説明

高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法

本開示は、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーに関する。本明細書に記載の1つの方法は、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製することに関する。その最も広い態様によれば、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法は、以下の段階:(a)モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液から、カルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階と;(b)モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階とを含み、脱水条件は、段階(b)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する。このような高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、流体混合物の分離のための架橋ポリマー膜を形成するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の1つの方法は、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製することに関する。このような高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、流体混合物の分離のための架橋ポリマー膜を形成するのに有用である。本明細書に記載の別の方法は、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから架橋膜を作製することに関する。本明細書に記載のさらに別の方法は、複数の成分を含む供給ストリームから少なくとも1つの成分を分離するために架橋膜を使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
メタン及び二酸化炭素などのガスの混合物を分離するためのポリマー膜が知られている。例えば、米国特許第7,247,191号;同第6,932,859号;及び同第6,755,900号(これらの文献の全体を参照により本明細書に援用する)は、架橋性ポリマー及びこのような架橋性ポリマーから作製される架橋中空繊維膜を教示している。これらの特許は、特に架橋性ポリイミドポリマーを記述している。架橋性ポリイミドポリマーは、ポリイミドポリマーを架橋剤でモノエステル化することによって作製することができる。
【0003】
架橋中空繊維膜は、架橋性ポリイミドポリマーから繊維を形成する段階と、繊維内で架橋性ポリイミドポリマーをエステル交換する段階とによって作製することができる。より具体的には、架橋性ポリイミドポリマーを架橋性繊維に形成し、次いでこれを、繊維内の架橋性ポリイミドポリマーの間に共有結合エステルの架橋を生じさせるためにエステル交換条件にかけることができる。このような繊維は、中空繊維又は他のタイプの繊維であってもよい。架橋中空繊維膜を分離モジュール中に組み込むことができる。分離のための他のタイプの膜には、フラットシート分離膜又はフラットスタックパーミエーターが含まれる。
【0004】
中空繊維膜を使用する分離モジュールは、フラットシート又はフラットスタックパーミエーターを使用する分離モジュールより大きな表面積を含む。したがって、中空繊維分離モジュールは、適度にコンパクトサイズのモジュールであってもかなりの分離能力を有する。炭化水素産出井からガスの混合物を分離するために、空間及び重量が重要である海洋プラットフォーム上で分離モジュールを実行する際、モジュールサイズは重要である。
【0005】
架橋中空繊維膜は、優れた透過性及び選択性を有する。架橋中空繊維膜は、優れた可塑化抵抗性も有する。可塑化は、流体混合物の1種又は複数の成分がポリマーを膨潤させて、膜の特性を変化させた場合に起こる。例えば、ポリイミドは、特に二酸化炭素による可塑化を受けやすい。この繊維をエステル交換条件にかけて、繊維内で架橋性ポリイミドポリマーを架橋すると、可塑化抵抗性及び選択性の両方が増大する。
【0006】
上記で参照した特許は、架橋中空繊維膜を作製するために、高すぎず又は低すぎない平均分子量を有する架橋性ポリイミドポリマーを使用することを推奨している。これらの特許は、ポリイミドポリマーの分子量が、モノエステル化プロセスの間に低下することをさらに述べている。したがって、これらの文献は、モノエステル化プロセスの間の分子量低下に適応するために、十分に高分子量のポリイミドポリマーの使用を推奨している。しかし、このような高分子量を有する架橋性ポリイミドポリマーを生成することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、モノエステル化プロセスの間の分子量低下を減少させるか又は除去する、架橋性(即ち、モノエステル化)ポリイミドポリマーを作製する方法が求められている。言い換えれば、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法が求められている。改良された強度、柔軟性、及び/又は曳糸性を有するモノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法も求められている。さらに、改良された選択性及び透過性を有する分離膜を作製する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その最も広い態様によれば、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法は、以下の段階:
(a)モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液から、カルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階と;
(b)モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階と
を含み、
脱水条件は、段階(b)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する。
【0009】
段階(a)では、モノマーは、重合反応において重合してアミド結合を含むポリアミドポリマーをもたらす。イミド化反応が起こってアミド結合はイミド結合を形成して、ポリイミドポリマーをもたらす。段階(b)では、ポリイミドポリマーは、モノエステル化されてモノエステル化ポリイミドポリマーをもたらす。段階(b)の脱水条件は、いくつかの効果を有することができる。脱水条件は、モノエステル化に典型的に伴って生じる平均分子量の低下を減少させ、実質的に解消し又は完全に解消し、或いはポリイミドポリマーに比較して、モノエステル化ポリイミドポリマーの平均分子量を増加さえさせる。したがって、モノエステル化ポリイミドポリマーは、比較的高い平均分子量を有し、より低い分子量の対応物より機械的に強く、柔軟であり、より容易に及び迅速に紡糸される。
【0010】
段階(b)は、モノエステル化反応を促進するために、酸触媒の存在下でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階をさらに含んでもよい。酸触媒が、水除去を伴わない従来のモノエステル化反応に典型的に使用される量未満の量で存在する場合、モノエステル化ポリイミドポリマーは、分子量を部分的に保持し、完全に保持し、又は増加さえする。
【0011】
ある実施形態では、段階(a)はまた、段階(a)のイミド化反応の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する脱水条件下で起こる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に記載の方法によって作製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマー鎖及び従来の方法によって作製された低分子量モノエステル化ポリイミドポリマー鎖の概略図である。架橋高分子量モノエステル化ポリイミドポリマー鎖及び架橋低分子量モノエステル化ポリイミドポリマー鎖の概略図をさらに含む。
【図2】モノエステル化反応及びエステル交換反応の両方を示す図である。
【図3】本明細書に記載の方法により作製されたモノエステル化中空繊維を試験するために使用される試験モジュールの概略図である。
【図4】従来のモノエステル化反応により作製された低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのH−NMRスペクトルである。
【図5】従来のモノエステル化反応により作製された低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーの減衰全反射赤外線(ATR−IR)スペクトルである。
【図6】ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した、分子量の維持に関する時間の影響、及び本明細書に記載の方法により作製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのエステル収率を示すグラフである。
【図7】例4に従って調製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのATR−IRスペクトルである。
【図8】例4により作製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから調製された架橋ポリマー;例4により作製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマー;及び例4により作製されたポリイミドポリマーのATR−IRスペクトルである。
【図9】例11により作製されたモノエステル化中空繊維の走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【図10】本明細書に記載の方法によるエステル交換条件にかけられた、モノエステル化中空繊維の分離性能を図示するグラフである。
【図11】本明細書に記載の方法により作製されたモノエステル化中空繊維及び本明細書に記載の方法によるエステル交換条件にかけられた、モノエステル化中空繊維の分離性能を図示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する新規な方法が、本明細書に開示されている。このような方法は、モノエステル化ポリイミドポリマーをもたらすためのポリイミドポリマーのモノエステル化の間に生成した水を除去すると、モノエステル化の間の分子量低下を減少させるという予想外の発見に基づく。その結果、モノエステル化ポリイミドポリマーは、出発ポリイミドポリマーの分子量により近い分子量を有することができる。例えば、モノエステル化ポリイミドポリマーの平均分子量は、出発ポリイミドポリマーの平均分子量の60%超、80%超、又は90%超であることができる。モノエステル化の間の水除去により、ポリイミドポリマーの分子量以上の分子量を有するモノエステル化ポリイミドポリマーを生成することも可能である。本明細書で使用される場合の「高分子量モノエステル化ポリイミドポリマー」という用語は、モノエステル化反応の間に水を除去しない、従来の方法で製造されたモノエステル化ポリイミドポリマーを超える平均分子量を有するモノエステル化ポリイミドポリマーを指す。高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、約80,000から約220,000の間の平均分子量を有することができる。例えば、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、約100,000から約200,000の間の平均分子量又は約125,000から約200,000の間の平均分子量を有することができる。
【0014】
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを使用する架橋膜を作製する新規な方法も本明細書に開示されている。この方法は、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを形成する段階を含む。この方法は、架橋膜を形成するために、モノエステル化ポリイミドポリマーを架橋する段階をさらに含む。
【0015】
一実施形態では、この架橋膜は、架橋中空繊維膜である。架橋中空繊維膜は、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを使用して作製される。この方法は、モノエステル化ポリイミドポリマーからモノエステル化繊維を形成する段階を含む。この方法は、架橋中空繊維膜を形成するために、繊維内でモノエステル化ポリイミドポリマーを架橋する段階をさらに含む。
【0016】
この方法は、モノエステル化ポリイミドポリマーを含む新規なドープ組成物から、モノエステル化中空繊維を紡糸する新規な方法を特に含むことができる。
【0017】
本明細書に開示された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、流延してシート又はフィルムを形成することもできる。このシート又はフィルムは、適切な支持体上に流延して、複合材料シートを提供することができる。
【0018】
本明細書に記載のモノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法は、以下の段階:
(a)モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液から、カルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階と、
(b)モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階とを含み、
脱水条件は、段階(b)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する。
【0019】
段階(a)において、先ず、モノマーが重合して、アミド結合を含むポリアミドポリマーを形成する。次に、段階(a)において、イミド化反応が起こり、ここでポリアミドポリマーのアミド結合がイミド結合を形成して、ポリアミドポリマーをポリイミドポリマーに変換する。得られたポリイミドポリマーは、ポリイミドポリマーの鎖を架橋することが可能なカルボン酸官能基を含む。
【0020】
段階(b)において、モノエステル化反応が行われる。より具体的には、ポリイミドポリマーのカルボン酸官能基(−COOH)は、ジオールのヒドロキシル官能基(−OH)と反応して、−COOH基をエステルに変換する。これは、モノエステル化ポリイミドポリマー及び副生成物として水をもたらす。各ジオール分子は、2つの−OH基を含む。モノエステル化の間に、各ジオール分子の−OH基のうち1つのみが−COOH基と反応する。理想的には、−COOH基のエステルへの変換率(即ち、エステル収率)はほとんど100%である。しかし、時にはエステル収率は100%未満であり得る。任意の変換されていない−COOH基は、その後のエステル交換反応において、架橋性部位として働いて、モノエステル化ポリイミドポリマー鎖が架橋し得る。
【0021】
さらに、段階(b)において、脱水条件は、モノエステル化ポリイミドポリマーの平均分子量を部分的に保持し、完全に保持し、又は増加さえするように水副生成物を少なくとも部分的に除去する。水副生成物(これは、非常に少量でのみ存在する)の少なくとも部分的な除去は、モノエステル化反応の間の分子量の維持に有意に影響を及ぼすことが驚くべきことに見出されている。いかなる特定の理論にも拘ることは望まないが、水はポリイミドポリマーのイミド環を攻撃し、これは連鎖切断を引き起こす可能性があり、この結果ポリイミドポリマーの平均分子量を低下させるものと考えられる。これらのより低い分子量のポリイミドポリマー鎖は、次いでモノエステル化されて、元のポリイミドポリマーより分子量がより低いモノエステル化ポリイミドポリマーとなる。水除去のないモノエステル化の間に、最大約70%の分子量低下が観察されている。しかし、本明細書に記載のように脱水条件が使用されて、存在する微量の水の少なくとも一部を除去する場合、大幅な分子量低下は観察されず、場合によっては分子量の増加が得られた。
【0022】
モノエステル化の間に生成した微量の水の除去は、モノエステル化反応を部分的に推進し得るが、水の除去が、より少ない分子量低下、分子量の維持又は分子量の増加さえ伴うことは予想外である。
【0023】
モノエステル化反応からの微量の水の除去が、モノエステル化反応又はモノエステル化ポリイミドポリマー生成物になんらかの有意の効果を有することは、予想外で、驚くべきことである。比較的わずかな−COOH基がポリイミドポリマー中に存在し、比較的わずかなOH基がジオール中に存在することから、実際には比較的わずかな量の水が生成される。したがって、当業者は、水の除去は先の反応にわずかな効果しか有さないはずであると期待することになる。その上、きわめてわずかな水副生成物が生成されることから、水の除去が、ポリマー生成物の分子量に、なんらかの、まして測定可能な、効果を有することになることはさらに予想外で、驚くべきことであり、水がモノエステル化ポリイミドポリマー生成物の分子量に影響することは予想外である。
【0024】
図1は、モノエステル化の間の水の除去の効果を図示する。図1は、水の除去を含む、本明細書に記載の方法による高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製されたモノエステル化ポリイミドポリマー鎖を示す。図1はまた、水の除去を含んでいない、従来の方法による低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製されたモノエステル化ポリイミドポリマー鎖を示す。本明細書に記載の方法によって作製されたモノエステル化、ポリイミド鎖は、従来の方法によって作製されたモノエステル化、ポリイミド鎖より長く、より高い平均分子量を有する。
【0025】
発表された文献に記載された低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーに比較して、本明細書に記載の方法によって作製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、改良された機械的特性及び加工適性を有する。このポリマーは、より高い強度及び柔軟性を示し、この結果より速い速度で紡糸することができる。
【0026】
本明細書に記載の架橋膜を作製する方法は、以下の段階:
(a)モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液から、カルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階と;
(b)モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階と;
(c)架橋膜を形成するために、モノエステル化ポリイミドポリマーをエステル交換条件にかける段階とを含み、
脱水条件は、段階(b)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する。
【0027】
一実施形態では、この架橋膜は架橋中空繊維膜である。架橋中空繊維膜は、以下の段階:
(a)モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液から、カルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階と;
(b)モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階と;
(c)モノエステル化ポリイミドポリマーからモノエステル化繊維を形成する段階と;
(d)架橋中空繊維膜を形成するために、モノエステル化繊維をエステル交換条件にかける段階とを含み、
脱水条件は、段階(b)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する
方法によって作製される。
【0028】
上記の段階(a)の間に、モノマーは重合されて、ポリアミドポリマーを形成する。次いで、さらに段階(a)において、イミド化反応を用いてポリアミドポリマーをポリイミドポリマーに変換して、アミド結合をイミド結合に変換する。
【0029】
上記の段階(b)の間に、ポリイミドポリマーは、モノエステル化反応でジオールと反応して、モノエステル化ポリイミドポリマーを形成する。より具体的には、ポリイミドポリマーの−COOH基が各ジオール分子中の−OH基の1つと反応して、モノエステル化ポリイミドポリマー及び水副生成物(これは、モノエステル化反応から少なくとも部分的に及び同時に除去される)をもたらす。水の除去を伴う段階(b)のモノエステル化反応は、水の除去をなにも伴わないモノエステル化反応より高い分子量を有するモノエステル化ポリイミドポリマーを生成する。
【0030】
架橋膜を形成するために、モノエステル化ポリイミドポリマーをエステル交換条件にかける。このモノエステル化ポリイミドポリマーは、エステル基を含む。モノエステル化ポリイミドポリマー鎖中のエステルにおける−OH基は、別のモノエステル化ポリイミドポリマー鎖中のエステルと反応して、トランスエステル又は架橋を形成する。段階(b)の間のエステル収率が100%未満である場合、1つのモノエステル化ポリイミドポリマー鎖のエステルにおける−OH基はさらに、別のモノエステル化ポリイミドポリマー鎖中の変換されていない−COOH基と反応して、架橋を形成する。このようにして、モノエステル化ポリイミドポリマーは架橋されて、架橋膜をもたらす。
【0031】
架橋中空繊維膜において、段階(c)は、モノエステル化繊維を形成し、段階(d)において、架橋中空繊維膜がモノエステル化繊維から形成される。段階(c)において形成されるモノエステル化繊維は、エステル基を含むモノエステル化ポリイミドポリマーを含む。段階(d)において、ある繊維内の1つのモノエステル化ポリイミドポリマー鎖におけるエステル中の−OH基は、同じ繊維内の別のモノエステル化ポリイミドポリマー鎖におけるエステルと反応して、トランスエステル又は架橋を形成する。段階(b)の間のエステル収率が100%未満である場合、ある繊維内の1つのモノエステル化ポリイミドポリマー鎖におけるエステル中の−OH基はまた、同じ繊維内の別のモノエステル化ポリイミドポリマー鎖における変換されていない−COOH基と反応して、架橋を形成する。このようにして、この繊維内のモノエステル化ポリイミドポリマーは、架橋されて、架橋中空繊維膜をもたらす。
【0032】
より低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから形成された膜に比較して、本発明の架橋膜は、改良された分離特性、即ち、透過性及び選択性を有する。この膜は、高圧分離の間の可塑化抵抗性を示す。この膜はまた、それから作製された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのために、高い強度及び柔軟性を示すことができる。
【0033】
図1C及び1Dは、架橋中空繊維膜に関する、段階(b)の間の水の除去の効果を視覚的に例示する。図1Cは、水の除去を伴う、本明細書に記載の方法により作製された架橋高分子量モノエステル化ポリイミドポリマー鎖を示す。図1Dは、水の除去を伴わない、従来の方法により作製された架橋低分子量モノエステル化ポリイミドポリマー鎖を示す。図1Cにおけるポリマー鎖は、図1Dにおけるポリマー鎖より有意に長いことが分かる。したがって、本明細書に記載の方法により作製された架橋中空繊維膜は、以前に作製された架橋中空繊維膜より有意に強い。
【0034】
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製される膜は、当技術分野で既知の任意の形態、例えば、中空繊維、管形状、及びその他の膜の形状をとってもよい。その他の膜の形状には、渦巻き膜、プリーツ膜、フラットシート膜、及び多角形膜が含まれる。本明細書に開示された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、流延してシート又はフィルムを形成してもよい。このシート又はフィルムは、適切な支持体上に流延して、複合材料のシートを提供することができる。このシート及びフィルムは、別のポリマーのシート上に流延することができる。このポリマー支持体は、多孔質及び低コストのポリマーであってもよい。したがって、この多孔質ポリマーは、本明細書に開示された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから形成される多孔性の低いシート又はフィルムのための支持体として使用することができる。
【0035】
定義
以下の用語は、本明細書を通して使用され、別段の指示が無ければ以下の意味を有する。
【0036】
本明細書で使用される場合の「カルボン酸官能基」という用語は、−COOH−の懸垂基を指す。
【0037】
「ジオール」という用語は、2つのヒドロキシル基を含む化合物を指す。
【0038】
「カルボジイミド」という用語は、官能基N=C=Nを含む化合物を意味する。
【0039】
「二無水物」という用語は、2つの無水物基
【化1】


