説明

高圧熱水抽出アッケシソウ粉末および味噌の製造方法

【課題】アッケシソウの有効成分を最大限活用しながら官能性と加工適性にも優れた高圧熱水抽出アッケシソウ粉末および味噌の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の熱水抽出アッケシソウ粉末の製造方法は、生アッケシソウを乾燥させるアッケシソウ乾燥段階と、前記乾燥したアッケシソウに水を入れ、130〜150℃で4〜8時間熱水抽出を行う高圧熱水抽出段階と、前記抽出液の濃度を3〜6ブリックスに調整し、その抽出液を1〜8℃で2〜5日間熟成させる低温熟成段階と、前記熟成した抽出液を、220〜330℃に維持される粉末乾燥機のチャンバー内で12,000〜18,000rpmで回転するディスクへ噴射して乾燥させる高温噴霧乾燥段階とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧熱水抽出と低温熟成によるアッケシソウ粉末の製造方法、およびそのアッケシソウ粉末を含有した味噌の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アッケシソウ(厚岸草)は、別名「サンゴソウ」と呼ばれるもので、韓国では西海岸や南海岸、白ニョン島(ニョンは、令に羽)、済州島、鬱陵島などの島地方の海に接する海岸、砂州、塩田近くなどに群れをなして生育する塩生植物の一種であって、植物学的分類ではアカザ科(Chenopodiaceae)に属し、学名はSalicornia herbacea L.である。中国の医学古書『神農本草経』によれば、アッケシソウは、非常に塩辛い味をしており、「鹹草」または「神草」とも呼ばれる。アッケシソウの茎は濃緑色で高さ10〜40cm、多くの節を形成する。アッケシソウの枝は茎の節から対生し、多肉質で肥大である。また、6月〜8月頃には枝の先端部にちらちらと緑色の花が咲き、10月には平たくて黒い実が結ぶ。秋になると、アッケシソウは全体が紅紫色へ変化する外観特性を持つ植物である。
【0003】
アッケシソウは、天然ミネラルに富むうえ、タウリン成分と共に消化に役立つ消化液成分としてのベタインを含有しており、肝の解毒作用に非常に有用な植物として知られている。よって、アッケシソウは、肝機能の改善、動脈硬化の改善、糖尿病の改善、腎臓病の改善に有効であるとともに、食餌繊維および免疫力を向上させる機能性成分やミネラルなどが多量含有されており、人体に非常に有用であると報告されている。
【0004】
特に、近年、アッケシソウは、コレステロール低下能力および抗酸化能力を有し、アミノ酸含量成分実験において非常に高い機能性成分が証明されたうえ、ミネラルだけでなくビタミンも高い含有量を持っていることが確認された。このため、最近では、生理活性化のために、穀醤類などのアッケシソウ含有食品が多量開発されている。
【0005】
アッケシソウを灰化させて用いる方法として、特許文献1は、アッケシソウに含有されたミネラルを用いるために、150〜250℃、500℃以上および700℃以上に段階的に灰化させる方法を開示しているが、これは、単に植物由来ミネラルを供給するだけであり、有機機能性成分はすべて除去される限界があった。
【0006】
また、アッケシソウを凍結乾燥または単純粉砕させて加工食品または塩に添加する技術は、特許文献2および特許文献3に開示されているが、これららはいずれも、アッケシソウの有効成分を最大限活用するには限界があった。
【0007】
また、アッケシソウのミネラルを始めとした有効成分を抽出するためにアッケシソウを熱水抽出する方法としては、アッケシソウを100℃以上で5〜8時間熱水抽出する方法(特許文献4参照)、アッケシソウを80〜90℃で22〜26時間熱水抽出する方法(特許文献5参照)が挙げられる。ところが、前述した通常の熱水抽出条件では抽出時間を延ばす場合、ミネラルの含量は増加するが、機能性成分、特に抗酸化活性を示す総フェノール性化合物の含量の増加には限界があった。
【0008】
一方、味噌は、韓国の代表的な発酵食品であって、「飲食の味が穀醤類の味による」と言われるほど、韓国の飲食において重要な位置を占めている。伝統味噌は、地方によって少しずつ製造方法が異なるが、一般に、大豆を蒸して成形した後、自然状態で微生物が繁殖するようにした味噌玉麹を塩水に浸漬して発酵、熟成させた後、濾過して醤油を作り、濾過して残った固形分を味噌として活用した。ところが、商業的に量産される改良味噌は、まず、味噌玉麹または粒麹を作り、これを直接塩水と混ぜて発酵させることにより製造している。
【0009】
アッケシソウが含有しているミネラルと有用成分を活用する味噌の製造方法としては、穀醤類用麹原料にアッケシソウ粉末を混合する方法(特許文献6参照)や、アッケシソウ乾燥粉末を希釈したアッケシソウ水溶液を味噌製造の際に塩水の代用に使う方法(特許文献7参照)などが挙げられるが、これらの方法は、投入位置に差異があるばかりで、単にアッケシソウ乾燥粉末を活用するものであって、アッケシソウの有効成分を十分に活用しながら人体において機能性を発揮するには限界があった。
