説明

高圧放電ランプ

高圧放電ランプが、イオン化可能な充填物質を包含する放電空間(11)を封入した放電容器(10)を備えている。放電容器は、その放電空間(13)内に配された一対の電極(6、7)を付与された、互いに対向する第1および第2の頸状部(2、3)を有している。各電極は、全長に亘って管状とされている。好ましくは、電極は、放電空間内にコイルを有さないものとされる。好ましくは、電極は、放電容器の外側まで延設される。この本発明に係る高圧放電ランプは、製造が比較的容易である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプは、照明装置の小売用途、道路照明、街の景観美化、ビーマーおよび投影テレビにおいて、主流のランプとなってきた。範囲拡張のための良好な条件を作り出す流れが出てきている。市場の末端ユーザーは、光の均質さにますます関心を示すようになってきており、アクセント照明には、より高い発光効率のため、ハロゲンランプに代えて高圧放電ランプを用いることを好む。
【0003】
一般的には、冒頭の段落で述べたような種類の高圧放電ランプは、耐高温性セラミック壁を伴う放電容器を有するか、石英ガラス製放電容器を有する。かかる高圧放電ランプは、実際に広く使用されており、高い発光効率と好ましい色特性とを併せ持つ。ランプの放電容器は、1種類または複数種類のハロゲン化金属を含み、さらに水銀と、始動促進ガスとして用いるための充填希ガスとを伴っていてもよいし、伴わなくてもよい。
【0004】
一般的に、放電容器の充填物質は、1種類以上の金属ヨウ化物を含んでいる。この1種類以上の金属ヨウ化物は、必要であればTl、Cs、Na、Ca等と結合された、たとえばアルカリまたは希土類族由来のものであり、それにより、全体の演色係数CRIおよび色温度Tの所望の値が実現される。本明細書および特許請求の範囲でいう希土類金属とは、元素Sc、Yおよびランタノイドを意味するものと理解されたい。
【0005】
本明細書および特許請求の範囲でいう放電容器のセラミック壁とは、単結晶金属酸化物(たとえばサファイア)、半透明の高密度焼結多結晶金属酸化物(たとえばAl、YAG)、および半透明の高密度焼結多結晶金属窒化物(たとえばAlN)のうちの1つの材料から作られた壁であると理解されたい。
【0006】
冒頭の段落で述べたような1つの高圧放電ランプが、米国特許US−A2951171号より知られている。この既知の放電ランプは、半透明の管球容器と、不活性充填ガスと、管球容器内に、間隔を置いて軸方向に整列させられて配された、一対の導電性の電極とを備えている。各電極は、円錐状の窪みと、電子放出性の高い材料で満たされた軸方向の円筒状の凹部とを有する。電極には、上記の凹部の壁と接触状態にある、螺旋状のコイルとされた金属ワイヤーが付与されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の既知の高圧放電ランプの1つの欠点は、放電ランプ内の電極を製造するのが、比較的難しい点である。
【0008】
本発明は、この欠点を完全にまたは部分的に除去するという目的を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的のため、本発明によれば、冒頭の段落で述べたような高圧放電ランプが、
イオン化可能な充填物質を包含する放電空間を封入した放電容器を備えたものとされ、
その放電容器が、放電空間内に配された一対の電極を付与された、互いに対向する第1および第2の頸状部を有するものとされ、
それら電極の各々が、全長に亘って管状とされる。
【0010】
全長に亘って管状である電極を用いることにより、驚くべきことに、放電ランプの始動時の挙動が有利に改善されることが観測された。本発明に係る高圧放電ランプの始動は、管状電極の先端において、イグニションを生じさせる。既知の放電ランプのイグニションは、電極上のいずれかの個所においてアークを開始させる。そのアークは、通常、電極先端から離れた電極部分に接続する。既知の放電ランプ内の温度が上昇するにつれて、アークは、電極の先端へと徐々に移動する。この移動は、望ましくない電極のスパッタリングをもたらし、既知の放電ランプの光束維持率および/または寿命を低下させてしまう。
【0011】
本発明に係る高圧放電ランプでは、イグニション時において、アークが、管状電極の孔から孔へと延びる。スパッタリングは低減させられ、グロー・アーク遷移の影響は最小限に抑えられる。何らかの特定の理論に従うという意図ではないが、本発明に従う管状電極内の孔は、陰極として機能するものと考えられる。加えて、管状電極の孔の寸法が、本発明に係る高圧放電ランプの陰極機能を決定し、管状電極の壁部の厚さが、同高圧放電ランプの陽極機能を決定するものと考えられる。
【0012】
好ましくは、管状電極は、タングステン製とされる。本発明に係る放電ランプが良好な性能を発揮するには、原則として、Y、Rh、DyまたはCeといった添加物は必要ない。基本的にタングステンで作られた管状電極を有する、放電ランプの温度は、満足に制御することができる。加えて、純タングステン製の管状電極を有する放電ランプの動作温度は、既知の放電ランプの動作温度よりも、約(摂氏)100度低い。本発明に係る放電ランプでは、タングステン製電極への比較的高価な添加物の添加がもはや必要でなく、さらにコイルももはや必要でないので、かなりのコスト削減が実現される。好ましくは、管状電極は、タングステンの押出加工および焼結により作製される。
【0013】
既知の高圧放電ランプでは、コイルと電極との間の熱接触部が制御困難であるので、電極の製造が比較的難しい。加えて、電極先端に対するコイルの位置も、制御困難である。特に、コイルのワイヤー端は、電極の挙動に影響を与える。仮にワイヤー端が電極から突設している場合には、アークがその突設部に接続し、コイルのワイヤーは、高温に達するため、逆流するように溶けてしまう。加えて、既知の放電ランプの寿命中に、コイルが電極に融着し、それにより電極の挙動を望ましくない温度領域にシフトさせることもあり得る。このことは、既知の放電ランプの(早発の)欠陥または著しい性能低下へと繋がる。このため、本発明に係る高圧放電ランプの1つの有利な実施形態は、電極が、放電空間内にコイルを有さないことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る高圧放電ランプの1つの好ましい実施形態は、電極が、放電容器の外側まで延設されていることを特徴とする。このことは、本発明に係る放電ランプの製造を容易にする。好ましくは、電極は、それらの電極の放電空間と反対の側に結合させられたロッドにより、一部満たされる。この中実ロッドは、電気的接続を可能とし、電極の温度プロファイルを調節する。好ましくは、このロッドは、放電空間内まで延設される。電極から出て放電空間内まで達する中実ロッドの1つの利点は、電極の外形寸法が同じであれば、より重い電極がより軽い先端を有するものとして形成され、始動時において熱損失が最小限に抑えられるので、イグニションは依然として管状電極の先端から生じ、アークは突設させられたロッドの先端へと移動して、アークが望ましくない位置に逆戻りすることが防止される点である。
【0015】
本発明に係る高圧放電ランプ内の電極の新規な設計は、電極のみならず、放電ランプの形状に関しても、新たな設計パラメータをもたらす。すなわち、本発明に係る高圧放電ランプの1つの好ましい実施形態は、電極の内径dinと外径doutとの間の比が、
【数4】

