説明

高圧材料強度試験装置

【課題】腐食性ガス洩れを効果的に防止できると共に、長時間使用しても圧力容器の内圧が変化しにくい高圧材料強度試験装置の提供
【解決手段】圧力容器120と、支持部材130と、被検体160に応力を与えるプルロッド140と、圧力容器蓋150と、第1ベローズ024を有する第1外部圧力容器020と、荷重負荷手段030と、第2ベローズ043を有する第2外部圧力容器040と、本体フレーム050と、圧力容器120内に加圧した腐食性ガスを送り込む第1ガス供給手段060と、第1外部圧力容器020内および第2外部容器040内に加圧した不活性ガスを送り込む第2ガス供給手段070と、第1外部圧力容器020、第2外部容器040および圧力容器120の内圧を同調させて上昇または低下させる内圧制御手段080とを備える高圧材料強度試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガス環境下で用いられる材料の強度試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素および酸素を燃料とし、CO、NO、SO等の有害物質を排出することなく、電気動力を得ることができるため、地球環境問題の解決に有力な技術であり、最近では自動車の動力源としてその使用が拡大されつつある。更なる発展を遂げるためには、エネルギー源としての水素を省スペースで、できる限り多く貯蔵することが必要であり、水素ガスの貯蔵用容器、配管、注入用バルブ等の各種機器に高圧の水素環境における耐食性に優れた材料が求められている。
【0003】
このような状況下で、我が国では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)において、水素先端科学基礎研究事業として、水素脆化等の基礎原理の解明、その対策等の検討が数多く行われている。
【0004】
しかし、高圧水中での引張強度試験機、低圧の腐食性ガス環境下での疲労強度試験機などは知られているが、高圧の腐食ガス環境下での引張強度、疲労強度などを試験するための装置については、ほとんど検討されていない。
【0005】
特許文献1には、荷重負荷用アクチュエータの荷重負荷用ロッドの試験片側と反対側の端部に、バランス用ピストンを連結した流体シリンダが配置されている機械的特性試験装置に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−78474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1は、従来の高圧材料強度試験装置を示す模式図である。図1に示すように、従来の高圧材料強度試験装置110は、被検体160を収容する圧力容器120と、被検体160の一端を支持する支持部材130と、被検体160の他端を支持し、被検体160に引張又は圧縮の応力を与えるプルロッド140と、プルロッド140の移動を制御する荷重負荷手段(図示省略)と、プルロッド140を挿入するための貫通孔151を有する圧力容器蓋150と、圧力容器120内に腐食性ガスを供給するための腐食性ガス供給管170とを有する装置である。
【0008】
この装置においては、まず、被検体160が支持部材130およびプルロッド140に固定された状態で、圧力容器120を圧力容器蓋150の上に被せ、ボルトを締め付けることにより圧力容器120内を密閉し、図1に示される状態とされる。その後、腐食性ガス供給管170から水素ガスその他の腐食性ガスを圧力容器120内に導入し、所望の試験圧力まで容器の内圧を高め、その状態を維持したままで、疲労試験その他の材料試験が行われる。
【0009】
なお、本願では、水素ガスが金属材料等を劣化させることから広義の意味で腐食性ガスに水素ガスを含むものとする。
【0010】
このとき、圧力容器120と圧力容器蓋150との間および圧力容器蓋150とプルロッド140との間のシール性は、それぞれシール部材としてのOリング152、153および154により確保されている。そして、試験中にはOリング153の容器側と外気側との間の圧力差が大きくなるが、そのような状態で、プルロッド140が圧力容器蓋150の貫通孔151内を移動するため、Oリング153は摩耗し、長時間の使用により圧力容器120の内圧を維持できなくなる。また、特に、水素ガスは、分子量が小さいために微小な隙間からでも漏洩しやすく、しかも、圧力容器120の外部に漏洩した場合には爆発の危険性もある。更に、Oリングだけでシール性を確保する構成では、圧力容器120内圧の更なる高圧化を実現するのは困難である。このような問題は、引張および圧縮を0.001Hz〜10Hz程度で行う必要がある疲労試験において顕著となる。
