説明

高分子組成物中の高分子の分子量低下、不純物形成およびゲル化の防止

【課題】高分子組成物中の高分子の分子量低下、不純物、および該組成物中に用いる生物活性物質の溶解性とゲル化に伴う品質上の懸念を生じない組成物の提供。
【解決手段】高分子組成物の一部として少量の酸性添加物、特に乳酸、グリコール酸またはオリゴマー酸などの少量の低pKa酸を高分子-薬物溶液中に含めることで、高分子組成物中の高分子のエステル結合切断を触媒しうる求核物質によって引き起こされる高分子の分子量低下を抑えるかまたは排除することが可能となった組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月18日に出願された米国仮出願第60/488,573号の恩恵を主張するものであり、該出願第60/488,573号の本文は全て参照により本明細書中に含まれるものとする。
【0002】
発明の分野
本発明は、持続した、または延長された薬物放出を提供しうる高分子組成物、それらの調製方法、および様々な生物学的用途におけるそれらの使用に関する。具体的に言うと、本発明は、求核化合物もしくは求核剤を含有する高分子溶液における高分子の分子量低下の防止または排除に関する。また本発明は、該高分子溶液中のペプチド高分子不純物の低減または排除にも関する。さらに本発明は、安定で濾過滅菌可能な非ゲル化溶液を形成しうる、GnRH類似体と高分子とを含有する溶液に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
生物活性物質を生体適合性かつ生分解性の高分子と共に含有する組成物は、薬物の持続または遅延放出を提供するための薬物送達系として使用されることが多くなっている。該組成物は、液体形態、固体植込錠(solid implants)、ミクロスフェア、マイクロカプセルおよび微粒子を含む様々な注射用デポー形態で使用することができる。
【0004】
例えば、前記の高分子組成物が液体形態または流動性送達系である制御放出系が、米国特許第5,739,176号、第4,938,763号、第5,278,201号、第5324519号および第5,278,202号に記載されている。これらの特許に記載されている組成物は、流動可能な状態で被験体の体に投与される。体内に入ると、該組成物は析出または凝固することにより固体マトリクスまたは植込錠を形成し、また該組成物中の有機溶媒は水分または体液中に消散または分散する。固体植込錠が形成された後は、通常は投与部位において、生物活性物質が高分子マトリクス内部からの拡散もしくは溶出により、および/または高分子マトリクスの緩やかな分解により、固体マトリクスから放出される。
【0005】
様々な持続放出ミクロスフェアまたはマイクロカプセルを利用することも可能であり、これらは急速に増加しつつあるペプチドおよび非ペプチド治療薬群または薬剤群用の送達系として開発が進められている。例えば、PLGAまたはPLAを構成的な生分解性高分子材料とする持続放出ミクロスフェアまたはマイクロカプセルが、ホルモン、ホルモン類似体、抗腫瘍薬、チオリダジン、抗精神病薬、およびステロイドの投与において知られている。さらに、例えば、近年では、ソマトスタチン類似体(例えば、酢酸オクトレオチド)またはLHRH類似体(例えば、酢酸ロイプロリド)を生分解性高分子でできたミクロスフェア中に封入してそこから徐々に放出させる、様々な注射用デポー製剤が報告されている(米国特許第5,478,564号、第5,540,973号、第5,609,886号、第5,876,761号、第5688530号、第4652441号、第4677191号、第4917893号、第4954298号、第5330767号、第5476663号、第5575987号、第5631020号、第5631021号および第5716640号)。実際、GnRH類似体(アゴニストおよびアンタゴニスト)の長時間作用型注射用デポー製剤は、哺乳動物、特にヒトにおける様々な病理学的および生理学的症状の治療のために使用および/または試験されている(Kostanskiら、2001, BMC Cancer, 1:18-24)。かかる治療は、特に、前立腺癌および子宮内膜症などの性ホルモン依存性疾患の処置、排卵の誘発、および男性の生殖能力の制御を目的とする。
【0006】
このように、生分解性かつ生体適合性の高分子を含有する組成物を使用することにより、動物において医薬品の安定放出を維持するための著しい努力が為されている。これらの高分子組成物全ての背景にある1つの明白な目標は、対象とする生物活性物質(例えば、ペプチドまたはタンパク質)を、該組成物中に高分子を使用しない溶液として製剤化した場合よりも低い頻度で、時にはより少ない全用量にて、投与できるということである。さらに重要なことには、かかる目標により、様々な理由で単純な溶液製剤として市場に出すことができなかったタンパク質の商業的開発を正当化することができる。
【0007】
今日までに注射用デポー製剤の分野で達成された技術的進歩にもかかわらず、品質に対する数多くの懸念が生物学的用途におけるそれらの即時使用を阻んでいる。これらの懸念としては、高分子組成物中の高分子の分子量の低下、コンジュゲート物質(不純物)の新たな形成、高分子組成物に通常使用される溶媒への生物活性物質の不溶性およびそれらのゲル形成傾向が挙げられる。
【0008】
高分子材料(例えば、PLGA/PLAマトリクス)の分子量は、持続放出製剤を設計する上で重要な要素である。何故なら、薬物放出プロフィールと高分子の分解速度は最終製品中の該高分子の分子量によって決まるからである。遊離塩基としてチオリダジンおよびケトチフェンなどの単純な塩基性化合物を含有するマイクロカプセル(ミクロスフェア)中では、それらの製造時にPLGAの分子量が低下したことが報告されている。それらのパモ酸塩から作ったマイクロカプセルは、余り分子量の低下を生じなかった(Mauldingら、1986, Journal of Contolled Release, 3:103-117)。米国特許第5,916,598号には、ミクロスフェア中の残留溶媒としてベンジルアルコールが存在すると、分子量低下により製品の保存寿命が短くなったと示されており、また該特許には、この残留ベンジルアルコール濃度を下げる方法が提供されている。とは言え、常にミクロスフェアから残留溶媒を除去できるわけではない。
【0009】
米国特許第6,264,987号には、リスペリドン、ナルトレキソン、およびオキシブチニンなどの単純な求核化合物は、分散相液の保持時間と温度に応じて可変的にPLGAを分解しうることが開示されている。分子量の低下を最小限に抑えるために提供されている方法は、薬物-高分子溶液の保持時間を減らし、かつその保持温度を下げることである。しかし、持続放出製品の製造中に薬物-高分子溶液の保持時間を制御することは非常に難しい。また、保持時間とその影響は、高分子の種類、コモノマー比およびコモノマー配列に左右される場合がある。さらに、ミクロスフェア製造中の無菌処理手順において予期せぬ遅れが出ることがあり、そのせいで薬物-高分子溶液全てが使用できなくなることがある。薬物-高分子溶液の保持温度を下げると、薬物の結晶化または粘性の高分子-薬物溶液が生じかねない。高粘性溶液は滅菌濾過しにくいため、しばしば大粒子が生じる。大粒子は注射針通過能力に関わる問題をもたらすことがある。
【0010】
新規原薬中の不純物に関するFDAおよびICHの指針には、0.1%より多い不純物(個々の不純物)は全て報告しなくてはならず、また0.15%より多い不純物は全て同定しなくてはならないと示されている。新規薬物中の不純物が所定の閾値よりも多い場合には、それらの不純物をそれらの副作用と生物学的安全性について十分に検証すべきである。一般的には、例えば、ペプチド含有高分子組成物中の個々の不純物が0.5%未満であるかまたは個々の不純物の合計である総不純物が2%未満である場合、安全性に対する懸念は無いものと見なす。これらの濃度により閾値を定める。従って、0.5%より多い個々の不純物および/もしくは2%より多い総不純物を含むペプチド薬またはタンパク質薬含有高分子組成物を使用すると、規制順守に関する問題が生じるかもしれない。現時点で公知の製法によって製造したミクロスフェア製剤中のペプチド関連物質または不純物は、閾値をはるかに上回る濃度となることが多い。不純物の程度はペプチドの種類によって異なる。不純物の濃度を閾値以下まで下げる方が、安全性データを用意するよりも容易で経済的な場合がある。
【0011】
大半のGnRH類似体(特にアンタゴニスト)は水または他の溶媒に余り溶けず、低濃度でもゲルを形成する傾向がある(J. Med. Chem., 2001, 44, 453-467を参照されたい)。持続放出製剤は、通常、少量の水または他の適切な溶媒中に溶かした非常に高濃度のGnRH類似体を必要とする。GnRH類似体の比較的低い溶解性とそれらの水性溶媒または他の溶媒における濃度依存性のゲル形成傾向のために、持続放出製剤におけるそれらの使用はかなり限定されている。しかも、無菌持続放出製剤を調製するのであれば、熱、蒸気、γ線などの滅菌技術に頼るよりも、薬物の溶液と高分子マトリクスを(別々に、または合わせた溶液として)濾過滅菌する方が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,739,176号
【特許文献2】米国特許第4,938,763号
【特許文献3】米国特許第5,278,201号
【特許文献4】米国特許第5324519号
【特許文献5】米国特許第5,278,202号
【特許文献6】米国特許第5,478,564号
【特許文献7】米国特許第5,540,973号
【特許文献8】米国特許第5,609,886号
【特許文献9】米国特許第5,876,761号
【特許文献10】米国特許第5688530号
【特許文献11】米国特許第4652441号
【特許文献12】米国特許第4677191号
【特許文献13】米国特許第4917893号
【特許文献14】米国特許第4954298号
【特許文献15】米国特許第5330767号
【特許文献16】米国特許第5476663号
【特許文献17】米国特許第5575987号
【特許文献18】米国特許第5631020号
【特許文献19】米国特許第5631021号
【特許文献20】米国特許第5716640号
【特許文献21】米国特許第5,916,598号
【特許文献22】米国特許第6,264,987号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Kostanskiら、2001, BMC Cancer, 1:18-24
【非特許文献2】Mauldingら、1986, Journal of Contolled Release, 3:103-117
【非特許文献3】J. Med. Chem., 2001, 44, 453-467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、従来技術においては、高分子薬物組成物を開発すること、ならびに該高分子組成物中の高分子の分子量低下、不純物、および該組成物中に用いる生物活性物質の溶解性とゲル化に伴う品質上の懸念を生じないその開発方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
従来の組成物により提起される上記の品質上の懸念を払拭する高分子組成物が取得できることを見出した。
【0016】
具体的に言うと、高分子組成物の一部として少量の酸性添加物を含めることにより、高分子組成物中の高分子のエステル結合切断を触媒しうる求核物質によって引き起こされる高分子の分子量低下を抑えるかまたは排除することが可能となった。特に、乳酸、グリコール酸またはオリゴマー酸などの少量の低pKa酸を高分子-薬物溶液中に含めると、高分子の分子量低下をかなり抑えるかまたは排除することができる。
【0017】
また、高分子組成物調製処理中に特定の操作を行うことにより、すなわち10〜40の酸価(acid number)を持つ適切な高分子もしくは共重合体における種々の単量体の適切なモル比を選択することにより、および/または1種以上の低pKa酸を高分子組成物に加えることにより、該高分子組成物中のペプチド高分子コンジュゲート(不純物)を最小限に抑えるかまたは排除することが可能となる。
【0018】
さらに、高分子組成物の成分として凍結乾燥GnRH類似体および該GnRH類似体を溶かし入れる少なくとも1種の溶媒を使用することにより、関連する溶解性および/またはゲル化の問題を生じることなく、少なくとも該高分子組成物に通常用いられる濃度のGnRH類似体を含有する安定溶液を得られることが本発明において見出された。
【0019】
そこで、高分子の分子量低下に関する1つの態様において、本発明は高分子組成物およびかかる組成物を調製するための方法を開示する。ある実施形態では、該組成物は、生体適合性かつ生分解性の高分子(例えば、ポリ(d,l-乳酸)、ポリ(l-乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはこれらの単量体の共重合体)、高分子のエステル結合を切断して該高分子の分子量低下を引き起こしうる少なくとも1種の求核成分、および少量の酸性添加物を有する。求核物質は、溶媒(例えば、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールもしくはベンジルアルコール)、あるいはペプチド、ケトチフェン、チオリダジン、オランザピン、リスペリドン、オキシブチニン、ナルトレキソン、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチドもしくはWoc4Dなどの化合物またはそれらの製薬上許容しうる塩とすることができる。酸性添加物は、個々の乳酸、グリコール酸、酢酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸、または乳酸のカルボキシ末端オリゴマー(carboxy terminated oligomer)、グリコール酸のカルボキシ末端オリゴマー、またはこれらの酸の組み合わせとすることができる。酸性添加物は、組成物中の高分子の量に対して約0.1%〜約50%の量で使用することができる。かかる酸性添加物が高分子組成物中に存在すると、この組成物中の高分子は酸性添加物を含まない組成物と比べて分子量低下を起こしにくくなる。
【0020】
別の態様では、本発明は、GnRH類似体と、該GnRH類似体の可溶形態を維持し、さらに/またはゲル化しにくくする酸性添加物とを有する分散相製剤を提供する。また、高分子含有分散相における高濃度のGhRH類似体の溶解性を増大させる方法も提供する。この方法は、高濃度のGnRH類似体を施与すること(dispensing)、第1の有機溶媒を該GnRH類似体に加えることにより第1の有機混合物を形成すること、ある量の高分子を第2の有機溶媒中に溶かすことにより第2の有機混合物を形成すること、第1および第2の有機混合物を混合することにより分散相を形成すること、ならびにある量の酸性添加物を該分散相に加えること、を含む。分散相中の酸性添加物の量は、該分散相から調製される溶質担持ミクロスフェアの溶質放出特性に影響を与えることなく該分散相における高濃度のGnRH類似体の溶解性を増大させるのに十分な量とすべきである。
【0021】
さらに別の態様では、本発明はさらに、本発明に従って溶けやすくかつ/またはゲル化しにくくした有効量のGnRH類似体の高分子組成物を製薬上許容しうる担体および/または希釈剤と共に投与することにより、哺乳動物においてゴナドトロピンまたはステロイドの分泌を抑制するための方法を提供する。かかる方法としては、ホルモンに関連するかまたはステロイド依存性の病状を治療する方法が挙げられる。本発明の高分子組成物を哺乳動物に皮下、筋内、静脈内、鼻腔内、膣内または直腸内投与することにより、生殖腺の活動の可逆的な抑制、特にテストステロンの可逆的な抑制を引き出す用途といった所望の効果を達成することができる。その有効投与量は、投与形態および治療しようとする哺乳動物の特定の種に応じて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、25℃で24時間保存したブランクDPおよびロイプロリド含有DPにおけるPLAGの分子量低下を示すヒストグラムである。
【図2】図2は、40℃で24時間保存したブランクDPおよびロイプロリド含有DPにおけるPLAGの分子量低下を示すヒストグラムである。
【図3】図3は、25℃で24時間保存したブランクDPおよびオクトレオチド含有DPにおけるPLGAの分子量低下を示すヒストグラムである。
【図4】図4は、40℃で24時間保存したブランクDPおよびオクトレオチド含有DPにおけるPLGAの分子量低下を示すヒストグラムである。
【図5】図5は、ロイプロリドDPにおける分子量の低下と関連物質形成の関係を示す。
【図6】図6は、オクトレオチドDPにおける分子量の低下と関連物質形成の関係を示す。
【図7】図7は、ピーク番号を付したオクトレオチド抽出物のHPLCクロマトグラムを示す。
【図8】図8は、高分子の分子量が関連物質の濃度に与える影響を示すグラフである。
【図9】図9は、目標負荷率が形成される関連物質の量に与える影響を示すグラフである。
【図10】図10は、高分子に占めるグリコリドの割合が関連物質形成に与える影響を示すグラフである。
【図11A】図11は、目標負荷率10〜12%を有するPLGA50:50(図11A)および目標負荷率10〜13%を有する他の高分子(図11B )から調製したミクロスフェアについての、酸価と不純物の割合との関係を示すグラフである。
【図11B】図11は、目標負荷率10〜12%を有するPLGA50:50(図11A)および目標負荷率10〜13%を有する他の高分子(図11B )から調製したミクロスフェアについての、酸価と不純物の割合との関係を示すグラフである。
【図12】図12は、分散相中の酸性添加物が関連物質形成に与える影響を示すヒストグラムである。
【図13A】図13Aは、ミクロスフェアからのペプチド薬のin vitro放出中の関連物質形成を示すグラフである。
【図13B】図13Bは、ミクロスフェアからのペプチド薬のin vitro放出中の関連物質形成を示すグラフである。
【図13C】図13Cは、ミクロスフェアからのペプチド薬のin vitro放出中の関連物質形成を示すグラフである。
【図14】図14は、検出可能な不純物を含有しないオクトレオチドミクロスフェア(ミクロスフェアのロット:GC091903、GC091203、GC091503、GC091703およびGC091603)を注射したラットの血清オクトレオチド濃度を示す。
【図15】図15は、検出可能な不純物を含有しないオクトレオチドミクロスフェア(ミクロスフェアのロット:GC091203、GC091503、GC091603、GC091703およびGC091903)をラットに与えた時点と比較した体重の増加割合を示す。対照は、希釈剤のみを与えたラットの体重を表している。
【図16】図16は、RG503HミクロスフェアであるTV061297からの抽出物のHPLCクロマトグラムである。
【図17】図17は、本発明の実施形態に従って作製したロイプロリドミクロスフェアを投与した前立腺癌患者における血清ロイプロリド濃度および血清テストステロン濃度を示す。これらのロイプロリドミクロスフェア中の高分子の分子量(Mw 14420)は、該ミクロスフェアの調製に使用した原料高分子の分子量(Mw 14321)とほぼ同じであった。
【図18】図18は、本発明に従って調製したオルンチドミクロスフェアGJ082100がラットモデルにおけるテストステロン抑制に与える影響を示すグラフである。
【図19】図19は、本発明に従って調製した別のオルンチドミクロスフェアGJ082400がラットモデルにおけるテストステロン抑制に与える影響を示すグラフである。
【図20】図20は、85:15 PLGAから作られたオルンチドミクロスフェア(Mw 81 kDa;本明細書中ではGC102301と呼ぶ)を27 mg/体重Kgで与えたラットにおける血清オルンチド濃度および血清テストステロン濃度を示す。
【図21】図21 は、PLAから作られたオルンチドミクロスフェア(Mw 30 kDa;本明細書中ではGC010402と呼ぶ)を27 mg/体重Kgで与えたラットにおける血清オルンチド濃度および血清テストステロン濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適な実施形態の詳細な説明
本発明は、ヒトを含む動物において長期にわたり薬物の安定放出(持続放出)を提供する際に使用するための、高分子と薬物とを含有する組成物、およびかかる組成物を調製する方法に関する。本発明は、高分子組成物中の高分子(例えば、PLGAもしくはPLA)の分子量の低下を排除または低減する方法、高分子組成物中のペプチド高分子コンジュゲートの形成を排除するかまたは抑える方法、ならびに関連する溶解性および/またはゲル化の問題を生じることなく少なくとも持続放出製剤に通常用いられる濃度のGnRH類似体を含有する安定溶液を取得する方法を開示する。
【0024】
