説明

高周波機器

【課題】伝送損失の低減を図ることができ、且つ、分配コアの実装が容易である高周波機器を提供する。
【解決手段】高周波機器は、第1の分配コアと、整合コアまたは第2の分配コアと、前記第1の分配コアが実装されるプリント基板とを備え、前記第1の分配コアと前記整合コアまたは第2の分配コアとを接続するためのランド7が前記プリント基板に形成されており、前記プリント基板のランド7近傍位置に開口部6が少なくとも一つ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波機器に関し、特に、分配コアをプリント基板に実装している高周波機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、伝送する高周波信号を分配するための分配コアを備える高周波機器が種々存在している。このような高周波機器では、通常、第1の分配コア1と整合コアまたは第2の分配コア2との接続は、プリント基板3に形成されたランド4を利用して半田5により行われている(図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−85120号公報(段落0011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ランド4ではプリント基板3の両面に導電層が設けられているので、ランド4自体が浮遊容量となってしまい、その浮遊容量の影響でインピーダンス整合を取ることができなくなり、伝送損失が大きくなってしまうという問題があった。なお、ランド4自体の浮遊容量C[F]は以下の(1)式で表すことができる。ただし、ε[F/m]はプリント基板3本体の比誘電率であり、εは真空の誘電率であり、S[m]は導電層平板の面積であり、d[m]はプリント基板3本体の厚みである。
C=ε×ε×S/d ・・・(1)
【0005】
上記(1)式から明らかなように、ランド4の面積を小さくすれば、浮遊容量が小さくなり、伝送損失を低減することができるが、ランド4の面積を小さくすると、第1の分配コア1や整合コアまたは第2の分配コア2の実装が困難になるという新たな問題が発生する。
【0006】
また、浮遊容量の影響によるインピーダンスの不整合を回避するために、プリント基板3に形成されたランド4を利用することなく、第1の分配コア1と整合コアまたは第2の分配コア2とを空中配線(例えば特許文献1参照)により直接半田付けして接続することもある。
【0007】
しかしながら、第1の分配コア1と整合コアまたは第2の分配コア2とを空中配線により直接半田付けして接続すると、第1の分配コア1や整合コアまたは第2の分配コア2の実装が困難になるという新たな問題が発生する。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑み、伝送損失の低減を図ることができ、且つ、分配コアの実装が容易である高周波機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る高周波機器は、第1の分配コアと、整合コアまたは第2の分配コアと、前記第1の分配コアが実装されるプリント基板とを備え、前記第1の分配コアと前記整合コアまたは第2の分配コアとを接続するためのランドが前記プリント基板に形成されており、前記プリント基板の前記ランド近傍位置に開口部が少なくとも一つ設けられている構成とする。
【0010】
このような構成によると、前記ランド自体の浮遊容量を低減することができるので、浮遊容量の影響によるインピーダンスの不整合を低減することができる。これにより、高周波信号の伝送損失を低減することができる。
【0011】
このような構成によると、前記第1の分配コアと前記整合コアまたは第2の分配コアとの接続が前記ランドを利用して行われるので、前記第1の分配コアと前記整合コアまたは第2の分配コアとの接続を空中配線で行う構成に比べて前記第1の分配コアの実装が容易になる。
【0012】
また、前記開口部の形状をスリット形状にすることが望ましい。
【0013】
また、前記開口部を前記ランドの両脇に設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る高周波機器によると、ランド自体の浮遊容量を低減することができるので、高周波信号の伝送損失を低減することができる。
【0015】
また、本発明に係る高周波機器によると、分配コアと整合コアまたは他の分配コアとの接続がランドを利用して行われるので、分配コアと整合コアまたは他の分配コアとの接続を空中配線で行う構成に比べて分配コアの実装が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ランドを利用した第1の分配コアと整合コアまたは第2の分配コアとの接続を示す概略図である。
【図2】通電機能付き3分配器の回路構成例を示す図である。
【図3】本発明を適用した場合にプリント基板のランド近傍位置に設けられる開口部の形状例を示すプリント基板の上面図である。
【図4】本発明に係る分配器、比較例に係る分配器それぞれについて高周波信号の伝送損失を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明は、分配コアをプリント基板に実装している高周波機器全般に適用することができるが、ここでは、当該高周波機器の一例である通電機能付き3分配器に本発明を適用した場合を例に挙げて説明する。
【0018】
まず、通電機能付き3分配器の回路構成例について図2を参照して説明する。図2に示す通電機能付き3分配器は、入力端子T1と、出力端子T2〜T4と、分配コアM1、M4、及びM5と、整合コアM2及びM3と、高周波阻止用コイルM6及びM7と、コンデンサC1〜C6と、ダイオードD1と、発光ダイオードD2と、抵抗R1とを備えている。
【0019】
入力端子T1に入力された高周波信号は、分配コアM1によって2分配される。分配コアM1から出力される一方の分配信号は、整合コアM2及びコンデンサC5からなる整合回路が設けられている伝送線路を経由し、分配コアM4に到達し、分配コアM4によって2分配される。分配コアM1から出力される他方の分配信号は、整合コアM3及びコンデンサC6からなる整合回路が設けられている伝送線路を経由し、分配コアM5に到達し、分配コアM5によって2分配される。
