説明

高圧放電ランプ用のランプ口金及び高圧放電ランプ

本発明は、高圧放電ランプ用のランプ口金であって、ランプ口金(2)の室(214)内に配置された変圧器(300)を備えており、変圧器(300)と室(214)の壁部との間の中空部内に封止用コンパウンド(6)を設けてあり、変圧器(300)の二次巻線の高電圧用の接続部(301)は、封止用コンパウンド(6)内に埋め込まれている形式のものに関する。本発明に基づき、前記中空部の一部分のみが封止用コンパウンド(6)で満たされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプ用のランプ口金であって、ランプ口金の室内に配置された変圧器を備えており、前記変圧器と前記室の壁部との間の中空部内に封止用コンパウンドを設けてあり、前記変圧器の二次巻線の高電圧用の接続部は、前記封止用コンパウンド内に埋め込まれている形式のもの、並びに高圧放電ランプに関する。
【0002】
前記形式のランプ口金(ランプベース若しくはランプソケット)は例えばヨーロッパ特許出願公開第1511130A1号明細書に記載してある。該明細書は、自動車用投光器用の高圧放電ランプを開示しており、該高圧放電ランプのランプ口金内には、高圧放電ランプの始動装置の構成部分として形成された変圧器を収容してある。変圧器はランプ口金の1つの室内に配置されており、この場合に変圧器と前記室の壁部との間の中空部(空間部)は封止用コンパウンドで完全に満たされており、二次巻線の高電圧接続部は封止用コンパウンド内に埋め込まれている。
【0003】
ランプ口金においては、封止用コンパウンドの硬化の際の材料収縮及び温度変化に基づき、極めて高い力が室の壁部に作用して、壁部の変形を生ぜしめ、ひいてはプラスチック製口金部分の寸法精度は保証されないものになっている。
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のランプ口金を改善して、前記欠点を排除することである。
【0005】
前記課題を解決するために本発明の構成では、変圧器の二次巻線の高電圧用の接続部は、ランプ口金の室内に配置された変圧器と、該変圧器を受容する前記室の壁部との間の中空部若しくは空間部の一部分のみに満たされた封止用コンパウンド内に埋め込まれている。
【0006】
本発明は、変圧器の電気絶縁のためには変圧器と該変圧器のための室の壁部との間の中空部を封止用コンパウンドで完全に満たさなくてよいという知見に基づいている。変圧器の二次巻線の高電圧用の接続部を封止用コンパウンド内に埋め込むだけで十分である。ランプ口金内での変圧器の部分的な封止に基づき、封止用コンパウンドから室壁に作用する力は相応に小さくなり、目立った変形を生ぜしめなくなっている。さらに封止用コンパウンドも節減されている。
【0007】
本発明の有利な実施態様では、封止用コンパウンドの、ランプ口金の室の底部からのコンパウンド高さは、封止用コンパウンドから前記室の室壁に作用する力をできるだけ小さく保つために、前記室の高さの50パーセントよりも低くなっている。さらに有利な実施態様では、変圧器の二次巻線の高電圧用の接続部は、封止用コンパウンドのわずかなコンパウンド高さでも二次巻線の高電圧用の接続部を封止用コンパウンド内に確実に埋め込むために、ランプ口金の室の底部に対してわずかな間隔で配置されている。
【0008】
本発明の有利な実施態様では、変圧器はケーシングを有しており、該ケーシング内に変圧器の二次巻線及び磁気用コア(磁心)を配置してあり、この場合にケーシング内の残された空間部分、つまりケーシング内の前記磁気用コア及び二次巻線の周囲の中空部(空間部分)は、変圧器の二次巻線の改善された電気絶縁を可能にするために、封止用コンパウンドで満たされている。
【0009】
変圧器のケーシングは、該ケーシングの内部の空間内への封止用コンパウンドの流入を可能にするために少なくとも1つの開口部を有している。変圧器のケーシングは、封止用コンパウンドの充填高さの上側では閉鎖若しくは密閉した状態で形成されていて、つまり開口部を有しておらず、ケーシングの内部の空間内への封止用コンパウンドの流入用の前記開口部は、封止用コンパウンド内に位置するように配置されている。これによって変圧器のケーシングのいわゆる真空注入封止を可能にしてあり、この場合に封止用コンパウンドは封止用の前記開口部を経て変圧器のケーシングの壁部と磁気用コア及び二次巻線との間の排気された空間部内へ吸い込まれ、その結果該空間部は、封止用コンパウンド液面が変圧器の外側の中空部では低いものの、封止用コンパウンドで完全に満たされる。さらに毛管作用も、変圧器の内部の中空部内への封止用コンパウンドの充填のために活用される。