【0010】
本発明者らは、アッケシソウの有効成分を最大限活用しながら官能性および加工適性にも優れたアッケシソウ粉末を製造するための研究を行ったところ、通常の熱水抽出に比べて高圧熱水抽出した後、特定の条件で低温熟成させて高温噴霧乾燥させると、アッケシソウが保有しているミネラルを始めとしたカフェイン酸、フェルラ酸などの総フェノール性化合物を最大限活用しながら官能性に優れるうえ、各種加工食品にも活用し易いアッケシソウ粉末を製造することができ、また、そのアッケシソウ粉末から味噌を製造する場合、味噌の発酵特性を改善して官能性を向上させた味噌を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国公開特許第2001−0083036号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第2006−0109657号明細書
【特許文献3】韓国特許第0587713号明細書
【特許文献4】韓国公開特許第2002−0030772号明細書
【特許文献5】韓国公開特許第2009−0113927号明細書
【特許文献6】韓国公開特許第2003−0043224号明細書
【特許文献7】韓国公開特許第2004−0086850号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、アッケシソウの有効成分を最大限活用しながら官能性と加工適性にも優れた高圧熱水抽出アッケシソウ粉末の製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記熱水抽出アッケシソウ粉末を用いて味噌の発酵特性を改善して官能性を向上させた味噌の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、生アッケシソウを乾燥させるアッケシソウ乾燥段階と、前記乾燥したアッケシソウに水を入れ、130〜150℃で4〜8時間熱水抽出を行う高圧熱水抽出段階と、前記抽出液の濃度を3〜6ブリックスに調整し、その抽出液を1〜8℃で2〜5日間熟成させる低温熟成段階と、前記熟成した抽出液を、220〜330℃に維持される粉末乾燥機のチャンバー内で12,000〜18,000rpmにて回転するディスクへ噴射して乾燥させる高温噴霧乾燥段階とを含んでなる、熱水抽出アッケシソウ粉末の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記の方法で製造され、塩化ナトリウムを52〜57重量%、水分を2〜10重量%含有し、総フェノール含量が15〜30mgである熱水抽出アッケシソウ粉末を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記熱水抽出アッケシソウ粉末を含有する加工食品を提供する。
【0017】
また、本発明は、蒸熟した大豆に熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜10重量%混合する段階と、前記混合された材料で味噌玉麹を成形し、乾燥させながら発酵させる段階と、前記発酵した味噌玉麹と、熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜5重量%含む天日塩を溶解した塩水とを混合して味噌を仕込み、発酵させる段階とを含んでなる、アッケシソウ味噌の製造方法を提供する。
【0018】
本発明のアッケシソウ味噌の製造方法において、前記大豆の蒸熟は、アッケシソウ熱水抽出物を固形分に対し0.05〜1重量%含有するアッケシソウ水で蒸熟させることにより行われてもよい。
【0019】
本発明のアッケシソウ味噌の製造方法において、前記天日塩は、塩化ナトリウムの含量が83〜90重量%であり、1300〜2500ppmのカリウム、4000〜8000ppmのマグネシウム、および500〜1200ppmのカルシウムを含有してもよい。
【0020】
