説明

高分子凝集剤

【課題】 難脱水性の有機性汚泥等の脱水処理において、強固な粗大フロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供する。
【解決手段】 水溶性不飽和モノマー(a)を必須構成単位とする水溶性(共)重合体(A)、および架橋剤(b)の存在下に水溶性不飽和モノマー(a)を重合させてなる水不溶性吸水性樹脂(B)を組み合わせてなる高分子凝集剤、並びに前記高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加し、混合してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、下水もしくはし尿等(以下、下水汚泥と略記)の微生物処理で生じる有機性汚泥の脱水に用いる高分子凝集剤および下水汚泥の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥処理場、一般産業廃水(以下、廃水と略記)処理場等より生じる有機性汚泥は、これに高分子凝集剤を添加して遠心脱水機、ベルトプレス、ロータリープレス等の脱水装置を使用して脱水する一般的な方法で処理されている。
近年、汚泥脱水処理の効率化を目的とした集約脱水処理が進み、汚泥の脱水処理までの送泥や貯留等に長時間を要している。そのため汚泥の腐敗が進行し、繊維分の低下、有機酸の増加により汚泥が難脱水化傾向にある。
また汚泥の難脱水化に伴い、比較的脱水しにくい有機性汚泥に対しても優れた効果を発揮するスクリュープレス型脱水機が中小規模の処理場で採用されつつある。該スクリュープレス型脱水機では、該脱水機中の凝集槽で形成されたフロックが脱水機外筒の全面で脱水されるために、脱水ケーキの含水率が下がりやすい特徴があり、遠心脱水機やベルトプレス脱水機等の時代から次世代に向けての脱水機として注目されている。
従来、スクリュープレス型脱水機向けにとくに開発された高分子凝集剤としては、例えば(メタ)アクリレート系カチオン性単量体を共重合させた水溶性両性高分子(例えば特許文献1参照)、ポリオキシエチレン鎖を含有する水溶性高分子(例えば特許文献2参照)、並びにカチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤および水溶性塩からなる混合物(例えば特許文献3参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−122081号公報
【特許文献2】特開2004−195370号公報
【特許文献3】特開2000−325966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の高分子凝集剤は、生成するフロック粒径が小さいために初期ろ水量が少なく、圧搾されたケーキ含水率が高いという問題があった。また、このような問題点は、スクリュープレス型脱水機を用いた場合に限られるわけではなく、その他の従来型脱水機を用いる場合でもほぼ同様であり、いずれの場合も改善が望まれていた。
本発明の目的は、難脱水性の有機性汚泥の脱水処理において、強固な粗大フロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、(第1発明)水溶性不飽和モノマー(a)を必須構成単位とする水溶性(共)重合体(A)、および架橋剤(b)の存在下に水溶性不飽和モノマー(a)を重合させてなる水不溶性吸水性樹脂(B)を組み合わせてなる高分子凝集剤;(第2発明)前記高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加し、混合してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の高分子凝集剤および処理方法は下記の効果を奏する。
(1)有機性汚泥の脱水処理において強固な粗大フロックが形成できる。
(2)形成されたフロックは破壊、再分散されにくいため凝集処理の安定性や処理速度を著しく高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願発明のうちの第1発明である高分子凝集剤について説明する。
[水溶性(共)重合体(A)]
本発明における水溶性(共)重合体(A)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)としては、下記のノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)、カチオン性水溶性不飽和モノマー(a2)、アニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。なお、本発明において水溶性とは20℃における水に対する溶解度(g/水100g)が1以上であること、また、後述する水不溶性とは該溶解度が1未満であることを意味する。なお、本発明における水溶性(共)重合体(A)は水溶性単独重合体および水溶性共重合体を意味する。
【0008】
(a1)ノニオン性水溶性不飽和モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11)ノニオン性水溶性(メタ)アクリレート
炭素数(以下Cと略記)4以上かつ重量平均分子量(以下Mwと略記5,000以下の水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびC4〜5のアクリル酸アルキル(C1〜2)エステル(例えばアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチル);[なお、Mwの測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による];
(a12)ノニオン性水溶性(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、およびN−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];
(a13)上記以外のノニオン性水溶性窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート。
【0009】
(a2)カチオン性水溶性不飽和モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a21)窒素原子含有カチオン性水溶性(メタ)アクリレート
C5〜30のもの、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等]、および複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(a22)窒素原子含有カチオン性水溶性(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等];
(a23)アミノ基を有するカチオン性水溶性エチレン性不飽和化合物
C5〜30のもの、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミンおよびp−アミノスチレン;
(a24)アミンイミド基を有するカチオン性水溶性化合物
C5〜30のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、および1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド;
(a25)上記以外の窒素原子含有カチオン性水溶性ビニルモノマー
