説明

高周波放電灯システム

【課題】 電力伝送損失を抑制することができるとともに、構成を簡素化することができる高周波放電灯システムを提供すること。
【解決手段】 電源部12から発生した電磁波を伝送する電磁波伝送部14と、電磁波伝送部14より伝送する電磁波を導入して照射する電磁波照射部18と、電磁波照射部18により導入された電磁波を受けて生成されるプラズマにより放電発光する放電管22を備え、電磁波照射部18は、電磁波伝送部14からの電磁波を伝送する内部導体19と、内部導体19を覆う外部導体20と、内部導体19と外部導体20との間に介在するスペーサ21を有し、内部導体19の外径をdとし、外部導体20の内径をDとし、スペーサ21の誘電率をεとした場合、D/dは、1.5≦D/d≦40の関係を満たし、εは、1≦ε≦10の関係を満たしてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電管内に電磁波を集中するためのアンテナを備えた高周波放電灯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波放電灯の一例として、放電空間内に電極を持たない無電極放電灯が知られている。この種の無電極放電灯は、放電空間内にフィラメントや電極がないため、フィラメントや電極の消耗によって寿命が低下することがなく、蛍光灯や白熱電球よりも長寿命化を図ることができる。また、無電極放電灯は、電極がないので、電極として使用可能な物質に制約を受けることがなく、発光性能の良い物質を放電空間に配置することができ、電極を用いた放電灯よりも効率を高めることができる。
【0003】
従来、高周波放電灯を構成するに際して、電磁波発生用の電源部と、放電発光により無電極で発光する発光管と、発光管に電磁波を導入するための励起子を含む電磁波照射部とを備え、同軸管又は同軸ケーブルを用いて電源部と電磁波照射部とを接続した構成において、発光管から電源部側へと伝播する反射波を検波する反射波検出手段と、反射波検出手段からの計測情報に基づいて反射損失を最小にすべく電源部の出力を調整する出力調整手段とを設けた高周波放電灯装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この高周波放電灯装置によれば、発光管から電源部側へと伝播する反射波を反射波検出手段で検出し、検出された反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部の出力を出力調整手段によって調整することで、発光管に対して、効率良く電力を供給することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−147454号公報(第4頁から第5頁、図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術では、発光管に対して、効率良く電力を供給するために、発光管から電源部側へと伝播する反射波を反射波検出手段で検出し、検出された反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部の出力を出力調整手段によって調整しなければならず、反射波検出手段と出力調整手段を必要とする分、構成が複雑になるとともにコストアップとなる。
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みて為されたものであり、その目的は、電力伝送損失を抑制するとともに、構成を簡素化することができる高周波放電灯システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に係る高周波放電灯システムは、電磁波を発生する電源部と、前記電源部から発生した電磁波を伝送する電磁波伝送部と、前記電磁波伝送部より伝送する電磁波を導入して照射する電磁波照射部と、前記電磁波照射部により導入された電磁波を受けて生成されるプラズマにより放電発光する放電管とを備えてなる高周波放電灯システムにおいて、前記電磁波照射部は、電磁波を導入する内部導体と、前記内部導体を覆う筒状の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間に介在する断熱部材を有し、前記内部導体の外径をdとし、前記外部導体の内径をDとし、前記断熱部材の誘電率をεとした場合、D/dは、1.5≦D/d≦40の関係を満たし、εは、1≦ε≦10の関係を満たしてなる構成とした。
【0009】
(作用)電磁波照射部における外部導体の内径Dと内部導体の外径dとの比率D/dをεの値(1≦ε≦10)に応じて、1.5≦D/d≦40の範囲内で最適化して、電磁波伝送部と電磁波照射部とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管から電源部側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
請求項2に係る高周波放電灯システムにおいては、請求項1に記載の高周波放電灯システムにおいて、前記断熱部材は、放電防止材料で構成した。
【0011】
(作用)断熱部材に、放電防止材料、例えば、石英ガラス、アルミナ、テフロン(登録商標)のいずれかを用いることで、内部導体と外部導体との間に放電が生じるの防止することができ、内部導体と外部導体との間の放電に伴う放電管の不点灯を防止することができる。
【0012】
請求項3に係る高周波放電灯システムにおいては、請求項1または2に記載の高周波放電灯システムにおいて、前記断熱部材が空気の場合、前記D/dは、1.5≦D/d≦2.0で、前記断熱部材が発泡テフロン(登録商標)の場合、前記D/dは、2.0≦D/d≦5.0で、前記断熱部材が石英ガラスの場合、前記D/dは、5.0≦D/d≦10.0で、前記断熱部材がアルミナの場合、前記D/dは、10.0≦D/d≦40.0である構成とした。
【0013】
