説明

高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤

【課題】従来の濃縮汚泥の脱水法における問題を解決するために多機能を兼ね備えた新規な急速脱水固化剤の提供を目的とする。
【解決手段】セメント10〜50重量部とフライアッシュ30〜80重量部と塩化カルシウム5〜15重量部と塩化マグネシウム5〜15重量部と酸化カルシウム5〜15重量部を配合した主要成分100重量部に対して、必須成分として硫酸アルミニウム5〜10重量部と硫酸カルシウム15〜25重量部と硫酸マグネシウム5〜10重量部とチオ硫酸ナトリウム5〜10重量部と有機系凝集剤0.1〜0.2重量部とパーライト5〜10重量部が配合されていることを特徴とする高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高含水比の濃縮汚泥などを急速に脱水し、かつ固化させる高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤に関するものである。
すなわち、前記高含水比をなす濃縮汚泥を吸湿脱水分離し、また当該濃縮汚泥中に含有する固形物と金属類(重金属類を含む)を再溶出することのない極めて安定した固形物として分離する。即ち、当該濃縮汚泥中の水分を急速に分離するとともに固形物を極めて安定した疎水性に富んだ脱水汚泥にし、さらに、脱水汚泥は再び水に溶解し崩壊することがなく、経時的に自然土壌に近似した泥質に改質する機能を兼ね備えた濃縮汚泥脱水剤にかかり、新規な急速脱水固化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
濃縮汚泥の脱水に関する従来の処理法としては、一般にセメント系または石灰系のものを多量に添加し水和反応による水分の固定法が採用されている。
概ね処理対象物が無機系成分で構成されている場合にはセメント系のものが選ばれ、有機系成分で構成されている場合には石灰系のものが選ばれている。
セメント系または石灰系による水分処理は単なる水分の吸収による自己硬化反応であるので処理対象物中の含水量によって添加量が決められるが、通常30%前後必要としている。
さらに、セメント系または石灰系で処理された当該処理対象物には共通した問題点がある。それは処理後の固形物のpH値が10以上となりあらたにアルカリ流出の問題提起となっている。
濃縮汚泥の脱水に関する従来のもう一つの処理法としては脱水機を使用する場合があるが、汚泥の濃度が高いために凝集剤(無機系または有機系)の添加量が多量に必要となるばかりか、脱水が困難になるなどの問題がある。
【特許文献1】特開平10−165920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来の濃縮汚泥の脱水法における問題を解決するために多機能を兼ね備えた新規な急速脱水固化剤の提供を目的とする。
具体的には、(1)主要成分であるセメント、フライアッシュ、酸化カルシウムと塩化カルシウム、塩化マグネシウムの組み合わせによる水分吸収固定と水分吸湿分離を複合させる。(2)必須成分である硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、ポリマー(有機系凝集剤)を組み合わせることにより主要成分の触媒として反応を促進するとともに分離水の浄化が図られ、また、処理後の固形物の性状を改質し安定化する他、重金属類も収着固定して安定させる。(3)補助成分である硫酸鉄、酸化けい素、珪藻土、パーライトは主要成分と必須成分の反応を補助する機能があり、安定した脱水処理と固形物の改質と固定化を助長する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の目的を達成するために、本発明においてはセメント10〜50重量部とフライアッシュ30〜80重量部と塩化カルシウム5〜20重量部と塩化マグネシウム5〜20重量部とを酸化カルシウム5〜15重量部を主要成分とし、この主要成分100重量部に対し、必須成分として硫酸アルミニウム5〜10重量部と硫酸カルシウム15〜25重量部と硫酸マグネシウム5〜10重量部とチオ硫酸ナトリウム5〜10重量部とポリマー(有機系凝集剤)0.1〜0.2重量部と、補助成分として硫酸鉄1〜5重量部と酸化けい素5〜10重量部と珪藻土5〜10重量部とパーライト5〜10重量部が配合された高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明にかかる高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤によれば、高含水比濃縮汚泥である処理対象物汚泥中に包含する水分を一部固定し、凝集遊離した分離水を放出し、さらに、脱水後の汚泥の性状を改質するなど顕著な効果を奏する。
よって、本発明にかかる高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤によれば、当該濃縮汚泥の土壌化を容易に図れることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の急速脱水固化剤の主要成分はセメントとフライアッシュと塩化カルシウムと塩化マグネシウムと酸化カルシウムである。
これに必須成分として硫酸アルミニウムと硫酸カルシウムと硫酸マグネシウムとチオ硫酸ナトリウムとポリマー(有機系凝集剤)と補助成分として硫酸鉄と酸化けい素と珪藻土とパーライトが均一に配合されている。
【0007】
前記のセメントはポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩)、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントから選ばれるが、実際には前記セメントの1種類または数種類を混合して配合され、水分の吸収・水和反応による凝集固化などの機能を付加することを目的としている。
【0008】
前記のフライアッシュは樹皮灰( fly ash of bark)または、石炭灰
(fly ash of coal) のいずれか一種類または混合して配合される。
