説明

高密度ポリエチレンポリマーとオレフィン性ブロックコポリマーとの改良弾性ブレンド

【課題】ブロッキングの問題がなく、しかもフィルムの望ましい弾性を依然として保つ単層エラストマー性フィルムを提供すること。
【解決手段】
エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと高密度ポリエチレンポリマーとのブレンドが開示され、このブレンドは、チェーンシャトリング反応触媒を使用して生成するエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと、約0.940g/cmを超える密度を有する高密度ポリエチレンポリマーとを含む。このポリマーブレンドは、特にフィルムの作製に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ポリオレフィンブレンド及びポリオレフィンブレンドから生成される単層フィルムに関する。より詳細には、本開示は、チェーンシャトリング反応触媒系(chain shuttling catalyst systems)を使用して生成したオレフィン性ブロックコポリマー(エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー)と高密度ポリエチレンポリマーとのブレンド、及びこのようなブレンドから形成される単層フィルムを対象とする。
【背景技術】
【0002】
エラストマー性材料は、対象物の上又は周囲に適合するように伸び、次いで、収縮して対象物の周囲にぴったりとフィットする能力がある。弾性フィルムは、当技術分野で周知であり、多数の用途で使用されている。特に、弾性フィルムは、おむつ及びトレーニングパンツなどの使い捨て吸収性物品でよく使用されている。弾性材料は、一般的には、フィット性、快適性及び漏れ防止性を改善するために、使い捨て吸収性物品の内張、耳状部、サイドのつまみ、腰バンド及び脚用口ゴムによく見られる。成人の失禁用物品などの一部の用途では、弾性フィルムを使用して物品全体の土台を形成し、全体をフィットさせ快適性を提供することができる。
【0003】
多様な熱可塑性エラストマー組成物が周知であり、そのような組成物として熱可塑性ウレタン、熱可塑性ポリエステル、非晶質ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、エチレン/プロピレンゴム、架橋及び非架橋エチレン−プロピレン−非共役ジエンモノマー(EPDM)系、及びスチレンブロックコポリマーが挙げられる。
【0004】
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPE)は、化学的に安定であり、密度が小さく、他のTPEに比較してコストが低いために、非常に注目されてきた。現代の触媒技術を介して合成されている結晶性が低く、密度が小さい(0.86〜0.88g/cm)均質エチレン−オクテン(EO)コポリマーは、熱可塑性エラストマーの特徴を示す。エラストマー特性は、ネットワークの接合部として働く房状ミセル結晶(fringed micellar crystals)に依存すると考えられている。しかし、房状ミセル結晶が低融点であるために、より高い温度、即ち、室温を超える温度で弾性EOコポリマーを利用することが制限されてきた。
【0005】
近年、Dow Chemical Companyが、チェーンシャトリング反応触媒の技術を開発した。この技術を使用することによって連続法で新規のオレフィンブロックコポリマー(OBC)を合成することができる。チェーンシャトリング反応触媒の技術によって合成されるブロックコポリマーは、コモノマー含量が非常に少なく、融点が高い結晶性エチレン/α−オレフィンブロック(硬質)からなり、コモノマー含量が多い非晶質エチレン−オクテンブロック(軟質)に代わるものである。したがって、OBCはまた、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー(ethylene/α−olefin block interpolymer)とも呼ばれる。本出願では、「エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー」及び「オレフィンブロックコポリマー」又は「OBC」という用語は、互換的に使用される。
【0006】
エラストマーポリマーは、粘着性があるか、又はべたつくことがよくあり、これによりこうした樹脂からフィルムを製造する際に問題が起こる恐れがあり、実際にも起こっている。例えば、エラストマー性フィルムは、ローラー及びその他の製造機器に粘着する傾向を有する。加えて、フィルムを貯蔵及び輸送のためにロールに巻き取る際に、エラストマー性ポリマーの粘着性のためにフィルムの連続した層が相互に粘着する傾向、即ち「ブロック」が創出される。ハンドリング及びブロッキングの問題に対処するために、エラストマー性コアのいずれかの側にいわゆる「スキン」層を設けて弾性フィルムを作製することが通例である。スキン層は、通常、ポリエチレンなどのポリオレフィンから作製され、エラストマーの連続した層間を物理的に分離するので、各層が粘着して一緒になること(即ち、「ブロッキング」)を防止するのに有効である。
【0007】
しかし、スキン層を使用する1つの問題点は、スキン層が弾性ではない、又は少なくともエラストマー層よりも弾性ではないことである。したがって、スキン層の存在により、フィルムが伸長及び回復する能力が制限され易い。スキン層を使用する別の問題点は、弾性コアと弾性が少ない層をラミネートするためのコストが付加されることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ブロッキングの問題がなく、しかもフィルムの望ましい弾性を依然として保つ単層エラストマー性フィルムを提供する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一般には、本開示は、ゼロより大きく最大約1までの平均ブロックインデックス、及び約1.3より大きな分子量分布M/Mを有するOBCと、約0.940g/cmより大きな密度を有する高密度ポリエチレン(HDPE)ポリマーとを含むポリマーブレンド組成物を対象とする。OBCは、チェーンシャトリング反応触媒を使用して生成することができる。一実施形態では、この組成物は、OBCとHDPEポリマーを合わせた全重量に対して、約70重量%から約90重量%のOBCと、約10重量%から約30重量%のHDPEポリマーとを含む。
【0010】
一実施形態において、本開示は、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと高密度ポリエチレンポリマーとを含むポリマーブレンド組成物を提供する。エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーは、少なくとも3つのブロックを有する直鎖マルチブロックコポリマーであり、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーのエチレン含量は、少なくとも50モル%である。
