説明

高圧放電ランプ及び照明器具

【課題】昆虫の誘引の低減等を図ることを課題とする。
【解決手段】発光管2と;この発光管を覆うように設けられた透光性の保護管と;500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子を主体として、前記保護管の外面または内面に形成され,光学特性として波長450nmの光のカット率が15〜40%である光カット膜4と;を具備することを特徴とする高圧放電ランプ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定波長域の光をカットする光カット膜を備えた高圧放電ランプ及びこの放
電灯を備えた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、紫外線カット膜を設けた高圧放電ランプ及び該ランプを利用した照明器具は、紫外線及び一部青色光を必要としない被照射物等の損傷防止や紙・布等の劣化防止、低誘虫用など照明に主として利用されている。
【0003】
例えば、紫外線をカットするための膜材料には、酸化亜鉛(ZnO)系材料が主に使用されている。ここで、紫外線をカットするために使用されているZnO系被膜は、50%カット波長が約380nm以下であるが、紫外線による劣化防止の効果を向上させるためにはより長波長側の光をカットすることが望ましい。このため、例えばBiまたはInをドープしたZnO系材料を用いた紫外線カット膜が提案されている。
【0004】
従来、高演色性,低色温度性に優れたメタルハライドランプとして、可視光反射特性を調整した誘電体膜を発光管に施した色温度変換膜付メタルハライドランプが知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、従来、特に高い演色性を有し、容易に色温度を自由に設定可能なメタルハライドランプとして、発光管から放射される光のうち特定の波長の光出力を所定の割合で低減する被膜を形成したメタルハライドランプが知られている(例えば、特許文献2)。
【0006】
更に、従来、光学特性としてのランプの光の色温度を改良したメタルハライドランプ(例えば、特許文献3)、あるいは色特性の優れた高効率、高演色型のメタルハライドランプ(例えば、特許文献4)が知られている。
【特許文献1】特開平10−208703号公報
【特許文献2】特開平5−36380号公報
【特許文献3】特許第3312670号公報
【特許文献4】特許第3603475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、ZnO微粒子材料またはInドープZnO系の材料を用いて紫外線カット膜を形成すれば、変退色を抑制することが可能であるが、この紫外線カット膜のカット波長(透過率50%以下となる長波長側の上限波長)は約380nmであり、長波長側へシフトするように調整しても400〜425nmが限界である。しかしながら、昆虫の誘虫性や紙繊維などの変退色の波長依存性は可視域の500nm付近まであるため、紙繊維等の変退色、昆虫の誘引の低減、抑制の効果は十分とはいえない。一方、可視域の500nm付近以下を黄色顔料などでカットした電球または蛍光ランプからなる低誘虫ランプが実現されているが、演色性、見え方の点で不充分であり、また大光量が必要な照明用途
【0008】
では使用できない。
【0009】
本発明は、こうした問題点に鑑みなされたもので、昆虫の誘引等を低減し、かつ見え方、演色性の良好な明るさの低下を抑制し得る高圧放電ランプ及び照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の高圧放電ランプは、発光管と;この発光管を覆うように設けられた透光性の保護管と;500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子を主体として、前記保護管の外面または内面に形成され,光学特性として波長450nmの光のカット率が15〜40%である光カット膜と;を具備することを特徴とする。ここで、前記複合酸化物からなる粒子としては、Zr−Si−Pr−O,Bi−V−O,Ti−Ni−Sb−O,Ti−Ni−W−O,Ti−Cr−Nb−O,Ti−Ni−Nb−Oのいずれか、あるいはその組成の一部を他の元素に置換したものが挙げられる。
【0011】
請求項3記載の高圧放電ランプは、発光管と;この発光管を覆うように設けられた透光性の保護管と;波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子と波長600nm以下の光を吸収する複合酸化物粒子を主体として、前記保護管の外面または内面に形成され,光学特性として波長450nmの光のカット率が20〜50%であり、黒体放射からの偏差duvが+0.001〜−0.001である光カット膜と;を具備することを特徴とする。
【0012】