(作用)断熱部材の誘電率εに応じてD/dを調整することで、電源の出力インピーダンスが50Ωまたは75Ωであっても、電磁波伝送部と電磁波照射部とをインピーダンスマッチングさせることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る高周波放電灯システムによれば、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
請求項2によれば、内部導体と外部導体との間の放電に伴う放電管の不点灯を防止することができる。
【0016】
請求項3によれば、電源の出力インピーダンスが50Ωまたは75Ωであっても、電磁波伝送部と電磁波照射部とをインピーダンスマッチングさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図、図2は、電源の出力インピーダンスを50Ωとして電磁波照射部の電力伝送損失を測定したときのパラメータと反射損失との関係を説明するための図、図3は、電源の出力インピーダンスを75Ωとして電磁波照射部の電力伝送損失を測定したときのパラメータと反射損失との関係を説明するための図、図4は、本発明の第2実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図、図5は、本発明の第3実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図、図6は、本発明の第4実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図、図7は、本発明の第5実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図、図8は、本発明の第6実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【0018】
図1において、高周波放電灯システム10は、電磁波を発生する電源部12と、電源部12から発生した電磁波を伝送する電磁波伝送部14と、電磁波伝送部14より伝送する電磁波を導入して照射する電磁波照射部18と、電磁波照射部18により導入された電磁波を受けて生成されるプラズマにより放電発光する放電管22を備えている。
【0019】
電源部12は、車載バッテリから供給される電力によってマイクロ波帯(1〜100GHz)の電磁波を発生する発振部13を備え、発振部13は、例えば、マグネトロンや、半導体スイッチング素子(FETやバイポーラトランジスタ等)を用いた高周波アンプで構成されている。
【0020】
電磁波伝送部14は、金属製の円パイプ状内部導体15と、この内部導体15を取り囲む金属製の円パイプ状外部導体16と、円パイプ状に形成されて、内部導体15と外部導体16との間に介装された、絶縁部材である石英ガラス製の誘電体17が同軸状に一体化された構造で、例えば、同軸管や同軸ケーブルとして構成され、内部導体15とこれを取り囲む外部導体16間において電磁波が伝送される。
【0021】
電磁波照射部18は、金属製の円パイプ状内部導体19と、略中空円筒状に形成されて、内部導体19を取り囲む金属製外部導体20と、円パイプ状に形成されて、内部導体19と外部導体20との間に介装された断熱部材、例えば、石英ガラス製のスペーサ21が同軸状に一体化された構造で、放電管22に電磁波を導入するためのランチャーとして、内部導体19の長手方向端部が放電管22の長手方向端部に接続されている。
【0022】
内部導体19の長手方向一端側には円環状のフランジ19aが形成されており、このフランジ19aは、電磁波伝送部14の内部導体15の内周側に圧入されている。すなわち、内部導体15と内部導体19はフランジ19aを介して電気的に接続されている。また、外部導体20の長手方向一端側には円環状の段部20aが形成され、長手方向他端側には円環状のフランジ20bが形成されており、段部20aに、電磁波伝送部14の外部導体16の長手方向一端側が圧入されている。すなわち、外部導体16と外部導体20は段部20aを介して電気的に接続されている。さらに、スペーサ21の長手方向一端側は電磁波伝送部14の誘電体17の長手方向一端側に結合されており、スペーサ21の長手方向他端側は外部導体20のフランジ20bで支持されている。
【0023】
放電管22は、長手方向の途中に楕円球状膨出部23が形成されたガラス(無水石英ガラス)管の両端部をピンチシールすることで、ピンチシール部24、25に導体アッシー26、27が封着され、かつ楕円球状膨出部23内が放電空間28とされたダブルエンド型に構成されている。そして、放電管22の楕円球状膨出部23(放電空間28)内には、始動用希ガス(常温下1〜20気圧)が発光物質(NaI、ScI等)とともに封入されている。
【0024】
ピンチシール部24、25のうち基端側ピンチシール部24に封着(固定)された導体アッシー26は、タングステン製導体棒26aとモリブデン製導体棒26cが矩形状のモリブデン箔26bを介して直線状に接続されて一体化されている。モリブデン製導体棒26cは、その先端部が内部導体19内に圧入されて内部導体19に接続されており、タングステン製導体棒26aは、その一部が放電空間28内に所定の長さだけ突出している。
【0025】
一方、先端側ピンチシール部25に封着(固定)された導体アッシー27は、タングステン製導体棒27aとモリブデン製導体棒27cが矩形状のモリブデン箔27bを介して直線状に接続されて一体化されている。モリブデン製導体棒27cは、その一部が外部に露出されており、タングステン製導体棒27aは、その一部が放電空間28内に所定の長さだけ突出している。
【0026】
導体アッシー26、27を構成するタングステン製導体棒26a、27aは、例えば、外径0.25mmのカリウムドープタングステン線またはトリアドープタングステン線で構成され、モリブデン箔26b、27bは、例えば、20μmの厚さに形成されている。モリブデン箔26b、27bはガラスとのなじみがよく、ピンチシール部24、25におけるガラス(石英ガラス)層と導体アッシー26、27間の熱膨脹差をモリブデン箔26b、27bで吸収するようになっている。このため、ピンチシール部24、25におけるクラックの発生が抑制され、不点灯を防止できる。