【0020】
分配コアM4から出力される一方の分配信号は、コンデンサC2が設けられている伝送線路を経由し、出力端子T2に到達し、出力端子T2から外部に出力される。
【0021】
分配コアM4から出力される他方の分配信号と分配コアM5から出力される一方の分配信号との合成信号は、コンデンサC3が設けられている伝送線路を経由し、出力端子T3に到達し、出力端子T3から外部に出力される。
【0022】
分配コアM5から出力される他方の分配信号は、コンデンサC4が設けられている伝送線路を経由し、出力端子T4に到達し、出力端子T4から外部に出力される。
【0023】
また、所定の電圧値のDC電力が外部から出力端子T2に重畳されると、そのDC電力は、ダイオードD1と、発光ダイオードD2と、抵抗R1と、高周波阻止用コイルM6及びM7とによって構成される通電回路を経由して、入力端子T1に到達し、入力端子T1から外部に出力され、通電状態となる。図2に示す通電機能付き3分配器は、発光ダイオードD2の発光によって、通電状態であることをユーザに報知する。
【0024】
次に、図2に示す通電機能付き3分配器に本発明を適用した場合について説明する。図2に示す通電機能付き3分配器に本発明を適用した場合、分配コアM1と整合コアM2との接続、分配コアM1と整合コアM3との接続、分配コアM4と分配コアM5との接続はそれぞれ、プリント基板に形成されたランドを利用して半田により行われる。
【0025】
ランド自体の浮遊容量を低減する方策については、ランド自体の浮遊容量は概ね上述した(1)式で表すことができるが、実際にはランド近傍の誘電率もランド自体の浮遊容量に影響を及ぼしており、ランド近傍の誘電率を低減することによってランド自体の浮遊容量も低減できることが判った。そこで、本発明では、当該知見に基づき、第1の分配コアが実装されるプリント基板において、第1の分配コアと整合コアまたは第2の分配コアとを接続するためのランド近傍位置に、開口部を設けるようにする。
【0026】
したがって、図2に示す通電機能付き3分配器に本発明を適用した場合、分配コアM1と整合コアM2とを接続するための第1ランド、分配コアM1と整合コアM3とを接続するための第2ランド、分配コアM4と分配コアM5とを接続するための第3ランドそれぞれに関して、プリント基板のランド近傍位置に開口部が設けられる。例えば、上記第1〜第3ランドそれぞれに関して、図3に示すように、ランドの両脇にスリット形状の開口部を設けるとよい。図3に示す例では、スリット形状の開口部6の長手方向長さをランド7の外径程度とし、スリット形状の開口部6の短手方向長さをランド7の内径程度としている。
【0027】
ここで、本発明の効果に関する検証結果について説明する。図2に示す通電機能付き3分配器の各回路定数を10〜2610MHz帯の高周波信号の伝送に適するように設定し、上記第1〜第3ランドそれぞれに関して、図3に示すサイズでランドの両脇にスリット形状の開口部を設けた分配器(以下、「本発明に係る分配器」という)を試作した。また、比較例として、「本発明に係る分配器」に対してスリット形状の開口部を設けていない点のみが相違する分配器(以下、「比較例に係る分配器」という)も試作した。
【0028】
そして、本発明に係る分配器、比較例に係る分配器それぞれについて高周波信号の伝送損失を測定した。その測定結果を図4に示す。図4において、実線は本発明に係る分配器における高周波信号の伝送損失を示しており、点線は比較例に係る分配器における高周波信号の伝送損失を示している。
【0029】
図4から明らかな通り、本発明を適用することにより、およそGHz(950〜2610MHz帯)で改善され、高周波信号の伝送損失を低減することができる。また、本発明を適用することにより、第1の分配コアと整合コアまたは第2の分配コアとの接続がランドを利用して行われるので、第1の分配コアと整合コアまたは第2の分配コアとの接続を空中配線で行う構成に比べて第1の分配コアの実装が容易になる。
【0030】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実行することができる。
【0031】
例えば、図3に示す例では、ランドの両脇にスリット形状の開口部を設けているが、開口部の形状はスリット形状に限定されなく、また、ランド毎の開口部の個数も2つに限定されることはない。ただし、近傍に開口部が設けられているランド付近のプリント基板の強度と近傍に開口部が設けられているランド自体の浮遊容量の低減とはトレードオフの関係にあることから、図3に示す例のように、第1の分配コアと整合コアまたは第2の分配コアとを接続するためのランドの近傍に開口部を設ける場合、ランドの両脇にスリット形状の開口部を設ける構成が望ましい。
【符号の説明】
【0032】
1 第1の分配コア
2 整合コアまたは第2の分配コア
3 プリント基板
4、7 ランド
5 半田
6 スリット形状の開口部
C1〜C6 コンデンサ
D1 ダイオード
D2 発光ダイオード
M1、M4、M5 分配コア
M2、M3 整合コア
M6、M7 高周波阻止用コイル
R1 抵抗
T1 入力端子
T2〜T4 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分配コアと、
整合コアまたは第2の分配コアと、
前記第1の分配コアが実装されるプリント基板とを備え、
前記第1の分配コアと前記整合コアまたは第2の分配コアとを接続するためのランドが前記プリント基板に形成されており、
前記プリント基板の前記ランド近傍位置に開口部が少なくとも一つ設けられていることを特徴とする高周波機器。
【請求項2】
前記開口部の形状がスリット形状である請求項1に記載の高周波機器。
【請求項3】
前記開口部が前記ランドの両脇に設けられている請求項1または請求項2に記載の高周波機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−243728(P2011−243728A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114270(P2010−114270)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】