説明

高分子電解質膜、膜−電極接合体、及び固体高分子形燃料電池

【課題】高温作動性に優れた高分子電解質膜、該高分子電解質膜を用いてなる燃料電池等を提供する。
【解決手段】 高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上であり、温度80℃、相対湿度90%における破断応力が20MPa以上であることを特徴とする高分子電解質膜、該高分子電解質膜を用いてなる燃料電池等。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜、該高分子電解質膜を有する膜−電極接合体、及び固体高分子形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一次電池、二次電池、あるいは固体高分子形燃料電池(以下、場合により「燃料電池」という)等の隔膜として、イオン伝導性を有する高分子(高分子電解質)を含む高分子電解質膜が用いられている。例えば、ナフィオン(デュポン社の登録商標)をはじめとするフッ素系高分子電解質が、現在主として検討されている。
【0003】
燃料電池は、水素と酸素の酸化還元反応を促進する触媒を含む触媒層と呼ばれる電極を、前記高分子電解質膜の両面に形成し、さらに触媒層の外側にガスを効率的に触媒層に供給するためのガス拡散層を有するセル(燃料電池セル)を基本構成としている。ここで、高分子電解質膜の両面に触媒層を形成したものは、通常、膜−電極接合体(以下、場合により「MEA」という)と呼ばれている。
【0004】
ところで、近年の燃料電池としては、比較的高温での作動性(以下、場合により「高温作動性」という)が要求されることがある。該燃料電池の実用化は、主に車両用途と定置用途とが期待されているが、車両用途においては、加湿器やラジエータなどの補機類を簡素化するため、定置用途においては、改質水素ガスを用いたとき、該改質ガスに含まれる一酸化炭素によって前記触媒の触媒被毒が生じることを防止するため、高温作動性が必要となる。しかし、前述のナフィオンをはじめとするフッ素系高分子電解質は耐熱性が低いこと、高温での機械強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないことなどの問題が指摘されている。このような高温作動性の要求に応えるため、前記MEAにおける高分子電解質膜を改良する努力がなされてきた。
【0005】
例えば、特許文献1では、特定の有機金属化合物と、プロトン伝導性を有する有機ポリマーとを複合させた固体高分子電解質が開示され、かかる固体高分子電解質が保水性に優れ、比較的高温作動性に優れるものであることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−207625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これまで得られている高分子電解質膜は、その高温作動性に関して十分といえるものではなかった。
そこで本発明は、従来の高分子電解質膜よりも、高温作動性に優れた高分子電解質膜、該高分子電解質膜を用いてなる燃料電池等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる高温作動性の改良に関し種々検討したところ、驚くべきことに、特許文献1のような高分子電解質膜の保水性改良よりも、高分子電解質膜の水蒸気透過係数を特定の範囲にすることにより、高温作動性を改善できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の<1>〜<12>を提供する。
<1>高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上であり、
温度80℃、相対湿度90%の加湿環境下にさらした状態で測定される該高分子電解質膜の破断応力が20MPa以上である高分子電解質膜;
<2>高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上であり、
該第1の面から該第2の面への酸素透過係数が1.0×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下である高分子電解質膜;
<3>前記高分子電解質のイオン交換容量が3.0meq/gであることを特徴とする<1>又は<2>の高分子電解質膜;
<4>前記高分子電解質膜の厚みが、10μm以上40μm以下あることを特徴とする<3>の高分子電解質膜;
<5>前記高分子電解質膜の厚みが、3μm以上12μm以下であることを特徴とする<1>又は<2>の記載の高分子電解質膜;
<6>前記高分子電解質のイオン交換容量が2.0meq/g以上3.0meq/g以下であることを特徴とする<5>の高分子電解質膜。
<7>高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過度が1.0×10−6mol/sec/cm以上であり、該第1の面から該第2の面への酸素透過度が5.0×10cc/m・24h・atm以下であることを特徴とする高分子電解質膜。
<8>前記高分子電解質が炭化水素系高分子電解質であることを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の高分子電解質膜。
<9>前記高分子電解質が芳香族系高分子電解質であることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかの高分子電解質膜;
<10>前記高分子電解質がイオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有し、該イオン交換基を有するセグメントが下記式(1a)、(2a)、(3a)または(4a)で表される構造を有することを特徴とする<1>〜<9>のいずれかに記載の高分子電解質膜。

(式中、Ar1〜Ar9は、互いに独立に、主鎖に芳香族環を有し、さらに芳香族環を有する側鎖を有してもよい芳香族基を表す。該主鎖の芳香族環か側鎖の芳香族環の少なくとも1つが該芳香族環に直接結合したイオン交換基を有する。
Z、Z’は互いに独立にCO、SO2のいずれかを表し、X、X’、X”は互いに独立にO、Sのいずれかを表す。Yは直接結合もしくは下記一般式(10)で表される基を表す。pは0、1又は2を表し、q、rは互いに独立に1、2又は3を表す。)