【0027】
また、モリブデン箔26b、27bの横断面積は、タングステン製導体棒26a、27aの横断面積に比べて小さいため、導体アッシー25、26全体としての熱伝導が抑制され、導体アッシー26、27における熱伝導による損失を小さくできる。
【0028】
そして、放電管22の基端側ピンチシール部24のモリブデン製導体棒26cが電磁波照射部18の内部導体19に圧入されると、ピンチシール部24が内部導体19に把持(挟持)されて軸方向および周方向に位置決め固定されるとともに、モリブデン製導体棒26cの先端部と内部導体19の長手方向端部が電気的に接続される。
【0029】
このため、電源部12から電磁波伝送部14を伝送した高周波電磁波は、基端側ピンチシール部24に封着されている導体アッシー26と、この導体アッシー26を取り囲む外部導体20によって放電空間28内に照射される。このとき、照射された電磁波(電磁波照射部18で発生した高周波電界)により、放電空間28内で高密度プラズマが発生して、放電空間28内の発光物質が蒸発されるとともに励起されて発光する。
【0030】
この場合、電磁波照射部18を構成する導体アッシー26のタングステン製導体棒26aが放電空間28内に突出していることから、電磁波伝送部14によって伝送された電磁波は導体棒26aを介して確実に放電空間28内に導入される。
【0031】
また、放電管22の先端側ピンチシール部25に封着されている導体アッシー27はアンテナとして作用し、導体アッシー27周辺にも高い電界が集中するため、アークが導体アッシー27に向かって収束し、アーク(形状)が安定する。特に、ヘッドランプ等の自動車用灯具の光源として用いる場合は、放電管22を水平点灯する形態で用いるが、アーク(形状)が安定するため、アークが管壁と接触しない最適形状となるように放電管22(管壁)の形状設計が可能となって、発光効率の向上につながる。
【0032】
ここで、電源部12から発生する電磁波が電磁波伝送部14と電磁波照射部18を伝送するに際して、電磁波伝送部14と電磁波照射部18の特性インピーダンスが一致しないと、特性インピーダンスの不連続部(特性インピーダンスが一致しない部位)で反射波が生じ、電磁波が効率良く放電管22まで到達しなくなり、その結果、放電管22の効率(lm/W)が低下する。
【0033】
すなわち、放電管22の効率を上げるためには、電源部12から放電管22までの伝送路の特性インピーダンスを揃えれば良いことになる。
【0034】
一般に、電磁波伝送部を構成する同軸管や同軸ケーブルの特性インピーダンスは、50Ωまたは75Ωであって、電源の出力インピーダンスも電磁波伝送部の特性インピーダンスに合せてあるので、電源の出力は、反射することなく電磁波伝送部を伝送できるようになっている。
【0035】
従って、電源部12の出力インピーダンスは、電磁波伝送部14の特性インピーダンスに合せてあることから、放電管22の効率を上げるためには、電磁波伝送部14と電磁波照射部18との接続部および電磁波照射部18の特性インピーダンスを限りなく、50Ωまたは75Ωに合せれば良いことになる。
【0036】
電磁波伝送部14などの伝送路の特性インピーダンスZoは、以下に示すように、
Zo=138/√ε×log(D/d)…(1)
但し、
Zo:特性インピーダンス(50Ωまたは75Ω)
ε :誘電率
D :外部導体の内径
d :内部導体の外径
で表わせる。
【0037】
ここで、(1)式を基に、電磁波照射部18における外部導体20の内径Dと内部導体19の外径dとの比率D/dを最適化して、電磁波伝送部14と電磁波照射部18とをインピーダンスマッチングさせるために、断熱部材(スペーサ21)の材質である誘電率εと比率D/dをパラメータとして、電力伝送損失について各種の測定を行ったところ、図2と図3に示すような結果が得られた。
【0038】
図2は、電源部12の出力インピーダンスZoが50Ωのときの測定結果であり、反射検出手段と出力調整手段を使用したときの伝送損失が3Wであるから、反射損失が3W以下のときを「○」で、反射損失が3Wを超えたときを「×」で示してある。
【0039】
(a)断熱部材を空気(ε≒1.0)とした場合、D/d=1.1にすると、反射損失が3Wを超えるのに対して、D/d=1.5にすると、反射損失は3W以下になる。
【0040】
(b)断熱部材を発泡テフロン(登録商標)(ε=1.8〜2.1)とした場合、D/d=2.0にすると、反射損失は3W以下になる。
【0041】
(c)断熱部材を石英(ε=3.5〜4.5)とした場合、D/d=5.0にすると、反射損失は3W以下になる。
【0042】
(d)断熱部材をアルミナ(ε=8.0〜10.0)とした場合、D/d=10.0、20.0、30.0、40.0のいずれかにすると、反射損失が3W以下になるのに対して、D/d=50.0にすると、反射損失は3Wを超える。
一方、図3は、電源部12の出力インピーダンスZoが75Ωのときの測定結果であり、反射損失が3W以下のときを「○」で、反射損失が3Wを超えたときを「×」で示してある。
【0043】
(a)断熱部材を空気(ε≒1.0)とした場合、D/d=1.1にすると、反射損失が3Wを超えるのに対して、D/d=1.5、または2.0にすると、反射損失は3W以下になる。
【0044】
(b)断熱部材を発泡テフロン(登録商標)(ε=1.8〜2.1)とした場合、D/d=5.0にすると、反射損失は3W以下になる。
【0045】
(c)断熱部材を石英(ε=3.5〜4.5)とした場合、D/d=10.0にすると、反射損失は3W以下になる。
【0046】
(d)断熱部材をアルミナ(ε=8.0〜10.0)とした場合、D/d=20.0、または30.0、あるいは40.0にすると、反射損失が3W以下になるのに対して、D/d=50.0にすると、反射損失は3Wを超える。
【0047】
