説明

高圧容器用温度センサ取付構造

【課題】 高圧水素容器内の温度を正確に測定できる応答性に優れた高圧容器用温度センサの取付構造を提供する。
【解決手段】 高圧水素容器1のボスエンド2の内側でセンサハウジング3と上記ボスエンド2とがネジ締め固定され、ネジ締め位置よりも外側に、センサハウジング3の軸心に直交する平面部33とボスエンド2の軸心に直交する平面部23とがあり、これらの平面同士の密着により気密性を確保し、センサハウジング3の保護管部31の閉塞端内に温度センサ4の温度センサ素子40を保持する高圧容器用温度センサ取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に高圧流体が封入される高圧容器の内部の温度を測定する温度センサの取付構造に関するものであり、特に燃料電池自動車の水素貯蔵用高圧水素容器の温度センサの取付構造に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高圧容器として例えば燃料電池自動車の水素貯蔵用高圧水素容器は、非特許文献1の図2に示されたような、両端にステンレス製のボスを有し、射出成形によって形成された樹脂製ライナーに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を巻き付け形成され、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)で補強され、衝撃吸収パッドを付された高圧水素容器が知られている。上記ボスに設けられた開口はステンレス製のボスエンドによって閉鎖され、上記ボスエンドの一方には、水素を充填、排出するバルブ等が設けられる。
【0003】
高圧水素容器は水素充填圧として35MPaから70MPa程度の極めて高い圧力で使用されるので、安全性確保のため1.5倍耐圧として105MPaを耐圧保証値として規定し、また、使用環境としては−40〜85℃の温度範囲に耐え得るものであることとされている。(例えば、下記非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0004】
また、高圧水素容器内の水素ガスの温度は、水素を充填するときには圧縮により上昇し、水素を消費するときには減圧により下降する。従って、水素ガスの圧力と温度とから気体の状態方程式を利用して、最適な充填量や正確な消費量を演算し、上記高圧水素容器への水素ガスの充填をより安全でより高速に行ったり、より正確な燃費制御を行ったりするためには、上記高圧水素容器内部の水素ガス圧力および水素ガス温度をより正確に計測することが必要である(例えば、下記非特許文献2、3参照)。
【0005】
一方、一般的な高圧容器に対する温度センサの取付構造に関しては、特許文献1の図1に示すように、スパナ等で締め付けやすい6角形状をした肉厚部14を有するハウジング12を含む温度センサ10を、高圧容器のシリンダー部82に設けた雌ネジ83と温度センサ10のハウジング12に設けた雄ネジ36との螺合により締め付け固定するものがある。
【0006】
しかしながら、燃料電池車用高圧水素容器のような高圧容器内の温度測定をする場合に、上記特許文献1の図1に記載のように、高圧容器のシリンダー部82に設けられた雌ネジ83に、上記雌ネジ83に螺合する雄ネジ36を設けたハウジング12を含む温度センサ10を上記高圧容器の外側から取り付けたとしても、水素分子は非常に小さいため、上記雌ネジ83と上記雄ネジ36との螺合のみによる特許文献1に記載の取付構造では、上記雌ネジ83と上記雄ネジ36とのクリアランスによる隙間から水素がリークする恐れがあり、また、温度センサ10の保護管58とハウジング12とが別体で設けられており、保護管58とガラスシリンダー48との接合部56やガラスシリンダー48とハウジング12との接合部54などからも水素がリークする恐れがある。
【0007】
そこで、従来は、本明細書に添付した図4および図5に示すように、気密性を確保するため、削り出しによって、保護管部31と雄ネジ部32とハウジングシール部33とロック部34とを一体的に形成したセンサハウジング3の内部に設けた挿入口35に温度センサ素子40とリード線41、42とを電気的に結合した温度センサ4を収納し、ボスエンド2に設けられ外部に開放する開口に雌ネジ部22およびボスエンドシール部23を設け、上記センサハウジング3を上記ボスエンド2に上記雌ネジ部22と上記雄ネジ部32との螺合による締め付けにより、上記ハウジングシール部33とボスエンドシール部23とが密着し、気密性を保持する気密構造により取り付けている。