(式中、R1及びR2は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表し、R1とR2とが連結して環を形成していてもよい。)
<11>前記Ar1〜Ar9がそれぞれ、主鎖を構成する芳香族基に少なくとも1つのイオン交換基有することを特徴とする<1>〜<10>のいずれかに記載の高分子電解質膜。
<12>前記高分子電解質は、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有する共重合体電解質であって、共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合である共重合体電解質であり、
前記高分子電解質膜は、該イオン交換基を有するセグメントの密度が該イオン交換基を実質的に有しないセグメントの密度より高い相と、
該イオン交換基を実質的に有しないセグメントの密度が該イオン交換基を有するセグメントの密度より高い相と、
を有するミクロ相分離構造を有する<1>〜<11>のいずれかの高分子電解質膜;
【0009】
さらに本発明は前記いずれかの高分子電解質膜を用いる、以下の<9>を提供する。
<13><1>〜<12>のいずれかの高分子電解質膜を有する、膜−電極接合体;
<14><13>の膜−電極接合体を有する、固体高分子形燃料電池;
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、燃料電池において、高温作動性に優れ、発電性能を高めた高分子電解質膜を提供することができる。さらに、該高分子電解質膜を用いてなる膜−電極接合体(MEA)、固体高分子形燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】燃料電池の一実施形態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明の第1の側面において、高分子電解質膜は、高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該一方の面から該他方の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上であり、 温度80℃、相対湿度90%の加湿環境下にさらした状態で測定される該高分子電解質膜の破断応力が20MPa以上である、
ことを特徴とする。以下、この高分子電解質膜に関し、該高分子電解質膜に含有される好適な高分子電解質、該高分子電解質膜の製造方法、該高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体及び燃料電池に関し、順次説明する。
【0013】
<高分子電解質>
本発明の高分子電解質膜を構成する高分子電解質は、イオン交換基を有する高分子電解質であり、酸性基を有する高分子電解質、塩基性基を有する高分子電解質、いずれも適用することが可能であるが、酸性基を有する高分子電解質を用いると、一層発電性能に優れた燃料電池が得られるため好ましい。かかる酸性基としては、例えば、スルホ基(−SO3H)、カルボキシル基(−COOH)、ホスホ基(−PO32)、スルホニルイミド基(−SO2NHSO2−)、フェノール性水酸基などが挙げられる。中でも、本発明に用いる高分子電解質としては、スルホ基及び/又はホスホ基を有するものがより好ましく、スルホ基を有するものが特に好ましい。
【0014】
本発明の効果をより高めるために、高分子電解質に導入される酸性基の量を表すイオン交換容量(以下、「IEC」という)が3.0meq/g以上であると好ましく、3.5meq/g以上であるとさらに好ましく、4.0meq/g以上であると特に好ましい。なお、IECの上限は、7.0meq/g以下で十分であるが、6.5meq/g以下がより好ましく、6.0meq/g以下がさらに好ましい。IECが3.0meq/g以上であると水蒸気透過係数が高くなる傾向にあり、前記の範囲内にすることが容易となる。一方、IECが7.0meq/g以下の高分子電解質を用いると、得られる高分子電解質膜の耐水性が損なわれず、燃料電池の作動時に該高分子電解質膜の耐久性が高くなる傾向がある。当該IECの範囲内の高分子電解質膜を用いる場合の好適な電解質膜の膜厚は10μmから40μmが好ましく、20μmから30μmであることが好ましい。
【0015】
本発明の効果をより高めるために、高分子電解質膜の厚みを薄くすることも有効である。本発明における高分子電解質膜の厚みは12μm以下であると好ましく、9μm以下であることがさらに好ましく、7μm以下が一層好ましい。一方、燃料電池に使用される高分子電解質膜として実用的に十分な強度が得られる点で、該厚みは3μm以上であることが好ましく、5μmを超えるものがさらに好ましい。この厚みが小さければ小さいほど、前記水蒸気透過係数は高くなる傾向にあるが、反面、酸素透過係数自体も大きくなり、吸湿時の膜の機械強度も低下する傾向にある。したがって、使用する高分子電解質膜に含まれる高分子電解質の種類などを勘案して、最適な厚みを選択する必要がある。当該厚みの範囲内の高分子電解質膜を用いる場合の好適な電解質膜のIECは2.0meq/gから3.0が好ましく、2.5meq/gから3.0meq/gであることが好ましい。
【0016】
かかる高分子電解質の代表例としては、例えば
(A)主鎖が脂肪族炭化水素からなる高分子(すなわち炭化水素系高分子)からなる高分子電解質であって、該高分子にはスルホ基及び/又はホスホ基が導入されている高分子電解質;
(B)脂肪族炭化水素の水素原子の全てあるいは一部がフッ素原子に置換された高分子(すなわちフッ素系高分子)からなる高分子電解質であって、該高分子にはスルホ基及び/又はホスホ基が導入されている高分子電解質;
(C)主鎖に芳香環を有する高分子(すなわち芳香族系高分子)からなる高分子電解質であって、該高分子にはスルホ基及び/又はホスホ基が導入されている高分子電解質;
(D)主鎖に、シロキサン基、フォスファゼン基などの無機の単位構造を含む高分子(無機系高分子)にスルホ基及び/又はホスホ基が導入された高分子電解質;
(E)前記(A)〜(D)に示す繰り返し単位から選ばれる2種以上の繰り返し単位からなる共重合体からなる高分子電解質であって、該共重合体にはスルホ基及び/又はホスホ基が導入されている高分子電解質;
(F)主鎖あるいは側鎖に窒素原子を含む炭化水素系高分子からなる高分子電解質であって、該高分子には硫酸やリン酸等の酸性化合物がイオン結合により導入されている高分子電解質等が挙げられる。
【0017】
前記(A)の高分子電解質としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ(α−メチルスチレン)スルホン酸が挙げられる。
【0018】
前記(B)の高分子電解質としては、DuPont社製のNafion(登録商標)、旭化成製のAciplex(登録商標)、旭硝子製のFlemion(登録商標)などがある。また、特開平9−102322号公報に記載された炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた主鎖と、スルホ基を有する炭化水素系側鎖とから構成されるスルホン酸型ポリスチレン−グラフト−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)や、米国特許第4,012,303号公報又は米国特許第4,605,685号公報に記載された、炭化フッ素系ビニルモノマと炭化水素系ビニルモノマとの共重合によって作られた膜に、α,β,β-トリフルオロスチレンをグラフト重合させ、これにスルホ基を導入して固体高分子電解質としたスルホン酸型ポリ(トリフルオロスチレン)−グラフト−ETFEなども挙げられる。
【0019】
前記(C)の高分子電解質としては、主鎖が酸素原子などのヘテロ原子で連結されているものであってもよく、例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリイミド、ポリ((4-フェノキシベンゾイル)−1,4−フェニレン)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニルキノキサレン等の単独重合体のそれぞれにスルホ基が導入されたもの、スルホアリール化ポリベンズイミダゾール、スルホアルキル化ポリベンズイミダゾール、ホスホアルキル化ポリベンズイミダゾール(例えば、特開平9−110982号公報参照)、ホスホン化ポリ(フェニレンエーテル)(例えば、J.Appl.Polym.Sci.,18,1969(1974)参照)などが挙げられる。
【0020】
また、前記(D)の高分子電解質としては、例えば、文献(Polymer Prep.,41,No.1,70(2000))に記載されたポリフォスファゼンにスルホ基が導入されたものなどが挙げられる。また、容易に製造できるホスホ基を有するポリシロキサンも挙げることができる。
【0021】
前記(E)の高分子電解質としては、ランダム共重合体にスルホ基及び/又はホスホ基が導入されたものでも、交互共重合体にスルホ基及び/又はホスホ基が導入されたものでも、グラフト共重合体にスルホ基及び/又はホスホ基が導入されたもの、ブロック共重合体にスルホ基及び/又はホスホ基が導入されたものでもよい。ランダム共重合体にスルホ基が導入されたものとしては、例えば、特開平11−116679号公報に記載の、スルホン化ポリエーテルスルホン重合体が挙げられる。
【0022】
また前記(F)の高分子電解質としては、例えば、特表平11−503262号公報に記載の、リン酸を含有せしめたポリベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0023】
前記に例示した高分子電解質の中でも、リサイクル性や低コストの面から、炭化水素系高分子電解質が好ましい。なお、「炭化水素系高分子電解質」とは、該高分子電解質の元素重量組成比において、ハロゲン原子(フッ素原子等)の含有量が15重量%以下である高分子電解質を意味する。特に、前記(E)の中で、イオン交換基を有する繰り返し単位と、イオン交換基を有しない繰り返し単位と、を有する炭化水素系高分子であると、機械強度や耐水性といった特性で実用的に十分な高分子電解質膜が得られやすいため好ましい。
【0024】
炭化水素系高分子電解質の中でも、芳香族系高分子電解質を含むことが好ましい。該芳香族系高分子電解質とは、高分子鎖の主鎖に芳香環を有し、該芳香環の一部又は全部に、直接結合したイオン交換基及び/又は適当な連結基を介してイオン交換基を有する高分子化合物を意味する。芳香族系高分子電解質は、溶媒に可溶なものが通常使用される。このような芳香族系高分子電解質を用いると、後述する溶液キャスト法にて、簡便に高分子電解質膜を得ることができる。そして、芳香族系高分子電解質を用い、溶液キャスト法で得られる高分子電解質膜は、後述するように十分低い酸素透過係数と、高温においても優れた機械強度を有する無多孔質の高分子電解質膜となり得る。さらに、耐熱性に優れた高分子電解質膜を得るためには、前記(E)の中でも、芳香環を有する繰り返し単位を含むような芳香族系高分子電解質が好ましい。該芳香族系高分子電解質は、後述する水蒸気透過係数を一層良好にし、さらに酸素透過係数を低減させることも容易であり、本発明に用いる高分子電解質として特に好適である。
【0025】
「主鎖に芳香環を有する高分子」とは、例えば、主鎖がポリアリーレンのように、芳香族基同士が連結されているものや、芳香族基が、2価の基を介して連結し主鎖を構成しているものを意味する。該2価の基としては、オキシ基、チオキシ基、カルボニル基、スルフィニル基、スルホニル基、アミド基、エステル基、炭酸エステル基、炭素数1〜4程度のアルキレン基、炭素数1〜4程度のフッ素置換アルキレン基、炭素数2〜4程度のアルケニレン基、炭素数2〜4程度のアルキニレン基が挙げられる。また、芳香族基としては、フェニレン基、ナフタレン基、アトラセニレン基、フルオレンジイル基等の芳香族基、ピリジンジイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、イミダゾリル基、インドールジイル基、キノキサリンジイル基等の芳香族複素環基が挙げられる。
また、該芳香族基は、前記のイオン交換基以外に、置換基を有していてもよく、該置換基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、ニトロ基、ハロゲン原子が挙げられる。なお、置換基としてハロゲン原子を有する場合や、前記芳香族基を連結する2価の基としてフッ素置換アルキレン基を有している場合、当該芳香族系高分子電解質の元素重量組成比で表して、ハロゲン原子が15重量%以下とする。
【0026】
好適な高分子電解質である(E)の炭化水素系高分子電解質に関して詳述する。このような炭化水素系高分子電解質の中でも、イオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有する共重合体電解質であると、高分子電解質膜としたとき、耐水性や機械強度に優れる傾向にあるので好ましい。該2種類のセグメントの共重合体様式は、ランダム共重合、交互共重合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれでもよく、これらの共重合様式の組合せでもよいが、共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合である炭化水素系高分子電解質が好ましい。なお、「イオン交換基を有するセグメント」とは、当該セグメントを構成する繰り返し単位1個あたりにイオン交換基が0.5個以上含まれているセグメントを意味するものであり、繰り返し単位1個あたりイオン交換基が1.0個以上含まれていることはより好ましい。「イオン交換基を実質的に有しないセグメント」とは、当該セグメントを構成する繰り返し単位1個あたりイオン交換基数が0.1個未満であるセグメントを意味し、繰り返し単位1個あたりのイオン交換基数が平均0.05個以下であることはより好ましく、イオン交換基を有していないことはさらに好ましい。
【0027】
特に好ましい高分子電解質としては、下記式(1a)、(2a)、(3a)又は(4a)[以下、場合により、「式(1a)〜(4a)のいずれか」と呼ぶことがある]


