説明

高分子膜及びその利用

【課題】実用に供する圧力差において、二酸化炭素と水素とを高い選択性をもって分離する高分子膜を提供する。
【解決手段】式(1)M(ORで示される架橋剤を有するポリビニルアルコール内に、式(2)


(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、pは0又は1の整数を示す。)、式(3)


(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示しqは0又は1の整数を示す。)、さらに特定の式で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する混合ガスから二酸化炭素を分離に使用できる高分子膜、ガス分離膜モジュール、及びガス分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高分子素材には、その素材に特有の気体透過性があるため、高分子素材から構成された膜によって、気体成分を分離できることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。特に、膜による気体成分の分離技術は、エネルギーが少ない、装置が小型化できる、装置のメンテナンスが容易になる等の利点があり、種々の分野で使用されている。
近年、膜により気体成分を分離する技術の中でも、二酸化炭素を選択的に分離する技術が精力的に検討されている。この技術は、油田のオフガス、ゴミ焼却や火力発電の排ガス、天然ガス等からの二酸化炭素の分離回収に利用することができる。
【0003】
しかしながら、従来の高分子膜では二酸化炭素の選択性(二酸化炭素の膜透過速度/分離対象ガスの膜透過速度)が不十分で、目的とする濃度で二酸化炭素を回収することが出来なかった。そのため、二酸化炭素選択性に優れた分離膜の開発が望まれていた。
このような膜を得るために、二酸化炭素に対して選択的に親和性が高い素材を用いることが提案されている。例えば、室温で液状物質であるポリアミドアミンデンドリマーを、微多孔質の支持体に含浸させた分離膜が提案されている(非特許文献2及び3)。この含浸膜の分離性能を、ヘリウムキャリアー法と言う膜に圧力差を設けない方法を用いて測定すると、二酸化炭素選択性が1000を超える優れた二酸化炭素選択性を示した。
しかしながら、液状物質であるポリアミドアミンデンドリマーを微多孔質の支持体に含浸させた分離膜では、この膜に圧力を掛けると、含浸させたデンドリマーが時間と共に支持体から抜け出して、性能を維持できないため、実用に供することが困難である。
【0004】
したがって、ポリアミドアミンデンドリマーのような二酸化炭素に選択的に強い親和性を有する物質を固定して、実用的な圧力差をかけることが可能な分離膜の開発が切望されていた。
【非特許文献1】ガス分離技術の新展開、東レリサーチセンター調査研究事業部編、株式会社東レリサーチセンター発行、1990年、第345〜362頁
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.122(2000)7594〜7595
【非特許文献3】Ind.Eng.Chem.Res.40(2001)2502〜2511
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実用に供する圧力差において、高い選択性をもって二酸化炭素を他のガスから分離するための高分子膜、ガス分離膜モジュール、及びガス分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分を有するポリビニルアルコール(以下、PVAと略称することもある。)中に特定のアミン化合物を包含させた高分子膜を形成することによって、実用に供する圧力下、二酸化炭素の分離において高い選択性を有すると共に、圧力差に耐え実用に供することが可能な高分子膜を得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1] 式(1)
M(OR (1)
(式中、Mは三価以上の金属原子を示し、nは3〜6の整数を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
【化1】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、pは0又は1の整数を示す。)
で示される基、式(3)
【化2】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、qは0又は1の整数を示す。)
で示される基、式(4)
【化3】

(式中、A及びAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、r及びsは0又は1の整数を示す。)
で示される基、又は式(5)
【化4】

(式中、A及びAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、tは0又は1の整数を示す。)
で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜、
[2] 三価以上の金属原子が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はコバルトである前記[1]記載の高分子膜、
[3] 架橋剤が、式(6)
Ti(OR (6)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示される架橋剤である前記[1]に記載の高分子膜、
[4] 架橋剤が、式(7)
【化5】