C5〜30のもの、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピペリジン、ビニルピラジンおよびビニルモルホリン。
【0010】
(a3)アニオン性水溶性不飽和モノマー
下記の酸、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウムおよびカリウム等、以下同じ)塩、アルカリ土類金属(マグネシウムおよびカルシウム等、以下同じ)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31)水溶性不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、安息香酸ビニルおよび酢酸アリル;
(a32)水溶性不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、およびp−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、並びにp−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33)(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(C1〜6)硫酸エステル
(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
【0011】
水溶性不飽和モノマー(a)のうち高分子量化し易いという観点から好ましいのは、(a1)、(a21)、(a22)、(a31)および(a32);さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、並びに(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレートおよびスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド;特に好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、並びに(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレートおよびスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド;最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリルおよびN−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(上記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、並びに(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
【0012】
本発明における水溶性(共)重合体(A)を構成する単量体単位としては、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により水不溶性不飽和モノマー(x)を併用することができる。該(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1)C6〜23の水不溶性(メタ)アクリレート
脂肪族または脂環式アルコール(C3〜20)の(メタ)アクリレート[プロピル−、ブチル−、ラウリル−、オクタデシル−およびシクロヘキシル(メタ)アクリレート等]およびエポキシ基(C4〜20)含有(メタ)アクリレート[グリシジル(メタ)アクリレート等];
【0013】
(x2)[モノアルコキシ(C1〜20)−、モノシクロアルコキシ(C3〜12)−もしくはモノフェノキシ]ポリプロピレングリコール(以下、PPGと略記)(重合度2〜50)の水不溶性不飽和カルボン酸モノエステル
モノオール(C1〜20)もしくは1価フェノール(C6〜20)のプロピレンオキシド(以下POと略記)付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−メトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−エトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−プロポキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−ブトキシPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−シクロヘキシルPPGモノ(メタ)アクリレート、ω−フェノキシPPGモノ(メタ)アクリレート等]およびジオール(C2〜20)もしくは2価フェノール(C6〜20)のPO付加物の(メタ)アクリル酸エステル[ω−ヒドロキシエチル(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等]等;
【0014】
(x3)C2〜30の不飽和炭化水素
エチレン、ノネン、スチレン、および1−メチルスチレン等;
(x4)不飽和アルコール[C2〜4、例えばビニルアルコール、および(メタ)アリルアルコール]のカルボン酸(C2〜30)エステル(酢酸ビニル等);
(x5)ハロゲン含有モノマー(C2〜30、例えば塩化ビニル)。
【0015】
本発明における水溶性(共)重合体(A)における水溶性不飽和モノマー(a)の単量体単位の割合(モル%)は、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、高フロック強度、フロック粗大化および脱水ケーキの低含水率化等(以下凝集性能発現と略す)の観点から好ましくは50〜100%、さらに好ましくは80〜100%である。
また、水不溶性不飽和モノマー(x)の単量体単位の割合(モル%)は、(A)を構成するモノマーの全モル数に基づいて、通常60%以下、凝集性能発現の観点から好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0016】
本発明の高分子凝集剤が下水汚泥等に使用される場合は、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中における懸濁粒子表面がマイナス荷電を有していることから、水溶性(共)重合体(A)としてはカチオン性水溶性(共)重合体(A1)、両性水溶性共重合体(A2)およびこれらの混合物が好ましい。
また、本発明の高分子凝集剤が廃水に使用される場合は、溶解性有機物等を処理するためにまず無機凝集剤を添加することが多いことから、懸濁粒子表面は無機凝集剤で覆われることとなりプラス荷電を有していることから、水溶性(共)重合体(A)としては、アニオン性水溶性(共)重合体(A3)、ノニオン性水溶性(共)重合体(A4)、およびこれらの混合物が好ましい。
【0017】
本発明における水溶性(共)重合体(A)のうち、カチオン性水溶性(共)重合体(A1)は、前記カチオン性水溶性不飽和モノマー(a2)を必須構成単量体単位として有し、必要によりノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)および/または水不溶性不飽和モノマー(x)を有する(共)重合体であって、水に溶解した際にカチオン性を示す(共)重合体である。
(A1)を構成する(a2)と(a1)のモル割合(%)[(a2)/(a1)]は、汚泥粒子表面の荷電中和の観点から好ましくは70/30〜100/0、さらに好ましくは80/20〜100/0である。
【0018】