ここで、波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する前記複合酸化物からなる粒子が、Zr−Si−Pr−O,Bi−V−O,Ti−Ni−Sb−O,Ti−Ni−W−O,Ti−Cr−Nb−O,Ti−Ni−Nb−Oのいずれか、あるいはその組成の一部を他の元素に置換したものであり、波長600nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する前記複合酸化物からなる粒子が、Fe2O3・Fe系複合酸化物,Ti−Sb−Cr−O,Zr−V−O,Sn−V−O,Ti−Sb−Cr−Oのいずれか、あるいはその組成の一部を他の元素に置換したものである場合が挙げられる。
【0013】
本発明において、保護管は外部に露出するように外管として用いることが可能であるが、保護管の外方を覆う外管が更に設けられた三重管構造としてもよい。また、保護管は発光管を気密に封止するように閉塞状態で覆う形態が採用可能であるが、発光管と同軸状に設けられた発光管の周囲を覆う筒状の透光性部材からなるシュラウドタイプの保護管であってもよい。
【0014】
前記高圧放電ランプにおいて使用される光カット膜としては、前記複合酸化物粒子またはこの複合酸化物粒子とインジウムがドープされた酸化亜鉛(ZnO)粒子とを混合したものを主体とした光カット膜である場合が挙げられる。ここで、ZnO粒子の粒径は50〜500nmが好ましく、100〜200nmが更に好ましい。
【0015】
請求項7記載の照明器具は、器具本体と、この器具本体に配設された請求項1乃至6いずれか一記載の高圧放電ランプとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の高圧放電ランプによれば、波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子を主体とした光カット膜が保護管の内表面または外表面に形成されているので、高温で点灯される発光管の周囲に設けられた熱的劣化に強い光カット膜の光学特性が波長450nmの光のカット率が15〜40%となり、昆虫の誘引等を低減したり、発光管の放射を所望の色調に変化させることができる。また、色温度を低減するが、青のカットを最適化することにより、見え方、演色性を低減せずに色温度を低くして、明るさをほとんど低下させず現行と同等の良好な高圧放電ランプが得られる。
【0017】
請求項2記載の高圧放電ランプによれば、複合酸化物粒子を上述したものにすることにより、請求項1記載の高圧放電ランプと同様な効果が得られる。
【0018】
請求項3記載の高圧放電ランプによれば、波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子と波長600nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子を主体とした光カット膜が保護管の内表面または外表面に形成されているので、高温で点灯される発光管の周囲に設けられた熱的劣化に強い光カット膜の光学特性が波長450nmの光のカット率が20〜50%で、黒体放射からの偏差duvが+0.001〜−0.001となり、昆虫の誘引等を低減したり、発光管の放射光を所望の色調に変化させることができる。また、色温度を低減するが、青のカットを最適化することにより、見え方、演色性を低減せずに色温度を低くして、明るさをほとんど低下させず現行と同等の良好な高圧放電ランプが得られる。
【0019】
請求項4記載の高圧放電ランプによれば、複合酸化物粒子を上述したものにすることにより、請求項3記載の高圧放電ランプと同様な効果が得られる。
【0020】
請求項5記載の高圧放電ランプによれば、膜を、前記複合酸化物粒子及びインジウムがドープされた酸化亜鉛粒子を主体とした光カット膜とすることにより、昆虫の誘引の低減の他、紙繊維などの変退色、皮膚、目の損傷などの原因となる紫外光をカットしそれらを抑制することができる。
【0021】
請求項6記載の高圧放電ランプによれば、光カット膜の膜厚が0.3μm〜2μmで、インジウムがドープされた酸化亜鉛粒子の平均粒径が100nm〜200nmとすることによって、更に高い透過率と誘虫性を低減する効果が高いランプ又は照明器具を得ることができる。
【0022】
請求項7記載の照明器具によれば、請求項1乃至6記載の高圧放電ランプを備えているので、種々の発光特性や電気特性に優れた照明器具が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本発明の高圧放電ランプにおいて、光カット膜は保護管の外面または内面に形成される。ここで、光カット膜は、波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物からなる粒子を主体とした膜で、光学特性として波長450nmの光のカット率が15〜40%のもの、あるいは600nm以下を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物からなる粒子を主体とし、光学特性として波長450nmの光のカット率が30〜50%であるものを用いる。また、光カット膜としては、波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子と波長600nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子とを混合したものを主体とし、光学特性として波長450nmの光のカット率が20〜50%で、黒体放射からの偏差duvが+0.001〜−0.001であるものを用いる。
