説明

高前側比アンテナ

【課題】 小型でありながら、充分に側方からの電波を除去する。
【解決手段】 それぞれ受信しようとする電波の中心波長の約1/2の長さのエレメントを水平方向に有する2つの八木形アンテナ2、4を、ほぼ前記中心波長の約1/2の間隔を水平方向にあけ、かつ垂直方向に前記電波のほぼ中心波長の間隔をあけて配置し、これら八木形アンテナ2、4の受信信号をそのまま混合器36によって混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い前側比を有するアンテナに関し、特に複数のアンテナを組み合わせたものに関する。
【背景技術】
【0002】
高い前側比を有するアンテナとしては、例えばスタックアンテナがある。スタックアンテナの一例が非特許文献1に開示されている。このスタックアンテナは、3素子または5素子の2基のVHFローチャンネル用八木形アンテナを同一水平面に所定の間隔を隔てて配置したものである。
【0003】
【非特許文献1】http://www.h−kokusai.com/product/yg/pdf/2004sougou/WEB_P025−28.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように構成されたスタックアンテナでは、位相器を使用しないで両アンテナの受信信号を合成する場合には、両アンテナの間隔を受信波長の1/2の奇数倍にすることによって、側方から到来する電波を除去しようとしている。しかし、1/2波長の間隔とした場合、両八木アンテナの反射器素子の先端同士が物理的に干渉する。さらに両アンテナの間隔が狭いため電気的な干渉も生じる。そのため、充分に側方からの電波を除去することができない。両アンテナの間隔を1.5波長、3波長と広げると、上記のような問題は解消されるが、スタックアンテナが大型になる上に、受信帯域幅が狭くなると言う新たな問題が生じる。
【0005】
本発明は、小型でありながら充分に側方からの電波を除去することができる高前側比アンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の高前側比アンテナは、少なくとも2つの同一特性の指向性アンテナを有している。これら指向性アンテナは、後述するように八木形アンテナとすることもできるし、ダイポールアンテナ、ループアンテナ、折り返しダイポールアンテナ等のように種々の指向性アンテナとすることができ、特に水平方向にエレメントを有するもので、少なくとも2つの指向性アンテナは、両者の指向性の方向を揃えて配置されている。エレメントは、受信しようとする電波の波長の約1/2の長さを有するものである。これら指向性アンテナは、受信しようとする電波の中心波長の約1/2の間隔を水平方向にあけて配置され、かつ垂直方向に前記電波のほぼ中心波長の間隔をあけて配置されている。合成手段が、前記少なくとも2つの指向性アンテナからの受信信号をそのまま合成する。
【0007】
このように構成された高前側比アンテナでは、少なくとも2つの指向性アンテナは、水平方向に1/2波長の間隔しかあけてないにも拘わらず、垂直方向に約1波長の間隔をあけてあるので、少なくとも2つの指向性アンテナのエレメントが物理的に干渉することがなく、しかも電気的にも干渉することがない。そのため、水平方向での小型化を維持した上で、側方からの不要な電波を除去することができるし、受信周波数帯域幅が狭まることもない。さらに、少なくとも2つの指向性アンテナは垂直方向に間隔をあけて配置されているので、いずれの指向性アンテナも相手側のアンテナの影になることがないので、受信信号の振幅が同一となり、両受信信号の振幅を揃えるために減衰器等を挿入する必要がない。
【0008】
前記少なくとも2つの指向性アンテナを八木形アンテナとすることができる。これら八木アンテナは、指向性の方向を揃えて配置されている。八木形アンテナを使用しているので、その指向性は、一方の方向に生じるので、側方からの不要な電波の除去がより効率的となる。
【0009】
前記八木形アンテナが、水平方向に配置された反射器を有することが望ましく、その長さは前記中心波長の1/2以上である。八木形アンテナにおいて最も素子の長さが長いのは反射器であり、その反射器が物理的に干渉しないように構成することができる。
【0010】
上述した少なくとも2つの指向性アンテナの他に、同一構成の指向性アンテナを複数設けることができる。その場合、新たに追加される指向性アンテナは、上記少なくとも2つの指向性アンテナのうち上側に位置するものから更に上側に間隔をあけて配置されるものと、下側に位置する指向性アンテナから更に下側に間隔をあけて配置されるものとを含む。