(式中、Ar1〜Ar9は、互いに独立に、主鎖に芳香族環を有し、さらに芳香族環を有する側鎖を有してもよい2価の芳香族基を表す。該主鎖の芳香族環か側鎖の芳香族環の少なくとも1つが該芳香族環に直接結合したイオン交換基を有する。
Z、Z’は互いに独立にCO、SO2のいずれかを表し、X、X’、X”は互いに独立にO、Sのいずれかを表す。Yは直接結合もしくは下記一般式(10)で表される基を表す。pは0、1又は2を表し、q、rは互いに独立に1、2又は3を表す。)
で示されるイオン交換基を有するセグメントと、
下記式(1b)、(2b)、(3b)又は(4b)[以下、場合により、「式(1b)〜(4b)のいずれか」と呼ぶことがある。]


(式中、Ar11〜Ar19は、互いに独立に側鎖としての置換基を有していてもよい芳香族炭素基を表す。Z、Z’は互いに独立にCO、SO2のいずれかを表し、X、X’、X”は互いに独立にO、Sのいずれかを表す。Yは直接もしくは下記一般式(10)で表される基を表す。p’は0、1又は2を表し、q’、r’は互いに独立に1、2又は3を表す。)
で表される、イオン交換基を実質的に有しないセグメントと、を有し、その共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合である高分子電解質が例示される。

(式中、R1及びR2は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表し、R1とR2とが連結して環を形成していてもよい。)
【0028】
式(1a)〜(4a)におけるAr〜Ar9はそれぞれ、芳香族基を表す。芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。好ましくは単環性芳香族基である。
【0029】
また、Ar〜Ar9はそれぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。
【0030】
Ar〜Ar9はそれぞれ、主鎖を構成する芳香環に少なくとも一つのイオン交換基を有する。該イオン交換基として、上述のように酸性基が好ましく、酸性基の中でも、スルホ基がより好ましい。
【0031】
式(1a)〜(4a)から選ばれる構造単位からなるセグメントの重合度は5以上であり、5〜1000が好ましく、10〜500であるとさらに好ましい。この重合度が5以上であれば、燃料電池用の高分子電解質として、十分なプロトン伝導度を発現し、この重合度が1000以下であれば、式(1a)〜(4a)から選ばれる構造単位からなる共重合体の製造がより容易である利点がある。
【0032】
一方、式(1b)〜(4b)におけるAr11〜Ar19はそれぞれ、芳香族基を表す。芳香族基としては、例えば、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン等の2価の単環性芳香族基、1,3−ナフタレンジイル、1,4−ナフタレンジイル、1,5−ナフタレンジイル、1,6−ナフタレンジイル、1,7−ナフタレンジイル、2,6−ナフタレンジイル、2,7−ナフタレンジイル等の縮環系芳香族基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイル等のヘテロ芳香族基等が挙げられる。好ましくは単環性芳香族基である。
また、Ar11〜Ar18はそれぞれ、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基で置換されていてもよい。なお、ここでいう「置換基を有していてもよい」の置換基とはイオン交換基を包含するものではない。
【0033】
ここで、前述の芳香族基(Ar〜Ar9及びAr11〜Ar19)が有しうる置換基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基等のアルキル基、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、アリール基としてはフェニル基等のアリール基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、アセチル基、ブチリル基等のアシル基が挙げられる。
【0034】
また、式(1b)〜(4b)から選ばれる構造単位からなるセグメントの重合度は5以上であり、5〜100が好ましく、5〜80がさらに好ましい。この重合度が5以上であれば、燃料電池用の高分子電解質として、十分な機械強度を有し、該重合度が100以下であれば、製造がより容易である。
【0035】
このように、本発明のMEAに適用する電解質膜において、好適な高分子電解質は、前記式(1a)〜(4a)のいずれかで表される構造単位からなる、イオン交換基を有するセグメントと、前記式(1a)〜(4a)のいずれかで表される構造単位からなる、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有するものであるが、高分子電解質の製造の容易さを勘案すると、ブロック共重合体が好ましい。セグメントの好適な組み合わせの例を挙げると、下記の表1の<A>〜<H>に示すセグメントの組み合わせを挙げることができる。
【0036】
【表1】


更に好ましくは、前記の<B>、<C>、<D>、<G>又は<H>であり、<G>又は<H>が特に好ましい。
【0037】
具体的に、好適なブロック共重合体を挙げると、以下に示すイオン交換基を有する繰り返し単位から選ばれる1種以上の繰り返し単位を含むセグメント(イオン交換基を有するセグメント)と、以下に示すイオン交換基を有しない繰り返し単位から選ばれる1種又は2種以上の繰り返し単位を含むセグメント(イオン交換基を実質的に有しないセグメント)と、からなるブロック共重合体を挙げることができる。なお、以下に挙げたイオン交換基を有する繰り返し単位の例は、イオン交換基がスルホ基である例である。
また、両セグメント同士は直接結合している形態でもよく、適当な原子又は原子団で連結している形態でもよい。ここでいうセグメント同士を結合する原子又は原子団の典型的なものとしては、2価の芳香族基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はこれらを組み合わせてなる2価の基を挙げることができる。
【0038】
(イオン交換基を有する繰り返し単位)


【0039】
(イオン交換基を有しない繰り返し単位)