高分子組成物は、高分子溶液(本明細書中では分散相または分散相製剤とも呼ぶ)の形態とすることができる。本発明の高分子溶液または分散相製剤は、特に、高分子ならびに1種以上のペプチドまたは求核化合物(例えば、医薬品もしくは薬物)ならびに少なくとも1種の溶媒(例えば、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ベンジルアルコール、ジクロロメタンおよびジメチルスルホキシド)をその中に必ず含有する。
【0025】
高分子組成物は、植込錠またはミクロスフェアまたは微粒子または当業者に公知の技術を利用することにより上記の高分子溶液を処理して得られる他の形態といった1つ以上の他の持続放出形態をとることができる。これらの技術としては、限定するものではないが、噴霧乾燥、真空乾燥、エマルジョンの形成、溶媒蒸発または溶媒抽出、および噴霧凍結が挙げられる。従って、本明細書の記載全体を通して「分散相」という表現を使用してはいるが、この高分子溶液の適合性は決して別の相への分散のみに限定されない。
【0026】
本発明の高分子組成物に加える高分子は、高分子組成物または持続放出製剤を調製する際に通常使用されており、さらに所望のレベルの生分解性といった特性を保持しており、多量の薬物を負荷することが可能であり、またエマルジョンから作製したミクロスフェアの場合には分散相からの溶媒の除去を増進するかまたは分散相から連続相への薬物の移動を阻止する高分子であれば、いずれであってもよい。多数のこうした高分子が当業者に知られている。例えば、米国特許第5,945,126号、第5,407,609号、第4,818,542号、第4,767,628号、第3,773,919号および第3,755,558号を参照されたい(これらの文献の記載内容は参照により本明細書中に含まれるものとする)。所与の系にとって特に望ましい高分子を選択する際には、生分解性(例えば、放出プロフィール)および生体適合性などの所望の臨床的特徴を有する製品を製造するために、数多くの要素について検討することがある。
【0027】
高分子は、好ましくは生分解性かつ生体適合性である。高分子マトリクス材料の好適な例としては、ポリ(グリコール酸)、ポリ(d,l-乳酸)、ポリ(l-乳酸)、これらの共重合体などが挙げられる。マトリクス材料として使用しうる他の高分子または他の化合物は、ポリカプロラクトン、カプロラクトンとラクチドおよびグリコリドとの共重合体、ラクチドおよびグリコリドとポリエチレングリコールとの共重合体(PLGA-PEGまたはPLA-PEGと呼ばれている)、ならびにポリ無水物である。様々な市販のポリ(ラクチド-コ-グリコリド)材料(PLGA)またはポリ(d,l-乳酸)(PLA)を本発明のミクロスフェアに使用することができる。例えば、ポリ(d,1-ラクチック-コ-グリコール酸)は、Boehringer Ingelheim(Germany)、AlkermesInc.(Cincinnati, OH)、Birmingham PolymersInc.(Birmingham, AL)から市販されている。これらの共重合体は、幅広い分子量と乳酸対グリコール酸比で使用することができる。共重合体ポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)を使用する場合、かかる共重合体中のラクチドとグリコリドのモル比を該共重合体のグリコリド含有量がわずか25%以下となるように選択することが好ましいが、本発明を実践すれば他のモル比を用いることもできる。
【0028】
本発明との関連上は、求核化合物とは、高分子中のエステル結合を切断(求核攻撃)しうるかまたは求核攻撃の結果として高分子を加水分解させうる化合物である。エステル結合が切断されると当然高分子が断片化し、結果として分散相製剤中の高分子出発物質の分子量が低下する。本発明を実践することにより、分散相製剤中に求核化合物が存在していても高分子の分子量低下を抑えることが可能となる。
【0029】
使用する高分子が何であれ、分散相中に求核化合物が存在する場合は、分子量低下を防止するための対策をとらないと必ずかかる低下が起きる。求核基(孤立電子対を持つ基)が高分子のエステル結合を攻撃すると考えられている。求核攻撃は、置換可能な水素原子を含有する基(特に、-SH、-NH2、=NH、-OH)および置換可能な水素原子を含有しない基(例えば、第3級アミン)によって引き起こされる可能性がある。分散相中の高分子の加水分解を触媒する求核化合物または求核剤の例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、トリエチルアミン、ケトチフェン、チオリダジン、リスペリドン、オランザピン、オキシブチニンもしくはナルトレキソンもしくは求核ペプチドまたはそれらの製薬上許容しうる塩が挙げられる。ペプチドは、例えば、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチドおよびWoc4Dまたはその塩とすることができる。
【0030】
大半のポリペプチド系薬物は求核基(-SH、-NH2、=NH、=N-、またはOH)を含有しており、そのペプチド薬物中の少なくとも幾つかのアミノ酸は高分子のエステル基に対する有効な求核試薬である。例えば、ペプチド中のリシンは、第1級アミンであるために求核性が高い。他の求核試薬の例は、アルギニン、ヒスチジン、シスチン(ただし、-SH基は遊離型であって、SS-結合を形成していないものとする)、セリンまたは遊離アミノ基を持つペプチドのアミノ酸である。
【0031】
一般に、大半のポリペプチド薬物はそれらの塩(大抵は酢酸塩)として入手できる。例えば、ロイプロリド、オルンチドおよびオクトレオチドは酢酸塩として入手できる。酢酸塩分子はポリペプチドのアミノ基とイオン対を形成すると考えられているが、本発明者らは、その求核基が酢酸塩形態であっても高分子(例えば、PLGA)の分解を触媒することを見出した。さらに、当業者に公知の多くの他の求核化合物が存在する。従って、本発明は本明細書中に具体的に記載した特定の求核化合物に限定されるものではなく、当分野で公知であるかまたは本開示内容の恩恵を受ける当業者には容易に理解される他の求核化合物を包含するものとする。
【0032】
大抵の場合、分散相中に求核ペプチド化合物が存在すると、ペプチド高分子コンジュゲートもまた形成される。従って、高分子溶液中の高分子へのペプチドの求核攻撃に関連する2つの問題点がある。すなわち、高分子の分子量低下と付加体の形成である。高分子マトリクスの分子量および薬物の封入(薬物の負荷)は、製品の放出性能に影響を与える2つの主な要因である。薬物の純度は、製品の品質に関わるもう1つの重要なパラメータである。このため、不純物濃度が非常に低いミクロスフェアを製造しうる程度まで、分子量低下を制御する必要がある。
【0033】
少量の酸性添加物を分散相製剤に加えることで、該分散相製剤中の高分子を求核攻撃から少なくとも部分的に保護し、ひいては望ましくない分子量低下を制御しうることが見出された。具体的に言うと、少量の低pKa酸により、前記求核攻撃によって生じる高分子(例えば、本明細書中ではPLGAとも呼ばれるポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド、または本明細書中ではPLAとも記すポリ-D,L-ラクチド)の分子量低下を低減することができる。本発明に照らして使用する場合、低pKa酸は、5.0以下のpKa値を持つ酸である。好適な低pKa酸は、例えば、プロパン酸(pKa = 4.86)、氷酢酸(pKa = 4.76)、安息香酸(pKa = 4.19)もしくはその誘導体、グリコール酸(pKa = 3.83)、グリセリン酸(pKa = 3.25)、乳酸(pKa = 3.08)、乳酸のカルボキシ末端オリゴマー、グリコール酸、または1000以下の分子量を有するこれらの酸の任意の比率での組み合わせである。高分子の分子量低下を防止するための特に好適な酸は、グリコール酸、乳酸およびオリゴマーの酸である。
【0034】
さらに本発明では、分散相中の酸性添加物が、臨床目的上は不純物とみなされるため望ましくない、ペプチドと高分子断片とのコンジュゲート(本明細書中ではペプチド関連物質とも呼ばれる)の形成を低下させるかまたは排除したことも見出した。
【0035】
分散相中の酸性添加物の量は、その保護的な役割を該分散相中の高分子への求核攻撃に対して与えるのに十分な量とする。高分子溶液中の酸の量は5%以上とすることができる。酸性添加物の好適な量は、分散相中約0.1%〜約5%の範囲とすることができる。酸性添加物の特に好適な量は、分散相中約1.0%〜約10%である。
【0036】
あるいは、分散相に加える酸性添加物の量は、求核剤の量に基づいて、または分散相中の高分子の量に換算して、すなわち分散相中の高分子の総重量当たりの酸性添加物の重量部もしくは高分子%当たりの酸性添加物の%に換算して、決定することもできる。溶媒(例えば、メタノール)などの求核剤の量および組成を基準とすると、酸の量がこの溶媒求核剤の量と等しくなる場合がある。このようにして、メタノールまたは他の求核剤がもたらすMW低下をかなり抑えるかまたは排除することができる。酸の量はDP中の求核基と化学量論的に当量とすることができる。ある実施形態では、酸の量は最低で高分子の約0.01重量%または2重量%であり、最高で約50重量%である。好ましくは、酸の%は、分散相中の高分子に対して、または該高分子を基準として、約2.0%〜約20%である。使用する酸性添加物が高分子の分子量低下を抑えること目的としたものである場合には、酸の量を分散相中の高分子の量に対して100%としてはいけない。使用する酸性添加物がゲル化の防止(本明細書中でさらに詳しく検討した)を目的としたものである場合には、多量の酸を使用してもよい。例えば、酸の量を分散相中の高分子の量に対して100%としてもよい。場合によっては、高分子の量を上回ってもよい。
【0037】
酸性添加物は、ただ1種の低pKa酸、または2種以上のかかる酸で構成されていてもよい。分散相製剤に加える酸性添加物は、溶液形態、または微細分散物などの非溶液形態とすることができる。
【0038】
本発明のある実施形態では、ミクロスフェアを製造するための分散相を次のようにして調製する。すなわち、求核化合物(例えば、求核基を含有するポリペプチド系もしくはタンパク質系の薬物)とある量の酸性添加物をそれらだけで混合するか、あるいはこれら2つを適切な有機溶媒(例えば、メタノールもしくはDMSO)中に溶かすかまたは分散させることにより有機溶液または懸濁液を形成する。これとは別に、ある量の高分子材料(例えば、PLGA)を適切な有機溶媒(ジクロロメタンまたはDCM)中に溶かして高分子溶液を形成する。求核化合物および/または求核剤を含有する溶液または懸濁液と該高分子溶液とを混合することにより、分散相を形成する。高分子含有分散相を調製するための適切な溶媒は当分野で公知である。例えば、米国特許第5,945,126号を参照されたい。薬物溶液または懸濁液と高分子溶液を別々に形成することで、分散相の作製に要する溶解時間を減らすことができる。しかし一方で、薬物と高分子の溶液は、それらを一緒に溶かすことによって形成することもできる。
【0039】
分散相は2種以上の求核化合物または求核剤を含有する可能性があることに注意されたい。例えば、メタノール中に溶かしたオクトレオチドを含有する分散相の場合、オクトレオチドとメタノールはいずれも該分散相中の高分子のエステル結合を切断することができる。このような場合、分散相中の高分子の分子量低下は、1種の求核化合物のみを含有する分散相よりも深刻なものとなる可能性がある。一方、DMSO中に溶解したオクトレオチドを含有する分散相では、オクトレオチドだけが分散相中の高分子のエステル結合を切断できるので、結果として、分散相中の高分子の分子量低下は2種以上の求核化合物を含有する分散相よりも軽くなる。
【0040】
メタノールがもたらす分子量低下は低pKa酸を分散相製剤に加えることによってかなりの程度まで制御することができるが、分散相中のメタノールの量が多いと多量の低pKa酸が必要になるかもしれない。過剰な酸(DP中>50%)が存在すると、ミクロスフェアを形成するための、水性連続相における分散相の液滴形成が起こりにくくなる可能性がある。しかし、O/O処理によりミクロスフェアを形成するのであれば何の問題もないだろう。O/W処理によりミクロスフェアを形成する際も、PLGAのMW低下をかなり抑えつつも水性連続相における分散相の液滴形成に影響を与えない、妥協量(compromise amount)(比)のメタノールおよび低pKa酸をDP中に使用することができる。分子量低下および/または関連物質形成を最小限に抑えるために分散物中に多量の強酸が必要とされる場合には、DMSOおよびジメチルアセトアミド(DMAc)などの代替溶媒を使用することができる。DMSOおよびDMAcはいずれも生体適合性溶媒である。これらの溶媒はDCMと混和できる。これらの溶媒は、ミクロスフェア調製時に容易に連続相中に抽出することができる。殆どのペプチド系薬物はこれらの溶媒によく溶ける。DMSOおよびDMAcを含有する分散相は、相不適合性問題を生じることなく多量の強酸を受け入れることができる。
【0041】
しかし、分散相製剤を使用してミクロスフェアを形成すると、普通は高分子のMW低下は見られない。このことは、放出プロフィールを調べることにより確認できる。本発明者らは、ロイプロリド含有ミクロスフェアを調製し、40℃で6ヶ月間保存した後と25℃で2年間保存した後のミクロスフェアから同一の放出プロフィールを見出した。
【0042】
本発明のある実施形態では、好適な薬物は、ペプチド薬またはタンパク質薬、ステロイド系薬物、非ステロイド系薬物、および他の製薬上活性な化合物でありうる。これらの薬物としては、ソマトスタチン類似体、オクトレオチド、ランレオチド(LANREOTIDE(商標))、バプレオチド、Woc-2A、Woc-2B、Woc-3A、Woc-3B、Woc-4、Woc-4DおよびWoc-8ならびにそれらの塩、LHRH活性を有する化合物、 LHRH類似体、オルンチド(orntide)、ロイプロリド、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)ならびにそれらの誘導体、成長ホルモン放出ペプチド(GHRP-1)などの成長因子、GH-RH、カルシトニン、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン、エリスロポエチンなどが挙げられる。好適な薬物は、ランレオチド、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチド、Woc4Dを含むペプチド薬である。
【0043】
生分解性および非生分解性の高分子によるペプチドのマイクロカプセル化には、通常、分散相(高分子溶液)の形成が必要とされる。分散相には、対象とするペプチド、高分子、ならびに薬物および高分子用の溶媒が含まれる。高分子用の溶媒と薬物用の溶媒が混和性ではない場合、分散相はエマルジョンとなる。ペプチド薬の場合には、分散相が油中水エマルジョン(W/O)となることが多い。薬物が溶媒中に溶けている必要があるということはなく、薬物は単に高分子溶液中の固体懸濁物(S/O系)として均一に分散していればよい。適当な溶媒または溶媒混合物を用いれば、分散相をペプチド薬用の均一溶液(O)として作製することができる。分散相を連続相中へ乳化し、さらに該分散相から溶媒を除去することにより、ミクロスフェア/マイクロカプセル製剤が形成される。連続相は水溶液であればよいが、分散相とは非混和性の別の油相であってもよい。従って、ミクロスフェア/マイクロカプセル(これらは生物活性物質を含有する実質的に球状の高分子粒子である)は、W/O/W、S/O/W、O/W、W/O/O、S/O/O、またはO/O系により形成することができる(ミクロスフェア/マイクロカプセル調製の詳細は、“Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, Donald L. Wise (編), Mercel Dekker, 2000, 第16章、A. Atila HincalおよびSema CalisによるMicrospheres Preparation by Solvent Evaporation Method、第 329-343頁”に記載されている)。
【0044】
好適な実施形態では、ペプチド薬または他の活性物質は分散相の一部であり、ミクロスフェアは該分散相から調製される。薬物または活性物質を分散相中に組み入れる前に、普通は該活性物質を溶媒中に溶かす必要がある。勿論、活性物質用の溶媒は該物質の性質によって異なる。活性物質を溶かすために分散相中に使用しうる典型的な溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素、クロロホルム、低級アルキルエーテル(例えば、ジエチルエーテルおよびメチルエチルエーテル)、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アセトン、酢酸エチルなどが挙げられる。所与の系にとって適切な溶媒の選択は、本開示内容を考慮すれば当分野の技術範囲内にある。
【0045】
本発明のある実施形態では、分散相は、溶媒混合物中の薬物(好ましくはペプチド薬)と高分子との均一溶液である。ペプチド含有ミクロスフェアとの関連上は、不純物とは疎水性不純物を指す。具体的に言うと、本明細書中で言う不純物またはペプチド関連物質は、ペプチド(例えば、オクトレオチド)と高分子の構成単位(例えば、PLGA単量体およびオリゴマー)との付加体である。不純物の問題はペプチド薬と高分子の均一溶液を使用するミクロスフェア処理で見られることが多いが、これに特有というわけではない。ペプチドと高分子との溶液は、薬物と高分子が密接に接触するため、一緒になってかかる付加体の形成に好適な条件を作り出す。
【0046】
疎水性関連物質はHPLC分析により検出することができる。オクトレオチドミクロスフェアの場合、HPLCによって検出される疎水性関連物質は、オクトレオチドのアミノ基とグリコリド、ラクチドの単量体または二量体との反応により形成されたオクトレオチド関連ペプチドである。オクトレオチド中のアミノ酸のうち、リシンおよび「D-Phe」の末端アミノ基がこれらの化合物に関与している。セリンもまた若干量の不純物を生じさせる場合がある。グリコリドの単量体および二量体を用いると、ラクチドの単量体および二量体と比べてより多くの関連物質が見出される場合がある。関連物質の殆どはグリコリド断片との間に形成される。グリコリドはアミノ基とより反応しやすいと考えられる。これと同じ傾向が、WOC4Dなどの他のソマトスタチン類似体に見られる。反応性アミノ基(例えば、リシン、またはアルギニン、ヒスチジンおよびシスチン)を持つペプチドを含むミクロスフェアでもあり得る。さらに、ペプチドの末端基として遊離アミノ基を持つ該ペプチドも関連物質形成をもたらす可能性がある。かかるミクロスフェア中の不純物は、単に本発明を実施することにより、許容しうる濃度まで極力抑えるかまたは完全に排除することができる。具体的に言うと、ペプチドミクロスフェア中の不純物は、適切な高分子と目標負荷率を選択することにより、および/または酸を該ミクロスフェア製剤に加えることにより、最小限に抑えるかまたは完全に排除することができる。目標負荷率とは、全ての薬物がミクロスフェア中に封入されたと仮定した場合に、該ミクロスフェアに占める該薬物の組成割合として表される理論上の薬物含有量である。これは薬物と高分子との合計量に対する該薬物の比率である。
【0047】
ミクロスフェア中の不純物を排除するかまたは減少させるための取り組みにおいては、次の一般的考慮事項:(i) PLGAミクロスフェア中のラクチド含有量が多いほど関連物質の量は減り、100%PLAから調製したミクロスフェアは最少量の関連物質量を有するだろうということ;(ii)PLGAの分子量が大きいほど関連物質が多くなり、PLGAにおける目標負荷率が高いほど関連物質の濃度が高くなること;および(iii)PLGA中の抽出可能なオリゴマーの濃度が低いほど関連物質の濃度が高くなり、疎水性PLGA(末端をブロックしたPLGA)は親水性PLGA(遊離酸性末端基)と比べてより多くの関連物質を生じうること、に留意されたい。
【0048】
ラクチド含有量以外では、PLAまたはPLGAの酸価が、ミクロスフェア中の不純物を最小限に抑えるかまたは排除する役割を果たしうる、高分子選択段階における別の要素であることに注意されたい。高分子の酸価とは、該高分子1グラム中に存在する酸を中和するのに要する水酸化カリウムの「mg」量である。末端をブロックした高分子は遊離酸性基を持たないので、この末端ブロック高分子の酸価はゼロであるかまたは無視できるほど小さい。遊離酸性末端基を持つ高分子は多少の酸価を持つ。低分子量の高分子はより多くの酸性末端基を持つので、より高い酸価を持つ。ミクロスフェア中の抽出可能なオリゴマー酸もまた酸価に寄与する可能性があるが、重量平均分子量(Mw)には影響を与えない。一般的に言えば、酸価は、分子量、より詳しくは数平均分子量との関係を表している。下記表1Aに列挙したのは、本発明者らの研究によく使用される遊離酸性基含有高分子の一部である。
【表1】