フライアッシュに求められる機能は水分の吸収と保水、浄化能と自己硬化能であるが、フライアッシュには材料材質によりその性状と性能が異なる。例えば、パルプ剤
(pulp wood )とその樹皮 (bark)、製紙汚泥 (paper sludge)、石炭の場合は産地によってその差異を認知することができる。
本発明の急速脱水固化剤に適合するフライアッシュについては、経験的に基準となる成分比を設定しているので、配合するか補足するなりして調整することができる。経験的見地からすれば、Si/Al/Ca/Mg比と炭素比さらに、微量元素(ミネラル成分)の触媒能が重要な要素となっているとの知見を得ている。
【0009】
前記の塩化カルシウムと塩化マグネシウムと酸化カルシウムは吸湿性に富み乾燥剤として利用されている。この性質を最大限活用し水分の固定と分離、さらに、酸化カルシウムについては吸湿に伴う発熱反応が他の諸反応を促進する。
【0010】
前記の硫酸アルミニウムは、該当処理対象物中の水分に溶解し重縮合水酸化アルミニウムに転化し、汚泥粒子間の電位を低下させて崩壊し細分化する機能と有機金属類の無機化または金属イオンの吸着・固定および酸化触媒能があり、該当処理対象物の団粒化と粒度調整および固化・固定化を促進する。
【0011】
前記の硫酸マグネシウムは、該当処理対象物中に懸濁分散してその一部として硫酸アルミニウムの解離に伴い生成する遊離酸の中和剤としての機能と同時に凝集、固化、固定反応と分離水の浄化に寄与する。
【0012】
前記の硫酸マグネシウムは、該当処理対象物中の金属類(重金属類を含む)を固定する重要な要素である。また、主要成分の各水和反応を促進させる触媒的な機能を有し固化、安定化の強化に寄与する。
【0013】
前記のチオ硫酸ナトリウムは、重金属類と積極的に反応して水に不溶性のチオ硫酸金属化合物Na[Me(S3O3)2] を形成する。該当処理対象物中の数値に応じて配合比を調整する。
【0014】
前記のポリマー(有機系凝集剤)は分離水中の微細な懸濁物の凝集に寄与する。
【0015】
補助成分としての硫酸鉄と酸化けい素は、中和反応と凝集反応による団粒化と粒度調整および固化・固定化反応を助長する。珪藻土とパーライトは主要成分のセメント、フライアッシュの補助剤として寄与する。
【0016】
本発明の急速脱水固化剤の反応は極めて即効性があり、該当処理対象物即ち濃縮汚泥に添加混合することにより固形物中の水分は容易に遊離し重力分離する。水分を放出した固形物は疎水性で極めて安定し、性状も自然土壌に近似し、金属類(重金属類を含む)も固定された汚泥に改質される。
ここで、本発明による急速脱水固化剤の一例としての調整例につき説明する。
【0017】
主要成分としてセメント25重量部、フライアッシュ(木灰)55重量部、塩化カルシウム10重量部、塩化マグネシウム5重量部、酸化カルシウム5重量部を配合する。
【0018】
必須成分としては、前記主要成分に対して硫酸アルミニウム5重量部、硫酸カルシウム10重量部、硫酸マグネシウム5重量部、チオ硫酸ナトリウム5重量部、ポリマー0.2重量部を配合する。補助成分は主要成分に対して硫酸鉄2重量部、酸化けい素5重量部を配合する。
【0019】
上記のように配合し、生成した本発明による急速脱水固化剤を添加して各汚泥の脱水試験を行った。
しかして、建設汚泥(廃ベントナイト)の二次脱水試験の結果を図1に示す。また、畜産汚泥(牛糞)の脱水試験の結果を図2に示す。さらに、下水処理場の濃縮汚泥の脱水試験結果を図3に示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の急速脱水固化剤による設計汚泥(廃ベントナイト)の二次脱水試験結果を説明する説明図である。
【図2】本発明の急速脱水固化剤による畜産汚泥(牛糞)の脱水試験結果を説明する説明図である。
【図3】本発明の急速脱水固化剤による下水処理場の濃縮汚泥の脱水試験結果を説明する説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント10〜50重量部とフライアッシュ30〜80重量部と塩化カルシウム5〜15重量部と塩化マグネシウム5〜15重量部と酸化カルシウム5〜15重量部を配合した主要成分100重量部に対して、必須成分として硫酸アルミニウム5〜10重量部と硫酸カルシウム15〜25重量部と硫酸マグネシウム5〜10重量部とチオ硫酸ナトリウム5〜10重量部と有機系凝集剤0.1〜0.2重量部とパーライト5〜10重量部が配合されていることを特徴とする高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤。
【請求項2】
前記のセメントはポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩の各種)、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントのいずれかの一種またはいずれかのセメントを選択しての混合であることを特徴とする請求項1記載の高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤。
【請求項3】
前記のフライアッシュは木灰または石炭灰であり、前記木灰または石炭灰の単体あるいは混合であることを特徴とした請求項1記載の高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤。
【請求項4】
前記の珪藻土は淡水成珪藻土、海水成珪藻土から選ばれる一種または混合であることを特徴とした請求項1記載の高含水比濃縮汚泥の処理を対象とした急速脱水固化剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−160193(P2007−160193A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358650(P2005−358650)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(505305411)
【出願人】(506099029)株式会社土地改良センター (2)
【Fターム(参考)】