【0011】
特許文献1に記載された機械的特性試験装置は、荷重負荷用アクチュエータの荷重負荷ロッドの試験片側と反対側の端部に、バランス用ピストンを連結した流体シリンダを配置することによって、圧力容器の荷重負荷ロッドのシール箇所を一箇所とし、且つ圧力容器の外に荷重負荷ロッドのバランス取りを配置したので、試験片の取り付け空間を確保できるというものである。しかし、この機械的特性試験装置における圧力容器のシール性は、Oリングなどのシール部材でのみ確保されるものであるため、上記の問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、長時間使用しても圧力容器の内圧が変化しにくく、Oリングに負荷される圧力差を小さくして、腐食性ガスのリークを防止すると共に、Oリングを長寿命化し、仮に、Oリングが摩耗しても、腐食性ガスが外部に漏れず、更に、荷重負荷装置にかかる圧力を低減することができる高圧材料強度試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決する方法としては、例えば、高圧材料強度試験装置全体を密閉容器に収容し、この密閉容器内を加圧する方法が考えられるが、このような方法では装置の大型化を余儀なくされる。一方で、プルロッドの移動を妨げる方法で圧力容器蓋の周辺をシールすることはできない。
【0014】
本発明者らは、このような状況下で、熱膨張が避けられない部分などに用いられているベローズ(伸縮性管)に着目し、実験を重ねた結果、ベローズで圧力容器蓋の外部とプルロッドの一部を覆い、圧力容器の外部に別途の圧力容器を形成し、同容器内に圧力容器内の圧力とほぼ同等の圧力となるように不活性ガスを送り込むことにより、圧力容器内の腐食性ガスの漏洩を防止することができることを見出した。
【0015】
しかし、市販のベローズは、伸縮する蛇腹状の部分の強度が低くなるため、許容圧力がそれほど大きくない。このため、市販のベローズをそのまま使用したのでは、材料強度試験器の圧力容器内を更に高圧化した場合には内部ガス漏れのおそれがある。
【0016】
そこで、本発明者らは、外部圧力容器が内径の異なる複数のベローズを同心円状に配置して構成され、それぞれのベローズに不活性ガスを別個独立に送り込み、各ベローズ間の差圧がベローズの許容圧力以下となるように調整することにより、更なる高圧下に対応できることを確認した。
【0017】
本発明者らは、更に、荷重負荷装置に負荷される圧力についても検討した。例えば、圧力容器内に水素ガスを吹き込み、内圧を71MPaとし、一方、外部圧力容器として10重のベロ−ズを用いた場合、本体フレ−ムに約900kNの力が付与されることになる。この力を特許文献1に示されるような流体シリンダを用いてキャンセルしようとすると、装置の大型化が余儀なくされる。そこで、上述の外部圧力容器と同じ構成の外部圧力容器を荷重負荷ロッドの反対側に設置して付加される力をキャンセルすることで、荷重負荷装置として、約900kNという大容量のものでなく、約200kNという小容量のものでも十分に使用可能であることを見出した。
【0018】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、下記の(1)に示す高圧材料強度試験装置を要旨としている。
【0019】
(1)被検体を収容する圧力容器と、前記被検体の一端を支持する支持部材と、前記被検体の他端を支持し、前記被検体に引張又は圧縮の応力を与えるプルロッドと、前記プルロッドを挿入するための貫通孔を有する圧力容器蓋と、前記プルロッドと前記圧力容器蓋または前記第1外部容器固定盤の貫通孔との間をシールするシール部材と、前記プルロッドを挿入するための貫通孔を有し、前記圧力容器蓋に固定された第1外部容器固定盤と、前記プルロッドの前記被検体の支持端とは反対端に固定された第1外部容器移動盤と、前記第1外部容器固定盤と前記第1外部容器移動盤との間に第1のベローズを固定した第1外部圧力容器と、荷重負荷ロッドを備える荷重負荷手段と、第2外部容器固定盤と第2外部容器移動盤との間に第2のベローズを固定した第2外部圧力容器と、前記圧力容器蓋、前記荷重負荷手段および前記第2外部容器固定盤をそれぞれ固定する本体フレームと、前記圧力容器内に加圧した腐食性ガスを送り込む第1ガス供給手段と、前記第1外部圧力容器内および前記第2外部容器内に加圧した不活性ガスを送り込む第2ガス供給手段と、前記第1外部圧力容器、前記第2外部容器および前記圧力容器の内圧を同調させて上昇または低下させる内圧制御手段と、を有する高圧材料強度試験装置であって、前記荷重負荷ロッドの一端が前記第1外部容器移動盤に、他端が前記第2外部容器移動盤に固定されていることを特徴とする高圧材料強度試験装置。