の範囲内にあることを特徴とする。壁部または孔のいずれかが、陰極として作用する。一例として、1000μmの直径を有し、350μmの内径を有する管状電極は、適切な壁部の厚さとして、350μmを有する。内径が100μmの場合は、壁部の厚さは450μmである。内径が800μmの場合は、壁部の厚さは100μmである。
【0016】
管状電極の試作品が作製され、250Wのセラミック放電メタルハライドランプ(いわゆるCDMランプ)内で試用された。実験結果は、本発明に係る管状電極を有する高圧放電ランプが、期待どおりの性能を発揮することを示した。とりわけ、すべての放電ランプが、電極先端においてイグニションを生じた。加えて、再イグニション時のスパイクは低く、イグニションおよび中継がスムーズに進行した。さらには、本発明に係る管状電極を有する高圧放電ランプは、通常の2.5Aではなく、比較的低い1.3Aの電流において、定常状態条件で動作させられた。また、放電ランプが、かかる条件の下で、十分な性能を発揮することも分かった。点灯している放電ランプの観察により、アークは、陽極相においては電極先端にあり、陰極相においては壁部の内側へと移動するという結論に達した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の上記およびその他の側面は、以下に説明する実施形態を参照することにより明らかとなるであろう。添付の図面は、単に説明の便宜のためのものであり、精確な縮尺で描かれてはいない。とりわけ、いくつかの寸法は、明確さのため強く誇張されて示されている。図中の類似の要素は、可能な限り、同一の参照番号を付して示してある。
【0018】
図1Aは、本発明に係る高圧放電ランプを、ごく概略的に示した図である。この図は、放電容器10を切断除去した図である。放電容器10は、放電空間11を封入したセラミック壁を有している。放電空間11は、イオン化可能な充填物質を含んでいる。このイオン化可能な充填物質は、図示の例では、水銀だけでなく、Na、CaおよびTlのハロゲン化物も含んでいる。放電容器10には、第1の頸状部2と第2の頸状部3とが設けられており、これらの頸状部を通って、第1の電流供給導電体4および第2の電流供給導電体5がそれぞれ、放電空間11内に配された一対の電極6および7へと延設されている。各電極6および7は、タングステン(W)を含有しており、全長に亘って管状とされている。放電容器の構成自体は、既知のものである。
【0019】
図1Aの例では、放電容器の一端は、ランプ基部2を有する外側バルブ1により包囲されている。高圧放電ランプの動作中は、電極6と7との間で放電が生じる。電極6は、導線8を介して、ランプ基部2の一部をなす第1の電気接触部へと接続されている。電極7は、導線9を介して、ランプ基部2の一部をなす第2の電気接触部へと接続されている。図1Aの例では、これらの電極は、放電空間内にコイルを有さない。このことは、電極の製造が比較的簡単になるという利点を有する。加えて、既知の放電ランプにおいて生じるかもしれない、ランプの寿命の間にコイルが電極に融着するという問題がない。この融着の問題は、それにより電極の挙動を望ましくない温度領域へとシフトさせ、既知の放電ランプにおける(早発の)欠陥、またはランプの性能の実質的な低下のもととなる。
【0020】
この図に示すような、本発明に係る高圧放電ランプの1つの実用的な実施形態では、ランプの公称パワーは70Wであり、公称ランプ電圧は90Vである。放電容器の半透明の壁部は、約0.8mmの厚さを有している。放電容器の内径は約6.85mmであり、電極先端間の距離は約7mmである。図1Aおよび1Bの例では、ランプのイオン化可能な充填物質は、4.6mgの水銀と、7mgの(Na+Tl+Ca)ヨウ化物とを含み、後者のヨウ化物のモル組成比は、ヨウ化物の全体のモル量に対し、Naが64モル%、Tlが5モル%、Caが31モル%である。放電容器はさらに、始動促進物質として、充填圧300mbarのArも含んでいる。ランプの動作中において、Tkpは1265Kである。このランプは、100時間に亘り、90lm/Wの発光効率で発光する。発せられる光の色温度Tは、3150Kである。全体の演色係数Rは、約90である。
【0021】
図1Bは、図1Aに示した高圧放電ランプの詳細部分の断面図である。参照番号3で示した第2の頸状部のみが図示されており、この第2の頸状部3を通って、第2の電流供給導電体5が、放電空間11内に配された管状電極7へと延設されている。好ましくは、電流供給導電体5は、ニオビウム製のものとされる。電流供給導電体5と管状電極7との間には、モリブデンまたはサーメット製のロッド15が設けられている。頸状部3は、管状電極5とMoロッド15との近くを、隙間を置いて包囲している。溶融セラミック接合21が、電流供給導電体5と、Moロッド15と、頸状部3の壁部との間に付与されており、それにより、放電容器10の放電空間13の気密封止が与えられている。
【0022】
図2は、本発明に係る高圧放電ランプの1つの変更実施形態を模式的に示した図である。参照番号3で示した第2の頸状部のみが図示されている。本発明に係る高圧放電ランプのこの実施形態では、電極7が、放電容器10の外側まで延設されている。加えて、図2の実施形態では、電極7は、その電極7の放電空間13と反対の側に結合させられたロッド11により、一部満たされている。この中実ロッド11は、好ましくは、Mo、WまたはRhから作られている。モリブデンは、価格が安く、かつ放電容器内のヨウ化物雰囲気に対して極めて良好な耐性を有するので、非常に適した材料である。
【0023】
本発明に係る高圧放電ランプの1つの変更実施形態(図2に示したものではない)では、ロッド11が、放電空間13内まで延設される。さらに別の変更実施形態(図2に示したものではない)では、ロッド11が、放電空間13内において管状電極7から突設させられる。
【0024】
本発明に係る高圧放電ランプ内の電極の新規な設計は、電極のみならず、放電ランプの形状に関しても、新たな設計パラメータをもたらす。図1Bおよび2には、管状電極7の内径dinおよび外径doutが示されている。加えて、図1Bおよび2には、頸状部3の内径dnspも示されている。好ましくは、管状電極6および7の内径dinと外径doutとの間の比は、
【数5】