(式中、iPrはイソプロピル基を意味する。)
で示される化合物又は式(8)
【化6】

で示される化合物である前記[1]に記載の高分子膜、
[5] ポリビニルアルコールの分子量が、5,000〜1,000,000である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高分子膜、
[6] アミン化合物が、ポリアミドアミン系デンドリマーである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の高分子膜、
[7] ポリアミドアミン系デンドリマーが、式
【化7】

からなる群から選択される化合物である前記[6]に記載の高分子膜、
[8] 前記[1]〜[7]のいずれかに記載の高分子膜を組み込んでなるガス分離膜モジュール、及び
[9] 二酸化炭素を含む混合ガスを、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の高分子膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用に供する圧力差において、高い選択性をもって二酸化炭素を他のガスから分離できる高分子膜及び該高分子膜を組み込んだガス分離膜モジュールが提供される。また、本発明によれば、該ガス分離膜を用いて効率よく二酸化炭素を他のガスから分離する方法が提供される。なお、本発明の高分子膜は、二酸化炭素分離能を有するアミン化合物が高分子膜の表面に担持されているのではなく、該高分子膜内に固定化されているため、安定性が非常に優れているという特長を有する。すなわち、本発明で得られる高分子膜は圧力をかけた場合に式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基を有するアミン化合物が漏出することがなく、したがって、該複合膜を長期間安定に使用しうるという特長を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のガス分離膜は、式(1)
M(OR (1)
(式中、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
【化8】

(式中、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される基、式(3)
【化9】

(式中、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される基、式(4)
【化10】

(式中、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される基、又は式(5)
【化11】

(式中、記号は前記と同一意味を有する。)
で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなることを特徴とする。
【0010】
前記式(1)で示される架橋剤について詳細に説明する。式(1)におけるMは三価以上の金属原子を示す。三価以上の金属原子としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はコバルト等が挙げられ、好ましくはチタンである。Rの炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖もしくは分枝状であってよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ペンチル基、イソヘキシル基、又はヘキシル基が挙げられる。Rの炭素数2〜6のアルケニル基は、直鎖もしくは分枝状であってよく、具体的には、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−エチル−1−エテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、4−ペンテニル基が挙げられる。Rの炭素数3〜10のシクロアルキル基は、具体的には、シクロプロピル基、2−メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、 シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。Rの炭素数3〜10のシクロアルケニル基は、具体的には、1−シクロプロペニル基、2−シクロプロペニル基、1−シクロブテニル基、2−シクロブテニル基、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、1−シクロヘプテニル基、2−シクロヘプテニル基、3−シクロヘプテニル基、4−シクロヘプテニル基、1−シクロオクテニル基、2−シクロオクテニル基、3−シクロオクテニル基、4−シクロオクテニル基、1−シクロノネニル基、2−シクロノネニル基、3−シクロノネニル基、4−シクロノネニル基、1−シクロデセニル基、2−シクロデセニル基、3−シクロデセニル基、4−シクロデセニル基、2,4−シクロペンタジエニル基、2,5−シクロヘキサジエニル基、2,4−シクロヘプタジエニル基、2,6−シクロヘブタジエニル基等が挙げられる。Rの炭素数6〜10のアリール基は、具体的にはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。Rの炭素数7〜12のアラルキル基は、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。Rの炭素数2〜7のアシル基は、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基が挙げられる。Rの式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)におけるR、R、R、R、R及びRの炭素数1〜6のアルキル基は、前記したものと同様である。Rの1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基は、5〜10員脂肪族複素環基であってもよいし、5〜10員芳香族複素環基であってもよい。1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む、5〜10員複素環基としては、フラン、チオフェン、ピロール、2H−ピロール、ピラン、チオピラン、ピリジン、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、イミダゾール、ピラゾール、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリン、モルフォリン、アゼピン、アゾシン等が挙げられる。「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基」は、飽和環基であってもよいし、不飽和環基であってもよい。「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環」は、「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜8員複素環」が好ましく、「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜7員複素環」が更に好ましい。また、「1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環」は、「1〜2個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環」が好ましく、「1〜2個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜8員複素環」が更に好ましく、「1〜2個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜7員複素環」が更になお好ましい。
【0011】
前記したRのM及び基は互いに結合して環構造を形成していてもよい。前記したRの基又は環は置換基を有していてもよい。これらの基又は環が有していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のハロゲン原子;クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロエチル基、又はトリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、ペンチル基、イソヘキシル基、又はヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、n−ブトキシ基、又はn−ヘキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;シアノ基;フェノキシ基;アミノ基;水酸基;等が好ましい例として挙げられる。