(A)のうち、両性水溶性共重合体(A2)は、前記カチオン性水溶性不飽和モノマー(a2)並びにアニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)を必須構成単量体単位として有し、必要によりノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)および/または水不溶性不飽和モノマー(x)を有する共重合体である。
(A2)を構成する(a2)、(a3)および(a1)のモル割合(%)[(a2)/(a3)/(a1)]は、凝集性能発現の観点から好ましくは5/5/90〜30/30/40、さらに好ましくは20/10/70〜30/20/50である。
【0019】
(A)のうち、アニオン性水溶性(共)重合体(A3)は、前記アニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)を必須構成単量体単位として有し、必要によりノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)および/または水不溶性不飽和モノマー(x)を有する重合体であって、水に溶解した際にアニオン性を示す重合体である。(A3)を構成する(a3)と(a1)のモル割合(%)[(a3)/(a1)]は、凝集性能発現の観点から好ましくは70/30〜100/0、さらに好ましくは80/20〜100/0である。
【0020】
また、ノニオン性水溶性(共)重合体(A4)は、ノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)を必須構成単量体単位として有し、必要により水不溶性不飽和モノマー(x)を有する共重合体である。
【0021】
(A)の固有粘度(以下[η]と表記することがある)(1N−NaNO水溶液中30℃での測定値、単位はdl/g。以下同じ。)は通常1〜40、凝集性能発現および凝集速度の観点から好ましくは2〜38、さらに好ましくは4〜35、最も好ましくは5〜30である。
【0022】
(A)の水中におけるカチオン性またはアニオン性の評価については、コロイド当量値(meq/g)として求めることができる。すなわち、カチオン性(共)重合体中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性(共)重合体中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値、アニオンコロイド当量値として求めることができる。
【0023】
(A)がカチオン性水溶性(共)重合体(A1)の場合、カチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましくは0.1〜7.0、より好ましくは0.5〜6.0、さらに好ましくは1.0〜5.5、特に好ましくは1.5〜5.2、最も好ましくは2.0〜5.0である。
また、(A)が両性水溶性共重合体(A2)の場合、カチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましくは0.1〜7、より好ましくは0.5〜6.0、さらに好ましくは1.0〜5.5、特に好ましくは1.5〜5.2、最も好ましくは2.0〜5.0であり;アニオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましくは−13.0〜−0.05、より好ましくは−10〜−0.1、さらに好ましくは−8.0〜−0.3、特に好ましくは−5.0〜−0.5、最も好ましくは−3.0〜−1.0である。
【0024】
コロイド当量値は、高分子凝集剤の技術分野で通常行われているコロイド滴定法により求めることができ、例えば特開2009−178634号公報記載の方法などが挙げられる。
【0025】
本発明における水溶性(共)重合体(A)の製造方法としては、特に限定はなく、ラジカル重合開始剤を用いる種々のラジカル重合法、例えば水溶液重合、逆相懸濁重合、光重合、沈澱重合および逆相乳化重合が挙げられ、例えば特開2009−178634号公報記載の製造法などが採用できる。これらのうち工業的観点から好ましいのは、水溶液重合、逆相懸濁重合、光重合および逆相乳化重合、さらに好ましいのは水溶液重合および逆相懸濁重合である。
【0026】
水溶液重合としては、例えばモノマーの水溶液を外部からの熱の出入りがない反応容器中に入れ、断熱重合させる方法(例えば特公昭59−40843号公報)およびモノマーの水溶液を外部から温度調整可能な容器中で定温重合させる方法(例えば特開平3−189000号公報)を用いることができる。
【0027】
光重合としては、例えば、モノマーに、必要により光増感剤を加え、波長300〜500nmの光を照射して重合させる方法(例えば、特公昭45−37033号公報に記載の方法)が挙げられる。
【0028】
逆相懸濁重合としては、例えばモノマーの水溶液を油溶性高分子物質またはノニオン性界面活性剤を分散安定剤として、分散媒中に油中水型に分散させて重合させる方法(例えば特開昭56−53111号公報)を用いることができる。
【0029】
また、逆相乳化重合としては、例えばモノマーの水溶液、疎水性溶媒および界面活性剤を用いて、油中水型エマルションを形成させて重合させる方法(例えば特許第2676483号公報および特開平9−208802号公報等に記載の方法)が挙げられる。
【0030】
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば水溶性アゾ開始剤〔例えばアゾビスアミジノプロパン(塩)[例えば2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス−(アミジノプロパン)ジハイドロクロライド]、アゾビスシアノバレリン酸(塩)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](塩)〕;油溶性アゾ開始剤;水溶性過酸化物および油溶性過酸化物が挙げられる。上記の過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよい。
【0031】
ラジカル重合開始剤の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、原料モノマーの合計重量に基づいて、好ましくは0.0001〜20%、さらに好ましくは0.001〜10%、とくに好ましくは0.01〜5%、最も好ましくは0.05〜3%である。
【0032】
また、必要によりラジカル重合用連鎖移動剤を使用してもよい。ラジカル重合用連鎖移動剤としては、分子内にチオール基を有する化合物[例えば2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロールおよびチオグリコール酸モノエタノールアミン等]、および分子内に水酸基もしくはアミノ基を有する化合物等が挙げられる。
【0033】
ラジカル重合用連鎖移動剤の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、原料モノマーの合計重量に基づいて、好ましくは0.0001〜10%、さらに好ましくは0.0002〜5%、とくに好ましくは0.0005〜3%、最も好ましくは0.001〜1%である。
【0034】
ラジカル重合法におけるモノマー水溶液中のモノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、通常1〜80%、5〜75%、さらに好ましくは10〜70%、とくに好ましくは15〜65%、最も好ましくは20〜60%である。
逆相懸濁重合では、通常30〜90%、好ましくは40〜85%、さらに好ましくは45〜80%、とくに好ましくは50〜78%、最も好ましくは55〜75%である。