【0020】
(2)前記第1外部圧力容器および前記第2外部圧力容器が内径の異なる複数のベローズを同心円状に配置して構成され、前記第2ガス供給手段が前記それぞれの外部圧力容器のベローズ毎に不活性ガスを送り込む機構を有する上記(1)の高圧材料強度試験装置。
【0021】
(3)前記内圧制御手段が、前記第1外部圧力容器および前記第2外部圧力容器のいずれのベローズにおいても、前記各ベローズ間の圧力差が前記ベローズの許容圧力差以下であり、且つ外側の前記ベローズの内圧が内側の前記ベローズの内圧以下であるように制御しつつ、前記第1外部圧力容器および前記第2の外部圧力容器の最内郭の前記ベローズの内圧を前記圧力容器の内圧に同調させて上昇または低下させる上記(2)の高圧材料強度試験装置。
【0022】
(4)更に、前記支持部材に取り付けられたロードセルを有し、前記第2ガス供給手段が、前記第1外部圧力容器内および前記第2外部容器内に加え、更に、前記ロードセルのハウジング内にも加圧した不活性ガスを送り込む構成を有し、前記内圧制御手段が、前記第1外部圧力容器、前記第2外部容器および前記圧力容器に加え、更に、前記ロードセルのハウジングの内圧をも同調させて上昇または低下させる構成を有する上記(1)〜(3)のいずれかの高圧材料強度試験装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シール部材のOリングの容器側と外部側との圧力差が小さいため、Oリングが摩耗しにくく、腐食性ガス洩れを効果的に防止できると共に、長時間使用しても圧力容器の内圧が変化しにくい。また、仮に、Oリングが摩耗しても、腐食性ガスが外部に漏れないので、腐食性ガスとして水素ガスなどの可燃性ガスを用いる場合でも、材料強度試験を安全に実施することができる。更に、荷重負荷装置にかかる圧力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の高圧材料強度試験装置を示す模式図
【図2】本発明に係る高圧材料強度試験装置を例示した模式図
【図3】本発明に係る高圧材料強度試験装置の設定方法を示す模式図 (a)被検体を設置する前の状態 (b)被検体を設置した状態 (c)圧力容器を設置した状態
【発明を実施するための形態】
【0025】
図2は、本発明に係る高圧材料強度試験装置を例示した模式図である。図2に示すように、本発明の高圧材料強度試験装置010は、被検体160を収容する圧力容器120と、被検体160の一端を支持する支持部材130と、被検体160の他端を支持し、被検体160に引張又は圧縮の応力を与えるプルロッド140と、プルロッド140を挿入するための貫通孔151を有する圧力容器蓋150と、プルロッド140を挿入するための貫通孔021を有し、圧力容器蓋150に固定された第1外部容器固定盤022と、プルロッド140と圧力容器蓋150の貫通孔151との間をシールするシール部材(Oリング102)と、プルロッド140の被検体160の支持端とは反対端に固定された第1外部容器移動盤023と、第1外部容器固定盤022と第1外部容器移動盤023との間に第1ベローズ024を固定した第1外部圧力容器020と、荷重負荷ロッド031を備える荷重負荷手段030と、第2外部容器固定盤041と第2外部容器移動盤042との間に第2ベローズ043を固定した第2外部圧力容器040と、圧力容器蓋150、荷重負荷手段030および第2外部容器固定盤040をそれぞれ固定する本体フレーム050と、圧力容器120内に加圧した腐食性ガスを送り込む第1ガス供給手段060と、第1外部圧力容器020内および第2外部容器040内に加圧した不活性ガスを送り込む第2ガス供給手段070と、第1外部圧力容器020、第2外部容器040および圧力容器120の内圧を同調させて上昇または低下させる内圧制御手段080とを備える装置である。