【0011】
このように構成すると、使用される指向性アンテナの数を増加させることができるので、この高前側比アンテナの合成利得を向上させることができる。
【0012】
前記少なくとも2つの指向性アンテナは、1つのアームに取り付けることができる。この場合、アームは、水平部と、この水平部の一端から上方に伸び、一方の指向性アンテナが取り付けられる第1垂直部と、前記水平部の他端部から下方に伸び、他方の指向性アンテナが取り付けられる第2垂直部とを、具備している。このアームは、絶縁体製とすることが望ましい。
【0013】
このような水平部及び2つの垂直部を有するアームを使用しているので、前記少なくとも2つの指向性アンテナを水平方向及び垂直方向それぞれに上述したような間隔を維持して配置することが、容易に行える。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明による高前側比アンテナは、小型でありながら充分に側方からの電波を除去することができるし、高利得とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態の高前側比アンテナは、図1(a)、(b)に示すように、複数本の指向性アンテナ、例えば2本の八木形アンテナ2、4を有している。これら八木形アンテナ2、4は、例えばUHF帯のテレビジョン放送信号を受信するためのもので、同一の構成のものである。
【0016】
図2(a)、(b)に八木形アンテナ2を単独で示す。この八木形アンテナ2は、絶縁体、例えばプラスチック製の直線状のアーム6を有している。
【0017】
このアーム6の一端部から他端部に向けて、複数本、例えば11本の導波エレメント8が、アーム6に直交するようにアーム6に挿通されている。これら導波エレメント8の長さは、例えば160mmで、間隔は、アーム6の一方の端部側から例えば85mm、85mm、80mm、80mm、70mm、65mm、70mm、65mm、60mm、50mmである。これら11本の導波エレメント8のうちアーム6の最も他端部側にあるものから、例えば55mmの間隔をおいて別の導波エレメント10がアーム6に直交するようにアームに挿通されている。この導波エレメント10の長さは例えば176mmである。
【0018】
この導波エレメント10よりもアーム6の他端部側によった位置に放射器ボックス12が設けられている。この放射器ボックス12には、放射エレメント10と例えば35mmの間隔をおいて、例えば全長が282mmの放射エレメント14が取り付けられている。さらに、この放射エレメント14から例えば50mmの間隔をおいて例えば全長が336mmの放射エレメント16が放射器ボックス12に取り付けられている。
【0019】
アーム6の他端部には、アーム6の一端部側に向かって広がった反射器アーム18、18が取り付けられている。これら反射器アーム18、18は、アーム6に対してそれぞれ約60度の角度をなしている。反射器アーム18、18の先端間の距離は、例えば518mmである。これら反射器アーム18、18のアーム6側には、放射器エレメント16から例えば102mmの間隔をおいて反射器エレメント20、20が放射器アーム18、18に直交するように挿通されている。これら反射器エレメント20、20の間隔は、例えば114mmである。これら反射器エレメント20、20から反射器アーム18、18の長さ方向に110mmずつ間隔をおいて別の反射器エレメント22、22が反射器アーム18、18にそれぞれ挿通されている。これら反射器エレメント20、22は、いずれも340mmの長さを有している。このアンテナ2は、受信中心周波数が500MHzのものであり、各反射器エレメント20、22は、UHF帯受信低域周波数470MHzの半波長(320mm)よりも長く形成されている。
【0020】
上述したように八木形アンテナ2、4は同一構成であるので、八木形アンテナ4の各構成要素にも、八木形アンテナ2の構成要素と同一の符号を付して、説明を省略する。
【0021】
図1(a)、(b)に示すように、上述した構成の八木形アンテナ2、4が、水平及び垂直方向にそれぞれ間隔をおいて配置されている。そのため、八木形アンテナ2、4は、図1(b)に示すようなアーム24に取り付けられている。このアーム24は、水平部24aを有し、これの中央に支柱26が取り付けられている。この水平部24aの一端部に、水平部24aと垂直に上方に伸びた垂直部24bが一体に形成されている。同様に、水平部24aの他端部に、水平部24aと垂直に下方に伸びた垂直部24cが一体に形成されている。このアーム24は、絶縁体、例えばプラスチック製とすることが望ましい。