式(1)で示される架橋剤としては、式(6)
Ti(OR (6)
(式中、記号は前記と同一意味を有し、Rの基の具体例としては、Rと同様のものが挙げられる。)
で示される架橋剤が好適に挙げられる。好ましい架橋剤として、具体的には、下記の式で示される化合物が挙げられる。式(7)
【化12】

(式中、iPrはイソプロピル基を意味する。)
で示される化合物、式(8)
【化13】

で示される化合物、又は下記式
【化14】

【化15】

(式中、t−Buはtert−ブチル基を示す。)
で示される化合物。チタン系架橋剤は、PVAの水酸基と架橋反応する一方で、デンドリマーのアミノ基との反応性が低く、デンドリマーとは反応し難いため、架橋剤として特に好ましい。
【0012】
架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に固定化されているアミン化合物は、前記式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基を有するアミン化合物であるが、式(2)、(3)、(4)及び(5)中、A、A、A、A、A、及びAで示される炭素数1〜3の二価有機残基としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜3のアルキレン基が好適に挙げられる。このようなアルキレン基の具体例としては、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−等が挙げられ、これらのうち特に−CH−が好ましい。本発明のアミン化合物は、式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基が1個以上含まれている限り、該基の数については特に制限されないが、好ましくは該基が2〜4096個、更に好ましくは該基を3〜128個有するものが例示される。
また、本発明で使用されるアミン化合物において、式(2)、(3)、(4)又は(5)の基が占める重量分率は、特に制限されるものではない。二酸化炭素と水素の分離能を高めるという観点から、該アミン化合物に占める式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基の重量分率が30%以上、好ましくは40〜95%、更に好ましくは50〜95%であるのが望ましい。
【0013】
本発明で使用されるアミン化合物において、式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基が結合する骨格を示すと、例えば次のものが挙げられる。
【化16】

【化17】

[式中、nは0〜10の整数を示す。]
【0014】
すなわち、本発明で使用されるアミン化合物は、式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基が、上記式において米印の結合子の一部又は全部に、直接又はアルキレン基を介して結合し、式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基が結合してない結合子には、水素原子、アルキル基、アミノアルキル基、ヒドロキシアルキル基等が結合した化合物である。
【0015】
本発明で使用されるアミン化合物の具体的な化合物は、例えば、下記の式で示される第0世代のポリアミドアミン(PAMAM)系デンドリマー、並びにこれら第0世代ポリアミドアミン系デンドリマーに対応する第1世代以上のものが挙げられる。
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【0016】
上記ポリアミドアミン系デンドリマーのうち、特に好適な化合物の一例として、下記ポリアミドアミン系デンドリマーが挙げられる。
【化25】

【0017】
なお、本発明で用いるポリアミドアミン系デンドリマーは、枝の長さがすべて等しいものと、そのうちの少なくとも1つがヒドロキシアルキル基又はアルキル基で置換され、枝の長さが異なるものを含む。また、ポリアミドアミン系デンドリマーは、表面基[すなわち、式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基]の数が異なる各種のポリアミドアミン系デンドリマーを使用することができる。ポリアミドアミン系デンドリマーの表面基の数と世代の関係は、第0世代の表面基の数をa(aは3以上の整数を示す。)とすると、第b世代(bは整数を示す。)の表面基の数cは、次の通りである。
【数1】