【0025】
本発明において、前記光カット膜として、膜厚を0.3μm〜2μm、インジウムドープ酸化亜鉛(ZnO:In)粒子の平均粒径が100nm〜200nmである紫外線カット膜を用いることによって、さらに高い紫外線カット率と誘虫性を低減する効果が高いランプ又は照明器具を得ることができる。
【0026】
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。但し、本発明は下記に述べるものに限定されない。
【0027】
(第1の実施形態)
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプの一例を示す。
【0029】
図中の符番1は高圧放電ランプとしてのメタルハライドランプであり、セラミック製の発光管2を備えている。この発光管2の周囲には、発光管2を保護する透明な保護管としての内管3が設けられている。内管3には、発光管2と導通する給電手段としてのE形口金9が取り付けられている。内管3の外表面には所定の波長の光をカットする光カット膜4が形成されている。光カット膜4は、例えば波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を略透過する複合酸化物からなる粒子とインジウムがドープされた酸化亜鉛(ZnO)粒子とを主体とした膜で、光学特性として波長450nmの光のカット率が15〜40%である。
【0030】
発光管2は、発光部5と、この発光部5の軸方向に互いに反対方向に延出する細管部6a,6bとを備えている。発光部5は、気密に封止されていて内部に放電空間(図示せず)が形成されており、この放電空間には細管部6a,6bから導入された一対の電極(図示せず)が対向して配置されている。細管部6a,6bには、夫々先端部に各電極が接合された給電体7a,7bが配設され、ガラスフリット等で封着されている。発光管2内には、所定のハロゲン金属や希ガス(必要に応じて水銀が追加される)等からなる放電媒体が封入されている。給電体7a,7bには、夫々電力給電線8a,8bが電気的に接続されている。内管4内の口金側には、電力給電線8a,8bを封着するピンチシール部10が形成されている。内管4は、下端部が開口した透明な筒状の外管11によって囲まれている。外管11の下端部は、外管かしめ用金属リング12によってセラミック製ホルダー13に固定されている。なお、図中の符番14は内管4のピンチシール部10を挟持して支持する保護管支持片であり、セラミック製ホルダー13と一体化している。
【0031】
前記光カット膜4は、次のようにして内管3に形成する。即ち、まず、光カット材料としてのInドープZnO(In:Zn=5:95、平均粒径150nm)粒子を、例えば水溶液中の酢酸亜鉛と塩化インジウムを加水分解後乾燥し、熱処理して製造する。この光カット材料のインジウムドープ量は、Znに対して2.5〜20質量%である。この光カット材料としてのInドープZnO粒子にBi−V−O複合酸化物(Bi/V=1:1,平均粒径約180nm)を質量比で95:5の割合で混合し、この混合粒子をジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの有機溶媒に分散させ、有機シリコン化合物からなるバインダーを混合してInドープZnO粒子および複合酸化物粒子10〜20質量%の範囲となるように所望の濃度の分散液を調整する。次に、この分散液を内管3の外表面に塗布し、光カット材料膜を0.3〜2μmの範囲、例えば1μmで形成する。つづいて、この塗膜を180〜250℃で30分間熱処理して、光カット膜4形成する。
【0032】
第1の実施形態によれば、波長500nm以下の光を吸収し,それ以上を略透過する複合酸化物粒子とインジウムがドープされた酸化亜鉛(ZnO)粒子とを主体とした膜で、光学特性として波長450nmの光のカット率が15〜40%である光カット膜を用いた構成にすることにより、より長波長側まで紫外光をカットし、より紙繊維等の変退色、昆虫の誘引、皮膚、目の損傷等を低減できる。また、色温度を低減するが、青のカットを最適化することにより、見え方、演色性を低減せず、明るさをほとんど低下させず現行と同等の良好な金属蒸気放電灯が得られる。
【0033】
なお、インジウムがドープされた酸化亜鉛粒子を用いずに波長500nm以下の光を吸収し、それ以上を略透過するBi−V−O等からなる複合酸化物粒子を主体として光カット膜を形成した場合については、波長400nm以下のカット率は低くなるものの、400nm以上の光カット率等の光学特性については上記実施形態とほぼ同等であった。
【0034】
一方、リフレクタタイプの現行の膜無しランプ(従来例)、第1の実施形態のような光カット膜が形成されたセラミックメタルハライドランプ(本発明)について、夫々色温度(TCP)、色偏差(Duv.)、平均演色評価数(Ra)及び特殊演色性評価係数(R9〜R15)を調べたところ、下記表1に示す結果が得られた。表1より、本発明のランプの場合は、膜無しランプに対して450nmの光のカット率が0.40あるとともに、色温度も低く、種々の光学特性に優れた数値を呈するランプであることが確認できた。なお、表1において、x、yは色温度等から求める色度座標を示す。また、光量比は全光量を1.000とし、0.850とは光量が85%まで低下していることを示す。