を含む任意の化合物を指す。
【0040】
「ハロゲン化アルキル」という用語は、炭素原子の少なくとも1個がハロゲン原子で置換された、1〜12個の炭素原子の直鎖又は分枝の飽和一価の炭化水素基を意味する(例えば、フルオロメチル、1−ブロモ−エチル、2−クロロペンチル、6−ヨード−ヘキシル等)。
【0041】
「ハロ」又は「ハロゲン化」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素などのハロゲン原子を含む官能基を指す。
【0042】
「フェニル」という用語は、式−Cを有する6個の炭素原子の芳香族基を意味する。
【0043】
「アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子の直鎖又は分枝の飽和一価の炭化水素基を意味する(例えば、メチル、エチル、i−プロピル等)。アルキル基は、式C2n+1(式中、nは、プラスの非0の整数である)を有する。
【0044】
「ジアミノ環式化合物」という用語は、2つのアミノ基又は置換されたアミノ基で官能化された、3〜12個の炭素原子の環構造を有する化合物を意味する。
【0045】
「アミノ」という用語は、式−NR’R”(式中、R’及びR”は、独立に、H、アルキル、シクロアルキル、及びアリールである)を有する官能基を意味する。
【0046】
「シクロアルキル」という用語は、単環又は複数の縮合環を有する、3〜12個の炭素原子を含む環状飽和一価の炭化水素基を意味する。このようなシクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンタニル等が含まれる。
【0047】
「脂肪族」という用語は、炭素原子が、直鎖又は分枝鎖で一緒に結合した、非芳香族有機化合物を指す。脂肪族には、パラフィン化合物(例えば、アルキル)、オレフィン化合物(例えば、アルケニル)、アルキニル化合物が含まれる。
【0048】
「反リオトロピック塩」という用語は、ポリマー分子とではなく、溶媒分子と相互作用する塩を指す。
【0049】
「アミド」という用語は、窒素原子に結合したカルボニル基(C=O)を有する官能基又はこの官能基を含む化合物を意味する。
【0050】
「エステル」という用語は、アルコキシ基に結合したカルボニル基(C=O)を有する官能基を意味する。
【0051】
「アルコキシ」という用語は、例えば、メトキシ(−OCH)又はエトキシ(−OCHCH)などの、酸素に結合したアルキル基を指す。
【0052】
「アリール」という用語は、単環(例えば、フェニル)又は複数の縮合(condenced、fused)環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する、6〜20個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式基を指す。例示的なアリールには、フェニル、ナフチル等が含まれる。
【0053】
「アルケニル」という用語は、2〜12個の炭素原子を有し、少なくとも1個、例えば、1〜3個の二重結合(単数又は複数)を含む、直鎖又は分枝の不飽和一価炭化水素基を指す。この用語は、エテニル(−CH=CH)、2−プロペニル(−CH−CH=CH)等の基で例示される。
【0054】
「アルキニル」という用語は、2〜12個の炭素原子を有し、少なくとも1個、例えば、1〜3個の三重結合(単数又は複数)を含む、直鎖又は分枝の一価炭化水素基を指す。この用語は、エチニル(−C≡CH)、2−プロピニル(−CH−C≡CH)、n−ブチニル(−CH−CH−C≡CH)等の基で例示される。
【0055】
本明細書で使用される場合の「低下させる(reduce)」という用語は、減少させる(decrease)又は減少させる(diminish)を意味する。
【0056】
本明細書で使用されるときはいつでも、「分子量」又は「平均分子量」という用語は、標準物質としてポリスチレンを用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量を意味する。この方法は、ASTM D5296−05に記載されている。
【0057】
「延伸倍率」とは、押出し速度に対する巻取り速度の比を意味する。
【0058】
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法
段階(a)−重合反応及びイミド化反応
上述の通り、段階(a)は、モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液からカルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階を含む。モノマー及び少なくとも1種の溶媒は、モノマーが溶媒中に溶解して、反応溶液を形成するように組み合わされる。その後、モノマーは、アミド結合の形成を介して重合して、ポリアミドポリマーをもたらす。次いで、ポリアミドポリマーをイミド化条件にかけ、これによってアミド結合はイミド環に変換されて、ポリイミドポリマーをもたらす。
【0059】
段階(a)のイミド化反応は、さらに、脱水条件下で行ってもよい。このイミド化反応の間に副生成物として水が生成される。このような脱水条件は、反応溶液からこの水副生成物を少なくとも部分的に除去する。イミド化反応の間に生成した水は、その後のモノエステル化反応の間に、ポリイミドポリマーのイミド環を分解する可能性があることから、段階(a)において水を除去することが望ましい。この残留するイミド化の水はまた、モノエステル化反応の間に生成された水として、ポリイミドポリマーの連鎖切断を引き起こす可能性がある。従来の方法と同様に、このポリイミドポリマーを反応溶液から沈殿して、次いでモノエステル化にかけてもよいが、段階(a)において脱水条件を含むことは、このような沈殿の段階を不必要にすることができ、全体の反応が「ワンポット」合成であることができる。
【0060】
モノマー
このモノマーは、反応溶液の約15から約25重量%の間を占め得る。
【0061】
得られたポリイミドポリマーがカルボン酸官能基を含むように、このモノマーの少なくともいくつかは、カルボン酸官能基を含むことが重要である。モノマーは、二無水物、テトラカルボン酸、及びフランジオンを含むことができる。このモノマーは、ジアミノ環式化合物及びジアミノ芳香族などのジアミノ化合物をさらに含むことができる。このようなジアミノ芳香族は複数の芳香環を有し、アミノ基は同じか又は異なる芳香環上であってもよい。
【0062】
例えば、このモノマーは、モノマーA、B、及びCを含むことができ、ここで
Aは、式(I)の二無水物であり、
【化2】