本発明においては市販品(例えば、アルドリッチ社製の第0〜10世代のPAMAMデンドリマー)を使用することもでき、とりわけ第0〜5世代のポリアミドアミン系デンドリマーを好適に使用することができる。第0世代の表面基の数が4個の場合の世代ごとの表面基の数を下記表1に示す。
【表1】

【0018】
式(2)で示される基を有するアミン化合物は、公知の有機合成法に従って製造することができる。当該アミン化合物の合成方法の一例として、メチルエステル基を有する母核化合物と、下記式(2a)で示されるアミン化合物を反応させる方法が例示される。かかる方法によれば、メチルエステル基を有する化合物の該メチルエステル基が式(2a)で示される基に変換されて、式(2)で示される基を有するアミン化合物を製造することができる。下式は、当該合成法において、メチルエステル基が式(2)で示される基に変換される式である。
【化26】

(式中、A及びpは前記と同一意味を有する。)
【0019】
メチルエステル基を有する化合物と、式(2a)で示されるアミン化合物との反応は、メチルエステル基を有する化合物1モルに対して、式(2a)で示されるアミン化合物を、通常3〜20モル、好ましくは5〜10モルの割合で使用して行われる。
メチルエステル基を有する化合物と、式(2a)で示されるアミン化合物との反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば公知のものを広く使用できる。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒には、水が含まれていていることを妨げるものではない。
メチルエステル基を有する化合物と、(2a)で示されるアミン化合物との反応は、通常0〜40℃、好ましくは20〜30℃で、90〜180時間、好ましくは160〜170時間攪拌を続けることにより行われる。
原料として用いられるメチルエステル基を有する化合物、及び式(2a)で示されるアミン化合物は公知化合物の化合物を用いることができる。
上記反応によって得られた反応混合物を、例えば、冷却した後、濾過、濃縮、抽出等の単離操作に供して粗反応生成物を分離し、更に必要に応じてカラムクロマトグラフィー、再結晶等の通常の精製操作を行うことによって式(2)で示される基を有するアミン化合物を単離精製することができる。
【0020】
式(3)で示される基を有するアミン化合物は、例えば、アミノ基を有する母核化合物と下記式(3a)で示される末端にメチルエステル基を有するアミン化合物を、前記と同様に反応させることにより製造することができる。
【化27】

(式中、A及びqは前記と同一意味を有する。)
【0021】
式(4)で示される基を有するアミン化合物は、例えば、下記式(4a)で示される末端にアルケニル基を有する母核化合物と下記式(4b)で示されるジアミン化合物を、前記と同様に反応させることにより製造することができる。
【化28】

(式中、A、A、r及びsは前記と同一意味を有する。)
【0022】
式(5)で示される基を有するアミン化合物は、例えば、下記式(5a)で示されるカルボニル基を有する母核化合物と下記式(5b)で示されるジアミン化合物を、前記と同様に反応させることにより製造することができる。
【化29】