【0010】
次に本発明を図示の実施例に基づき詳細に説明する。図面において、
図1は、本発明に基づく高圧放電ランプの概略的な側面図であり、
図2は、図1の高圧放電ランプのランプ口金の内部の平面図であり、
図3は、図1の高圧放電ランプの構成のための変圧器の平面図であり、
図4は、図2に示すランプ口金の、図3の変圧器を備えた室の2つの側を示す図である。
【0011】
本発明の図1に示す有利な実施例は、自動車用投光器のための片側口金付きの高圧放電ランプである。高圧放電ランプは放電管11を有しており、該放電管は石英ガラスから成り、かつ内部に気中放電のための電極13,14を備えていて、ガラス製の外側バルブ12によって取り囲まれている。電極13,14は、放電管11から導き出された電流供給部15,16に接続されていて、該電流供給部を介して電気的なエネルギーを供給されるようになっている。放電管11及び外側バルブ12から成る構成ユニット1は、ランプ口金2の受容部211内に固定されている。ランプ口金(ランプベース[lamp base])2はほぼ直六面体状の下方部分21を有しており、該下方部分内に高圧放電ランプ用の始動装置の電気的な構成部分を収容してあり、前記下方部分は高圧放電ランプの電気的な接続部40を備えている。
【0012】
図2は下方部分21の、ランプバルブ11,12と逆の側を示しており、この場合にカバー22は取り外されている。下方部分21はほぼ方形の断面若しくは輪郭を有している。下方部分21の内部(内室)は隔壁213によって互いに異なる大きさの2つの室(チャンバー)214,215に仕切られ、つまり分離(分割)されている。小さい方、つまり第1の室214内にロッドコア形の変圧器300を配置してあり、該変圧器は高圧放電ランプのランプ口金2内に収容されたパルス始動装置のための始動変圧器として用いられるものである。図3に示してあるロッドコア形の変圧器300は、フェライトコアに配置されて高電圧用の接続部301、つまりいわゆる始動電圧接続部301、前記フェライトコア及び二次巻線を取り囲むための変圧器ケーシング302、並びに一次巻線303を含んでおり、該一次巻線は変圧器ケーシング302の外側に配置されていて、金属ストリップ303として形成されている。
【0013】
第1の室214の壁部212,213に、図3に示す変圧器300のための複数の案内レール216を配置してある。案内レール216は、変圧器300の変圧器ケーシング302に設けられた条片状若しくはリブ状の部分304に正確に合わせられており、これによって変圧器300は第1の室214内に固定されている。さらに室214の底部217に突起部218を設けてあり、該突起部は接触部材(接続部材)50の、室214内に突入する端部51と協働して変圧器300の組み込み深さを規定している。変圧器300の始動電圧入力部301は接触部材50の、室214内に突入する端部51上に載せられるようになっており、該接触部材50は口金近傍の電流供給部15に接続(接触)され、例えば溶着結合されるのに対して、変圧器ケーシング302は突起部218上に装着されるようになっている。変圧器300と第1の室214の壁部との間の中空部(空間部若しくは中間室)は、室214の底部217から5ミリメートルの充填高さ61まで電気絶縁性の封止用コンパウンド6で満たされている。接触部材50の、室214内に突入している端部51、及び該端部と接続されている始動電圧接続部301は、図4に概略的に示してあるように、封止用コンパウンド6内に完全に埋め込まれている。室214の底部217からの全高さは21ミリメートルである。つまり、室214内の封止用コンパウンド(シーリング材)の充填高さは、室の高さの約24パーセントである。
【0014】
封止用コンパウンドは、室214の底部の近傍で変圧器ケーシング302に設けられた2つの開口部305を通って変圧器ケーシング302の内部にも流入して、フェライトコアと、該フェライトコアに配置された二次巻線と変換器ケーシング302との間の予め排気された中空部内を完全に満たしている。封止用コンパウンド6としては、例えば注入の後に硬化するシリコーンが適している。