【0040】
前記例示の中でも、イオン交換基を有するセグメントを構成する繰り返し単位としては、(4a−10)及び/又は(4a−11)及び/又は(4a−12)が好ましく、その中でも(4a−11)及び/又は(4a−12)が特に好ましい。このような繰り返し単位を含むセグメントを有する高分子電解質、特に、このような繰り返し単位からなるセグメントを有する高分子電解質は、優れたイオン伝導性を発現できるものであり、当該セグメントがポリアリーレン構造となるために化学的安定性も比較的良好となる傾向がある。イオン交換基を有しないセグメントを構成する繰り返し単位としては、(4b−2)、(4b−3)、(4b−10)及び(4b−13)が特に好ましい。
【0041】
高分子電解質としては、後述する溶液キャスト法により高分子電解質膜にしたとき、プロトン伝導性に寄与するイオン交換基を有するドメインと、機械的強度に寄与するイオン交換基を実質的に有しないドメインと、を併せ持つ膜、すなわち、これらのドメインが相分離構造を形成できる高分子電解質が好ましい。より好ましい高分子電解質は、ミクロ相分離構造が形成された膜が得られるものである。ここでいうミクロ相分離構造とは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)で見た場合に、
イオン交換基を有するセグメントの密度が、イオン交換基を実質的に有しないセグメントの密度よりも高い相(ドメイン)と、
イオン交換基を実質的に有しないセグメントの密度が、イオン交換基を有するセグメントの密度よりも高い相(ドメイン)と、
が混在し、各ドメインのドメイン幅すなわち恒等周期が数nm〜数100nmであるような構造を指す。好ましくはドメイン幅が5nm〜100nmのドメイン構造を有するものが挙げられる。なお、上述のイオン交換基を有するセグメントと実質的にイオン交換基を有しないセグメントとをともに有する、ブロック共重合体またはグラフト共重合体は、異種のセグメント同士が化学結合で結合されていることにより、ナノメートルサイズでの微視的相分離が生じやすいことから、このようなミクロ相分離構造の膜を得やすい点で好適である。
【0042】
特に好適なブロック共重合体の代表例としては、例えば
特開2005−126684号公報や特開2005−139432号公報に記載された芳香族ポリエーテル構造を有し、イオン交換基を有するブロック(セグメント)と、イオン交換基を実質的に有しないブロック(セグメント)と、からなるブロック共重合体;
特開2007−177197号公報に記載されたイオン交換基を有するポリアリーレンブロックを有するブロック共重合体;
が挙げられる。
【0043】
前記高分子電解質の分子量は、その構造などにより好適な範囲が異なるが、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量で表して、1000〜2000000の範囲が好ましい。当該数平均分子量の下限としては5000以上、とりわけ10000以上が好ましく、一方、上限としては1000000以下、とりわけ500000以下が好ましい。
【0044】
<高分子電解質膜>
本発明の高分子電解質膜は、酸素透過係数を前記の範囲にするためには、実質的に無多孔質であることが好ましい。多孔質の高分子電解質膜では酸素が透過し易くて、酸素透過係数を前記の範囲を満たすことができない。このような実質的に無多孔質の高分子電解質膜は、以下の(i)〜(iv)の工程を含む溶液キャスト法により製造される高分子電解質膜が好ましい。
(i)上述のような高分子電解質を、該高分子電解質を溶解し得る有機溶媒に溶解し、高分子電解質溶液を調製する工程;
(ii)前記(i)で得られた高分子電解質溶液を、比較的平滑な表面を有する支持基材上に流延塗工し、該支持基材上に高分子電解質流延膜を形成する工程;
(iii)前記(ii)で支持基材上に形成された高分子電解質流延膜から、前記有機溶媒を除去して、該支持基材上に高分子電解質膜を形成する工程;
(iv)前記(iii)の工程を行った後、支持基材と高分子電解質膜とを分離する工程
【0045】
ここで、前記溶液キャスト法に関する各工程(i)〜(iv)に関し順次説明する。
まず、(i)では上述のように高分子電解質溶液を調製する。ここで該高分子電解質溶液調製に使用する有機溶媒としては、使用する1種又は2種以上の高分子電解質を溶解し得るものが選ばれる。また、高分子電解質に加えて、高分子電解質以外の高分子や添加剤などの他の成分を用いる場合は、これら他の成分も共に溶解し得るものが好ましい。
該有機溶媒は、使用する高分子電解質を溶解し得る溶媒であり、具体的には、この高分子電解質を、25℃で1重量%以上の濃度で溶解し得る有機溶媒を意味する。好適には、該高分子電解質を5〜50重量%の濃度で溶解し得る有機溶媒を用いることが好ましい。
なお、高分子電解質として2種以上の高分子電解質を用いる場合、用いた高分子電解質を合計で1重量%以上の濃度で、好ましくは5〜50重量%以上の濃度で溶解し得る有機溶媒を用いる。また、この有機溶媒は、前記支持基材上に前記高分子電解質流延膜を形成した後に、加熱処理により除去し得る程度の揮発性が必要である。ただし、該有機溶媒は少なくとも1種、101.3kPa(1気圧)における沸点が150℃以上である有機溶媒を含むことが好ましい。前記高分子電解質を溶解し得る有機溶媒として沸点が150℃以下の有機溶媒のみを用いると、後述する(iii)で高分子電解質流延膜から有機溶媒を除去して高分子電解質膜を形成しようとすると、形成した高分子電解質膜に凹凸状の外観不良が発生するおそれがある。これは、沸点が150℃以上である有機溶媒では、前記高分子電解質流延膜から急激に有機溶媒が揮発してしまうためである。
【0046】
前記高分子電解質溶液の調製に好適な有機溶媒を例示すると、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ-ブチロラクトン(GBL)などの非プロトン性極性溶媒、あるいはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の有機溶媒を混合して用いることもできる。中でも、非プロトン性極性溶媒を含む有機溶媒が好ましく、実質的に非プロトン性極性溶媒からなる有機溶媒が特に好ましい。ここでいう実質的に非プロトン性極性溶媒からなる有機溶媒とは企図せず含有される水分などの存在を排除するものではない。該非プロトン性極性溶媒は、支持基材に対して親和性が比較的小さく、該支持基材に非プロトン性極性溶媒が吸収され難いという利点もある。また、上述の好適な高分子電解質であるブロック共重合体の溶解性が高いという点では、該非プロトン性極性溶媒の中でも、DMSO、DMF、DMAc、NMP、GBL又はこれらから選ばれる2種以上の混合溶媒が好ましい。
【0047】
次に、(ii)の工程について説明する。
この工程は、前記(i)で得られた高分子電解質溶液を支持基材上に流延塗工する工程である。該流延塗工の方法としては、ローラーコート法、スプレイコート法、カーテンコート法、スロットコート法、スクリーン印刷法などの各種手段を用いることができるが、好ましくは、ダイと呼ばれる一定クリアランスが設けられた金型により、所定の幅及び厚みに高分子電解質流延膜を賦型する手段が挙げられる。このようにして支持基材上に形成された高分子電解質流延膜は、塗工時に高分子電解質溶液中の有機溶媒の一部が揮発するために膜の形状を有するものとなる。この際の高分子電解質流延膜の膜厚は、3〜50μmになるようにしておくことが好ましい。このような膜厚の高分子電解質流延膜を得るには、使用する高分子電解質溶液の高分子電解質濃度、塗工装置の塗出量などを適宜調整すればよい。また、該支持基材が連続的に走行する基材である場合は、その支持基材の走行速度等で調節することもできる。
【0048】
(ii)で使用する支持基材としては、流延塗工に供する高分子電解質溶液に対して十分な耐久性を有し、後述する(iii)の工程での処理条件に対しても耐久性を有する材質からなるものが選択される。この場合の耐久性とは、高分子電解質溶液によって支持基材自身が実質的に溶け出さないことや、(iii)の工程の処理条件により、支持基材自身が膨潤や収縮を起こさず寸法安定性がよいことなどを意味するものである。
【0049】
該支持基材としては、たとえばガラス板;SUS箔、銅箔等の金属箔;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。また、このプラスチックフィルムには、上述したような耐久性を著しく損なわない範囲で、そのフィルム表面に対し、UV処理、離型処理、エンボス処理などの表面処理を行ってもよい。
【0050】
次に(iii)の工程に関し説明する。
この工程は前記(ii)において前記支持基材上に形成された高分子電解質流延膜に含有される前記有機溶媒を除去して、該支持基材上に高分子電解質膜を形成する工程である。このような除去には、乾燥又は洗浄溶媒による洗浄が推奨される。このような乾燥と洗浄とを組み合わせて、前記有機溶媒を除去することがより一層好ましく、乾燥と洗浄とを組み合わせる場合には、まず乾燥を行って、前記支持基材上に形成された高分子電解質流延膜に含有される前記有機溶媒のほとんどを除去した後、洗浄溶媒による洗浄を行うことが特に好ましい。
【0051】
ここでは、(iii)として好適な方法である乾燥と洗浄とを、この順で実施することについて詳述する。(ii)を経て得られた支持基材上に形成された高分子電解質流延膜から有機溶媒を乾燥除去するには、加熱、減圧、通風などの処理を採用することができるが、生産性が良好である点と、操作が容易である点で加熱処理が好ましい。この場合、高分子電解質流延膜が形成された支持基材(以下、場合により「第1の積層フィルム」という)を、直接加熱、温風接触などにより加熱処理する。高分子電解質流延膜中の高分子電解質を著しく損なわない点で、温風処理が特に好ましい。たとえば、該第1の積層フィルムが長尺状であり、かかる長尺状の第1の積層フィルムを連続的に処理する場合は、乾燥炉中に該第1の積層フィルムを通過させればよい。このときの乾燥炉は、40〜150℃の範囲、好ましくは50〜140℃に温度設定された温風を、該第1の積層フィルムの通過方向に対し垂直方向及び/又は対向方向に沿って送風する。こうすることにより、支持基材上にある高分子電解質流延膜から有機溶媒等の揮発成分が乾燥(蒸発)除去され、該支持基材上に高分子電解質膜が形成された第2の積層フィルムが形成する。
