説明

高圧放電ランプを製造する方法、高圧放電ランプによって光を供給する方法、およびディジタルビデオプロジェクタ

高圧放電ランプ(10)が過度に熱くなることなく、空間内でランプの特に高い最大輝度を得るために、目標出力と目標出力に対して定められた最大の電流の強さImaxとに合わせて、ランプのパラメータをランプ組立時に定める。カソードの先端が曲率半径RK(単位:mm)を有し、電極間距離(単位:mm)がe0であり、高圧放電ランプ(10)内のキセノンガスの室温充填圧力がP(単位:bar)ならば、式(I)が成り立つ。その際、最大輝度が改善されればされるほど、cは大きくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧放電ランプの製造方法に関する。主な関心はこのようにして製造された高圧放電ランプによって光を供給する方法にある。なお、この方法の主な使用分野はディジタルビデオプロジェクタである。
【0002】
従来のプロジェクタでは、光は大きな平面に、例えば透明陽画に送られる。この大きな平面の各部分平面は投影される画像の一部に対応する。
【0003】
ディジタルプロジェクタでは、個々の画像は画素によって構成される。この場合、各画素に光が供給される。通常は、高圧放電ランプ、とりわけキセノン高圧放電ランプが、ふつう部分楕円の形状を有する反射器内に配置される。ランプは、最大輝度の点がほぼ部分楕円の第1の焦点に来るように配置される。なお、この部分楕円はランプから放出された光をその第2の焦点に集束させる。光はこの第2の焦点において出射する。ふつう、第2の焦点の領域には、光線を均一にするいわゆるインテグレータが設けられる。インテグレータは一般に長方形の断面を有する石英のロッドであり、この石英ロッド内で何度も光の全反射が行われ、光は均一化されて石英ロッドから出射する。石英ロッドの下には、例えば複数の小さなミラーの配列(アレイ)が設けられている。ここで、複数のミラーは個々に傾斜させることができる。ミラーアレイは、スクリーン上の個々の画素が制御目標に従って照明されたり、照明されなかったりするように駆動制御される。したがって、ディジタルビデオプロジェクタでは、インテグレータの入口に非常に高い輝度の光が達することが保証されなければならない。従来のキセノン高圧放電ランプは、標準的な映画向けのディジタルプロジェクタを実現するには最大輝度が不十分である。映画スクリーン上の有効光束は低すぎる。従来は、特に出力の高いキセノン高圧放電ランプを用いることでしのいでいた。しかし、ランプ出力を上げることは、ランプのコストの上昇と寿命の短縮の他に、ビデオプロジェクタに熱に関する重大な問題をもたらす。したがって、ランプを冷却するための非常に高いコストとさらなるプロジェクタ部品とが必要になる。しかし、それには余分な出費が伴う。発生するアークから放出された光をインテグレータに効率的に集束させるために、高圧放電ランプの2つの電極(カソードおよびアノード)の間の距離を非常に小さくすることも既に試みられている。しかし、その場合、放電ガス(今の例ではキセノン)の典型的な室温充填圧力では、バーニング電圧も同時に低下してしまい、したがってまた出力も低下するので、光度も同時に失われてしまう。これをまた補償しようとするならば、電流を上げなければならないが、カソードの逆弧がより強くなってしまう。
【0004】
発明の概要
本発明の課題は、ディジタルビデオプロジェクタを映画フィルム投写用に使用する方法を示すこと、とりわけ、高圧放電ランプの空間的な最大輝度をどのようにして上げることができるかを示すことである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載のステップを有する高圧放電ランプの製造方法、請求項7に記載の高圧放電ランプによって光を供給する方法、請求項9に記載のディジタルビデオプロジェクタによって解決される。
【0006】
本発明による高圧放電ランプの製造方法は以下のステップを有する。
高圧放電ランプの目標出力を定める
高圧放電ランプを目標出力で動作させるための電流の強さの上限Imax(単位:アンペア)を定める
高圧放電ランプを組み立てる、ただしその際、放電容器内にカソードとアノードを入れ、カソードの先端は曲率半径RK(単位:mm)を有し、動作中のカソードからアノードまでの距離(いわゆるホット電極間距離)はe0(単位:mm)であり、ガス(とりわけキセノン)を室温充填圧力P(単位:bar)で放電容器内に入れる(ここで閉じる)。ここで、RK、e0およびPの値は、
【数1】