[X及びXは、独立にハロゲン化アルキル、フェニル又はハロゲンから選択され、
、R、R、R、R、及びRは、H、アルキル、又はハロゲンである]
Bは、カルボン酸官能基を有さないジアミノ環式化合物であり、
Cは、カルボン酸官能基を有するジアミノ環式化合物である。
このモノマーが、モノマーA、B、及びCを含む場合、B対Cの割合は、1:4から8:1の間であり得る。
【0063】
モノマーAは、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)であり得て、これは(2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンとしても知られている。6FDAは以下の式
【化3】


を有する。6FDAは、限られた回転能を有することから、モノマー中に6FDAを含むことは、ポリイミドポリマーに安定性をもたらす。
【0064】
6FDAのような、限られた回転能を有するモノマーは、本明細書に開示された方法により作製される膜の選択性を増大させることから望ましい。6FDA中の(CFのような、かさ高な側鎖基を有するモノマーはまた、鎖充填を抑制し、これは膜を通る分子の透過性を増大する。効率的及び生産的な分離のためには、選択性及び透過性の両方が重要である。これらの構造特性の関係へのさらなる参照が、Koros及びFleming、Journal of Membrane Science、83、1〜80(1993)(その全体を参照により本明細書に援用する)に記載されている。
【0065】
モノマーB、カルボン酸官能基を有さないジアミノ環式化合物は、複数の芳香環を有し、アミノ基が同じ又は異なる芳香環上にあるジアミノ芳香族化合物であり得る。例えば、モノマーBは、4,4’−イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジアニリン、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリエンジアニリン、4,4’−オキシジアニリン、3、3’−オキシジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニル、ジアミノトルエン、ジアミンベンゾトリフルオライド、ジメチルジアミノベンゼン、トリメチルジアミノベンゼン、又はテトラメチルジアミノベンゼンであってもよい。モノマーBは、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミン(DAM)であってもよく、これは、以下の式
【化4】


で表される。
【0066】
モノマーC、カルボン酸官能基を有するジアミノ環式化合物は、ジアミノ安息香酸であってもよい。これは、以下の式
【化5】


で表される。より特定すれば、モノマーCは、3,5−ジアミノ安息香酸(DABA)であってもよい。
【0067】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、このモノマーは、A、B、及びCを含み、ここで、Aは6FDAであり、BはDAMであり、CはDABAである。この実施形態では、モノマー混合物の6FDA含量は、約50%であり、残存する約50%のモノマー混合物は、DAM及びDABAを含む。DABA含量は、残存する約50重量%の約20%から約100%の間である。例えば、モノマー混合物の6FDA含量は、約50%であり得て、残存する約50%は、DABA約40%及びDAM約60%であり得る。6FDA、DAM、及びDABAがこうした化学量論濃度で存在する場合、段階(a)において形成されるポリイミドポリマーは、式(II)
【化6】


で表される。
【0068】
本明細書に記載の方法の別の実施形態では、このモノマーは、A、B、及びCを含み、ここで、Aは6FDAであり、BはDAMであり、CはDABA及び1種又は複数の追加の二無水物である。
【0069】
いずれかのモノマーが使用される場合、本明細書に記載の方法のある実施形態によれば、これらを段階(a)に先立って精製してもよい。このモノマーは、当技術分野で既知の技術、例えば、昇華又は再結晶によって精製してもよい。
【0070】
溶媒
モノマーを少なくとも1種の溶媒に溶解して、反応溶液を生じさせ、重合を容易にする。得られたポリアミドポリマーは、イミド化のための反応溶液中に残存する。少なくとも1種の溶媒は、反応溶液の約75から約95重量%の間であり得る。少なくとも1種の溶媒は、少なくとも1種の高沸点有機溶媒であり得る。この溶媒は、有機溶媒の混合物であってもよい。例示的な高沸点有機溶媒をその標準沸点と共に表1に挙げる。
【表1】


したがって、この反応溶液の溶媒は、上に挙げた有機溶媒の任意の1つ又はこれらの混合物であってもよい。高沸点溶媒は、反応溶液の濃度及びその後の処理の間の濃度を有意に変化させることになる過剰な蒸発を防止することから、高沸点溶媒が望ましい。
【0071】
脱水条件
水を除去するために、段階(a)の間に脱水条件を使用する場合、反応溶液中の水の濃度は約0重量%から約0.26重量%の間に維持し得る。
【0072】
脱水条件は、化学的脱水剤及び/又は物理的脱水剤が存在することであってもよい。脱水条件は、化学的脱水剤のみ、物理的脱水剤のみ、又は化学的脱水剤と物理的脱水剤の組合せが存在することであってもよい。
【0073】
化学的脱水剤が使用される場合、化学的脱水剤は、段階(a)のイミド化反応を妨害しない。例えば、化学的脱水剤は、イミド化反応速度を低下させず又はモノエステル化ポリイミドポリマーの収率を低下させない。化学的脱水剤は、水と共沸混合物を形成することができ、これは、沸騰して反応溶液から取り除くことが可能である。このような共沸化学的脱水剤は、当業者にはよく知られている。例示的な共沸化学的脱水剤には、オルトジクロロベンゼン(ODCB)、ベンゼン、トルエン、及びこれらの混合物が含まれる。或いは、化学的脱水剤はカルボジイミドであってもよい。
【0074】
化学的脱水剤として共沸化学的脱水剤が使用される場合、これは、比較的多量、例えば、ポリアミドポリマーの1g当たり約1mlから約4mlの間で使用してもよい。このような多量の共沸化学的脱水剤は、イミド化反応で生成された水を反応溶液から除去することを確実にする。
【0075】
化学的脱水剤としてカルボジイミドが使用される場合、これは、除去される水のモルに対する化学量論量の約1から約4倍の量で使用してもよい。
【0076】
化学的脱水剤は、段階(a)全体にわたり反応溶液に定期的に添加することもできる。例えば、ODCBを定期的に添加することができる。本明細書に記載の方法の一実施形態によれば、化学的脱水剤は、反応溶液に3つの別個のバッチで添加される。
【0077】
物理的脱水剤が使用される場合、物理的脱水剤は、水を除去するように設計された物理的な系である。例示的な物理的脱水剤は、Dean−Starkトラップである。Dean−Starkトラップは当業者にはよく知られている。反応溶液から蒸留された水が、反応溶液に戻ることを防止する任意の物理的な系は適切であり得る。
【0078】
重合条件
段階(a)の重合反応において、モノマーが反応溶液中で重合して、ポリアミドポリマーを形成する。重合は、反応溶液を撹拌するかさもなければ激しく撹拌しながら、室温で実施することができる。重合の間の溶媒濃度は、反応溶液の約75から約95重量%の間である。
【0079】
イミド化条件
段階(a)のイミド化反応において、ポリアミドポリマーのアミド結合は、イミド環を形成して、ポリイミドポリマーをもたらす。段階(a)におけるイミド化反応は、長時間、およそ12〜36時間にわたって実施する。このような長時間は、イミド化反応が完了まで進行することを確実にし、これはポリイミドポリマーの収率に関して重要である。イミド化反応は、約160℃から約200℃の間の温度で実施することができる。イミド化の間の溶媒濃度は、反応溶液の約75から約95重量%の間である。
【0080】
段階(b)−モノエステル化反応
段階(b)は、モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階を含む。したがって、段階(b)の間、ポリイミドポリマーをモノエステル化にかける。段階(a)のイミド化反応が完了した後、この反応溶液は、ポリイミドポリマー、少なくとも1種の溶媒、及び任意の未反応モノマーを含む。ジオールを架橋剤として反応溶液に直接添加して、モノエステル化反応溶液を形成することができる。したがって、段階(a)のイミド化反応及び段階(b)のモノエステル化反応の両方は、1つの反応容器中又は「ワンポット」で実施することができる。或いは、段階(a)のイミド化反応及び段階(b)のモノエステル化反応が別個の反応容器中で実施されるように、ポリイミドポリマーを単離し、次いでジオールと化合させてモノエステル化反応溶液を形成してもよい。
【0081】
図2はモノエステル化反応を概略的に図示する。上で説明したように、モノエステル化反応は、−COOH基をエステルに変換するために、ジオール分子中のOH基の1つが、ポリイミドポリマーの−COOH基と反応する段階を含み、モノエステル化ポリイミドポリマーをもたらす。モノエステル化の間に、副生成物として水がまた生成される。重要なことには、本明細書に記載の方法では、水の少なくとも一部は、脱水条件によってモノエステル化反応溶液から除去される。
【0082】
モノエステル化反応を促進するために、ジオールと共に酸触媒を反応溶液に添加してもよい。
【0083】
段階(b)で製造されたモノエステル化ポリイミドポリマーは、約80,000から220,000の間の平均分子量を有し得る。一実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約100,000から約200,000の間の平均分子量を有する。別の実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約125,000から約200,000の間の平均分子量を有する。モノエステル化ポリイミドポリマーはまた、約2から約4の間の多分散指数を有し得る。
【0084】
ジオール
本発明の方法において、ジオールの長さは、重要な考慮すべき事項である。ジオールが長すぎる又は短すぎる場合、モノエステル化ポリイミドポリマーから形成された膜の透過性及び/又は選択性が低下する可能性がある。
【0085】
本明細書に記載の方法で有用なジオールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ベンゼンジメタノール、1,3−ブタンジオール、及びこれらの混合物が含まれる。本明細書に記載の方法の一実施形態では、ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ベンゼンジメタノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、ジオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、ジオールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。さらに別の実施形態では、ジオールは1,3−プロパンジオールである。
【0086】
脱水条件
段階(a)の任意選択の脱水条件と同様に、段階(b)の脱水条件は、化学的脱水剤及び/又は物理的脱水剤の結果生じてもよい。したがって、脱水条件は、化学的脱水剤のみ、物理的脱水剤のみ、又は化学的脱水剤と物理的脱水剤の組合せであってもよい。化学的であろうと又は物理的であろうと、脱水条件は、モノエステル化反応溶液中の水の濃度を約0重量%から約0.08重量%の間に維持するように、段階(b)の間に生成した水をモノエステル化反応溶液から除去することが望ましい。
【0087】
化学的脱水剤が使用される場合、化学的脱水剤は、段階(b)のモノエステル化反応を妨害しない。例えば、化学的脱水剤は、モノエステル化反応速度を低下させず又はモノエステル化ポリイミドポリマーの収率を低下させない。化学的脱水剤は、共沸化学的脱水剤であってもよく又はカルボジイミドであってもよい。共沸化学的脱水剤は、水副生成物と共に共沸混合物を形成し、水副生成物は、沸騰してモノエステル化反応溶液から取り除くことが可能である。このような共沸化学的脱水剤は、当業者にはよく知られており、ODCB、ベンゼン、トルエン、及びこれらの混合物が含まれる。
【0088】
カルボジイミドは、ポリイミドポリマーのカルボン酸官能基をエステル形成の方へ活性化することによってモノエステル化反応に関与して、同時に水副生成物を除去することによって化学的脱水剤としての機能を果たす。このカルボジイミド脱水反応メカニズムを以下に示す。
【化7】