【0026】
なお、図2では、シール部材(Oリング102)が、プルロッド140と圧力容器蓋150の貫通孔151との間をシールする場合の例を示しているが、シール部材(Oリング102)は、プルロッド140と第1外部容器固定盤022の貫通孔021との間をシールするような構成としても良い。
【0027】
この装置においては、荷重負荷ロッド031の一端が第1外部容器移動盤023に、他端が第2外部容器移動盤042に固定されているので、荷重負荷手段030に負荷される力をキャンセルすることができるので、比較的小容量の荷重負荷手段030を使用することができる。なお、第1外部容器移動盤023および第2外部容器移動盤042のサイズは、特に制約はないが、それぞれの外部圧力容器内の圧力の計算を用意するには、それらの面積をほぼ同一とすることが好ましい。
【0028】
第1外部圧力容器020において、プルロッド140と第1外部容器移動板023との固定、第1外部容器固定板022およびベローズ024との固定、第1外部容器移動板023とベローズとの固定、第1外部容器固定板022と圧力容器蓋150との固定は、いずれも、溶接、または、ボルトおよびOリング等のシール材との組み合わせを採用することができる。この点、第2外部圧力容器040において、第2外部容器固定板041およびベローズ043との固定、第2外部容器移動板042とベローズとの固定、第2外部容器固定板041と本体フレーム050との固定も同様である。
【0029】
なお、図2には、第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040ともに、径が異なる3つのベローズ024a、024bおよび024cならびにベローズ043a、043bおよび043cをそれぞれ同心円に設置した例が示されているが、このような態様に限定されることはない。ベローズの数は、ベローズの許容圧力と圧力容器の内圧との関係で決定される。例えば、許容圧力が9MPaのベローズを用いることを想定すると、圧力容器の内圧が9MPa以下に設定して材料強度試験を行う場合には、ベローズは一つだけで良く、それより高い圧力下での材料強度試験を行う場合には、ベローズを複数個設置することが必要である。
【0030】
そして、内圧制御手段080は、第1ガス供給手段および第2ガス供給手段の供給量を調整する。具体的には、内圧制御手段080は、第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040のいずれのベローズ024、043においても、各ベローズ間(第1外部圧力容器020においては、ベローズ024a、024bおよび024cの間、第2外部容器040においては、ベローズ043a、043bおよび043cの間)の圧力差がベローズの許容圧力差以下であり、且つ外側のベローズ(例えば、第1外部圧力容器020のベローズ024a)の内圧が内側のベローズ(例えば、第1外部圧力容器020のベローズ024b)の内圧以下であるように制御する。そして、内圧制御手段080は、第1外部圧力容器020および第2の外部圧力容器040の最内郭のベローズ024c、043cの内圧を圧力容器120の内圧に同調させて上昇または低下させることが好ましい。
【0031】
本発明に係る高圧材料強度試験装置010においては、圧力容器120の周囲にヒータを設置して圧力容器内の温度を調整できるような機構を設けることができる。また、圧力容器120内には、必要に応じて、変位計、荷重計、温度計等の計測器を設置することができる。図2には、ロードセル090を設置した例を示しているが、ロードセル090は設置しなくても良い。ただし、プルロッド140がOリング102に摺動するため、荷重負荷手段030の圧力と被検体160にかかる荷重とに差異が生じる場合があるので、ロードセル090を設置し、被検体160にかかる荷重を正確に測定するのが好ましい。
【0032】
ロードセル090を設置する場合には、第2ガス供給手段070が、第2ガス供給手段070a、070b、070cを介して、第1外部圧力容器020、第2外部容器040およびロードセル090(具体的には、ロードセル090のハウジング)に、加圧した不活性ガスを送り込む構成を有し、内圧制御手段080が、第1外部圧力容器020、第2外部容器040および圧力容器120に加え、更に、ロードセル090のハウジングの内圧をも同調させて上昇または低下させる構成を有しているのが好ましい。このような構成にすることで、圧力容器120の内圧でロードセル090が故障するのを防止でき、また、ロードセル090の測定部が腐食性ガスに曝されるのを防止できる。