【表1】

【0035】
内管に光カット膜を形成していない以外は第1の実施形態と同等の比較例ランプ、及び第1の実施形態の光カット膜をコートしたランプについて、波長に対する相対放射エネルギー特性を調べたところ、図1に示す結果が得られた。なお、図1において、曲線aは膜なしの比較例ランプ、曲線bは第1の実施形態の光カット膜付きランプの場合を示す。図1では、約530nmから長波長側ではカット作用に差がないため、光カットの有無ではほとんど同じ放射エネルギー特性となっている。図1より、曲線bの場合、曲線aと比べ、波長450nm付近で相対放射エネルギーが小さく抑えられていることが明らかである。また、光カット率は、特定の波長における曲線a,bでの相対エネルギー分布の値の比を求めることにより求めることが可能である。このことは、後述する図3の場合も同様である。図1の場合には、波長450nmにおける光のカット率は20%である。なお、両曲線は途中でオーバーラップしている部分が多いが、便宜上、曲線aは実線で曲線bは点線で示している。
【0036】
(第2の実施形態)
【0037】
第2の実施形態は、内管の外表面に形成する光カット膜が、波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物からなる粒子と波長600nm以下の光を吸収する複合酸化物からなる粒子を主体とした紫外光カット膜であり、光学特性として波長450nmの光のカット率が20〜50%であり、黒体放射からの偏差duvが+0.001〜−0.001である点を特徴とする。なお、第3の実施形態の高圧放電ランプの基本構成は、紫外光カット膜を除いて第1の実施形態と同様である。
【0038】
第3の実施形態において、紫外光カット膜は次のようにして形成する。即ち、まず、Bi−V−O複合酸化物(Bi/V=1:1,平均粒径約180nm)、Fe(平均粒径約60nm)を重量比で96:2.5:1.5の割合で混合し、この混合粒子をジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの有機溶媒に分散させ、有機シリコン化合物からなるバインダーを混合して複合酸化物粒子が10〜20質量%の範囲となるように所望の濃度の分散液を調整する。次に、この分散液を内管3の外表面に塗布し、紫外光カット材料膜を0.3〜2μmの範囲、例えば1μmで形成する。つづいて、この塗膜を180〜250℃で30分間熱処理して、紫外線カット膜4形成する。
【0039】
第2の実施形態によれば、Bi−V−O複合酸化物は50%カット波長は約480nmでFeは約600nmから吸収が発生し同約550nmであり、この組成を最適化し長波長側まで光をカットしより紙繊維等の色変色、昆虫の誘引、皮膚、目の損傷等を低減できる。また、色温度を低減するが青のカットを最適化することにより、見え方、演色性を低減させず、duvが略0である現行と同等の良好な高圧放電ランプが得られる。なお、紫外光カット効果を高めたい場合には、第1及び第2の実施形態のようにInドープZnO粒子を所定量添加してもよい。
【0040】
事実、リフレクタタイプの現行の膜無しランプ(従来例)、第2の実施形態のような光カット膜が形成されたセラミックメタルハライドランプ(本発明)について、夫々色温度(TCP)、色偏差(Duv.)、平均演色評価数(Ra)及び特殊演色性評価係数(R9〜R15)を調べたところ、下記表2に示す結果が得られた。表2より、本発明のランプの場合は、膜無しランプに対して450nmの光のカット率が0.40あるとともに、色温度も低く、種々の光学特性に優れた数値を呈するランプであることが確認できた。なお、表2において、x,y及び光量比は表1の場合と同様である。
【表2】

【0041】
内管に光カット膜を形成しなかったランプ、及び第2の実施形態の光カット膜をコートしたランプについて、波長に対する相対放射エネルギー特性を調べたところ、図2に示す結果が得られた。なお、図2において、曲線aは光カット膜を形成していない以外は第1の実施形態と同等の比較例のランプ、曲線bは第2の実施形態の光カット膜付きランプの場合を示す。図2では、約650nmから長波長側ではカット作用に差がないため、光カットの有無ではほとんど同じ放射エネルギー特性を示している。図2より、曲線bの場合、曲線aと比べ、波長450nm付近で相対放射エネルギーが小さく抑えられていることが明らかである。なお、両曲線は途中でオーバーラップしている部分が多いが、便宜上、曲線aは実線で曲線bは点線で示している。図2の場合には、波長450nmにおける光のカット率は25%である。
【0042】
(第3の実施形態)
【0043】
図4は、本発明の第3の実施形態に係る照明器具を示す概略断面図である。但し、図3と同部材は同符番を付して説明を省略する。
【0044】
図中の符番21は、第1の実施形態と同様な光学特性を有する前記光カット膜4を前面カバーガラス22に用いた照明器具を示す。高圧放電ランプ1は、外管バルブ23に光カット膜が設けられていないメタルハライドランプである。高圧放電ランプ1は、照明器具21に収容して使用される。照明器具21、下面が開放された反射体25を有し、この反射体25の天井面にはソケット26を備えている。高圧放電ランプ1は、その口金を上記ソケット26に螺合することにより照明器具21に取り付けられている。光カット膜4は、第1の実施形態と同様な方法によりカバーガラス22に形成される。