【0089】
化学的脱水剤として共沸化学的脱水剤が使用される場合、比較的多量、例えば、ポリイミドポリマー1グラム当たり約1mlから約4mlの間で使用してもよい。このような多量の共沸化学的脱水剤は、モノエステル化反応で生成した水をモノエステル化反応溶液から除去することを確実にする。
【0090】
化学的脱水剤としてカルボジイミドが使用される場合、これは、除去する水のモルに対する化学量論量の約1から約4倍の間の量で使用してもよい。
【0091】
化学的脱水剤は、段階(b)全体にわたりモノエステル化反応溶液に定期的に添加することもできる。例えば、ODCBを定期的に添加することができる。本明細書に記載の方法の一実施形態によれば、化学的脱水剤は、モノエステル化反応溶液に3つの別個のバッチで添加される。
【0092】
段階(a)と同様に、物理的脱水剤は、水を除去するように設計された物理的な系である。例示的な物理的脱水剤は、Dean−Starkトラップである。Dean−Starkトラップは、当業者にはよく知られている。モノエステル化反応溶液から蒸留された水が、モノエステル化反応溶液に戻ることを防止する任意の物理的な系は適切である。
【0093】
段階(a)で脱水条件が使用される場合、段階(b)の脱水条件は、段階(a)の脱水条件と同じであってもよい。実際、本明細書に記載の方法を全体的に単純化することから、脱水条件が同じであることが望ましい。従来の重合/イミド化/モノエステル化反応の方法では、ポリイミドポリマーを反応溶液から沈殿させる。しかし、モノエステル化の間に同じ脱水条件が使用される場合、この余分な沈殿段階は不要になる。さらに、段階(a)のイミド化反応から残存する脱水条件は、段階(b)のモノエステル化反応で使用することができる。
【0094】
酸触媒
モノエステル化反応で有用な酸触媒は、当業者にはよく知られている。酸触媒は、ポリイミドポリマーのカルボキシル官能基を、ジオールのヒドロキシル基と反応するように活性化する。酸触媒は、カルボキシル官能基活性剤として酸クロライドに置き換える。カルボキシル官能基活性剤としての酸クロライドの使用は、米国特許第6,755,900号(その全体を参照により本明細書に援用する)の例1に説明されている。例示的な酸触媒には、p−トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフル酸、及びこれらの混合物が含まれる。使用される脱水条件がカルボジイミドを含む場合、ポリイミドポリマーのカルボキシル官能基は、カルボジイミドによって活性化されることから、酸触媒は必要ではない可能性もある。
【0095】
脱水条件のモノエステル化反応の間に存在する酸触媒の量はまた、モノエステル化ポリイミドポリマーの平均分子量に影響することが見出されている。より詳細には、使用される酸触媒の量が、従来の量未満であり、脱水条件が存在する場合、有意に分子量低下が少なく、分子量低下がなく、又は分子量増加さえ起こることが見出されている。いかなる特定の理論にも拘ることは望まないが、過剰な酸触媒は、ポリイミドポリマーのイミド環の分解を増大させ、これは、望ましくない連鎖切断及び平均分子量の低下を引き起こすものと考えられる。本明細書に記載の方法でDABAモノマーが使用される場合、酸触媒の量は、従来の量からさらに減少させてもよい。これは、DABAモノマーが本質的に酸性であるという事実に起因する。
【0096】
望ましくない分子量低下を受けずに、ポリイミドポリマー1g当たり約0ミリグラムから約0.25ミリグラムの間の酸触媒をモノエステル化反応溶液に添加することができる。
【0097】
モノエステル化条件
触媒の存在下又は非存在下のモノエステル化反応溶液を比較的高温まで長時間にわたって加熱する。一般に、モノエステル化反応溶液を、約120℃から約140℃の間の温度でおよそ12〜30時間加熱する。
【0098】
小(容量)規模の反応では、反応容器の表面積対容量比がより高いことから、その脱水条件は大(容量)規模の反応より容易に水を除去することができる。このようなより高い比は、水の沸騰を促進する。
【0099】
大(容量)規模の反応では、段階(a)のイミド化反応及び段階(b)のモノエステル化反応の両方が、同じ反応容器中で実施されることが有利である。この場合、イミド化反応から残存する任意の脱水条件は、次いでモノエステル化反応の間に容易に使用される。
【0100】
架橋膜を作製する方法
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製される膜は、当技術分野で既知の任意の形態、例えば、中空繊維、管形状、及びその他の膜の形状をとってもよい。その他の膜の形状には、渦巻き膜、プリーツ膜、フラットシート膜、及び多角形膜が含まれる。本明細書に開示された高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを流延してシート又はフィルムを形成してもよい。
【0101】
段階(a)及び(b)
段階(a)−重合反応及びイミド化反応
段階(a)は、モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液からカルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階を含む。モノマー及び少なくとも1種の溶媒は、モノマーが溶媒に溶解して、反応溶液を形成するように組み合わされる。その後、モノマーはアミド結合の形成を介して重合して、ポリアミドポリマーをもたらす。次いで、ポリアミドポリマーを条件にかけ、これによってアミド結合はイミド環を形成して、ポリイミドポリマーをもたらす。
【0102】
段階(a)を脱水条件下でさらに実施してもよい。イミド化反応の間に副生成物として水が生成される。このような脱水条件は、反応溶液からこの水副生成物を少なくとも部分的に除去する。イミド化反応の間に生成した水は、その後のモノエステル化反応の間にポリイミドポリマーのイミド環を分解する可能性があることから、段階(a)において水を除去することが望ましい。この残留するイミド化の水は、モノエステル化反応の間に生成された水として、ポリイミドポリマーの連鎖切断を引き起こす可能性がある。従来の方法と同様に、このポリイミドポリマーを反応溶液から沈殿して、次いでモノエステル化にかけてもよいが、段階(a)において脱水条件を含むことは、このような沈殿の段階を不必要にすることができ、全体の反応が「ワンポット」合成であることができる。
【0103】
段階(b)−モノエステル化反応
段階(b)は、モノエステル化ポリイミドポリマーを形成するために、脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理する段階を含む。したがって、段階(b)の間に、ポリイミドポリマーをモノエステル化にかける。段階(a)のイミド化反応が完了した後、この反応溶液は、ポリイミドポリマー、少なくとも1種の溶媒、及び任意の未反応モノマーを含む。ジオールを、架橋剤として反応溶液に直接添加して、モノエステル化反応溶液を形成することができる。したがって、段階(a)のイミド化反応及び段階(b)のモノエステル化反応の両方は、1つの反応容器又は「ワンポット」で実施することができる。或いは、段階(a)のイミド化反応及び段階(b)のモノエステル化反応が別個の反応容器中で実施されるように、ポリイミドポリマーを単離し、次いでジオールと化合させてモノエステル化反応溶液を形成してもよい。
【0104】
モノエステル化の間に、副生成物として水がまた生成される。重要なことには、本明細書に記載の方法では、水が脱水条件によってモノエステル化反応溶液から除去される。
【0105】
モノエステル化反応を促進するために、ジオールと共に酸触媒を反応溶液に添加してもよい。
【0106】
段階(b)で製造されたモノエステル化ポリイミドポリマーは、約80,000から約220,000の間の平均分子量を有し得る。一実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約100,000から約200,000の間の平均分子量を有する。別の実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約125,000から約200,000の間の平均分子量を有する。モノエステル化ポリイミドポリマーはまた、約2から約4の間の多分散指数を有し得る。
【0107】
脱水条件
水を除去するために、段階(a)の間に脱水条件を使用する場合、反応溶液中の水の濃度は、約0重量%から約0.26重量%の間に維持し得る。段階(b)の脱水条件のために、モノエステル化反応溶液中の水の濃度は、約0重量%から約0.08重量%の間に維持し得る。
【0108】
脱水条件は、化学的脱水剤及び/又は物理的脱水剤が存在することであってもよい。脱水条件は、化学的脱水剤のみ、物理的脱水剤のみ、又は化学的脱水剤及び物理的脱水剤の組合せが存在することであってもよい。
【0109】
化学的脱水剤が使用される場合、化学的脱水剤は、段階(a)のイミド化反応又は段階(b)のモノエステル化反応を妨害しない。例えば、化学的脱水剤は、イミド化反応速度又はモノエステル化反応速度を低下させず、ポリイミドポリマーの収率又はモノエステル化ポリイミドポリマーの収率を低下させない。化学的脱水剤は、水と共に共沸混合物を形成することができ、これは、沸騰して反応溶液から取り除くことが可能である。このような共沸化学的脱水剤は、当業者にはよく知られている。例示的な共沸化学的脱水剤には、オルトジクロロベンゼン(ODCB)、ベンゼン、トルエン、及びこれらの混合物がある。或いは、化学的脱水剤はカルボジイミドであってもよく、これは、モノエステル化反応に関与し、同時に水副生成物を本質的に除去する。
【0110】
化学的脱水剤として共沸化学的脱水剤が使用される場合、比較的多量、例えば、ポリアミドポリマー又はポリイミドポリマー1g当たり約1mlから約4mの間で使用してもよい。このような多量の共沸化学的脱水剤は、イミド化反応及び/又はモノエステル化反応で生成された水が除去されることを確実にする。
【0111】
化学的脱水剤は、段階(a)全体にわたり反応溶液に、及び/又は段階(b)全体にわたりモノエステル化反応溶液に定期的に添加することもできる。例えば、ODCBを定期的に添加することができる。本明細書に記載の方法の一実施形態によれば、化学的脱水剤は、反応溶液に3つの別個のバッチで添加され、及び/又は化学的脱水剤は、モノエステル化反応溶液に3つの別個のバッチで添加される。
【0112】
物理的脱水剤は、水を除去するように設計された物理的な系である。例示的な物理的脱水剤は、Dean−Starkトラップである。Dean−Starkトラップは、当業者にはよく知られている。反応溶液及び/又はモノエステル化反応溶液から蒸留された水が、それぞれ、反応溶液及び/又はモノエステル化反応溶液に戻ることを防止する任意の物理的な系は適切である。
【0113】
段階(a)で脱水条件が使用される場合、段階(b)の脱水条件は、段階(a)の脱水条件と同じであってもよい。実際、本明細書に記載の方法を全体的に単純化することから、脱水条件が同じであることが望ましい。従来の重合/イミド化/モノエステル化反応の方法では、ポリイミドポリマーを反応溶液から沈殿させる。しかし、モノエステル化の間に同じ脱水条件が使用される場合、この余分な沈殿段階は不要になる。さらに、段階(a)のイミド化反応から残存する脱水条件は、段階(b)のモノエステル化反応で使用することができる。
【0114】
架橋中空繊維膜:モノエステル化繊維の形成
架橋中空繊維膜を形成する方法では、段階(c)は、モノエステル化ポリイミドポリマーからモノエステル化中空繊維を形成する段階を含む。このモノエステル化ポリイミドポリマーは、高い平均分子量を有することから、このようなポリマーから形成されたモノエステル化中空繊維は、高い強度及び柔軟性を示す。モノエステル化ポリイミドポリマーが、モノエステル化中空繊維に紡糸される場合、このような高い強度及び柔軟性は、ポリマーをより速い巻取り速度で紡糸することを可能にする。
【0115】
このようなモノエステル化中空繊維を作製するために、モノエステル化ポリイミドポリマーを紡糸液に取り込むことができ、ドープは、ウエットクエンチ/ドライジェット紡糸法などの紡糸法を用いてモノエステル化中空繊維に紡糸される。以下に、ウエットクエンチ/ドライジェット紡糸法を詳細に論じるが、モノエステル化中空繊維を形成するために、他のタイプの紡糸方法(例えば湿式紡糸)を使用してもよいことが理解されよう。
【0116】
本明細書に記載のように、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製される膜は、中空繊維、管形状、及びその他の膜の形状を含む当技術分野で既知の任意の形態をとってもよい。したがって、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを流延して、シート又はフィルムを形成してもよい。シート又はフィルムを適した支持体上に流延して、複合材料のシートを提供してもよい。シート及びフィルムを別のポリマーのシート上に流延してもよい。このポリマー支持体は、多孔質及び低コストのポリマーであってもよい。したがって、この多孔質ポリマーは、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから形成される多孔性の低いシート又はフィルムのための支持体として使用することができる。
【0117】
モノエステル化中空繊維を形成するための紡糸液
この紡糸液は、均一な単相の溶液であり、モノエステル化ポリイミドポリマー、揮発性成分、任意選択の無機添加剤、紡糸溶媒、及び紡糸非溶媒を含み得る。
【0118】
ポリマー濃度は重要問題である。強い繊維及び高圧に耐えることが可能な膜を形成するためには、十分なポリマーが存在しなければならない。しかし、過剰なポリマーは、膜の下部構造中の抵抗を増大させ、膜性能に悪影響を及ぼす。本明細書に記載の方法の一実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約20から約50重量%の間の量で紡糸液中に存在する。別の実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約25から約45重量%の間の量で紡糸液中に存在する。さらに別の実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーは、約30から約40重量%の間の量で紡糸液中に存在する。
【0119】
揮発性成分は、特定の室温蒸気圧及び特定の沸点を有する有機溶媒であり得る。このような有機溶媒は、中空繊維の高密度な被膜分離層の形成に役立つ。このような有機溶媒は、ウエットクエンチ/ドライジェット紡糸法のドライジェット段階の間に効果的に及び効率的に蒸発し、初期の繊維の外側上の蒸発は、ポリマー鎖をより絡み合い及び高濃度に維持するのに役立ち、これはガラス化及び高密度な被膜の形成を促進するものと考えられる。この有機溶媒の特定の室温蒸気圧は、約0.05バールを超え得る。或いは、特定の室温蒸気圧は、約0.1バールを超え得る。別法として、特定の室温蒸気圧は、約0.2バールを超え得る。この有機溶媒の特定の沸点は、約30℃から約100℃の間であり得る。或いは、特定の沸点は、約40℃から約90℃の間であり得る。別法として、特定の沸点は、約50℃から約70℃の間であり得る。