【0049】
PLAまたはPLGA高分子組成物(例えば、ミクロスフェア)の酸価は、約0.5〜約50、好ましくは5〜40、より好ましくは10〜35の幅をとりうる。40〜45の酸価を持つ高分子を短期放出製剤(例えば、数日間放出用のもの)に使用してもよい。目標負荷率は最大で15%とすることができる。ミクロスフェア調製処理中に該ミクロスフェア中に1種以上の特定の酸(本明細書中では酸性添加物と呼ぶ)も組み入れる場合には、該ミクロスフェア用として選択する高分子の酸価は14未満であってもよい。酸性添加物の例の非排他的なリストは、氷酢酸、乳酸、グリコール酸およびステアリン酸である。本発明で使用しうる他の酸の例については上記本文を参照されたい。従って、本開示内容を入手した当業者であれば、ミクロスフェア製剤に応じて、ペプチド含有ミクロスフェア内の総不純物が許容濃度以下となるように適切な酸価および目標負荷率を持つ高分子を選ぶ方法が分かるだろう。酸をDPに加えるのであれば、高MWのPLGA50:50でさえ使用することができるし、また同時に、不純物濃度を許容濃度まで下げるかまたは完全に排除することができる。
【0050】
PLGAミクロスフェア中の総不純物を2%未満とするための好適な酸価および目標負荷率は、以下の通りである:
PLGA50:50ミクロスフェアの場合は、25よりも大きい酸価を持ち、かつ15%未満の目標負荷率を有する高分子を使用することにより、不純物濃度を2%以下とすることができる。PLGA75:25ミクロスフェアの場合は、15よりも大きい酸価を持ち、かつ13%未満の目標負荷率を有する高分子を使用することにより、不純物濃度を2%以下とすることができる。PLGA85:15ミクロスフェアの場合は、12(より好ましくは14)よりも大きい酸価を持ち、かつ15%未満の目標負荷率を有する高分子を使用することにより、不純物濃度を2%以下とすることができる。
【0051】
このようにして上記工程の1つ以上を採用することにより調製したミクロスフェアは、その放出中に依然として不純物を生じる場合がある。例えば、本発明者らにより以下の観察がなされた:pH 7.2では、リン酸緩衝液におけるin vitro放出中にこれらの不純物の量が増加し、しばしば50%を超えた。in vivo研究でもかかる観察結果が裏付けられた。従って、不純物の出現は放出媒体のpHにも左右される。酸性環境中で薬物を放出させた場合、中性またはアルカリ性pHにおける放出と比べて生じる関連物質が少ない。PLGA/PLAからの放出中の不純物形成は、ミクロスフェア中に含める水溶性の酸を減らすことにより最小限に抑えることができる。これらの酸がミクロスフェア中に長く残るほど、それらによって低pH環境が提供され、結果的に不純物が減少する。ミクロスフェア内が低pH環境であっても、グリコリド含有量の高いPLGAは不純物を生じることがある。このような場合には、グリコリド含有量が25%未満であるPLAまたはPLGAが好適である。酸性環境がin vivo放出中(例えば、動物またはヒトの組織内)のミクロスフェア内部に存在する場合、本発明に従って調製したミクロスフェアが有意な量の関連物質を生じることはないだろう。好適なミクロスフェア製品は、PLGA 85:15または75:25PLGAを使用して形成したものである。
【0052】
既に上述した通り、本発明は、製剤中に高濃度のGnRH類似体が存在するにもかかわらず該類似体の増大した溶解性とゲル化に対する抵抗性を示すGnRH類似体含有高分子製剤にも関する。多くのGnRH類似体が当分野で知られている。これらには、GnRHのアゴニストとアンタゴニストの両方が含まれる。これらとしては、例えば、オルンチド、アンチド(antide)、セトロレリックス、ガニレリックス、アバレリックス、ロイプロリド、ナファレリン、トリプトレリン、ゴセレリン、ブセレリン、アザリン(Azaline)および当分野で公知の他のものが挙げられる。例えば、米国特許第5,480,969号および第5,656,727号、ならびにJiangら、2001, J. Med. Chem., 44:453-467も参照されたい。
【0053】
高濃度のGnRH類似体とは、もはや溶媒に可溶ではなく、仮に可溶だとしてもその結果得られる溶液はその高い濃度のために不安定になってゲル化するGnRH類似体を意味する。この定義で言う溶媒とは、分散相製剤の調製時にGnRH類似体を溶かすために通常用いられる溶媒である。通常用いられる溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素、クロロホルム、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アセトンおよび酢酸エチルである。しかし、大半のGnRH類似体は、特定の濃度(アンタゴニストの場合は非常に低い濃度であり、アゴニストの場合は中くらいの濃度である)でのみ可溶であり、それ以上の濃度では、これらの類似体はこれらの溶媒中に溶かした時に溶解性およびゲル化の問題を起こす。例えば、GnRHのアンタゴニストであるオルンチドは、5未満のpHにおいてさえ5 mg/mL未満の濃度でしか水性媒体中に溶けない。しかも、オルンチドはそれほど低濃度でもゲル化する傾向があるのに対し、ミクロスフェア用製剤に求められるオルンチド濃度は少なくとも100 mg/mLである。オルンチドがDP中でゲル化したら、これを溶液に戻すのは非常に難しい。GnRHのアゴニストであるロイプロリドは、140 mgロイプロリド/メタノールmLの濃度ではゲル化の問題を生じることもなく溶ける。しかし、240 mgロイプロリド/メタノールmLの濃度では安定な溶液を形成せず、該溶液は数分から数時間で濁り、その後はこの濁った溶液がゲル化する。
【0054】
しかし、当業者であれば、本発明を実践することにより、製剤への高濃度GnRH類似体の使用に伴う問題を克服することができる。かかる製剤を使用して、ミクロスフェア、植込錠または他の種類の持続放出薬物送達系を作成することができる。しかも、該製剤はマイクロフィルターを使用して濾過することができる。特に重要なことに、ミクロスフェアの製造時に使用するための濾過滅菌可能なGnRH類似体含有製剤を取得することができる。つまり、本発明に従って調製した製剤を濾過することにより、滅菌溶液を取得することができる。例えば、本発明に従って調製した溶液は、0.2μフィルターを使用して濾過することができる。
【0055】
GnRH類似体の中では、GnRHアンタゴニストはGnRHアゴニストよりも溶媒中に溶けにくい。そのため、GnRHアンタゴニストは、必ずというわけではないが、ゲル化に完全に抵抗性を示す澄明な溶液中に高濃度のGnRHアンタゴニストを入れるために2段階以上の手順を必要とすることがあり、また多量の酸を必要とすることもある。好適なGnRHアンタゴニストは、オルンチド、セトロレリックス、ガニレリックス、およびアバレリックスであり、好適なGnRHアゴニストは、ロイプロリド、トリプトレリン、およびゴセレリンである。ここで、1例としてGnRHアンタゴニストであるオルンチドを引用し、溶媒中に高濃度で(すなわち、GnRHを溶かしたり分散相製剤を調製したりするために通常用いられる濃度で)存在するオルンチドの溶解性を増大させるための様々なアプローチを以下に説明する。
PLGA含有分散相製剤などのポリエステルマトリクスを使用して持続放出形態を調製するため、オルンチドを、高分子含有溶液が適合または混和しうる溶媒またはその混合物中に溶かす。しかし、例えば、塩化メチレン、メタノール、PLGAおよびオルンチドを含む代表的な製剤は、安定かつ澄明な溶液を生じない。該製剤は濁った懸濁液を形成し、これがしばしばこの製剤の調製を終える前にゲル化する。濁ったゲル化溶液から調製したミクロスフェアは一貫した放出特性を示さない。ゲル化溶液は、ミクロスフェア製剤を無菌的に製造する際の滅菌濾過に関する問題を生む。例えば、オルンチドミクロスフェアを取得するために、本発明者らは、オルンチド-メタノールスラリーとPLAまたはPLGA-DCM溶液とを混合することによって分散相(DP)を調製した。オルンチドの濃度は約1.7%であった。こうして取得したDPは、部分的に澄明ではあるが濁っており、ミクロスフェア作製用の連続相(CP、0.35%PVA溶液)中に分散させる前に短期間保存(5〜10分間)しただけでもその粘度にかなりの増加が見られた。DPは、透明度不足およびゲル化傾向といったその特性のため、0.22ミクロンフィルターで濾過することができなかった。しかし、本発明を実践すれば、前記の不溶性およびゲル化の問題を克服することができる。
【0056】
オルンチド含有DPのゲル化に対する安定性は、十分な量の酸または酸の組み合わせ(酸または酸の組み合わせを本明細書中では酸性添加物とも呼ぶ)を加えることにより改善できる。当業者であれば、十分な量の酸性添加物とは何かが分かるだろう。例えば、氷酢酸をDPに加えることにより、安定性を改善することができる。乳酸を氷酢酸の代わりに使用してもよい。乳酸は吸湿性であるため、水中の85〜90%溶液として使用することができる。酸に多量に水が含まれていると相分離を起こす可能性があることに注意されたい。従って、無水酸または5%未満の水を含有する酸が好ましい。
【0057】
最低所要量の酸を用いて澄明な分散相を得るためのさらに別の段階は、溶媒成分をオルンチドに加える特定の順序に従うことによる。好適な添加順序は、次の通りである:最初に、氷酢酸または他の適切な酸をオルンチドに加えて溶液を形成する。この溶液にメタノールまたは他の適切な溶媒を加え、この溶液に他の成分を加える前に、GnRHアンタゴニストを溶かすために通常用いられる溶媒またはアンタゴニストと高分子の両方が可溶である溶媒部分(例えば、DCM)を加えて溶液を形成する。次いで、DCMまたは組成物中に高分子を溶かす際に用いられる他の溶媒の一部を加える。このやり方でオルンチドを調製すると、澄明な溶液を得るために加熱したり40℃で温めたりする必要が無い上に、初期のゲル化が防止される。次に、この溶液を高分子(例えば、PLGAまたはPLA)溶液に加え、よく混ぜる。あるいは、適切な溶媒中の高分子溶液を、酸中のオルンチド溶液に加えることもできる。このようにして、澄明で安定であり、ゲル化せずかつ濾過可能なDPを取得することができる。オルンチドを酸に加えて溶かす前に他の溶媒をオルンチドに加えると、ゲルを形成する傾向が高くなる。
【0058】
オルンチドは低pHの緩衝液によく溶ける。優れた薬物取り込み効率を達成するために、CPを緩衝剤で処理して、例えばpH 7〜9としてもよい。CPの緩衝能は、DP製剤に加えた酸を、そのpHを好ましくは6.8未満、絶対に6未満まで下げることなく中和できるほど高くなくてはならない。これは、塩基性溶液よりも酸によく溶ける様々な薬物のミクロスフェアへの封入効率を増大させるための一般法として従うことができる。
【0059】
もう1つの観察結果は、特別な凍結乾燥処理を行わずに調製した原料オルンチドは、20%を超えるかなり多量の酸性添加物を要する場合があるということであった。こうして取得した分散相組成物は、O/W処理により所望の放出特性を有する低MW高分子を含むミクロスフェアを生じないことがあり、こうした状況の下でミクロスフェアを作製する好適な方法はO/O処理によるものである。同様に、特別な凍結乾燥処理に続いて酸性添加物の添加を施す原料オルンチドもやはり40℃で加熱する必要があるかもしれないが、必要とされる酸の量はかなり少なく、またこうして取得した分散相組成物は所望の放出特性を有するミクロスフェアを生じる。従って、GnRHのアンタゴニストの場合、必要とされる酸の量は、該アンタゴニストを凍結乾燥させたか否かにある程度依存する。とは言え、適当な順序で成分を加えれば、加熱は必要ない。上記の通り、順序の一部として、オルンチドをまず最初に酸に溶かしてからメタノールなどの他の成分を加えることによって分散相製剤を調製しなくてはならない。こうすれば、初期にゲル化が生じることもなくオルンチドまたは他のアンタゴニストを素早く溶かすことができる。またそれによって、0.2μフィルターまたはより小さい(0.1μ、0.5μなどの)フィルターで容易に濾過しうる非常に安定した溶液が得られる。
【0060】
本発明者らは、GnRHアンタゴニストとしてTBAで凍結乾燥させたオルンチドを用いて幾つかのミクロスフェア製剤を調製した。溶解性およびゲル化の問題は、DPに酸を加えるかまたは適正な順序で成分を加えてDPを作製することにより回避した。PLAまたはPLGAミクロスフェアの両方を調製し、3ヶ月用、6ヶ月用または1年用放出製剤を得た。
【0061】
ここで、1例としてGnRHアゴニストであるロイプロリドを引用し、溶媒における高濃度(すなわち、分散相製剤およびミクロスフェアを調製する際に通常用いられる濃度)のロイプロリドの溶解性を増大させるために必要なアプローチを説明する。ロイプロリドはオルンチドよりも水またはメタノールなどの溶媒に溶けやすい。とは言え、高濃度のロイプロリドを溶かすためであれば、オルンチドについて先に説明した溶解性増大アプローチのうちの1つ以上に従ってもよい。一般的には、少量の酸(低pKa酸)をロイプロリドまたはロイプロリド含有DPに加えれば、溶解性およびゲル化の問題は大抵克服されるはずである。従って、GnRHアゴニストの場合、分散相を調製するために原料としての凍結乾燥アゴニストまたは成分を加える特定の順序に従ってもよいが、それは必要ないかもしれない。
【0062】
ロイプロリドなどのGnRH類似体との関連上、ロイプロリド出発物質中の微量の多価陰イオンもまた、分散相または場合によっては単純なロイプロリド-溶媒(メタノールまたはDMSO)溶液において、ロイプロリドの濃度とは無関係に、ロイプロリドの析出/ゲル化/不溶性の問題を生じる場合がある。こうした不純物がもたらす不溶性は、EDTAなどの物質または他の適切なキレート剤を使用して前記イオンを除去することにより克服できる。同じ手順を、アンタゴニストであるGnRH類似体に適用することができる。
【0063】
本発明の持続放出製剤は、イヌ、ブタ、サル、ラット、マウス、ウサギおよび他の動物といったヒト以外の動物だけでなく、ヒトを対象とする用途にも使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下の実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。下記実施例は、別に詳細に記載した場合を除き、当業者に公知で一般的な標準的技術を用いて実施した。これらの実施例は単なる例示であって、本発明を限定するものではない。
【0065】
A.ポリエステルマトリクスの分子量低下およびメタノールを用いて調製した分散相におけるその制御
溶媒としてメタノールを使用して調製したブランク分散相およびペプチド含有分散相におけるPLGAの分子量低下ならびに分子量低下の制御を、以下に詳述する通りに実施した。
【0066】
1.分散相中のペプチドとしてのロイプロリド
ロイプロリド含有または非含有(すなわち、ブランク)分散相(DP)におけるPLGAの分子量低下の制御について研究した。DPは溶媒中のPLGAまたはPLAの溶液である。以下の材料および手順を使用して、分散相におけるPLGAの分子量低下の制御を行った。
【0067】
酢酸ロイプロリド、ロット番号FLEUP 9905 (Bachem, CA);RG503H、ロット番号290103 (Boehringer Ingelheim);RG503、ロット番号1002249 (Boehringer Ingelheim); 85〜90%溶液を乾燥機の室に入れて真空下で1日乾燥させることにより得られる、含水量10%以下の乳酸、ラセミ体、ロット番号120K1733 (Sigma);グリコール酸、98%、ウルトラグレード、ロット番号118H3449 (Sigma); RG502H ロット番号34035 (BI) を高温高湿下で分解させることにより取得したオリゴマー(該オリゴマーは粘性で暗黄色の液体であり、GPCによる分子量はMw= 533およびMn= 393を示した);ジメチルスルホキシド(DMSO)、ロット番号CC939 (Burdick & Johnson);ジメチルアセトアミド(DMAc)、ロット番号CS08952AS (Sigma-Aldrich);ジクロロメタン(DCM)、HPLCグレード、ロット番号 BZ200 (Burdick & Johnson);メタノール(MeOH)、HPLCグレード、ロット番号CE075 (Burdick & Johnson);テトラヒドロフラン(THF)、HPLCグレード、ロット番号BW062、(Burdick & Johnson)。
【0068】
GPC手順:DP試料をTHFで希釈し、GPC手順により分子量について分析した。具体的に言うと、分散相をTHFで適当に希釈することにより、PLGA濃度を10 mg/mL前後とした。ロイプロリドはTHFに溶けないのでいずれ析出する。溶液が澄んでいるように見えても、このGPC試料を分析前に必ず0.45ミクロンのPTFEシリンジフィルターで濾過した。最初の数mLの試料は捨てた。
【0069】
GPC手順に使用したカラムは、Waters、Styragel HR-2、4.6×300 mm、MW 500〜20,000用、ロット番号T11991、部品番号WAT045865とWaters、Styragel HR-4、4.6×300 mm、MW 5000〜500,000用、ロット番号T13211、部品番号WAT045865を直列につないだものである。カラムの温度は35℃とした。THF(100%)を移動相として使用した。流速は0.4 mL/分とした。使用した検出器は屈折率検出器である。較正基準は、Polymer Laboratories Inc, Amherst, MAから入手した狭い分子量のポリスチレン基準とした。使用したポリスチレン基準はMW 283,300、MW 68,900、MW 21,000、MW 4920、およびMW1260を有していた。
【0070】
DPからのペプチド抽出:分散相由来の酢酸ロイプロリドを、DPをDCMで希釈してから抽出した。約50 mgのDPに2 mLのDCMと9 mLの0.1M酢酸緩衝液(pH 4)を加えた。この内容物を、回転ホイールを使用して約1時間混合した。次いで、該内容物を遠心分離機にかけることにより、HPLCアッセイ用のDCM液滴不含水相を取得した。
【0071】
HPLC法:HPLC法で使用したカラムは、Phenomenexから入手したC-18 Neucleosil、4.6×250 mm、100Å、5μmである。移動相は、(A)0.025Mリン酸カリウム、pH 5.0、(B):アセトニトリルとした。勾配は55分間で80%〜50%のAとした。カラム温度は周囲温度とし、また流速は1.5 mL/分とした。ピークの検出は220 nmで行った。
【0072】
DP形成中の温度は25〜30℃とした。すなわち、25〜30℃を溶解温度とした。形成後にDPを濾過し、ミクロスフェア調製を行うかまたは適当な温度で保存した。
【0073】
ブランクDPにおける分子量低下: RG503Hを使用してDPを調製したが、酢酸ロイプロリドはこれに含めなかった。該DPに、表-1Bに示す様々な酸を加えた。
【表2】