図2と図3に示す測定結果から、電源部12の出力インピーダンスZoが50Ωまたは75Ωであることを考慮すると、D/dが、1.5≦D/d≦40の関係を満たし、εが、1≦ε≦10の関係を満たしていれば、電磁波伝送部14と電磁波照射部18は互いにインピーダンスが整合(マッチング)し、反射損失を3W以下にすることができ、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制できる、ということが分かる。
【0048】
この場合、スペーサ(断熱部材)21が空気の場合、D/dは、1.5≦D/d≦2.0で、スペーサ21が発泡テフロン(登録商標)の場合、D/dは、2.0≦D/d≦5.0で、スペーサ21が石英の場合、D/dは、5.0≦D/d≦10.0で、スペーサ21がアルミナの場合、D/dは、10.0≦D/d≦40.0である。
【0049】
すなわち、スペーサ(断熱部材)21の誘電率εに応じてD/dを調整することで、電源部12の出力インピーダンスが50Ωまたは75Ωであっても、電磁波伝送部14と電磁波照射部18とをインピーダンスマッチングさせることができる。
【0050】
本実施例によれば、電磁波照射部18における外部導体20の内径Dと内部導体19の外径dとの比率D/dを誘電率εの値に応じて最適化して、電磁波伝送部14と電磁波照射部18とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管22から電源部12側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部12の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0051】
また、本実施例によれば、断熱部材としてのスペーサ21に、放電防止材料である石英ガラス、アルミナ、テフロン(登録商標)のいずれかを用いることで、内部導体19と外部導体20との間に放電が生じるの防止することができ、内部導体19と外部導体20との間の放電に伴う放電管22の不点灯を防止することができる。
【0052】
次に、本発明の第2実施例を図4に従って説明する。本実施例は、電磁波伝送部14の代わりに、電磁波伝送部34を用い、電磁波照射部18の代わりに、電磁波照射部38を用い、放電管22の代わりに、放電管42を用いたものであり、他の構成は第1実施例と同様である。
【0053】
具体的には、電磁波伝送部34は、金属製の円柱状内部導体35と、この内部導体35を取り囲む金属製の円パイプ状外部導体36と、円パイプ状に形成されて、内部導体35と外部導体36との間に介装された絶縁部材、例えば、石英ガラス製の誘電体37が同軸状に一体化された構造で、例えば、同軸管や同軸ケーブルとして構成され、内部導体35とこれを取り囲む外部導体36間において電磁波が伝送される。
【0054】
電磁波照射部38は、金属製の円柱状内部導体39と、略中空円筒状に形成されて、内部導体39を取り囲む金属製外部導体40を備え、内部導体39と外部導体40との間に、断熱部材として、ピンチシール部44の凹部44aから延長されたガラス管(石英ガラス)41が介在する構造で、放電管42に電磁波を導入するためのランチャーとして、内部導体39の長手方向端部が放電管42の長手方向端部に接続されている。
【0055】
内部導体39は、電磁波伝送部34の内部導体35に接続されて、内部導体35の長手方向端部から外部導体40の長手方向一端側までに亘って配置されている。外部導体40の長手方向一端側には円環状の段部40aが形成され、長手方向他端側には円筒状のカバー32が装着されており、段部40aには、電磁波伝送部34の外部導体36の長手方向一端側が圧入されている。すなわち、外部導体36と外部導体40は段部40aを介して電気的に接続されている。また、カバー32には、放電管42を挿通するための開口32aが形成されている。
【0056】
放電管42は、長手方向の途中に楕円球状膨出部43が形成されたガラス(無水石英ガラス)管の両端部をピンチシールすることで、ピンチシール部44、45に導体アッシー46、47が封着され、かつ楕円球状膨出部43内が放電空間48とされたダブルエンド型に構成されている。そして、放電管42の楕円球状膨出部43(放電空間48)内には、始動用希ガス(常温下1〜20気圧)が発光物質(NaI、ScI等)とともに封入されている。
【0057】
ピンチシール部44、45のうち基端側ピンチシール部44は、その先端部がカバー32の開口32aから外部導体40内に挿入されている。基端側ピンチシール部44に封着(固定)された導体アッシー46は、タングステン製導体棒46aとモリブデン製導体棒46cが矩形状のモリブデン箔46bを介して直線状に接続されて一体化されている。
【0058】
タングステン製導体棒46aは、その一部が放電空間48内に所定の長さだけ突出している。モリブデン製導体棒46cは、その一部が、ピンチシール部44の凹部44a内に露出している。内部導体39は、長手方向端部がモリブデン製導体棒46cの長手方向端部に接続されている。すなわち、導体アッシー46は、電磁波照射部38の内部導体39と電気的に接続されている。
【0059】
一方、先端側ピンチシール部45に封着(固定)された導体アッシー47は、タングステン製導体棒47aとモリブデン製導体棒47cが矩形状のモリブデン箔47bを介して直線状に接続されて一体化されている。タングステン製導体棒47aは、その一部が放電空間48内に所定の長さだけ突出しており、モリブデン製導体棒47cは、その一部が、ピンチシール部45の凹部45a内に露出している。
【0060】
導体アッシー46、47を構成するタングステン製導体棒46a、47aは、例えば、外径0.25mmのカリウムドープタングステン線またはトリアドープタングステン線で構成され、モリブデン箔46b、47bは、例えば、20μmの厚さに形成されている。モリブデン箔46b、47bはガラスとのなじみがよく、ピンチシール部44、45におけるガラス(石英ガラス)層と導体アッシー46、47間の熱膨脹差をモリブデン箔46b、47bで吸収するようになっている。このため、ピンチシール部44、45におけるクラックの発生が抑制され、不点灯を防止できる。