【0015】
大きい方の第2の室215内に、パルス始動装置の残りの構成要素、特に始動コンデンサ及び火花ギャップを設けてある。カバー22は下方部分の両方の室214,215を閉鎖するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に基づく高圧放電ランプの概略的な側面図
【図2】図1の高圧放電ランプのランプ口金の内部の平面図
【図3】図1の高圧放電ランプの構成のための変圧器の平面図
【図4】図3の変圧器を備えた室の2つの側を示す図
【符号の説明】
【0017】
1 構成ユニット、 2 ランプ口金、 6 封止用コンパウンド、 11 放電管、 12 外側バルブ、 13,14 電極、 15,16 電流供給部、 21 下方部分、 22 カバー、 40 接続部、 50 接触部材、 61 充填高さ、 213 隔壁 、214,215 室、 217 底部、 218 突起部、 301 接続部、 302 変圧器ケーシング、 303 一次巻線、 305 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧放電ランプ用のランプ口金であって、ランプ口金(2)の室(214)内に配置された変圧器(300)を備えており、前記変圧器(300)と前記室(214)の壁部との間の中空部内に封止用コンパウンド(6)を設けてあり、前記変圧器(300)の二次巻線の高電圧用の接続部(301)は、前記封止用コンパウンド(6)内に埋め込まれている形式のものにおいて、前記中空部の一部分のみに前記封止用コンパウンド(6)を満たしてあることを特徴とする、高圧放電ランプ用のランプ口金。
【請求項2】
封止用コンパウンド(6)の、室(214)の底部(217)からのコンパウンド高さは、前記室(214)の高さの50パーセントよりも低くなっている請求項1に記載のランプ口金。
【請求項3】
変圧器(300)の二次巻線の高電圧用の接続部(301)と室(214)の底部(217)との間の間隔は、封止用コンパウンド(6)の、室(214)の底部(217)からのコンパウンド高さよりも小さくなっている請求項2に記載のランプ口金。
【請求項4】
変圧器(300)はケーシング(302)を有しており、該ケーシング内に変圧器(300)の磁気用コア及び二次巻線を配置してあり、前記ケーシング内の前記磁気用コア及び二次巻線の周囲の中空部は、封止用コンパウンド(6)で満たされている請求項1に記載のランプ口金。
【請求項5】
変圧器(300)のケーシング(302)は、封止用コンパウンド(6)の流入用の少なくとも1つの開口部(305)を有している請求項4に記載のランプ口金。
【請求項6】
変圧器(300)のケーシング(302)内への封止用コンパウンド(6)の流入のための少なくとも1つの開口部(305)は、前記封止用コンパウンド(6)内に位置しており、前記ケーシング(302)は、封止用コンパウンドの充填高さ(61)の上側では密閉した状態で形成されている請求項5に記載のランプ口金。
【請求項7】
高圧放電ランプであって、請求項1から6のいずれか1項に記載のランプ口金を備えていることを特徴とする高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−505338(P2009−505338A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525444(P2008−525444)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007753
【国際公開番号】WO2007/017202
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(390009472)パテント−トロイハント−ゲゼルシヤフト フユール エレクトリツシエ グリユーラムペン ミツト ベシユレンクテル ハフツング (152)
【氏名又は名称原語表記】Patent−Treuhand−Gesellschaft fuer elektrische Gluehlampen mbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Strasse 1, Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】