【0011】
別の実施形態において、本開示は、チェーンシャトリング反応触媒で生成したエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーを含むポリマーブレンド組成物を対象とする。このインターポリマーは、エチレンと少なくとも1つのC〜C20α−オレフィンとのコポリマーであり、約0.860から約0.915g/cmの密度及び約0.01から約100g/10分のメルトインデックスを有する。
【0012】
さらなる別の実施形態において、本開示は、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと高密度ポリエチレンポリマーとのポリマーブレンド組成物を含み、高密度ポリエチレンポリマーがエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーの直線的配列と共結晶化している、非ブロッキング特性を備えた単層フィルムを提供する。
【0013】
他の実施形態において、本開示は、このようなフィルム及び/又はポリマーブレンド組成物を含む(including)、使用する、含有する(containing)物品、或いはこのようなフィルム及び/又はポリマーブレンド組成物で覆われた、又はコートされた物品を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、Dow Chemical Companyによって製造され、商標名「InfuseTM」で販売されている。このインターポリマー及びこのインターポリマーを製造するための方法は、米国特許第7557147号、米国特許第7608668号、米国特許出願公開2007167314号及び米国特許出願公開20080311812号で開示され、これらはすべて、本件に関し参照により本明細書に組み込む。
【0015】
本実施形態のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、重合形態においてエチレンと1つ又は複数の共重合可能なα−オレフィンコモノマーとを含み、化学的又は物理的特性の異なる2つ以上の重合モノマー単位のマルチブロック又はセグメントを特徴とする(マルチブロックコポリマー)。
【0016】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、ゼロより大きく最大約1.0までの平均ブロックインデックス(ABI)及び約1.3より大きな分子量分布(M/M)を特徴とする。平均ブロックインデックス(ABI)は、20℃から110℃まで5℃ずつ増加させて分取TREF(昇温溶離分別)で得たそれぞれのポリマー画分のブロックインデックス(「BI」)の重量平均である:
ABI=Σ(wBI
式中、BIは分取(preparative)TREFで得られたエチレン/α−オレフィンインターポリマーのi番目の画分についてのブロックインデックスであり、wはi番目の画分の重量%である。
【0017】
それぞれのポリマー画分に対して、BIは、以下の2つの式(双方が同じBI値を与える)の1つによって定義される:
【数1】

式中、Tは、i番目の画分の分取ATREF(分析用TREF)溶離温度(好ましくは、ケルビンで表わされる)であり、Pは、i番目の画分のエチレンモル分率であり、これはNMR(核磁気共鳴分光法)又はIR(赤外分光法)によって測定することができる。PABは、エチレン/α−オレフィンインターポリマー(分画前の)全体のエチレンモル分率であり、これもまたNMR又はIRによって測定することができる。T及びPは、純粋な「硬質セグメント」(これはインターポリマーの結晶性セグメントを指す)のATREF溶離温度及びエチレンモル分率である。「硬質セグメント」についての現実の値が得られない場合には、第1次近似値(a first order approximation)として、T及びP値は、高密度ポリエチレンホモポリマーについての値に設定される。
【0018】
ABは、組成が同じでエチレンモル分率がPABであるランダムコポリマーについてのATREF温度である。TABは、以下の式を使用してエチレンのモル分率(NMRによって測定される)から計算することができる:
LnPAB=α/TAB+β
式中、α及びβは、2つの定数であり、この定数は、多数の公知のランダムエチレンコポリマーを使用して較正によって決めることができる。α及びβは、機器間で変動することがあることに留意されたい。さらには、対象にしているポリマー組成を用いて、画分の類似の分子量範囲において製造者自身が較正曲線を作成する必要があると思われる。分子量の影響はわずかである。類似の分子量範囲から較正曲線を求める場合は、そのような影響は本質的に無視できる。一部の実施形態では、エチレンのランダムコポリマーは以下の関係式を満足する:
LnP=−237.83/TATREF+0.639
上記の較正式は、狭い組成のランダムコポリマーについて及び/又は広い組成のランダムコポリマーの分取TREF画分について、エチレンのモル分率(P)と、ATREF溶離温度(TATREF)との関係を示す。
【0019】
xoは、同じ組成、同じ分子量で、エチレンモル分率がPである、ランダムコポリマーのATREF温度である。Txoは、LnP=α/TXO+βから計算することができる。逆に、Pxoは、同じ組成で、ATREF温度がTであるランダムコポリマーのエチレンモル分率であり、PxoはLnPXO=α/T+βから計算することができる。
【0020】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーの別の特徴は、インターポリマーが分取TREFによって得られる少なくとも1つのポリマー画分を含み、その画分は約0.1より大きく最大約1.0までのブロックインデックスを有し、インターポリマーが約1.3より大きな分子量分布(M/M)を有することである。
【0021】
平均ブロックインデックス及び個々の画分のブロックインデックスに加えて、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、1つ又は複数の以下に記載の特性によって特徴付けられる。
【0022】
1つの態様では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約1.7から約3.5のM/M、少なくとも1つの摂氏で表される融点(T)、及びグラム/立方センチメートルで表される密度(d)を有し、この変数の数値は、関係式:
>−2002.9+4538.5(d)−2422.2(d)
に一致する。このインターポリマーは、特に、密度が約0.87から約0.95g/cmの間にある場合、実質的に密度に無関係である融点を示す。