【0061】
また、モリブデン箔46b、47bの横断面積は、タングステン製導体棒46a、47aの横断面積に比べて小さいため、導体アッシー45、46全体としての熱伝導が抑制され、導体アッシー46、47における熱伝導による損失を小さくできる。
【0062】
そして、放電管42の基端側ピンチシール部44の先端部がカバー32の開口32aから電磁波照射部38の外部導体40に挿入されると、ピンチシール部44がカバー32に把持(挟持)されて軸方向および周方向に位置決め固定されるとともに、モリブテン製導体棒46cの先端部と内部導体39の長手方向端部が電気的に接続される。
【0063】
このため、電源部12から電磁波伝送部34を伝送した高周波電磁波は、基端側ピンチシール部44に封着されている導体アッシー46と、この導体アッシー46を取り囲む外部導体40によって放電空間48内に照射される。このとき、照射された電磁波(電磁波照射部38で発生した高周波電界)により、放電空間48内で高密度プラズマが発生して、放電空間48内の発光物質が蒸発されるとともに励起されて発光する。
【0064】
この場合、電磁波照射部38を構成する導体アッシー46のタングステン製導体棒46aが放電空間48内に突出していることから、電磁波伝送部34によって伝送された電磁波は導体棒46aを介して確実に放電空間48内に導入される。
【0065】
また、放電管42の先端側ピンチシール部45に封着されている導体アッシー47はアンテナとして作用し、導体アッシー47周辺にも高い電界が集中するため、アークが導体アッシー47に向かって収束し、アーク(形状)が安定する。特に、ヘッドランプ等の自動車用灯具の光源として用いる場合は、放電管42を水平点灯する形態で用いるが、アーク(形状)が安定するため、アークが管壁と接触しない最適形状となるように放電管42(管壁)の形状設計が可能となって、発光効率の向上につながる。
【0066】
本実施例において、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dと内部導体39の外径dとの比率D/dを最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるために、断熱部材(石英ガラス41)の材質であるεとD/dをパラメータとして、電力伝送損失について各種の測定を行ったところ、第1実施例と同様の結果が得られた。
【0067】
本実施例によれば、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dと内部導体39の外径dとの比率D/dを誘電率εの値に応じて最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管42から電源部12側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部12の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
次に、本発明の第3実施例を図5に従って説明する。本実施例は、放電管42の代わりに、放電管42とはピンチシール部と導体アッシーの構成が一部異なる放電管52を用いたものであり、他の構成は第2実施例と同様である。
【0069】
具体的には、放電管52は、楕円球状膨出部53の両端側に形成されたピンチシール部54、55に導体アッシー56、57が封着され、かつ楕円球状膨出部53内が放電空間58とされたダブルエンド型に構成されている。そして、放電管52の放電空間58内には、始動用希ガス(常温下1〜20気圧)が発光物質(NaI、ScI等)とともに封入されている。
【0070】
基端側ピンチシール部54は、その基端側がカバー32の開口32a内に挿入されている。基端側ピンチシール部54に封着(固定)された導体アッシー56は、タングステン製導体棒56aとモリブデン製導体棒56cが矩形状のモリブデン箔56bを介して直線状に接続されて一体化されている。モリブデン製導体棒56cは、その先端部がピンチシール部54の凹部54aから突出されて電磁波照射部38の外部導体40内に挿入されているとともに、長手方向端部が内部導体35の長手方向端部に接続されている。さらに、モリブデン製導体棒56cの外周側には、モリブデン製導体棒56cと外部導体40との間に配置された円筒状のアルミナスペーサ51が断熱部材として装着されている。
【0071】
一方、先端側ピンチシール部55に封着(固定)された導体アッシー57は、タングステン製導体棒57aとモリブデン製導体棒57cが矩形状のモリブデン箔57bを介して直線状に接続されて一体化されている。タングステン製導体棒57aは、その一部が放電空間58内に所定の長さだけ突出しており、モリブデン製導体棒57cは、その一部が、ピンチシール部55の凹部55a内に露出している。
【0072】
そして、導体アッシー56のモリブデン製導体棒56cとアルミナスペーサ51がカバー32の開口32aから電磁波照射部38の外部導体40に挿入され、基端側ピンチシール部54の先端部がカバー32の開口32a内に挿入されると、アルミナスペーサ51が外部導体40に把持され、ピンチシール部44がカバー32に把持(挟持)されて軸方向および周方向に位置決め固定されるとともに、モリブテン製導体棒56cの先端部と内部導体35の長手方向端部が電気的に接続される。
【0073】
このため、電源部12から電磁波伝送部34を伝送した高周波電磁波は、基端側ピンチシール部54に封着されている導体アッシー56と、この導体アッシー56を取り囲む外部導体40によって放電空間58内に照射される。このとき、照射された電磁波(電磁波照射部38で発生した高周波電界)により、放電空間58内で高密度プラズマが発生して、放電空間58内の発光物質が蒸発されるとともに励起されて発光する。
【0074】