【0022】
図1(a)に示すように、垂直部24bの上端部に、概略U字状の絶縁体製補助アーム28を介して八木形アンテナ2のアーム6が固定されている。このとき、アーム6はほぼ水平に配置されている。同様に、垂直部24cの下端部に、概略U字状の絶縁体製補助アーム30を介して八木形アンテナ4のアーム6が固定されている。このとき、八木形アンテナ4のアーム6も水平に配置され、しかも八木形アンテナ2、4は、それらのアーム6の一端部が同一方向を向くように、即ち同一の指向性を持つように、かつアーム6、6の一端部が同一の水平方向の位置に位置するように配置されている。
【0023】
これら八木形アンテナ2、4の垂直方向の間隔(アーム6、6の中心間の距離)は、600mm(中心受信周波数の1波長)である。また、八木形アンテナ2、4の水平方向の間隔は、300mm(中心受信周波数の半波長)である。このように水平及び垂直方向に八木形アンテナ2、4を配置できるようにアーム24の水平部24a、垂直部24b、24cの長さ寸法が設定されている。
【0024】
これら八木形アンテナ2、4の各受信信号は、図3に示すように同一の長さの伝送線路、例えば同軸ケーブル32、34を介して混合器36において混合され、出力端子38から出力される。同軸ケーブル32、34中には移相器や減衰器は設置されていない。即ち、八木形アンテナ2、4の受信信号が、そのまま混合器36において混合される。
【0025】
図4乃至図6は、八木形アンテナ2または4単体の479MHz、500MHz、509MHzにおける指向特性図で、妨害波が例えば前左側60度方向の場合、F/B比、半値幅及び前側比が、順に図4では21dB、57度、14dB、図5では21.9dB、55度、14dB、図6では21.9dB、55度、14dBである。また、図7乃至図9は、この高前側比アンテナの479MHz、500MHz、509MHzにおける指向特性図で、妨害波が例えば前左側60度方向の場合、F/B比、半値幅及び前側比が、順に図7では22.1dB、43度、25dB以下、図8では24.5dB、41度、25dB以下、図9では23.9dB、41度、25dB以下である。これらから明らかなようにF/B比及び半値幅が共にいずれの周波数においても改善しており、F/B比は最大で2.6dB改善し、半値幅はいずれも14度も改善し、前側比が14dBから25dB以下に大きく改善されている。従って、この高前側比アンテナでは、八木形アンテナ2または4を単体で使用している場合よりも、側方から到来する不要な電波を大幅に抑圧している。この実施形態では、妨害波が前左側60度方向の場合について説明したが、90度±30度の範囲の方向からの妨害波を大幅に抑圧可能である。
【0026】
このような改善が図れているのは、水平方向に約1/2波長の間隔を隔てて八木形アンテナ2、4を配置した上に、上下方向に約1波長の間隔をおいて配置しているからである。即ち、上下方向に約1波長の間隔をおいて八木形アンテナ2、4を配置しているので、それぞれ1/2波長よりも長い長さを持つ八木形アンテナ2、4の反射器エレメント20、22を物理的に干渉することなく配置することが可能となり、しかも、両八木形アンテナ2、4が電気的に干渉することもない。また、上下方向に間隔をおいて八木形アンテナ2、4が配置されているので、八木形アンテナ2が八木形アンテナ4の影になることがなく、逆に八木形アンテナ4が八木形アンテナ2の影になることもない。従って、どちらの八木形アンテナ2、4の側方から到来する電波も同じ振幅でどちらの八木形アンテナ2、4で受信される。従って、図3に示すように減衰器等を介さずに混合器36に八木形アンテナ2、4の受信信号を供給することによって、側方からの電波を抑圧することができる。
【0027】
図9は、この高前側比アンテナの周波数対利得特性を実線で、八木形アンテナ2または4単体の周波数対利得特性を破線で示したものである。この図から明らかなように、この八木形アンテナの方が約3dB利得が上昇している。
【0028】