逆相乳化重合では、通常10〜90%、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜75%、とくに好ましくは40〜70%、最も好ましくは55〜65%である。
【0035】
重合温度は、水溶液重合では、通常−10℃〜130℃(加圧下)、好ましくは0℃〜100℃、さらに好ましくは5℃〜95℃、とくに好ましくは10℃〜90℃、最も好ましくは15℃〜85℃である。また、重合中は所定温度を一定(例えば所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱または冷却して調節してもよいし、ガラス製の断熱容器等内で断熱重合させてもよい。
逆相懸濁重合における重合温度は、通常10℃〜95℃、好ましくは20℃〜90℃、より好ましくは30℃〜80℃、とくに好ましくは40℃〜70℃、最も好ましくは50℃〜60℃である。
逆相乳化重合における重合温度は、通常0℃〜95℃、好ましくは5℃〜90℃、さらに好ましくは10℃〜80℃、とくに好ましくは15℃〜70℃、最も好ましくは20℃〜55℃である。
【0036】
重合は重合による発熱がなくなった時点で反応終点が確認できるが、重合時間は通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、工業的観点および重合を完結し、残存モノマーを減少させるとの観点から、好ましくは2〜12時間である。
逆相懸濁重合の場合のように、モノマーを随時滴下する場合は滴下終了後から上記時間重合させることが好ましい。
上記のモノマー濃度、重合温度および重合時間は、モノマー組成、重合法および開始剤種類等によって適宜調整することができる。
【0037】
重合時の圧力は、特に限定されないが、通常常圧下で行う。水溶液重合の場合で沸点を超える場合は加圧下で行うことが好ましい。
また、逆相懸濁重合の場合は、重合時の温度調節が容易である点から、好ましくは重合温度において、分散媒が沸騰する圧力または疎水性分散媒と水とが共沸する圧力が好ましい。
【0038】
重合時のモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、重合速度、得られる(共)重合体の溶解性の観点から、好ましくは1〜8、さらに好ましくは2〜7、とくに好ましくは3〜6.5である。上記pHに調整するために用いられるpH調整剤としては無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸)、無機固体酸性物質(例えば酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安およびスルファミン酸)、有機酸(例えばシュウ酸、こはく酸およびリンゴ酸)、無機アルカリ性物質(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニア)および有機アルカリ性物質(例えばグアニジン)が挙げられる。なお、上記pHは、重合で用いるモノマー水溶液の原液についての室温(20℃)でのpHメーター等を用いた測定値である。
【0039】
水溶性(共)重合体(A)は、取り扱い易さの観点から粉末状もしくは粒子状(水溶液重合、光重合および逆相懸濁重合の場合)、エマルション状(逆相乳化重合の場合)または水溶液状が好ましい。
水溶液重合および光重合の場合の粉末もしくは粒子化法としては、重合後の含水ゲルを細断して公知の乾燥機(バンド式乾燥機および遠赤外線式乾燥機など)を用い加熱(温度80〜120℃)して乾燥し、公知の粉砕機〔奈良式粉砕機[奈良機械(株)製]およびロール式粉砕機等〕を用いて粉砕し体積平均粒径100〜2,000μmの粉末もしくは粒子状にする方法等が挙げられる。
逆相懸濁重合の場合の粉末もしくは粒子化法としては、重合後の含水ゲル(通常体積平均粒径100〜2,000μm)をロ過または遠心分離により固液分離させた後、公知の乾燥機(真空乾燥機、スクリューコンベアおよびドラムドライヤーなど)を用いて加熱(温度30〜120℃)し乾燥させる方法等が挙げられる。
【0040】
[水不溶性吸水性樹脂(B)]
本発明における水不溶性吸水性樹脂(B)は、架橋剤(b)の存在下に水溶性不飽和モノマー(a)を重合させてなるものである。ここにおいて水不溶性とは、水に対する溶解度(g/100g水)が1未満であることを意味する。
【0041】
水不溶性吸水性樹脂(B)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)としては、前記の(a)として例示されたモノマーのうちの1種以上を使用することができる。
(a)のうち、(B)の吸水量および本発明の高分子凝集剤の凝集性能発現の観点から好ましいのは前記のアニオン性水溶性不飽和モノマー(a3)、ノニオン性水溶性不飽和モノマー(a1)およびこれらの併用であり、(a3)のうちでは、架橋剤(b)の官能基と反応性の置換基を有するもの、とくに置換基としてカルボキシル基を有するもの、即ち水溶性不飽和カルボン酸(a31)が好ましい。
(a31)のうち、反応性の観点から好ましいの(メタ)アクリル酸(塩)、さらに好ましいのはアクリル酸(塩)である。
(a1)のうちでは、ノニオン性水溶性(メタ)アクリレート(a11)が好ましく、さらに好ましいのはC4〜5のアクリル酸アルキル(C1〜2)エステル(例えばアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチル)である。
(a3)および(a1)を併用する場合の(a3)と(a1)のモル割合(%)[(a3)/(a1)]は、(B)の吸水量および本発明の高分子凝集剤の凝集性能発現の観点から好ましくは80/20〜100/0、さらに好ましくは90/10〜100/0である。
【0042】
架橋剤(b)としては、以下に示される、エチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋剤(b1)、水不溶性吸水性樹脂(B)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)中の置換基と反応性を有する官能基を少なくとも1個とエチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する架橋剤(b2)、水不溶性吸水性樹脂(B)を構成する(a)中の置換基と反応性を有する官能基を2個以上有する架橋剤(b3)、およびこれらの混合物が含まれる。
【0043】
(b1)エチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋剤
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
ビス(メタ)アクリルアミド[C6〜12のもの、例えばビス(メタ)アクリルアミド、およびN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド];多価(2〜10価)アルコール(C2〜10)のポリ(メタ)アクリレート[C8〜25のもの、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(重合度2〜5)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ−およびトリ)(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート];多価(2〜10価)アルコール(C2〜10)のポリ(メタ)アリルエーテル[C8〜25のもの、例えばペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、およびペンタエリスリトールテトラアリルエーテル];ポリ(2〜3)アリルアミン(C6〜10のもの、例えばジアリルアミンおよびトリアリルアミン);トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、並びにテトラアリロキシエタン等。