【0074】
DP製剤を3つに分け、そのうちの1つは0.25 gのDPと3.0 mLのTHFとを混合することによって速やかにTHF中に希釈した。これらの試料に対してGPCを実施した。DPの他の2つは、密閉バイアルに入れて25℃および40℃の安定オーブン(stability ovens)内に静置した。24時間インキュベートした後、DP試料をTHFで希釈してから、GPCによりその分子量について分析した。25℃または40℃で24時間インキュベートしたDPにおけるPLGAの分子量値については表2を参照されたい。
【表3】

【0075】
RG503H、DCMおよびMeOHからなるDPをインキュベートしたところ、Mwの低下が見られた。乳酸、グリコール酸、およびオリゴマー酸の存在により、MWの低下が抑えられた。本実験条件下では、乳酸(pKa 3.08)およびグリコール酸(pKa 3.83)などの非常に低いpKaを持つ酸が、メタノールによって引き起こされるMW低下を防止する上でより有効であった。分散相中にごく少量の酸(1 mol%〜求核化合物(メタノール)のmol%以下)が存在するだけでも、分子量低下への影響が見られた。
【0076】
ロイプロリドDPにおける分子量低下:DPは、酢酸ロイプロリドおよび表3に示す様々な酸性添加物を用いて調製した。
【表4】

【0077】
DP製剤を3つに分けた。そのうちの1つは分子量測定(GPC)およびロイプロリド純度(HPLC)のために使用した。他の2つは密閉バイアルに入れて25℃および40℃で静置した。24時間後、高分子の分子量とロイプロリドの純度について分析した。様々なDP試料中の高分子の分子量と保存によるその変化を表4に示す。
【表5】

【0078】
表4に示すように、ロイプロリドを含有するDP中の高分子の分子量はかなり低下した。乳酸、グリコール酸、およびオリゴマー酸が存在すると、酢酸と比べてかなり効率的に分子量低下の程度が軽減された。
【0079】
図1に示すのは、25℃で保存したブランクDPとロイプロリドDPにおけるPLGAのMwの比較であり、図2に示すのは40℃で保存したDPにおいて生じたMW低下の比較である。25℃では、酸性添加物(乳酸、グリコール酸、およびオリゴマー酸)は、ロイプロリドがもたらしたPLGAの分子量低下を抑える上で有効であった。40℃では、ロイプロリド含有DPのMw低下は酸性添加物の存在下でも非常に大きかった。より多くの低pKa酸を使用することは、MW低下を防止する上でより有効である。
【0080】
2. 分散相中のペプチドとしてのオクトレオチド
オクトレオチド含有または非含有(すなわち、ブランク)DPにおけるPLGAの分子量低下の制御についても研究した。酢酸オクトレオチドは、2つの遊離アミノ基(D-Phe(1位)およびリシン(5位))を持つペプチドである。DPは、溶媒中のPLGAまたはPLAの溶液である。以下の材料および手順を使用して、オクトレオチドを含む分散相におけるPLGAの分子量低下の制御を行った。
【0081】
Polypeptide Laboratoriesから入手した酢酸オクトレオチド、ロット番号PPL-OCT9901R;RG503H、ロット番号290103 (Boehringer Ingelheim);RG503、ロット番号1002249 (Boehringer Ingelheim);85〜90%溶液を乾燥機の室に入れて真空下で1日乾燥させることにより得られる、含水量10%以下の乳酸、ラセミ体、ロット番号120K1733 (Sigma);グリコール酸、98%、ウルトラグレード、ロット番号118H3449 (Sigma);RG502H、ロット番号34035 (BI)を高温高湿下で分解させることにより取得したオリゴマー(該オリゴマーは粘性で暗黄色の液体であり、GPCによる分子量はMw= 533およびMn= 393を示した);ジメチルスルホキシド(DMSO)、ロット番号CC939 (Burdick & Johnson); ジメチルアセトアミド(DMAc)、ロット番号CS08952AS(Sigma-Aldrich); ジクロロメタン(DCM)、HPLCグレード、ロット番号BZ200(Burdick & Johnson);メタノール(MeOH)、HPLCグレード、ロット番号CE075(Burdick & Johnson);テトラヒドロフラン(THF)、HPLCグレード、ロット番号BW062、(Burdick & Johnson)。
【0082】
オクトレオチド実施例用のGPC手順、条件およびDPからのペプチド抽出は、上記のロイプロリド実施例に用いたものと同じである。
HPLC法:使用したカラムは、Phenomenexから入手したC-18 Neucleosil、4.6×250 mm、100Å、5 μmであり、カラム温度は周囲温度とした。移動相は、(A) 水-0.1%TFA、(B)アセトニトリル-0.1%TFAとした。勾配は25分間で20%B〜60%Bとした。流速は1.5 mL/分とした。ピーク検出波長は220 nmとした。
【0083】
ブランク分散相における分子量低下:RG503Hを使用して分散相を調製したが、酢酸オクトレオチドはこれに含めなかった。該DPには、表5に示す様々な酸を加えた。
【表6】

【0084】
DP製剤を3つに分け、そのうちの1つは0.25 gのDPと3 mLのTHFとを混合することによって速やかにTHF中に希釈した。これらの試料に対してGPCを実施した。DPの他の2つは、密閉バイアルに入れて25℃および40℃の安定オーブン内に静置した。24時間インキュベートした後、DP試料をTHFで希釈してから、GPCによりその分子量について分析した。25℃または40℃で24時間インキュベートしたDPにおけるPLGAの分子量値については表6を参照されたい。
【表7】

【0085】
表6に示すように、乳酸およびグリコール酸は、PLGAに分子量低下に対する優れた保護を提供した。次点はオリゴマー酸であった。
【0086】
オクトレオチド含有DPの分子量低下:分散相は、酢酸オクトレオチドおよび表7に示す様々な酸性添加物を用いて調製した。
【表8】

【0087】
DP製剤を3つに分けた。そのうちの1つはGPCによる分子量測定およびHPLCによるオクトレオチド純度のために使用した。他の2つは密閉バイアルに入れて25℃および40℃で静置した。24時間後、高分子の分子量とオクトレオチドの純度について分析した。様々なDP試料中の高分子の分子量と保存によるその変化を表8に示す。
【表9】

【0088】
表8に示すように、酸を含まずオクトレオチドを含有するDP中の高分子の分子量はかなり低下した。
【0089】
図4に示すのは25℃で保存したブランクDPおよびオクトレオチドDPにおけるPLGAのMw変化の比較であり、図5に示すのは40℃で保存したブランクDPおよびオクトレオチドDPにおけるPLGAのMw変化の比較である。オクトレオチドはPLGAの分子量低下を引き起こし、強酸の存在は少量であっても分子量低下を抑えた。25℃では、酸性添加物(乳酸、グリコール酸、およびオリゴマー酸)により、ロイプロリドがもたらすPLGAの分子量低下が抑えられた。40℃では、ロイプロリド含有DPにおけるPLGAのMWの低下は、酸性添加物の存在下でも非常に大きかった。
【0090】
B. ポリエステルマトリクスの分子量低下およびそのDPにおけるペプチド-高分子付加体形成との関係
求核基を持つペプチドを含有するDP中のPLGAの分子量低下は、ペプチドと高分子材料との付加体(本明細書中では関連物質またはコンジュゲートとも呼ぶ)の形成を比例的に増進させる。
【0091】
1. ロイプロリドDP:
インキュベートしたDPから抽出したロイプロリドをHPLCで分析することにより、その付加体含有量を測定した。PLGAの種々の断片に由来する複数の付加体が観察された。これらの付加体はロイプロリドのピーク後に溶出した。表9に示すのは、インキュベートしたDP試料中のロイプロリド関連物質含有量である。
【表10】