【0052】
このようにして得られた第2の積層フィルムの高分子電解質膜中には、まだ若干量の有機溶媒が含有されているため、この有機溶媒を洗浄溶媒で洗浄する。洗浄溶媒で洗浄することにより、外観等に優れる高分子電解質膜が得られ易い。前記高分子電解質溶液の調製において好適な有機溶媒である、DMSO、DMF、DMAc、NMP又はGBL、あるいはこれらの組合せからなる混合溶媒を使用した場合、前記洗浄溶媒には純水、特に超純水を使用することが好ましい。
【0053】
上述のように、第1の積層フィルムが長尺状であって連続的に走行している場合、乾燥炉を通過して連続的に形成された第2の積層フィルムは、たとえば洗浄溶媒を充填した洗浄槽中を通過させることにより洗浄することができる。また、乾燥炉を通過して連続的に形成された第2の積層フィルムを適当な巻芯に巻き取って巻取り体として後、この巻取り体を、洗浄処理を担う洗浄装置へと移し、移した巻取り体から第2の積層フィルムを洗浄槽へと送り出す形式で洗浄を行うこともできる。こうすることで、第2の積層フィルムにある高分子電解質膜の有機溶媒含有量をより一層低減することが可能である。
【0054】
かくして得られた第2の積層フィルムから支持基材を剥離などによって除去することにより高分子電解質膜は得られる。この高分子電解質膜は溶液キャスト法により得られたものであるため、実質的に無多孔質のものである。なお、ここでいう実質的に無多孔質とは、ボイドなどの微小貫通孔を含む貫通孔が高分子電解質膜に存在しないことを意味する。ただし、この高分子電解質膜は、それの酸素透過係数が前記の範囲にある程度の少数のボイド又は小さい径のボイドであれば、当該ボイドを有する膜であってもよい。
また、上述の溶液キャスト法による高分子電解質膜製造では、主として支持基材が連続的に走行している場合を説明したが、枚葉の支持基材を用いても、高分子電解質膜を得ることができる。この場合、枚葉の支持基材上に塗工された高分子電解質溶液は、適当な乾燥炉中に保管することで、有機溶媒を除去することができるし、このようにして得られた枚葉の第2の積層フィルムは、洗浄溶媒を備えた洗浄槽に浸漬すること等で洗浄処理を行うことができる。
また、洗浄後の第2の積層フィルムは、支持基材を除去した後、残存又は付着している洗浄溶媒を乾燥除去してもよいし、洗浄後の第2の積層フィルムをそのまま加熱すること等で残存又は付着している洗浄溶媒を乾燥除去した後、支持基材を除去してもよい。
【0055】
以上、前記溶液キャスト法による実質的に無多孔質の高分子電解質膜の製造方法を説明したが、既述のとおり、この高分子電解質膜には高分子電解質以外の成分(追加成分)を含有させることができる。
このような追加成分としては、通常の高分子に使用される可塑剤、安定剤、離型剤、保水剤等の添加剤が挙げられ、特に、安定剤が好適である。燃料電池は、その動作中に触媒層において過酸化物が生成することがあり、この過酸化物が電解質膜中を拡散しながらラジカル種に変化することがあり、これが該電解質膜を構成している高分子電解質を劣化させることがある。かかる不都合を回避するために、該電解質膜には、ラジカル耐性を付与し得る安定剤を添加することが好ましい。好適な安定化剤としては、耐酸化性や耐ラジカル性等の化学的安定性を高める安定化剤が挙げられる。
なお、これら追加成分は、溶液キャスト法を用いる際に、使用する高分子電解質溶液を調製する際に、該高分子電解質溶液にこれらの成分を添加しておけばよい。このような操作により、追加成分を用いたとしても、実質的に無多孔質の高分子電解質膜を得ることができる。
【0056】
本発明の高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上である。または、高分子電解質膜の第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される、該第1の面から該第2の面への水蒸気透過度が1.0×10−6mol/sec/cm以上である。なお、「相対湿度0%」とは、露点計を用いて測定される露点が−25℃以下であることを意味する。本発明者等は水蒸気の透過性を向上させることで、より発電性能に優れた高分子電解質膜となることを見出した。なお、該水蒸気透過係数は高いほど、より発電性能に優れた燃料電池を実現できる。該水蒸気透過係数あるいは水蒸気透過度を高くするための方法としては、該高分子電解質の膜厚を薄くする方法、イオン交換容量(IEC)を高くする方法のほかに、イオン交換基を有する繰り返し単位あたりに含まれるイオン交換基の密度を大きくする方法、イオン交換基のイオン解離度(酸強度)を高くする方法、などが挙げられる。酸強度を高くするための具体的な方法としては、導入するイオン交換基として、スルホ基・スルホニルイミド基などの強酸性基を用いる方法がある。あるいはイオン交換基のイオン解離度は隣接する芳香族基や置換基によって変化し、置換基の電子吸引性が高いほどイオン解離度が高くなるため、イオン交換基を有する繰り返し単位に電子吸引性置換基を導入することでもイオン交換基のイオン解離度を挙げることができる。ここでいう「電子吸引性置換基」とは、ハメット則のσ値が正である基である。該水蒸気透過係数は、1.0×10−9mol/sec/cm以上であると、さらに好ましい。また、本発明の高分子電解質膜は実質的に無多孔質であるために、水蒸気透過係数の向上には限界があり、さらにその実用的な強度等を勘案すると、該水蒸気透過係数は1.0×10−6mol/sec/cm以下であると好ましい。ここで、水蒸気透過係数の測定について詳細を説明する。まず、測定に供する高分子電解質膜の両側に、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータ(ガス流通面積1.3cm)を配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置する。そして、該高分子電解質膜と該カーボン製セパレータの間には、セパレータのガス流通部と同じ形状の1.3cmの開口部を持つシリコン製ガスケットを配置する。これらをボルトで締め付けることで、水蒸気透過性測定用のセルを組み立てる。このセルの片側に、相対湿度20%の水素ガスを流量1000mL/minで、もう一方の側には相対湿度約0%の空気を流量200mL/minで各々流す。この場合の背圧は両側とも圧力0.04MPaに設定する。空気出口側に露点計を設置し、出口ガスの露点を計測することにより、出口空気中に含まれる水分量を測定し、該水分量から後述の水蒸気透過度[mol/sec/cm]を算出する。該水蒸気透過度に高分子電解質膜厚を乗じることで、水蒸気透過係数[mol/sec/cm]を算出する。
【0057】
また、本発明の高分子電解質膜は実質的に無多孔質であり、以下のようにして求められる酸素の透過係数(酸素透過係数)が1.0×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下である。
[酸素透過係数]
高分子電解質膜の第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への酸素透過係数を、上述の水蒸気透過係数測定で説明した構成と同じセルを組立、このセルの片側に酸素ガスを、他方側にヘリウムガスを各々流す。そして、ガス透過測定装置(GTRテック(株)製、型式:GTR−30XAF3SC)を用い、等圧法にて後述の酸素透過度[cc/m・24h・atm]を測定し、該酸素透過度に該高分子電解質膜厚を乗し、酸素透過係数[cc・cm/cm・sec・cmHg]を算出することができる。なお、高分子電解質膜をさらするセルの温度は85℃、酸素ガス側の相対湿度を20%、測定側(ヘリウムガス側)の相対湿度は約0%とする。
【0058】
このように水蒸気透過係数及び酸素透過係数を本発明の範囲内になるようにして、吸湿時に十分な機械強度を有し、適度な厚みの高分子電解質膜を得るには、上述した溶液キャスト法による高分子電解質膜製造において、その環境温度を一定の範囲で維持することが極めて重要である。具体的には、環境温度の誤差を±2℃に維持することが好ましい。このような環境温度の維持には、溶液キャスト法に係る前記(i)〜(iv)の工程を一定温度に維持された恒温室で実施する。使用する高分子電解質の種類にもよるが、この恒温室による環境温度は23℃±2℃であることが好ましい。また、厚みが薄い高分子電解質膜を得るには、その環境湿度も一定の範囲に維持することがさらに好ましく、具体的には、環境湿度を40〜60%RHの範囲にしておくことが好ましく、かかる環境湿度の維持には、溶液キャスト法に係る前記(i)〜(iv)の工程を恒温恒湿室で実施すればよい。また、実質的に無多孔質の高分子電解質膜を効率よく製造するためには、環境中のダスト等の浮遊物の存在を排除することがより好ましいので、温度23℃±2℃、湿度40〜60%RHに管理されたクラス10000程度のクリーンルーム中で高分子電解質膜を製造することがより一層好ましい。
【0059】
また、本発明の高分子電解質膜は、JIS K 7127に準拠して80℃、相対湿度90%において実施した引っ張り試験において、その破断応力が20MPa以上である。
【0060】
また、本発明の高分子電解質膜は、このような酸素透過係数を満たす程度に無多孔質でありながら、水蒸気透過係数が高いものである一方で、高分子電解質膜が吸湿した際の機械強度が高いものである。このような特性を水蒸気透過度及び/又は酸素透過度で表した場合について記す。なお、「水蒸気透過度」とは、水蒸気透過係数を測定する場合と同環境、すなわち該高分子電解質膜の第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらしたとき、単位時間および単位面積当たりに該第1の面から該第2の面への透過した単位時間および単位面積当たりの水蒸気の量で表したものであり、該水蒸気透過度は1.0×10−6mol/sec/cm以上であることが好ましく、1.5×10−6mol/sec/cm以上であるとさらに好ましい。