【0044】
(b2)水不溶性吸水性樹脂(B)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)中の置換基と反応性を有する官能基を少なくとも1個とエチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する架橋剤
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
エポキシ基を有するもの[C6〜8のもの、例えばグリシジル(メタ)アクリレート];水酸基を有するもの[C4〜8のもの、例えばN−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート];およびイソシアナト基を有するもの[C4〜8のもの、例えばイソシアナトエチル(メタ)アクリレート]等。
【0045】
(b3)水不溶性吸水性樹脂(B)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)中の置換基と反応性を有する官能基を2個以上有する架橋剤
特開昭58−180233号公報(対応米国特許4666983号明細書)および特開昭59−189103号公報に記載の多価アルコール、多価グリシジル、多価アミン、多価アジリジンおよび多価イソシアネート化合物等が挙げられる。
多価(2〜10価)アルコール化合物としては、C2〜10のもの、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンおよびペンタエリスリトール(以下、それぞれEG、1,4−BD、GR、およびPEと略記);多価グリシジル化合物としては、C8〜15のもの、例えばEGジグリシジルエーテルおよびGRジグリシジルエーテル;多価アミン化合物としては、C2〜10のもの、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびポリエチレンイミン;多価アジリジン化合物としては、「ケミタイトPZ−33」〔商品名、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピネート]〕、「ケミタイトHZ−22」〔商品名、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア〕および「ケミタイトDZ−22」〔商品名、ジフェニルメタン−ビス−4、4’−N、N’−ジエチレンウレア〕[いずれも日本触媒化学工業(株)製]等;多価イソシアネート化合物としては、2,
4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。
【0046】
上記架橋剤(b)のうち、吸水量およびフロック強度の観点から好ましいのは(b1)であり、さらに好ましいのはビス(メタ)アクリルアミド[特にN,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド]、並びに吸水量の観点から好ましいのは(b2)および(b3)であり、さらに好ましいのは(b2)のうちのエポキシ基を有するもの[特にグリシジル(メタ)アクリレート]および(b3)のうちの多価アミン化合物[特にポリエチレンイミン]である。すなわち、架橋剤(b1)を用いて得られる水不溶性吸水性樹脂(B)は後述する吸水量が大となることから、汚泥等の処理において該(B)を組み合わせてなる高分子凝集剤はより優れた脱水効果を示すこととなる。
【0047】
水不溶性吸水性樹脂(B)は、従来公知の方法等、例えば溶液重合法(水溶液重合等)、(逆相)乳化重合法、(逆相)懸濁重合法を適用することができる。
重合時の重合液の形態としては、薄膜状や噴霧状等であってもよく、重合反応制御の方法としては、断熱重合法または温度制御重合法(等温重合法等)を適用することができる。その後、乾燥、粉砕し、さらに必要により粒度調整して水不溶性吸水性樹脂(B)を得る。
(逆相)懸濁重合法の場合は、必要に応じて、公知の分散剤(ショ糖エステル、リン酸エステルおよびソルビタンエステル等)および保護コロイド(ポリビニルアルコール、α−オレフィン/
無水マレイン酸共重合体、酸化ポリエチレン等)等が使用できる。
また、逆相懸濁重合法の場合、公知のシクロヘキサン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、トルエンおよびキシレン等の溶媒を使用して重合を行うことができる。
上記重合方法のうち、生産コストの観点から好ましいのは溶液重合法であり、有機溶媒等を使用する必要がなく工業上有利なことから、さらに好ましいのは水溶液重合法である。
【0048】
前記乾燥方法としては、通常の方法でよく、例えば、ドラムドライヤー、平行流バンド乾燥機(トンネル乾燥機)、通気バンド乾燥機、噴出流(ノズルジェット)乾燥機、箱型熱風乾燥機および赤外線乾燥機等の装置を用いて行われる。特に熱源は限定されない。これらの乾燥機は複数個を組み合わせて使用することもできる。
【0049】
水不溶性吸水性樹脂(B)は乾燥後、粒状物の形態で使用される。そのため(B)は乾燥後、必要に応じ粉砕してもよいし、さらには必要に応じ篩い分けして適宜の大きさの粒子状物としてもよい。
【0050】
本発明において、汚泥または廃水処理における吸水前の状態での、(B)の体積平均粒径は、粒状物であれば、特に限定されるものではないが、通常100μm〜5mm、好ましくは150μm〜3.5mm程度である。吸水前の乾燥状態での体積平均粒径は、「レーザー回折散乱法」(例えば、日機装(株)製、商品名「マイクロトラックFRA粒度分析計」を使用)で測定することができる。
【0051】
吸水後の状態での(B)の平均粒径は、現実の吸水量や吸収倍率などにより変化するので一概に規定できるものではなく、特に限定されるものではないが、通常400μm〜5cm(50mm)、好ましくは600μm〜3.5cm程度である。
【0052】
水不溶性吸水性樹脂(B)の吸水量(単位はg/g。以下においては数値のみで示す。)は、脱水ケーキの低含水率化および高フロック強度の観点から好ましくは20〜1,000、さらに好ましくは40〜600である。ここにおいて吸水量は、後述の方法で測定される値である。
(B)の吸水量は、モノマーの種類を選択すること、架橋剤の種類と架橋度をコントロールすること等により上記好ましい範囲とすることができる。
【0053】
[高分子凝集剤]
本発明の高分子凝集剤は、前記水溶性(共)重合体(A)および水不溶性吸水性樹脂(B)を組み合わせてなる。
(A)と(B)を組み合わせてなる高分子凝集剤には、次の(1)および(2)の場合が含まれ、該(1)または(2)における(A)と(B)の組合せを本発明における高分子凝集剤と称する。
(1)(A)と(B)をあらかじめ混合した、(A)と(B)を含有してなる高分子凝集剤とし、これを汚泥または廃水等の処理対象に適用する場合。
(2)(A)と(B)を、順不同で別々に汚泥または廃水等の処理対象に適用する場合。
【0054】
前記(1)において、(A)と(B)を含有してなる高分子凝集剤としては、(A)および(B)がいずれも粒子状であり、これらの混合物である粒子状高分子凝集剤、並びに(A)の水溶液もしくはエマルジョン中に(B)の粒子が分散した分散液状である分散液状高分子凝集剤が挙げられる。