【0008】
温度測定の応答性を向上させようとした場合、上記保護管部31はできる限り肉薄であることが望ましいが、上記保護管部31を気密性確保のために削り出して形成する場合、ステンレスは加工が困難であることに加えて、高圧に耐えうるものでなければならないので、上記保護管部31の長さは自ずと制限されてしまう。
【0009】
そのため、外部からボスエンド2にセンサハウジング3を取り付けようとすると、上記高圧水素容器1の内側まで到達する長さの上記保護管部31を形成することは困難なので、上記保護管部31の先端を上記高圧水素容器1の内側に突出させることが出来ない。
【0010】
そこで、上記ボスエンド2の上記開口部に上記高圧水素容器1の内側からポート200を設け、このポート200内に上記センサハウジング3の保護管部31が突出するように配設し、上記高圧水素容器1の内部の水素ガス5をポート200内に導入し、上記保護管部31と接触させ、上記温度センサ4による温度測定を可能にしている。
【特許文献1】米国特許第5,743,646号明細書
【非特許文献1】水野基弘、他3名、「FCHV用高圧水素タンク」、社団法人自動車技術会春期学術講演会前刷集、社団法人自動車技術会、2005年5月20日、NO.84−05、p.13−16
【非特許文献2】吉田泰樹、他5名、「燃料電池自動車における高圧水素急速充てんシステムの構築」、社団法人自動車技術会春期学術講演会前刷集、社団法人自動車技術会、2003年5月22日、NO.29−03、p13−16
【非特許文献3】青柳暁、他3名、「燃料電池自動車における燃費計測法の開発」、社団法人自動車技術会秋期学術講演会前刷集、社団法人自動車技術会、2003年9月18日、NO.80−03、p.5−8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の高圧容器用温度センサの取付構造では、上記高圧水素ガス5が上記ポート200に導入され上記温度センサ4によって温度を検出されるまでに、外気温度等の条件によっては、上記ボスエンド2に放熱あるいは上記ボスエンド2から吸熱するため、測定される温度は実際の上記高圧容器内の水素ガスの温度と異なる恐れがある。
【0012】
また、上記ポート200内に導入される水素ガスの入れ替わりが速やかに行われなかった場合、上記高圧容器内の水素ガスの温度と測定温度との誤差は更に大きくなり得る。
【0013】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、上記高圧水素容器内の温度を正確に測定できる応答性に優れた高圧容器用温度センサの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1記載の発明では、内部に高圧流体が封入される高圧容器のボスに設けられた開口を閉鎖するボスエンドに、上記高圧容器内の温度を計測する温度センサを、これを保護するセンサハウジングを介して取り付けた高圧容器用温度センサ取付構造であって、
上記ボスエンドに上記高圧容器の内側から外部に開放する挿入孔を形成し、
一端が閉塞し他端が開口する保護管部を備えた上記センサハウジングを、
その開口端を上記挿入孔に連通せしめるとともに、その閉塞端を上記高圧容器の内側に突出せしめ、上記ボスエンドとの間に気密性を保持して、上記ボスエンドの上記高圧容器内側に設け、
上記高圧容器内部の温度を計測するセンサ素子と計測結果を上記高圧容器の外部の制御装置に出力するリード線とからなる上記温度センサを、上記挿入孔から上記保護管部へ挿入し、
上記センサ素子を上記高圧容器の内側に位置する上記保護管部の閉塞端内に保持せしめることを特徴とする。
【0015】
上記センサ素子をその内部に保持する上記保護管部が上記高圧容器の内壁よりも内側の位置に配設され、上記保護管部の壁面のみを介して上記高圧流体内部に接するので、より正確で応答性の良い温度測定が可能となる。
【0016】
請求項2記載の発明では、上記ボスエンドとは別体の上記センサハウジングを上記ボスエンドに付設した。
【0017】