一方、「酸素透過度」とは、酸素透過係数を測定する場合と同様の環境、すなわち、該高分子電解質膜の第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらしたとき、該第1の面から該第2の面へ透過した酸素量を表したものであり、該酸素透過度は7.0×10cc/m・24h・atm以下である程度に無多孔質であることが好ましく、5.0×10[cc/m・24h・atm以下がさらに好ましい。なお、高分子電解質膜をさらするセルの温度は85℃、酸素ガス側の相対湿度を20%、測定側(ヘリウムガス側)の相対湿度は約0%とする。
【0061】
<固体高分子形燃料電池>
最後に、本発明の高分子電解質膜を用いた燃料電池に関し、簡単に説明する。
【0062】
図1は、好適な実施形態に係る燃料電池の断面構成を模式的に示す図である。図1に示すように、燃料電池10は、前記電解質膜12(プロトン伝導膜)の両側に、これを挟むようにアノード側触媒層14a,カソード側触媒層14bを備え、両触媒層にそれぞれガス拡散層16a,16bおよびセパレータ18a,18bが順に形成されている。電解質膜12と、これを挟む両触媒層14a,14bとから、膜−電極接合体(以下、場合により「MEA」という)20が構成されている。
【0063】
このようにして形成されたMEA20は、以下の条件で発電試験を行ったとき、電圧0.1Vを下回る温度が85℃以上であるという優れた高温発電性を発現できる。同条件による電圧0.1Vを下回る温度は90℃以上であるとさらに好ましい。
[発電試験]
膜−電極接合体の両外側に、ガス拡散層としてカーボンペーパーと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータを配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効電極面積1.3cmの燃料電池セルを組み立てる。次いで、この燃料電池セルを60℃に保ち、アノードに加湿水素、カソードに加湿空気をそれぞれ供給する。セルのガス出口における背圧は両極とも0.1MPaGとした。各原料ガスの加湿は、水素用バブラーの水温は45℃、空気用バブラーの水温は55℃とし、水素のガス流量を335mL/min、空気のガス流量を1045mL/minとする。1.6A/cmの電流を取り出しながら、燃料電池セルの温度を高めていき、電圧が0.1Vを下回る温度を測定する。
【0064】
ガス拡散層16a,16bは、MEA20の両側を挟むように設けられており、触媒層14a,14bへの原料ガスの拡散を促進するものである。このガス拡散層16a,16bは、電子伝導性を有する多孔質材料により構成されるものが好ましく、前記の触媒層の製造方法(b)の基材として示したカーボンペーパー等が使用され、原料ガスを触媒層14a,14bへ効率的に輸送できるものを選択する。
【0065】
これらの電解質膜12、触媒層14a,14bおよびガス拡散層16a,16bから膜−電極−ガス拡散層接合体(MEGA)が構成されている。
【0066】
セパレータ18a,18bは、電子伝導性を有する材料で形成されており、かかる材料としては、例えば、カーボン、樹脂モールドカーボン、チタン、ステンレス等が挙げられる。かかるセパレータ18a,18bは、図示しないが、アノード側触媒層14aへ燃料ガス、カソード側触媒層14bに酸化剤ガスを供給する流路となる溝が形成されている。
【0067】
そして、燃料電池10は、上述したようなMEGAを、一対のセパレータ18a,18bで挟み込み、これらを接合することで得ることができる。
【0068】
また、燃料電池10は、上述した構造を有するものを、ガスシール体等で封止したものであってもよい。さらに、前記構造の燃料電池10は、直列に複数個接続して、燃料電池スタックとして実用に供することもできる。そして、このような構成を有する燃料電池は、燃料が水素である場合は固体高分子形燃料電池として、また燃料がメタノール水溶液である場合は直接メタノール型燃料電池として用いることができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[水蒸気透過性の測定]
高分子電解質膜の両側に、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータ(ガス流通面積1.3cm)を配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置した。なお、該高分子電解質膜と該カーボン製セパレータの間には、セパレータのガス流通部と同じ形状の1.3cmの開口部を持つシリコン製ガスケットを配置した。これらをボルトで締め付けることで、水蒸気透過性測定用のセルを組み立てた。
セルの温度を85℃とし、セルの片側に、相対湿度20%の水素ガスを流量1000mL/minにて、またもう一方の側には相対湿度約0%の空気を流量200mL/minにて流した。なお、背圧は両側とも0.04MPaに設定した。空気出口側に露点計を設置し、出口ガスの露点を計測することにより、出口空気中に含まれる水分量を測定し、水蒸気透過係数[mol/sec/cm]ならびに水蒸気透過度[mol/sec/cm]を算出した。
【0072】
[酸素透過性の測定]
ガス透過測定装置(GTRテック(株)製、型式:GTR−30XAF3SC)を用い、等圧法にて酸素透過係数[cc・cm/cm・sec・cmHg]ならびに酸素透過度[cc/m・24h・atm]を測定した。高分子電解質膜をさらするセルの温度は85℃、酸素ガス側の相対湿度を20%、測定側(ヘリウムガス側)の相対湿度は約0%とした。
【0073】
[引っ張り試験]
高分子電解質膜の破断応力は、JIS K−7127に準じた引っ張り試験にて測定した。具体的には、環境制御型引張試験機(インストロン社製)を用いた。温度80℃、相対湿度90%下に2時間以上おいた高分子電解質膜を、引っ張り速度10mm/minで引っ張り試験に処して破断応力を測定した。
【0074】
[分子量測定]
下記条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、ポリスチレン換算を行うことによって高分子電解質の重量平均分子量及び数平均分子量を算出した。
GPC条件
測定装置 :島津製作所社製 Prominence GPCシステム
カラム :東ソー社製 TSKgel GMHHR−M
カラム温度:40℃
移動相溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド
(10mmol/dmのLiBrを含む)
溶媒流量 :0.5mL/min
【0075】
[イオン交換容量の測定]
測定に供するポリマーを溶液キャスト法により成膜したポリマー膜を得、得られたポリマー膜を適当な重量になるように裁断した。裁断したポリマー膜の乾燥重量を加熱温度110℃に設定されたハロゲン水分率計を用いて測定した。次いで、このようにして乾燥させたポリマー膜を0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液5mLに浸漬した後、更に50mLのイオン交換水を加え、2時間放置した。その後、ポリマー膜が浸漬された溶液に、0.1mol/Lの塩酸を徐々に加えることで滴定を行い、中和点を求めた。そして、裁断したポリマー膜の乾燥重量と中和に要した塩酸の量から、ポリマーのイオン交換容量(単位:meq/g)を算出した。
【0076】
[触媒インク調製]
市販の5質量%ナフィオン(デュポン社登録商標)溶液(アルドリッチ社製、溶媒:水と低級アルコールの混合物)3.15gに、50質量%の白金が担持された白金担持カーボン(エヌ・イー・ケムキャット社製、商品名:SA50BK)を0.50g投入し、さらに水3.23g及びエタノール21.83gを加えた。得られた混合物を1時間超音波処理した後、スターラーで6時間攪拌して触媒インクを得た。
【0077】
[MEAの作製]
後述する高分子電解質膜の片面の中央部における1cm×1.3cmの領域に、スプレー法にて上記の触媒インクを塗布した。この際、吐出口から膜までの距離は6cm、ステージ温度は75℃に設定した。同様にして重ね塗りをした後、溶媒を除去してアノード触媒層を形成させた。アノード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)が塗布された。続いて、もう一方の面に同様に触媒インクを塗布して、カソード触媒層を形成させて、MEA1を得た。カソード触媒層として2.1mgの固形分(白金目付け:0.6mg/cm2)が塗布された。
【0078】
[燃料電池セルの組み立て]
上記で得られたMEA1の両外側に、ガス拡散層としてカーボンクロスと、ガス通路用の溝を切削加工したカーボン製セパレータを配し、さらにその外側に集電体及びエンドプレートを順に配置し、これらをボルトで締め付けることによって、有効電極面積1.3cmの燃料電池セルを組み立てた。
【0079】
[発電特性評価]
得られた燃料電池セルを60℃に保ち、アノードに加湿水素、カソードに加湿空気をそれぞれ供給した。セルのガス出口における背圧は両極とも圧力0.04MPaとした。各原料ガスの加湿は、水の入ったバブラーにガスを通すことで行い、水素用バブラーの水温は45℃、空気用バブラーの水温は55℃とした。ここで、水素のガス流量は335mL/min、空気のガス流量は1045mL/minとした。1.6A/cmの電流を取り出しながら、燃料電池セルの温度を高めていき、電圧が0.1Vを下回る温度を測定した。
【0080】
[合成例1]
特開2007−177197号公報及び特開2007‐284653号公報に記載されている方法を参考にして、住友化学製スミカエクセルPES5200P(Mn=5.4×10、Mw=1.2×10)のかわりに住友化学製スミカエクセルPES3600P(Mn=2.7×10、Mw=4.5×10)を用いて下記構造を有する高分子電解質1を合成した。