(A)と(B)を含有する粒子状高分子凝集剤は、例えば(A)の粒子と(B)の粒子をナウターミキサー等の粉体混合機を用いて均一混合することにより得られる。
また、(A)と(B)を含有する分散液状高分子凝集剤は、例えば(A)の水溶液もしくは(A)のエマルションに(B)の粒子をホモジナイザー等を用いて分散させることにより得られる。
【0055】
前記分散液状高分子凝集剤を調製する場合に使われる(A)の水溶液を調製する場合の(A)の濃度は、取り扱い上および溶解速度の観点から好ましくは0.05〜1重量%である。(A)の溶解方法としては、特に限定されることはなく、例えば予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の(A)を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて溶解させる方法等が採用できる。粒子状の(A)を水に溶解させる際に、所定量の(A)を一気に加える方法はままこを生じ、完全に水に溶解させることが困難となることから好ましくない。
【0056】
本発明の、前記(1)の場合の高分子凝集剤の使用方法としては、十分な凝集性能の観点から分散液状の高分子凝集剤を下水汚泥等に添加するのが好ましい。粒子状高分子凝集剤の状態で直接下水汚泥等に添加することもできるが、その場合は、所定量の粒子状高分子凝集剤を一気に加える方法はままこを生じ易く、均一分散状態とすることが困難となることから好ましくない。従って、上記(A)の水溶液を調製する方法と同様に、予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の高分子凝集剤を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて分散させる方法等が採用できる。
【0057】
前記(1)の場合における、(A)と(B)の合計重量に基づく(B)の含有量は、高フロック強度および脱水ケーキの低含水率化の観点から好ましくは0.1〜40%、さらに好ましくは1〜20%である。
【0058】
前記(2)の、(A)と(B)を順不同で別々に汚泥または廃水等の処理対象に適用する場合は、その方法には下記のものが挙げられる。なお、ここにおいて(A)は粒状でも水溶液状でもいずれであってもよい。
(2−1)前記(A)と(B)を同時に別々に汚泥または廃水等に添加する。
(2−2)前記(A)と(B)を(A)−(B)もしくは(B)−(A)の順で逐次的に別々に汚泥または廃水等に添加する。
(2−3)前記(A)と(B)の所定量をそれぞれ小分けしたものを、順不同で別々に汚泥または廃水等に添加する。
これらの(2−1)〜(2−3)の方法のうち、優れた凝集性能発現の観点から好ましいのは(2−1)および(2−2)の方法である。
【0059】
前記(2)の場合における、(A)と(B)の合計重量に基づく(B)の使用割合は、高フロック強度および脱水ケーキの低含水率化の観点から好ましくは0.1〜40%、さらに好ましくは1〜20%である。
【0060】
本発明の高分子凝集剤は必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を併用することができる。これらの添加剤の併用量は本発明の高分子凝集剤を構成する(A)および(B)の合計重量に基づいて通常20%以下、各添加剤の併用効果および凝集性能の観点から好ましくは0.1〜10%である。
【0061】
本発明の高分子凝集剤は、石油の3次回収用または製紙工程での濾水歩留向上用もしくは紙力増強用として使用することもできる。
石油の3次回収用としては、比較的大きな分子量を有するものが使用され、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用としては、カチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
本発明の高分子凝集剤を石油の3次回収用として使用する際には、通常水分散液として使用される。該分散液を構成する(A)の水溶液の濃度(重量%)は、通常0.001〜3%、増粘効果および送液可能な粘度の観点から好ましくは0.005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
【0062】
本発明のうちの第2発明である汚泥または廃水の処理方法は、前記高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加し、混合してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法である。
即ち、前記高分子凝集剤を用いて、例えば特許第1311340号公報または特許第2038341号公報等に記載の方法で処理する方法が挙げられる。
本発明の処理方法における高分子凝集剤の使用量は、前記のように下水汚泥等の種類、懸濁粒子の含有量、(A)の分子量等により異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中のTSに基づいて、(A)と(B)の合計重量が通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、工業上の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%である。
【0063】
本発明の処理方法を下水汚泥等に適用する際、下水汚泥等が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から無機および/または有機凝結剤を併用してもよい。
無機凝結剤としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、および消石灰等;有機凝結剤としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
無機および/または有機凝結剤を併用する場合は、本発明の高分子凝集剤に予めこれらを添加した混合物で下水汚泥等を処理するか、下水汚泥等に予め無機凝結剤および/または有機凝結剤を添加して一次凝集させた後、本発明の高分子凝集剤を添加して処理するかいずれでもよいが、フロックの強度の観点から好ましいのは後者の方法である。
【0064】
無機凝結剤および/または有機凝結剤を併用する場合の使用量は、下水汚泥等の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、下水汚泥等中のTSに基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能および脱水ケーキ量低減の観点から好ましくは0.5〜10%、さらに好ましくは1〜5%、特に好ましくは1.5〜3%;有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能および凝集性能の観点から好ましくは0.01〜0.5%、さらに好ましくは0.025〜0.2%、特に好ましくは0.05〜0.15%である。
【0065】
本発明の処理方法においては、下水汚泥等のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、溶解性の観点から好ましい上限は7.8、さらに好ましくは7.5、とくに好ましくは7.0である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機または有機凝結剤を下水汚泥等に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
【0066】