また、本発明は、アッケシソウ熱水抽出物を固形分に対し0.05〜1重量%含有するアッケシソウ水を用いて80〜110℃で2〜4時間蒸熟させる段階と、前記蒸熟した大豆に熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜10重量%混合する段階と、前記混合された材料で味噌玉麹を成形し、40〜60日間乾燥させながら自然発酵させる段階と、0.2〜5重量%の熱水抽出アッケシソウ粉末、83〜90重量%の塩化ナトリウム、1300〜2500ppmのカリウム、4000〜8000ppmのマグネシウム、および500〜1200ppmのカルシウムを含む天日塩を塩化ナトリウムの含量が17〜18重量%となるように希釈した塩水と、前記発酵した味噌玉麹とを1:0.5〜1:1.5の重量比で混合して味噌を仕込み、2〜6ヶ月間発酵させる段階とを含んでなる、アッケシソウ味噌の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、アッケシソウが保有しているミネラルを始めとしたカフェイン酸、フェルラ酸などの総フェノール性化合物を最大限活用しながら、官能性に優れるうえ、各種加工食品にも活用し易いアッケシソウ粉末を製造することができ、このアッケシソウ粉末を用いて味噌の発酵特性を改善してアミノ態窒素の生成を促進させる、抗酸化性能に優れた高品質機能性アッケシソウ味噌を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施態様に係る高圧熱水抽出アッケシソウ粉末を用いたアッケシソウ味噌の製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、アッケシソウを採取し、アッケシソウから砂州の泥土および異物を除去するために洗浄した生アッケシソウを使用してもよく、生アッケシソウを乾燥させた乾燥アッケシソウ粉末を直ちに使用してもよい。但し、乾燥アッケシソウ粉末の場合でも、アッケシソウを1次的に抽出した後でこれを乾燥させた粉末は、本発明の高圧熱水抽出アッケシソウ粉末の製造に向いていない。
【0024】
まず、アッケシソウ乾燥段階では、太陽光による自然乾燥や熱風乾燥などが使用できるが、好ましくは塩田の結晶地で太陽光によって自然乾燥させることが加熱臭の生成を抑制することができる。アッケシソウの乾燥は、ミネラルおよび総フェノール性化合物の抽出効率に直接影響する要因の一つであって、水分含量が低いほど抽出効率が増加する。好ましくは、乾燥したアッケシソウの水分含量は2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下である。
【0025】
乾燥時間を短縮させるためには、前記アッケシソウ乾燥段階の前に、アッケシソウを約1〜3cm程度の大きさに切断または粗砕することが好ましい。前記範囲の下限値未満に微砕することは、粉砕過程でアッケシソウの樹液が損失して抽出収率が低くなるおそれがあり、微砕にかかる費用とエネルギー消耗は大きいが、それに比べて乾燥時間の短縮はあまり大きくないので好ましくない。
【0026】
アッケシソウ乾燥段階の前にアッケシソウを粗砕していない場合には、アッケシソウ乾燥段階の後、高圧熱水抽出段階の前に粗砕を行ってもよい。
【0027】
次に、乾燥したアッケシソウに水を入れ、130〜150℃で4〜8時間熱水抽出を行う高圧熱水抽出段階である。
【0028】
圧力容器に、乾燥したアッケシソウ100重量部に対し50〜300重量部、好ましくは100〜200重量部の水を入れ、高圧熱水抽出を行う。
【0029】
アッケシソウからカフェイン酸、フェルラ酸などの総フェノール性化合物を十分に抽出するためには、130℃以上の高温で抽出することが必ず必要である。もし150℃超過であれば、抽出時間は短縮できるが、抽出時間に比べて昇温および冷却時間が一層長くなって均一な工程管理が難しく、装置およびエネルギー負荷があって好ましくない。130℃以上の高温、高圧条件で抽出したアッケシソウ粉末中の総フェノール性化合物の含量が急増することは、もともと存在する植物細胞内の総フェノール性化合物に対する抽出効率が高くなると同時に、アッケシソウ植物壁に結合したフェノール性物質が分解しながら総フェノール性化合物を生成するからであると推定される。
【0030】
本発明の前記130〜150℃の熱水抽出条件で、圧力容器内の圧力は約2〜5kg/cm、好ましくは2.5〜4.8kg/cmの範囲である。このような高圧条件がアッケシソウの植物壁を弱化させて抽出効率を増大させる。圧力が加えられていない80〜100℃程度の通常の熱水抽出、または圧力が加えられても1.5kg/cm程度の低い圧力では、抽出時間が長くなっても総フェノール性化合物の抽出量は増大しない。
【0031】
また、本発明の前記抽出時間範囲において、下限値未満ではミネラルおよび総フェノール性化合物の抽出が十分ではなく、上限値超過では抽出効率がそれ以上大きくは増加しない。
【0032】
次に、高圧熱水抽出された抽出液の濃度を3〜6ブリックスに調整し、その抽出液を1〜8℃で2〜5日間熟成させる低温熟成段階である。
【0033】
本発明において、抽出液とはアッケシソウ植物壁残渣を除いた抽出濾液のことをいい、残渣の分離は通常の濾過、圧着などの固液分離工程を活用することができる。
【0034】
抽出液の濃度は乾燥アッケシソウに対する水の投入量、抽出温度および時間に応じて変化する。本発明では、別途のブリックス調整が不要となるように水の投入量、抽出温度および時間を予め設定することが好ましいが、抽出液のブリックスが前記範囲から外れる場合、加熱濃縮または真空加熱濃縮などの方法でブリックスを高めるか、或いは綺麗に浄水された水、好ましくは滅菌した水で希釈してブリックスを低めることができる。