の範囲内とされる。
【0025】
好ましくは、管状電極6および7の内径は、少なくとも20μmとされる。別の好ましい内径の下限値は、50μmである。
【0026】
管状電極7には何らコイルが付属させられないので、頸状部3および4の直径は、既知の高圧放電ランプにおける直径よりもかなり小さくされ得る。電極の一部(タングステン製の個所のみならず、モリブデン製の個所も含む)と、バーナーの頸状部の内壁(「vup」とも呼ばれる)との間には、隙間が設けられなくてはならない。この隙間は、熱膨張係数と技術的な許容誤差とにより決定される。ロッドおよびコイルは、頸状部3および4を通らなくてはならないので、頸状部3および4の内径は、必要な内径よりも大きく、通常はほとんどの部分がモリブデンのフィードスルーにより満たされている。頸状部内の孔を既知の放電ランプにおける孔よりも実質的に小さくすることができれば、塩により充填される体積も実質的に減少させられるということから、利点が得られる。好ましくは、頸状部3および4の内径dnspに対する、管状電極6および7の外径doutの比は、
【数6】

の範囲内にある。
【0027】
より小さな頸状部3および4を用いることの1つの利点は、高圧放電ランプ内に用いる塩を、より少なくすることができるという点である。とりわけ、放電容器10内の含有塩の80%までを有利に減らすことが、実現可能である。
【0028】
本発明に係る高圧放電ランプの1つの好ましい実施形態は、高圧放電ランプの電流Imhlと、電極6および7の外径doutとの間の比が、
【数7】

の範囲内にあることを特徴とする。
【0029】
上記の式では、電流はアンペア単位で表されており、直径はミリメートル単位で表されているものとする。何らかの特定の理論に従うという意図ではないが、電極先端の温度を左右する陽極相におけるパワーPanodeは、
【数8】