(式中、A、A及びtは前記と同一意味を有し、Aは、有機残基を示す。)
で示される炭素数1〜3の有機残基としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭素数1〜3のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基)が好適に挙げられる。
【0023】
本発明で用いるポリビニルアルコールは水溶液の形態で使用される。この場合水溶液の濃度は0.5〜30重量%、好ましくは1〜10重量%である。本ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、通常約5千〜100万、好ましくは約4万〜40万である。重合度でいえば、通常約110〜23000、好ましくは約1,000〜10,000である。PVAが水酸基を有する親水性のポリマーであることから、デンドリマーとの相溶性に優れる上、PVAのガス透過量が小さく、PVA部分を通過するガス量が少ないため、他のポリマーに比べて、ガス分離膜の材料としてPVAは優れている。
【0024】
前記ポリビニルアルコール内に固定化される前記式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基を有するアミン化合物の量は、ポリビニルアルコール水溶液100重量部に対して通常約1〜50重量部、好ましくは約3〜20重量部である。
【0025】
上記した本発明の高分子膜としては、前記チタン系架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分を有するPVA内に、前記PAMAM系デンドリマーが固定されている高分子膜がとりわけ好ましい。高分子膜の製造において、PAMAM系デンドリマーとは反応せずに、PVAのみと反応する架橋剤が好ましく、そのような架橋剤としてチタン系架橋剤が優れるためである。
【0026】
また、本発明の高分子膜は、多孔質支持膜は必須ではないが、本発明の高分子膜と多孔質支持膜とを積層させて複合膜としてガス分離に用いてもよい。なお、本発明において複合膜とは、ガス分離能を有する高分子膜と多孔質支持膜が一体に形成されたものをいう。
【0027】
本発明に用いる多孔質支持膜は、例えば、後述するポリマー等を用いて製造することができ、セラミックスやポリエチレンフタレート(PET)フィルム等を用いることもできる。具体的には、ポリマーを用いて製造する場合、ポリマーを溶媒に溶解して、原料溶液を得たのち、該原料溶液と、凝固液(溶媒と非溶媒の混合溶液)と接触させて、非溶媒濃度の上昇により相分離を誘起する方法(非溶媒誘起相分離法;NIPS法、特公平1−22003号公報参照)により、多孔質支持膜を製造することができる。前記セラミックスとしては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ等が挙げられる。
【0028】
多孔質支持膜の製造に用いるポリマーとしては、例えば、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリフェニレンスルホン、トリアセチルセルロース、酢酸セルロース、カーボン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、芳香族ナイロン、ポリエチレンフタレ−ト(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテル、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。前記溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。凝固時に凝固液へ溶媒が溶解するものであれば、特に限定されない。前記非溶媒としては、例えば水、一価アルコール、多価アルコール、エチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。原料溶液の調製の際に、膨潤剤を添加して、凝固後の支持膜内の貫通孔を増加させ、ガス透過性を向上させることが好ましい。前記膨潤剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、食塩、塩化リチウム、臭化マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。この膨潤剤の中で、ポリエチレングリコールが好ましく、特に重量平均分子量400〜800のポリエチレングリコールが好ましい。原料溶液及び凝固液の濃度は、原料溶液と凝固液とを接触させ、非溶媒誘起相分離法により、多孔質支持膜を得られる濃度であれば、特に限定されないが、例えば、原料のポリマーとしてポリエーテルスルホン(PES)を用いる場合、原料溶液は、製膜性から20〜35wt%PES溶液とするのが好ましい。
【0029】
原料溶液と凝固液との接触の方法としては、特に限定されないが、例えば、原料溶液を凝固液に浸漬する方法が挙げられる。凝固液中の溶媒濃度は、特に限定されないが、原料溶液の凝固において、凝固液中の溶媒濃度を変化させることにより、支持膜の構造が変化し、耐圧性を上げることができる。多孔質支持膜の細孔の孔径としては、100nm以下が好ましく、さらに好ましくは10nm以下である。多孔質支持膜の膜厚は、高分子膜のガス透過性が多孔質支持膜のガス透過性よりも大きくならない範囲であれば、特に限定されない。
【0030】
本発明の高分子膜と多孔質支持膜を積層させる方法としては、それ自体公知の方法を採用することができ、例えばラミネート法等が挙げられ、ラミネート法としては、例えば公知のドライラミネート、ホットメルトラミネート等が挙げられる。具体的には、高分子膜と多孔質支持膜とを、通常φ(直径)20〜60mm、好ましくはφ25〜50mm程度に切り取り、接着剤又は接着フィルムを用いて張り合わせる方法である。