【0035】
抽出液のブリックスが前記上限値から外れる場合には、高温噴霧乾燥過程で抽出液の炭化が発生して苦味が増加することや、アッケシソウ抽出液の青臭いにおいを除去するための低温熟成過程が遅延することなどの問題がある。抽出液のブリックスが前記下限値から外れる場合には、高温噴霧乾燥段階で乾燥が不十分になって粉末化が難しいことや、アッケシソウ粉末の水分含量が10重量%を超過することなどの問題がある。
【0036】
本発明の低温熟成過程は、アッケシソウ抽出液の香味成分を低温で安定化させながら青臭いにおいを除去する過程であって、温度が前記下限値未満であれば、抽出液が凍るか或いは熟成過程が遅延するおそれがあり、温度が前記上限値超過であれば、雑菌の繁殖により変敗が生ずるおそれがある。また、低温熟成時間が前記下限値未満であれば、抽出液の青臭いにいの除去が十分ではなく、低温熟成時間が前記上限値超過であれば、低温生育微生物による抽出液の変質から異臭が発生する。
【0037】
次に、前記熟成した抽出液を、220〜300℃に維持される噴霧乾燥機のチャンバー内で12,000〜18,000rpmにて回転するディスクへ噴射して乾燥させる高温噴霧乾燥段階である。
【0038】
本発明で用いられる噴霧乾燥機は、チャンバーの内部にはシャフトが引き込まれ、このシャフトの端部にはディスクが固定され、前記シャフトが駆動手段によって回転可能に設置され、チャンバーの上端の一側には供給ノズルが連結されている構造を取る。前記チャンバーの内部は約220〜300℃に維持され、供給ノズルを介して熟成したアッケシソウ抽出液が供給されると、12,000〜18,000rpmで回転するディスクによって衝突しながら乾燥する。
【0039】
乾燥が円滑に行われるためには、ディスクの回転数が12,000rpm以上でなければならず、18,000rpmを超過すれば、噴霧乾燥機の設備に無理を与えるおそれがある。この際、前記熟成したアッケシソウ抽出液の供給温度は20〜50℃に調整できる。これはアッケシソウ抽出液の濃度によって異なるので、濃度が低いほど供給温度を高くすることが好ましい。
【0040】
乾燥時のチャンバーの内部温度が前記下限値未満の場合には、瞬間乾燥結晶化が難しく、 乾燥時のチャンバーの内部温度が前記上限値超過の場合には、設備の過負荷および製造効率が低下するため、前記温度範囲に限定することが好ましい。
【0041】
このような高温噴霧乾燥段階を経ると、約100〜300μm程度の粒度を有する高圧熱水抽出アッケシソウ粉末が製造される。
【0042】
本発明の高圧熱水抽出アッケシソウ粉末は、52〜57重量%の塩化ナトリウム、および2〜20重量%の水分を含有し、総フェノール含量が15〜30mg/gである。
【0043】
本発明のアッケシソウ粉末は、各種加工食品の添加剤または塩の代用であって、キムチ、塩辛、味噌、唐辛子味噌、パン、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、粉末、顆粒、錠剤などの健康機能食品を含む各種加工食品に使用できる。
【0044】
本発明の高圧熱水抽出アッケシソウ粉末が抗酸化機能性の添加剤として使用される場合、その食品が乾燥物または固形であれば、全体食品重量の0.01〜15重量%で添加することができ、その食品が飲料であれば、100mLを基準として0.02〜10g、好ましくは0.3〜1gの比率で添加することができる。また、塩の代用に使われる場合には、既存塩使用量の20〜200%の範囲内で使用することができる。
【0045】
本発明では、前記熱水抽出アッケシソウ粉末を、味噌球麹成形のために蒸熟させた大豆および発酵させた味噌玉麹と混合する塩水に一定量添加して発酵を進行し、また、好ましくはアッケシソウ熱水抽出物を、大豆を蒸熟させるための水にも希釈して使用することにより、アッケシソウが保有しているミネラルを始めとしたカフェイン酸、フェルラ酸などの総フェノール性化合物を最大限活用しながら官能性にも優れたアッケシソウ味噌を製造することができる。
【0046】
アッケシソウ味噌の製造方法を、図1に示した本発明の一実施態様の製造工程図によって説明する。
【0047】
まず、蒸熟させた大豆に前記熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜10重量%混合する。
【0048】
大豆の蒸熟は80〜110℃で2〜4時間行い、好ましくはアッケシソウ熱水抽出物を、固形分に対し0.05〜1重量%含有するアッケシソウ水を用いて蒸熟させる。
【0049】
蒸熟した大豆に熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜4重量%混合する。