により決定されると推測される(たとえば、タングステンについては4.5eV)。既知の電極ロッドのサイズは、陽極相におけるパワーにより左右される。電極先端の温度は、上限を3200K、下限を2200Kとし、同じ電流密度を仮定することにより計算することができる。こうして、高圧放電ランプの電流Imhlと、電極6および7の外径doutとの間の比について、上記の関係が得られる。
【0030】
250Wの高圧放電ランプについては、管状電極の適切な外径doutの一例は、約680μmである。管状電極の壁部の適切な厚さの一例は、約140μmである。頸状部3および4の適切な内径dnspの一例は、約830から880μmの範囲内にある内径である。類似のワット数を有する既知の250W高圧放電ランプの、従来型のロッド状電極は、約800μmの直径を有する。通常、ワイヤー厚250μmのコイルがロッド周囲に巻き付けられ、ロッドとコイルとの合計の直径は1300μmとなる。これにより、通常、頸状部の内径dnspを、約1500μmにすることが必要とされる。既知の放電ランプと比較した、本発明に従うこの放電ランプにおける塩の削減量は、50%から70%の範囲内にある。
【0031】
70Wの高圧放電ランプの別の例は、管状電極の適切な外径doutとして、約415μmの外径を有する。管状電極の壁部の適切な厚さの一例は、約85μmである。頸状部3および4の適切な内径dnspの一例は、約550μmである。類似のワット数を有する既知の70W高圧放電ランプの、従来型のロッド状電極は、約300μmの直径を有する。通常、ワイヤー厚170μmのコイルがロッド周囲に巻き付けられ、ロッドとコイルとの合計の直径は650μmとなる。これにより、通常、頸状部の内径dnspを、約775μmにすることが必要とされる。既知の放電ランプと比較した、本発明に従うこの放電ランプにおける塩の削減量は、30%から50%の範囲内にある。
【0032】
35Wの高圧放電ランプのさらに別の例は、管状電極の適切な外径doutとして、約300μmの外径を有する。管状電極の壁部の適切な厚さの一例は、約60μmである。頸状部3および4の適切な内径dnspの一例は、約435μmである。類似のワット数を有する既知の35W高圧放電ランプの、従来型のロッド状電極は、約200μmの直径を有する。通常、ワイヤー厚125μmのコイルがロッド周囲に巻き付けられ、ロッドとコイルとの合計の直径は450μmとなる。これにより、通常、頸状部の内径dnspを、約585μmにすることが必要とされる。既知の放電ランプと比較した、本発明に従うこの放電ランプにおける塩の削減量は、30%から50%の範囲内にある。
【0033】
一般的に、ほとんどすべての既知の高圧放電ランプは、タングステン製のロッドの周囲にタングステン製のコイルが巻き付けられた、典型的な形態の電極を有している。コイルは、ロッドに融着されているか、ロッドにきつく締め付けられている。コイルは、始動時の挙動と、定常状態における陰極相(再イグニションピーク)とに多大な影響を与える。また、コイルは、アークが容易にコイルに接続することのできるスポットを与えることにより、イグニションおよび中継の挙動を改善する。この挙動の改善は、3つの要因に起因すると考えられる。第1に、イグニションに際して、変形(deformities)により電場に歪みが生じ、そのことが、壁部上の電荷と相俟って、イグニションを容易にする。第2に、コイルは、その低い質量とより低い熱伝導性とのため、ロッドよりも速く高い温度に到達する(コイルからロッドへの接触部は、点−線接触部であり、したがって高い熱抵抗を有する)。第3に、アークは、コイルの2つの巻き部分の間に接続するようである。
【0034】
従来のロッド+コイル型の構成については、多くの欠点が分かっている。コイルとロッドとの間の熱接触部、およびロッドの先端に対するコイルの位置は、制御が困難な変数であるため、1つの困難な点は、どのようにして複製可能な電極を作るかということである。加えて、コイルのワイヤー端は、電極の挙動に影響を与える。仮にワイヤー端がロッドから突設している場合には、アークがそのワイヤー端に接続し、コイルのワイヤーは、高温に達するため、逆流するように溶けてしまう。ランプの寿命中に、コイルがロッドに融着し、それにより電極の挙動を望ましくない温度領域にシフトさせることもあり得る。このことは、ランプの欠陥または著しい性能低下へと繋がる。
【0035】
