているアルブミン、包接されずに残っているマンノース−スペルミジンを除去した。
【0065】
生成物溶液を平面の基板に一滴落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡(XL30S, Philips)で高分子カプセルの実体を確認し、その高分子カプセルの直径を動的散乱装置(ELS-8000, O, Ostuka Electronics Co., Ltd.)を利用して測定した。その結果、平均200nmサイズの高分子カプセルが生成されていることを確認した。
【実施例6】
【0066】
アルブミンが封入されてガラクトースに変形された表面を有する高分子カプセルの製造
1.0mgのアリルオキシククルビト[12]ウリルを約10mLのメチルアルコールに完全に溶かした後、40mgの1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールと1mgのアルブミンとを加えて溶解させた。6時間ほど256nmと300nmとの紫外線を加えた後、スペルミジンがガラクトースのC1位置に置換された化合物(ガラクトース−スペルミジン)0.5mgを加えて溶かした後で一日放置した。その後、透析過程を介して、重合されずに残っているアリルオキシククルビト[12]ウリル及び1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオール、封入されずに残っているアルブミン、包接されずに残っているガラクトース−スペルミジンを除去した。
【0067】
生成物溶液を平面の基板に一滴落として乾燥させた後、電子走査顕微鏡(XL30S, Philips)で高分子カプセルの実体を確認し、その高分子カプセルの直径を動的散乱装置(ELS-8000, O, Ostuka Electronics Co., Ltd.)を利用して測定した。その結果、平均200nmサイズの高分子カプセルが生成されていることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】アリルオキシククルビト[12]ウリル及び1,3−ジオキサ−2,8−オクタンジチオールの共重合により生成された高分子カプセルを電子走査顕微鏡で撮影した写真である。
【図2】薬理活性物質が封入されている高分子カプセルの表面を標的指向性化合物により変形させた高分子カプセルの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示されるククルビツリル誘導体及び下記化学式2で表示される有機化合物が共重合して形成された直径10ないし1,000nmサイズの高分子カプセル:

前記化学式1で、
n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、
ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、
−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、
XはO、SまたはNHであり、
nは4ないし20の整数であり、
(HS)−Z−(SH) (2)
前記化学式2で、
ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、
j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1の化合物は、6ないし12個のアリル基を含む化合物であることを特徴とする請求項1に記載の高分子カプセル。
【請求項3】
前記化学式2の化合物は、1,8−オクタンジチオール、3,6−ジオキサ−1,8−オクタンジチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の高分子カプセル。
【請求項4】
高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の分子内空隙に標的指向性化合物が、その標的指向性モイエティが高分子カプセル外部に露出されるように包接されていることを特徴とする請求項1に記載の高分子カプセル。
【請求項5】
前記標的指向性化合物は、下記化学式3の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の高分子カプセル:
A−B−T (3)
前記化学式3で、
Aは、1,3−ジアミノプロピル、1,4−ジアミノブチル、1,5−ジアミノペンチル、1,6−ジアミノヘキシル、スペルミニル、スペルミジニル、プロピルアミノ、ブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノ、ビオロゲニル、ピリジニル、フェロセニル、またはアミノ酸であり、
Bは、水素、C−C30アルキル、C−C30アルケニル、C−C30アルキニル、C−C30カルボニルアルキル、C−C30チオアルキル、C−C30アルキルスルファニル、C−C30アルキルオキシ、C−C30ヒドロキシアルキル、C−C30アルキルシリル、C−C30アミノアルキル、C−C30アミノアルキルチオアルキル、C−C30シクロアルキル、C−C30ヘテロシクロアルキル、C−C30アリール、C−C20アリールアルキル、C−C30ヘテロアリール、またはC−C20ヘテロアリールアルキルであり、
Tは、糖類、ポリペプチド、蛋白質、及び遺伝子から構成されたグループから選択された標的指向性モイエティである。
【請求項6】
前記糖類は、グルコース、マンノース、またはガラクトースであることを特徴とする請求項5に記載の高分子カプセル。
【請求項7】
前記蛋白質は、レクチン、セレクチン、またはトランスフェリンであることを特徴とする請求項5に記載の高分子カプセル。
【請求項8】
高分子カプセルの内部に、ゲスト分子として薬理活性物質が封入されていることを特徴とする請求項1に記載の高分子カプセル。
【請求項9】
高分子カプセルの内部に、ゲスト分子として薬理活性物質が封入されていることを特徴とする請求項4に記載の高分子カプセル。
【請求項10】
前記薬理活性物質は、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、スピロノラクトン、テストステロン、メゲステロールアセテート、ダナゾール、プロゲステロン、インドメタシン、アンフォテリシンB、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択された有機化合物であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の高分子カプセル。
【請求項11】
前記薬理活性物質は、人間成長ホルモン、G−CSF(Granulocyte Colony-Stimulating Factor)、GM−CSF(Granulocyte-Macrophage Colony-Stimulating Factor)、エリスロポイエチン、ワクチン、抗体、インシュリン、グルカゴン、カルシトニン、ACTH(Adreno Cortico Tropic Hormone)、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ソマトメジン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、視床下部分泌物質、プロラクチン、エンドルフィン、VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)、エンケファリン、バソプレシン、神経成長促進因子、非自然発生的アヘン様物質、インターフェロン、アスパラギナーゼ、アルギナーゼ、スーパーオキサイド・ディスムターゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、またはそれらの組み合わせから構成されたグループから選択された蛋白質であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の高分子カプセル。
【請求項12】
下記化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、
前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、
高分子カプセルに形成されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、請求項1に記載の高分子カプセルを製造する方法:

前記化学式1で、
n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、
ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、
−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、
XはO、SまたはNHであり、
nは4ないし20の整数であり、
(HS)−Z−(SH) (2)
前記化学式2で、
ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、
j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【請求項13】
下記化学式1のククルビツリル誘導体及び下記化学式2の有機化合物を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、
前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて高分子カプセルを形成させて高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、
前記高分子カプセルを含有する溶液に標的指向性化合物またはそれを溶かした溶液を加え、標的指向性化合物を高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の分子内空隙に包接させる段階と、
共重合または包接されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、請求項4に記載の高分子カプセルを製造する方法:

前記化学式1で、
n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、
ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、
−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、
XはO、SまたはNHであり、
nは4ないし20の整数であり、
(HS)−Z−(SH) (2)
前記化学式2で、
ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、
j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【請求項14】
下記化学式1のククルビツリル誘導体、下記化学式2の有機化合物、及び薬理活性物質を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、
前記反応溶液中の化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液を形成する段階と、
共重合または封入されずに残っている化合物を透析により除去する段階とを含む、請求項8に記載の高分子カプセルを製造する方法:

前記化学式1で、
n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、
ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、
−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、
XはO、SまたはNHであり、
nは4ないし20の整数であり、
(HS)−Z−(SH) (2)
前記化学式2で、
ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、
j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【請求項15】
下記化学式1のククルビツリル誘導体、下記化学式2の有機化合物、及び薬理活性物質を有機溶媒に溶解させて反応溶液を獲得する段階と、
前記反応溶液で化学式1のククルビツリル誘導体及び化学式2の有機化合物を共重合させて薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液を獲得する段階と、
前記薬理活性物質が封入されている高分子カプセルを含有する溶液に標的指向性化合物またはそれを溶かした溶液を加え、標的指向性化合物を高分子カプセルを構成するククルビツリル誘導体の分子内空隙に包接させる段階と、
共重合、封入、または包接されずに残っている化合物を透析により除去する段階を含む、請求項9に記載の高分子カプセルを製造する方法:

前記化学式1で、
n個のAとn個のAとのうちの一つ以上またはいずれもが、
ヒドロキシ基、メチルオキシ基、ブチルオキシ基、ドデカブチルオキシ基、プロピニルオキシ基、ヒドロキシエチルオキシ基、C−C30アルキルオキシカルボニルオキシ基、C−C30アルキルカルボニルオキシ基、C−C30アミノアルキルオキシ基、−OC(=O)CH、−OCHCHCHSCHCOOH、−OCHCHCHSCHCHNH、及び−OC(=O)CHCHCHCHCHCHCHCHCHCHCHからなる群から選択されるか、
−O−A−CH=CHであり、ここでAはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、
XはO、SまたはNHであり、
nは4ないし20の整数であり、
(HS)−Z−(SH) (2)
前記化学式2で、
ZはC−C20アルキレンであるが、そのアルキレンを構成する内部の炭素−炭素結合中間に、酸素、硫黄、または窒素が挿入されて連結され、前記アルキレンは、HSCHCHCHCHCHCHSH、HSCHCHOCHCHOCHCHSH、HSCHCH(OH)CH(OH)CHSH、CHCHC(CHOOCCHCHSH)、及びC(CHOOCCHCHSH)から構成された群から選択された基に置換され、
j及びkはそれぞれ独立的に1ないし3の整数である。
【請求項16】
前記有機溶媒は、水、クロロホルム、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択されることを特徴とする請求項12ないし請求項15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記化学式1のククルビツリル誘導体の化学式2の有機化合物との共重合は、紫外線を加えることによってなされることを特徴とする請求項12ないし請求項15のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記化学式1のククルビツリル誘導体の化学式2の有機化合物との共重合で、前記紫外線を加える前にラジカル開始剤を添加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ラジカル開始剤は、AIBN、K、(NH、過酸化ベンゾイル、及びそれらの組み合わせから構成されたグループから選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−537005(P2008−537005A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507552(P2008−507552)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001482
【国際公開番号】WO2006/112673
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(500345478)ポステック・ファウンデーション (25)
【出願人】(505282042)ポステック・アカデミー‐インダストリー・ファウンデーション (34)
【Fターム(参考)】