【0023】
別の態様では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、約1.7から約3.5のM/Mを有し、J/gで表される融解熱ΔH、及び示差走査熱量測定法(「DSC」)の最高ピークと結晶化分析分別法(「CRY STAF」)の最高ピークの間の温度差として定義され、摂氏で表されるΔTによって特徴付けられる。ΔT及びΔHは、以下の関係式:
ΔT>−0.1299(ΔH)+62.81(ΔHがゼロより大きく、最大130J/gまでの場合)
ΔT≧48℃(130J/gより大きい場合)
を満足する。CRYSTAFのピークは、累積ポリマーの少なくとも5%を使用して求められ(即ち、ピークは、少なくとも5%の累積ポリマーによって表されなければならない)、5%未満のポリマーが、同定可能なCRYSTAFのピークを有する場合、CRYSTAF温度は30℃である。
【0024】
さらなる別の態様では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレン/α−オレフィンインターポリマーの圧縮成形フィルムについて測定される、300%歪み及び1サイクルでの%で表した弾性回復(Re)によって特徴づけられ、グラム/立方センチメートルで表した密度(d)を有し、Re及びdの数値は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが架橋相を実質的に含まない場合、以下の関係式を満足する。
Re>1481−1629(d)
【0025】
さらなる別の態様では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、TREFを用いて分画した場合40℃と130℃の間で溶離する分子画分を有し、当該画分が、同じ温度間で溶離する対応するランダムエチレンインターポリマー画分より少なくとも5%高いコモノマーモル含量を有するという特徴を有する(対応するランダムエチレンインターポリマーは、同じコモノマーを含み、ブロックインターポリマーの値の10%以内のメルトインデックス、密度及びコモノマーモル含量(全ポリマーに対して)を有する)。
【0026】
さらなる別の態様では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、貯蔵弾性率比G’(25°C)/G’(100°C)によって特徴づけられる。このG’(25°C)/G’(100°C)の比は約1:1から約10:1である。
【0027】
さらには、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0.01から2000g/10分、好ましくは、0.01から1000g/10分、より好ましくは、0.01から500g/10分、特に、0.01から100g/10分のメルトインデックス(I)を有することができる。ある種の実施形態では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、0.01から10g/10分、0.5から50g/10分、1から30g/10分、1から6g/10分、又は0.3から10g/10分のメルトインデックス(I)を有する。ある種の実施形態では、エチレン/α−オレフィンインターポリマーのメルトインデックスは、1g/10分、3g/10分、又は5g/10分である。
【0028】
インターポリマーは、1,000g/モルから5,000,000g/モル、好ましくは、1,000g/モルから1,000,000g/モル、より好ましくは、10,000g/モルから500,000g/モル、特に、10,000g/モルから300,000g/モルの分子量(M)を有することができる。ポリマーの密度は、約0.80から約0.99g/cm、好ましくは、エチレン含有ポリマーについて約0.85g/cmから約0.97g/cmであり得る。ある種の実施形態では、エチレン/α−オレフィンポリマーの密度は、約0.860から約0.925g/cm又は約0.867から約0.910g/cmの範囲である。
【0029】
本発明の実施形態で使用されるエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレンと少なくとも1つのC〜C20α−オレフィンのインターポリマーである。一実施形態では、エチレンとC〜C20α−オレフィンとのコポリマーが特に使用される。インターポリマーは、C−C18ジオレフィン及び/又はアルケニルベンゼンをさらに含むことができる。エチレンと重合するのに有用である適切な不飽和コモノマーとして、例えば、エチレン性不飽和モノマー、共役又は非共役ジエン、ポリエン、アルケニルベンゼンなどが挙げられる。そのようなコモノマーの例として、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのC〜C20α−オレフィンが挙げられる。1−ブテン及び1−オクテンが特に好ましい。他の適切なモノマーとして、スチレン、ハロ−又はアルキル−置換スチレン、ビニルベンゾシクロブタン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン及びナフテン類(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン及びシクロオクテン)が挙げられる。
【0030】
エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーは、好ましいポリマーではあるが、他のエチレン/オレフィンポリマーも又使用することができる。本明細書で使用されるオレフィンとは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素系化合物類を指す。選択する触媒に応じて、任意のオレフィンを本発明の実施形態で使用することができる。一実施形態において、適切なオレフィンは、ビニル性不飽和基を含有するC〜C20脂肪族及び芳香族化合物、並びにシクロブテン、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、及びノルボルネン(限定されないが、5及び6位がC〜C20ヒドロカルビル又はシクロヒドロカルビル基で置換されたノルボルネンを含む)などの環式化合物である。このようなオレフィンの混合物、及びC−C40ジオレフィン化合物とこのようなオレフィンの混合物もまた挙げられる。
【0031】