となるように選ばれている。
【0007】
本発明は式で用いられている値の間の数学的関係の知識に基づいている。ここで、cは、高圧放電ランプにImaxが印加された場合、高圧放電ランプの輝度の上昇につれて上昇する。高圧放電ランプの輝度が高ければ高いほど、cは大きくなるので、cは好ましくは275よりも大きい、特に好ましくは300よりも大きい、さらに特に好ましくは320よりも大きい。
【0008】
先行技術のアプローチでは実質的に既に組み立てられた高圧放電ランプが前提とされており、電流の強さはそれに合わせて選ばれているのに対し、本願発明によれば、まず初めに最大の電流の強さが選ばれるが、他の値RK、e0およびPを適切に選ぶことによって十分な輝度が保証される。Imaxはとりわけ、高圧放電ランプおよびこの高圧放電ランプを備えたディジタルビデオプロジェクタが過度に熱くならないように、すなわち、熱的な問題がもはや発生しないように選ばれる。同時に、高圧放電ランプがあまり摩耗せずに動作するようにしてもよい。最大電流は特に具体的には以下の値を有するようにしてよい。1500〜2500Wの目標出力に対してはImax<105A、2500〜3500Wの目標出力に対してはImax<115A、3500〜3800Wの目標出力に対してはImax<130A、3800〜5000Wの目標出力に対してはImax<160A、5000〜8000Wの目標出力に対してはImax<180A。
【0009】
この最大の電流の強さに合わせて、RK、e0およびPの値は、上記値cが250よりも大きく、好ましくは275、300または320よりも大きくなるように選ばれる。例えばRK<0.52が選ばれる。一般的には、目標出力が7000Wの場合であれば、RK=0.5mmとしてよい。目標出力が5000Wよりも低ければ、RK<0.42mm、例えばRK=0.4mmとしてよい。
【0010】
Pは10barよりも高く選定される。それどころか、目標出力が5000Wよりも低ければ、Pは13.8barよりも高く、例えばP=14barとしてよい。
【0011】
カソード距離e0は目標出力に依存して選ばれる。1500〜2000Wの目標出力に対してはe0<2.8mm、2500〜3500Wの目標出力に対してはe0<3.8mm、3500〜3800Wの目標出力に対してはe0<4.2mm、3800〜5000Wの目標出力に対してはe0<5.2mm、5000〜8000Wの目標出力に対してはe0<7mm。これらの値はホット電極間距離(動作中の電極の間の距離)についても成り立つことに留意されたい。コールド電極間距離は1mmだけ大きい(推定)。このことはランプ組立時に考慮される。
【0012】
本発明による、高圧放電ランプによって光を供給する方法では、上で説明したようにまず高圧放電ランプを製造する方法が実行される。次に、I<Imaxの電流I(単位:アンペア)を高圧放電ランプに印加する。最大輝度を特に高くするために、次式が成り立つ。
【0013】
【数2】

(ここで、特に好ましくはc(I)>275、さらに好ましくはc(I)>300、さらに特に好ましくはc(I)>320。ただし、I<Imaxが保証されていること。)
ふつうは、電流の強さIをImaxよりも十分に小さく選ぶ。例えば、上記の上限Imaxに対し、1500〜2500Wの目標出力に対しては85A<I<97A、2500〜3500Wの目標出力に対しては93A<I<107A、3500〜3800Wの目標出力に対しては103A<I<117A、3800〜5000Wの目標出力に対しては113A<I<140A、5000〜8000Wの目標出力に対しては130A<I<165Aが選ばれる。
【0014】
本発明によるディジタルビデオプロジェクタは、本発明による方法に従って製造された高圧放電ランプを有している。すなわち、この高圧放電ランプでは、高圧放電ランプの動作時の輝度が目標出力のもと最大の電流の強さよりも低い電流で十分に高くなるように、目標出力と最大の電流の強さとに合わせて、カソードの曲率半径、電極間距離およびガスの室温充填圧力といったパラメータが選ばれている。本発明によるディジタルビデオプロジェクタは高圧放電ランプに印加する電流を制御するための制御ユニットを有している。この制御ユニットは、動作中の高圧放電ランプにI<Imaxの電流Iがつねに供給されるようにする制御信号を出力する。これにより、ディジタルビデオプロジェクタの安全な動作が保証される。とりわけ、過度の温度上昇が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】高圧放電ランプの構造と、概略的にディジタルビデオプロジェクタのいくつかの構成部材とを示す。
【0016】
発明の有利な実施形態
高圧放電ランプ10は、圧力Pで室温(21°)の放電ガス、ここではキセノン、を密封した放電容器12を有している。放電容器12の中には、カソード14とアノード16がある。カソード14は曲率半径RKの先端18を有している。カソードの先端18からアノード16までの距離はe0である。
【0017】
高圧放電ランプ10は所定の目標出力に合わせて設計されており、この目標出力に対して最大の電流の強さImaxが定められている。目標出力と最大の電流の強さは、過度の温度上昇に到ることなく高圧放電ランプの動作が保証されるように選ばれている。P、e0およびRKの値はImaxに合わせて
【数3】