【0092】
酸性添加物として氷酢酸を含有するDPでは関連物質形成が遅くなり、乳酸またはグリコール酸を含有するDPでは関連物質形成がかなり低減された。また、図3に示すように、分子量低下と関連物質形成の間には明瞭な関係があった。具体的に言うと、分子量低下の増大に対する関連物質形成の指数関数的な増進が認められた。
【0093】
2. オクトレオチドDP
PLGAへのペプチドの求核攻撃に起因する不純物形成は、該ペプチドを含有するミクロスフェアの品質に影響を与えるもう1つの問題である。インキュベートしたDPから抽出したオクトレオチドをHPLCで分析することにより、その付加体含有量を測定した。これらの付加体がオクトレオチドのピーク後に溶出することと、2つの反応性アミノ基(D-Phe末端基およびリシン)と相互作用するPLGAの種々の断片から形成された複数の付加体が存在しうることは既に分かっている。これ以降は、これらの疎水性不純物をオクトレオチド関連物質と呼ぶことにする。
【0094】
表7に示す25℃および40℃でインキュベートしたDP 試料をその関連物質含有量について分析し、インキュベーション前の初期試料と比較した。比較データを下記表10に示す。
【表11】

【0095】
図6は、PLGAのMW低下と関連物質形成の関係を示す。関連物質形成と分子量低下は関係がある。低pKa酸を含めることにより、関連物質の減少を促した。
【0096】
C. インキュベートした酸性添加物含有および非含有DPから調製したミクロスフェア
上記の通り、PLGAの分子量およびロイプロリドの純度は、25℃でDPを保存した場合でさえ影響を受けた。
【0097】
ここで示すのは、DPの保存が薬物負荷率および薬物封入効率に与える影響である。2種の分散相を調製した。表6を参照されたい。分散相の調製後すぐに約0.125 gを取り出してPLGAのMwを追跡し、また約0.025 gを取り出してロイプロリドの純度を追跡した。残りのDPは、密閉容器に入れて30℃で16時間(一晩)静置した。保存後、少量のDPを取り出して、最初に行った通りにPLGAのMwおよびロイプロリドの純度を測定した。残りのDPはミクロスフェア製剤に使用した。
【表12】

【表13】

【0098】
表12に示すように、いずれのDP製剤においてもPLGAの分子量が低下したが、DP中に乳酸が存在すると分子量低下が抑えられ、また関連物質の形成が防止された。
【0099】
保存したDPから調製したミクロスフェアの特性を、保存していないDPから調製したミクロスフェアについて得られた典型的な特性と比較した。表13を参照されたい。
【表14】

【0100】
乳酸を組み入れることで、ミクロスフェア中の関連物質が排除された。乳酸を含有しないロイプロリドDPは、最初に0.53%の関連物質を示し、これがその後6.04%まで増えた。乳酸を含有しない新たなDPから調製したロイプロリドミクロスフェアでは、関連物質形成は緩やかであった(データは示さず)。DP中の乳酸は、全ミクロスフェア処理を通してロイプロリドを関連物質形成から保護した。
【0101】
D. DPを調製するために使用する溶媒が高分子の分子量低下に与える影響
表14に示すDP製剤を25℃および40℃で24時間インキュベートし、DMSOおよびDMAcが分子量低下に与える影響を、メタノールの場合と比較することにより確認した。DCMとPLGAのみを含有するDPもこの比較試験に含めた。
【表15】

【0102】
DP試料を密閉した試験管に入れて40℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後のPLGAの分子量を表15に示す。
【表16】

【0103】
表15に示すように、メタノールを含まないDP系中のRG503HのMwは影響を受けない。メタノールの代わりにDMSOを含むロイプロリド含有DPは、種々の酸が、ロイプロリドがもたらすPLGAエステル結合の求核攻撃の防止に与える影響を比較するのに適した系である。
【0104】
表16に記載のDP試料を調製し、25℃および40℃で24時間インキュベートした。分子量およびロイプロリド不純物の両方を追跡した。
【表17】

【0105】
表17にDPをインキュベートする前後のMw値を示し、Mwの損失割合を比較する。
【表18】

【0106】
このように、DPを25℃で保存すると、Mwが約11%低下した。酸性添加物はMW低下に対する保護を殆どまたは全く示さなかった。グリコール酸が分子量低下に対する保護を一切与えないことを発見したのは驚きである。
【0107】
表18において、メタノールを含有するロイプロリドDPにおいて生じた分子量低下を、DMSOを含有するロイプロリドDPにおいて生じた分子量低下と比較する。
【表19】

【0108】
このように、メタノールによって生じたMW低下は、酢酸ロイプロリドによって生じたMW低下と比べるとずっと大きかった。
【0109】
DP 試料を関連物質形成についても追跡した。表19において、24時間インキュベートしたDMSO含有DP中に形成された関連物質を比較する。
【表20】

【0110】
表19に示すように、酸性添加物を含まないDPはDMSOの存在下でより多くの関連物質を生じた。MW低下はDMSO含有DPの方が小さかったが、これはエステル結合切断が酢酸ロイプロリドよってのみ為されたからである。酢酸ロイプロリドによって生じるエステル結合切断は、関連物質形成と関係している可能性がある。メタノールがエステル結合切断を酢酸ロイプロリドと競い合うことで、関連物質が減少しているのかもしれない。また、メタノールはロイプロリド関連物質をロイプロリドに逆変換できるという可能性もある。少量の酸の存在により、関連物質形成はかなり低下した。DP中にDMSOが存在する場合のMW低下と関連ペプチド形成との間には、何の関係も見られなかった。
【0111】
E. メタノールまたはDMSOを有するDPを含むミクロスフェア
酢酸ロイプロリドを負荷したPLGAミクロスフェアを、溶媒抽出手順により調製した。簡単に言うと、酢酸ロイプロリド(0.3 g)および酢酸(0.15 g)を、MeOH (1.8 g)またはDMSO (1.8 g)中に溶かした。次に、この溶液を、DCM (9 g)中に高分子(2.7 gm RG503H)を含有する溶液と合わせた。こうして調製したDP試料を密閉容器に入れて25℃で24時間保存した。
【0112】
このDP製剤を、SilversonHomogenizer(Silverson Machines, Waterside UK)などのホモジナイザーを使用して0.35%(wt/vol.)ポリビニルアルコール(連続相(CP))を含有する水性溶液中に分散させることにより、ミクロスフェアを調製した。こうして形成したミクロスフェア懸濁液を3リットル容量の溶媒除去容器に移し、溶媒を完全に除去した。次に、この懸濁液を濾過し、洗浄し、さらに周囲温度で一晩乾燥させた。
【0113】
2つのロイプロリド含有ミクロスフェアバッチを、RG503Hと共に分散相中のメタノールおよび分散相中のDMSOを使用して調製した。メタノール含有DPは、9 gのDCM中2.7 gのRG503Hの溶液と、0.15 gの氷酢酸および1.8 gのメタノール中0.3 gの酢酸ロイプロリド(純粋)とを混合することにより調製した。
【0114】
DMSO含有DPは、9 gのDCM中2.7 gのRG503Hの溶液と、0.15 gの氷酢酸および1.8 gのDMSO中0.3 gの酢酸ロイプロリド(純粋)とを混合することにより調製した。
【0115】
こうして調製したDP試料を、密閉容器に入れて25℃で24時間保存した。ミクロスフェアバッチBT040303は24時間保存したメタノール含有DPを使用して調製し、バッチGJ040303は同様に24時間保存したDMSO含有DPを使用して調製した。
【0116】
ミクロスフェアは、前記DPを、0.35%PVA溶液であるCP 1.5リットル中に分散させることにより調製した。分散は、Silversonホモジナイザーを使用して5000RPMで攪拌することにより達成した。CPを攪拌している間に、DPはホモジナイザー先端部のすぐ下に運ばれた。こうして形成したミクロスフェア懸濁液を、800RPMで攪拌しながら3リットル容量のジャケット付きバイオリアクター(Applikon)中に移した。DCMを完全に除去するため、該懸濁液を、空気による吹き飛ばし(air sweep)を行いながら40℃まで加熱した。該懸濁液を周囲温度まで冷却し、濾過し、大量の水で洗浄し、さらに真空下で周囲温度にて一晩乾燥させた。2つのミクロスフェアバッチの特性は、下記表20に示す通りであった。
【表21】

【0117】
DP中のDMSOとDP中のメタノールの両方を用いて調製したミクロスフェアは、優れた薬物封入効率を示した。DMSOを用いて調製したミクロスフェアの嵩密度の方が高いが、これは恐らく、DMSOがDP液滴中に高分子を析出させることのない該高分子の良溶媒であることに起因している。いずれのミクロスフェアバッチも、氷酢酸を含有するDPから調製した。そのため、これらのミクロスフェアは保存したDPを用いて調製されているにもかかわらず、該ミクロスフェア中の関連物質の量は比較的少ない(表13と比較されたい)。
【0118】
F. オクトレオチドミクロスフェア
1. ミクロスフェアの調製
酢酸オクトレオチドを負荷したPLGAおよびPLAミクロスフェアを、溶媒抽出手順により調製した。簡単に言うと、酢酸オクトレオチドをメタノール中に溶かし、高分子/塩化メチレン溶液と合わせた。次に、その結果得られたオクトレオチド/高分子混合物(分散相)を、 Silverson Homogenizer(Silverson Machines, Waterside UK)などのホモジナイザーを使用して0.35%(wt/vol.)ポリビニルアルコール(連続相(CP))を含有する水性溶液中に分散させた。こうして形成したミクロスフェア懸濁液を3リットル容量の溶媒除去容器に移し、溶媒を完全に除去した。次に、この懸濁液を濾過し、洗浄し、さらに周囲温度で一晩乾燥させた。
【0119】
様々なオクトレオチドミクロスフェアを、高分子、オクトレオチド、塩化メチレン(DCM)およびメタノールを含有する澄明な分散相から調製した。酢酸オクトレオチドはPolypeptide LaboratoriesまたはPeninsula Labから入手した。高分子濃度をバッチ毎に変えることにより、適当な粒径を得ると同時に効率的な薬物負荷率を得た。メタノール(MeOH)対DCM比は、澄明な分散相を得るためにより薬物負荷率の高いバッチを作製している間に上昇した。連続相は全ての調製において0.35%PVA溶液とした。典型的な調製では、CPをビーカーに採り、Silversonホモジナイザー(標準的な乳濁物篩(emulsor screen))を使用して攪拌した。攪拌中のCPに、曲がった針の付いた実験用注射器を使用して前記Silversonの先端部のすぐ下に分散相を加えた。30秒〜1分間均質化した後、溶媒を除去するために全懸濁液を3リットル容量のApplikonバイオリアクター中に移した。ミクロスフェアからの溶媒の除去は、まずCPを水と置き換えてから、空気による吹き飛ばしを行いつつこの懸濁液を40℃まで加熱することにより達成した。溶媒を除去した後、ミクロスフェアをフィルター膜上に回収し、洗浄し、さらに真空下で乾燥させた。
【0120】
3 g以上のバッチサイズを連続フロー処理によって調製した。分散相とCPを施与してインライン混合物(in-line mixture)とし、このミクロスフェア懸濁液を攪拌しながらApplikonバイオリアクター中に回収し、以前に、例えば米国特許第5,945,126号に記載されている通りに溶媒を除去した。オクトレオチドミクロスフェアの調製パラメータは、表21に要約した通りであった。
【表22】

【0121】
2. オクトレオチド薬物含有ミクロスフェア中のペプチド-高分子付加体(または疎水性関連物質)
薬物含有量は、乾燥したミクロスフェアをDCM中に溶かし、この薬物をpH 4.0の酢酸緩衝液中に抽出することによって測定した。大半のミクロスフェアバッチからの抽出物は、様々な量の疎水性(オクトレオチドと比べて疎水性の)不純物を示した。これらのミクロスフェアをpH 7.4のリン酸緩衝液中37℃でインキュベートすると、これらの不純物、特にPLGA50:50 高分子由来の不純物が増えることが見出された。疎水性関連物質の構造をHPLC-MS/MSにより決定した。pH 7.4のリン酸緩衝液中37℃で約2週間インキュベートしたRG503Hミクロスフェアからのオクトレオチド抽出物を分析した。図7に、オクトレオチド抽出物のHPLCクロマトグラムをピーク番号と併せて示す。この抽出薬物のHPLCクロマトグラムは、オクトレオチドのピーク後に現れる追加のピークを与えた。表22に関連物質の構造を載せる。ピークの大半は、グリコリドセグメントで形成された関連物質である。この分析から、グリコリドを多く含むPLGAほど多くの不純物を生じたことが明らかとなる。各バッチ中に見出された総不純物の濃度(すなわち、オクトレオチドピークの後に溶出した関連物質の合計)を表23に記載する。
【表23】

【表24】

【0122】
3. PLGAの分子量がオクトレオチドミクロスフェア中の関連物質に与える影響
分子量が関連物質形成に与える影響を、 PLGA 50:50およびPLGA 75:25オクトレオチドミクロスフェアを使用して実証した。これらのバッチの目標負荷率はよく似ていた。高分子の分子量と関連物質の濃度は関係があった。図8を参照されたい。高分子量の高分子から調製したミクロスフェア中ではより多くの関連物質が見出された。
【0123】
4. 目標負荷率がオクトレオチドミクロスフェア中の関連物質に与える影響
目標負荷率は、分子量と同様に、関連物質形成との直接的な関係を示した。バッチは、目標負荷率が異なる3種のPLGAを用いて調製した。形成された関連物質の量と目標負荷率は明らかに関係があった。データを図9に示す。
【0124】
5. コモノマー比が関連物質に与える影響
コモノマー比は、関連物質形成に対して非常に大きな影響力を持っていた。試験した高分子の中でも、PLGA 50:50は上記表23に示す通り最大量の関連物質を示した。同様の分子量を持つ高分子を用いて調製したバッチの関連物質を比較することにより、高分子中のグリコール酸含有量が増加すると関連物質の濃度が増大したことが明らかとなる。図10を参照されたい。
【0125】
6. 抽出可能な酸および関連物質
抽出可能な酸が関連物質に与える影響は逆相関を示した(下記表24中のデータを参照されたい)。
【表25】

【0126】
既知量の高分子をDCM中に溶かし、水溶性画分を水中で抽出し、さらに標準アルカリ液に対して滴定することにより、高分子中の抽出可能な酸を測定した。
【0127】
7. 高分子末端基の影響
ミクロスフェアのバッチを、末端をブロックした高分子を用いて調製した。該高分子中には遊離酸性末端基が存在しないが、最初のうちは数個の酸性末端基が存在しているかもしれず、またはミクロスフェアの製剤に先立って高分子を保存した時およびミクロスフェア形成中にエステル結合切断により形成された幾つか追加の酸性末端基が存在するかもしれない。酸性末端基および末端をブロックした基を持つ同様のMwの高分子同士を比べたところ、下記表25に示すように、末端をブロックした高分子は酸性末端基を持つ高分子よりも多くの関連物質を生じたことが分かった。
【表26】

【0128】
8. 高分子の酸価が関連物質形成に与える影響
高分子の酸価はミクロスフェア中の不純物の量に反比例する。図11に示すのは、10〜12%の目標負荷率を有するPLGA50:50(図11A)および10〜13%の目標負荷率を有する他の高分子(図11B)から調製したミクロスフェアにおける、酸価と不純物の割合との関係である。
【0129】
9. ミクロスフェア調製処理の様々な段階における関連物質形成
バッチGJ042800をRG503Hから調製し、そのミクロスフェア懸濁液の一部を様々な段階で取り出した。ミクロスフェアを1.2ミクロンの薄膜フィルター上で濾過し、該フィルター上で風乾した。該ミクロスフェア(部分的に乾燥)をDCM中に溶かし、薬物を酢酸緩衝液中に抽出した。種々の段階で見出された関連物質の濃度を下記表26に示す。
【表27】