オレフィンモノマーの例として、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン及び1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン、4−ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルナジエン、エチリデン、ノルボルネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、C−C40ジエン(限定されないが、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエンを含む)、他のC−C40α−オレフィンなどが挙げられる。ある種の実施形態では、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン又はそれらの組合せである。ビニル基を含有する任意の炭化水素は、本発明の実施形態で使用できるが、モノマーの分子量が大きくなり過ぎると、モノマーの入手可能性、コスト及び生成ポリマーから未反応モノマーを除去する際の簡便性など、実際的な面がより問題となり得る。
【0032】
ポリマーブレンド組成物はまた、高密度ポリエチレン(HDPE)ポリマーも含む。本明細書では「高密度ポリエチレン」ポリマー及び「HDPE」ポリマーという用語は、約0.940g/cmを超える密度を有するエチレンのホモポリマー又はコポリマーを指す。ターポリマーなどの2種類より多いモノマーを含むポリマーもまた、本明細書で使用される「コポリマー」という用語に含まれる。一般にHDPEコポリマーを作製するのに有用であるコモノマーとして、C〜C20α−オレフィンなどのα−オレフィンが挙げられる。一実施形態では、C〜C12α−オレフィンが使用される。α−オレフィンコモノマーは、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、所望なら2種類以上のコモノマーを使用することができる。適切なコモノマーの例として、直鎖C〜C12α−オレフィン、及び1つ又は複数のC−Cアルキル分枝鎖又はアリール基を有するα−オレフィンが挙げられる。特定の例として、プロピレン;3−メチル−1−ブテン;3,3−ジメチル−1−ブテン;1−ペンテン;1つ又は複数のメチル、エチル若しくはプロピル置換基を有する1−ペンテン;1つ又は複数のメチル、エチル若しくはプロピル置換基を有する1−ヘキセン;1つ又は複数のメチル、エチル若しくはプロピル置換基を有する1−ヘプテン;1つ又は複数のメチル、エチル若しくはプロピル置換基を有する1−オクテン;1つ又は複数のメチル、エチル若しくはプロピル置換基を有する1−ノネン;エチル、メチル若しくはジメチル置換1−デセン;1−ドデセン;及びスチレンが挙げられる。コモノマーの上記のリストは、単なる例示であり、限定するものではないことを理解されたい。一実施形態では、コモノマーとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン及びスチレンが挙げられる。
【0033】
他の有用なコモノマーとして、極性ビニル、共役及び非共役ジエン、アセチレン並びにアルデヒドモノマーが挙げられ、これらは、ターポリマー組成物中に少量含ませることができる。コモノマーとして有用である非共役ジエンは、好ましくは、炭素原子6〜15個を有する、直鎖の炭化水素ジ−オレフィン又はシクロアルケニル置換アルケンである。適切な非共役ジエンとして、例えば、(a)1,4−ヘキサジエン及び1,6−オクタジエンなどの直鎖非環式ジエン;(b)5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン及び3,7−ジメチル−1,7−オクタジエンなどの分枝鎖非環式ジエン;(c)1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロ−オクタジエン及び1,7−シクロドデカジエンなどの単環の脂環式ジエン;(d)テトラヒドロインデン、ノルボルナジエン、メチル−テトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ビシクロ−(2.2.1)−ヘプタ−2,5−ジエン;アルケニル、アルキリデン、シクロアルケニル及びシクロアルキリデンノルボルネン(5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロペニル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−(4−シクロペンテニル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン及び5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)など)など多環の脂環式縮合及び橋架け環ジエン;並びに(e)ビニルシクロヘキセン、アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、4−ビニルシクロヘキセン、アリルシクロデセン及びビニルシクロドデセンなどのシクロアルケニル置換アルケンが挙げられる。通常使用される非共役ジエンの中で、好ましいジエンは、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン及びテトラシクロ−(Δ−11,12)−5,8−ドデセンである。一実施形態では、ジオレフィンは、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ノルボルナジエン及び5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)である。
【0034】
一実施形態では、HDPEポリマーは、約0.940g/cmを超える密度を有する。別の実施形態では、HDPEポリマーは、約0.940g/cmから約0.970g/cmの密度を有する。さらなる別の実施形態では、HDPEポリマーは、約0.940g/cmから約0.960g/cmの密度を有する。
【0035】
一実施形態では、HDPEポリマーは、ASTM−D1238の条件Eに従って測定した場合、約0.01から約45g/10分のメルトインデックスを有することができる。HDPEポリマーは、溶液、スラリー又は気相法などの任意の従来の重合法、及びチーグラー−ナッタ触媒又はメタロセン触媒などの適切な触媒を使用して生成することができる。
【0036】
本発明におけるOBC/HDPEブレンドのHPDEポリマー成分は、単一のポリマーとして議論されてきたが、本明細書に記載の特性を有するかかるHDPEポリマーの2つ以上のブレンドもまた企図されている。
【0037】
一実施形態では、本発明は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーと、HDPEポリマーとを含むポリマーブレンド組成物を提供する。このブレンドは、本明細書に記載のエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーのいずれかを含むことができる。このブレンドは、本明細書に記載のHDPEポリマーのいずれかを含むことができる。このブレンド組成物は、個々の成分を乾燥状態でブレンドし、続いてミキサーで溶融混合することによって、或いはバンバリーミキサー、ハーケミキサー、ブラベンダー内部ミキサー、又はコンパウンディング押出成形機及び重合工程の下流で直接に使用されるサイドアーム押出成形機などを含む一軸若しくは二軸押出成形機などのミキサー内で直接に成分を一緒に混合することによってなど、従来の装置及び方法を使用して形成することができる。