本実施例において、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dとモリブテン製導体棒56cの外径dとの比率D/dを最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるために、断熱部材(アルミナスペーサ51)の材質であるεとD/dをパラメータとして、電力伝送損失について各種の測定を行ったところ、第1実施例と同様の結果が得られた。
【0075】
本実施例によれば、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dとモリブテン製導体棒56cの外径dとの比率D/dを誘電率εの値に応じて最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管52から電源部12側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部12の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0076】
次に、本発明の第4実施例を図6に従って説明する。本実施例は、放電管42の代わりに、放電管42とはピンチシール部の構成が一部異なる放電管62を用いたものであり、他の構成は第2実施例と同様である。
【0077】
具体的には、放電管62は、楕円球状膨出部63の両端側に形成されたピンチシール部64、65に導体アッシー66、67が封着され、かつ楕円球状膨出部63内が放電空間68とされたダブルエンド型に構成されている。そして、放電管62の放電空間68内には、始動用希ガス(常温下1〜20気圧)が発光物質(NaI、ScI等)とともに封入されている。
【0078】
基端側ピンチシール部64の先端側には、電磁波照射部38の外部導体40と内部導体39との空間部を埋める石英スペーサ61が一体に形成されており、この石英スペーサ61が外部導体40内に挿入されている。基端側ピンチシール部64に封着(固定)された導体アッシー66は、タングステン製導体棒66aとモリブデン製導体棒66cが矩形状のモリブデン箔66bを介して直線状に接続されて一体化されている。
【0079】
タングステン製導体棒66aは、その一部が放電空間68内に所定の長さだけ突出している。モリブデン製導体棒66cは、その一部が、ピンチシール部64の凹部64a内に露出している。内部導体39は、外径が内部導体35の外径と略等しく、長手方向一端側が内部導体35の長手方向端部に接続され、長手方向他端側がモリブデン製導体棒66cの長手方向端部に接続されている。すなわち、導体アッシー66は、内部導体39を介して電磁波照射部38の内部導体35と電気的に接続されている。
【0080】
一方、先端側ピンチシール部65に封着(固定)された導体アッシー67は、タングステン製導体棒67aとモリブデン製導体棒67cが矩形状のモリブデン箔67bを介して直線状に接続されて一体化されている。タングステン製導体棒67aは、その一部が放電空間68内に所定の長さだけ突出しており、モリブデン製導体棒67cは、その一部が、ピンチシール部65の凹部65a内に露出している。
【0081】
そして、放電管62の基端側ピンチシール部64の先端側の石英スペーサ61が電磁波照射部38の外部導体40に挿入され、外部導体40の端部にカバー32が装着され、基端側ピンチシール部64の一部がカバー32の開口32a内に挿入されると、石英スペーサ61が外部導体40に把持され、ピンチシール部64がカバー32に把持(挟持)されて軸方向および周方向に位置決め固定されるとともに、内部導体39の先端部と内部導体35の長手方向端部が電気的に接続される。
【0082】
このため、電源部12から電磁波伝送部34を伝送した高周波電磁波は、基端側ピンチシール部64に封着されている導体アッシー66と、この導体アッシー66を取り囲む外部導体40によって放電空間68内に照射される。このとき、照射された電磁波(電磁波照射部38で発生した高周波電界)により、放電空間68内で高密度プラズマが発生して、放電空間68内の発光物質が蒸発されるとともに励起されて発光する。
【0083】
本実施例において、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dと内部導体39の外径dとの比率D/dを最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるために、断熱部材(石英スペーサ61)の材質であるεとD/dをパラメータとして、電力伝送損失について各種の測定を行ったところ、第1実施例と同様の結果が得られた。
【0084】
本実施例によれば、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dと内部導体39の外径dとの比率D/dを誘電率εの値に応じて最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管52から電源部12側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部12の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0085】
次に、本発明の第5実施例を図7に従って説明する。本実施例は、放電管42の代わりに、放電管42とはピンチシール部と導体アッシーの構成が一部異なるシュラウド付き放電管72を用いたものであり、他の構成は第2実施例と同様である。
【0086】
具体的には、シュラウド付き放電管72は、楕円球状膨出部73の両端側に形成されたピンチシール部74、75に導体アッシー76、77が封着され、かつ楕円球状膨出部73内が放電空間78とされたダブルエンド型に構成され、ピンチシール部74、75の両端側には、ピンチシール部74、75を包囲する、円筒形状の紫外線遮蔽用のシュラウド79が溶着されている。そして、放電管72の放電空間78内には、始動用希ガス(常温下1〜20気圧)が発光物質(NaI、ScI等)とともに封入されている。
【0087】