また本処理方法における固液分離方法(脱水方法)としては、遠心脱水、フィルタープレス脱水、ベルトプレス脱水、スクリュープレス脱水およびキャピラリー脱水等の種々の脱水法が適用できる。これらのうち、本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、スクリュープレス脱水機を使用する方法およびベルトプレス脱水機を使用する方法、特にスクリュープレス脱水機を使用する方法である。
【実施例】
【0067】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
水溶性(共)重合体(A)の固有粘度[η](dl/g)は1N−NaNO水溶液中、30℃で測定した値である。
水不溶性吸水性樹脂(B)の吸水量(g/g)は、以下の方法で測定した。
<吸水量測定方法>
試料0.2gをティーバッグへ投入し、それを純水中に、ティーバッグの底から約15cmを浸す。1時間放置後にティーバッグを引き上げ、垂直に吊るして15分間水切りした後、重量(BWg)を測定する。試料を入れない空ティーバッグを使用して同様の操作を行い重量(BWg)を測定する。下記の計算式から吸水量(g/g)を求める。
吸水量(g/g)=(BW−BW)/0.2
【0068】
なお、高分子凝集剤の性能評価において、下水汚泥等中のTS、浮遊物質(SS)、有機分(強熱減量)は、「下水試験方法」(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。また、本実施例中のフロック粒径、フロック強度、ろ液量、ろ布剥離性、および脱水ケーキ含水率は以下の方法に従って性能評価した。
【0069】
(1)フロック粒径
300mlのビーカーに汚泥200mlを入れ、ジャーテスター[型式「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付けた撹拌装置にセットする。ジャーテスターの回転数を120rpmとし、徐々に汚泥を撹拌しながら、所定の濃度の高分子凝集剤を所定の方法で添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を目視にて観察する。続いて回転数を300rpmに変え、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を再度目視にて観察する。
【0070】
(2)フロック強度
フロック粒径試験時の回転数120rpmおよび300rpmでのフロック粒径を比較し、フロック粒径の変化からフロック強度を下記の基準に従って評価する。
◎ 非常に強固 (粒径に変化なし)
○ 強固 (ごく一部細分化)
△ やや弱い (部分的に細分化)
× 弱い (全体的に細分化)
【0071】
(3)ろ液量
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、および300mlが計測できるメスシリンダーを用いてろ過装置をセットする。フロック粒径試験後の汚泥をヌッチェろ過面上に一気に全量投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から10秒後および60秒後までに通過したろ液量を測定する。
【0072】
(4)ろ布剥離性
ろ過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(1kg/cm、60秒)を行い、試験後のろ布に付着した脱水ケーキをスパーテルで剥離させる場合の脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価する。
◎:非常に剥がれやすい(ろ布に付着物なし)
○:剥がれやすい (ろ布に付着物わずかにあり)
△:多少剥がれにくい (ろ布に付着物あり、わずかにろ布内部にまで付
着物あり)
×:剥がれにくい (ろ布内部にまで付着物多い)
【0073】
(5)脱水ケーキ含水率
上記記載のろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3gをシャーレに秤量(W1)して、循風乾燥機中、105±5℃、8時間で乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W2)として、次式からケーキ含水率を算出する。
脱水ケーキ含水率(重量%)=[(W1)−(W2)]×100/(W1)
【0074】
製造例1
反応容器に、アクリルアミド50%水溶液25部、N,N―ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液108部を仕込み後、反応系内のモノマーの合計濃度が30%となるようにイオン交換水197部を加え、均一溶液になるまで撹拌した。次に、40℃の恒温槽中で内容物の温度を40度に調整し、反応系内を窒素で充分に置換後(気相酸素濃度10ppm以下)、2,2’−アゾビス−(アミジノプロパン)ジハイドロクロライドの0.2%水溶液2部、およびチオグリセロールの0.2%水溶液2部を撹拌しながら添加した。約1分後に重合が開始し発熱が認められたが、外部から冷却して内容物の温度を40〜50℃に調節し、10時間反応、熟成させた。なお、重合中内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。重合完結後、内容物を取り出し、細断後、循風乾燥機中、50℃で10時間乾燥させ、さらにミキサーで粉砕して粒子状の水溶性共重合体(A−1)100部を得た(収率97%、固形分含量96%)。
【0075】
製造例2
製造例1において、アクリルアミド50%水溶液25部に代えて同27部、N,N―ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液108部に代えてN,N―ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液107部を用いたこと以外は製造例1と同様にして、粒子状の水溶性共重合体(A−2)101部を得た(収率97%、固形分含量95%)。
【0076】
製造例3
製造例1において、アクリルアミド50%水溶液25部およびN,N―ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液108部に代えてN,N―ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液124部を用いたこと以外は製造例1と同様にして、粒子状の水溶性共重合体(A−3)101部を得た(収率97%、固形分含量95%)。
【0077】
製造例4
製造例1において、アクリルアミド50%水溶液25部に代えて同82部、N,N―ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液108部に代えて同25部を用い、さらにN,N―ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液107部、アクリル酸80%水溶液13部を加えたこと以外は製造例1と同様にして、粒子状の水溶性共重合体(A−4)101部を得た(収率96%、固形分含量94%)。
【0078】
製造例5