【0038】
さらには、このブレンド組成物は、任意選択で、他の成分を含むことができ、それらの成分は、例えばフィルムなどのブレンドから生成する生成物の特性を改変し、フィルムの加工工程を補助し、又はフィルムの外観を改変する。粘度低減ポリマー及び可塑剤を加工助剤として添加することができる。顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、発泡剤、熱安定剤、光安定剤、無機フィラー、有機フィラー、又はそれらの組合せなどの他の添加剤を添加することもできる。こうした添加剤は、単層フィルム、或いは多層フィルムの1層、数層又は全層中に存在することができる。層の重量に対するこうした成分の量は、約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約5重量%、約7重量%、又は約10重量%であってよい。
【0039】
このブレンド組成物は、このブレンドのOBC及びHDPEポリマーを合わせた全重量に対して、少なくとも約70重量%から最大約90重量%のOBCポリマーと、少なくとも約10重量%から最大約30重量%のHDPEポリマーとを含む。
【0040】
一実施形態では、ポリマーブレンド組成物は、ゼロより大きく最大約1までの平均ブロックインデックス及び約1.3より大きな分子量分布M/Mを有する、チェーンシャトリング反応触媒で生成されるエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと、約0.940g/cmより大きな密度を有する高密度ポリエチレンポリマーとを含む。別の実施形態では、このポリマーブレンド組成物は、チェーンシャトリング反応触媒で生成されるエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーであって、約0.865から約0.915g/cmの密度、約1.7から約3.5の分子量分布(M/M)及び約0.01から約100g/10分のメルトインデックスを有する、エチレンと少なくとも1つのC〜C20α−オレフィンとのコポリマーであるエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと、エチレンのホモポリマー又はエチレンと少なくとも1つのC〜C12α−オレフィンとのコポリマーであり、約0.940g/cmを超える密度を有する高密度ポリエチレンポリマーとを含む。
【0041】
これらのうちの任意の実施形態では、OBCポリマー、HDPEポリマー又は双方は、そのようなポリマーのブレンドであってよい。即ち、このブレンドのOBCポリマー成分は、それ自体が本明細書に記載の特徴を有する2つ以上のOBCポリマーのブレンドであってよく、或いは又は更には、このブレンドのHDPEポリマー成分は、それ自体が本明細書に記載の特徴を有する2つ以上のHDPEポリマーのブレンドであってよい。
【0042】
このポリマーブレンドは、フィルム用途に対して特に適している。本発明のOBC/HDPEポリマーブレンドを使用して単一層を有するフィルム(単層フィルム)又は多層を有するフィルム(多層フィルム)を形成することができる。多層フィルムで使用される場合、OBC/HDPEポリマーブレンドは、所望に従い、フィルムの任意の層で使用してもよいし、フィルムの1より多い層で使用してもよい。フィルムの1より多い層が、本発明のOBC/HDPEポリマーブレンドで形成される場合、そのような層のそれぞれを個別に調製することができる。即ち、OBC/HDPEポリマーで形成される層は、フィルムの所望の特性に応じて化学組成、密度、メルトインデックス、厚さが、同じであっても異なっていてもよい。
【0043】
本発明の一態様は、本発明のOBC/HDPEポリマーブレンドでの単層フィルムの形成に関する。こうしたフィルムは、以下で議論される周知の押出成形又は共押出成形技法のどれを使っても形成することができる。本発明のフィルムは、非配向性であっても、一軸配向性であっても又は二軸配向性であってもよい。フィルムの物理特性は、用いるフィルム形成技法に応じて変動することがある。本発明の別の態様は、本発明のOBC/HDPEポリマーブレンドでの多層フィルムの形成に関する。多層フィルムは、当技術分野で周知の方法によって形成することができる。多層フィルムの全体の厚さは、所望の用途に基づいて変えることができる。当業者なら、多層フィルムにおける個別の層の厚さは、所望の末端用途の性能、用いる樹脂又はコポリマー、装置の能力及び他の因子に基づいて調整できることが理解されよう。各層を形成する材料は、共押出原料供給ブロック(a co−extrusion feedblock)及び金型アセンブリによって共押し出しして、一緒に接着しているが組成の異なる2つ以上の層を有するフィルムを得ることができる。
【0044】
下記のように、フィルムは、キャストフィルムであっても、インフレーションフィルムであってもよい。フィルムは、他の公知のフィルムプロセスに従ってさらにエンボス加工したり、又は製造若しくは加工することができる。フィルムは、厚さ、材料、及び多様な層の順序、並びに各層の添加剤を調整することによって特定の用途に合わせることができる。
【0045】
一態様では、OBC/HDPEポリマーブレンドの単層又は多層を含むフィルムは、冷却ロールキャスティング法などのキャスティング技法を使用することによって形成することができる。例えば、組成物は、平坦な金型で溶融状態で押出成形し、次いで冷却してフィルムを形成することができる。特定の例として、キャストフィルムは、以下のようにパイロットスケールの商用キャストフィルムライン装置を使用して調製することができる。ポリマーのペレットを約175℃から約300℃の範囲の温度で、特定の樹脂の溶融粘度に合うように選定された特定の溶融温度を用いて溶融する。多層キャストフィルムの場合、2つ以上の異なる溶融物が共押出アダプターまで輸送され、そのアダプターが、2つ以上の溶融物の流れを合わせて多層の共押出構造体にする。この層状の流動体を単一マニホールドフィルム押出成形金型によって所望の幅に分配する。或いは、複数マニホールド金型も用いることができ、その金型では、金型開口部から押出す前に、溶融流れを金型本体内部で結合させる。金型の間隙長は、通常、約0.015から約0.030インチ(約380から約760μm)である。次いで、材料は最終寸法で引き出される。材料引き出し比は、通常、2.0ミル(50μm)フィルムで約7.5:1から約15:1である。真空箱又は空気ナイフを使用して、金型開口部を出る溶融物を約0℃から約40℃に維持された一次冷却ロールに押しつけておくことができる。生成ポリマーフィルムを巻取り機に集める。フィルムの厚さは、ゲージモニターによって監視することができ、フィルムは、トリマーによって端部をトリミングすることができる。所望であれば、1つ又は複数の任意選択の処理機を使用して、フィルムの表面を処理することができる。このような冷却ロールキャスティング法及びその装置は、当技術分野で周知であり、例えば、「The Wiley Encyclopedia of Packaging Technology、第2版」A.L.Brody及びK.S.Marsh、編、John Wiley and Sons,Inc.,New York(1997)に説明されている。冷却ロールキャスティング法は一例であり、他の形態のキャスティング法を使用することもできる。