Mn 1.6×10
Mw 3.3×10
イオン交換容量(IEC) 2.7meq/g
【0081】
[合成例2]
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル10.2g(54.7mmol)、炭酸カリウム8.32g(60.2mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド96g、トルエン50gを加えた。バス温155℃で2.5時間、トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。トルエンおよび生成した水を留去した後、得られた混合物を室温まで放冷し、これに4,4’−ジクロロジフェニルスルホン22.0g(76.6mmol)を加えて混合物を得た。バス温を160℃に上げ、14時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1000gと35重量%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物27.2gをN,N−ジメチルアセトアミド97gに溶解し、不溶物を濾過により除去した後、濾液をメタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥し、下記式(A−1)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導するための前駆体ポリマー25.9gを得た。
GPC分子量: Mn=1700、Mw=3200


【0082】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル2.12g(9.71mmol)、N−メチルピロリドン96gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル1.82g(11.7mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(A−1)で表されるポリマー4.02g、N−メチルピロリドン384gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.81g(58.2mmol)、メタンスルホン酸1重量とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液1.05g、および、特開2007−270118実施例1記載の方法により合成した4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)24.0g(45.9mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で6時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸3360gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸3360gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水840gと、メタノール790gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー23.9gを得た。
【0083】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー23.9g、イオン交換水47.8g、無水臭化リチウム15.9g(183mmol)及びN−メチルピロリドン478gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸3340gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、これをメタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液2390gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し、濾過する洗浄操作を、5回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(A−2)で表される高分子電解質2を17.25g得た。
GPC分子量: Mn=340000、Mw=706000
IEC: 4.6meq/g