反応容器に、アクリル酸ナトリウム77部、アクリル酸23部、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.2部、脱イオン水300部およびジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.001部を仕込み、撹拌、混合しながら内容物の温度を3℃に調整した。内容物中に窒素を通気して溶存酸素量を1ppm以下とし、過酸化水素の1%水溶液0.3部、アスコルビン酸の0.2%水溶液0.8部および2,2’−アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液0.8部を添加、混合して重合を開始させ、内容物の温度が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合させることにより、架橋重合体からなる含水ゲルを得た。含水率(120±5℃×30分での測定)は75%であった。含水ゲル400部をミンチ機[機種名「12VR−400K」、目皿の穴径6mm、飯塚工業(株)製]にて25℃で5分間混練し、上記穴から押し出した後、押し出し物を135℃、風速2m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー[機種名「ファイバーミキサーMX−X57」、松下電器産業(株)製]にて粉砕し、粒子状の水不溶性吸水性樹脂(B−1)316部を得た(収率96%、固形分含量95%)。
【0079】
製造例6
製造例5において、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.2部に代えてグリシジルアクリレート0.2部を用いたこと以外は製造例5と同様にして、粒子状の水不溶性吸水性樹脂(B−2)315部を得た(収率95%、固形分含量95%)。
【0080】
製造例7
製造例5において、アクリル酸ナトリウム77部およびアクリル酸23部に代えて、アクリル酸メチル100部を用い、さらにN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.2部に代えてポリエチレンイミン(Mw10,000)13部を用いたこと以外は製造例5と同様にして、粒子状の水不溶性吸水性樹脂(B−3)313部を得た(収率95%、固形分含量96%)。
【0081】
上記で得られた(A−1)〜(A−4)、および(B−1)〜(B−3)について組成、性状を表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
表中の記号はそれぞれ次の化合物を表す。
DAM:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩
DAA:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩
AAM:アクリルアミド
AAC:アクリル酸
AAC−Na:アクリル酸ナトリウム
AM:アクリル酸メチル
【0084】
実施例1〜10、比較例1〜4
(A−1)〜(A−4)および(B−1)〜(B−3)を表2に従った配合比で配合した後、イオン交換水で固形分含量0.2%のポリマー分散液を調製し、凝集性能評価に用いた。汚泥への添加量は汚泥のTSに対して0.5%になるように添加した。また、評価に用いる汚泥として、A下水処理場から採取した消化汚泥(pH7.0、TS2.3%、有機分62%)を用いてフロック粒径、フロック強度、ろ液量、ろ布剥離性、およびケーキ含水率の評価を行った。結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
表2の結果から、本発明の高分子凝集剤は比較のものに比べ、粗大粒子を形成し、高撹拌下(300rpm)においても一旦形成したフロックが壊れにくい(高フロック強度)こと、および高い脱水性(低含水率)に優れていることがわかる。
【0087】
実施例11、12
水溶性(共)重合体(A)と水不溶性吸水性樹脂(B)の汚泥への添加方法を変更して、実施例1〜10および比較例1〜4と同様に評価を行った。
実施例11は、固形分含量0.2%の(B−1)のイオン交換水分散液を汚泥に添加、混合後、固形分含量0.2%の(A−1)のイオン交換水溶液を添加、混合した後評価を行った。(A−1)と(B−1)の添加量比(重量%)は、(A)/(B)が80/20になるように調製し、汚泥への添加量は(A)と(B)の合計重量が、汚泥のTSに対して0.5%になるように添加した。
実施例12は、(B−1)の粉末を汚泥に直接添加して均一分散させた後、固形分含量0.2%の(A−1)のイオン交換水溶液を添加、混合し、評価を行った。(A−1)と(B−1)の重量比、汚泥への添加量は、実施例11と同様に行った。結果を表3に示す。なお、表3には前記実施例2の結果も比較参考のためそのまま示した。
【0088】
【表3】

【0089】
表3の結果から、本発明の高分子凝集剤のうち、(A)と(B)を、順不同で別々に汚泥に適用する場合であっても、(A)と(B)をあらかじめ混合した高分子凝集剤として汚泥に適用する場合(実施例2)と同様に優れた凝集性能を発揮することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の高分子凝集剤は凝集性能、特にフロック強度に優れることから、下水汚泥等の脱水用高分子凝集剤、製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用高分子凝集剤の他、産業廃水の凝集沈殿処理用、石油の3次回収用等の高分子凝集剤等の分野に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性不飽和モノマー(a)を必須構成単位とする水溶性(共)重合体(A)、および架橋剤(b)の存在下に水溶性不飽和モノマー(a)を重合させてなる水不溶性吸水性樹脂(B)を組み合わせてなる高分子凝集剤。
【請求項2】
前記(A)の1N−NaNO水溶液中30℃での固有粘度[η]が1〜40dl/gである請求項1記載の高分子凝集剤。
【請求項3】
前記(b)が、エチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋剤(b1)、前記(B)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)中の置換基と反応性を有する官能基を少なくとも1個とエチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する架橋剤(b2)および前記(B)を構成する水溶性不飽和モノマー(a)中の置換基と反応性を有する官能基を2個以上有する架橋剤(b3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載の高分子凝集剤。
【請求項4】
前記(B)の吸水量が20〜1,000g/gである請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項5】
前記(A)と前記(B)の合計重量に基づく(B)の含有量が0.1〜40%である請求項1〜4のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項6】
前記高分子凝集剤が、いずれも粒子状である前記(A)および前記(B)の混合物である粒子状高分子凝集剤、または(A)の水溶液もしくはエマルション中に(B)の粒子が分散した分散液状高分子凝集剤である請求項1〜5のいずれか記載の高分子凝集剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加し、混合してフロックを形成させた後、固液分離を行うことを特徴とする汚泥または廃水の処理方法。
【請求項8】
前記固液分離が、スクリュープレス脱水機を用いて行われる請求項7記載の汚泥または廃水の処理方法。

【公開番号】特開2012−205979(P2012−205979A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71999(P2011−71999)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】