ラミネートに用いる接着剤としては、特に限定されないが、水系接着剤(例えば、α−オレフィン系接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤等)、水分散系接着剤(例えば、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤等)、溶剤系接着剤(例えば、ニトロセルロース接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤等)、反応系接着剤(例えば、シアノアクリレート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、シリコーン系接着剤等)、ホットメルト接着剤(例えば、エチレン−酢酸ビニル樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤等)等が挙げられる。接着フィルムとしては、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱可塑性透明樹脂からなるフィルム等が挙げられる。本発明の高分子膜のガス透過性及び多孔質支持膜のガス透過性を妨げない範囲であれば、接着剤又は接着フィルムの層の厚さは特に限定されない。
【0031】
前記した本発明の高分子膜は、前記式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基を有するアミン化合物の存在下に、前記式(1)で示される架橋剤を用いて、ポリビニルアルコールを重合反応(架橋反応)させることにより、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に前記アミン化合物を固定化させることにより、製造することができる。
具体的には、前記ポリビニルアルコールの水溶液に、前記アミン化合物を添加し、混合溶液を調製した後、該混合溶液に架橋剤を加え重合反応(架橋反応)させることによって本発明の高分子膜を製造できる。前記ポリビニルアルコールと前記アミン化合物の混合溶液を調製後、前記架橋剤を添加し、ポリマー溶液を調製する。架橋剤を添加後、得られたポリマー溶液を攪拌するのが好ましく、攪拌時間は通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜5時間である。また、架橋剤を添加した後、得られた混合溶液を十分に脱泡するのが好ましい。前記架橋剤の添加量は、上記ポリビニルアルコール水溶液100重量部に対し、通常約0.5〜10重量部、好ましくは約2〜5重量部である。次いで、得られたポリマー溶液をテフロン(登録商標)シャーレにキャスティングし、乾燥し、成膜する。乾燥時間は、通常8〜100時間、好ましくは12〜75時間である。乾燥温度は、通常15〜60℃、好ましくは20〜40℃である。乾燥後、得られた膜を加熱して重合反応(架橋反応)させることによって本発明の高分子膜を得る。架橋反応の反応時間は、通常0.5〜40時間、好ましくは1〜8時間である。架橋反応の反応温度は、通常60〜160℃、好ましくは80〜120℃である。
【0032】
かくして、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコールが生成すると同時に、該ポリビニルアルコール内に式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜が得られる。得られる高分子膜は、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコールの該架橋部分内に式(2)、(3)、(4)又は(5)で示される基を有するアミン化合物が封入され、固定化されているものが好適に挙げられる。
【0033】
本発明の他の一つは、上記で得られた高分子膜を用いて、二酸化炭素を含む混合ガスから、二酸化炭素を分離する方法である。すなわち、本発明のガス分離方法は、二酸化炭素を含む混合ガスを上記で得られた高分子膜に接触させて該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする。該ガス分離方法は、高分子膜のガス供給側とガス透過側との間に圧力差を設けておくのが好ましい。この圧力差は、通常、ガス透過側を減圧にすることにより設けられる。また、本分離方法は、通常5〜80℃、好ましくは室温〜50℃の温度条件下で実施するのが望ましい。
【0034】
本発明の分離方法に適用できる混合ガスは、二酸化炭素を含む混合ガスであれば特に制限されず、二酸化炭素と水素、二酸化炭素とメタン等が挙げられる。二酸化炭素と他のガスとの分離性能を向上させるためには、混合ガスの相対湿度を30%以上、好ましくは60〜100%、さらに好ましくは80〜100%に調製しておくのが好ましい。上記ガス分離方法は、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント等で発生する燃焼排ガスから二酸化炭素(CO)を分離するのに適用することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
[PVA溶液の調製]
スターラー攪拌装置、還流冷却器を備えた内容積300mlのナス型フラスコにポリビニルアルコール(PVA)(和光純薬製、重合度約2000)試薬5.00gを蒸留水95.00gに入れ、110℃のオイルバス中で4時間以上PVAを解けて溶液が透明となるまで加熱・還流・撹拌し、5wt%のPVA水溶液100gを調製した。
[高分子膜の製造]
下記式
【化30】