【0120】
例示的な有機溶媒には、テトラヒドロフラン(THF)及びアセトンが含まれる。本明細書に記載の方法の一実施形態では、揮発性成分は、約5から約25重量%の間の量で紡糸液中に存在する。別の実施形態では、揮発性成分は、約5から約20重量%の間の量で紡糸液中に存在する。さらに別の実施形態では、揮発性成分は、約10から約15重量%の間の量で紡糸液中に存在する。
【0121】
任意選択の無機添加剤は、相分離を促進し、下部構造の多孔性を増加させ、紡糸液の粘度を増加させ得る。このモノエステル化ポリイミドポリマーは、多量のカルボキシル官能基を有するので、紡糸法に使用される大部分の従来のポリマーより親水性が高い。したがって、モノエステル化ポリイミドポリマーは、ウエットクエンチ段階の間にモノエステル化ポリイミドポリマーが分離するのにより長い時間がかかる。任意選択の無機添加剤は、モノエステル化ポリイミドポリマーの相分離に必要な時間を短縮する。
【0122】
任意選択の無機添加剤は、反リオトロピック塩であってもよい。本明細書で定義される場合の「反リオトロピック塩」という用語は、ポリマー分子とではなく、溶媒分子と相互作用する塩を指す。Ekiner O.M.ら、Journal of Membrane Science 53(1990)259〜273を参照されたい。例示的な反リオトロピック塩には、LiNO、LiClO、MgCl、ZnCl、及びNaIが含まれる。
【0123】
無機添加剤の濃度はまた、重要問題である。無機添加剤は、相分離に要する時間を短縮することができるが、過剰な無機添加剤(例えば、LiNO)は、小孔が中空繊維の非ガラス化被膜層中に延びている場合、欠陥形成を引き起こす可能性があるものと考えられる。本明細書に記載の方法の一実施形態では、紡糸液中の反リオトロピック塩の濃度は、約0から約10重量%の間である。別の実施形態では、紡糸液中の反リオトロピック塩の濃度は、約2から約8重量%の間である。さらに別の実施形態では、紡糸液中の反リオトロピック塩の濃度は、約4から約7重量%の間である。
【0124】
紡糸溶媒は、高沸点有機溶媒であり得る。例示的な高沸点有機溶媒は、上記の表1にその標準沸点と共に挙げてある。水に対して高親和性を有する高沸点有機溶媒は、この紡糸法のウエットクエンチ段階で、中空繊維の相分離を促進することができる。NMPは、紡糸に使用される多くのポリマーを溶解し、他の紡糸溶媒に比較して比較的害がなく、水に対して高親和性を有することから特に望ましい紡糸溶媒である。紡糸溶媒の濃度は、モノエステル化ポリイミドポリマーの分子量モノエステル化ポリイミドポリマーの多分散指数、及び紡糸液の他の成分を含む多くの要素に依存し得て、以下に論じる沈殿方法によって決定することができる。
【0125】
紡糸非溶媒は、脂肪族アルコールなどのアルコール、又は水であってもよい。本明細書に記載の方法の一実施形態では、紡糸非溶媒は、より低沸点の脂肪族アルコール、例えば、メタノール又はエタノールのような脂肪族アルコールである。メタノール及びエタノールの標準沸点は、それぞれ64.7℃及び78.4℃である。いくつかの紡糸非溶媒(例えば、エタノール)も、追加の揮発性成分としての機能を果たし得る。紡糸非溶媒の濃度は、紡糸溶媒濃度に直接依存し、以下に論じる沈殿方法によって決定することもできる。
【0126】
紡糸溶媒及び紡糸非溶媒の濃度は、紡糸溶媒及び紡糸非溶媒の濃度が、モノエステル化ポリイミドポリマー、揮発性成分、及び任意選択の無機添加剤のそれぞれの濃度に依存する反復沈殿方法によって決定することができる。このような沈殿方法は、この紡糸液は均一な単相の溶液であるが、ウエットクエンチ段階の間の相分離時間を短縮するために、沈殿点に依然近いことを確実にする。
【0127】
この沈殿方法によれば、モノエステル化ポリイミドポリマー、揮発性成分、及び任意選択の無機添加剤の濃度が設定される。次いで、紡糸溶媒及び紡糸非溶媒の初期濃度が選択される。これらの濃度における成分を小さな試料バイアル中で混合する。先ず、揮発性成分、紡糸溶媒、及び紡糸非溶媒を混合して溶液を形成する。次に、任意選択の無機添加剤をこの溶液に添加する。任意選択の無機添加剤が溶液に溶解した後、モノエステル化ポリイミドポリマーをこの溶液に添加して、紡糸液試料を提供する。溶液全体にわたるポリマーの分散を容易にするために、ポリマーを複数のバッチで添加してもよい。ポリマーが沈殿した場合、紡糸溶媒濃度を約0重量%から約5重量%の間ならどこでも、最終紡糸溶媒濃度に到達するように増加させる。紡糸非溶媒濃度を同様に、最終紡糸非溶媒濃度に到達するように減少させる。ポリマーが沈殿しない場合、紡糸溶媒及び/又は紡糸非溶媒の濃度を変えて、沈殿試験を反復する。沈殿点に近い均一な単相の紡糸液を提供する最終濃度が得られるまで反復する。
【0128】
こうした最終濃度に従って、より多量の紡糸液を調製することができる。沈殿点は、ポリマーの構造及び/又は平均分子量が変化するにつれて変化する可能性があることから、紡糸液の任意のバッチを紡糸する前に、紡糸液の少量の試料量でこの沈殿方法を実施することが有利である。
【0129】
モノエステル化中空繊維を形成するためのドライジェット/ウエットクエンチ紡糸法
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを中空繊維に紡糸するために、ドライジェット/ウエットクエンチ紡糸法が使用される場合、いくつかの利点を実現することができる。第1に、中空繊維は、より早い巻取り速度で紡糸することができる。第2に、ドライジェットの段階は、鎖の絡み合いを増大させ得て、これは、仮説上は中空繊維上に被膜を形成する。第3に、高分子量ポリマーは、ドープ粘度を増加させることができ、これは、紡糸液を高いドープ温度で紡糸することを可能にする。このような高いドープ温度は、蒸発による被膜形成のために必要とされる。
【0130】
ドライジェット/ウエットクエンチ紡糸法は、当技術分野で周知されている。通常、ドライジェット/ウエットクエンチ紡糸法では、ポリマーを含む紡糸液は、紡糸口金のオリフィスを介してフィラメントに押し出され、紡糸口金は、気体層又は非凝固液体によって凝固浴から分離されている。フィラメントを空気などの気体層、又はトルエン若しくはヘプタンなどの非凝固液体中を通過させ、次いで凝固浴中へ送られる。気体層中のフィラメントの搬送は、一般にドライジェットの段階と称される。凝固浴は、純水などの水性系、又はメタノールなどの非水性系であってもよい。凝固浴中のフィラメントの搬送は、一般にウエットクエンチの段階と称される。フィラメントが凝固浴を出た後、これらを洗浄してもよい。この凝固浴が任意の酸を含む場合、洗浄は特に重要であり、水単独で又はアルカリ性溶液と水の組合せで達成することができる。フィラメントを乾燥し、回転ドラムで巻き取る。フィラメントをドラム上で空気乾燥させてもよく、又はドラムを加熱して乾燥を促進させてもよい。
【0131】
本明細書に記載の架橋中空繊維膜を作製する方法の実施形態によれば、モノエステル化ポリイミドポリマーを紡糸口金のオリフィスを介して押し出して、中空繊維を提供する。この中空繊維は、空気の気体層中及び脱イオン水の凝固浴中を搬送される。この繊維は、脱イオン水浴から出て、巻取りドラムに巻き取られる。
【0132】
繊維を湿潤に保つために、巻取りドラムを室温の脱イオン水の容器中に一部を入れてもよい。繊維を巻取りドラム上で約10分間から約20分間の間放置し、次いで、ストランドに切断し、別の脱イオン水浴の中に約2日から約3日の間放置してもよい。脱イオン水浴は、繊維から溶媒を除去するのに役立つ。次いで、表面張力を低下させる非溶媒、例えば、エタノール及びヘキサンによる流体交換によってこの繊維を脱水することができる。最終的には、繊維を空気乾燥し及び/又はオーブン乾燥してもよい。
【0133】
本明細書に記載の方法によれば、紡糸口金オリフィスは、従来の紡糸法で使用されるものより小さな寸法を有してもよい。より小さな紡糸口金の寸法は、中空繊維を高圧条件下で使用することができる膜を作製するのに有用な繊維に通常の条件下で紡糸するのを可能にする(即ち、300ミクロン未満の直径を有する繊維)。より小さな紡糸口金の寸法はまた、紡糸口金中での混合及び押出しの間のせん断作用を改良する。さらに、より小さい紡糸口金の寸法は、押出し速度を増加させ、この結果、延伸倍率(即ち、押出し速度で除算した巻取り速度)を低下させる。過剰に高い延伸倍率は、高い配向応力/伸長応力を誘起する可能性があり、これは、架橋のようなさらなる処理の間に有害であり得ることから、延伸倍率の低下が望ましい。例えば、中空繊維をより大きな寸法を有する紡糸口金で紡糸した場合、妥当な寸法(300ミクロン未満)の繊維を得るために、高い延伸倍率を適用する必要があり、これらの繊維は架橋の後欠陥となることが判明した。
【0134】
紡糸口金オリフィスの環状の直径は、従来の紡糸口金オリフィスのサイズのおよそ半分であってもよい。例えば、環状の直径は、約600ミクロンから約1300ミクロンの間であり得て、ボアニードルの外径は、約300ミクロンから約700ミクロンの間であり得る。
【0135】
延伸倍率は150未満であり得る。或いは、延伸倍率は100未満であり得る。別法として、延伸倍率は50未満であり得る。さらに別法では、延伸倍率は10未満であり得る。
【0136】
紡糸口金から外へ押し出す点から脱イオン水浴の表面の間の距離は、本明細書では「エアギャップ高さ」と称される。エアギャップ高さは、0cm超でなければならない。エアギャップ高さは、5cm超であってもよい。或いは、エアギャップ高さは、10cm超であってもよい。別法として、エアギャップ高さは、20cm超であってもよい。より大きなエアギャップ高さは、被膜形成に有利に働く。
【0137】
同様に、比較的高い紡糸液温度(即ち、紡糸口金を通る押出し直前の紡糸液の温度)は、被膜形成に有利に働く。紡糸液温度は、40℃超であってもよい。或いは、紡糸液温度は、50℃超であってもよい。さらに別法として、紡糸液温度は、60℃超であってもよい。
【0138】
上述の通り、一実施形態によれば、凝固浴は脱イオン水を含む。十分に高い凝固浴温度は、凝固浴中の十分な相分離を確実にする。相分離が不十分な場合、この繊維は、押出し後の最初のガイドロールで押しつぶされる。凝固浴温度は、約10℃から約70℃の間であってもよい。或いは、凝固浴温度は、約25℃から約60℃の間であってもよい。別法として、凝固浴温度は、約40℃から約50℃の間であってもよい。
【0139】
巻取り速度(即ち、中空繊維が、巻取りドラムの周りに巻き取られる速度)は、低分子量ポリマーを紡糸する場合に使用される巻取り速度より速くてもよい。これは、本明細書に記載の高分子量ポリマーは、より速い巻取り速度に伴って生じるより強い応力に耐え得るという事実のためである。より小さな直径の繊維が要求される場合、一定の押出し速度で、巻取り速度を増加させてもよい。約20m/minから約150m/minの間の巻取り速度は、本明細書に記載の方法により達成可能である。
【0140】
紡糸口金の周囲の空気の面速度は、50ft/min超であってもよい。或いは、紡糸口金の周囲の空気の面速度は、80ft/min超であってもよい。別法として、紡糸口金の周囲の空気の面速度は、100ft/min超であってもよい。
【0141】
エステル交換反応
エステル交換反応は、架橋膜を形成するために、モノエステル化ポリイミドポリマーをエステル交換条件にかける段階を含む。図2は、エステル交換反応を概略的に図示する。エステル交換反応では、1つのモノエステル化ポリイミドポリマー鎖におけるエステル中の−OH基は、別のモノエステル化ポリイミドポリマー鎖におけるエステルと反応して、トランスエステル又は架橋を形成する。1つのモノエステル化ポリイミドポリマー鎖における任意の変換されていない−COOH基はまた、別のモノエステル化ポリイミドポリマー鎖におけるエステル中の−OH基と反応して、架橋を形成することができる。このようにして、エステル交換反応はモノエステル化ポリイミドポリマー鎖を架橋させる。
【0142】
架橋中空繊維膜は、架橋ポリイミドポリマー鎖の個々の繊維を含む。例えば、架橋中空繊維膜は、このような繊維が埋め込まれたアレイを含んでもよい。
【0143】
この架橋膜は、ガス混合物及び液体混合物の両方を含む流体混合物を分離するのに適している。架橋中空繊維膜は、低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製される架橋中空繊維膜より良好な透過性及び選択性を示す。
【0144】
エステル交換条件
典型的なエステル交換条件は、当技術分野で既知である。通常、エステル交換は、モノエステル化ポリイミドポリマーを加熱することによって実施することができる。加熱は、エステル交換反応を開始させ、さらに、残留する溶媒を除去する。
【0145】
モノエステル化ポリイミドポリマーを真空下、約150℃以上の温度で加熱して架橋させてもよい。一実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーを真空下、約180℃以上の温度で加熱して架橋させる。別の実施形態では、モノエステル化ポリイミドポリマーを真空下、約200℃以上の温度で加熱して架橋させる。例えば、モノエステル化中空繊維を真空下、200℃でおよそ2時間加熱し、真空下、およそ6時間冷却してもよい。より高温は、より高度な架橋を生じる。しかし、約300℃以上の温度は、本明細書に記載の方法により作製された架橋中空繊維膜の被膜層を損傷する可能性がある。
【0146】
エステル交換は、UV又はマイクロ波処理によって実施することもできる。さらに、エステル交換反応を触媒してもよい。エステル交換触媒は、モノエステル化の間に使用される同じ酸触媒であってもよく、p−トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフル酸、及びこれらの混合物が含まれる。
【0147】
膜を使用する方法
分離するガスを含む混合物は、ガス混合物を本明細書に開示された膜中を通過させることによって濃縮することができる。このような濃縮されるガス混合物は、海洋坑井を含む油井又はガス井などの炭化水素坑井から源を発し得る。分離する液体の混合物を本明細書に開示された膜中を通過させることによって濃縮することも可能である。
【0148】
例えば、この架橋膜は、
(a)空気、メタンと窒素の混合物、メタンと水素の混合物、メタンと硫化水素の混合物、製油所ストリーム、二酸化炭素とメタンの混合物、及び合成ガスからなる群から選択される供給ストリーム(ここで、供給ストリームは、窒素、酸素、水素、硫化水素及び二酸化炭素からなる群から選択されるガス成分を含む)を提供する段階と;
(b)膜の上流面と膜の下流面の間の圧力差を維持する段階と;
(c)膜の上流面を約20psiaから約4000psiaの間の圧力の供給ストリームと接触させる段階と;
(d)供給ストリームのより速く透過する成分のより大きなモル分率を有する、膜の下流側の透過ストリームを分離する段階と;