【0033】
図3は、本発明に係る高圧材料強度試験装置の設定方法を示す模式図であり、(a)は被検体を設置する前の状態、(b)は被検体を設置した状態、(c)は圧力容器を設置した状態をそれぞれ示している。
【0034】
図3(a)に示すように、本発明に係る高圧材料強度試験装置においては、被検体160を設置する前においては、支持部材130がガイド131を介して圧力容器蓋150に固定されており、圧力容器蓋150の貫通孔151にはプルロッド140が挿入されている。そして、図3(b)に示すように、支持部材130およびプルロッド140に被検体160を固定した後、図3(c)に示すように、圧力容器120を圧力容器蓋150の上に被せ、ボルト180を締め付けることにより圧力容器120内を密閉し、図2に示される状態とする。
【0035】
その後、第1ガス供給手段060から水素ガスその他の腐食性ガスを圧力容器120内に導入するとともに、圧力容器120の圧力に同調するように、第2ガス供給手段070からアルゴンガスその他の不活性ガスを第1外部圧力容器020内および第2外部圧力容器040内、更に、ロードセル090を設ける場合には、そのハウジング内に導入する。そして、圧力容器の内圧を所定圧力まで高めた後、その状態を維持したまま、疲労試験その他の材料試験が行われる。
【0036】
ここで、圧力容器120内にベローズ024、043の許容圧力を超える腐食ガスを導入する場合には、例えば、内径の異なる複数のベローズを同心円状に配置して第1外部内圧容器020および第2外部圧力容器040を構成し、第2のガス供給手段070がベローズ毎にベローズの許容圧力以下の圧力で不活性ガスを送り込む機構を有する装置を用いるのがよい。なお、図2の例では、最外郭のベローズ024aおよび043aに不活性ガスを送り込む第2ガス供給手段070aおよび070bだけを図示し、他のベローズ024b、024c、043bおよび043cに不活性ガスを送り込む第2ガス供給手段の図示を省略している。ベローズの数が増えると、それだけ第2ガス供給手段の配管も増えることになる。
【0037】
図2に示す3個のベローズを用いる例で説明すると、第2ガス供給手段070からは、第1ガス供給手段060から腐食性ガスを吹き込み高められた圧力容器120の内圧に同調するように、全てのベローズ024a、024b、024c、043a、043bおよび043c内に不活性ガスが導入される。
【0038】
その後、ベローズの許容圧力に達したときに、最外郭にあるベローズ024aおよび043aのみ不活性ガスの供給を停止する。更に、圧力容器120内の圧力を高めると共に、最外郭以外のベローズ024b、024c、043bおよび043cには、圧力容器120の内圧に同調するように不活性ガスを供給し、ベローズの許容圧力の二倍に達したときに、外側から2番目のベローズ024bおよび043b内への不活性ガスの供給を停止し、更に、最内郭のベローズ024cおよび043cには圧力容器の内圧と同等の圧力になるように不活性ガスを供給し続ける。
【0039】
このように不活性ガスを導入すれば、ベローズ024aまたは043aの内外圧力差、ベローズ024bまたは043bの内外圧力差およびベローズ024cまたは043cの内外圧力差を、常にベローズの許容圧力以下とすることができるため、ベローズが破損することなく、第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040内の圧力(実際には、最内郭のベローズ024cおよび043c内の圧力)を、圧力容器120の内圧と同じ圧力に維持することができる。即ち、N個のベローズを同心円状に配置した外部圧力容器を用いれば、理論上、ベローズの許容圧力のN倍までの圧力に対応できる。
【0040】
なお、実際には、同一材質のベローズの場合、内径が小さいほど機械的強度が強いため、ベローズの内外圧力差は、最外郭に近づくほどに小さくするのが好ましい。また、ベローズの内外圧力差は、ベローズの設定耐力(4倍耐圧試験に合格した値)の4分の1以下とするのが好ましい。
【0041】