基端側ピンチシール部74の先端側には、電磁波照射部38の外部導体40と内部導体39との空間部を埋める石英スペーサ71が一体に形成されており、この石英スペーサ(石英ガラス)71が外部導体40内に挿入されている。基端側ピンチシール部74に封着(固定)された導体アッシー76は、タングステン製導体棒76aとモリブデン製導体棒76cが矩形状のモリブデン箔76bを介して直線状に接続されて一体化されている。モリブデン製導体棒76cは、その一部がピンチシール部74の凹部74a内に露出しているとともに、先端側が凹部74aから突出されて内部導体39の長手方向端部に接続されている。
【0088】
一方、先端側ピンチシール部75に封着(固定)された導体アッシー77は、タングステン製導体棒77aとモリブデン製導体棒77cが矩形状のモリブデン箔77bを介して直線状に接続されて一体化されている。タングステン製導体棒77aは、その一部が放電空間78内に所定の長さだけ突出しており、モリブデン製導体棒77cは、その一部が、ピンチシール部75の凹部75a内に露出している。
【0089】
シュラウド79は、人体に有害な波長域の紫外線カット作用のある、例えばチタン等の金属を添加した石英ガラスで構成されており、放電管72の放電発光に含まれる人体に有害な紫外線をカットする作用がある。
【0090】
即ち、放電管72を紫外線カット作用のある金属を添加した石英ガラスで構成しようとすると、ガラス管の耐熱温度が低下し、且つ添加金属と封入物質との反応(発光への影響)により、使用できないので、放電管72は紫外線カット作用のない無水石英ガラスで構成されている。そして、紫外線の放射による樹脂製灯具構成部材の損傷や人体への悪影響を回避するために、放電管72の楕円球状膨出部73を紫外線遮蔽用のシュラウド79で覆うようにしている。
【0091】
また、Na抜けによる働程特性の悪化を防ぐために、シュラウド79を構成する石英ガラス中にアルミナ(Al)を添加することも有効である。
【0092】
また、シュラウド79内(放電管72の周り)は、不活性ガスが充填されるかまたは真空とされた密閉空間80とされているので、放電管72からの放熱が断熱層である密閉空間80によって抑制され、放電管72の発光効率を向上させることができる。
【0093】
なお、シュラウド79(密閉空間80)内に封入する不活性ガス等としては、空気よりも断熱性の高いものが好ましく、例えば、N、XeまたはArの単体ガスを封入したり、N+Ar、N+Xe、Ar+Ne等の混合ガスを封入したりする場合が考えられる。
【0094】
そして、放電管72の基端側ピンチシール部74の先端側と石英スペーサ71が電磁波照射部38の外部導体40に挿入され、外部導体40の端部にカバー32が装着され、基端側ピンチシール部74の一部がカバー32の開口32a内に挿入されると、石英スペーサ71が外部導体40に把持され、ピンチシール部74がカバー32に把持(挟持)されて軸方向および周方向に位置決め固定されるとともに、内部導体39の先端部と内部導体35の長手方向端部が電気的に接続される。
【0095】
このため、電源部12から電磁波伝送部34を伝送した高周波電磁波は、基端側ピンチシール部74に封着されている導体アッシー76と、この導体アッシー76を取り囲む外部導体40によって放電空間78内に照射される。このとき、照射された電磁波(電磁波照射部38で発生した高周波電界)により、放電空間78内で高密度プラズマが発生して、放電空間78内の発光物質が蒸発されるとともに励起されて発光する。
【0096】
本実施例において、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dと内部導体39の外径dとの比率D/dを最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるために、断熱部材(石英ガラス71)の材質であるεとD/dをパラメータとして、電力伝送損失について各種の測定を行ったところ、第1実施例と同様の結果が得られた。
【0097】
本実施例によれば、電磁波照射部38における外部導体40の内径Dと内部導体39の外径dとの比率D/dを誘電率εの値に応じて最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部38とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管72から電源部12側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部12の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【0098】
次に、本発明の第6実施例を図8に従って説明する。本実施例は、放電管42の代わりに、放電管42とはピンチシール部と導体アッシーの構成が一部異なるとともに材質が異なる放電管92を用い、電磁波照射部38の代わりに、電磁波照射部38とは外部導体の構成が一部異なる電磁波照射部138を用いたものであり、他の構成は第2実施例と同様である。
【0099】
具体的には、電磁波照射部138は、略中空円筒状に形成されて、封止部94を取り囲む金属製外部導体140を備え、導体アッシー96と外部導体140との間に、放電管92の一部で構成された、断熱部材としてのセラミック141が介在する構造で、放電管92に電磁波を導入するためのランチャーとして、放電管92の導体アッシー96が外部導体140内に配置されている。
【0100】
外部導体140の長手方向一端側には円環状の段部140aが形成され、段部140aには、電磁波伝送部34の外部導体36の長手方向一端側が圧入されている。すなわち、外部導体36と外部導体140は段部140aを介して電気的に接続されている。
【0101】
放電管92は、セラミックHID(High Intensity Discharge)として構成されており、セラミック製楕円球状膨出部93の両端側に形成された封止部94、95に導体アッシー96、97が封着され、かつ楕円球状膨出部93内が放電空間98とされたダブルエンド型に構成されている。そして、放電管92の放電空間98内には、始動用希ガス(常温下1〜20気圧)が発光物質(NaI、ScI等)とともに封入されている。