【0130】
ミクロスフェア調製処理が進むにつれて関連物質が形成された。分散相中にはごく少量の関連物質が見出された(0.3%)。ミクロスフェアを形成した直後に関連物質が1.78%まで増えた。懸濁液を40℃まで加熱すると関連物質の量が増加し、溶媒を除去する間にさらに多くの関連物質が形成された。分散相を40℃で保存すると、関連物質が0.3%から2.86%以上に増えた。保持時間および個々の関連物質の濃度についても研究した(データは示さず)。
【0131】
10. 酸を分散相に加えることが関連物質形成に与える影響
1.5 mgのオクトレオチドに20 mgのPLGA/PLAを加え、0.5 mLのDCMおよび0.1 mLのメタノール中に溶かした。これに、10 mgの氷酢酸、トリエチルアミン、85%乳酸、グリコール酸またはステアリン酸を加えた。試料を40℃で24時間および48時間静置した。その後、この試料に2 mLのDCMを加え、薬物を0.1 M酢酸緩衝液中に抽出してからHPLCにより分析した。本研究に含めた試料を表27に記載する。
【0132】
24時間および48時間後にこれらの試料中に見出された疎水性関連物質を図12に示す。 対照試料を溶出させることにより不純物(2.5%)であるが関連物質ではない物質が示され、またそれらの不純物の幾つかは標準オクトレオチド中にも見出された。RG503Hの存在により関連物質が4〜7%に増加した。RG503H研究を繰り返すと、48時間のインキュベーション中に最大で18%の関連物質が現れた。RG503H系に乳酸を存在させると、関連物質が減少して対照と同程度となった。グリコール酸もまた、RG503H-オクトレオチド系における関連物質の形成を防止した。酢酸およびステアリン酸は、RG503H-オクトレオチド混合物における関連物質の形成を低下させるという点では乳酸およびグリコール酸ほど有効ではなかった。
【0133】
DCM/メタノール中のRG503Hおよびオクトレオチドを24時間および48時間インキュベートする実験において、乳酸を加えてさらに24時間インキュベートした。薬物は通常の手順により抽出した。この処理によって乳酸が関連物質の減少に影響を与えることはなかった。何故なら、これらの関連物質は乳酸を組み入れる前に既にこの系で生じていたからである。このことから、乳酸が最初から分散相中に存在していれば関連物質の量が抑制されるが、後から加えても関連物質が本来の薬物に変換されることはない、ということが分かる。RG503は、48時間のインキュベーション後に非常に高い関連物質濃度を示した。ポリ乳酸、PLA iv 0.11とR203Hの両方、およびPLGA 85:15は、対照よりもさらに少ないごく微量の関連物質を示した。トリエチルアミンの存在により若干の不純物が生じたが、保持時間による関連物質との類似性は示されなかった。RG503Hを含むTEAは、RG503Hの場合には大量の関連物質を生じたが、PLA iv 0.11の場合には関連物質をそれほど生じなかった。従って、酸を最初に分散相に加えると関連物質の量が減少することが実証された。
【表28】

【0134】
11. in vivoインキュベーション中のオクトレオチド関連ペプチド形成
試験するミクロスフェアを、RG503H(GJ091001)、8515DL1AP(GJ031401)および100DL1AP(GJ012401)を用いて調製した。本研究では、オクトレオチドを含まないブランクミクロスフェアを対照として使用した。ミクロスフェアの特性は、下記表28に示す通りであった。
【表29】

【0135】
これらのミクロスフェアをラットに皮下注射し、適当な時点で回収した。この実施例では、100〜250 mgのミクロスフェアを、水中の6%マンニトール、0.5%カルボキシメチルセルロースおよび0.1%Tween-80からなる0.3〜0.5 mLの希釈剤中に懸濁した。この懸濁液を、ラットの皮下領域内の油性マジックで印を付けた部位に注射した。適当な時点でラットを犠牲にし、注射部位からミクロスフェアを切り出して凍結乾燥させた。続いて、その粒子を2 mLのジメチルスルホキシドと2 mLのDCMとの混合物中に溶かし、6 mLの0.1M酢酸緩衝液(pH 4.0)を加えることによって抽出した。抽出物をその純粋薬物および関連物質についてHPLCにより分析し、質量分光光度計により確認した。対照(ブランクミクロスフェア)はHPLCによるピークを示さなかった。
ラットの組織から回収したミクロスフェア中に見出された不純物(オクトレオチド高分子断片付加体)の濃度は、下記表29に示す通りであった。
【表30】

【0136】
これとは別に、非常によく似た高分子から調製したミクロスフェア(ただしO/O処理により調製したもの)についても研究した。このセットには、市販のサンドスタチン LAR(Sandostatin LAR)、および薬物を含まないPLAから調製した対照ミクロスフェアも含まれる。ミクロスフェアの特性は、下記表30に示す通りである。
【表31】

【0137】
これらのミクロスフェアをラットの組織内に注射し、その後14、22、32および40日目に回収した。下記表31に示すのは不純物プロフィールである。この不純物は、HPLCおよび質量分析から分かるように、高分子断片とのオクトレオチド付加体である。
【表32】

【0138】
12. in vitroインキュベーション中のオクトレオチド関連ペプチドの形成
本実施例のために、約100 mgのオクトレオチドミクロスフェアを12〜20 mL容量のねじ口付きバイアルに量り入れ、放出媒体を加えた。放出媒体は、pH 7.4、7.0または6の等張リン酸緩衝液とした。内容物を37℃の振盪恒温槽中に静置した。各時点において、HPLC分析のためにミクロスフェアを含まない上清を慎重に取り出し、全媒体を新たに調製した媒体と取り替えた。オクトレオチドおよび関連物質の累積放出量を時間に対してプロットした。インキュベーションを進めるにつれて、ミクロスフェアから放出される関連物質も増加した。しかし、85%PLAおよび100%PLAを含むミクロスフェアが生成する関連物質の量は少なかった。この差は低pHではより顕著であった。
【0139】
図13Aに示すのは、等張リン酸緩衝液中37℃におけるPLGA 75:25(MG090899)、50:50(GJ033100およびGJ051600)、85:15(GJ021501)、およびPLAミクロスフェアからのオクトレオチドのin vitro放出中の関連物質形成割合である。PLGA50:50は疎水性不純物をより速い速度で生じた。PLAは不純物をより遅い速度で生じた。85%および75%のラクチドを含有するPLGAは、PLAよりも速く、かつPLGA 50:50よりも遅い速度で不純物を生じた。これらの放出研究はpH 7.4の緩衝液中で行い、また放出媒体は頻繁に取り替えた。個別の放出研究を、pH 7で、PLGA 50:50、PLGA 85:15およびPLAをベースとするミクロスフェアに対して行った。これらのミクロスフェアにおける関連物質形成を比較した。pH 7では、pH 7.4で観察されたパターンと同様に関連物質が着実に増加したが、その規模は小さかった。図13Bに示すのは、pH 7の等張リン酸緩衝液中37℃におけるこれらのミクロスフェアからのオクトレオチドのin vitro放出中の関連物質形成の比較である。図13Cに示すのは、pH 6の等張リン酸緩衝液中37℃におけるPLGA 50:50、PLGA 85:15およびPLAミクロスフェアからのオクトレオチドのin vitro放出中の関連物質形成の比較である。pH 6では、50:50 PLGAとより多くのラクチドを含むPLGAとの間に顕著な差が見られた。85:15PLGAおよびPLAミクロスフェアでは関連物質形成がかなり低下したが、PLGA 50:50 PLGAベースのミクロスフェアでは依然として関連物質が出現した。
【0140】
13. 薬物抽出手順による疎水性関連物質形成
薬物抽出手順は疎水性関連物質を生じなかった。これを証明するため、約1 mgの酢酸オクトレオチドを10 mgの高分子(R203H、R202H、PLA 0.11、PLGA90:10 (iv 0.11)、PLGA 85:15DL2A、PLGA 75:25H (BI)、RG504HおよびRG503H)と混合した。この混合物に2 mLのアセトニトリル/水(9:1)を加えて全内容物を溶かした。全ての場合に澄明な溶液が得られた。該溶液に8 mLの酢酸緩衝液(0.1 M、pH 4.0)を加え、10分間よく混合した。得られた混濁液を045ミクロンのPTFEシリンジフィルターで濾過し、HPLCにより分析した。薬物を含まずかつ高分子を含まない対照も本研究に含めた。抽出物中に疎水性関連物質は見出されなかった。薬物の回収率はわずかに100%を上回っており(実測値は101〜103%であった)、このことは、薬物の損失が無いことを示すだけでなく、この薬物回収方法が正確な値を与えることの証明にもなる(データは示さず)。
【0141】
14. 保存安定性
オクトレオチド含有PLGAミクロスフェアの保存安定性を実証するため、85:15PLGAと50:50 PLGAの両方を用いてミクロスフェアバッチを調製し、異なる温度条件下で保存した。
【0142】
高分子の特性、分散相の組成およびミクロスフェアの特性を表32に提供する。
【表33】

【0143】
17.2の酸価を持つ85:15 PLGA から調製したGC100903ミクロスフェアは不純物を一切示さなかったが、7.4の酸価を持つ50:50 PLGAから調製したGC111703は、その目標負荷率が低いにもかかわらず、3.4%の初期不純物を示した。これらのミクロスフェアを保存安定性について調べ、市販のオクトレオチドミクロスフェア(サンドスタチンLAR)の保存安定性と比較した。ミクロスフェアは、-20℃、2〜8℃(冷蔵)、25℃および40℃で保存した。3ヵ月保存した後、バッチGC100903はGC111703およびサンドスタチンLARと比べて良好な保存安定性を示した。保存安定性データを表33に示す。
【表34】

【0144】
ここで示すように、85%ラクチドを含有する高分子溶液から調製した検出不可能なペプチド関連物質を含むオクトレオチドミクロスフェアは室温で保存することができるが、市販のオクトレオチドミクロスフェア(サンドスタチン LAR)は保存の際に少なくとも冷蔵する必要がある。
【0145】
15. 検出可能な不純物を含まないオクトレオチドミクロスフェアの有効性
酢酸オクトレオチドを含有する高分子溶液を、幾つかのPLGA85:15 高分子(GC091903、GC091203、GC091503、GC091703およびGC091603)を使用して調製した。該高分子の酸価は14〜18であった。ミクロスフェアは、米国特許第5945126号および第6270802号に記載の連続フロー処理により分散相を連続相(0.35%ポリビニルアルコール溶液)中に分散させることで調製した。高分子の特性、分散相中の様々な成分の組成、およびミクロスフェアの特性は、下記表34に示す通りであった。
【0146】
前記の通りに調製したミクロスフェアを回収し、カルボキシメチルセルロース、マンニトールおよびtween-80の溶液である希釈剤中で製剤化した。各バイアルには5 mgの酢酸オクトレオチドが入っていた。ミクロスフェアの薬物封入効率は76〜81%であり、該ミクロスフェア中に検出可能な不純物(関連物質)は存在しなかった。次に、この希釈剤中のミクロスフェア懸濁液を凍結乾燥させることにより、in vivo評価に適した製剤を得た。
【表35】

【0147】
その後、凍結乾燥させた投与形態を水で再構成し、得られたミクロスフェア懸濁液をラットに皮下注射した(各ミクロスフェア製剤に対してラット5匹)。血液試料を適当な間隔で採取しつつ、ラットの成長速度も追跡した。図14に示すのは、検出可能な不純物を含有しないオクトレオチドミクロスフェア(ミクロスフェアのロット:GC091903、GC091203、GC091503、GC091703およびGC091603)を注射したラットの血清オクトレオチド濃度に関するデータである。対照ラットに希釈剤のみ(ミクロスフェアは含まない)を与えたところ、血清中に見出されるオクトレオチド濃度はゼロであるかまたは無視できるほど低かった。図15に示すのは、ラットに検出可能な不純物を含有しないオクトレオチドミクロスフェア(ミクロスフェアのロット:GC091203、GC091503、GC091603、GC091703およびGC091903)を最初に与えた時点と比較した体重の増加割合に関するデータである。対照は希釈剤のみを与えたラットの体重を示す。報告値は5匹のラットから得た平均値である。
【0148】
前記ミクロスフェアは1ヶ月用放出製剤であった。血清中のオクトレオチドが末端肥大症患者において成長ホルモン(GH)およびインスリン様成長因子-1(IGF-1)を制御することは、当分野で公知である(McKeageら、2003, Octreotide Long-Acting Release (LAR) - A Review of its Use in the Management of Acromegaly, Drugs 63 (22): 2473-2499)。ここでは本実施例により、本発明の不純物不含オクトレオチドミクロスフェアが、ラットの成長速度を制御するかまたは低下させるのに有効であることが示された。
【0149】
G. ロイプロリドミクロスフェア
1. ロイプロリドPLGAミクロスフェア
オクトレオチドミクロスフェアについて先に記載したものと同じ手順により、澄明な分散相からPLGA 50:50を用いて3種のミクロスフェアバッチを調製した。下記表35を参照されたい。
【表36】

【0150】
2. 分子量の影響(または酸価の影響):
もう1つのバッチBT103196を、 低分子量の高分子であるRG502Hを用いて調製した。目標負荷率は12.5%であり、実負荷率は9.4%であった。高分子-薬物付加体としての不純物の割合はたった0.21%であった。
【0151】
3. 目標負荷率の影響:
酢酸ロイプロリドミクロスフェアを、RG503Hを2つの目標負荷率で用いて調製した。バッチTV061297を、目標負荷率を18%として調製したところ、薬物負荷率が14%のミクロスフェアが得られた。得られたミクロスフェアは、薬物高分子付加体として不純物を3.46%含んでいた。バッチBT073096は、目標負荷率を12.5%とした同RG503H高分子を用いて調製した。得られたミクロスフェアの薬物負荷率は9.5%であり、不純物を2.32%含んでいた。
【0152】
図16に示すのは、RG503HミクロスフェアであるTV061297からの抽出物のHPLCクロマトグラムである。図16中に番号を付した不純物の構造をHPLC-MSにより同定した。それらの構造を以下に示す:
【表37】

【0153】
4. ロイプロリドPLAミクロスフェア
3つのロイプロリドミクロスフェアバッチを、ポリラクチドを用いて調製した。下記表36を参照されたい
【表38】

【0154】
表36に示すように、ポリラクチドを含むロイプロリドミクロスフェアが生じた不純物はPLGAミクロスフェアと比べると少なかった。また、分子量が低いほど(酸価が高いほど)不純物が少ないことも示された。
【0155】
5. ロイプロリドPLGAミクロスフェアを用いて治療した前立腺癌患者における化学的去勢
ロイプロリド含有ミクロスフェアを、氷酢酸を含有する分散相を使用して480 gスケールで調製した。分散相の組成を表37に示す。
【表39】

【0156】
ミクロスフェアは、米国特許第5,945,126号および第6,270,802号に記載の手順を利用して、無菌条件下で連続フロー処理により分散相から作製した。このように調製したミクロスフェアを、カルボキシメチルセルロース、マンニトール、およびtween-80の滅菌溶液である希釈剤中に製剤化した。次に、該希釈剤中のミクロスフェア懸濁液を、バイアル当たり22.5 mg(および移動による損失を調整するための過剰量)の酢酸ロイプロリドが含まれるように該バイアルに充填してから、凍結乾燥させた。完成した投与形態の特性を下記表38に示す。
【表40】

【0157】
ミクロスフェアの調製に使用した高分子の分子量と該ミクロスフェア中の同高分子の分子量とを比較(データは下記表39に示す)することにより、高分子のMwはミクロスフェア形成によって変化しないことが分かった。
【表41】