【0084】
[合成例3]
共沸蒸留装置を備えたフラスコに、窒素雰囲気下、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン14.8g(42.3mmol)、炭酸カリウム6.43g(46.5mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド95g、トルエン48gを加えた。バス温155℃で3時間、トルエンを加熱還流することで系内の水分を共沸脱水した。生成した水とトルエンを留去した後、得られた混合物に4,4’−ジクロロジフェニルスルホン17.0g(59.2mmol)を加えて混合物を得た。バス温を160℃に上げ、14時間保温下に前記混合物を撹拌した。放冷後、反応液を、メタノール1000gと35重量%塩酸200gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、乾燥した。得られた粗生成物をN,N−ジメチルホルムアミド95gに溶解し、得られた溶液をメタノール1100gと35重量%塩酸100gとの混合溶液に加え、析出した沈殿を濾過により捕集した後、イオン交換水で中性になるまで洗浄し、メタノール1000gで洗浄し、乾燥し下記式(B−1)で表されるイオン交換基を実質的に有しないセグメントを誘導する前駆体25.4gを得た。
GPC分子量: Mn=2000、Mw=3500

【0085】
次に、アルゴン雰囲気下、フラスコに無水臭化ニッケル3.41g(15.6mmol)、N−メチルピロリドン200gを加え、生じた混合物をバス温70℃で攪拌した。無水臭化ニッケルが溶解したのを確認した後、バス温を50℃に下げ、2,2’−ビピリジル2.93g(18.7mmol)を加え、ニッケル含有溶液を調製した。
アルゴン雰囲気下、フラスコに上記式(B−1)で表されるポリマー3.35g、N−メチルピロリドン240gを加え50℃に調整した。得られた溶液に、亜鉛粉末3.06g(46.9mmol)、メタンスルホン酸1重量部とN−メチルピロリドン9重量部との混合溶液0.863g、および、特開2007−270118実施例1記載の方法により合成した4,4’−ジクロロビフェニル−2,2’−ジスルホン酸ジ(2,2−ジメチルプロピル)20.0g(38.2mmol)を加え、生じた混合物を50℃で30分間撹拌した。これに、前記ニッケル含有溶液を注ぎ込み、50℃で5時間重合反応を行い、黒色の重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、13重量%塩酸2800gに投入し、室温で30分間撹拌した。生じた沈殿を濾過により捕集した後、これを13重量%塩酸2800gに加え、室温で30分間撹拌し、その後、濾過した。捕集された固体を、イオン交換水で濾液のpHが4を越えるまで洗浄した。得られた粗ポリマーに、イオン交換水600gと、メタノール700gを加え、バス温90℃で1時間加熱撹拌した。粗ポリマーをろ過し、乾燥することで、スルホン酸前駆基(スルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)基)を有するポリマー20.5gを得た。
【0086】
次に、以下のようにしてスルホン酸前駆基をスルホ基に変換した。
上述のようにして得られたスルホン酸前駆基を有するポリマー19.7g、イオン交換水44.2g、無水臭化リチウム13.3g(153mmol)及びN−メチルピロリドン295gをフラスコに入れ、生じた混合物をバス温126℃で12時間加熱撹拌し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液を13重量%塩酸2751gに投入し、1時間攪拌した。析出した粗ポリマーを濾過により捕集し、これをメタノール10重量部と35%塩酸10重量部との混合溶液983gで洗浄する操作を3回繰り返した。その後、濾液のpHが4を越えるまで粗ポリマーをイオン交換水で洗浄した。続いて、得られたポリマーに大量のイオン交換水を加え、90℃以上に昇温し、約10分間加熱保温し、濾過する洗浄操作を、4回繰り返した。得られたポリマーを乾燥することにより下記式(B−2)で表される高分子電解質3を15.1gを得た。
GPC分子量: Mn=362000、Mw=683000
IEC: 4.7meq/g


【0087】
[高分子電解質膜1〜2の作製]
合成例1で得られた高分子電解質1をN,N−ジメチルスルホキシドに溶解して、濃度が10重量%の溶液を調製した。これを高分子電解質溶液(A)とする。
得られた高分子電解質溶液(A)を、スロットダイを用いて、支持基材である巾300mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製、E5000グレード)に連続的に流延塗布して、連続的に熱風ヒーター乾燥炉へと搬送し、溶媒を除去した。このとき、流延塗布する高分子電解質溶液の厚みを変えることで、2種の高分子電解質膜中間体を得た。得られた高分子電解質膜中間体を2N塩酸に2時間浸漬後、2時間水洗を行い、更に風乾し、支持基材から剥離することで高分子電解質膜1、高分子電解質膜2を作製した。
高分子電解質膜1、高分子電解質膜2の膜厚は、それぞれ5.6μm、21.1μmであった。
【0088】
[高分子電解質膜3、4の作製]
合成例2で得られた高分子電解質2をN―メチルピロリドンに溶解し、高分子電解質溶液を調製した。その後、得られた高分子電解質溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、約20μmの高分子電解質膜3および約10μmの高分子電解質膜4を作製した。
【0089】
[高分子電解質膜5の作製]
合成例3で得られた高分子電解質3をN―メチルピロリドンに溶解し、高分子電解質溶液を調製した。その後、得られた高分子電解質溶液をPETフィルム上に流延塗布し、常圧下、80℃で2時間乾燥させる事により溶媒を除去した後、塩酸処理、イオン交換水での洗浄を経て、約20μmの高分子電解質膜45を作製した。
【0090】
(実施例1〜4)
高分子電解質膜1、高分子電解質膜3、高分子電解質膜4、高分子電解質膜5の水蒸気透過係数、酸素透過係数、水蒸気透過度、酸素透過度、引っ張り強度、発電特性を評価した。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例1)
高分子電解質膜2の水蒸気透過係数、酸素透過係数、水蒸気透過度、酸素透過度、引っ張り強度、発電特性を評価した。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
市販のパーフルオロスルホン酸ポリマーからなる膜であるNRE211CS(DuPont社製)の水蒸気透過係数、酸素透過係数、発電特性を評価した。なお、NRE211CSの膜厚は26.5μmであった。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【符号の説明】
【0094】
10…燃料電池、12…高分子電解質膜、14a…アノード触媒層、14b…カソード
触媒層、16a,16b…ガス拡散層、18a,18b…セパレータ、20…膜−電極接
合体(MEA)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上であり、温度80℃、相対湿度90%における破断応力が20MPa以上であることを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項2】
高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過係数が7.0×10−10mol/sec/cm以上であり、該第1の面から該第2の面への酸素透過係数が1.0×10−9cc・cm/cm・sec・cmHg以下であることを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項3】
前記高分子電解質のイオン交換容量が3.0meq/g以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項4】
前記高分子電解質膜の厚みが、10μm以上40μm以下あることを特徴とする請求項3に記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
前記高分子電解質膜の厚みが、3μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
前記高分子電解質のイオン交換容量が2.0meq/g以上3.0meq/g以下であることを特徴とする請求項5に記載の高分子電解質膜。
【請求項7】
高分子電解質を含み、第1の面と第2の面とを有する高分子電解質膜であって、
該高分子電解質膜は、前記第1の面を、温度85℃、相対湿度20%の加湿環境下にさらし、前記第2の面を温度85℃、相対湿度0%の無加湿環境下にさらした状態で測定される該第1の面から該第2の面への水蒸気透過度が1.0×10−6mol/sec/cm以上であり、該第1の面から該第2の面への酸素透過度が5.0×10cc/m・24h・atm以下であることを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項8】
前記高分子電解質が炭化水素系高分子電解質であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項9】
前記高分子電解質が芳香族系高分子電解質であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項10】
前記高分子電解質がイオン交換基を有するセグメントと、イオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有し、該イオン交換基を有するセグメントが下記式(1a)、(2a)、(3a)または(4a)で表される構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の高分子電解質膜。

(式中、Ar1〜Ar9は、互いに独立に、主鎖に芳香族環を有し、さらに芳香族環を有する側鎖を有してもよい芳香族基を表す。該主鎖の芳香族環か側鎖の芳香族環の少なくとも1つが該芳香族環に直接結合したイオン交換基を有する。
Z、Z’は互いに独立にCO、SO2のいずれかを表し、X、X’、X”は互いに独立にO、Sのいずれかを表す。Yは直接結合もしくは下記一般式(10)で表される基を表す。pは0、1又は2を表し、q、rは互いに独立に1、2又は3を表す。)

(式中、R1及びR2は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ基又は置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアシル基を表し、R1とR2とが連結して環を形成していてもよい。)
【請求項11】
前記Ar1〜Ar9がそれぞれ、主鎖を構成する芳香族基に少なくとも1つのイオン交換基を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項12】
前記高分子電解質は、イオン交換基を有するセグメントとイオン交換基を実質的に有しないセグメントとを有する共重合体電解質であって、共重合様式がブロック共重合又はグラフト共重合である共重合体電解質であり、
前記高分子電解質膜は、該イオン交換基を有するセグメントの密度が該イオン交換基を実質的に有しないセグメントの密度より高い相と、
該イオン交換基を実質的に有しないセグメントの密度が該イオン交換基を有するセグメントの密度より高い相と、
を有するミクロ相分離構造を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の高分子電解質膜を有することを特徴とする膜−電極接合体。
【請求項14】
請求項13に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする固体高分子形燃料電池。

【図1】
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【公開番号】特開2011−103295(P2011−103295A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232304(P2010−232304)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】