(e)供給ストリームのより速く透過する成分のより小さなモル分率を有する、リテンテートストリームを分離する段階と
によってガスを分離するために使用することができる。
【0149】
一実施形態では、この膜は、架橋中空繊維膜であってもよい。供給ストリームは、約25℃から200℃の間の温度でガス成分に濃縮することができる。別法として、供給ストリームは、約50psia〜約4000psiaの圧力であってもよい。別法として、供給ストリームは、約200psia〜約1000psiaの圧力であってもよい。供給ストリームの温度は、炭化水素坑井(例えば、海洋坑井を含む油井又はガス井)から生成された温度であってもよい。これらの条件は、供給ストリームに応じてルーチンの実験を用いて変化させてもよい。膜の下流面を真空に維持してもよい。
【0150】
様々なガス混合物を本明細書に開示された膜で精製することができる。例えば、用途には、窒素及び酸素による空気の濃縮、メタンストリームからの二酸化炭素の除去、メタンストリームからの硫化水素の除去、メタンストリームからの窒素又は水素の除去、或いは合成ガスストリームからの一酸化炭素の除去が含まれる。この膜はまた、製油所ストリーム及びその他のプロセスストリーム、例えば、パラフィンの接触脱水素における脱水素反応の流出液からの水素の分離に使用してもよい。一般に、この膜は、例えば、水素、窒素、メタン、硫化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、ヘリウム、及び酸素を含むガス混合物による任意の分離プロセスに使用してもよい。
【0151】
追加の精製が要求される場合、透過ストリーム中の生成物を追加の膜中を通過させてもよく、及び/又は生成物を当業者には周知の技術を用いて蒸留を介して精製してもよい。典型的には、膜システムは、様々な構成で接続される多数のモジュールで構成されていてもよい。例えば、Prasadら、J.Membrane Sci.、94、225〜248(1994)(この内容全体を背景及び概説のために参照により本明細書に援用する)を参照されたい。直列で接続されたモジュールは、供給、透過、及び残留ストリームを精製するための多くの設計の可能性を提供して、これらのストリームの分離純度を増加させ、膜システムの性能を最適化する。
【0152】
膜を含む分離システム
本明細書に開示された膜は、米国特許第6,932,859号及び同第7,247,191号(これらの全体を参照により本明細書に援用する)で論じられたもののような分離システムに使用してもよい。
【0153】
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製される膜は、当技術分野で既知の任意の形態、例えば、中空繊維、管形状、及びその他の膜の形状をとってもよい。その他の膜の形状には、渦巻き膜、プリーツ膜、フラットシート膜、及び多角形膜が含まれる。
【0154】
本明細書に記載の中空繊維は、どちらの側の端でも埋め込まれて管板を形成し、圧力容器中に取り付けて、チューブの内側をチューブの外側から隔離した束ねたアレイに使用してもよい。この繊維は任意の従来の手段でまとめられる。典型的には、繊維束の一端は耐圧殻の一端に延び、繊維束の反対の端は耐圧殻の反対の端に延びる。繊維束は、任意の従来の方法によって耐圧殻に固定的に又は取外し可能に取り付けられて、耐圧密封を形成する。このタイプの装置は、当技術分野で知られている。このタイプの分離システムにおいて、中空繊維要素中のフローの方向は、並流ではなく又は横断でさえなく、逆流であり得る。
【0155】
このような逆流フローは、フローを妨げる材料のスパイラルラップ中に中空繊維束をラップすることによって達成される。このスパイラルラップは、この束の中心の中央のマンドレルから延び、この束の外周部まで螺旋形に外側に進む。スパイラルラップは、頂端から底端に沿って穴を含み、これによって、一方の端でチューブの側方へのフローに向かうこの束に入るガスは、この穴を通ることによって分けられ、強制的に、スパイラルラップによって作られた流路を下って中空繊維と平行に流れる。この流れ方向は、中空繊維の内側のフローの方向と逆流である。この流路の底部で、ガスは、スパイラルラップの反対の端の穴を通って中空繊維束から再び出てきて、モジュールから外に向けられる。
【0156】
工業用中空繊維膜モジュールは、典型的には、数十万の個々の中空繊維を含む。一緒に束ねられる繊維の数は、繊維の直径、長さ、及び気孔率並びに所望のスループット、装置コスト、及び化学技術の当業者によって理解される技術的考察により決まる。
【0157】
具体的には、生産性を最大にするために、中空繊維は、典型的には多孔質支持体上に超薄の(<2000オングストローム)「被膜」層を含む。ガス分離は、この選択的「被膜」を介して実施される。この外側の「被膜」層は、同じポリマー上に担持されて、一体として被膜で覆われた非対称中空繊維膜を形成してもよい。最も先端的な膜は、安価な多孔質コア層(異なるポリマー)上に担持された選択的被膜を有する非対称の鞘を有して、複合材料中空繊維膜を形成する。このタイプの装置は、米国特許第5,085,676号(この内容全体を参照により本明細書に援用する)に記載されている。
【0158】
供給リテンテートスペーサー及び透過スペーサーによって交互に分離された多数の膜層を含むフラットスタックパーミエーターを作製するために、シートを使用することができる。この層を、分離された供給リテンテートゾーン及び透過ゾーンを規定するために、これらの端に沿って接着してもよい。このタイプの装置は、米国特許第5,104,532号(この内容全体を参照により本明細書に援用する)に記載されている。
【0159】
この膜を、膜を含む1つ又は複数の内部チューブを囲む外側有孔シェルを含む分離システム中に含めてもよい。このシェル及び内部チューブを、汚染物ゾーンを隔離するためにパッキングで囲ってもよい。
【0160】
操作の一方式では、ガス混合物は、外側有孔シェルの穿孔を通して汚染物回収ゾーンを介して分離システムに入る。ガス混合物は内部チューブ中を上方に通過する。
【0161】
ガス混合物が内部チューブ中を通過するとき、混合物の1種又は複数の成分は、選択的膜を通って内部チューブから外に透過し、汚染物回収ゾーンに入る。
【0162】
この膜をカートリッジ中に含め、ガス混合物から汚染物を透過するために使用してもよい。汚染物は膜を通って外に透過し、一方、所望の成分は膜の頂部から外に進み続けてもよい。この膜は、有孔チューブ内に積層されて、内部チューブを形成してもよく、又は相互接続して、自立したチューブを形成してもよい。
【0163】
積層膜要素の一つ一つをガス混合物の1種又は複数の成分を透過するように設計してもよい。例えば、第1の膜は二酸化炭素を除去し、第2は硫化水素を除去し、第3は窒素を除去するように設計してもよい。この膜を、ガス混合物から様々な成分を様々な程度で除去するために、様々な配置で積層してもよい。
【0164】
様々な成分を、単一の汚染物回収ゾーン中に除去して一緒に処分してもよく、又は異なるゾーンに除去してもよい。この膜は、直列又は並列の構成で、又は特定の用途に応じてこれらの組合せで配置してもよい。
【0165】
この膜は、ワイヤライン、コイルチュービング、又はポンピングなどの従来の修復技術によって除去可能及び置換可能であってもよい。置換に加えて、膜を通して気体、液体洗剤、又は他の物質をポンプ給送して膜要素を洗浄して、膜表面上に蓄積した物質を除去してもよい。
【0166】
本明細書に記載の膜を含むガス分離システムは、特定の用途に応じて様々な長さであってもよい。
【0167】
ガス混合物は、インサイド−アウト流路に従って、膜(単数又は複数)を通って流れてもよく、ここで、混合物は膜のチューブ(単数又は複数)の内側に流れ、除去される成分はチューブを通して外に透過することができる。或いは、ガス混合物は、アウトサイド−イン流路に従って、膜を通して流れてもよい。
【0168】
液体又は粒状の汚染物と膜の間の損傷させる可能性のある接触を防止する又は減少させるために、流動ガス混合物を外側チューブ内で回転又は旋回させてもよい。この回転は、任意の既知の方法、例えば、1つ又は複数のスパイラル状デフレクタを用いて達成してもよい。ガス混合物から除去された成分を除去する及び/又はサンプリングするために、排気を提供してもよい。
【0169】
理想的には、膜は耐久性があり、高温耐性で、液体への曝露に耐性がある。付着物を防止し、耐久性を改良するのに役立たせるために、材料を、理想的にはポリマーで被覆してもよい。適したポリマーの例には、米国特許第5,288,304号及び同第4,728,345号(これらの内容全体を参照により本明細書に援用する)に記載されたものが含まれる。バリア材料も、膜を損傷する可能性がある粒子及び他の汚染物を除去する予備フィルターとして使用してもよい。
【実施例】
【0170】
略語
6FDAは、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物を指し、これは(2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンとしても知られている。
DAMは、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミンを指す。
DABAは、3,5−ジアミノ安息香酸を指す。
ODCBは、オルトジクロロベンゼンを指す。
NMPは、N−メチル−2−ピロリドンを指す。
H−NMRは、プロトン核磁気共鳴を意味する。
ATR−IRは、減衰全反射赤外線を意味する。
THFは、テトラヒドロフランを指す。
SEMは、走査電子顕微鏡を意味する。
NPTは、Swagelokによる、パイプ継手の1つのタイプを指す。
GPUは、ガス透過単位を指し、これは以下の式で定義される。
GPU=[標準温度及び圧力で膜によって透過されたガスの体積(cm)×10−6]/[膜の透過面積(cm)×透過時間(s)×膜の両端の分圧差(cmHg)]
【0171】
(例1)
モノエステル化ポリイミドポリマーの調製
モノエステル化ポリイミドポリマーの数バッチを作製した。各バッチの作製において、以下の段階を実施した。6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にODCBを添加し、溶液を160〜200℃で加熱して、ポリイミドポリマーが得られた。溶液にNMPを添加して、ポリイミドポリマーの濃度をおよそ6重量%に低下させ、溶液に1,3−プロパンジオールを添加した。1,3−プロパンジオールを必要とされる化学量論量の40から70倍の間で添加した。得られた溶液を120〜140℃で最大24時間加熱し、同時に、水副生成物を蒸留した。この溶液に50/50体積%の水/メタノール溶液を添加し、均質化した。均質化した溶液からモノエステル化ポリイミドポリマーが沈殿し、空気乾燥した。モノエステル化ポリイミドポリマーを70℃の真空オーブン中で24時間さらに乾燥させた。
【0172】
モノエステル化、ポリアミドポリマーのバッチは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定して、130,000から184,000の間の平均分子量及び約3.3から3.8の間の多分散指数を有した。
【0173】
(例2)
ポリイミドポリマー1グラム当たり5mgの酸触媒を用いたイミド化及びモノエステル化
6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にODCBを添加し、溶液をおよそ190℃で18時間加熱した。GPCで測定して、92,000の平均分子量及び3.0の多分散指数を有するポリイミドポリマーが、反応溶液から沈殿した。
【0174】
ポリイミドポリマーをポリイミドポリマー1グラム当たり5mgのp−トルエンスルホン酸1,3−プロパンジオール及び溶液に溶解し、溶液を140℃で18時間加熱した。GPCで測定して、38,000の平均分子量及び4.8の多分散指数を有するモノエステル化ポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。
【0175】
(例3)
ポリイミドポリマー1グラム当たり5mgの酸触媒を用いたイミド化及びモノエステル化
6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にODCBを添加し、溶液をおよそ190℃で26時間加熱した。GPCで測定して、103,000の平均分子量及び3.0の多分散指数を有するポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。
【0176】
ポリイミドポリマーをポリイミドポリマー1グラム当たり5mgのp−トルエンスルホン酸と共に1,3−プロパンジオールの溶液に溶解し、溶液を140℃で18時間加熱した。GPCで測定して、32,000の平均分子量及び3.6の多分散指数を有するモノエステル化ポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。
【0177】
(例4)
ポリイミドポリマー1グラム当たり2.5mgの酸触媒を用いたイミド化及びモノエステル化
6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にODCBを添加し、溶液をおよそ190℃で26時間加熱した。GPCで測定して、103,000の平均分子量及び3.0の多分散指数を有するポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。
【0178】
ポリイミドポリマーを2.5mgのp−トルエンスルホン酸と共に1,3−プロパンジオールの溶液に溶解し、溶液を130℃で22時間加熱した。GPCで測定して、129,000の平均分子量及び3.3の多分散指数を有するモノエステル化ポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。
【0179】
この実施例は、少量の酸触媒は、モノエステル化ポリイミドポリマー生成物の平均分子量に著しい効果を有することを例示する。5mgのp−トルエンスルホン酸を使用した例2及び3は、それぞれ59%及び69%の平均分子量低下であった。2.5mgだけのp−トルエンスルホン酸を使用したこの実施例は、平均分子量の25%の増加であった。
【0180】
(比較例5)
低分子量モノエステル化ポリイミドポリマー及び高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーについての観察
低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを、米国特許第6,932,859号(この文献の全体を参照により本明細書に援用する)の例1〜3のいずれか1つに記載されたように、従来のモノエステル化反応(即ち、水の除去なしで)によって作製した。低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーは、6FDA、DAM、及びDABAモノマーを含み、以下の式
【化8】