【0046】
別の態様では、OBC/HDPEポリマーブレンドの単層又は多層を含むフィルムは、インフレーション技法を使用して形成することができる(即ちインフレーションフィルムを形成することができる)。例えば、組成物は、管状金型で溶融状態で押出成形され、次いで、インフレーション及び冷却され、管状のインフレーションフィルムを形成することができる。このインフレーションフィルムは、次いで、軸方向に切断され、広げられて平面フィルムを形成することができる。
【0047】
本開示のさらなる別の態様は、押し出しコーティングによって形成される物品に関する。例えば、基材材料を、ポリマーが金型を出るときに、熱い溶融ポリマーと接触させることができる。例えば、すでに形成済みのポリプロピレンフィルムを、エチレンコポリマーフィルムが金型で押し出されるときにこのエチレンコポリマーフィルムで押し出しコーティングすることができる。押し出しコーティングは、一般に、キャストフィルムより高い温度、通常約315℃で実施して押し出し材料の基材への接着を促進する。一実施形態では、本開示は、ラミネートを形成するための不織布などの可撓性基材上へのOBC/HDPEフィルム又はコーティングであって、OBC/HDPEポリマーブレンドで形成されるフィルム又はコーティングを対象とする。コーティングは、単層フィルムであっても、多層フィルムであってもよい。
【0048】
このポリマーブレンドから作製されるフィルム及びコーティングはまた、ラミネート構造体(即ち、少なくとも1つの基材上、又は基材に隣接して配置される本明細書に記載のフィルム及びコーティングを有する)で使用するのにも適している。こうしたフィルム及びコーティングはまた、単一層又は多層構造体でヒートシール又は水分遮断層として使用するのにも適している。
【0049】
OBC/HDPEブレンドの単層及び多層フィルム、コーティング、ラミネート及び他の構造体は、本明細書に記載の方法又は当技術分野で公知の他の方法によって生成することができ、本明細書に記載の方法で生成したOBC及び/又はHDPEポリマー、或いは当技術分野で公知の他の方法によって生成したOBC及び/又はHDPEポリマーを使用できることを強調したい。
【0050】
本開示の別の態様は、OBC/HDPEポリマーブレンドのいずれか1つを含むポリマー生成物に関する。このような生成物として、OBC/HDPEポリマーブレンドから作製されたフィルム、キャストフィルム、溶融インフレーションフィルム、共押し出しフィルム、OBC/HDPEポリマーブレンドから作製されたフィルム、ラミネートフィルム、押し出しコーティング、OBC/HDPEポリマーブレンドを含む多層フィルム、OBC/HDPEポリマーブレンドを含むシール層、並びにそのようなシール層と接着層を含む生成物など多数のフィルム系生成物が挙げられる。多層フィルムとして、メタロセン触媒によるLLDPE、チーグラー−ナッタ触媒によるLLDPE、LDPE、MDPE、HDPE、EVA、EMA、ポリプロピレン又は他のポリマーと共押し出しされたOBC/HDPEブレンド層が挙げられる。
【0051】
本開示ではまた、ラミネーションフィルム、ストレッチフィルム、輸送袋、ごみ袋及びライナー、工業用ライナー、野菜袋、可撓性食料包装体(例えば、切断新鮮野菜包装体、凍結野菜包装体)、パーソナルケアフィルム、袋、医療用フィルム製品(静脈内輸液袋など)、おしめフィルム、女性用衛生フィルム及び家庭用ラップなど、特定の末端用途を有する生成物、特に、靭性特性が望ましいフィルム系生成物が挙げられる。また生成物としては、輸送、貯蔵及び/又は展示用に通常格納され及び/又はパレットに載せられる、多様な食料品、カーペットロール、液体容器、並びに多様な類似製品を含む多様な生成物を束にしたり、包装したり、一体化する際の包装を挙げることができる。生成物としてはまた、製造、輸送などの間の表面の一時的な保護などで、伸ばして又は伸ばさずに、表面保護に用いるものを挙げることができる。本明細書に記載のポリマーブレンドから生成するフィルムについては多数の潜在的な用途が存在するが、これは当業者には自明である。
【0052】
以下の実施例は、本開示を例示する。こうした実施例に記載された、特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を限定するために使用してはならない。別段の指示のない限り、百分率、部及び比はすべて、重量である。溶融押出及びフィルム形成の条件は、実施例のすべてで同じであった。
【実施例】
【0053】
以下の材料を実施例で使用した。
OBC−商品名INFUSE(商標)でThe Dow Chemical Companyから市販されている、0.866g/cmの密度及び5.0g/10分のメルトインデックスを有するエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー樹脂
HDPE−EquistarとしてLyondellBasellから市販されている、0.962g/cmの密度及び6.5g/10分のメルトインデックスを有する高密度ポリエチレンポリマー樹脂
LDPE−Exxon LD202.48でExxonMobilから市販されている、0.915g/cmの密度及び12g/10分のメルトインデックスを有する低密度ポリエチレンポリマー樹脂
LLDPE−Exxon EM 3518でExxonMobilから市販されている、0.918g/cmの密度及び3.5g/10分のメルトインデックスを有する直鎖低密度ポリエチレンポリマー樹脂
【0054】
比較例
共押し出しによって3層フィルムを形成した。コア層をエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー樹脂(OBC)で形成した。スキン層を約50重量%の低密度ポリエチレンポリマー(LDPE)と約50重量%の直鎖低密度ポリエチレンポリマー(LLDPE)とを含むブレンドで形成した。
【0055】
(例1)