【0050】
次に、混合された材料で大豆球麹を成形し、乾燥させながら発酵させる。
【0051】
大豆球麹を成形して乾燥させながら発酵させる過程は、蒸熟大豆と熱水抽出アッケシソウ粉末との混合材料で味噌玉麹の形を成形し、稲わらを用いて味噌玉麹を括り、40〜60日間自然発酵させる方法と、前記混合材料にアスペルギルス属菌を接種して25〜40℃で2〜4日間速成発酵をさせる方法のどっちでも使用することができるが、伝統在来味噌の風味を好む場合、自然発酵を採用する。
【0052】
次に、前記発酵された味噌玉麹と、熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜5重量%含む天日塩を溶解した塩水とを混合して味噌を仕込み、発酵させる。
【0053】
味噌玉麹と塩水とを1:0.5〜1:1.5の重量比、好ましくは1:0.8〜1:1.2の重量比で混合しながら、味噌玉麹を潰して味噌を仕込む。
【0054】
味噌玉麹に混合される塩水には熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%混合する。塩水の製造に使用される天日塩は、83〜90重量%の塩化ナトリウムを含有し、1300〜2500ppmのカリウム、4000〜8000ppmのマグネシウム、および500〜12000ppmのカルシウムを含む天日塩を使用する。前記組成を持つ天日塩は、前記組成の範囲から外れる天日塩、岩塩、焼塩、竹塩、精製塩に比べてインスリン抵抗性またはインスリン感受性を改善することにより、糖尿病の治療および予防効果を示すとともに血圧上昇抑制効果を示す。
【0055】
味噌を仕込んだ後、室温で2〜6ヶ月間発酵させて完成品を製造する。
【0056】
本発明の方法で製造されたアッケシソウ味噌は、アッケシソウの高圧熱水抽出物を含有し、単純粉砕された乾燥アッケシソウ粉末とは異なり、味噌に足りないカルシウムなどの有用なミネラルを補強し、発酵を促進させて風味を改善するアミノ態窒素およびグルタミン酸の含量を増進させ、総フェノール性化合物の含量が高くて抗酸化能力に優れた機能性味噌として活用できる。
【0057】
以下、本発明に係る熱水抽出アッケシソウ粉末およびアッケシソウ味噌の製造方法を実施例、比較例および製造例によってより詳細に説明する。下記実施例は本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の技術思想の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0058】
実施例1
韓国全羅南道新安郡曾島の太平塩田で有機農として認証されたアッケシソウを使用する。そのアッケシソウは長さ15〜30cm程度のものを6月〜9月にわたって採取した。採取された生アッケシソウから砂州の泥土および異物を除去するために、1次的に精製されたアッケシソウを用いて1次洗浄した後、水道水を用いて2次洗浄を行った。
【0059】
乾燥アッケシソウをまず平均長さ2cm程度に切断した後、圧力容器に乾燥アッケシソウ5kgおよび水70kgを入れ、130℃で5時間熱水抽出を行った。圧力を除去し、空気中で室温にまで徐冷させた後、アッケシソウ植物壁残渣を濾過布を用いて除去し、高圧熱水抽出液を得た。
【0060】
前記高圧熱水抽出液の糖度は4.5ブリックスであって、別途のブリックス調整は不要であった。前記高圧熱水抽出液を4℃の低温倉庫で4日間熟成させた。
【0061】
前記熟成済みの高圧熱水抽出液を、チャンバーの内部が250℃に維持される噴霧乾燥機の15,000rpmにて回転するディスクへ噴射し、アッケシソウ粉末を製造した。
【0062】
製造された粉末の平均粒径は150μmであり、その水分含量は7.0重量%であった。
【0063】
比較例1〜比較例7
実施例1の方法を用いてアッケシソウ粉末を製造するが、抽出温度、抽出時間、抽出液の濃度、低温熟成有無をそれぞれ異にして比較例のアッケシソウ粉末を製造し、実施例1との工程条件の差異は表1にまとめた。
【0064】
比較例1は実施例1に比べて抽出温度のみを115℃に低めたものであり、比較例2は実施例1に比べて抽出温度を115℃に低め、抽出時間を2倍に増加させたものであり、比較例3は実施例1に比べて抽出温度のみを95℃に低めたものであり、比較例4は実施例1に比べて抽出温度を95℃に低め、抽出時間を2倍に増加させたものであり、比較例5は低温熟成過程を省略し、直ちに高温噴霧乾燥を行ったものであり、比較例6は圧力容器に乾燥アッケシソウ10kgおよび水70kgを入れ、130℃で5時間熱水抽出を行ったもので、高圧熱水抽出物の濃度が8.1ブリックスと高かったが、ブリックス調整なしで直ちに低温熟成および高温噴霧乾燥を行ったものであり、比較例7は実施例1の水分含量1重量%以下に乾燥したアッケシソウを0.5mmの平均粒径に粉砕したものである。
【0065】
【表1】