本発明によれば、タングステン製の管状電極が用いられる。管内の孔は陰極として機能する。すなわち、この管状電極は、原理的には1つの要素から作られた電極であり、孔の寸法が陰極機能を、1ミリメートルごとのタングステン量が陽極機能を、それぞれ決定する。1つの電極の先端から隣りの電極の先端へとイグニションが生じるので、高圧放電ランプの始動時にも追加の利点がある。アークは、管状電極の他の部分ではなく、孔部分に接続することが観察されている。こうすることにより、アークの接続個所は、ランアップ中において移動せず、まさに望ましいように、頂部にのみパワーを供給する。本発明に係る高圧放電ランプでは、スパッタリングが大幅に低減させられ、グロー・アーク遷移が最小限に抑えられる。このことは、本発明に係る放電ランプの寿命およびメンテナンス性に、有利な効果を有する。
【0036】
上記に述べた実施形態は、本発明を制限するものではなく説明のためのものであり、当業者においては、特許請求の範囲による本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更実施形態を設計することができるであろう点に留意されたい。特許請求の範囲においては、括弧内のいずれの参照符号も、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「含む」もしくは「備える」との語およびそれらの活用形は、請求項中に列挙されたもの以外の要素または工程の存在を排除するものではない。ある要素の前に置かれた「1つの」との語は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。本発明は、いくつかの別個の要素を備えたハードウェアにより実装されてもよいし、適切にプログラミングされたコンピュータにより実装されてもよい。複数の手段を列挙した装置の請求項においては、これらの手段のうちのいくつかが、1つの同一のハードウェア要素によって実装されてもよい。単に特定の施策が互いに異なる従属請求項に記載されているという事実は、それらの施策の組合せを効果的に使うことができないということを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】本発明に係る高圧放電ランプの1つの実施形態を示した図
【図1B】図1Aに示した高圧放電ランプの詳細部分図
【図2】本発明に係る高圧放電ランプの1つの変更実施形態を示した図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン化可能な充填物質を包含する放電空間を封入した放電容器を備え、
前記放電容器が、前記放電空間内に配された一対の電極を付与された、互いに対向する第1および第2の頸状部を有し、
前記電極の各々が、全長に亘って管状であることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記電極が、前記放電空間内にコイルを有さないことを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記電極が、前記放電容器の外側まで延設されていることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記電極の各々が、当該電極の前記放電空間と反対の側に結合させられたロッドにより、一部満たされていることを特徴とする請求項3記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
前記ロッドが、前記放電空間内まで延設されていることを特徴とする請求項4記載の高圧放電ランプ。
【請求項6】
前記電極の内径dinと外径doutとの間の比が、
【数1】

の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項7】
管状の前記電極の内径が、少なくとも20μmであることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項8】
管状の前記電極の外径doutと前記頸状部の内径dnspとの間の比が、
【数2】

の範囲内にあることを特徴とする請求項2記載の高圧放電ランプ。
【請求項9】
前記電極が、タングステン製であることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項10】
アンペア単位で表した当該高圧放電ランプの電流Imhlと、ミリメートル単位で表した前記電極の外径doutとの間の比が、
【数3】

の範囲内にあることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−502516(P2007−502516A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523088(P2006−523088)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051365
【国際公開番号】WO2005/015603
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】