熱劣化を最小にするために軸速度1rpmでスキン層押出成形機を運転したままにした点を除いて、比較例の3層フィルムを作製したのと同じ方法を使用して単層フィルムを形成した。単層フィルムを約90重量%のエチレン/オレフィンブロックインターポリマー樹脂(OBC)と約10重量%の高密度ポリエチレンポリマー(HDPE)とを含むブレンドから作製した。
【0056】
(例2)
このフィルムが約70重量%のエチレン/オレフィンブロックインターポリマー樹脂(OBC)と約30重量%の高密度ポリエチレンポリマー(HPDE)とから構成された点を除けば、実施例1の手順を繰り返した。
【0057】
組成及びフィルムの試験
示差走査型熱量測定法(DSC)は、準結晶性ポリマーの融解及び結晶化を調べるために使用することができる一般的な技法である。準結晶性ポリマーを調査するためのDSC測定の一般原理及びDSCの応用は、標準的な教科書(例えば、E.A.Turi編、Thermal Characterization of Polymeric Materials,Academic Press、1981)に記載されている。
【0058】
フィルムから切り出された供試体を0℃から200℃まで10°C/分の速度で加熱し、0℃まで10°C/分の速度で冷却し、200℃まで10°C/分の速度で再加熱することによって比較例及び実施例のフィルムについてヒートフロー対温度のDSCサーモグラムを得た。表1は、実施例の組成に対するDSCの結果を示す。
【表1】

【0059】
サーモグラムはすべて、単一の最大値を有する単一の非常に明確な溶融又は結晶化ピークを示した。実施例2の第2の溶融の場合、2つの近接した最大値を観察した。データは、ブレンド中のHDPEポリマー濃度が約10%から約30%に増加すると、ピーク位置が高温側に移動し、結晶化度が顕著に増加したことを示す。単層ブレンドのピーク位置及び結晶化度が少し高いことは(実施例1及び2を比較例と比較)、HDPEポリマー及び直鎖OBCが、共結晶化することによって、OBCコアとLDPE/LLDPEスキンの3層ブレンドより少し大きい結晶子を形成できることを示す。
【0060】
引張強度及びヒステリシスを試験するために、フィルム試料から幅1インチの供試体を切り出した。ASTM D882−97に従って、引張強度値(伸び5、10、25及び100%での引張荷重、降伏時の荷重、降伏時の歪み、ピーク荷重及び破断時の伸び)を機械方向(MD)及び横断方向(TD)の双方で測定した。フィルムの機械方向(MD)は、製造時にフィルムが輸送される方向又はフィルムがロール上に巻き取られる方向として定義することができる。横断方向(TD)は、フィルム面内でMDに垂直であるとして定義することができる。表2は、50グラム/平方メートル(gsm)の共通基本重量に規格化されたMD及びTDの引張強度データを示す。
【表2】

【0061】
ヒステリシス特性、即ち、力の緩和及び引張りセットは、一定速度の運動を通じて供試体に荷重を印加する試験器具を利用する実験室試験手順に従って測定する場合が多い。例として示すのみであるが、このような試験器具の1つは、Instron Tensile Tester−Model#1130である。MD及びTD双方のヒステリシスデータを測定した。各供試体について2つの部分で試験手順を実行した。第1のサイクルは、供試体に荷重を印加し、試料を引っ張り状態に置くことによって所望の歪み(%伸び)を与え、指定の時間この歪みに保持し、次いで無荷重条件まで戻す。このサイクル中に発生する曲線を使用することによって力の緩和を計算する。第2のサイクルは、荷重を印加し、試料を引っ張り状態に置くことによって第1のサイクルのように所望の歪み(%伸び)を与え、指定の時間この歪みを保持し、次いで無荷重条件まで戻す。引っ張りセットをこの第2の曲線から計算する。表3は、50gsmの共通基本重量に規格化されたMD及びTDのヒステリシスデータを示す。
【0062】
表3のヒステリシスデータのために、供試体をフィルムの多様な領域にわたり採取し、幅1.0インチ×長さ約7.0インチに切断した。ポリマー試験試料には、試験結果に悪影響を与える恐れのある表面損傷、しわ及びしみは無かった。試験を約23±2℃及び湿度約50%±2%で実施した。供試体を3.0インチ離して(最初の寸法長)設定した引張試験機械のジョーに配置し、20インチ/分の速度でジョーが離れるように移動させることによって伸び50%に到達させ、力(f1)を記録した。試料を伸び50%で30秒間保持し、力(f2)をやはり記録した。次いで、試料を20インチ/分の速度で伸び0%まで戻した。30秒間の休息期間の後、試験試料を再度伸び50%まで伸ばし、30秒間保持し、伸び0%まで戻した。この第2のサイクルの間に、フィルムが変形に抵抗し荷重が試験機械によって印加される前のフィルムの取り込まれた距離(take−up distance)又は伸び(a)を記録した。
【0063】
試験データを集めた後、各試料に対する力の緩和及びセットを計算することが可能である。力の緩和は、第1の試験サイクルの保持段階の力の損失(f1−f2)として定義される。損失は、力の緩和%=(f1−f2)/f1×100%として表すことができる。セットは、引張セットとしても知られ、最初の伸び、保持及び緩和手順の結果としての試料変形の指標である。セットは、第2の試験サイクルで測定される、荷重印加前の試料の伸び(a)を試料の最初の寸法長で除した比である。これはまた、セット%=a/寸法長×100%としても表すことができる。
【表3−1】

【表3−2】

【0064】
引張強度データによって、単層フィルムは、3層フィルムと比較して、破断時の伸びが改善され、規格化ピーク荷重が大きく増加したことが示される。ヒステリシスデータによって、単層フィルムの力の緩和値は3層フィルムのそれと類似していることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チェーンシャトリング反応触媒を使用して生成するエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーであって、
(i)ゼロより大きく最大約1.0までの平均ブロックインデックス及び
(ii)約1.3より大きな分子量分布M/Mを有する、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと、
(b)約0.940g/cmより大きな密度を有する高密度ポリエチレンポリマーとを含み、
(c)該エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと該高密度ポリエチレンポリマーを合わせた全重量に対して、約70重量%から約90重量%の該エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー及び約10重量%から約30重量%の該高密度ポリエチレンポリマーを含む、ポリマーブレンド組成物。