この状態で、疲労試験その他の材料強度試験を実施した後、圧力容器120のガスを抜きつつ、ベローズ024cおよび043cのガスを抜き、ベローズの許容圧力の二倍になった時点で、ベローズ024bおよび043bのガス抜きを開始し、更に、ベローズの許容圧力になった時点で、ベローズ024aおよび043aのガス抜きを開始し、圧力容器120および第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040内の圧力が大気圧まで低下した後、圧力容器120を固定していたボルトを緩め、被検体を取り出すことができる。
【0042】
ここで、圧力容器120内にロードセル090を設置する場合には、ロードセル090のハウジング内にも不活性ガスを吹き込むが、図2に示す例で説明すると、第2ガス供給手段070からは、第1ガス供給手段060から腐食性ガスを吹き込み高められた圧力容器120の内圧に同調するように、全てのベローズ024a、024b、024c、043a、043bおよび043c内ならびにロードセル090のハウジング内に不活性ガスが導入される。
【0043】
その後、ベローズの許容圧力に達したときに、最外郭にあるベローズ024aおよび043aのみ不活性ガスの供給を停止する。更に、圧力容器120内の圧力を高めると共に、最外郭以外のベローズ024b、024c、043bおよび043cならびにロードセル090のハウジング内には、圧力容器120の内圧に同調するように不活性ガスを供給し、ベローズの許容圧力の二倍に達したときに、外側から2番目のベローズ24bおよび043b内への不活性ガスの供給を停止し、更に、最内郭のベローズ024cおよび043cならびにロードセル090のハウジング内には圧力容器の内圧と同等の圧力になるように不活性ガスを供給し続ける。
【0044】
この状態で、疲労試験その他の材料強度試験を実施した後、圧力容器120およびロードセル090のハウジング内のガスをそれぞれ抜きつつ、ベローズ024cおよび043cのガスを抜き、ベローズの許容圧力の二倍になった時点で、ベローズ024bおよび043bのガス抜きを開始し、更に、ベローズの許容圧力になった時点で、ベローズ024aおよび043aのガス抜きを開始し、圧力容器120、ロードセル090のハウジング内、第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040内の圧力が大気圧まで低下した後、圧力容器120を固定していたボルトを緩め、被検体を取り出すことができる。
【0045】
図2に示すように、本発明の高圧材料強度試験装置010においては、圧力容器120と圧力容器蓋150との間、圧力容器蓋150の貫通孔151内、および、圧力容器蓋150と第1外部容器固定盤022との間には、それぞれOリング101、102および103が配置されており、それぞれの部材間のシーリング性が確保されている。
【0046】
なお、図2には示していないが、荷重負荷ロッド031の両端にはロードセルを設置するのが好ましい。それぞれの位置における応力をモニタリングしながら第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040への不活性ガスの供給を行って、荷重負荷手段030にかかる反力を効果的にキャンセルすることができる。
【0047】
図2には、ガイド025および044が示されているが、これらは、それぞれ第1外部圧力容器020および第2外部圧力容器040が不必要に伸びたり、縮んだりしないようにするためのものである。図2の第2外部圧力容器040内には、下部ロッド045が示されているが、下部ロッド045はなくてもよい。但し、下部ロッド045が存在すると、第2外部圧力容器040の第2ベロ−ズ043の座屈を防止できる。
【0048】
なお、試験時には、プルロッド140の動きに併せて、第1外部容器移動盤023が移動し、それによって第1外部圧力容器020の内圧が変化するが、その内圧の変動は、最大でも5%程度であり、Oリングの許容圧力未満である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、Oリングの容器側と外部側との圧力差が小さいため、Oリングが摩耗しにくく、腐食性ガス洩れを効果的に防止できると共に、長時間使用しても圧力容器の内圧が変化しにくい。また、仮に、Oリングが摩耗しても、腐食性ガスが外部に漏れないので、腐食性ガスとして水素ガスなどの可燃性ガスを用いる場合でも、材料強度試験を安全に実施することができる。更に、荷重負荷装置にかかる圧力を低減することができる。