上記センサハウジングが別体に設けられているので、加工の自由度が増し、上記センサハウジング全体の大きさを小さくすることが可能となる上、より精密な加工が可能となり、さらに上記センサハウジングの保護管部と上記センサ素子との空隙を狭くすることができ、上記センサ素子の応答性の向上が図られる。
【0018】
また、上記ボスエンドを上記高圧容器から取り外した状態で上記保護管内に上記温度センサを組み付けることが可能となるので取付の作業性が向上する。
【0019】
請求項3記載の発明では、上記センサハウジングと上記ボスエンドは、互いに螺合するネジ部と相互間の気密性を保持するシール部とを有し、上記シール部をネジ締めにより互いに密着するメタルシール構造とした。
【0020】
上記センサハウジングをネジ締めにより簡単に上記ボスエンドに組付けることができる上に、その締め付けによって発生する軸力によって、上記センサハウジングのシール面と上記ボスエンドのシール面とが弾性変形してシール面同士が食い込んで密に接触して強固に気密性を保持できる。
【0021】
請求項4記載の発明では、上記両シール部のシール位置を上記センサハウジングと上記ボスエンドとが螺合した状態で上記ネジ部よりも上記ボスエンドの外側位置に設定した。
【0022】
上記シール部の位置が上記ネジ締め位置の後方にある場合に比べ、上記シール部の密着面の面積が小さくなるので、ネジの締付による軸力により上記シール部に加わる単位面積当たりの面圧が大きくなり、更に気密性の向上が図られる。
【0023】
請求項5記載の発明では、上記両シール部のシール面をネジ締め方向と直交する平面に形成した。
【0024】
一般的なテーパー面同士の密着によるメタルシール構造ではテーパー面の角度を厳密に加工したとしても、一度シールした後、シールを緩めると、シール時に変形したシール面が完全には元の形に復元せず、また、ネジ締めの強さによってもシール位置が完全には元の位置に一致しないので、再シールした場合にリークが発生してしまう可能性があるが、ネジ締め方向に直交する平面同士のメタルシール構造の場合、ネジ締めの角度の違いによる影響が少ないのでリークの防止には有利である。
【0025】
請求項6記載の発明では、上記高圧容器が燃料電池車用高圧水素容器であることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、燃料電池車用高圧水素容器の内部温度の測定精度および応答性が向上され、水素充填時の充填制御および走行時の燃費計測等の精度向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明に係る高圧水素容器の温度センサ取付構造の要部断面図であり、図2は図1中の円で囲ったA部の詳細を示す拡大断面図であり、図3は本発明が適用された高圧水素容器の一部断面図である。
【0028】
高圧水素容器1は内部に高圧流体として水素ガス5が封入される高圧容器である。上記高圧水素容器1は両端に肉厚のステンレス製のボス10を有し、射出成形によって上記ボス10と一体的に形成された樹脂製ライナー11によって容器本体が形成されている。上記樹脂製ライナー11の外部表面に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)12を連続的に切れ目無く何層にも巻き付けられることにより、気密性を保持しつつ極めて高い強度に形成されている。
【0029】
さらに上記CFRP12の層の外部表面は更にガラス繊維強化プラスチック(GFRP)13により補強され、両側が衝撃吸収パッド14により外部からの衝撃から保護されている。
【0030】
上記高圧水素容器1の両端の上記ボス10の中心には、外部に開放する開口部が設けられ、上記開口部には六角形状の頭部を有す略円柱状のステンレス製のボスエンド2が詳述略の公知のシール方法により気密構造で装着されている。
【0031】
上記ボス10および上記ボスエンド2の材質は、耐水素脆性を考慮してステンレス(SUS316L)が用いられている。
【0032】
上記高圧水素容器1の樹脂部分(ライナー11、CFRP12、GFRP13)に温度センサを取り付けようとすると曲面への取付となるので気密性の確保が困難であるばかりでなく、上記高圧水素容器1の耐圧性が失われかねない。
【0033】