によって示された。
【0181】
低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーに関してH−NMRを実施した。図4はH−NMRスペクトルを示す。
【0182】
このような従来のモノエステル化反応の間に、エステル収率を監視した。このような従来のモノエステル化反応の間に、エステル収率は、米国特許第6,755,900号及びWindら、Macromolecules、2003、36、1882〜1888(この文献全体を本明細書に援用する)に使用された方法によって計算した100%変換率での理論的に期待される収率を超えることが判明した。これらの文献において、変換率は、(1)芳香族プロトンとエステル基の隣のメチレン基の脂肪族プロトンの比、及び(2)DAM−メチルプロトンとエステル基の隣のメチレン基の比によって計算することができる。
【0183】
これらのより高いエステル収率は、加水分解によって引き起こされる開環したイミド環の結果であるものと考えられる。
【0184】
加水分解されたイミド環の連鎖切断効果を以下に例示する。
【化9】

【0185】
加水分解されたイミド環の存在をさらに調査するために、低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーに関して減衰全反射赤外線(ATR−IR)分光法を実施し、アミド酸の存在を観察した。ATR−IRスペクトル上の1660cm−lに位置するアミド基によってアミド酸の存在を観察することができる。このピークは、図5に示された低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのATR−IRスペクトルで観察された。
【0186】
水の除去を含み、高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーが得られる、例4のモノエステル化反応の間に、エステル収率及び分子量を監視した。図6は、このモノエステル化反応に対する時間の関数として、エステル収率及び分子量の保持のグラフを示す。
【0187】
例4の高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーに関してATR−IR分光法を実施した。図7は、例4の高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのATR−IRスペクトルを示す。このATR−IRスペクトルは、より低い分子量モノエステル化ポリイミドポリマーによるよりむしろ多量に依然としてアミドが存在することを示す。これは、切断が起こっていないことのさらなる証拠であり、さもなければ大部分のアミドはなくなっているはずである。
【0188】
例4の高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを245℃まで加熱して、架橋させた。架橋ポリマーに関してATR−IR分光法を実施した。図8は、架橋ポリマーのATR−IRスペクトルを、例4の高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーのATR−IRスペクトル及びモノエステル化より前の例4のポリイミドポリマーのATR−IRスペクトルと比較して示す。ATR−IRスペクトルは、開環したイミド環が、エステル交換反応の間に再環化されることを示唆する。
【0189】
(比較例6)
低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーの巻取り速度
Wallaceら、Journal of Membrane Science 278(2006)92〜104において、GPCで測定して約30,000の平均分子量を有する低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを中空繊維に紡糸した。作製した繊維の曳糸性は、低平均分子量のために損なわれた。高い巻取り速度で適用される張力はかなりあったので、この繊維は37m/min超の巻取り速度で紡糸することはできなかった。
【0190】
(比較例7)
モノエステル化ポリイミドポリマーの巻取り速度
ポリイミド、NMP、エタノール及び増粘性塩(LiNO)を含む紡糸液を混合して、均一な溶液を形成した。使用したポリイミドは、6FDA及び比3:2のDAM対DABAから作製した。98%より多くのDABA基がプロパンジオールと反応されて、ポリマーのモノエステルの形態を形成した。このドープを密閉容器中で5日間ローラーにかけて、完全な混合を確実にした。次いでドープをISCO(登録商標)シリンジポンプ中に注ぐ前に、24時間脱気させておき、シリンジポンプ中で再び24時間脱気した。
【0191】
エアギャップを通して脱イオン水で充填されたクエンチ浴中に、環状の紡糸口金からドープを0.8mL/minで押し出し、14から16m/minの間で回転するドラムに巻き取った。
【0192】
(例8)
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーの巻取り速度
6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にODCBを添加し、溶液をおよそ190℃で26時間加熱した。この溶液にポリイミドポリマー1グラム当たり2.5mgのp−トルエンスルホン酸、及び化学量論量の70倍の1,3−プロパンジオールを添加し、溶液を130℃で22時間加熱した。GPCで測定して105,000の平均分子量を有するモノエステル化ポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。このポリマーは、最大127m/minまでの巻取り速度で中空繊維に紡糸され、この速度は、試験できる最大速度であった。エアギャップは15cmであり、紡糸温度は50℃であった。
【0193】
(例9)
化学的脱水剤の断続的添加を用いたイミド化及びイミド化期間の延長
6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にポリアミドポリマー1グラム当たり2.5mlのODCBを断続的に添加し、同時に190℃でおよそ24時間加熱した。イミド化反応の開始時に約1/3のODCBを添加し、イミド化時間の1/3が経過した後、約1/3のODCBを添加し、イミド化時間の2/3が経過した後、残りのODCBを添加した。イミド化の間に生成した水は、凝縮し、Dean−Starkトラップを用いて回収した。
【0194】
ポリイミドポリマー生成物の分子量の12%の増加が、18時間の時点で観察された。ポリイミドポリマー生成物の平均分子量は、経時的に増加した。
【0195】
(例10)
紡糸液の調製
6FDA、DAM、及びDABAモノマーをNMPに溶解し、約24時間放置して、ポリアミドポリマーが得られた。この溶液にODCBを添加し、溶液をおよそ190℃で26時間加熱した。イミド化の間にDean−Starkトラップも使用した。ポリイミドポリマー溶液に1,3−プロパンジオールを添加し、溶液を130℃で22時間加熱した。Dean−Starkトラップは、モノエステル化のために残ったままであった。GPCで測定して183,500の平均分子量及び3.8の多分散指数を有するモノエステル化ポリイミドポリマーが、溶液から沈殿した。
【0196】
以下の成分、モノエステル化ポリイミドポリマー、揮発性成分としてTHF、無機添加剤として硝酸リチウム、紡糸溶媒としてNMP、及び紡糸非溶媒としてエタノールを含む紡糸液を作製するために、沈殿方法を使用した。先ず、モノエステル化ポリイミドポリマー濃度を35重量%に設定し、THF濃度を15重量%に設定し、硝酸リチウム濃度を6.5重量%に設定した。次に、NMP及びエタノールの初期濃度を沈殿方法に従って選択した。沈殿方法をNMP及びエタノールの最終濃度が得られるまで実施した。NMPの最終濃度は35重量%であり、エタノールの最終濃度は8.5重量%であった。
【0197】
紡糸液の1つのバッチを、液体の総体積より少なくとも5倍大きい体積の広口ビン中で、先ず、その最終濃度のNMP及びエタノールを15重量%のTHFと混合することによって調製した。この液体に6.5重量%の硝酸リチウムを溶解した。この溶液にモノエステル化ポリイミドポリマーを少なくとも3つのバッチで添加して、紡糸液が得られた。各バッチを添加後、溶液を振とうした。次いで、広口ビンをローラー上に置き、紡糸液を少なくとも2週間混合した。
【0198】
(例11)
モノエステル化中空繊維の紡糸
ドライジェット/ウエットクエンチ紡糸法でモノエステル化中空繊維を紡糸するために、例10の紡糸液を使用した。紡糸液を70℃まで加熱した。次いで、中空繊維を提供するために、紡糸液をおよそ650ミクロンの環状の直径を備えたオリフィス及びおよそ320ミクロンのボアニードル外径を有する紡糸口金を通して、約120〜180ml/時間の押出し流量で押し出した。紡糸口金の周囲の空気の面速度は110ft/minであり、紡糸口金の外側上の温度はおよそ50℃であった。中空繊維を33cmのエアギャップを通して及びガイドロールを通して、50℃の脱イオン水浴の中で搬送した。水浴は、高さ102cm、長さ58cm及び幅16cmであり、紡糸に先立って加熱要素を備えた水循環器を用いて加熱した。次に、50m/minの速度で回転し、繊維を湿潤に保つために室温の脱イオン水の容器中に一部を入れた巻取りドラムに中空繊維を巻き取った。中空繊維を巻取りドラム上におよそ15分間放置しておき、次いでストランドに切断した。繊維から紡糸溶媒を除去するために、ストランドを別の水浴中に2〜3日放置しておいた。次に、繊維を脱水するために、ストランドを30分のエタノール浴に2回、次いで30分のヘキサン浴に2回浸漬した。最後に、これらをおよそ2時間空気乾燥し、およそ70℃の真空オーブン中に約2時間置いた。中空繊維を走査電子顕微鏡法(SEM)で画像化した。SEM画像を図9A及び9Bとして提供する。
【0199】
(例12)
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製したモノエステル化中空繊維の試験
例11のモノエステル化中空繊維を3つの反復試験モジュールに埋め込んだ。各試験モジュールは、およそ20cmの有効長を有する単繊維を含んでいた。図3に示すように、各試験モジュールは、2個のステンレス鋼(316)Swagelok(登録商標)1/4−インチT字管210、ステンレス鋼1/4−インチチュービング及びナット、2個の真鍮NPT1/4−インチメスチューブアダプタ215、2個の真鍮NPT1/4−インチオスチューブアダプタ220、及び2個の真鍮Swagelok(登録商標)1/4−インチナットで製造された。中空繊維205をモジュールのハウジング中に差し込み、中空繊維長さがそれぞれの端に延びるようにした。次いで、モジュールの両端を3M(商標)Scotch−Weld(商標)Epoxy Adhesive DP100で埋め、一晩硬化した。エポキシ接着剤が硬化した後、繊維の端を切り取った。
【0200】
中空繊維を通るガスの搬送を流量計試験システムで試験した。このシステムは、ガスクロマトグラフを用いたガスストリームのサンプリングを可能にした。この試験モジュールをシェル供給操作方法で取り付けた。圧縮ガスシリンダーからの混合供給ガスを試験モジュールのシェル面上に供給した。試験モジュールを一定の温度に維持した透過ボックス中に入れた。すべてのストリームの組成をガスクロマトグラフで測定した。次いで個々のガス流束を計算した。
【0201】
ガスをシェル面上に供給し、繊維を通した透過速度を、透過速度が比較的速いので、気泡流量計及びストップウオッチで測定した。下流面上で大気圧を維持し、全体的温度は35℃であった。気泡流量計で測定した流束を、高い供給圧力で起こる非理想気体相の熱力学に対して補正するビリアル状態方程式からのフガシティ係数を用いて透気度に変換した。試験の間の濃度分極の影響を最小限に抑え、上流を一定の組成に維持して性能解析を単純化するために、およそ1%以下のステージカット(即ち、供給流量に対する透過流量の比)を使用した。選択性を透気度の比を取って計算した。
【0202】
200psigの20/80のCO/CHガス供給原料では、モノエステル化中空繊維は、30の選択性及び206GPUのCO透気度を有していた。50/50のCO/CHガス供給原料も、図11C及び11Dに示すように様々な圧力で試験した。
【0203】
(例13)
高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製された架橋中空繊維の試験
例11のモノエステル化中空繊維を真空下、200℃でおよそ2時間加熱し、真空下、50℃までおよそ6時間冷却させておいた。この加熱は、繊維内でモノエステル化ポリイミドポリマー鎖を架橋させた。次いで、単一架橋繊維を例12に記載の試験モジュール中に埋め込み、例12に記載のシステム中で試験した。200psigの20/80のCO/CHガス供給原料では、この膜は、41の選択性及び58GPUのCO透気度を有していた。20/80のCO/CHガス供給原料を、図10A及び10Bに示すように様々な圧力で試験した。50/50のCO/CHガス供給原料も図11A及び11Bに示すように様々な圧力で試験した。100psigの純粋なガス供給原料では、この膜は、表2に示す選択性及び透気度を有していた。
【表2】