【0045】
第3の実施形態の照明器具によれば、光色変化などがなく紫外線及び一部青色光を必要としない被照射物等の損傷防止や紙、布等の劣化防止、低誘虫用として最適な照明器具が得られる。
【0046】
この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】従来及び本発明の第1の実施形態の高圧放電ランプによる相対エネルギー分布と波長との関係を示す特性図である。
【図2】従来及び本発明の第2の実施形態の高圧放電ランプによる相対エネルギー分布と波長との関係を示す特性図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高圧放電ランプの説明図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る照明器具の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1…高圧放電ランプ、2…発光管、3…保護管としての内管、4…光カット膜、5…発光部、6a,6b…細管部、7a,7b…給電体、8a,8b…電力給電線、9…シール部、11a,11b…端子、21…照明器具、22…前面カバーガラス、25…反射体、26…ソケット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と;
この発光管を覆うように設けられた透光性の保護管と;
500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子を主体として、前記保護管の外面または内面に形成され,光学特性として波長450nmの光のカット率が15〜40%である光カット膜と;
を具備することを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記複合酸化物からなる粒子が、Zr−Si−Pr−O,Bi−V−O,Ti−Ni−Sb−O,Ti−Ni−W−O,Ti−Cr−Nb−O,Ti−Ni−Nb−Oのいずれか、あるいはその組成の一部を他の元素に置換したものであることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
発光管と;
この発光管を覆うように設けられた透光性の保護管と;
波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子と波長600nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する複合酸化物粒子を主体として、前記保護管の外面または内面に形成され,光学特性として波長450nmの光のカット率が20〜50%であり、黒体放射からの偏差duvが+0.001〜−0.001である光カット膜と;
を具備することを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項4】
波長500nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する前記複合酸化物からなる粒子が、Zr−Si−Pr−O,Bi−V−O,Ti−Ni−Sb−O,Ti−Ni−W−O,Ti−Ni−Cr−Nb−O,Ti−Ni−Nb−Oのいずれか、あるいはその組成の一部を他の元素に置換したものであり、波長600nm以下の光を吸収しそれ以上を透過する前記複合酸化物からなる粒子が、Fe・Fe系複合酸化物,Ti−Sb−Cr−O,Zr−V−O,Sn−V−O,Ti−Sb−Cr−Oのいずれか、あるいはその組成の一部を他の元素に置換したものであることを特徴とする請求項3記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
前記光カット膜は、インジウムがドープされた酸化亜鉛粒子が添加されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一記載の高圧放電ランプ。
【請求項6】
前記光カット膜の膜厚が0.3μm〜2μmで、前記インジウムがドープされた酸化亜鉛粒子の平均粒径が50nm〜500nmであることを特徴とする請求項5記載の高圧放電ランプ。
【請求項7】
器具本体と;
この器具本体に配設された請求項1乃至6いずれか一記載の高圧放電ランプ;
とを具備することを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−135106(P2009−135106A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329254(P2008−329254)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【分割の表示】特願2007−309384(P2007−309384)の分割
【原出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】