そこで、上記高圧水素容器1の上記ボスエンド2は、上記高圧水素容器1の両端のボス10の開口部を塞ぐためだけでなく、肉厚で部品取付スペースの確保が容易であるから、上記樹脂部分の気密性および耐圧性を阻害することなく、上記高圧水素容器1に水素ガス充填あるいは水素ガス排出用の開閉バルブ6および配管、あるいは温度センサ4や圧力センサ等の他の部品等を組み付けるための取付基部としての役割を果たしている。
【0034】
図3に示すように上記高圧水素容器1の両端のボス10に装着された上記ボスエンド2のうち一方のボスエンド2には、上述した詳述略の気密構造により、上記高圧水素容器1に高圧水素ガス5を充填したり、上記高圧水素容器1から高圧水素ガス5を取り出したりする開閉バルブ6および配管部材、図略の安全弁等が取り付けられている。
【0035】
他方の上記ボスエンド2には、 図1および図2に示すように、その軸線に沿って外部に開放する挿入孔20が、後述する温度センサ4が挿入可能となる内径で設けられている。
【0036】
上記挿入孔20の上記高圧水素容器1側には後述するセンサハウジング3を組み付けるための雌ネジ部22が上記挿入孔20よりも太い径で形成されている。
【0037】
また、上記ボスエンド2には上記雌ネジ部22のネジ締め方向の先方には気密性を確保するためのボスエンドシール部23が形成されている。上記ボスエンドシール部23はネジ締め方向に対して垂直平面を形成しており、後述するメタルシール構造の密着性を良好にするため表面は精度良く仕上げられている。
【0038】
センサハウジング3はボスエンド2と同材質のステンレス(SUS316L)からなり、円筒状の保護管部31と上記ボスエンド2に設けられた上記雌ネジ部22に螺合する雄ネジ部32とハウジングシール部33とナット部34が切削加工により一体的に形成されている。
【0039】
また、上記センサハウジング3の内側には上記センサハウジング3を上記ボスエンドに組み付けたときに一端が上記ボスエンド2に設けた挿入孔20に連通し、他端が上記保護管部31の先端で閉塞する挿入孔20aが軸心に沿って設けられている。
【0040】
上記センサハウジング3は上記ボスエンド2とは別体で上記ボスエンド2に付設されている。即ち両者は分解可能な構造であり、両者を加工する際には比較的精密な加工が可能である。特に上記ボスエンド2の挿入孔20や保護管部31の挿入孔20aなどの細い孔を形成するとき、上記ボスエンド2と上記センサハウジング3とが別体であると孔加工が極めて容易である。
【0041】
上記センサハウジング3の保護管部31は温度応答性と耐圧性とを考慮した厚さに形成され、上記ナット部34はスパナ等の工具により締め付けが可能な強度を有するように外形が六角形状で厚肉に形成され、上記雄ネジ部32は上記保護管部31の外径よりも太いネジ径でかつ上記ナット部34の締め付けに十分耐えうる強度に形成されている。
【0042】
上記雄ネジ部32および上記雌ネジ部22のそれぞれのネジ山のサイズ、ピッチ、ネジ山数、谷径等はシール面の適正な面圧を考慮して決定されている。
【0043】
また、上記ボス10と上記ボスエンド2と上記センサハウジング3とが同材質により形成されているので熱膨張係数の違いによるネジの緩みの発生を押さえることができる。
【0044】
なお、上記両シール部23、33のシール位置は、上記ボスエンド2の上記雌ネジ部22と上記センサハウジング3の上記雄ネジ部32とが螺合した状態で上記両ネジ部22、32よりも先方、即ち上記ボスエンド2の外側方向の位置にある。
【0045】
上記両シール部23、33の位置が上記ネジ締め位置22、32よりも後方、即ち上記ボスエンド2の内側方向に設けた場合、両シール部23、33は上記ボスエンド2に設けられた上記雌ネジ部22よりも必然的に大きくせざるを得なく両シール部のシール面積が大きくなり、面圧が小さくなる。
【0046】
一方、上記両シール部23、33の位置が上記ネジ締め位置22、32よりも先方に設けることにより、上記両シール部23、33は必然的に上記両ネジ部22、32の内径より小さくなるので密着面積も小さくなり、上記両ネジ部22、23の締め付けによる軸力により加わる単位面積当たりの面圧は大きくなり、気密性の向上が図られる。
【0047】
上記ハウジングシール部33はネジ締め方向に対して垂直平面を形成しており、密着性を良好にするためシール面は精度良く仕上げられている。
【0048】