【請求項2】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、約0.860から約0.925g/cmの密度を有する、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項3】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、約0.867から約0.910g/cmの密度を有する、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項4】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、約0.01から約100g/10分のメルトインデックスを有する、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項5】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、少なくとも3つのブロックを有する直鎖マルチブロックコポリマーである、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項6】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーのエチレン含量が、少なくとも50モル%である、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項7】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、エチレンと、C〜C20α−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1つのコモノマーとのコポリマーである、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項8】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、少なくとも1つの硬質セグメントと少なくとも1つの軟質セグメントとを含む、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項9】
前記硬質セグメントが、少なくとも約98重量%のエチレンを含む、請求項8に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項10】
前記軟質セグメントが、50重量%未満のエチレンを含む、請求項8に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項11】
前記高密度ポリエチレンポリマーが、ホモポリマーポリエチレンである、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項12】
前記高密度ポリエチレンポリマーが、約0.01g/10分から約45g/10分のメルトインデックスを有する、請求項1に記載のポリマーブレンド組成物。
【請求項13】
ポリマーブレンド組成物を含む少なくとも1層を有するフィルムであって、該ポリマーブレンド組成物が、
(a)チェーンシャトリング反応触媒を使用して生成するエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーであって、
(i)ゼロより大きく最大約1.0までの平均ブロックインデックス及び
(ii)約1.3より大きな分子量分布M/Mを有する、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと、
(b)約0.940g/cmより大きな密度を有する高密度ポリエチレンポリマーとを含み、
(c)該エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと該高密度ポリエチレンポリマーを合わせた全重量に対して、約70重量%から約90重量%の該エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー及び約10重量%から約30重量%の該高密度ポリエチレンポリマーを含む、フィルム。
【請求項14】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、約0.01から約100g/10分のメルトインデックスを有する、請求項13に記載の単層フィルム。
【請求項15】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーが、少なくとも3つのブロックを有する直鎖マルチブロックコポリマーである、請求項13に記載の単層フィルム。
【請求項16】
前記エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーのエチレン含量が、少なくとも50モル%である、請求項13に記載の単層フィルム。
【請求項17】
キャストフィルムである、請求項13に記載の単層フィルム。
【請求項18】
インフレーションフィルムである、請求項13に記載の単層フィルム。
【請求項19】
前記高密度ポリエチレンポリマーがホモポリマーエチレンである、請求項13に記載の単層フィルム。
【請求項20】
基材と、該基材上に配置されたフィルムとを有する物品において、
該フィルムがポリマーブレンド組成物を含み、該ポリマーブレンド組成物が、
(a)チェーンシャトリング反応触媒技術を使用して生成するエチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーであって、
(i)ゼロより大きく最大約1.0までの平均ブロックインデックス及び
(ii)約1.3より大きな分子量分布M/Mを有する、エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと、
(b)約0.940g/cmより大きな密度を有する高密度ポリエチレンポリマーとを含み、
該エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマーと該高密度ポリエチレンポリマーを合わせた全重量に対して、約70重量%から約90重量%の該エチレン/α−オレフィンブロックインターポリマー及び約10重量%から約30重量%の該高密度ポリエチレンポリマーを含む、物品。

【公開番号】特開2011−144373(P2011−144373A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−289226(P2010−289226)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(504242043)トレドガー フィルム プロダクツ コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】