【符号の説明】
【0050】
010:本発明の高圧材料強度試験装置
020:第1外部圧力容器
021:貫通孔
022:第1外部容器固定盤
023:第1外部容器移動盤
024、024a、024b、024c:第1ベローズ
025:ガイド
030:荷重負荷手段
031:荷重負荷ロッド
032:荷重負荷手段固定アーム
040:第2外部圧力容器
041:第2外部容器固定盤
042:第2外部容器移動盤
043、043a、043b、043c:第2ベローズ
044:ガイド
045:下部ロッド
050:本体フレーム
060:第1ガス供給手段
070、070a、070b、070c:第2ガス供給手段
080:内圧制御手段
090:荷重測定手段(ロードセル)
101、102、103:Oリング
110:従来の高圧材料強度試験装置
120:圧力容器
130:支持部材
131:ガイド
140:プルロッド
150、150a:圧力容器蓋
151:貫通孔
152、153、154:Oリング
160:被検体
170:腐食性ガス供給管(第1のガス供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を収容する圧力容器と、
前記被検体の一端を支持する支持部材と、
前記被検体の他端を支持し、前記被検体に引張又は圧縮の応力を与えるプルロッドと、
前記プルロッドを挿入するための貫通孔を有する圧力容器蓋と、
前記プルロッドを挿入するための貫通孔を有し、前記圧力容器蓋に固定された第1外部容器固定盤と、
前記プルロッドと前記圧力容器蓋または前記第1外部容器固定盤の貫通孔との間をシールするシール部材と、
前記プルロッドの前記被検体の支持端とは反対端に固定された第1外部容器移動盤と、
前記第1外部容器固定盤と前記第1外部容器移動盤との間に第1のベローズを固定した第1外部圧力容器と、
荷重負荷ロッドを備える荷重負荷手段と、
第2外部容器固定盤と第2外部容器移動盤との間に第2のベローズを固定した第2外部圧力容器と、
前記圧力容器蓋、前記荷重負荷手段および前記第2外部容器固定盤をそれぞれ固定する本体フレームと、
前記圧力容器内に加圧した腐食性ガスを送り込む第1ガス供給手段と、
前記第1外部圧力容器内および前記第2外部容器内に加圧した不活性ガスを送り込む第2ガス供給手段と、
前記第1外部圧力容器、前記第2外部容器および前記圧力容器の内圧を同調させて上昇または低下させる内圧制御手段と、
を有する高圧材料強度試験装置であって、
前記荷重負荷ロッドの一端が前記第1外部容器移動盤に、他端が前記第2外部容器移動盤に固定されていることを特徴とする高圧材料強度試験装置。
【請求項2】
前記第1外部圧力容器および前記第2外部圧力容器が内径の異なる複数のベローズを同心円状に配置して構成され、前記第2ガス供給手段が前記それぞれの外部圧力容器のベローズ毎に不活性ガスを送り込む機構を有することを特徴とする請求項1に記載の高圧材料強度試験装置。
【請求項3】
前記内圧制御手段が、前記第1外部圧力容器および前記第2外部圧力容器のいずれのベローズにおいても、前記各ベローズ間の圧力差が前記ベローズの許容圧力差以下であり、且つ外側の前記ベローズの内圧が内側の前記ベローズの内圧以下であるように制御しつつ、前記第1外部圧力容器および前記第2の外部圧力容器の最内郭の前記ベローズの内圧を前記圧力容器の内圧に同調させて上昇または低下させることを特徴とする請求項2に記載の高圧材料強度試験装置。
【請求項4】
更に、前記支持部材に取り付けられたロードセルを有し、
前記第2ガス供給手段が、前記第1外部圧力容器内および前記第2外部容器内に加え、更に、前記ロードセルのハウジング内にも加圧した不活性ガスを送り込む構成を有し、
前記内圧制御手段が、前記第1外部圧力容器、前記第2外部容器および前記圧力容器に加え、更に、前記ロードセルのハウジングの内圧をも同調させて上昇または低下させる構成を有することを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の高圧材料強度試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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