また、上記ハウジングシール部33は密着面の面積を更に小さくしてシール面にかかる単位面積当たりの面圧を大きくするとともに、上記ボスエンドハウジングシール部23に当接する際にかじりを起こさないようにするため上記ハウジングシール部33の外径側には円錐状にテーパー面331が施され、内径側には円錐状のテーパー面332が施してあり、シール面はリング状の平面となっている。
【0049】
上記センサハウジング3の雄ネジ部32を上記ボスエンド2に設けられた雌ネジ部22にねじ込んで、ロック部34をスパナ等の工具により締め付けると、上記ハウジングシール部33と上記ボスエンドシール部23とが平面同士で接触し、さらに雄ネジ部32をネジ込むと、両シール面がネジ込みの軸力により弾性変形して接触面が完全に一致して密着した状態になる。
【0050】
ここで雄ネジ部32のネジ込みを止めても、雌ネジ部22と雄ネジ部32との摩擦力により上記両シール面が互いに密に接触するメタルシール構造を維持し、このメタルシール構造により上記高圧水素容器1の内部と外部とを完全に隔離するので、強固に気密性を保つことができる。
【0051】
上記雌ネジ部22と上記雄ネジ部32とを螺合する際に、過剰な力を加えてネジ込むと上記両シール面が降伏値を越えて塑性変形してしまうので、上記両シール面同士の密着から降伏値を超えない範囲までの締め付け回転角度から適正な面圧を導き出す弾性域角度法、または上記両シール面が弾性変形する範囲内にネジ締めトルクを制限するトルク法により、適正な締め付け状態を管理する。
【0052】
温度センサ素子40とリード線41、42とが電気的に接続されて構成された温度センサ4は上記ボスエンド2の上記挿入孔20から挿入され、上記温度センサ素子40が上記センサハウジング3の保護管部31の上記挿入孔20a先端の閉塞端の内側で固定されており、上記温度センサ素子40から引き出されたリード線41、42が上記挿入孔20aおよび上記挿入孔20を通って、外部の制御装置43に電気的に繋がっている。
【0053】
上記温度センサ素子40としてサーミスタが用いられているが、サーミスタに限定するものではなく、白金測温抵抗体等でも良い。
【0054】
また、センサハウジング3の内壁と上記温度センサ4とは上記温度センサ4に施された図略の絶縁性被覆等の絶縁手段により電気的な絶縁性が確保されている。
【0055】
上記センサハウジング3の保護管部31の閉塞端が、上記高圧水素容器1の内側に位置するように上記ハウジング3が付設されているので、上記閉塞端内に保持される温度センサ素子40も上記高圧水素容器の内側に支持されることになり、かつ、上記保護管31の薄い壁面のみを介して直接上記高圧水素容器1内部の温度を測定できるので温度の測定誤差が少なくなるとともに上記高圧水素容器1の内部の温度変化に対して速やかに応答できる。
【0056】
また、上記センサハウジング3は上記高圧水素容器1の内側に取り付けられているので、上記高圧水素容器1内の水素ガス圧力が上記センサハウジング3に加わり、シール面の密着力を増す方向に作用する。
【0057】
しかしながら、同時に上記高圧水素容器1内の水素ガス圧力は上記両ネジ部22、32のネジ締めの軸力をうち消す方向にも加わる。しかし、上記水素ガス圧からはネジ締めのゆるみ方向の回転力は与えられないので、嫌気性ネジ固定剤341等のゆるみ回転防止手段により、振動等の外力による上記センサハウジング3の回転を防止すれば、上記雌ネジ部22と上記雄ネジ部32との螺合のゆるみは生じない。
【0058】
また、上記ゆるみ回転防止手段は上記嫌気性ネジ固定剤341の他、機械的な係合部を設けた係止手段によるもの等でも良い。
【0059】
また、温度応答性をさらに向上させるために、上記保護管31と上記温度センサ素子40との熱伝導性を良くする熱伝導率の高い素材をフィラーとして上記挿入孔20aと温度センサ素子40との空隙に充填しても良い。
【0060】
なお、本実施形態においては、上記温度センサ4を単独で上記ボスエンド2の一方に設けたが、本発明によれば、上記温度センサ4は比較的小さくできるので、上記バルブ6側のボスエンド2にバルブ6等の他の部材とともに取付けることも可能で、片側のボスエンド2に配管や配線を集中させることにより、取り扱い時の注意労力を軽減できる。
【0061】
また、本実施形態においては、上記ボスエンド2と上記センサハウジング3は別体で設けられ、雌ネジ部22と雄ネジ部32との螺合により結合されているが、上記センサハウジング3と上記ボスエンド2とを一体的に形成したものでもよく、上記センサハウジング3の保護管部31が上記高圧水素容器1の内側に突出するように形成すればよい。