【0066】
抽出温度と時間によるミネラルおよび総フェノール性化合物の含量
実施例1および比較例1〜比較例4のミネラル含量および総フェノール性化合物含量を測定し、その結果を表2に示した。ミネラルの含量はGraphite A.A.S法とFlame A.A.S法で測定し、総フェノール性化合物の含量はFolin−Ciocalteu法で測定した。
【0067】
【表2】

【0068】
95℃および115℃で5時間抽出した比較例3および比較例1の場合は、実施例1と同様の水準であったが、総フェノール性化合物の含量は135℃で5時間高圧熱水抽出した実施例1の半分水準と顕著に低く、比較例3および比較例1で抽出時間を延ばしても総フェノール性化合物の含量は殆ど変化がなかった。
【0069】
抽出温度によるカフェイン酸およびフェルラ酸の含量
実施例1、比較例1および比較例3のカフェイン酸およびフェルラ酸の含量を測定し、その結果を表3に示した。カフェイン酸およびフェルラ酸の含量はODS−HPLC分析によって測定した。
【0070】
【表3】

【0071】
抽出温度による抗酸化活性
実施例1、比較例1および比較例3の抗酸化活性をDPPHラジカル消去活性およびABTSラジカル消去活性分析方法で測定し、その結果をそれぞれ表4および表5に示した。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
抽出温度によるα−グルコシダーゼ阻害活性
実施例1、比較例1および比較例3と対照群として、糖質吸収遅延薬物のアカルボースを用いてα−グルコシダーゼ阻害活性を測定し、その結果をそれぞれ表6に示した。
【0075】
【表6】

【0076】
低温熟成による官能特性
実施例1、比較例6および比較例7の粉末を5%に水で希釈したときの青臭いにおいの強度、塩味の強度、甘味の強度および全体嗜好度を官能検査によって確認した。官能検査要員10名が5点評点法によって各項目に対して点数を付けて比較した。点数は、青臭いにおい、塩味、甘味および苦味の場合には1点(非常に弱い)から5点(非常に強い)まで、全体的な嗜好度の場合には1点(非常に悪い)から5点(非常に良い)まで付けた。
【0077】
【表7】