で示される第0世代のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー(表面基:−CONHCHCHNH;アミノ基の数:4個;20wt%メタノール溶液;アルドリッチ社製)25gをエバポレータで40℃減圧蒸留し、メタノール溶媒を蒸発除去した。上記調製した5wt%のPVA水溶液10gに0.5gのPAMAMデンドリマーを加え、一晩で撹拌した。得られた水溶液(PVA+PAMAM)に前記式(7)で示されるジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタン(マツモトファインケミカル株式会社製、80wt%イソプロパノール溶液)0.32gを加え、2時間撹拌した。得られた混合溶液を十分に脱泡してポリマー溶液とした。このポリマー溶液をテフロン(登録商標)シャーレにキャスティングし、常圧室温で2日間自然乾燥し、その後、40℃で1日乾燥し、フィルムを得た。更に120度で1時間加熱し、目的とする高分子膜を得た。本高分子膜の膜厚は0.407mmであった。得られた高分子膜の写真を図2に示す。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
【0037】
[実施例2]
実施例1で調製した5wt%のPVA水溶液10gに1.17gのPAMAMを加え、混合溶液を一晩で撹拌した。得られた(PVA+PAMAM)水溶液に前記式(7)で示されるジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタン(マツモトファインケミカル株式会社製、80wt%イソプロパノール溶液)0.32gを加え、混合溶液を2時間撹拌した。得られた混合溶液を十分に脱泡してポリマー溶液とした。このポリマー溶液をテフロン(登録商標)シャーレにキャスティングし、常圧室温で2日間自然乾燥し、引続き40℃で1日乾燥し、フィルムを得た。さらにフィルムを120度で1時間加熱処理し、目的とする高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は0.560mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
【0038】
[比較例1]
実施例1において、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタンを加えない以外は実施例1と同様にして高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は0.576mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例1において、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタンの代わりにグルタルアルデヒド(GA)(東京化成工業株式会社製、50wt%水溶液)0.23gを加えた以外は実施例1と同様にして高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は0.507mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
【0040】
[比較例3]
実施例1において、ジイソプロポキシ・ビス(トリエタノ−ルアミネ−ト)チタンを加えず、また、熱処理を施さない以外は実施例1と同様にして高分子膜を得た。得られた高分子膜の膜厚は約0.580mmであった。高分子膜の組成と製膜条件を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
[試験例]二酸化炭素と水素の分離試験
得られた高分子膜を用いて二酸化炭素と水素混合ガスから二酸化炭素の分離する性能を測定した。供給側圧力101kPa〜810kPa、ガス組成CO/H=5vol%/95vol%〜80vol%/20vol%混合ガスを供給し、分離膜を透過したガスの透過流束F(m(STP)/s)を石鹸膜流量計を用いて測定し、供給ガス組成XCO2、XH2と透過したガスの組成YCO2、YH2をガスクロマトグラフィーで求めた。
下記式(a)、(b)及び(c)に従って透過係数PCO2(単位:m(STP)m/msPa)を算出し、同様にしてPH2も算出した。得られる透過係数から選択性α=PCO2/PH2を算出した。その結果を表3に示す。
【数2】