【0062】
この場合、上記保護管部31と上記ボスエンド2とは一体であるので、両者の気密性は完全に保持される。
【0063】
さらに、本発明においては、上記温度センサ4の上記センサハウジング3への取付を作業容易にするとともに絶縁性を確保するものとして上記温度センサ4を予め別のケーシング等に納めたものとしても良い。
【0064】
さらに、本発明に適用できる高圧容器は上記実施形態に例示した構造の高圧水素容器に限定するものではなく、他の構造の高圧水素容器であっても良く、また、高圧容器内に封入される高圧流体は水素以外の他の高圧流体用容器でも良い。
【0065】
さらに、高圧容器内に封入される高圧流体が水素以外の他の高圧流体である場合、センサハウジングの保護管部を高圧容器内に突出せしめるという本発明の特徴を保有していれば良く、またセンサハウジング内に配設されるセンサ類も上記温度センサに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態における高圧容器用温度センサの取付構造を示す要部断面図。
【図2】図1中A部の拡大断面図。
【図3】本発明の適用された高圧水素容器の一部断面図。
【図4】従来の高圧水素容器用温度センサの取付構造を示す要部断面図。
【図5】図4中A部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 高圧水素容器
2 ボスエンド
20、20a 挿入孔
22 雌ネジ部
23 ボスエンドシール部
3 センサハウジング
31 保護管部
32 雄ネジ部
33 ハウジングシール部
331、332 テーパー面
34 ナット部
341 嫌気性ネジ固定剤
4 温度センサ
40 温度センサ素子
41、42 リード線
43 制御装置
5 高圧水素ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に高圧流体が封入される高圧容器のボスに設けられた開口を閉鎖するボスエンドに、上記高圧容器内の温度を計測する温度センサを、これを保護するセンサハウジングを介して取り付けた高圧容器用温度センサ取付構造であって、
上記ボスエンドに上記高圧容器の内側から外部に開放する挿入孔を形成し、
一端が閉塞し他端が開口する保護管部を備えた上記センサハウジングを、
その開口端を上記挿入孔に連通せしめるとともに、その閉塞端を上記高圧容器の内側に突出せしめ、上記ボスエンドとの間に気密性を保持して、上記ボスエンドの上記高圧容器内側に設け、
上記高圧容器内部の温度を計測するセンサ素子と計測結果を上記高圧容器の外部の制御装置に出力するリード線とからなる上記温度センサを、上記挿入孔から上記保護管部へ挿入し、
上記センサ素子を上記高圧容器の内側に位置する上記保護管部の閉塞端内に保持せしめることを特徴とする高圧容器用温度センサ取付構造。
【請求項2】
上記ボスエンドとは別体の上記センサハウジングを上記ボスエンドに付設した請求項1に記載の高圧容器用温度センサ取付構造。
【請求項3】
上記センサハウジングと上記ボスエンドは、互いに螺合するネジ部と相互間の気密性を保持するシール部とを有し、
上記シール部をネジ締めにより互いに密着するメタルシール構造とした請求項2に記載の高圧容器用温度センサ取付構造。
【請求項4】
上記両シール部のシール位置を上記センサハウジングと上記ボスエンドとが螺合した状態で上記ネジ部よりも上記ボスエンドの外側位置に設定した請求項3に記載の高圧容器用温度センサ取付構造。
【請求項5】
上記両シール部のシール面をネジ締め方向と直交する平面に形成した請求項3または4に記載の高圧容器用温度センサ取付構造。
【請求項6】
上記高圧容器が燃料電池車用高圧水素容器である請求項1ないし4のいずれかに記載の高圧容器用温度センサ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−212287(P2007−212287A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32422(P2006−32422)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】