【0158】
ミクロスフェアを3ヶ月に1回注射することにより前立腺癌患者を化学的に去勢して、これを維持した。前立腺癌を患う患者では、0.5 ng/mL(化学的去勢濃度)以下の血清テストステロン濃度を達成することが治療効果の望ましい薬理学的指標とされている。従って、生理学的には、ロイプロリドミクロスフェアを与えた患者はその血清テストステロン濃度が4週間以内またはもっと早くに0.5 ng/mL以下まで下がらなくてはならず、また全治療期間を通してその去勢濃度が維持されなくてはならない。合計40人の前立腺癌患者にミクロスフェア注射(筋内注射)を施した。12人の患者を血清ロイプロリドについて監視することによりその薬物動態を追跡し、また全ての患者を血清テストステロンについて監視した。図17は、患者の血清ロイプロリド濃度およびテストステロン濃度を示す。化学的去勢は、40人中39人の患者で28日以内に達成された。去勢が達成された後も、全ての患者において治療期間中ずっと去勢状態が維持された。前記製剤の2回目の注射によりテストステロンが急増することはなく、低いテストステロン濃度が維持された。
【0159】
H. オルンチドミクロスフェア
幾つかの高分子を含むオルンチド(Ac-D-2Nal-D-4Cpa-D-3Pal-Ser-Lys(Pic)-D-Orn(6-アミノニコチノイル)-Leu-Ilys-Pro-D-Ala-NH2)含有ミクロスフェアを作製した。PLGA5050を用いて該オルンチドミクロスフェアを調製する間に、1種の不純物が大量に見出された。この化合物はオルンチドの直前に溶出し、セリンを介したオルンチド-グリコリド付加体と同定された。オルンチドは比較的疎水性であるため、HPLCではこのピークがオルンチドの前に溶出した。幾つかの他の不純物もオルンチドの後に観察されたが同定は行わず、それらはPLGA由来のより大きな断片との付加体であると見なした。上記のオルンチドおよびロイプロリドミクロスフェアに見られたように、ラクチドを多く含むPLGAが生じる不純物は少なかった。PLAを用いて調製したオルンチドミクロスフェアは、個々の不純物を報告するほど多く示さなかった。 以下の表40は、PLGAを含むオルンチドミクロスフェアの具体例を示す。
【表42】

【0160】
I. WOC4Dミクロスフェア
以下に示す構造体であるWOC4Dは、オクトレオチドと同じくソマトスタチン類似体の1種である。
【表43】

がその構造体である。
【0161】
幾つかの高分子を含むWOC4Dミクロスフェアを作製した。WOC4Dミクロスフェアもまた、オクトレオチドミクロスフェアに見られた挙動とよく似た挙動を示した。しかし、付加体形成の度合いはずっと低い。以下の表41は、PLGAを含むWOC4D ミクロスフェアの具体例を示す。
【表44】

【0162】
J. オルンチド含有製剤およびそのゲル化の防止
1. 酸性添加物含有または非含有分散相におけるオルンチドの溶解性
オルンチドのジクロロメタン(DCM)およびメタノールにおける溶解性を評価した。
様々な供給元から入手したオルンチドは、DCM-メタノール混合物において不溶性特性とゲル化特性を示した。一般に、この溶液は余り澄明ではなく、すぐにゲル化する傾向を有することが見出された。氷酢酸は澄明な溶液を形成するのに役立った。しかし、溶解性を獲得するのに要する氷酢酸の量は、製造会社およびロット番号によって異なっていた。様々な供給元から入手した3種のオルンチド原材料の溶解性もまた、氷酢酸存在下の溶解試験により比較した。84 mgの酢酸オルンチドにまず100 mgの氷酢酸を加え、さらに130 mgのメタノールを加えた。これらの成分をよく混合して澄明な溶液を形成し、1.28 gの塩化メチレンを加え、この混合物を40℃まで約5分間温めることにより、澄明な溶液を形成した。表42でゲル化を比較説明する。3種いずれにおいても、酸を最初にオルンチド試料に加えると、全ての添加物を加えた後に形成される溶液は澄明であった。しかし、PPL-ORN-9902は30分以内にゲル化した。
【表45】

【0163】
氷酢酸を加えて前記溶液を温めることにより溶解性が改善された。しかし、この溶液は、供給元およびロット番号によっては若干ゲル化した。PPL-ORN-9902を含有するミクロスフェアを調製するため、表43に示すように様々な高分子を用いて分散相を調製した。DPはゲル化し始め、加熱によりこのゲル化は逆行したものの、該DPを室温まで冷却するとゲルに戻ったので、これを10分間保存した。
【表46】

【0164】
澄明で濾過可能なDP溶液を形成するためには、DPに最大で22%の氷酢酸が必要であった。これほど多量の酢酸を含むDPは、その高分子の分子量が10,000未満である場合、O/W処理により望ましいミクロスフェアを形成しないかもしれない(データは示さず)。
【0165】
HCl、グリコール酸、および乳酸(水中85%溶液)などの低pKa値を持つ他の酸もまた、DPの溶解性および安定性を獲得するのに役立った。しかし、水により引き起こされる相分離を避けるためには無水酸が好ましい。HClおよび乳酸は水と共に使用することができる。そのため、DP中のこれらの酸は相分離を引き起こす可能性がある。水分含有量の少ない乳酸は相分離を引き起こすことなくゲル化を防止した。85%の水を含む乳酸(市販品)はゲル化を防止したものの、そのDPにおいて相分離が観察された。試験したDPの組成には、0.22 gのオルンチド(ロット番号PPL-ORN-9902)、0.6 gのメタノール、0.78 gのRG503H、4.0 gのDCM、および表44に示す適当な量の酸が含まれていた。安定性を1日追跡した。
【表47】

【0166】
2. 非水性溶媒から得たDPにおける原料オルンチドの溶解性の改善
有機溶媒中にオルンチドを溶かす際に使用する酸の量を最小限に抑えるため、適当な溶媒系を用いてオルンチドを再び凍結乾燥させようと試みた。通常の凍結乾燥サイクル下で凍結乾燥させうる2種の有機溶媒は、tert-ブタノール(TBA)とシクロヘキサンである。この研究では、40 mg/mLのオルンチド溶液をTBA-水混合物中で作製した。1セットの試料には氷酢酸も加えた。その後、この溶液を、下記サイクル:
凍結:-50℃で2時間
乾燥:20時間で50℃〜10℃の傾斜
20時間で10℃〜25℃の傾斜
25℃で約10時間の最終乾燥
を使用して凍結乾燥させた。凍結乾燥させた溶液の一覧を表45に示す。
【表48】

【0167】
凍結乾燥させたオルンチドを用いて以下のDP組成を有する分散相を形成し、ゲル化研究を行った。
【0168】
オルンチド: 84 mg
メタノール: 150 mg
氷酢酸: 200 mg
DCM: 1280 mg
R202H: 450 mg
従って、DPは製剤中に9.2%の酸を含有していた。「M」由来の凍結乾燥オルンチドは、1週間は安定である澄明なDPを生じた。他の製剤は、原材料と比べれば改善された溶解性を示したが、試料「M」ほどではなかった。Oakwood Labsの依頼により、Polypeptide LabはこのペプチドをTBA-水混合物中で再び凍結乾燥させてから、この材料を発送した。幾つかのミクロスフェアバッチを、このTBAを含む再凍結乾燥オルンチドを用いて作成した。表45に調製パラメータを示すが、該パラメータから、DP製剤中に11%の酢酸があれば安定なDPを形成するには十分であることが分かった。表46にミクロスフェアの特性を示す。
【表49】

【0169】
GJ081000の目標負荷率は21%とし、GJ081500の目標負荷率は18%とした。薬物取り込み効率は、薬物負荷率21%を目標とする限りは影響を受けなかった。GJ082400の目標負荷率もまた21%としたが、ここではインラインミキサーを使用して調製した。薬物取り込み効率は影響を受けなかったが、少しだけ多くの非球形粒子がその製品中に見出された。GJ082100の目標負荷率もまた21%としたが、そのDPには16%の酢酸が含まれていた。
【表50】

【0170】
2つのミクロスフェアバッチ(GJ082100およびGJ082400)を、オルンチドが3 mg/バイアルとなるように製剤化し、凍結乾燥させた。これらの製剤化ミクロスフェアを、sc注射により3 mg/Kgでラットに投与した。図18および19は、前記2つのバッチのうちの1つ、すなわちGJ082100またはGJ082400を与えたラットのテストステロン抑制を示す。
【0171】
3. DPを形成するために酸性添加物、オルンチドおよび他の成分を加える順序
DP中に必要とされる酢酸をまずオルンチドに加え、オルンチドをその限られた量の酢酸中に溶かした。その後、製剤中に必要とされるメタノールまたは/およびDCMの一部(好ましくは半量)を酢酸中のオルンチド溶液に加えた。残りのDCMを使用してPLGAまたはPLAを溶かした。粘性の高分子溶液とオルンチド溶液を混ぜ合わせることによりDPを形成した。このDPは、酸をDPに加えた場合よりも良好な濾過性とゲル化に対する安定性を示した。DP中のDCMの一部を酢酸中のオルンチド溶液に加える代わりに、メタノールまたはメタノールとDCMとの組み合わせを加えてもよい。試験した製剤は、以下の組成: 0.984 gのRG503H、0.22 gのオルンチド、0.85 gの氷酢酸、5.0 gのDCMおよび0.74 gのメタノール、を有していた。成分を加える順序の影響を調べた。澄明な溶液を形成するためには、まず酢酸を加えることによって澄明な溶液を形成しなくてはならない。次に、DCMの半量(2.5 g)またはメタノールを加えることにより、粘性が低く澄明な溶液を形成する。その後、該溶液を高分子溶液と混合すればよい。また、酢酸中のオルンチド溶液を高分子溶液と直接混合してもよい。
【0172】
4. PLGAまたはPLA高分子マトリクスから作られたオルンチド含有ミクロスフェアによる、哺乳動物におけるテストステロン濃度の抑制
9ヶ月〜1年に及ぶ放出を達成するため、適当なPLGAまたはPLAを使用してオルンチドミクロスフェアを調製した。オルンチドミクロスフェアの調製パラメータおよび特性を表47に示す。分散相は、上記のように乾燥凍結させた酢酸オルンチドを使用して調製した。pHが>7.5となるように緩衝剤で処理したポリビニルアルコール溶液を連続相として使用した。ミクロスフェアは、米国特許第5,945,126号に記載の手順を利用し、インラインミキサーを4000 RPMで用いて調製した。その後の溶媒除去および洗浄は、米国特許第6,270,802号に記載されている通りに実施した。
【表51】

【0173】
上記のように取得したミクロスフェアを、カルボキシメチルセルロース、tween-80およびマンニトールを含有する希釈剤中に懸濁し、バイアル中で凍結乾燥させた。
【0174】
この製剤が薬物を約12ヶ月間放出すると想定して、ラットに体重Kg当たり27 mgの酢酸オルンチドを(皮下)投与した。持続放出製剤として提供する場合は2.25 mg/月がラットの化学的去勢(テストステロンが0.5 ng/mL未満となる)に有効な投与量であることが、以前に立証されている。
図20はGC102301を与えたラットの血清オルンチド濃度および血清テストステロン濃度を表しており、また図21はGC010402を与えたラットの血清テストステロン濃度を表している。オルンチドミクロスフェアは、テストステロンを去勢濃度まで速やかに抑制し、さらにその濃度を長期間維持する上で有効であった。GC102301は9ヶ月間有効であり、GC010402は12ヶ月余り有効であった。
【0175】
K. ロイプロリド含有製剤およびそのゲル化の防止
メタノール中にロイプロリドを0.24 g/gで溶かす段階を有するロイプロリドミクロスフェアを作製している間に、ロイプロリドのゲル化/析出が見られた。析出した/ゲル化したロイプロリドは、大量のメタノールを加えても溶液に戻らなかった。これまでの経験から、メタノール中のロイプロリドの0.14 g/g溶液は少なくとも1日間安定かつ澄明であることが分かっている。
【0176】
初めのうちは、ロイプロリドはメタノール中に容易に溶けて、0.24 g/g濃度の澄明な溶液を形成した。しかし、完全溶解性(complete solubility)に近づくにつれてロイプロリドは該溶液から急速に析出し、粘度が高い白色ゲルとなった。メタノール中および分散相中のロイプロリド溶液に対して簡単な調査研究を行った。
【0177】
この研究を行うことにより、ロイプロリド/メタノール溶液の安定性とDPの安定性を比較した。表48でDPの安定性を比較する。
【表52】

【0178】
酢酸を前記溶液に加えると、Bachem ロイプロリドに、ロイプロリドのそのメタノール溶液からのゲル化/析出ならびにDP中でのゲル化/析出に対する卓越した安定性が付与されることが分かった。DPを長期間安定に保つために要する酢酸の有効量を見出す必要がある。DP製剤は90日用ロイプロリド製剤に非常によく似ている。BachemとPeninsulaのロイプロリド両方の溶液を、酢酸を用いて調製し、その安定性を評価した。表49にその結果を示す。
【表53】

【0179】
表50は、安定溶液用のDP中に必要とされる最低酢酸組成を示す。
【表54】

【0180】
約400 gおよび約800 gのミクロスフェアバッチを幾つか調製し、ラット、イヌおよびヒトで試験した。分散相の組成は表10に示してある。
【表55】