【0204】
(比較例14)
低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製された架橋中空繊維の試験
米国特許第6,932,859号(’859特許)(この文献の全体を参照により本明細書に援用する)の例8において、’859特許の例7で作製した繊維を、例12に記載のものと同じモジュールに埋め込み、例12に記載のシステムで試験した。しかし、全体的な温度は、35℃の代わりに25℃であった。50psigの20/80のCO/CHガス供給原料では、繊維は、21の選択性及び23GPUのCO透気度を有していた。50psigの純粋なガス供給原料では、繊維は、表3に示す選択性及び透気度を有していた。
【表3】

【0205】
(比較例15)
低分子量モノエステル化ポリイミドポリマーから作製された架橋中空繊維の試験
D.Wallace、「天然ガス精製用架橋中空繊維膜及び新規なポリマーからのこれらの製造(Crosslinked Hollow Fiber Membranes for Natural Gas Purification and their Manufacture from Novel Polymers)」、Ph.D.Dissertation、University of Texas、2004年8月において、’859特許の例7に使用した同じポリイミドポリマー(但し、このポリマーは29,000の平均分子量を有していたことのみを例外として)から作製された中空繊維を試験した。このような学位論文は、その全体を参照により本明細書に援用する。200psigの20/80のCO/CHガス供給原料及び30℃の全体的温度では、繊維は、32の選択性及び35GPUのCO透気度を有していた。
【0206】
本明細書に記載の方法をその特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者であれば、添付した特許請求の範囲に定義された方法の精神及び範囲から逸脱することなく、具体的には記載されていない追加、削除、修正、及び置換を加えることができることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)モノマー及び少なくとも1種の溶媒を含む反応溶液から、カルボン酸官能基を含むポリイミドポリマーを調製する段階と;
(b)脱水条件の存在下、エステル化条件でポリイミドポリマーをジオールで処理してモノエステル化ポリイミドポリマーを形成する段階と
を含む高分子量モノエステル化ポリイミドポリマーを作製する方法であって、
脱水条件は、段階(b)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する、上記方法。
【請求項2】
段階(a)が脱水条件下で実施され、脱水条件が、段階(a)の間に生成した水を少なくとも部分的に除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(a)の反応溶液中の水の濃度が、約0重量%から約0.26重量%の間に維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階(b)のポリイミドポリマー及びジオールを含む溶液中の水の濃度が、約0重量%から約0.08重量%の間で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
段階(b)の脱水条件が、モノエステル化ポリイミドポリマーの切断を減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
モノエステル化ポリイミドポリマーの平均分子量が、ポリイミドポリマーの平均分子量以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
段階(b)の脱水条件が化学的脱水剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
化学的脱水剤が、共沸化学的脱水剤又はカルボジイミドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
共沸化学的脱水剤が、オルトジクロロベンゼン(ODCB)、ベンゼン、トルエン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階(b)の脱水条件が物理的脱水剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
物理的脱水剤が、Dean−Starkトラップである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
段階(b)の脱水条件が、化学的脱水剤及び物理的脱水剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
段階(a)の脱水条件が化学的脱水剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
化学的脱水剤が、共沸化学的脱水剤又はカルボジイミドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
共沸化学的脱水剤が、オルトジクロロベンゼン(ODCB)、ベンゼン、トルエン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
段階(a)の脱水条件が物理的脱水剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
物理的脱水剤がDean−Starkトラップである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
段階(a)の脱水条件が、化学的脱水剤及び物理的脱水剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
段階(b)が、酸触媒の存在下、ポリイミドポリマーをジオールで処理する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
段階(b)における酸触媒が、ポリイミドポリマー1グラム当たり約0ミリグラムから約0.25ミリグラムの間の量で存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酸触媒が、p−トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸、トリフル酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ジオールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ベンゼンジメタノール、及び1,3−ブタンジオールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
段階(a)及び(b)が、単一反応容器中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
モノマーが、モノマーA、B、及びCを含み、
[ここで、
Aは、式(I);
【化1】


(X及びXは、独立にハロゲン化アルキル、フェニル又はハロゲンであり、
、R、R、R、R、及びRは、H、アルキル、又はハロゲンである)
の二無水物であり、
Bは、カルボン酸官能基を有さないジアミノ環式化合物であり、
Cは、カルボン酸官能基を有するジアミノ環式化合物である]、
請求項1に記載の方法。
【請求項25】
Aが、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)であり、Bが、2,4,6−トリメチル−m−フェニレンジアミン(DAM)であり、Cが、3,5−ジアミノ安息香酸(DABA)である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ポリイミドポリマーが、式(II)
【化2】


で表される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
モノエステル化ポリイミドポリマーが、約80,000から約220,000の間の平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
モノエステル化ポリイミドポリマーが、約2から約4の間の多分散指数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
モノマーが、段階(a)の前に精製される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−509335(P2011−509335A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542256(P2010−542256)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/000033
【国際公開番号】WO2009/088982
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【出願人】(510190989)ジョージア テク リサーチ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】