【0078】
単純粉砕粉末とのミネラルおよび栄養成分の差異
実施例1および比較例7の粉末の栄養成分とミネラル含量を分析し、その結果を表8に示した。炭水化物含量は他の栄養素を用いた数値計算方法で、糖類は消耗技法で、タンパク質はセミマイクロケルダール方法で、脂肪はエーテル抽出方法で、水分含量は乾燥減量方法で、熱量はアトウォーター係数を用いてそれぞれ測定した。また、塩化ナトリウムは、塩度をモール法で、各ミネラル含量をGraphite A.A.S法とFlame A.A.S法でそれぞれ測定した。
【0079】
【表8】

【0080】
実施例2
韓国全羅南道新安郡曾島で生産された大豆を、実施例1の高圧熱水抽出の後、低温熟成を経た4.5ブリックスのアッケシソウ抽出物を2重量%希釈したアッケシソウ水を用いて100℃で3時間蒸熟させた。
【0081】
蒸熟済みの大豆に前記参考例のアッケシソウ高圧熱水抽出物粉末(水分含量7.0重量%)を全体重量の2重量%となるように混合し、混合した材料で味噌玉麹の形を作り、稲わらを用いて味噌玉麹を括った。
【0082】
味噌玉麹を50日間乾燥させながら発酵させた後、味噌玉麹の表面を綺麗に洗浄し、前記アッケシソウ高圧熱水抽出物粉末2重量%と天日塩を添加して塩化ナトリウム含量17重量%の塩水を製造し、前記味噌玉麹と塩水とを1:1の重量比で混合して潰して味噌を仕込んだ。この際、使用した天日塩は、85.4重量%の塩化ナトリウム、7.9重量%の水分、0.1重量%の不溶分、および3.3重量%の硫酸イオンを含むもので、そのミネラルの含量は表9に示した。
【0083】
【表9】

【0084】
味噌を仕込んだ後、室温で60日間発酵を進行しながら、pH、酸度、塩化ナトリウム含量およびアミノ態窒素含量の変化を確認した。
【0085】
比較例8
実施例1と同様に味噌を製造するが、但し、大豆蒸熟段階で、4.5ブリックスのアッケシソウ抽出物2重量%を希釈したアッケシソウ水の代わりに、固形分量を考慮してアッケシソウを水分含量1重量%以下に乾燥させて粉砕した比較例7の乾燥アッケシソウ粉末0.09重量%を希釈したアッケシソウ水を用いた。また、蒸熟済みの大豆と混合するアッケシソウ高圧熱水抽出物粉末、および味噌仕込み過程で塩水に添加されるアッケシソウ高圧熱水抽出物粉末の代わりに、比較例7の乾燥アッケシソウ粉末を実施例1と同一の濃度で使用することにより、乾燥アッケシソウ粉末を含むアッケシソウ味噌を製造した。
【0086】
比較例9
実施例2で使用されるアッケシソウ高圧熱水抽出物およびアッケシソウ高圧熱水抽出粉末以外は残りの条件を同様にして、アッケシソウが含有されていない一般味噌を製造した。
【0087】
発酵期間によるpH、酸度、塩化ナトリウム含量およびアミノ態窒素含量の変化
実施例2、比較例8および比較例9において味噌を仕込んだ後、発酵過程で発生するpH、酸度、塩化ナトリウム含量およびアミノ態窒素含量の変化を確認し、発酵特性を比較した。
【0088】
【表10】

【0089】
【表11】

【0090】
【表12】

【0091】
【表13】

【0092】
実施例2は、アッケシソウを含有していない比較例8、または乾燥アッケシソウ粉末を含有した比較例9に比べて発酵が活発に行われ、pH、酸度、塩化ナトリウムおよびアミノ態窒素の含量が全て増加するものと確認された。
【0093】
総フェノール性化合物の含量および抗酸化活性
実施例2、比較例8および比較例9において味噌を仕込んだ後、60日間発酵させた製品の総フェノール活性とDPPHラジカル消去能を測定し、その結果を表14に示した。DPPHラジカル消去能はDPPHラジカル消去能が50%となるときの試料の量、すなわちSC50で表示し、総フェノール性化合物はFolin−Ciocalteu法で測定した。DPPHラジカル消去能測定時の対照群はTroloxを使用した。
【0094】
【表14】