【0181】
400 gで製造したミクロスフェアをヒトでも評価したところ、該ミクロスフェアは95%強の男性を1ヵ月以内に去勢することが見出され、さらにこの去勢状態は試験期間中(3ヶ月間)ずっと維持された。
【0182】
本明細書中に記載した全ての刊行物、特許および特許出願は、本発明が属する分野における熟練者の技術水準を示すものである。全ての刊行物、特許および特許出願の記載内容は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により含まれると具体的かつ個別に示されているのと同程度まで、参照により本明細書中に含まれるものとする。
【0183】
明確な理解を目的として図面および実施例により本発明を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲内で特定の変更および改変を行いうることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性かつ生分解性の高分子、
エステル結合切断を触媒して高分子の分子量低下を引き起こしうる少なくとも1種の求核物質、および
製剤中の高分子が酸性添加物を含まない製剤と比べて分子量低下を起こしにくくなるような、ある量の酸性添加物
を含む持続放出製剤。
【請求項2】
前記高分子が、ポリ(d,l-乳酸)またはポリ(l-乳酸)とポリ(グリコール酸)との共重合体である、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項3】
前記求核物質が、ペプチド、または求核基を持つ薬物である、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項4】
前記求核物質が、ペプチド、ケトチフェン、チオリダジン、リスペリドン、オキシブチニン、オランザピン、ナロキソンおよびナルトレキソン、ならびにそれらの製薬上許容しうる塩である、 請求項3記載の持続放出製剤。
【請求項5】
前記ペプチドが、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチドおよびWoc4Dからなる群より選択される、 請求項4記載の持続放出製剤。
【請求項6】
前記酸性添加物が、5.0以下のpKaを持つ1種以上の有機酸を含む、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項7】
前記酸性添加物が、乳酸、グリコール酸、酢酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸、乳酸のカルボキシ末端オリゴマー、グリコール酸のカルボキシ末端オリゴマー、ラクチド-コ-グリコリドのカルボキシル化(carboxyl formulated)オリゴマー、またはこれらの酸の組み合わせである、 請求項6記載の持続放出製剤。
【請求項8】
存在する酸性添加物の最終量が約0.1%〜5%である、請求項6記載の持続放出製剤。
【請求項9】
前記酸性添加物の量が前記高分子の約2重量%〜約50重量%である、請求項6記載の持続放出製剤。
【請求項10】
前記持続放出製剤中の前記酸性添加物の量が約1.0%〜約10%である、請求項6記載の持続放出製剤。
【請求項11】
前記製剤を、25℃より高い温度で調製する、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項12】
前記製剤を、40℃より高い温度で調製する、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項13】
前記製剤が、求核物質の反応性を高める溶媒を含有する、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項14】
前記溶媒が、メタノール、ジメチルアクリルアミド、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドもしくはNMPまたはそれらの組み合わせである、請求項13記載の持続放出製剤。
【請求項15】
生体適合性かつ生分解性の高分子、
高分子のエステル結合切断を触媒して該高分子の分子量低下を引き起こしうる少なくとも1種の求核成分、および
製剤中の高分子が酸性添加物を含まない製剤と比べて分子量低下を起こしにくくなるような、ある量の酸性添加物
を含む分散相製剤。
【請求項16】
前記高分子が、ポリ(d,l-乳酸)またはポリ(l-乳酸)とポリ(グリコール酸)との共重合体である、 請求項15記載の分散相製剤。
【請求項17】
前記求核成分が、メタノールまたはペプチドまたは求核基を持つ有機化合物である、請求項15記載の分散相製剤。
【請求項18】
前記求核成分が、ペプチド、ケトチフェン、チオリダジン、リスペリドン、オキシブチニン、オランザピン、ナロキソンもしくはナルトレキソンまたはそれらの製薬上許容しうる塩である、請求項17記載の分散相製剤。
【請求項19】
前記ペプチドが、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチドおよびWoc4Dからなる群より選択される、請求項18記載の分散相製剤。
【請求項20】
前記酸性添加物が、5.0以下のpKaを持つ1種以上の有機酸を含む、請求項15記載の分散相製剤。
【請求項21】
前記酸性添加物が、乳酸、グリコール酸、氷酢酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸もしくは乳酸のカルボキシ末端オリゴマー、グリコール酸のカルボキシ末端オリゴマー、ラクチド-コ-グリコリドのカルボキシル化オリゴマー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項20記載の分散相製剤。
【請求項22】
前記酸性添加物の量が前記高分子の約2重量%〜約50重量%である、請求項20記載の分散相製剤。
【請求項23】
求核化合物およびある量の酸性添加物を第1の有機溶媒中に溶かすかまたは分散させることにより第1の有機溶液または懸濁液を形成すること、
ある量の高分子を第2の有機溶媒中に溶かすことにより第2の有機溶液を形成すること、ならびに
第1の有機溶液または懸濁液と第2の溶液とを混合することにより持続放出製剤を形成すること、ただし、該持続放出中の酸性添加物の量は、高分子の量に比べてごく少量であり、かつ求核化合物により引き起こされる高分子の分子量低下を抑えるのに十分な量であるものとする
を含む、持続放出製剤を調製する方法。
【請求項24】
前記求核化合物が、ペプチド、ケトチフェン、チオリダジン、リスペリドン、オキシブチニン、オランザピン、ナロキソンまたはナルトレキソンである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記酸性添加物が、5.0以下のpKaを持つ1種以上の酸を含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
前記酸性添加物が、乳酸、グリコール酸、氷酢酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸、もしくは乳酸のカルボキシ末端オリゴマー、グリコール酸のカルボキシ末端オリゴマーまたはこれらの酸の組み合わせを含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記の第1の有機溶媒が、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群より選択される生体適合性溶媒である、請求項23記載の方法。
【請求項28】
前記持続放出中の前記酸性添加物の量が前記高分子の量に対して約2%〜約50%である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
前記持続放出製剤がエマルジョンまたは均一溶液である、請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記高分子が乳酸単量体とグリコール酸単量体との共重合体である、請求項23記載の方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法の持続放出製剤を使用することにより作製したミクロスフェア。
【請求項32】
生体適合性かつ生分解性の高分子、ただし、該高分子はポリ(d,l-乳酸)、ポリ(l-乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはそれらの共重合体であるものとする、
エステル結合切断を触媒して高分子の分子量低下を引き起こしうる少なくとも1種の求核物質、および
製剤中の高分子が酸性添加物を含まない製剤と比べて分子量低下を起こしにくくなるような、ある量の酸性添加物
を含む持続放出製剤。
【請求項33】
前記高分子が、100:0〜50:50の範囲のラクチド対グリコリドのモル比を持つポリ(d,l-ラクチド-コ-グリコリド)である、請求項2記載の持続放出製剤。
【請求項34】
前記求核物質が前記持続放出製剤の製造に用いられる溶媒である、請求項1記載の持続放出製剤。
【請求項35】
前記溶媒が、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールまたはベンジルアルコールである、請求項34記載の持続放出製剤。
【請求項36】
生体適合性かつ生分解性の高分子、ただし、該高分子はポリ(d,l-乳酸)、ポリ(l-乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはそれらの共重合体であるものとする、
高分子のエステル結合切断を触媒して該高分子の分子量低下を引き起こしうる少なくとも1種の求核成分、および
製剤中の高分子が酸性添加物を含まない製剤と比べて分子量低下を起こしにくくなるような、ある量の酸性添加物
を含む分散相製剤。
【請求項37】
前記高分子が、ポリ-D,L-ラクチドと100:0〜50:50の範囲のラクチド対グリコリドのモル比を持つポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリドとの共重合体である、請求項15記載の分散相製剤。
【請求項38】
前記求核物質が、持続放出製剤の製造に用いられる溶媒である、請求項15記載の分散相製剤。
【請求項39】
前記溶媒が、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノールまたはベンジルアルコールである、請求項38記載の分散相製剤。
【請求項40】
前記製剤をさらに処理することにより持続放出製剤を製造する、請求項15記載の分散相製剤。
【請求項41】
求核物質、酸性添加物、生体適合性高分子、および高分子用の溶媒を含む混合物を形成すること、および
前記溶媒を除去することにより持続放出製剤を形成すること、ただし、酸性添加物の量は、該持続放出製剤中の高分子が酸性添加物を含まない持続放出製剤中の高分子と比べて分子量低下を生じにくくなるような量であるものとする
を含む、持続放出製剤を調製する方法。
【請求項42】
前記求核物質が、ペプチド、ケトチフェン、チオリダジン、オランザピン、リスペリドン、オキシブチニン、ナルトレキソン、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチドもしくはWoc4Dまたはそれらの製薬上許容しうる塩である、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記酸性添加物が、5.0以下のpKaを持つ1種以上の酸を含む、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記酸性添加物が、乳酸、グリコール酸、酢酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸、もしくは乳酸のカルボキシ末端オリゴマー、グリコール酸のカルボキシ末端オリゴマーまたはこれらの酸の組み合わせを含む、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記持続放出中の前記酸性添加物の量が前記高分子の量に対して約0.1%〜約50%である、請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記混合物が、エマルジョン、懸濁液または均一溶液である、請求項41記載の方法。
【請求項47】
前記高分子が、ポリ(d,l-乳酸)、ポリ(l-乳酸)、ポリ(グリコール酸)またはそれらの共重合体である、請求項41記載の方法。
【請求項48】
前記高分子が乳酸単量体とグリコール酸単量体との共重合体である、請求項41記載の方法。
【請求項49】
前記高分子が、ポリ-D,L-ラクチドと100:0〜50:50の範囲のラクチド対グリコリドのモル比を持つポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリドとの共重合体である、請求項41記載の方法。
【請求項50】
前記混合物を少なくとも25℃で処理する、請求項41記載の方法。
【請求項51】
前記混合物を少なくとも40℃で処理する、請求項41記載の方法。
【請求項52】
前記混合物が求核物質の反応性を高める溶媒を含有する、請求項41記載の方法。
【請求項53】
前記の高分子用の溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、ジクロロメタン、およびベンジルアルコールからなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項54】
請求項41記載の方法を使用することにより調製したミクロスフェア。
【請求項55】
生分解性ポリエステルおよびアミン含有薬物を含む製剤であって、該ポリエステルが10〜40の酸価を持つ製剤。
【請求項56】
前記ポリエステルの組成が少なくとも50%ラクチドである、請求項55記載の製剤。
【請求項57】
前記アミン含有薬物がポリペプチドである、請求項55記載の製剤。
【請求項58】
前記ポリペプチドが、GnRH 類似体、ソマトスタチン類似体、ホルモン、成長因子、または抗体である、請求項57記載の製剤。
【請求項59】
前記製剤がさらに有機酸を含む、請求項55記載の製剤。
【請求項60】
前記有機酸がアルキル酸である、請求項59記載の製剤。
【請求項61】
前記アルキル酸が、酢酸、乳酸、グリコール酸、酪酸、吉草酸、デカン酸、ステアリン酸またはクエン酸である、請求項59記載の製剤。
【請求項62】
前記有機酸がアリール酸である、請求項59記載の製剤。
【請求項63】
前記有機酸が0.3重量%〜8重量%の濃度で存在する、請求項59記載の製剤。
【請求項64】
前記酸価が少なくとも5であり、前記ポリエステルの組成が100%ラクチドである、請求項55記載の製剤。
【請求項65】
前記酸価が少なくとも15であり、前記ポリエステルの組成が50%ラクチドおよび50%グリコリドである、請求項55記載の製剤。
【請求項66】
生体適合性かつ生分解性の高分子のマトリクスを含み、十分な量のポリペプチドまたはその製薬上許容しうる塩がその内部に均一に分布している制御放出製剤であって、生分解性の高分子が100%ポリ(ラクチド)または少なくとも75%w/wポリ(ラクチド)を含むグリコリド含有共重合体を含み、該高分子または該共重合体が少なくとも13であってかつ40以下の酸価を持たなくてはならず、かつポリペプチドまたはその塩の目標負荷率が15以下である、上記制御放出製剤。
【請求項67】
前記の生分解性の高分子がポリ-D,L-ラクチドである、請求項66記載の制御放出製剤。
【請求項68】
前記の生分解性の高分子が、ポリ-D,L-ラクチドとポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリドとの混合物である、請求項66記載の制御放出製剤。
【請求項69】
前記製剤が、15%未満である前記ペプチドの目標負荷率を有する、請求項66記載の制御放出製剤。
【請求項70】
前記ペプチドが、オクトレオチド、ロイプロリド、オルンチドおよびWoc4Dからなる群より選択される、請求項69記載の制御放出製剤。
【請求項71】
前記製剤がさらに酸性添加物を含む、請求項66記載の制御放出製剤。
【請求項72】
前記酸性添加物の含有量が約0.5重量%〜約5重量%である、請求項71記載の制御放出製剤。
【請求項73】
生体適合性かつ生分解性の高分子のマトリクスを含み、十分な量のポリペプチドまたはその製薬上許容しうる塩がその内部に均一に分布している制御放出製剤であって、生分解性の高分子が、少なくとも5の酸価を持つ100%ポリ(ラクチド)または少なくとも50%w/wポリ(ラクチド)を含みかつ少なくとも13の酸価を持つグリコリド含有共重合体を含み、かつ製剤が十分な量の酸性添加物を含む、上記制御放出製剤。
【請求項74】
前記酸性添加物が、氷酢酸、乳酸、グリコール酸もしくはステアリン酸またはそれらの組み合わせである、請求項73記載の制御放出製剤。
【請求項75】
前記製剤が、疎水性ペプチド関連物質を含まないかまたは2%未満の疎水性ペプチド関連物質を含む、請求項73記載の制御放出製剤。
【請求項76】
生体適合性かつ生分解性の高分子のマトリクスを含み、十分な量のポリペプチドまたはその製薬上許容しうる塩がその内部に均一に分布しているミクロスフェアであって、高分子マトリクスが5よりも高い酸価を持つ少なくとも50%のポリラクチドから作られ、かつポリペプチドまたはその塩が該高分子マトリクスの酸性基と相互作用しうる求核基を持つ、上記ミクロスフェア。
【請求項77】
前記ポリペプチドが、前記高分子マトリクスに対して15重量%未満の量で存在する、請求項76記載のミクロスフェア。
【請求項78】
前記ポリペプチドが、オクトレオチドまたはその塩、ランレオチドまたはその塩、ロイプロリドまたはその塩、オルンチドまたはその塩、ソマトスタチン類似体およびLHRHアンタゴニストからなる群より選択される、請求項76記載のミクロスフェア。
【請求項79】
前記高分子マトリクスがコモノマー、グリコリドからも作られる、請求項76記載のミクロスフェア。
【請求項80】
(a) GnRH 類似体、および
(b) 酸性添加物
を含む、分散相製剤用の組成物。
【請求項81】
前記GnRH類似体がGnRHのアゴニストまたは凍結乾燥アンタゴニストである、請求項80記載の組成物。
【請求項82】
前記GnRH類似体がGnRHの凍結乾燥アンタゴニストである、請求項81記載の組成物。
【請求項83】
前記のGnRHの凍結乾燥アンタゴニストを、非水性溶媒を含む溶液から凍結乾燥させる、請求項82記載の組成物。
【請求項84】
前記非水性溶媒がtert-ブチルアルコールまたはシクロヘキサンである、請求項83記載の組成物。
【請求項85】
前記酸性添加物が、有機もしくは無機酸性添加物またはそれらの組み合わせである、請求項80記載の組成物。
【請求項86】
前記の有機または無機酸性添加物が5.0以下のpKaを持つ、請求項85記載の組成物。
【請求項87】
前記の有機酸性添加物が、氷酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸、メタンスルホン酸、メシチル酸(mesitylic acid)またはこれらの酸の組み合わせからなる群より選択される、請求項86記載の組成物。
【請求項88】
前記無機酸性添加物がHClである、請求項86記載の組成物。
【請求項89】
前記組成物が生体適合性かつ生分解性の高分子をさらに含む、請求項80記載の組成物。
【請求項90】
前記高分子が、ポリ-D,L-ラクチド、またはD,L-ラクチドとD,L-グリコリドとの共重合体である、請求項80記載の分散相製剤。
【請求項91】
高分子含有分散相における高濃度のGnRH類似体の溶解性を増大させる方法であって、以下:
高濃度のGnRH類似体を施与すること、ただし、該GnRH類似体はGnRHのアゴニストまたは凍結乾燥アンタゴニストであるものとする、
第1の有機溶媒を該GnRH類似体に加えることにより第1の有機混合物を形成すること、
ある量の高分子を第2の有機溶媒中に溶かすことにより第2の有機混合物を形成すること、ならびに
第1および第2の有機混合物を混合することにより分散相を形成すること、
ある量の酸性添加物を分散相に加えること、ただし、分散相中の酸性添加物の量は、該分散相から調製される溶質担持ミクロスフェアの溶質放出特性に影響を与えることなく該分散相における高濃度のGnRH類似体の溶解性を増大させるのに十分な量であるものとする
を含む上記方法。
【請求項92】
前記GnRH類似体がGnRHの凍結乾燥アンタゴニストである、請求項91記載の方法。
【請求項93】
前記のGnRHの凍結乾燥アンタゴニストを、非水性溶媒を含む溶液から凍結乾燥させる、請求項92記載の方法。
【請求項94】
前記非水性溶媒がtert-ブチルアルコールまたはシクロヘキサンである、請求項93記載の方法。
【請求項95】
前記分散相を40℃、または前記分散相のゲル化を防止するのに十分な温度まで加熱することをさらに含む、請求項92記載の方法。
【請求項96】
前記の第1の有機溶媒が、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素、クロロホルム、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アセトン、乳酸エチル、または酢酸エチルである、請求項91記載の方法。
【請求項97】
高分子含有分散相における高濃度のGnRHの凍結乾燥アンタゴニストの溶解性を増大させる方法であって、
高濃度のGnRHの凍結乾燥アンタゴニストを十分な量の酸性添加物中に溶かすことにより溶液を形成すること、
前記溶液にある量の有機溶媒を加えることにより第1の有機溶液を形成すること、
ある量の有機溶媒中にある量の高分子を溶かすことにより第2の有機溶液を形成すること、ならびに
第1および第2の有機溶液を混合することにより澄明な分散相を形成すること
を含む上記方法。
【請求項98】
前記方法が、前記有機溶媒を加える段階の前に、前記溶液にメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン、塩化エチレン、四塩化炭素、クロロホルム、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、アセトン、乳酸エチル、または酢酸エチルを加える任意の段階を含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
前記有機溶媒がジクロロメタンである、請求項97記載の方法。
【請求項100】
前記酸性添加物が、有機酸もしくは無機酸またはそれらの組み合わせである、請求項97記載の方法。
【請求項101】
酸性添加物が5.0以下のpKaを持つ、請求項97記載の方法。
【請求項102】
前記酸性添加物が、氷酢酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、安息香酸、プロパン酸、メタンスルホン酸、メチシル酸もしくはHClまたはこれらの酸の組み合わせである、請求項101記載の方法。
【請求項103】
請求項97記載の方法の分散相から有機溶媒、酸性添加物、および該分散相中に存在する他のあらゆる有機液体を除去することにより調製した溶質含有ミクロスフェア。
【請求項104】
前記ミクロスフェア中の溶質がGnRH類似体である、請求項103記載の溶質含有ミクロスフェア。
【請求項105】
前記GnRH 類似体がアンタゴニストである、請求項104記載の溶質含有ミクロスフェア。
【請求項106】
前記GnRH 類似体がアンタゴニストである、請求項104記載の溶質含有ミクロスフェア。
【請求項107】
ゴナドトロピン放出ホルモン関連障害を患う哺乳動物において該ホルモンを抑制する方法であって、有効量の請求項104記載の溶質含有ミクロスフェアを含む組成物を該哺乳動物に投与することを含む前記方法。
【請求項108】
前記障害が、テストステロン依存性の障害、良性前立腺肥大症または前立腺癌である、請求項107記載の方法。
【請求項109】
前記組成物を皮下または筋内に投与する、請求項108記載の方法。
【請求項110】
前記哺乳動物がヒトである、請求項107記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−148812(P2011−148812A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55619(P2011−55619)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【分割の表示】特願2006−520417(P2006−520417)の分割
【原出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【出願人】(506016521)オークウッド ラボラトリーズ,エル.エル.シー. (4)
【Fターム(参考)】