本発明の第2の実施形態の高前側比アンテナを図10に示す。この高前側比アンテナでは、八木形アンテナが八木形アンテナ2a、2b、4a、4bの4台とされている。これら八木形アンテナ2a、2b、4a、4bは、第1の実施の形態における八木形アンテナ2、4と同一のものである。八木形アンテナ2a、2bは、アーム24の垂直部24bに上下方向に所定の間隔、例えば互いの反射器アーム18が接触しない間隔、具体的には中心波長よりも短く、中心波長の1/2よりも長い間隔をおいて取り付けられている。八木形アンテナ4a、4bは、アーム24の垂直部24cに上下方向に、八木形アンテナ2a、2bと同じ間隔をおいて配置されている。但し、八木形アンテナ2a、4aは、中心波長の間隔をおいて配置され、八木形アンテナ2b、4bも中心波長の間隔をおいて配置されている。これら八木形アンテナ2a、2b、4a、4bの受信信号は、図12に示すように同一長さの同軸ケーブル32a、32b、34a、34bを介してそのまま混合器36に供給されて、混合され、出力端子38から出力される。
【0029】
この高前側比アンテナでは、使用している八木形アンテナの台数が第1の実施形態の高前側比アンテナの台数の2倍であるので、利得が増加している。無論、側方からの不要な電波の抑圧は、第1の実施形態の高前側比アンテナと同様に行える。
【0030】
上記の両実施形態では、指向性アンテナとして八木形アンテナを使用したが、これに限ったものではなく、例えばダイポールアンテナ、折り返しダイポールアンテナ、ループアンテナ等の指向性アンテナを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態の高前側比アンテナの側面図及び背面図である。
【図2】図1の高前側比アンテナに使用する八木形アンテナの平面図及び側面図である。
【図3】図1の高前側比アンテナのブロック図である。
【図4】図2の八木形アンテナの479MHzにおける指向特性図である。
【図5】図2の八木形アンテナの500MHzにおける指向特性図である。
【図6】図2の八木形アンテナの509MHzにおける指向特性図である。
【図7】図1の高前側比アンテナの479MHzにおける指向特性図である。
【図8】図1の高前側比アンテナの500MHzにおける指向特性図である。
【図9】図1の高前側比アンテナの509MHzにおける指向特性図である。
【図10】図1の高前側比アンテナの周波数対利得特性図である。
【図11】本発明の第2の実施形態の高前側比アンテナの背面図である。
【図12】図10の高前側比アンテナのブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
2 4 2a 2b 4a 4b 八木形アンテナ(指向性アンテナ)
24 マスト
24a 水平部
24b 24c 垂直部
36 混合器(合成手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信しようとする電波の波長の約1/2の間隔を水平方向にあけ、かつ垂直方向に前記電波のほぼ中心波長の間隔をあけて配置され、それぞれ水平方向にほぼ前記中心波長の約1/2の長さのエレメントを有する少なくとも2つの同一特性の指向性アンテナと、
前記少なくとも2つの指向性アンテナからの受信信号を合成する合成手段とを、
具備する高前側比アンテナ。
【請求項2】
請求項1記載の高前側比アンテナにおいて、前記指向性アンテナが八木形アンテナである高前側比アンテナ。
【請求項3】
請求項2記載の高前側比アンテナにおいて、前記八木形アンテナが、水平方向に配置された反射器を有し、その長さが前記中心波長の1/2以上である高前側比アンテナ。
【請求項4】
請求項1記載の高前側比アンテナにおいて、上述した少なくとも2つの指向性アンテナの他に、同一構成の指向性アンテナが複数設けられ、新たに追加される指向性アンテナは、上記少なくとも2つの指向性アンテナのうち上側に位置するものから更に上側に間隔をあけて配置されるものと、下側に位置する指向性アンテナから更に下側に間隔をあけて配置されるものとを含む高前側比アンテナ。
【請求項5】
請求項1記載の前側比アンテナにおいて、前記少なくとも2つの指向性アンテナは、1つのアームに取り付けられ、このアームは、水平部と、この水平部の一端から上方に伸び、一方の指向性アンテナが取り付けられる第1垂直部と、前記水平部の他端部から下方に伸び、他方の指向性アンテナが取り付けられる第2垂直部とを、具備する高前側比アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−25021(P2006−25021A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199394(P2004−199394)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】