(式中、Pは供給側圧力(Pa)を意味し、Pは透過側圧力(Pa)を意味し、Aは膜面積(m)を意味する。)
【数3】

(式中、δは膜厚(m)を意味する。)
【数4】

<ガス透過測定装置の設定条件>
供給ガス圧力:1〜8[kPa−A]
透過側圧力:大気圧
供給ガス流量:100cm/min
透過側ヘリウムガス流量:10cm/min
膜セルオーブン温度:40℃
加湿器バブラー温度:35.8℃
供給側ガス相対湿度:80RH%
<ガスクロマトグラフィー分析条件>
GC−4000:
検出器:パルス放電検出器(PDD)と熱伝導度検出器(TCD)
PDD 温度:80℃
TCD 温度:80℃
キャリアーガス量:
PDD(He):
カラム流量:25[mL/min]
放電流量:35[mL/min]
TCD(Ar):25[mL/min]
GC オーブン温度:50℃
分析カラム
(1)PDD
プレカラム:PorapakQ 80/100 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
メインカラム:ActiveCarbon 60/80 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
放電カラム:MolecularSieve5A 60/80 SUS 1/8"×2.17mm×3.0m
(2)TCD
プレカラム:PorapakQ 80/100 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
メインカラム:ActiveCarbon 60/80 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
抵抗カラム:Porapak N 80/100 SUS 1/8"×2.17mm×1.0m
【0043】
【表3】

以上の結果から、本発明の高分子膜は、実用に供する圧力差において、二酸化炭素と水素とを高い選択性をもって分離できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の高分子膜は、二酸化炭素と水素とを分離するための用途に使用されるものであり、例えば、火力発電所、鉄鋼プラント等で発生する燃焼排ガスからのCO分離等において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、ガス分離装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例1で得られた高分子膜の写真である。
【符号の説明】
【0046】
1 マスフローコントローラ
2 圧力計
3 平膜セル
4 加湿器
5 背圧弁
6 石鹸膜流量計
7 ガスクロマトグラフィー
8 Heガス
9 COガス
10 Hガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
M(OR (1)
(式中、Mは三価以上の金属原子を示し、nは3〜6の整数を示し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示される架橋剤で架橋されてなる、架橋部分と結晶部分とを有するポリビニルアルコール内に、式(2)
【化1】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、pは0又は1の整数を示す。)
で示される基、式(3)
【化2】

(式中、Aは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、qは0又は1の整数を示す。)
で示される基、式(4)
【化3】

(式中、A及びAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、r及びsは0又は1の整数を示す。)
で示される基、又は式(5)
【化4】

(式中、A及びAは炭素数1〜3の二価有機残基を示し、tは0又は1の整数を示す。)
で示される基を有するアミン化合物が固定化されてなる高分子膜。
【請求項2】
三価以上の金属原子が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はコバルトである請求項1記載の高分子膜。
【請求項3】
架橋剤が、式(6)
Ti(OR (6)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルケニル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、炭素数2〜7のアシル基、式−NHRで示される基(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NHRで示される基(式中、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、式−C(O)−NRで示される基(式中、R及びRは、独立に、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)、又は、1〜3個の酸素原子、窒素原子若しくは硫黄原子を含む5〜10員複素環基を示し、これらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、これらの基又は環は置換基を有していてもよい。)
で示される架橋剤である請求項1に記載の高分子膜。
【請求項4】
架橋剤が、式(7)
【化5】

(式中、iPrはイソプロピル基を意味する。)
で示される化合物又は式(8)
【化6】

で示される化合物である請求項1に記載の高分子膜。
【請求項5】
ポリビニルアルコールの分子量が、5,000〜1,000,000である請求項1〜3のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項6】
アミン化合物が、ポリアミドアミン系デンドリマーである請求項1〜5のいずれかに記載の高分子膜。
【請求項7】
ポリアミドアミン系デンドリマーが、式
【化7】

からなる群から選択される化合物である請求項6に記載の高分子膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の高分子膜を組み込んでなるガス分離膜モジュール。
【請求項9】
二酸化炭素を含む混合ガスを、請求項1〜7のいずれかに記載の高分子膜に接触させて、該混合ガス中の二酸化炭素を選択的に透過させる工程を含むことを特徴とする二酸化炭素の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−149026(P2010−149026A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328539(P2008−328539)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】