【0095】
乾燥アッケシソウ粉末を添加した比較例8は、比較例9の一般味噌に比べて総フェノール性化合物の含量が5.4%さらに含有されていたが、本発明の実施例2のアッケシソウ味噌は、総フェノール性化合物の含量が一般味噌に比べて11.3%含有され、単純粉砕した乾燥アッケシソウ粉末と同一の固形分量が使用されたにも拘らず、総フェノール性化合物の含量は2倍以上高くなり、実施例2は比較例8および比較例9に比べて少ない量のみでも高い抗酸化活性を示した。
【0096】
アミノ酸総量およびグルタミン酸含量の比較
実施例2、比較例8および比較例9の味噌の総アミノ酸含量と、それらの中でも特に風味に影響を与えるグルタミン酸の含量をアミノ酸自動分析器を用いた方法で測定し、その結果を表15に示した。総アミノ酸含量はトリプトファンを除いた17種のアミノ酸含量の和で計算した。
【0097】
【表15】

【0098】
官能特性
実施例2、比較例8および比較例9の味噌の塩味の強度、甘味の強度、苦味の強度、口当たりのいい味、および全体嗜好度を官能検査によって確認した。官能検査要員10名が5点評点法で各項目に対して点数を付けて比較した。点数は、塩味、甘味、苦味および口当たりのいい味の場合には1点(非常に弱い)から5点(非常に強い)まで、全体的な嗜好度の場合は1点(非常に悪い)から5点(非常に良い)まで付けた。
【0099】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生アッケシソウを乾燥させるアッケシソウ乾燥段階と、
前記乾燥したアッケシソウに水を入れ、130〜150℃で4〜8時間熱水抽出を行う高圧熱水抽出段階と、
前記抽出液の濃度を3〜6ブリックスに調整し、その抽出液を1〜8℃で2〜5日間熟成させる低温熟成段階と、
前記熟成した抽出液を、220〜330℃に維持される粉末乾燥機のチャンバー内で12,000〜18,000rpmにて回転するディスクへ噴射して乾燥させる高温噴霧乾燥段階とを含んでなることを特徴とする、熱水抽出アッケシソウ粉末の製造方法。
【請求項2】
請求項1の方法で製造され、 塩化ナトリウムを52〜57重量%、水分2〜10重量%含有し、総フェノール含量が15〜30mgである、熱水抽出アッケシソウ粉末。
【請求項3】
請求項2の熱水抽出アッケシソウ粉末を含有する加工食品。
【請求項4】
蒸熟した大豆に熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜10重量%混合する段階と、
前記混合された材料で味噌玉麹を成形し、乾燥させながら発酵させる段階と、
前記発酵した味噌玉麹と、熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜5重量%含む天日塩を溶解した塩水とを混合して味噌を仕込み、発酵させる段階とを含んでなることを特徴とする、アッケシソウ味噌の製造方法。
【請求項5】
前記大豆の蒸熟は、アッケシソウ熱水抽出物を固形分に対し0.05〜1重量%含有するアッケシソウ水で蒸熟させることにより行うことを特徴とする、請求項4に記載のアッケシソウ味噌の製造方法。
【請求項6】
前記天日塩は、塩化ナトリウムの含量が83〜90重量%であり、1300〜2500ppmのカリウム、4000〜8000ppmのマグネシウム、および500〜1200ppmのカルシウムを含有することを特徴とする、請求項4に記載のアッケシソウ味噌の製造方法。
【請求項7】
アッケシソウ熱水抽出物を固形分に対し0.05〜1重量%含有するアッケシソウ水を用いて80〜110℃で2〜4時間蒸熟させる段階と、
前記蒸熟した大豆に熱水抽出アッケシソウ粉末を0.2〜10重量%混合する段階と、
前記混合された材料で味噌玉麹を成形し、40〜60日間乾燥させながら自然発酵させる段階と、
0.2〜5重量%の熱水抽出アッケシソウ粉末、83〜90重量%の塩化ナトリウム、1300〜2500ppmのカリウム、4000〜8000ppmのマグネシウムおよび500〜1200ppmのカルシウムを含む天日塩を塩化ナトリウムの含量が17〜18重量%となるように希釈した塩水と、前記発酵した味噌玉麹とを1:0.5〜1:1.5の重量比で混合して味噌を仕込み、2〜6ヶ月間発酵させる段階とを含んでなることを特徴とする、請求項4に記載のアッケシソウ味噌の製造方法。

【図1】
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