【0102】
基端側封止部94は、その先端部が外部導体140内に挿入されている。基端側封止部94に封着(固定)された導体アッシー96は、長手方向一端側が放電空間98内に所定の長さだけ突出され、長手方向他端側が内部導体35の長手方向端部に接続されている。すなわち、導体アッシー96は、電磁波伝送部34の内部導体35と電気的に接続されている。
【0103】
一方、先端側封止部95に封着(固定)された導体アッシー97は、長手方向一端側が放電空間98内に所定の長さだけ突出され、長手方向他端側の一部が外部に露出されている。
【0104】
そして、封止部94の先端側が外部導体140内に挿入されると、封止部94が外部導体140に把持されて軸方向および周方向に位置決め固定されるとともに、封止部94内の導体アッシー96の先端部と内部導体35の長手方向端部が電気的に接続される。
【0105】
このため、電源部12から電磁波伝送部34を伝送した高周波電磁波は、基端側封止部94に封着されている導体アッシー96と、この導体アッシー96を取り囲む外部導体140によって放電空間98内に照射される。このとき、照射された電磁波(電磁波照射部138で発生した高周波電界)により、放電空間98内で高密度プラズマが発生して、放電空間98内の発光物質が蒸発されるとともに励起されて発光する。
【0106】
本実施例において、電磁波照射部138における外部導体140の内径Dと導体アッシー96の外径dとの比率D/dを最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部138とをインピーダンスマッチングさせるために、断熱部材(セラミック141)の材質であるεとD/dをパラメータとして、電力伝送損失について各種の測定を行ったところ、第1実施例と同様の結果が得られた。
【0107】
本実施例によれば、電磁波照射部138における外部導体140の内径Dと導体アッシー96の外径dとの比率D/dを誘電率εの値に応じて最適化して、電磁波伝送部34と電磁波照射部138とをインピーダンスマッチングさせるようにしたため、放電管92から電源部12側へと伝播する反射波を検出する反射波検出手段や、反射波検出手段の検出による反射波を基に反射損失を最小にすべく電源部12の出力を調整する出力調整手段を設けることなく、電磁波の伝送に伴う効率の低下を抑制することができるとともに、構成の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【図2】電源の出力インピーダンスを50Ωとして電磁波照射部の電力伝送損失を測定したときのパラメータと反射損失との関係を説明するための図である。
【図3】電源の出力インピーダンスを75Ωとして電磁波照射部の電力伝送損失を測定したときのパラメータと反射損失との関係を説明するための図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【図5】本発明の第3実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【図6】本発明の第4実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【図7】本発明の第5実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【図8】本発明の第6実施例を示す高周波放電灯システムの要部断面を含む構成図である。
【符号の説明】
【0109】
10 高周波放電灯システム
12 電源部
14、34 電磁波伝送部
15、35 内部導体
16、36 外部導体
18、38、138 電磁波照射部
19、39、139 内部導体
20、40、140 外部導体
21 スペーサ
22、42、52、62、72、92 放電管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発生する電源部と、前記電源部から発生した電磁波を伝送する電磁波伝送部と、前記電磁波伝送部より伝送する電磁波を導入して照射する電磁波照射部と、前記電磁波照射部により導入された電磁波を受けて生成されるプラズマにより放電発光する放電管とを備えてなる高周波放電灯システムにおいて、
前記電磁波照射部は、電磁波を導入する内部導体と、前記内部導体を覆う筒状の外部導体と、前記内部導体と前記外部導体との間に介在する断熱部材を有し、前記内部導体の外径をdとし、前記外部導体の内径をDとし、前記断熱部材の誘電率をεとした場合、D/dは、1.5≦D/d≦40の関係を満たし、εは、1≦ε≦10の関係を満たしてなることを特徴とする高周波放電灯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波放電灯システムにおいて、前記断熱部材は、放電防止材料で構成されてなることを特徴とする高周波放電灯システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高周波放電灯システムにおいて、前記断熱部材が空気の場合、前記D/dは、1.5≦D/d≦2.0で、前記断熱部材が発泡テフロン(登録商標)の場合、前記D/dは、2.0≦D/d≦5.0で、前記断熱部材が石英ガラスの場合、前記D/dは、5.0≦D/d≦10.0で、前記断熱部材がアルミナの場合、前記D/dは、10.0≦D/d≦40.0であることを特徴とする高周波放電灯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−123487(P2009−123487A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295520(P2007−295520)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】