となるように選ばれている。値cはランプの最大輝度を表す尺度である。ディジタルでないビデオプロジェクタでは、同様の尺度を用いる場合、250よりも小さな値が得られる。したがって、本発明による高圧放電ランプ10の製造によれば、ディジタルでないビデオプロジェクタでは提供できない最大輝度を提供することができる。
【0018】
高圧放電ランプ10は概略的に図示されたディジタルビデオプロジェクタ20で使用される。図には、高圧放電ランプ10内に配置されている反射器が示されていない。また、高圧放電ランプ10から放射された光はミラーアレイに供給される前にインテグレータに集束されるが、このインテグレータも図には示されていない。
【0019】
高圧放電ランプ10はディジタルビデオプロジェクタ20内で電流源22から給電される。この電流源は電流の強さIがI<Imaxである電流のみを高圧放電ランプ10に供給するようにしなければならない。この目的のために、電流源12は電流の強さIの値を定める制御ユニット24によって制御される。制御ユニット24は電流の強さがImaxを超えないことを保証する。なお、制御ユニット24はマイクロコントローラとして形成されていてよい。特に高い空間的な最大輝度を保証するために、制御ユニット24は
【数4】

となるように電流の強さIを定める。パラメータe0、RKおよびPをImaxに合わせて適切に選択することにより、高圧放電ランプ10の目標出力を過度に高く設定しなくても、特に高い輝度が保証される。それゆえ、上記の式を考慮することにより、所定の目標出力に対して特に高い最大輝度を提供することが可能である。逆に、所定の最大輝度が所望ならば、高圧放電ランプ10をそうでない場合よりも低い目標出力で使用することもできる。
【0020】
以下の表は、高圧放電ランプ10の目標出力に対して、どのように値を選ぶことができるか、電流I<Imaxを印加したときに得られるc(I)および輝度を示したものである。
【0021】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電ランプ(10)を製造する方法において、
前記高圧放電ランプ(10)の目標出力を定めるステップ、
前記高圧放電ランプ(10)を目標出力で動作させるための電流の強さの上限Imax(単位:A)を定めるステップ、および
放電容器(12)内にカソード(14)とアノード(16)を収納し、室温充填圧力P(単位:bar)でガスを前記放電容器(12)内に入れ、高圧放電ランプを組み立てるステップを有しており、
ただし、前記カソード(14)の先端(18)が曲率半径RK(単位:mm)を有しており、動作中の前記カソード(14)から前記アノード(16)までの距離がe0(単位:mm)であり、
【数1】

であることが保証されている、ことを特徴とする高圧放電ランプ(10)を製造する方法。
【請求項2】
前記高圧放電ランプ(10)は、c>275、好ましくはc>300、特に好ましくはc>320となるように組み立てられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1500〜2500Wの目標出力に対してはImax<105A;2500〜3500Wの目標出力に対してはImax<115A;3500〜3800Wの目標出力に対してはImax<130A;3800〜5000Wの目標出力に対してはImax<160A;5000〜8000Wの目標出力に対してはImax<180Aである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
K<0.52mmであり、特に5000Wよりも低い目標出力に対しては、RK<0.42mmである、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
P>10barであり、特に5000Wよりも低い目標出力に対しては、P>13.8barである、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
1500〜2500Wの目標出力に対してはe0<2.8mm、2500〜3500Wの目標出力に対してはe0<3.8mm、3500〜3800Wの目標出力に対してはe0<4.2mm、3800〜5000Wの目標出力に対してはe0<5.2mm、5000〜8000Wの目標出力に対してはe0<7.0mmである、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
高圧放電ランプ(10)によって光を供給する方法において、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法を実行するステップと、
電流の強さIを有する電流を前記高圧放電ランプ(10)に印加するステップを有し、ここでI<Imax
【数2】

である、ことを特徴とする高圧放電ランプ(10)によって光を供給する方法。
【請求項8】
1500〜2500Wの目標出力に対してはImax<105A,85A<I<97A;2500〜3500Wの目標出力に対してはImax<115A,93A<I<107A;3500〜3800Wの目標出力に対してはImax<130A,103A<I<117A;3800〜5000Wの目標出力に対してはImax<160A,113A<I<140A;5000〜8000Wの目標出力に対してはImax<180A,130A<I<165Aである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項記載の方法によって製造された高圧放電ランプ(10)と、前記高圧放電ランプ(10)に印加する電流を制御するための制御ユニット(24)とを有するディジタルビデオプロジェクタ(20)において、前記制御ユニット(24)は、動作中の前記高圧放電ランプ(10)にI<Imaxの電流の強さIを有する電流がつねに供給されるようにする制御信号を出力する、ことを特徴とするディジタルビデオプロジェクタ(20)。

【図1】
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【公表番号】特表2011−517018(P2011−517018A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502235(P2011−502235)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053873
【国際公開番号】WO2009/121400
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(504458493)オスラム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (168)
【氏名又は名称原語表記】Osram Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】